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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164478
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】液滴吐出装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20241120BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079978
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 洋介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB07
2C056EB15
2C056EB30
2C056EC07
2C056EC15
2C056EC23
2C056EC29
2C056EC42
2C056EC54
2C056EC57
2C056EE18
2C056FA04
2C056FA13
2C056HA15
2C056JC21
2C056JC23
2C056KB16
(57)【要約】
【課題】ノズル詰まりに起因する画像形成不良の発生を防止可能な液滴吐出装置及び画像形成システムを提供する。
【解決手段】液体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド21と、液滴吐出ヘッド21のヘッド温度を検知する検知手段56と、液滴吐出ヘッド21内の液体の温度を制御する温度調整手段46aと、閾値未満の環境温度下から画像形成動作を開始する際に、液滴吐出ヘッド21に加熱波形を印加してヘッド温度を閾値まで上昇させた後、ヘッド温度の上昇分が一定値以上の場合には液滴吐出ヘッド21にクリーニング動作を実施させる制御手段51と、を備えた液滴吐出装置4。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドのヘッド温度を検知する検知手段と、
前記液滴吐出ヘッド内の液体の温度を制御する温度調整手段と、
閾値未満の環境温度下から画像形成動作を開始する際に、前記液滴吐出ヘッドに加熱波形を印加して前記ヘッド温度を前記閾値まで上昇させた後、前記ヘッド温度の上昇分が一定値以上の場合には前記液滴吐出ヘッドにクリーニング動作を実施させる制御手段と、を備えた液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1記載の液滴吐出装置において、
前記制御手段は、前記ヘッド温度の上昇分が前記一定値未満の場合には前記液滴吐出ヘッドにフラッシング動作を実施させることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項1記載の液滴吐出装置において、
前記加熱波形として微駆動波形を用いることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項1記載の液滴吐出装置において、
前記加熱波形の周波数が可変であることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項1記載の液滴吐出装置において、
画像形成動作指令を受けてから前記液滴吐出ヘッドが液滴を吐出する前に前記ヘッド温度が前記閾値未満の場合には、前記制御手段は、前記液滴吐出ヘッドに加熱波形を印加して前記ヘッド温度を前記閾値まで上昇させた後、前記ヘッド温度の上昇分が一定値以上の場合には前記液滴吐出ヘッドにクリーニング動作を実施させることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一つに記載の液滴吐出装置を備えた画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液滴吐出ヘッドを採用したインクジェット方式の画像形成装置である液滴吐出装置が知られている。この液滴吐出装置は、液滴を吐出させる圧電素子等の圧力発生手段、スイッチング回路等の駆動IC(ドライバIC)、吐出ヘッド近傍に配置され駆動波形を生成し圧電素子を駆動する電力増幅部を含むヘッド駆動基板等の発熱部材を備えている。そして、これ等発熱部材の発熱による温度上昇に伴い、液滴を形成する液体の温度が上昇して該液体の吐出特性が変動する。
このような液滴吐出装置において、環境温度が低く液体温度が液滴吐出ヘッドの温度よりも低い場合には液体が増粘し、液滴吐出ヘッドから液滴を安定して吐出することが困難となる。そこで、液滴吐出ヘッド内に流体が流通可能な通路を設けて温度調整用の流体である温度調整液(温調液)を流通させ、通路を延伸して加熱の場合はヒータへ冷却の場合はラジエータやチラーへ温度調整液を送って温度調整を実施し、液滴吐出ヘッドの温度を一定の範囲内に収める技術が提案されている。
【0003】
上述の技術として、液体を吐出するヘッド(100)と、ヘッド(100)を介して温調液(510)が循環する循環経路(500)と、温調液(510)を送液する送液手段(502)と、ヘッド(100)内の液体の温度を制御する手段(801)と、を備え、制御する手段(801)は、装置を閾値未満の環境温度から立ち上げるとき、送液手段(502)による温調液(510)の送液を停止した状態でヘッド(100)に加熱波形を印加し、ヘッド(100)内の液体の温度に相関する相関温度を閾値まで上昇させる制御を行う技術が開示されている(例えば「特許文献1」参照)。
【0004】
