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特開2024-165135矯正目標頭部3Dデータを生成するソフトウェア、方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165135
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】矯正目標頭部3Dデータを生成するソフトウェア、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/20 20110101AFI20241121BHJP
   A61F 5/01 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G06T19/20
A61F5/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081035
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】518194246
【氏名又は名称】株式会社ジャパン・メディカル・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100138519
【弁理士】
【氏名又は名称】奥谷 雅子
(74)【代理人】
【識別番号】230108442
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 明夫
(72)【発明者】
【氏名】福里 司
(72)【発明者】
【氏名】大野 秀晃
【テーマコード(参考)】
4C098
5B050
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BB20
4C098BC50
5B050BA09
5B050BA12
5B050DA01
5B050EA07
5B050EA13
5B050EA18
5B050EA28
5B050FA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】所望の矯正目標頭部3Dデータを得るソフトウェア、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】矯正目標頭部3Dデータを生成するソフトウェアであって、頭部形状をスキャンしたデータから得られた頭部形状3Dデータに対し、少なくとも頭部形状の医学的指標を制約条件としたメッシュ変形手法を適用するステップS111を含む。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矯正目標頭部3Dデータを生成するソフトウェアであって、
頭部形状に基づき得られた頭部形状3Dデータに対し、少なくとも頭部形状の医学的指標を制約条件としたメッシュ変形手法を適用するステップを含む、ソフトウェア。
【請求項2】
メッシュ変形手法が、ラプラシアンスムージングである、請求項1に記載のソフトウェア。
【請求項3】
頭部形状の医学的指標が、CVAI、CA、CI、および頭部体積の対称率からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のソフトウェア。
【請求項4】
メッシュ変形手法の適用は、さらに、Ear Offset、首周辺の形状および頭部陥没度からなる群より選択される少なくとも1つを制約条件とする、請求項1に記載のソフトウェア。
【請求項5】
矯正目標頭部3Dデータを生成する方法であって、
頭部形状に基づき得られた頭部形状3Dデータに対し、少なくとも頭部形状の医学的指標を制約条件としたメッシュ変形手法を適用するステップを含む、方法。
【請求項6】
メッシュ変形手法が、ラプラシアンスムージングである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
頭部形状の医学的指標が、CVAI、CA、CI、および頭部体積の対称率からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
メッシュ変形手法の適用は、さらに、Ear Offset、首周辺の形状および頭部陥没度からなる群より選択される少なくとも1つを制約条件とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
矯正目標頭部3Dデータを生成するプログラムであって、
頭部形状に基づき得られた頭部形状3Dデータに対し、少なくとも頭部形状の医学的指標を制約条件としたメッシュ変形手法を適用するステップ
を含むステップを端末装置に実行させるための、プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矯正目標頭部3Dデータを生成するソフトウェア、方法、プログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の乳児、特に生後3カ月程度を経過した乳幼児には、頭部の形状が歪む、いわゆる斜頭症、長頭症または短頭症のような症状が現れることがある。例えば斜頭症は、乳幼児の頭部を上方から見た際に、後頭部が斜めに歪んで左右非対称になっているものである。そしてこのような状態を放置して、乳幼児の成長につれて歪みが進行すると、耳の位置や顔面が左右非対称のまま固定されてしまう。
【0003】
このようなことから、症状に応じて、例えば生後18カ月程度までの所定の期間内において、頭蓋形状矯正用ヘルメットを乳児の頭部に被嵌させて、その状態で日常生活を送るという治療方法(以下「ヘルメット治療」ともいう。)が採用されることがある(特許文献1)。ヘルメット治療は、歪んだ頭部の形状を、徐々に正常に戻すことを可能にする。
【0004】
頭蓋形状矯正用ヘルメットを製造するためには、通常、装着者の頭部形状をスキャンしたデータ等から得られた3Dデータ(以下「頭部形状3Dデータ」ともいう。)に基づき作成される、装着者の矯正目標となる頭部形状の3Dデータ(以下「矯正目標頭部3Dデータ」ともいう。)が必要になる。矯正目標頭部3Dデータは、頭部形状3Dデータを加工することで作成することができる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6833240号
