(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163962
(43)【公開日】2024-11-25
(54)【発明の名称】学習済予測モデル生成装置、フェージング予測装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/373 20150101AFI20241118BHJP
H04B 17/391 20150101ALI20241118BHJP
G01W 1/00 20060101ALN20241118BHJP
【FI】
H04B17/373
H04B17/391
G01W1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079738
(22)【出願日】2023-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】青島 星也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 康裕
(72)【発明者】
【氏名】日浦 人誌
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
(57)【要約】
【課題】フェージングによる無線回線の障害を予測する。
【解決手段】学習済予測モデル生成装置1の修正屈折指数算出部10は、設定された無線回線の回線番号において、過去の日の9時及び21時の高層気象データを入力し、修正屈折指数Mを算出する。ラジオダクト規定量算出部11は、修正屈折指数Mに基づいて、過去の日の9時及び21時のラジオダクト規定量RDを算出する。日別障害データ生成部12は、設定された無線回線の回線番号に対応する過去の日の回線障害データを入力し、日別障害データSDを生成する。予測モデル生成部13は、過去の日の当日の9時及び21時のラジオダクト規定量RD、及び翌日の日別障害データSDを用いて、当日の9時及び21時のラジオダクト規定量RDと、翌日の0時から24時までのフェージング発生確率FKとの間の関係を学習し、回線番号の学習済予測モデルを生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェージングによる無線回線の障害の発生を予測するためのモデルを生成する学習済予測モデル生成装置において、
前記無線回線に応じた観測地点における過去の日の所定時刻の高度h、気温、気圧及び湿度を含む高層気象データを入力し、前記高層気象データに基づいて修正屈折指数Mを算出する修正屈折指数算出部と、
前記修正屈折指数算出部により算出された前記修正屈折指数Mと前記高度hとの間の関係を表す特性から、前記高度hの増加に対して前記修正屈折指数Mが減少する領域を逆転層として特定し、前記逆転層における前記修正屈折指数M及び前記高度hにより規定される特徴量をラジオダクト規定量RDとして算出するラジオダクト規定量算出部と、
前記無線回線における過去の日の回線障害の発生時刻及び回復時刻を含む回線障害データを入力し、前記回線障害データに基づいて、日毎に前記回線障害が発生したか否かを示す日別障害データSDを生成する日別障害データ生成部と、
前記ラジオダクト規定量算出部により算出された前記ラジオダクト規定量RD及び前記日別障害データ生成部により生成された前記日別障害データSDを用いて、前記ラジオダクト規定量RDと、前記無線回線において前記フェージングが発生する確率を示すフェージング発生確率FKとの間の関係を学習し、学習済予測モデルを生成する予測モデル生成部と、
を備えたことを特徴とする学習済予測モデル生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の学習済予測モデル生成装置において、
前記ラジオダクト規定量算出部は、
前記高度hの増加に対して前記修正屈折指数Mの減少が開始する箇所を前記逆転層の開始点とし、前記減少が終了する箇所を前記逆転層の終了点とし、前記開始点の前記高度hを逆転層発生高度hdとし、前記逆転層の前記開始点から前記終了点までの間の前記修正屈折指数Mの差の絶対値を逆転層強さΔMとし、前記逆転層の前記開始点から前記終了点までの間の前記高度hの差の絶対値を逆転層厚さΔhとし、前記逆転層の発生回数を逆転層発生回数cntとして、
前記修正屈折指数Mと前記高度hとの間の関係を表す特性から、前記逆転層発生高度hd、前記逆転層強さΔM、前記逆転層厚さΔh及び前記逆転層発生回数cntを前記ラジオダクト規定量RDとして算出する、ことを特徴とする学習済予測モデル生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の学習済予測モデル生成装置において、
前記日別障害データ生成部は、
前記回線障害データに含まれる前記回線障害の発生時刻及び回復時刻から、前記回線障害の発生時間帯を求め、前記回線障害の発生時間帯が当該日の時間期間の一部である場合、当該日には前記回線障害が発生したと判定し、前記回線障害の発生時間帯が当該日の時間期間の一部でない場合、当該日には前記回線障害が発生していないと判定し、前記日別障害データSDを生成する、ことを特徴とする学習済予測モデル生成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の学習済予測モデル生成装置において、
前記予測モデル生成部は、
前記ラジオダクト規定量RDにおける過去の日のデータ及び前記日別障害データSDにおける前記過去の日の次の日のデータを用いて、当日の前記ラジオダクト規定量RDと、翌日の前記フェージング発生確率FKとの間の関係を学習し、前記学習済予測モデルを生成する、ことを特徴とする学習済予測モデル生成装置。
【請求項5】
フェージングによる無線回線の障害の発生を予測するフェージング予測装置において、
前記無線回線に応じた観測地点における所定時刻の高度h、気温、気圧及び湿度を含む高層気象データを入力し、前記高層気象データに基づいて修正屈折指数Mを算出する修正屈折指数算出部と、
前記修正屈折指数算出部により算出された前記修正屈折指数Mと前記高度hとの間の関係を表す特性から、前記高度hの増加に対して前記修正屈折指数Mが減少する領域を逆転層として特定し、前記逆転層における前記修正屈折指数M及び前記高度hにより規定される特徴量をラジオダクト規定量RDとして算出するラジオダクト規定量算出部と、
請求項1から4までのいずれか一項に記載の学習済予測モデル生成装置により生成された前記学習済予測モデルを用いて、前記ラジオダクト規定量算出部により算出された前記ラジオダクト規定量RDから、前記無線回線において前記フェージングが発生する確率を示すフェージング発生確率FKを予測する予測制御部と、
を備えたことを特徴とするフェージング予測装置。
【請求項6】
請求項5に記載のフェージング予測装置において、
前記ラジオダクト規定量算出部は、
前記高度hの増加に対して前記修正屈折指数Mの減少が開始する箇所を前記逆転層の開始点とし、前記減少が終了する箇所を前記逆転層の終了点とし、前記開始点の前記高度hを逆転層発生高度hdとし、前記逆転層の前記開始点から前記終了点までの間の前記修正屈折指数Mの差の絶対値を逆転層強さΔMとし、前記逆転層の前記開始点から前記終了点までの間の前記高度hの差の絶対値を逆転層厚さΔhとし、前記逆転層の発生回数を逆転層発生回数cntとして、
前記修正屈折指数Mと前記高度hとの間の関係を示す特性から、前記逆転層発生高度hd、前記逆転層強さΔM、前記逆転層厚さΔh及び前記逆転層発生回数cntを前記ラジオダクト規定量RDとして算出する、ことを特徴とするフェージング予測装置。
【請求項7】
請求項5に記載のフェージング予測装置において、
前記修正屈折指数算出部は、
前記無線回線に応じた観測地点における本日の前記高層気象データを入力し、本日の前記修正屈折指数Mを算出し、
前記ラジオダクト規定量算出部は、
前記修正屈折指数算出部により算出された本日の前記修正屈折指数Mと前記高度hとの間の関係を示す特性から、前記逆転層の本日の前記修正屈折指数M及び前記高度hにより規定される特徴量を本日の前記ラジオダクト規定量RDとして算出し、
前記予測制御部は、
前記学習済予測モデルを用いて、前記ラジオダクト規定量算出部により算出された本日の前記ラジオダクト規定量RDから、翌日の前記フェージング発生確率FKを予測する、ことを特徴とするフェージング予測装置。
【請求項8】
請求項5から7までのいずれか一項に記載のフェージング予測装置において、
