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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164456
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】被加工物の研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20241120BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20241120BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20241120BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20241120BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B24B7/04 A
B24B41/06 L
B24B49/10
B24B55/06
H01L21/304 622S
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079940
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松澤 稔
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩平
(72)【発明者】
【氏名】廣沢 俊一郎
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB73
3C034BB92
3C034CA02
3C034CB03
3C043BA03
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C047FF04
3C047FF19
3C047HH15
5F057AA11
5F057AA20
5F057BA13
5F057BA30
5F057BB03
5F057BB07
5F057BB09
5F057BB11
5F057BB12
5F057CA14
5F057CA15
5F057DA11
5F057DA38
5F057EC04
5F057EC14
5F057EC29
5F057FA13
5F057FA16
5F057FA28
5F057FA30
5F057GA12
5F057GA13
5F057GB13
(57)【要約】
【課題】従来では研削中に厚みの測定が困難であった被加工物を、加工時間が長くなることを抑制しつつ所望の厚みに研削できる被加工物の研削方法を提供すること。
【解決手段】被加工物の研削方法は、円板材料に熱圧着シートを固定する熱圧着シート固定ステップ1001と、円板材料の中央部を削り取ることによって中央部の熱圧着シートを露出させ、円板材料を外周部のみのリングフレームを作成するリングフレーム作成ステップ1002と、リングフレームの内部領域の熱圧着シートに被加工物を固定する被加工物固定ステップ1004と、被加工物とリングフレームとを所定の仕上げ厚さに研削する研削ステップ1005と、を備え、研削ステップ1005は、リングフレームの厚さを測定しながら研削を実施することによって、被加工物を所定の仕上げ厚さに研削をすることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を研削する研削方法であって、
円板状の材料である円板材料に熱圧着シートを固定する熱圧着シート固定ステップと、
複数の研削砥石で形成される直径が該円板材料の半径以下の研削ホイールで該円板材料の中央部を削り取ることによって該中央部の該熱圧着シートを露出させ、該円板材料を外周部のみのリングフレームを作成するリングフレーム作成ステップと、
該被加工物もしくは該熱圧着シートを加熱することによって該リングフレームの内部領域の該熱圧着シートに該被加工物を固定する被加工物固定ステップと、
該被加工物と一体となったリングフレームをチャックテーブルに保持し、該被加工物と該リングフレームとを所定の仕上げ厚さに研削する研削ステップと、を備え、
該研削ステップは、該リングフレームの厚さを測定しながら研削を実施することによって、該被加工物を所定の仕上げ厚さに研削をすることを特徴とする被加工物の研削方法。
【請求項2】
該リングフレーム作成ステップの後に、該リングフレームの内部領域の該熱圧着シートを洗浄する熱圧着シート洗浄ステップ、を更に備える請求項1記載の被加工物の研削方法。
【請求項3】
該リングフレーム作成ステップは、
該円板材料の中央部を研削する中央部研削ステップと、
該中央部研削ステップの後に該熱圧着シートを研削する熱圧着シート研削ステップと、
を備える請求項1または請求項2記載の被加工物の研削方法。
【請求項4】
該円板材料は、一面に水溶性樹脂の薄膜が形成され、
該熱圧着シート固定ステップは、該円板材料の該一面側に熱圧着シートを固定することを特徴とする請求項1または請求項2記載の被加工物の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスでは、半導体ウェーハの表面にIC(Integrated Circuit)やLSI(Large Scale Integration)等の回路素子を複数形成した後、ウェーハ裏面を研削装置で研削して所定の厚みへと薄化し、薄化したウェーハを切削装置で切削することで個々の半導体デバイスを製造している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-006018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような研削装置では、回転するチャックテーブルに保持されたウェーハの厚みを測定しながら研削を行っている。そのため、研削対象である被加工物が円形でない場合や溝入りウェーハなど、厚みを測定できない場合がある。研削中に厚みを測定できない場合は、スピンドルの下降量を制御するZ軸制御による研削、またはポストプロセスによる研削が行われることが一般的であるが、Z軸制御では研削装置の撓みやホイール消耗によって所望の厚みに研削できない、ポストプロセスでは厚み測定と再研削により加工時間が長くなる、というそれぞれ問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来では研削中に厚みの測定が困難であった被加工物を、加工時間が長くなることを抑制しつつ所望の厚みに研削できる被加工物の研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の研削方法は、被加工物を研削する研削方法であって、円板状の材料である円板材料に熱圧着シートを固定する熱圧着シート固定ステップと、複数の研削砥石で形成される直径が該円板材料の半径以下の研削ホイールで該円板材料の中央部を削り取ることによって該中央部の該熱圧着シートを露出させ、該円板材料を外周部のみのリングフレームを作成するリングフレーム作成ステップと、該被加工物もしくは該熱圧着シートを加熱することによって該リングフレームの内部領域の該熱圧着シートに該被加工物を固定する被加工物固定ステップと、該被加工物と一体となったリングフレームをチャックテーブルに保持し、該被加工物と該リングフレームとを所定の仕上げ厚さに研削する研削ステップと、を備え、該研削ステップは、該リングフレームの厚さを測定しながら研削を実施することによって、該被加工物を所定の仕上げ厚さに研削をすることを特徴とする。
【0007】
該リングフレーム作成ステップの後に、該リングフレームの内部領域の該熱圧着シートを洗浄する熱圧着シート洗浄ステップ、を更に備えてもよい。
