IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-エッチング方法及びエッチング装置 図1
  • 特開-エッチング方法及びエッチング装置 図2
  • 特開-エッチング方法及びエッチング装置 図3
  • 特開-エッチング方法及びエッチング装置 図4
  • 特開-エッチング方法及びエッチング装置 図5
  • 特開-エッチング方法及びエッチング装置 図6
  • 特開-エッチング方法及びエッチング装置 図7
  • 特開-エッチング方法及びエッチング装置 図8
  • 特開-エッチング方法及びエッチング装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164332
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】エッチング方法及びエッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164488
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 光一
(74)【代理人】
【識別番号】100131598
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 和宗
(72)【発明者】
【氏名】田中 康基
(72)【発明者】
【氏名】米澤 隆宏
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA06
5F004BB05
5F004BB12
5F004BB18
5F004BB19
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB29
5F004BD03
5F004CA02
5F004CA04
5F004CA08
5F004DA20
5F004DA29
5F004DB02
5F004DB03
5F004DB07
5F004EA28
5F004FA08
(57)【要約】
【課題】基板上の膜へのダメージを低減可能なエッチング技術を提供する。
【解決手段】基板に形成されたシリコン含有膜をエッチングする方法が提供される。エッチング方法は、(a)基板を支持した基板支持部を0℃以下の温度に設定した状態で、基板のシリコン含有膜に対して反応する反応ガスをシリコン含有膜の表面に吸着させ、シリコン含有膜の表層にシリコン含有膜と反応ガスとの反応層を形成する工程と、(b)反応層を除去する工程と、(c)(a)と(b)を繰り返す工程と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成されたシリコン含有膜をエッチングする方法であって、
(a)基板を支持した基板支持部を0℃以下の温度に設定した状態で、前記基板のシリコン含有膜に対して反応する反応ガスをシリコン含有膜の表面に吸着させ、前記シリコン含有膜の表層に前記シリコン含有膜と前記反応ガスとの反応層を形成する工程と、
(b)前記反応層を除去する工程と、
(c)前記(a)と前記(b)を繰り返す工程と、を有する、
エッチング方法。
【請求項2】
前記基板は、シリコン含有膜を含む第1の領域と、シリコン含有膜以外の膜を含む第2の領域を有するものであり、
前記(a)において、前記第1の領域のシリコン含有膜の表層に前記反応層が形成され、
前記(b)において、前記第1の領域の前記反応層が除去されて、前記第2の領域に対し前記第1の領域が選択的にエッチングされる、
請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記反応ガスは、前記第1の領域に含まれる前記シリコン含有膜、及び、前記第2の領域に含まれる前記膜に対して反応するガスであり、
前記(a)において、前記反応ガスが前記第2の領域の膜の表面にさらに吸着され、前記第2の領域の前記膜の表層に、前記第1の領域の反応層よりも揮発性の低い反応層が形成され、
前記(b)において、前記第1の領域の反応層が、前記第2の領域の反応層よりも多く揮発して、前記第2の領域に対し前記第1の領域が選択的にエッチングされる、
請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記反応ガスは、HFガスを含む、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記シリコン含有膜は、シリコン酸化膜、ポリシリコン膜、炭化シリコン膜、シリコン窒化膜の中の少なくとも一つを含む、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項6】
基板に形成されたカーボン膜をエッチングする方法であって、
(a)基板を支持した基板支持部を0℃以下の温度に設定した状態で、前記基板のカーボン膜に対して反応する反応ガスを前記カーボン膜の表面に吸着させ、前記カーボン膜の表層に前記カーボン膜と前記反応ガスとの反応層を形成する工程と、
(b)前記反応層を除去する工程と、
(c)前記(a)と前記(b)を繰り返す工程と、を有する、
エッチング方法。
【請求項7】
前記(b)は、基板の温度を上昇させること、基板の周囲の圧力を下げることの中の少なくとも一つにより行われる、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記(b)の基板の温度を上昇させることは、基板を加熱すること、基板に光を照射すること、基板にイオンを供給することの中の少なくとも一つにより行われる、
請求項7に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記(a)と前記(b)は、同一のチャンバで行われる、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記(a)と前記(b)は、異なるチャンバで行われる、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記(a)と前記(b)は、大気圧より低い圧力の雰囲気内で行われる、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項12】