【特許文献2】特開2021-074051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載の頭部形状3Dデータの加工方法は、熟練のエンジニアによる手作業で行われていたため、煩雑であり、手間を要していた。そこで、本発明者らは、より簡便に矯正目標頭部3Dデータを得るべく、特許文献2に記載の方法を自動化可能なソフトウェアの開発を試みた。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の方法をソフトウェアにおいて再現しても、依然としてデータの歪み等が含まれる結果、所望の矯正目標頭部3Dデータが得られない、という新たな課題を本発明者らは見出した。
【0008】
そのため、本発明は、所望の矯正目標頭部3Dデータを得ることが可能なソフトウェア等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に鑑み、鋭意検討を重ねたところ、本発明者は、意外にも、頭部形状をスキャンしたデータから得られた頭部形状3Dデータに対し、頭部形状の医学的指標を制約条件としたメッシュ変形手法を適用することで、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
よって、本発明は、要旨、以下のものを提供する。
〔1〕 矯正目標頭部3Dデータを生成するソフトウェアであって、
頭部形状に基づきから得られた頭部形状3Dデータに対し、少なくとも頭部形状の医学的指標を制約条件としたメッシュ変形手法を適用するステップを含む、ソフトウェア。
〔2〕 メッシュ変形手法が、ラプラシアンスムージングである、〔1〕に記載のソフトウェア。
〔3〕 頭部形状の医学的指標が、CVAI、CA、CI、および頭部体積の対称率からなる群より選択される少なくとも1つを含む、〔1〕に記載のソフトウェア。
〔4〕 メッシュ変形手法の適用は、さらに、Ear Offset、首周辺の形状および頭部陥没度からなる群より選択される少なくとも1つを制約条件とする、〔1〕に記載のソフトウェア。
〔5〕 矯正目標頭部3Dデータを生成する方法であって、
頭部形状に基づき得られた頭部形状3Dデータに対し、少なくとも頭部形状の医学的指標を制約条件としたメッシュ変形手法を適用するステップを含む、方法。
〔6〕 メッシュ変形手法が、ラプラシアンスムージングである、〔5〕に記載の方法。
〔7〕 頭部形状の医学的指標が、CVAI、CA、CI、および頭部体積の対称率からなる群より選択される少なくとも1つを含む、〔5〕に記載の方法。
〔8〕 メッシュ変形手法の適用は、さらに、Ear Offset、首周辺の形状および頭部陥没度からなる群より選択される少なくとも1つを制約条件とする、〔5〕に記載の方法。
〔9〕 矯正目標頭部3Dデータを生成するプログラムであって、
頭部形状に基づき得られた頭部形状3Dデータに対し、少なくとも頭部形状の医学的指標を制約条件としたメッシュ変形手法を適用するステップ
を含むステップを端末装置に実行させるための、プログラム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所望の矯正目標頭部3Dデータを得ることが可能なソフトウェア等を得ることが可能になる。また、本発明は、所望の矯正目標頭部3Dデータを得るにあたり、数ある変形手法の中からあえてメッシュ変形手法を採用することで、他の変形手法(例えば、物理シミュレーション等)と比較して、処理速度が速いという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、端末装置の機能ブロック図の一例を示す。
図2図2は、端末装置の機能図の一例を示す。
図3図3は、本明細書中に記載の方法の概念図の一例を示す。
図4図4は、サーバの機能ブロック図の一例を示す。
図5図5は、サーバの機能図の一例を示す。
図6図6は、医学的指標等を測定する平面の一例を示す。
図7A図7Aは、首周辺の形状の測定範囲の一例を示す。
図7B図7Bは、首周辺の形状の測定範囲の一例を示す。
図8図8は、本明細書中に記載のソフトウェアの処理フローの一例を示す。
図9図9は、本明細書中に記載のソフトウェアの処理フローの一例を示す。
図10図10は、実施例1により得られた矯正目標頭部3Dデータを示す。
図11図11は、実施例2により得られた矯正目標頭部3Dデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施態様では、矯正目標頭部3Dデータを生成するソフトウェアであって、
頭部形状に基づき得られた頭部形状3Dデータに対し、少なくとも頭部形状の医学的指標を制約条件としたメッシュ変形手法を適用するステップを含む、ソフトウェアを提供する。
【0014】
本明細書中に記載の「頭部形状3Dデータ」とは、後述する矯正目標頭部3Dデータを作成するうえで必要となる、頭部形状の3Dデータを意味する。通常、頭部形状3Dデータは、ヘルメット治療前における、ヘルメット装着予定者の頭部形状のデータである。頭部形状3Dデータは、例えば、公知の3Dスキャナやカメラ等で患者の頭部形状をスキャンまたは撮影したデータであってもよいし、このようにしてスキャンしたデータを加工したものであってもよい。
【0015】
本明細書中に記載の「矯正目標頭部3Dデータ」とは、ヘルメット治療を行う上での治療目標となる(すなわち、矯正目標となる)頭部形状の3Dデータを意味する。個々の患者により治療目標となる頭部形状が異なるため、矯正目標頭部3Dデータは、患者ごとに異なる。矯正目標頭部3Dデータは、頭部形状3Dデータに基づき作成される。
【0016】
本明細書中に記載の「メッシュ変形手法」とは、変形前の3Dデータ(好ましくは、メッシュ化された3Dデータ)から得られる幾何学的な性質に基づき、3Dデータ(好ましくは、メッシュ化された3Dデータ)の各頂点座標を移動させ、3Dデータ(好ましくは、メッシュ化された3Dデータ)を変形させる方法を意味する。メッシュ変形手法は、これらに限定されるものではないが、例えば、ラプラシアンスムージング、自由形状変形、As-rigid-as possible deformation、Local-Global Solver等が挙げられる。