また、駆動パルスをアクチュエータ(31)に印加することで、液体をノズル(15)から液滴として媒体に吐出させる吐出ヘッド(30)と、吐出ヘッド(30)の周囲の温度を測定する温度検出手段(80)とを備え、吐出ヘッド(30)の性能を回復させるために液滴を吐出しない非吐出駆動パルスのみをアクチュエータ(31)に供給して、ノズル(15)近傍の液体のメニスカスに振動を加える第1の制御と、媒体への吐出とは無関係の予備吐出パルスを、非吐出駆動パルスよりも単位時間当たりにおいて少ないパルス数だけアクチュエータ(31)に供給して、ノズル(15)から液滴を吐出する第2の制御とが、温度検出手段(80)の測定判定に応じて選択的に行われる技術が開示されている(例えば「特許文献2」参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
「特許文献1」に開示された技術では、低温環境下における液体の昇温を短時間で行えるという作用効果を得ることができる。また「特許文献2」に開示された技術では、温度に応じて第1の制御と第2の制御とを切り替えることにより、駆動回路の発熱を抑え排出する液体の量を抑えることができるという作用効果を得ることができる。しかし従来の技術では、環境温度が低く吐出ヘッドに対する加熱波形の印加時間が長時間に及ぶ場合に、過度な振動の付与によってメニスカス近傍における液体が増粘して、画像形成時に液体がノズルに詰まるノズル詰まりが発生し、画像形成不良が生じるという問題点があった。
本発明は、上述した問題点を解決し、ノズル詰まりに起因する画像形成不良の発生を防止可能な液滴吐出装置及び画像形成システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、液体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドのヘッド温度を検知する検知手段と、前記液滴吐出ヘッド内の液体の温度を制御する温度調整手段と、閾値未満の環境温度下から画像形成動作を開始する際に、前記液滴吐出ヘッドに加熱波形を印加して前記ヘッド温度を前記閾値まで上昇させた後、前記ヘッド温度の上昇分が一定値以上の場合には前記液滴吐出ヘッドにクリーニング動作を実施させる制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヘッド温度を昇温させることにより液滴の吐出を安定して行うことができると共に、昇温後にクリーニング動作を実施することで増粘したインクを除去し、ノズル詰まりに起因する画像形成不良の発生を防止可能な液滴吐出装置及び画像形成システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る液滴吐出装置を備えた画像形成システムの概略正面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る液滴吐出装置に用いられるヘッドユニットをノズル面側から見た概略平面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る液滴吐出装置に用いられる液滴吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向である短手方向における概略断面図である。
図4図3の断面A-A線における温調液流路の概略平面図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る液滴吐出装置のインク供給系及び温調液循環系のブロック説明図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る液滴吐出装置に用いられる制御手段のブロック図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る液滴吐出装置の動作を説明するフローチャートである。
図8】本発明の第1の実施形態に係る液滴吐出装置のクリーニング動作を説明する概略図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る液滴吐出装置の動作を説明するフローチャートである。
図10】本発明の各実施形態に係る液滴吐出装置における加熱波形の駆動周波数と印加時間との関係を示す概略図である。
図11】本発明の各実施形態が適用可能な複数のヘッドユニットに対する温調液循環系の一例を示す概略図である。
図12】本発明の各実施形態に係る温調液供給マニホールド及び温調液回収マニホールドと液滴吐出ヘッドとの接続関係を説明する概略図である。
図13】本発明の各実施形態を適用可能なヘッドユニットの他の構成及び温調液の他の循環経路を説明する概略図である。
図14】本発明の各実施形態を適用可能な他の液滴吐出装置を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る液滴吐出装置を備えた画像形成システムを示している。同図において画像形成システム1は、搬入部2、前処理部3、画像形成部4、乾燥部5、反転機構部6、搬出部7等を備えている。画像形成システム1は、搬入部2から搬入される被記録媒体としてのシート材Sに対して、前処理部3において必要に応じて前処理液を塗布した後に画像形成部4で液体を塗布して画像形成を行い、乾燥部5でシート材Sに付着した液体を乾燥させた後にシート材Sを搬出部7に排出する。
【0010】
搬入部2は、複数枚のシート材Sを収容する下段搬入トレイ8A及び上段搬入トレイ8Bと、各搬入トレイ8A,8Bからシート材Sを一枚ずつ分離して給送する給送装置9A,9Bとを備え、シート材Sを前処理部3に向けて給送する。
前処理部3は、例えば画像形成に用いられるインクの色材を凝集させ裏写り防止の作用効果を奏する処理液を、シート材Sの画像形成面に付与する塗布部10等を備えている。
【0011】
画像形成部4は、シート材Sをその周面に保持して回転する回転体であるドラム11と、ドラム11に保持されたシート材Sに向けて液体を液滴として吐出する液滴吐出部12とを備えている。
また画像形成部4は、前処理部3から送られたシート材Sを受け取りドラム11に受け渡す受け渡し胴13と、ドラム11によって搬送されたシート材Sを受け取り乾燥部5に受け渡す受け渡し胴14とを備えている。