基板に形成されたシリコン含有膜をエッチングするエッチング装置であって、
基板を支持する基板支持部と、
前記基板支持部の温度を調整可能な温度調整部と、
基板に前記シリコン含有膜に対して反応する反応ガスを供給するガス供給部と、
基板のシリコン含有膜に形成された反応層を除去する除去部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、
(a)基板を支持した基板支持部を前記温度調整部により0℃以下の温度に設定した状態で、前記ガス供給部により基板に前記反応ガスを供給し、前記反応ガスを前記シリコン含有膜の表面に吸着させ、前記シリコン含有膜の表層に前記シリコン含有膜と前記反応ガスとの反応層を形成し、
(b)前記除去部により前記反応層を除去し、
(c)前記(a)と前記(b)を繰り返す、
制御を実行する、
エッチング装置。
【請求項13】
基板に形成されたカーボン膜をエッチングするエッチング装置であって、
基板を支持する基板支持部と、
前記基板支持部の温度を調整可能な温度調整部と、
基板に前記カーボン膜に対して反応する反応ガスを供給するガス供給部と、
基板のカーボン膜に形成された反応層を除去する除去部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、
(a)基板を支持した基板支持部を前記温度調整部により0℃以下の低温にした状態で、前記ガス供給部により基板に前記反応ガスを供給し、前記反応ガスを前記カーボン膜の表面に吸着させ、前記カーボン膜の表層に前記カーボン膜と前記反応ガスとの反応層を形成し、
(b)前記除去部により前記反応層を除去し、
(c)前記(a)と前記(b)を繰り返す、
制御を実行する、
エッチング装置。
【請求項14】
基板に形成された膜をエッチングするエッチング装置であって、
基板を支持し、円周に沿って回動させる回動部と、
前記回動部の温度を調整可能な温度調整部と、
前記円周上に配置された複数の処理空間と、を備え、
前記複数の処理空間は、
基板を支持した回動部を0℃以下の低温にした状態で、基板に反応ガスを供給し、反応ガスを膜の表面に吸着させ、膜の表層に反応層を形成する処理を実行可能な少なくとも1つの第1の処理空間と、
前記反応層を除去する処理を実行可能な少なくとも1つの第2の処理空間と、を有し、
前記第1の処理空間と前記第2の処理空間は、前記円周に沿って配置されており、
前記基板は、前記円周に沿って回動して、前記第1の処理空間及び前記第2の処理空間で処理される、
エッチング装置。
【請求項15】
前記エッチング装置は、2つ以上の前記第1の処理空間及び2つ以上の前記第2の処理空間を備え、
前記2つ以上の第1の処理空間の各々と前記2つ以上の第2の処理空間の各々は、前記円周に沿って交互に配置されており、
前記基板は、前記円周に沿って回動して、交互に配置された前記2つ以上の第1の処理空間及び前記2つ以上の第2の処理空間で処理される、
請求項14に記載のエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、エッチング方法及びエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを用いてシリコン酸化膜のエッチングを継続して行うための技術として、特許文献1に記載された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-173240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板上の膜へのダメージを低減可能なエッチング技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの例示的実施形態において、基板に形成されたシリコン含有膜をエッチングする方法であって、(a)基板を支持した基板支持部を0℃以下の温度に設定した状態で、シリコン含有膜に対して反応する反応ガスをシリコン含有膜の表面に吸着させ、シリコン含有膜の表層にシリコン含有膜と反応ガスとの反応層を形成する工程と、(b)反応層を除去する工程と、(c)(a)と(b)を繰り返す工程と、を有する、エッチング方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、基板上の膜へのダメージを低減可能なエッチング技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】エッチング装置の一例を概略的に示す図である。
図2】本エッチング方法の主な工程の一例を示すフローチャートである。
図3】一実施形態の本エッチング方法において、シリコン含有膜がエッチングされる様子を示す説明図である。
図4】一実施形態の本エッチング方法において、第2の領域に対し第1の領域が選択的にエッチングされる様子を示す説明図である。
図5】一実施形態の本エッチング方法において、第2の領域に対し第1の領域が選択的にエッチングされる様子を示す説明図である。
図6】HFガスの吸着時(工程S1時)のHFガス分圧と、HFガスの脱離時(工程S2時)のSiF4発生量及び換算シリコン酸化膜のエッチング深さとの関係を示すグラフである。
図7】エッチング装置の他の一例の断面を概略的に示す図である。
図8図7のエッチング装置のX-X断面の一例を概略的に示す図である。
図9】イオン生成部を有するエッチング装置の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、基板に形成されたシリコン含有膜をエッチングする方法であって、(a)基板を支持した基板支持部を0℃以下の温度に設定した状態で、基板のシリコン含有膜に対して反応する反応ガスをシリコン含有膜の表面に吸着させ、シリコン含有膜の表層にシリコン含有膜と反応ガスとの反応層を形成する工程と、(b)前記反応層を除去する工程と、(c)(a)と(b)を繰り返す工程と、を有する、エッチング方法が提供される。
