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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165133
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241121BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01L21/304 648A
H01L21/68 N
H01L21/304 644A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081032
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】森山 了輔
(72)【発明者】
【氏名】三牧 勧大
【テーマコード(参考)】
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA37
5F131CA12
5F131EA06
5F131EA24
5F131EB31
5F157AA15
5F157AB03
5F157AB14
5F157AB20
5F157AB33
5F157AB48
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157AC04
5F157AC26
5F157BA02
5F157BB37
5F157BB45
5F157DB37
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】プレートに切り欠きを設けたことに起因するパーティクルの発生を効率良く抑制する。
【解決手段】一実施形態に係る基板処理装置は、基板の下方に位置するプレートと、プレートの周縁部に設けられた複数の基板把持部材とを有し、プレートが周縁部に複数の切り欠き部を有している基板保持部と、基板保持部を回転させる回転駆動部と、基板の周縁部を下方から支持して昇降可能な複数のリフトピンと、プレートに水平方向にスライド可能に設けられ、各々が、プレートの切り欠き部を閉鎖する閉鎖位置と、リフトピンが前記切り欠き部を通って昇降することを可能とする開放位置との間で移動可能な複数の摺動部材と、プレートの下方に昇降可能に設けられるとともに、摺動部材の各々と係合可能な複数の操作部材であって、前記摺動部材と係合した状態で昇降することにより前記摺動部材を水平方向にスライドさせる、複数の操作部材とを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平姿勢で保持する基板保持部であって、前記基板保持部が前記基板を保持しているときに前記基板の下方に位置するプレートと、前記プレートの周縁部に設けられるともに前記基板を保持する複数の基板把持部材とを有し、前記プレートが周縁部に複数の切り欠き部を有している、前記基板保持部と、
前記基板保持部を鉛直軸線周りに回転させる回転駆動部と、
前記基板の周縁部を下方から支持することができるように構成されるとともに前記プレートの前記切り欠き部を通って昇降可能な複数のリフトピンと、
前記基板保持部の前記プレートに水平方向にスライド可能に設けられた複数の摺動部材であって、各々が、前記プレートの切り欠き部の各々を少なくとも部分的に閉鎖する閉鎖位置と、前記プレートの切り欠き部の各々を開放してリフトピンが前記切り欠き部を通って昇降することを可能とする開放位置との間で移動可能な、前記複数の摺動部材と、
前記基板保持部の前記プレートの下方に昇降可能に設けられるとともに、前記摺動部材の各々と係合可能な複数の操作部材であって、前記摺動部材と係合した状態で昇降することにより前記摺動部材を水平方向にスライドさせる、前記複数の操作部材と、
を備えた基板処理装置。
【請求項2】
前記摺動部材の各々は、当該摺動部材を水平方向に案内する案内構造を介して前記プレートに取り付けられ、かつ、水平面に対して傾斜した被操作傾斜面を有し、前記被操作傾斜面に前記操作部材を接触させた状態で前記操作部材を前記被操作傾斜面に対して滑らせながら前記操作部材を昇降させることにより、前記閉鎖部材が水平方向に移動する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記摺動部材は前記閉鎖位置に向けてばね付勢されている、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記プレートの下方に設けられ、前記摺動部材用の複数の操作部材を担持する昇降体と、前記昇降体を上昇位置と下降位置との間で昇降させる昇降駆動部と、をさらに備え、前記昇降体の昇降に伴い摺動部材用の前記複数の操作部材が一緒に昇降する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記昇降体の下方に設けられ、少なくとも前記リフトピンを昇降させるためのアクチュエータおよび前記回転駆動部が設けられた空間を、前記昇降体が設けられた空間から隔離する区画部材をさらに備えた、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記区画部材に、前記リフトピンの各々が通過可能な貫通穴と、前記貫通穴の各々を閉鎖する閉鎖位置と前記貫通穴を開放する開放位置との間で移動可能な蓋部材とが設けられ、