【0008】
該リングフレーム作成ステップは、該円板材料の中央部を研削する中央部研削ステップと、該中央部研削ステップの後に該熱圧着シートを研削する熱圧着シート研削ステップと、を備えてもよい。
【0009】
該円板材料は、一面に水溶性樹脂の薄膜が形成され、該熱圧着シート固定ステップは、該円板材料の該一面側に熱圧着シートを固定してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は、円板材料の中央部を削り取ってリングフレームを作成し、リングフレームの開口に熱圧着シートを介して固定した被加工物を、リングフレームとともに、リングフレームの厚さを測定して監視しながら、研削を実施するので、リングフレームの厚さに基づいて被加工物の厚みを算出することにより、被加工物の厚みを測定して監視しながら、研削を実施できるため、従来では研削中に直接厚みの測定が困難であった被加工物を、加工時間が長くなることを抑制しつつ所望の厚みに研削できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る被加工物の研削方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図2図2は、図1の熱圧着シート固定ステップを説明する斜視図である。
図3図3は、図1の熱圧着シート固定ステップを説明する側断面図である。
図4図4は、図1のリングフレーム作成ステップを説明する斜視図である。
図5図5は、図1のリングフレーム作成ステップを説明する側断面図である。
図6図6は、図4及び図5のリングフレーム作成ステップで作成したリングフレームを説明する斜視図である。
図7図7は、図4及び図5のリングフレーム作成ステップで作成したリングフレームを説明する側断面図である。
図8図8は、図1の被加工物固定ステップを説明する斜視図である。
図9図9は、図1の被加工物固定ステップを説明する側断面図である。
図10図10は、図1の研削ステップを説明する斜視図である。
図11図11は、図1の研削ステップを説明する側断面図である。
図12図12は、実施形態2に係る被加工物の研削方法のリングフレーム作成ステップの処理手順の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、実施形態2に係る被加工物の研削方法の研削ステップを説明する側断面図である。
図14図14は、実施形態3に係る被加工物の研削方法の熱圧着シート固定ステップを説明する側断面図である。
図15図15は、実施形態3に係る被加工物の研削方法のリングフレーム作成ステップで作成したリングフレームを説明する側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る被加工物の研削方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る被加工物の研削方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。実施形態1に係る被加工物の研削方法は、図1に示すように、熱圧着シート固定ステップ1001と、リングフレーム作成ステップ1002と、熱圧着シート洗浄ステップ1003と、被加工物固定ステップ1004と、研削ステップ1005と、を備える。
【0014】
実施形態1に係る被加工物の研削方法において、熱圧着シート固定ステップ1001における熱圧着シート110(図2等参照)の固定対象であり、リングフレーム作成ステップ1002においてリングフレーム120(図6及び図7参照)に作成される対象である円板材料100(図2等参照)は、実施形態1では、円板状等の板状に形成されており、例えば、後述する被加工物200と同質の材料、具体的には、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素など、を基板とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。
【0015】
円板材料100は、後述するようにリングフレーム作成ステップ1002において円形状の中央部101が削り取られるため、削り取られる予定の中央部101に分割予定ラインやデバイスが形成されていないダミーウエーハが好ましいが、ダミーウエーハデバイスが形成されていてもよい。ここで、円形状の中央部101は、平面視で後述する被加工物200を十分に覆うことが可能な大きさ、すなわち、平面視で円形状の中央部101内に被加工物200を収めて載置することが可能な大きさに設定される。
【0016】
図2及び図3は、それぞれ、図1の熱圧着シート固定ステップ1001を説明する斜視図及び側断面図である。熱圧着シート固定ステップ1001は、図2及び図3に示すように、円板状の材料である円板材料100のいずれか一方の面に熱圧着シート110を熱圧着して固定するステップである。
【0017】
熱圧着シート固定ステップ1001で円板材料100に固定する熱圧着シート110は、実施形態1では、少なくとも後述するリングフレーム作成ステップ1002により円板材料100の中央部101を削り取って形成するリングフレーム120の開口121(図6及び図7参照)を平面視で十分に覆うことが可能な形状及び大きさを有する。すなわち、熱圧着シート固定ステップ1001で円板材料100に固定する熱圧着シート110は、実施形態1では、少なくとも円板材料100の中央部101を平面視で十分に覆うことが可能な形状及び大きさを有する。熱圧着シート固定ステップ1001で円板材料100に固定する熱圧着シート110は、実施形態1では、図2及び図3に示すように、例えば、平面視で円板材料100と同等の直径を有する円形に形成される。
【0018】
熱圧着シート固定ステップ1001で円板材料100に固定する熱圧着シート110は、実施形態1では、粘着剤等の粘着性を有する合成樹脂から構成された層である糊層を有さず、熱可塑性樹脂をシート状に形成した熱可塑性樹脂シートである。熱圧着シート固定ステップ1001で円板材料100に固定する熱圧着シート110を構成する材料の熱可塑性樹脂は、温度が10℃以上30℃以下での貯蔵弾性率は1×10Pa以上1×10Pa以下であり、温度が80℃以上100℃以下での貯蔵弾性率は1×10Pa以上1×10Pa以下である。
【0019】
貯蔵弾性率は、損失弾性率(動的損失弾性率)や損失正接とともに動的弾性率測定(Dynamic Mechanical Analysis、DMA)によって測定される。具体的には、貯蔵弾性率は、日本工業規格のJIS K 7244-4(非共振強制振動法)、JIS K 7244-5(曲げモード)及びJIS K 7244-6(せん断モード)のいずれかに従う方法で測定される。なお、日本工業規格によれば、貯蔵弾性率は、0.01GPa(1×10Pa)より小さい場合にはJIS K 7244-6(せん断モード)に従う方法で測定することが好ましく、0.01GPa以上5GPa以下(1×10Pa以上5×10Pa以下)である場合にはJIS K 7244-4(非共振強制振動法)に従う方法で測定することが好ましく、5GPa(5×10Pa)より大きい場合にはJIS K 7244-5(曲げモード)に従う方法で測定することが好ましいとされている。
【0020】
貯蔵弾性率は、一般に測定時の温度及び測定時に加える変形の周波数(速度)によって変化する。熱圧着シート110を構成する熱可塑性樹脂は、より詳細には、温度が10℃以上30℃以下、及び、変形の周波数が0.01Hz以上10Hz以下の条件下において測定した貯蔵弾性率が1×10Pa以上1×10Pa以下であり、温度が80℃以上100℃以下、及び、変形の周波数が0.01Hz以上10Hz以下の条件下において測定した貯蔵弾性率は1×10Pa以上1×10Pa以下である。