【0010】
一つの例示的実施形態において、基板は、シリコン含有膜を含む第1の領域と、シリコン含有膜以外の膜を含む第2の領域を有するものであり、(a)において、第1の領域のシリコン含有膜の表層に反応層が形成され、(b)において、第1の領域の反応層が除去されて、第2の領域に対し第1の領域が選択的にエッチングされる。
【0011】
一つの例示的実施形態において、反応ガスは、第1の領域に含まれるシリコン含有膜、及び、第2の領域に含まれる膜に対して反応するガスであり、(a)において、反応ガスが第2の領域の膜の表面にさらに吸着され、第2の領域の膜の表層に、第1の領域の反応層よりも揮発性の低い反応層が形成され、(b)において、第1の領域の反応層が、第2の領域の反応層よりも多く揮発して、第2の領域に対し第1の領域が選択的にエッチングされる。
【0012】
一つの例示的実施形態において、反応ガスは、HFガスを含む。
【0013】
一つの例示的実施形態において、シリコン含有膜は、シリコン酸化膜、ポリシリコン膜、炭化シリコン膜、シリコン窒化膜の中の少なくとも一つを含む。
【0014】
一つの例示的実施形態において、基板に形成されたカーボン膜をエッチングする方法であって、(a)基板を支持した基板支持部を0℃以下の温度に設定した状態で、基板のカーボン膜に対して反応する反応ガスをカーボン膜の表面に吸着させ、カーボン膜の表層にカーボン膜と反応ガスとの反応層を形成する工程と、(b)反応層を除去する工程と、(c)(a)と(b)を繰り返す工程と、を有する、エッチング方法が提供される。
【0015】
一つの例示的実施形態において、(b)は、基板の温度を上昇させること、基板の周囲の圧力を下げることの中の少なくとも一つにより行われる。
【0016】
一つの例示的実施形態において、(b)の基板の温度を上昇させることは、基板を加熱すること、基板に光を照射すること、基板にイオンを供給することの中の少なくとも一つにより行われる。
【0017】
一つの例示的実施形態において、(a)と(b)は、同一のチャンバで行われる。
【0018】
一つの例示的実施形態において、(a)と(b)は、異なるチャンバで行われる。
【0019】
一つの例示的実施形態において、(a)と(b)は、大気圧より低い圧力の雰囲気内で行われる。
【0020】
一つの例示的実施形態において、基板に形成されたシリコン含有膜をエッチングするエッチング装置であって、基板を支持する基板支持部と、基板支持部の温度を調整可能な温度調整部と、基板に前記シリコン含有膜に対して反応する反応ガスを供給するガス供給部と、基板のシリコン含有膜に形成された反応層を除去する除去部と、制御部と、を有し、制御部は、(a)基板を支持した基板支持部を温度調整部により0℃以下の温度に設定した状態で、ガス供給部により基板に反応ガスを供給し、反応ガスをシリコン含有膜の表面に吸着させ、シリコン含有膜の表層にシリコン含有膜と反応ガスとの反応層を形成し、(b)除去部により反応層を除去し、(c)(a)と(b)を繰り返す、制御を実行する、エッチング装置が提供される。
【0021】
一つの例示的実施形態において、基板に形成されたカーボン膜をエッチングするエッチング装置であって、基板を支持する基板支持部と、基板支持部の温度を調整可能な温度調整部と、基板にカーボン膜に対して反応する反応ガスを供給するガス供給部と、基板のカーボン膜に形成された反応層を除去する除去部と、制御部と、を有し、制御部は、(a)基板を支持した基板支持部を温度調整部により0℃以下の低温にした状態で、ガス供給部により基板に反応ガスを供給し、反応ガスをカーボン膜の表面に吸着させ、カーボン膜の表層にカーボン膜と反応ガスとの反応層を形成し、(b)除去部により反応層を除去し、(c)(a)と(b)を繰り返す、制御を実行する、エッチング装置が提供される。
【0022】
一つの例示的実施形態において、基板に形成された膜をエッチングするエッチング装置であって、基板を支持し、円周に沿って回動させる回動部と、回動部の温度を調整可能な温度調整部と、円周上に配置された複数の処理空間と、を備え、複数の処理空間は、基板を支持した回動部を温度調整部により0℃以下の低温にした状態で、基板に反応ガスを供給し、反応ガスを膜の表面に吸着させ、膜の表層に反応層を形成する処理を実行可能な少なくとも1つの第1の処理空間と、反応層を除去する処理を実行可能な少なくとも1つの第2の処理空間と、を有し、第1の処理空間と第2の処理空間は、円周に沿って配置されており、基板は、円周に沿って回動して、第1の処理空間及び第2の処理空間で処理される、エッチング装置が提供される。
【0023】
一つの例示的実施形態において、エッチング装置は、2つ以上の第1の処理空間及び2つ以上の第2の処理空間を備え、2つ以上の第1の処理空間の各々と2つ以上の第2の処理空間の各々は、円周に沿って交互に配置されており、基板は、円周に沿って回動して、交互に配置された2つ以上の第1の処理空間及び2つ以上の第2の処理空間で処理される。
【0024】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
<エッチング装置1の構成>
以下に、エッチング処理システムの構成例について説明する。図1は、エッチング装置1の一例を概略的に示す図である。一つの例示的実施形態に係るエッチング(以下「本エッチング方法」という)は、エッチング装置1を用いて実行される。
【0026】
エッチング処理システムは、エッチング装置1及び制御部2を含む。エッチング装置1は、チャンバ10、基板支持部11、ランプ部12、ガス供給部13、排気システム14を含む。
【0027】
一実施形態において、チャンバ10は、アルミニウムなどを含む金属製である。チャンバ10は、筒状の形状を有する。チャンバ10は、基板支持部11上に、天井壁や側壁等で規定される処理空間(内部空間)10sを形成する。チャンバ10の側壁には、基板Wをチャンバ10内に搬入出するための基板搬入出口20が形成されている。基板搬入出口20には、例えば開閉扉(ゲートバルブ)21が設けられている。開閉扉21は、図示しない駆動装置により開閉されるように構成されている。
