(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165050
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】熱遮蔽体位置決め治具、熱遮蔽体位置決め方法、および、シリコン単結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20241121BHJP
C30B 15/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C30B29/06 502C
C30B15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080874
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖田 憲治
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EG25
4G077FK07
(57)【要約】
【課題】熱遮蔽体の外周方向の位置決めを適切に行うことができる熱遮蔽体位置決め治具を提供すること。
【解決手段】熱遮蔽体位置決め治具は、チャンバ内で引き上げ中のシリコン単結晶を囲む熱遮蔽体の位置決めを行う熱遮蔽体位置決め治具であって、前記チャンバの設定位置に着脱自在に構成された治具本体と、前記治具本体に対する前記熱遮蔽体の外周方向の位置決めを行う外周方向位置決め部と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内で引き上げ中のシリコン単結晶を囲む熱遮蔽体の位置決めを行う熱遮蔽体位置決め治具であって、
前記チャンバの設定位置に着脱自在に構成された治具本体と、
前記治具本体に対する前記熱遮蔽体の外周方向の位置決めを行う外周方向位置決め部と、を備える、熱遮蔽体位置決め治具。
【請求項2】
請求項1に記載の熱遮蔽体位置決め治具において、
前記熱遮蔽体の上端の一部には、内側に凹む上側凹部が設けられ、
前記外周方向位置決め部は、前記上側凹部に嵌められることにより、前記熱遮蔽体の前記外周方向の位置決めを行う、熱遮蔽体位置決め治具。
【請求項3】
請求項2に記載の熱遮蔽体位置決め治具において、
前記熱遮蔽体は、
前記シリコン単結晶を囲む筒状の熱遮蔽体本体と、
前記熱遮蔽体本体の上端における前記外周方向のN個(Nは2以上の整数)の位置から外側に突出し、N個の吊り下げ治具により下方から支持されるN個の熱遮蔽体側支持部と、を備え、
互いに隣り合う前記熱遮蔽体側支持部の間には、前記吊り下げ治具が鉛直方向に通過可能な前記上側凹部として機能する吊り下げ治具用凹部がそれぞれ形成され、
前記外周方向位置決め部は、前記吊り下げ治具用凹部に嵌められる、熱遮蔽体位置決め治具。
【請求項4】
請求項3に記載の熱遮蔽体位置決め治具において、
前記互いに隣り合う熱遮蔽体側支持部のうち少なくとも一方の外周面に当接することにより、前記治具本体に対する前記熱遮蔽体の水平方向の位置決めを行う水平方向位置決め部を備える、熱遮蔽体位置決め治具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱遮蔽体位置決め治具において、
前記治具本体には、当該治具本体を貫通し、前記チャンバに設けられた治具位置決め用目印を視認するための視認用貫通孔が設けられている、熱遮蔽体位置決め治具。
【請求項6】
請求項1に記載の熱遮蔽体位置決め治具を用いて、前記熱遮蔽体の位置決めを行う熱遮蔽体位置決め方法であって、
前記熱遮蔽体位置決め治具を前記設定位置に取り付け、
前記外周方向位置決め部により前記治具本体に対する前記熱遮蔽体の外周方向の位置決めを行いつつ、前記熱遮蔽体を前記チャンバ内に設置し、
前記熱遮蔽体を前記チャンバ内に設置後、前記熱遮蔽体位置決め治具を前記チャンバから取り外す、熱遮蔽体位置決め方法。
【請求項7】
請求項3に記載の熱遮蔽体位置決め治具を用いて、前記熱遮蔽体の位置決めを行う熱遮蔽体位置決め方法であって、
N個の前記吊り下げ治具用凹部に前記N個の吊り下げ治具をそれぞれ上側から挿入し、前記N個の吊り下げ治具を前記外周方向に回転させることにより、前記N個の吊り下げ治具の吊り下げ支持部を前記N個の熱遮蔽体側支持部の下側に位置させ、
前記N個の吊り下げ治具を上昇させることにより、前記吊り下げ支持部で前記熱遮蔽体を持ち上げ、
前記吊り下げ治具用凹部に前記外周方向位置決め部が嵌められるように前記N個の吊り下げ治具を下降させることにより、前記治具本体に対する前記熱遮蔽体の外周方向の位置決めを行いつつ、前記熱遮蔽体を前記チャンバ内に設置し、
前記熱遮蔽体位置決め治具を前記チャンバから取り外し、
前記N個の吊り下げ治具を前記外周方向に回転させることにより、前記N個の吊り下げ治具の前記吊り下げ支持部を前記N個の吊り下げ治具用凹部の下方に位置させ、
前記N個の吊り下げ治具を上昇させることにより、前記N個の吊り下げ治具を前記熱遮蔽体および前記チャンバから離間させる、熱遮蔽体位置決め方法。
【請求項8】
チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を製造するシリコン単結晶の製造方法であって、
請求項6または請求項7に記載の熱遮蔽体位置決め方法を用いて前記熱遮蔽体の位置決めを行い、
前記シリコン単結晶を製造する、シリコン単結晶の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記熱遮蔽体は、