画像形成部4は、シート材Sに対して液体を液滴として吐出する液滴吐出装置として機能する。
【0012】
前処理部3から画像形成部4に搬送されたシート材Sは、受け渡し胴13に設けられた図示しない把持部材によって先端を把持され、受け渡し胴13の回転に伴い搬送される。受け渡し胴13によって搬送されたシート材Sは、ドラム11との対向位置においてドラム11に設けられた図示しない把持部材に把持されることにより、受け渡し胴13からドラム11へと受け渡される。
ドラム11の周面には複数個の図示しない吸引穴が分散して形成されており、ドラム11の内部には図示しない吸引手段が設けられている。吸引手段の作動により、ドラム11上の吸引穴にドラム11の内側へと向かう空気流が発生し、この空気流によりシート材Sがドラム11上に保持される。ドラム11上に保持されたシート材Sは、ドラム11の回転に伴い下流側へと搬送される。
【0013】
ドラム11の上部には、ドラム11の周面に対向して液滴吐出部12が配置されている。液滴吐出部12は複数の液滴吐出ユニット15A,15B,15C,15Dを備えており、例えば液滴吐出ユニット15Aはシアン(C)のインクを、液滴吐出ユニット15Bはマゼンタ(M)のインクを、液滴吐出ユニット15Cはイエロ(Y)のインクを、液滴吐出ユニット15Dはブラック(K)のインクをそれぞれ吐出する。また、液滴吐出ユニット15としては、その他の白色、金色、銀色等の特殊なインクを吐出するものも使用可能である。
液滴吐出部12の各液滴吐出ユニット15は、画像形成情報に応じた駆動信号に基づいてそれぞれの吐出動作が制御される。ドラム11に保持されたシート材Sが液滴吐出部12との対向領域を通過する際に、各液滴吐出ユニット15から各色のインクがシート材Sに対して吐出され、画像形成情報に応じた画像がシート材S上に形成される。
【0014】
乾燥部5は、シート材Sに対して送風を行い、シート材Sを乾燥させる乾燥部材19を備えており、画像形成部4においてシート材S上に付着したインクを乾燥させる。これにより、インク中の水分が蒸発してシート材S上にインクの着色剤が定着すると共に、シート材Sの湾曲が抑制される。
反転機構部6は、乾燥部5を通過したシート材Sに対して両面画像形成を行う場合にスイッチバック方式でシート材Sを反転搬送する機構であり、反転されたシート材Sは画像形成部4のシート搬送経路16を介して受け渡し胴13よりもシート搬送方向上流側の位置に搬送される。
搬出部7は、複数枚のシート材Sが積載される搬出トレイ17及びシート材Sを保持して搬送するシート搬送部材18を備えている。乾燥部5から反転機構部6を介して搬送される画像形成済みのシート材Sは、シート搬送部材18によって搬送された後に搬出トレイ17上に順次積載されて貯容される。
【0015】
次に、各液滴吐出ユニット15を構成するヘッドユニットの一例を説明する。図2は、ヘッドユニットをノズル面側から見た平面図を示している。同図においてヘッドユニット20は、液体を液滴として吐出する複数の液滴吐出ヘッド21を、ヘッド取付部材22に対して千鳥状に並べて配置することにより構成されている。
各液滴吐出ヘッド21には、液体を液滴として吐出する複数のノズル穴23が配列されたノズル列がそれぞれ複数列、本形態ではそれぞれ4列配置されている。
【0016】
次に、液滴吐出ヘッド21について説明する。図3は液滴吐出ヘッド21のノズル配列方向と直交する方向である短手方向における概略断面図を、図4図3の断面A-A線における温調液流路の概略平面図をそれぞれ示している。
液滴吐出ヘッド21は、ノズル穴23が形成されたノズル板24、ノズル穴23に通じる圧力室25等の流路を形成する流路板26、圧力室25の壁面を形成する振動板27を順次積層している。また液滴吐出ヘッド21は、圧力発生手段としての圧電アクチュエータ28、共通流路部材を兼用するフレーム部材29を有している。
圧電アクチュエータ28は、ベース部材30上に固定された柱状を呈する複数の圧電素子31を有しており、圧電素子31は振動板27に接合されている。また圧電素子31には、フレキシブル配線基板等の配線部材32が接続されている。
【0017】
フレーム部材29は、圧力室25に吐出する液体(インク)を供給する共通供給流路33を形成しており、フレーム部材29には温度調整用の流体である温度調整液(温調液)が流通する温調液流路34を形成する温調液流路部材35が接合されている。温調液流路部材35には、図4に示すように、温調液流路34に温調液を供給する温調液供給ポート36と、温調液を外部に回収する温調液回収ポート37とが設けられている。
液滴吐出ヘッド21の筐体部を兼用するフレーム部材29は温調液流路34の壁面を形成しており、これにより液滴吐出ヘッド21内においてインクの流路である共通供給流路33と温調液流路34とが熱結合されている。
温調液流路部材35には、ケース部材38及び蓋部材39が順次積層されている。
【0018】
次に、本発明の第1の実施形態に係るインク供給系及び温調液循環系を、図5に示すブロック説明図に基づいて説明する。
インク供給系は、液滴吐出ヘッド21に供給する液体であるインクを貯容する液体タンクとしてのインクタンク40、インクタンク40から供給されるインクを複数の液滴吐出ヘッド21に分配供給する液体供給マニホールドであるインク供給マニホールド41を備えている。インク供給マニホールド41と各液滴吐出ヘッド21とは、供給チューブ等の供給経路42によって互いに接続されている。
【0019】
温調液循環系は、温調液43を貯容する温調液タンク44、温調液43を送液する送液ポンプ45、温調液43を冷却するラジエータ46、各液滴吐出ヘッド21に温調液43を分配供給する温調液供給マニホールド47、各液滴吐出ヘッド21から温調液43を回収する温調液回収マニホールド48を備えている。