【0028】
一実施形態において、基板支持部11は、処理空間10sの底部に設けられている。基板支持部11は、アルミニウムなどを含む材質の円柱形状を有する。基板支持部11は、基板Wを載置して支持する。ウェハは基板Wの一例である。一実施形態において、基板支持部11には、基板支持部11の温度及び基板Wの温度を調整可能な温度調整部30が設けられている。
【0029】
温度調整部30は、少なくとも冷却機能を有する。温度調整部30は、冷却機能と加熱機能の両方を有していてもよい。一実施形態において、温度調整部30は、基板支持部11の内部を通る流路40を有している。流路40は、伝熱流体の流体供給源41に接続されている。流路40には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路40は、基板支持部11の外部の流体供給源41から基板支持部11の内部を通り、基板支持部11の外部の流体供給源41に戻るように形成されている。流路40に低温の伝熱流体が流れると、その伝熱流体による吸熱により基板支持部11を介して基板Wが冷却される。なお、流路40に高温の伝熱流体を流すことにより、流路40を基板Wの加熱機能としても使用することができる。
【0030】
一実施形態において、温度調整部30は、ヒータ50を有していてもよい。ヒータ50は、ヒータ電源51に接続され、ヒータ電源51から供給された電力により発熱する。基板Wは、ヒータ50の熱により基板支持部11を介して加熱される。
【0031】
基板支持部11には、図示しない静電チャック、リフター(リフトピン)が設けられている。一実施形態において、静電チャックは、直流電源に接続された静電電極を有する。直流電源から静電電極に直流電圧が印加されると、静電チャックと基板Wとの間に静電引力(クーロン力)が発生し、基板Wは、その静電引力によって静電チャックに引き付けられて、基板支持部11の表面に吸着保持される。リフターは、基板支持部11を上下方向に貫通する複数の貫通孔に配置され、図示しない駆動装置により貫通孔内を上下方向に移動する。一実施形態において、基板Wは、図示しない搬送アームによってチャンバ10内に搬入出される。リフターは、基板支持部11上で基板Wを支持し昇降させ、搬送アームとの間で基板Wをやり取りし、基板Wを基板支持部11上に載置することができる。
【0032】
ランプ部12は、反応層の除去部の一例である。一実施形態において、ランプ部12は、基板支持部11上の基板Wに光を照射する。ランプ部12は、処理空間10sの天井部に設けられ、基板支持部11に対向している。ランプ部12は、複数の光源60を有する。処理空間10sの天井壁には、石英等を含む透明な窓61が設けられ、光源60は、窓61の上に設けられている。光源60一例は、例えばフラッシュランプである。光源60は、電源62に接続されており、電源62からの給電により所定の周期で光を点灯することができる。基板Wは、光源60から照射される光により加熱され、昇温する。なお、ランプ部12は、チャンバ10の天井壁ではなく、チャンバ10の他の部分、例えば側壁等に設けられていてもよい。
【0033】
一実施形態において、ガス供給部13は、処理空間10sに開口するガス導入口70を有している。ガス導入口70は、少なくとも1つのガスソース71と、少なくとも1つの流量制御器72に接続されている。ガスソース71からガス導入口70に供給されたガスは、処理空間10sに導入される。ガスは、板Wの膜に物理吸着され、膜と反応する反応ガスを含む。反応ガスは、HF,H3PO4,HCl,H2SO4,HNO3,H22,CH3COOHの中の少なくとも一つのガスを含む。なお、ガス導入口70は、チャンバ10の側壁ではなく、チャンバ10の他の部分、例えば天井壁等に設けられていてもよい。
【0034】
一実施形態において、排気システム14は、例えばチャンバ10の底部に設けられたガス排出口80を有している。排気システム14は、ガス排出口80に接続される圧力調整弁及び真空ポンプ81を含む。圧力調整弁及び真空ポンプ81によって、処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。なお、ガス排出口80は、チャンバ10の底部ではなく、チャンバ10の他の部分、例えば側壁や天井壁等に設けられていてもよい。
【0035】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をエッチング装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにエッチング装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2は、ランプ部12、ガス供給部13、排気システム14、温度調整部30などの動作を制御する。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがエッチング装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータを含んでもよい。コンピュータは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)、記憶部、及び通信インターフェースを含んでもよい。処理部は、記憶部からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部に格納され、処理部によって記憶部から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェースに接続されている通信回線であってもよい。記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェースは、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してエッチング装置1との間で通信してもよい。
【0036】
<本エッチング方法の一例>
