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特開2024-163863鉄含有FER型ゼオライト及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163863
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】鉄含有FER型ゼオライト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/46 20060101AFI20241115BHJP
   B01J 29/68 20060101ALI20241115BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20241115BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
C01B39/46
B01J29/68 A ZAB
B01J37/10
B01D53/94 222
B01J29/68 A
C01B39/46 ZAB
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075644
(22)【出願日】2024-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2023079261
(32)【優先日】2023-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】陳 寧
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】中尾 圭太
【テーマコード(参考)】
4D148
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA06
4D148AB02
4D148BA02Y
4D148BA03Y
4D148BA07Y
4D148BA08Y
4D148BA11X
4D148BA14X
4D148BA16Y
4D148BA17Y
4D148BA18Y
4D148BA19Y
4D148BA20Y
4D148BA21Y
4D148BA22Y
4D148BA28Y
4D148BA35Y
4D148BA36X
4D148BA41X
4D148BB02
4D148DA03
4D148DA11
4D148DA20
4G073BA02
4G073BA04
4G073BA05
4G073BA36
4G073BA63
4G073BA69
4G073BA75
4G073BD01
4G073CZ50
4G073CZ60
4G073DZ02
4G073FB28
4G073FB36
4G073FB50
4G073FD01
4G073FD02
4G073FD05
4G073FD08
4G073FD12
4G073FD21
4G073GA01
4G073GA33
4G073UA05
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA14
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA47C
4G169BC02C
4G169BC03C
4G169BC09A
4G169BC31A
4G169BC40A
4G169BC42A
4G169BC43A
4G169BC51A
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BE01C
4G169BE13C
4G169BE16C
4G169BE36C
4G169BE38C
4G169CA01
4G169CA02
4G169CA03
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EA04Y
4G169EA06
4G169EC27
4G169FA01
4G169FB30
4G169FC03
4G169FC08
4G169ZA13A
4G169ZA13B
4G169ZA33A
4G169ZA33B
4G169ZB03
4G169ZB04
4G169ZB07
4G169ZB09
4G169ZC04
4G169ZC10
4G169ZD06
4G169ZF05A
4G169ZF05B
(57)【要約】
【課題】
従来の鉄を含有するFER型ゼオライトと比べ、窒素酸化物還元におけるNOの生成が少なく、なおかつ、工業的に適用が可能なFER型ゼオライト及びその製造方法、並びに、これを含む窒素酸化物還元触媒の少なくともいずれかを提供する。
【解決手段】
鉄を含有し、なおかつ、UV-VISスペクトルにおける波長190nm以上600nm以下のピークに対する、波長300nm以上600nm以下のスペクトルのピークの面積割合が20%以下である、FER型ゼオライト。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄を含有し、なおかつ、UV-VISスペクトルにおける波長190nm以上600nm以下のピークに対する、波長300nm以上600nm以下のスペクトルのピークの面積割合が20%以下である、FER型ゼオライト。
【請求項2】
UV-VISスペクトルにおける波長190nm以上600nm以下のピークに対する、波長400nm超600nm以下のスペクトルのピークの面積割合が20%以下である、請求項1に記載のFER型ゼオライト。
【請求項3】
UV-VISスペクトルにおける波長190nm以上600nm以下のピークに対する、波長190nm以上300nm未満のスペクトルのピークの面積割合が80%以上である、請求項1又は2に記載のFER型ゼオライト。
【請求項4】
鉄含有量が5質量%以下である、請求項1又は2に記載のFER型ゼオライト。
【請求項5】
アルミナに対するシリカのモル比が5以上50以下である、請求項1又は2に記載のFER型ゼオライト。
【請求項6】
銅(Cu)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ランタン(La)及びカルシウム(Ca)の群から選ばれる1以上の元素を含む、請求項1又は2に記載のFER型ゼオライト。
【請求項7】
シリカアルミナ源、鉄源、アルカリ源及び水、並びに、種晶を含有し、なおかつ、SiO換算したケイ素に対する鉄のモル割合が0.1未満である組成物を結晶化する工程、を有する請求項1に記載のFER型ゼオライトの製造方法。
【請求項8】
アルカリ源が、少なくともナトリウム源又はカリウム源を含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記組成物が以下のモル組成を有する、請求項7又は8に記載のFER型ゼオライトの製造方法。なお、以下のモル組成において、Mはアルカリ金属である。
SiO/Al =5以上50以下
Fe/SiO =0超0.1未満
M/SiO =0.05以上0.40未満
K/M =0以上0.9以下
O/SiO =5以上50以下
【請求項10】
前記種晶がCHA型ゼオライト、AEI型ゼオライト、MOR型ゼオライト、FER型ゼオライト及びAFX型ゼオライトの群から選ばれる1つ以上である、請求項7又は8のいずれかひとつに記載の製造方法。
【請求項11】
前記原料組成物における種晶の含有量が0質量%を超え、10質量%以下である請求項7又は8のいずれかひとつに記載の製造方法。
【請求項12】
有機構造指向剤源を含まない、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項13】
