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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165035
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】成膜方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20241121BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20241121BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20241121BHJP
   C23C 16/30 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/31 B
C23C16/455
C23C16/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080854
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】村上 博紀
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA06
4K030AA09
4K030AA12
4K030AA16
4K030AA18
4K030BA02
4K030BA29
4K030BA42
4K030BA43
4K030BA44
4K030EA04
4K030HA01
4K030JA10
4K030KA05
5F045AA06
5F045AA15
5F045AB31
5F045AB32
5F045AC00
5F045AC07
5F045AC08
5F045AC15
5F045AC16
5F045AD05
5F045AD06
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045BB01
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
5F045EE14
5F045EE17
5F045EF03
5F045EK06
5F045EM10
5F045GB05
5F058BA06
5F058BC02
5F058BC03
5F058BD04
5F058BD05
5F058BF04
5F058BF21
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF37
5F058BG02
(57)【要約】
【課題】膜厚の面内分布を調整する成膜方法及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】処理容器内の基板に供給するガスを切り替えて、前記基板に膜を形成する成膜方法であって、何れかのガスを第1インジェクタから前記処理容器内に供給する際、前記第1インジェクタとは異なる第2インジェクタから前記基板の温度よりも加熱された希釈ガスを前記処理容器内に供給する、成膜方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内の基板に供給するガスを切り替えて、前記基板に膜を形成する成膜方法であって、
何れかのガスを第1インジェクタから前記処理容器内に供給する際、前記第1インジェクタとは異なる第2インジェクタから前記基板の温度よりも加熱された希釈ガスを前記処理容器内に供給する、
成膜方法。
【請求項2】
供給律速反応する第1ガスを前記第1インジェクタから前記処理容器内に供給する際、前記第2インジェクタから加熱された前記希釈ガスを前記処理容器内に供給する、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記第1ガスを前記第1インジェクタから前記処理容器内に供給し、加熱された前記希釈ガスを前記第2インジェクタから前記処理容器内に供給する工程と、
第2ガスを前記第2インジェクタから前記処理容器内に供給する工程と、を1サイクルとして所定サイクル繰り返す、
請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記第1ガスは、TPSOLであり、
前記第2ガスは、TMAである、
請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記基板の温度は、100℃~400℃の範囲内であって、
前記希釈ガスの温度は、150℃~600℃の範囲内であって、
請求項4に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記希釈ガスは、