図2は、エッチング装置1で行われる本エッチング方法の主な工程を示すフローチャートである。一実施形態において、本エッチング方法は、基板Wの表面に形成されたシリコン含有膜をエッチングする。一実施形態において、エッチング対象膜であるシリコン含有膜は、シリコン酸化膜(SiO2膜)、ポリシリコン膜(Poly-Si膜)、炭化シリコン膜(SiC膜)、シリコン窒化膜(SiN膜)の中の少なくとも一つを含む。図3は、一実施形態の本エッチング方法において、シリコン含有膜がエッチングされる様子を示す説明図である。
【0037】
先ず、下地膜UF及びシリコン含有膜Aが形成された基板Wが用意される(図3の状態(a))。次に、基板Wは、搬送アームにより、図1に示す基板搬入出口20を通じてチャンバ10内に搬入される。基板Wは、リフターにより基板支持部11に載置され、静電チャックにより基板支持部11上に吸着保持される。なお、シリコン含有膜Aは、チャンバ10内で基板Wに形成されてもよい。
【0038】
次に、流路40に低温の伝熱流体が流され、基板支持部11上の基板Wが0℃以下に冷却され、基板支持部11が0℃以下の温度(低温)に設定され維持される。このときの基板Wの温度は、後述の工程S1において基板Wの表面に反応ガスの吸着層が形成される温度である。基板支持部11の温度は、より好ましくは-10℃以下であり、さらに好ましくは-70℃以上-20℃以下である。伝熱流体の設定温度は、-5℃以下、好ましくは-15℃以下であり、さらに好ましくは-70℃以上-25℃以下の温度である。なお、基板W及び基板支持部11の温度の設定は、基板W及び基板支持部11の温度を目標温度(一例として、0℃以下の温度)にすることだけでなく、基板W及び基板支持部11が目標温度になるように温度調整部において温度設定を行うことも含む。流路40に伝熱流体が流れ始めるタイミングは、基板Wが基板支持部11に載置される前であってもよいし、基板Wが基板支持部11に載置されると同時であってもよい。
【0039】
基板W及び基板支持部11が低温に維持された状態で、ガス供給部13により処理空間10sに反応ガスGが供給される(図3の状態(b))。反応ガスGは、基板Wのシリコン含有膜Aの表面において冷却され、シリコン含有膜Aの表面に吸着する。シリコン含有膜Aの表面には、熱平衡作用により、反応ガスGの吸着層Bが形成される。吸着層Bの厚みは、およそ一定に保たれる。吸着層Bの厚みは、反応ガスGの分圧に依存し、吸着層Bが所望の厚みになるように反応ガスGの供給圧が調整されている。吸着層Bとシリコン含有膜Aの境界の反応ガスGの分子は、シリコン含有膜Aの表面に物理吸着し、シリコン含有膜Aの表層には、反応ガスGの分子と自発的に反応した反応層A1が形成される(図2の工程S1)。一実施形態において、所定時間経過後、ガス供給部13による反応ガスGの供給と、温度調整部30による基板Wの冷却が停止される。
【0040】
次に、ランプ部12により、基板Wのシリコン含有膜Aの表面に光が照射され、基板W(シリコン含有膜A)が昇温する。なお、このときの光の照射は、一定周期で断続的に行われてもよいし、一定時間継続的に行われてもよい。これにより、図3の状態(c)のように反応層A1の揮発が進行し、吸着層Bの反応ガスGと共に反応層A1が、基板Wから脱離し除去される(図2の工程S2)。所定時間経過後、ランプ部12による光の照射が停止される。なお、工程S2において、ガス供給部13によるガスの供給が、工程S1に引き続き行われていてもよい。
【0041】
次に、再び、ガス供給部13により処理空間10sに反応ガスGが供給される。これにより、図3の状態(b)のようにシリコン含有膜Aの表面に吸着層Bが形成され、反応ガスGの分子がシリコン含有膜Aの表面に吸着し、シリコン含有膜Aの表層に反応層A1が形成される(図2の工程S1)。
【0042】
次に、再度、ランプ部12により基板Wのシリコン含有膜Aの表面に光が照射される。これにより、図3の状態(c)のように吸着層Bの反応ガスGと共に反応層A1が、基板Wから脱離し除去される(図2の工程S2)。
【0043】
工程S1と工程S2が所定回数繰り返される。繰り返し回数は、シリコン含有膜Aのエッチング量により適宜設定される。繰り返し回数は、1回、複数回を含む。こうして、図3の状態(d)のようにシリコン含有膜Aが所望の深さまでエッチングされる。
【0044】
最後のランプ部12による光の照射が停止された後、基板Wがリフターにより持ち上げられ、搬送アームに受け渡され、チャンバ10から搬出される。これにより、本エッチング方法が終了する。
【0045】
<シリコン含有膜のエッチング例>
次に、本エッチング方法において、基板Wが、シリコン含有膜Aを含む第1の領域R1と、シリコン含有膜A以外の膜Cを含む第2の領域R2を含み、第2の領域R2に対し第1の領域R1を選択的にエッチングする場合の一例を説明する。図4は、かかる一例において、第2の領域R2に対し第1の領域R1が選択的にエッチングされる様子を示す説明図である。
【0046】
一実施形態において、シリコン含有膜Aはシリコン酸化膜であり、膜Cはカーボン膜である。反応ガスGはHFガスである。シリコン酸化膜Aを含む第1の領域R1と、カーボン膜Cを含む第2の領域R2とを有する基板Wが用意される(図4の状態(a))。カーボン膜Cは、シリコン含有膜よりもHFガスに対する反応性が低い膜の一例である。
【0047】
工程S1において、図4の状態(b)のように反応ガスGであるHFガスが、第1の領域R1のシリコン酸化膜Aと第2の領域R2のカーボン膜Cの表面に吸着し、HFガスの吸着層Bが形成される。HFガスの分子がシリコン酸化膜Aの表層に物理吸着し自発的に反応して反応層A1が形成される。これに対し、カーボン膜Cは、HFガスと反応しない。
【0048】
このとき、例えば次の(1)の化学反応が起きている。
SiO2+4HF→SiF4(揮発性)+2H2O(揮発性)・・・(1)
【0049】
工程S2において、図4の状態(c)のようにシリコン酸化膜Aの反応層A1が揮発する。吸着層Bと共に反応層A1が脱離し除去される。カーボン膜Cは、脱離せず、そのまま残留する。
【0050】