【0017】
本明細書中に記載の「ラプラシアンスムージング」とは、3Dデータ(好ましくは、メッシュ化された3Dデータ)の頂点の接続関係から得られるラプラシアン行列を基に、3Dデータを平滑化する手法を意味する。例えば、ラプラシアンスムージングは、下記式で表される場合がある(O. Sorkine, et al, Eurographics, 2004, Symposium on Geometry Processing, Laplacian Surface Editing)。
【数式1】
【0018】
【0019】
Lは、頂点iに対するラプラシアンを意味する。viは、頂点iの3次元座標を意味する。diは、頂点iの(エッジで連結された)近傍頂点の数を意味する。
【0020】
メッシュ変形手法(好ましくは、ラプラシアンスムージング)は、各種の制約条件を設定することで、メッシュ化された3Dデータの変形が可能である。換言すると、制約条件が一切設定されていない場合には、メッシュ化された3Dデータの変形ができないものである(つまり、変形前の3Dデータと同じ3Dデータがアウトプットされる)。本明細書中に記載のソフトウェア等では、メッシュ変形手法(好ましくは、ラプラシアンスムージング)に頭部形状の医学的指標を適用することで、頭部形状3Dデータの変形が可能となっている。
【0021】
本発明の一実施態様では、メッシュ変形手法が、ラプラシアンスムージングである。
【0022】
本明細書中に記載の「基準位置」とは、頭部形状の医学的指標を算出等する際に基準となるデータを意味する。基準位置は、これらに限定されるものではないが、鼻の位置(好ましくは鼻根の位置)、左耳の位置(好ましくは左耳珠の位置)、右耳の位置(好ましくは右耳珠の位置)、等が挙げられる。基準位置は、手動で特定してもよいし、所望のプログラム等を利用して自動で特定してもよい。基準位置が鼻の位置の場合には、例えば、頭部形状3Dデータにおける鼻の形状や、頭部輪郭に対する凹凸の程度等に基づいて自動で検出してもよい。基準位置が左耳および/または右耳の場合には、例えば、頭部形状3Dデータにおける耳の形状や、頭部輪郭に対する凹凸の程度等に基づいて自動で検出してもよい。
【0023】
本明細書中に記載の「頭部形状の医学的指標」とは、頭部の形状についての医学的な指標となりうるものを意味する。頭部形状の医学的指標としては、これらに限定されるものではないが、例えば、Cranial Asymmetry(以下「CA」ともいう。)、Cranial Vault Asymmetry Index(以下「CVAI」ともいう。)、Cephalic Index(以下「CI」ともいう。)、頭部体積の対称率(例えば、左右対称性)等が挙げられる。
【0024】
CAは、通常、斜頭度の指標となるものであり、例えば、以下の方法により算出することができる。頭部形状3Dデータにおいて、基準位置として特定された鼻の位置(P1)、左耳の位置(P2)および右耳の位置(P3)を通る平面を基準平面(PL0)として特定する。必要に応じて、基準平面に対して平行な1つまたは複数の平面を、頭頂方向および/または首方向に設定してもよい(図6)。任意の平面(例えば、PL0)において、基準位置として特定された左耳の位置(P2)および右耳の位置(P3)を結ぶ直線の中点(P4)を特定する。次に、基準位置として特定された鼻の位置(P1)と中点(P4)を結ぶ直線である基準線を引く。次に、基準線に対して各々反対方向に所定角度(例えば、約1~約80°、好ましくは約5~約60°、より好ましくは、約10~約50°、さらに好ましくは約20~約40°、よりさらに好ましくは約30°)傾斜した2本の傾斜線と、上記任意の平面(例えば、PL0)における頭部の輪郭との4つの交差点を特定する。PL0に平行である1つまたは複数の他の平面がある場合には、PL0で描いた2本の傾斜線を各平面に投射し、各平面における2本の傾斜線と頭部の輪郭との4つの交差点を特定する。各平面において、4つの交差点に基づき導かれる2本の傾斜線の長さ(L1、L2)の差の絶対値(L1-L2)をCAとして算出してもよい(式1では、L1>L2の場合を想定)。
【0025】
式1 CA(mm)=L1-L2
【0026】
CVAIは、通常、斜頭度の指標となるものであり、例えば、以下の方法により算出することができる。上記式1で算出された絶対値と、2本の傾斜線のうち長さが短いほうの傾斜線の長さを用いて、下記の式2によりCVAIを算出してもよい(式2では、L1>L2の場合を想定)。
【0027】
式2 CVAI(%)=[(L1-L2)/L2]×100
【0028】
CIは、通常、短頭度(または長頭度)の指標となるものであり、例えば、以下の方法により算出することができる。頭部形状3Dデータにおいて、基準位置として特定された鼻の位置(P1)、左耳の位置(P2)および右耳の位置(P3)を通る平面を基準平面(PL0)として特定する。必要に応じて、基準平面に対して平行な1つまたは複数の平面を、頭頂方向および/または首方向に設定してもよい(図6)。任意の平面(例えば、PL0)において、基準位置として特定された左耳の位置(P2)および右耳の位置(P3)を結ぶ直線の中点(P4)を特定する。次に、P1およびP4を通る直線である基準線に対して直交しかつP4を通る中心線を引く。次に、この中心線と、上記任意の平面(例えば、PL0)における頭部の輪郭との2つの交差点を算出する。PL0に平行である1つまたは複数の他の平面がある場合には、PL0で描いた基準線および中心線を各平面に投射し、各平面において投射された中心線と頭部の輪郭との2つの交差点を特定する。次に、この2つの交差点に基づき導かれる中心線の長さ(L3)と、基準線と頭部形状3Dデータにおける頭部の輪郭との2つの交差点に基づき算出される基準線の長さ(L4)を算出する。そして、算出された中心線の長さ(L3)と基準線の長さ(L4)に基づき、下記の式3によりCIを算出してもよい。
【0029】
式3 CI(%)=L4/L3×100
【0030】