不活性ガスである、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項7】
パージガスを前記第1インジェクタから前記処理容器内に供給する際、前記第2インジェクタから加熱された前記希釈ガスを前記処理容器内に供給する、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項8】
原料ガスを前記処理容器内に供給する工程と、
前記処理容器内に前記パージガスを供給して、前記原料ガスをパージする工程と、
反応ガスを前記処理容器内に供給する工程と、
前記第1インジェクタから前記処理容器内に前記パージガスを供給し、前記第2インジェクタから加熱された前記希釈ガスを前記処理容器内に供給して、前記反応ガス及び前記原料ガスと前記反応ガスの反応副生成物をパージする工程と、
を1サイクルとして所定サイクル繰り返す、
請求項7に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記反応副生成物は、HOを含む、
請求項8に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記原料ガスはTMAであり、
前記反応ガスはOである、
請求項9に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記基板の温度は、100℃~550℃の範囲内であって、
前記希釈ガスの温度は、150℃~600℃の範囲内であって、
請求項10に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記希釈ガスは、
不活性ガスである、
請求項7乃至請求項11のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項13】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内に第1ガスを供給する第1インジェクタと、
前記処理容器内に第2ガス又は希釈ガスを供給する第2インジェクタと、
前記第2インジェクタ内に設けられるガスヒータと、
制御部と、を備え、
前記第2インジェクタから前記第2ガスを供給する工程と、
前記第1インジェクタから前記第1ガスを供給するとともに、前記第2インジェクタから前記基板よりも加熱された前記希釈ガスを供給する工程と、を実行可能に構成される、
基板処理装置。
【請求項14】
前記第2インジェクタは、
前記処理容器内に配置される外管と、
前記外管内に配置されるガス加熱部と、を有する、
請求項13に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、処理室内に収容された基板に対して原料ガスを供給する第1ガス供給工程と、前記基板に対して反応ガスを供給する第2ガス供給工程と、を有し、前記第1ガス供給工程と前記第2ガス供給工程とを交互に行って前記基板上に膜を形成し、前記第2ガス供給工程では、前記基板に対して前記反応ガスを供給する反応ガス供給系から前記反応ガスを供給すると共に前記反応ガスが前記基板の中心部に到達し易くなるように前記基板に対して前記反応ガス供給系とは異なる供給系から不活性ガスを供給する半導体装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/066800号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一の側面では、本開示は、膜厚の面内分布を調整する成膜方法及び基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、処理容器内の基板に供給するガスを切り替えて、前記基板に膜を形成する成膜方法であって、何れかのガスを第1インジェクタから前記処理容器内に供給する際、前記第1インジェクタとは異なる第2インジェクタから前記基板の温度よりも加熱された希釈ガスを前記処理容器内に供給する、成膜方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、膜厚の面内分布を調整する成膜方法及び基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】基板処理装置の構成の一例を示す概略図。
図2】基板処理装置の構成の一例の横断面図。
図3】ガス供給管の一例を示す断面図。
図4】基板処理装置の構成の他の一例を示す概略図である。
図5】ガスの吐出方向の一例を示す模式図。
図6】膜形成処理の一例を示すタイムチャート。
図7】膜厚と面内均一性を示すグラフの一例。
図8】膜厚分布を示す図の一例。
図9】膜形成処理の一例を示すタイムチャート。
図10】膜厚と面内均一性を示すグラフの一例。
