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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163966
(43)【公開日】2024-11-25
(54)【発明の名称】ペットシート及びペット用トイレ
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
A01K1/015 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024076491
(22)【出願日】2024-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100183081
【弁理士】
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 大志
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】梨子木 真実
(72)【発明者】
【氏名】湊 大尚
(72)【発明者】
【氏名】岩田 真依
【テーマコード(参考)】
2B101
【Fターム(参考)】
2B101AA13
2B101CC17
2B101GB01
(57)【要約】
【課題】ペットシートの透水性を確保しつつ排泄物処理シートに対するペットシートのずれを抑制する。
【解決手段】
一態様に係るペットシートは、ペット用の排泄物処理シート上に重ねて使用される。このペットシートは、使用時に排泄物処理シートの表面に接する裏面を有する透水性の裏面シートを備え、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレン(PE)を含む繊度2.2dtexのフルダル繊維によって構成される対象不織布と、乾燥状態の裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.48以上である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペット用の排泄物処理シート上に重ねて使用されるペットシートであって、
使用時に前記排泄物処理シートの表面に接する裏面を有する透水性の裏面シートを備え、
ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレン(PE)を含む繊度2.2dtexのフルダル繊維によって構成される乾燥状態の対象不織布と、前記裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.48以上である、
ペットシート。
【請求項2】
前記裏面シートは、不織布によって構成されている、請求項1に記載のペットシート。
【請求項3】
湿潤状態の前記対象不織布と前記裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.55以上である、請求項1に記載のペットシート。
【請求項4】
湿潤状態の前記対象不織布と前記裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.69以上である、請求項1に記載のペットシート。
【請求項5】
前記裏面シートは、親水性繊維を含む、請求項1に記載のペットシート。
【請求項6】
前記裏面シートは、前記親水性繊維としてセルロース繊維を含む、請求項5に記載のペットシート。
【請求項7】
前記裏面シートの全光線透過率が81%以下である、請求項1に記載のペットシート。
【請求項8】
JIS L 1096:2010に規定される45°カンチレバー法に準拠して測定した前記裏面シートの剛軟度が80mm以上である、請求項1に記載のペットシート。
【請求項9】
前記裏面シートは、エンボス加工が施された圧搾部を有する、請求項1に記載のペットシート。
【請求項10】
前記裏面シートの前記裏面の表面粗さの平均偏差(SMD)は、3.3μm以上である、請求項1に記載のペットシート。
【請求項11】
前記裏面シートの繊維の端部は、前記裏面の粗さ曲線の平均線よりも前記裏面側に配置されている、請求項1に記載のペットシート。
【請求項12】
前記ペットシートを複数の部分に分割するための分割予定線を有する、請求項1に記載のペットシート。
【請求項13】
ロール状に巻かれた、請求項1に記載のペットシート。
【請求項14】
前記裏面シートの厚み方向に垂直な第1方向における前記ペットシートの幅、及び、前記厚み方向及び前記第1方向に垂直な第2方向における前記ペットシートの幅が30cm以下である、請求項1に記載のペットシート。
【請求項15】
前記裏面に配置され、前記排泄物処理シートの表面に係合する係合部を更に備える、請求項1に記載のペットシート。
【請求項16】
前記係合部は、粘着性を有する粘着面と前記粘着面を覆う離型シートとを含む、請求項15に記載のペットシート。
【請求項17】
透水性を有する表面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置された吸収体とを備える、請求項1に記載のペットシート。
【請求項18】
厚み方向から見て前記吸収体に重なる領域の全光線透過率が60%以下である、請求項17に記載のペットシート。
【請求項19】
ペット用の排泄物処理シート上に重ねて使用されるペットシートであって、
使用時に前記排泄物処理シートの表面に接する裏面を有する透水性の裏面シートを備え、
前記ペットシートと同一構造を有する乾燥状態の別のペットシートの裏面シートと、前記ペットシートの前記裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.52以上である、
ペットシート。
【請求項20】
湿潤状態の前記別のペットシートの前記裏面シートと、前記ペットシートの前記裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.47以上である、請求項19に記載のペットシート。
【請求項21】
透水性の表面シートと、非透水性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置された吸収体とを含む排泄物処理シートと、
前記排泄物処理シート上に配置されたペットシートと、
を備え、
前記ペットシートは、前記排泄物処理シートの前記表面シートに接する裏面を有する透水性の裏面シート含み、
