(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165197
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】医用画像診断システム及び医用画像診断システムの作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A61B5/055 390
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081130
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】中山 正之
(72)【発明者】
【氏名】横浜 亘
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB46
4C096AB47
4C096AC01
4C096AC04
4C096AC05
4C096AC06
4C096AC07
4C096AC08
4C096AD19
4C096DA17
4C096FC09
4C096FC10
(57)【要約】
【課題】画像診断装置による検査中の被検者による映像に係る制御を可能にし、検査中の被検者の不安やストレスを低減する医用画像診断システム及びその作動方法を提供する。
【解決手段】MRI検査中の被検者がボア内で視認可能な態様で映像を表示する投影機17と、ボア内に表示される映像に係る操作を、MRI検査中の被検者の動作により検知するカメラ15、第1マイク16又は操作器19を含む操作検知器と、プロセッサと、を備え、プロセッサは、操作検知器が検知した映像に係る操作を示す操作指示を受け付け、受け付けた操作指示の内容に基づいて表示する映像に係る制御を行う、医用画像診断システムである。映像に係る操作は、投影機17により投影される映像の映像コンテンツの選択、切替え、表示されている映像の早送り、巻き戻し、一時停止、再生及び音量調整のうちの少なくとも1つを含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像診断装置による被検者の検査中に前記被検者が視認可能な態様で映像を表示する映像表示器と、
前記映像表示器に表示される映像に係る操作を、前記検査中の前記被検者の動作により検知する操作検知器と、
プロセッサと、
前記プロセッサに実行させるプログラムを記憶するメモリと、を備え、
前記プロセッサは、
前記操作検知器が検知した前記映像に係る操作を示す操作指示を受け付け、
前記受け付けた前記操作指示の内容に基づいて前記映像表示器が表示する映像に係る制御を行う、
医用画像診断システム。
【請求項2】
前記映像に係る操作は、前記映像表示器に表示させる映像コンテンツの選択、切替え、前記映像表示器に表示されている映像の早送り、巻き戻し、一時停止、再生及び音量調整のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の医用画像診断システム。
【請求項3】
前記操作検知器は、可視光カメラを含み、前記可視光カメラが撮像した映像から検出される前記被検者の指、又は手足の動き、視線の動き、瞼の動き、及び口唇の動きの少なくとも1つの動きに基づいて前記映像に係る操作を検知する、
請求項1に記載の医用画像診断システム。
【請求項4】
前記操作検知器は、赤外線カメラを含み、前記赤外線カメラが撮像した映像から検出される前記被検者の指、又は手足の動きに基づいて前記映像に係る操作を検知する、
請求項1に記載の医用画像診断システム。
【請求項5】
前記操作検知器は、前記被検者により操作される操作器を含み、前記操作器での操作内容に応じて前記映像に係る操作を検知する、
請求項1に記載の医用画像診断システム。
【請求項6】
前記操作検知器は、第1マイクを含み、前記第1マイクが検出した前記被検者が発する音声を認識して前記映像に係る操作を検知する、
請求項1に記載の医用画像診断システム。
【請求項7】
前記画像診断装置は、前記被検者の頭部及び上肢を含む複数の検査部位のうちの予め設定された検査部位を撮像し、
前記操作検知器は、種類の異なる複数の検知器を含み、前記複数の検知器のうち、前記検査部位の撮像への影響度が他の検知器よりも低い検知器が選択される、
請求項3から6のいずれか1項に記載の医用画像診断システム。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記画像診断装置の検査部位に応じて、前記複数の検知器のうち、前記検査部位の撮像への影響度が他の検知器よりも低い検知器から前記操作指示を受け付ける、
請求項7に記載の医用画像診断システム。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記操作検知器による前記映像に係る操作を支援する操作ウィンドウを、前記映像表示器に表示させる、
請求項1に記載の医用画像診断システム。
【請求項10】
前記画像診断装置のボア内の環境光を調整する環境光調整器を備え、
前記プロセッサは、前記操作検知器から前記環境光を調整する操作指示を受け付け、前記環境光調整器を制御する、
請求項1に記載の医用画像診断システム。
【請求項11】
前記画像診断装置のボア内の環境光を調整する環境光調整器を備え、
前記プロセッサは、前記映像表示器に表示される映像の内容に応じて前記環境光調整器を制御する、
請求項1に記載の医用画像診断システム。
【請求項12】
前記画像診断装置のボア内の環境光を調整する環境光調整器を備え、
前記プロセッサは、前記映像表示器に表示される映像のシーンにシンクロさせて前記環境光調整器を制御する、
請求項1に記載の医用画像診断システム。
【請求項13】
前記環境光調整器は、色相、明度、及び彩度のうちの少なくとも1つを調整する、
請求項10から12のいずれか1項に記載の医用画像診断システム。
【請求項14】
前記映像表示器は、前記被検者が視認可能なスクリーンに投影する投影機、ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、液晶ディスプレイ、又は有機ELディスプレイである、
請求項1に記載の医用画像診断システム。
【請求項15】
前記画像診断装置は、磁気共鳴イメージング装置、X線CT装置、PET装置、放射線治療装置、又は粒子線治療装置を含む、
請求項1に記載の医用画像診断システム。
【請求項16】
画像診断装置による被検者の検査中に前記被検者が視認可能な態様で映像を表示する映像表示器と、前記映像表示器に表示される映像に係る操作を検知する操作検知器と、プロセッサと、を備えた医用画像診断システムの作動方法において、
前記操作検知器が、前記検査中の前記被検者の動作により前記映像に係る操作を検知するステップと、
前記プロセッサが、前記操作検知器から前記映像に係る操作を示す操作指示を受け付けるステップと、
前記プロセッサが、前記受け付けた前記操作指示の内容に基づいて前記映像表示器が表示する映像に係る制御を行うステップと、
を含む医用画像診断システムの作動方法。