ピリジン、ピロリジン、シクロヘキシルアミン及びブチルアミンの群から選ばれる1以上の有機構造指向剤源を含む、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1又は2に記載のFER型ゼオライトを含む窒素酸化物還元触媒。
【請求項15】
請求項1又は2に記載のFER型ゼオライトを含む窒素酸化物還元触媒と、窒素酸化物含有ガスを接触させる工程を有する、窒素酸化物の還元方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄含有FER型ゼオライト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遷移金属元素として鉄を含有するFER型ゼオライトは、NOの副生が抑制された窒素酸化物還元触媒として適用し得る遷移金属含有ゼオライトとして、検討されている(例えば、特許文献1乃至4)。
【0003】
例えば、特許文献1乃至3では、FER型ゼオライトと、硝酸鉄等の鉄塩を含む水溶液とを混合することで、後処理によりFER型ゼオライトに鉄が含有できることが報告されている。また、特許文献4では、鉄を含む原料を結晶化することにより、鉄含有FER型ゼオライトが直接得られることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-510437号公報
【特許文献2】特開2017-512630号公報
【特許文献3】特開2007-537858号公報
【特許文献4】中国公開特許114345402号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Catalysis Communications,2017,89,133-147
【非特許文献2】Journal of Catalysis,2009,261, 27-34
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1乃至3で開示された、後処理により鉄を含有させたFER型ゼオライトと比べ、特許文献4で開示された、直接結晶化された鉄を含有するFER型ゼオライトは窒素酸化物還元特性が高い。しかしながら、特許文献4における結晶化は高価なヘキサメチルイミンを必須の原料とするため、得られるFER型ゼオライトも高価となり、工業的に適用することが困難である。
【0007】
本開示は、従来の鉄を含有するFER型ゼオライトと比べ、窒素酸化物還元におけるNOの生成が少なく、なおかつ、工業的に適用が可能なFER型ゼオライト及びその製造方法、並びに、これを含む窒素酸化物還元触媒の少なくともいずれかを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示においては、鉄を含有するFER型ゼオライトの窒素酸化物還元特性の改善について検討した。その結果、原料及び条件を制御して結晶化することにより、ヘキサメチルイミン等の高価な有機構造指向剤を必須とすることなく、鉄を含有するFER型ゼオライトが直接結晶化できることを見出した。さらに、このような鉄を含有するFER型ゼオライトは、従来の鉄を含有するFER型ゼオライトと比べ、鉄の存在状態が異なり、鉄の分散状態が高く、なおかつ、従来の鉄を含有するFER型ゼオライトと比べ、低温域での窒素酸化物還元におけるNOの生成が更に抑制できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は特許請求の範囲の記載の通りであり、また、本開示の要旨は以下の通りである。
[1] 鉄を含有し、なおかつ、UV-VISスペクトルにおける波長190nm以上600nm以下のピークに対する、波長300nm以上600nm以下のスペクトルのピークの面積割合が20%以下である、FER型ゼオライト。
[2] UV-VISスペクトルにおける波長190nm以上600nm以下のピークに対する、波長400nm超600nm以下のスペクトルのピークの面積割合が20%以下である、上記[1]に記載のFER型ゼオライト。
[3] UV-VISスペクトルにおける波長190nm以上600nm以下のピークに対する、波長190nm以上300nm未満のスペクトルのピークの面積割合が80%以上である、上記[1]又は[2]に記載のFER型ゼオライト。
[4] 鉄含有量が5質量%以下である、上記[1]乃至[3]のいずれかひとつに記載のFER型ゼオライト。
[5] アルミナに対するシリカのモル比が5以上50以下である、上記[1]乃至[4]のいずれかひとつに記載のFER型ゼオライト。
[6] 銅(Cu)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ランタン(La)及びカルシウム(Ca)の群から選ばれる1以上の元素を含む、上記[1]乃至[5]のいずれかひとつに記載のFER型ゼオライト。
[7] シリカアルミナ源、鉄源、アルカリ源及び水、並びに、種晶を含有し、なおかつ、SiO換算したケイ素に対する鉄のモル割合が0.1未満である組成物を結晶化する工程、を有する上記[1]乃至[6]のいずれかひとつに記載のFER型ゼオライトの製造方法。
[8] アルカリ源が、少なくともナトリウム源又はカリウム源を含む、上記[7]に記載の製造方法。
【0010】
[9] 前記組成物が以下のモル組成を有する、上記[7]又は[8]に記載のFER型ゼオライトの製造方法。なお、以下のモル組成において、Mはアルカリ金属である。
SiO/Al =5以上50以下
Fe/SiO =0超0.1未満
M/SiO =0.05以上0.40未満
K/M =0以上0.9以下
O/SiO =5以上50以下
[10] 前記種晶がCHA型ゼオライト、AEI型ゼオライト、MOR型ゼオライト、FER型ゼオライト及びAFX型ゼオライトの群から選ばれる1つ以上である、上記[7]乃至[9]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[11] 前記原料組成物における種晶の含有量が0質量%を超え、10質量%以下である上記[7]乃至[10]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[12] 有機構造指向剤源を含まない、上記[7]乃至[11]の少なくともいずれかひとつに記載の製造方法。
[13] ピリジン、ピロリジン、シクロヘキシルアミン及びブチルアミンの群から選ばれる1以上の有機構造指向剤源を含む、上記[7]乃至[11]の少なくともいずれかひとつに記載の製造方法。
[14] 上記[1]乃至[6]のいずれかひとつに記載のFER型ゼオライトを含む窒素酸化物還元触媒。
[15] 上記[1]乃至[6]のいずれかひとつに記載のFER型ゼオライトを含む窒素酸化物還元触媒と、窒素酸化物含有ガスを接触させる工程を有する、窒素酸化物の還元方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示により、従来の鉄を含有するFER型ゼオライトと比べ、窒素酸化物還元におけるNOの生成が少なく、なおかつ、工業的に適用が可能なFER型ゼオライト及びその製造方法、並びに、これを含む窒素酸化物還元触媒の少なくともいずれかを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の鉄含有FER型ゼオライトのUV-VISスペクトル
図2】実施例1の鉄含有FER型ゼオライトのUV-VISスペクトル(波形分離後)
図3】実施例3の鉄含有FER型ゼオライトのUV-VISスペクトル
図4】実施例3の鉄含有FER型ゼオライトのUV-VISスペクトル(波形分離後)
図5】比較例1の鉄含有FER型ゼオライトのUV-VISスペクトル