さらに、前記予測制御部により予測された前記フェージング発生確率FKが予め設定された閾値を超える場合、前記無線回線の障害が発生することを示す情報を出力する連絡部、を備えたことを特徴とするフェージング予測装置。
【請求項9】
フェージングによる無線回線の障害の発生を予測するためのモデルを生成する学習済予測モデル生成装置を構成するコンピュータを、
前記無線回線に応じた観測地点における過去の日の所定時刻の高度h、気温、気圧及び湿度を含む高層気象データを入力し、前記高層気象データに基づいて修正屈折指数Mを算出する修正屈折指数算出部、
前記修正屈折指数算出部により算出された前記修正屈折指数Mと前記高度hとの間の関係を表す特性から、前記高度hの増加に対して前記修正屈折指数Mが減少する領域を逆転層として特定し、前記逆転層における前記修正屈折指数M及び前記高度hにより規定される特徴量をラジオダクト規定量RDとして算出するラジオダクト規定量算出部、
前記無線回線における過去の日の回線障害の発生時刻及び回復時刻を含む回線障害データを入力し、前記回線障害データに基づいて、日毎に前記回線障害が発生したか否かを示す日別障害データSDを生成する日別障害データ生成部、及び、
前記ラジオダクト規定量算出部により算出された前記ラジオダクト規定量RD及び前記日別障害データ生成部により生成された前記日別障害データSDを用いて、前記ラジオダクト規定量RDと、前記無線回線において前記フェージングが発生する確率を示すフェージング発生確率FKとの間の関係を学習し、学習済予測モデルを生成する予測モデル生成部として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
フェージングによる無線回線の障害の発生を予測するフェージング予測装置を構成するコンピュータを、
前記無線回線に応じた観測地点における所定時刻の高度h、気温、気圧及び湿度を含む高層気象データを入力し、前記高層気象データに基づいて修正屈折指数Mを算出する修正屈折指数算出部、
前記修正屈折指数算出部により算出された前記修正屈折指数Mと前記高度hとの間の関係を表す特性から、前記高度hの増加に対して前記修正屈折指数Mが減少する領域を逆転層として特定し、前記逆転層における前記修正屈折指数M及び前記高度hにより規定される特徴量をラジオダクト規定量RDとして算出するラジオダクト規定量算出部、及び、
請求項1から4までのいずれか一項に記載の学習済予測モデル生成装置により生成された前記学習済予測モデルを用いて、前記ラジオダクト規定量算出部により算出された前記ラジオダクト規定量RDから、前記無線回線において前記フェージングが発生する確率を示すフェージング発生確率FKを予測する予測制御部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信の技術分野に関するものであり、特に、フェージングによる無線回線の障害を予測するためのモデルを生成する学習済予測モデル生成装置、モデルを用いてフェージングによる無線回線の障害を予測するフェージング予測装置、及びこれらのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、無線通信の中継回線において、降雨減衰、フェージング等により伝送条件が悪化した場合、無線による通信が困難となる。降雨減衰に関しては、周波数が高いほど減衰量が増えるため、地上デジタル放送では、放送波よりも周波数の高い中継局間専用の無線の方が大きな影響が見込まれる。このため、降雨減衰、フェージング等により受信状況が悪化した場合であっても、継続してコンテンツを伝送できるような補償技術が求められる。
【0003】
このような補償技術の例として、通信が困難となった場合に、例えばインターネット網を利用して同一内容のコンテンツを受信することで、継続してコンテンツを視聴可能な手法が提案されている(例えば特許文献1,2,3,4を参照)。
【0004】
これらの補償技術においては、無線回線が完全に受信不可能となってから有線通信によりコンテンツを要求するのではなく、無線回線の受信状況の悪化を事前に予測してコンテンツを要求することにより、安定した伝送を継続することが可能となる。
【0005】
このような安定した伝送を継続する技術の例として、無線回線の受信状況の悪化を事前に予測し、他の経路により同一内容のコンテンツを要求する手法が提案されている(例えば特許文献5を参照)。
【0006】
しかしながら、この特許文献5には、無線回線の受信状況の悪化を事前に予測する装置を用いる点について記載されているが、具体的な予測方法について言及していない。
【0007】
また、移動体が地上放送を受信する場合において、受信が困難な場所に移動体が移動するときの補償については、移動体の位置(緯度及び経度)に関する連続情報から将来の位置を予測し、当該位置に応じて事前にコンテンツを要求する手法が提案されている(例えば特許文献6を参照)。
【0008】
このような移動先を予測する手法は、移動体が放送波を受信する場合の補償について有効であるが、地上放送での固定局間における降雨減衰またはフェージングのような受信状況の悪化を予測する場合に適用することはできない。
【0009】
また、無線回線の受信状況の悪化を事前に予測する手法ではないが、放送波の受信C/Nを計測し、受信C/Nの値に対して受信不可能となる値につき一定のマージンを取ることにより、ある程度事前にコンテンツを要求することを可能とする手法が提案されている(例えば特許文献7を参照)。この手法によれば、適切なマージンを取った閾値を用いることにより、受信状況の悪化を予測することと類似した効果を得ることができる。
【0010】
しかしながら、例えば降雨減衰の場合、地域及び季節によっては突然雨量が増すことがあり、降雨減衰前にコンテンツを要求することができない場合がある。また、マージンを取った閾値として悲観的に値を設定すると、常に有線通信によりコンテンツを要求し続けてしまう等、それぞれの受信状況に合わせた閾値を設定することは困難である。
【0011】
このように、前述の特許文献1~7等の従来技術においては、降雨減衰またはフェージングのような無線回線の時系列的な受信状況の悪化を予測する仕組みについて提案されていない。
【0012】
また、有線通信による補償に限らない無線回線の時系列変化の予測として、例えば衛星放送の降雨減衰を予測する手法が提案されている(例えば特許文献8を参照)。この手法は、観測地点に設けられた雨量計の10分間の計測値の記録、または例えば気象庁の観測地点の10分間の雨量データから、その観測地点における今後の1分間の雨量値を確率的に予測するものである。
【0013】
また、この特許文献8では、降雨減衰により受信状況が悪化する地域については、例えばフェーズドアレイアンテナを利用して電力を増強することにより、受信状況を改善することに言及している。
【0014】
しかしながら、この手法では、地上デジタル放送の降雨減衰またはフェージングについては対応することができない。
【0015】
一方で、気象予測及び気象予報については多くの手法が提案されている。例えば、放送衛星または通信衛星の受信強度を測定し、受信強度から雲の量の気象情報を測定し、その測定結果に基づいて、気象予測を行う手法が提案されている(例えば特許文献9を参照)。
【0016】
しかしながら、この手法は気象を予測することが目的であり、無線回線の受信状況の悪化を予測することを目的としていない。このため、直接的な無線回線の降雨減衰またはフェージングによる受信状況の時系列変化の予測は難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004-40380号公報
【特許文献2】特開2014-220569号公報
【特許文献3】特開2017-199956号公報
【特許文献4】国際公開第2015/048569号公報
【特許文献5】特開2012-138649号公報
【特許文献6】特開2007-259049号公報
【特許文献7】特開2003-134064号公報
【特許文献8】特開2006-246375号公報
【特許文献9】特開2005-318398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前述のとおり、無線回線の受信状況の悪化に対し、事前に通信による補償または別経路による伝送制御を実施し、安定的な伝送の継続を補償するためには、無線回線の受信状況を予測することが必要である。
【0019】
