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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164428
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】保護膜の剥離方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20241120BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241120BHJP
   B23D 5/02 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 622J
B23D5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079892
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 和裕
【テーマコード(参考)】
3C050
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
3C050AA00
3C050AB01
3C050AD00
5F057AA41
5F057BA11
5F057BB03
5F057BB07
5F057BB09
5F057BB12
5F057BB40
5F057BC03
5F057BC06
5F057BC10
5F057CA14
5F057DA14
5F057DA38
5F057FA13
5F057FA30
5F057FA32
5F057FA34
5F057FA37
5F057GA27
5F131AA02
5F131BA31
5F131CA41
5F131EB01
5F131EC32
5F131EC72
(57)【要約】
【課題】保護膜の除去にかかるコストを抑制することができる保護膜の剥離方法を提供すること。
【解決手段】保護膜の剥離方法は、ウェーハを保持する保持面を有する保持テーブルと、保持面に平行な下面で剥離ブロックを支持する支持基台とを備える旋削装置を用いて、ウェーハから保護膜を剥離する方法であって、保持面でウェーハの裏面を保持する保持ステップ1001と、保持ステップ1001の後に、保護膜の表面から所定量だけ低い高さに剥離ブロックを位置付ける位置付けステップ1002と、位置付けステップ1002の後に、支持基台及び保持テーブルを平面方向に相対的に移動させると共に、支持基台または保持テーブルのいずれかを回転させてウェーハから保護膜を剥ぎ取る剥離ステップ1003と、を備え、剥離ブロックの下面は保護膜の表面に対して平行である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを保持する保持面を有する保持テーブルと、該保持面に平行な支持面で剥離ブロックを支持する支持基台とを備える旋削装置を用いて、表面に保護膜を有するウェーハから該保護膜を剥離する保護膜の剥離方法であって、
該保持面で該ウェーハの裏面を保持する保持ステップと、
該保持ステップの後に、該保護膜の表面から所定量だけ低い高さに該剥離ブロックを位置付ける位置付けステップと、
該位置付けステップの後に、該支持基台及び該保持テーブルを平面方向に相対的に移動させると共に、該支持基台または該保持テーブルのいずれかを回転させて該ウェーハから該保護膜を剥ぎ取る剥離ステップと、
を備え、
該剥離ブロックの底端部は該保護膜の表面に対して平行であることを特徴とする保護膜の剥離方法。
【請求項2】
該剥離ステップは該支持基台のみを回転させることを特徴とする請求項1に記載の保護膜の剥離方法。
【請求項3】
該剥離ステップは該保持テーブルのみを回転させることを特徴とする請求項1に記載の保護膜の剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜の剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの表面には回路パターン形成の為のフォトレジスト膜が被覆されているが、ウェーハを再利用する際にはこのフォトレジストを除去する必要がある。フォトレジストの除去方法としてはアセトンのような有機溶剤を用いることが一般的だが、有機溶剤によって溶けたレジストがウェーハに回り込むとウェーハの再利用ができなくなる為、人の手を介しての除去作業が必要となっていた。
【0003】
また、ウェーハ等の被加工物の表面を平坦にするために、旋削装置(例えば、特許文献1参照)が用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-158842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