そして、工程S1と工程S2が所定回数繰り返される。こうして、図4の状態(d)のようにカーボン膜Cの第2の領域R2に対しシリコン酸化膜Aの第1の領域R1が選択的にエッチングされる。
【0051】
<シリコン含有膜の他のエッチング例>
シリコン含有膜の他のエッチング例として、シリコン含有膜Aがシリコン酸化膜であり、膜Cがシリコン窒化膜(例えばSi34膜)である場合を説明する。図5は、かかる一例において、第2の領域R2に対し第1の領域R1が選択的にエッチングされる様子を示す説明図である。シリコン酸化膜Aを含む第1の領域R1と、シリコン窒化膜Cを含む第2の領域R2とを有する基板Wが用意される(図5の状態(a))。
【0052】
工程S1において、図5の状態(b)のように反応ガスGであるHFガスが、第1の領域R1のシリコン酸化膜Aと第2の領域R2のシリコン窒化膜Cの表面に吸着し、HFガスの吸着層Bが形成される。HFガスの分子がシリコン酸化膜Aの表層に物理吸着し自発的に反応して反応層A1が形成される。HFガスの分子がシリコン窒化膜Cの表層に吸着し、反応層C1が形成される。
【0053】
このとき、例えば次の(1)、(2)の化学反応が起きている。
SiO2+4HF→SiF4(揮発性)+2H2O(揮発性)・・・(1)
Si34+16HF→3SiF4(揮発性)+4NH4F(不揮発性)・・・(2)
【0054】
工程S2において、図5の状態(c)のようにシリコン酸化膜Aの反応層A1が揮発する。吸着層Bと共に反応層A1が脱離し除去される。シリコン窒化膜Cの反応層C1は、不揮発性であるため、脱離しないか、或いは脱離が反応層A1に比べて遅く、残留する。
【0055】
そして、工程S1と工程S2が所定回数繰り返される。こうして、図5の状態(d)のようにシリコン窒化膜Cの第2の領域R2に対しシリコン酸化膜Aの第1の領域R1が選択的にエッチングされる。
【0056】
本例示的実施形態によれば、基板Wに形成されたシリコン含有膜Aをエッチングするエッチング方法及びエッチング装置1において、基板Wを支持した基板支持部11を0℃以下の温度に設定した状態で、反応ガスGをシリコン含有膜Aの表面に吸着させ、シリコン含有膜Aの表層にシリコン含有膜Aと反応ガスGとの反応層A1を形成する工程(工程S1)と、反応層A1を除去する工程(工程S2)とを行う。そして、工程S1と工程S2を繰り返す。一般的にプラズマエッチングでは、プラズマイオンの衝突により基板上の膜にダメージを与えることがある。本例示的実施形態によれば、シリコン含有膜Aの反応層A1が反応ガスGの吸着により形成されるため、エッチングの際に、膜にダメージを与えることを低減することができる。
【0057】
本例示的実施形態によれば、図4及び図5に示したように、基板Wが、シリコン含有膜Aを含む第1の領域R1と、シリコン含有膜以外の膜Cを含む第2の領域R2を有するものである。そして、工程S1において、第1の領域R1のシリコン含有膜Aの表層に反応層A1を形成し、工程S2において、第1の領域R1の反応層A1を除去して、第2の領域R2に対し第1の領域R1を選択的にエッチングする。これにより、第2の領域R2に対し第1の領域R1を高い選択比でエッチングすることができる。
【0058】
本例示的実施形態によれば、図5に示したように、工程S1において、反応ガスGを第2の領域R1の膜Cの表面に吸着させ、第2の領域R2の膜Cの表層に、第1の領域R1の反応層A1よりも揮発性の低い反応層C1を形成する。そして、工程S2において、第1の領域R1の反応層A1を、第2の領域R2の反応層C1よりも多く揮発させて除去し、第2の領域R2に対し第1の領域R1を選択的にエッチングする。これにより、第2の領域R2に対し第1の領域R1を高い選択比でエッチングすることができる。
【0059】
本例示的実施形態によれば、反応ガスGは、HFガスを含むので、シリコン含有膜Aのエッチングを好適に行うことができる。また、シリコン含有膜Aへのダメージを低減することができる。
【0060】
本例示的実施形態によれば、工程S2は、基板Wの温度を上昇させることにより行われる。これにより、シリコン含有膜Aの反応層A1の揮発、脱離を適切に行うことができる。本例示的実施形態では、プラズマを使用しないので、プラズマイオンによる膜へのダメージを防止することができる。
【0061】
工程S2における基板Wの温度を上昇させることは、基板Wに光を照射することであるので、安価な装置で簡単に反応層A1を除去することができる。
【0062】
工程S1と工程S2は、同一のチャンバ10で行われるので、エッチングを迅速に行うことができる。
【0063】
<実施例>
HFガスの吸着時(工程S1時)のHFガス分圧と、HFガス脱離時にシリコン酸化膜のエッチング量との関係を調べる測定を行った。図6のグラフは、HFガスの吸着時(工程S1時)のHFガス分圧と、HFガスの脱離時(工程S2時)のSiF4発生量及び換算シリコン酸化膜のエッチング量(換算OxEA)との関係を示す測定結果である。なお、換算シリコン酸化膜のエッチング量とは、SiF4発生量をシリコン酸化膜のエッチング量に換算したものである。かかる測定結果から、HFガスの供給により、好適にシリコン酸化膜のエッチングが行われることを確認することができた。また、HFガスの供給圧とエッチング量が相関することを確認することができた。
【0064】
本エッチング方法においてエッチング対象がシリコン酸化膜の場合、反応ガスGは、HF,HCl,HNO3,H22,H2SO4の中の少なくとも一つのガスを含むものであればよい。
【0065】
本エッチング方法においてエッチング対象のシリコン含有膜は、シリコン酸化膜の他、ポリシリコン膜、炭化シリコン膜、シリコン窒化膜であってもよい。エッチング対象がポリシリコン膜の場合、反応ガスGは、HF,HNO3,HCl,H22,CH3COOH,H2SO4,H3PO4の中の少なくとも一つのガスを含むものであればよい。エッチング対象が炭化シリコン膜の場合、反応ガスGは、HF,H3PO4,HNO3の中の少なくとも一つのガスを含むものであればよい。エッチング対象がシリコン窒化膜の場合、反応ガスGは、HF,H2SO4,HNO3,HCl,H3PO4の中の少なくとも一つのガスを含むものであればよい。
