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特開2024-164790光導波路装置及び光導波路装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164790
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】光導波路装置及び光導波路装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/125 20060101AFI20241120BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20241120BHJP
   G02B 6/138 20060101ALI20241120BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G02B6/125 301
G02B6/12 371
G02B6/138
G02B6/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197113
(22)【出願日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2023079898
(32)【優先日】2023-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】福原 素之
(72)【発明者】
【氏名】兼田 悠
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
【Fターム(参考)】
2H137AB12
2H137BA32
2H137BA45
2H137BA53
2H137BA55
2H137CA12B
2H137CA42
2H137CA73
2H137CA75
2H137EA07
2H147BB09
2H147BE15
2H147BE26
2H147BG06
2H147BG17
2H147CC02
2H147CD02
2H147EA13A
2H147EA17A
2H147EA17B
2H147EA20A
2H147EA20B
2H147EA20C
2H147FA25
2H147FB04
2H147FE02
2H147FF05
(57)【要約】
【課題】異物の混入を抑制することができる光導波路装置及び光導波路装置の製造方法を提供する。
【解決手段】光導波路装置は、光導波路基板と、シリコン導波路を備え、前記光導波路基板に実装された光半導体素子と、を有し、前記光導波路基板は、基板と、前記基板の上に形成された第1クラッド層と、前記第1クラッド層の上に形成された第1コア層と、前記第1クラッド層及び前記第1コア層の上に形成された第2クラッド層と、を有し、前記シリコン導波路は、前記第1コア層に光結合した第2コア層を有し、前記光半導体素子は、前記第2クラッド層により前記基板に固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路基板と、
シリコン導波路を備え、前記光導波路基板に実装された光半導体素子と、
を有し、
前記光導波路基板は、
基板と、
前記基板の上に形成された第1クラッド層と、
前記第1クラッド層の上に形成された第1コア層と、
前記第1クラッド層及び前記第1コア層の上に形成された第2クラッド層と、
を有し、
前記シリコン導波路は、前記第1コア層に光結合した第2コア層を有し、
前記光半導体素子は、前記第2クラッド層により前記基板に固定されている光導波路装置。
【請求項2】
前記第2クラッド層は、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂を含有する請求項1に記載の光導波路装置。
【請求項3】
前記第1コア層と前記第2コア層とは、互いに離れている請求項1又は2に記載の光導波路装置。
【請求項4】
前記光半導体素子は、
第1側面と、
前記第1側面に連なる第2側面と、
前記第2側面と反対側で前記第1側面に連なる第3側面と、
を有し、
前記第2クラッド層は、
前記第1側面に接触する第1面と、
前記第2側面に接触する第2面と、
前記第3側面に接触する第3面と、
を有する請求項1又は2に記載の光導波路装置。
【請求項5】
基板の上に第1クラッド層を形成する工程と、
前記第1クラッド層の上に第1コア層を形成する工程と、
前記第1クラッド層及び前記第1コア層の上に未硬化の感光性樹脂層を形成する工程と、
第2コア層を有するシリコン導波路を備えた光半導体素子を、前記第2コア層が前記第1コア層に対向するように前記感光性樹脂層に押し込み、前記第2コア層を前記第1コア層に光結合させる工程と、
前記光半導体素子を前記感光性樹脂層に押し込む工程の後、前記感光性樹脂層を硬化させて前記感光性樹脂層から第2クラッド層を得る工程と、
を有し、