図11】膜厚分布を示す図の一例。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
〔基板処理装置〕
基板処理装置100の一例について、図1から図2を用いて説明する。図1は、基板処理装置100の構成の一例を示す概略図である。図2は、基板処理装置100の構成の一例の横断面図である。
【0010】
基板処理装置100は、下端が開口された有天井の円筒体状の処理容器1を有する。処理容器1の全体は、例えば石英により形成されている。処理容器1内の上端近傍には、石英により形成された天井板2が設けられており、天井板2の下側の領域が封止されている。処理容器1の下端の開口には、円筒体状に成形された金属製のマニホールド3がOリング等のシール部材4を介して連結されている。
【0011】
マニホールド3は、処理容器1の下端を支持しており、マニホールド3の下方から基板として多数枚(例えば25~150枚)の半導体ウエハ(以下「基板W」という。)を多段に載置したウエハボート(基板支持部)5が処理容器1内に挿入される。このように処理容器1内には、上下方向に沿って間隔を有して多数枚の基板Wが略水平に収容される。ウエハボート5は、例えば石英により形成されている。ウエハボート5は、3本のロッド6を有し(図1では2本を図示する。)、ロッド6に形成された溝(図示せず)により多数枚の基板Wが支持される。
【0012】
ウエハボート5は、石英により形成された保温筒7を介してテーブル8上に載置されている。テーブル8は、マニホールド3の下端の開口を開閉する金属(ステンレス)製の蓋体9を貫通する回転軸10上に支持される。
【0013】
回転軸10の貫通部には、磁性流体シール11が設けられており、回転軸10を気密に封止し、且つ回転可能に支持している。蓋体9の周辺部とマニホールド3の下端との間には、処理容器1内の気密性を保持するためのシール部材12が設けられている。
【0014】
回転軸10は、例えばボートエレベータ等の昇降機構(図示せず)に支持されたアーム13の先端に取り付けられており、ウエハボート5と蓋体9とは一体として昇降し、処理容器1内に対して挿脱される。なお、テーブル8を蓋体9側へ固定して設け、ウエハボート5を回転させることなく基板Wの処理を行うようにしてもよい。
【0015】
また、基板処理装置100は、処理容器1内へ処理ガス、パージガス等の所定のガスを供給するガス供給部20を有する。
【0016】
ガス供給部20は、ガス供給管(インジェクタ)21,22,24を有する。ガス供給管21,22は、例えば石英により形成されており、マニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方へ屈曲されて垂直に延びる。ガス供給管21,22の垂直部分には、ウエハボート5のウエハ支持範囲に対応する上下方向の長さに亘って、複数のガス孔21g,22gが所定間隔で形成されている。各ガス孔21g,22gは、水平方向にガスを吐出する。ガス供給管24は、例えば石英により形成されており、マニホールド3の側壁を貫通して設けられた短い石英管からなる。
【0017】
ガス供給管21は、その垂直部分(ガス孔21gが形成される垂直部分)が処理容器1内に設けられている。ガス供給管21には、ガス配管を介してガス供給源21aから第1ガスが供給される。ガス配管には、流量制御器21b及び開閉弁21cが設けられている。これにより、ガス供給源21aからの第1ガスは、ガス配管及びガス供給管21を介して処理容器1内にサイドフローで供給される。
【0018】
ガス供給源21aは、第1ガスを供給する。ここで、第1ガスは、シラノールを含むシリコン前駆体ガスを供給する。シリコン前駆体ガスとしては、例えば、TPSOLガス、Triethylsilanol;トリエチルシラノール、Methyl bis(tert-pentoxy)silanol;メチルビス(tert-ペントキシ)シラノール、Tris(tert-butoxy)silanol;トリス(tert-ブトキシ)シラノールを用いることができる。以下の説明において、第1ガスは、TPSOL(Tris(tert-pentoxy)silanol;トリス(tert-ペントキシ)シラノール)ガスであるものとして説明する。
【0019】
ガス供給管22は、その垂直部分(ガス孔22gが形成される垂直部分)が処理容器1内に設けられている。ガス供給管22には、ガス配管を介してガス供給源22aから第2ガスが供給される。ガス配管には、流量制御器22b及び開閉弁22cが設けられている。これにより、ガス供給源22aからの第2ガスは、ガス配管及びガス供給管22を介して処理容器1内にサイドフローで供給される。
【0020】
