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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164845
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】研磨装置および研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/10 20120101AFI20241121BHJP
   B24B 37/12 20120101ALI20241121BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20241121BHJP
   B24B 41/047 20060101ALI20241121BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B24B37/10
B24B37/12 D
B24B41/06 L
B24B41/047
H01L21/304 621D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080489
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】大関 正彬
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達夫
(72)【発明者】
【氏名】三原 佳祐
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA07
3C034BB01
3C034BB33
3C034BB75
3C158AA07
3C158AA11
3C158AA14
3C158AB01
3C158AB04
3C158AB09
3C158AC04
3C158BA04
3C158BA05
3C158BB02
3C158BC02
3C158CB01
3C158DA17
3C158EA11
3C158EA26
3C158EB01
3C158EB05
3C158ED09
3C158ED10
3C158ED11
3C158ED12
3C158ED24
5F057AA12
5F057BA13
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB09
5F057CA12
5F057DA02
5F057EC10
5F057FA39
5F057FA42
(57)【要約】
【課題】分割したウェーハである基板片、特にエッジ部が鋭利な状態の基板片でも保持することができ、そして研磨布が過剰に摩耗されるのを防ぎ、安定的に研磨加工することができる研磨装置および研磨方法を提供する。
【解決手段】研磨装置であって、該研磨装置は円形状の基板から分割した基板片を研磨可能なものであり、前記基板片を載置するステージと、前記基板片の面積より小さな研磨布を備え、該研磨布を前記基板片の表面に摺接させて研磨する研磨機構と、前記基板片の平面形状と同形状のくり抜き部が形成されており、該くり抜き部に前記基板片を嵌め込んで保持する保持具とを有するものである研磨装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨装置であって、
該研磨装置は円形状の基板から分割した基板片を研磨可能なものであり、
前記基板片を載置するステージと、
前記基板片の面積より小さな研磨布を備え、該研磨布を前記基板片の表面に摺接させて研磨する研磨機構と、
前記基板片の平面形状と同形状のくり抜き部が形成されており、該くり抜き部に前記基板片を嵌め込んで保持する保持具とを有するものであることを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記研磨機構は前記研磨布が貼付された研磨ヘッドを有しており、
該研磨ヘッドは、前記ステージ上で前記保持具により保持された前記基板片に前記研磨布を介して押圧させる押圧機構と、軸回転させる回転機構と、水平方向に動作させる水平駆動機構とを備えているものであることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記ステージは軸回転可能であり、
前記水平駆動機構は、前記研磨ヘッドを前記ステージの外周から中心方向に往復動作させるものであることを特徴とする請求項2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記保持具は、前記基板と同じ半径を有する円柱に前記くり抜き部が形成されているものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記保持具は、前記円柱に中心角が360°/n(nは2以上の自然数)の扇形の前記くり抜き部が形成されているものであることを特徴とする請求項4に記載の研磨装置。
【請求項6】
研磨方法であって、
円形状の基板から分割した基板片を研磨するとき、
前記基板片の平面形状と同形状のくり抜き部が形成されており、該くり抜き部に前記基板片を嵌め込んで保持する保持具を用意し、
前記基板片をステージ上に載置して前記保持具で保持しつつ、
前記基板片の面積より小さな研磨布を備えた研磨機構を用いて、前記研磨布を前記基板片の表面に摺接させて全面または一部を研磨することを特徴とする研磨方法。
【請求項7】
前記研磨機構として前記研磨布が貼付された研磨ヘッドを用意し、
前記基板片を研磨するとき、
前記ステージ上で前記保持具により保持した前記基板片に前記研磨ヘッドを前記研磨布を介して押圧回転させつつ水平方向に動作させて研磨することを特徴とする請求項6に記載の研磨方法。
【請求項8】