しかしながら、従来の手法は、無線回線における受信状況の時系列変化の予測に対応しておらず、また、例えば前述の衛星放送の降雨減衰の時系列変化を予測する手法であっては、送信装置への適用が前提であり、各受信装置に実装して受信状況の変化を予測することは難しい。さらに、従来の手法では、無線回線の時系列的な受信状況の悪化を予測する仕組みについて提案されていない。
【0020】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、フェージングによる無線回線の障害を予測可能な学習済予測モデル生成装置、フェージング予測装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記課題を解決するために、請求項1の学習済予測モデル生成装置は、フェージングによる無線回線の障害の発生を予測するためのモデルを生成する学習済予測モデル生成装置において、前記無線回線に応じた観測地点における過去の日の所定時刻の高度h、気温、気圧及び湿度を含む高層気象データを入力し、前記高層気象データに基づいて修正屈折指数Mを算出する修正屈折指数算出部と、前記修正屈折指数算出部により算出された前記修正屈折指数Mと前記高度hとの間の関係を表す特性から、前記高度hの増加に対して前記修正屈折指数Mが減少する領域を逆転層として特定し、前記逆転層における前記修正屈折指数M及び前記高度hにより規定される特徴量をラジオダクト規定量RDとして算出するラジオダクト規定量算出部と、前記無線回線における過去の日の回線障害の発生時刻及び回復時刻を含む回線障害データを入力し、前記回線障害データに基づいて、日毎に前記回線障害が発生したか否かを示す日別障害データSDを生成する日別障害データ生成部と、前記ラジオダクト規定量算出部により算出された前記ラジオダクト規定量RD及び前記日別障害データ生成部により生成された前記日別障害データSDを用いて、前記ラジオダクト規定量RDと、前記無線回線において前記フェージングが発生する確率を示すフェージング発生確率FKとの間の関係を学習し、学習済予測モデルを生成する予測モデル生成部と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
また、請求項2の学習済予測モデル生成装置は、請求項1に記載の学習済予測モデル生成装置において、前記ラジオダクト規定量算出部が、前記高度hの増加に対して前記修正屈折指数Mの減少が開始する箇所を前記逆転層の開始点とし、前記減少が終了する箇所を前記逆転層の終了点とし、前記開始点の前記高度hを逆転層発生高度hdとし、前記逆転層の前記開始点から前記終了点までの間の前記修正屈折指数Mの差の絶対値を逆転層強さΔMとし、前記逆転層の前記開始点から前記終了点までの間の前記高度hの差の絶対値を逆転層厚さΔhとし、前記逆転層の発生回数を逆転層発生回数cntとして、前記修正屈折指数Mと前記高度hとの間の関係を表す特性から、前記逆転層発生高度hd、前記逆転層強さΔM、前記逆転層厚さΔh及び前記逆転層発生回数cntを前記ラジオダクト規定量RDとして算出する、ことを特徴とする。
【0023】
また、請求項3の学習済予測モデル生成装置は、請求項1に記載の学習済予測モデル生成装置において、前記日別障害データ生成部が、前記回線障害データに含まれる前記回線障害の発生時刻及び回復時刻から、前記回線障害の発生時間帯を求め、前記回線障害の発生時間帯が当該日の時間期間の一部である場合、当該日には前記回線障害が発生したと判定し、前記回線障害の発生時間帯が当該日の時間期間の一部でない場合、当該日には前記回線障害が発生していないと判定し、前記日別障害データSDを生成する、ことを特徴とする。
【0024】
また、請求項4の学習済予測モデル生成装置は、請求項1に記載の学習済予測モデル生成装置において、前記予測モデル生成部が、前記ラジオダクト規定量RDにおける過去の日のデータ及び前記日別障害データSDにおける前記過去の日の次の日のデータを用いて、当日の前記ラジオダクト規定量RDと、翌日の前記フェージング発生確率FKとの間の関係を学習し、前記学習済予測モデルを生成する、ことを特徴とする。
【0025】
さらに、請求項5のフェージング予測装置は、フェージングによる無線回線の障害の発生を予測するフェージング予測装置において、前記無線回線に応じた観測地点における所定時刻の高度h、気温、気圧及び湿度を含む高層気象データを入力し、前記高層気象データに基づいて修正屈折指数Mを算出する修正屈折指数算出部と、前記修正屈折指数算出部により算出された前記修正屈折指数Mと前記高度hとの間の関係を表す特性から、前記高度hの増加に対して前記修正屈折指数Mが減少する領域を逆転層として特定し、前記逆転層における前記修正屈折指数M及び前記高度hにより規定される特徴量をラジオダクト規定量RDとして算出するラジオダクト規定量算出部と、請求項1から4までのいずれか一項に記載の学習済予測モデル生成装置により生成された前記学習済予測モデルを用いて、前記ラジオダクト規定量算出部により算出された前記ラジオダクト規定量RDから、前記無線回線において前記フェージングが発生する確率を示すフェージング発生確率FKを予測する予測制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
また、請求項6のフェージング予測装置は、請求項5に記載のフェージング予測装置において、前記ラジオダクト規定量算出部が、前記高度hの増加に対して前記修正屈折指数Mの減少が開始する箇所を前記逆転層の開始点とし、前記減少が終了する箇所を前記逆転層の終了点とし、前記開始点の前記高度hを逆転層発生高度hdとし、前記逆転層の前記開始点から前記終了点までの間の前記修正屈折指数Mの差の絶対値を逆転層強さΔMとし、前記逆転層の前記開始点から前記終了点までの間の前記高度hの差の絶対値を逆転層厚さΔhとし、前記逆転層の発生回数を逆転層発生回数cntとして、前記修正屈折指数Mと前記高度hとの間の関係を示す特性から、前記逆転層発生高度hd、前記逆転層強さΔM、前記逆転層厚さΔh及び前記逆転層発生回数cntを前記ラジオダクト規定量RDとして算出する、ことを特徴とする。
【0027】
また、請求項7のフェージング予測装置は、請求項5に記載のフェージング予測装置において、前記修正屈折指数算出部が、前記無線回線に応じた観測地点における本日の前記高層気象データを入力し、本日の前記修正屈折指数Mを算出し、前記ラジオダクト規定量算出部が、前記修正屈折指数算出部により算出された本日の前記修正屈折指数Mと前記高度hとの間の関係を示す特性から、前記逆転層の本日の前記修正屈折指数M及び前記高度hにより規定される特徴量を本日の前記ラジオダクト規定量RDとして算出し、前記予測制御部が、前記学習済予測モデルを用いて、前記ラジオダクト規定量算出部により算出された本日の前記ラジオダクト規定量RDから、翌日の前記フェージング発生確率FKを予測する、ことを特徴とする。
【0028】
また、請求項8のフェージング予測装置は、請求項5から7までのいずれか一項に記載のフェージング予測装置において、さらに、前記予測制御部により予測された前記フェージング発生確率FKが予め設定された閾値を超える場合、前記無線回線の障害が発生することを示す情報を出力する連絡部、を備えたことを特徴とする。
【0029】
さらに、請求項9のプログラムは、フェージングによる無線回線の障害の発生を予測するためのモデルを生成する学習済予測モデル生成装置を構成するコンピュータを、前記無線回線に応じた観測地点における過去の日の所定時刻の高度h、気温、気圧及び湿度を含む高層気象データを入力し、前記高層気象データに基づいて修正屈折指数Mを算出する修正屈折指数算出部、前記修正屈折指数算出部により算出された前記修正屈折指数Mと前記高度hとの間の関係を表す特性から、前記高度hの増加に対して前記修正屈折指数Mが減少する領域を逆転層として特定し、前記逆転層における前記修正屈折指数M及び前記高度hにより規定される特徴量をラジオダクト規定量RDとして算出するラジオダクト規定量算出部、前記無線回線における過去の日の回線障害の発生時刻及び回復時刻を含む回線障害データを入力し、前記回線障害データに基づいて、日毎に前記回線障害が発生したか否かを示す日別障害データSDを生成する日別障害データ生成部、及び、前記ラジオダクト規定量算出部により算出された前記ラジオダクト規定量RD及び前記日別障害データ生成部により生成された前記日別障害データSDを用いて、前記ラジオダクト規定量RDと、前記無線回線において前記フェージングが発生する確率を示すフェージング発生確率FKとの間の関係を学習し、学習済予測モデルを生成する予測モデル生成部として機能させることを特徴とする。
