(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164427
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】接合装置、接合システムおよび接合方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079891
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 浩範
(57)【要約】
【課題】チップの不良率を低減する。
【解決手段】本開示による接合装置の制御部は、取得部と算出部と選択部と調整処理部とを備える。取得部は第1基板の複数の第1接合予定箇所の位置情報および第2基板の複数の第2接合予定箇所の位置情報を取得する。算出部は取得された位置情報に基づき、相対位置および相対向きの調整量を規定する複数の制御パラメータの値の組み合わせ毎に、第1基板と第2基板とが接合された重合基板から得られるチップの個数の期待値を、第1接合予定箇所と当該第1接合予定箇所に対応する第2接合予定箇所とのずれの程度に応じて決定される性能ランク別に算出する。選択部は複数の算出結果のうち所望の条件に合致する算出結果が得られる組み合わせを選択する。調整処理部は選択された組み合わせを用いて相対位置および相対向きの調整を行う。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板とを接合する接合装置であって、
前記第1基板を保持する第1保持部と、
前記第2基板を保持する第2保持部と、
前記第1保持部に保持された前記第1基板と前記第2保持部に保持された前記第2基板との面内方向における相対位置および相対向きを調整する調整部と、
前記調整部を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記第1基板における複数の第1接合予定箇所の位置情報および前記第2基板における複数の第2接合予定箇所の位置情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された位置情報に基づき、前記相対位置および前記相対向きの調整量を規定する複数の制御パラメータの値の組み合わせ毎に、前記第1基板と前記第2基板とが接合された重合基板から得られるチップの個数の期待値を、前記第1接合予定箇所と当該第1接合予定箇所に対応する前記第2接合予定箇所とのずれの程度に応じて決定される性能ランク別に算出する算出部と、
前記算出部によって前記組み合わせ毎に算出された複数の算出結果のうち、所望の条件に合致する算出結果が得られる前記組み合わせを選択する選択部と、
前記選択部によって選択された前記組み合わせを用いて前記調整部を制御して前記相対位置および前記相対向きの調整を行う調整処理部と
を備える、接合装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記第1基板に対して前記複数の第1接合予定箇所に対応する複数の第1接合予定領域を設定するとともに、前記第2基板に対して前記複数の第2接合予定箇所に対応する複数の第2接合予定領域を設定し、前記第1接合予定領域と当該第1接合予定領域に対応する前記第2接合予定領域との重なり度に基づいて、前記第1接合予定領域または前記第2接合予定領域から得られる前記チップの前記性能ランクを決定する、請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
前記第1基板における前記複数の第1接合予定箇所を撮像する第1撮像部と、
前記第2基板における前記複数の第2接合予定箇所を撮像する第2撮像部と
をさらに備え、
前記取得部は、前記第1撮像部の撮像結果に基づいて前記複数の第1接合予定箇所の位置情報を取得し、前記第2撮像部の撮像結果に基づいて前記複数の第2接合予定箇所の位置情報を取得する、請求項1に記載の接合装置。
【請求項4】
前記重合基板において接合不良が発生する確率と当該接合不良が発生する領域の位置情報とを関連づけた想定不良情報を記憶する記憶部と、
前記算出部による算出結果を前記想定不良情報に基づいて補正する補正部と
をさらに備える、請求項1に記載の接合装置。
【請求項5】
前記接合装置内の環境を測定するセンサと、
前記重合基板において接合不良が発生する確率と前記環境との関係を示す環境起因不良情報を記憶する記憶部と
を備え、
前記制御部は、
前記センサによる測定結果と、前記記憶部に記憶された前記環境起因不良情報とに基づき、前記第1基板と前記第2基板との接合処理の実行の可否を判定する、請求項1に記載の接合装置。
【請求項6】
前記算出部による算出結果に基づいて、複数の前記第1基板および複数の前記第2基板の中から、接合処理に用いる前記第1基板および前記第2基板のペアを選定する選定部をさらに備える、請求項1に記載の接合装置。
【請求項7】
第1基板および第2基板の表面を改質する表面改質装置と、
改質された前記第1基板および前記第2基板の表面を親水化する表面親水化装置と、
親水化された前記第1基板と前記第2基板とを分子間力により接合する接合装置と
を備え、
前記接合装置は、
前記第1基板を保持する第1保持部と、
前記第2基板を保持する第2保持部と、
前記第1保持部に保持された前記第1基板と前記第2保持部に保持された前記第2基板との面内方向における相対位置および相対向きを調整する調整部と、
前記調整部を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記第1基板における複数の第1接合予定箇所の位置情報および前記第2基板における複数の第2接合予定箇所の位置情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された位置情報に基づき、前記相対位置および前記相対向きの調整量を規定する複数の制御パラメータの値の組み合わせ毎に、前記第1基板と前記第2基板とが接合された重合基板から得られるチップの個数の期待値を、前記第1接合予定箇所と当該第1接合予定箇所に対応する前記第2接合予定箇所とのずれの程度に応じて決定される性能ランク別に算出する算出部と、
前記算出部によって前記組み合わせ毎に算出された複数の算出結果のうち、所望の条件に合致する算出結果が得られる前記組み合わせを選択する選択部と、
前記選択部によって選択された前記組み合わせを用いて前記調整部を制御して前記相対位置および前記相対向きの調整を行う調整処理部と
を備える、接合システム。
【請求項8】
第1基板と第2基板とを接合する接合方法であって、
前記第1基板を保持する第1保持部を用いて前記第1基板を保持する工程と、
前記第2基板を保持する第2保持部を用いて前記第2基板を保持する工程と、
前記第1保持部に保持された前記第1基板と前記第2保持部に保持された前記第2基板との面内方向における相対位置および相対向きを調整する工程と
を含み、
前記調整する工程は、
前記第1基板における複数の第1接合予定箇所の位置情報および前記第2基板における複数の第2接合予定箇所の位置情報を取得する工程と、
前記取得する工程によって取得された位置情報に基づき、前記相対位置および前記相対向きの調整量を規定する複数の制御パラメータの値の組み合わせ毎に、前記第1基板と前記第2基板とが接合された重合基板から得られるチップの個数の期待値を、前記第1接合予定箇所と当該第1接合予定箇所に対応する前記第2接合予定箇所とのずれの程度に応じて決定される性能ランク別に算出する工程と、
前記算出する工程によって前記組み合わせ毎に算出された複数の算出結果のうち、所望の条件に合致する算出結果が得られる前記組み合わせを選択する工程と、
前記選択する工程によって選択された前記組み合わせを用いて、前記相対位置および前記相対向きを調整する調整部を制御する工程と