【0066】
<エッチング装置1の他の構成例>
図7は、エッチング装置1の他の一例の断面を概略的に示す図である。図8は、図7のエッチング装置1のX-X断面の一例を概略的に示す図である。
【0067】
一実施形態において、エッチング装置1は、チャンバ10の処理空間10sに、複数枚の基板Wを保持して回動させる回転テーブル100を有している。回転テーブル100は、回動部の一例である。回転テーブル100は、図8に示すように例えば4枚の基板Wを載置し保持することができる。回転テーブル100は、4枚の基板Wを所定の円周上の45度間隔で保持することができる。図7に示すように回転テーブル100は、駆動部101により回転することができる。これにより各基板Wは、回転テーブル100の中心軸周りの所定の円周上を回動する。一実施形態において、回転テーブル100には、回転テーブル100及び基板Wの温度を調整可能な温度調整部30が設けられている。一実施形態において、温度調整部30は、上記実施の形態で記載したものと同様に構成されている。
【0068】
図8に示すように処理空間10sには、処理空間10sを4つの処理空間10s1、10s2、10s3、10s4に分ける隔壁110が設けられている。4つの処理空間10s1、10s2、10s3、10s4は、基板Wが回動する円周上に沿ってこの順に配置されている。4枚の基板Wは、回転テーブル100により所定の円周上で回動し、4つの処理空間10s1、10s2、10s3、10s4をこの順に回る。
【0069】
一実施形態において、エッチング装置1は、その他、図1の上記実施の形態のものと同様の構成を有する。すなわち本実施形態のエッチング装置1は、制御部2、ランプ部12、ガス供給部13、排気システム14等を有する。ランプ部12は、例えば2つの処理空間10s2と処理空間10s4に設けられている。なお、ランプ部12は、他の2つの処理空間10s1と処理空間10s3にも設けられていてもよい。
【0070】
ガス供給部13は、少なくとも処理空間10s1と処理空間10s3に反応ガスGを供給できる。処理空間10s1と処理空間10s3のチャンバ10の側壁に、ガス導入口70が設けられている。また、排気システム14は、少なくとも処理空間10s2と処理空間10s4の雰囲気を排気できる。処理空間10s1と処理空間10s3のチャンバ10の底壁に、ガス排出口80が設けられている。処理空間10s1と処理空間10s3は、第1の処理空間の一例であり、処理空間10s2と処理空間10s4は、第2の処理空間の一例である。
【0071】
本実施形態におけるエッチング装置1を用いた本エッチング方法では、先ず、回転テーブル100に4枚の基板Wが保持される。回転テーブル100は、温度調整部30により0℃以下の低温に維持される。次に、4枚の基板Wが回転テーブル100により所定の円周上を回動する。各基板Wは、例えば4つの処理空間10s1、10s2、10s3、10s4をこの順に回る。処理空間10s1では、温度調整部30及び回転テーブル100により基板Wが冷却され、ガス供給部13により反応ガスGが供給される。これにより、反応ガスGが基板Wのシリコン含有膜Aに吸着し、反応層A1が形成される(工程S1)。次に、処理空間10s2において、ランプ部12により光が基板Wに照射され、反応層A1が揮発し、反応層A1が脱離し除去される(工程S2)。
【0072】
次に、処理空間10s3において、再び、温度調整部30及び回転テーブル100により基板Wが冷却され、ガス供給部13により反応ガスGが供給される。これにより、反応ガスGが基板Wのシリコン含有膜Aに吸着し、新たな反応層A1が形成される(工程S1)。次に、処理空間10s4において、再び、ランプ部12により光が基板Wに照射され、反応層A1が揮発し、反応層A1が脱離し除去される(工程S2)。基板Wは、さらに回動し、処理空間10s1、10s2、10s3、10s4を繰り返し回り、工程S1と工程S2が繰り返し行われる。工程S1と工程S2が所定回数繰り返されると、回転テーブル100が停止し、4枚の基板Wがチャンバ10から搬出され、本エッチング方法が終了する。
【0073】
本例示的実施形態の本エッチング方法及びエッチング装置1によれば、基板Wが回転テーブル100で回動しながら、工程S1と工程S2を繰り返すので、効率的かつ迅速にシリコン含有膜Aをエッチングすることができる。また、4枚の基板Wを一緒にエッチングすることができ、スループットを向上することができる。
【0074】
なお、本実施形態において、回転テーブル100は、単数枚の基板W、或いは4枚以外の複数枚、偶数枚の基板Wを保持できるように構成されていてもよい。処理空間10sは、4つに限られず、4つ以外の他の複数個に分けられてもよい。これらの複数の処理空間は、工程S1を行う第1の処理空間と工程S2を行う第2の処理空間を有し、第1の処理空間と第2の処理空間は、基板Wが回動する円周上の円周方向に交互に配置されていてもよい。第1の処理空間と第2の処理空間は、それぞれ単数であっても複数であってもよい。
【0075】
<反応層を除去する除去部の他の例>
エッチング装置1において、反応層を除去する除去部は、上述したランプ部12のような光を照射するものに限られず、他のものであってもよい。除去部は、反応膜を揮発させるものを含む。一実施形態における反応層を除去する除去部は、ヒータであってもよい。このヒータは、図1に示したエッチング装置1のヒータ50であってもよい。この場合、本エッチング方法の工程S2において、ヒータ50に給電し、ヒータ50の発熱により基板支持部11上の基板Wが加熱される。そして、基板Wのシリコン含有膜Aの反応層A1が揮発し、反応層A1は、基板Wから脱離し除去される。なお、図7に示したエッチング装置1は、ランプ部12の代わりにヒータを備えてもよい。当該ヒータは、回転テーブル100などに設けられてもよい。
【0076】
反応層を除去する除去部は、基板Wにイオンを供給するものであってもよい。一実施形態において、図9に示すようにエッチング装置1はイオン生成部130を有していてもよい。
【0077】