前記ステージを軸回転させて該ステージ上の前記基板片を軸回転させるとともに、前記研磨ヘッドを前記ステージの外周から中心方向に往復動作させて研磨することを特徴とする請求項7に記載の研磨方法。
【請求項9】
前記保持具として、前記基板と同じ半径を有する円柱に前記くり抜き部が形成されているものを用意することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項10】
前記保持具として、前記円柱に中心角が360°/n(nは2以上の自然数)の扇形の前記くり抜き部が形成されているものを用意することを特徴とする請求項9に記載の研磨方法。
【請求項11】
前記研磨する基板片として、品質評価のためのサンプル片を用意することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項12】
前記研磨する基板片として、品質評価のためのサンプル片を用意することを特徴とする請求項9に記載の研磨方法。
【請求項13】
前記研磨する基板片として、品質評価のためのサンプル片を用意することを特徴とする請求項10に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置および研磨方法に関し、特に、円形状の基板から分割した基板片についての研磨装置および研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、研磨とは砥粒を含む研磨用組成物を供給しながら研磨布を用いて対象の基板を摺動させ、基板表面のダメージ層の除去や平滑化などの効果を発揮する工程を示す。
研磨は普通、基板(ウェーハ)より大きな面積の研磨布で加工することが多い。なぜなら、研磨布が大きいほど加工残渣などの蓄積が抑えられ研磨能力の低下を防げるからである。
【0003】
また、研磨は対称性が高い円形状のウェーハを研磨する場合が多く、したがって研磨装置も円形状のウェーハを研磨するよう設計されている。
一般的な研磨装置では、例えば片面研磨の場合では研磨ヘッドと呼ばれるものでウェーハの非研磨面を吸着し、なおかつウェーハが横方向にずれてしまわないようにウェーハの外側にガイドリングなどを具備する保持具が使われている。
また、両面研磨の場合は、薄い板状のものから円形状にくり抜いたキャリアとよばれる保持具が使われている。
【0004】
ところで、ウェーハより小さな研磨布で処理する例としては、例えば特許文献1にあるように基板を局所的に研磨するための研磨装置が提供されている。かかる研磨装置は、基板に接触する加工面が基板よりも小さい研磨部材と、前記研磨部材をコンディショニングするためのコンディショニング部材と、基板の研磨中に前記研磨部材に前記コンディショニング部材を押圧するための第1押圧機構と、研磨装置の動作を制御するための制御装置と、を有している。前記制御装置は、前記研磨部材で基板を局所的に研磨しているときに、前記第1押圧機構を制御するように構成されていることが開示されている。
【0005】
また、特許文献2の化学機械的研磨装置は、ウェハを保持するウェハキャリアと、ウェハキャリアのウェハ保持面に対向配置され回転可能とされた研磨プラテンと、研磨プラテンに装着された円形の研磨布を有している。研磨布がウェハWの直径よりも小さい直径を有し、研磨プラテンがウェハWの研磨面に沿って水平移動可能とされている。また、研磨プラテンの水平移動速度がウェハ周辺部より中央部で遅くなるように水平移動速度を制御する制御部を有していることが開示されている。
【0006】
特許文献3には、研磨ヘッドと、研磨布が貼り付けられた定盤と、ウェーハを研磨ヘッドへ装着するためのローディングステージと、ウェーハを研磨ヘッドから剥離するためのアンローディングステージとを具備し、研磨ヘッドで保持したウェーハを研磨する研磨装置が開示されている。この研磨装置において、さらに、上下動することができるウェーハより小さい局所研磨パッドを具備し、局所研磨パッドを研磨ヘッドに向けて相対的に上昇させることで、研磨ヘッドで保持したウェーハと局所研磨パッドとを接触させながら、ウェーハを保持した研磨ヘッドを回転させることでウェーハ外周部を同心円状に局所研磨可能なものであることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-158399号公報
【特許文献2】特開平09-254024号公報
【特許文献3】特開2019-193968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの特許文献1-3は、局所的に研磨する装置の事例であるが、いずれも円形状のウェーハを研磨する技術であり、分割したウェーハを研磨するような装置ではなかった。
しかし、円形状ではなく、円形状のウェーハから扇形状などに分割したウェーハ(以下、基板片とも言う)を研磨しなければならない場合がある。
【0009】
例えば、円形状の製品のウェーハから、品質評価(確認)のためサンプルウェーハを抜き取り、そのウェーハを分割する事がある。品質確認では熱処理などの処理を行い検査するケースや薬液で処理するケースもあり破壊検査となってしまう。そのため検査によるウェーハロスを低減するために円形状のウェーハを扇形状に分割して検査する事がある。また品質検査ではコンパクトな設備により迅速に評価する必要があり、このように分割することで円形状のサンプルを用いるより小型の装置で熱処理などを実施できるメリットがある。
【0010】
なお、分割ウェーハの研磨後の品質評価としては、例えば抵抗率測定やフォトルミネッセンス、カソードルミネッセンス、その他光学的な手法を用いてバルク品質を測定するものである。これらの測定は表面にダメージ層が残留していたり、粗さが大きかったりすることで異常な散乱が発生し、正しく測定できないことが分かっている。