を含む、接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合装置、接合システムおよび接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハなどの基板同士を接合する接合装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、チップの不良率を低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による第1基板と第2基板とを接合する接合装置は、第1保持部と、第2保持部と、調整部と、制御部とを備える。第1保持部は、第1基板を保持する。第2保持部は、第2基板を保持する。調整部は、第1保持部に保持された第1基板と第2保持部に保持された第2基板との面内方向における相対位置および相対向きを調整する。制御部は、取得部と、算出部と、選択部と、調整処理部とを備える。取得部は、第1基板における複数の第1接合予定箇所の位置情報および第2基板における複数の第2接合予定箇所の位置情報を取得する。算出部は、取得部によって取得された位置情報に基づき、相対位置および相対向きの調整量を規定する複数の制御パラメータの値の組み合わせ毎に、第1基板と第2基板とが接合された重合基板から得られるチップの個数の期待値を、第1接合予定箇所と当該第1接合予定箇所に対応する第2接合予定箇所とのずれの程度に応じて決定される性能ランク別に算出する。選択部は、算出部によって組み合わせ毎に算出された複数の算出結果のうち、所望の条件に合致する算出結果が得られる組み合わせを選択する。調整処理部は、選択部によって選択された組み合わせを用いて調整部を制御して相対位置および相対向きの調整を行う。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、チップの不良率を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る接合システムの構成を示す模式平面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る上ウエハおよび下ウエハの模式側面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る接合装置の構成を示す模式平面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る接合装置の構成を示す模式側面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る上チャックおよび下チャックを示す模式図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第1接合予定領域および第2接合予定領域の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、算出部における算出結果の一例を示す表である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る接合システムが実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、ステップS110に示す処理の具体的な手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、フィードバック情報の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、第3実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図17】
図17は、第4実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示による接合装置、接合システムおよび接合方法を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0009】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、例えば製造精度、設置精度などの誤差および公差を許容するものとする。
【0010】
また、以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする直交座標系を示す場合がある。また、鉛直軸を回転中心とする回転方向をθ方向と呼ぶ場合がある。
【0011】
<接合システムの構成>
まず、第1実施形態に係る接合システム1の構成について、
図1、
図2を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る接合システム1の構成を示す模式平面図である。
図2は、第1実施形態に係る上ウエハW1および下ウエハW2の模式側面図である。
【0012】
図1に示す接合システム1は、第1基板W1と第2基板W2とを接合することによって重合ウエハTを形成する。
【0013】
第1基板W1および第2基板W2は、たとえばシリコンウエハや化合物半導体ウエハなどの半導体基板である。第1基板W1と第2基板W2とは、略同径を有する。
【0014】
以下では、第1基板W1を「上ウエハW1」と記載し、第2基板W2を「下ウエハW2」と記載する。すなわち、上ウエハW1は第1基板の一例であり、下ウエハW2は第2基板の一例である。また、上ウエハW1と下ウエハW2とを総称する場合、「ウエハW」と記載する場合がある。
【0015】
また、以下では、
図2に示すように、上ウエハW1の板面のうち、下ウエハW2と接合される側の板面を「接合面W1j」と記載し、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」と記載する。また、下ウエハW2の板面のうち、上ウエハW1と接合される側の板面を「接合面W2j」と記載し、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」と記載する。
【0016】
図1に示すように、接合システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2および処理ステーション3は、X軸正方向に沿って、搬入出ステーション2および処理ステーション3の順番で並べて配置される。また、搬入出ステーション2および処理ステーション3は、一体的に接続される。
【0017】
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚(たとえば、25枚)の基板を水平状態で収容するカセットC1、C2、C3がそれぞれ載置される。たとえば、カセットC1は上ウエハW1を収容するカセットであり、カセットC2は下ウエハW2を収容するカセットであり、カセットC3は重合ウエハTを収容するカセットである。
【0018】
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置される。かかる搬送領域20には、Y軸方向に延在する搬送路21と、この搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22とが設けられる。
【0019】
搬送装置22は、Y軸方向だけでなく、X軸方向にも移動可能かつZ軸周りに旋回可能である。そして、搬送装置22は、載置板11に載置されたカセットC1~C3と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、上ウエハW1、下ウエハW2および重合ウエハTの搬送を行う。
【0020】
なお、載置板11に載置されるカセットC1~C3の個数は、図示のものに限定されない。また、載置板11には、カセットC1、C2、C3以外に、不具合が生じた基板を回収するためのカセットなどが載置されてもよい。
【0021】
処理ステーション3には、各種装置を備えた複数の処理ブロック、たとえば3つの処理ブロックG1、G2、G3が設けられる。たとえば、処理ステーション3の正面側(
図1のY軸負方向側)には、第1処理ブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(
図1のY軸正方向側)には、第2処理ブロックG2が設けられる。また、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(
図1のX軸負方向側)には、第3処理ブロックG3が設けられる。
【0022】
第1処理ブロックG1には、第1基板W1および第2基板W2の接合面W1j,W2jを改質する表面改質装置30が配置される。表面改質装置30は、第1基板W1および第2基板W2の接合面W1j,W2jにおけるSiO2の結合を切断して単結合のSiOとすることで、その後親水化され易くするように接合面W1j,W2jを改質する。
【0023】
また、第1処理ブロックG1には、表面親水化装置40が配置される。表面親水化装置40は、たとえば純水によって上ウエハW1および下ウエハW2の接合面W1j,W2jを親水化するとともに、接合面W1j,W2jを洗浄する。
【0024】
表面親水化装置40では、たとえばスピンチャックに保持された上ウエハW1または下ウエハW2を回転させながら、当該上ウエハW1または下ウエハW2上に純水を供給する。これにより、上ウエハW1または下ウエハW2上に供給された純水が上ウエハW1または下ウエハW2の接合面W1j,W2j上を拡散し、接合面W1j,W2jが親水化される。
【0025】
ここでは、表面改質装置30と表面親水化装置40とが横並びで配置される場合の例を示したが、表面親水化装置40は、表面改質装置30の上方または下方に積層されてもよい。
【0026】
また、第2処理ブロックG2には、接合装置41が配置される。接合装置41は、親水化された上ウエハW1と下ウエハW2と分子間力により接合する。かかる接合装置41の詳細については後述する。
【0027】
