(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165276
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ガスバリア性を有する樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/26 20060101AFI20241121BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20241121BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20241121BHJP
C08F 8/12 20060101ALI20241121BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C08L23/26
C08L29/04 S
C08L23/10
C08F8/12
B32B27/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081328
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川戸 大輔
(72)【発明者】
【氏名】菊地 元三
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK21A
4F100AK69A
4F100AL02A
4F100AL05A
4F100AT00
4F100BA02
4F100GB16
4F100JD02
4J002BB12Y
4J002BB14Y
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4J002BE03X
4J002BP02Y
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4J100AA02P
4J100AG04Q
4J100BA03H
4J100CA04
4J100CA31
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4J100DA42
4J100HA09
4J100HA53
4J100HB39
4J100HC36
4J100HE17
4J100JA58
(57)【要約】
【課題】 エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物とエチレン・ビニルアルコール共重合体を含み、ガスバリア性、接着性に優れた樹脂組成物及びこれを用いた積層体を提供すること。
【解決手段】 少なくとも酢酸ビニル含量が0.3~20mol%、ビニルアルコール含量が1~20mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B)及びプロピレン系重合体(C)を含む樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも酢酸ビニル含量が0.3~20mol%、ビニルアルコール含量が1.0~20mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)、エチレン含量が27~48mol%であるエチレン・ビニルアルコール共重合体(B)及びプロピレン系重合体(C)を含む樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)及びプロピレン系重合体(C)の合計((A+C))とエチレン・ビニルアルコール共重合体(B)の重量比((A+C)/B)が80/20~50/50である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)が、下記成分(a1)~(a3)及び当該(a1)~(a3)の架橋体を含む混練物の加水分解物であり、JIS K6922-1に基づき測定されたメルトマスフローレートが0.3~5.0g/10分である、請求項1に記載の樹脂組成物。
(a1)酢酸ビニル含量が20重量%以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体
(a2)酢酸ビニル含量が45重量%以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体
(a3)相溶化剤
【請求項4】
前記エチレン・ビニルアルコール共重合体(B)のJIS K6922-1に基づき190℃で測定されたメルトマスフローレートが1.5~30g/10分である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記プロピレン系重合体(C)がプロピレンホモポリマー、エチレンが共重合されたランダムポリプロピレン、エチレンが共重合されたブロックポリプロピレン、エチレンと1-ブテンが共重合されたポリプロピレンターポリマー、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン及び長鎖分岐ポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種類以上を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