【0021】
熱圧着シート固定ステップ1001で円板材料100に固定する熱圧着シート110を構成する材料の熱可塑性樹脂は、上記のような貯蔵弾性率を有し、温度が上昇することにより貯蔵弾性率が低下する性質を有するため、糊層を有さず、かつ、加熱することにより円板材料100に熱圧着して固定することが可能となる。なお、樹脂の貯蔵弾性率が1×10Pa未満である場合、当該樹脂がべたつき、粘着性が強過ぎるため、糊層を形成してしまう。樹脂の貯蔵弾性率が1×10Paより高い場合、当該樹脂が硬すぎて、円板材料100に固定されない恐れがある。
【0022】
熱圧着シート固定ステップ1001で円板材料100に固定する熱圧着シート110は、具体的には、ポリオレフィン(Poly Olefine、PO)系の樹脂化合物をシート状に形成したポリオレフィンシートであり、例えば、ポリエチレン(Poly Ethylene、PE)をシート状に形成したポリエチレンシート、ポリプロピレン(Poly Propylene、PP)をシート状に形成したポリプロピレンシート、ポリスチレン(Poly Styrene、PS)をシート状に形成したポリスチレンシート等である。
【0023】
熱圧着シート固定ステップ1001では、まず、図2及び図3に示すように、円板材料100より平面視で十分に大きい保持テーブル10上に円板材料100を載置し、円板材料100上に少なくともリングフレーム作成ステップ1002において削り取る予定の中央部101を平面視で十分に覆うように熱圧着シート110を載置する。なお、熱圧着シート固定ステップ1001では、本発明ではこれに限定されず、保持テーブル10上に熱圧着シート110を載置し、熱圧着シート110上に円板材料100を載置してもよい。
【0024】
熱圧着シート固定ステップ1001では、次に、熱圧着シート110を所定の温度(実施形態1では例えば50~150℃)で加熱して軟化させながら、円板材料100と熱圧着シート110とを厚み方向に沿って互いに接近させる方向に所定の押圧力(実施形態1では例えば0.3MPa以上)で所定の時間(実施形態1では例えば30秒以上)押圧することにより、熱圧着シート110を円板材料100に熱圧着して固定する。熱圧着シート固定ステップ1001では、保持テーブル10の内部もしくは平面視で熱圧着シート110を十分に覆う形状及び大きさを有する不図示の押圧部材の内部に備えられた熱源により熱圧着シート110を加熱しながら、この押圧部材で押圧して、熱圧着してもよい。また、熱圧着シート固定ステップ1001では、保持テーブル10の内部もしくは不図示の押圧ローラの内部に備えられた熱源により熱圧着シート110を加熱しながら、不図示の押圧ローラを、熱圧着シート110を介して円板材料100上の一端から他端まで回転移動させることにより押圧して、熱圧着してもよい。また、熱圧着シート固定ステップ1001では、赤外線によって、熱圧着シート110、円板材料100及び保持テーブル10の少なくともいずれかを加熱してもよい。
【0025】
もしくは、熱圧着シート固定ステップ1001では、不図示のローラを、熱圧着シート110を介して円板材料100上の一端から他端まで回転移動させることにより、熱圧着シート110を円板材料100上に密着させた後に、熱圧着シート110側から工業用ドライヤーで所定の温度(実施形態1では例えば150℃以上)の熱風を吹き付けることにより熱圧着シート110を加熱して軟化させることで、熱圧着シート110を円板材料100に向けて押圧することなく、すなわち押圧力が0MPa下で、軟化した熱圧着シート110を円板材料100に熱圧着して固定してもよい。
【0026】
熱圧着シート固定ステップ1001では、実施形態1では、このように糊層のない熱圧着シート110を円板材料100に熱圧着して固定するので、追って実施するリングフレーム作成ステップ1002において円板材料100の中央部101を削り取る際に、研削ホイール32(図4及び図5参照)の研削砥石34(図4及び図5参照)の研削面に粘着性を有する糊層が付着するといった研削における不具合が発生する恐れがなく、また、リングフレーム作成ステップ1002においてリングフレーム120を形成後に、円板材料100に固定されていた熱圧着シート110の中央部111(図6及び図7参照)を、被加工物200を固定する固定部材として再び好適に使用できる。
【0027】
図4及び図5は、それぞれ、図1のリングフレーム作成ステップ1002を説明する斜視図及び側断面図である。図6及び図7は、それぞれ、図4及び図5のリングフレーム作成ステップ1002で作成したリングフレーム120を説明する斜視図及び側断面図である。リングフレーム作成ステップ1002は、図4及び図5に示すように、複数の研削砥石34で形成される直径35が円板材料100の半径以下の研削ホイール32で円板材料100の中央部101を削り取ることによって中央部111の熱圧着シート110を露出させ、円板材料100を外周部102(図6及び図7参照)のみのリングフレーム120を作成するステップである。
【0028】
リングフレーム作成ステップ1002は、実施形態1では、図4及び図5に示すように、チャックテーブル20及び研削ユニット30を使用して実施する。チャックテーブル20は、図4及び図5に示すように、凹部が形成された円盤状の枠体21と、凹部内に嵌め込まれた円盤形状の吸着部22と、を備える。チャックテーブル20の吸着部22は、多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から形成され、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。チャックテーブル20の吸着部22の上面は、載置された円板材料100を下方側から熱圧着シート110を介して吸引保持する保持面23である。枠体21の上面と保持面23とは、実施形態1では、図5に示すように、同一平面上に配置されており、水平面に平行に形成されている。なお、保持面23は、本発明ではこれに限定されず、チャックテーブル20の保持面23の中心24を頂点とし、外周が僅かに低い円錐面状に形成されていてもよい。
【0029】
チャックテーブル20は、チャックテーブル20の枠体21の下方に接続された不図示の回転駆動源により、保持面23の中心24を通り、保持面23に直交する回転軸25回りに回転自在に設けられている。チャックテーブル20は、不図示の回転軸調整ユニットにより、回転軸25が鉛直方向に平行なZ軸方向に対して所定の範囲内の傾斜角だけ傾斜することができ、これに伴い、保持面23は、XY平面に平行な水平面に対して同じ傾斜角だけ傾斜することができる。チャックテーブル20は、不図示の移動ユニットにより、一定の範囲内で水平方向と平行に移動自在に設けられている。
【0030】
研削ユニット30は、図4図5図6及び図7に示すように、スピンドル31と、研削ホイール32と、を備える。スピンドル31は、鉛直方向(Z軸方向)に平行な回転軸36回りに回転可能に設けられ、下側に向けられた先端(下端)に着脱可能に装着された研削ホイール32を鉛直方向に平行な回転軸36回りに回転可能に支持する。
【0031】
研削ホイール32は、環状の基台33と、複数の研削砥石34と、を含んで構成される。複数の研削砥石34は、環状の基台33の下側に向けられた自由端面(下面)に設けられており、研削ホイール32がスピンドル31の先端に装着された際の環状の基台33の回転軸36を中心とする円板材料100の半径以下の直径35の環状に配置されている。ここで、直径35は、回転軸36と、回転軸36から基台33の自由端面に沿う方向に最も離れた研削砥石34の外周側の端との間の距離(長さ)で定められる。複数の研削砥石34は、研削ホイール32がスピンドル31の先端に装着されて回転軸36回りに回転することで、各研削砥石34の径方向の幅に概ね相当する幅を有し、外周の直径が直径35と同等となる円環状の回転軌跡を描く。研削砥石34は、本実施形態では、例えば、ダイヤモンド、cBN(cubic Boron Nitride)等の砥粒を、メタルボンド、レジンボンド、ビトリファイドボンド等のボンド材(結合材)で固定することによって形成されている。