【0011】
また、ウェーハの分割は、例えば、扇形状の中心角を90°(4分割)や120°(3分割)、180°(2分割)などの形状にすることが多い。
このウェーハの分割は、ダイサーにより機械的に分割することもできるが、半導体ウェーハの場合、原子同士の結合力の弱い結晶方位があり、この結晶方位に沿って割れた面は比較的平滑であるので、これを利用してウェーハを分割(劈開)する事が多い。以後このようにして分割したものを劈開ウェーハという事がある。
【0012】
このような円形状ではないウェーハに分割した後に、該分割ウェーハを研磨したいケースがある。例えば、熱処理後に熱酸化膜を研磨により除去したり、光学的な手法を用いて品質を測定するため、ダメージ層を除去したり、粗さを製品の研磨レベル(例えばDSP後レベル)の水準の表面状態にしたいことがある。
【0013】
このような分割されたウェーハでは、通常の円形状の製品を処理するような研磨装置やウェーハの保持方法を用いて研磨する事ができない。円形状のウェーハと同じ保持具では正しく保持できず研磨中にウェーハが移動してしまうためである。
【0014】
また、このような分割したウェーハを研磨処理すると研磨布のライフが短くなると考えられる。
これは、通常の円形状のウェーハを研磨する場合はエッジ部が面取りされた状態で行うのに対し、分割(劈開)したウェーハは分割面(劈開面)が垂直になっており、この劈開面とウェーハ表面の境界部分(エッジ部)が面取りされていないことが多い。すなわちエッジ部が鋭利な状態となっているため、研磨する場合、研磨布が過剰に摩耗される状態となり、研磨布の劣化が極度に早くなってしまうという問題点が考えられる。これにより、研磨品質の低下や研磨布のライフ低下などのデメリットが生じ得る。
【0015】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、分割したウェーハである基板片、特にエッジ部が鋭利な状態の基板片でも保持することができ、そして研磨布が過剰に摩耗されるのを防ぎ、安定的に研磨加工することができる研磨装置および研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、研磨装置であって、
該研磨装置は円形状の基板から分割した基板片を研磨可能なものであり、
前記基板片を載置するステージと、
前記基板片の面積より小さな研磨布を備え、該研磨布を前記基板片の表面に摺接させて研磨する研磨機構と、
前記基板片の平面形状と同形状のくり抜き部が形成されており、該くり抜き部に前記基板片を嵌め込んで保持する保持具とを有するものであることを特徴とする研磨装置を提供する。
【0017】
このような本発明の研磨装置であれば、上記保持具における基板片と同形状のくり抜き部により基板片を安定して保持することができる。なおかつ、上記研磨機構を有するので、基板片よりも小さい研磨布で走査するように研磨を行うことができる。特には基板片のエッジ部がたとえ鋭利な状態であったとしても、該エッジ部を避けて任意の箇所のみを研磨することができ、その鋭利なエッジ部により研磨布がダメージを受けることもない。
したがって基板片の安定した研磨が可能な研磨装置となる。研磨品質の低下や研磨布のライフの低下を効果的に防ぐことができる。
【0018】
この場合、前記研磨機構は前記研磨布が貼付された研磨ヘッドを有しており、
該研磨ヘッドは、前記ステージ上で前記保持具により保持された前記基板片に前記研磨布を介して押圧させる押圧機構と、軸回転させる回転機構と、水平方向に動作させる水平駆動機構とを備えているものとすることができる。
【0019】
これらの各種機構を備えたものであれば、基板片のエッジ部を避けつつ、研磨布が貼付された研磨ヘッドを簡便に任意の場所に水平駆動(水平移動)させて基板片のエッジ部以外の任意の箇所を研磨することができ、基板片のエッジ部により研磨布が損傷等するのを効果的に防ぐことができる。
【0020】
また、前記ステージは軸回転可能であり、
前記水平駆動機構は、前記研磨ヘッドを前記ステージの外周から中心方向に往復動作させるものとすることができる。
【0021】
このようなものであれば、水平駆動機構をより単純な機構とすることができる。
【0022】
また、前記保持具は、前記基板と同じ半径を有する円柱に前記くり抜き部が形成されているものとすることができる。
【0023】
このようなものであれば、その保持具を載置するステージを回転させる場合に回転制御し易い。
【0024】
また、前記保持具は、前記円柱に中心角が360°/n(nは2以上の自然数)の扇形の前記くり抜き部が形成されているものとすることができる。
【0025】
品質評価(確認)のためのサンプル片は上記のような中心角を有する扇形のものがよく用いられており、本発明における保持具はそのようなサンプル片を安定して保持するために好適である。
【0026】
また本発明は、研磨方法であって、
円形状の基板から分割した基板片を研磨するとき、
前記基板片の平面形状と同形状のくり抜き部が形成されており、該くり抜き部に前記基板片を嵌め込んで保持する保持具を用意し、
前記基板片をステージ上に載置して前記保持具で保持しつつ、
前記基板片の面積より小さな研磨布を備えた研磨機構を用いて、前記研磨布を前記基板片の表面に摺接させて全面または一部を研磨することを特徴とする研磨方法を提供する。
【0027】
このような本発明の研磨方法であれば、基板片を上記保持具で安定して保持しつつ、上記の小さい研磨布で基板片のエッジ部を避けて任意の箇所のみを研磨することができる。そのため安定して研磨することができ、研磨品質の低下や研磨布のライフの低下を効果的に防ぐことができる。
【0028】
また、前記研磨機構として前記研磨布が貼付された研磨ヘッドを用意し、
前記基板片を研磨するとき、