頭部体積の対称率は、例えば、頭部を左右に分けた際の、左右の頭部の体積の比率を意味してもよい。頭部体積の対称率は、頭部の体積を直接算出してもよい。あるいは、頭部体積の対称率は、頭部の体積を推定可能な別の指標に基づき算出してもよい。すなわち、頭部体積の対称率は、これらに限定されるものではないが、例えば、左右頭部の体積をそれぞれ算出し、比較したものでもよいし、任意の平面(例えば、基準平面)における左右対称性を算出することで、頭部体積の対称率としてもよい。
【0031】
「左右対称性」は、頭部形状における横方向に対する左右の対称性の指標であり、例えば、以下の方法により算出することができる。頭部形状3Dデータにおいて、基準位置として特定された鼻の位置(P1)、左耳の位置(P2)および右耳の位置(P3)を通る平面を基準平面(PL0)として特定する。必要に応じて、基準平面に対して平行な1つまたは複数の平面を、頭頂方向および/または首方向に設定してもよい(図6)。任意の平面(例えば、PL0)において、左右に任意の点(好ましくは、左右において各々対応する点)を特定する。左右の任意の点としては、例えば、基準位置として特定された左耳の位置(P2)および右耳の位置(P3)が挙げられる。次に、任意の平面(例えば、基準平面)において、顔の正面から後頭部を通る直線(例えば、基準位置として特定された鼻の位置(P1)を通る直線)を引く。PL0に平行である複数の他の平面においては、PL0で描いた直線、P2およびP3を投射し、投射された直線と投射されたP2までの距離(該平面において、P2の位置よりも頭部輪郭が内側にある場合は、例えば、P2を通る水平線と頭部輪郭との交点と、投射された直線までの距離)、および投射された直線と投射されたP3までの距離(該平面において、P3の位置よりも頭部輪郭が内側にある場合は、例えば、P3を通る水平線と頭部輪郭との交点と、投射された直線までの距離)を算出してもよい。そして、各平面において、特定された左右の点と投射された直線までの距離の差を左右対称性として算出してもよい。例えば、左右の任意の点がP2およびP3の場合、顔の正面から後頭部を通る直線とP2までの距離(D1)と、顔の正面から後頭部を通る直線とP3までの距離(D2)を算出し、D1とD2の差の絶対値を左右対称性として算出してもよい(すなわち、D1とD2の差の絶対値が小さいほど、左右対称性が良好と評価してもよい)。
【0032】
本発明の一実施態様では、頭部形状の医学的指標が、CVAI、CA、CI、および頭部体積の対称率(好ましくは、左右対称性)からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0033】
本明細書中に記載の「第2の指標」とは、頭部形状の医学的指標以外の指標を意味する。第2の指標は、矯正目標頭部3Dデータをより適したデータにするうえで、メッシュ変形手法における制約条件として有用であり得る指標であれば特段限定されるものではない。第2の指標としては、これらに限定されるものではないが、例えば、Ear Offset、首周辺の形状、頭部陥没の有無等が挙げられる。
【0034】
本明細書中に記載の「Ear Offset」は、両耳の位置の前後のずれの指標であり、例えば、以下の方法により算出することができる。任意の平面(例えば、基準平面(PL0))において、両耳における任意の点(好ましくは、左右において各々対応する点であり、例えば、基準位置として特定された左耳の位置(P2)および右耳の位置(P3)が挙げられる)を特定する。次に、前記任意の平面において、前記で特定された右耳の任意の点を通る水平線と、前記で特定された左耳の任意の点を通る水平線を引く。これら2本の水平線の距離(すなわち、2本の水平線の乖離度)をEar Offsetとして算出してもよい。例えば、両耳における任意の点がP2およびP3の場合、任意の平面(例えば、基準平面(PL0))において、P2を通る水平線(H1)と、P3を通る水平線(H2)を引き、2本の水平線(H1とH2)の距離をEar Offsetとして算出してもよい(すなわち、H1とH2の距離が小さいほど、Ear Offsetが良好と評価してもよい)。
【0035】
本明細書中に記載の「首周辺の形状」とは、例えば、図7におけるPL0(好ましくは、PL-1、より好ましくはPL-2)よりも下部の領域における形状を意味する。首周辺の形状をメッシュ変形手法における制約条件とする場合、例えば、以下のように首周辺の形状の変位量を算出してもよい。例えば、基準平面(PL0)よりも首方向の各平面(例えば、PL-1、PL-2等)において、任意の点(vi)(例えば、メッシュ形状の任意の頂点)を設定する。次に、設定した任意の点(vi)と、メッシュ変形手法(例えば、ラプラシアンスムージング)を適用した後に移動した位置(v’i)との位置関係(移動距離)を、下記式に当て嵌め、首周辺の形状の変化量(Ei)としてもよい。Eiを、各平面において、複数点において算出してもよい。
【数式2】
【0036】
【0037】
首周辺の形状は、PL0(好ましくは、PL-1、より好ましくはPL-2)よりも下部の領域全体を対象としてもよいし(図7A)、任意の線(例えば、曲線)よりも下部の領域を対象としてもよい(図7B)。図7Bに示されるような曲線は、例えば、手動で設定してもよいし、任意の数式(例えば、2次関数、3次関数、cos関数、sin関数、またはこれらの組み合わせ)により表してもよい。
【0038】
本明細書中に記載の「頭部陥没の有無」とは、頭部形状3Dデータおよび/または矯正目標頭部3Dデータにおける頭部形状の陥没の有無を意味する。頭部陥没の有無をメッシュ変形手法における制約条件とする場合、例えば、以下のように頭部陥没度を算出してもよい。頭部形状3Dデータの頭部輪郭の任意の位置(例えば、任意の位置のメッシュの頂点)を特定する。このように特定した各位置について、メッシュ変形手法の適用前後における位置の変化を算出する。メッシュ変形手法適用後における前記任意の位置が、メッシュ変形手法適用前と比較して、頭部形状の3Dデータの内側にあるか否かにより、頭部陥没の有無を判定してもよい。メッシュ変形手法適用後における前記任意の位置が、メッシュ変形手法適用前と比較して頭部形状の3Dデータの内側にある場合には、該任意の位置を、メッシュ変形手法適用前の位置に戻してもよい。
【0039】
