(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164378
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】欠陥検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/95 20060101AFI20241120BHJP
G02B 21/00 20060101ALN20241120BHJP
【FI】
G01N21/95 A
G02B21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079812
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有馬 英司
(72)【発明者】
【氏名】浦野 雄太
【テーマコード(参考)】
2G051
2H052
【Fターム(参考)】
2G051AA71
2G051AB02
2G051BA10
2G051BA11
2G051BB03
2G051CA03
2G051CB01
2G051CC07
2H052AA05
2H052AF02
(57)【要約】
【課題】DIC信号のダイナミックレンジ内外の広い欠陥高さの範囲において、低段差欠陥の高さおよび凹凸方向を高感度で検査することができる欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る欠陥検査装置は、微分干渉信号が、その周期的変化のうち、段差欠陥の高さが閾値範囲内であるときに対応する第1レンジ内にあるか否かを判定する。前記第1レンジ内にある場合は、前記微分干渉信号を用いて、前記段差欠陥の前記高さおよび前記段差欠陥の凹凸方向を検出し、前記第1レンジ内にない場合は、前記微分干渉信号を用いて前記段差欠陥の前記高さを検出するとともに、瞳面強度差信号を用いて前記段差欠陥の凹凸方向を検出する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を用いて試料を検査する欠陥検査装置であって、
光ビームを出射する光源、
前記光ビームを互いに直交する偏光の第1ビームと第2ビームに分岐する偏光分離素子、
前記試料に対して前記第1ビームと前記第2ビームを照射する光学系、
前記試料上における前記第1ビームと前記試料上における前記第2ビームの微分干渉信号を検出可能な位置に配置された第1センサ、
前記光学系の瞳面の像を検出可能な位置に配置された第2センサ、
前記微分干渉信号を取得することにより前記試料上の欠陥を検出するプロセッサ、
を備え、
前記プロセッサは、前記第1センサが検出した信号を用いて、前記試料が有する段差欠陥の高さに応じて周期的に変化する前記微分干渉信号を取得し、
前記プロセッサは、前記微分干渉信号が、前記周期的変化のうち、前記段差欠陥の前記高さが閾値範囲内であるときに対応する第1レンジ内にあるか否かを判定し、
前記プロセッサは、前記微分干渉信号が前記第1レンジ内にある場合は、前記第1センサが検出した信号を用いて、前記段差欠陥の前記高さおよび前記段差欠陥の凹凸方向を検出し、
前記プロセッサは、前記微分干渉信号が前記第1レンジ内にない場合は、前記第1センサが検出した信号を用いて前記段差欠陥の前記高さを検出するとともに、前記第2センサが検出した信号を用いて前記段差欠陥の凹凸方向を検出する
ことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記第2センサが検出した信号を用いて、前記段差欠陥の前記高さの絶対値が増加するのにともなって増加する高さ信号を取得し、
前記プロセッサは、前記高さ信号の大きさに基づき、前記微分干渉信号が前記第1レンジ内にあるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記光学系は、前記第1ビームと前記第2ビームが細線形状を有するように照射し、
前記第2センサは、前記試料から反射された前記光ビームの、前記細線形状を有するビームスポットの長手方向に沿って配列された2つの第1検出素子を備え、
前記プロセッサは、前記2つの第1検出素子が検出した信号の差分を求め、
前記プロセッサは、前記差分を用いて前記高さ信号を取得する
ことを特徴とする請求項2記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記第1ビームと前記第2ビームが前記段差欠陥を交差するように前記光ビームを走査する過程において、前記差分が前記段差欠陥においていったん減少した後に増加するのか、それとも、前記差分が前記段差欠陥においていったん増加した後に減少するのかに基づき、前記段差欠陥の凹凸方向を判定する
ことを特徴とする請求項3記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記欠陥検査装置はさらに、前記光源からの前記光ビームを前記試料へ向けて透過させるとともに前記試料からの反射光を前記第1センサへ向けて反射する第1ビームスプリッタを備え、
前記欠陥検査装置はさらに、前記光源からの前記光ビームを前記試料へ向けて透過させるとともに前記試料からの反射光を前記第2センサへ向けて反射する第2ビームスプリッタを備える