【請求項17】
前記映像に係る操作は、前記映像表示器に表示させる映像コンテンツの選択、切替え、前記映像表示器に表示されている映像の早送り、巻き戻し、一時停止、再生及び音量調整のうちの少なくとも1つを含む、
請求項16に記載の医用画像診断システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医用画像診断システム及び医用画像診断システムの作動方法に係り、特に画像診断装置による検査中の被検者の不安やストレスを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置(MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置)、X線CT(Computed Tomography)装置などの画像診断装置による被検者の検査時間は、比較的長く、MRI装置の場合には20分~30分程度、X線CT装置の場合には、単純検査で5~10分程度、造影検査で5~20分程度の時間を要する。
【0003】
また、MRI装置等による撮影は、「ボア」と呼ばれる円筒状の撮影空間内で行われ、検査中は体動が画像アーチファクトになりうるため、呼吸を含め、体動を極力抑える必要がある。「ボア」という閉所空間で、長時間にわたり、体動を抑制して検査を受けることは、被検者にとってストレスとなっている。
【0004】
そこで、従来、ボア内の被検者が鑑賞できる映像を投影し、検査中の被検者をリラックスさせる技術が提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2020-535931号公報
【特許文献2】特開2017-080299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1-2には、いずれも検査中の被検者が映像に係る制御を行う技術については記載されていない。
【0007】
特許文献1には、「エンターテイメントビデオコンテンツは、患者により選択可能である」(特許文献1の請求項37)という記載があるものの、具体的な構成については何ら記載されていない。
【0008】
また、特許文献2には、ボアに挿入されたスクリーンに投影される第1映像と、ボアの内壁に第2映像であって、第1映像に応じてトリミングされた第2映像とを投影する映写機が記載されている。また、特許文献2には、操作者の指示により、第1映像と第2映像とにおいて、色相、明度、及び模様のうち少なくとも一つが異なるように、映写機により投影される投影映像が生成される記載があるが、検査中の被検者が、色相、明度、及び模様のうち少なくとも一つを変更するように指示する記載はない。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、画像診断装置による検査中の被検者による映像に係る制御を可能にし、検査中の被検者の不安やストレスを低減することができる医用画像診断システム及び医用画像診断システムの作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1態様に係る発明は、画像診断装置による被検者の検査中に被検者が視認可能な態様で映像を表示する映像表示器と、映像表示器に表示される映像に係る操作を、検査中の被検者の動作により検知する操作検知器と、プロセッサと、プロセッサに実行させるプログラムを記憶するメモリと、を備え、プロセッサは、操作検知器が検知した映像に係る操作を示す操作指示を受け付け、受け付けた操作指示の内容に基づいて映像表示器が表示する映像に係る制御を行う、医用画像診断システムである。
【0011】
本発明の第1態様によれば、検査中の被検者の動作により、その被検者が観る映像に係る制御を行うことができ、被検者をリラックスさせる映像をより有効に活用することができる。
【0012】
本発明の第2態様に係る医用画像診断システムは、第1態様において、映像に係る操作は、映像表示器に表示させる映像コンテンツの選択、切替え、映像表示器に表示されている映像の早送り、巻き戻し、一時停止、再生及び音量調整のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0013】
本発明の第3態様に係る医用画像診断システムは、第1態様又は第2態様において、操作検知器は、可視光カメラを含み、可視光カメラが撮像した映像から検出される被検者の指、又は手足の動き、視線の動き、瞼の動き、及び口唇の動きの少なくとも1つの動きに基づいて映像に係る操作を検知することが好ましい。
【0014】
本発明の第4態様に係る医用画像診断システムは、第1態様から第3態様のいずれかにおいて、操作検知器は、赤外線カメラを含み、赤外線カメラが撮像した映像から検出される被検者の指、又は手足の動きに基づいて映像に係る操作を検知することが好ましい。赤外線カメラの場合、防寒のためにタオルケットが被検者に掛けられていても、赤外光が透過しやすい薄手の生地のタオルケットを用いることで、タオルケット越しに指先の動き等を撮影することができる。
【0015】
本発明の第5態様に係る医用画像診断システムは、第1態様から第4態様のいずれかにおいて、操作検知器は、被検者により操作される操作器を含み、操作器での操作内容に応じて映像に係る操作を検知することが好ましい。操作器としては、検査開始前に被検者に渡される緊急連絡用スイッチを兼用したり、映像操作用のリモコンスイッチ等を適用することができる。
【0016】
本発明の第6態様に係る医用画像診断システムは、第1態様から第5態様のいずれかにおいて、操作検知器は、第1マイクを含み、第1マイクが検出した被検者が発する音声を認識して映像に係る操作を検知することが好ましい。
【0017】
本発明の第7態様に係る医用画像診断システムは、第1態様から第6態様のいずれかにおいて、画像診断装置は、被検者の頭部及び上肢を含む複数の検査部位のうちの予め設定された検査部位を撮像し、操作検知器は、種類の異なる複数の検知器を含み、複数の検知器のうち、検査部位の撮像への影響度が他の検知器よりも低い検知器が選択されることが好ましい。画像診断装置により撮像される画像のアーチファクトの発生を抑制するためである。
【0018】
本発明の第8態様に係る医用画像診断システムは、第7態様において、プロセッサは、画像診断装置の検査部位に応じて、複数の検知器のうち、検査部位の撮像への影響度が他の検知器よりも低い検知器から操作指示を受け付けることが好ましい。
【0019】
本発明の第9態様に係る医用画像診断システムは、第1態様から第8態様のいずれかにおいて、プロセッサは、操作検知器による映像に係る操作を支援する操作ウィンドウを、映像表示器に表示させることが好ましい。被検者が操作ウィンドウを見ながら、操作検知器による詳細な操作を可能にするためである。
【0020】
本発明の第10態様に係る医用画像診断システムは、第1態様から第9態様のいずれかにおいて、画像診断装置のボア内の環境光を調整する環境光調整器を備え、プロセッサは、操作検知器から環境光を調整する操作指示を受け付け、環境光調整器を制御することが好ましい。被検者の好みの環境光にするため、あるいはボア内に表示される映像を見やすくするためである。