第3処理ブロックG3には、上ウエハW1、下ウエハW2および重合ウエハTのトランジション(TRS)装置(図示せず)が設けられる。また、第3処理ブロックG3には、上ウエハW1または下ウエハW2を一時的に載置する載置部が設けられてもよい。載置部は、複数のウエハ(上ウエハW1または下ウエハW2)を載置可能であってもよい。
【0028】
また、
図1に示すように、第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3に囲まれた領域には、搬送領域60が形成される。搬送領域60には、搬送装置61が配置される。搬送装置61は、たとえば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。
【0029】
かかる搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3内の所与の装置に上ウエハW1、下ウエハW2および重合ウエハTを搬送する。
【0030】
また、接合システム1は、制御装置70を備える。制御装置70は、接合システム1の動作を制御する。制御装置70は、スイッチや各種センサなどからの信号に基づいて、接合システム1の動作を制御する。
【0031】
制御装置70は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。制御装置70は、たとえば、記憶部72に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって接合システム1の動作を制御する。かかる制御装置70の詳細については後述する。
【0032】
<接合装置の構成>
次に、接合装置41の構成について
図3および
図4を参照して説明する。
図3は、第1実施形態に係る接合装置41の構成を示す模式平面図であり、
図4は、第1実施形態に係る接合装置41の構成を示す模式側面図である。
【0033】
図3に示すように、接合装置41は、内部を密閉可能な処理容器190を有する。処理容器190の搬送領域60側の側面には、上ウエハW1、下ウエハW2および重合ウエハTの搬入出口191が形成され、当該搬入出口191には開閉シャッタ192が設けられている。
【0034】
処理容器190の内部は、内壁193によって、搬送領域T1と処理領域T2に区画される。上述した搬入出口191は、搬送領域T1における処理容器190の側面に形成される。また、内壁193にも、上ウエハW1、下ウエハW2および重合ウエハTの搬入出口194が形成される。
【0035】
搬送領域T1には、トランジション200、基板搬送機構201、反転機構220および位置調節機構210が、たとえば搬入出口191側からこの順番で並べて配置される。
【0036】
トランジション200は、上ウエハW1、下ウエハW2および重合ウエハTを一時的に載置する。トランジション200は、たとえば2段に形成され、上ウエハW1、下ウエハW2および重合ウエハTのいずれか2つを同時に載置することができる。
【0037】
基板搬送機構201は、たとえば鉛直方向(Z軸方向)、水平方向(Y軸方向、X軸方向)および鉛直軸周りの方向(θ方向)に移動自在な搬送アームを有する。基板搬送機構201は、搬送領域T1内または搬送領域T1と処理領域T2との間で上ウエハW1、下ウエハW2および重合ウエハTを搬送することが可能である。
【0038】
位置調節機構210は、上ウエハW1および下ウエハW2の水平方向の向きを調節する。具体的には、位置調節機構210は、上ウエハW1および下ウエハW2を保持して回転させる図示しない保持部を備えた基台211と、上ウエハW1および下ウエハW2のノッチ部の位置を検出する検出部212と、を有する。位置調節機構210は、基台211に保持された上ウエハW1および下ウエハW2を回転させながら検出部212を用いて上ウエハW1および下ウエハW2のノッチ部の位置を検出することにより、ノッチ部の位置を調節する。これにより、上ウエハW1および下ウエハW2の水平方向の向きが調節される。
【0039】
反転機構220は、上ウエハW1の表裏を反転させる。具体的には、反転機構220は、上ウエハW1を保持する保持アーム221を有する。保持アーム221は、水平方向(X軸方向)に延伸する。また、保持アーム221には、上ウエハW1を保持する保持部材222がたとえば4箇所に設けられている。
【0040】
保持アーム221は、たとえばモータなどを備えた駆動部223に支持される。保持アーム221は、かかる駆動部223によって水平軸周りに回動自在である。また、保持アーム221は、駆動部223を中心に回動自在であると共に、水平方向(X軸方向)に移動自在である。駆動部223の下方には、たとえばモータなどを備えた他の駆動部(図示せず)が設けられる。この他の駆動部によって、駆動部223は、鉛直方向に延伸する支持柱224に沿って鉛直方向に移動できる。
【0041】
このように、保持部材222に保持された上ウエハW1は、駆動部223によって水平軸周りに回動できると共に鉛直方向および水平方向に移動することができる。また、保持部材222に保持された上ウエハW1は、駆動部223を中心に回動して、位置調節機構210と後述する上チャック230との間を移動することができる。
【0042】
処理領域T2には、上ウエハW1の上面(非接合面W1n)を上方から吸着保持する上チャック230と、下ウエハW2の下面(非接合面W2n)を下方から吸着保持する下チャック231とが設けられる。下チャック231は、上チャック230よりも下方に設けられ、上チャック230と対向配置可能に構成される。上チャック230および下チャック231は、たとえばバキュームチャックである。上チャック230は上ウエハW1を保持する第1保持部の一例であり、下チャック231は下ウエハW2を保持する第2保持部の一例である。
【0043】
図4に示すように、上チャック230は、上チャック230の上方に設けられた支持部材270によって支持される。支持部材270は、たとえば、複数の支持柱271を介して処理容器190の天井面に固定される。
【0044】
上チャック230の側方には、下チャック231に保持された下ウエハW2の上面(接合面W2j)を撮像する上部撮像部235が設けられている。具体的に、上部撮像部235は、下ウエハW2における複数の第2接合予定箇所を撮像する。上部撮像部235には、たとえばCCDカメラが用いられる。上部撮像部235は、第2撮像部の一例である。
【0045】
上チャック230には、上チャック230に保持された上ウエハW1の面内方向(水平方向)における位置および向きを調整する調整部が設けられてもよい。かかる調整部としては、いずれの公知技術が用いられてもよい。たとえば、調整部としては、特開2021-125660号公報に記載された基板位置決め装置が用いられてもよい。基板位置決め装置は、上チャック230をX軸方向、Y軸方向およびθ方向に移動させることにより、上チャック230に保持されている上ウエハW1の面内方向における位置および向きを調整する。
【0046】
下チャック231は、下チャック231の下方に設けられた第1移動部250に支持される。第1移動部250は、後述するように下チャック231を水平方向(X軸方向)に移動させる。また、第1移動部250は、下チャック231を鉛直方向に移動自在、且つ鉛直軸周りに回転可能に構成される。
【0047】
第1移動部250には、上チャック230に保持された第1基板W1の下面(接合面W1j)を撮像する下部撮像部236が設けられている。具体的に、下部撮像部236は、上ウエハW1における複数の第1接合予定箇所を撮像する。下部撮像部236には、たとえばCCDカメラが用いられる。下部撮像部236は、第1撮像部の一例である。
【0048】
第1移動部250は、一対のレール252,252に取り付けられている。一対のレール252,252は、第1移動部250の下面側に設けられ、水平方向(X軸方向)に延伸する。第1移動部250は、レール252に沿って移動自在に構成されている。
【0049】
一対のレール252,252は、第2移動部253に配設されている。第2移動部253は、一対のレール254,254に取り付けられている。一対のレール254,254は、第2移動部253の下面側に設けられ、水平方向(Y軸方向)に延伸する。第2移動部253は、レール254に沿って水平方向(Y軸方向)に移動自在に構成される。なお、一対のレール254,254は、処理容器190の底面に設けられた載置台255上に配設されている。
【0050】
第1移動部250および第2移動部253等により、調整部256が構成される。調整部256は、下チャック231をX軸方向、Y軸方向およびθ方向に移動させることにより、下チャック231に保持されている下ウエハW2の面内方向における位置および向きを調整する。接合装置41は、上チャック230に設けられた調整部および下チャック231に設けられた調整部256を用いて上ウエハW1と下ウエハW2との面内方向における相対位置および相対向きを調整する。なお、これに限らず、接合装置41は、上チャック230に設けられた調整部および下チャック231に設けられた調整部256の一方のみを用いて、上ウエハW1と下ウエハW2との面内方向における相対位置および相対向きを調整してもよい。