前記リフトピンは、下降位置にあるときに、前記閉鎖位置にある前記蓋部材の下方に位置し、前記リフトピンが前記下降位置から上昇するときに前記蓋部材が開かれる、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記蓋部材は、前記昇降体に担持された前記蓋部材用の操作部材により操作されることにより前記貫通穴の各々を閉鎖する閉鎖位置と前記貫通穴を開放する開放位置との間で移動する、請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記蓋部材は、外周面に溝が形成されるとともに鉛直方向に延びる回転軸を中心として回転可能な円筒状の基部と、前記基部に取り付けられた蓋本体とを有しており、
前記蓋部材用の操作部材は、前記円筒状の基部の溝に係合し、
前記基部の溝と前記蓋部材用の操作部材は円筒カム機構を形成し、前記昇降体を下降位置に向けて移動させることにより前記基部が回転して前記蓋本体が前記貫通穴を閉塞し、前記昇降体を上昇位置に向けて移動させることにより前記基部が回転して前記蓋本体が前記貫通穴を開放する、請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基板保持部の基板把持部材は、前記プレートの周縁部に旋回可能に取り付けられて、前記基板を把持する把持位置と、前記基板を解放する解放位置との間で移動可能であり、
前記把持部材は、前記基板の周縁部を把持する把持部と、前記把持部を動かすための被操作部とを有しており、
前記昇降体は、前記把持部材の被操作部を押し上げることができる被操作部用の操作部材を有し、前記被操作部用の操作部材は、前記昇降体に担持された部材若しくは前記昇降体自体からなり、
前記昇降体を下降位置に位置させることにより前記基板把持部材が前記把持位置に位置し、前記昇降体を上昇位置に位置させることにより前記基板把持部材が前記解放位置に位置する、請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記基板保持部により保持された前記基板の下面と、前記基板保持部の前記プレートの上面との間の空間にガスを供給するガス供給部をさらに備え、前記空間に供給されたガスは、前記プレートの上面と前記基板の下面との間の空間を通って流れた後に前記プレートの周縁部と前記基板の周縁部との間の隙間を通って前記空間から流出する、請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記プレートの上面の周縁部は、前記プレートの周縁に近づくに従って高くなる周縁傾斜面を有し、前記プレートの前記周縁傾斜面は、前記空間を通って水平方向に流れるガスを前記基板の下面に向けて転向し、
前記各摺動部材の上面の端部に端部傾斜面が設けられ、前記端部傾斜面は、前記摺動部材が前記閉鎖位置にあるときに、前記プレートの円周方向に見て、前記摺動部材の前記端部傾斜面が前記プレートの周縁傾斜面と連続するように設けられている、
請求項10に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、半導体ウエハ等の基板の裏面(デバイスが形成されない面)を上向きにして当該裏面に対してブラシを用いて研磨または洗浄を行うブラシ処理が行われる。このようなブラシ処理を行う処理ユニットの一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1の処理ユニットは、基板を水平姿勢で保持して鉛直軸線周りに回転させるスピンチャックを備えている。処理中に基板の裏面に供給された液が基板の表面(デバイスが形成される面)に回り込むことを防止するため、スピンチャックは基板の下方に位置する基板よりやや大きな円盤状部材(プレート)を有し、基板と円盤状部材との間に窒素ガスを供給している。基板搬送機構のアームとスピンチャックとの間での基板の受け渡しが行われるときには、3本のリフトピン(基板昇降部材)が基板の周縁部を下方から支持した状態で基板を持ち上げる。リフトピンが上昇できるようにするために、円盤状部材の周縁部には切り欠きが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-183310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、プレートに切り欠きを設けたことに起因するパーティクルの発生を効率良く抑制することができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態によれば、基板を水平姿勢で保持する基板保持部であって、前記基板保持部が前記基板を保持しているときに前記基板の下方に位置するプレートと、前記プレートの周縁部に設けられるともに前記基板を保持する複数の基板把持部材とを有し、前記プレートが周縁部に複数の切り欠き部を有している、前記基板保持部と、前記基板保持部を鉛直軸線周りに回転させる回転駆動部と、前記基板の周縁部を下方から支持することができるように構成されるとともに前記プレートの前記切り欠き部を通って昇降可能な複数のリフトピンと、前記基板保持部の前記プレートに水平方向にスライド可能に設けられた複数の摺動部材であって、各々が、前記プレートの切り欠き部の各々を少なくとも部分的に閉鎖する閉鎖位置と、前記プレートの切り欠き部の各々を開放してリフトピンが前記切り欠き部を通って昇降することを可能とする開放位置との間で移動可能な、前記複数の摺動部材と、前記基板保持部の前記プレートの下方に昇降可能に設けられるとともに、前記摺動部材の各々と係合可能な複数の操作部材であって、前記摺動部材と係合した状態で昇降することにより前記摺動部材を水平方向にスライドさせる、前記複数の操作部材と、を備えた基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の上記実施形態によれば、プレートに切り欠きを設けたことに起因するパーティクルの発生を効率良く抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】基板処理装置の一実施形態に係る基板処理システムの概略横断面図である。