ガス供給源22aは、第2ガスを供給する。ここで、第2ガスは、基板Wの表面に金属触媒の単一分子層を形成する金属含有触媒ガスを供給する。また、金属含有触媒ガスは、ルイス酸特性を有する金属、半金属またはその化合物のガスを含む。具体的には、金属含有触媒ガスは、例えば、Al、Co、Hf、Ni、Pt、Ru、W、Zr、Ti、B、Ga、In、Zn、Mg、Taが含まれる有機・無機・ハライドプリカーサーガスを用いることができる。なお、金属触媒は、Al、Co、Hf、Ni、Pt、Ru、W、Zr、Ti、B、Ga、In、Zn、Mg、Taが露出した下地であってもよい。以下の説明において、第2ガスは、TMA(Trimethylaluminum;トリメチルアルミニウム)ガスであるものとして説明する。
【0021】
また、ガス供給管22には、ガス配管を介してガス供給源23aから希釈ガス(追加パージガス)が供給される。ガス配管には、流量制御器23b及び開閉弁23cが設けられている。これにより、ガス供給源23aからの希釈ガスは、ガス配管及びガス供給管22を介して処理容器1内にサイドフローで供給される。
【0022】
ここで、ガス供給源23aは、希釈ガスを供給する。希釈ガスとしては、例えばアルゴン(Ar)、窒素(N)等の不活性ガスを利用できる。以下の説明において、希釈ガスは、Nガスであるものとして説明する。
【0023】
ここで、ガス供給管22について図3を用いてさらに説明する。図3は、ガス供給管22の一例を示す断面図である。
【0024】
ガス供給管22は、内管210と外管220と、アダプタ230と、を有する。外管220とアダプタ230とは、シール235を介して接続されている。外管220及びアダプタ230の内部には、内管210が配置されている。内管210の内部には、アルミナコア201と、発熱体202と、フレキシブルケーブル203と、を有している。発熱体202はアルミナコア201に巻回されている。フレキシブルケーブル203は、発熱体202とヒータ電源(図示せず)とを接続する。ヒータ電源からフレキシブルケーブル203を介して発熱体202に電力を供給することにより、発熱体202が発熱し、アルミナコア201が加熱される。
【0025】
アダプタ230の供給口231から供給されたガスは、内管210とアダプタ230との間の空間及び内管210と外管220との間の空間を通過し、ガス孔22gから吐出される。また、ヒータ電源から発熱体202に電力を供給することにより、ガスを加熱し、加熱されたガスがガス孔22gから吐出される。このように、ガス供給管22は、ガスが通流する外管220と、外管220内に配置され外管220を通流するガスを加熱するガス加熱部と、を有する。ガス加熱部は、コア201と、発熱体202と、を含む。ガス加熱部は、処理容器1内に配置される外管220内に配置される。
【0026】
図1に戻り、ガス供給管24には、ガス配管を介してパージガス供給源(図示せず)からパージガスが供給される。ガス配管(図示せず)には、流量制御器(図示せず)及び開閉弁(図示せず)が設けられている。これにより、パージガス供給源からのパージガスは、ガス配管及びガス供給管24を介して処理容器1内に供給される。パージガスとしては、例えばアルゴン(Ar)、窒素(N)等の不活性ガスを利用できる。なお、パージガスがパージガス供給源からガス配管及びガス供給管24を介して処理容器1内に供給される場合を説明したが、これに限定されず、パージガスはガス供給管21~23のいずれから供給されてもよい。
【0027】
処理容器1の側壁部分には、処理容器1内を真空排気するための排気口40が設けられている。排気口40は、ウエハボート5に対応して上下に細長く形成されている。処理容器1の排気口40に対応する部分には、排気口40を覆うように断面U字状に成形された排気口カバー部材41が取り付けられている。排気口カバー部材41は、処理容器1の側壁に沿って上方に延びている。排気口カバー部材41の下部には、排気口40を介して処理容器1を排気するための排気管42が接続されている。排気管42には、処理容器1内の圧力を制御する圧力制御バルブ43及び真空ポンプ等を含む排気装置44が接続されており、排気装置44により排気管42を介して処理容器1内が排気される。
【0028】
また、処理容器1の外周を囲むようにして処理容器1及びその内部の基板Wを加熱する円筒体状の加熱機構50が設けられている。
【0029】
また、基板処理装置100は、制御部60を有する。制御部60は、例えば基板処理装置100の各部の動作の制御、例えば開閉弁21c~23cの開閉による各ガスの供給・停止、流量制御器21b~23bによるガス流量の制御、排気装置44による排気制御を行う。また、制御部60は、例えば高周波電源35による高周波電力のオン・オフ制御、加熱機構50による基板Wの温度の制御を行う。
【0030】
制御部60は、例えばコンピュータ等であってよい。また、基板処理装置100の各部の動作を行うコンピュータのプログラムは、記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、フラッシュメモリ、DVD等であってよい。