【0032】
研削ユニット30は、スピンドル31が、チャックテーブル20の保持面23に、鉛直方向に対向するように配置されている。チャックテーブル20の回転軸25と、研削ユニット30のスピンドル31及び研削ホイール32の回転軸36とが、水平方向にずれて配設されており、チャックテーブル20を水平方向と平行に移動させることで、研削ホイール32の研削砥石34で円板材料100を研削する際の研削ホイール32の研削砥石34側の研削面及び円板材料100側の被研削面の面内における、回転軸25と回転軸36との間の水平方向のずれを調整できる。
【0033】
研削ユニット30は、さらに、不図示の研削送りユニットと、不図示の研削流体供給ユニットと、を備える。研削送りユニットは、研削ユニット30のスピンドル31及びスピンドル31に装着された研削ホイール32をチャックテーブル20に対して研削送り方向(鉛直方向と平行なZ軸方向)に沿って相対的に移動させる研削送りをすることにより、スピンドル31及び研削ホイール32とチャックテーブル20とを相対的に研削送り方向に沿って接近および離間させる。
【0034】
研削送りユニットは、モータと、ボールねじと、ガイドと、を有する公知のボールねじ機構である。研削送りユニットは、Z軸の軸心回りに回転自在に設けられたボールねじと、ボールねじを軸心回りに回転させるモータと、スピンドル31をZ軸方向に移動自在に支持するガイドと、を有して構成されている。研削送りユニットは、不図示の制御ユニットにより、モータの駆動が制御されることにより、送り速度、及び、送り量(下降量)等が制御される。ここで、送り速度は、研削送りユニットにより、スピンドル31及び研削ホイール32をチャックテーブル20に対してZ軸方向に沿って相対的に接近および離間させる速度のことを指す。また、送り量は、研削送りユニットによりスピンドル31及び研削ホイール32をチャックテーブル20に対してZ軸方向に沿って相対的に接近および離間させた量(高さ)のことを指す。送り速度は、単位時間当たりの送り量となる。
【0035】
研削送りユニットは、モータの回転位置を読み取るエンコーダを含み、エンコーダが読み取ったモータの回転位置に基づいて、スピンドル31のチャックテーブル20に対するZ軸方向の相対的な位置を検出し、検出した相対的な位置を不図示の制御ユニットに出力する。また、研削送りユニットは、研削開始前、研削中及び研削終了後に、例えば一定時間毎(例えば、毎秒)に、スピンドル31のチャックテーブル20に対するZ軸方向の相対的な位置を検出することにより、送り速度や送り量を検出し、検出した送り速度や送り量を不図示の制御ユニットに出力する。なお、研削送りユニットは、エンコーダによりスピンドル31のチャックテーブル20に対するZ軸方向の相対的な位置を検出する構成に限定されず、Z軸方向に平行なリニアスケールと、研削送りユニットによりZ軸方向に移動自在に設けられリニアスケールの目盛を読み取る読み取りヘッドと、により構成してもよい。
【0036】
研削流体供給ユニットは、不図示の研削流体供給源と接続されており、不図示の研削流体供給源から供給される純水等の研削流体(研削水)を、チャックテーブル20に保持された円板材料100に向けて供給する。
【0037】
リングフレーム作成ステップ1002では、まず、図4及び図5に示すように、チャックテーブル20の保持面23上に、円板材料100を、円板材料100の熱圧着シート固定ステップ1001で熱圧着シート110を固定した側を保持面23側に向けて載置し、円板材料100の熱圧着シート110を固定した側とは反対側(露出面側)を上方に露出させた状態で、チャックテーブル20の保持面23で円板材料100を、熱圧着シート110を介して吸引保持する。
【0038】
リングフレーム作成ステップ1002では、次に、図4図5図6及び図7に示すように、チャックテーブル20を水平方向と平行に移動させることで、研削ホイール32の研削砥石34で円板材料100の露出面側を研削する際の研削ホイール32の研削砥石34側の研削面及び円板材料100の露出面側の被研削面の面内における、回転軸25と回転軸36との間の水平方向のずれを調整することにより、研削砥石34の円環状の回転軌跡を、チャックテーブル20の保持面23の回転軸25と重なり、なおかつ、チャックテーブル20に保持された円板材料100の露出面側の中央部101と中央部101を囲繞する円環状の外周部102との間の境界円に内接する位置(所定研削位置、と称する。)に位置づける。
【0039】
リングフレーム作成ステップ1002では、研削砥石34の回転軌跡を所定研削位置に位置付けた後、次に、研削砥石34の回転軌跡を所定研削位置に位置付けた状態で、研削ユニット30のスピンドル31を鉛直方向に平行な回転軸36回りに回転駆動することにより、スピンドル31の下端に装着した研削ホイール32を鉛直方向に平行な回転軸36回りに回転させつつ、スピンドル31に対向配置された、円板材料100を保持するチャックテーブル20を回転軸25回りに回転させて、回転させたチャックテーブル20に保持された円板材料100に対し、研削流体供給ユニットにより研削流体を供給しながら、研削送りユニットにより、回転する研削ホイール32を研削送り方向に沿って押圧することによって、研削ホイール32の研削砥石34でチャックテーブル20に保持された円板材料100の露出面側の中央部101を研削する。
【0040】
リングフレーム作成ステップ1002では、このように研削することにより、円板材料100の露出面側の中央部101を研削ホイール32の研削砥石34の研削面に沿って研削して、円板材料100の露出面側の被研削面を研削面と平行に形成する。リングフレーム作成ステップ1002では、そして、図6及び図7に示すように、研削ホイール32の研削砥石34により、円板材料100の露出面側の中央部101を削り取ることにより、中央部101に対応する熱圧着シート110の中央部111を露出させ、円板材料100を外周部102のみのリングフレーム120に形成する。
【0041】
ここで、熱圧着シート110の中央部111は、熱圧着シート110において、円板材料100の中央部101に固定されていた部分であり、リングフレーム作成ステップ1002で円板材料100の中央部101を削り取ることにより、露出する。また、リングフレーム作成ステップ1002で円板材料100の中央部101を削り取った残りの円板材料100の外周部102が、リングフレーム120となり、円板材料100の中央部101を削り取って形成された厚さ方向に貫通する円形の貫通孔が、リングフレーム120の中央に形成される開口121となる。熱圧着シート110の中央部111を囲繞する円環状の外周部112は、熱圧着シート110において、円板材料100の外周部102に固定されていた部分であり、円板材料100からリングフレーム120が形成されることにより、リングフレーム120に固定される部分となる。以下において、リングフレーム120の開口121内を、適宜、リングフレーム120の内部領域と称し、リングフレーム120の開口121によってリングフレーム120が形成された側に露出した熱圧着シート110の中央部111を、適宜、リングフレーム120の内部領域の熱圧着シート110と称する。
【0042】