図2図1の基板処理システムに含まれる処理ユニットの構成の一例を示す概略縦断面図である。
図3図2に示した処理ユニットのスピンチャックのプレートの周縁部の一部の構成の一例を示す概略斜視図である。
図4図3に示したプレートに設けられたスライダのためのガイド部材の一構成例を模式的に示す、図2における断面IV-IVを示す概略断面図である。
図5A図3のスピンチャックのプレートの周縁部の傾斜面およびスライダの傾斜面の作用効果について説明する概略図である。
図5B図3のスピンチャックのプレートの周縁部の傾斜面およびスライダの傾斜面の作用効果について説明する概略図である。
図5C図3のスピンチャックのプレートの周縁部の傾斜面およびスライダの傾斜面の作用効果について説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。
【0010】
実施形態に係る基板処理システム1(液処理装置の一例)の概略構成について図1を参照し説明する。図1は、実施形態に係る基板処理システム1の概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0011】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0012】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、実施形態では半導体ウエハW(以下、ウエハWと呼称する。)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0013】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウエハWの搬送を行う。
【0014】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0015】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウエハWの搬送を行う。
【0016】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウエハWに対して基板処理を行う。処理ユニット16は、ウエハWに、ブラシ処理、洗浄処理等の処理を行う。
【0017】
基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御演算部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御演算部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0018】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0019】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウエハWを取り出し、取り出したウエハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウエハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0020】
処理ユニット16へ搬入されたウエハWは、処理ユニット16によって基板処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウエハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0021】
処理ユニット16がウエハWの裏面をブラシ処理するブラシ処理ユニットの場合には、ウエハWを裏返すためのリバーサー(図示せず)が設けられる。この場合、図1において処理ユニット16が設置されている位置のうちのいくつかの位置において、処理ユニット16に代えてリバーサーを設けることができる。あるいは、リバーサーは、受渡部14の上方または下方に設けてもよい。この場合、基板搬送装置13,17と別に、リバーサーと受渡部14との間でウエハWを搬送する搬送装置を設けてもよい。リバーサーは、例えば、処理ユニット16(ブラシ処理ユニット)にウエハWが搬入される直前および処理ユニット16(ブラシ処理ユニット)からウエハWが搬出された直後に、ウエハWを裏返す。
【0022】
次に、図2図4を参照して処理ユニット16の構成について説明する。図2に示すように、処理ユニット16は、ウエハW(基板)を水平姿勢で保持して鉛直軸線周りに回転させるように構成されたスピンチャック(基板保持回転機構)100を備えている。スピンチャック100は、基板保持部110と、回転軸130と、回転駆動部140とを有している。回転駆動部140は、例えば電動モータからなる。
【0023】
基板保持部110は、円盤状のプレート111と、プレート111の周縁部に取り付けられた複数例えば3つ(図1には1つのみが表示されている)のチャック部材112(基板把持部材)とを有している。3つのチャック部材112は、プレート111の周縁を周方向に3等分した位置に設けられている。
【0024】
基板保持部110の各チャック部材112は、プレート111の周縁部に設けられた回転軸113を中心に、ウエハWを把持する把持位置(図2に示す位置)と、ウエハWを解放する解放位置との間で旋回可能である(図2の矢印S1を参照)。
【0025】