前記シリコン単結晶を囲む筒状の熱遮蔽体本体と、
前記熱遮蔽体本体の下端から内側にリング状に突出する下側突出部と、
前記下側突出部の内縁の一部から外側に凹む下側切欠き部と、を備え、
前記シリコン単結晶の製造方法は、
前記シリコン単結晶の製造中、前記下側切欠き部を介して露出するシリコン融液を撮像し、
撮像結果に基づいて、前記シリコン単結晶の製造条件を調整する、シリコン単結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱遮蔽体位置決め治具、熱遮蔽体位置決め方法、および、シリコン単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を製造するシリコン単結晶製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のシリコン単結晶製造装置は、熱遮蔽体と、シリコン融液の液面を撮像する撮像部と、を備える。熱遮蔽体の下端部の一部には、内縁から外縁側に凹む切欠き部が設けられている。
シリコン単結晶製造装置は、切欠き部を介して露出するシリコン融液の液面をシリコン単結晶製造装置に付帯されるチャンバの外部に設けられた撮像部で撮像し、撮像結果に基づいて液面の高さ位置を算出する。シリコン単結晶製造装置は、液面の高さ位置の算出結果に基づいて、液面と熱遮蔽体下端との距離が所定値になるように坩堝を上昇させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のシリコン単結晶製造装置では、熱遮蔽体をチャンバ内に設置する際に、熱遮蔽体の切欠き部の位置がずれると、撮像部で液面を撮像できないおそれがある。
【0005】
本発明は、熱遮蔽体の外周方向の位置決めを適切に行うことができる熱遮蔽体位置決め治具、熱遮蔽体位置決め方法、および、シリコン単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱遮蔽体位置決め治具は、チャンバ内で引き上げ中のシリコン単結晶を囲む熱遮蔽体の位置決めを行う熱遮蔽体位置決め治具であって、前記チャンバの設定位置に着脱自在に構成された治具本体と、前記治具本体に対する前記熱遮蔽体の外周方向の位置決めを行う外周方向位置決め部と、を備える。
【0007】
本発明の熱遮蔽体位置決め治具において、前記熱遮蔽体の上端の一部には、内側に凹む上側凹部が設けられ、前記外周方向位置決め部は、前記上側凹部に嵌められることにより、前記熱遮蔽体の前記外周方向の位置決めを行う、ことが好ましい。
【0008】
本発明の熱遮蔽体位置決め治具において、前記熱遮蔽体は、前記シリコン単結晶を囲む筒状の熱遮蔽体本体と、前記熱遮蔽体本体の上端における前記外周方向のN個(Nは2以上の整数)の位置から外側に突出し、N個の吊り下げ治具により下方から支持されるN個の熱遮蔽体側支持部と、を備え、互いに隣り合う前記熱遮蔽体側支持部の間には、前記吊り下げ治具が鉛直方向に通過可能な前記上側凹部として機能する吊り下げ治具用凹部がそれぞれ形成され、前記外周方向位置決め部は、前記吊り下げ治具用凹部に嵌められる、ことが好ましい。
【0009】
本発明の熱遮蔽体位置決め治具において、前記互いに隣り合う熱遮蔽体側支持部のうち少なくとも一方の外周面に当接することにより、前記治具本体に対する前記熱遮蔽体の水平方向の位置決めを行う水平方向位置決め部を備える、ことが好ましい。
【0010】
本発明の熱遮蔽体位置決め治具において、前記治具本体には、当該治具本体を貫通し、前記チャンバに設けられた治具位置決め用目印を視認するための視認用貫通孔が設けられている、ことが好ましい。
【0011】
本発明の熱遮蔽体位置決め方法は、上述の熱遮蔽体位置決め治具を用いて、前記熱遮蔽体の位置決めを行う熱遮蔽体位置決め方法であって、前記熱遮蔽体位置決め治具を前記設定位置に取り付け、前記外周方向位置決め部により前記治具本体に対する前記熱遮蔽体の外周方向の位置決めを行いつつ、前記熱遮蔽体を前記チャンバ内に設置し、前記熱遮蔽体を前記チャンバ内に設置後、前記熱遮蔽体位置決め治具を前記チャンバから取り外す。
【0012】
本発明の熱遮蔽体位置決め方法は、上述の熱遮蔽体位置決め治具を用いて、前記熱遮蔽体の位置決めを行う熱遮蔽体位置決め方法であって、N個の前記吊り下げ治具用凹部に前記N個の吊り下げ治具をそれぞれ上側から挿入し、前記N個の吊り下げ治具を前記外周方向に回転させることにより、前記N個の吊り下げ治具の吊り下げ支持部を前記N個の熱遮蔽体側支持部の下側に位置させ、前記N個の吊り下げ治具を上昇させることにより、前記吊り下げ支持部で前記熱遮蔽体を持ち上げ、前記吊り下げ治具用凹部に前記外周方向位置決め部が嵌められるように前記N個の吊り下げ治具を下降させることにより、前記治具本体に対する前記熱遮蔽体の外周方向の位置決めを行いつつ、前記熱遮蔽体を前記チャンバ内に設置し、前記熱遮蔽体位置決め治具を前記チャンバから取り外し、前記N個の吊り下げ治具を前記外周方向に回転させることにより、前記N個の吊り下げ治具の前記吊り下げ支持部を前記N個の吊り下げ治具用凹部の下方に位置させ、前記N個の吊り下げ治具を上昇させることにより、前記N個の吊り下げ治具を前記熱遮蔽体および前記チャンバから離間させる。
【0013】
本発明のシリコン単結晶の製造方法は、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を製造するシリコン単結晶の製造方法であって、上述の熱遮蔽体位置決め方法を用いて前記熱遮蔽体の位置決めを行い、前記シリコン単結晶を製造する。