【0051】
ここで、相対位置とは、水平面内(XY平面内)における上ウエハW1を基準とした下ウエハW2の位置、または、下ウエハW2を基準とした上ウエハW1の位置のことである。相対位置は、たとえばXY座標で表される。また、相対向きとは、水平面内における上ウエハW1下ウエハW2の向き、または、水平面内における下ウエハW2を基準とする上ウエハW1の向きのことである。相対向きは、たとえばθで表される。
【0052】
また、調整部256は、下チャック231をZ軸方向に移動させることにより、上チャック230に保持されている上ウエハW1と、下チャック231に保持されている下ウエハW2との鉛直方向の位置調整を行う。
【0053】
なお、ここでは、下チャック231をX軸方向、Y軸方向およびθ方向に移動させることとしたが、調整部256は、たとえば、下チャック231をX軸方向およびY軸方向に移動させ、上チャック230をθ方向に移動させてもよい。また、ここでは、下チャック231をZ軸方向に移動させることとしたが、調整部256は、たとえば、上チャック230をZ軸方向に移動させてもよい。
【0054】
次に、上チャック230および下チャック231の構成について
図5を参照して説明する。
図5は、第1実施形態に係る上チャック230および下チャック231を示す模式図である。
【0055】
図5に示すように、上チャック230は、本体部260を有する。本体部260は、支持部材270によって支持される。支持部材270および本体部260には、支持部材270および本体部260を鉛直方向に貫通する貫通孔266が形成される。貫通孔266の位置は、上チャック230に吸着保持される上ウエハW1の中心部に対応している。貫通孔266には、ストライカー280の押圧ピン281が挿通される。
【0056】
ストライカー280は、支持部材270の上面に配置され、押圧ピン281と、アクチュエータ部282と、直動機構283とを備える。押圧ピン281は、鉛直方向に沿って延在する円柱状の部材であり、アクチュエータ部282によって支持される。
【0057】
アクチュエータ部282は、たとえば電空レギュレータ(図示せず)から供給される空気により一定方向(ここでは鉛直下方)に一定の圧力を発生させる。アクチュエータ部282は、電空レギュレータから供給される空気により、上ウエハW1の中心部と当接して当該上ウエハW1の中心部にかかる押圧荷重を制御することができる。また、アクチュエータ部282の先端部は、電空レギュレータからの空気によって、貫通孔266を挿通して鉛直方向に昇降自在になっている。
【0058】
アクチュエータ部282は、直動機構283に支持される。直動機構283は、たとえばモータを内蔵した駆動部によってアクチュエータ部282を鉛直方向に沿って移動させる。
【0059】
ストライカー280は、以上のように構成されており、直動機構283によってアクチュエータ部282の移動を制御し、アクチュエータ部282によって押圧ピン281による上ウエハW1の押圧荷重を制御する。これにより、ストライカー280は、上チャック230に吸着保持された上ウエハW1の中心部を押圧して下ウエハW2に接触させる。
【0060】
本体部260の下面には、上ウエハW1の上面(非接合面W1n)に接触する複数のピン261が設けられている。複数のピン261は、たとえば、径寸法が0.1mm~1mmであり、高さが数十μm~数百μmである。複数のピン261は、たとえば2mmの間隔で均等に配置される。
【0061】
上チャック230は、これら複数のピン261が設けられている領域のうちの一部の領域に、上ウエハW1を吸着する複数の吸着部を備える。具体的には、上チャック230における本体部260の下面には、上ウエハW1を吸引して吸着保持する複数の外側吸着部391および複数の内側吸着部392が設けられている。複数の外側吸着部391および複数の内側吸着部392は、平面視において円弧形状または円環状の吸着領域を有する。複数の外側吸着部391および複数の内側吸着部392は、ピン261と同じ高さを有する。
【0062】
複数の外側吸着部391は、本体部260の外周部に配置される。複数の外側吸着部391は、真空ポンプ等の図示しない吸引装置に接続され、上ウエハW1の外周部を吸引して吸着保持する。
【0063】
複数の内側吸着部392は、複数の外側吸着部391よりも本体部260の径方向内側において、周方向に沿って並べて配置される。複数の内側吸着部392は、複数の真空ポンプ等の図示しない吸引装置に接続され、上ウエハW1の外周部と中心部との間の領域を吸引して吸着保持する。
【0064】
下チャック231は、下ウエハW2と同径もしくは下ウエハW2より大きい径を有する本体部290を有する。ここでは、下ウエハW2よりも大きい径を有する下チャック231を示している。本体部290の上面は、下ウエハW2の下面(非接合面W2n)と対向する対向面である。
【0065】
本体部290の上面には、下ウエハW2の下面(非接合面W2n)に接触する複数のピン291が設けられている。複数のピン291は、たとえば、径寸法が0.1mm~1mmであり、高さが数十μm~数百μmである。複数のピン291は、たとえば2mmの間隔で均等に配置される。
【0066】
また、本体部290の上面には、下側リブ292が複数のピン291の外側に環状に設けられている。下側リブ292は、下ウエハW2の外周端付近に環状に形成され、下ウエハW2の外周部を全周に亘って支持する。
【0067】
また、本体部290は、複数の下側吸引口293を有する。複数の下側吸引口293は、下側リブ292によって囲まれた吸着領域に複数設けられる。複数の下側吸引口293は、図示しない吸引管を介して真空ポンプ等の図示しない吸引装置に接続される。
【0068】
下チャック231は、下側リブ292によって囲まれた吸着領域を複数の下側吸引口293から吸引することによって吸着領域を減圧する。これにより、吸着領域に載置された下ウエハW2は、下チャック231に吸着保持される。
【0069】
下側リブ292が下ウエハW2の下面の外周部を全周に亘って支持するため、下ウエハW2は外周端付近まで適切に吸引される。これにより、下ウエハW2の全面を吸着保持することができる。また、下ウエハW2の下面は複数のピン291に支持されるため、下ウエハW2の吸引を解除した際に、下ウエハW2が下チャック231から剥がれ易くなる。
【0070】
<制御装置の構成>
次に、第1実施形態に係る制御装置70の構成について、
図6を参照しながら説明する。
図6は、第1実施形態に係る制御装置70の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、制御装置70は、制御部71と、記憶部72とを備える。
【0071】
なお、制御装置70は、
図6に示す機能部以外にも、既知のコンピュータが有する各種の機能部、たとえば各種の入力デバイスや音声出力デバイスなどの機能部を有することとしてもかまわない。
【0072】
制御部71は、たとえば、CPU、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などによって、記憶部72に記憶されているプログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。
【0073】
また、制御部71は、たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路により実現されるようにしてもよい。
【0074】
制御部71は、取得部71aと、算出部71bと、選択部71cと、調整処理部71dとを備え、以下に説明する制御処理の機能や作用を実現または実行する。なお、制御部71の内部構成は、
図6に示した構成に限られず、後述する制御処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。
【0075】
取得部71aは、上ウエハW1における複数の第1接合予定箇所の位置情報および下ウエハW2における複数の第2接合予定箇所の位置情報を取得する。ここで、第1接合予定箇所および第2接合予定箇所について
図7Aおよび
図7Bを参照して説明する。
図7Aは、上チャック230に吸着保持された上ウエハW1を下方から見上げた模式図である。
図7Bは、下チャック231に吸着保持された下ウエハW2を上方から見下ろした模式図である。たとえば、
図7Aおよび
図7Bに示すように、ウエハWには複数の接合予定箇所が位置する。具体的には、
図7Aに示すように、上ウエハW1には複数の第1接合予定箇所P1が位置している。また、