図2および図3に示すように、プレート111の上面の周縁部には、プレート111の周縁に近づくに従って高くなる傾斜面117が設けられている。本実施形態においては、プレート111の上面のうちの傾斜面117よりも半径方向内側の領域は、水平面119である。傾斜面117上には、スピンチャック100と外部の基板搬送装置(本実施形態においては図1に示した基板搬送装置17)の基板保持アームとの間でウエハWの受け渡しが行われる時に、一時的にウエハWが載置される。
【0026】
プレート111の傾斜面117にウエハWが載置された状態で、チャック部材112を解放位置から把持位置に旋回させることにより、チャック部材112の把持爪114がウエハWのAPEX(外周縁)付近に係合するとともに傾斜面117からウエハWを持ち上げてウエハWを把持する。このとき、傾斜面117とウエハWの下面の周縁との間に小さな隙間G(例えば鉛直方向に測定して0.5mm程度の隙間)が形成される。
【0027】
ウエハWを把持しているチャック部材112を把持位置から解放位置に旋回させることにより、チャック部材112の把持爪114がウエハWから離れ、ウエハWは傾斜面117に落下して、傾斜面117により支持されるようになる。
【0028】
チャック部材112は、図2において鎖線で概略的に示したスプリング115(例えばねじりコイルばね)により把持位置に向かうように付勢されている。このため、ウエハWがチャック部材112の把持爪114により把持された後は、チャック部材112に(スプリング115から以外の)外力を印加しなくても、ウエハWはチャック部材112により把持されたままとなる。
【0029】
チャック部材112は、回転軸113に関して把持爪114と反対側に被押上部116を有している。チャック操作部材210により被押上部116を上方に向けて押すことにより、チャック部材112を旋回させて把持爪114がウエハWから離れる解放位置に移動させることができる。
【0030】
なお、チャック部材112が傾斜面117上にあるウエハWを把持することを可能とするために最小限の量だけ、チャック部材112の形状に合わせて傾斜面117の表面が切り欠かかれている。この切り欠きは、後述の切り欠き118と比較すると、後述する不活性ガスの流れには殆ど悪影響を及ぼさない。
【0031】
スピンチャック100の回転軸130の内部をガス供給路131が延びている。ガス供給路131の上端は、基板保持部110により保持されたウエハWの下面と、プレート111の上面との間の空間Sに向けて不活性ガス(例えば窒素ガス)を噴き出すガス吐出口132となっている。ガス吐出口132は、そこから吐出されるガスの主流の向きを示すベクトルがプレート111の周縁に向かう成分を有するように形成されていてもよく、あるいは、真上に向けてガスを噴き出すように構成されていてもよい。
【0032】
ガス供給路131の下端は、ガス供給制御機構133を介して、不活性ガス源134に接続されている。ガス供給制御機構133は、開閉弁、流量制御弁、流量計等の機器を備えており、ガス吐出口132からのガス吐出、停止の切り替え、およびガス吐出流量の制御を行うことができる。不活性ガス源134は、例えば、半導体製造工場に設けられた工場用力である。
【0033】
スピンチャック100がウエハWを保持して回転させてウエハWに処理が施されているとき、ガス吐出口132から不活性ガスが供給される。不活性ガスは、ウエハWとプレート111との間の空間SをウエハWの周縁に向けて流れ、ウエハWの周縁とプレート111の周縁部との間の隙間Gを通って、空間Sから流出する。
【0034】
ガス供給路131、ガス吐出口132およびガス供給制御機構133等によりガス供給部が形成されている。
【0035】
図5Aに示すように、不活性ガスの流れは、隙間Gに近づくと、傾斜面117によりウエハWの下面周縁部に向けて転向される。このため、ウエハWの上面に供給された液例えばDIW(純水)がウエハWの下面に回り込もうとしても、そのような回り込みは不活性ガスの流れにより阻止される。また、傾斜面117を設けたことにより、隙間Gに近づくほど空間Sの高さ方向距離が小さくなる(すなわち不活性ガスの流路面積が減少する)ため、隙間Gに近づくほど不活性ガスの流速が増し、これにより上記の回り込み阻止効果が促進される。
【0036】
処理ユニット16は、複数本ここでは3本のリフトピン300を備えている。リフトピン300は、外部搬送装置のアーム(本実施形態では図1に示した基板搬送装置17のアーム)とスピンチャック100との間でのウエハWの受け渡しを仲介する。3本のリフトピン300は、平面視で、プレート111の円周方向に関して隣接するチャック部材112の間の概ね中間位置に配置されている。
【0037】
各リフトピン300(基板昇降部材)の頭部301は、ウエハWの周縁部を保持するのに適した形状を有している。本実施形態では、頭部301は、ウエハWの下面周縁部を支持する上向きの支持面302と、ウエハWのAPEXの半径方向位置を規制するためのウエハWの半径方向内側を向いた位置規制面303とを有している。支持面302は、例えば、ウエハWのデバイスが形成される表面(ここでは下向きの面)のエッジエクスクルージョンに対応する領域を支持する。
【0038】
3本のリフトピン300の下端は、例えばリング状の昇降体304に取り付けられている。昇降体304はエアシリンダ等のリニアアクチュエータ305からなる昇降機構により昇降可能であり、この昇降動作に伴い、リフトピン300は上昇位置(図2において、鎖線で示すウエハ受け渡し位置)と下降位置(図2において実線で示す待機位置)との間で鉛直方向に昇降可能である。
【0039】