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記光学系は、前記第1ビームと前記第2ビームが細線形状を有するように照射し、
前記欠陥検査装置はさらに、前記試料を回転させる回転機構を備え、
前記光学系は、前記試料の回転方向に沿って間隔をあけて前記第1ビームと前記第2ビームを前記試料に対して照射し、
前記光学系は、前記回転方向に対して直交する方向に沿って前記第1ビームと前記第2ビームを延伸することにより、前記細線形状を形成する
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項7】
前記欠陥検査装置はさらに、前記第1センサへ向かう光ビームを互いに直交する第1偏光成分と第2偏光成分へ分離する第3ビームスプリッタを備え、
前記第1センサは、前記第3ビームスプリッタが出力する前記第1偏光成分を検出し、
前記欠陥検査装置はさらに、前記第3ビームスプリッタが出力する前記第2偏光成分を検出する第3センサを備え、
前記プロセッサは、前記第1偏光成分と前記第2偏光成分との間の差分を、前記第1偏光成分と前記第2偏光成分の和によって除算した結果を用いて、前記段差欠陥を検出する
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項8】
前記欠陥検査装置はさらに、前記第2センサへ向かう光ビームを第3ビームと第4ビームへ分岐させる分岐ミラーを備え、
前記第2センサは、前記第3ビームを検出する第3センサと前記第4ビームを検出する第4センサによって構成されており、
前記プロセッサは、前記第3センサが検出した信号と前記第4センサが検出した信号との間の差分を求め、
前記プロセッサは、前記差分を用いて前記高さ信号を取得する
ことを特徴とする請求項2記載の欠陥検査装置。
【請求項9】
前記分岐ミラーは、前記第2センサへ向かう光ビームの光束のうち一部のみを前記第4センサへ向けて反射するとともに残部を前記第3センサへ向けて通過させる位置および角度で配置されている
ことを特徴とする請求項8記載の欠陥検査装置。
【請求項10】
前記光学系は、前記第1ビームと前記第2ビームが細線形状を有するように照射し、
前記第2センサは、前記試料に対して照射する前記光ビームが有する前記細線形状のビームスポットの短手方向と長手方向それぞれに沿って配列された4つの検出素子を備え、
前記プロセッサは、各前記検出素子が検出した信号に基づき前記段差欠陥の前記高さを検出する
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項11】
前記第2センサは、前記長手方向に沿って配列している第1検出素子と第2検出素子を備え、
前記第2センサは、前記短手方向において前記第2検出素子と隣接する第3検出素子を備え、
前記第2センサは、前記短手方向において前記第1検出素子と隣接する第4検出素子を備え、
前記プロセッサは、前記第1検出素子が出力する第1検出信号と前記第2検出素子が出力する第2検出信号の和から、前記第3検出素子が出力する第3検出信号と前記第4検出素子が出力する第4検出信号の和を減算した結果を、前記短手方向における前記高さ信号として用い、
前記プロセッサは、前記第1検出信号と前記第4検出信号の和から、前記第2検出信号と前記第3検出信号の和を減算した結果を、前記長手方向における前記高さ信号として用いる
ことを特徴とする請求項10記載の欠陥検査装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、検出した前記段差欠陥の座標を特定してその結果を出力する
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、検出した前記段差欠陥の高さ情報を弁別してその結果を出力する
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて試料上の欠陥を検出する欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク(HD:Hard Disk)のデータ容量の増大が進むにつれて、HDの表面状態、欠陥サイズ、形状が性能や歩留まりに大きな影響を与えるようになっている。歩留まりを維持・向上させるためには、表面研磨作業や異物混入によってできる低アスペクト比の低段差欠陥(高さが数nm、幅が数十μm程度)を検査する必要がある。低アスペクト比の欠陥は、散乱光がほとんど発生しない低段差欠陥である。低段差欠陥を検出するためには、微分干渉顕微鏡の原理を用いた微分干渉コントラスト(DIC:Differential Interference Contrast)検査などの干渉計測が使用されている。
【0003】
DIC検査においては、検出に用いる光源の波長や試料面上の2つの偏光照明ビーム間距離(シア量)によって、高さ計測可能なダイナミックレンジが決まる。下記特許文献1は、形状計測ソフトウェアを用いてダイナミックレンジを拡大できる検査装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HDの製造工程における表面研磨に起因して、HD表面には、従来の散乱光検出によっては検出困難な、低段差欠陥が存在する。HD容量の増加にともない、磁気ヘッドとHD表面との間の距離が近くなり、これまで管理対象外だった低段差欠陥の検査が求められている。