つまり、従来のフォトレジスト膜などの保護膜を除去する除去方法では、人の手を介する手間や有機溶剤を都度使用する為のコストが掛かるという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、保護膜の除去にかかるコストを抑制することができる保護膜の剥離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の保護膜の剥離方法は、ウェーハを保持する保持面を有する保持テーブルと、該保持面に平行な支持面で剥離ブロックを支持する支持基台とを備える旋削装置を用いて、表面に保護膜を有するウェーハから該保護膜を剥離する保護膜の剥離方法であって、該保持面で該ウェーハの裏面を保持する保持ステップと、該保持ステップの後に、該保護膜の表面から所定量だけ低い高さに該剥離ブロックを位置付ける位置付けステップと、該位置付けステップの後に、該支持基台及び該保持テーブルを平面方向に相対的に移動させると共に、該支持基台または該保持テーブルのいずれかを回転させて該ウェーハから該保護膜を剥ぎ取る剥離ステップと、を備え、該剥離ブロックの底端部は該保護膜の表面に対して平行であることを特徴とする。
【0008】
前記保護膜の剥離方法において、該剥離ステップは該支持基台のみを回転させても良い。
【0009】
前記保護膜の剥離方法において、該剥離ステップは該保持テーブルのみを回転させても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、保護膜の除去にかかるコストを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る保護膜の剥離方法により保護膜が剥離されるウェーハの構成例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る保護膜の剥離方法に用いられる旋削装置の構成例を示す斜視図である。
図3図3は、図2に示された旋削装置の剥離ブロックなどを示す斜視図である。
図4図4は、図3に示された剥離ブロックの比較例であるバイト工具を示す斜視図である。
図5図5は、実施形態1に係る保護膜の剥離方法の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、図5に示された保護膜の剥離方法の剥離ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図7図7は、実施形態1の変形例に係る保護膜の剥離方法の剥離ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る保護膜の剥離方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る保護膜の剥離方法により保護膜が剥離されるウェーハの構成例を模式的に示す斜視図である。図2は、実施形態1に係る保護膜の剥離方法に用いられる旋削装置の構成例を示す斜視図である。図3は、図2に示された旋削装置の剥離ブロックなどを示す斜視図である。図4は、図3に示された剥離ブロックの比較例であるバイト工具を示す斜視図である。図5は、実施形態1に係る保護膜の剥離方法の流れを示すフローチャートである。
【0014】
(ウェーハ)
実施形態1に係る保護膜の剥離方法は、図1に示す表面2に保護膜10を有するウェーハ1から保護膜10を剥離する方法である。実施形態1に係る保護膜の剥離方法により保護膜10が剥離されるウェーハ1は、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)、又はサファイヤ等を基板とする円板状の半導体ウェーハ、光デバイスウェーハ等である。
【0015】
ウェーハ1は、表面2の複数の分割予定ライン3によって区画された領域にそれぞれデバイス4が形成されている。デバイス4は、例えば、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、LED(Light-Emitting Diode)等の光学素子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)又は半導体メモリ(半導体記憶装置)である。
【0016】
ウェーハ1は、表面2が保護膜10により被覆されている。実施形態1では、保護膜10は、集積回路の製造におけるフォトリソグラフィで用いられるフォトレジストと呼ばれる感光性有機物質により構成されている。実施形態1では、保護膜10の厚みは、10μmである。また、本発明では、保護膜10は、フォトレジストと呼ばれる感光性有機物質に限定されることなく、例えば、絶縁性、可撓性及び粘着性を有する樹脂により構成された糊層と、糊層に積層されかつ絶縁性、可撓性及び非粘着性を有する樹脂により構成された基材層とを備えた粘着テープでも良く、熱可塑性樹脂により構成され糊層を有することなく熱圧着される所謂糊なしテープでも良い。