なお、図2に示されたリフトピン300の上昇位置からわかるように、リフトピン300の実際の長さは実線で図示されたよりも長く、昇降体304およびリニアアクチュエータ305は実際には図示された位置よりも下方にあるが、図面の作成の便宜上、図示された位置に表示されている。
【0040】
リフトピン300の頭部301はウエハWの周縁部と係合するものであるため、プレート111の周縁部を通過するように設けざるを得ない。このため、プレート111の周縁部には、リフトピン300を上下方向に通過させることが可能な切り欠き118が設けられている。つまり、プレート111の上面の周縁部に設けられた傾斜面117は、切り欠き118のところで不連続となっている。なお、切り欠き118は、図3に分かりやすく表示されている。
【0041】
この切り欠き118をそのままにしておくと(つまり後述するスライダ120が無いと)、図5Cに示すように、切り欠き118のところで不活性ガスが下方に向かうように流れ、その結果として、ウエハWの下面の周縁部に沿う不活性ガスの流れが殆ど無くなる。これにより、ウエハWの上面から下面に回り込もうとする液の流れを阻止することができなくなる。下面に回り込んだ液が乾燥するとパーティクルが発生する。
【0042】
上記の問題を解消するため、切り欠き118のうち少なくともウエハWの真下に位置する部分を塞ぐことができる閉鎖ブロック体であるスライダ(摺動部材)120が、プレート111に設けられている。スライダ120は、切り欠き118を少なくとも部分的に塞ぐ閉鎖位置と、リフトピン300を通過させるために切り欠き118を開放する開放位置との間で、プレート111の半径方向に水平方向にスライド(摺動)することができる。
【0043】
スライダ120の上面は、内側(プレート111の中心側)の水平面123と、外側(プレート111の周縁側)の傾斜面(端部傾斜面)124とを有している。水平面123は、プレート111の傾斜面117より中心側にある水平面119と同じ高さ位置にある。
【0044】
図3に示すように、傾斜面124は外側(プレート111の周縁側)に近づくに従って高さが高くなるように傾斜している。スライダ120が閉鎖位置にあるときに、スライダ120の傾斜面124はプレート111の傾斜面(周縁傾斜面)117と概ね面一となる。言い換えると、プレート111の円周方向で見て、スライダ120の傾斜面124がプレート111の傾斜面117と概ね連続している。
【0045】
図5Bに概略的に示すように、閉鎖位置にあるスライダ120の傾斜面124は、プレート111の傾斜面117と同様に(図5Aを参照)、プレート111とウエハWとの間を水平方向に流れる不活性ガスをウエハWの下面に向けて転向させることができる。このため、切り欠き118のところで不活性ガスが下方に向けて流れることを防止することができ、その結果、ウエハWの上面から下面に液が回り込むことを防止することができる。
【0046】
スピンチャック100のチャック部材112によりウエハWが把持されているときに、閉鎖位置にあるスライダ120の傾斜面124の先端1241(図3を参照)は、ウエハWの周縁Weのほぼ真下に位置するようになっている。周縁Weの位置は図3の斜視図において鎖線で示されている。このとき、鉛直方向に測定したウエハWの周縁Weとスライダ120の傾斜面124の先端1241との間の距離GS(図3を参照)を例えば0.5mm以下程度の小さな値とすることが好ましい。
【0047】
なお、プレート111の傾斜面117の先端縁(周縁)1171(図3を参照)が閉鎖位置にあるスライダ120の傾斜面124の先端1241よりも半径方向外側にあるのは、傾斜面117が一時的にウエハWを載置するために用いられるからである。先端1241を先端縁1171と一致させても構わないが、その場合は上記の距離GSを大きくしなければならない。一方で、平面視で傾斜面117の先端縁1171をウエハWの周縁Weと一致させても構わないが、その場合は、例えば、傾斜面117が一時的にウエハWを載置することなくチャック部材112に直接ウエハWを受け渡しする手段が必要となる。従って、図3に示された配置は、目下のところ最も好ましい配置であると考えられる。
【0048】
ウエハ下面の周縁部付近の不活性ガスの流れを考慮すると、スライダ120は傾斜面124を備えていることが好ましい。しかしながら、スライダ120の上面が全体を水平面とした実施形態も可能である。閉鎖位置にあるスライダ120が、ウエハWの真下の切り欠き118を塞いでさえいれば、図5Cに示すような不活性ガスの下向きの流れは少なくなるため、液がウエハWの上面から下面に回り込むことを抑制することが可能である。なお、スライダ120が傾斜面124を持たなければ、後述するスリット125をプレート111の上面119に露出させる必要がなくなるという利点もある。
【0049】
次に、スライダ120の移動機構について説明する。図2に示すように、基板保持部110のプレート111には、スライダ120をプレート111の半径方向に水平に案内するガイド部材121が設けられている。ガイド部材121はプレート111に対して不動である。スライダ120がプレート111の半径方向に水平に滑らかにスライドできるのであれば、ガイド部材121の構成は任意である。
【0050】
スライダ120はプレート111の半径方向内側を向いた面を有し、ガイド部材121はプレート111の半径方向外側を向いた面を有し、これらの互いに対向する面の間にばね(圧縮ばね)122が設けられている。このばね122によりスライダ120は閉鎖位置に向けて付勢されている。従って、スライダ120に(ばね122以外から)外力が印加されていないときには、スライダ120は閉鎖位置に位置する。
【0051】