【0006】
HD表面に現れる低段差欠陥の高さは数nm~百nm、サイズは数μm~数十μmのオーダとなっている。このような欠陥は低アスペクト比であるので、DIC方式の検査方式が適している。DIC方式の検査方式は、偏光の異なる2つの光線を試料に照射し、2つの光線の微分干渉コントラスト(DIC)信号を取得する。DIC信号は光線の干渉性による信号であるので、DIC信号は欠陥高さhに対してsin(4πh/λ)に比例して変化する。λは使用する光源の波長である。したがって、DIC信号は欠陥高さに対して周期的に変化し、ある高さ(数十mn)以上の欠陥(すなわちダイナミックレンジ外の欠陥)に対しては、正確な高さ信号の検出や欠陥の凹凸弁別をすることが困難である。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、DIC信号のダイナミックレンジ内外の広い欠陥高さの範囲において、低段差欠陥の高さおよび凹凸方向を高感度で検査することができる欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る欠陥検査装置は、微分干渉信号が、その周期的変化のうち、段差欠陥の高さが閾値範囲内であるときに対応する第1レンジ内にあるか否かを判定する。前記第1レンジ内にある場合は、前記微分干渉信号を用いて、前記段差欠陥の前記高さおよび前記段差欠陥の凹凸方向を検出し、前記第1レンジ内にない場合は、前記微分干渉信号を用いて前記段差欠陥の前記高さを検出するとともに、瞳面強度差信号を用いて前記段差欠陥の凹凸方向を検出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る欠陥検査装置によれば、DIC信号のダイナミックレンジ内外の広い欠陥高さの範囲において、低段差欠陥の高さおよび凹凸方向を高感度で検査することができる。前述した以外の課題、構成、および効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る欠陥検査装置1の概略構成図である。
【
図2】ディスク2表面の回転検査について説明する図である。
【
図3】センサ14とセンサ17それぞれの検出素子配置を示す。
【
図4】凸欠陥40と凹欠陥42それぞれの断面図と上面図である。
【
図5】凸欠陥40、凹欠陥42、および、センサ画素S2_1とS2_2から得られる瞳面強度差信号50の関係を説明する図である。
【
図6】凸欠陥40および凹欠陥42の位相段差41に対するシミュレーションによって得られた高さ信号(DIC)61と高さ信号(瞳面強度差信号)62のそれぞれの強度を示す。
【
図7】高さ信号(DIC)61のレンジを決定する方法について説明する図である。
【
図9】欠陥検査装置1が出力するデータを説明する図である。
【
図10】欠陥検査装置1のシステムブロック図である。
【
図11】実施形態2に係る欠陥検査装置1の構成図である。
【
図12】実施形態2におけるプロセッサ105の機能ブロック図である。
【
図13】実施形態3に係る欠陥検査装置1の構成図である。
【
図14】実施形態3における結像系の光瞳面強度を検出するセンサ130とセンサ131の素子構成を示す。
【
図15】分岐ミラー132を用いた、瞳面の光線を分岐する方法を説明する図である。
【
図16】実施形態3におけるプロセッサ105の機能ブロック図である。
【
図17】実施形態4におけるセンサ17の検出素子の構成を示す。
【
図18】実施形態4におけるプロセッサ105の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る欠陥検査装置1の概略構成図である。欠陥検査装置1は、試料に対して光を照射することにより、試料の表面上に存在する段差欠陥を検出する装置である。ここでは試料の1例として、ハードディスクの表面欠陥を検査する場合について説明する。欠陥検査装置1が備える
図1の各構成要素について以下説明する。
【0012】
光源3は、干渉性のある単一波長レーザによって構成されている。波長が長いと検出レンジが広くとれる。波長が短いと微小な高さに対する感度が高くなる。照明光学系4は、ディスク2に対して照射するビーム形状を最適なものに設定するために配置している。例えば後述する細線形状のビームスポットを実現するために、シリンドリカルレンズを2枚使い、アナモルフィックプリズムを使う、などによって照明光学系4を実現できる。ミラー5は一般的な反射ミラーを想定している。ビームの面内で位相が変化しないように設計した多層膜のものをミラー5として使うのが望ましい。
【0013】
ビームスプリッタ6と7は、ビームを分離するビームスプリッタである。ビームスプリッタ6は、光源3からの光をディスク2に対して透過させ、ディスク2から反射した光をセンサ17へ向けて反射する。ビームスプリッタ7は、光源3からの光をディスク2に対して透過させ、ディスク2から反射した光をセンサ14へ向けて反射するとともにビームスプリッタ6へ向けて透過させる。各ビームスプリッタは、センサ14とセンサ17それぞれにおいて最適な光量が得られるように、適切に強度を配分することが望ましい。ここでは、光源3の光量が十分にあることを前提として、1:1の強度に分離するビームスプリッタを想定している。
【0014】