【0014】
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記熱遮蔽体は、前記シリコン単結晶を囲む筒状の熱遮蔽体本体と、前記熱遮蔽体本体の下端から内側にリング状に突出する下側突出部と、前記下側突出部の内縁の一部から外側に凹む下側切欠き部と、を備え、前記シリコン単結晶の製造方法は、前記シリコン単結晶の製造中、前記下側切欠き部を介して露出するシリコン融液を撮像し、撮像結果に基づいて、前記シリコン単結晶の製造条件を調整する、ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るシリコン単結晶製造装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る熱遮蔽体の平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る熱遮蔽体位置決め治具の平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る熱遮蔽体位置決め治具の側面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る熱遮蔽体位置決め治具により熱遮蔽体が位置決めされた状態を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る熱遮蔽体位置決め治具により熱遮蔽体が位置決めされた状態を示す縦断面図である。
【
図8】本発明の変形例に係る熱遮蔽体位置決め治具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態]
〔シリコン単結晶製造装置の構成〕
まず、本発明の実施形態におけるシリコン単結晶製造装置の構成について説明する。
図1は、シリコン単結晶製造装置の概略構成を示す模式図である。
図2は、熱遮蔽体の平面図である。
なお、構造の理解の容易化のため、
図1,2に、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を示す。X軸およびY軸は水平方向に対応し、Z軸は鉛直方向に対応する。
【0017】
図1に示すシリコン単結晶製造装置1は、チョクラルスキー法を用いてシリコン単結晶SMを製造する。シリコン単結晶製造装置1は、直胴部の直径が、例えば150mm以上450mm以下のシリコン単結晶SMを製造する。
シリコン単結晶製造装置1は、チャンバ11と、坩堝12と、ヒータ13と、撮像部14と、保温筒15と、支持リング16と、熱遮蔽体17と、引き上げ部18と、坩堝駆動部19と、制御装置20と、を備える。
【0018】
チャンバ11は、メインチャンバ111と、トップチャンバ112と、プルチャンバ113と、を備える。
【0019】
メインチャンバ111は、有底円筒状に形成されている。メインチャンバ111は、坩堝12、ヒータ13、保温筒15、支持リング16および熱遮蔽体17を収容する。
【0020】
トップチャンバ112は、上端の直径が下端の直径よりも小さい略円錐台筒状に形成されている。トップチャンバ112は、その下端がメインチャンバ111の上端に気密に接続されており、メインチャンバ111の上方を覆う。
【0021】
プルチャンバ113は、円筒状に形成されている。プルチャンバ113は、その下端がトップチャンバ112の上端に気密に接続されている。プルチャンバ113は、引き上げられたシリコン単結晶SMを一時収容する。
【0022】
このように、メインチャンバ111とトップチャンバ112とプルチャンバ113とがそれぞれ気密に接続されることにより、チャンバ11内の密閉空間が形成されている。
【0023】
プルチャンバ113の上部には、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガスをチャンバ11内に導入するガス導入口113Aが設けられている。メインチャンバ111の下部には、図示しない真空ポンプの駆動により、当該チャンバ11内のガスを排出するガス排出口111Aが設けられている。トップチャンバ112には、覗き窓112Aが形成されている。
【0024】
坩堝12は、メインチャンバ111内に設置され、シリコン融液Mを収容する。
なお、シリコン単結晶SMの抵抗率に応じて、シリコン融液Mにドーパントを添加しても良い。
【0025】
ヒータ13は、円筒状に形成されている。ヒータ13は、坩堝12の外側に所定間隔を隔てて設置され、坩堝12内のシリコン原料を融解してシリコン融液Mを生成する。
【0026】
撮像部14は、例えばCCDカメラにより構成され、トップチャンバ112の上側において、覗き窓112Aに対向する状態で設置されている。撮像部14は、覗き窓112Aを介して、坩堝12内の少なくともシリコン融液Mの液面を含む領域を撮像できるように設置され、撮像画像に対応する信号を制御装置20へ出力する。
【0027】
保温筒15は、円筒状に形成されている。保温筒15は、ヒータ13の外側に所定間隔を隔てて設置されている。保温筒15は、円筒状の断熱材と、当該断熱材の少なくとも内周面および上面を覆う黒鉛性の内筒部と、を備える。
【0028】
支持リング16は、黒鉛により形成されている。支持リング16は、外側リング部161と、外側リング部161の下側に設けられた内側リング部162と、を備える。外側リング部161の外径は、保温筒15の外径よりも大きい。外側リング部161の内径は、保温筒15の内径よりも小さい。内側リング部162の外径は、保温筒15の内径と同じである。内側リング部162の内径は、外側リング部161の内径よりも小さい。
