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特開2024-1643皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持剤、並びに皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001643
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持剤、並びに皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 7/154 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
A23B7/154
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100426
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】寺本 匡
(72)【発明者】
【氏名】堤 楽
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 千夏
【テーマコード(参考)】
4B169
【Fターム(参考)】
4B169HA06
4B169HA09
4B169HA11
4B169KA07
4B169KA10
4B169KB03
4B169KC31
4B169KC38
(57)【要約】
【課題】皮むき及び/又はカット野菜・果物の保管時の品質を簡便に且つ効果的に保持することができ、安全性も高い新たな品質保持剤、並びに皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持方法を提供すること。
【解決手段】α-リポ酸及びL-シスチンを含有する皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持剤、並びにα-リポ酸を0.025~5.0%(w/v)及びL-シスチンを0.2~5.0%(w/v)含有し、pH調整剤にてpH9~12に調整された溶液を用いて、皮むき及び/又はカット野菜・果物を処理することを含む皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持方法である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-リポ酸及びL-シスチンを含有することを特徴とする皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持剤。
【請求項2】
α-リポ酸を0.025~5.0%(w/v)、L-シスチンを0.2~5.0%(w/v)含有する溶液として使用される請求項1に記載の品質保持剤。
【請求項3】
さらにpH調整剤を含有し、pH9~12の溶液として使用される請求項1または2に記載の品質保持剤。
【請求項4】
α-リポ酸とL-シスチンの質量比(α-リポ酸:L-シスチン)が1~25:1~200である請求項1または2に記載の品質保持剤。
【請求項5】
α-リポ酸とL-シスチンの質量比(α-リポ酸:L-シスチン)が1~25:1~200である請求項3に記載の品質保持剤。
【請求項6】
α-リポ酸を0.025~5.0%(w/v)及びL-シスチンを0.2~5.0%(w/v)含有し、pH調整剤にてpH9~12に調整された溶液を用いて、皮むき及び/又はカット野菜・果物を処理することを含むことを特徴とする皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持方法。
【請求項7】
α-リポ酸とL-シスチンを1~25:1~200の質量比(α-リポ酸:L-シスチン)で含有する溶液を用いる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
-20℃~30℃での保管時の変色を防止する請求項6または7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持剤、並びに皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品の保菅中における品質の劣化を防ぐべく、様々な検討がなされてきた。
【0003】
例えば、バナナ等の青果物やその加工品の経時的な変色等の劣化を抑制する技術として、アスコルビン酸類および/またはその塩、α-リポ酸および/またはその複合体、並びにポリリン酸塩および/またはピロリン酸塩を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
皮むきやカットした生鮮野菜、果物の保存中に起こる変色に伴う劣化を防止する技術として、α-リポ酸と、L-アスコルビン酸又はL-アスコルビン酸塩とを用いる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
上記提案のような技術により、食品の保菅中における品質の劣化の防止にある程度の効果が得られている。