一実施形態において、イオン生成部130は、誘電体140、高周波アンテナ141、アンテナ素子142、高周波電源143、シールド部材144を含む。
【0078】
誘電体140は、基板支持部11に対向する処理空間10sの天井壁に形成される。高周波アンテナ141は、誘電体140の上部に平板状に形成される。高周波アンテナ141は、アンテナ素子142を有する。アンテナ素子142は、導体で構成されたコイル状に形成されている。高周波電源143は、アンテナ素子142に接続されている。高周波電源143は、所定の周波数の高周波をアンテナ素子142に供給することができる。シールド部材144は、高周波アンテナ141を覆うように配置されている。本実施形態におけるエッチング装置1は、ランプ部12に代えてイオン生成部130を有する以外、図1に示すエッチング装置1と同様の構成を有している。すなわち本実施形態のエッチング装置1は、制御部2、ガス供給部13、排気システム14等を有する。
【0079】
本実施形態のエッチング装置1を用いた本エッチング方法では、工程S2において、処理空間10sにガスが供給され、高周波電源143からアンテナ素子142に高周波電力が供給される。このとき供給されるガスは、工程S1と同様のHFガスを含むものであってもよい。これにより、処理空間10sに電磁波が生じ、その電磁波によりガスが励起され、イオンが発生する。このイオンが、基板Wの表面に供給され、基板Wのシリコン含有膜Aの反応層A1にエネルギーが付与され、反応層A1が揮発する。なお、処理空間10sへのガスの供給は、ガス供給部13を用いて行ってもよい。また、処理空間10sへのガスの供給は、チャンバ10の天井部の誘電体140にシャワーヘッドのようなガス導入部を設け、そのガス導入部から行ってもよい。また、基板支持部11には、イオンを誘引するための高周波バイアスが印加されてもよい。
【0080】
他に、反応層を除去する除去部は、基板Wに電磁波を供給するものであってもよいし、電子線を入射させるものであってもよい。
【0081】
以上の反応層を除去する除去部は、基板Wにエネルギ(熱)を付与するものであったが、基板Wの周囲の圧力を下げるものであってもよい。一実施形態において、図1に示したエッチング装置1の排気システム14は、基板Wの周囲の圧力を下げる手段として機能してもよい。工程S2において、排気システム14が作動し、処理空間10sの雰囲気がガス排出口80から排気され、処理空間10sが減圧される。こうすることで、基板Wのシリコン含有膜Aの反応層A1が揮発して除去される。
【0082】
以上で記載した、反応層を除去する除去部は、いずれか一つを用いてもよいし、任意に組み合わせた複数個を用いてもよい。すなわち基板Wに光を照射するもの、基板Wをヒータで加熱するもの、基板Wにイオンを供給するもの、基板Wに電磁波や電子線を供給するもの、基板Wの周囲の圧力を下げるものの中のいずれか一つを用いてもよいし、任意の複数個を用いてもよい。
【0083】
<本エッチング方法のその他の態様>
一実施形態において、本エッチング方法の工程S1と工程S2は、複数のチャンバで行われてもよい。一実施形態において、工程S1と工程S2は、別々チャンバで行われてもよい。
【0084】
一実施形態において、図1又は図9に示すようなエッチング装置1のチャンバ10内において、基板Wのシリコン含有膜Aの表層に反応ガスGを吸着させ、反応層A1を形成する工程S1が行われ、その後、基板Wが、別の図1又は図9に示すようなエッチング装置1のチャンバ10に搬送され、当該エッチング装置1において、反応層A1を揮発させて反応層A1を除去する工程S2が行われる。一実施形態において、第1のチャンバは、工程S1を行う機能を有し、第2のチャンバは、工程S2を行う機能を有していてもよい。
【0085】
一実施形態において、工程S1と工程S2は、大気圧より低い圧力(一例では、真空状態)の雰囲気内で行われてもよい。一例において、工程S1と工程S2が同じチャンバで行われる場合、工程S1と工程S2が行われる際にチャンバの内部圧力が大気圧よりも低い圧力であってもよい。また、一例において、工程S1と工程S2が異なる第1のチャンバと第2のチャンバで行われる場合、工程S1が行われる際の第1のチャンバの内部圧力、工程S2が行われる際の第2のチャンバの内部圧力、及び第1のチャンバと第2のチャンバとの間で基板が搬送される際の搬送路の内部圧力が大気圧よりも低い圧力であってもよい。すなわち、最初の工程S1が開始されてから最後の工程S2が終わるまでの間、大気圧よりも低い圧力の雰囲気内で基板が処理されてもよい。かかる一例においては、基板Wが処理途中で大気に曝されることがないので、処理が簡素化し製造コストを低減することができる。また基板Wの品質を向上することができる。
【0086】
<本エッチング方法の他のエッチング対象>
一実施形態において、本エッチング方法は、エッチング対象として基板Wのカーボン膜をエッチングするものであってもよい。本エッチング方法において、反応ガスGは、HNO3,H2SO4,H3PO4,CH3COOH,HCl,H22の中の少なくとも一つのガスを含む。工程S1において、基板Wのカーボン膜Aの表面に反応ガスGが吸着し、反応層A1が形成される。工程S2において、カーボン膜Aの反応層A1が揮発され、反応層A1が離脱し除去される。なお、上述のシリコン含有膜をエッチングする全ての実施形態は、カーボン膜Aをエッチングする実施形態に適用することができる。カーボン膜Aの一例は、アモルファスカーボン膜である。
【0087】
本エッチング及びエッチング装置は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。例えば、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【符号の説明】
【0088】
1……エッチング装置、2……制御部、10……チャンバ、11……基板支持部、12……ランプ部、13……ガス供給部、30……温度調整部、W…基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9