【0021】
本発明の第11態様に係る医用画像診断システムは、第1態様から第9態様のいずれかにおいて、画像診断装置のボア内の環境光を調整する環境光調整器を備え、プロセッサは、映像表示器に表示される映像の内容に応じて環境光調整器を制御することが好ましい。ボア内の表示される映像が見やすいように、装置側で自動調整するためである。
【0022】
本発明の第12態様に係る医用画像診断システムは、第1態様から第9態様のいずれかにおいて、画像診断装置のボア内の環境光を調整する環境光調整器を備え、プロセッサは、映像表示器に表示される映像のシーンにシンクロさせて環境光調整器を制御することが好ましい。
【0023】
本発明の第13態様に係る医用画像診断システムは、第10態様から第12態様のいずれかにおいて、環境光調整器は、色相、明度、及び彩度のうちの少なくとも1つを調整することが好ましい。
【0024】
本発明の第14態様に係る医用画像診断システムは、第1態様から第13態様のいずれかにおいて、映像表示器は、被検者が視認可能なスクリーンに投影する投影機、ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、液晶ディスプレイ、又は有機ELディスプレイである。
【0025】
本発明の第15態様に係る医用画像診断システムは、第1態様から第14態様のいずれかにおいて、画像診断装置は、磁気共鳴イメージング装置、X線CT装置、PET装置、放射線治療装置、又は粒子線治療装置を含む。本発明は、検査時間、治療時間が比較的長くなる画像診断装置に対して好適である。
【0026】
第16態様に係る本発明は、画像診断装置による被検者の検査中に被検者が視認可能な態様で映像を表示する映像表示器と、映像表示器に表示される映像に係る操作を検知する操作検知器と、プロセッサと、を備えた医用画像診断システムの作動方法において、操作検知器が、検査中の被検者の動作により映像に係る操作を検知するステップと、プロセッサが、操作検知器から映像に係る操作を示す操作指示を受け付けるステップと、プロセッサが、受け付けた操作指示の内容に基づいて映像表示器が表示する映像に係る制御を行うステップと、を含む医用画像診断システムの作動方法である。
【0027】
本発明の第17態様に係る医用画像診断システムの作動方法は、第16態様において、映像に係る操作は、映像表示器に表示させる映像コンテンツの選択、切替え、映像表示器に表示されている映像の早送り、巻き戻し、一時停止、再生及び音量調整のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、画像診断装置による検査中の被検者は、自分が観る映像に係る制御を行うことができ、検査中の被検者の不安やストレスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明に係る医用画像診断システムが適用される画像診断装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したMRI装置の模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、MRI装置に対する被検者の身体の向きの入れ替えを示す図である。
【
図4】
図4は、MRI装置を操作する操作室の内部の様子を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る医用画像診断システムの構成図である。
【
図6】
図6は、医用画像診断システムを構成する主要な機器である信号処理装置のハードウェアの実施形態を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、被検者の指の動きに基づいて映像に係る操作を検知し、映像に係る操作を実行する場合の映像の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、被検者の手の動きに基づいて映像に係る操作を検知し、映像に係る操作を実行する場合の映像の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、被検者の手を含む映像を撮影する様子を示す図である。
【
図10】
図10は、被検者の視線の動きに基づいて映像に係る操作を検知し、映像に係る操作を実行する場合の映像の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、被検者の視線の動き等に基づいて映像に係る操作を検知し、映像に係る操作を実行する場合の映像の他の例を示す図である。
【
図12】
図12は、発言認識部の実施形態を示す概念図である。
【
図13】
図13は、被検者により操作される操作器の一例を示す要部外観図である。
【
図14】
図14は、被検者により操作される操作器の他の例を示す要部外観図である。
【
図15】
図15は、映像に係る制御の他の実施形態を示す概念図である。
【
図16】
図16は、MRI装置による検査中に被検者が視認可能な態様で映像を表示する映像表示器の他の実施形態を示す図である。
【
図17】
図17は、検査部位、検出手法、影響度、及び検出手法の選択等の関係を示す図表である。
【
図18】
図18は、本発明に係る医用画像診断システムの作動方法の実施形態を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、本発明に係る医用画像診断システムの作動方法の他の実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面に従って本発明に係る医用画像診断システム及び医用画像診断システムの作動方法の好ましい実施形態について説明する。
【0031】
図1は、本発明に係る医用画像診断システムが適用される画像診断装置の一例を示す斜視図である。
【0032】
図1に示す画像診断装置は、磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)10であり、ガントリ11と、ガントリ11に設けられた円筒上の撮影空間であるボア12の前方側に配置された天板13Aを備えた寝台13とを備えている。
【0033】
本例の画像診断装置は、MRI装置10であるが、本発明はこれに限らず、X線CT装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、放射線治療装置、又は粒子線治療装置を含む。本発明は、検査時間、治療時間が比較的長くなる装置に対して好適である。
【0034】
図2は、
図1に示したMRI装置の模式的な断面図である。
【0035】
図2において、ガントリ11には、MRI磁石10A、その他各種のコイルが配設されており、天板13Aに仰臥している被検者5は、天板13Aをボア12に移動させることで、被検者5の検査部位が、ボア12内の静磁場中心に位置するように移動させられる。被検者5の検査部位には、人体からのFID(Free Induction Decay)を受信するためのRF(Radio Frequency)コイル10Bが配置される。本例では、被検者5の腹部が検査部位であり、RFコイル10Bは腹部に配置されている。