本発明の一実施態様では、メッシュ変形手法の適用は、さらに、Ear Offset、首周辺の形状および頭部陥没度からなる群より選択される少なくとも1つを制約条件とする。
【0040】
本明細書中に記載の「端末装置」とは、例えば、PC、タブレット、スマートフォン等を意味する。端末装置は、1つであってもよいし、複数であってもよい。端末装置は、通信ネットワークを介して、他の端末装置やスキャン装置等と相互に通信可能であってもよい。
【0041】
本明細書中に記載の「スキャン装置」とは、頭部形状をスキャン可能な装置である限り特段限定されるものではない。スキャン装置としては、これらに限定されるものではないが、例えば、3Dスキャナ、カメラ、スマートフォン等である。
【0042】
本明細書中に記載の「通信ネットワーク」は、1または複数のネットワークから構成されていてもよい。通信ネットワークは、専用回線、公衆回線を問わず、有線、無線を問わない。通信ネットワークの一部または全部は、電話回線でもよいし、インターネットまたはVPNなどであってもよい。
【0043】
本発明の別の実施態様では、矯正目標頭部3Dデータを生成する方法であって、
頭部形状に基づき得られた頭部形状3Dデータに対し、少なくとも頭部形状の医学的指標を制約条件としたメッシュ変形手法を適用するステップを含む、方法を提供する。
【0044】
本発明の別の実施態様では、矯正目標頭部3Dデータを生成するプログラムであって、
頭部形状に基づき得られた頭部形状3Dデータに対し、少なくとも頭部形状の医学的指標を制約条件としたメッシュ変形手法を適用するステップ
を含むステップを端末装置に実行させるための、プログラムを提供する。
【0045】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いてより詳細に説明する。
【0046】
端末装置1は、矯正目標頭部3Dデータ作成用ソフトウェア4をインストール可能であってもよい。
【0047】
図1は、端末装置1の機能ブロック図を示す。端末装置1は、機能ブロックとして、操作部10、表示部11、記憶部12、処理部13および入出力部14を備えている。矯正目標頭部3Dデータの作成が、サーバ2上で行われずに、矯正目標頭部3Dデータ作成用ソフトウェア4で行われる場合には、矯正目標頭部3Dデータ作成用ソフトウェア4(図示していない)が端末装置1にインストールされていてもよい。この場合、矯正目標頭部3Dデータ作成用ソフトウェア4は、記憶部14に記憶されていてもよい。矯正目標頭部3Dデータ作成用ソフトウェア4は、矯正目標頭部3Dデータ作成用ソフトウェアプログラムの実行により実現されるものであり、処理モジュール41を含んでいてもよい。処理モジュール41は、矯正目標頭部3Dデータ作成用ソフトウェア4を全体的に管理するモジュールであり、表示部11に操作画面(UI画面)を表示し、各種処理を実行可能であってもよい。端末装置1は、1つであってもよいし複数であってもよい。
【0048】
操作部10は、タッチパネルやキーボード、マウス等で構成され、操作者が操作して入力することができる。
【0049】
表示部11は、液晶パネルや有機ELパネル等で構成され、各種画面を表示することができる。
【0050】
記憶部12は、HDDやSSD等で構成され、各種データを記憶することができる。矯正目標頭部3Dデータ作成用ソフトウェア4や、頭部形状3Dデータ等を記憶してもよい。
【0051】
処理部13は、各種処理を行うことができる。
【0052】
入出力部14は、ネットワーク3を介して各種データ等の入出力を行ってもよい。
【0053】
図2は、端末装置1の構成ブロック図を示す。端末装置1は、スマートフォンやタブレット端末、PC等であり、これら端末が備える構成を有する。端末装置1は、CPU15、ROM16、RAM17、操作部10、表示部11、記憶部12および通信I/F 18を備え、これらはバスで接続されていてもよい。
【0054】
1または複数のCPU15は、ROM16または記憶部12に記憶された処理プログラム(矯正目標頭部3Dデータ作成用ソフトウェアプログラムを含む)を読み出し、RAM17をワーキングメモリとして用いて各種処理を実行してもよい。端末装置1に矯正目標頭部3Dデータ作成用ソフトウェア4がインストールされている場合、各種処理には、これらに限定されるものではないが、例えば、頭部形状3Dデータの修正、メッシュデータの作成、基準位置の特定、平面の作成、平面の特定、各平面への投射、頭部形状の医学的指標の算出、第2の指標の算出、メッシュ変形手法の適用等が含まれる。
【0055】
頭部形状3Dデータの修正は、必要に応じて行うことができる。頭部形状3Dデータの修正を行うことで、矯正目標頭部3Dデータをより円滑に作成することができうる。頭部形状3Dデータの修正は、手動であってもよいし、所望のプログラムを使用して自動で行ってもよい。頭部形状3Dデータの修正としては、これらに限定されるものではないが、例えば、頭部に関連しない部分のデータ(ノイズ)の削除、スキャンされた頭部形状のデータの統合、歪みの修正等が挙げられる。
【0056】
メッシュデータの作成は、公知のソフトウェアやプログラム等(例えば、「Rhinoceros」として販売されている三次元CADソフトにおける「Grasshoppper」)により実行してもよい。
【0057】
基準位置の特定は、任意の方法を採用してもよい。例えば、基準位置が鼻の位置および両耳の位置の場合、例えば、スキャンされた頭部形状3Dデータにおける頭部輪郭に対する上下左右の凹凸部分に基づいて、鼻の位置および両耳の位置として検出してもよい。あるいは、端末装置1の操作者が、スキャンされた頭部形状3Dデータについて、手動で基準位置を特定してもよい。
【0058】
平面の作成は、基準位置に基づいて行われてもよい。例えば、基準位置が鼻の位置、右耳の位置および左耳の位置の場合、これら3点を通る平面を基準平面として作成することができる。また、作成された基準平面に平行な1つまたは複数の平面を、頭頂部方向および/または首方向に作成することができる。
【0059】
平面の特定は、作成された平面のうち、1つまたは複数の平面を特定することができる。特定された平面について、頭部形状の医学的指標や第2の指標を算出してもよいし、メッシュ変形手法における制約条件を設定してもよい。