【0017】
実施形態1において、ウェーハ1は、バイト切削装置の切削精度を確認するために、保護膜10に旋削切削加工が施されるものである。このために、本発明では、ウェーハ1は、表面2にデバイス4が形成されていなくても良い。なお、バイト切削装置の切削精度とは、バイト工具の保護膜10の表面11からの切り込み深さなどの精度である。
【0018】
(旋削装置)
実施形態1に係る保護膜の剥離方法は、図2に示す旋削装置100を用いて実施される。図2に示す旋削装置100は、ウェーハ1の表面2上の保護膜10を旋削加工(以下、旋回切削加工という)して、保護膜10をウェーハ1の表面2から剥離する加工装置である。旋削装置100は、図2に示すように、装置基台101と、保持テーブル110と、旋削ユニット120と、加工送りユニット130と、切り込み送りユニット140と、制御ユニット160とを備える。
【0019】
保持テーブル110は、ウェーハ1の表面2の裏側の裏面5側を保持面111で保持して、ウェーハ1の表面2側の保護膜10を露出させた状態でウェーハ1を保持するものである。即ち、保持テーブル110は、ウェーハ1を保持する保持面111を有する。保持テーブル110は、ステンレス鋼等の金属材により構成され、かつ外周に立設壁113を有した円板状の基台112と、基台112の底面から立設しかつ立設壁113で囲繞された複数の円柱状の支持ピン114とを有している。
【0020】
立設壁113は、円環状に形成され、基台112の外縁から立設している。複数の支持ピン114は、等間隔に配置されている。このように構成された保持テーブル110の環状の立設壁113および複数の支持ピン114は、母材がステンレス鋼に構成され、上面にニッケルにより構成されたメッキ層が形成されている。立設壁113の上面及び支持ピン114の上面は、ウェーハ1を保持する水平方向と平行な保持面111を構成する。即ち、保持テーブル110は、複数の支持ピン114の上端によってウェーハ1を保持する保持面111が形成された所謂ピンチャックテーブルである。
【0021】
保持テーブル110は、基台112の底面に開口した開口を通して図示しない吸引源に接続している。保持テーブル110は、吸引源により吸引されることにより、保持面111上に載置されたウェーハ1を吸引保持する。保持テーブル110は、図示しない回転ユニットによりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に支持されている。なお、Z軸方向は、鉛直方向と平行であり保持面111と直交する方向である。
【0022】
旋削ユニット120は、保持テーブル110で保持したウェーハ1の保護膜10を、スピンドル123の下端に装着された旋削ホイール122の剥離ブロック121で旋回切削加工する加工ユニットである。旋削ユニット120は、切り込み送りユニット140を介して装置基台101に立設した立設壁102に支持されている。旋削ユニット120は、スピンドル123と、スピンドル123を軸心回りに回転させるモータ124と、スピンドル123の下端に装着された旋削ホイール122とを有する。スピンドル123の軸心は、Z軸方向に沿って配置されている。スピンドル123は、モータ124により軸心回りに回転されることで、旋削ホイール122をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する。
【0023】
旋削ホイール122は、図2に示すように、円環状に形成されかつスピンドル123の下端の円板状のフランジ126に装着される支持基台125と、支持基台125の保持面111に平行な支持面である下面127に柱状のシャンク128(図3に示す)を介して装着される剥離ブロック121(図3に示す)とを備えている。即ち、支持基台125は、下面127でシャンク128を介して剥離ブロック121を支持する。
【0024】
シャンク128は、図3に示すように、金属からなり柱状に形成されて、支持基台125の下面127の外縁部に取り付けられて、Z軸方向と平行に延在している。剥離ブロック121は、図3に示すように、金属からなり柱状に形成されて、シャンク128の下端部に取り付けられている。剥離ブロック121は、単結晶ダイヤモンドにより構成されて保護膜10に切り込んで、保護膜10を旋回切削加工する切り刃を有する。
【0025】
また、剥離ブロック121は、下面129(底端部に相当)がシャンク128の下端よりも下方に位置しているとともに、水平方向に沿って平坦に形成されている。なお、下面129が水平方向に沿っているとは、下面129の水平方向とのなす角度が、±5度以下であることをいう。実施形態1において、剥離ブロック121は、図4に示す比較例のバイト工具121-1と、下面129-1の傾き以外、同じ構成である。