【0036】
ボア12の両端の上部には、可視光カメラであるカメラ15(15A、15B)、及び第1マイク16(16A、16B)が配置されている。尚、
図2上で、ボア12の左端の上部にカメラ15A、第1マイク16Aが配置され、ボア12の右端の上部にカメラ15B、第1マイク16Bが配置されている。
【0037】
2台のカメラ15A、15Bは、それぞれ被検者5を撮影し、動画(映像)を出力するもので、2台のカメラ15A、15Bの少なくとも一方は、被検者5の顔領域を含む映像を撮影する。
【0038】
また、2台の第1マイク16A、16Bは、それぞれ被検者5が発する音声を検出する。第1マイク16A、16Bは、受音体部に非磁性体である圧電セラミックを使用した非磁性マイクが好ましい。
【0039】
天板13Aの一端(
図2上では、左端)には、投影機17が配置されており、投影機17は、ボア12内の天井部分に配設されたスクリーン17Aに映像を投影する。この投影機17は、MRI装置10による検査中に被検者5が視認可能な態様で映像を表示する映像表示器として機能し、被検者5は、スクリーン17Aに投影された映像を検査中に視認することがきる。尚、スクリーン17Aを設けずに、ボア12内の天井部分をスクリーンとして使用するようにしてもよい。
【0040】
また、
図2において、18は、バイタル情報測定器であり、被検者5の心拍数、血圧、呼吸数、体温、心電及び血中酸素飽和濃度のうちの1以上を測定する。バイタル情報測定器18は、被検者5の背中部分に配置されているものに限らない。
【0041】
具体的なバイタル情報測定器18としては、心電、心拍を測定するECG(electrocardiogram)センサ、血中酸素飽和濃度を測定するSpO2センサ、呼吸数を検出するベローズ、被検者5の表情、体温等の検出が可能な光学カメラ、赤外線カメラ、体温を測定するサーモグラフィ、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)信号(MRI検査で取得した信号自体)、MRI画像(NMR信号を画像化したもの)、その他のセンサ(圧力センサ、光学センサ、超音波センサなど)、及びこれらを組み合わせたものが考えられる。
【0042】
図3は、MRI装置に対する被検者の身体の向きの入れ替えを示す図である。
【0043】
図3(A)は、被検者5がボア12内に頭から入る場合(ヘッドファースト)を示し、
図3(B)は、被検者5がボア12内に足から入る場合(フットファースト)を示している。
【0044】
被検者5の検査部位に応じてヘッドファースト又はフットファーストが選択される。本例では、ヘッドファースト又はフットファーストの何れが選択されても、被検者5の顔領域の撮影及び音声の検出ができるように、ボア12の両端部にそれぞれカメラ15A、15B、及び第1マイク16A、16Bが配設されている。
【0045】
尚、カメラ15(15A、15B)、及び第1マイク16(16A、16B)は、本例では2台であるが、これに限らず、1台でもよいし、3台以上でもよい。また、カメラ15、及び第1マイク16は、MRI装置10に配置する場合に限らず、MRI装置10の近傍に配置するようにしてもよい。
【0046】
図4は、MRI装置を操作する操作室の内部の様子を示す図である。
【0047】
図4に示すように操作室2には、検査室に設置されたMRI装置10を制御し、また、MRI装置10から出力されるNMR信号を処理し、MRI画像を生成する信号処理装置20が設置されている。
【0048】
信号処理装置20は、コンピュータを用いて構成することができる。信号処理装置20に適用されるコンピュータは、パーソナルコンピュータであってもよいし、ワークステーションであってもよい。操作者28は、キーボード、マウス等の操作部を使用し、信号処理装置20を通じてMRI装置10の動作を制御することができる。
【0049】
また、本例の信号処理装置20は、本発明に係る医用画像診断システムの一部の機能を備えているが、その詳細については後述する。
【0050】
信号処理装置20は、MRI画像等を表示する表示器24、操作者28の音声を検出するマイク(第2マイク)25、及び検査中に被検者5が発する音声等を発生するスピーカ26を備えている。
【0051】
また、
図4において、2Aは、操作者28が検査室の様子を観るための窓である。29は、カメラ15A,15Bが撮影した映像、バイタル情報等を表示する表示器である。
【0052】
[医用画像診断システムの構成図]
図5は、本発明に係る医用画像診断システムの構成図である。
【0053】
図5に示す医用画像診断システムは、MRI装置10に配設されたカメラ15、第1マイク16、投影機17、バイタル情報測定器18、後述する操作器19、及びMRI装置10のパルスシーケンス部を含む撮像部(図示せず)等と、操作室2の信号処理装置20とが、LAN(Local area network)等のネットワーク50を介して相互に接続されて構成されている。
【0054】
図6は、医用画像診断システムを構成する主要な機器である信号処理装置のハードウェアの実施形態を示すブロック図である。
【0055】
図6に示す信号処理装置20は、前述したようにコンピュータ等により構成され、プロセッサ21、メモリ22、入出力インターフェース23、表示器24、スピーカ26、及び操作部27等を備える。
【0056】
プロセッサ21は、CPU(Central Processing Unit)等から構成され、信号処理装置20の各部、及びMRI装置10に配設された各種の機器を統括制御するとともに、メモリ22に記憶された信号処理プログラムを実行することで、後述する各種の機能を実現させる。
【0057】
メモリ22は、フラッシュメモリ、ROM(Read-only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク装置等を含む1以上のメモリである。フラッシュメモリ、ROM及びハードディスク装置は、オペレーションシステム、プロセッサ21を信号処理装置20として機能させる信号処理プログラム、機械学習モデルを含む各種のプログラム、及び投影機17が投影する複数の映像コンテンツ等を記憶する不揮発性メモリである。
【0058】
RAMは、プロセッサ21による処理の作業領域として機能し、また、不揮発性メモリに格納された情報処理プログラム等を一時的に記憶する。尚、プロセッサ21が、メモリ22の一部(RAM)を内蔵していてもよい。
【0059】
入出力インターフェース23は、ネットワーク50と接続可能な通信部、及び外部機器と接続可能な接続部等を含む。外部機器と接続可能な接続部としては、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)(HDMIは登録商標)等を適用することができる。
【0060】