【0030】
また、請求項10のプログラムは、フェージングによる無線回線の障害の発生を予測するフェージング予測装置を構成するコンピュータを、前記無線回線に応じた観測地点における所定時刻の高度h、気温、気圧及び湿度を含む高層気象データを入力し、前記高層気象データに基づいて修正屈折指数Mを算出する修正屈折指数算出部、前記修正屈折指数算出部により算出された前記修正屈折指数Mと前記高度hとの間の関係を表す特性から、前記高度hの増加に対して前記修正屈折指数Mが減少する領域を逆転層として特定し、前記逆転層における前記修正屈折指数M及び前記高度hにより規定される特徴量をラジオダクト規定量RDとして算出するラジオダクト規定量算出部、及び、請求項1から4までのいずれか一項に記載の学習済予測モデル生成装置により生成された前記学習済予測モデルを用いて、前記ラジオダクト規定量算出部により算出された前記ラジオダクト規定量RDから、前記無線回線において前記フェージングが発生する確率を示すフェージング発生確率FKを予測する予測制御部として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明によれば、フェージングによる無線回線の障害を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態による学習済予測モデル生成装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】学習済予測モデル生成装置の処理例を示すフローチャートである。
【
図4】日別障害データ生成部の処理例を示すフローチャートである。
【
図5】予測モデル生成部の学習処理例を説明する図である。
【
図6】記憶部に格納されたデータの構成例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態によるフェージング予測装置の構成例を示すブロック図である。
【
図8】フェージング予測装置の処理例を示すフローチャートである。
【
図9】予測制御部の予測処理例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、過去の高層気象データからラジオダクト規定量を算出し、過去の回線障害データから日別障害データを生成し、ラジオダクト規定量及び日別障害データを用いて、ラジオダクト規定量とフェージング発生確率との間の関係を学習し、学習済予測モデルを生成することを特徴とする。
【0034】
また、本発明は、高層気象データからラジオダクト規定量を算出し、学習済予測モデルを用いて、ラジオダクト規定量からフェージング発生確率を予測することを特徴とする。
【0035】
これにより、当日の高層気象データから翌日のフェージング確率を得ることができるため、フェージングによる無線回線の障害を予測することができる。そして、予測結果を用いることで、事前に通信による補償または別経路による伝送制御を実施し、安定した伝送を継続することができる。
【0036】
〔学習済予測モデル生成装置〕
まず、本発明の実施形態による学習済予測モデル生成装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態による学習済予測モデル生成装置の構成例を示すブロック図であり、
図2は、学習済予測モデル生成装置の処理例を示すフローチャートである。
【0037】
この学習済予測モデル生成装置1は、無線回線の回線番号毎に、回線番号に対応する観測地点における過去の日の高層気象データを入力すると共に、回線番号に対応する過去の日の回線障害データを入力する。
【0038】
学習済予測モデル生成装置1は、高層気象データに基づいて修正屈折指数Mを算出し、修正屈折指数Mに基づいてラジオダクト規定量RDを算出する。また、学習済予測モデル生成装置1は、回線障害データに基づいて日別障害データSDを生成する。
【0039】
学習済予測モデル生成装置1は、ラジオダクト規定量RD及び日別障害データSDを用いて、ラジオダクト規定量RDからフェージング発生確率FKを予測するための学習済予測モデルを生成する。
【0040】
これにより、回線番号毎に学習済予測モデルが生成され、また、回線番号毎に、後述する観測地点情報(回線番号の学習済予測モデルを生成された際の観測地点候補(単数または複数の観測地点)からなる情報)が生成される。
【0041】
より詳細には、学習済予測モデル生成装置1は、回線番号毎に、当該回線番号に対応する、複数の観測地点候補(単数または複数の観測地点を1組として、複数の組からなる観測地点候補)を設定する。
【0042】
例えば無線回線が岩手県にある場合、第1の観測地点候補を「秋田」とし、第2の観測地点候補を「舘野」とし、第3の観測地点候補を「秋田」及び「舘野」とする。つまり、生成したい回線番号の学習済予測モデルに対応した複数の観測地点候補として、第1の観測地点候補(「秋田」)、第2の観測地点候補(「舘野」)及び第3の観測地点候補(「秋田」及び「舘野」)が設定される。
【0043】
学習済予測モデル生成装置1は、当該回線番号の学習済予測モデルを生成する際に、複数の観測地点候補のそれぞれについて学習済予測モデルを生成し、複数の観測地点候補の学習済予測モデルのうち、精度の高い最適な1つ観測地点候補の学習済予測モデルを、当該回線番号の学習済予測モデルとして選択する。
【0044】
前述の例では、第1の観測地点候補(「秋田」)の学習済予測モデル、第2の観測地点候補(「舘野」)の学習済予測モデル、及び第3の観測地点候補(「秋田」及び「舘野」)の学習済予測モデルが生成され、これらの3つの学習済予測モデルのうち最適な1つが、当該回線番号の学習済予測モデルとして選択される。
【0045】
以下の実施形態では、過去のN日(当日)における9時及び21時の高層気象データ、及び、過去のN+1日(翌日)における0時から24時(N+2日(翌々日)の0時)まで(0~24時)の回線障害データから生成された日別障害データSDを用いて、学習済予測モデルを生成する例について説明する。つまり、学習済予測モデルは、過去における当日の9時及び21時の高層気象データ、及び翌日の日別障害データSDを用いて生成される。
【0046】
この学習済予測モデル生成装置1は、修正屈折指数算出部10、ラジオダクト規定量算出部11、日別障害データ生成部12、予測モデル生成部13及び記憶部14を備えている。
【0047】
学習済予測モデル生成装置1は、無線回線毎(回線番号毎)の学習済予測モデルを生成する際に、無線回線の回線番号を設定し、回線番号に対応する複数の観測地点候補を設定する(ステップS201)。
【0048】
無線回線は、送信局と受信局との間の固定の回線である。回線番号は、個々の無線回線に応じて予め設定されており、回線番号に対応する複数の観測地点候補も予め設定されているものとする。例えば岩手県にある無線回線について、その回線番号が予め設定されている。また、当該無線回線についての複数の観測地点候補についても、当該無線回線における観測地点間の距離に基づいて、前述のとおり、第1の観測地点候補(「秋田」)、第2の観測地点候補(「舘野」)及び第3の観測地点候補(「秋田」及び「舘野」)が予め設定されている。
【0049】
つまり、学習済予測モデル生成装置1は、例えば岩手県にある無線回線の学習済予測モデルを生成する場合、予め設定された無線番号に対応した予め設定された複数の観測地点候補(第1の観測地点候補(「秋田」)、第2の観測地点候補(「舘野」)及び第3の観測地点候補(「秋田」及び「舘野」))について、以下の処理を行う。
【0050】
修正屈折指数算出部10及び日別障害データ生成部12は、設定された無線回線に応じた複数の観測地点候補のうち、1つの観測地点候補を選択する(ステップS202)。そして、以下のステップS203~S208の処理が行われることにより、当該無線回線において、選択された観測地点候補の学習済予測モデルが生成される。
【0051】
(修正屈折指数算出部10/高層気象データ、修正屈折指数M)
修正屈折指数算出部10は、選択された1つの観測地点候補が示す単数または複数の観測地点に対応する、過去の日における9時及び21時の高層気象データを入力する(ステップS203)。
【0052】