図6】比較例1の鉄含有FER型ゼオライトのUV-VISスペクトル(波形分離後)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示についてその実施形態の一例を示して説明する。
【0014】
「ゼオライト」とは、骨格原子(以下、「T原子」ともいう。)が酸素(O)を介した規則的構造を有する化合物であり、T原子が金属原子及び又は半金属原子の少なくともいずれかからなる化合物である。金属原子は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)及びスズ(Sn)の群から選ばれる1以上が挙げられ、アルミニウム及び鉄の少なくともいずれかが好ましく、アルミニウムがより好ましい。半金属原子は、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びテルル(Te)の群から選ばれる1以上が挙げられ、ケイ素が好ましい。
【0015】
「ゼオライト類似物質」とは、T原子が酸素を介した規則的構造を有する化合物であり、T原子に少なくとも金属及び半金属以外の原子(以下、「非金属原子」ともいう。)を含む化合物である。非金属原子としてリン(P)が例示できる。ゼオライト類似物質として、アルミノフォスフェート(AlPO)やシリコアルミノフォスフェート(SAPO)など、T原子としてリン(P)を含む複合リン化合物が例示できる。明確性を期すため、本実施形態においては、ゼオライトにゼオライト類似物質を含まないものとする。
【0016】
ゼオライトやゼオライト類似物質における「規則的構造(以下、「ゼオライト構造」ともいう。)」とは、国際ゼオライト学会(International ZeoliteAssociation)のStructure Commissionが定めている構造コード(以下、単に「構造コード」ともいう。)で特定される骨格構造である。例えば、FER構造は構造コード「FER」として、特定される骨格構造である。ゼオライト構造の同定は、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza-struture.org/databases/のZeolite Framework TypesのCHAに記載のXRDパターン(以下、「参照パターン」ともいう。)との対比により、行えばよい。なお、本実施形態において、ゼオライト構造、骨格構造、結晶構造又は結晶相はそれぞれ同義で使用される。
【0017】
本実施形態において、「FER型ゼオライト」等の「~型ゼオライト」は、当該構造コードのゼオライト構造を有するゼオライトを意味する。
【0018】
「アルミノシリケート」は、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とが酸素(O)を介したネットワークの繰返しからなる構造を有する複合酸化物である。アルミノシリケートのうち、その粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンにおいて、結晶性のXRDピークを有するものが「結晶性アルミノシリケート」、及び、結晶性のXRDピークを有さないものが「非晶質アルミノシリケート」である。
【0019】
本実施形態におけるXRDパターンは、以下の条件のXRD測定より得られるXRDパターンである。
加速電流・電圧: 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件 : 40°/分
計測時間 : 3秒
測定範囲 : 2θ=3°から43°
発散縦制限スリット: 10mm
発散/入射スリット: 1°
受光スリット : open
受光ソーラースリット : 5°
検出器 : 半導体検出器(D/teX Ultra)
フィルター : Niフィルター
【0020】
XRDパターンは一般的な粉末X線回折装置(例えば、UltimaIV Protectus、リガク社製)を使用して測定することができる。また、結晶性のXRDピークは、一般的な解析ソフトを使用したXRDパターンの解析においてピークトップの2θが特定され検出されるピークであり、特に、半値幅が2θ=0.50°以下のXRDピークである。
[鉄を含有するFER型ゼオライト]
本実施形態は、鉄を含有し、なおかつ、UV-VISスペクトルにおける波長190nm以上600nm以下のピークに対する、波長300nm以上600nm以下のスペクトルのピークの面積割合が20%以下である、FER型ゼオライトである。
【0021】
本実施形態は鉄を含有するFER型ゼオライト(以下、「鉄含有FER型ゼオライト」ともいう。)であり、FER構造のみからなる結晶構造を有するゼオライト、更にはFER型結晶性アルミノシリケートである。鉄(Fe)を含有することにより、窒素酸化物還元特性を示す。さらに、銅を含有するFER型ゼオライトと比べNOの生成を抑制した上で、窒素酸化物を還元することができる。
【0022】
本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトは、そのXRDパターンにおいて(200)面のXRDピークのピークトップが2θ=9.5±0.2°であることが挙げられる。
【0023】
本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトは、UV-VISスペクトルにおける波長190nm以上600nm以下のピークに対する、波長300nm以上600nm以下のスペクトルのピークの面積割合(以下、「300nm-600nmスペクトル強度比」ともいう。)が20%以下である。鉄を含有するFER型ゼオライトのUV-VISスペクトルにおいて、鉄の存在は波長190nm以上600nm以下のピークの存在により確認することができ、分散状態が高い鉄ほど低波長のピークとして確認することができる。本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトにおいて、鉄は、孤立鉄(Fe3+)、鉄クラスター(Fe)、及び、酸化鉄(Fe)粒子の群から選ばれる1以上の鉄種として含まれている。本実施形態においては、それぞれ、波長190nm以上300nm未満のピークを孤立鉄(Fe3+)に対応するピーク、波長300nm以上400nm以下のピークを鉄クラスター(Fe)に対応するピーク、及び、波長400nm超600nm以下のピークを酸化鉄(Fe)粒子に対応するピーク、とみなすことができる。300nm-600nmスペクトル強度比が20%を超えると、孤立鉄を含む場合であっても、FER型ゼオライトに含まれる鉄に占める酸化鉄及び鉄クラスターの割合が多くなり、従来の鉄含有FER型ゼオライトと同程度の窒素酸化物還元特性しか得られない。
本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトは、UV-VISスペクトルにおける波長190nm以上600nm以下のピークに対する、波長190nm以上300nm未満のピークの面積割合(以下、「190nm-300nmスペクトル強度比」ともいう。)が、70%以上、80%以上又は90%以上であり、また、100%以下、100%未満又は99%以下であることが好ましく、70%以上100%以下、80%以上100%未満、又は、90%以上99%以下であることが挙げられる。
本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトは、UV-VISスペクトルにおける波長190nm以上600nm以下のピークに対する、波長300nm以上400nm以下のピークの面積割合(以下、「300nm-400nmスペクトル強度比」ともいう。)が、20%以下、5.0%以下、3.0%以下又は1.0%以下であり、また、0%以上、0%超又は0.1%以上がであることが好ましく、0%以上20%以下、0%以上5.0%以下、0%以上3.0%以下、0%超3.0%以下、又は、0.1%以上1.0%以下が挙げられる。