支持リング16は、内側リング部162が保温筒15に嵌め込まれ、かつ、外側リング部161が保温筒15上に載置された状態で、メインチャンバ111内に設置される。
【0029】
熱遮蔽体17は、黒鉛により形成されている。熱遮蔽体17は、
図1および
図2に示すように、円筒状の熱遮蔽体本体171を備える。熱遮蔽体本体171は、基部172と、上側突出部173と、上側円筒部174と、を備える。
基部172は、その外径が坩堝12の内径よりも小さい円筒状に形成されている。
上側突出部173は、基部172の上端から外側に向けてリング状に突出するように設けられている。上側突出部173の外径は、外側リング部161の内径と同じである。
上側円筒部174は、上側突出部173の外側の部位から上側に向けて円筒状に突出するように設けられている。
【0030】
熱遮蔽体本体171には、下側突出部175が設けられている。下側突出部175は、基部172の下端から内側に向けてリング状に突出するように設けられている。下側突出部175の内径は、シリコン単結晶SMの直胴部の外径より大きい。下側突出部175の内縁の一部には、外側に凹む下側切欠き部175Aが設けられている。
【0031】
熱遮蔽体本体171には、N個(Nは2以上の整数)の熱遮蔽体側支持部176が設けられている。N個の熱遮蔽体側支持部176は、上側円筒部174の上端、つまり熱遮蔽体17の上端における外周方向のN個の位置から外側に向けて円弧板状に突出するように設けられている。
互いに隣り合う熱遮蔽体側支持部176の間には、平面視で熱遮蔽体側支持部176の外縁に対して内側に凹む円弧状の上側凹部としての吊り下げ治具用凹部177が形成されている。つまり、熱遮蔽体17には、熱遮蔽体側支持部176と同じ個数のN個の吊り下げ治具用凹部177が形成されている。各吊り下げ治具用凹部177は、後述する吊り下げ治具9が鉛直方向に通過可能な大きさに形成されている。各吊り下げ治具用凹部177は、一対の切欠き側面部177Aと、切欠き底面部177Bと、をそれぞれ備える。
各切欠き側面部177Aは、平面視で熱遮蔽体17の外側から内側に直線状に延びるように形成されている。切欠き底面部177Bは、平面視で一対の切欠き側面部177Aの前記内側の端部同志を接続するように、かつ、曲率半径が上側円筒部174の外周面の曲率半径と同じ円弧状になるように形成されている。
なお、切欠き底面部177Bは、平面視で曲率半径が上側円筒部174の外周面の曲率半径よりも大きいまたは小さい円弧状に形成されても良いし、直線状に形成されても良い。
【0032】
熱遮蔽体17は、シリコン融液Mから引き上げ中のシリコン単結晶SMを囲むように、上側突出部173が支持リング16の外側リング部161に嵌め込まれ、かつ、内側リング部162に載置された状態で、メインチャンバ111内に設置される。熱遮蔽体17は、撮像部14の光軸14Aが下側切欠き部175A内に位置するように、外周方向の位置決めがなされる。
熱遮蔽体17は、ヒータ13からシリコン単結晶SMへの放射熱を遮断する。
【0033】
熱遮蔽体17は、必要に応じて交換される。熱遮蔽体17の搬送には、図示しない搬送装置が用いられる。搬送装置は、
図2に示すN個の吊り下げ治具9と、各吊り下げ治具9を同時に移動させる図示しない移動機構と、を備える。各吊り下げ治具9は、鉛直方向に延びる吊り下げ本体91と、吊り下げ本体91の下端からN個の吊り下げ治具9により形成される仮想円の中心に向けて突出する吊り下げ支持部92と、をそれぞれ備える。移動機構は、各吊り下げ治具9を鉛直方向または水平方向へ移動させる。移動機構は、各吊り下げ治具9を前記仮想円の外周方向に回転させる。
【0034】
搬送装置を用いて熱遮蔽体17を搬送する際には、移動機構は、
図2に実線で示すように、各吊り下げ治具用凹部177に各吊り下げ治具9をそれぞれ上側から挿入し、各吊り下げ治具9を熱遮蔽体17の外周方向に回転させることにより、
図2に二点鎖線で示すように、各吊り下げ支持部92を各熱遮蔽体側支持部176の下側にそれぞれ位置させる。この状態から、移動機構は、各吊り下げ治具9を上昇させ、吊り下げ支持部92と熱遮蔽体側支持部176とを当接させた状態で熱遮蔽体17を持ち上げる。
各吊り下げ治具9を熱遮蔽体17から取り外す際、移動機構は、各吊り下げ治具9を熱遮蔽体17の外周方向に回転させることにより、
図2に実線で示すように、各吊り下げ支持部92を各吊り下げ治具用凹部177から露出させた後、各吊り下げ治具9を上昇させる。
このような熱遮蔽体17の搬送を安定した状態で行う観点から、熱遮蔽体側支持部176は、熱遮蔽体17の外周方向に等間隔で、かつ、3個以上設けられることが好ましい。
本実施形態では、熱遮蔽体17に、3個の熱遮蔽体側支持部176が熱遮蔽体17の外周方向に等間隔で設けられた構成を例示するが、熱遮蔽体17に、2個または4個以上の熱遮蔽体側支持部176が設けられても良いし、各熱遮蔽体側支持部176が熱遮蔽体17の外周方向に等間隔で設けられなくても良い。
また、搬送装置の移動機構を、各吊り下げ治具9の吊り下げ支持部92を互いに接近または離間させることができるように構成しても良い。この場合、各吊り下げ支持部92の高さ位置が各熱遮蔽体側支持部176よりも低くなるように各吊り下げ治具9を下降させた後、各吊り下げ支持部92を互いに接近させて各熱遮蔽体側支持部176の下側にそれぞれ位置させる。そして、各吊り下げ治具9を上昇させることにより、熱遮蔽体17を持ち上げることができる。なお、各吊り下げ支持部92を互いに接近または離間させる構成としては、各吊り下げ治具9全体を互いに接近または離間させる構成を適用しても良いし、水平方向に平行な回転軸を中心に各吊り下げ治具9を回動させる構成を適用しても良い。