キャピラリーレオメータを用いて、220℃、オリフィス長さL/オリフィス直径D=20/1の条件下で、せん断速度と見かけのせん断粘度を測定した際の、せん断速度100~150sec-1における、前記成分(A)と前記成分(B)の溶融粘度比(A/B)、及び前記成分(C)と前記成分(B)の溶融粘度比(C/B)が0.20~2.0である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物からなるガスバリア樹脂層、及び当該層に隣接するプロピレン系重合体(C)層を少なくとも1層有する積層体であって、プロピレン系重合体(C)のメルトマスフローレートが0.1~8.0g/10分である積層体。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物からなるガスバリア樹脂層、及び当該層に隣接する両面にプロピレン系重合体(C)層を有する積層体であって、プロピレン系重合体(C)のメルトマスフローレートが0.1~8.0g/10分である積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン・ビニルアルコール共重合体、プロピレン系重合体を含有する樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料、医薬品などの熱可塑性樹脂を素材とした包装材料は、内容物劣化の防止を目的として、ガスバリア性、保香性、耐溶剤性などに優れるエチレン・ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHという場合がある)が、種々の用途で使用されている。しかしながらEVOHは親水性であり、吸湿によりガスバリア性等の低下が起こることから一般的にポリエチレンやポリプロピレンなどの耐水性に優れたポリオレフィン等との積層体の中間層に使用されることが知られており、特に高い透明性や機械物性等が求められる用途ではポリプロピレンで構成された積層体が使用されている。
【0003】
EVOHは分子内に多くの水酸基を有するため、極性基をもたないポリプロピレンとの親和性は極めて低く、両者は一般に接着しない。そのため、ポリプロピレンと接着困難なEVOHに対し、不飽和カルボン酸またはその誘導体によってグラフトされたグラフト変性プロピレン系樹脂組成物(例えば、特許文献1~2参照)やエチレン・酢酸ビニル共重合体加水分解物(例えば、特許文献3参照)を接着剤として用いる手法が提案されている。
【0004】
しかし、前者の不飽和カルボン酸またはその誘導体によってグラフトされたグラフト変性プロピレン系樹脂組成物は優れた接着性を備えているが、EVOHとの反応性が高いため、繰り返し混練したり、EVOHに添加すると、押出機やダイ内に滞留した樹脂が粘度上昇するとともに着色してゲル化し、その結果として製品中に多数のフィッシュアイやゲル状物質が混在することとなり、商品価値が低下する問題がある。また、後者のエチレン・酢酸ビニル共重合体加水分解物は繰り返し混練やEVOHに添加しても着色やゲル化は発生せず、エチレン・酢酸ビニル共重合体加水分解物に粘着性樹脂を加えることでEVOHに対する接着性が向上するものの、その効果は小さく、運搬中や使用中に小さい衝撃や摩擦を受けると剥離することが多く、十分な接着性が得られなかった。
【0005】
また、EVOHを含む包装材料は、少なくともポリプロピレン層/接着剤層/EVOH層/接着剤層/ポリプロピレン層を含む3種5層以上、或いは、ポリプロピレン層/接着剤層/EVOH層/接着剤層/リグラインド層/ポリプロピレン層を含む4種6層以上の構成とする必要がある。しかしながら、このような5層以上の多層積層体を製造するための多層成形機は、一般的に設備投資コストが非常に高い問題がある。
【0006】
そのため汎用成形機で製造可能な3層構成で製造可能な積層体の製造が従来より望まれている。例えば、特許文献4では、3層構成で製造可能とする手法として、熱可塑性樹脂、その熱可塑性樹脂よりもビニルエステル含量が5mol%以上多い、エチレン・ビニルエステル共重合体、並びにその熱可塑性樹脂とエチレン・ビニルエステル共重合体がグラフトされた変性体を含む溶融混練物の加水分解物を用いる手法があり、EVOH層に当該加水分解物をブレンドすることによりポリオレフィン樹脂層との接着性を向上させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-167998号公報
【特許文献2】特開2001-277371号公報
【特許文献3】特開2001-200124号公報
【特許文献4】特開2017-210608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献4に記載の樹脂組成物を用いて、実際のフィルム成形やダイレクトブロー成形等で作製した積層体を評価したところ、十分な接着強度やガスバリア性が得られない問題が発生した。本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであって、ポリプロピレン層との接着性に優れ、且つガスバリア性を兼ね備えた樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物にEVOH及びプロピレン系重合体を含有する樹脂組成物は、プロピレン系重合体に対する良好な接着性と高いガスバリア性を両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の各態様は、以下の[1]~[8]である。