1/4波長板8は、偏光分離素子9によってビームをP偏光とS偏光に分離する際に、光量を1:1に調整するために配備している。偏光分離素子9は、入射したビームをP偏光とS偏光に分離する。例えば、ノマルスキープリズムやウォラストンプリズムにより、偏光分離素子9を実現できる。
【0015】
集光光学系10は、偏光分離素子9によって分離された光をディスク2に対して集光する光学系である。微分干渉信号を得るために、偏光分離素子9の光の分離点とディスク2の集光点とが焦点になるように設定する。これにより、ディスク2から反射したP偏光とS偏光の光が再度偏光分離素子9によって合成される。実装上の都合から、集光光学系はリレー光学系を用いると設計が容易となる。
【0016】
検出光学系11は、ディスク2上のビームスポットがセンサ14上で結像されるように設定した光学系である。センサ14のサイズに最適となるように倍率変換することを想定している。センサ14は、ディスク2上のビームスポットと共役となる位置に配置することが望ましい。これにより微分干渉信号を精度よく検出することができる。
【0017】
検出光学系16は、集光光学系10の瞳面における像の強度がセンサ17によって検出できるように配備した光学系である。集光光学系10の瞳位置とセンサ17とが共役になるように設定することが望ましいが、集光光学系10の瞳像をセンサ17によって検出可能であればよい。検出光学系16は、センサ17のサイズに合うように倍率変換を実施してもよい。
【0018】
光源3から出力された光はディスク2に向けて照射される。偏光分離素子9によりビームはS偏光とP偏光の2つの光線に分離され、ディスク2表面に対して照射される。ディスク2から反射された光は、センサ14とセンサ17によって検出される。センサ14はS偏光とP偏光の2つの光線の微分干渉信号(DIC信号)を検出する。センサ17は集光光学系10の瞳面強度を検出する。
【0019】
プロセッサ105は、センサ14が検出したDIC信号およびセンサ17が検出した瞳面強度信号を用いて、ディスク2表面の低段差欠陥およびその凹凸方向を検出する。検出原理については後述する。
【0020】
瞳面強度は、ディスク2表面の低段差欠陥からの反射光の光線方向において、平坦な表面からの反射光に比べて微小な傾きを持つ。この傾きは結像面においては検出できないほど小さいが、瞳面においては中心から数%の強度比として算出することができる。この強度比は低段差欠陥の高さや平面サイズに依存している。よってプロセッサ105は、瞳面の強度比を求めることにより、低段差欠陥の高さや平面サイズを算出することができる。
【0021】
ディスク2の傾き、光学部品のズレ、気圧や温度変動による光学性能の変化などによって、DIC信号や瞳面強度信号に誤差が生じる。この誤差は欠陥高さの誤差になる。DIC信号の誤差を補正するために、偏光分離素子調整装置190を用いて、誤差によって生じる位相差をキャンセルする。例えばマイクロメータ等によって偏光分離素子9を調整することにより補正が可能である。この補正方法は一般的な技術なので詳細は割愛する。瞳面強度信号を補正するために、センサ位置調整機構191を用いる。例えばセンサ17の位置をマイクロメータ等によって調整することにより補正が可能である。この補正方法も一般的な技術なので詳細は割愛する。
【0022】
図2は、ディスク2表面の回転検査について説明する図である。ディスク2を検査する過程において、ディスク2はステージ103(後述)によってθ方向に回転される。ディスク2表面に対して光ビーム20と光ビーム21が照射される。光ビーム20と21はそれぞれ、
図1に示すS偏光とP偏光である。光ビーム20と光ビーム21のうちどちらがS偏光またはP偏光であっても検出される信号に変化はなく、これらは順不同である。光ビーム20と21は半径(R)方向22において長く、θ方向23(回転方向)において短い形状になっている(細線形状)。半径(R)方向に長くすることにより、1度に広範囲で表面欠陥を検出することができ、高スループットで全面検査を可能にしている。
【0023】
ディスク2表面の検査時、光ビーム20と21は動かさず、ディスク2をθ方向矢印23に沿って回転させながら半径方向矢印22に沿って移動させることにより、ディスク2全面を検査する。R方向のビーム径を長くすることにより、小さな欠陥も見逃さず全面検査を可能としている。
【0024】
図3は、センサ14とセンサ17それぞれの検出素子配置を示す。センサ14とセンサ17は、検出する光ビームの性質に応じて、検出面上において
図3に示すように検出素子を配置している。
【0025】
センサ14の表面はディスク2と共役な面になっており、観察している領域の結像光30が入射する(集光光がセンサ面において結像している)。センサ14はR方向にセンサ画素S1_1からS1_NまでN画素(N個の検出素子)を配置しており、画素ごとにDIC信号を検出することができる。これにより、画素ごとに検出感度を落とすことなく広い範囲でDIC信号を一度に検出することができる。すなわちディスク2上の小さな段差欠陥を見落としなく検出することができる。
【0026】
センサ17は、集光光学系10の瞳面強度を検出する。ディスク2表面上における細線方向(θ方向)の方がNA(Numerical Aperture)が大きいので、瞳面上においてはθ方向のほうがビームスポット31のサイズが大きい。したがってセンサ17はθ方向に沿って2画素の検出素子を配置している。プロセッサ105(またはセンサ17自身)は、画素S2_1とS2_2との間の信号強度差を検出する。