前記ステージ上で前記保持具により保持した前記基板片に前記研磨ヘッドを前記研磨布を介して押圧回転させつつ水平方向に動作させて研磨することができる。
【0029】
このようにすれば、基板片のエッジ部を避けつつ、研磨ヘッドを簡便に任意の場所に水平駆動(水平移動)させて基板片のエッジ部以外の任意の箇所を研磨することができ、基板片のエッジ部により研磨布が損傷等するのを効果的に防ぐことができる。
【0030】
このとき、前記ステージを軸回転させて該ステージ上の前記基板片を軸回転させるとともに、前記研磨ヘッドを前記ステージの外周から中心方向に往復動作させて研磨することができる。
【0031】
このようにすれば、より単純な動作で任意の箇所を研磨することができる。
【0032】
また、前記保持具として、前記基板と同じ半径を有する円柱に前記くり抜き部が形成されているものを用意することができる。
【0033】
このようなものを用意すれば、用意した保持具を載置するステージを回転させる場合に回転制御し易い。
【0034】
また、前記保持具として、前記円柱に中心角が360°/n(nは2以上の自然数)の扇形の前記くり抜き部が形成されているものを用意することができる。
【0035】
品質評価(確認)のためのサンプル片は上記のような中心角を有する扇形のものがよく用いられており、上記保持具はそのようなサンプル片を安定して保持することができるため好ましい。
【0036】
また、前記研磨する基板片として、品質評価のためのサンプル片を用意することができる。
【0037】
前述したように品質評価のためのサンプル片を評価するにあたって研磨する必要性があるケースがあり、本発明の研磨方法はこのようなサンプル片の研磨に好適である。
【発明の効果】
【0038】
本発明の研磨装置および研磨方法であれば、保持具における基板片の平面形状のくり抜き部での基板片の安定保持や、小さい研磨布による基板片の任意の箇所のみの研磨が可能になり、安定的な研磨や研磨品質の改善、また研磨布のライフ改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の研磨装置の一例を示す概略側面図である。
図2】本発明の研磨装置の研磨対象物の一例を示す説明図である。
図3】基板片と保持具の保持状態における位置関係を示す説明図である。
図4】研磨ヘッドの動作例(2軸方向)の一例を示す説明図である。
図5】研磨ヘッドの動作例(1軸方向)の一例を示す説明図である。基板片および保持具のステージへの固定の仕方の一例を示す説明図でもある。
図6】基板片のステージへの固定の仕方の他の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
前述したように、これまで、研磨装置は円形状のウェーハを加工するケースが多く、円形状のウェーハを保持する保持具(両面研磨ではキャリア、片面研磨ではテンプレートやガイドリング)を用い、ウェーハより大きな研磨布で研磨を行っていた。
しかし、検査等で分割(劈開など)したウェーハ(基板片)を研磨する必要がある場合があり、そのような従来の研磨機では問題が生じると本発明者らは考えた。つまり、正常に保持できないことに加え、基板片のエッジ部(劈開面)が鋭利な場合に研磨布が大きく摩耗してしまうという問題点が考えられた。そのため、劈開したウェーハなどの基板片をうまく安定保持し、なおかつエッジ部を研磨せずに任意の場所のみを研磨できる構造の研磨装置が必要となる。
【0041】
そこで本発明者らが鋭意研究を行ったところ、特に、基板片の面積より小さな研磨布を備えた研磨機構や、基板片の平面形状のくり抜き部に基板片を嵌合させて保持する保持具を用いて基板片を研磨する研磨装置・研磨方法であれば、上述した基板片の安定保持や、基板片のエッジ部を避けた研磨が可能になり、ひいては研磨品質や研磨布ライフの向上を図ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0042】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に本発明の研磨装置の一例を示す側面から見た概略図である。また、本発明の研磨装置で研磨可能な研磨対象物(基板片)の一例を図2に示す。
本発明の研磨装置1は、円形状の基板(ウェーハ)Wから分割した基板片D(分割ウェーハ)を研磨可能なものである。
ここでまず、この研磨対象物について説明する。この基板片Dは特に限定されるものではないが、例えば品質評価(検査)やその他の理由により、円形状の基板Wからダイサーや劈開等により分割されたサンプル片とすることができる。
【0043】
基板片Dの材質や構造としては、特に限定するものではないが、シリコン、炭化ケイ素、ダイヤモンド、III-V族結晶、II-VI族結晶などがある。また単結晶や多結晶、上記物質のヘテロ構造、張り合わせ構造体などでも研磨を実施する事ができる。
【0044】
また、基板片Dは、上記のように円形状のウェーハWを分割して得るが、もともとの円形状ウェーハWの直径は特に限定されない。例えば直径が450mm、300mm、200mm、150mm、あるいはそれ以下のサイズなどのウェーハを分割したものとすることができる。
なお、円形状ウェーハWを劈開する際は、扇形状にすることや、正方形状、長方形状にすることが多いが、特に劈開回数がすくないことから扇形状が良く用いられる。劈開後の扇形の中心角が90°や、120°、180°とすることが多く、特に90°が多い。しかしながら、これらの形状に限定されるものではなく、適宜決定することができる。
なお、以下では基板片Dとして中心角が90°の扇形に劈開して分割したもの(図2の斜線を引いたもの)を例に挙げて説明する。
【0045】