高層気象データは、地上高層実況気象報(国内)バイナリデータの高度、気温、気圧、湿度、風向、風速等からなり、全国に16地点(稚内、札幌、釧路、秋田、輪島、館野等)における高分解能地上高層実況気象報である。気象庁は、全国16地点の気象官署において、毎日決まった時刻(日本標準時の9時及び21時)に気球を飛ばして、鉛直方向に地上高30kmまでの上空の状態について高層気象観測を行っている。そして、気象庁は、観測したデータに過去データから予測した予測値を補完し、高層気象データとして提供している。
【0053】
高層気象データの詳細については、以下のサイトを参照されたい。
“オンライン資料/電文形式/データ一覧”、[online]、一般財団法人気象業務支援センター、[令和5年4月24日検索]、インターネット<URL:http://www.jmbsc.or.jp/jp/online/denbun/D_datalist.pdf>
“ラジオゾンデによる高層気象観測”、[online]、気象庁、[令和5年4月24日検索]、インターネット<URL:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/upper/kaisetsu.html>
【0054】
修正屈折指数算出部10は、過去の日における9時及び21時の高層気象データに基づいて、過去の日における9時及び21時の修正屈折指数Mを算出する(ステップS204)。そして、修正屈折指数算出部10は、観測地点候補が示す単数または複数の観測地点のそれぞれについて、過去の日の9時及び21時の修正屈折指数M(高度(地上高)hに対する修正屈折指数M)をラジオダクト規定量算出部11に出力する。
【0055】
具体的には、修正屈折指数算出部10は、高層気象データに含まれる高度h[m]、気温T[K]、気圧P[Pa]及び相対湿度RH[%]、並びに予め設定された地球半径Rearth[m](=6.3781×106)に基づいて、以下の式により修正屈折指数M[NU]を算出する。屈折指数N[NU]は、後述のとおり、気温T[K]、気圧P[Pa]及び相対湿度RH[%]に基づいて算出される。
[数1]
M=N+(h/Rearth)×106 ・・・(1)
【0056】
屈折指数Nは、以下の式により算出される。
[数2]
N=(77.6/T)×(P+4180×(WVP/T)) ・・・(2)
【0057】
WVPは水蒸気圧[hPa]であり、以下の式により算出される。
[数3]
WVP=sWVP×(RH/100) ・・・(3)
【0058】
sWVPは飽和水蒸気圧[hPa]であり、以下の式により算出される。
[数4]
sWVP=6.112×e17.67t/(t+243.5) ・・・(4)
【0059】
tは気温[C]であり、気温T[K]との関係を定義する以下の式により算出される。
[数5]
T=t+273.15 ・・・(5)
【0060】
(ラジオダクト規定量算出部11/ラジオダクト規定量RD)
ラジオダクト規定量算出部11は、修正屈折指数算出部10から、観測地点候補が示す単数または複数の観測地点のそれぞれについて、過去の日の9時及び21時の修正屈折指数M(高度hに対する修正屈折指数M)を入力する。
【0061】
ラジオダクト規定量算出部11は、高度hに対する修正屈折指数Mに基づいて、逆転層を特定し、過去の日の9時及び21時のラジオダクト規定量RDを算出する(ステップS205)。
【0062】
ラジオダクト規定量算出部11は、観測地点候補が示す単数または複数の観測地点のそれぞれについて、過去の日の9時及び21時のラジオダクト規定量RDを予測モデル生成部13に出力する。
【0063】
図3は、ラジオダクト規定量RDを説明する図である。
図3において、横軸は修正屈折指数M[NU]を示し、縦軸は高度(地上高)h[m]を示す。この図には、ラジオダクト規定量算出部11が入力する高度hに対する修正屈折指数M、すなわち修正屈折指数Mと高度hとの間の関係を表す特性(前記式(1)で表される特性)が示されている。
【0064】
地上デジタル放送における電波伝搬は、主に対流圏内で行われる。通常、対流圏内では、高度hの上昇に従って大気の屈折率は増加するが、気象条件によっては大気の屈折率が減少に転じる場合がある。この大気の層を、電波屈折率の逆転層という。つまり、逆転層は、
図3において、高度hに対して修正屈折指数Mが減少する領域である。
【0065】
図3に示すように、逆転層では、高度hの増加に従って修正屈折指数Mが減少し、ラジオダクトが形成され、電波は、ラジオダクト内において反射と屈折を繰り返し、異常伝搬が発生する。
【0066】
逆転層が発生すると、電波が通常届かない場所まで届くフェージングが発生する。この逆転層の発生により生じる電波の伝送路をラジオダクトという。
図3に示すように、この逆転層の修正屈折指数M及び高度hにより規定される特徴量をラジオダクト規定量RDとして定義する。
【0067】
ここでは、ラジオダクト規定量RDは、最低高度の逆転層における逆転層発生高度hd、逆転層強さΔM及び逆転層厚さΔh、並びに逆転層発生回数cntからなるものとする。
【0068】
図3を参照して、高度hの増加に対して修正屈折指数Mの減少が開始する箇所を逆転層の開始点とし、修正屈折指数Mの減少が終了する箇所を逆転層の終了点とする。そうすると、逆転層発生高度hdは、開始点における高度hであり、逆転層強さΔMは、開始点から終了点までの間の修正屈折指数Mの差の絶対値であり、逆転層厚さΔhは、開始点から終了点までの間の高度hの差の絶対値である。また、逆転層発生回数cntは、修正屈折指数Mと高度hとの間の関係を示す特性において、逆転層が発生する回数である。
【0069】
尚、ラジオダクト規定量RDは、逆転層強さΔMが最大の逆転層における逆転層発生高度hd等として定義してもよく、逆転層厚さΔhが最大の逆転層における逆転層発生高度hd等として定義してもよく、また、全ての逆転層の総和の逆転層発生高度hd等として定義してもよい。
【0070】
(日別障害データ生成部12、回線障害データ、日別障害データSD)
日別障害データ生成部12は、ステップS201の処理により設定された無線回線に対応する、過去の日の回線障害データを入力する(ステップS206)。
【0071】
日別障害データ生成部12は、回線障害データに基づいて、過去の日の日毎に、回線障害が発生したか否かを示す二値(1または0)の日別障害データSDを生成し(ステップS207)、過去の日の日別障害データSDを予測モデル生成部13に出力する。
【0072】
回線障害データは、例えば放送局が所有する中継局監視装置のログ情報であり、無線回線の中継局に整備された各放送機器からの機器異常、切替動作等が検知された記録データからなる。回線障害データには、例えばBER異常、MER異常、入力異常、変調器異常等の回線障害について、それぞれの発生時刻及び回復時刻が含まれる。
【0073】
図4は、日別障害データ生成部12の処理例を示すフローチャートである。日別障害データ生成部12は、1からXXまでの間の日付(day)を順番に選択し(ステップS401-1,S401-2)、全て日付(day)のそれぞれについて、後述するステップS402~S403-2の処理を繰り返す。
【0074】
日別障害データ生成部12は、ステップS401-1から移行して、日別障害データSD(fading_flag[day])を初期化(=0)する(ステップS402)。
【0075】
日別障害データ生成部12は、1からYYまでの間の障害データ(data)(例えばBER異常等)を順番に入力し(ステップS403-1,S403-2)、後述するステップS404にて障害が発生していないと判定する限り、全ての障害データ(data)について処理を繰り返す。
【0076】
日別障害データ生成部12は、ステップS403-1から移行して、障害データ(data)に基づいて、障害が発生したか否かを判定する(ステップS404)。日別障害データ生成部12は、ステップS404において、障害が発生したと判定した場合(ステップS404:Y)、日別障害データSDを障害有り(fading_flag[day]=1)に設定し、ステップS401-1へ移行する。これにより、次の日付(day)について処理が行われる。
【0077】
一方、日別障害データ生成部12は、ステップS404において、障害が発生していないと判定した場合(ステップS404:N)、ステップS403-2からステップS403-1へ移行し、次の障害データ(data)を入力する。
【0078】
次に、回線障害データに含まれるBER異常のみから日別障害データSDが生成される例について説明する。