【0006】
しかしながら、近年では、廃棄される食品の増加が深刻な状況となっており、また、スーパーやコンビニエンスストアなどでは人手不足による製品の入れ替えに要するコストの増加も懸念されている。そのため、従来よりも優れた品質保持効果を奏する皮むき及び/又はカット野菜・果物用品質保持剤に対する需要が高まっている。
【0007】
したがって、皮むき及び/又はカット野菜・果物の保管時の品質を簡便に且つ効果的に保持することができ、安全性も高い新たな品質保持剤、並びに皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持方法の速やかな開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-185756号公報
【特許文献2】特開2007-029071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような要望に応え、現状を打破し、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、皮むき及び/又はカット野菜・果物の保管時の品質を簡便に且つ効果的に保持することができ、安全性も高い新たな品質保持剤、並びに皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、α-リポ酸及びL-シスチンの2成分を有効成分として用いることで、様々な種類の皮むき及び/又はカット野菜・果物の保管時の品質を簡便に且つ効果的に保持できる(保管時の変色、褐変などを簡便に且つ効果的に抑制し、また、色彩やみずみずしさ、風香味などを保つことができる)ことを知見し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> α-リポ酸及びL-シスチンを含有することを特徴とする皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持剤である。
<2> α-リポ酸を0.025~5.0%(w/v)、L-シスチンを0.2~5.0%(w/v)含有する溶液として使用される前記<1>に記載の品質保持剤である。
<3> さらにpH調整剤を含有し、pH9~12の溶液として使用される前記<1>または<2>に記載の品質保持剤である。
<4> α-リポ酸とL-シスチンの質量比(α-リポ酸:L-シスチン)が1~25:1~200である前記<1>~<3>のいずれかに記載の品質保持剤である。
<5> -20℃~30℃での保管時の変色を防止する前記<1>~<4>のいずれかに記載の品質保持剤である。
<6> α-リポ酸を0.025~5.0%(w/v)及びL-シスチンを0.2~5.0%(w/v)含有し、pH調整剤にてpH9~12に調整された溶液を用いて、皮むき及び/又はカット野菜・果物を処理することを含むことを特徴とする皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持方法である。
<7> α-リポ酸とL-シスチンを1~25:1~200の質量比(α-リポ酸:L-シスチン)で含有する溶液を用いる前記<6>に記載の方法である。
<8> -20℃~30℃での保管時の変色を防止する前記<6>または<7>に記載の方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、皮むき及び/又はカット野菜・果物の保管時の品質を簡便に且つ効果的に保持することができ、安全性も高い新たな品質保持剤、並びに皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、試験例1のアボカドの状態を示す図である。
図2図2は、試験例2のアボカドの状態を示す図である。
図3図3は、試験例3のアボカドの状態を示す図である。
図4図4は、試験例4のアボカドの状態を示す図である。
図5図5は、試験例5のアボカドの状態を示す図である。
図6図6は、試験例6のアボカドの状態を示す図である。
図7図7は、試験例7のアボカドの状態を示す図である。
図8図8は、試験例8のレタスの状態を示す図である。
図9図9は、試験例9のゴボウの状態を示す図である。
図10図10は、試験例10のリンゴの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持剤)
本発明の皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持剤(以下、「品質保持剤」と称することがある。)は、α-リポ酸と、L-シスチンとを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0015】
本発明においては、食品添加物としての使用実績があり食経験が豊富な、α-リポ酸及びL-シスチンの2成分を皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持剤の有効成分として使用する。
【0016】