そして本発明の研磨装置1の構成としては、図1に示すように、基板片Dを載置するステージ2と、研磨布3を備え、該研磨布3を基板片Dの表面に摺接させて研磨する研磨機構4と、基板片Dを嵌め込んで保持する保持具5とを有している。
また研磨布3の近接部に研磨用組成物を供給するノズルNをさらに備えたものとすることができる。局所的な研磨をするため、研磨布3の近接部に研磨用組成物を供給できるようにしておくことで、研磨速度の向上を図ることができるし、また安定して研磨することができる。
ここで基板片Dや保持具5を載置するステージ2は、基板片Dを裏面側から傷つけないよう樹脂製であることが好ましく、特にPOM樹脂が好ましい。しかしながら、当然この材質に限定されず、適宜決定することができる。
またステージ2はモータ等のステージ回転機構12により軸回転可能なものとすることもできる。
さらにはチャック機能を有しており、基板片D等を真空チャックにより固定可能なものとすることもできる。多孔質チャックなどが挙げられる。また、基板片D等をステージ2上に固定する手段は他にも挙げられるが、その固定手段については後述する。
【0046】
次に保持具5について説明する。図3に基板片Dと保持具5の保持状態における位置関係を示す。図3に示すように、この保持具5は基板片Dの平面形状と同形状のくり抜き部6が形成されているものである。より具体的には、ここでは分割する前の基板Wと同じ半径を有する円柱に基板片Dの平面形状と同形状のくり抜き部6が形成されている。そして、このような基板片Dと平面視において同形状のくり抜き部6に基板片Dを嵌め込んで保持するものである。このようにすることで、基板片Dを側面側から接して保持することができ、基板片Dを安定して保持することができる。
この保持具5の形状は、くり抜き部6を有していてステージ2上に保持できる形状であればよく、平面視において円形状、四角形状、その他の形状など特に限定されるものではない。ただし、上記のように基板Wと同じ半径を有する円柱から加工した形状であれば、ステージ2が円形状であり回転可能な場合には、そのステージ2の回転制御がし易くなるため好ましい。
特に、基板Wの半径と同じ半径の円柱から360°/nの中心角を有する扇形をくり抜いた形状の保持具5とすることができる。そしてそのくり抜き部6の内に360°/nの中心角を有する扇形の基板片Dを合致するように配置して保持することができる。なお、nは2以上の自然数で、n=2,3、4程度が好ましい。このような角度で分割したウェーハ(基板片D)は取り扱いやすく、検査用のサンプルとしても処理しやすく好ましいからである。
もちろん、前述した基板片Dの別形状のように、正方形状、長方形状のくり抜き部6を有する保持具5とすることもできる。
なお図3は、円形状のウェーハを4分割(中心角が90°の扇形)した基板片D(劈開ウェーハ)を研磨するための保持具5の例を示したものである。基板Wの半径と同じ半径の円柱から中心角が90°の扇形をくり抜いた形状の保持具である。
【0047】
また、保持状態において基板片Dの劈開部分は保持具5のくり抜き部6の側面と接するようになることから、研磨時に劈開面(エッジ部)と研磨布3の接触を極力なくすことが可能である。これにより、劈開したような基板片Dを保持して研磨しても、より確実に研磨布3にダメージを与えることなく加工する事ができる。
基板片Dとくり抜き部6は平面視で同形状のため、例えば扇形のサンプルであればその2つの劈開面、長方形状のサンプル(4面とも劈開面)であればその4つの劈開面とくり抜き部6の側面とが接触するようにすることができ、鋭い劈開面(エッジ部)を避けて研磨加工可能になる。
この点を考慮すると、保持具5の厚さ(高さ)は基板片Dの厚さ(高さ)よりも厚く(高く)設定するのが好ましい。このようなものとすることで劈開部分の全体を保持具5の側面に接触させることができ、劈開面が完全に見えない(言い換えると、研磨時に劈開面が研磨布3と接触しない)状態にすることができる。
なお、保持具5の材質は特に限定されないが、例えば樹脂製とすることができる。
【0048】
次に、研磨布3および研磨機構4について説明する。図1に示すように研磨機構4は基板片Dの面積より小さな研磨布3を備えており、該研磨布により基板片Dの表面を研磨するものであれば良い。このような小さい研磨布で走査するようにして研磨を行うことができる機構である。より具体的には、研磨布3が貼付された研磨ヘッド7を有している。そしてその研磨ヘッド7は、垂直方向に伸びる軸部を経由して基板片Dに研磨布3を介して押圧させる押圧機構8(エアーシリンダーなど)、軸回転させる回転機構9(モータなど)、水平方向に動作させる水平駆動機構10(1軸方向、あるいは、X-Yの2軸方向に移動可能なリニアガイドなど)を備えている。さらに、これらの機構を制御するための制御部11を有しており、研磨ヘッド7(研磨布3)の動作移動、回転、荷重(研磨条件)をコントロールしている。
【0049】
このような研磨機構4により、ステージ2上に載置された基板片Dの垂直方向を軸にして、研磨ヘッド7を軸回転させたり、基板片Dに押圧させたり、さらに研磨ヘッド7(研磨布3)が回転したまま縦横の任意の方向(任意の座標)に水平動作させることができる。
【0050】
このような小さい研磨布3を用いて研磨する機構であるので、円形状でないウェーハから分割した種々の形状の基板片Dについても研磨を実施する事ができる。特に研磨したい部分だけを局所的に研磨する事ができる。このため、基板片Dの鋭利な状態のエッジ部を避けて研磨することが可能である。したがって、そのエッジ部により研磨布3がダメージを受けて極度に摩耗して劣化してしまうのを防ぐことができ、研磨布3のライフの低下を防ぐことができ、研磨品質を保つことができる。
前述した保持具5による保持と併せて、基板片Dを安定的に研磨することができる。
【0051】