前記排泄物処理シートの前記表面シートと、乾燥状態の前記ペットシートの前記裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.48以上である、
ペット用トイレ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ペットシート及びペット用トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、透水性の表面シートと、非透水性の裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置された吸収体とを備え、ペット用の排泄物処理シートに形成された尿跡を覆うように排泄物処理シートに重ねて使用されるペットシートが記載されている。この裏面シートには、ペットシートと排泄物処理シートとのずれを防止するために、接着面が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2023/022196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のペットシートの裏面シートに代えて、透水性の裏面シートを使用することが考えられる。裏面シートを透水性にすることにより、ペットシートで吸収しきれなかった排泄物は排泄物処理シートで吸収されるので、排泄物処理シートの保水力を余すことなく利用することができる。この場合に、裏面シートの接着面の面積が過大であると、裏面シートの透水性が低下する。一方で、接着面の面積を小さくすると、裏面シートの透水性は向上するものの、排泄物処理シート上で排泄するためにペットシート上にペットが乗ったときに、排泄物処理シートに対して裏面シートが滑ってペットシートがずれることがある。排泄物処理シートに対してペットシートがずれると、ペットが排泄物処理シート上で安定した姿勢をとることが難しくなり、排泄に支障をきたすことがある。
【0005】
そこで本開示は、ペットシートの透水性を確保しつつ排泄物処理シートに対するペットシートのずれを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係るペットシートは、ペット用の排泄物処理シート上に重ねて使用される。このペットシートは、使用時に排泄物処理シートの表面に接する裏面を有する透水性の裏面シートを備え、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレン(PE)を含む繊度2.2dtexのフルダル繊維によって構成される対象不織布と、乾燥状態の裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.48以上である。
【0007】
上記態様に係るペットシートは、高い静止摩擦係数を有する透水性の裏面シートを備えているので、ペットシートを排泄物処理シート上に重ねて使用するときに、ペットシートが排泄物処理シートに対して滑りにくくなる。よって、ペットシートの透水性を確保しつつ、排泄物処理シートに対するペットシートのずれを抑制することができる。
【0008】
裏面シートは、不織布によって構成されていてもよい。裏面シートとして不織布を用いることにより、高い静止摩擦係数を実現することができる。
【0009】
湿潤状態の対象不織布と裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.55以上であってもよい。この場合には、裏面シートは、排泄物によって濡れた排泄物処理シートに対して高い静止摩擦係数を有するので、濡れた排泄物処理シートに対するペットシートのずれを抑制することができる。したがって、ペットが排泄物処理シート上で繰り返し排泄するときに、ペットの脚が滑ることを防止することができる。
【0010】
湿潤状態の対象不織布と裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.69以上であってもよい。この場合には、排泄物処理シートに対するペットシートのずれを確実に抑制することができる。
【0011】
裏面シートは、親水性繊維を含んでいてもよい。なお、裏面シートは、親水性繊維としてセルロース繊維を含んでいてもよい。裏面シートが親水性繊維を含むことにより、ペットの尿によって排泄物処理シートが濡れたときに、水素結合によってペットシートの裏面シートが排泄物処理シートに結合される。したがって、排泄物処理シートに対するペットシートのずれを抑制することができる。
【0012】
裏面シートの全光線透過率が81%以下であってもよい。ペットは、排泄跡(尿跡)を避けて排泄する傾向がある。このため、ペットが尿跡を避けようとして無理な姿勢で排尿する結果、排泄物処理シートの外部に排尿して、飼育空間を汚すことがある。これに対し、裏面シートの全光線透過率が81%以下である場合には、ペットシートを排泄物処理シートに形成された尿跡に重ねて配置したときに、尿跡を視覚的に隠すことができる。したがって、ペットが尿跡を避けて排泄物処理シートの外部に排尿することを防止することができる。
【0013】
JIS L 1096:2010に規定される45°カンチレバー法に準拠して測定した裏面シートの剛軟度が80mm以上であってもよい。裏面シートが高い剛軟度を有することにより、ペットシートに皺が発生することを抑制することができる。
【0014】
裏面シートは、エンボス加工が施された圧搾部を有していてもよい。裏面シートにエンボス加工が施されることにより、裏面シートと排泄物処理シートとの接触面積が増加するので、裏面シートと排泄物処理シートとの間の静止摩擦係数を高めることができる。
【0015】
裏面シートの裏面の表面粗さの平均偏差(SMD)は、3.3μm以上であってもよい。裏面シートの裏面のSMDを大きくすることにより、排泄物処理シートと裏面シートとの接触面積が増加し、裏面シートと排泄物処理シートとの間の静止摩擦係数を高めることができる。
【0016】
裏面シートの繊維の端部は、裏面の粗さ曲線の平均線よりも裏面側に配置されていてもよい。この場合には、ペットシートを排泄物処理シート上に載置したときに、裏面シートの繊維の端部が排泄物処理シートの繊維に絡みつき、ペットシートが排泄物処理シートに係合される。その結果、排泄物処理シートに対するペットシートのずれを効果的に抑制することができる。
【0017】