<α-リポ酸>
α-リポ酸は、チオクト酸ともいい、動植物の体内にも広く存在して補酵素等として働いている含硫ビタミン様物質である。従来、サプリメント素材として摂取されているものであり、2004年には食品添加物として認められている。なお、α-リポ酸は高い抗酸化力を持ち、自らがポリフェノールオキシダーゼにより酸化されたポリフェノール類を還元する作用を有するのが特徴である。本発明においてα-リポ酸にはその塩も含まれる。α-リポ酸の塩としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、水への溶解性が高い点で、ナトリウム塩が好ましい。
【0017】
前記α-リポ酸としては、食品用途に使用できるもの(グレード)であれば特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記α-リポ酸は市販されており、市販品を適宜使用することができる。
前記α-リポ酸の前記品質保持剤における含有量としては、特に制限はなく、使用量などに応じて適宜選択することができる。
【0018】
<L-シスチン>
L-シスチンは、アミノ酸の1種であり、2つのシステイン分子がジスルフィド結合によって繋がった構造を有することを特徴とする。
【0019】
前記L-シスチンとしては、食品用途に使用できるもの(グレード)であれば特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記L-シスチンは市販されており、市販品を適宜使用することができる。
前記L-シスチンの前記品質保持剤における含有量としては、特に制限はなく、使用量などに応じて適宜選択することができる。
【0020】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、pH調整剤(乳酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸またはその塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化カルシウム、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩等の縮合リン酸塩、水酸化ナトリウム等)、それ自体が静菌作用を有する成分(乳酸、酢酸、クエン酸等の有機酸およびその塩、アラニン等のアミノ酸類、フェルラ酸、グリセリン脂肪酸エステル、エタノール、リゾチーム、カラシ抽出物、ホコッシ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、チャ抽出物、カンゾウ油性抽出物、ユッカ抽出物、ローズマリー抽出物等の植物抽出物等)、pH調整作用・静菌作用・食感改良作用を有する成分(水酸化カルシウム、貝殻カルシウム等)、食塩等の塩類、糖類(単糖類、二糖類、マルトトリオース、オリゴ糖類、デキストリン、糖アルコール等)、蛋白質加水分解物、ペプチド、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチン、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム塩等)、増粘多糖類(アラビアガム、キサンタンガム、ウェランガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、カードラン、サクシノグリカン、ローカストビーンガム、タラガム、ペクチン、アルギン酸塩、アルギン酸エステル等)、酸化防止剤(アスコルビン酸、トコフェロール類、ローズマリー抽出物、カテキン、茶抽出物)などが挙げられる。前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記品質保持剤は、品質保持効果をより高めることができる点で、pH調整剤を含有することが好ましい。なお、前記pH調整剤には、pH調整作用を有する成分も含まれる。
前記その他の成分は市販されており、市販品を適宜使用することができる。
前記その他の成分の前記品質保持剤における含有量としては、特に制限はなく、使用量などに応じて適宜選択することができる。
【0021】
<態様>
前記品質保持剤は、前記α-リポ酸と、前記L-シスチンとを混合製剤としておくのが好ましい。前記混合製剤の製剤化に際しては、前記α-リポ酸と前記L-シスチンのみで製剤としてもよいし、必要に応じて前記その他の成分を配合したり、製剤化原料として助剤を使用して製剤としてもよい。前記助剤としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、食塩、多糖類(デキストリンなど)、乳化剤などが好ましく挙げられる。
なお、前記品質保持剤は、上記した混合製剤とするのではなく、溶液作製の段階で、各成分を所定量使用してもよい。
前記品質保持剤の形態としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、粉末、顆粒等の固体、水などの溶媒に溶解させた液体などが挙げられる。
【0022】
<使用>