【0027】
図4は、凸欠陥40と凹欠陥42それぞれの断面図と上面図である。低段差欠陥としては、凸欠陥40のようにディスク2の表面にある突起した欠陥、凹欠陥42のようにディスク2の表面が凹んだ欠陥、などがある。低段差欠陥としては、表面サイズが0.1μm~数μmのものを想定している。この欠陥を見逃さないように細線ビームを用いる。
【0028】
DIC信号は、光ビーム21と20それぞれの照射位置間の位相段差41を検出することができる。位相段差41を検出することにより、凸欠陥40や凹欠陥42を検出することができる。
【0029】
図5は、凸欠陥40、凹欠陥42、および、センサ画素S2_1とS2_2から得られる瞳面強度差信号50の関係を説明する図である。瞳面強度差信号50は、(S2_1)-(S2_2)によって求めることができる。
【0030】
ディスク2の表面上で光ビームを走査する過程において、光ビーム20と21が凸欠陥40に対して照射されたとき、瞳面強度差信号50は
図5のように一度負方向に減少し、その後増加し、再度減少して元の状態に戻る。したがって
図5に示されているように、光ビーム20と21との間の間隔(シア量)だけ離れた距離において、同じ信号変化が2回生じる。
【0031】
凹欠陥42においても凸欠陥40と同様に、瞳面強度差信号50の変化が生じる。ただし、凸欠陥40における信号変化とは反転した信号変化となる。すなわち、光ビーム20と21が凹欠陥42に対して照射されたとき、瞳面強度差信号50は
図5のように一度正方向に増加し、その後減少し、再び増加して元の状態に戻る。凹欠陥42においても凸欠陥40と同様に、光ビーム20と21との間の間隔(シア量)だけ離れた距離において、同じ信号変化が2回生じる。
【0032】
信号変化強度51は、凸欠陥40の高さおよび凹欠陥42の深さに比例した値となる。したがって欠陥高さや欠陥深さを、瞳面強度差信号50から検出することが可能になる。また、凸欠陥40を検出したときの信号強度と凹欠陥42を検出したときの信号強度は互いに反転しているので、欠陥形状が凸なのか凹なのかを分類することができる。
【0033】
この瞳面での強度差信号の取得原理について簡単に説明する。ディスク2をθ矢印方向に回転させたとき、凸欠陥40および凹欠陥42により、反射光の角度分布が微小に変化する。その際、瞳面に設置されたセンサ画素S2_1の強度からS2_2の強度を減算する差分を取得すると、凸欠陥40においては、一度強度が減少した後、強度が増加し、再度減少して元の状態に戻る。この変化は、センサ画素S2_2の強度からS2_1の強度を減算する差分を求めた場合は、正負が反転した変化になる。
図3におけるθ方向と
図5におけるθ方向は同じであることを付言しておく。
【0034】
図6は、凸欠陥40および凹欠陥42の位相段差41に対するシミュレーションによって得られた高さ信号(DIC)61と高さ信号(瞳面強度差信号)62のそれぞれの強度を示す。
図6上段はDIC信号から算出された高さ信号(DIC)61である。
図6下段は瞳面強度差信号から算出された高さ信号(瞳面強度差信号)62である。本シミュレーションにおいて、光ビーム20と21の波長は660nmとし、凸欠陥40および凹欠陥42は高さ方向のみ変化させ、直径φは5μmとした。高さ信号(DIC)61と高さ信号(瞳面強度差信号)62はそれぞれの検出信号の最大値を1として規格化している。高さ信号(瞳面強度差信号)62においては、-270nmから270nmの欠陥高さの範囲における信号の最大値を1とした。
【0035】
高さ信号(DIC)61は、欠陥高さに対して周期的に信号が変化していることが分かる。高さ信号(DIC)61は下記式のように表すことができる。hは欠陥高さ、λは光線の波長である:高さ信号(DIC)61∝sin(4πh/λ)。したがって、欠陥高さの違いや凸欠陥と凹欠陥の違いがある場合においても、高さ信号(DIC)61の強度が同じとなる場合がある。すなわち、高さ信号(DIC)61のみでは、欠陥高さが±82.5nm以上のとき(欠陥高さが第1レンジ外であるとき)、欠陥の凹凸弁別および高さ検出ができなくなる。
【0036】
他方で高さ信号(瞳面強度差信号)62は、欠陥高さ(の絶対値)に比例して信号強度が大きくなるので、異なる欠陥高さで同じ信号強度になることはない。さらに、検出できる欠陥高さのレンジがDIC信号よりも広い。ただしこのレンジは欠陥サイズの影響を受ける。欠陥サイズが小さくなると、検出できる高さのレンジが小さくなる。瞳面強度差信号62の感度は高さ信号(DIC)61に比べて低く、±82.5nm以下の欠陥高さ(第1レンジ内の欠陥高さ)を正しく検出・分類することは難しい。
【0037】
以上に鑑みて、プロセッサ105は、第1レンジ内においては高さ信号(DIC)61を用いて欠陥の高さ検出および凹凸弁別を実施し、第1レンジ外においては前述の瞳面強度差信号50の信号形状を用いた凹凸弁別を実施するとともに、欠陥高さは高さ信号(DIC)61および高さ信号(瞳面強度差信号)62を用いて検出する。欠陥高さが第1レンジ内であるかどうかは、高さ信号(瞳面強度差信号)62の大きさから求めることができる。具体的手法は後述する。第1レンジ外においては、高さ信号(瞳面強度差信号)62の方が高さ信号(DIC)61よりも欠陥高さに対する精度が低いことに鑑みて、高さ信号(瞳面強度差信号)62から高さ信号(DIC)61の周期のみを判定し、最終的な欠陥高さは高さ信号(DIC)61を用いて決定するのがよい。