【0026】
なお、図4に示すバイト工具121-1は、ウェーハ1の表面2の保護膜10を旋回切削加工して、保護膜10の表面11を平坦に形成する工具である。下面129-1は、支持基台125の径方向の中心に向かうにしたがって徐々に上方に位置するように水平方向に対して傾斜している。なお、バイト工具121-1の下面129-1の水平方向とのなす角度121-2は、10度以上30度以下であり、にげ角という。なお、図4において、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
前述したように、剥離ブロック121は、下面129が水平方向に沿っていることで、下面129が加工対象のウェーハ1の表面2の保護膜10の表面11に対して平行である。
【0028】
加工送りユニット130は、装置基台101上に設置され、保持テーブル110を旋削ユニット120に対して保持面111と平行な加工送り方向であるX軸方向に相対移動させるものである。加工送りユニット130は、保持テーブル110を支持した支持基台をX軸方向に移動させることで、保持テーブル110を旋削ユニット120から離間して保持テーブル110にウェーハ1が搬入出される搬入出位置と旋削ユニット120の下方に位置して旋削ユニット120により旋回切削加工される加工位置とに亘って移動させる。加工送りユニット130は、搬入出位置と加工位置とに保持テーブル110を移動させる移動ユニットである。
【0029】
切り込み送りユニット140は、装置基台101に立設する立設壁102に取り付けられ、旋削ユニット120を保持面111と直交する切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させるものである。切り込み送りユニット140は、旋削ユニット120を下降させて剥離ブロック121を加工位置の保持テーブル110に保持されたウェーハ1に近付け、旋削ユニット120を上昇させて剥離ブロック121を加工位置の保持テーブル110に保持されたウェーハ1から遠ざける。
【0030】
加工送りユニット130及び切り込み送りユニット140は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ及び保持テーブル110又は旋削ユニット120をY軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
【0031】
また、旋削装置100は、装置基台101に設けられたカセット載置台103上にカセット104が設置される。また、旋削装置100は、ウェーハ1を搬送する搬送手段である搬送ユニット150と、旋回切削加工後のウェーハ1を洗浄する洗浄ユニット105と、位置合わせユニット106とを備える。
【0032】
カセット104は、ウェーハ1を複数枚収容する収容器であり、装置基台101の搬入出位置側の端部に設けられたカセット載置台103上に設置される。カセット104は、旋回切削前後のウェーハ1を収容する。実施形態1では、カセット104は、ウェーハ1が下方に位置し保護膜10が上方に位置した状態で、ウェーハ1を複数枚収容する。カセット載置台103は、カセット104をZ軸方向に昇降する。位置合わせユニット106は、カセット104から取り出された旋回切削加工前のウェーハ1が仮置きされて、その中心位置合わせを行うためのテーブルである。
【0033】
搬送ユニット150は、搬入出ユニット151と、搬入ユニット152と、搬出ユニット153とを備える。搬入出ユニット151は、例えばU字型ハンドを備えるロボットピックであり、U字型ハンドによってウェーハ1を吸着保持して搬送する。具体的には、搬入出ユニット151は、旋回切削加工前のウェーハ1をカセット104から位置合わせユニット106へ搬出するとともに、旋回切削加工後のウェーハ1を洗浄ユニット105からカセット104へ搬入する。
【0034】
搬入ユニット152は、位置合わせユニット106で位置合わせされた旋回切削加工前のウェーハ1を搬入出位置に位置する保持テーブル110上に搬入する。搬出ユニット153は、搬入出位置に位置する保持テーブル110上に保持された旋回切削加工後のウェーハ1を保持テーブル110から搬出して洗浄ユニット105に搬入する。
【0035】
制御ユニット160は、旋削装置100を構成する上述した各構成要素をそれぞれ制御するものである。即ち、制御ユニット160は、ウェーハ1に対する加工動作を旋削装置100に実行させるものである。制御ユニット160は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インタフェース装置とを有し、コンピュータプログラムを実行可能なコンピュータである。