図7Bに示すように、下ウエハW2には複数の第2接合予定箇所P2が位置している。これらの接合予定箇所P1,P2は、アライメントマークではなく、接合したい箇所の位置であってもよい。たとえば、接合予定箇所は、ウエハに形成された複数のチップ上の任意の位置であってもよい。チップは、言い換えれば、ダイ(シリコンダイ)のことである。たとえば、第1接合予定箇所P1は、上ウエハW1に形成されたチップの一部であってもよい。同様に、第2接合予定箇所P2は、下ウエハW2に形成されたチップの一部であってもよい。
【0076】
上ウエハW1における第1接合予定箇所P1の数は、下ウエハW2における第2接合予定箇所P2の数と同じであってもよい。この場合、1つの第1接合予定箇所P1に1つの第2接合予定箇所P2が対応する。具体的には、第1接合予定箇所P1aに第2接合予定箇所P2aが対応する。同様に、第1接合予定箇所P1bに第2接合予定箇所P2bが対応し、第1接合予定箇所P1cに第2接合予定箇所P2cが対応する。
【0077】
取得部71aは、複数の第1接合予定箇所P1の位置情報および複数の第2接合予定箇所P2の位置情報を、たとえばLAN(Local Area Network)等のネットワークを介して接合システム1の外部から取得してもよい。また、取得部71aは、たとえば、下部撮像部236の撮像結果に基づいて複数の第1接合予定箇所P1の位置情報を取得し、上部撮像部235の撮像結果に基づいて複数の第2接合予定箇所P2の位置情報を取得してもよい。
【0078】
算出部71bは、重合ウエハTから得られるチップの個数の期待値を、第1接合予定箇所P1と第2接合予定箇所P2との距離がチップの性能に与える影響を考慮したシミュレーションを行うことにより算出する。具体的には、算出部71bは、取得部71aによって取得された位置情報に基づき、相対位置および相対向きの調整量を規定する複数の制御パラメータの値の組み合わせ毎に、重合ウエハTから得られるチップの個数の期待値を、第1接合予定箇所P1とこの第1接合予定箇所P1に対応する第2接合予定箇所P2とのずれの程度に応じて決定される性能ランク別に算出する。
【0079】
具体的に、まず算出部71bは、上ウエハW1に対して複数の第1接合予定箇所P1に対応する複数の第1接合予定領域R1を設定する。同様に、算出部71bは、下ウエハW2に対して複数の第2接合予定箇所P2に対応する複数の第2接合予定領域R2を設定する。
図8は、第1接合予定領域R1および第2接合予定領域R2の一例を示す図である。
図8には、第1接合予定領域R1と第2接合予定領域R2とがずれた状態で重ね合わされた様子を示している。
【0080】
図8に示すように、第1接合予定領域R1は、たとえば、第1接合予定箇所P1を中心とする正方形あるいは多角形の領域であってもよい。一例として、第1接合予定領域R1は、隣り合う第1接合予定箇所P1同士を結ぶ線分と直交しかつ上記線分の中点を通る直線によって区画される領域であってもよい。これに限らず、第1接合予定領域R1は、たとえば、第1接合予定箇所P1を中心とする一定幅、一定の高さの正方形の領域であってもよい。また、第1接合予定領域R1は、長方形や三角形であってもよい。第2接合予定領域R2についても同様である。
【0081】
算出部71bは、第1接合予定領域R1と当該第1接合予定領域R1に対応する第2接合予定領域R2との重なり度を算出する(重なり度算出処理)。一例として、重なり度Lは、第1接合予定箇所P1の面積をS1、第1接合予定箇所P1と第2接合予定箇所P2とが重なっている領域の面積をS3とした場合、L=S1/S3の式で算出されてもよい。また、重なり度Lは、第2接合予定箇所P2の面積をS2とした場合、L=S2/S3の式で算出されてもよい。重なり度Lの値が大きいほど、第1接合予定箇所P1と第2接合予定箇所P2とが重なっている領域が大きい、言い換えれば、第1接合予定箇所P1と第2接合予定箇所P2とのずれが小さいことを意味する。
【0082】
算出部71bは、算出された重なり度に基づいて、第1接合予定領域R1または第2接合予定領域R2から得られるチップの性能ランクを決定する。たとえば、第1接合予定領域R1を基準とする場合、算出部71bは、第1接合予定領域R1から得られるチップの性能ランクを上述した重なり度に応じて決定する。
【0083】
一例として、算出部71bは、重なり度が0.8以上である場合、第1接合予定領域R1から得られるチップの性能ランクをSランクと決定してもよい。算出部71bは、重なり度が0.6以上0.8未満である場合、第1接合予定領域R1から得られるチップの性能ランクをAランクと決定してもよい。算出部71bは、重なり度が0.4以上0.6未満である場合、第1接合予定領域R1から得られるチップの性能ランクをBランクと決定してもよい。算出部71bは、重なり度が0.4未満である場合、第1接合予定領域R1から得られるチップの性能ランクをEランクと決定してもよい。Eランクは不良品、すなわち、製品として求められる性能を満たさない品質であることを意味する。
【0084】
ここでは、第1接合予定領域R1を基準として性能ランクを決定する場合の例を示した。これに限らず、算出部71bは、第2接合予定領域R2を基準として性能ランクを決定してもよい。すなわち、算出部71bは、第2接合予定領域R2から得られるチップの性能ランクを上述した重なり度に応じて決定してもよい。
【0085】
また、上記に限らず、算出部71bは、たとえば、第1接合予定領域R1の頂点および第2接合予定領域R2の頂点で囲まれる領域(以下、「合成領域」と記載する)を基準として性能ランクを決定してもよい。以下、第1接合予定領域R1、第2接合予定領域R2および合成領域のうち基準とする領域を「基準領域」と記載する。
【0086】
算出部71bは、全ての基準領域について、その基準領域から得られるチップの個数を算出する。また、算出部71bは、その基準領域から得られるチップの性能ランクを決定する。そして、算出部71bは、チップの個数を性能ランク毎に集計する(性能ランク決定処理)。
【0087】
算出部71bは、上述した性能ランク決定処理を制御パラメータの値を変更しながら繰り返し実行する。制御パラメータは、たとえば、上ウエハW1の水平位置の調整量(X1、Y1)、下ウエハW2の水平位置の調整量(X2、Y2)、上ウエハW1の水平向きの調整量(θ1)、下ウエハW2の水平向きの調整量(θ1)を含む。算出部71bは、制御パラメータ(X1、Y1、θ1、X2、Y2、θ2)の値の全ての組み合わせについて、性能ランク決定処理を行う。
【0088】
図9は、算出部71bにおける算出結果の一例を示す表である。
図9に示す「接合予定箇所N(Nは正の整数)」は、各基準領域を示す。たとえば、基準領域が第1接合予定領域R1である場合、「接合予定箇所N」は、各第1接合予定領域R1を示す。「接合予定箇所N」における「ΔX
N」、「ΔY
N」、「Δθ
N」は、第1接合予定箇所P1と第2接合予定箇所P2との相対位置および相対向きのずれ量を示している。たとえば、第1接合予定領域R1が基準領域である場合、ΔX
N=2nm、ΔY
N=4nm、Δθ
N=3μradは、第2接合予定箇所P2が第1接合予定箇所P1に対してX軸方向に2nm、Y軸方向に4nm、θ方向に3μradずれていることを意味している。
【0089】
「各ランクのチップ数期待値」項目は、性能ランク毎のチップの個数を示している。たとえば、Sランクのチップ数期待値が「10」である場合、1枚の重合ウエハTから得られるチップのうちSランクのチップの個数が10個であることを意味する。
【0090】
算出部71bは、制御パラメータの値の組み合わせ毎に、1枚の重合ウエハTから得られるチップの個数に関する評価値(最終成績)を算出する。たとえば、Sランクのチップを「+5」点、Aランクのチップを「+3」点、Bランクのチップを「0」点と規定する。この場合、最終成績は、「Sランクのチップ数」×5+「Aランクのチップ数」×3+「Bランクのチップ数」×0で表される。
【0091】
選択部71cは、算出部71bによって組み合わせ毎に算出された複数の算出結果のうち、所望の条件に合致する算出結果が得られる組み合わせを選択する。
【0092】
ここで、所望の条件は、たとえば、優先すべき性能ランクに関する条件であってもよい。一例として、この場合の所望の条件は、たとえば、「Sランクが一番多くなる条件」、「Aランクが一番多くなる条件」、「Bランクが一番少なくなる条件」などである。また、所望の条件は、最終成績に関する条件であってもよい。この場合の所望の条件とは、「最終成績が一番高い条件」、「最終成績が80点以上の条件」などである。所望の条件は、たとえばユーザによって適宜設定されてもよい。この場合、所望の条件は、ユーザによる制御装置70への入力操作によって記憶部72に記憶されてもよい。
【0093】
たとえば、所望の条件が「Sランクが一番多くなる条件」である場合、選択部71cは、制御パラメータの値の組み合わせ(X1、Y1、θ1、X2、Y2、θ2)=(1,0,0,0,0,0)を選択する。
【0094】