[1] 少なくとも酢酸ビニル含量が0.3~20mol%、ビニルアルコール含量が1.0~20mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)、エチレン含量が27~48mol%であるエチレン・ビニルアルコール共重合体(B)及びプロピレン系重合体(C)を含む樹脂組成物。
[2] 前記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)及びプロピレン系重合体(C)の合計((A+C))とエチレン・ビニルアルコール共重合体(B)の重量比((A+C)/B)が80/20~50/50である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 前記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)が、下記成分(a1)~(a3)及び当該(a1)~(a3)の架橋体を含む混練物の加水分解物であり、JIS K6922-1に基づき測定されたメルトマスフローレートが0.3~5.0g/10分である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
(a1)酢酸ビニル含量が20重量%以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体
(a2)酢酸ビニル含量が45重量%以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体
(a3)相溶化剤
[4] 前記エチレン・ビニルアルコール共重合体(B)のJIS K6922-1に基づき190℃で測定されたメルトマスフローレートが1.5~30g/10分である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] 前記プロピレン系重合体(C)がプロピレンホモポリマー、エチレンが共重合されたランダムポリプロピレン、エチレンが共重合されたブロックポリプロピレン、エチレンと1-ブテンが共重合されたポリプロピレンターポリマー、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン及び長鎖分岐ポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種類以上を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] キャピラリーレオメータを用いて、220℃、オリフィス長さL/オリフィス直径D=20/1の条件下で、せん断速度と見かけのせん断粘度を測定した際の、せん断速度100~150sec-1における、前記成分(A)と前記成分(B)の溶融粘度比(A/B)、及び前記成分(C)と前記成分(B)の溶融粘度比(C/B)が0.20~2.0であることを特徴とする、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物からなるガスバリア樹脂層、及び当該層に隣接するプロピレン系重合体(C)層を少なくとも1層有する積層体であって、プロピレン系重合体(C)のメルトマスフローレートが0.1~10g/10分である積層体。
[8] [1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物からなるガスバリア樹脂層、及び当該層に隣接する両面にプロピレン系重合体(C)層を有する積層体であって、プロピレン系重合体(C)のメルトマスフローレートが0.1~10g/10分である積層体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物はフィルムにした場合に、ガスバリア性、接着性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明の一態様である樹脂組成物は、少なくとも酢酸ビニル含量が0.3~20mol%、ビニルアルコール含量が1~20mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B)、プロピレン系重合体(C)を含む。
【0014】
上記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)(以下、(A)、(A)成分、成分(A)と略記することがある)は、主としてエチレン単位と酢酸ビニル単位とビニルアルコール単位とからなる三元共重合体である。
【0015】
(A)成分は、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体を構成する酢酸ビニルの一部を加水分解(ケン化)することにより得ることができる。エチレン・酢酸ビニル共重合体の加水分解方法は特に限定されるものではなく、例えば、公知の方法に従って、エチレン・酢酸ビニル共重合体を製造し、次いで、これを加水分解することによって(A)成分を製造することができる。エチレン・酢酸ビニル共重合体の加水分解には、酸触媒又はアルカリ触媒を使用することができ、エチレン・酢酸ビニル共重合体のペレットをアルカリ中で直接加水分解処理する方法、二軸押出機内でエチレン・酢酸ビニル共重合体をケン化反応押出する方法などを例示することができる。
【0016】
(A)成分のケン化度は、ケン化前のエチレン・酢酸ビニル共重合体及びエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)の酢酸ビニル含量を用いて下式より算出することができる。