ペットシートは、当該ペットシートを複数の部分に分割するための分割予定線を有していてもよい。この場合には、排泄物処理シートに形成された尿跡のサイズに応じてペットシートを分割して使用することができる。
【0018】
ペットシートは、ロール状に巻かれていてもよい。この場合には、排泄物処理シートに形成された尿跡のサイズに応じてロール状のペットシートを切断して使用することができる。
【0019】
裏面シートの厚み方向に垂直な第1方向におけるペットシートの幅、及び、厚み方向及び第1方向に垂直な第2方向におけるペットシートの幅が30cm以下であってもよい。ペットシートのサイズを小さくすることにより、排泄物処理シートの尿跡が形成された領域を局所的に覆うことができる。
【0020】
ペットシートは、裏面に配置され、排泄物処理シートの表面に係合する係合部を更に備えていてもよい。この場合には、係合部によってペットシートが排泄物処理シートの表面に係合されるので、排泄物処理シートに対するペットシートのずれを効果的に抑制することができる。
【0021】
係合部は、粘着性を有する粘着面と粘着面を覆う離型シートとを含んでいてもよい。この場合には、使用時に離型シートを剥がして粘着面を露出させることにより、ペットシートを排泄物処理シートに接着することができる。
【0022】
ペットシートは、透水性を有する表面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置された吸収体とを備えていてもよい。この場合には、吸収体によってペットの尿を吸収することができるので、排泄物処理シートの保水力を補うことができる。
【0023】
厚み方向から見て吸収体に重なる領域の全光線透過率が60%以下であってもよい。この場合には、排泄物処理シート上の尿跡がペットシートを通して見えることが防止される。よって、尿跡を視覚的に隠すことができる。
【0024】
別の態様に係るペットシートは、ペット用の排泄物処理シート上に重ねて使用される。このペットシートは、使用時に排泄物処理シートの表面に接する裏面を有する透水性の裏面シートを備え、ペットシートと同一構造を有する乾燥状態の別のペットシートの裏面シートと、ペットシートの裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.52以上である。
【0025】
上記態様に係るペットシートは、高い静止摩擦係数を有する透水性の裏面シートを備えているので、ペットシートを排泄物処理シート上に重ねて使用するときに、ペットシートが排泄物処理シートに対して滑りにくくなる。よって、透水性を確保しつつ、排泄物処理シートに対するペットシートのずれを抑制することができる。
【0026】
湿潤状態の別のペットシートの裏面シートと、ペットシートの裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.47以上であってもよい。この場合には、濡れた排泄物処理シートに対するペットシートのずれを抑制することができる。
【0027】
一態様に係るペット用トイレは、透水性の表面シートと、非透水性の裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置された吸収体とを含む排泄物処理シートと、排泄物処理シート上に配置されたペットシートと、を備え、ペットシートは、排泄物処理シートの表面シートに接する裏面を有する透水性の裏面シート含み、排泄物処理シートの表面シートと、乾燥状態のペットシートの裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.48以上である。
【0028】
上記態様に係るペット用トイレでは、排泄物処理シートに対するペットシートのずれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の種々の態様によれば、ペットシートの透水性を確保しつつ排泄物処理シートに対するペットシートのずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】一実施形態に係るペットシートの斜視図である。
図2】ペット用トイレの使用例を示す図である。
図3】ペット用トイレの斜視図である。
図4】排泄物処理シートの概略的な断面図である。
図5】ペットシートを裏面シート側から見た平面図である。
図6図5のA-A線に沿ったペットシートの概略的な断面図である。
図7】透水性試験の結果を示す図である。
図8】対象不織布に対するサンプルの摩擦係数の測定結果を示す図である。
図9】同一のサンプル同士の摩擦係数の測定結果を示す図である。
図10】サンプルの全光線透過率、剛軟度及び表面粗さの平均偏差の測定結果を示す図である。
図11】裏面シートの概略的な断面図である。
図12】ペットシートの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。図面は、理解の容易化のために一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率は図面に記載のものに限定されない。
【0032】
図1は、一実施形態に係るペットシート1を示す斜視図である。ペットシート1は、ペット用の排泄物処理シート(以下「処理シート」という。)2に重ねて使用される。
【0033】
本明細書において、ペットは、脊椎動物や無脊椎動物を広く包含し、典型的には、犬、猫、ウサギ、ハムスター等の愛玩動物を含む。ペットには、鳥類、爬虫類、両生類等の哺乳類以外の動物が含まれる。ペットの排泄物としては、典型的には尿が挙げられるが、低粘度の糞、唾液、血液等の吸収体で吸収可能な体液が含まれる。以下の説明では、排泄物としてペットの尿を吸収する例について説明する。
【0034】
図2及び図3を参照して、ペットシート1を含むペット用トイレ100の使用例について説明する。図3に示すように、ペット用トイレ100は、ペットシート1及び処理シート2を備えている。処理シート2は、ペットの飼育空間(例えば、室内)に配置され、ペットの排泄物を吸収及び保持して、飼育空間を清潔に保つために使用される。すなわち、処理シート2は、ペットの排泄スペースを提供する。処理シート2は、飼育空間の床面又は地面に直接載置されてもよいし、トレイ上に載置されてもよい。
【0035】