【0060】
各平面への投射は、基準平面で特定された点や線(例えば、医学的指標や第2の指標を算出する際に必要な線や点)を他の平面に投射することで実行されてもよい。
【0061】
頭部形状の医学的指標の算出は、所望の方法により、実行されてもよい。
【0062】
第2の指標の算出は、所望の方法により、実行されてもよい。
【0063】
メッシュ変形手法の適用は、メッシュ化された頭部形状3Dデータに対して頭部形状の医学的指標を制約条件としたメッシュ変形手法(例えば、ラプラシアンスムージング)を適用し、矯正目標頭部3Dデータを作成することができる。
【0064】
通信I/F 18は、通信ネットワークNWを介してデータ等を送受信してもよい。矯正目標頭部3Dデータの作成が、端末装置1にインストールされた矯正目標頭部3Dデータ作成用ソフトウェア4ではなく、サーバ2上で行われる場合には、通信I/F 18は、通信ネットワークNWを介してサーバ2やスキャン装置3とデータ等を送受信してもよい(図3)。
【0065】
図4は、サーバ2の機能ブロック図の一例を示す。サーバ2は、入出力部20、記憶部21、データ修正部22、基準位置特定部23、医学的指標算出部24、第2の指標算出部25および頭部矯正目標データ作成部26を備えている。サーバは、1つであってもよいし、複数であってもよい。サーバが複数の場合は、機能ブロックが各サーバに分割されていてもよい。
【0066】
入出力部200は、端末装置1やスキャン装置3などからデータ等を送受信することができる。
【0067】
記憶部201は、スキャンされた頭部形状3Dデータ、特定された基準位置、算出された頭部形状の医学的指標、算出された第2の指標、作成された矯正目標頭部3Dデータなどを記憶することができる。
【0068】
データ修正部202は、必要に応じて、スキャンされた頭部形状3Dデータを修正することができる。頭部形状3Dデータの修正を行うことで、矯正目標頭部3Dデータをより円滑に作成することができうる。頭部形状3Dデータの修正は、手動であってもよいし、所望のプログラムを使用して自動で行ってもよい。頭部形状3Dデータの修正としては、これらに限定されるものではないが、例えば、頭部に関連しない部分のデータ(ノイズ)の削除、スキャンされた頭部形状のデータの統合、歪みの修正等が挙げられる。
【0069】
メッシュデータ作成部203は、頭部形状3Dデータからメッシュデータを作成することができる。メッシュデータの作成は、例えば、公知のソフトウェアやプログラム等(例えば、「Rhinoceros」として販売されている三次元CADソフトにおける「Grasshoppper」)に基づいてもよい。
【0070】
基準位置特定部204は、スキャンされた頭部形状3Dデータにおける基準位置(例えば、鼻の位置および両耳の位置)を特定することができる。基準位置(鼻の位置および両耳の位置)の特定方法は、特段限定されるものではない。基準位置が鼻の位置および両耳の位置の場合、例えば、スキャンされた頭部形状3Dデータにおける頭部輪郭に対する上下左右の凹凸部分に基づいて、鼻の位置および両耳の位置として検出してもよい。あるいは、端末装置1の操作者が、スキャンされた頭部形状3Dデータについて、手動で基準位置を特定してもよい。
【0071】
平面作成部205は、基準位置に基づいて基準平面を作成することができる。例えば、基準位置が鼻の位置、右耳の位置および左耳の位置の場合、これら3点を通る平面を基準平面として作成することができる。また、平面作成部205は、作成された基準平面に平行な1つまたは複数の平面を、頭頂部方向および/または首方向に作成することができる。
【0072】
平面特定部206は、平面作成部205で作成された平面のうち、1つまたは複数の平面を特定することができる。特定された平面について、頭部形状の医学的指標や第2の指標を算出してもよいし、メッシュ変形手法における制約条件を設定してもよい。
【0073】
投射部207は、基準平面で特定された点や線(例えば、医学的指標や第2の指標を算出する際に必要な線や点)を他の平面に投射することができる。
【0074】
頭部形状の医学的指標算出部208は、頭部形状の医学的指標を算出することができる。
【0075】
第2の指標算出部209は、第2の指標を算出することができる。
【0076】
メッシュ変形手法適用部210では、メッシュ化された頭部形状3Dデータに対して医学的指標を制約条件としたメッシュ変形手法(例えば、ラプラシアンスムージング)を適用し、矯正目標頭部3Dデータを作成することができる。
【0077】
図5は、サーバ2の構成ブロック図の一例を示す。サーバ2は、CPU2a、ROM2b、RAM2c、入出力インターフェイス(I/F)2d、記憶装置2e、通信インターフェイス(I/F)2f、入力装置2gおよび表示装置2hを備え、これらはバスで接続されていてもよい。
【0078】
1または複数のCPU2aは、ROM2bまたは記憶装置2eに記憶された処理プログラムを読み出し、RAM2cをワーキングメモリとして用いて各種処理を実行することができる。各種処理には、スキャンされた頭部形状3Dデータの修正処理、基準位置を特定する処理、頭部形状の医学的指標を算出する処理、第2の指標を算出する処理、メッシュ変形手法により矯正目標頭部3Dデータを作成する処理等が含まれる。
【0079】
入出力I/F 2dは、入力装置2gや表示装置2hと接続され、データを入出力することができる。
【0080】
記憶装置2eは、HDDやSSD等で構成され、各種データを記憶することができる。記憶装置2eは、図4における記憶部21を含む。
【0081】
通信I/F 2fは、通信ネットワークNWを介して、端末装置1とデータ等を送受信することができる。通信I/F 2fは、図4における入出力部20を含む。
【0082】
以下、図8を用いて、矯正目標頭部3Dデータを作成する処理フローについて説明する。
【0083】
スキャン装置を用いて、頭部形状をスキャンする(S101)。
【0084】
スキャンした頭部形状のデータを端末装置等に取り込む(S102)。
【0085】