【0031】
また、基板処理装置100の他の一例について、図4を用いて説明する。図4は、基板処理装置100の構成の他の一例を示す概略図である。なお、図1に示す基板処理装置100と重複する構成については、重複する説明を省略する。
【0032】
図1に示す基板処理装置100は、ガス供給部20を有する。ガス供給部20は、ガス供給管21,22,24を有する。ガス供給管21にはガス供給源21aからガスが供給され、ガス供給管22にはガス供給源22a及びガス供給源23aからガスが供給される。
【0033】
これに対し、図4に示す基板処理装置100では、ガス供給源21a~23aに対してそれぞれガス供給管31~33が設けられている。具体的には、図4に示す基板処理装置100では、ガス供給部30を有する。ガス供給部30は、ガス供給管(インジェクタ)31,32,33,24を有する。ガス供給管31,32,33は、例えば石英により形成されており、マニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方へ屈曲されて垂直に延びる。ガス供給管31,32,33の垂直部分には、ウエハボート5のウエハ支持範囲に対応する上下方向の長さに亘って、複数のガス孔31g,32g,33gが所定間隔で形成されている。各ガス孔31g,32g,33gは、水平方向にガスを吐出する。ガス供給管24は、例えば石英により形成されており、マニホールド3の側壁を貫通して設けられた短い石英管からなる。
【0034】
ガス供給管31は、その垂直部分(ガス孔31gが形成される垂直部分)が処理容器1内に設けられている。ガス供給管31には、ガス配管を介してガス供給源21aから第1ガスが供給される。ガス配管には、流量制御器21b及び開閉弁21cが設けられている。これにより、ガス供給源21aからの第1ガスは、ガス配管及びガス供給管31を介して処理容器1内にサイドフローで供給される。
【0035】
ガス供給管32は、その垂直部分(ガス孔32gが形成される垂直部分)が処理容器1内に設けられている。ガス供給管32には、ガス配管を介してガス供給源22aから第2ガスが供給される。ガス配管には、流量制御器22b及び開閉弁22cが設けられている。これにより、ガス供給源22aからの第2ガスは、ガス配管及びガス供給管22を介して処理容器1内にサイドフローで供給される。
【0036】
ガス供給管33は、その垂直部分(ガス孔33gが形成される垂直部分)が処理容器1内に設けられている。ガス供給管33には、ガス配管を介してガス供給源23aから希釈ガスが供給される。ガス配管には、流量制御器23b及び開閉弁23cが設けられている。これにより、ガス供給源23aからの希釈ガスは、ガス配管及びガス供給管33を介して処理容器1内にサイドフローで供給される。
【0037】
また、ガス供給管33は、図3に示すガス供給管32と同様に、二重管構造となっており、ガスを加熱することができるように構成されている。
【0038】
図5は、ガスの吐出方向の一例を示す模式図である。図5(a)に示すように、ガス供給管31~33は基板Wの中心に向かってガスを吐出する構成となっていてもよい。また、図5(b)に示すように、ガス供給管31~32は基板Wの中心に向かってガスを吐出するとともに、ガス供給管33は基板Wの外周部に向かってガスを吐出する構成となっていてもよい。
【0039】
<第1実施形態に係る膜形成処理>
次に、基板処理装置100による膜形成処理の一例について説明する。ここでは、基板WにSiO膜を成膜する場合を例に説明する。なお、図1に示す基板処理装置100を用いる場合を例に説明するが、図4に示す基板処理装置100を用いてもよい。
【0040】
図6(a)は、第1実施形態に係る膜形成処理の一例を示すタイムチャートである。第1実施形態に係る膜形成処理は、金属含有触媒ガス(TMAガス)を供給する工程S11、パージする工程S12、シリコン前駆体ガス(TPSOLガス)及び加熱された希釈ガスを供給する工程S13、及び、パージする工程S14を1サイクルとして、所定サイクル繰り返し、基板W上にSiO膜を形成するプロセスである。なお、図6(a)では、1サイクルを括弧付きで示す。また、工程S11~S14において、ガス供給管24からパージガスであるNガスが膜形成プロセス中に常時(連続して)供給されていてもよい。
【0041】
ここで、処理容器1内の基板Wは、加熱機構50によって所定の温度(例えば、100℃~400℃)に加熱されている。
【0042】
金属含有触媒ガスを供給する工程S11は、金属含有触媒ガス(TMAガス)を処理容器1内に供給する工程である。工程S11では、制御部60は、開閉弁22cを開くことにより、ガス供給源22aからガス供給管22を経て金属含有触媒ガスを処理容器1内に供給する。これにより、金属含有触媒ガスが基板Wの表面に吸着され、金属触媒の単一分子層を形成する。ここで、TMAガスの基板表面への吸着は、飽和状態となっている。