図4は、処理シート2の概略的な断面図である。図4に示すように、処理シート2は、表面シート21、裏面シート22及び吸収体23を備えている。表面シート21は、使用時にペットが乗る表面を提供している。典型的には、表面シート21は、透水性を有する不織布によって構成され、ペットから排泄された尿を吸収体23側へ移動させる。表面シート21を構成する不織布としては、エアースルー不織布、スパンボンド不織布又はポイントボンド不織布等が例示される。表面シート21は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレン(PE)を含み、繊度2.2dtexのフルダル繊維によって構成された不織布である。
【0036】
裏面シート22は、非透水性であり、処理シート2の厚み方向において表面シート21の反対側に配置されている。典型的には、裏面シート22は、非透水性の樹脂フィルムによって構成されている。裏面シート22を構成する樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムが使用される。なお、裏面シート22は、撥水性又は疎水性を有する不織布によって構成されていてもよいし、樹脂フィルム及び不織布を貼り合わせた積層体であってもよい。
【0037】
吸収体23は、表面シート21と裏面シート22との間に配置され、表面シート21を通過した尿を吸収する。吸収体23は、パルプ及び吸水性ポリマー(SAP:Superabsorbent Polymer)を含む吸収性コア24と、当該吸収性コアの表面を覆うコアラップ25とを含む。吸収性コア24のパルプとしては、例えば、化学パルプ、セルロース繊維、レーヨン、アセテート等のセルロース繊維が利用される。SAPとしては、例えばデンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状又は繊維状のポリマーが利用される。コアラップ25は、吸収性コア24の表面の少なくとも一部を覆うように吸収性コア24に巻き付けられている。
【0038】
図2に示すように、ペットが処理シート2上に乗って排泄をすると、処理シート2には尿跡(排泄跡)が形成される。ペットは、処理シート2上の尿跡を避けて排泄する傾向がある。このため、ペットが尿跡を避けようとして無理な姿勢で排尿する結果、処理シート2の外部に排尿して、飼育空間を汚すことがある。かかる問題を回避するために、処理シート2の使用者(例えば、ペットの飼い主)は、使用可能な領域(新たな尿を吸収可能な領域)があるにも関わらず、処理シート2を新品に交換する場合がある。しかしながら、使用可能な処理シート2を交換することは、経済性の観点だけなく、環境保護の観点からも適切ではない。
【0039】
上記の問題を解消するために、図3に示すように、ペットシート1は、処理シート2の排泄物Uが吸収された領域(例えば尿跡)に重ねて使用される。処理シート2を尿跡に重ねて配置することにより尿跡を視覚的に隠すことができるため、ペットが尿跡を避けて処理シート2の外部に排尿することを防止することができる。その結果、処理シート2を繰り返し、長期間使用することが可能となり、経済性及び環境保護の観点において改善が図られる。
【0040】
次に、ペットシート1について説明する。図1は、例示的なペットシート1の斜視図である。図5は、ペットシート1を後述する裏面シート42側から見た平面図である。図6は、図5のA-A線に沿ったペットシート1の概略的な断面図である。
【0041】
図1に示すように、ペットシート1は、矩形状の平面形状を有する本体部10を備えている。なお、本体部10の平面形状は、矩形状に限定されず、多角形、円形、楕円等の任意の形状を採用し得る。本体部10のサイズは、ペットシート1を使用するペットのサイズ又は種類等に応じて決定される。典型的には、平面視におけるペットシート1の面積は、処理シート2の面積よりも小さい。例えば、ペットシート1の縦方向におけるペットシート1の幅、及びペットシート1の横方向におけるペットシート1の幅は、30cm以下、25cm以下、又は、20cm以下であってもよい。また、平面視におけるペットシート1の面積は、900cm以下、625cm以下、又は、400cm以下であってもよい。
【0042】
本体部10は、透水性を有する表面シート41と、表面シートの反対側の裏面シート42と、表面シート41と裏面シート42との間に配置された吸収体43とを有している。表面シート41は、使用時にペット側(上方)に向けられる表面41aを有する。典型的には、表面シート41は、透水性の不織布によって構成され、ペットから排泄された尿を吸収体43側へ移動させる。表面シート41を構成する不織布としては、エアースルー不織布、スパンボンド不織布又はポイントボンド不織布等が例示される。
【0043】
裏面シート42は、Z方向において表面シート41とは反対側に配置され、透水性を有している。裏面シート42は、表面シート41と実質的に同じ寸法を有し、Z方向から見て表面シート41と完全に重なるように配置されている。例えば、裏面シート42の縦方向(第1方向)の幅、及び、裏面シート42の横方向(第2方向)の幅は、それぞれ30cm以下である。裏面シート42は、使用時に処理シート2の表面シート21に接する裏面42aを提供する。裏面シート42は、吸収体43で吸収されなかった尿を処理シート2側に透過させる。
【0044】
一実施形態では、裏面シート42は、透水性の不織布によって構成されている。裏面シート42は、セルロース繊維等の親水性繊維を含んでいてもよい。セルロース繊維としては、レーヨン繊維が例示される。なお、裏面シート42には、界面活性剤等の親水化剤が塗布され、親水化処理が施されていてもよい。裏面シート42が親水性繊維を含み、又は、親水化処理されることにより、裏面シート42への尿の残留が抑制される。
【0045】
なお、裏面シート42は、透水性の樹脂フィルムによって構成されていてもよい。例えば、裏面シート42は、当該裏面シート42を厚み方向に貫通する多数の開孔を有する樹脂フィルムによって構成されていてもよい。典型的には、樹脂フィルムの材料としては、ポリエチレン又はポリプロピレンが用いられる。裏面シート42の開孔率は、例えば、15%以上、40%以下であってもよい。裏面シート42の開孔率とは、裏面シート42の面積に占める多数の開孔の開口面積の合計を意味する。
【0046】