前記光半導体素子は、前記第2クラッド層により前記基板に固定される光導波路装置の製造方法。
【請求項6】
前記感光性樹脂層を形成する工程と前記光半導体素子を前記感光性樹脂層に押し込む工程との間に、前記感光性樹脂層の一部を硬化して、前記第1コア層の延在方向の一方側部分を覆う未硬化の第1領域と、前記第1コア層の延在方向の他方側部分を覆う硬化した第2領域とを前記感光性樹脂層に形成する工程を有し、
前記光半導体素子を前記感光性樹脂層に押し込む工程において、前記光半導体素子を前記第1領域に押し込むことを特徴とする請求項5に記載の光導波路装置の製造方法。
【請求項7】
前記光半導体素子は、
第1側面と、
前記第1側面に連なる第2側面と、
前記第2側面と反対側で前記第1側面に連なる第3側面と、
を有し、
前記第2領域は、前記第1側面、前記第2側面及び前記第3側面を案内する壁面を有する請求項6に記載の光導波路装置の製造方法。
【請求項8】
前記感光性樹脂層は、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂を含有する請求項5又は6に記載の光導波路装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2コア層は、前記第1コア層から離れて配置される請求項5又は6に記載の光導波路装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光導波路装置及び光導波路装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の発展による伝送データの高速大容量化に伴い、電気信号の伝達速度の限界を補うために、高速部分を光信号で伝達するための光導波路が開発されている。
【0003】
光導波路を含む光導波路装置においては、光導波路基板に含まれるポリマー導波路のコア層と、光半導体素子に含まれるシリコン導波路のコア層とが光結合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-200333号公報
【特許文献2】国際公開第2018/168783号
【特許文献3】特開2014-81586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光導波路装置においては、光導波路基板に含まれるポリマー導波路のコア層と、光半導体素子に含まれるシリコン導波路のコア層との間に異物が混入するおそれがある。
【0006】
本開示は、異物の混入を抑制することができる光導波路装置及び光導波路装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態によれば、光導波路基板と、シリコン導波路を備え、前記光導波路基板に実装された光半導体素子と、を有し、前記光導波路基板は、基板と、前記基板の上に形成された第1クラッド層と、前記第1クラッド層の上に形成された第1コア層と、前記第1クラッド層及び前記第1コア層の上に形成された第2クラッド層と、を有し、前記シリコン導波路は、前記第1コア層に光結合した第2コア層を有し、前記光半導体素子は、前記第2クラッド層により前記基板に固定されている光導波路装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、異物の混入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る光導波路装置を例示する図である。
図2】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図(その1)である。
図3】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図(その2)である。
図4】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図(その3)である。
図5】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図(その4)である。
図6】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図(その5)である。
図7】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図(その6)である。
図8】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図(その7)である。
図9】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図(その8)である。
図10】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図(その9)である。
図11】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図(その10)である。