プロセッサ21は、入出力インターフェース23及びネットワーク50を介してMRI装置10に配設された各種の機器との間で通信し、これにより必要な情報の送受信を行う。
【0061】
表示器24は、検査中に被検者5が発する発言内容を示す文字、MRI画像、被検者5の個人情報、及び操作部27からの入力を受け付ける場合のGUI(Graphical User Interface)の一部として使用される。
【0062】
マイク25は、操作者28が発する音声を検出し、検出した音声を示す音声信号を信号処理装置20に出力する。
【0063】
スピーカ26は、信号処理装置20から音声信号を入力し、検査中に被検者5が発する発言内容を示す音声等を発生する。
【0064】
操作部27は、マウス、キーボード等を含み、表示器24の表示操作ウィンドウを使用し、操作者28の入力を受け付けるGUIの一部として機能する。
【0065】
[医用画像診断システムの作用]
信号処理装置20のプロセッサ21は、被検者5をリラックスさせるための映像を、投影機17からスクリーン17Aに投影させることができる。
【0066】
即ち、プロセッサ21は、メモリ22に記憶された複数の映像コンテンツから選択された映像コンテンツを、入出力インターフェース23及びネットワーク50を介して投影機17に送信し、投影機17は、受信した映像コンテンツに基づいて映像をボア12内のスクリーン17Aに投影する。尚、複数の映像コンテンツは、空、海、山などの自然を描写した環境映像、動植物又は観光地の映像、子供向けのアニメーションなどの映像、あるいは書籍を示す映像を含む。
【0067】
検査中の被検者5は、スクリーン17Aに投影された映像を鑑賞することで、リラックスすることができる。
【0068】
特に、本発明に係る医用画像診断システムは、被検者5が、検査中に映像に係る制御を行うことができるように構成されている。ここで、「映像に係る制御」とは、映像コンテンツの選択、切替え、映像の早送り、巻き戻し、一時停止、再生、音量調整、書籍のページめくり等を含む。
【0069】
<映像に係る操作を検知する操作検知器の第1実施形態>
第1実施形態の操作検知器は、検査中の被検者5を撮影する可視光カメラ(カメラ15)を含み、カメラ15が撮影した動画(映像)から、被検者5の指、又は手足の動きに基づいて映像に係る操作を検知する。
【0070】
図7は、被検者の指の動きに基づいて映像に係る操作を検知し、映像に係る操作を実行する場合の映像の一例を示す図である。
【0071】
図7において、検査中の被検者5をリラックスさせるための映像170には、映像に係る操作を支援する操作ウィンドウ171が重畳表示されている。
【0072】
プロセッサ21は、カメラ15が撮影した映像から被検者5の指の動作(ウェイクアップ動作)を検知すると、映像の早送り、巻き戻し、一時停止、及び再生を指示するアイコンボタンを有する操作ウィンドウ171をポップアップ表示することが好ましい。被検者5は、操作ウィンドウ171を見ながら自分の指又は手を移動させることで、アイコン171A(本例では手の形をしたアイコン171A)を移動させる。即ち、プロセッサ21は、カメラ15が撮影した映像から被検者5の手又は指の動作に応じてアイコン171Aを移動させる。
【0073】
被検者5は、アイコン171Aの人指し指を、映像の早送り、巻き戻し、一時停止、再生のいずれかのアイコンボタン上に移動させたのち、例えば、人指し指をタップ動作させることで、映像の早送り、巻き戻し、一時停止、又は再生を指示し、プロセッサ21は、カメラ15が撮影した映像から被検者5の手又は指の上記の動作を検知することで、映像の早送り、巻き戻し、一時停止、又は再生を実行させる。
【0074】
尚、プロセッサ21は、操作ウィンドウ171をポップアップ表示したのち、被検者5の手又は指の動作が一定時間以上検出しない場合、又は再生が指示された場合には、操作ウィンドウ171を消去することが好ましい。また、映像170に操作ウィンドウ171を常時表示させるようにしてもよい。この場合、映像に係る操作を支援する操作ウィンドウが、映像170の邪魔にならないように映像の端部に表示させることが好ましい。
【0075】
図8は、被検者の手の動きに基づいて映像に係る操作を検知し、映像に係る操作を実行する場合の映像の一例を示す図であり、特に映像を切り替える場合に関して示している。
【0076】
図8において、検査中の被検者5をリラックスさせるための映像170には、映像に係る操作を支援する操作ウィンドウ172(映像を切り替えための操作ウィンドウ)が重畳表示されている。
【0077】
検査中の被検者5は、手を反時計回り方向、又は時計回り方向に回動動作させることで、現在表示させている映像170に代えて、次の映像又は前の映像に切り替えることができる。即ち、プロセッサ21は、上記と同様にしてカメラ15が撮影した映像から被検者5の手の動作(反時計回り方向、又は時計回り方向の回動動作)を検知し、現在表示させている映像170に代えて、次の映像又は前の映像に切り替えて表示させる。
【0078】
尚、映像を切り替える場合に限らず、例えば、映像コンテンツのリストを表示させ、被検者5は、指又は手の動作により所望の映像コンテンツを選択するようにしてもよい。プロセッサ21は、被検者5の指又は手の動作により映像コンテンツの選択指示を受け付けると、受け付けた映像を表示させる。
【0079】
図9は、被検者の手を含む映像を撮影する様子を示す図である。
【0080】
図9に示すように検査中の被検者5には、防寒のためにタオルケット152が被検者に掛けられる場合がある。この場合、可視光カメラであるカメラ15は、タオルケット152の内側の被検者5の手を撮影することができない。
【0081】
そこで、タオルケット152には、被検者5の手を出すことができる開口部152Aが形成されていることが好ましい。
【0082】
一方、カメラ15の代わりに、赤外線カメラを使用することができる。赤外線カメラの場合、タオルケットが被検者5に掛けられていても、赤外光が透過しやすい薄手の生地のタオルケットを用いることで、タオルケット越しに指先の動き等を撮影することができる。
【0083】
尚、第1実施形態の操作検知器のカメラ15は、被検者5の両手のうちのいずれか一方の手指を選択して撮影できるように設定してもよい。例えば、MRI画像のアーチファクトの発生を抑制するために、検査部位から遠い方の手指を撮影したり、被検者5の利き手側を撮影することが好ましい。また、手指の動きに限らず、例えば、足先の動きを撮影して映像に係る操作を検知するようにしてもよい。
【0084】
<映像に係る操作を検知する操作検知器の第2実施形態>
第2実施形態の操作検知器は、検査中の被検者5を撮影するカメラ15を含み、カメラ15が撮影した映像(特に被検者5の瞳領域の映像)から、被検者5の視線の動きに基づいて映像に係る操作を検知する。
【0085】
図10は、被検者の視線の動きに基づいて映像に係る操作を検知し、映像に係る操作を実行する場合の映像の一例を示す図であり、開いた状態の書籍に関して示している。
【0086】