【0036】
制御ユニット160の演算処理装置は、ROMに記憶されているコンピュータプログラムをRAM上で実行して、旋削装置100を制御するための制御信号を生成する。制御ユニット160の演算処理装置は、生成した制御信号を入出力インタフェース装置を介して旋削装置100の各構成要素に出力する。
【0037】
また、制御ユニット160は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが加工条件を登録する際に用いる図示しない入力ユニットと接続されている。実施形態1では、入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルを含んでいる。
【0038】
(保護膜の剥離方法)
実施形態1に係る保護膜の剥離方法は、前述した旋削装置100を用いて、表面2に保護膜10を有するウェーハ1から保護膜10を剥離する方法である。実施形態1に係る保護膜の剥離方法は、バイト切削装置のバイト切削装置の切削精度を確認するために、保護膜10に旋削切削加工が施されたウェーハ1を再利用するために、ウェーハ1の表面2から保護膜10を剥離する方法でもあり、前述した旋削装置100の加工動作でもある。
【0039】
前述した構成の旋削装置100は、オペレータ等により旋回切削加工前のウェーハ1を収容したカセット104が装置基台101のカセット載置台103に設置され、オペレータ等により入力された加工条件を制御ユニット160が受け付け、オペレータが入力した加工動作の開始指示を制御ユニット160が受け付けると、加工動作、即ち、実施形態1に係る保護膜の剥離方法を開始して、モータ124を駆動してスピンドル123及び旋削ホイール122の軸心回りの回転を開始する。保護膜の剥離方法は、図5に示すように、保持ステップ1001と、位置付けステップ1002と、剥離ステップ1003とを備える。
【0040】
(保持ステップ)
保持ステップ1001は、保持テーブル110の保持面111でウェーハ1の裏面5を保持するステップである。実施形態1において、保持ステップ1001では、旋削装置100は、制御ユニット160が搬入出ユニット151を制御してカセット104からウェーハ1を1枚取り出させ、位置合わせユニット106へ搬出させる。実施形態1において、加工動作では、旋削装置100は、制御ユニット160が位置合わせユニット106を制御してウェーハ1の中心位置合わせを行わせ、搬入ユニット152を制御して位置合わせユニット106により位置合わせされたウェーハ1の裏面5を搬入出位置に位置する保持テーブル110の保持面111上に搬入させる。実施形態1において、保持ステップ1001では、旋削装置100は、制御ユニット160が吸引源に保持テーブル110の保持面111にウェーハ1の裏面5側を吸引保持させる。
【0041】
(位置付けステップ)
位置付けステップ1002は、保持ステップ1001の後に、保護膜10の表面11から所定量だけ低い高さに剥離ブロック121の下面129を位置付けるステップである。実施形態1において、位置付けステップ1002では、旋削装置100は、制御ユニット160が切り込み送りユニット140を制御して、保持面111の表面11から所定量(実施形態1では、3μm)だけ低い高さに剥離ブロック121の下面129を位置付ける。なお、所定量は、0μmを超えかつ保護膜10の厚みの半分未満であるのが望ましい。
【0042】
(剥離ステップ)
図6は、図5に示された保護膜の剥離方法の剥離ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。剥離ステップ1003は、位置付けステップ1002の後に、支持基台及び保持テーブルを平面方向であるX軸方向に相対的に移動させると共に、支持基台125または保持テーブル110のいずれかをZ軸方向と平行な軸心回りに回転させてウェーハ1から保護膜10を剥ぎ取るステップである。実施形態1において、剥離ステップ1003では、旋削装置100は、制御ユニット160が加工送りユニット130を制御して、ウェーハ1を吸引保持した保持テーブル110を軸心回りに回転することなく加工位置に向かってX軸方向に移動させる。このように、実施形態1において、剥離ステップ1003では、保持テーブル110と旋削ホイール122の支持基台125とのうち支持基台125のみを軸心回りに回転させる。
【0043】
実施形態1において、剥離ステップ1003では、図6に示すように、旋削装置100が、制御ユニット160が剥離ブロック121等に加工液を供給しながら加工位置の保持テーブル110上に保持されたウェーハ1の表面2上の保護膜10に剥離ブロック121を切り込ませて旋回切削加工する。すると、剥離ブロック121の下面129が水平方向に沿って平坦であるために、剥離ブロック121の旋回切削加工により生成される保護膜10の切削屑が剥離ブロック121よりも支持基台125の下方に侵入することが規制される。