その後の処理を実行するにあたり、スキャンデータの修正が必要な場合には、スキャンデータの修正を行う(S103、S104)。スキャンデータの修正としては、ノイズの削除、データの統合、歪みの修正、スキャンデータが2Dの場合には、スキャンデータの3D化等が挙げられる。スキャンデータの修正が不要な場合には、S104を割愛してもよい。
【0086】
次に、スキャンデータに基づき、メッシュデータを作成する(S105)。
【0087】
次に、基準位置(例えば、鼻の位置、右耳の位置および左耳の位置)を特定し(S106)、特定された基準位置に基づいて基準平面を作成する(S107)。また、基準平面に基づいて、これと平行な1または複数の平面を作成してもよい(S107)。必要に応じて、1または複数の平面を特定してもよい(S108)。
【0088】
次に、頭部形状の医学的指標や第2の指標を算出してもよい(S109、S110)。基準平面に平行な1または複数な平面がある場合には、頭部形状の医学的指標や第2の指標を算出するにあたり必要な点や線を、これら平面に投射してもよい。
【0089】
なお、図8では、メッシュデータの作成の後に、基準3点の特定、平面の作成、平面の特定、頭部形状の医学的指標の算出、第2の指標の算出を行っているが、メッシュデータの作成前に、基準3点の特定、平面の作成、平面の特定、頭部形状の医学的指標の算出、第2の指標の算出を行ってもよい。また、基準3点の特定(S106)、医学的指標の算出(S109)および/または第2の指標の算出(S110)は、割愛してもよい。
【0090】
次に、頭部形状の医学的指標を制約条件(好ましくは、頭部形状の医学的指標および第2の指標を制約条件)としたメッシュ変形手法(好ましくは、ラプラシアンスムージング)を適用する(S111)。
【0091】
頭部形状の医学的指標を制約条件としたメッシュ変形手法を適用後に得られたデータにつき、データの修正が必要な場合には、データを修正したものを矯正目標頭部3Dデータとしてもよい(S112、S113、S114)。一方、データの修正が不要な場合は、頭部形状の医学的指標を制約条件としたメッシュ変形手法を適用後に得られたデータを、矯正目標頭部3Dデータとしてもよい(S112、S114)。
【0092】
次に、図9を用いてメッシュ変形手法の適用についてより詳細に説明する。
【0093】
必要に応じて、メッシュ変形手法を適用可能な端末装置等に頭部形状3Dデータを読み込ませる(S111a)。
【0094】
次に、第1の制約条件のもとで、メッシュ変形手法(好ましくはラプラシアンスムージング)を提供する(S111b)。第1の制約条件としては、1または複数の頭部形状の医学的指標であってもよいし、1または複数の第2の指標であってもよいし、1または複数の頭部形状の医学的指標と1または複数の第2の指標の組み合わせであってもよい。
【0095】
メッシュ変形手法を提供した結果、所望なデータが得られた場合には、S112へ移行してもよい(S111c)。一方、所望なデータが得られなかった場合には、第2の制約条件のもとで、メッシュ変形手法(好ましくはラプラシアンスムージング)をさらに適用してもよい(S111c、S111d)。第2の制約条件としては、1または複数の頭部形状の医学的指標であってもよいし、1または複数の第2の指標であってもよいし、1または複数の頭部形状の医学的指標と1または複数の第2の指標の組み合わせであってもよい。
【0096】
メッシュ変形手法を提供した結果、所望なデータが得られた場合には、S112へ移行してもよい(S111e)。一方、所望なデータが得られなかった場合には、第3の制約条件のもとで、メッシュ変形手法(好ましくはラプラシアンスムージング)をさらに適用してもよい(S111e、S111f)。第3の制約条件としては、1または複数の頭部形状の医学的指標であってもよいし、1または複数の第2の指標であってもよいし、1または複数の頭部形状の医学的指標と1または複数の第2の指標の組み合わせであってもよい。
【0097】
メッシュ変形手法を提供した結果、所望なデータが得られた場合には、S112へ移行してもよい(S111g)。一方、所望なデータが得られなかった場合には、同様のフローを繰り返してもよい(S111g、S111h)。第nの制約条件としては、1または複数の頭部形状の医学的指標であってもよいし、1または複数の第2の指標であってもよいし、1または複数の頭部形状の医学的指標と1または複数の第2の指標の組み合わせであってもよい。
【実施例0098】
[実施例1]
スキャンした乳幼児の頭部形状から得られた3Dデータ(元データ)をコンピュータに取り込み、「Rhinoceros」として販売されている三次元CADソフトにおける「Grasshoppper」機能を使用して、メッシュデータを作成した。次に、所望の方法により、該頭部形状3Dデータにおける鼻根(P1)、左耳珠点(P2)および右耳珠点(P3)の基準位置3点を特定した。次に、基準位置3点を含む基準平面(PL0)を設定した。次に、基準平面(PL0)に平行な複数個の平面を、頂点(頭頂)方向および首方向に設定した。次に、該頭部形状3Dデータに基づき、所望のプログラムを用いて、CAおよびCIを算出した。そして、スキャンした乳幼児の頭部形状3Dデータに対し、CA、CI、左右対称性およびEar Offsetを制約条件としたラプラシアンスムージングを適用した。制約条件は、第1の制約条件、第2の制約条件、第3の制約条件の順で適用した。このようにして、実施例1の矯正目標頭部3Dデータを得た。
・第1の制約条件:「Ear Offset制約」+「CA制約」
・第2の制約条件:「左右対称性制約」
・第3の制約条件:「CI制約」
【0099】
各条件の算出方法は、以下のとおりである。
【0100】
CA
基準平面(PL0)において、P2およびP3を結ぶ直線の中点(P4)を特定する。次に、基準位置として特定されたP1とP4を結ぶ直線である基準線を引く。次に、基準線に対して各々反対方向に約30°傾斜した2本の傾斜線と、PL0における頭部の輪郭との4つの交差点を特定する。PL0に平行である複数の他の平面においては、PL0で描いた2本の傾斜線を投射し、2本の傾斜線と、頭部の輪郭との4つの交差点を特定する。各平面において、4つの交差点に基づき導かれる2本の傾斜線の長さ(L1、L2)の差の絶対値(L1-L2)をCAとして算出した。