【0038】
図7は、高さ信号(DIC)61の周期を決定する方法について説明する図である。
図7は凸欠陥に対する周期決定方法について説明しており、
図6に示すグラフの右側半分に相当する。高さ信号(DIC)61は欠陥高さ0付近で第1レンジ63を有し、さらにその隣の第2レンジ64、第3レンジ65を有する。高さ信号(瞳面強度差信号)62の信号強度の大きさから、凸欠陥がいずれの周期に属する高さなのかを決定することができる。高さ信号(瞳面強度差信号)62は欠陥高さの絶対値に比例して信号強度が大きくなるからである。高さ信号(DIC)61がいずれの周期に属するかを決定すれば、高さ信号(DIC)61の信号値に基づき、正確な欠陥高さを決定することができる。
【0039】
図7における周期63~65は、同じ周期内において同じ信号値が存在しないように定める必要がある。これにより、DIC信号がいずれの周期内にあるかを特定すれば、その特定した周期内においては信号値と高さが1:1に対応することになるので、DIC信号が周期的に変化したとしても、DIC信号から欠陥高さを特定できる。例えば高さ信号(瞳面強度差信号)62が第1レンジ63に対応する閾値範囲内(
図7の左側の点線よりも左側)にある場合は、DIC信号が第1レンジ63内にあることを特定できる。その他の周期についても同様に、高さ信号(瞳面強度差信号)62を各周期に対応する閾値範囲と比較することにより判定できる。
【0040】
図8は、プロセッサ105の機能ブロック図である。センサ14とセンサ17の各受光面からの電流信号は、I/V変換器70とA/D変換器71によりデジタル信号に変換される。I/V変換器70とA/D変換器71は一般技術であるので詳細は割愛するが、検査速度を向上するために、周波数特性に注意して設計するとよい。
【0041】
A/D変換器71によって変換されたDIC信号は、ある強度レベルのオフセットを中心として周期変化する。オフセット除去部72はその強度レベルを除去して振幅のみを取得する。
【0042】
信号演算部75は、下記計算式にしたがって、瞳面強度差信号50(S)を計算する:S=(S2_1)-(S2_2)。信号強度評価部76は、瞳面強度差信号50に基づき信号変化強度51を計算する。第1レンジ判定部77は、高さ信号(DIC)61が第1レンジ63内であるか否かを判定する。第1レンジ63内である場合は、センサ14から得られた信号を用いて、段差欠陥を評価する。
【0043】
凹凸評価部73は、取得した振幅のみの信号を使って、段差欠陥を評価する。凹凸評価部73は変化のあった信号を抽出し、振幅が正か負かを見て凹凸を判定する。またθ方向の振幅の長さを計測することにより、欠陥の長さ情報を取得することができる。また、何個の受光面が変化しているかを計測することにより、R方向の欠陥長さ情報も取得することができる。凹凸評価部73は、微小欠陥のR方向およびθ方向の長さ情報とともに振幅情報を凹凸高さ評価部74に対して送る。
【0044】
凹凸高さ評価部74は、振幅と欠陥サイズに基づき、高さ情報を取得する。DICによる高さ情報の取得は、通常技術で判別できるので、詳細は割愛する。以上のようにセンサ14からは微小段差欠陥の凹凸種別、サイズ、高さを検出することができる。
【0045】
高さ信号(DIC)61が第1レンジ63外である場合は、センサ17から得られた信号を用いて、段差欠陥を評価する。凹凸評価部78は、
図5で説明した手法にしたがって、瞳面強度差信号50を用いて、段差欠陥が凸欠陥と凹欠陥のうちいずれであるかを判定する。
【0046】
周期判定部79は、高さ信号(DIC)61がいずれの周期に属するか(例:第2レンジ64、第3レンジ65、その他)を判定する。周期を決定するとき、段差欠陥が凸欠陥と凹欠陥のうちいずれであるかを考慮する。凸欠陥であれば
図7で説明した手順で周期を決定し、凹欠陥であれば
図7を正負反転した信号変化にしたがって周期を決定する。
【0047】
凹凸高さ評価部80は、周期判定部79が判定した周期にしたがって、DIC信号から欠陥高さを取得する。このとき、精度は劣るが、瞳面強度差信号50から求まる高さ信号(瞳面強度差信号)62により欠陥高さを決定してもよい。あるいはDIC信号と高さ信号(瞳面強度差信号)62を併用してもよい。
【0048】
プロセッサ105は、以上説明した手順により、微小段差欠陥の凹凸、サイズ、高さ情報を取得することができる。
【0049】
図9は、欠陥検査装置1が出力するデータを説明する図である。このデータが示す情報は、例えばプロセッサ105がモニタ上に提示するGUI(グラフィカルユーザインターフェース)上で提供することができる。
図9左は欠陥マップであり、
図9右はθ方向の欠陥高さ分布である。
【0050】
欠陥検査装置1は、ディスク2上に高さレベルに応じた欠陥情報がディスク2のどこにあるか表示することができる。