【0079】
日別障害データ生成部12は、入力した回線障害データからBER異常の記録データを抽出し、BER異常の発生時刻及び回復時刻から、BER異常の発生時間帯を求める。そして、日別障害データ生成部12は、過去の日について、BER異常の発生時間帯が当該日の時間期間の一部である場合、当該日にはBER異常が発生したと判定する。一方、日別障害データ生成部12は、BER異常の発生時間帯が当該日の時間期間の一部でない場合、当該日にはBER異常が発生していないと判定する。
【0080】
日別障害データ生成部12は、BER異常が発生した日について、「1」の日別障害データSDを生成し、BER異常が発生していない日について、「0」の日別障害データSDを生成する。
【0081】
つまり、日別障害データ生成部12は、回線障害データに含まれるBER異常の発生時間帯を日単位で分割し、各日において1度でもBER異常が発生した場合、障害有りを示す「1」の日別障害データSDを生成する。また、日別障害データ生成部12は、各日において1度もBER異常が発生していない場合、障害無しを示す「0」の日別障害データSDを生成する。
【0082】
尚、日別障害データ生成部12は、BER異常以外の回線異常、またはBER異常及び他の回線異常に基づいて、日別障害データSDを生成するようにしてもよい。
【0083】
(予測モデル生成部13)
予測モデル生成部13は、ラジオダクト規定量算出部11から、観測地点候補が示す単数または複数の観測地点のそれぞれについて、過去の日の9時及び21時のラジオダクト規定量RDを入力すると共に、日別障害データ生成部12から、過去の日の日別障害データSDを入力する。
【0084】
予測モデル生成部13は、観測地点候補が示す単数または複数の観測地点のそれぞれについての(観測地点毎の)過去の日(当日)の9時及び21時のラジオダクト規定量RD、及び過去の日の次の日(翌日)の日別障害データSDを用いて、当日の9時及び21時のラジオダクト規定量RDと、当該無線回線において翌日の0時から24時までにフェージングが発生する確率を示すフェージング発生確率FKとの間の関係を学習し、当該観測地点候補の学習済予測モデルを生成する(ステップS208)。
【0085】
図5は、予測モデル生成部13の学習処理例を説明する図である。
図5に示すように、観測地点候補における観測地点毎の当日の9時及び21時のラジオダクト規定量RDが入力データとしてモデルに入力され、モデルから、翌日の0時から24時までのフェージング発生確率FKが出力データとして出力される。そして、更新部により、翌日の日別障害データSD(0または1)と、モデルから出力された翌日の0時から24時までのフェージング発生確率FKとが一致するように、パラメータが更新され、更新後のパラメータがモデルに設定される。
【0086】
このような処理が、当日のラジオダクト規定量RD及び翌日のラジオダクト規定量RDを単位として、複数の日について行われ、設定された回線番号において、選択された1つの観測地点候補の学習済予測モデルが生成される。
【0087】
図1及び
図2に戻って、学習済予測モデル生成装置1は、ステップS201において設定した回線番号において、全ての観測地点候補の処理が完了したか否か、すなわち、全ての観測地点候補の学習済予測モデルが生成されたか否かを判定する(ステップS209)。
【0088】
学習済予測モデル生成装置1は、ステップS209において、全ての観測地点候補の処理が完了していないと判定した場合(ステップS209:N)、ステップS202へ移行し、次の観測地点候補を選択する等のステップS202~S208の処理を行う。
【0089】
一方、学習済予測モデル生成装置1は、ステップS209において、全ての観測地点候補の処理が完了したと判定した場合(ステップS209:Y)、ステップS210へ移行する。
【0090】
これにより、ステップS201にて設定された回線番号に対応する全ての観測地点候補のそれぞれについて、学習済予測モデルが生成されたことになる。
【0091】
予測モデル生成部13は、当該回線番号に対応する全ての観測地点候補の学習済予測モデルのうち、精度の高い最適な1つの観測地点候補の学習済予測モデルを選択する。
【0092】
具体的には、学習済予測モデル生成装置1は、高層気象データ及び回線障害データの学習データを用いて生成された学習済予測モデルに対し、高層気象データ及び回線障害データのテストデータ(学習データ以外のデータ)を用いて、当該学習済予測モデルの精度を求める。
【0093】
つまり、学習済予測モデル生成装置1は、学習済予測モデルに対応する観測地点候補につき、修正屈折指数算出部10及びラジオダクト規定量算出部11において、他の過去の日(学習済予測モデルを生成する際に用いた過去の日以外の日)の高層気象データを用いてラジオダクト規定量RDを算出すると共に、日別障害データ生成部12において、他の過去の日の次の日の回線障害データから日別障害データSDを生成する。
【0094】
そして、学習済予測モデル生成装置1は、予測モデル生成部13において、ラジオダクト規定量RDを学習済予測モデルに入力し、学習済予測モデルの出力データであるフェージング発生確率FKと日別障害データSDとの間の差を求める。そして、学習済予測モデル生成装置1は、当該差に基づいて、フェージング捕捉率(予測的中日数/発生日数)及び発生予測的中率(予測的中日数/予測日数)を算出する。
【0095】
学習済予測モデル生成装置1は、予測モデル生成部13において、全ての観測地点候補の学習済予測モデルのうち、フェージング捕捉率及び発生予測的中率を統合した確率が最も高い観測地点候補の学習済予測モデルを特定することで、これを精度の高い最適な学習済予測モデルとして選択する。
【0096】
予測モデル生成部13は、最適な学習済予測モデルを選択した後、この学習済予測モデル(のパラメータ)を当該回線番号の学習済予測モデル(のパラメータ)として記憶部14に格納すると共に、当該学習済予測モデルに対応する観測地点候補(単数または複数の観測地点)の情報を観測地点情報として記憶部14に格納する(ステップS210)。
【0097】
例えばステップS201の処理により、前述の例と同様に、複数の観測地点候補として、第1の観測地点候補「秋田」、第2の観測地点候補「舘野」、第3の観測地点候補「秋田」及び「舘野」が設定されたとする。
【0098】
予測モデル生成部13は、第1の観測地点候補「秋田」の学習済予測モデル、第2の観測地点候補「舘野」の学習済予測モデル、及び第3の観測地点候補「秋田」及び「舘野」の学習済予測モデルのうち、最適な1つの学習済予測モデルとして、例えば第1の観測地点候補「秋田」の学習済予測モデルを選択する。そして、予測モデル生成部13は、第1の観測地点候補「秋田」の学習済予測モデルを当該回線番号の学習済予測モデルとして記憶部14に格納すると共に、観測地点情報として「秋田」を記憶部14に格納する。
【0099】
図6は、記憶部14に格納されたデータの構成例を示す図である。記憶部14には、回線番号、学習済予測モデル(のパラメータ)及び観測地点情報を組として、回線番号を単位とした複数の組のデータが格納される。
【0100】
図1及び
図2に戻って、学習済予測モデル生成装置1は、ステップS210から移行して、全ての回線番号の処理が完了したか否か、すなわち全ての回線番号の学習済予測モデルが生成されたか否かを判定する(ステップS211)。
【0101】
学習済予測モデル生成装置1は、ステップS211において、全ての回線番号の処理が完了していないと判定した場合(ステップS211:N)、ステップS201へ移行し、次の無線回線の回線番号を設定する等のステップS201~S210の処理を行う。
【0102】
一方、学習済予測モデル生成装置1は、ステップS211において、全ての回線番号の処理が完了したと判定した場合(ステップS211:Y)、当該処理を終了する。
【0103】
これにより、ステップS201にて設定された全ての回線番号の学習済予測モデルが生成され、記憶部14に格納され、また、当該学習済予測モデルに対応する観測地点情報も記憶部14に格納されることとなる。
【0104】
このように、過去の高層気象データから算出された当日のラジオダクト規定量RDと、過去の回線障害データから生成された翌日の日別障害データSDとを用いて、学習済予測モデルが生成される。そして、後述するフェージング予測装置2が、この学習済予測モデルを用いることで、当日のラジオダクト規定量RDから、翌日のフェージング発生確率FKを予測することができる。