【0035】
図1に示すように、引き上げ部18は、一端に種結晶が取り付けられるケーブル181と、このケーブル181を昇降および回転させる引き上げ駆動部182と、を備える。
【0036】
坩堝駆動部19は、坩堝12を下方から支持する支持軸191を備え、坩堝12を所定の速度で回転および昇降させる。
【0037】
以上の構成を有するシリコン単結晶製造装置1は、ケーブル181と、当該ケーブル181により引き上げられるシリコン単結晶SMの中心軸と、チャンバ11の中心軸とが一致するように構成されている。
【0038】
制御装置20は、ヒータ13、引き上げ駆動部182、坩堝駆動部19を制御して、シリコン単結晶SMを製造する。
【0039】
〔熱遮蔽体位置決め治具の構成〕
次に、熱遮蔽体位置決め治具の構成について説明する。
図3は、熱遮蔽体位置決め治具の平面図である。
図4は、
図3のIV-IV線に沿う縦断面図である。
図5は、熱遮蔽体位置決め治具の側面図である。
【0040】
図3~
図5に示す熱遮蔽体位置決め治具3は、シリコン単結晶製造装置1のチャンバ11内における熱遮蔽体17の外周方向の位置決めに用いられる。熱遮蔽体位置決め治具3は、治具本体31と、腕部32と、外周方向位置決め部33と、水平方向位置決め部34と、を備える。
【0041】
治具本体31は、チャンバ11を構成するメインチャンバ111の外周方向の設定位置に着脱自在に構成されている。設定位置とは、熱遮蔽体位置決め治具3を用いて熱遮蔽体17の外周方向の位置決めを行った際に、
図1および
図2に示すように、下側切欠き部175A内に撮像部14の光軸14Aを位置させることができる熱遮蔽体位置決め治具3の取り付け位置である。
なお、以下において、熱遮蔽体位置決め治具3がメインチャンバ111に取り付けられた場合の方向を基準にして、熱遮蔽体位置決め治具3の各構成の位置関係を説明する場合がある。
治具本体31は、メインチャンバ111のチャンバ内周面111Cに対向する内側対向面部311と、メインチャンバ111のチャンバ外周面111Bに対向する外側対向面部312と、内側対向面部311の上端部と外側対向面部312の上端部とを接続し、メインチャンバ111のチャンバ上面111Dに対向する上側対向面部313と、を備える。
【0042】
内側対向面部311は、円弧板状に形成されている。内側対向面部311の外側の円弧面311Aは、チャンバ内周面111Cの曲率半径と同じ曲率半径に形成され、チャンバ内周面111Cに面接触するように構成されている。
【0043】
外側対向面部312は、円弧板状に形成されている。外側対向面部312の円弧方向の長さは、内側対向面部311の円弧方向の長さよりも長い。外側対向面部312の内側の円弧面312Aは、チャンバ外周面111Bの曲率半径よりも大きい曲率半径に形成されている。外側対向面部312の鉛直方向の長さは、内側対向面部311の鉛直方向の長さよりも短い。
外側対向面部312における円弧方向の両端側には、当該外側対向面部312の厚さ方向に貫通する一対の雌ねじ部312Bが形成されている。各雌ねじ部312Bには、固定用ねじ35の雄ねじ部351が螺合される。固定用ねじ35の雄ねじ部351の先端がメインチャンバ111のチャンバ外周面111Bに当接した後、さらに固定用ねじ35を締めて内側対向面部311の外側の円弧面311Aをチャンバ内周面111Cに押し付けることにより、熱遮蔽体位置決め治具3がメインチャンバ111に固定される。
外側対向面部312における円弧方向中央には、外側の円弧面312Cから内側の円弧面312Aに向けて凹む上側凹部312Dが形成されている。上側凹部312Dの底部における上側対向面部313よりも下側の部位には、当該底部を貫通する視認用貫通孔312Eが形成されている。視認用貫通孔312Eは、チャンバ外周面111Bに設けられた治具位置決め用目印111Eを外側の円弧面312C側から視認できるように構成されている。治具位置決め用目印111Eは、当該治具位置決め用目印111Eが視認用貫通孔312E内の所定位置に位置するように熱遮蔽体位置決め治具3が取り付けられたときに、熱遮蔽体位置決め治具3が設定位置に位置するように設けられている。
【0044】
本実施形態では、視認用貫通孔312Eを介して治具位置決め用目印111Eを視認できるように、視認用貫通孔312Eが上下方向に延びるスリット状に形成され、治具位置決め用目印111Eが上下方向に延びかつ幅が視認用貫通孔312Eの幅と同じまたは当該幅よりも小さい幅の直線状に形成されている場合を例示する。しかし、視認用貫通孔312Eを介して治具位置決め用目印111Eを視認できれば、視認用貫通孔312Eおよび治具位置決め用目印111Eの形状は、本実施形態の形状に限られない。
また、治具位置決め用目印111Eをチャンバ外周面111Bに設ける方法は、特に限定されないが、治具位置決め用目印111Eをペンで描く方法、または、治具位置決め用目印111Eが表示されたシールを貼る方法など、チャンバ外周面111Bに対する加工を必要としない方法が好ましい。
【0045】
上側対向面部313は、内側対向面部311の上端部と外側対向面部312の上端部とを接続する板状に形成されている。上側対向面部313の下面313Aは、チャンバ上面111Dと同様に水平面に対して平行になるように形成され、チャンバ上面111Dに面接触するように構成されている。