リングフレーム作成ステップ1002では、実施形態1では、研削砥石34が円板材料100の中央部101を完全に削り取って厚さ方向に貫通する円形の貫通孔を形成し、研削砥石34の研削面が熱圧着シート110の中央部111に到達した時点で、研削ホイール32の研削砥石34による研削を停止、終了する。このため、リングフレーム作成ステップ1002では、実施形態1では、熱圧着シート110の中央部111の円板材料100が削り取られた側の面を基準とするリングフレーム120の上面の高さ130を、円板材料100の厚み、すなわちリングフレーム120の厚み125(図7参照)と概ね同じに形成する。
【0043】
リングフレーム作成ステップ1002では、研削送りユニットにより送り量を検出しながら研削ホイール32の研削砥石34で円板材料100の露出面側を研削するので、高さ130を概ね制御できるが、送り量を制御しながらの研削では、研削ユニット30の撓みや研削ホイール32の消耗等によって高さ130に誤差が生じる恐れがある。このため、実施形態1に係る被加工物の研削方法では、リングフレーム作成ステップ1002を実施後、かつ、研削ステップ1005の実施前に、別途非接触式の厚み測定器等を使用して、リングフレーム120の厚み125(図7参照)、及び、リングフレーム120に固定された熱圧着シート110の厚み115(図7参照)と合わせて、熱圧着シート110の中央部111の円板材料100が削り取られた側の面を基準とするリングフレーム120の上面の高さ130を測定して取得する。
【0044】
熱圧着シート洗浄ステップ1003は、リングフレーム作成ステップ1002の後に、リングフレーム120の内部領域の熱圧着シート110を洗浄するステップである。熱圧着シート洗浄ステップ1003では、図示しない洗浄装置が、リングフレーム120を熱圧着シート110を介してスピンナテーブルの保持面に吸引保持し、リングフレーム120をクランプ部でクランプして、スピンナテーブルを軸心回りに回転させた状態で、洗浄液体供給ノズルから純水または界面活性材を含む純水からなる洗浄液体を熱圧着シート110のリングフレーム120が形成された側の面の内部領域、すなわち熱圧着シート110の中央部111に供給する。リングフレーム120の内部領域の熱圧着シート110に供給された洗浄液体が、スピンナテーブルの回転により発生する遠心力によって、リングフレーム120の内部領域の熱圧着シート110上を中心側から外周側に向けて流れてリングフレーム120の内部領域の熱圧着シート110を洗浄して、リングフレーム作成ステップ1002において研削砥石34で円板材料100を研削した際に発生した研削屑等をリングフレーム120の内部領域の熱圧着シート110上から除去する。
【0045】
熱圧着シート洗浄ステップ1003は、本発明では省略しても良いが、実施形態1のように実施することで、後述する被加工物固定ステップ1004で被加工物200の固定を妨げる恐れがあったり、後述する研削ステップ1005で被加工物200の厚さの測定に誤差を生じさせる恐れがあったりする、リングフレーム作成ステップ1002で発生した研削屑等を好適に除去することができる。
【0046】
実施形態1に係る被加工物の研削方法において、被加工物固定ステップ1004におけるリングフレーム120の内部領域の熱圧着シート110への固定対象であり、研削ステップ1005における研削対象である被加工物200は、実施形態1では、平面視で長方形状や正方形状等の円形でない板状や、円形の板状であっても小さいために研削中に直接厚み205を測定することが困難な形状に形成されており、少なくとも一方の面は熱圧着シート110に熱圧着して固定可能な形状に形成されている。
【0047】
被加工物200は、実施形態1では、例えば、前述の円板材料100と同質の材料である、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素などを基板とし、平面視で長方形状や正方形状等の円形でない板状に形成された半導体チップや光デバイスチップ等のデバイスチップや、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等である。
【0048】
被加工物200は、デバイスが形成されている場合、デバイスが形成された側の裏側の面が被研削面となり、後述する研削ステップ1005で所定の仕上げ厚さに研削されて、所定の仕上げ厚さのデバイスのチップ等が製造される。被加工物200は、デバイスが形成されていない場合、いずれか一方の面が被研削面となり、後述する研削ステップ1005で所定の仕上げ厚さに研削されて、所定の仕上げ厚さの試料等が製造される。
【0049】
図8及び図9は、それぞれ、図1の被加工物固定ステップ1004を説明する斜視図及び側断面図である。被加工物固定ステップ1004は、図8及び図9に示すように、被加工物200もしくは熱圧着シート110を加熱することによってリングフレーム120の内部領域の熱圧着シート110に被加工物200の被研削面の裏側の面を固定して、リングフレーム120を被加工物200と一体とするステップである。
【0050】
被加工物固定ステップ1004では、まず、図8及び図9に示すように、熱圧着シート110及びリングフレーム120より平面視で十分に大きい保持テーブル40上に、熱圧着シート110側を保持テーブル40側に向けて、熱圧着シート110及びリングフレーム120を載置し、リングフレーム120の内部領域の熱圧着シート110上に、被加工物200の被研削面の裏側の面を熱圧着シート110に向けて、被加工物200を載置する。なお、被加工物固定ステップ1004では、図8及び図9に示す実施形態1の例では、2個の被加工物200を載置しているが、本発明ではこれに限定されず、1個でもよく、3個以上でもよい。また、被加工物固定ステップ1004では、本発明ではこれに限定されず、保持テーブル40上に被加工物200を載置し、被加工物200上に、リングフレーム120が形成された側を被加工物200側に向けて、熱圧着シート110及びリングフレーム120を載置してもよい。
【0051】
被加工物固定ステップ1004では、次に、熱圧着シート110を所定の温度(実施形態1では例えば50~150℃)で加熱して軟化させながら、被加工物200と熱圧着シート110とを厚み方向に沿って互いに接近させる方向に所定の押圧力(実施形態1では例えば0.3MPa以上)で所定の時間(実施形態1では例えば30秒以上)押圧することにより、被加工物200の被研削面の裏側の面を熱圧着シート110の中央部111のリングフレーム120が固定された側と同じ側の面に熱圧着して固定して、リングフレーム120を被加工物200と一体とする。被加工物固定ステップ1004では、保持テーブル40の内部もしくは平面視で熱圧着シート110を十分に覆う形状及び大きさを有する不図示の押圧部材の内部に備えられた熱源により熱圧着シート110を加熱しながら、この押圧部材で押圧して、熱圧着してもよい。また、被加工物固定ステップ1004では、保持テーブル40の内部もしくは不図示の押圧ローラの内部に備えられた熱源により熱圧着シート110を加熱しながら、不図示の押圧ローラを、各被加工物200上の一端から他端まで回転移動させることにより熱圧着シート110に向けて押圧して、熱圧着してもよい。また、被加工物固定ステップ1004では、赤外線によって、熱圧着シート110、被加工物200及び保持テーブル40の少なくともいずれかを加熱してもよい。
【0052】
もしくは、被加工物固定ステップ1004では、不図示のローラを、熱圧着シート110を介して各被加工物200上の一端から他端まで回転移動させることにより、各被加工物200を熱圧着シート110上に密着させた後に、各被加工物200側から工業用ドライヤーで所定の温度(実施形態1では例えば150℃以上)の熱風を吹き付けることにより熱圧着シート110を加熱して軟化させることで、被加工物200を熱圧着シート110に向けて押圧することなく、すなわち押圧力が0MPa下で、被加工物200を軟化した熱圧着シート110に熱圧着して固定してもよい。