温調液供給マニホールド47と各液滴吐出ヘッド21の温調液供給ポート36とは供給チューブ等の供給経路49で互いに接続され、各液滴吐出ヘッド21の温調液回収ポート37と温調液回収マニホールド48とは回収チューブ等の回収経路50で互いに接続されている。
【0020】
送液ポンプ45を駆動することにより、温調液タンク44に貯容された温調液43は、温調液タンク44を起点として順に、送液ポンプ45、ラジエータ46、温調液供給マニホールド47、各液滴吐出ヘッド21、温調液回収マニホールド48を経由して温調液タンク44に戻る循環経路50内を循環する。
この構成では、温調液43は温調液タンク44から送液ポンプ45で汲み上げられ、ラジエータ46を経由して温調液供給マニホールド47から各液滴吐出ヘッド21に分配される。そして、各液滴吐出ヘッド21の温調液流路34を通過することで各液滴吐出ヘッド21のフレーム部材29を冷却し、各液滴吐出ヘッド21を通過した後に温調液回収マニホールド48に回収されて温調液タンク44に戻る。一方、インクはインクタンク40からインク供給マニホールド41に供給されて各液滴吐出ヘッド21に分配される。
【0021】
次に、各液滴吐出ヘッド21内のインク及び温調液43の温度制御について、図5及び第1の実施形態に用いられる制御手段のブロック図を示す図6に基づいて説明する。
図6において、制御手段としての温度制御手段51は、それぞれ図示しないCPU、ROM、RAM等を有する周知のマイクロコンピュータによって構成されている。温度制御手段51には、ラジエータ46の雰囲気温度T3を検出する環境温度センサ52による検出結果が入力される。ラジエータ46は、装置(画像形成部4)内部に配置された場合には温度上昇の影響を受けるために装置外部に配置されており、ラジエータ46の雰囲気温度である環境温度T3は画像形成システム1の環境温度と同じである。
温度制御手段51には、ラジエータ46の入口での温調液の温度(入口温度)T1を検出するラジエータ入口温度センサ53、及びラジエータ46の出口での温調液の温度(出口温度)T2を検出するラジエータ出口温度センサ54による検出結果が入力される。さらに温度制御手段51には、ラジエータ46に設けられたファン46aの回転数を検出するファン回転数検出センサ55による検出結果が入力される。
【0022】
また温度制御手段51には、液滴吐出ヘッド21内の液体の温度及びこの温度に相関する相関温度であるヘッド温度を検知する検知手段としてのヘッド温度検知センサ56による検知結果が入力される。ヘッド温度検知センサ56は、液滴吐出ヘッド21の温度を検知するサーミスタ、あるいは液滴吐出ヘッド21内の流路を流れる液体(インク、温調液)そのものの温度を検知するセンサ等によって構成される。
液滴吐出ヘッド21は、ヘッド駆動部57からの動作指令を受けて作動する。温度制御手段51は、ヘッド駆動部57に動作指令を出力する。
さらに温度制御手段51は、これ等各検出手段から入力された検出結果に基づいて、ファン46aの回転駆動制御を行う。ここでファン46aは、液滴吐出ヘッド21内の液体である温調液の温度を制御する温度調整手段として機能する。
【0023】
上述の構成に基づき、以下に本発明の第1の実施形態における画像形成部4の動作を、図7に示すフローチャートを用いて説明する。
装置の電源がオンされたときまたは画像形成指令を受けたときに、ヘッド温度検知センサ56が液滴吐出ヘッド21の温度または液滴吐出ヘッド21内の流路を流れるインクあるいは温調液の温度を検知して検知結果が温度制御手段51に送られる(ST01)。ここで、本発明におけるヘッド温度とは、液滴吐出ヘッド21の温度または液滴吐出ヘッド21内の流路を流れるインクの温度または液滴吐出ヘッド21内の流路を流れる温調液の温度の何れか一つであればよい。検知結果を受けた温度制御手段51は、ヘッド温度が閾値S1を超えているか否かを判断する(ST02)。ステップST02において、環境温度T3が低くヘッド温度が閾値S1未満の場合には、ヘッド駆動部57に動作指令を送って圧電素子31に加熱波形を与え、液滴が吐出されない程度に液滴吐出ヘッド21の圧力発生素子を駆動させる(ST03)。ここで加熱波形とは、液滴吐出ヘッド21の圧力室25の共振点を外した波形であり、液滴が吐出されない程度に圧電素子31を駆動する波形である。
なお閾値S1は、環境温度T3及び当該液滴吐出ヘッド21に使用される液体に応じて、ヘッド温度すなわち液滴吐出ヘッド21の温度または液滴吐出ヘッド21内の流路を流れるインクあるいは温調液の温度のそれぞれに対応して予め決定されている。
【0024】
ここで、加熱効果は低くなるが、画像形成時に使用していないノズル内の液体が増粘することを抑制するために使用される微駆動波形を加熱波形としてもよい。この場合には、新たに波形を追加する必要がなく、メモリの消費を抑制できる。
また、画像形成動作指令を受けた場合にも温度検知を実施する構成は、環境温度T3が低い状態においてシート材Sの仕掛かり等で装置が立ち上がった後に長時間放置されてヘッド温度が低下した場合を想定している。
【0025】
上述した加熱波形の印加を行うヘッド加熱モードにより、液滴吐出ヘッド21及びヘッド内のインク温度が上昇する。ヘッド加熱モードは、液滴吐出ヘッド21のノズル面をキャッピングし、液滴吐出ヘッド21内部における液体のメニスカスが増粘することを抑制した状態で実施する。そして適当な間隔、例えば1秒間隔で温度検知を実施し(ST04)、ヘッド温度が閾値S1まで達した場合には加熱波形の印加を停止する(ST05)。
このとき、一定温度以上(あるいは一定時間以上)昇温した場合には、キャッピングを行っていてもインクの増粘を完全には抑制できず、増粘したインクを除去するためのメンテナンス動作が必要となる。
【0026】