本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトは、UV-VISスペクトルにおける波長190nm以上600nm以下のピークに対する、波長400nm超600nm以下のピークの面積割合(以下、「400nm-600nmスペクトル強度比」ともいう。)が20%以下、5.0%以下、3.0%以下又は1.0%以下であり、また、0%以上、0%超又は0.1%以上であることが好ましく、0%以上20%以下、0%以上5.0%以下、0%以上3.0%以下、0%超3.0%以下、又は、0.1%以上1.0%以下が挙げられる。
これらのスペクトル強度比[%]は、鉄含有FER型ゼオライトの鉄種の存在割合[%]に相当し、それぞれ、190nm-300nmスペクトル強度比は孤立鉄(Fe3+)、300nm-400nmスペクトル強度比は鉄クラスター(Fe)、及び、400nm-600nmスペクトル強度比は酸化鉄粒子(Fe)の存在割合[%]に相当する。
そのため、本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトは、鉄を含有し、なおかつ、鉄クラスター及び酸化鉄粒子の存在割合が20%以下である、FER型ゼオライト、又は、本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトは、鉄を含有し、なおかつ、孤立鉄の存在割合が80%以上である、FER型ゼオライト、とみなすこともできる。
また更に、本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトは、孤立鉄、鉄クラスター及び酸化鉄粒子の合計存在割合が100%であり、
孤立鉄の存在割合が、70%以上、80%以上又は90%以上であり、また、100%以下、100%未満又は99%以下であることが好ましく、70%以上100%以下、80%以上100%未満、又は、90%以上99%以下であり、
鉄クラスターの存在割合が、20%以下、5.0%以下、3.0%以下又は1.0%以下であり、また、0%以上、0%超又は0.1%以上であることが好ましく、0%以上20%以下、0%以上5.0%以下、0%以上3.0%以下、0%超3.0%以下、又は、0.1%以上1.0%以下であり、なおかつ、
酸化鉄粒子の存在割合が20%以下、5.0%以下、3.0%以下又は1.0%以下であり、また、0%以上、0%超又は0.1%以上であることが好ましく、0%以上20%以下、0%以上5.0%以下、0%以上3.0%以下、0%超3.0%以下、又は、0.1%以上1.0%以下である、
鉄を含有するFER型ゼオライト、とみなすこともできる。
【0024】
本実施形態におけるUV-VISスペクトルは、一般的な紫外可視分光測定装置((例えば、紫外可視分光光度計V-770、日本分光社製)を用い、以下の条件で測定すればよい。
積分球ユニット : ISN―923(日本分光社製)
測定モード : 拡散反射法
波長 : 190~700nm
温度 : 室
スリット幅 : 5nm
バックグラウンド : 硫酸バリウム
【0025】
得られたUV-VISスペクトルを、波長700nmにおける硫酸バリウムの反射率に対する本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトの反射率(以下、「γ∞」又は「相対反射率」ともいう。)が1となるように補正し、その後、下式のKM関数(f(γ∞))により、補正後のUV-VISスペクトルをKM(Kubelka-Munk)変換すればよい。
f(γ∞) = (1-γ∞)/2γ∞
【0026】
KM変換後のUV-VISスペクトルは、一般的な解析ソフトウェア(例えば、Fityk 0.9.8)、及び、フィッティング関数にGaussianを使用してフィッティング及び波形分離した後、波長190nm以上300nm未満、波長300nm以上400nm以下、及び、波長400nm超600nm以下、それぞれのピーク面積を求め、また、これらの合計を波長190nm以上600nm以下のピーク面積とすればよい。得られた波長190nm以上600nm以下のピーク面積に対する、各波長範囲のピーク面積の割合より面積割合を求めればよい。
【0027】
実用的な窒素酸化物還元特性を示しやすくなるため、鉄含有量は、0.1質量%以上、0.5質量%以上又は1.0質量%以上であり、また、5.0質量%以下又は3.5質量%以下であることが挙げられ、0.1質量%以上5.0質量%以下、又は、1.0質量%5.0質量%以下、又は、1.0質量%以上3.5質量%以下であることが好ましい。
【0028】
本実施形態における「鉄含有量」は、鉄含有FER型ゼオライトの質量に対する、鉄(Fe)の質量割合[質量%]である。また、鉄含有FER型ゼオライトの質量は、鉄含有FER型ゼオライトに含まれるAl換算したアルミニウム、SiO換算したケイ素、及び、鉄(Fe)の合計質量である。鉄含有FER型ゼオライトの質量は、大気雰囲気、100℃で2時間処理した後に質量測定により求めればよい。
【0029】
本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトは、孤立鉄を多く含むことが好ましく、鉄含有量に占める孤立鉄の含有量(以下、「孤立Fe3+含有量」ともいう。)が1.0質量%以上、1.2質量%以上又は1.5質量%以上あることが好ましい。孤立Fe3+含有量は多いことが好ましいが、その場合、孤立Fe3+含有量は鉄含有量の上限値と同じとなり、例えば、5.0質量%以下又は3.5質量%以下であることが挙げられる。好ましい孤立Fe3+含有量は1.0質量%以上5.0質量%以下、1.2質量%以上3.5質量%以下、又は、1.5質量%以上3.5質量%以下が挙げられる。
孤立Fe3+含有量は、以下の式により求めることができる。
孤立Fe3+含有量[質量%]
=鉄含有量[質量%]×孤立鉄の存在割合[%]
=鉄含有量[質量%]×190nm-300nmスペクトル強度比[%]
同様に、鉄含有量に占める鉄クラスターの含有量(以下、「クラスター含有量」ともいう。)及び、鉄含有量に占める酸化鉄粒子の含有量(以下、「酸化鉄含有量」ともいう。)は、それぞれ、以下の式により求めることができる。
クラスター含有量[質量%]
=鉄含有量[質量%]×孤立鉄の存在割合[%]
=鉄含有量[質量%]×300nm-400nmスペクトル強度比[%]
酸化鉄含有量[質量%]
=鉄含有量[質量%]×孤立鉄の存在割合[%]
=鉄含有量[質量%]×400nm-600nmスペクトル強度比[%]
【0030】
本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトにおいて、鉄は、活性金属として機能する状態で含有されていればよく、FER型ゼオライトの表面、細孔及びイオン交換サイトに存在していればよく、少なくともその細孔に存在することが好ましい。なお、本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトは、鉄が骨格構造に置換していなくてもよい。
【0031】
本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトは、活性金属として鉄を含有していればよいが、鉄以外の活性金属、例えば、銅(Cu)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ランタン(La)及びカルシウム(Ca)の群から選ばれる1以上の元素、更には銅及びマンガンの少なくともいずれか、また更には銅を含んでいてもよい。
【0032】