吸収体43は、表面シート41と裏面シート42との間に配置され、ペットの尿を吸収する。吸収体43は、略矩形状の平面形状を有する。図5に示すように、吸収体43は、表面シート41及び裏面シート42よりも一回り小さな寸法を有し、本体部10の中央に配置されている。これにより、本体部10には、表面シート41と裏面シート42との間に吸収体43が配置された吸収部10aと、表面シート41と裏面シート42との間に吸収体43が配置されないフラップ部10bとが形成される。典型的には、フラップ部10bは、吸収体43を介さずに表面シート41と裏面シート42とが貼り合わせた矩形枠状の領域であり、吸収部10aを囲むように形成されている。すなわち、フラップ部10bは、ペットシート1の外縁に沿って形成されている。
【0047】
フラップ部10bの剛性は、吸収体43が存在しない分、吸収部10aの剛性よりも低い。すなわち、フラップ部10bは、薄く、柔らかくなっているため、手で摘まみやすくなっている。
【0048】
図6に示すように、吸収体43は、吸収性コア44及びコアラップ45を含んでいる。吸収性コア44は、パルプ及び吸水性ポリマー(SAP:Superabsorbent Polymer)を含み、吸水性を有している。吸収性コア44のパルプとしては、例えば、化学パルプ、セルロース繊維、レーヨン、アセテート等のセルロース繊維が利用される。SAPとしては、例えばデンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状又は繊維状のポリマーが利用される。コアラップ45は、吸収性コア44の外面を覆っている。吸収性コア44が高い柔軟性を有するパルプを含むことにより、ペットシート1の凹凸を抑制することができる。これにより、ペットがペットシート1上に乗ったときに、ペットに与える違和感を抑制することが可能となり、ペットがペットシート1の使用を嫌がることが防止される。なお、吸収性コア44は、パルプ及びSAPの少なくとも一方を含んでいればよい。例えば、吸収性コア44は、パルプのみによって構成されていてもよいし、SAPのみによって構成されていてもよい。
【0049】
図5及び図6に示すように、裏面シート42の裏面42aには、処理シート2に結合可能な係合部46が設けられている。係合部46は、粘着面47aを有する粘着層47と粘着面47aを覆う離型シート48とを含んでいる。離型シート48を剥離すると、粘着層47の粘着面47aが露出する。粘着面47aは、粘着性を有し、処理シート2の表面シート21に係合する。図5に示す実施形態では、4つの矩形状の係合部46が裏面42aの角部(四隅)に設けられている。これら4つの係合部46は、各係合部46の外縁部が裏面シート42の外縁から離間するように配置されている。
【0050】
上記のように、ペットシート1を処理シート2上に配置したときに、裏面シート42が処理シート2の表面シート21に接触するように係合部46は、裏面42aの一部のみに設けられていてもよい。例えば、粘着面47aの面積は、裏面シート42の裏面42aの面積の50%以下、30%以下、20%以下、又は、10%以下以下であってもよい。なお、図5に示すように、ペットシート1が複数の係合部46を備える場合には、粘着面47aの面積とは、複数の粘着面47aの面積の合計を意味する。粘着面47aは透水性が低いため、粘着面47aの面積の面積を小さくすることにより、裏面シート42の透水性の低下を抑制することができる。
【0051】
なお、係合部46は、フックシートから突出する複数のフックが形成された面ファスナーであってもよい。この場合には、ペットシート1が処理シート2上に置かれたときに、係合部46の複数のフックが処理シート2の表面シート21を構成する不織布に絡みつくことにより、ペットシート1が処理シート2に結合される。
【0052】
上記のように、ペットシート1は、処理シート2上に重ねて使用される。ここで、裏面シート42は透水性を有しているので、ペットシート1に排泄された尿の一部は、ペットシート1を透過し、処理シート2の吸収体23に吸収される。ここで、ペットシート1の裏面シート42が透水性を有するか否かは、以下の<透水性試験>によって判定される。
【0053】
<透水性試験>
1.裏面シート42から50mm×50mmの試験片を切り出し、当該試験片を5枚重ねたJIS P 3801 2種に準拠するろ紙(例えば、アドバンテック東洋社製の定性ろ紙No.2)の上に配置する。
2.試験片の皺を伸ばし、試験片上に50gの円筒状の錘を載置する。
3.試験片の上方1cmの高さから10mLメスピペットで生理食塩水を1滴(0.05mL)滴下する。
4.滴下した水滴が30秒以内に試験片を透過してろ紙に吸水されているか否かを確認する。
【0054】
上記の<透水性試験>の「4.」で水滴がろ紙に吸水されている場合には、裏面シート42は、透水性を有すると判定される。一方、水滴がろ紙に吸水されていない場合には、裏面シート42は、非透水性を有すると判定される。
【0055】
本発明者らは、7種類の裏面シートのサンプル(サンプルA~F)を用意し、上記<透水性試験>に従ってサンプルA~Fの透水性の有無を試験した。サンプルA~Eは不織布製のシートであり、サンプルFは樹脂フィルム製のシートである。サンプルDの不織布は親水性繊維を含み、サンプルEの不織布は、疎水性繊維を含んでいる。サンプルA~Fの目付及び繊度は、図7に示す通りである。図7は、透水性試験の結果を示している。
【0056】
図7に示す結果から、不織布製のサンプルA~Dは、透水性を有することが確認された。一方、疎水性繊維を有するサンプルE及び樹脂フィルム製のサンプルFは、透水性を有さないことが確認された。
【0057】
ペットシート1が処理シート2上に載置されたときに、裏面シート42の裏面42aは、処理シート2の表面シート21に接触する。ここで、処理シート2上で排泄するためにペットシート1上にペットが乗ったときに、処理シート2に対してペットシート1の裏面シート42が滑ってペットシート1がずれることがある。処理シート2に対してペットシート1がずれると、ペットが処理シート2上で安定した姿勢をとることが難しくなり、排泄に支障をきたすことがある。また、ペットシート1がずれると、ペットシート1に皺が発生することがあり、美観上好ましくない。
【0058】
ペットシート1のずれを抑制するために、裏面シート42は、処理シート2の表面シート21に対して高い静止摩擦係数を有している。具体的には、表面シート21を構成する乾燥状態の対象不織布と裏面シート42との間の静止摩擦係数は、0.48以上、0.66以上、0.71以上、又は、0.75以上である。対象不織布は、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレン(PE)を含む繊度2.2dtexのフルダル繊維によって構成される不織布である。