前記品質保持剤の使用態様としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、上記した成分を含む溶液の態様が好ましい。
【0023】
前記溶液を用いて前記皮むき及び/又はカット野菜・果物を処理する方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、前記皮むき及び/又はカット野菜・果物を前記溶液に浸漬する方法、前記溶液を前記皮むき及び/又はカット野菜・果物に噴霧又は塗布する方法などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記品質保持剤は、粉末、顆粒等の固体のものを皮むき及び/又はカット野菜・果物に、添加、混合してもよい。
【0024】
-使用量-
前記品質保持剤の使用量としては、前記α-リポ酸及び前記L-シスチンの有効量を含有していれば特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0025】
[α-リポ酸]
前記α-リポ酸の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記溶液を用いて前記皮むき及び/又はカット野菜・果物を処理する場合におけるα-リポ酸の使用量、即ち前記溶液中のα-リポ酸の含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、0.025~5.0%(w/v)が好ましく、0.04~2.0%(w/v)がより好ましい。前記好ましい範囲内であると、品質を保持する効果が得られるだけでなく、皮むき及び/又はカット野菜・果物の食味や風味への影響が少なく、消費者の需要に見合ったコスト内に抑えられる点で、有利である。
【0026】
[L-シスチン]
前記L-シスチンの使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記溶液を用いて前記皮むき及び/又はカット野菜・果物を処理する場合におけるL-シスチンの使用量、即ち前記溶液中のL-シスチンの含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、0.2~5.0%(w/v)が好ましい。前記好ましい範囲内であると、α-リポ酸の作用をより高めて品質を保持する効果が得られるだけでなく、消費者の需要に見合ったコスト内に抑えられる点で、有利である。
【0027】
前記α-リポ酸と、前記L-シスチンとの質量比(α-リポ酸:L-シスチン、以下、「配合比」と称することもある。)としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、1~25:1~200の範囲が好ましく、1~10:1~65の範囲であることがより好ましい。前記好ましい範囲内であると、皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質を保持する効果がより優れる点で、有利である。
【0028】
前記溶液を用いて前記皮むき及び/又はカット野菜・果物を処理する場合における前記溶液のpHとしては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、pH9~12の範囲に調整することが好ましく、pH10~12の範囲に調整することがより好ましい。前記pHを好ましい範囲に調整すると、皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質を保持する効果がより優れる点で、有利である。前記溶液のpHは、前記pH調整剤を用いて調整することができる。
なお、本発明において、pHは、20℃におけるpHをいう。
【0029】
-使用時期-
前記品質保持剤を皮むき及び/又はカット野菜・果物に作用させる時期としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記品質保持剤を皮むき及び/又はカット野菜・果物に作用させる回数としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、1回であってもよいし、複数回であってもよい。また、作用させる時間(処理する時間)も適宜選択することができる。
【0030】
前記品質保持剤は、単独で使用してもよいし、例えば、日持向上剤などのその他の製剤などと共に使用してもよい。
【0031】
前記品質保持剤は、-20℃~30℃での保管時の変色を防止するために好適に用いることができる。
【0032】
<皮むき及び/又はカット野菜・果物>
本発明における皮むき及び/又はカット野菜・果物とは、皮むき及びカットの少なくともいずれかの処理をした野菜、あるいは皮むき及びカットの少なくともいずれかの処理をした果物のことをいう。
本発明の品質保持対象となる野菜・果物は、皮むき及び/又はカットされて各種食品に使用される野菜・果物である。即ち、皮むき及び/又はカットされずにそのまま食される野菜・果物は除外される。
【0033】