図12】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図(その11)である。
図13図13は、第2実施形態に係る光導波路装置を例示する図である。
図14図14は、第2実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図(その1)である。
図15図15は、第2実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図(その2)である。
図16図16は、第2実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図(その3)である。
図17図17は、第2実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0011】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。第1実施形態は光導波路装置に関する。
【0012】
[光導波路装置の構造]
第1実施形態に係る光導波路装置の構造について説明する。図1は、第1実施形態に係る光導波路装置を例示する図である。図1(a)は平面図であり、図1(b)は断面図である。図1(b)は図1(a)中のIb-Ib線に沿った断面図に相当する。
【0013】
図1に示すように、第1実施形態に係る光導波路装置1は、主として、光導波路基板3と、光半導体素子4とを有する。光半導体素子4は光導波路基板3に実装されている。
【0014】
光導波路基板3は、基板10と、光導波路2とを有する。光導波路2は基板10の一方の面に設けられている。光導波路2は、第1クラッド層20と、複数のコア層22と、第2クラッド層24とを有する。光導波路2はポリマー導波路である。
【0015】
基板10に配線パターン(図示せず)や電極(図示せず)が形成されていてもよい。また、半導体チップ(図示せず)や電子部品(図示せず)等が基板10に実装されていてもよい。
【0016】
なお、本実施形態では、便宜上、基板10を基準にして、光導波路2側を上側又は一方の側、その反対側を下側又は他方の側とする。また、各部位の上側の面を一方の面又は上面、下側の面を他方の面又は下面とする。但し、光導波路装置は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。また、平面視とは対象物を基板10の一方の面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基板10の一方の面の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0017】
第1クラッド層20は基板10の上に設けられている。第1クラッド層20は基板10の上面の全体に設けられていてよい。第1クラッド層20の材料は、例えばエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂等の有機樹脂である。
【0018】
複数のコア層22は第1クラッド層20の上に帯状に設けられている。例えば、コア層22の幅は5μm~10μmであり、高さは5μm~10μmである。本実施形態では、シングルモードの光導波路を得るために、コア層22が微小な断面積を有する。コア層22の材料は、例えばエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂等の有機樹脂である。コア層22は第1コア層の一例である。
【0019】
第2クラッド層24は第1クラッド層20及び複数のコア層22の上に設けられている。第2クラッド層24は複数のコア層22を覆う。第2クラッド層24の材料は、例えばエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂等の有機樹脂である。第2クラッド層24の厚さは、例えば、10μm~30μm程度である。
【0020】
光導波路2では、コア層22の屈折率が第1クラッド層20及び第2クラッド層24の屈折率よりも高い。
【0021】
光半導体素子4は、第2クラッド層24により第1クラッド層20を間に挟んで基板10に固定されている。光半導体素子4は、基部41と、シリコン導波路42とを有する。基部41はシリコン導波路42に光結合した光回路等を有する。シリコン導波路42は基部41の下面に設けられている。シリコン導波路42はコア層43を有する。コア層43は光導波路2のコア層22に対向する。例えば、コア層43の下面がコア層22の上面に対向する。コア層43の断面は、光導波路2のコア層22の断面よりも小さい。例えば、コア層43の幅は0.2μm~1μmであり、高さは0.2μm~1μmである。コア層43はコア層22に光結合している。例えば、コア層43の下面からの染み出し光が光導波路2のコア層22に入射する。光半導体素子4はシリコンフォトニクスにより作製することができる。コア層43は第2コア層の一例である。