プロセッサ21は、カメラ15が撮影した被検者5の瞳領域の映像から、被検者5の瞳の動きを検知する。
図10に示す矢印は、被検者5の瞳の動きに伴う視線方向の軌跡を模式的に示している。
【0087】
プロセッサ21は、被検者5の瞳の動きから、現在開いる書籍のページの最後まで視線が移動したことを検知すると、書籍の映像のページめくりを実施する。
【0088】
図11は、被検者の視線の動き等に基づいて映像に係る操作を検知し、映像に係る操作を実行する場合の映像の他の例を示す図である。
【0089】
図に11示す例では、検査中の被検者5をリラックスさせるための映像170には、映像に係る操作を支援する操作ウィンドウ174が重畳表示されている。
【0090】
プロセッサ21は、カメラ15が撮影した映像から被検者5の目(瞼)の動作(ウェイクアップ動作)を検知すると、操作ウィンドウ174をポップアップ表示することが好ましい。この場合のウェイクアップ動作としては、例えば、「まばたき」を2回連続して行う動作などを適用することができる。
【0091】
また、プロセッサ21は、映像の早送り、巻き戻し、一時停止、再生を示すアイコンボタンを含む操作ウィンドウ174を表示させるが、更に被検者5の視線位置を示す矢印アイコン174Aを表示させることが好ましい。
【0092】
プロセッサ21は、被検者5の瞳の動きから、操作ウィンドウ174上の矢印アイコン174Aを移動させる。
【0093】
検査中の被検者5は、映像の早送り、巻き戻し、一時停止、又は再生の操作指示を行う場合、例えば、視線位置を示す矢印アイコン174Aを、映像の早送り、巻き戻し、一時停止、又は再生を示すアイコンボタンの位置に移動させて、一定時間(数秒間)以上、停止させる(一定時間以上見つめる)。
【0094】
プロセッサ21は、矢印アイコン174Aが一定時間以上停止したアイコンボタンが示す指示を、映像に係る操作として受け付け、表示させる映像を制御する。
【0095】
<映像に係る操作を検知する操作検知器の第3実施形態>
第3実施形態の操作検知器は、検査中の被検者5を撮影するカメラ15を含み、カメラ15が撮影した映像(特に被検者5の顔領域の映像)から、被検者5の口唇の動き(いわゆる「口パク」)に基づいて映像に係る操作を検知する。
【0096】
プロセッサ21は、被検者5の顔領域の映像に含まれる被検者5の口唇の動きに基づいて被検者5が発した発言内容を認識する発言認識部としての機能を有する。
【0097】
図12は、発言認識部の実施形態を示す概念図である。
【0098】
図12に示すようにプロセッサ21は、発言認識部21Aとして機能する。
【0099】
発言認識部21Aは、被検者5の口唇の動きから文字を読み取る読唇部分であり、本例では、学習済みの機械学習モデルを使用し、カメラ15が撮影した被検者5の顔領域を含む映像を入力する。
【0100】
尚、プロセッサ21は、予めメモリ22に記憶された学習済みの機械学習モデルを読み出して使用することができる。また、機械学習モデルとしては、エンドツーエンドの深層学習ネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、サポートベクターマシンなどの種々の学習モデルを使用することができる。
【0101】
本例の発言認識部21Aは、入力する被検者5の口唇の動きを示す映像から被検者5が発した複数の文字(発言内容を示す文字列)を1文字ずつ出力するが、更に発言認識部21Aから出力される文字列に対して自然言語処理を行い、文字列が意味のある発言か否かを判別したり、文字列に対して自然言語処理した結果、誤りがある場合に、正しい発言内容になるように修正する機能を備えることが好ましい。
【0102】
尚、映像に係る操作を示す発言内容は、映像に係る操作の種類に応じて決まっているため、発言認識部21Aは、映像に係る操作の種類を正しくの認識できればよく、認識精度は高いものとすることができる。
【0103】
また、発言認識部21Aは、カメラ15が撮影した被検者5の顔領域を含む映像と、第1マイク16が検出した被検者5の音声とを同時に入力し、被検者の発言内容を認識するものでもよい。この場合の発言認識部に適用される機械学習モデルは、被検者5の顔領域を含む映像(被検者5の口唇の動き)から発言内容を認識する学習モデルと、被検者5の音声から発言内容を認識する学習モデルとを有し、両者が同じ発言内容を示すように学習されたものを使用することが好ましい。
【0104】
プロセッサ21は、発言認識部21Aが認識した認識結果に基づいて投影機17から投影させる映像に係る制御を行う。
【0105】
<映像に係る操作を検知する操作検知器の第4実施形態>
第4実施形態の操作検知器は、検査中の被検者5により操作される操作器を含み、操作器での操作内容に応じて映像に係る操作を検知する。
【0106】
図13は、被検者により操作される操作器の一例を示す要部外観図である。
【0107】
図13に示す操作器19は、例えば、緊急連絡用のゴム球スイッチ190である。
【0108】
ゴム球スイッチ190は、緊急連絡用に被検者5に所持させるものであり、検査中の被検者5は、緊急連絡時にゴム球スイッチ190を押す(強く握る)。このゴム球スイッチ190の操作に伴う圧力変化が、チューブ190Bを介して図示しない圧力スイッチにより検知される。
【0109】
本例では、このゴム球スイッチ190を、映像に係る操作を検知する操作検知器として兼用する。
【0110】
例えば、被検者5は、ゴム球スイッチ190を通常の緊急連絡用に使用する場合には、ゴム球スイッチ190を長押し、映像に係る操作用に使用する場合には、映像に係る操作に応じた押しパターンにしたがってゴム球スイッチ190を押す。例えば、映像とともに発生される音声の音量を増加させる場合には、ゴム球スイッチ190を短く1回押し、音量を減少させる場合には、短く2回押す。尚、押しパターンは、映像に係る操作の種類に応じて複数の押しパターンを準備しておく。
【0111】
プロセッサ21は、ゴム球スイッチ190が長押しされたことを検知すると、MRI装置10を停止させる等の処理を行う。
【0112】
一方、プロセッサ21は、映像に係る操作の種類に応じた押しパターンでゴム球スイッチ190が押されたことを検知すると、その押しパターンに割り当てられた映像に係る制御を行う。
【0113】
図14は、被検者により操作される操作器の他の例を示す要部外観図である。
【0114】
図14に示す操作器19は、2つのエアバルーンからなる押しボタン部192A、192Bを有する押しボタンスイッチ192である。
【0115】
押しボタンスイッチ192は、押しボタン部192A、又は192Bの押下に応じて内部の圧力が変化する2本のチューブ192Cを有し、チューブ192C内の圧力変化が、図示しない圧力センサにより検知される。
【0116】
プロセッサ21は、例えば、押しボタン部192Aが押下されたことを検知すると、映像とともに発生される音声の音量を増加させ、押しボタン部192Bが押下されたことを検知すると、音量を減少させる。
【0117】