メンテナンス動作としては、図8に示すようにインクの吸引を行うクリーニング動作、及び増粘したインクの空吐出を行うフラッシング動作が挙げられる。クリーニング動作とフラッシング動作とを比較すると、インク消費量はクリーニング動作の方が多くメンテナンス時間も長くなるが、その分、増粘したインクの除去性能も高い。そこで、この第1の実施形態ではステップST05の後にクリーニング動作を実施し(ST06)、その後、待機状態に移行するか画像形成動作を開始することとなる(ST07)。なお、ステップST02においてヘッド温度が閾値S1を超えている場合には、直接ステップST07に移行する。
この構成によれば、ヘッド温度を昇温させることにより液滴の吐出を安定して行うことができると共に、昇温後にクリーニング動作を実施することで増粘したインクを除去し、ノズル詰まりに起因する画像形成不良の発生を防止可能な液滴吐出装置及び画像形成システムを提供できる。
【0027】
本実施形態において、ヘッド温度の昇温幅(または加熱波形の印加時間)に応じてメンテナンス動作をクリーニング動作またはフラッシング動作の何れかに切り替える構成としてもよい。以下、この構成を第2の実施形態として、図9に示すフローチャートに基づいて動作を説明する。なお、第1の実施形態と同様の動作については、図9中に同様のステップ番号を付すものとする。
ステップST02において、ヘッド温度が閾値S1未満の場合には、温度制御手段51はヘッド温度が閾値S1よりも低い値である閾値S2を超えているか否かを判断する(ST08)。ステップST08においてヘッド温度が閾値S2未満の場合には、第1の実施形態と同様にステップST03に移行する。
【0028】
ステップST08において、ヘッド温度が閾値S2を超えている場合すなわちヘッド温度が閾値S2を超え閾値S1未満の場合には、ヘッド駆動部57に動作指令を送って圧電素子31に加熱波形を与え、液滴が吐出されない程度に液滴吐出ヘッド21の圧力発生素子を駆動させる(ST09)。閾値S2は、当該液滴吐出ヘッド21に使用される液体に応じて、ヘッド温度すなわち液滴吐出ヘッド21の温度または液滴吐出ヘッド21内の流路を流れるインクあるいは温調液のそれぞれに対応して予め決定されている。
この第2の実施形態においても、加熱波形として微駆動波形を用いてもよく、これによりメモリの消費を抑制できる。
【0029】
上述した加熱波形の印加を行うヘッド加熱モードは第1の実施形態と同様に実施され、これにより液滴吐出ヘッド21及びヘッド内のインク温度が上昇する。そして、適当な間隔、例えば1秒間隔で温度検知を実施し(ST10)、ヘッド温度が閾値S2まで達すると加熱波形の印加を停止する(ST11)。
この場合にも、一定温度以上(一定時間以上)昇温した場合にはキャッピングを行っていてもインクの増粘を抑制しきれず、増粘したインクを除去するためのメンテナンス動作が必要となる。第2の実施形態では第1の実施形態に比して温度上昇値が低いため、増粘したインクの量が第1の実施形態よりも少ないこととなる。そこで、第2の実施形態ではステップST11の後にフラッシング動作を実施し(ST12)、その後ステップST07に移行する。
【0030】
上述の構成によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができると共に、液滴吐出ヘッド21の温度に応じてクリーニング動作とフラッシング動作とを選択することができ、インク消費量の低減及びメンテナンス時間の短縮を図ることができる。
また、各実施形態において、加熱波形として微駆動波形を用いることにより、新たに波形を追加する必要がなく、制御を簡易化できると共にメモリの消費を抑制できる。
また、加熱波形の周波数は画像形成時における周波数と必ずしも一致させる必要はなく、個別にそれぞれ可変に設定してもよい。この構成とすることにより、図10に示すように、加熱波形の周波数を高くすることで昇温に要する時間を短縮できる。
さらに、画像形成動作指令を受けた場合にも温度検知を実施する構成とすることにより、環境温度T3が低い状態において液滴吐出装置が立ち上がった後に長時間放置されてヘッド温度が低下した場合であっても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0031】
上述した各実施形態において、温調液43の温度を検出する際に、加熱波形印加時に送液ポンプ45を駆動している場合であればファン46aを停止させた状態で入口温度T1及び/または」出口温度T2を検出する構成としてもよい。この場合には、循環経路50の全域を加熱することとなるため熱容量が大きく、液滴吐出ヘッド21の昇温に要する時間は長くなるものの、一度加熱してしまえば熱容量が大きいために冷めにくく、温度を安定して保つことができる。
なお、ヘッド温度が閾値S1以上の場合には、送液ポンプ45によるポンプ動作を開始すると共にファン46aを作動させ、温調液43の循環及び冷却を開始する。この場合も、液滴吐出ヘッド21の加熱波形による昇温は実施しない。
この構成を採用した場合には、ヘッド温度として、液滴吐出ヘッド21の温度、液滴吐出ヘッド21内の流路を流れるインクの温度、液滴吐出ヘッド21内の流路を流れる温調液の温度の他、ラジエータ入口温度センサ53によって検知される入口温度、ラジエータ出口温度センサ54によって検知される出口温度の何れか一つが採用される。この場合には、ラジエータ入口温度センサ53及びラジエータ出口温度センサ54も検知手段として機能することとなる。
【0032】
次に、各実施形態が適用可能な複数のヘッドユニット20に対する温調液循環系の一例を図11に基づいて説明する。図11に示す構成では、複数の液滴吐出ヘッド21を含む複数のヘッドユニット20A,20B,20C,20Dにそれぞれ対応して、複数の温調液供給マニホールド47A,47B,47C,47D及び複数の温調液回収マニホールド48A,48B,48C,48Dを備えている。
そして、共通の温調液タンク44を備え、温調液タンク44からそれぞれ送液ポンプ45A,45B,45C,45D及びラジエータ46A,46B,46C,46Dを介して温調液供給マニホールド47A,47B,47C,47Dに温調液43をそれぞれ分岐させて供給する。