【0043】
パージする工程S12は、処理容器1内の余剰の金属含有触媒ガス等をパージする工程である。工程S12では、制御部60は、開閉弁22cを閉じて金属含有触媒ガスの供給を停止する。また、制御部60は、ガス供給管24からパージガスを処理容器1内に供給する(Nパージ)。これにより、処理容器1内の余剰の金属含有触媒ガス等をパージする。
【0044】
シリコン前駆体ガスを供給する工程S13は、シリコン前駆体ガス(TPSOLガス)を処理容器1内に供給する工程である。工程S13では、制御部60は、開閉弁21cを開くことにより、ガス供給源21aからガス供給管21を経てシリコン前駆体ガスを処理容器1内に供給する。加えて、制御部60は、発熱体202に通電してガスを加熱し、開閉弁23cを開くことにより、ガス供給源23aからガス供給管22を経て加熱されたサイドフローの希釈ガス(追加Nパージ)を処理容器1内に供給する。なお、希釈ガスの温度は、基板Wの温度よりも高い温度(例えば、100℃~600℃)に加熱されている。これにより、基板Wの表面の金属触媒と反応して、SiO膜を形成する。なお、SiO膜の成膜は、TPSOLガスの供給に律速する供給律速状態となっている。
【0045】
パージする工程S14は、処理容器1内の余剰のシリコン前駆体ガス等をパージする工程である。工程S14では、制御部60は、開閉弁22cを閉じてシリコン前駆体ガスの供給を停止する。また、制御部60は、開閉弁23cを閉じてサイドフローのパージガスの供給を停止する。また、制御部60は、ガス供給管24からパージガスを処理容器1内に供給する(Nパージ)。これにより、処理容器1内の余剰のシリコン前駆体ガス等をパージする。
【0046】
以上のサイクルを繰り返すことで、基板Wに所望の膜厚のSiO膜を形成する。
【0047】
図6(b)は、第1参考例に係る膜形成処理の一例を示すタイムチャートである。第1参考例に係る膜形成処理は、金属含有触媒ガス(TMAガス)を供給する工程S21、パージする工程S22、シリコン前駆体ガス(TPSOLガス)を供給する工程S23、及び、パージする工程S24を1サイクルとして、所定サイクル繰り返し、基板W上にSiO膜を形成するプロセスである。なお、工程S23では、加熱されたパージガスを処理容器1内に供給しない点で相違する。その他の構成は同様であり、重複する説明を省略する。
【0048】
図7は、膜厚と面内均一性を示すグラフの一例である。図8は、膜厚分布を示す図の一例である。図7において、左側の縦軸である平均膜厚(Thickness)を棒グラフで示し、右側の縦軸である面内均一性(WIW N.U.)を丸印で示す。図8では、膜厚が厚いほど細かい(濃い)ドットのパターンを付し、膜厚が薄いほど粗い(薄い)ドットのパターンを付している。また、(a)はTPSOL供給時にサイドフローのパージガスを供給しない構成(図6(b)参照)を示す。(b)はTPSOL供給時にサイドフローのパージガスを供給する構成(図6(a)参照)を示す。(c)はTPSOL供給時に加熱したサイドフローのパージガスを供給する構成(図6(a)参照)を示す。
【0049】
図7において、(a)と(b)(c)とを対比して示すように、TPSOL供給時にTPSOLを供給するガス供給管21とは別のガス供給管22からサイドフローでNガスを供給することにより、平均膜厚の落ち込みがみられる。
【0050】
一方、図8に示すように、(a)において、膜厚の面内分布は外周部が内周部よりも高い状態(凹状態)となっている。これに対し(b)(c)において、膜厚の面内分布は内周部が外周部よりも高い状態(凸状態)となっている。また、図7及び図8に示すように、(c)では、サイドフローで加熱したパージガスを供給することにより、更に面内均一性が向上している。
【0051】
ここで、TPSOLの膜厚の温度依存について、150℃以下の温度帯では低いGPC(1サイクル当りの成膜量)で略一定であり、200℃前後の温度帯ではGPCが高くなり、250℃以上の温度帯では低いGPCで安定する。また、200℃前後ではTPSOLの供給時間を延ばすと膜厚が増加する供給律速の傾向を有している。
【0052】
例えば、加熱機構50によって加熱される処理容器1内の温度を200℃として、サイドフローで高温(例えば400℃)の希釈ガスを供給することにより、基板Wの外周部においては希釈ガスによってTPSOLが希釈されるとともに、基板Wの外周部における温度がTPSOLのGPCが低い温度領域(例えば250℃以上)となり、成膜レートが抑制される。一方、基板Wの中央部においては、TPSOLのGPCが高い温度領域(例えば200℃前後)となり、SiO膜の成膜レートが外周部よりも高くなる。これにより、膜厚の面内分布を内周部が外周部よりも高い状態(凸状態)となるように制御することができる。