【0105】
例えば、日別障害データSDにて障害有りと判定された前日のラジオダクト規定量RDに含まれる逆転層発生高度hdが500m付近であり、400mに近づくに連れて障害有りの発生頻度が高いものとする。また、日別障害データSDにて障害無しと判定された前日の逆転層発生高度hdが1000m付近または逆転層が観測されなかったものとする。学習済予測モデル生成装置1は、このような逆転層発生高度hdを含むラジオダクト規定量RDと、日別障害データSDに応じて、翌日のフェージング発生確率FKを予測するための学習済予測モデルを生成することができる。
【0106】
ただし、この例では、前日のラジオダクト規定量RDに含まれる逆転層発生高度hdが500m付近を下回り400mに近づくに連れて、フェージング発生確率FKが高くなる学習済予測モデルを例としたものであり、予測したい無線回線の位置、使用する高層気象データの位置によって異なる学習済予測モデルが生成されることとなる。
【0107】
このように、学習済予測モデルは予測したい無線回線に応じて生成する必要があるため、無線回線の回線番号毎に学習済予測モデルが生成される。
【0108】
以上のように、本発明の実施形態の学習済予測モデル生成装置1によれば、修正屈折指数算出部10は、設定された無線回線の回線番号において、当該回線番号に対応する複数の観測地点候補のうちの1つの観測地点候補につき、当該観測地点候補が示す単数または複数の観測地点のそれぞれについて、過去の日の9時及び21時の高層気象データを入力し、修正屈折指数M(高度hに対する修正屈折指数M)を算出する。
【0109】
ラジオダクト規定量算出部11は、観測地点候補が示す単数または複数の観測地点のそれぞれについて、過去の日の9時及び21時の修正屈折指数Mに基づいて、過去の日の9時及び21時のラジオダクト規定量RDを算出する。
【0110】
日別障害データ生成部12は、設定された無線回線の回線番号に対応する過去の日の回線障害データを入力し、日別障害データSDを生成する。
【0111】
予測モデル生成部13は、観測地点候補が示す単数または複数の観測地点のそれぞれについての過去の日の当日の9時及び21時のラジオダクト規定量RD、及び翌日の日別障害データSDを用いて、当日の9時及び21時のラジオダクト規定量RDと、翌日の0時から24時までのフェージング発生確率FKとの間の関係を学習し、当該観測地点候補の学習済予測モデルを生成する。
【0112】
予測モデル生成部13は、回線番号に対応する複数の観測地点候補のそれぞれについて学習済予測モデルを生成した後、複数の観測地点候補の学習済予測モデルのうち、最適な観測地点候補の学習済予測モデルを選択し、これを当該回線番号の学習済予測モデルとする。
【0113】
このような処理が回線番号毎に繰り返されることで、全ての回線番号のそれぞれについて、学習済予測モデルが生成される。
【0114】
これにより、後述するフェージング予測装置2は、フェージングを予測したい予測対象の回線番号について、当日の高層気象データに基づいて修正屈折指数Mを算出し、修正屈折指数Mに基づいてラジオダクト規定量RDを算出し、学習済予測モデル生成装置1により生成された当該回線番号の学習済予測モデルを用いて、当日のラジオダクト規定量RDから翌日のフェージング発生確率FKを予測することができる。
【0115】
したがって、当日の高層気象データから翌日のフェージング発生確率FKを得ることができるため、フェージングによる無線回線の障害を予測することができる。そして、予測結果を用いることで、事前に通信による補償または別経路による伝送制御を実施し、安定した伝送を継続することができる。
【0116】
〔フェージング予測装置〕
次に、本発明の実施形態によるフェージング予測装置について説明する。
図7は、本発明の実施形態によるフェージング予測装置の構成例を示すブロック図であり、
図8は、フェージング予測装置の処理例を示すフローチャートである。
【0117】
このフェージング予測装置2は、フェージングによる無線回線の障害発生を予測する装置である。フェージング予測装置2は、フェージングを予測したい無線回線の回線番号について、学習済予測モデル生成装置1により生成された当該回線番号の学習済予測モデルに対応する観測地点情報の観測地点における当日の高層気象データを入力する。
【0118】
フェージング予測装置2は、高層気象データに基づいて修正屈折指数Mを算出し、修正屈折指数Mに基づいてラジオダクト規定量RDを算出する。そして、フェージング予測装置2は、学習済予測モデル生成装置1により生成された当該回線番号の学習済予測モデルを用いて、当日のラジオダクト規定量RDから翌日のフェージング発生確率FKを予測する。
【0119】
以下の実施形態では、N日(当日)における9時及び21時の高層気象データを用いて、N+1日(翌日)の0時から24時(N+2日(翌々日)の0時)までのフェージング発生確率FKを予測する例について説明する。例えば、翌日のフェージング発生確率FKは、本日の9時及び21時の高層気象データを用いて予測される。
【0120】
このフェージング予測装置2は、記憶部20、修正屈折指数算出部21、ラジオダクト規定量算出部22、予測制御部23及び連絡部24を備えている。記憶部20には、
図1に示した学習済予測モデル生成装置1により生成され記憶部14に格納された、回線番号毎の学習済予測モデル及び観測地点情報と同じデータが格納されている。
【0121】
フェージング予測装置2は、フェージングを予測したい予測対象の無線回線の回線番号を入力する(ステップS801)。修正屈折指数算出部21は、記憶部20から、当該回線番号に対応する観測地点情報を読み出す(ステップS802)。
【0122】
修正屈折指数算出部21は、観測地点情報が示す単数または複数の観測地点に対応する、当日(例えば本日)の9時及び21時の高層気象データを入力する(ステップS803)。この高層気象データとしては、
図1に示した学習済予測モデル生成装置1により最適な学習済予測モデルが生成された際に利用した高層気象データと同じデータが用いられる。
【0123】
修正屈折指数算出部21は、
図2に示したステップS204と同様に、当日の9時及び21時の高層気象データに基づいて、当日の9時及び21時の修正屈折指数Mを算出する(ステップS804)。
【0124】
修正屈折指数算出部21は、観測地点情報が示す単数または複数の観測地点のそれぞれについて、当日の9時及び21時の修正屈折指数Mをラジオダクト規定量算出部22に出力する。
【0125】
ラジオダクト規定量算出部22は、修正屈折指数算出部21から、観測地点情報が示す単数または複数の観測地点のそれぞれについて、当日の9時及び21時の修正屈折指数M(高度hに対する修正屈折指数M)を入力する。
【0126】
ラジオダクト規定量算出部22は、
図2に示したステップS205と同様に、高度hに対する修正屈折指数Mに基づいて逆転層を特定し、当日の9時及び21時のラジオダクト規定量RDを算出する(ステップS805)。
【0127】
ラジオダクト規定量算出部22は、観測地点情報が示す単数または複数の観測地点のそれぞれについて、当日の9時及び21時のラジオダクト規定量RDを予測制御部23に出力する。
【0128】
(予測制御部23)
予測制御部23は、ラジオダクト規定量算出部22から、観測地点情報が示す単数または複数の観測地点のそれぞれについて、当日の9時及び21時のラジオダクト規定量RDを入力する。また、予測制御部23は、記憶部20から、ステップS801にて入力された回線番号に対応する学習済予測モデルを読み出す(ステップS806)。
【0129】
予測制御部23は、学習済予測モデルを用いて、観測地点情報が示す単数または複数の観測地点のそれぞれについての(観測地点毎の)当日の9時及び21時のラジオダクト規定量RDから、翌日の0時から24時までのフェージング発生確率FKを予測する(ステップS807)。予測制御部23は、翌日の0時から24時までのフェージング発生確率FKを連絡部24に出力する。
【0130】
図9は、予測制御部23の予測処理例を説明する図である。
図9に示すように、学習済予測モデルを用いて、観測地点情報における観測地点毎の当日の9時及び21時のラジオダクト規定量RDから、翌日の0時から24時までのフェージング発生確率FKが予測される。
【0131】
(連絡部24)
図7及び