【0022】
光導波路2のコア層22とシリコン導波路42のコア層43とは、互いに離れていてもよい。つまり、コア層22とコア層43との間に隙間があってもよい。光導波路2のコア層22とシリコン導波路42のコア層とが互いに離れている場合、光結合での光損失を抑えやすい。
【0023】
光半導体素子4は、平面視で複数のコア層22と交差する第1側面51を有する。また、第2クラッド層24は、第1側面51に接触する第1面61を有する。第2クラッド層24は、基板10の上面を基準とした上面の高さが等しい平坦領域71と、平坦領域71と光半導体素子4との間にあり、平坦領域71から光半導体素子4に近づくほど基板10の上面を基準とした上面の高さが高くなる傾斜領域72とを有する。傾斜領域72は第1面61を含む。
【0024】
光導波路基板3において、シリコン導波路42とコア層22が光結合している側の端面とは反対側の端面(図1の左側の端面)にコネクタ(図示せず)等が結合されていてもよい。また、光半導体素子4において、シリコン導波路42とコア層22が光結合している側と反対側(図1の右側)に半導体チップ等が実装された配線基板(図示せず)が接続されていてもよい。
【0025】
[光導波路装置の製造方法]
次に、第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法について説明する。図2図12は、第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図である。
【0026】
まず、図2に示すように、まず、基板10を準備する。基板10は、例えば、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁樹脂材料から形成される。基板10は、剛性の強いリジッド基板であってもよく、あるいは、剛性の弱いフレキシブル基板であってもよい。基板10は、支持体や基材と呼ばれる絶縁物を含む。基板10は複数の製品領域Rが区画された多面取り用の大型基板であり、最終的に製品領域Rの外周部に沿って切断されて個々の光導波路装置が得られる。
【0027】
図3及びそれ以降の図面では、図2の基板10の一つの製品領域Rを部分的に示して説明する。図3(a)及び図3(b)には、図2の基板10の一つの製品領域Rが部分的に示されている。図3(a)は平面図であり、図3(b)は断面図である。図3(b)は、図3(a)中のIIIb-IIIb線に沿った断面図に相当する。
【0028】
次いで、図4(a)及び図4(b)に示すように、基板10の上に第1クラッド層20を形成する。第1クラッド層20は、光硬化性樹脂に紫外光を照射した後に、150℃~200℃の温度で加熱処理して、光硬化性樹脂を硬化させることにより得られる。図4(a)は平面図であり、図4(b)は断面図である。図4(b)は、図4(a)中のIVb-IVb線に沿った断面図に相当する。
【0029】
第1クラッド層20は、複数の製品領域Rが区画された基板10の全面に形成される。第1クラッド層20をパターニングして外形を調整する場合は、フォトマスクを介して光硬化性樹脂に紫外線を照射し、現像することにより第1クラッド層20が得られる。
【0030】
光硬化性樹脂の形成方法としては、樹脂シートを貼付してもよいし、あるいは、液状樹脂を塗布してもよい。第1クラッド層20の厚さは、例えば、10μm~30μm程度である。
【0031】
その後、第1クラッド層20の上にコア層を得るための光硬化性樹脂(不図示)を形成する。さらに、フォトマスクを介して光硬化性樹脂に紫外線を照射し、現像した後に、光硬化性樹脂を150℃~200℃程度の温度で加熱処理することにより硬化させる。これにより、図5(a)及び図5(b)に示すように、複数のコア層22が第1クラッド層20の上に帯状パターンとして並んで配置される。複数のコア層22は、複数の製品領域Rの間の領域を跨ぐように各製品領域Rに横方向に延在して配置される。図5(a)は平面図であり、図5(b)は断面図である。図5(b)は、図5(a)中のVb-Vb線に沿った断面図に相当する。
【0032】
ここで、図5(a)に示すように、各製品領域Rをコア層22の延在方向の中央で2つの領域に区画する。すなわち、各製品領域Rを右側の一方側領域Aと左側の他方側領域Bとに区画する。そして、各製品領域R内の一方側領域Aに配置されたコア層22の延在方向の一方側部分を光結合部22aとする。このように、第1クラッド層20の上に、延在方向の一部分に光結合部22aを備えたコア層22が形成される。
【0033】