前記皮むき及び/又はカット野菜・果物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、保管時の赤色変が問題とされるものの例としては、カットレタス(玉レタス、リーフレタス、コスレタス等をカットしたもの)、皮むき及び/又はカットゴボウ、皮むき及び/又はカット里芋などが挙げられる。
保管時の茶褐変が問題とされるものの例としては、皮むき及び/又はカットリンゴ、皮むき及び/又はカットレンコン、皮むき及び/又はカットサツマイモ、皮むき及び/又はカット長芋、皮むき及び/又はカットモモ、皮むき及び/又はカットビワ、皮むき及び/又はカット大根などが挙げられる。
保管時の黒色変が問題とされるものの例としては、カットキャベツ、カット春菊、カットキノコ類、皮むき及び/又はカットアボカド、皮むき及び/又はカットバナナ、皮むき及び/又はカットジャガイモ、皮むき及び/又はカットナス、皮むき及び/又はカットナシ、カット白菜などが挙げられる。
その他の例としては、赤黒色や茶褐色に変色しやすい皮むき及び/又はカットフキ、保管時の黒変や脱色が問題とされる皮むき及び/又はカットトマトなどが挙げられる。
なお、前記皮むき及び/又はカット野菜・果物は、上記例示したものに限定されるものではない。また、前記皮むき及び/又はカット野菜・果物の形状や大きさとしても、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0034】
前記品質保持剤は、生鮮品あるいは生鮮品を冷凍したものに対し処理するのが好適であるが、これらの加工処理品(煮蒸、焼成、味付などを行ったもの)も対象となる。
【0035】
(皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持方法)
本発明の皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持方法(以下、「品質保持方法」と称することがある)は、処理工程を少なくとも含み、必要に応じてさらにその他の工程を含む。
【0036】
<処理工程>
前記処理工程は、有効成分としてα-リポ酸を0.025~5.0%(w/v)及びL-シスチンを0.2~5.0%(w/v)含有し、pH調整剤にてpH9~12に調整された溶液を用いて、皮むき及び/又はカット野菜・果物を処理する工程である。
【0037】
前記処理工程の方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、上記した本発明の(皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持剤)の<使用>の項目に記載したものと同様にして行うことができる。
【0038】
前記皮むき及び/又はカット野菜・果物は、上記した本発明の(皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持剤)の<皮むき及び/又はカット野菜・果物>の項目に記載したものと同様である。
【0039】
本発明の品質保持剤および品質保持方法によれば、皮むき及び/又はカット野菜・果物の保管時の品質を簡便に且つ効果的に保持することができる。また、本発明においては、食品添加物としての使用実績があり食経験が豊富な、α-リポ酸及びL-シスチンの2成分を皮むき及び/又はカット野菜・果物の品質保持剤の有効成分として使用するため、安全性も高い。
【実施例0040】
以下、試験例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。なお、以下の試験例では、α-リポ酸の一例として、α-リポ酸のナトリウム塩を使用した。
【0041】
(試験例1)
皮むき及び/又はカット野菜・果物の一例として、皮むき及びカットしたアボカドを用いて、下記の試験を行った。
【0042】
-溶液の調製-
下記の表1に記載の各成分を、下記の表1に記載の量で含有するように調製した溶液を作製した。なお、3N 水酸化ナトリウムはpH調整剤として使用した。
【0043】
-皮むき及び/又はカット野菜・果物の処理-
皮むき及びカットしたアボカドを任意の大きさにスライスし、このアボカドを上記した溶液に10分間浸漬した。
その後、アボカドをざるに上げて水切りした。
次いで、水切りしたアボカドを保存容器に入れ、10℃または20℃で保管した。
【0044】
-評価-
保管開始から48時間後のアボカドの状態を目視にて確認し、品質保持の効果(変色・褐変抑制効果)を評価した。評価は、品質保持の効果が高い(変色・褐変の度合いが低い)ほど「+」の数が多く、品質保持の効果が全くない(完全に変色・褐変している)ものを「-」とした。評価結果を表1に示す。また、保管開始時、保管開始から24時間後、および保管開始から48時間後のアボカドの状態を図1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
(試験例2)
皮むき及び/又はカット野菜・果物の一例として、皮むき及びカットしたアボカドを用いて、下記の試験を行った。
【0047】
-溶液の調製-