【0044】
また、剥離ブロック121の下面129が、保護膜10の表面11から保護膜10の厚みの半分未満の高さに位置するので、保護膜10が剥離ブロック121からウェーハ1の表面2から離れる方向の負荷を受けるとともに、保持テーブル110の移動により保護膜10の剥離ブロック121から受ける負荷が徐々に増加し、この負荷により保護膜10が、図6に示すように、搬入出位置から離れた側の端から順に剥離することとなる。
【0045】
実施形態1において、保持テーブル110が加工位置に到達して、保護膜10の全体が剥離ブロック121の下方を通過して、剥離ブロック121が保護膜10の全体に旋回切削加工すると、保護膜10の全体がウェーハ1の表面2から剥離されることとなる。実施形態1において、剥離ステップ1003では、旋削装置100は、制御ユニット160が加工送りユニット130を制御して旋回切削加工を施したウェーハ1を吸引保持した保持テーブル110を搬入出位置まで搬送させるとともに、搬入出位置において保持テーブル110の吸引保持を停止させる。
【0046】
実施形態1において、剥離ステップ1003では、旋削装置100は、制御ユニット160が搬出ユニット153を制御して洗浄ユニット105に搬送させ、洗浄ユニット105に洗浄させた後、搬入出ユニット151を制御してウェーハ1をカセット104に収容させる。なお、旋削装置100は、カセット104内のウェーハ1を順に旋回切削加工し、カセット104内の全てのウェーハ1から保護膜10を剥離すると、加工動作を終了する。
【0047】
以上説明したように、実施形態1に係る保護膜の剥離方法は、剥離ブロック121の下面129を水平方向に沿って平坦に形成しているので、剥離ブロック121が旋回切削加工する際に、保護膜10に適度な負荷が掛かり、効率的に保護膜10を剥離することが可能となる。
【0048】
その結果、実施形態1に係る保護膜の剥離方法は、作業者が有機溶剤を用いて保護膜10を除去する作業の手間を省くことが可能となり、保護膜10の除去にかかるコストを抑制することができるという効果を奏する。
【0049】
また、実施形態1に係る保護膜の剥離方法は、位置付けステップ1002において剥離ブロック121の下面129を保護膜10の表面11から保護膜10の厚みの半分未満だけ低い高さに位置付けるので、剥離ステップ1003において剥離ブロック121が保護膜10を旋回切削加工する際に、保護膜10にウェーハ1の表面2から剥離する方向の負荷がかかることとなる。
【0050】
〔変形例〕
本発明の実施形態1の変形例に係る保護膜の剥離方法を図面に基づいて説明する。図7は、実施形態1の変形例に係る保護膜の剥離方法の剥離ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。なお、図7は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
変形例に係る保護膜の剥離方法は、旋削装置100が加工動作、即ち、保護膜の剥離方法を開始しても旋削ホイール122の軸心回りの回転を開始することなく、剥離ステップ1003において、図7に示すように、旋削装置100は、制御ユニット160が加工送りユニット130を制御して、ウェーハ1を吸引保持した保持テーブル110を軸心回りに回転させながら加工位置に向かって移動させて、剥離ブロック121で保護膜10を旋回切削加工する。このように、実施形態1の変形例において、剥離ステップ1003では、保持テーブル110と旋削ホイール122の支持基台125とのうち保持テーブル110のみを軸心回りに回転させる。
【0052】
変形例に係る保護膜の剥離方法は、剥離ブロック121の下面129を水平方向に沿って平坦に形成しているので、剥離ブロック121が旋回切削加工する際に、保護膜10に適度な負荷が掛かり、効率的に保護膜10を剥離することが可能となり、実施形態1と同様に、保護膜10の除去にかかるコストを抑制することができるという効果を奏する。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 ウェーハ
2 表面
5 裏面
10 保護膜
11 表面
100 旋削装置
110 保持テーブル
111 保持面
120 旋削ユニット
121 剥離ブロック
125 支持基台
127 下面(支持面)
129 下面(底端部)
1001 保持ステップ
1002 位置付けステップ
1003 剥離ステップ
X 平面方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7