【0053】
被加工物固定ステップ1004では、実施形態1では、このように被加工物200を糊層のない熱圧着シート110に熱圧着して固定するので、追って研削ステップ1005を実施した後に被加工物200を熱圧着シート110から取り外す際に、被加工物200に粘着性を有する糊層が付着するといった不具合が発生する恐れがなく、また、被加工物200が取り外された後の熱圧着シート110を好適に再利用できる。
【0054】
図10及び図11は、それぞれ、図1の研削ステップ1005を説明する斜視図及び側断面図である。研削ステップ1005は、図10及び図11に示すように、被加工物200と一体となったリングフレーム120をチャックテーブル50に保持し、被加工物200とリングフレーム120とを所定の仕上げ厚さに研削するステップである。
【0055】
研削ステップ1005は、実施形態1では、図10及び図11に示すように、チャックテーブル50、研削ユニット60、接触式厚み測定ユニット70及び制御ユニット80を使用して実施する。チャックテーブル50は、図10及び図11に示すように、前述のチャックテーブル20と同様の構成及び機能を備える。図10及び図11に示すチャックテーブル50の枠体51、吸着部52、保持面53、中心54及び回転軸55は、それぞれ、前述のチャックテーブル20の枠体21、吸着部22、保持面23、中心24及び回転軸25と同様である。
【0056】
チャックテーブル50は、チャックテーブル20と同様に、枠体51の下方に接続された不図示の回転駆動源により、保持面53の中心54を通り、保持面53に直交する回転軸55回りに回転自在に設けられている。チャックテーブル50は、チャックテーブル20と同様に、不図示の回転軸調整ユニットにより、回転軸55が鉛直方向に平行なZ軸方向に対して所定の範囲内の傾斜角だけ傾斜することができ、これに伴い、保持面53は、XY平面に平行な水平面に対して同じ傾斜角だけ傾斜することができる。チャックテーブル50は、チャックテーブル20と同様に、不図示の移動ユニットにより、一定の範囲内で水平方向と平行に移動自在に設けられている。
【0057】
研削ユニット60は、図10及び図11に示すように、後述する直径35,65が異なる点を除き、概ね前述の研削ユニット30と同様の構成及び機能を備える。図10及び図11に示す研削ユニット60のスピンドル61、研削ホイール62、基台63、研削砥石64及び回転軸66は、それぞれ、概ね前述の研削ユニット30のスピンドル31、研削ホイール32、基台33、研削砥石34及び回転軸36と同様である。研削ユニット60は、研削ユニット30と同様に、さらに、不図示の研削送りユニットと、不図示の研削流体供給ユニットと、を備える。
【0058】
研削ユニット60は、図10及び図11に示すように、前述の研削ユニット30において、複数の研削砥石64が、環状の基台63の下側に向けられた自由端面(下面)に設けられており、研削ホイール62がスピンドル61の先端に装着された際の環状の基台63の回転軸66を中心とするリングフレーム120の外周の半径よりも十分に大きい直径65の環状に配置するように変更したものであり、すなわち、直径65を前述の直径35と比較して十分に大きく変更したものであり、その他の構成については、前述の研削ユニット30と同様である。ここで、直径65は、回転軸66と、回転軸66から基台63の自由端面に沿う方向に最も離れた研削砥石64の外周側の端との間の距離(長さ)で定められる。
【0059】
研削ユニット60は、スピンドル61が、チャックテーブル50の保持面53に、鉛直方向に対向するように配置されている。チャックテーブル50の回転軸55と、研削ユニット60のスピンドル61及び研削ホイール62の回転軸66とが、水平方向にずれて配設されており、チャックテーブル50を水平方向と平行に移動させることで、研削ホイール62の研削砥石64でリングフレーム120と共にリングフレーム120と一体とされた被加工物200を研削する際の研削ホイール62の研削砥石64側の研削面、並びに、リングフレーム120及び被加工物200側の被研削面の面内における、回転軸55と回転軸66との間の水平方向のずれを調整できる。このため、研削ユニット60でチャックテーブル50に保持されたリングフレーム120及び被加工物200の被研削面を研削している際に、チャックテーブル50に保持されたリングフレーム120の被研削面の一部を、接触式厚み測定ユニット70の第2プローブ72で接触可能に、上方に向けて露出させる。
【0060】
接触式厚み測定ユニット70は、図10及び図11に示すように、チャックテーブル50付近に設けられている。接触式厚み測定ユニット70は、図10及び図11に示すように、第1プローブ71と、第2プローブ72と、を備える。第1プローブ71及び第2プローブ72は、実施形態1では、いずれも接触した位置の高さを測定する接触式のプローブである。
【0061】
第1プローブ71は、被加工物200と一体となったリングフレーム120を保持したチャックテーブル50の保持面53のリングフレーム120より外側の領域に接触することで、保持面53のZ軸方向における位置、すなわち保持面53の高さを測定する。第2プローブ72は、チャックテーブル50の保持面53に保持されたリングフレーム120の上面(被研削面)に接触することで、リングフレーム120の上面のZ軸方向における位置(上面位置)、すなわちリングフレーム120の上面の高さ(上面高さ)を測定する。第1プローブ71及び第2プローブ72は、いずれも、測定した位置(高さ)の結果を制御ユニット80に出力する。
【0062】
制御ユニット80は、チャックテーブル50、研削ユニット60及び接触式厚み測定ユニット70の動作を制御して、研削ステップ1005に含まれる各種処理をチャックテーブル50、研削ユニット60及び接触式厚み測定ユニット70に実施させる。制御ユニット80は、研削ユニット60によるリングフレーム120及び被加工物200の研削中に、研削ユニット60の研削送りユニットにより、スピンドル61の送り速度や移動量を取得し、接触式厚み測定ユニット70により、保持面53の高さ及びリングフレーム120の上面の高さを取得する。制御ユニット80は、研削送りユニットによるスピンドル61の送り速度や移動量を制御する。
【0063】
また、制御ユニット80は、予め、リングフレーム作成ステップ1002を実施後、かつ、研削ステップ1005の実施前に取得された、リングフレーム120の厚み125の情報、リングフレーム120に固定された熱圧着シート110の外周部112の厚み115の情報、及び、熱圧着シート110の中央部111の円板材料100が削り取られた側の面を基準とするリングフレーム120の上面の高さ130の情報が、記憶される。制御ユニット80は、これらの厚み115、厚み125及び高さ130の情報に基づいて、厚み115と厚み125との和から高さ130を差し引くことにより、被加工物200を固定した熱圧着シート110の中央部111の厚み131(図7参照)を算出する。なお、リングフレーム作成ステップ1002で熱圧着シート110の中央部111を研削していないことがわかっている場合、リングフレーム120に固定された熱圧着シート110の外周部112の厚み115と被加工物200を固定した熱圧着シート110の中央部111の厚み131とは実質的に同じであるので、厚み125の情報及び高さ130の情報の記憶を省略して、リングフレーム120に固定された熱圧着シート110の外周部112の厚み115の情報を、被加工物200を固定した熱圧着シート110の中央部111の厚み131として使用しても良い。
【0064】