続いて、図6(a)及び図6(b)に示すように、第1クラッド層20及びコア層22の上に第2クラッド層を得るための光硬化性樹脂層24xを形成する。光硬化性樹脂層24xは、コア層22の上面及び側面を被覆した状態で上面が平坦になって形成される。光硬化性樹脂層24xの材料としては、例えば、ネガ型の感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂等を使用することができる。光硬化性樹脂層24xは、光硬化に寄与する反応性官能基と、熱硬化に寄与する反応性官能基とを含み、光硬化及び熱硬化によって硬化する。光硬化性樹脂層24xは感光性樹脂層の一例である。前述した第1クラッド層20及びコア層22の材料についても、同様な光硬化性樹脂が使用される。図6(a)は平面図であり、図6(b)は断面図である。図6(b)は、図6(a)中のVIb-VIb線に沿った断面図に相当する。
【0034】
次いで、図7に示すように、フォトマスク30を準備する。図7には、一つの製品領域Rに対応する領域のフォトマスク30が部分的に描かれている。フォトマスク30は遮光部30aと透光部30bとを備えている。遮光部30aは、各製品領域R内の一方側領域Aに対応して配置され、一方側領域Aに配置された光硬化性樹脂層24xを露光せずに未硬化部とするために使用される。また、フォトマスク30の透光部30bは、各製品領域Rの他方側領域Bに対応して配置され、他方側領域Bに配置される光硬化性樹脂層24xを露光して硬化部にするために使用される。
【0035】
その後、フォトマスク30の透光部30bを通して、光硬化性樹脂層24xに紫外線を照射して露光することにより、各製品領域Rの他方側領域Bの光硬化性樹脂層24xを硬化させる。このとき、各製品領域Rの一方側領域Aの光硬化性樹脂層24xはフォトマスク30の遮光部30aによって遮光されるため、露光されずに未硬化の状態に維持される。
【0036】
続いて、150℃~200℃の温度で加熱処理(ポストベーク)を行う。これにより、図8(a)~図8(d)に示すように、光硬化性樹脂層24xの各製品領域Rの一方側領域Aに未硬化部24aが形成され、各製品領域Rの他方側領域Bに硬化部24bが形成される。図8(a)は平面図であり、図8(b)~図8(d)は断面図である。図8(b)は、図8(a)中のVIIIb-VIIIb線に沿った断面図に相当し、図8(c)は、図8(a)中のVIIIc-VIIIc線に沿った断面図に相当し、図8(d)は、図8(a)中のVIIId-VIIId線に沿った断面図に相当する。
【0037】
硬化部24bは、光硬化性樹脂層24xが光硬化及び熱硬化によって完全に硬化して得られる。また、未硬化部24aは、光硬化性樹脂層24xが露光されずに150℃~200℃の温度で加熱処理されるだけで得られるため、未硬化の状態で維持される。未硬化部24aと硬化部24bとは一体的に繋がって形成される。未硬化部24aは第1領域の一例であり、硬化部24bは第2領域の一例である。
【0038】
図8(a)、図8(b)及び図8(d)に示すように、各製品領域Rにおいて、複数のコア層22の光結合部22aが未硬化部24aで被覆される。また、図8(a)、図8(c)及び図8(d)に示すように、各製品領域Rにおいて、複数のコア層22の光結合部22a以外の領域が硬化部24bで被覆される。
【0039】
次いで、図9(a)~図9(d)に示すように、各製品領域Rの外周部に沿って、光硬化性樹脂層24x、コア層22、第1クラッド層20及び基板10を切削装置の回転ブレード等によって切断して個片化する。図9(a)は平面図であり、図9(b)~図9(d)は断面図である。図9(b)は、図9(a)中のIXb-IXb線に沿った断面図に相当し、図9(c)は、図9(a)中のIXc-IXc線に沿った断面図に相当し、図9(d)は、図9(a)中のIXd-IXd線に沿った断面図に相当する。
【0040】
このとき、図9(b)に示すように、光結合部22aは未硬化部24aで被覆されて保護されている。このため、コア層22を切断する際に、コア層22の光結合部22aが破損するおそれがなく、信頼性よく、コア層22を切断することができる。また、コア層22が削りカスで汚染されるおそれもない。これにより、コア層22の延在方法における光硬化性樹脂層24x、コア層22、第1クラッド層20及び基板10の各端面は、切断面からなり、面一になった面で形成される。
【0041】
このようにして、図10(a)~図10(d)に示すように、基板10と、第1クラッド層20と、コア層22と、光硬化性樹脂層24xとを備え、個片化された積層構造体が得られる。図10(a)は平面図であり、図10(b)~図10(d)は断面図である。図10(b)は、図10(a)中のXb-Xb線に沿った断面図に相当し、図10(c)は、図10(a)中のXc-Xc線に沿った断面図に相当し、図10(d)は、図10(a)中のXd-Xd線に沿った断面図に相当する。
【0042】
また、図11(a)及び図11(b)に示すように、別途、光半導体素子4を準備する。そして、シリコン導波路42のコア層43がコア層22に対向するように光半導体素子4を未硬化部24aに押し込み、コア層43をコア層22に光結合させる。例えば、コア層43の下面をコア層22の上面に対向させる。図11(a)は平面図であり、図11(b)は断面図である。図11(b)は、図11(a)中のXIb-XIb線に沿った断面図に相当する。