本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトのアルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO/Al比」ともいう。)は、高温高湿雰囲気に曝露された場合の結晶崩壊が生じにくくなる値であればよく、5以上、10以上又は15以上であり、また、50以下、30以下又は20以下であることが挙げられ、5以上50以下、10以上30以下、又は、15以上20以下であることが好ましい。
【0033】
本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトはフッ素(F)を実質的に含有しないこと、更にはフッ素含有量が0質量ppmであることが好ましい。測定誤差を考慮すると、本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトのフッ素含有量は測定限界以下であればよく、例えば、0質量ppm以上100質量ppm以下、更には0質量ppm以上50質量ppm以下、また更には0質量ppm以上5質量ppm以下であることが好ましい。
【0034】
本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトの形状は用途に応じた形状であればよいが、例えば、粉末及び成形体の少なくともいずれかの形状が挙げられる。粉末の場合、これをハニカム等の基材に塗布又はウォシュコートした触媒部材とすればよい。成形体の場合、用途に応じた初期の形状であればよいが、球状、略球状、楕円状、円板状、円柱状、多面体状、不定形状及び花弁状の群から選ばれる1以上であればよい。
【0035】
本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトは、ゼオライトの公知の用途に使用することができ、例えば、触媒、吸着材及びこれらの担体の群から選ばれる1以上に使用すること、更には触媒及び触媒担体の少なくともいずれかとして使用することができる。
【0036】
本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトは窒素酸化物還元触媒及びその担体の少なくともいずれかとしての使用、更には窒素酸化物還元触媒、また更には選択的接触還元による窒素酸化物還元触媒としての使用に適している。
【0037】
例えば、本実施形態の鉄含有FER型ゼオライト窒素酸化物還元触媒として使用する場合、本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトと窒素酸化物含有気体と接触させる工程(以下、「接触工程」ともいう。)、を有する窒素酸化物の還元方法、として使用すればよい。
【0038】
窒素酸化物含有気体は、窒素酸化物(NOx)を含む気体であればよく、少なくとも一酸化二窒素(NO)を含む気体であることが好ましく、一酸化窒素、二酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素及び一酸化二窒素の群から選ばれる1種以上を含む気体、更には一酸化窒素、二酸化窒素及び一酸化二窒素の群から選ばれる1種以上を含む気体、また更にはであることがより好ましい。窒素酸化物含有気体は窒素酸化物以外の成分を含んでいてもよく、炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物及び水の群から選ばれる1種以上を含んでいてもよい。具体的な窒素酸化物含有気体として内燃機関から排出される廃ガス、更には自動車、船舶、ボイラー及びガスタービンの群から選ばれる1以上から排出される廃ガス、が挙げられる。
【0039】
接触工程においては、本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトと窒素酸化物含有気体が接触する任意の条件であればよいが、接触条件として以下の条件が挙げられる。
空間速度 :500~50万時間-1、好ましくは2000~30万時間-1
接触温度 :120℃以上600℃以下、好ましくは150℃以上550℃以下
【0040】
接触工程における接触は、還元剤の存在下で行うことが好ましい。還元剤として、アンモニア、尿素、有機アミン、炭化水素、アルコール、ケトン、一酸化炭素及び水素の群から選ばれる1以上、更にはアンモニア、炭化水素、尿素及び有機アミンの少なくとも1以上、また更にはアンモニア及び炭化水素の少なくともいずれか、また更にはアンモニアが挙げられる。
[鉄含有FER型ゼオライトの製造方法]
本実施形態の鉄含有FER型ゼオライトの好ましい製造方法として、シリカアルミナ源、鉄源、アルカリ源及び水を含有し、なおかつ、SiO換算したケイ素に対する鉄のモル割合が0.1未満である組成物を結晶化する工程、を有するFER型ゼオライトの製造方法、が挙げられる。
【0041】
鉄含有FER型ゼオライトの製造方法として、従来、FER型ゼオライト。
【0042】
本実施形態の製造方法は、シリカアルミナ源、鉄源、アルカリ源及び水を含有し、なおかつ、SiO換算したケイ素に対する鉄のモル割合が0.1未満である組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化する工程(以下、「結晶化工程」ともいう。)を有する。
【0043】
シリカアルミナ源は、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)を含む化合物であり、アルミニウムとケイ素を含む非晶質化合物であることが好ましい。具体的なシリカアルミナ源として、非晶質アルミノシリケートが挙げられる。本実施形態においては、アルミニウム源とケイ素源とを、それぞれ含有する場合と比べ、鉄の分散が促進された状態で結晶化が進行すると考えられる。
【0044】
鉄源は、鉄を含む化合物であり、原料組成物中で均一に分散する鉄化合物であればよい。具体的な鉄化合物として、硝酸鉄、硫酸鉄、酸化鉄、塩化鉄、オキシ水酸化鉄及びの群から選ばれる1つ以上、更には水酸化鉄、硫酸鉄及び硝酸鉄の群から選ばれる1つ以上、また更には硫酸鉄及び硝酸鉄の少なくともいずれか、また更には硫酸鉄である。
【0045】
アルカリ源は、アルカリ金属元素を含む化合物であり、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる1以上を含む化合物、更にはナトリウム、カリウム及びセシウムの群から選ばれる1以上を含む化合物、また更にはナトリウム及びカリウムの少なくともいずれかを含む化合物、また更にはナトリウムを含む化合物、が挙げられる。アルカリ源(以下、アルカリ金属がナトリウム等である場合、それぞれ「ナトリウム源」等ともいう。)は、上述のアルカリ金属元素を含む、水酸化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硝酸塩及び炭酸塩の群から選ばれる1種以上、水酸化物、臭化物及びヨウ化物の群から選ばれる1種以上、若しくは、水酸化物、が例示できる。
【0046】
高価な有機構造指向剤を使用することなく、FER型ゼオライトが結晶化しやすくなるため、アルカリ源は、少なくともナトリウム源又はカリウム源を含むことが好ましく、少なくともカリウム源を含むことがより好ましく、ナトリウム源及びカリウム源を含むことが更に好ましく、ナトリウム源及びカリウム源であることがさらにより好ましい。
【0047】
水は、純水、イオン交換水に加え、構造水、水和水及び溶媒など他の出発物質が含む水も、原料組成物中の水とみなせばよい。
【0048】
なお、鉄源等の出発物質がアルカリ金属元素を含む場合、これらの出発物質もアルカリ源とみなせばよい。同様に、鉄源等がアルミニウムを含む場合、当該鉄源はアルミナ源ともみなされる。