【0059】
静止摩擦係数は、下記の<摩擦試験>に従って測定される平均摩擦係数(MIU)(単位なし)である。なお、3枚の裏面シート42の試験片を準備し、3回測定された平均摩擦係数の平均値を対象不織布と乾燥状態の裏面シート42との間の静止摩擦係数としてもよい。
【0060】
<摩擦試験>
1.表面試験機(例えば、カトーテック株式会社製KES FB-4S)の摩擦子表面に160mm×160mmの対象不織布を貼り付ける。
2.表面試験機の摩擦子に対向する位置に、100mm×70mmに切り出した裏面シートの試験片を配置する。
3.対象不織布と試験片とを接触させて滑らせることにより、平均摩擦係数を取得する。
【0061】
本発明者らは、上述した表面試験機を用いて乾燥状態の対象不織布に対するサンプルA~Fの静止摩擦係数を測定した。図8は、サンプルA~Fの静止摩擦係数の測定結果を示している。図8に示す結果から、不織布製のサンプルA~Eは、樹脂フィルム製のサンプルFよりも高い静止摩擦係数を有することが確認された。また、目付及び繊度の大きなサンプルほど、高い静止摩擦係数を有することが確認された。
【0062】
上記のように、0.48以上の静止摩擦係数を実現するために、裏面シート42は、透水性を有する不織布によって構成されていてもよい。特に、静止摩擦係数を高めるために、裏面シート42を構成する不織布は、20gsm以上又は50gsm以上の目付を有していてもよい。また、裏面シート42を構成する不織布は、2.2dtex以上、2.8dtex以上、又は、3.3dtex以上の繊度を有していてもよい。乾燥状態の対象不織布と裏面シート42との間の静止摩擦係数を0.48以上にすることにより、ペットシートを排泄物処理シート上に重ねて使用するときに、ペットシート1の裏面シート42が処理シート2に対して滑りにくくなる。よって、処理シート2に対するペットシート1のずれを抑制することができる。
【0063】
なお、湿潤状態の対象不織布と裏面シート42との間の静止摩擦係数は、0.55以上であってもよい。湿潤状態とは、対象不織布を水に5分間浸漬した後に、対象不織布の表面の水を布で拭き取った状態をいう。湿潤状態の対象不織布と裏面シート42との間の静止摩擦係数は、上記の<摩擦試験>の「1.」において使用される乾燥状態の対象不織布に代えて湿潤状態の対象不織布を用いることにより、測定される。
【0064】
図8は、湿潤状態の対象不織布に対するサンプルA~Fの静止摩擦係数の測定結果を示している。図8に示す結果から、不織布製のサンプルA~Eは、樹脂フィルム製のサンプルよりも湿潤状態の対象不織布に対して高い静止摩擦係数を有することが確認された。また、湿潤状態の場合には、親水性繊維を含むサンプルDは、疎水性繊維を含むサンプルEよりも高い静止摩擦係数を有することが確認された。
【0065】
湿潤状態の対象不織布と裏面シート42との間の静止摩擦係数は、0.69、0.82以上、0.88以上、又は、1.04以上であってもよい。例えば、湿潤状態における静止摩擦係数を向上させるために、裏面シート42は、セルロース繊維等の親水性繊維を含んでいてもよい。裏面シート42が親水性繊維を含むことにより、ペットの尿によって処理シート2が濡れたときに、水素結合によってペットシート1の裏面シート42が排泄物処理シート2に結合されるので、処理シート2に対するペットシート1のずれを抑制することができる。なお、裏面シート42には、界面活性剤等の親水化剤が塗布され、親水化処理が施されていてもよい。この場合であっても、湿潤状態における静止摩擦係数を向上させることができる。
【0066】
また、ペットシート1の裏面シート42と、ペットシート1と同一構造を有する乾燥状態の別のペットシート1の裏面シート42との間の静止摩擦係数が、0.52以上、0.54以上、又は、0.94以上であってもよい。裏面シート42同士の静止摩擦係数は、上記の<摩擦試験>の「1.」の摩擦子表面にペットシート1の裏面シート42の試験片を貼り付け、摩擦子に対向する位置に別のペットシート1の裏面シート42の試験片を配置して試験することにより、測定される。
【0067】
図9は、同一のサンプル同士の静止摩擦係数の測定結果を示している。例えば、図9に示すサンプルAの静止摩擦係数は、2枚のサンプルA同士の静止摩擦係数を示している。図9に示す結果から、不織布製のサンプルA~Eは、樹脂フィルム製のサンプルFよりも高い静止摩擦係数を有することが確認された。また、目付及び繊度の大きなサンプルほど、高い静止摩擦係数を有することが確認された。
【0068】
なお、ペットシート1の裏面シート42と、ペットシートと同一構造を有する湿潤状態の別のペットシート1の裏面シート42との間の静止摩擦係数は、0.47以上、0.71以上、又は、0.93以上であってもよい。図9は、同一のサンプル同士の湿潤状態の静止摩擦係数の測定結果を示している。図9は、に示す結果から、湿潤状態の不織布製のサンプルA~Eは、湿潤状態の樹脂フィルム製のサンプルFよりも高い静止摩擦係数を有することが確認された。
【0069】
また、処理シート2の尿跡の上にペットシート1を重ねて配置したときに、処理シート2の尿跡を視覚的に隠すために、裏面シート42は、低い光線透過率を有していてもよい。例えば、裏面シート42は、81%以下の全光線透過率を有している。
【0070】
裏面シート42の全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠した方法で測定される。具体的には、全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠するヘイズメータ(例えば、日本電色工業社製のHAZE Meter NDH7000SP II)に、裏面シート42の試験片をセットして測定することができる。
【0071】
本発明者らは、上述したヘイズメータ用いてサンプルA~Fの全光線透過率を測定した。図10は、サンプルA~Fの全光線透過率の測定結果を示している。なお、図10に示す測定結果は、サンプルA~Fについて同様の測定を8回行って得られた全光線透過率の平均値を示している。裏面シート42の全光線透過率を81%以下にすることにより、ペットシート1を処理シート2に形成された尿跡に重ねて配置したときに、尿跡を視覚的に隠すことができる。したがって、ペットが尿跡を避けて処理シート2の外部に排尿することを防止することができる。なお、裏面シート42の全光線透過率は、68%以下、65%以下又は61%以下であってもよい。