【0101】
CI
基準平面(PL0)において、P2およびP3を結ぶ直線の中点(P4)を特定する。次に、P1およびP4を通る直線である基準線に対して直交しかつP4を通る中心線を引く。次に、この中心線と、PL0における頭部の輪郭との2つの交差点を算出する。PL0に平行である複数の他の平面においては、PL0で描いた中心線を投射し、投射された中心線と、頭部の輪郭との2つの交差点を特定する。PL3(図6)および必要に応じてPL3以外の各平面において、この2つの交差点に基づき導かれる中心線の長さ(L3)と、基準線と頭部形状3Dデータにおける頭部の輪郭との2つの交差点に基づき算出される基準線の長さ(L4)を算出する。そして、PL3(図6)および必要に応じてPL3以外の各平面において、L3とL4に基づき、下記の式によりCIを算出した。
CI(%)=L4/L3×100
【0102】
なお、実施例1においては、PL3においてCI制約を適用し、PL3以外の他の複数の平面においては、PL3での変化量を適用した。
【0103】
左右対称性
基準平面(PL0)において、顔の正面から後頭部を通る直線(P1を通る直線)を引く。この直線とP2までの距離(D1)、およびこの直線とP3までの距離(D2)を算出する。PL0に平行である複数の他の平面においては、PL0で描いた直線、P2およびP3を投射し、投射された直線と投射されたP2までの距離(P2の位置よりも頭部輪郭が内側にある場合は、直線と頭部輪郭までの距離)、および投射された直線と投射されたP3までの距離(P3の位置よりも頭部輪郭が内側にある場合は、直線と頭部輪郭までの距離)を算出する。そして、各平面においてD1とD2の差の絶対値を左右対称性として算出した。
【0104】
Ear Offset
基準平面(PL0)において、P2を通る水平線(H1)と、P3を通る水平線(H2)を引く。2本の水平線(H1とH2)の距離をEar Offsetとして算出した。
【0105】
各指標における制約条件は、以下のとおりとした。
・各平面におけるCA制約:6mm未満
・PL3におけるCI制約:80~94%
・各平面における左右対称性制約:0に近づける
・Ear Offset制約:0に近づける
【0106】
[実施例2]
スキャンした乳幼児の頭部形状から得られた3Dデータをコンピュータに取り込み、「Rhinoceros」として販売されている三次元CADソフトにおける「Grasshoppper」機能を使用して、メッシュデータを作成した。次に、所望の方法により、該頭部形状3Dデータにおける鼻根(P1)、左耳珠点(P2)および右耳珠点(P3)の基準位置3点を特定した。次に、基準位置3点を含む基準平面(PL0)を設定した。次に、基準平面(PL0)に平行な複数個の平面を、頂点(頭頂)方向および首方向に設定した。次に、該頭部形状3Dデータに基づき、所望のプログラムを用いて、CAおよびCIを算出した。そして、スキャンした乳幼児の頭部形状3Dデータに対し、CA、CI、左右対称性、Ear Offsetおよび首周辺の形状を制約条件としたラプラシアンスムージングを適用した。制約条件は、第1の制約条件、第2の制約条件、第3の制約条件の順で適用した。このようにして、実施例2の矯正目標頭部3Dデータを得た。
・第1の制約条件:「Ear Offset制約」+「CA制約」+「首周辺の形状の制約」
・第2の制約条件:「左右対称性制約」+「首周辺の形状の制約」
・第3の制約条件:「CI制約」+「首周辺の形状の制約」
【0107】
CA、CI、左右対称性およびEar Offsetの算出方法は、実施例1と同じとした。首周辺の形状は、以下のとおり算出した。
【0108】
首周辺の形状
基準平面(PL0)よりも首方向の各平面(例えば、PL-1)において、任意の点(vi)(例えば、メッシュ形状の任意の頂点)を設定する。次に、設定した任意の点(vi)と、ラプラシアンスムージングを適用した後に移動した位置(v’i)との位置関係(移動距離)を、下記式に当て嵌め、首周辺の形状の変化量(Ei)とする。Eiを、各平面において、複数点において算出する。
【数式3】
【0109】
【0110】
各指標における制約条件は、以下のとおりとした。
・各平面におけるCA制約:6mm未満
・PL3におけるCI制約:80~94%
・各平面における左右対称性制約:0に近づける
・Ear Offset制約:0に近づける
・各平面における首周辺の形状の制約:0.3~0.5
【0111】
[参考例1]
スキャンした乳幼児の頭部形状から得られた3Dデータ(元データ)をコンピュータに取り込み、所望の方法により、該頭部形状3Dデータにおける鼻根(P1)、左耳珠点(P2)および右耳珠点(P3)の基準3点を特定した。次に、該頭部形状3Dデータに基づき、所望のプログラムを用いて、CAおよびCIを算出した。そして、3D CADソフトウェア(「Rhinoceros」として販売されている三次元CADソフトにおける「Grasshoppper」機能)を用いて、CAおよびCIに基づく頭部形状3Dデータの歪みを確認しながら手作業で、スキャンした乳幼児の頭部形状3Dデータを調整した。このようにして、参考例1の矯正目標頭部3Dデータを得た。
【0112】
結果
実施例1の矯正目標頭部3Dデータは、参考例1の矯正目標頭部3Dデータと比較して、遜色のないものであった(図10)。
実施例2の矯正目標頭部3Dデータは、実施例1の矯正目標頭部3Dデータと比較して、実際のヒト頭部形状(特に、首周辺の形状)がよりよく反映されていると考えられる(図11)。したがって、ラプラシアンスムージングを適用するにあたり、第2の制約(例えば、首回りの制約を加えることで、実際のヒト頭部形状をよりよく反映した矯正目標頭部3Dデータが得られると考えられる。
【符号の説明】
【0113】
1:端末装置
10:操作部
11:表示部
12:記憶部
13:処理部
14:入出力部
2:サーバ
20:入出力部
21:記憶部
22:データ修正部
23:メッシュデータ作成部
24:基準位置特定部
25:医学的指標算出部
26:第2の指標算出部
27:矯正目標頭部3Dデータ作成部
3:スキャン装置
NW:通信ネットワーク

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11