【0049】
得られるFER型ゼオライトが高価になるため、原料組成物は、有機構造指向剤(以下「SDA」ともいう。)源を含まないことが好ましく、ヘキサメチレンイミンを含まないことが特に好ましい。一方、結晶化を促進するため、原料組成物はSDA源を含んでいてもよい。有機構造指向剤源は、FER型ゼオライトを指向し得るSDA及びその化合物の少なくともいずれかであり、FER型ゼオライトを指向し得るアミン化合物であればよい。本実施形態の製造方法が工業的に適用しやすくするため、SDA源は安価なアミン化合物であることが好ましく、例えば、ヘキサメチレンイミン以外のアミン、更にはピリジン、ピロリジン、シクロヘキシルアミン及びブチルアミンの群から選ばれる1以上、また更にはピリジン、ピロリジン及びブチルアミンの群から選ばれる1以上が挙げられる。
【0050】
原料組成物のAl換算したアルミニウムに対するSiO換算したケイ素に対する鉄のモル割合(以下、「SiO/Al」ともいう。)が5以上、10以上又は15以上であり、また、50以下、30以下、25以下又は18以下であることが挙げられ、5以上50以下、10以上30以下、又は、15以上25以下であることが好ましい。
【0051】
原料組成物のSiO換算したケイ素に対する鉄のモル割合(以下、「Fe/SiO」ともいう。)が0.1未満であり、0.05以下又は0.03以下であることが好ましい。Fe/SiOが0.1を超えると鉄が凝集するなど、活性の低い状態でFER型ゼオライトに取り込まれる。原料組成物のFe/SiOの下限は0超、0.001以上又は0.01以上であればよく、例えば、0超0.1未満、0超0.5以下、0.001以上0.5以下、0.01以上0.05以下、又は、0.01以上0.03以下が挙げられる。
【0052】
原料組成物のSiO換算したケイ素に対するアルカリ金属元素の合計モル割合(以下、「M/SiO」ともいう。)が0.40未満、0.38以下又は0.30以下であり、また、0.05以上、0.20以上又は0.25以上であることが好ましい。好ましいM/SiOとして、0.05以上0.40未満、0.20以上0.38以下、又は、0.25以上0.30以下が挙げられる。
【0053】
原料組成物のSiO換算したケイ素に対するカリウムの合計モル割合(以下、「K/SiO」ともいう。)が0.40未満、0.30以下又は0.15以下であり、また、0以上、0超又は0.1以上であることが挙げられ、0超0.40未満、0.1以上0.30以下、又は、0.1以上0.15以下であることが好ましい。
【0054】
より鉄が分散した状態の鉄含有FER型ゼオライトが結晶化しやすくなるため、原料組成物のSiO換算したケイ素に対する水(HO)のモル割合(以下、「HO/SiO」ともいう。)は、50以下であればよく、40以下又は25以下であることが好ましい。HO/SiOは5以上、10以上又は13以上であればよく、5以上40以下、10以上40以下、又は、13以上25以下であることが好ましい。
【0055】
原料組成物の好ましい組成として、以下のモル組成が挙げられる。なお、以下のモル組成において、Mはアルカリ金属であり、例えば、アルカリ金属がナトリウム及びカリウムである場合のMは(Na+K)とみなせばよい。
【0056】
SiO/Al =5以上、10以上又は15以上、
50以下、30以下、25以下又は18以下、
Fe/SiO =0超、0.001以上、0.01以上又は0.02以
上、
0.1未満、0.05以下又は0.03以下
M/SiO =0.05以上、0.20以上又は0.25以上、
0.40未満、0.38以下又は0.30以下、
K/M =0以上、0超、0.10以上又は0.30以上、
0.9以下、0.7以下又は0.5以下、
O/SiO =5以上、10以上又は13以上、
50以下、40以下又は25以下
【0057】
原料組成物の更に好ましい組成として、以下のモル組成が挙げられる。
SiO/Al =5以上50以下
Fe/SiO =0超0.1未満
M/SiO =0.05以上0.40未満
K/M =0以上0.9以下
O/SiO =5以上50以下
原料組成物の特に好ましい組成として、以下のモル組成が挙げられる。
SiO/Al =10以上、30以下
Fe/SiO =0.01以上0.05以下
M/SiO =0.20以上0.38以下
K/M =0.10以上0.7以下
O/SiO =5以上25以下
【0058】
汎用的な材質から構成される製造設備が適用しやすくなるため、原料組成物は、フッ素(F)及びリン(P)を含まないことが好ましく、フッ素の含有量が100質量ppm以下、更には検出限界以下(10質量ppm以下)であることが好ましい。同様に、リンの含有量は100質量ppm以下、更には検出限界以下(0.01質量ppm以下)であることが好ましい。
【0059】
原料組成物の結晶化を促進するため、原料組成物は種晶を含んでいてもよい。種晶は、FER型ゼオライトの結晶化を促進するゼオライトであればよく、CHA型ゼオライト、AEI型ゼオライト、MOR型ゼオライト、FER型ゼオライト及びAFX型ゼオライトの群から選ばれる1つ以上が好ましく、更にはFER型ゼオライトが好ましい。
【0060】
結晶化工程において、原料組成物を結晶化する。これにより、鉄含有FER型ゼオライトを結晶化物として得ることができる。結晶化は、水熱処理により行えばよく、鉄含有FER型ゼオライトが結晶化する条件で行えばよい。好ましい結晶化条件として、以下の条件が挙げられる。
圧力 :自生圧
結晶化温度 :100℃以上、160℃以上又は175℃以上、かつ、
200℃以下又は190℃以下
【0061】
結晶化の時間は、鉄含有FER型ゼオライトが十分に結晶化する時間であればよく、また、結晶化に供する原料組成物の量や、結晶化方法により適宜設定すればよい。結晶化時間として、例えば、4時間以上、8時間以上、24時間以上又は48時間以上であり、また、150時間以下、100時間以下又は80時間以下、が挙げられる。実用的な生産性で鉄含有FER型ゼオライトを製造するため、結晶化時間は4時間以上150時間以下、8時間以上100時間以下、又は、24時間以上48時間以下、であることが好ましい。
【0062】
より均一に結晶化が進行するため、結晶化は、原料組成物が撹拌された状態で行うことが好ましい。撹拌は、原料組成物を直接撹拌してもよく、また、原料組成物を含む容器を撹拌してもよい。
【0063】
結晶化の結晶化物(鉄含有FER型ゼオライト)は、任意の方法で回収すればよく、例えば、固液分離、洗浄及び乾燥し、これを回収することが挙げられる。
【0064】
固液分離は、結晶化後の原料組成物を固形分(結晶化物)と、液相とに分離できる方法であればよく、例えば、ろ過、デカンテーション及び遠心分離の群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0065】
洗浄は、回収した結晶化物に含まれる不純物が除去できる方法であればよく、例えば、純水洗浄であればよい。
【0066】
乾燥は、結晶化物に物理吸着した水分を除去しうる方法であればよく、例えば、静置乾燥及び噴霧乾燥の少なくともいずれかが挙げられ、大気雰囲気、100℃以上120℃以下で乾燥すればよい。
【0067】
鉄含有FER型ゼオライト(結晶化後の結晶化物)に含まれるSDAを除去するため、本実施形態の製造方法は、結晶化物から有機構造指向剤を除去する工程(以下、「SDA除去工程」ともいう。)を含んでいてもよい。SDA除去工程において、SDA除去方法は任意であり、酸性水溶液による液相処理、レジンにより交換処理、熱分解処理及び焼成処理の群から選ばれる1つ以上が例示できる。製造効率の観点から、SDA除去工程は熱分解処理及び焼成処理の少なくともいずれかが好ましく、焼成処理がより好ましい。好ましい焼成条件として、以下の条件が例示できる。