【0033】
一方、各ヘッドユニット20を通過した温調液43は、4個の各温調液回収マニホールド48にて回収された後、それぞれ2個ずつの各温調液回収マニホールド48A,48B及び各温調液回収マニホールド48C,48Dの二つの群に集約させた後に温調液タンク44に戻している。
従って循環経路50Aは、温調液タンク44から送液ポンプ45A、ラジエータ46A、温調液供給マニホールド47A、ヘッドユニット20A、温調液回収マニホールド48Aを経由して温調液タンク44に戻る経路となる。循環経路50Bは、温調液タンク44から送液ポンプ45B、ラジエータ46B、温調液供給マニホールド47B、ヘッドユニット20B、温調液回収マニホールド48Bを経由して温調液タンク44に戻る経路となる。循環経路50Cは、温調液タンク44から送液ポンプ45C、ラジエータ46C、温調液供給マニホールド47C、ヘッドユニット20C、温調液回収マニホールド48Cを経由して温調液タンク44に戻る経路となる。同様に、循環経路50Dは、温調液タンク44から送液ポンプ45D、ラジエータ46D、温調液供給マニホールド47D、ヘッドユニット20D、温調液回収マニホールド48Dを経由して温調液タンク44に戻る経路となる。
このように、この構成ではラジエータ46を各ヘッドユニット20に対してそれぞれ並列に接続している。なお、この構成では4個のラジエータ46を使用して並列に接続する構成を採用しているが、各ヘッドユニット20について複数のラジエータを直列接続、並列接続、または直列接続と並列接続とを混合した構成を採用してもよい。
【0034】
次に、温調液供給マニホールド47及び温調液回収マニホールド48と液滴吐出ヘッド21との接続関係について、図12を参照して説明する。
温調液供給マニホールド47の液流路47aに設けられた最上流側の出口ポートは、液滴吐出ヘッド21を経由して温調液回収マニホールド48の液流路48aに設けられた最上流側の入口ポートに接続されている。以下同様に、液流路47aに設けられた上流側から2番目の出口ポートは滴吐出ヘッド21を経由して液流路48aに設けられた上流側から2番目の入口ポートに、液流路47aに設けられた上流側からn番目の出口ポートは滴吐出ヘッド21を経由して液流路48aに設けられた上流側からn番目の入口ポートに接続されている。そして、液流路47aに設けられた最下流側の出口ポートは、液流路48aに設けられた最下流側の入口ポートに接続されている。
【0035】
このような接続関係とすることにより、全ての液滴吐出ヘッド21を経由する温調液の流路長さが均等となり、各液滴吐出ヘッド21内を流通する温調液流路の圧力損失が均等となり流速及び流量が等しくなるため、全ての液滴吐出ヘッド21を均等に温度調整することが可能となる。
この場合、温調液供給マニホールド47と温調液回収マニホールド48とは同じ材質及び同じ長さで構成することが望ましい。例えば、A6063等のアルミ押し出し材を使用して押し出し成形により各部材47,48を作製することにより、製造コストを抑制できる。
【0036】
次に、本発明の各実施形態を適用可能なヘッドユニットの他の構成及び温調液の他の循環経路を、図13に示す概略図に基づいて説明する。
ヘッドユニット20Aは、2個の液滴吐出ヘッド21を直列配置したデュアルヘッド21Aを2組千鳥状に配置して構成されている。
ヘッドユニット20Aは、温調液供給マニホールド47から一方のデュアルヘッド21Aを構成する一方の液滴吐出ヘッド21の温調液供給ポート36Aに対して温調液を供給し、一方の液滴吐出ヘッド21のフレーム部材29を通過した温調液を一方の液滴吐出ヘッド21の温調液回収ポート37Aから回収する。そして、一方の液滴吐出ヘッド21から回収した温調液を他方の液滴吐出ヘッド21の温調液供給ポート36Aに供給し、他方の液滴吐出ヘッド21のフレーム部材29を通過した温調液を他方の液滴吐出ヘッド21の温調液回収ポート37Aから回収する。そして、他方の液滴吐出ヘッド21の温調液回収ポート37Aから回収した温調液を温調液回収マニホールド48に回収する。
【0037】
次に、本発明の各実施形態を適用可能な他の液滴吐出装置を説明する。
図14は、本発明の各実施形態が適用可能な液滴吐出装置としてのプリンタ60を示している。シリアル型画像形成装置であるプリンタ60は、左右の側板61A,61Bに掛け渡されたガイド部材62によってキャリッジ63を主走査方向に向けて往復移動可能に支持している。各側板61A,61Bは背板61Cによって接続されており、背板61Cには従動プーリ64Bが回転自在に支持されている。また、背板61Cには主走査モータ65が取り付けられており、主走査モータ65の出力軸には駆動プーリ64Aが取り付けられている。キャリッジ63は各プーリ64A,64B間に掛け渡された無端ベルト66に接続されており、主走査モータ65の正逆転作動に伴いキャリッジ63が主走査方向に向けて往復移動する。
【0038】
キャリッジ63には、4個の液滴吐出ユニット67が搭載されている。各液滴吐出ユニット67は、液滴吐出ヘッド21とサブタンク68とを一体化して構成されており、各サブタンク68はそれぞれ各液滴吐出ヘッド21に供給する各色のインクを収容する収容部を備えている。
装置本体側には、各色のインクを収容したメインタンク69A,69B,69C,69D,69E,69Fがそれぞれ交換可能に装着されるカートリッジホルダ70が配置されている。カートリッジホルダ70には送液ポンプ部71が設けられており、送液ポンプ部71の作動により各メインタンク69から各色のインク供給経路である供給チューブ72を経由して各サブタンク68に各色のインクが供給される。
【0039】