【0046】
腕部32は、内側対向面部311の内側の円弧面311Bから板状に水平方向に延びるように設けられている。
【0047】
外周方向位置決め部33は、腕部32の延出方向の先端側の一部分により構成されている。外周方向位置決め部33における平面視で腕部32の延出方向に直交する方向の両側面は、位置決め面331を構成する。
外周方向位置決め部33は、吊り下げ治具用凹部177に嵌められて、一対の位置決め面331が吊り下げ治具用凹部177の一対の切欠き側面部177Aにそれぞれ面接触することにより、熱遮蔽体17の外周方向の位置決めを行う。
なお、一対の位置決め面331に、腕部32の延出方向に並ぶ複数の突起、または、延出方向に所定長さを有する1つの突起をそれぞれ設け、当該突起が一対の切欠き側面部177Aにそれぞれ接触することにより、熱遮蔽体17の外周方向の位置決めを行うようにしても良い。また、一方の位置決め面331と切欠き側面部177Aが面接触したときに、他方の位置決め面331と切欠き側面部177Aが面接触しなくても良いが、この場合、外周方向の位置決めと言う観点から、他方の位置決め面331と切欠き側面部177Aの隙間は、0.5mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0048】
水平方向位置決め部34は、腕部32の延出方向の先端面、つまり外周方向位置決め部33を構成する部分の先端面により構成されている。水平方向位置決め部34は、平面視で曲率半径が吊り下げ治具用凹部177の切欠き底面部177Bの曲率半径と同じ円弧状になるように形成されている。
水平方向位置決め部34は、外周方向位置決め部33が吊り下げ治具用凹部177に嵌められたときに、切欠き底面部177Bに面接触することにより、熱遮蔽体17の水平方向の位置決めを行う。
なお、水平方向位置決め部34に、平面視で円弧方向に並ぶ複数の突起、または、円弧方向に所定長さを有する1つの突起をそれぞれ設け、当該突起が切欠き底面部177Bに接触することにより、熱遮蔽体17の水平方向の位置決めを行うようにしても良い。
【0049】
〔熱遮蔽体位置決め方法〕
次に、熱遮蔽体位置決め治具3を用いて熱遮蔽体17の外周方向および水平方向の位置決めを行う熱遮蔽体位置決め方法について説明する。
図6は、熱遮蔽体位置決め治具により熱遮蔽体が位置決めされた状態を示す平面図である。
図7は、熱遮蔽体位置決め治具により熱遮蔽体が位置決めされた状態を示す縦断面図である。
なお、
図6および
図7では、熱遮蔽体位置決め方法の説明に必要なメインチャンバ111、熱遮蔽体17および熱遮蔽体位置決め治具3を図示し、他の構成を図示していない。
【0050】
作業者は、チャンバ11内に熱遮蔽体17を設置するに際し、熱遮蔽体位置決め治具3を用いて熱遮蔽体17の外周方向および水平方向の位置決めを行う。
まず、メインチャンバ111からトップチャンバ112およびプルチャンバ113が取り外された状態において、作業者は、熱遮蔽体位置決め治具3をメインチャンバ111の設定位置に取り付ける。作業者は、固定用ねじ35が緩められた熱遮蔽体位置決め治具3をメインチャンバ111のチャンバ上面111Dに載置して、治具位置決め用目印111Eが視認用貫通孔312E内の所定位置に位置するように、メインチャンバ111の外周方向における熱遮蔽体位置決め治具3の載置位置を調整する。
この載置位置の調整後、作業者は、固定用ねじ35を締めて、熱遮蔽体位置決め治具3をメインチャンバ111に固定する。
【0051】
作業者は、搬送装置を操作して、メインチャンバ111内に熱遮蔽体17を設置する。
搬送装置の移動機構は、作業者の操作に基づいて、メインチャンバ111の外側に置かれた熱遮蔽体17の各吊り下げ治具用凹部177に、各吊り下げ治具9をそれぞれ上側から挿入する。移動機構は、上述したように、各吊り下げ支持部92を回転させて各熱遮蔽体側支持部176の下側にそれぞれ位置させ、各吊り下げ治具9を上昇させることにより、熱遮蔽体17を持ち上げる。
移動機構は、熱遮蔽体位置決め治具3が取り付けられたメインチャンバ111の上方まで熱遮蔽体17を移動させる。移動機構は、
図6および
図7に示すように、各位置決め面331が各切欠き側面部177Aに面接触し、かつ、水平方向位置決め部34が切欠き底面部177Bに面接触する状態で、外周方向位置決め部33が吊り下げ治具用凹部177に嵌められるように、熱遮蔽体17を支持リング16に載置する。このような各位置決め面331と各切欠き側面部177Aの面接触により、熱遮蔽体17の外周方向の位置決めが行われる。水平方向位置決め部34と切欠き底面部177Bの面接触により、熱遮蔽体17の水平方向の位置決めが行われる。
外周方向および水平方向の位置決めが行われた状態で熱遮蔽体17が支持リング16に載置されると、撮像部14の光軸14Aが下側切欠き部175A内に位置する。
【0052】
移動機構は、上述したように、各吊り下げ治具9を回転させて、各吊り下げ治具用凹部177の下方に位置させる。移動機構は、吊り下げ治具9を上昇させて熱遮蔽体17およびメインチャンバ111から離間させた後、メインチャンバ111の上方から退避させる。
【0053】
なお、作業者は、メインチャンバ111内に熱遮蔽体17を設置した後、
図7に示すように、外周方向位置決め部33の上面と熱遮蔽体17の上端面の高さ位置の差Hに基づいて、適切な熱遮蔽体17が適切な状態で設置されたか否かを判定しても良い。