【0072】
なお、ペットシート1の厚み方向から見て、ペットシート1の吸収部10aの全光線透過率は60%以下であってもよい。吸収部10aの全光線透過率は、ペットシート1の吸収体43を含む領域のサンプルを上記ヘイズメータにセットして測定することができる。
【0073】
処理シート2の尿跡の上にペットシート1を重ねて配置したときに、ペットシート1に皺が発生しないように、ペットシート1は、高い剛軟度を有している。例えば、裏面シートは、80mm以上の剛軟度を有している。
【0074】
裏面シート42の剛軟度は、JIS L 1096:2010に規定されるA法(45°カンチレバー法)に準拠した方法で測定される。具体的には、裏面シート42から25mm×150mmの試験片を切り出し、JIS L 1096:2010に準拠する剛軟度試験機(例えば、大栄科学精器製作所製の剛軟度試験機CAN-1MCA)の台上に当該試験片をセットする。次に、当該試験片を5mm/秒の速度で押し出し、自重で折れ曲がることで45°傾斜面に接触した時点の押し出し距離を測定する。そして、測定された押し出し距離を裏面シート42の剛軟度とする。
【0075】
図10は、上述したサンプルA~Fの剛軟度の測定結果を示している。なお、図10に示す測定結果は、サンプルA~Fについて同様の測定を3回行って得られた剛軟度の平均値を示している。なお、サンプルCは、剛性が高すぎるため、剛軟度の測定値を得ることができなかった。図10に示す結果から、目付及び繊度の大きなサンプルほど、高い剛軟度を有することが確認された。裏面シート42の剛軟度を80mm以上にすることにより、ペットが乗ったときにペットシート1に皺が発生することを抑制することができる。なお、裏面シート42の剛軟度は、114mm以上又は120mm以上であってもよい。
【0076】
また、裏面シート42の裏面42aの表面粗さの平均偏差(SMD)は、3.3μm以上であってもよい。裏面42aの凹凸が大きいほど、測定されるSMDは大きくなる。裏面42aのSMDは、以下に示す<表面特性試験>に従って測定される。
【0077】
<表面特性試験>
1.表面試験機(例えば、カトーテック株式会社製KES FB-4S)に、100mm×100mmの裏面シートの試験片をセットする。
2.試験片の厚み方向に垂直なMD方向に摩擦子を滑らせてSMDの値を記録する。
3.サンプルの厚み方向及びMD方向に垂直なTD方向に摩擦子を滑らせてSMDの値を記録する。
4.下記式により試験片のSMDを算出する。
SMD=(MD方向のSMD+TD方向のSMD)/2
【0078】
図10は、上述したサンプルA~Fの裏面のSMDの測定結果を示している。なお、図10に示すSMDの測定結果は、上記<表面特性試験>を5回行って得られたSMDの平均値を示している。図10に示す結果から、不織布製のサンプルA~Eは、樹脂フィルム製のサンプルFよりも高いSMDを有することが確認された。また、不織布の繊度が高いほど、SMDが高くなる傾向を有することが確認された。裏面シート42の裏面42aのSMDを大きくすることにより、処理シート2と裏面シート42との接触面積が増加し、処理シート2に対するペットシート1のずれを効果的に抑制することができる。
【0079】
図11は、裏面シート42の概略的な断面図である。裏面シート42の裏面42aには、その表面粗さに応じた凹凸が形成されているので、図12に示すように、裏面シート42の厚み方向に沿った断面と裏面42aとの交線は、裏面シート42の厚み方向に凹凸を有する粗さ曲線CLとして表される。ここで、裏面シート42に含まれる繊維の端部の幾つかは、粗さ曲線CLの平均線ALよりも裏面42a側(ペットシート1が処理シート2上に配置されている場合には、処理シート2側)に配置されている。裏面シート42に繊維の端部が平均線ALよりも裏面42a側に配置されることにより、ペットシート1を処理シート2上に載置したときに、裏面シート42の繊維の端部が処理シート2の表面シート21の繊維に絡みつくことでペットシート1が処理シート2に係合される。その結果、処理シート2に対するペットシート1のずれを効果的に抑制することができる。
【0080】
一実施形態では、ペットシート1の裏面シート42は、エンボス加工が施された圧搾部を有していてもよい。圧搾部は、裏面シート42のうちエンボス加工によって他の部分よりも密度が高められた領域である。裏面シート42にエンボス加工が施されることにより、裏面シート42と処理シート2との接触面積が増加するので、裏面シート42と処理シート2との間の静止摩擦係数を高めることができる。例えば、エンボス加工は、裏面シート42の一部又は全面に施される。
【0081】
一実施形態では、図12に示すように、ペットシート1は、分割予定線50を有し、当該分割予定線50に沿ってペットシート1を複数の部分に分割して使用することができてもよい。例えば、分割予定線50は、ミシン目又はハーフカット線であってもよいし、印刷等で描かれた直線、点線又は破線であってもよい。この場合には、処理シート2に形成された尿跡のサイズに応じてペットシート1を分割して使用することができる。なお、図12に示すように、ペットシート1は、ロール状に巻かれてもよい。この場合には、ロール状のペットシート1を繰り出し、分割予定線50に沿ってペットシート1を切断してから使用することができる。
【0082】
以上説明したように、上述したペット用トイレ100では、ペットシート1が透水性の裏面シート42を備えているので、ペットシート1の吸収体43に吸収されなかったペットの尿は裏面シート42を透過して処理シート2に吸収される。これにより、ペットシート1及び処理シート2の両方でペットの尿を吸収することができるので、ペット用トイレ100の保水力を向上させることができる。また、処理シート2の保水力を余すことなく利用することができるので、処理シート2を繰り返し、長期間使用することが可能となり、経済性及び環境保護の観点において改善が図られる。
【0083】
また、ペットシート1の裏面シート42は、高い静止摩擦係数を有しているので、係合部46の粘着面47aの面積を小さくした場合であっても、ペットシート1が処理シート2に対して滑りにくくなる。よって、ペットシート1の透水性を確保しつつ、処理シート2に対するペットシートのずれを抑制することができる。
【0084】