下記の表2-1~2-2に記載の各成分を、下記の表2-1~2-2に記載の量で含有するように調製した溶液を作製した。なお、3N 水酸化ナトリウムはpH調整剤として使用した。
【0048】
-皮むき及び/又はカット野菜・果物の処理-
皮むき及びカットしたアボカドを任意の大きさにスライスし、このアボカドを上記した溶液に10分間浸漬した。
その後、アボカドをざるに上げて水切りした。
次いで、水切りしたアボカドを保存容器に入れ、10℃で保管した。
【0049】
-評価-
保管開始から48時間後のアボカドの状態を目視にて確認し、試験例1と同様にして変色・褐変抑制効果を評価した。評価結果を表2-1~2-2に示す。また、保管開始時、保管開始から24時間後、および保管開始から48時間後のアボカドの状態を図2に示す。
【0050】
【表2-1】
【0051】
【表2-2】
【0052】
(試験例3)
皮むき及び/又はカット野菜・果物の一例として、皮むき及びカットしたアボカドを用いて、下記の試験を行った。
【0053】
-溶液の調製-
下記の表3-1~3-2に記載の各成分を、下記の表3-1~3-2に記載の量で含有するように調製した溶液を作製した。なお、3N 水酸化ナトリウムはpH調整剤として使用した。
【0054】
-皮むき及び/又はカット野菜・果物の処理-
皮むき及びカットしたアボカドを任意の大きさにスライスし、このアボカドを上記した溶液に10分間浸漬した。
その後、アボカドをざるに上げて水切りした。
次いで、水切りしたアボカドを保存容器に入れ、10℃で保管した。
【0055】
-評価-
保管開始から48時間後のアボカドの状態を目視にて確認し、試験例1と同様にして変色・褐変抑制効果を評価した。評価結果を表3-1~3-2に示す。また、保管開始時および保管開始から48時間後のアボカドの状態を図3に示す。
【0056】
【表3-1】
【0057】
【表3-2】
【0058】
(試験例4)
皮むき及び/又はカット野菜・果物の一例として、皮むき及びカットしたアボカドを用いて、下記の試験を行った。
【0059】
-溶液の調製-
下記の表4-1~4-2に記載の各成分を、下記の表4-1~4-2に記載の量で含有するように調製した溶液を作製した。なお、3N 水酸化ナトリウムはpH調整剤として使用した。
【0060】
-皮むき及び/又はカット野菜・果物の処理-
皮むき及びカットしたアボカドを任意の大きさにスライスし、このアボカドを上記した溶液に10分間浸漬した。
その後、アボカドをざるに上げて水切りした。
次いで、水切りしたアボカドを保存容器に入れ、10℃で保管した。
【0061】
-評価-
保管開始から72時間後のアボカドの状態を目視にて確認し、試験例1と同様にして変色・褐変抑制効果を評価した。評価結果を表4-1~4-2に示す。また、保管開始時、保管開始から24時間後、および保管開始から72時間後のアボカドの状態を図4に示す。
【0062】
【表4-1】
【0063】
【表4-2】
【0064】
(試験例5)
皮むき及び/又はカット野菜・果物の一例として、皮むき及びカットしたアボカドを用いて、下記の試験を行った。
【0065】
-溶液の調製-
下記の表5に記載の各成分を、下記の表5に記載の量で含有するように調製した溶液を作製した。なお、炭酸ナトリウムおよび酸化カルシウムはpH調整剤として使用した。
【0066】
-皮むき及び/又はカット野菜・果物の処理-
皮むきしたアボカドをさいの目状にカットし、このアボカドを上記した溶液に10分間浸漬した。
その後、アボカドをざるに上げて水切りした。
次いで、水切りしたアボカドを保存容器に入れ、10℃で保管した。
【0067】
-評価-
保管開始から72時間後のアボカドの状態を目視にて確認し、試験例1と同様にして変色・褐変抑制効果を評価した。評価結果を表5に示す。また、保管開始時および保管開始から72時間後のアボカドの状態を図5に示す。
【0068】
【表5】
【0069】
(試験例6)
皮むき及び/又はカット野菜・果物の一例として、皮むき及びカットしたアボカドを用いて、下記の試験を行った。
【0070】
-溶液の調製-
下記の表6に記載の各成分を、下記の表6に記載の量で含有するように調製した溶液を作製した。なお、炭酸ナトリウムおよび酸化カルシウムはpH調整剤として使用した。
【0071】
-皮むき及び/又はカット野菜・果物の処理-
皮むきしたアボカドをさいの目状にカットし、このアボカドを上記した溶液に10分間浸漬した。
その後、アボカドをざるに上げて水切りした。
次いで、水切りしたアボカドを保存容器に入れ、-20℃で10日間冷凍保管した。
その後、冷凍状態のものを10℃に移して保管した。
【0072】
-評価-
冷凍状態のものを10℃に移して24時間後のアボカドの状態を目視にて確認し、試験例1と同様にして変色・褐変抑制効果を評価した。評価結果を表6に示す。また、保管開始時(冷凍状態のものを10℃に移した直後)および冷凍状態のものを10℃に移して24時間後のアボカドの状態を図6に示す。
【0073】
【表6】
【0074】
(試験例7)
皮むき及び/又はカット野菜・果物の一例として、皮むき及びカットしたアボカドを用いて、下記の試験を行った。