焼成雰囲気 : 大気雰囲気
焼成温度 : 400℃以上又は560℃以上、かつ、
700℃以下又は650℃以下
【0068】
焼成時間は、焼成に供する結晶化物や、焼成方法により適宜設定すればよく、例えば、1時間以上10時間以下、2時間以上8時間以下、又は、3時間以上5時間以下が挙げられる。
【0069】
本実施形態の製造方法は、鉄含有FER型ゼオライトのアルカリ金属の含有量を低減するため、鉄含有FER型ゼオライトをイオン交換する工程(以下、「イオン交換工程」ともいう。)を有していてもよい。イオン交換は、アルカリ金属含有量が低減する方法であればよく、例えば、鉄含有FER型ゼオライトを塩化アンモニウム水溶液と混合しイオン交換することが挙げられる。
【0070】
必要に応じ、イオン交換後の鉄含有FER型ゼオライトを焼成してもよい。
【0071】
本実施形態の製造方法は、イオン交換工程に加え、又は、イオン交換工程に代わり、鉄含有FER型ゼオライトと、金属化合物とを混合する工程(以下、「金属担持工程」ともいう。)を有していてもよい。これにより、目的に応じた任意の金属元素を鉄含有FER型ゼオライトに担持することができる。
【0072】
混合方法は、鉄含有FER型ゼオライトに金属化合物が担持されうる方法であればよく、イオン交換法、含浸担持法、蒸発乾固法、沈殿担持法及び物理混合法の群から選ばれる1以上が挙げられる。
【実施例0073】
以下、本開示を実施例により説明する。しかしながら、本開示は以下に制限されるものではない。以下、評価方法を示す。
(結晶の同定)
粉末X線回折装置(装置名:UltimaIV、リガク社製)を使用し、試料のXRD測定をした。測定条件は以下の通りである。
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件 : 40°/分
計測時間 : 3秒
測定範囲 : 2θ=5°から43°
【0074】
(組成分析)
フッ酸と硝酸の混合水溶液に試料を溶解して試料溶液を調製した。ICP装置(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定した。
(鉄分散性の測定)
紫外可視分光測定装置(装置名:紫外可視分光光度計V-770、日本分光社製)を使用し、試料のUV-Visスペクトルを測定した。測定条件は以下の通りである。
積分球ユニット : ISN―923(日本分光社製)
測定モード : 拡散反射法
波長 : 190~700nm
温度 : 室温
スリット幅 : 5nm
バックグラウンド : 硫酸バリウム
得られたUV-Visスペクトルから、一般的な解析ソフトウェア(ソフト名:Fityk 0.9.8)、及び、フィッティング関数にGaussianを使用してフィッティング及び波形分離した後、波長190nm以上300nm未満、波長300nm以上400nm以下、及び、波長400nm超600nm以下、それぞれのピーク面積を求めた後、300nm-600nmスペクトル強度比[%]、190nm-300nmスペクトル強度比(孤立鉄(Fe3+)の存在割合)[%]、300nm-400nmスペクトル強度比(クラスター鉄(Fe)の存在割合)[%]、及び、400nm-600nmスペクトル強度比(酸化鉄粒子(Fe)の存在割合)[%]を求めた。
また、孤立鉄の存在割合と、上記組成分析により求めた鉄含有量から、各鉄種の含有量を以下の式により求めた。
孤立Fe3+含有量[質量%]
= 鉄含有量[質量%]×孤立鉄(Fe3+)の存在割合[%]
= 鉄含有量[質量%]×190nm-300nmスペクトル強度比[%]
クラスター含有量[質量%]
=鉄含有量[質量%]×孤立鉄の存在割合[%]
=鉄含有量[質量%]×300nm-400nmスペクトル強度比[%]
酸化鉄含有量[質量%]
=鉄含有量[質量%]×孤立鉄の存在割合[%]
=鉄含有量[質量%]×400nm-600nmスペクトル強度比[%]
【0075】
実施例1
48質量%水酸化ナトリウム水溶液、48質量%水酸化カリウム水溶液、硝酸鉄(III)九水和物、純水及び非晶質アルミノシリケート(SiO/Al=17.9)を混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
【0076】
SiO/Al =17.9
Fe/SiO =0.016
(Na+K)/SiO =0.280
(Na/SiO=0.163,K/SiO=0.117)
K/(Na+K) =0.418
O/SiO =16
得られた原料組成物に、種晶含有量が2.0質量%となるようにFER型ゼオライト(SiO/Al=18.0)を混合した。混合後の原料組成物を容積80mLの密閉容器内に充填し、これを55rpmで回転しながら、180℃、40時間で水熱処理して、結晶化物を得た。得られた結晶化物を固液分離し、純水で洗浄した後、大気中、110℃で乾燥して回収した。当該結晶化物はFER型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、SiO/Alは18.0であった。
【0077】
得られた結晶化物を大気中、600℃、2時間で焼成した後、60℃で20質量%の塩化アンモニウム水溶液でイオン交換した。イオン交換後の結晶化物を、十分量の純水で洗浄し、大気中、110℃で乾燥することで、本実施例の鉄含有FER型ゼオライトを得た。
【0078】
本実施例の鉄含有FER型ゼオライトは、FER型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、SiO/Alが18.0、アルカリ金属含有量が0.1質量%未満、及び、Fe含有量が1.4質量%であった。また、190nm-300nmスペクトル強度比(孤立鉄の存在割合)は99.8%、300nm-400nmスペクトル強度比(クラスター鉄の存在割合)は0.2%、400nm-600nmスペクトル強度比(酸化鉄粒子の存在割合)は0%、300nm-600nmスペクトル強度比は0.2%であり、孤立Fe3+含有量は1.4質量%であった。また、(200)面のXRDピークのピークトップの2θは9.3であった。
【0079】
実施例2
原料組成物を以下のモル組成としたこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例の鉄含有FER型ゼオライトを得た。
SiO/Al =17.9
Fe/SiO =0.024
(Na+K)/SiO=0.305
Na/SiO=0.177,K/SiO=0.128)
K/(Na+K) =0.420
O/SiO =16
【0080】
本実施例の鉄含有FER型ゼオライトは、FER型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、SiO/Alが18.2、アルカリ金属含有量が0.1質量%未満、及び、Fe含有量が2.0質量%であった。また、(200)面のXRDピークのピークトップの2θは9.3であった。
【0081】
実施例3
原料組成物を以下のモル組成としたこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例の鉄含有FER型ゼオライトを得た。
SiO/Al =17.9
Fe/SiO =0.037
(Na+K)/SiO =0.350
(Na/SiO=0.203,K/SiO=0.147)
K/(Na+K) =0.420
O/SiO =16
【0082】