以上、種々の実施形態に係るペットシート1及びペット用トイレ100について説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。すなわち、上述した実施形態は例示説明を目的とするものであり、本発明の範囲を制限するものではないことに留意すべきである。
【0085】
上記実施形態では、ペットシート1が、表面シート41、裏面シート42及び吸収体43を備えているが、ペットシート1は少なくとも裏面シート42を備えていればよい。例えば、ペットシート1が裏面シート42のみを備える場合であっても、ペットシート1を処理シート2上に重ねて配置することにより、処理シート2の尿跡を視覚的に隠すことができる。また、吸収体43を備えていない場合であっても、裏面シート42を透過した尿は処理シート2に吸収されるため、飼育空間を汚すことを防止することができる。
【0086】
また、ペットシート1は、係合部46を備えていなくてもよい。ペットシート1が係合部46を備えていない場合であっても、裏面シート42が高い静止摩擦係数を有しているので、処理シート2に対するペットシート1のずれを抑制することができる。上述した種々の実施形態は、矛盾のない範囲で組み合わせることができる。
【0087】
本開示は以下の内容を含む。
【0088】
[1] ペット用の排泄物処理シート上に重ねて使用されるペットシートであって、
使用時に前記排泄物処理シートの表面に接する裏面を有する透水性の裏面シートを備え、
ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレン(PE)を含む繊度2.2dtexのフルダル繊維によって構成される乾燥状態の対象不織布と、前記裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.48以上である、
ペットシート。
【0089】
[2] 前記裏面シートは、不織布によって構成されている、[1]に記載のペットシート。
【0090】
[3] 湿潤状態の前記対象不織布と前記裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.55以上である、[1]又は[2]に記載のペットシート。
【0091】
[4] 湿潤状態の前記対象不織布と前記裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.69以上である、[1]~[3]の何れか一項に記載のペットシート。
【0092】
[5] 前記裏面シートは、親水性繊維を含む、[1]~[4]の何れか一項に記載のペットシート。
【0093】
[6] 前記裏面シートは、前記親水性繊維としてセルロース繊維を含む、[5]に記載のペットシート。
【0094】
[7] 前記裏面シートの全光線透過率が81%以下である、[1]~[6]の何れか一項に記載のペットシート。
【0095】
[8] JIS L 1096:2010に規定される45°カンチレバー法に準拠して測定した前記裏面シートの剛軟度が80mm以上である、[1]~[7]の何れか一項に記載のペットシート。
【0096】
[9] 前記裏面シートは、エンボス加工が施された圧搾部を有する、[1]~[8]の何れか一項に記載のペットシート。
【0097】
[10] 前記裏面シートの前記裏面の表面粗さの平均偏差(SMD)は、3.3μm以上である、[1]~[9]の何れか一項に記載のペットシート。
【0098】
[11] 前記裏面シートの繊維の端部は、前記裏面の粗さ曲線の平均線よりも前記裏面側に配置されている、[1]~[10]の何れか一項に記載のペットシート。
【0099】
[12] 前記ペットシートを複数の部分に分割するための分割予定線を有する、[1]~[11]の何れか一項に記載のペットシート。
【0100】
[13] ロール状に巻かれた、[1]~[12]の何れか一項に記載のペットシート。
【0101】
[14] 前記裏面シートの厚み方向に垂直な第1方向における前記ペットシートの幅、及び、前記厚み方向及び前記第1方向に垂直な第2方向における前記ペットシートの幅が30cm以下である、[1]~[13]の何れか一項に記載のペットシート。
【0102】
[15] 前記裏面に配置され、前記排泄物処理シートの表面に係合する係合部を更に備える、[1]~[14]の何れか一項に記載のペットシート。
【0103】
[16] 前記係合部は、粘着性を有する粘着面と前記粘着面を覆う離型シートとを含む、[15]に記載のペットシート。
【0104】
[17] 透水性を有する表面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置された吸収体とを備える、[1]~[16]の何れか一項に記載のペットシート。
【0105】
[18] 厚み方向から見て前記吸収体に重なる領域の全光線透過率が60%以下である、[17]に記載のペットシート。
【0106】
[19] ペット用の排泄物処理シート上に重ねて使用されるペットシートであって、
使用時に前記排泄物処理シートの表面に接する裏面を有する透水性の裏面シートを備え、
前記ペットシートと同一構造を有する乾燥状態の別のペットシートの裏面シートと、前記ペットシートの前記裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.52以上である、
ペットシート。
【0107】
[20] 湿潤状態の前記別のペットシートの裏面シートと、前記ペットシートの前記裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.47以上である、[19]に記載のペットシート。
【0108】
[21]
透水性の表面シートと、非透水性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置された吸収体とを含む排泄物処理シートと、
前記排泄物処理シート上に配置されたペットシートと、
を備え、
前記ペットシートは、前記排泄物処理シートの前記表面シートに接する裏面を有する透水性の裏面シート含み、
前記排泄物処理シートの前記表面シートと、乾燥状態の前記ペットシートの前記裏面シートとの間の静止摩擦係数が、0.48以上である、
ペット用トイレ。
【符号の説明】
【0109】
1…ペットシート、2…排泄物処理シート、41…表面シート、42…裏面シート、43…吸収体、42a…裏面、46…係合部、47a…粘着面、48…離型シート、50…分割予定線、100…ペット用トイレ。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12