【0075】
-溶液の調製-
下記の表7-1~7-2に記載の各成分を、下記の表7-1~7-2に記載の量で含有するように調製した溶液を作製した。なお、3N 水酸化ナトリウムはpH調整剤として使用した。
【0076】
-皮むき及び/又はカット野菜・果物の処理-
皮むき及びカットしたアボカドを任意の大きさにスライスし、このアボカドを上記した溶液に10分間浸漬した。
その後、アボカドをざるに上げて水切りした。
次いで、水切りしたアボカドを保存容器に入れ、10℃で保管した。
【0077】
-評価-
保管開始から96時間後のアボカドの状態を目視にて確認し、試験例1と同様にして変色・褐変抑制効果を評価した。評価結果を表7-1~7-2に示す。また、保管開始時および保管開始から96時間後のアボカドの状態を図7に示す。
【0078】
【表7-1】
【0079】
【表7-2】
【0080】
(試験例8)
皮むき及び/又はカット野菜・果物の一例として、カットしたレタスを用いて、下記の試験を行った。
【0081】
-溶液の調製-
下記の表8に記載の各成分を、下記の表8に記載の量で含有するように調製した溶液を作製した。なお、3N 水酸化ナトリウムはpH調整剤として使用した。
【0082】
-皮むき及び/又はカット野菜・果物の処理-
レタスの葉を1枚ずつはがし、5分間流水洗浄した後、200ppm次亜塩素酸ナトリウム溶液に10分間浸漬した。次いで、レタスをざるに上げて水切りした後、5分間流水洗浄した。
上記したレタスの葉を適度な大きさに手でちぎり、このレタスを上記した溶液に10分間浸漬した。
その後、サラダスピナーで脱水した。
次いで、脱水したレタスを保存容器に入れ、10℃で保管した。
【0083】
-評価-
保管開始から72時間後のレタスの状態を目視にて確認し、試験例1と同様にして変色・褐変抑制効果を評価した。評価結果を表8に示す。また、保管開始時、保管開始から24時間後、保管開始から48時間後、および保管開始から72時間後のレタスの状態を図8に示す。
図8に示したように、試験例8-1では、保管開始から72時間後まで褐変は認められなかった。一方、試験例8-2では、保管開始から48時間後から葉の切り口に褐変が認められ、保管開始から72時間後には褐変がさらに進行した。
【0084】
【表8】
【0085】
(試験例9)
皮むき及び/又はカット野菜・果物の一例として、皮むき及びカットしたゴボウを用いて、下記の試験を行った。
【0086】
-溶液の調製-
下記の表9に記載の各成分を、下記の表9に記載の量で含有するように調製した溶液を作製した。なお、3N 水酸化ナトリウムはpH調整剤として使用した。
【0087】
-皮むき及び/又はカット野菜・果物の処理-
ゴボウをよく水で洗った後、ささがきをした。このゴボウを上記した溶液に10分間浸漬した。
その後、ゴボウをざるに上げて水切りした。
次いで、水切りしたゴボウを保存容器に入れ、10℃で保管した。
【0088】
-評価-
保管開始から72時間後のゴボウの状態を目視にて確認し、試験例1と同様にして変色・褐変抑制効果を評価した。評価結果を表9に示す。また、保管開始時、保管開始から24時間後、保管開始から48時間後、および保管開始から72時間後のゴボウの状態を図9に示す。
図9に示したように、試験例9-1では、保管開始から48時間後までは褐変が抑えられている(評価:+++)が、保管開始から72時間後に一部褐変がみられた。一方、試験例9-2では、保管開始から24時間後から褐変が確認され、保管開始から48時間後には全体に赤みを帯びるほど褐変が進行した。
【0089】
【表9】
【0090】
(試験例10)
皮むき及び/又はカット野菜・果物の一例として、皮むき及びカットしたリンゴを用いて、下記の試験を行った。
【0091】
-溶液の調製-
下記の表10に記載の各成分を、下記の表10に記載の量で含有するように調製した溶液を作製した。なお、3N 水酸化ナトリウムはpH調整剤として使用した。
【0092】
-皮むき及び/又はカット野菜・果物の処理-
リンゴの皮をむき、厚さ5cmのくし形にスライスした。このリンゴを上記した溶液に10分間浸漬した。
その後、リンゴをざるに上げて水切りした。
次いで、水切りしたリンゴを保存容器に入れ、10℃で保管した。
【0093】
-評価-
保管開始から72時間後のリンゴの状態を目視にて確認し、試験例1と同様にして変色・褐変抑制効果を評価した。評価結果を表10に示す。また、保管開始時、保管開始から24時間後、保管開始から48時間後、および保管開始から72時間後のリンゴの状態を図10に示す。
図10に示したように、試験例10-2では、保管開始から24時間後に褐変が確認された。
【0094】
【表10】
【0095】
以上のように、本発明によれば、皮むき及び/又はカット野菜・果物の保管時の変色・褐変を抑制することができ、また、色彩やみずみずしさ、風香味などを保つことができ、その品質を簡便に且つ効果的に保持することができることが確認された。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10