図8に戻って、連絡部24は、予測制御部23から、翌日の0時から24時までのフェージング発生確率FKを入力する。そして、連絡部24は、フェージング発生確率FKが予め設定された閾値を超えるか否かを判定する(ステップS808)。
【0132】
連絡部24は、ステップS808において、フェージング発生確率FKが閾値を超えると判定した場合(ステップS808:Y)、当該回線番号について、翌日にフェージングによる無線回線の障害が発生することを示す回線障害発生情報を外部へ出力する(ステップS809)。例えば、回線障害発生情報は、電子ディスプレイへ出力されることで画面表示される。また、回線障害発生情報は、メール等にて携帯端末等へ出力される。これにより、回線障害発生情報をユーザに通知することができる。
【0133】
一方、連絡部24は、ステップS808において、フェージング発生確率FKが閾値を超えないと判定した場合(ステップS808:N)、回線障害発生情報の外部への出力は行わず、ステップS801にて入力された回線番号についての処理を終了する。
【0134】
以上のように、本発明の実施形態のフェージング予測装置2によれば、修正屈折指数算出部21は、予測対象の無線回線の回線番号において、学習済予測モデル生成装置1により生成された当該回線番号の学習済予測モデルに対応する観測地点情報が示す単数または複数の観測地点のそれぞれについて、当日の9時及び21時の高層気象データを入力し、修正屈折指数Mを算出する。
【0135】
ラジオダクト規定量算出部22は、観測地点情報が示す単数または複数の観測地点のそれぞれについて、修正屈折指数Mに基づいてラジオダクト規定量RDを算出する。
【0136】
予測制御部23は、学習済予測モデル生成装置1により生成された当該回線番号の学習済予測モデルを用いて、観測地点情報が示す単数または複数の観測地点のそれぞれについての当日の9時及び21時のラジオダクト規定量RDから、翌日の0時から24時までのフェージング発生確率FKを予測する。
【0137】
連絡部24は、フェージング発生確率FKが閾値よりも大きい場合、当該回線番号についての回線障害発生情報を外部へ出力する。
【0138】
これにより、当日の高層気象データから翌日のフェージング発生確率FKを得ることができるため、フェージングによる無線回線の障害を予測することができる。そして、予測結果を用いることで、事前に通信による補償または別経路による伝送制御を実施し、安定した伝送を継続することができる。
【0139】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0140】
例えば前記実施形態において、フェージング予測装置2は、N日(当日)における9時及び21時の高層気象データを用いて、N+1日(翌日)の0時から24時までのフェージング発生確率FKを予測するようにした。
【0141】
この場合、フェージング予測装置2は、本日の9時及び21時の高層気象データを用いて、翌日の0時から24時までのフェージング発生確率FKを予測するようにしてもよい。また、フェージング予測装置2は、前日における9時及び21時の高層気象データを用いて、本日の0時から24時までのフェージング発生確率FKを予測するようにしてもよい。
【0142】
また、前記実施形態において、学習済予測モデル生成装置1及びフェージング予測装置2は、高層気象データ、修正屈折指数M及びラジオダクト規定量RDについて、当日の9時及び21時のデータを対象とし、日別障害データSDについて翌日のデータを対象とし、フェージング発生確率FKについて翌日の0時から24時までを対象とするようにした。これに対し、後述する第1の変形例のように、日を跨ぐ時刻のデータを対象とするようにしてもよい。
【0143】
〔第1の変形例〕
この第1の変形例は、前記実施形態にて対象とする時間帯を12時間ずらして、学習及び予測を行うものである。具体的には、高層気象データ、修正屈折指数M及びラジオダクト規定量RDについて、当日の21時及び翌日の9時のデータを対象とし、日別障害データSDについて翌日の12時から翌々日の12時までを対象とし、フェージング発生確率FKについて翌日の12時から翌々日の12時までを対象とする。
【0144】
第1の変形例における学習済予測モデル生成装置1は、過去のN日(当日)における21時及びN+1日(翌日)における9時の高層気象データ、及び、過去のN+1日(翌日)における12時からN+2日(翌々日)における12時までの回線障害データから生成された日別障害データSDを用いて、当日の21時及び翌日の9時のラジオダクト規定量RDを入力データとし、翌日の12時から翌々日の12時までのフェージング発生確率FKを出力データとする学習済予測モデルを生成する。
【0145】
また、第1の変形例におけるフェージング予測装置2は、当日(例えば前日)の21時及び翌日(本日)の9時の高層気象データに基づいて、当日の21時及び翌日の9時の修正屈折指数Mを算出し、当日の21時及び翌日の9時のラジオダクト規定量RDを算出する。そして、フェージング予測装置2は、学習済予測モデルを用いて、当日の21時及び翌日の9時のラジオダクト規定量RDから、翌日の12時から翌々日の12時までのフェージング発生確率FKを予測する。
【0146】
〔第2の変形例〕
また、前記実施形態において、学習済予測モデル生成装置1は、ラジオダクト規定量RD及び日別障害データSDを用いて、ラジオダクト規定量RDとフェージング発生確率FKとの間の関係を学習し、学習済予測モデルを生成するようにした。また、フェージング予測装置2は、学習済予測モデルを用いて、ラジオダクト規定量RDからフェージング発生確率FKを予測するようにした。
【0147】
第2の変形例は、ラジオダクト規定量RDに加え、修正屈折指数Mの(高度hに対する)傾き、等価的地球半径、対流不安定度、CAPE(Convective Available Potential Energy:対流有効位置エネルギー)及び最小湿数の各種のデータのうち、1以上のデータを用いるものである。
【0148】
第2の変形例における学習済予測モデル生成装置1は、ラジオダクト規定量RDに加え、修正屈折指数Mの傾き、等価的地球半径、対流不安定度、CAPE及び最小湿数の各種のデータのうちの1以上のデータ、並びに日別障害データSDを用いて、ラジオダクト規定量RD等とフェージング発生確率FKとの間の関係を学習し、学習済予測モデルを生成する。
【0149】
また、第2の変形例におけるフェージング予測装置2は、第2の変形例における学習済予測モデル生成装置1により生成された学習済予測モデルを用いて、ラジオダクト規定量RDに加え、修正屈折指数Mの傾き、等価的地球半径、対流不安定度、CAPE及び最小湿数の各種のデータのうちの1以上のデータから、フェージング発生確率FKを予測する。
【0150】
尚、本発明の実施形態による学習済予測モデル生成装置1及びフェージング予測装置2のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。学習済予測モデル生成装置1及びフェージング予測装置2は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。
【0151】
学習済予測モデル生成装置1に備えた修正屈折指数算出部10、ラジオダクト規定量算出部11、日別障害データ生成部12、予測モデル生成部13及び記憶部14の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0152】
また、フェージング予測装置2に備えた記憶部20、修正屈折指数算出部21、ラジオダクト規定量算出部22、予測制御部23及び連絡部24の各機能も、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0153】
これらのプログラムは、前記記憶媒体に格納されており、CPUに読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。
【符号の説明】
【0154】
1 学習済予測モデル生成装置
2 フェージング予測装置
10,21 修正屈折指数算出部
11,22 ラジオダクト規定量算出部
12 日別障害データ生成部
13 予測モデル生成部
14,20 記憶部
23 予測制御部
24 連絡部
M 修正屈折指数
h 高度(地上高)
SD 日別障害データ
RD ラジオダクト規定量
hd 逆転層発生高度
ΔM 逆転層強さ
Δh 逆転層厚さ
cnt 逆転層発生回数
FK フェージング発生確率