制御ユニット80は、研削ユニット60によるリングフレーム120及び被加工物200の研削中に、接触式厚み測定ユニット70により取得した、保持面53の高さ及び被加工物200と一体となったリングフレーム120の上面の高さに基づいて、被加工物200と一体となったリングフレーム120の上面の高さから保持面53の高さを差し引くことにより、熱圧着シート110を含む被加工物200と一体となったリングフレーム120の全体の厚み140(図11参照)を算出する。この全体の厚み140は、研削ユニット60による研削中のリングフレーム120の厚みと、リングフレーム120の厚み125との和に相当するので、制御ユニット80は、このようにして、実質的に研削ユニット60による研削中のリングフレーム120の厚みをリアルタイムで測定して監視することができる。
【0065】
制御ユニット80は、この算出した全体の厚み140と、別途算出した熱圧着シート110の中央部111の厚み131とに基づいて、全体の厚み140から厚み131を差し引くことにより、研削ユニット60によるリングフレーム120及び被加工物200の研削中における被加工物200の厚み205を算出する。このように、制御ユニット80は、予め記憶された厚み115、厚み125及び高さ130と、接触式厚み測定ユニット70により取得できる全体の厚み140とにより、研削ユニット60によるリングフレーム120及び被加工物200の研削中における被加工物200の厚み205をリアルタイムで測定して監視することができる。
【0066】
制御ユニット80は、本実施形態では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット80が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット80の演算処理装置は、制御ユニット80の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、チャックテーブル50、研削ユニット60及び接触式厚み測定ユニット70を制御するための制御信号を、制御ユニット80の入出力インターフェース装置を介してチャックテーブル50、研削ユニット60及び接触式厚み測定ユニット70に出力する。
【0067】
研削ステップ1005では、まず、図10及び図11に示すように、チャックテーブル50の保持面53上に、被加工物200と一体となったリングフレーム120を、熱圧着シート110を固定した側を保持面53側に向けて載置し、リングフレーム120及び被加工物200の熱圧着シート110を固定した側とは反対側(露出面側)を上方に露出させた状態で、チャックテーブル50の保持面53で被加工物200と一体となったリングフレーム120を、熱圧着シート110を介して吸引保持する。
【0068】
研削ステップ1005では、次に、図10及び図11に示すように、チャックテーブル50を水平方向と平行に移動させることで、研削ホイール62の研削砥石64でリングフレーム120及び被加工物200の露出面側を研削する際の研削ホイール62の研削砥石64側の研削面及びリングフレーム120及び被加工物200の露出面側の被研削面の面内における、回転軸55と回転軸66との間の水平方向のずれを調整することにより、研削砥石64の円環状の回転軌跡を、チャックテーブル50の保持面53の回転軸55と重なり、なおかつ、チャックテーブル50に保持されたリングフレーム120の露出面を径方向に跨ぐ位置(被加工物研削位置、と称する。)に位置づける。
【0069】
研削ステップ1005では、研削砥石64の回転軌跡を被加工物研削位置に位置付けた後、次に、研削砥石64の回転軌跡を被加工物研削位置に位置付けた状態で、研削ユニット60のスピンドル61を鉛直方向に平行な回転軸66回りに回転駆動することにより、スピンドル61の下端に装着した研削ホイール62を鉛直方向に平行な回転軸66回りに回転させつつ、スピンドル61に対向配置された、リングフレーム120及び被加工物200を保持するチャックテーブル50を回転軸55回りに回転させて、回転させたチャックテーブル50に保持されたリングフレーム120及び被加工物200に対し、研削流体供給ユニットにより研削流体を供給しながら、研削送りユニットにより、回転する研削ホイール62を研削送り方向に沿って押圧することによって、研削ホイール62の研削砥石64でチャックテーブル50に保持されたリングフレーム120及び被加工物200の露出面側を研削する。
【0070】
研削ステップ1005では、制御ユニット80が、接触式厚み測定ユニット70によりリングフレーム120の厚さを測定して監視しながら研削を実施することによって、前述のような算出処理を実行して、実質的に被加工物200の厚み205を測定して監視しながら実施できる。これにより、研削ステップ1005では、被加工物200の厚み205を所定の仕上げ厚さに研削をすることができる。研削ステップ1005では、制御ユニット80が、被加工物200の厚み205が所定の仕上げ厚さに到達したことを検出すると、研削ホイール62の研削砥石64でのリングフレーム120及び被加工物200の研削を停止、終了する。
【0071】
以上のような構成を有する実施形態1に係る被加工物の研削方法は、被加工物200の形状及び大きさに合わせて、円板材料100の中央部101を削り取ってリングフレーム120を作成し、リングフレーム120の開口121に熱圧着シート110を介して固定した被加工物200を、リングフレーム120とともに、リングフレーム120の厚さを測定して監視しながら、研削を実施する。このため、実施形態1に係る被加工物の研削方法は、リングフレーム120の厚さに基づいて被加工物200の厚み205を算出することにより、被加工物200の厚み205を測定して監視しながら、研削を実施できるので、被加工物200の厚み205の測定と被加工物200の再研削とを繰り返すポストプロセスを実施しなくても、被加工物200を所望の厚みに研削できる。したがって、実施形態1に係る被加工物の研削方法は、従来では研削中に直接厚みの測定が困難であった被加工物200を、加工時間が長くなることを抑制しつつ所望の厚みに研削できるという作用効果を奏する。
【0072】
また、実施形態1に係る被加工物の研削方法は、リングフレーム作成ステップ1002の後に、リングフレーム120の内部領域の熱圧着シート110を洗浄する熱圧着シート洗浄ステップ1003を更に備えるので、被加工物固定ステップ1004で被加工物200の固定を妨げる恐れがあったり、研削ステップ1005で被加工物200の厚さの測定に誤差を生じさせる恐れがあったりする、リングフレーム作成ステップ1002で発生した研削屑等を好適に除去できる。
【0073】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る被加工物の研削方法を図面に基づいて説明する。図12は、実施形態2に係る被加工物の研削方法のリングフレーム作成ステップ1002の処理手順の一例を示すフローチャートである。図13は、実施形態2に係る被加工物の研削方法の研削ステップ1005を説明する側断面図である。図12及び図13は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
実施形態2に係る被加工物の研削方法は、実施形態1において、リングフレーム作成ステップ1002を変更したものである。実施形態2に係る被加工物の研削方法のリングフレーム作成ステップ1002は、図12に示すように、中央部研削ステップ1011と、熱圧着シート研削ステップ1012と、を備える。
【0075】