調整処理部71dは、選択部71cによって選択された制御パラメータの値の組み合わせを用いて調整部256を制御して相対位置および相対向きの調整を行う。これにより、第1実施形態に係る接合装置41は、所望の条件で上ウエハW1および下ウエハW2を接合することができる。
【0095】
記憶部72は、たとえば、RAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、ハードディスクや光ディスクなどの記憶装置によって実現される。記憶部72は、制御部71での処理に用いる情報を記憶する。
【0096】
<接合システムの具体的動作>
次に、第1実施形態に係る接合システム1の具体的な動作について
図10を参照して説明する。
図10は、第1実施形態に係る接合システム1が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
図10に示す各種の処理は、制御装置70による制御に基づいて実行される。
【0097】
まず、複数枚の上ウエハW1を収容したカセットC1、複数枚の下ウエハW2を収容したカセットC2、および空のカセットC3が、搬入出ステーション2の所定の載置板11に載置される。その後、搬送装置22によりカセットC1内の上ウエハW1が取り出され、第3処理ブロックG3に配置されたトランジション装置に搬送される。
【0098】
次に、上ウエハW1は、搬送装置61によって第1処理ブロックG1の表面改質装置30に搬送される。表面改質装置30では、所定の減圧雰囲気下において、処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。この酸素イオンが上ウエハW1の接合面に照射されて、当該接合面がプラズマ処理される。これにより、上ウエハW1の接合面が改質される(ステップS101)。
【0099】
次に、上ウエハW1は、搬送装置61によって第1処理ブロックG1の表面親水化装置40に搬送される。表面親水化装置40では、スピンチャックに保持された上ウエハW1を回転させながら、上ウエハW1上に純水を供給する。これにより、上ウエハW1の接合面が親水化される。また、当該純水によって、上ウエハW1の接合面が洗浄される(ステップS102)。
【0100】
次に、上ウエハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された上ウエハW1は、トランジション200を介して位置調節機構210に搬送され、位置調節機構210によって水平方向の向きが調節される(ステップS103)。
【0101】
その後、位置調節機構210から反転機構220に上ウエハW1が受け渡され、反転機構220によって上ウエハW1の表裏面が反転される(ステップS104)。具体的には、上ウエハW1の接合面W1jが下方に向けられる。つづいて、反転機構220から上チャック230に上ウエハW1が受け渡され、上チャック230によって上ウエハW1が吸着保持される(ステップS105)。
【0102】
上ウエハW1に対するステップS101~S105の処理と重複して、下ウエハW2の処理が行われる。まず、搬送装置22によりカセットC2内の下ウエハW2が取り出され、第3処理ブロックG3に配置されたトランジション装置に搬送される。
【0103】
次に、下ウエハW2は、搬送装置61によって表面改質装置30に搬送され、下ウエハW2の接合面W2jが改質される(ステップS106)。その後、下ウエハW2は、搬送装置61によって表面親水化装置40に搬送され、下ウエハW2の接合面W2jが親水化されるとともに当該接合面が洗浄される(ステップS107)。
【0104】
その後、下ウエハW2は、搬送装置61によって接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された下ウエハW2は、トランジション200を介して位置調節機構210に搬送される。そして、位置調節機構210によって、下ウエハW2の水平方向の向きが調節される(ステップS108)。
【0105】
その後、下ウエハW2は、下チャック231に搬送され、ノッチ部を予め決められた方向に向けた状態で下チャック231に吸着保持される(ステップS109)。
【0106】
つづいて、上チャック230に保持された上ウエハW1と下チャック231に保持された下ウエハW2との面内方向における相対位置および相対向きの調整が行われる(ステップS110)。ステップS110における処理の詳細については後述する。
【0107】
その後、第1移動部250を用いて下ウエハW2を上昇させて、上ウエハW1と下ウエハW2とを接合する(ステップS111)。具体的には、下ウエハW2を上昇させた後、上ウエハW1の中心部をストライカー280の押圧ピン281を用いて上方から下方に押圧して下ウエハW2の中心部に接触させることにより、上ウエハW1と下ウエハW2とを接合する。
【0108】
次に、ステップS110における上ウエハW1と下ウエハW2との面内方向における相対位置および相対向き調整の具体的な手順の一例について
図11を参照して説明する。
図11は、ステップS110に示す処理の具体的な手順の一例を示すフローチャートである。
【0109】
まず、制御部71は、上ウエハW1における第1接合予定箇所P1の位置情報および下ウエハW2における第2接合予定箇所P2の位置情報を取得する(ステップS201)。つづいて、制御部71は、接合結果のシミュレーションを行う(ステップS202)。具体的には、制御部71は、制御パラメータの値の組み合わせ毎に、重合ウエハTから得られるチップの個数の期待値を性能ランク別に算出する。また、制御部71は、制御パラメータの値の組み合わせ毎に最終成績を算出する。
【0110】
また、ステップS202において、制御部71は、重合ウエハTから得られるチップの不良率を算出する。たとえば、重合ウエハTから得られるチップの総数をQ1、ランクEのチップの個数をQ2とした場合、不良率は、Q2/Q1で表される。
【0111】
つづいて、制御部71は、不良率が閾値以下であるか否かを判定する(ステップS203)。具体的には、不良率が閾値以下となる接合条件(制御パラメータの値の組み合わせ)が存在するか否かを判定する。この処理において、不良率が閾値以下となる接合条件が存在する場合(ステップS203,Yes)、制御部71は、処理をステップS204へ進める。一方、全ての接合条件において不良率が閾値を超えている場合(ステップS203,No)、制御部71は処理をステップS206へ進める。
【0112】
ステップS204において、制御部71は、重合ウエハTから得られるチップの総額が閾値以上であるか否かを判定する。具体的には、制御部71は、チップの総額が閾値以上となる接合条件が存在するか否かを判定する。チップ1個あたりの金額は、性能ランク毎に記憶部72に記憶されていてもよい。この場合、制御部71は、記憶部72に記憶された金額の情報と、ステップS202のシミュレーション結果とに基づき、重合ウエハTから得られるチップの総額を算出する。
【0113】
ステップS204において、チップの総額が閾値以上となる接合条件が存在する場合(ステップS204,Yes)、制御部71は、処理をステップS205へ進める。一方、全ての接合条件においてチップの総額が閾値未満である場合(ステップS204,No)、制御部71は、処理をステップS206へ進める。
【0114】
ステップS205において、制御部71は、最終成績が閾値以上であるか否かを判定する。具体的には、制御部71は、最終成績が閾値以上となる接合条件が存在するか否かを判定する。最終成績が閾値以上となる接合条件が存在する場合(ステップS205,Yes)、制御部71は、処理をステップS208へ進める。一方、全ての接合条件において最終成績が閾値未満である場合(ステップS205,No)、制御部71は、処理をステップS206へ進める。
【0115】
ステップS206において、制御部71は、接合処理が中断可能か否かを判定する。接合処理が中断可能か否かは、たとえば、上ウエハW1および下ウエハW2の退避場所の有無に基づいて判定されてもよい。たとえば、制御部71は、第3処理ブロックG3に設けられた載置部に空きスペースがある場合に中断可能と判定し、空きスペースがない場合に中断不可と判定する。
【0116】
ステップS206において、接合処理が中断可能と判定した場合(ステップS206,Yes)、制御部71は、接合処理を中断する(ステップS207)。具体的には、制御部71は、接合予定であった上ウエハW1および下ウエハW2を接合装置41から搬出して第3処理ブロックG3の載置部に載置して、これらの上ウエハW1および下ウエハW2についての接合処理を終了する。
【0117】
一方、ステップS206において、接合処理が中断可能でないと判定した場合(ステップS206,No)、制御部71は、処理をステップS208へ進める。
【0118】