図9は、高さやサイズに応じて第1欠陥レベル92、第2欠陥レベル93、第3欠陥レベル94の3レベルを示す例である。例えば、許容範囲外の欠陥レベルをあらかじめ設定しておき、許容範囲外レベルの欠陥のみ表示するようにしてもよい。ディスク基準線91は、ディスク2上には無いが、画面上ではこれを表示することにより、ディスク位置と欠陥サイズと高さを視覚的に分かりやすく表示することができる。ディスク基準線91を設定できない場合は、ディスク半径位置に対する欠陥のサイズと高さを表示してもよい。また判定レベル95を設けておき、欠陥高さ96がそれを超えるとアラームが上がるようにしてもよい。
【0051】
ディスク2表面上における欠陥の位置は、光ビーム20と21を照射するときの座標に基づき特定することができる。プロセッサ105は、その座標を
図9のGUI上に反映することにより、画面上で欠陥位置を提示することができる。欠陥座標の数値なども併せて提示してもよい。
【0052】
図10は、欠陥検査装置1のシステムブロック図である。欠陥検査装置1は、コントロールパネル101、コントローラ102、ステージ103、光学系104、光源3、センサ14、センサ17、プロセッサ105、モニタ106を備える。
【0053】
コントロールパネル101は、ホスト100が装置を使いたい際に操作するGUIに相当する。ホスト100が検査した結果を参照する場合、モニタ106上でGUIを提示することにより、参照することができる。コントロールパネル101が受けた指令に基づきコントローラ102に対して検査に必要な情報を送る。
【0054】
コントローラ102は、ステージ103を駆動し、ディスク2を回転させるとともに光源3を点灯させる。ステージ103は、ディスク2の表裏を入れ替える機能と、ディスク2を交換する機能と、搬送する機能も有しており、複数のディスクの表裏を連続して検査することができる。これにより、複数のディスク2の表裏を高速に検査し、微小な低段差欠陥を検出することができる。
【0055】
光源3は、CW(連続波)で発光を続けてもよいし、消費電力を下げるために、ディスク2を検査する際のみ発光させてもよい。光学系104は、
図1に示す各光学系である。光源3から出射したビームは、光学系104によってディスク2へ集光され、ディスク2の欠陥情報がセンサ14と17によって検出される。センサ14と17が検出した検出信号は、プロセッサ105により処理され、欠陥情報を取得する。欠陥情報を取得する手順は上述の通りである。欠陥情報は、モニタ106上に表示される。
【0056】
<実施の形態1:まとめ>
実施形態1に係る欠陥検査装置1は、センサ14が検出するDIC信号のダイナミックレンジ外の欠陥に対して、瞳面に設置されたセンサ17が検出する瞳面強度差信号を用いて、凹凸方向の識別および欠陥高さを決定する。具体的には、欠陥高さに対して周期的に変化するDIC信号に対して,センサ17が検出する瞳面強度差信号を用いて、どの周期なのかを決定し、その結果に基づき、凹凸方向識別および欠陥高さを決定する。一般的に瞳面強度差信号によってダイナミックレンジ内の欠陥高さを検出することは検査手法の感度的に難しいが、本実施形態のようにDIC検査と瞳面強度分布検査を組み合わせることにより、数nm~数百nmの低段差欠陥を漏れなく検査することができる。
【0057】
<実施の形態2>
図11は、本発明の実施形態2に係る欠陥検査装置1の構成図である。実施形態1と比較すると、1/2波長板12、偏光ビームスプリッタ13、センサ15を新たに備える。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0058】
1/2波長板12は、入射した偏光を偏光ビームスプリッタ13に対して45°の偏光に変換する機能を有している。偏光ビームスプリッタ13は、P偏光を透過させ、S偏光を反射させる機能を有している。本実施形態2においては、DIC信号をセンサ14とセンサ15の2個のセンサにより検出する。具体的には、偏光分離素子9によってディスク2からの反射光が1つのビームに集光されたものを、偏光の位相を変えることにより再度2個のビームへ分割して検出する。
【0059】
センサ15は、センサ14と同じタイプのセンサであり、
図3のように検出素子がN分割されたセンサである。センサ14とセンサ15それぞれにおけるセンサ信号の差と和をとった後に差を和で割り算して信号を生成する。この信号処理をすると、レーザの強度変化に依存しない外乱の強い高さ情報を検出することができる。
【0060】
図12は、実施形態2におけるプロセッサ105の機能ブロック図である。実施形態1と比較すると、センサ15からの検出信号を処理するブロックが新たに追加されている。信号演算部120は、センサ14の信号をS1、センサ15の信号をS3とした場合、以下の演算を実施する:S=(S1-S3)/(S1+S3)。このとき、受光面毎の複数の信号が得られる。信号演算部120は、上記式によって差分を取得するので、オフセット除去部72と同じように強度レベルを除去できる。またセンサ14とセンサ15との間では高さに対する信号が逆位相で発生するので、振幅は2倍になる効果がある。さらにS1とS3を加算した信号で除算するので、レーザの強度情報を除去でき、レーザの強度揺れに依らない信号が得られる。このように実施形態2では、実施形態1に比べて、外乱に強いDIC信号が検出できる。
【0061】
<実施の形態3>
図13は、本発明の実施形態3に係る欠陥検査装置1の構成図である。実施形態1と比較すると、検出光学系18と19、分岐ミラー132を新たに備え、センサ17に代えてセンサ130と131を備える。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0062】