ここで水平駆動機構10による研磨ヘッド7の動作について具体例を挙げて説明する。図4に研磨ヘッド7の動作例(2軸方向)を示す。図4に示すように、研磨ヘッド7(研磨布3)が軸回転したまま、ステージ2上の基板片Dの表面上を水平方向に動作可能であり、ここでは2軸方向(X-Y方向)に動作する例を示している。
【0052】
また、ステージ2上に固定された基板片Dに対する研磨ヘッド7(研磨布3)の動作の別な形態(1軸方向)として、図1、5を参照して説明する。図1図5に示すように、ステージ2をモータ等のステージ回転機構12で軸回転可能なステージとし、該ステージ2を軸回転させることでその上の基板片Dを軸回転させる。その一方で研磨ヘッド7の動作は、軸回転したままステージの外周から中心方向に往復動作させるものである。研磨ヘッド7(研磨布3)を基板片Dの表面の法線方向で軸回転させて押圧して基板片Dを研磨する際、研磨の面内均一性向上のため、ステージ2の回転機構により、円周方向に基板片Dの中心角の角度範囲で動かして基板片D全面を研磨することができる。
【0053】
このようにステージ2にも回転機構を具備していれば、研磨ヘッド7(研磨布3)の移動方向(研磨の方向)は、外周から中心方向に往復するだけの単純な機構でも、基板片Dの全面を研磨するような制御をすることができる。このような研磨ヘッド7の移動であれば、直線的な動きだけで済むので装置の構造や制御が簡単なものとなる。
なお、基板片D(サンプル片)の評価項目によっては、基板片Dの一部分が研磨されていればよいケースもあり、このような場合、ステージ2にステージ回転機構12を備えず、外周から中心方向の1軸方向に往復動作可能な仕組みだけにすることもできる。
【0054】
ここで基板片Dと保持具5とステージ2との関係性について説明する。本発明において基板片Dはステージ2上で保持具5により保持されていれば足りるが、研磨の際に基板片D等がより確実にステージ2上から位置ズレ等しないように、より強固にステージ2上に固定させることもできる。
基板片Dを留め金13(およびネジ)で側部や上部側から固定した例を図5に示す。また保持具5もステージ2上に上部側からネジ14を用いて固定した例である。
【0055】
なお、留め金13は基板片Dの劈開面近傍の表面に接触させて固定しても良いが、図6に示す他の固定の仕方のように保持具5がずれないように、保持具5の劈開面近傍の箇所を留め金13で固定しても良い。
【0056】
このように留め金13やネジ14で固定することで、基板片Dなどをステージ2上に簡単に固定保持できる。ただし基板片Dなどの固定は、これに限定するものではなく、留め金13やネジ14の代わりに前述したように基板片Dの裏面から多孔質チャックなどを用いて真空保持してもよい。
この場合、真空吸着をするための設備が必要であるが、真空保持することで、留め金13の部分まで基板片Dを研磨加工することが可能となるというメリットがある。
またこのような真空保持での固定方式であれば、保持具5を脱着可能で簡単に取り外すことができる。そのため、例えば、円形状のウェーハでもステージ2に載せて研磨可能なものとなる。本発明の研磨装置1は基板片Dを研磨可能なものではあるが、上記のようなステージ2と保持具5との関係性であれば、同じステージ2を用いて、例えば分割していない円形状のウェーハの研磨に兼用可能なものとなる。つまり、円形状のウェーハを研磨する時には保持具5がない状態で研磨を実施すればよく状況に応じて使い分けが可能となる。
【0057】
次に、研磨布3の好適な形態について説明する。
研磨布3は基板片Dの面積より小さければ良く、例えば、基板片Dのサイズによるが、基板Wの直径の1/3以下、さらには1/6以下のサイズにするとよい。小さいほど局所的な研磨が可能となるが、目埋まりなどライフなどにも影響するため、研磨する対象(材質等)や、基板片Dの形状(2分割、3分割、4分割など)、研磨したいエリアなどを考慮し適切な大きさに設定する。
例えば、直径300mmウェーハから中心角90°の扇形状に切り出した分割片(4分割)の場合、直径100mm以下の円形の研磨布が好ましく、さらには直径50mm以下の円形の研磨布が好ましい。
【0058】
研磨布3は、研磨対象の材質や要求される面精度により適宜設定すればよいが、例えば発泡ウレタンタイプの研磨布や、不織布に樹脂を含浸させたタイプの研磨布、スウェードタイプの研磨布などが用いられる。
なお、研磨布3の厚みは、平坦性維持の観点から5mm以下が好ましく、さらには3mm以下が好ましいが、一方で表面欠陥の観点から1mm以上が好ましい。
ノズルNからの研磨用組成物が研磨布3の内周側まで到達しやすいよう、研磨布3には溝構造を有していてもよい。
【0059】
次にノズルNからの研磨用組成物について説明する。この研磨用組成物についても研磨対象により適宜選定すればよいが、研磨用組成物は砥粒を含んでいることが好ましい。砥粒の例としては、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、ダイヤモンド、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、二酸化セリウムなどがある。
また、研磨用組成物は砥粒のほかに塩基性化合物を含んでいても良い。塩基性化合物の例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウムなどがある。
この塩基性化合物により研磨用組成物のpHが増大するが、研磨レート促進の観点から、pHは8.0以上が好ましく、さらには9.0以上が良く、さらには10.0以上が好ましい。また、砥粒の安定性の観点から、pHは14.0以下が好ましく、さらには13.0以下が良く、さらには12.0以下が好ましい。
さらに研磨用組成物は、砥粒や塩基性化合物のほかに、セルロース誘導体やポリビニルアルコールなどの水溶性高分子や、エチレンオキシド付加体などの界面活性剤などを含んでいてもよい。