ステップS208において、制御部71は、複数の接合条件(制御パラメータの値の組み合わせ)の中から、最適な接合条件を選択する(ステップS208)。制御部71は、全ての接合条件のうち、ステップS203~S205の条件を満たす接合条件の中から最適な接合条件を選択してもよい。最適な接合条件とは、ユーザによって設定された所望の条件と合致する接合条件のことである。たとえば、ユーザによって設定された所望の条件が「Sランクが最も多くなる条件」である場合には、ステップS203~S205の条件を満たす接合条件のうち、Sランクが最も多くなる接合条件を最適な接合条件として選択する。ステップS206からステップS208へ移行した場合、制御部71は、全ての接合条件(制御パラメータの値の組み合わせ)の中から、所望の条件に最も合致する接合条件を選択する。
【0119】
つづいて、制御部71は、選択した接合条件を用いて上チャック230に設けられた調整部および下チャック231に設けられた調整部256を制御して上ウエハW1および下ウエハW2の相対位置および相対向きの調整を行う(ステップS209)。
【0120】
このように、第1実施形態に係る接合システム1は、所望の条件で上ウエハW1および下ウエハW2を接合することができる。
【0121】
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態に係る制御装置70の構成を示すブロック図である。
図12に示すように、制御部71は、補正部71eを備えていてもよい。また、記憶部72は、想定不良情報72aと、フィードバック情報72bとを記憶していてもよい。
【0122】
想定不良情報72aは、重合ウエハTにおいて接合不良が発生する確率と当該接合不良が発生する領域の位置情報とを関連づけた情報である。
【0123】
図12は、想定不良情報72aを説明するための図である。
図12に示すように、上ウエハW1および下ウエハW2を接合する際、所定の領域で接合不良が発生するおそれがある。たとえば、重合ウエハTの中央部では、押圧ピン281で上ウエハW1を押し込む際の押し込み不足による接合不良が発生するおそれがある。また、重合ウエハTの外周部では、空気噛み込みによる接合不良が発生するおそれがある。その他、重合ウエハTでは、特定の領域において、前工程までの処理ムラ、パーティクルおよび異種金属汚染による接合不良が発生するおそれがある。
【0124】
想定不良情報72aは、これら接合不良毎に、接合不良の発生確率と、その接合不良が発生する領域(言い換えれば、その接合不良の影響が及ぶ領域)の位置情報とを関連づけた情報である。
【0125】
補正部71eは、算出部71bによる算出結果を想定不良情報72aに基づいて補正する。たとえば、複数の基準領域のうち、接合不良が発生する領域と重なる基準領域について、その基準領域から得られるチップの個数から、接合不良が発生する領域と重なる領域から得られるチップの個数に接合不良の発生確率を乗じた数を減算する。このようにして算出部71bによる算出結果が補正される。なお、補正部71eは、「接合不良が発生する領域と重なる領域から得られるチップの個数に接合不良の発生確率を乗じた数」をランクEのチップの個数として計上してもよい。
【0126】
これにより、接合不良を考慮した算出結果を得ることができ、より確度の高い条件で上ウエハW1および下ウエハW2を接合することができる。
【0127】
なお、補正部71eは、個々の接合装置41の特性(個品差)によって生じる上チャック230と下チャック231のX、Y、Z、θ方向の移動の再現性の差異や周辺環境の差異を考慮して算出部71bによる算出結果を補正してもよい。ここで、周辺環境の差異とは、装置据付位置または気圧の変動による接合装置41の周辺圧力の変動および別装置と配管系が共有化させることによる用力の圧力の変動のことである。
【0128】
フィードバック情報72bは、重合ウエハTを検査して得られる実際の接合結果とシミュレーション結果とのずれに関する情報である。
【0129】
図14は、フィードバック情報72bの一例を示す図である。
図14に示すグラフ(正規分布)の横軸は、実際の接合結果とシミュレーション結果とのずれ量を示している。ここでいう「ずれ量」とは、たとえば、シミュレーション上における第1接合予定箇所P1と第2接合予定箇所P2とのずれ量と、実際の接合結果から得られる第1接合予定箇所P1と第2接合予定箇所P2とのずれ量との差のことをいう。また、
図14に示すグラフの縦軸は、横軸に示すずれ量のずれが発生する確率を示している。
【0130】
図14に示すように、実際の接合結果は、シミュレーション結果からずれる可能性がある。一例として、
図14には、シミュレーション上Sランクに位置付けられたチップについて、実際に接合処理を行った結果位置付けられることとなる性能ランクの確率を示している。
図14に示す例では、シミュレーション上Sランクに位置付けられたチップのうち60%はSランクのままであるが、残りの40%はSランク以外の性能ランクに位置付けられることを示している。具体的には、シミュレーション上Sランクであるチップのうち30%がAランクに位置付けられ、9%がBランクに位置付けられ、1%がEランクに位置付けられることを示している。
【0131】
補正部71eは、かかるフィードバック情報72bに基づいて算出部71bによる算出結果を補正してもよい。
【0132】
たとえば、算出部71bによる算出結果が「Sランク:10個、Aランク:10個、Bランク:30個」であるとする。この場合、補正部71eは、
図14に示すフィードバック情報72bを用いて、上記算出結果を「Sランク:6個、Aランク:13個、Bランク:31個」に補正してもよい。なお、記憶部72には、Sランク用のフィードバック情報72bの他に、Aランク用のフィードバック情報72bおよびBランク用のフィードバック情報72bが記憶されている。補正部71eは、各性能ランクのフィードバック情報72bを用いて性能ランク毎に上記補正処理を行ってもよい。
【0133】
このように、フィードバック情報72bを用いて算出結果を補正することで、シミュレーション結果を実際の接合結果に近付けることができることから、所望の条件に合致した接合条件(制御パラメータの値の組み合わせ)の選択精度を向上させることができる。
【0134】
(第3実施形態)
図15は、第3実施形態に係る制御装置70の構成を示すブロック図である。
図15に示すように、接合装置41は、接合装置41内の環境を測定するセンサ80をさらに備えていてもよい。センサ80は、たとえば、接合装置41内の温度、湿度、気圧、窒素濃度およびガス組成の少なくとも1つを測定する。「接合装置41内」とは、具体的には、接合装置41における処理領域T2のことである。この場合、センサ80は、処理領域T2に設けられる。なお、これに限らず、「接合装置41内」は、接合装置41における搬送領域T1のことであってもよい。センサ80としては、たとえば、温度計、湿度計、気圧計、濃度計、ガス分析計を用いることができる。
【0135】
記憶部72は、環境起因不良情報72cを記憶していてもよい。環境起因不良情報72cは、重合ウエハTにおいて接合不良が発生する確率と環境との関係を示す情報である。
図16は、環境起因不良情報72cの一例を示す図である。
図16には、環境起因不良情報72cの一例として、接合装置41内の窒素濃度と接合不良が発生する確率との関係を示す情報を示している。
【0136】
制御部71は、センサ80による測定結果と、記憶部72に記憶された環境起因不良情報72cとに基づき、上ウエハW1と下ウエハW2との接合処理の実行の可否を判定してもよい。たとえば、制御部71は、センサ80によって測定された窒素濃度が閾値を超えている場合、接合処理の実行を不可と判定してもよい。これにより、環境に起因する接合不良の発生を低減することができる。
【0137】
また、制御部71は、環境起因不良情報72cに基づき、接合不良の発生確率が低くなるように環境を変更可能な機器を制御してもよい。たとえば、制御部71は、窒素濃度が
図16に示す適正環境範囲となるように、接合装置41の内部に窒素ガスを供給するガス供給部を制御してもよい。
【0138】
また、制御部71は、センサ80による測定結果と、環境起因不良情報72cとに基づき、接合装置41の回転率を決定してもよい。回転率とは、所定期間(たとえば1日)で作成する重合ウエハTの枚数のことである。たとえば、制御部71は、センサ80によって測定された窒素濃度が高いほど、接合装置41の回転率を下げてもよい。
【0139】
(第4実施形態)
上述した第1~第3実施形態では、接合処理に用いる上ウエハW1と下ウエハW2とのペアが予め決まっている場合について説明した。第4実施形態では、接合処理に用いる上ウエハW1と下ウエハW2とのペアを選定する場合の例について説明する。
【0140】
図17は、第4実施形態に係る制御装置70の構成を示すブロック図である。
図18は、選定部71fによる選定処理の説明図である。
【0141】
図17に示すように、制御部71は、選定部71fを備えていてもよい。選定部71fは、算出部71bによる算出結果に基づいて、複数の上ウエハW1および複数の下ウエハW2の中から、接合処理に用いる上ウエハW1および下ウエハW2のペアを選定する。