スライダ120には、水平面に対して傾斜した(斜め下方向を向いた)傾斜面126(被操作傾斜面)が設けられている。傾斜面126は、スライダ120の外側に近づくに従って(プレート111の外周縁に近づくに従って)高くなるように傾斜している。例えば鉛直方向に延びるピンの形態のスライダ操作部材220の頭部を傾斜面123に接触させて滑らせながら上方に移動させることにより、ガイド部材121に案内されたスライダ120がばね122の付勢力に逆らって開放位置に向けてスライドする(図2の矢印S2を参照)。
【0052】
図2および図3に示すように、プレート111の上面には、スライダ120が閉鎖位置と開放位置との間で移動することを可能とするため、スリット125が設けられている、スリット125のスライダ120が存在しない部分から、プレート111の下方に不活性ガスが抜ける可能性がある。また、スライダ120の円滑な動作を可能とするため、スリット125の幅はスライダ120の幅よりやや大きくなっている。このため、スリット125の側壁とスライダ120の側壁との隙間を通って、プレート111の下方に不活性ガスが抜ける可能性がある。このような事象を生じ難くするため、図4に概略的に示すように、ガイド部材121を、スライダ120を囲むように設けてもよい。あるいは、スリット125より下方にあるスライダ120の下部127の幅を、スリット125の中にあるスライダ120の上部128の幅より大きくしてもよい。なお、図4に表示された形状は厳密には図2に示したものとは整合していないが、図4はあくまで概略模式図ということで理解されたい。
【0053】
プレート111の周縁から中心に向けて延びる凹部の形態の切り欠き118に代えて、プレート111の周縁部に、当該周縁部を上下方向に貫通するリフトピン300が通過可能な穴の形態の切り欠き(図3において鎖線119Aでその輪郭を示した)を設けてもよい。このような穴の形態の切り欠きは、プレート111の周縁に開口していない。このような穴も、上記と同様のスライダにより開閉することが可能なことは明らかである。
【0054】
次に、スピンチャック100の周囲に設けられた構造物について、図2を参照して説明する。スピンチャック100の周囲には、基板保持部110により保持されたウエハWから飛散する液を受け止めて回収する液受けカップ150が設けられている。図示例では、液受けカップ150は外カップ体151と内カップ体152とを有しており、外カップ体151と内カップ体152との間の通路153を液が流下するようになっている。半導体製造装置の技術分野において周知のとおり、外カップ体151と内カップ体152の間にさらに1つ以上の可動のカップ体を設けることにより隣接する2つのカップ体同士の間に複数の通路を形成し、ウエハWに供給される液の種類に応じて選択された通路から液を排出するようにしてもよい。
【0055】
最も内側のカップ体である内カップ体152の上端部は、プレート111に近接して配置されるとともに、プレート111の真下の空間にウエハWから飛散した液が入り込み難いように設けられている。処理ユニット16には、様々なアクチュエータ(エアシリンダ、モータ)がおよびそれに付随する電気回路が設けられている。これらのアクチュエータおよび電気回路等を確実に処理液(ウエハWに供給される液)のミストなどを含む汚染雰囲気から保護するために、プレート111の下方には、区画部材160が設けられている。区画部材160の下方に、アクチュエータおよび電気回路等が設けられている。
【0056】
区画部材160は、例えば全体として円盤形に形成されており、円盤形の外周縁にはその全周にわたって、下方に垂れ下がる側周部167が設けられている。区画部材160の中心部には、スピンチャック100の回転軸130が貫通する穴が設けられている。
【0057】
区画部材160には、3つのリフトピン300の各々が通過する3つの穴161が設けられている。区画部材160には、リフトピン300が下降位置にあるときに穴161を塞ぐ可動蓋162が取り付けられている。可動蓋162は、概ね円筒状の基部163と、基部163から半径方向外側に延びる蓋本体164とを有している。基部163は、区画部材160に設けられた軸165の周りに回転可能に取り付けられている。
【0058】
基部163の外周面には、当該外周面を斜め方向に延びる溝166が形成されている。溝166は、当該外周面上における角度位置を示すθが大きくなるに従って、高さ位置を示すhが大きくなるように形成されている。この溝166には、可動蓋162を回転させるための蓋操作部材230が係合している。蓋操作部材230を上下に移動させることにより、基部163および蓋本体164が、軸165の周りに回転する(図2の矢印S3を参照)。この回転動作に伴い、蓋本体164は、穴161を閉鎖する閉鎖位置と、穴161を開放してリフトピン300が穴161を通過することを可能とする開放位置との間で移動する。つまり、溝166付きの基部163と蓋操作部材230は、円筒カム機構を構成している。ここでは、蓋操作部材230が上昇位置にあるときに穴161が開放され、蓋操作部材230が下降位置にあるときに穴161が閉鎖される。穴161を閉鎖することにより、区画部材160の下方に汚染雰囲気が侵入することをより確実に防止することができる。
【0059】
上述した3つの操作部材(チャック操作部材210、スライダ操作部材220および蓋操作部材230)は、単一の昇降部材240に担持されている。これらの操作部材210,220,230は、昇降部材240と一体成型されていてもよく、あるいは、昇降部材240と別体に形成された後に昇降部材240に固定されてもよい。チャック操作部材210は昇降部材240の上面それ自体であってもよく、昇降部材240の上面から上方に延びる突起であってもよい。