尚、押しボタンスイッチ192の操作による映像に係る指示は、音量調整に限らず、他の映像に係る指示を行うものでもよい。また、本例の押しボタンスイッチ192は、寝台13の天板13A上に載置されるが、天板13A上で滑らないようにラバー素材又は専用の突起を有する滑り止め部192Dを有することが好ましい。
【0118】
また、
図13及び
図14に示したゴム球スイッチ190、及び押しボタンスイッチ192からなる操作部に限らず、被検者5の操作による映像に係る指示を出力する操作部であれば、いなかるものでもよい。
【0119】
<映像に係る操作を検知する操作検知器の第5実施形態>
第5実施形態の操作検知器は、検査中の被検者5が発する音声を検出するマイク(第1マイク)16を含み、第1マイク16が検出した被検者5が発する音声を認識して、映像に係る操作を検知する。
【0120】
プロセッサ21は、第1マイク16が検出した音声を文字情報に変換する音声認識器としての機能を有し、音声認識器が認識した文字情報に基づいて、文字情報により特定される映像に係る制御を行う。尚、音声認識器は、第1マイク16が検出した音声から文字を認識する音声認識AI(Artificial Intelligence)により構成することができる。第1マイク16が検出した音声を音声認識AIに入力する場合には、予めフィルタ等によりMRI装置10が発生する騒音を低減させることが好ましい。
【0121】
<映像に係る制御の他の実施形態>
図15は、映像に係る制御の他の実施形態を示す概念図であり、映像が表示されるボア内の環境光を調整する場合に関して示している。
【0122】
医用画像診断システムは、MRI装置10のボア12内の環境光を調整する環境光調整器を備える。環境光調整器は、投影機17とは異なる他の投影機であって、ボア12内の内壁面全体に環境光を投影する投影機、またはボア12内の内壁面全体を照明する照明機器により構成することができる。
【0123】
プロセッサ21は、操作検知器から環境光を調整する操作指示を受け付けると、環境光調整器を制御し、ボア12内の環境光を調節する。
【0124】
操作検知器は、例えば、第1実施形態から第5実施形態の操作検知器を使用することができ、検査中の被検者5は、操作検知器を使用して、ボア12内の環境光を被検者5が希望する環境光に変更させる指示を行い、プロセッサ21は、操作検知器から環境光を調整する操作指示を受け付け、環境光調整器を制御する。
【0125】
被検者5の好みの環境光にするため、あるいはボア内に表示される映像を見やすくするためである。
【0126】
図15(A)は、ボア12内の内壁面を照明する環境光の明度を高めに調整した場合のイメージ図であり、
図15(B)は、ボア12内の内壁面を照明する環境光の明度を低めに調整した場合のイメージ図であり、
図15(BCは、ボア12内の内壁面を照明する環境光の色味を電球色に調整した場合のイメージ図である。
【0127】
環境光調整器は、ボア12内の環境光の色相、明度、及び彩度のうちの少なくとも1つを調整し、例えば、昼白色、昼光色、あるいは電球色とすることができる。
【0128】
また、プロセッサ21は、ボア12内に表示される映像の内容に応じて環境光調整器を制御するようにしてもよい。ボア12内の表示される映像が見やすいように、装置側で自動調整するためである。
【0129】
また、プロセッサ21は、ボア12内に表示される映像のシーンや音声にシンクロさせて環境光調整器を制御するようにしてもよい。
【0130】
本発明の第13態様に係る医用画像診断システムは、第10態様から第12態様のいずれかにおいて、環境光調整器は、色相、明度、及び彩度のうちの少なくとも1つを調整することが好ましい。
【0131】
<映像表示器の他の実施形態>
図16は、MRI装置による検査中に被検者が視認可能な態様で映像を表示する映像表示器の他の実施形態を示す図である。
【0132】
図16に示す映像表示器は、図示しない投影機と、この投影機から映像が投影されるリア投影スクリーン60と、リア投影スクリーン60を、天板13Aに仰臥している被検者5が視認するための反射ミラー62とから構成されている。
【0133】
リア投影スクリーン60及び反射ミラー62は、天板13Aに取り付けられた支持部材63に配設されている。
【0134】
被検者5は、投影機からリア投影スクリーン60に映像が投影されると、反射ミラー62を介してリア投影スクリーン60に投影された映像を視認することができる。
【0135】
また、被検者5の顔領域を撮影するカメラは、反射ミラー62の外周部に取り付けることができる。更に、被検者5の頭部が移動しないように保持する頭部保持具70に、被検者用のスピーカ16-1を埋め込むことができる。このスピーカ16-1は、映像に付随する音声や、操作者28との間で通話する際の操作者28の音声を発生することができる。また、スピーカ16-1は、発音体部に非磁性体である圧電セラミックを使用した非磁性スピーカであることが好ましい。
【0136】
尚、MRI装置による検査中に被検者が視認可能な態様で映像を表示する映像表示器の他の実施形態としては、
図16に示したものに限らず、虚像(空中像)を表示させるヘッドアップディスプレイ、被検者の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイ、液晶ディスプレイ、又は有機ELディスプレイを使用することができる。
【0137】
<操作検知器の選択>
MRI装置10は、被検者の頭部及び上肢を含む複数の検査部位のうちの予め設定された検査部位を撮像する。
図2に示す例では、被検者5の腹部が検査部位であり、RFコイル10Bは腹部に配置されるが、FRコイルは、検査部位が頭部の場合には、頭部に配置され、検査部位が上肢の場合には、上肢に配置される。また、FRコイルが配置される位置に応じて、天板13Aの位置が調整される。
【0138】
操作検知器は、第1実施形態から第5実施形態等で説明したように、可視光カメラ(カメラ15)が撮影した映像から、被検者5の指、手の動きに基づいて映像に係る操作を検知する手法、視線、目(瞼)の動きに基づいて映像に係る操作を検知する手法、口唇の動きに基づいて映像に係る操作を検知する手法、操作器(ゴム球スイッチ190、押しボタンスイッチ192)による操作に基づいて映像に係る操作を検知する手法、マイク(第1マイク16)が検出した音声に基づいて映像に係る操作を検知する手法等がある。
【0139】
これらの複数の検知手法のうち、検査部位の撮像への影響度が他の検知器よりも低い検知器を選択することが好ましい。MRI画像のアーチファクトの発生を抑制するためである。
【0140】
即ち、操作者28は、検査部位に応じて複数の検知手法のうち、影響度が他の検知器よりも低い検知器を選択し、被検者5には選択した検知器の使用を許可することが好ましい。
【0141】
また、プロセッサ21は、検査部位に応じて、複数の検知器のうち、検査部位の撮像への影響度が他の検知よりも低い検知器から操作指示を受け付けることができる。プロセッサ21は、事前に検査部位の情報を取得することができるため、いずれの検知器から操作指示を受け付けるべきかを自動的に判断することができる。