【0060】
ノズルNは、研磨布3と基板片Dとが接している箇所の近くに研磨用組成物を供給できるように構成されているのが好ましく、連続供給もしくは間欠供給のいずれでもよい。いずれの場合でも、供給流量は特に限定されないものの、例えば平均0.01ml/min以上が良く、さらに平均0.1ml/sec以上が好ましい。
【0061】
なお、本発明の研磨装置1は、必要に応じて研磨布3のドレス機構を具備していてもよい。前述したように研磨する基板片Dよりも小さい研磨布3を用いるため、研磨布の目詰まりなどが生じやすい。そこで、簡単に研磨布3の研磨面をドレスできるように研磨装置1にドレス機構も設置しておくと良い。このように研磨を続けるうちに研磨布表面が劣化してしまうことを防ぐため、ドレス機構を有する事が好ましい。このドレス機構は、例えばダイヤモンドを電着したドレッサーに研磨布を押し当て回転できる構造となっているものとすることができる。このドレス機構によるドレスは、研磨中に適当な間隔で行ってもよいし、研磨終了から次の研磨開始までの間に行ってもよい。
【0062】
次に、本発明の研磨方法について説明する。ここでは上記のような本発明の研磨装置1を用いて研磨を行う場合について説明する。
まず、研磨対象物として円形状の基板Wから分割した基板片Dを用意する。基板Wの品質評価などのため、基板Wをダイサーや劈開によって分割したサンプル片とすることができる。ここでは劈開によって中心角が360°/n(nは2以上の自然数)の扇形の基板片Dを得ることができ、ここでは中心角が90°のものを用意する。
次に、前述したくり抜き部6が形成されている保持具5を用意する。例えば基板Wと同じ半径を有する円柱に中心角が360°/n(nは2以上の自然数)の扇形のくり抜き部6を有するものを用意することができ、ここでは上記基板片Dに合わせ、くり抜き部6の中心角が90°の保持具5を用意する。
【0063】
次に、基板片Dをステージ2上に載置し保持具5のくり抜き部6に嵌合させて保持する。このような保持具5のくり抜き部6への基板片Dのセットにより、分割面(劈開面)と保持具5を接触させた状態で基板片Dを保持することができる。
そして、保持具5により保持したまま、研磨機構4(基板片Dの面積より小さな研磨布3の他に、押圧機構8、回転機構9、水平駆動機構10、制御部11を備えた研磨ヘッド7を備えている)を用いて、ノズルNから研磨用組成物を供給しつつ研磨布3を基板片Dの表面に摺接させて全面または一部を研磨する。
上記のような保持具5による保持や、小さい研磨布3による研磨のため、研磨時に分割面(劈開面)のエッジ部が研磨布3に接触しないようにして、研磨布3へのダメージを低減することができる。
【0064】
なお研磨時は、研磨布3(研磨ヘッド7)はモータ等の回転機構9により基板片Dの表面の垂直方向を軸として軸回転させながら、押圧機構8によって荷重をかけて基板片Dの表面に接触させる。
研磨条件などは研磨対象により適宜選定すればよいが、例えば、研磨布3の回転数は研磨速度の観点から10rpm以上が好ましく、さらには100rpm以上が好ましい。一方、研磨負荷低減の観点から、1000rpm以下が好ましい。
また、研磨布3の研磨荷重は研磨速度の観点から、10gf/cm以上が好ましく、100gf/cm以上がより好ましいが、表面品質の観点から、10000gf/cm以下が好ましく、1000gf/cm以下がより好ましい。
【0065】
研磨布3の動作は、基板片Dの表面上を全面または一部分を走査するように移動させればよく、水平駆動機構10により例えば2点間を往復するように動かしてもよいし、2軸方向で縦横に動作させることもできる。このとき、併せてステージ2の軸回転を行うことで基板片Dを回転させても良い。また、そもそも研磨布3を走査させなくてもよい。一部だけ鏡面化されていればよいのか、全面を鏡面にする必要があるのかなど、その用途により適宜設定する。
【0066】
本発明は、いろいろな工程で得られたウェーハ及び様々な厚さのウェーハから分割した基板片に対して研磨を実施する事ができる。特に品質評価のためサンプル片を鏡面化する、または、余計な酸化膜を除去するなどの加工に好適に用いることができる。
【実施例0067】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
研磨対象物として、直径300mmの厚さ約800μmのシリコンウェーハを劈開により2分割(中心角が180°)した扇形状(半円状)の基板片を準備した。この基板片の元のウェーハはエッチング後のものであり面粗さが粗いものである。この基板片を鏡面状にするため図1に示すような本発明の研磨装置を用いて本発明の研磨方法を実施した。
【0068】
研磨布は、直径100mmの円形状のもので材質が発泡ウレタンタイプ、厚みが5mmのものを用いた。研磨用組成物は、コロイダルシリカを含むpH=11のアルカリ性の研磨剤を用い、研磨布と基板片が接している面の近くに間欠供給し、平均0.1ml/sec程度となるように調整した。
保持具は中心角が180°の扇形のくり抜き部が設けられており、POM樹脂で厚さ2mmのものを用いた。このくり抜き部に基板片を嵌合保持した状態で研磨した。
研磨布に関しては、回転数は10rpmとし、研磨荷重は1000gf/cmで、X-Y方向に制御して基板片の全面を走査するように移動させて研磨した。
【0069】
研磨の結果、粗さがDSP後のレベルの水準となり、狙い通りの表面品質の基板片を得ることができた。特に研磨布のダメージもなくライフや品質も安定しており、各種バルク品質評価も問題なく行えた。
【0070】
(実施例2)