【0060】
昇降部材240は、例えば、全体として概ね円盤型の形状を有している。昇降部材240の中心部には、スピンチャック100の回転軸130が貫通する穴が設けられている。昇降部材240および区画部材160の中心部の穴とスピンチャック100の回転軸130との間には隙間が設けられており、スピンチャック100の回転軸130が回転しても昇降部材240および区画部材160は回転しない。
【0061】
昇降部材240は、エアシリンダ等のリニアアクチュエータ241からなる昇降機構により昇降させることができる。昇降部材240の下面から下方に延びる1本以上のロッド242が区画部材160を貫通して延びている。ロッド242の下端は、1つの円盤状の昇降体243に接続されており、この昇降体243がリニアアクチュエータ241により昇降させられる。
【0062】
リニアアクチュエータ241は区画部材160の下方に設けられている。昇降部材240を昇降させることによりチャック操作部材210、スライダ操作部材220および蓋操作部材230を同時に昇降させることができる。
【0063】
昇降部材240を上昇させると、チャック操作部材210がチャック部材112の被押上部116を上昇させ、これに伴い、チャック部材112が解放位置に移動する。また、スライダ操作部材220がスライダ120の傾斜面123に接触して傾斜面123を上に押し上げ、これに伴いスライダ120が開放位置に移動する。さらに、蓋操作部材230が、可動蓋162を回転させて、蓋本体164が開放位置に移動する。これにより、リフトピン300を上昇位置と下降位置との間で自由に昇降させることができるようになる。
【0064】
昇降部材240を下降させると、チャック操作部材210がチャック部材112の被押上部116から離れ、これに伴いチャック部材112が把持位置に移動する。また、スライダ操作部材220がスライダ120の傾斜面123から離れ、これに伴いスライダ120が閉鎖位置に移動する。さらに、蓋操作部材230が、可動蓋162を回転させて、蓋本体164が閉鎖位置に移動する。
【0065】
次に、処理ユニット16で行われる1枚のウエハWの処理について説明する。
【0066】
未処理のウエハWを保持した基板搬送装置17のアームを、処理ユニット16内に侵入させて、受け渡し位置(スピンチャック100の真上の位置)で待機させる。また、昇降部材240を上昇させ、リフトピン300が上昇位置と下降位置との間で自由に昇降できるようにする。次いで、リフトピン300を上昇させ、基板搬送装置17のアームからウエハWを取り去る。次いで、基板搬送装置17のアームを処理ユニット16から退出させる。
【0067】
次に、ウエハWを支持したリフトピン300を下降位置まで下降させる。リフトピン300の下降の途中で、ウエハWが傾斜面117の上に乗ると、リフトピン300からウエハWが離れる。次いで、昇降部材240を下降位置に移動させることにより、チャック部材112が把持位置に移動してウエハWを把持し、これに伴い、ウエハWが傾斜面117から僅かに離れる。また、スライダ120および蓋本体164が閉鎖位置に移動する。これにより、ウエハWを処理する準備が完了したことになる。
【0068】
ここでは、ウエハWに対して行われる処理がウエハWの裏面(デバイスが形成される面)に対して行われるブラシ処理であるものとする。この場合、ウエハWは、処理ユニット16に搬入される前にリバーサーにより裏返されているので、ウエハWの裏面が上向きとなった状態で、ウエハWがスピンチャック100に保持される。スピンチャック100によりウエハWを回転させた状態で、例えば、ブラシ洗浄工程、二流体洗浄工程、リンス工程、乾燥工程が順次行われる。
【0069】
ブラシ洗浄工程、二流体洗浄工程およびリンス工程では、ウエハWの裏面(上向きの面(上面))に液(例えばDIW)が供給された状態で処理が行われる。ブラシ洗浄工程では、回転するブラシ401が回転するウエハWの上面に押し付けられた状態でウエハWの中心部と周縁部との間を移動する。このときブラシ401に内蔵された液吐出構造から液(例えばDIW)がウエハWに供給される。二流体洗浄工程では、洗浄液(例えばDIW)とガス(例えば窒素ガス)とを含む二流体を回転するウエハWの上面に向けて吐出するノズル402が、ウエハWの中心部の上方の位置と周縁部の上方の位置との間を往復しながら移動する。リンス工程では、ノズル402(別のノズルでもよい)から回転するウエハWの上面の中心部にリンス液(例えばDIW)が供給される。
【0070】
ウエハWの上面に供給された液がウエハの下面に回り込んでウエハWの下面(デバイスが形成される面)が汚染されることを防止するために、ガス吐出口132から、プレート110の上面とウエハWの下面との間の空間Sに不活性ガスが供給される。この不活性ガスによる液の回り込み防止効果は、図5A図5Cを参照して先に説明したように、閉鎖位置にあるスライダ120によりウエハWの周縁の全周にわたって発揮される。
【0071】
乾燥工程はウエハWの上面に液を供給しないでウエハWを高速回転させることにより行われ、当該乾燥工程が終了すると1枚のウエハWに対する一連の処理工程が終了する。
【0072】
ウエハWの処理が終了したら、昇降部材240を上昇位置に移動させる。これに伴い、チャック部材112が解放位置に移動し、それまでチャック部材112により把持されていたウエハWがプレート110の傾斜面117の上に落ちる。また、スライダ120および蓋本体164が開放位置に移動する。次いで、リフトピン300を上昇させ、リフトピン300により傾斜面117からウエハWを持ち上げる。ウエハWを支持したリフトピン300を引き続き上昇位置まで上昇させる。次いで、空の基板搬送装置17のアームを処理ユニット16内の受け渡し位置に位置させ、この状態で、リフトピン300を下降させることにより、基板搬送装置17のアームにウエハWを渡す。次いで、ウエハWを保持した基板搬送装置17のアームは、処理ユニット16から退出する。