【0053】
このように、第1実施形態に係る膜形成処理は、第1ガス(TPSOLガス)と第2ガス(TMAガス)とを交互に供給して基板Wに膜を形成する処理において、ガス供給管21から処理容器1内に第1ガスを供給する際に、ガス供給管21とは異なるガス供給管22から処理容器1内に基板Wの温度よりも加熱されたパージガスをサイドフローで供給する。これにより、膜厚の面内分布を調整することができる。
【0054】
また、プラズマ処理を用いることなく、膜厚を制御することができるので、基板Wの下地膜等にプラズマによる影響が生じることを防止することができる。
【0055】
また、第2ガス(TMAガス)を供給する際の基板Wの表面の温度よりも、第1ガス(TPSOLガス)を供給する際の基板Wの表面の温度を高くすることができる。ここで、第1ガスが基板Wの表面の触媒と好適に反応する温度帯は、第2ガスが基板Wの表面に好適に吸着する温度帯よりも高い温度帯となっている。第1ガスを供給する際に加熱されたパージガスをサイドフローで供給することにより、基板Wの温度を上昇させ、第1ガスの反応を促進させることができる。
【0056】
また、希釈ガスの温度、流量を制御することにより、基板Wの膜厚の面内分布を制御することができる。
【0057】
また、TMAガスを供給する際にもガス加熱部を動作させて、昇温したTMAガスを処理容器1に供給する構成であってもよい。これにより、基板Wの表面におけるTMAガスの温度を制御する。
【0058】
また、図4に示す基板処理装置100において、ガス供給管31からTMAガスを供給する際に、ガス供給管33から加熱された希釈ガスを供給してもよい。これにより、基板Wの表面におけるTMAガスの温度分布及び濃度分布を制御する。
【0059】
なお、ガス供給管22にガス加熱部(アルミナコア201、発熱体202)を有するものとして説明したが、基板処理装置100の構成はこれに限られるものではない。ガス供給管22にガスを冷却するガス冷却部を有していてもよい。即ち、ガス供給管22から温度調整された希釈ガスを処理容器1に供給する構成であってもよい。
【0060】
例えば、加熱機構50によって加熱される処理容器1内の温度を200℃として、サイドフローで基板Wよりも低温(例えば100℃)の希釈ガスを供給することにより、基板Wの外周部においては希釈ガスによってTPSOLが希釈されるとともに、基板Wの外周部における温度がTPSOLのGPCが低い温度領域(例えば150℃以下)となり、成膜レートが抑制される。一方、基板Wの中央部においては、TPSOLのGPCが高い温度領域(例えば200℃前後)となり、SiO膜の成膜レートが外周部よりも高くなる。これにより、膜厚の面内分布が内周部が外周部よりも高い状態(凸状態)となるように制御することができる。
【0061】
<第2実施形態に係る膜形成処理>
次に、基板処理装置100による膜形成処理の一例について説明する。ここでは、基板WにAlO膜を成膜する場合を例に説明する。なお、図1に示す基板処理装置100を用いる場合を例に説明するが、図4に示す基板処理装置100を用いてもよい。ここでは、ガス供給源21aは第1ガスとして酸化ガス(Oガス)を供給し、ガス供給源22aは第2ガスとして金属含有ガス(TMAガス)を供給し、ガス供給源23aは希釈ガスとして不活性ガス(Nガス)を供給するものとして説明する。
【0062】
図9(a)は、第2実施形態に係る膜形成処理の一例を示すタイムチャートである。第2実施形態に係る膜形成処理は、金属含有ガス(TMAガス)を供給する工程S31、パージする工程S32,S33、酸化ガス(Oガス)を供給する工程S34、及び、パージする工程S35,S36を1サイクルとして、所定サイクル繰り返し、基板W上にAlO膜を形成するプロセスである。なお、図9(a)では、1サイクルを括弧付きで示す。また、工程S31~S36において、ガス供給管24からパージガスであるNガスが膜形成プロセス中に常時(連続して)供給されていてもよい。
【0063】
ここで、処理容器1内の基板Wは、加熱機構50によって所定の温度(例えば、100℃~550℃)に加熱されている。
【0064】
金属含有ガスを供給する工程S31は、金属含有ガス(TMAガス)を処理容器1内に供給する工程である。工程S31では、制御部60は、開閉弁22cを開くことにより、ガス供給源22aからガス供給管22を経て金属含有ガスを処理容器1内に供給する。また、制御部60は、ガス供給管24からパージガスを処理容器1内に供給する(Nパージ)。これにより、金属含有ガスが基板Wの表面に吸着される。
【0065】