式:ケン化度(mol%)=100×{(ケン化前のエチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量)-(エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物の酢酸ビニル含量)}/(ケン化前のエチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量)
(A)成分のケン化度は、10mol%以上あれば、EVOHとの相溶性が良好であり、さらに好ましくは20mol%、最も好ましくは30mol%以上である。
【0017】
(A)成分は、後述するプロピレン系重合体とEVOHの相溶化剤として機能性し、相溶性を高めるために、酢酸ビニル含量が0.3~20mol%、ビニルアルコール含量が1~20mol%であり、好ましくは酢酸ビニル含量が0.5~18mol%、ビニルアルコール含量が2~20mol%である。なかでも酢酸ビニル含量が1.0~15mol%、ビニルアルコール含量が3~20mol%、であることが最も好ましい。なお、エチレン含量と酢酸ビニル含量とビニルアルコ―ル含量の合計値は100mol%である。ビニルアルコール含量が1.0mol%未満の場合はEVOHに対する相溶性が低下し、樹脂組成物の機械物性が大幅に損なわれ、酢酸ビニル含量及び/又はビニルアルコール含量が20mol%を超える場合はプロピレン系重合体との相溶性が低下するため好ましくない。(A)成分は、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いても構わない。
【0018】
(A)成分は、成形加工性の観点より、JIS K6924-1(190℃、2160g荷重の条件下)に基づき測定したメルトマスフローレート(以下、MFRと略記することがある)が0.3~5.0g/10分が好ましく、最も好ましくは0.5~5.0g/10分である。
【0019】
また(A)成分は、下記成分(a1)~(a3)及び当該(a1)~(a3)の架橋体を含む混練物の加水分解物であることが好ましい。
(a1)酢酸ビニル含量が20重量%以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体
(a2)酢酸ビニル含量が45重量%以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体
(a3)相溶化剤
上記成分(a1)酢酸ビニル含量が20重量%以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレン単位と酢酸ビニル単位を有する共重合体である。成分(a1)の製造方法は、エチレン・酢酸ビニル共重合体の製造が可能であれば特に制限されるものではないが、公知の高圧ラジカル重合法やイオン重合法を例示することができる。このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、高圧ラジカル重合法により製造されたエチレン・酢酸ビニル共重合体として、東ソー株式会社からウルトラセンの商品名で市販されている。
【0020】
上記成分(a1)は、成形加工安定性及びEVOHとの分散性の観点より、JIS K6924-1(190℃、2160g荷重の条件下)に基づき測定したメルトマスフローレートが0.1~100g/10分が好ましく、より好ましくは0.1~10g/10分であり、最も好ましくは0.5~5.0g/10分である。
【0021】
上記成分(a2)エチレン・酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含量が45重量%以上であり、前記(a1)との相溶性の観点から、酢酸ビニル含量が45~85重量%の範囲であることが好ましく、最も好ましくは酢酸ビニル含量が48~80重量%の範囲である。
【0022】
成分(a2)におけるエチレン・酢酸ビニル共重合体の製造方法は限定されないが、高圧法ラジカル重合、溶液重合やラテックス重合等の公知の製造方法が挙げられ、ARLANXEO社よりLEVAPRENやLEVAMELTの商品名で各々市販されている。
【0023】
上記成分(a3)を構成する相溶化剤は、(a1)と(a2)の相溶性を向上できるものであれば特に限定されず、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、アイオノマー樹脂等が挙げられ、(a1)と(a2)の相溶性やコストなどを考慮して適宜選択される。なかでも、酢酸ビニル含量が21~44重量%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体を用いることがコストの観点で好ましく、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよいが、酢酸ビニル含量の異なるエチレン・酢酸ビニル共重合体を2種以上用いた方が、各成分の酢酸ビニル含量差が小さくなるため、(a1)と(a2)の相溶性を向上させることができる。このようなエチレン・酢酸ビニル共重合体として、東ソー株式会社からウルトラセンの商品名で、ARLANXEO社よりLEVAPRENやLEVAMELTの商品名で各々市販されている。
【0024】
(A)成分は、下記成分(a1)~(a3)及び当該(a1)~(a3)の架橋体を含む混練物は、成分(a1)~(a3)を含む組成物を架橋することにより得られる。成分(a1)~(a3)を含む組成物の架橋方法としては、架橋変性できるものであれば特に限定されず、反応性などを考慮して適宜選択されるが、生産性の観点から上記成分(a1)~(a3)に架橋剤(a4)を添加するのが好ましく、架橋剤(a4)としては有機過酸化物を使用することが好ましい。