例えば、高さ位置の差Hと基準値との差(以下、「判定対象値」と言う場合がある)が許容値よりも小さい場合、作業者は、適切な熱遮蔽体17が適切な状態で設置されたと判定しても良い。
高さ位置の差Hが基準値よりも大きく、かつ、判定対象値が許容値よりも大きい場合、つまり、熱遮蔽体17の上端面の高さ位置が適切な位置よりも低い場合、作業者は、例えば摩耗により上側突出部173または上側円筒部174が低くなった、あるいは、熱遮蔽体17の設置に必要な部品が足りないと判定しても良い。
高さ位置の差Hが基準値よりも小さく、かつ、判定対象値が許容値よりも大きい場合、つまり、熱遮蔽体17の上端面の高さ位置が適切な位置よりも高い場合、作業者は、シリコン単結晶SM製造中のSiOxの蒸着により上側突出部173または上側円筒部174が高くなった、あるいは、熱遮蔽体17の設置に不要な部品が存在していると判定しても良い。
【0054】
〔シリコン単結晶の製造方法〕
次に、シリコン単結晶SMの製造方法について説明する。
シリコン単結晶SMの製造方法は、上述の熱遮蔽体位置決め方法を用いて、熱遮蔽体17の外周方向および水平方向の位置決めを行いつつ熱遮蔽体17をメインチャンバ111内に設置する熱遮蔽体位置決め工程と、シリコン単結晶製造装置1を用いてシリコン単結晶SMを製造する製造工程と、を備える。
【0055】
製造工程において、シリコン単結晶製造装置1の制御装置20は、周知の方法により、チャンバ11内でシリコン単結晶SMを製造する。この製造の際、制御装置20は、撮像部14による撮像画像に基づいて、シリコン単結晶SMの製造条件を調整する。シリコン単結晶SMの製造条件の調整方法としては、以下の第1の調整方法または第2の調整方法を例示できる。
【0056】
第1の調整方法において、制御装置20は、撮像画像に基づいて、例えば特許文献1に記載の方法により、シリコン融液Mの液面の高さ位置を算出する。制御装置20は、坩堝駆動部19を制御して、シリコン融液Mの液面から熱遮蔽体17の下端までの距離が所定値になるように、坩堝12を上昇させる。
第2の調整方法において、制御装置20は、撮像画像に基づいて、シリコン融液Mとシリコン単結晶SMの境界部に形成されたメニスカスを検出する。メニスカスは、撮像画像において、高輝度帯(以下、「フュージョンリング」と言う場合がある)として顕在化する。制御装置20は、フュージョンリングに基づいて、シリコン単結晶SMの直径を算出し、算出された直径が所定値になるように、シリコン単結晶SMの引き上げ速度とシリコン融液Mの温度のうち少なくとも一方を調整する。
【0057】
〔実施形態の効果〕
熱遮蔽体位置決め治具3は、メインチャンバ111の設定位置に着脱自在に構成された治具本体31と、治具本体31に対する熱遮蔽体17の外周方向の位置決めを行う外周方向位置決め部33と、を備える。
熱遮蔽体17をメインチャンバ111内に設置する際に、メインチャンバ111の設定位置に取り付けられた熱遮蔽体位置決め治具3を用いることにより、熱遮蔽体17の外周方向の位置を、メインチャンバ111の設定位置に対する所定の位置にすることができる。
したがって、熱遮蔽体17の外周方向の位置決めを適切に行える熱遮蔽体位置決め治具3を提供できる。
また、熱遮蔽体17が下側切欠き部175Aを有する場合、下側切欠き部175A内に撮像部14の光軸14Aが位置するように、熱遮蔽体17の外周方向の位置決めを行える。したがって、撮像部14による撮像画像に基づいて、シリコン単結晶SMの製造条件を適切に調整できる。
【0058】
外周方向位置決め部33は、熱遮蔽体17の吊り下げ治具用凹部177に嵌められることにより、熱遮蔽体17の外周方向の位置決めを行うように構成されている。
このため、外周方向位置決め部33を吊り下げ治具用凹部177に嵌めるだけの簡単な方法で、熱遮蔽体17の外周方向の位置決めを適切に行える。
特に、外周方向位置決め部33を吊り下げ治具用凹部177に嵌めるように熱遮蔽体17を下降させることにより、熱遮蔽体17の外周方向の位置決めを行いつつ、熱遮蔽体17をメインチャンバ111内に設置することができる。このため、熱遮蔽体17の外周方向の位置を調整するために、黒鉛製の支持リング16上で熱遮蔽体17を回転させる必要がなくなり、当該回転時に発生する黒鉛の塵が坩堝12内に付着することを防止できる。したがって、塵に起因する転位または双晶欠陥を発生させることなく、シリコン単結晶SMを製造できる。
また、吊り下げ治具9の吊り下げ支持部92を熱遮蔽体17の熱遮蔽体側支持部176の下側へ移動させるための吊り下げ治具用凹部177に、外周方向位置決め部33を嵌めるようにしているため、外周方向位置決め部33が嵌る機能のみを有する凹部を熱遮蔽体17に設ける必要がない。
【0059】
熱遮蔽体位置決め治具3は、熱遮蔽体17の水平方向の位置決めを行う水平方向位置決め部34を備える。
このため、熱遮蔽体17の外周方向および水平方向の位置決めを行える利便性が高い熱遮蔽体位置決め治具3を提供できる。
【0060】
熱遮蔽体位置決め治具3には、治具位置決め用目印111Eを視認するための視認用貫通孔312Eが形成されている。
このため、治具位置決め用目印111Eが視認用貫通孔312E内の所定位置に位置するように熱遮蔽体位置決め治具3の載置位置を調整するだけの簡単な方法で、熱遮蔽体位置決め治具3を設定位置に取り付けることができる。
【0061】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の種々の改良並びに設計の変更などがあっても本発明に含まれる。
【0062】