研磨対象物として、直径300mmの厚さ750μmのシリコンウェーハを劈開により4分割(中心角が90°)した扇形状の基板片を準備した。この基板片の元のウェーハはPW後のもので、4分割後に検査のため熱処理を実施し、熱酸化膜が形成されたものである。この基板片から熱酸化膜を除去するために本発明の研磨装置を用いて本発明の研磨方法を実施した。
【0071】
研磨布は、直径50mmの円形状のもので材質が発泡ポリウレタンタイプ、厚みが3mmのものを用いた。研磨用組成物は、砥粒としてセリアを含むアルカリ性の研磨剤を用い、研磨布と基板片が接している面の近くに連続供給し、平均0.05ml/sec程度となるように調整した。
保持具は中心角が90°の扇形のくり抜き部が設けられており、POM樹脂で厚さ1mmのものを用いた。このくり抜き部に基板片を嵌合保持した状態で研磨した。
研磨布に関しては、回転数は100rpmとし、研磨荷重は100gf/cmで、X-Y方向に制御して基板片の全面を走査するように移動させて研磨した。
【0072】
研磨の結果、熱酸化膜が除去された基板片を得ることができた。
また、以上のような研磨を繰り返し行っても、特に研磨布のダメージもなくライフや品質も安定しており、各種バルク品質評価も問題なく行えた。
【0073】
(実施例3)
研磨対象物として、直径300mmのシリコンウェーハを劈開により4分割(中心角が90°)した扇形状の基板片を準備した。この基板片の元のウェーハはインゴットから切り出された厚さ2mmのサンプルで平面研削されたものである。この基板片の面粗さやダメージを改善するために本発明の研磨装置を用いて本発明の研磨方法を実施した。
【0074】
研磨布は、直径50mmの円形状のもので材質が不織布タイプ、厚みが3mmのものを用いた。研磨用組成物は、砥粒としてシリカを含むアルカリ性の研磨剤を用い、研磨布と基板片が接している面の近くに供給して連続供給し、平均0.05ml/sec程度となるように調整した。
保持具は中心角が90°の扇型のくり抜き部が設けられており、POM樹脂で厚さ3mmのものを用いた。このくり抜き部に基板片を嵌合保持した状態で研磨した。
研磨布に関しては、回転数は100rpmとし、研磨荷重は100gf/cmで、ステージの外周から中心方向に動作させ、かつ、ステージを回転させ、基板片の全面を走査するように移動させ研磨した。
【0075】
研磨の結果、粗さが改善しダメージも除去され、基板片の厚さが2mmという厚い鏡面研磨サンプルを作製する事が出来、各種バルク品質評価も問題なく行えた。
【0076】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]: 研磨装置であって、
該研磨装置は円形状の基板から分割した基板片を研磨可能なものであり、
前記基板片を載置するステージと、
前記基板片の面積より小さな研磨布を備え、該研磨布を前記基板片の表面に摺接させて研磨する研磨機構と、
前記基板片の平面形状と同形状のくり抜き部が形成されており、該くり抜き部に前記基板片を嵌め込んで保持する保持具とを有するものである研磨装置。
[2]: 前記研磨機構は前記研磨布が貼付された研磨ヘッドを有しており、
該研磨ヘッドは、前記ステージ上で前記保持具により保持された前記基板片に前記研磨布を介して押圧させる押圧機構と、軸回転させる回転機構と、水平方向に動作させる水平駆動機構とを備えているものである上記[1]の研磨装置。
[3]: 前記ステージは軸回転可能であり、
前記水平駆動機構は、前記研磨ヘッドを前記ステージの外周から中心方向に往復動作させるものである上記[2]の研磨装置。
[4]: 前記保持具は、前記基板と同じ半径を有する円柱に前記くり抜き部が形成されているものである上記[1]から[3]のいずれかの研磨装置。
[5]: 前記保持具は、前記円柱に中心角が360°/n(nは2以上の自然数)の扇形の前記くり抜き部が形成されているものである上記[4]の研磨装置。
[6]: 研磨方法であって、
円形状の基板から分割した基板片を研磨するとき、
前記基板片の平面形状と同形状のくり抜き部が形成されており、該くり抜き部に前記基板片を嵌め込んで保持する保持具を用意し、
前記基板片をステージ上に載置して前記保持具で保持しつつ、
前記基板片の面積より小さな研磨布を備えた研磨機構を用いて、前記研磨布を前記基板片の表面に摺接させて全面または一部を研磨する研磨方法。
[7]: 前記研磨機構として前記研磨布が貼付された研磨ヘッドを用意し、
前記基板片を研磨するとき、
前記ステージ上で前記保持具により保持した前記基板片に前記研磨ヘッドを前記研磨布を介して押圧回転させつつ水平方向に動作させて研磨する上記[6]の研磨方法。
[8]: 前記ステージを軸回転させて該ステージ上の前記基板片を軸回転させるとともに、前記研磨ヘッドを前記ステージの外周から中心方向に往復動作させて研磨する上記[7]の研磨方法。
[9]: 前記保持具として、前記基板と同じ半径を有する円柱に前記くり抜き部が形成されているものを用意する上記[6]から[8]のいずれかの研磨方法。
[10]: 前記保持具として、前記円柱に中心角が360°/n(nは2以上の自然数)の扇形の前記くり抜き部が形成されているものを用意する上記[9]の研磨方法。
[11]: 前記研磨する基板片として、品質評価のためのサンプル片を用意する上記[6]から[10]のいずれかの研磨方法。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0078】
1…本発明の研磨装置、 2…ステージ、 3…研磨布、 4…研磨機構、
5…保持具、 6…くり抜き部、 7…研磨ヘッド、 8…押圧機構、
9…回転機構、 10…水平駆動機構、 11…制御部、
12…ステージ回転機構、 13…留め金、 14…ネジ、
W…円形状の基板(ウェーハ)、 D…基板片、 N…ノズル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6