【0025】
架橋剤(a4)の有機過酸化物としては有機過酸化物であれば特に限定されず、例えば、ジクミルペルオキシド、ジt-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1ージ(tーブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ジ-(t-ブチルペルオキシ)-ジイソプロピルベンゼン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシドなどが挙げることができる。これらは単独で或いは2種類以上を混合して使用することができる。
【0026】
なかでも、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1ージ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが反応性の観点から好ましく用いられる。また、前記架橋剤と共に、必要に応じて、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンなどの架橋助剤を用いてもよい。
架橋剤(a4)の配合量は、成分(a1)~(a3)の合計100重量部に対して、0.005~1重量部の範囲であることが好ましい。これによりエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)のプロピレン系重合体及びEVOHとの相溶性を向上させることができる。
成分(a1)~(a3)及び(a1)~(a3)の架橋体を含む混練物の加水分解物である成分(A)の製造プロセスの具体例は次のとおりである。
【0027】
成分(a1)~(a3)及び架橋剤(a4)のドライブレンド物を、押出機のホッパーに投入する。成分(a1)~(a3)及び架橋剤(a4)の少なくとも一部をサイドフィーダー等から添加してもよい。さらに、二台以上の押出機を使用し、段階的に順次溶融混練してもよい。また事前に混合する際は、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーなどを使用してもよい。
【0028】
また、成分(A)は、必要に応じて架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤、臭気補足剤等、通常熱可塑性樹脂に使用される添加剤を配合していても構わない。
【0029】
上記EVOH(B)(以下、(B)、(B)成分、成分(B)と略記することがある)は、主としてエチレン単位とビニルアルコール単位からなる共重合体である。(B)成分のエチレン含有率としては、製膜安定性とガスバリア性の観点から、27~48mol%である。また、EVOHのケン化度は96mol%以上であることが好ましい。EVOH中のエチレン含有率およびケン化度を上記範囲に保つことにより、良好なガスバリア性を維持できる。またEVOHには、エチレン単位およびビニルアルコール単位に加えて、少量であれば他の構成単位を有していてもよく、(B)成分は単独で或いは2種類以上を混合して使用することができる。このようなEVOHとして、株式会社クラレからエバールの商品名で、三菱ケミカル株式会社よりソアノールの商品名で市販されている。
【0030】
(B)成分のMFR(190℃、2160g荷重下で測定した値)は、高ガスバリア性と成形加工安定性の観点から、1.5~30g/10分であることが好ましく、最も好ましくは1.5~20g/10分である。
【0031】
上記プロピレン系重合体(C)(以下、(C)、(C)成分、成分(C)と略記することがある)は、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、例えば、プロピレンホモポリマー、エチレンがランダムに共重合されたランダムポリプロピレン、エチレンがブロック共重合されたブロックポリプロピレン、エチレンと1-ブテンが共重合されたポリプロピレンターポリマー、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、長鎖分岐ポリプロピレンなどが挙げられる。このようなポリプロピレン(4)は、株式会社プライムポリマー社より商品名プライムポリプロ、日本ポリプロ株式会社より商品名ノバテックPP、ウィンテック、ニューコン、ニューストレン、住友化学株式会社より商品名ノーブレン、エクセレン、スミチックなどが販売されている。このようなポリプロピレンは1種単独又は2種以上の組合せで用いてもよい。
【0032】
プロピレン系重合体のJIS K7210(230℃、2160g荷重の条件下)に基づき測定したMFRは成形加工性の観点から、0.1~10g/10分であることが好ましく、更に好ましくは0.2~8.0g/10分である。なお、プロピレン系重合体のMFRが10g/10分以下である場合は成分(B)との溶融粘度比が一致し良好なガスバリア性が得られる。プロピレン系重合体のMFRが0.1g/10分以上の場合は生産性が優れる。
【0033】
本発明の一態様である樹脂組成物は、少なくとも前述した成分(A)、成分(B)、成分(C)を含むものであり、接着性を維持する観点から成分(A)及び成分(C)がマトリクス(海成分)、成分(B)がドメイン(島成分)として形成されていることが好ましい。また成分(A)の一部は、成分(B)と成分(C)の相溶化剤としても作用する。