例えば、熱遮蔽体17の外周方向の位置決めに、
図8に示す熱遮蔽体位置決め治具4を用いても良い。
熱遮蔽体位置決め治具4は、腕部32に一対の腕突出部41が設けられていること以外は、熱遮蔽体位置決め治具3と同じ構成を有する。各腕突出部41は、腕部32おける延出方向に直交する方向の両側面から、腕部32が嵌る吊り下げ治具用凹部177の両側に位置する熱遮蔽体側支持部176に対向するように、外側に延びている。各腕突出部41における各熱遮蔽体側支持部176に対向する面は、外側水平方向位置決め部411を構成し、平面視で曲率半径が熱遮蔽体側支持部176の外周面の曲率半径と同じ円弧状になるように形成されている。
各外側水平方向位置決め部411は、外周方向位置決め部33が吊り下げ治具用凹部177に嵌められて、水平方向位置決め部34が切欠き底面部177Bに面接触したときに、各熱遮蔽体側支持部176の外周面に面接触することにより、熱遮蔽体17の水平方向の位置決めを行う。
このように構成にすれば、熱遮蔽体位置決め治具3と比べて広い範囲の面接触により熱遮蔽体17の水平方向の位置決めを行うことができ、熱遮蔽体17の水平方向の位置決め精度が向上する。
なお、外周方向位置決め部33が吊り下げ治具用凹部177に嵌められて、かつ、各外側水平方向位置決め部411が各熱遮蔽体側支持部176に面接触したときに、熱遮蔽体位置決め治具3において水平方向位置決め部34として機能していた腕部32の延出方向の先端面が、切欠き底面部177Bに面接触しないように熱遮蔽体位置決め治具4を構成しても良い。また、腕部32に、腕突出部41を1つだけ設けても良い。
【0063】
本発明の外周方向位置決め部として、熱遮蔽体17の吊り下げ治具用凹部177に嵌まる外周方向位置決め部33を例示したが、例えば、腕部32をその先端が熱遮蔽体側支持部176の外周面に当接または接近するように形成し、腕部32の上面に設けられた目印と熱遮蔽体側支持部176の上面に設けられた目印とが所定の位置関係になるように、熱遮蔽体17の外周方向の位置決めを行うように、遮蔽体位置決め治具を構成しても良い。この場合、目印を備える腕部32が本発明の外周方向位置決め部に該当する。
【0064】
外周方向位置決め部33を吊り下げ治具用凹部177に嵌める構成を例示したが、熱遮蔽体17に外周方向位置決め部33が嵌る機能のみを有する凹部を設けても良い。
また、熱遮蔽体17に外側に突出する突出部を設けるとともに、遮蔽体位置決め治具に熱遮蔽体17の突出部が嵌ることにより熱遮蔽体17の外周方向の位置決めを行う凹部を設けても良い。
【0065】
熱遮蔽体位置決め治具3において、水平方向位置決め部34として機能していた腕部32の延出方向の先端面が、切欠き底面部177Bに面接触しないように熱遮蔽体位置決め治具4を構成しても良い。
【0066】
熱遮蔽体位置決め治具3の外側対向面部312に視認用貫通孔312Eを設けずに、内側対向面部311に視認用貫通孔を設けるとともに、メインチャンバ111のチャンバ内周面111Cに治具位置決め用目印を設けても良いし、上側対向面部313に視認用貫通孔を設けるとともに、メインチャンバ111のチャンバ上面111Dに治具位置決め用目印を設けても良い。
また、熱遮蔽体位置決め治具3に視認用貫通孔312Eを設けずに、例えば治具本体31におけるメインチャンバ111に対向する部位に突部を設けるとともに、メインチャンバ111における突部に対向する部分に凹部を設け、突部と凹部を係合させることにより、治具本体31を設定位置に取り付けられるようにしても良い。
【0067】
本発明の熱遮蔽体位置決め治具により位置決めされる熱遮蔽体として、下側突出部175に下側切欠き部175Aが設けられた熱遮蔽体17を例示したが、下側突出部175に下側切欠き部175Aが設けられていない熱遮蔽体を適用しても良い。例えば、下側切欠き部175Aが設けられていない熱遮蔽体が設置されるシリコン単結晶製造装置において、保温筒15は、当該保温筒15内部の形状の変化または部分的な減肉などにより、円周方向で均一な保温効果を発揮できない場合があり得る。この場合、本発明の熱遮蔽体位置決め治具を用いて、メインチャンバ111および保温筒15に対する熱遮蔽体の外周方向の位置を同じ位置に位置決めすれば、熱遮蔽体の交換前後でチャンバ11内の熱環境をほぼ同じにすることができ、シリコン単結晶SMの引き上げ制御の安定性を向上させることができる。
【0068】
例えば、特開2020-083717号公報に記載されているように、シリコン融液に水平磁場を印加しながらシリコン単結晶を製造するシリコン単結晶製造装置において、下側切欠き部を有する熱遮蔽体を用いて、ケーブルを含みかつ水平磁場の印加方向と平行な基準平面に対して、非面対称な不活性ガスの流動分布を形成することにより、シリコン単結晶ごとの酸素濃度のばらつきを抑制することがある。このようなシリコン単結晶製造装置における熱遮蔽体の外周方向の位置決めに、本発明の熱遮蔽体位置決め治具を用いても良い。
【符号の説明】
【0069】
11…チャンバ、111…メインチャンバ、111E…治具位置決め用目印、14…撮像部、17…熱遮蔽体、171…熱遮蔽体本体、172…基部、175…下側突出部、175A…下側切欠き部、176…熱遮蔽体側支持部、177…吊り下げ治具用凹部(上側凹部)、3…熱遮蔽体位置決め治具、31…治具本体、312E…視認用貫通孔、33…外周方向位置決め部、34…水平方向位置決め部、4…熱遮蔽体位置決め治具、411…外側水平方向位置決め部(水平方向位置決め部)、9…吊り下げ治具、M…シリコン融液、SM…シリコン単結晶。