【0142】
たとえば、
図18に示すように、選定部71fは、複数の上ウエハW1_1~W1_nおよび複数の下ウエハW2_1~W2_nの中から、上ウエハW1と下ウエハW2とのペアを選定する。上ウエハW1_1~W1_nは、たとえば1ロット分の上ウエハWである。同様に、下ウエハW2_1~W2_nは、たとえば1ロット分の下ウエハWである。
【0143】
たとえば、算出部71bは、上ウエハW1_1と下ウエハW2_1~W2_nとの各組み合わせについて、上述したシミュレーションを実行する。選定部71fは、シミュレーション結果(算出結果)に基づき、下ウエハW2_1~W2_nのうち、所望の条件に合致する下ウエハW2を上ウエハW1_1とのペアとして選定する。所望の条件に合致する下ウエハW2が複数枚存在する場合には、それらのうち所望の条件に最も合致する下ウエハW2を選定してもよい。算出部71bは、残りの上ウエハW1について同様の処理を行う。
【0144】
これにより、接合装置に搬入された順にペアを組み接合処理を行う場合と比較して、所望の条件により合致した接合条件にて上ウエハW1および下ウエハW2を接合することができる。
【0145】
(その他の実施形態)
制御部71は、重合ウエハTを検査して得られる実際の接合結果に基づき、上ウエハW1および下ウエハW2におけるチップの配置に関する配置情報を生成し、生成した配置情報を外部に送信してもよい。たとえば、重合ウエハTの中央部および外周部において接合不良の発生確率が高いことが実際の接合結果から示されるとする。この場合、制御部71は、上ウエハW1および下ウエハW2の中央部および外周部に、要求される接合精度が低いチップを配置し、それ以外の領域に、要求される接合精度が高いチップを配置した配置情報を生成してもよい。
【0146】
第1~第4実施形態は、適宜組み合わせ可能である。たとえば、制御部71は、補正部71eおよび選定部71fの両方を備えていてもよい。また、記憶部72は、想定不良情報72a、フィードバック情報72bおよび環境起因不良情報72cのうち2以上の情報を記憶していてもよい。
【0147】
なお、本開示は以下のような構成をとることができる。
(1)
第1基板と第2基板とを接合する接合装置であって、
前記第1基板を保持する第1保持部と、
前記第2基板を保持する第2保持部と、
前記第1保持部に保持された前記第1基板と前記第2保持部に保持された前記第2基板との面内方向における相対位置および相対向きを調整する調整部と、
前記調整部を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記第1基板における複数の第1接合予定箇所の位置情報および前記第2基板における複数の第2接合予定箇所の位置情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された位置情報に基づき、前記相対位置および前記相対向きの調整量を規定する複数の制御パラメータの値の組み合わせ毎に、前記第1基板と前記第2基板とが接合された重合基板から得られるチップの個数の期待値を、前記第1接合予定箇所と当該第1接合予定箇所に対応する前記第2接合予定箇所とのずれの程度に応じて決定される性能ランク別に算出する算出部と、
前記算出部によって前記組み合わせ毎に算出された複数の算出結果のうち、所望の条件に合致する算出結果が得られる前記組み合わせを選択する選択部と、
前記選択部によって選択された前記組み合わせを用いて前記調整部を制御して前記相対位置および前記相対向きの調整を行う調整処理部と
を備える、接合装置。
(2)
前記算出部は、前記第1基板に対して前記複数の第1接合予定箇所に対応する複数の第1接合予定領域を設定するとともに、前記第2基板に対して前記複数の第2接合予定箇所に対応する複数の第2接合予定領域を設定し、前記第1接合予定領域と当該第1接合予定領域に対応する前記第2接合予定領域との重なり度に基づいて、前記第1接合予定領域または前記第2接合予定領域から得られる前記チップの前記性能ランクを決定する、(1)に記載の接合装置。
(3)
前記第1基板における前記複数の第1接合予定箇所を撮像する第1撮像部と、
前記第2基板における前記複数の第2接合予定箇所を撮像する第2撮像部と
をさらに備え、
前記取得部は、前記第1撮像部の撮像結果に基づいて前記複数の第1接合予定箇所の位置情報を取得し、前記第2撮像部の撮像結果に基づいて前記複数の第2接合予定箇所の位置情報を取得する、(1)または(2)に記載の接合装置。
(4)
前記重合基板において接合不良が発生する確率と当該接合不良が発生する領域の位置情報とを関連づけた想定不良情報を記憶する記憶部と、
前記算出部による算出結果を前記想定不良情報に基づいて補正する補正部と
をさらに備える、(1)~(3)のいずれか1つに記載の接合装置。
(5)
前記接合装置内の環境を測定するセンサと、
前記重合基板において接合不良が発生する確率と前記環境との関係を示す環境起因不良情報を記憶する記憶部と
を備え、
前記制御部は、
前記センサによる測定結果と、前記記憶部に記憶された前記環境起因不良情報とに基づき、前記第1基板と前記第2基板との接合処理の実行の可否を判定する、(1)~(4)のいずれか1つに記載の接合装置。
(6)
前記算出部による算出結果に基づいて、複数の前記第1基板および複数の前記第2基板の中から、接合処理に用いる前記第1基板および前記第2基板のペアを選定する選定部をさらに備える、(1)~(5)のいずれか1つに記載の接合装置。
(7)
第1基板および第2基板の表面を改質する表面改質装置と、
改質された前記第1基板および前記第2基板の表面を親水化する表面親水化装置と、
親水化された前記第1基板と前記第2基板とを分子間力により接合する接合装置と
を備え、
前記接合装置は、
前記第1基板を保持する第1保持部と、
前記第2基板を保持する第2保持部と、
前記第1保持部に保持された前記第1基板と前記第2保持部に保持された前記第2基板との面内方向における相対位置および相対向きを調整する調整部と、
前記調整部を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記第1基板における複数の第1接合予定箇所の位置情報および前記第2基板における複数の第2接合予定箇所の位置情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された位置情報に基づき、前記相対位置および前記相対向きの調整量を規定する複数の制御パラメータの値の組み合わせ毎に、前記第1基板と前記第2基板とが接合された重合基板から得られるチップの個数の期待値を、前記第1接合予定箇所と当該第1接合予定箇所に対応する前記第2接合予定箇所とのずれの程度に応じて決定される性能ランク別に算出する算出部と、
前記算出部によって前記組み合わせ毎に算出された複数の算出結果のうち、所望の条件に合致する算出結果が得られる前記組み合わせを選択する選択部と、
前記選択部によって選択された前記組み合わせを用いて前記調整部を制御して前記相対位置および前記相対向きの調整を行う調整処理部と
を備える、接合システム。
(8)
第1基板と第2基板とを接合する接合方法であって、
前記第1基板を保持する第1保持部を用いて前記第1基板を保持する工程と、
前記第2基板を保持する第2保持部を用いて前記第2基板を保持する工程と、
前記第1保持部に保持された前記第1基板と前記第2保持部に保持された前記第2基板との面内方向における相対位置および相対向きを調整する工程と
を含み、
前記調整する工程は、
前記第1基板における複数の第1接合予定箇所の位置情報および前記第2基板における複数の第2接合予定箇所の位置情報を取得する工程と、
前記取得する工程によって取得された位置情報に基づき、前記相対位置および前記相対向きの調整量を規定する複数の制御パラメータの値の組み合わせ毎に、前記第1基板と前記第2基板とが接合された重合基板から得られるチップの個数の期待値を、前記第1接合予定箇所と当該第1接合予定箇所に対応する前記第2接合予定箇所とのずれの程度に応じて決定される性能ランク別に算出する工程と、
前記算出する工程によって前記組み合わせ毎に算出された複数の算出結果のうち、所望の条件に合致する算出結果が得られる前記組み合わせを選択する工程と、
前記選択する工程によって選択された前記組み合わせを用いて、前記相対位置および前記相対向きを調整する調整部を制御する工程と
を含む、接合装置。
【0148】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0149】
1 接合システム
2 搬入出ステーション
3 処理ステーション
41 接合装置
70 制御装置
71 制御部
71a 取得部
71b 算出部
71c 選択部
71d 調整処理部
71e 補正部
71f 選定部
72 記憶部
72a 想定不良情報
72b フィードバック情報
72c 環境起因不良情報
T 重合ウエハ
W1 上ウエハ
W2 下ウエハ