中央部研削ステップ1011は、円板材料100の中央部101を研削するステップである。熱圧着シート研削ステップ1012は、さらに、中央部研削ステップ1011の後に熱圧着シート110の中央部111を研削するステップである。熱圧着シート研削ステップ1012では、中央部研削ステップ1011に引き続き、研削ユニット30の研削ホイール32の研削砥石34で、熱圧着シート110の中央部111を、貫通しないように研削することで、熱圧着シート110の中央部111の上面(被研削面)を、研削ホイール32の研削砥石34の研削面と平行に、すなわち平坦に形成する。熱圧着シート研削ステップ1012では、実施形態2では、熱圧着シート110の中央部111を、例えば研削前の厚み131よりも十分に薄い厚み135(図13参照)だけ研削し、厚み131から厚み135を減じた厚み136(図13参照)分だけ熱圧着シート110の中央部111を残存させる。
【0076】
なお、実施形態2に係る被加工物の研削方法では、このように熱圧着シート110の中央部111を研削するので、リングフレーム作成ステップ1002を実施後、かつ、研削ステップ1005の実施前に測定されて取得される、熱圧着シート110の中央部111の円板材料100が削り取られた側の面を基準とするリングフレーム120の上面の高さ137(図13参照)が、実施形態1での高さ130よりも熱圧着シート研削ステップ1012で研削した厚み135分だけ大きくなる。
【0077】
これに伴い、実施形態2に係る被加工物の研削方法では、研削ステップ1005における制御ユニット80による被加工物200の厚み205の算出処理が、実施形態1から変化する。具体的には、実施形態2の研削ステップ1005では、制御ユニット80は、厚み115、厚み125及び高さ137の情報に基づいて、厚み115と厚み125との和から高さ137を差し引くことにより、被加工物200を固定した熱圧着シート110の中央部111の厚み136を算出し、接触式厚み測定ユニット70により取得した情報に基づいて算出した全体の厚み140と、この厚み136とに基づいて、全体の厚み140から厚み136を差し引くことにより、研削ユニット60によるリングフレーム120及び被加工物200の研削中における被加工物200の厚み205を算出する。
【0078】
以上のような構成を有する実施形態2に係る被加工物の研削方法は、実施形態1において、熱圧着シート研削ステップ1012で、被加工物200を固定する熱圧着シート110の中央部111を研削するように変更したものであるので、実施形態1と同様の作用効果を奏するとともに、さらに、被加工物200を固定する熱圧着シート110の中央部111の厚みばらつきを抑制できるため、より精度よく、被加工物200の厚み205を測定して監視しながら、被加工物200を所望の厚みに研削できる。
【0079】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係る被加工物の研削方法を図面に基づいて説明する。図14は、実施形態3に係る被加工物の研削方法の熱圧着シート固定ステップ1001を説明する側断面図である。図15は、実施形態3に係る被加工物の研削方法のリングフレーム作成ステップ1002で作成したリングフレーム120を説明する側断面図である。図14及び図15は、実施形態1及び実施形態2と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0080】
実施形態3に係る被加工物の研削方法は、実施形態1において、熱圧着シート固定ステップ1001を変更したものである。実施形態3に係る被加工物の研削方法の熱圧着シート固定ステップ1001は、実施形態1において、図14に示すように、熱圧着シート110を固定する円板材料100を、一面に水溶性樹脂の薄膜150が形成されたものに変更し、円板材料100の水溶性樹脂の薄膜150が形成された一面側に熱圧着シート110を固定するように変更したものである。
【0081】
実施形態3では、例えば、熱圧着シート固定ステップ1001の前に、図示しない樹脂被膜装置が、円板材料100の当該一面の裏側を介してスピンナテーブルの保持面に吸引保持し、スピンナテーブルを軸心回りに回転するとともに、水溶性樹脂供給ノズルから液状の水溶性樹脂を円板材料100の当該一面の中央に滴下する。滴下された水溶性樹脂は、スピンナテーブルの回転により発生する遠心力によって、円板材料100の当該一面上を中心側から外周側に向けて流れていき、円板材料100の当該一面の全面に塗布される。
【0082】
なお、水溶性樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol:PVA)、又はポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone:PVP)等の水溶性樹脂を含んでいる。実施形態3では、円板材料100の当該一面の全面に塗布された水溶性樹脂を乾燥することによって、図14に示すように、円板材料100の当該一面の全面に水溶性樹脂の薄膜150を形成する。
【0083】
実施形態3では、熱圧着シート固定ステップ1001で円板材料100の水溶性樹脂の薄膜150が形成された一面側に熱圧着シート110を固定するので、水溶性樹脂の薄膜150により、追って実施するリングフレーム作成ステップ1002で発生する研削屑が熱圧着シート110の中央部111に付着する恐れを抑制する。そして、リングフレーム作成ステップ1002で研削ユニット30の研削流体供給ユニットにより供給される研削流体で水溶性樹脂の薄膜150を溶解して、溶解した水溶性樹脂の薄膜150により水溶性樹脂の薄膜150上の研削屑を除去しつつ、図15に示すように、熱圧着シート110の中央部111を好適に露出させることができる。
【0084】
なお、実施形態3に係る被加工物の研削方法では、図15に示すように熱圧着シート110の中央部111が外周部112よりも水溶性樹脂の薄膜150の厚み分だけ低くなるので、リングフレーム作成ステップ1002を実施後、かつ、研削ステップ1005の実施前に測定されて取得される、熱圧着シート110の中央部111の円板材料100が削り取られた側の面を基準とするリングフレーム120の上面の高さが、実施形態1での高さ130よりも水溶性樹脂の薄膜150の厚み分だけ大きくなる。これに伴い、実施形態3に係る被加工物の研削方法では、実施形態2と同様に、研削ステップ1005における制御ユニット80による被加工物200の厚み205の算出処理が、実施形態1から変化し、水溶性樹脂の薄膜150の厚み分だけ補正される。
【0085】
以上のような構成を有する実施形態3に係る被加工物の研削方法は、実施形態1において、熱圧着シート110を固定する円板材料100を、一面に水溶性樹脂の薄膜150が形成されたものに変更し、円板材料100の水溶性樹脂の薄膜150が形成された一面側に熱圧着シート110を固定するように変更したものであるので、実施形態1と同様の作用効果を奏するとともに、さらに、水溶性樹脂の薄膜150によりリングフレーム作成ステップ1002で発生する研削屑が熱圧着シート110の中央部111に付着する恐れを抑制して、熱圧着シート110の中央部111を好適に露出できる。
【0086】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0087】
32,62 研削ホイール
34,64 研削砥石
35,65 直径
100 円板材料
101 中央部
102 外周部
110 熱圧着シート
120 リングフレーム
150 水溶性樹脂の薄膜
200 被加工物
1001 熱圧着シート固定ステップ
1002 リングフレーム作成ステップ
1003 熱圧着シート洗浄ステップ
1004 被加工物固定ステップ
1005 研削ステップ
1011 中央部研削ステップ
1012 熱圧着シート研削ステップ
図1
図2
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