分岐ミラー132は集光光学系10の瞳像の強度分布を分岐できる位置に設置されており、例えば実施形態1におけるセンサ17の位置付近に設置するとよい。検出光学系18と19は、ディスク2上の光スポットがセンサ130と131に結像されるように設定した光学系である。センサ130と131のサイズに最適となるよう倍率変換することを想定している。センサ130と131は同じサイズであるほうが、信号処理に際して好ましい。光線を分岐ミラー132で一度光学的に分岐し、検出光学系18と19がそれぞれセンサ130と131に結像することにより、実施形態1に比べて高感度に瞳面強度差を検出することが可能になる。瞳面強度差は、センサ130と131がそれぞれ得た信号の差分を取ることにより取得できる。
【0063】
図14は、実施形態3における結像系の光瞳面強度を検出するセンサ130とセンサ131の素子構成を示す。センサ130と131の表面はディスク2と共役な面になっていて、観察している領域の結像光32と33が入射する(集光光がセンサ面に結像している)。センサ130はR方向にセンサ画素S4_1からS4_NまでN画素の素子を有する。センサ131も同様にR方向にセンサ画素S5_1からS5_NまでN画素の素子を有する。センサ130と131の画素ごとの差分を取ることにより、瞳面強度差信号を検出することができる。ディスク2の回転方向と、センサ画素の差分方向(どちらの画素からどちらの画素を減算するか)に対する信号変化の方向は、実施形態1と同様である。
【0064】
図15は、分岐ミラー132を用いた、瞳面の光線を分岐する方法を説明する図である。θ方向に光線の強度を分岐するように分岐ミラー132は設置されており、分岐された片方の分岐光線151はそのまま直進し、もう片方の分岐光線152は90度異なる方向に反射する。
【0065】
図16は、実施形態3におけるプロセッサ105の機能ブロック図である。実施形態1と比較すると、センサ130と131それぞれについて処理系が構成されている。信号演算部160よりも後段は実施形態1と同様である。
【0066】
信号演算部160は、センサ130の信号をS4、センサ131の信号をS5としたとき、以下の演算によって瞳面強度差信号50(S)を計算する:S=(S4)-(S5)。このとき受光面毎に信号が得られるが、それぞれの信号処理は実施形態1と同様にすればよい。これにより信号のチャンネル数が増えるが、それぞれの信号の欠陥に対する感度が上がる。センサ130とセンサ131の画素数を十分増やせば、第1レンジの信号であっても、十分な感度で瞳面強度差信号から欠陥高さを検出することができる。
【0067】
<実施の形態4>
図17は、本発明の実施形態4におけるセンサ17の検出素子の構成を示す。
図17に示す素子構成においては、検出素子がθ方向に加えてR方向にも分割されており、合計4分割となっている。センサ画素S6_1とS6_4の和信号、S6_3とS6_2の和信号をそれぞれ算出し、これらの差分を計算することにより、R方向の瞳面強度差信号を検出する。同時に、センサ画素S6_1とS6_2の和信号、S6_4とS6_3の和信号をそれぞれ算出し、これらの差分を計算することにより、θ方向の瞳面強度差信号を検出する。
【0068】
ディスク2表面上におけるθ方向よりもR方向の方がNAが小さいので、欠陥高さに対する感度はR方向において小さくなる。これにより、欠陥の高さが大きすぎてθ方向の瞳面強度差信号では検出できないレンジの欠陥については、R方向の瞳面強度差信号で検出することが可能である。
【0069】
図18は、実施形態4におけるプロセッサ105の機能ブロック図である。実施形態1と比較すると、信号演算部75に代えて信号演算部180と181を備え、さらに信号強度評価部182を新たに備える。信号演算部180が出力する信号は信号演算部75と同等のものであり、信号強度評価部76以降は実施形態1と同様である。信号演算部181が出力する信号は、R方向の瞳面強度差信号に対応し、欠陥高さに対する強度がθ方向の瞳面強度差信号よりも小さくなる。信号強度評価部182以降は実施形態1と同様である。
図18の構成により、実施形態1よりも広いダイナミックレンジをカバーすることが可能になる。
【0070】
<本発明の変形例について>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0071】
以上の実施形態において、コントローラ102とプロセッサ105は、これらの機能を実装した回路デバイスなどのハードウェアによって構成することもできるし、これらの機能を実装したソフトウェアをCPU(Central Processing Unit)などの演算装置が実行することにより構成することもできる。
【0072】
以上の実施形態においては、HDや半導体などの製造工程において実行する欠陥検査に用いられる検査装置に対して、本発明を適用する場合について説明した。本発明の適用対象はこれに限るものではなく、微小な段差欠陥を光学的に検出するその他の欠陥検査装置について適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1:欠陥検査装置
9:偏光分離素子
10:集光光学系
14:センサ
17:センサ
105:プロセッサ