【0073】
上記の実施形態によれば、ウエハWが処理されているときにスライダ120がプレート110の切り欠き118を少なくとも部分的に塞ぐため、切り欠き118の近傍において、ウエハWの下面に液が周り込むことによりウエハWの下面が汚染されることを防止することができる。
【0074】
また、スライダ120は、スライダ操作部材220を上方に移動させることによりばね122の弾性力に抗して開放位置に移動し、スライダ操作部材220を下方に移動させることによりばね122の弾性力により閉鎖位置に移動し、かつ、当該閉鎖位置に固定される。このため、スピンチャック100が回転しているときに、スライダ120を閉鎖位置に固定するためにスライダ120に(ばね力以外の)外力を印加する必要がない。
【0075】
また、チャック部材112はチャック操作部材210を上方に移動させることによりスプリング115の弾性力に抗して解放位置に移動し、チャック操作部材210を下方に移動させることによりスプリング115の弾性力により把持位置に移動する。このため、スピンチャック100が回転しているときに、チャック部材112を把持位置に固定するためにチャック部材112に(ばね力以外の)外力を印加する必要がない。
【0076】
スライダ120およびチャック部材112は、それらの操作部材220,210を上昇位置に位置させることにより、ウエハWのスピンチャック100への着脱操作に適した位置に位置する。また、スライダ120およびチャック部材112は、それらの操作部材220,210を下降位置に位置させることにより、ウエハWをスピンチャック100により回転させて処理を施すのに適した位置に位置する。このため、スライダ操作部材220およびチャック操作部材210を1つの昇降部材240と一体化させることにより、単一の昇降駆動機構(ここではリニアアクチュエータ241)によりスライダ120およびチャック部材112を所望の位置に向けて同時に移動させることができる。このため、処理ユニット16の部品点数を削減することができ、処理ユニット16の製造コストを下げることができる。
【0077】
また、蓋本体164は、蓋操作部材230を上昇位置に移動させることにより開放位置に移動し、蓋操作部材230を下降位置に移動させることにより閉鎖位置に移動するようになっている。つまり、スライダ120およびチャック部材112に加えて蓋本体164も、その操作部材(蓋操作部材230)を上昇位置に位置させることにより、ウエハWのスピンチャック100への着脱操作に適した位置に位置し、また、その操作部材(蓋操作部材230)を下降位置に位置させることにより、ウエハWをスピンチャック100により回転させて処理を施すのに適した位置に位置する。従って、蓋操作部材230も1つの昇降部材240と一体化させることにより、単一の昇降駆動機構(ここではリニアアクチュエータ241)によりスライダ120、チャック部材112および蓋本体164を所望の位置に向けて同時に移動させることができる。このため、処理ユニット16の部品点数を削減することができ、処理ユニット16の製造コストを下げることができる。
【0078】
上記実施形態では、チャック操作部材210、スライダ操作部材220および蓋操作部材230の全てが単一の昇降部材240と一体化され、昇降部材240と一緒に昇降している。この構成は、処理ユニット16の部品点数および製造コストの削減の観点からは最も好ましいが、これには限定されない。つまり、チャック操作部材210、スライダ操作部材220および蓋操作部材230のうちの2つが昇降部材240と一体化され、残りの1つが昇降部材240と一体化されずに別の駆動源により駆動される変形実施形態も可能である。例えば、リフトピン300の昇降と密接に関連するスライダ操作部材220および蓋操作部材230を昇降部材240と一体化され、チャック操作部材210が昇降部材240と一体化されずに別の駆動源により駆動される変形実施形態も考えられる。この場合にも、処理ユニット16の部品点数を削減することができ、処理ユニット16の製造コストを下げる効果を得ることができる。
【0079】
上記実施形態に係る処理ユニット16は、ウエハWの裏面が上向きとされた状態でウエハWの裏面の処理を行うのに適しているが、ウエハWの表面が上向きとされた状態でウエハWの表面の処理を行うことも可能である。また、この処理ユニット16で行われる処理は、上述したブラシ処理に限らず、薬液処理(薬液洗浄処理、エッチング処理)であってもよい。どのような処理が行われる場合でも、スライダ120によるウエハWの上面から下面への液の回り込み効果は得られる。
【0080】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0081】
処理対象の基板は、半導体ウエハには限定されず、ガラス基板、セラミック基板等、半導体装置製造の分野で使用される様々な基板であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
W 基板(ウエハ)
110 基板保持部
111 プレート
112 基板把持部材(チャック部材)
118 切り欠き部(切り欠き)
120 閉鎖部材(スライダ)
130 回転駆動部
220 操作部材(スライダ操作部材)
300 リフトピン
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C