本実施例の鉄含有FER型ゼオライトは、FER型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、SiO/Alが18.4、アルカリ金属含有量が0.1質量%未満、及び、Fe含有量が3.0質量%であった。また、190nm-300nmスペクトル強度比(孤立鉄の存在割合)は99.7%、300nm-400nmスペクトル強度比(クラスター鉄の存在割合)は0.3%、400nm-600nmスペクトル強度比(酸化鉄粒子の存在割合)は0%、300nm-600nmスペクトル強度比は0.3%であり、孤立Fe3+含有量は3.0質量%であった。また、(200)面のXRDピークのピークトップの2θは9.3であった。
【0083】
比較例1
原料組成物を以下の組成としたこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化、固液分離、洗浄及び乾燥し、結晶化物を得た。
SiO/Al =19.0
(Fe/SiO =0)
(Na+K)/SiO =0.19
(Na/SiO=0.114,K/SiO=0.076)
K/(Na+K) =0.400
O/SiO =16
【0084】
得られた結晶化物はFER型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、SiO/Alは18.7であった。
【0085】
得られた結晶化物を、大気中、600℃、2時間で焼成した。焼成した固体を60℃で20質量%の塩化アンモニウム水溶液(塩化アンモニウム水溶液重量:ゼオライト重量=1.0)と交換した後、大量の水で洗浄して110℃で乾燥した。乾燥した試料中のアルカリ金属含有量は0.1質量%未満であった。次いで、7.0gの乾燥した試料、1.6gの硝酸鉄(III)九水和物、2.4gの純水を乳鉢で混合した。最終的に、均一的に混合した試料を、大気中、110℃、5時間で乾燥した後、500℃、2時間で焼成し、本比較例の鉄含有FER型ゼオライトとした。
【0086】
本比較例の鉄含FER型ゼオライトは、FER型ゼオライトの単一相からなるゼオライトであり、SiO/Alが18.7、アルカリ金属含有量が0.1質量%未満、及び、Fe含有量が3.0質量%であった。また、190nm-300nmスペクトル強度比(孤立鉄の存在割合)は29.6%、300nm-400nmスペクトル強度比(クラスター鉄の存在割合)は23.2%、400nm-600nmスペクトル強度比(酸化鉄粒子の存在割合)は47.2%、300nm-600nmスペクトル強度比は70.4%であり、孤立Fe3+含有量は0.9質量%であった。
【0087】
本比較例の鉄含有FER型ゼオライトは、実施例3の鉄含有FER型ゼオライトと同程度な鉄含有量でありながら、孤立鉄の存在割合が低いこと、そして、実施例1の鉄含有FER型ゼオライトよりも孤立Fe3+含有量が低いことが確認できた。
【0088】
【表1】
【0089】
本実施例により、高価なSDAを必須とすることなく、分散した状態の鉄を含有する鉄含有FER型ゼオライト、すなわち300nm-600nmスペクトル強度比が低い鉄含有FER型ゼオライトが得られることが確認できた。
【0090】
測定例
<水熱耐久処理>
実施例及び比較例で得られた鉄含有FRR型ゼオライトを、それぞれ、成形及び粉砕し、凝集径12~20メッシュの凝集粒子とした。得られた凝集粒子3mLを常圧固定床流通式反応管に充填した後、以下の条件で水分を20体積%含有する空気を流通させることで水熱耐久処理とした。
空気の流通速度 : 300mL/min
処理温度 : 700℃
処理時間 : 20時間
【0091】
<窒素酸化物還元処理>
凝集粒子状の試料1.5mLを常圧固定床流通式反応管に充填し、以下の測定温度で保持して窒素酸化物含有ガスを流通させ、常圧固定床流通式反応管の入口及び出口の窒素酸化物濃度を測定した。窒素酸化物含有ガスの流通条件は以下のとおりである。
【0092】
窒素酸化物含有ガスの組成 : NO 200体積ppm
NH 200体積ppm
10体積%
O 3体積%
残部
窒素酸化物含有ガスの流量 : 1.5L/min
空間速度 : 60,000hr-1
測定温度 : 150℃、200℃、300℃、500℃、5
50℃又は600℃
【0093】
得られた窒素酸化物濃度から以下の式により窒素酸化物還元率を求めた。
窒素酸化物還元率(%)
={([NOx]in-[NOx]out)/[NOx]in}×100
[NOx]inは常圧固定床流通式反応管の入口の窒素酸化物含有ガスの窒素酸化物濃度であり、[NOx]outは常圧固定床流通式反応管の出口の窒素酸化物含有ガスの窒素酸化物濃度である。
【0094】
また、常圧固定床流通式反応管の出口の窒素酸化物含有ガスに含まれるNO量を測定し、NO生成量とみなした。
【0095】
以下、150℃~300℃の窒素酸化物還元処理における、水熱耐久処理前の鉄含有FER型ゼオライトのNOの生成量の評価結果を表2に示し、また、150℃~300℃の窒素酸化物還元処理における、水熱耐久処理後の鉄含有FER型ゼオライトのNOの生成量の評価結果を表3に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
実施例の鉄含有FER型ゼオライトは、150℃~200℃の低温域及び300℃の中温域の窒素酸化物還元処理においてNOの生成が抑制されていることが確認できた。特に、実施例3の鉄含有FER型ゼオライトと比較例1の鉄含有FER型ゼオライトはいずれも、鉄含有量が3質量%である。しかしながら、後担持法で得られた比較例1の鉄含有FER型ゼオライトと比べ、実施例3の鉄含有FER型ゼオライトは、150℃~200℃の低温域及び300℃の中温域の窒素酸化物還元処理においてNOの生成が顕著に抑制されていることが確認できた。
【0098】
【表3】
【0099】
比較例1の鉄含有ゼオライトと比べ、実施例の鉄含有FER型ゼオライトは、水熱耐久処理後であっても、150℃~300℃の低温域の窒素酸化物還元処理においてNOの生成が抑制されていることが確認できた。
【0100】
次に、高温域の窒素酸化物還元処理における、水熱耐久処理前の鉄含有FER型ゼオライトのNOの生成量の評価結果を表4に示し、また、高温域での窒素酸化物還元処理における、水熱耐久処理後の鉄含有FER型ゼオライトのNOの生成量の評価結果を表5に示す。
【0101】
【表4】
【0102】
500℃以上の高温域の窒素酸化物還元処理において、実施例1の鉄含有FER型ゼオライトは、活性成分である鉄のみならず、高温域での活性種とされる鉄クラスターが少ないにも関わらず、実質的にNOの生成が無いことが確認できた。
【0103】
【表5】
【0104】
比較例1の鉄含有ゼオライトと比べ、実施例3の鉄含有FER型ゼオライトは、水熱耐久処理後であっても、500℃以上の高温域の窒素酸化物還元処理においてNOの生成が抑制されていることが確認できた。
【0105】
次に、水熱耐久処理前の窒素酸化物還元率(%)に対する、水熱耐久処理後の窒素酸化物還元率(%)の割合(窒素酸化物還元率の維持率)を示す。
【0106】
【表6】
【0107】
比較例1の鉄含有FER型ゼオライトに対し、実施例の鉄含有FER型ゼオライトは、低温から高温の広い窒素酸化物還元処理の温度範囲において、安定した窒素酸化物還元特性を示すことが確認できた。
【0108】
また、550℃の窒素酸化物還元処理における、水熱耐久処理後の窒素酸化物還元率は、比較例1の鉄含有FER型ゼオライトが75%であるのに対し、実施例1乃至3は、それぞれ、77%、73%及び81%であった。これより、本実施例の鉄含有FER型ゼオライトは、高温域での活性種とされる鉄クラスターを実質的に含まないにもかかわらず、これを含む従来の鉄含有FER型ゼオライトと同等以上の高温域の窒素酸化物還元処理における、水熱耐久処理後の窒素酸化物還元率を示すことが確認できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6