【0043】
次いで、図12(a)及び図12(b)に示すように、未硬化部24aを硬化させ、光硬化性樹脂層24xの全体を硬化部とする。未硬化部24aは紫外線の照射により硬化させることができる。未硬化部24aの硬化の結果、光硬化性樹脂層24xから第2クラッド層24が得られ、第1クラッド層20、コア層22及び第2クラッド層24を備えた光導波路2が得られる。また、基板10及び光導波路2を備えた光導波路基板3が得られる。第2クラッド層24は接着剤として機能し、第2クラッド層24により光半導体素子4が第1クラッド層20を間に挟んで基板10に固定される。図12(a)は平面図であり、図12(b)は断面図である。図12(b)は、図12(a)中のXIIb-XIIb線に沿った断面図に相当する。
【0044】
このようにして、第1実施形態に係る光導波路装置1を製造することができる。
【0045】
本実施形態では、コア層22が光硬化性樹脂層24xに覆われた状態で光半導体素子4が光硬化性樹脂層24xの未硬化部24aに押し込まれ、そのまま未硬化部24aが硬化される。このため、コア層22とコア層43との間への異物の混入を抑制することができる。一方、未硬化部24aを除去した後に、接着剤等を用いて光半導体素子4を光導波路基板3に固定する場合には、一旦、コア層22が露出するため、接着剤等により覆われるまでの間に異物の混入が生じるおそれがある。
【0046】
また、本実施形態では、未硬化部24aを除去する必要がないため、未硬化部24aを除去する場合と比較して、スループットを向上したり、歩留まりを向上したりすることができる。
【0047】
更に、コア層22とコア層43とが光結合している部分を第2クラッド層24により保護することができ、光半導体素子4を第2クラッド層24に基板10により固定できる。従って、第2クラッド層24とは別に接着剤等を用いる必要がない。
【0048】
また、光半導体素子4を未硬化部24aに押し込んでから未硬化部24aを硬化させるまでの間、未硬化部24aにより光半導体素子4の姿勢を安定させやすい。特に、コア層43をコア層22から離して配置する場合、光半導体素子4の姿勢を安定させやすいことで、優れた信頼性を得やすくできる。
【0049】
なお、第2クラッド層24及び光硬化性樹脂層24xの材料にポジ型の感光性樹脂を用いてもよい。
【0050】
また、光硬化性樹脂層24xの形成の後に、フォトマスク30を用いた露光を行わず、光硬化性樹脂層24xの全体が未硬化の状態のまま、切断(図9参照)、光半導体素子4の押し込み(図10参照)を行い、その後に光硬化性樹脂層24xの全体を露光及び加熱処理(ポストベーク)により硬化させてもよい。
【0051】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主として光導波路基板の構成の点で第1実施形態と相違する。
【0052】
[光導波路装置の構造]
第2実施形態に係る光導波路装置の構造について説明する。図13は、第2実施形態に係る光導波路装置を例示する図である。図13(a)は平面図であり、図13(b)は断面図である。図13(b)は図13(a)中のXIIIb-XIIIb線に沿った断面図に相当する。
【0053】
図13に示すように、第2実施形態に係る光導波路装置5では、光導波路基板3の平面視でのコア層22の延在方向に垂直な方向の寸法が第1実施形態よりも大きい。より具体的には、平面視で、光導波路基板3のコア層22の延在方向に垂直な方向の寸法が、光半導体素子4のコア層22の延在方向に垂直な方向の寸法よりも大きい。
【0054】
光半導体素子4は、第1側面51と、第2側面52と、第2側面52とは反対側の第3側面53とを有する。第2側面52及び第3側面53は第1側面51に連なる。例えば、平面視で、第1側面51と第2側面52とのなす角は90度であり、第1側面51と第3側面53とのなす角は90度である。
【0055】
また、第2クラッド層24は、第1側面51に接触する第1面61と、第2側面52に接触する第2面62と、第3側面53に接触する第3面63とを有する。第2クラッド層24は、第1実施形態と同様に、平坦領域71及び傾斜領域72を有する。但し、第2実施形態では、傾斜領域72は第1面61、第2面62及び第3面63を含む。
【0056】
第2実施形態の他の構成は第1実施形態と同様である。
【0057】
[光導波路装置の製造方法]
次に、第2実施形態に係る光導波路装置の製造方法について説明する。図14図17は、第2実施形態に係る光導波路装置の製造方法を例示する図である。
【0058】
まず、第1実施形態と同様に基板10を準備する(図2参照)。但し、製品領域Rは光導波路基板3の大きさに合わせて、第1実施形態よりも大きくする。次いで、第1実施形態と同様に光硬化性樹脂層24xの形成までの処理を行う(図3図6参照)。