プリンタ60は、液滴吐出ヘッド21に対向する位置で、主走査方向と直交する副走査方向(シート搬送方向)に向けてシート材Sを吸着して搬送する搬送手段である搬送ベルト73を備えている。無端状の搬送ベルト73は搬送ローラ74とテンションローラ75との間に掛け渡されており、静電吸着やエアー吸引等によってシート材Sを吸着させる。搬送ベルト73は、搬送ローラ74の支軸74a上に設けられた従動プーリ76B及びこれに掛け渡された無端ベルト77を介して、側板61Aに固定された副走査モータ78の出力軸に固定された駆動プーリ76Aに接続されており、副走査モータ78の作動に伴い副走査方向に向けて走行駆動される。
【0040】
キャリッジ63の移動軌跡と対応する位置であって側板61Bと搬送ベルト73との間の位置には、液滴吐出ヘッド21の維持回復を行う維持回復機構であるヘッドメンテナンス装置79が配置されている。ヘッドメンテナンス装置79は、例えば液滴吐出ヘッド21のノズル面をキャッピングする1個の保湿キャップを兼用する吸引キャップ80、3個の保湿キャップ81、ノズル面を払拭するワイパ82等によって構成されている。
各側板61A,61B間には、所定のパターンを形成したエンコーダスケール83が張架されており、キャリッジ63にはエンコーダスケール83のパターンを読み取る透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ84が設けられている。これ等エンコーダスケール83及びエンコーダセンサ84によってキャリッジ63の移動を検知するリニアエンコーダ(主走査エンコーダ)85を構成している。
支軸74aにはパターンが形成されたコードホイール86が取り付けられており、その近傍にはコードホイール86に形成されたパターンを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ87が配置されている。これ等コードホイール86及びエンコーダセンサ87によって、搬送ベルト73の移動量及び移動位置を検出するロータリーエンコーダ(副走査エンコーダ)を構成している。
【0041】
このように構成されたプリンタ60では、シート材Sが搬送ベルト73上に供給されて吸着され、搬送ベルト73の走行移動によってシート材Sが副走査方向に搬送される。そして、所定の位置で停止しているシート材Sに対して、キャリッジ63を主走査方向に移動させつつ形成される画像の画像信号に応じて液滴吐出ヘッド21を駆動することにより、シート材Sに1行分の画像形成が行われる。その後、シート材Sを副走査方向に所定量搬送して次の行に対応する画像形成を行い、画像形成終了信号またはシート材Sの後端が記録領域に到達した信号を受けると、画像形成動作を終了してシート材Sを排紙トレイ上に排出する。
【0042】
本発明において、使用される液体はヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく特に限定されないが、常温・常圧下において、または加熱・冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やタンパク質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、これ等を含む溶液や懸濁液やエマルション等である。これ等は、例えばインクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子等の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、三次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
液滴を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極とからなる静電アクチュエータ等を使用するものが含まれる。
【0043】
「液滴吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上述したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい)以外にも、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータ等を使用するものでもよい。
「液滴吐出ユニット」は、液滴吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液滴の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば「液滴吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液滴吐出ヘッドと組み合わせたもの等が含まれる。
ここで一体化とは、例えば液滴吐出ヘッドと機能部品や機構が、締結、接着、係合等によって互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液滴吐出ヘッドと機能部品や機構が互いに着脱可能であってもよい。
【0044】
液滴吐出ユニットとして、液滴吐出ヘッドとヘッドタンクとが一体化されているもの、両者がチューブ等で互いに接続されて一体化されているものがある。ここで、これ等の液滴吐出ユニットの液滴吐出ヘッドとヘッドタンクとの間に、フィルタを含むユニットを追加することも可能である。
また液滴吐出ユニットとして、液滴吐出ヘッドとキャリッジとが一体化されているもの、液滴吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構とが一体化されているものがある。また液滴吐出ユニットとして、液滴吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させ、液滴吐出ヘッドと走査移動機構とが一体化されているものがある。
【0045】