【0142】
図17は、検査部位、検出手法、影響度、及び検出手法の選択等の関係を示す図表である。
【0143】
図17では、検査部位として頭部と上肢の例が示されている。
図17に示すように検査部位と検出手法との関係で、撮影時の影響度が異なり、それに伴って各検出手法の選択の「可」、「不可」、「一部可」に分類することができる。
【0144】
尚、検査部位としては、頭部、上肢に限らず、体幹、下肢等がある。また、検査部位が上肢の場合、可視光カメラによる指の動作を検知する手法は、「不可」としているが、左上肢が検査部位の場合、可視光カメラによる右上肢の指の動作を検知する手法は、選択可能とすることができる。
【0145】
[医用画像診断システムの作動方法]
図18は、本発明に係る医用画像診断システムの作動方法の実施形態を示すフローチャートである。
【0146】
図18に示す医用画像診断システムの作動方法の各ステップの処理は、
図6に示した信号処理装置20のプロセッサ21により行われる処理に対応する。
【0147】
図18において、プロセッサ21は、操作検知器から、検査中の被検者5の動作による映像に係る操作を示す操作指示を入力したか否かを判別する(ステップS10)。この映像は、投影機17によりボア12内に投影された被検者5が鑑賞する映像であり、検査中の被検者5をリラックスさせるための映像である。
【0148】
プロセッサ21は、映像に係る操作を示す操作指示を入力した場合(「Yes」の場合)、映像に係る操作が、再生指示か否か判別する(ステップS20)。再生指示を入力した場合には、プロセッサ21は、映像の再生を行わせる(ステップS30)。即ち、プロセッサ21は、投影機17からボア12内のスクリーン17Aに映像を投影させる。尚、MRI装置10による検査開始時には、自動的に映像の再生を行わせるようにしてもよい。
【0149】
プロセッサ21は、入力した操作指示が、再生指示でない場合には、続いて、早送り指示を入力したか否かを判別する(ステップS40)。早送り指示を入力した場合には、プロセッサ21は、映像を早送りさせる(ステップS50)。プロセッサ21は、投影機17に供給する映像を早送りし、投影機17から早送り中の映像を投影させる。
【0150】
プロセッサ21は、入力した操作指示が、早送り指示でない場合には、続いて、巻き戻し指示を入力したか否かを判別する(ステップS60)。巻き戻し指示を入力した場合には、プロセッサ21は、映像を巻き戻しさせる(ステップS70)。プロセッサ21は、投影機17に供給する映像を巻き戻し、投影機17から巻き戻し中の映像を投影させる。
【0151】
また、プロセッサ21は、入力した操作指示が、巻き戻し指示でない場合には、続いて、一時停止指示を入力したか否かを判別する(ステップS80)。一時停止指示を入力した場合には、プロセッサ21は、映像を一時停止させる(ステップS90)。プロセッサ21は、投影機17に供給する映像を一時停止し、投影機17から一時停止中の映像を投影させる。
【0152】
このように検査中の被検者5は、自分自身の動作に伴う映像の再生、早送り、巻き戻し、又は一時停止の操作指示を、操作検知器を介してプロセッサ21に送信することができ、プロセッサ21は、操作検知器から映像の再生、早送り、巻き戻し、又は一時停止の操作指示を受け付けると、操作指示の内容に基づいて投影機17から投影される映像に係る制御を行う。
【0153】
これにより、検査中の被検者5は、映像中の自分の見たいシーンを選択して再生させることができる。
【0154】
また、検査中の被検者5は、自分の見たい映像への切替え、又は映像の選択が可能であり、更に音量調整を行うこともできる。
【0155】
図19は、本発明に係る医用画像診断システムの作動方法の他の実施形態を示すフローチャートである。
【0156】
図19に示す医用画像診断システムの作動方法の各ステップの処理は、
図6に示した信号処理装置20のプロセッサ21により行われる処理に対応する。
【0157】
図19において、プロセッサ21は、操作検知器から、検査中の被検者5の動作による映像に係る操作を示す操作指示を入力したか否かを判別する(ステップS100)。プロセッサ21は、映像に係る操作を示す操作指示を入力した場合(「Yes」の場合)、
図18に示したステップS20に遷移し、以下、前述した
図18に示したフローチャートにしたがった処理を実行する。
【0158】
ステップS100において、映像に係る操作を示す操作指示を入力しない場合(「No」の場合)、プロセッサ21は、操作指示の未入力時間が一定時間以上経過すると、更にバイタル情報測定器18が測定している被検者5の心拍数、血圧、呼吸数、体温、心電及び血中酸素飽和濃度のうちの1以上のバイタル情報に基づいて、検査に伴う被検者5の体調変化(例えば、心拍が早くなった等の体調変化)に関連する情報を取得し、被検者5に提供する映像を切り替えた方がよいかどうか判定する(ステップS110)。
【0159】
プロセッサ21は、未操作期間が一定時間以上経過し、かつ被検者5に提供する映像を切り替えた方がよいと判定すると、映像の切替えを提案する(ステップS120)。被検者5が不安やストレスを感じていると判定し、映像を切り替えることで被検者5の気分転換を図るためである。
【0160】
映像の切替えの提案は、投影機17が投影する映像に、提案する内容の文字情報を重畳させて行うことができる。例えば、「映像を変えたい場合は、○○の操作を行って見てください」といった文字情報による提案を行う。また、文字情報による提案に限らず、被検者用のスピーカから上記文字情報と同様の操作内容を示す音声(自動音声)を発生させて行うことができる。
【0161】
その後、プロセッサ21は、映像の切替えの提案にしたがって被検者5が映像切替えの操作指示を入力したか否かを判別し(ステップS130)、映像切替えの操作指示を入力したと判別すると、投影機17から投影されている映像を、他の映像に切り替えさせる。
【0162】
尚、プロセッサ21は、被検者5が映像切替えの操作指示を行わず、かつ一定時間以上経過したと判定した場合には、映像の切替えの提案を取り消すことが好ましい。また、被検者5のバイタル情報が更に変化した場合には、再度、映像の切替えを提案するようにしてもよい。
【0163】
[その他]
本実施形態において、例えば、CPU等の各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0164】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、あるいはCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0165】
また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0166】
更に、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0167】
10…MRI装置
11…ガントリ
12…ボア
13…寝台
13A…天板