【0059】
その後、図14に示すように、フォトマスク30を準備する。図14には、図7と同様に、一つの製品領域Rに対応する領域のフォトマスク30が部分的に描かれている。フォトマスク30は遮光部30cと透光部30dとを備えている。遮光部30cは、各製品領域R内の光半導体素子4が固定される領域Cに対応して配置され、領域Cに配置された光硬化性樹脂層24xを露光せずに未硬化部とするために使用される。また、フォトマスク30の透光部30dは、各製品領域Rの残りの領域Dに対応して配置され、領域Dに配置される光硬化性樹脂層24xを露光して硬化部にするために使用される。
【0060】
続いて、フォトマスク30の透光部30dを通して、光硬化性樹脂層24xに紫外線を照射して露光することにより、各製品領域Rの領域Dの光硬化性樹脂層24xを硬化させる。このとき、各製品領域Rの領域Cの光硬化性樹脂層24xはフォトマスク30の遮光部30cによって遮光されるため、露光されずに未硬化の状態に維持される。
【0061】
次いで、150℃~200℃の温度で加熱処理(ポストベーク)を行う。これにより、図15(a)及び図15(b)に示すように、光硬化性樹脂層24xの各製品領域Rの領域Cに未硬化部24cが形成され、各製品領域Rの領域Dに硬化部24dが形成される。硬化部24dは未硬化部24cに接触する壁面24eを有する。図15(a)は平面図であり、図15(b)は断面図である。図15(b)は、図15(a)中のXVb-XVb線に沿った断面図に相当する。
【0062】
硬化部24dは、光硬化性樹脂層24xが光硬化及び熱硬化によって完全に硬化して得られる。また、未硬化部24cは、光硬化性樹脂層24xが露光されずに150℃~200℃の温度で加熱処理されるだけで得られるため、未硬化の状態で維持される。未硬化部24cと硬化部24dとは一体的に繋がって形成される。未硬化部24cは第1領域の一例であり、硬化部24dは第2領域の一例である。
【0063】
次いで、第1実施形態と同様に、各製品領域Rの外周部に沿って、光硬化性樹脂層24x、コア層22、第1クラッド層20及び基板10を切削装置の回転ブレード等によって切断して個片化する。このようにして、図16(a)及び図16(b)に示すように、基板10と、第1クラッド層20と、コア層22と、光硬化性樹脂層24xとを備え、個片化された積層構造体が得られる。図16(a)は平面図であり、図16(b)は断面図である。図16(b)は、図16(a)中のXVIb-XVIb線に沿った断面図に相当する。
【0064】
また、図17(a)及び図17(b)に示すように、別途、光半導体素子4を準備する。そして、シリコン導波路42のコア層43がコア層22に対向するように光半導体素子4を未硬化部24cに押し込み、コア層43をコア層22に光結合させる。このとき、光半導体素子4の第1側面51、第2側面52及び第3側面53が、硬化部24dの未硬化部24cに接触する壁面24eに案内される。従って、光半導体素子4を容易に位置決めすることができる。図17(a)は平面図であり、図17(b)は断面図である。図17(b)は、図17(a)中のXVIIb-XVIIb線に沿った断面図に相当する。
【0065】
次いで、未硬化部24cを硬化させ、光硬化性樹脂層24xの全体を硬化部とする。未硬化部24cは紫外線の照射により硬化させることができる。未硬化部24aの硬化の結果、光硬化性樹脂層24xから第2クラッド層24が得られ、第1クラッド層20、コア層22及び第2クラッド層24を備えた光導波路2が得られる。
【0066】
このようにして、第2実施形態に係る光導波路装置5(図13参照)を製造することができる。
【0067】
第2実施形態によっても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第2実施形態によれば、シリコン導波路42のコア層43を光導波路2のコア層22に高精度で位置合わせすることができる。
【0068】
なお、コア層22とコア層43との間の光結合が阻害されない程度に、硬化部24dと光半導体素子4との間にマージンがあってもよい。
【0069】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、本開示は上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0070】
1、5 光導波路装置
2 光導波路
3 光導波路基板
4 光半導体素子
10 基板
20 第1クラッド層
22 コア層
24 第2クラッド層
24a、24c 未硬化部
24b、24d 硬化部
24e 壁面
24x 光硬化性樹脂層
30 フォトマスク
30a、30c 遮光部
30b、30d 透光部
41 基部
42 シリコン導波路
43 コア層
A 一方側領域
B 他方側領域
C、D 領域
R 製品領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17