パージする工程S32,S33は、処理容器1内の余剰の金属含有ガス等をパージする工程である。工程S32では、制御部60は、開閉弁22cを閉じて金属含有ガスの供給を停止する。また、制御部60は、ガス供給管24からパージガスを処理容器1内に供給する(Nパージ)。また、工程S32では大流量のパージガスを供給し、その後の工程S33では、小流量のパージガスを供給する。これにより、処理容器1内の余剰の金属含有ガス等をパージする。
【0066】
酸化ガスを供給する工程S34は、酸化ガス(Oガス)を処理容器1内に供給する工程である。工程S34では、制御部60は、開閉弁21cを開くことにより、ガス供給源21aからガス供給管21を経て酸化ガスを処理容器1内に供給する。これにより、基板Wの表面の金属含有ガスと反応して、AlO膜を形成する。なお、この際、反応副生成物(HO)も生成される。
【0067】
パージする工程S35,S36は、処理容器1内の余剰の酸化ガス等をパージする工程である。工程S35では、制御部60は、開閉弁22cを閉じて酸化ガスの供給を停止する。また、制御部60は、ガス供給管24からパージガスを処理容器1内に供給する(Nパージ)。加えて、制御部60は、発熱体202に通電してガスを加熱し、開閉弁23cを開くことにより、ガス供給源23aからガス供給管22を経て加熱されたサイドフローの希釈ガス(追加Nパージ)を処理容器1内に供給する。なお、希釈ガスの温度は、基板Wの温度よりも高い温度(例えば、150℃~600℃)に加熱されている。工程S36では、制御部60は、開閉弁23cを閉じて希釈ガスの供給を停止する。また、制御部60は、ガス供給管24からパージガスを処理容器1内に供給する(Nパージ)。また、工程S35では大流量のパージガスを供給し、その後の工程S36では、小流量のパージガスを供給する。これにより、処理容器1内の余剰の酸化ガスや反応副生成物(HO)等をパージする。
【0068】
以上のサイクルを繰り返すことで、基板Wに所望の膜厚のAlO膜を形成する。
【0069】
図9(b)は、第2参考例に係る膜形成処理の一例を示すタイムチャートである。第2参考例に係る膜形成処理は、金属含有ガス(TMAガス)を供給する工程S41、パージする工程S42,S43、酸化ガス(Oガス)を供給する工程S44、及び、パージする工程S45を1サイクルとして、所定サイクル繰り返し、基板W上にAlO膜を形成するプロセスである。なお、工程S45では、加熱されたパージガスを処理容器1内に供給しない点で相違する。その他の構成は同様であり、重複する説明を省略する。
【0070】
図10は、膜厚と面内均一性を示すグラフの一例である。図11は、膜厚分布を示す図の一例である。図10において、左側の縦軸である平均膜厚(Thickness)を棒グラフで示し、右側の縦軸である面内均一性(WIW N.U.)を丸印で示す。図11では、膜厚が厚いほど細かい(濃い)ドットのパターンを付し、膜厚が薄いほど粗い(薄い)ドットのパターンを付している。また、(a)はサイドフローのパージガスを供給しない構成(図9(b)参照)を示す。(b)は加熱したサイドフローのパージガスを供給する構成(図9(a)参照)を示す。
【0071】
図10及び図11に示すように、において、酸化ガスを供給する工程の後のパージ工程においてサイドフローで加熱した希釈ガス(Nガス)を供給することにより、平均膜厚及び膜厚の面内分布を調整することができる。
【0072】
ここでは、加熱した希釈ガスによって、反応副生成物であるHOを加熱し基板Wの表面から除去する。そして次のサイクルのTMAガスを供給する工程において、TMAとHOとが反応することを抑制する。
【0073】
また、TMAガスを供給する前に基板Wの温度を高くすることができる。ここで、TMAガスが基板Wの表面と好適に反応する温度帯は、Oガスが基板Wの表面に好適に反応する温度帯よりも高い温度帯となっている。TMAガスを供給する前に加熱されたパージガスをサイドフローで供給することにより、基板Wの温度を上昇させ、TMAガスの反応を促進させることができる。また、Oガスが熱分解することを抑制することができる。
【0074】
以上、基板処理装置100による本実施形態(第1~2実施形態)の膜形成方法について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【符号の説明】
【0075】
W 基板
100 基板処理装置
1 処理容器
2 天井板
3 マニホールド
4,12 シール部材
5 ウエハボート
6 ロッド
7 保温筒
8 テーブル
9 蓋体
10 回転軸
20,30 ガス供給部
21,22,24,31~34 ガス供給管(インジェクタ)
40 排気口
50 加熱機構
60 制御部
201 アルミナコア
202 発熱体
210 内管
220 外管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11