液滴吐出ユニットとして、液滴吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液滴吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構とが一体化されているものがある。また液滴吐出ユニットとして、ヘッドタンクまたは流路部品が取り付けられた液滴吐出ヘッドにチューブが接続され、液滴吐出ヘッドと供給機構とが一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液滴吐出ヘッドに供給される。
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。供給機構は、チューブ単体及び装填部単体も含むものとする。
【0046】
本発明では、液滴吐出ユニットについて液滴吐出ヘッドとの組み合わせで説明しているが、液滴吐出ユニットには上述した液滴吐出ヘッドを含むヘッドモジュールやヘッドユニットと上述したような機能部品や機構が一体化されたものも含まれる。
液滴吐出装置には、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ユニット、ヘッドモジュール、ヘッドユニット等を備え、液滴吐出ヘッドを駆動させて液滴を吐出させる装置が含まれる。液滴吐出装置には、液滴が付着可能なものに対して液滴を吐出することが可能な装置だけではなく、液滴を気体中や液体中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0047】
液滴吐出装置は、液滴が付着可能なものの給送、搬送、排紙に関わる手段、その他の前処理装置や後処理装置等にも含むことができる。
例えば液滴吐出装置としては、インクを吐出させて被記録媒体に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出する立体造形装置(三次元造形装置)が挙げられる。
また液滴吐出装置は、吐出された液滴によって文字や図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体では意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0048】
上述した液滴が付着可能なものとは、液滴が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するものや付着して浸透するもの等を意味する。具体例としては、用紙、フィルム、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体が挙げられ、特に限定しない限り液滴が付着する全てのものが含まれる。
液滴が付着可能なものの材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等、液滴が一時的でも付着可能であれば、どのような材質のものであってもよい。
【0049】
液滴吐出装置には、液滴吐出ヘッドと液滴が付着可能なものとが相対的に移動する構成を含むが、異動する対象は何れか一方には限定されない。具体例としては、液滴吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液滴吐出ヘッドを移動させないライン型装置が共に含まれる。
また、液滴吐出装置としては他にも、用紙の表面を改質する等の目的で用紙の表面に処理液を塗布するために用紙表面に対して処理液を吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置等が挙げられる。
【0050】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
[1]液体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドのヘッド温度を検知する検知手段と、前記液滴吐出ヘッド内の液体の温度を制御する温度調整手段と、閾値未満の環境温度下から画像形成動作を開始する際に、前記液滴吐出ヘッドに加熱波形を印加して前記ヘッド温度を前記閾値まで上昇させた後、前記ヘッド温度の上昇分が一定値以上の場合には前記液滴吐出ヘッドにクリーニング動作を実施させる制御手段と、を備えた液滴吐出装置である。
[2]前記制御手段は、前記ヘッド温度の上昇分が前記一定値未満の場合には前記液滴吐出ヘッドにフラッシング動作を実施させることを特徴とする[1]に記載の液滴吐出装置である。
[3]前記加熱波形として微駆動波形を用いることを特徴とする[1]または[2]に記載の液滴吐出装置である。
[4]前記加熱波形の周波数が可変であることを特徴とする[1]ないし[3]の何れか一つに記載の液滴吐出装置である。
[5]画像形成動作指令を受けてから前記液滴吐出ヘッドが液滴を吐出する前に前記ヘッド温度が前記閾値未満の場合には、前記制御手段は、前記液滴吐出ヘッドに加熱波形を印加して前記ヘッド温度を前記閾値まで上昇させた後、前記ヘッド温度の上昇分が一定値以上の場合には前記液滴吐出ヘッドにクリーニング動作を実施させることを特徴とする[1]ないし[4]の何れか一つに記載の液滴吐出装置である。
[6][1]ないし[5]の何れか一つに記載の液滴吐出装置を備えた画像形成システムである。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
1 画像形成システム
4 液滴吐出装置(画像形成部)
21 液滴吐出ヘッド
46a 温度調整手段(ファン)
51 制御手段(温度制御手段)
53 検知手段(ラジエータ入口温度センサ)
54 検知手段(ラジエータ出口温度センサ)
56 検知手段(ヘッド温度検知センサ)
60 液滴吐出装置(プリンタ)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特開2021-146545号公報
【特許文献2】特開2007-268893号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14