【0034】
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)及びプロピレン系重合体(C)の合計((A+C))とエチレン・ビニルアルコール共重合体(B)の重量比((A+C)/B)は80/20~50/50であることが好ましく、さらに好ましく75/25~50/50、最も好ましくは70/30~50/50である(A,B,Cの合計が100重量部)。なお、成分(A)と成分(C)はそれぞれ10重量部以上含まれていることが好ましい。
【0035】
また、高いガスバリア性を発現させるには、樹脂の流れ方向(MD方向)に対して垂直方向にカットして観察した場合において、成分(B)が層状の形態で分散したドメイン、或いは層状のドメインの一部が三次元的に連結した構造を有していることが好ましい。また、ガスバリア性維持の観点から、成分(B)の50%以上が層状ドメイン、或いは層状のドメインの一部が三次元的に連結した網目状構造であることが好ましい。このような分散構造を形成させるには、成分(A)/成分(B)、又は成分(C)/成分(B)が適切な溶融粘度比の範囲内であることが好ましい。
【0036】
具体的な溶融粘度比は、キャピラリーレオメータを用いて、190℃、オリフィス長さL/オリフィス直径D=20/1の条件下で、前記ガスバリア樹脂層を構成する成分(A)と成分(B)のせん断速度と見かけのせん断粘度を測定した際の、せん断速度100~150sec-1における成分(A)と成分(B)の溶融粘度比(A/B)、及び成分(C)と成分(B)の溶融粘度比(C/B)は、0.20~2.0であることが好ましく、更に好ましくは0.30~1.8である。
【0037】
またマトリクスを形成した成分(A)内に形成する成分(B)由来の層状ドメインのアスペクト比(長径/短径)は好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、最も好ましくは20以上である。また成分(B)の層状ドメインの短径は、フィルム外観維持の観点から、10μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは5μm以下であり、最も好ましくは2.5μm以下である。
【0038】
上記樹脂組成物((A)~(C)成分)の溶融混練の方法は、各成分を均一に分散しうる溶融混練装置であれば特に制限はなく、通常用いられる樹脂の混合装置により製造することができる。例えば、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダ-、回転ロール、ラボプラストミルなどの溶融混練装置が挙げられる。溶融温度は180~260℃程度が好ましい。
なお、当該樹脂組成物((A)~(C)成分)の混練方法は必ずしも溶融混練である必要はなく、単純なドライブレンド物でも構わない。ドライブレンドの方法としては、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーなどが例示される。
【0039】
また、上記樹脂組成物は、必要に応じて架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤、臭気補足剤等、通常熱可塑性樹脂に使用される添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
【0040】
本発明の一態様である積層体は、上記樹脂組成物からなるガスバリア樹脂層、及び当該層に隣接するプロピレン系重合体層を少なくとも1層、又は当該層に隣接する両面に有する。
【0041】
上記樹脂組成物はガスバリア性に優れていることから、当該樹脂組成物を積層体のガスバリア樹脂層とすることが可能である。例えば、当該樹脂組成物からなるガスバリア樹脂層に必要に応じてプロピレン系重合体層を、少なくとも一層、或いはガスバリア樹脂層の両面にプロピレン系重合体層を配置しても構わない。
【0042】
プロピレン系重合体層を構成する成分は、成分(C)で例示されたものと同様、例えば、プロピレンホモポリマー、エチレンがランダムに共重合されたランダムポリプロピレン、エチレンがブロック共重合されたブロックポリプロピレン、エチレンと1-ブテンが共重合されたポリプロピレンターポリマー、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、長鎖分岐ポリプロピレンなどが挙げられ、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はない。このようなプロピレン系重合体は、株式会社プライムポリマー社より商品名プライムポリプロ、日本ポリプロ株式会社より商品名ノバテックPP、ウィンテック、ニューコン、ニューストレン、住友化学株式会社より商品名ノーブレン、エクセレン、スミチックなどが販売されている。このようなポリプロピレンは1種単独又は2種以上の組合せで用いてもよい。
【0043】
プロピレン系重合体のJIS K7210(230℃、2160g荷重の条件下)に基づき測定したMFRは成形加工性の観点から、0.1~10g/10分であることが好ましく、更に好ましくは0.2~8.0g/10分である。なお、ポリオレフィン樹脂のMFRが10g/10分を超える場合はガスバリア樹脂層との溶融粘度比が一致せず不安定流動化が発生することがあり、積層体の外観が悪化する。ポリオレフィン樹脂のMFRが0.1g/10分未満の場合は生産性が低下することがある。
【0044】
また、プロピレン系重合体層に使用されるプロピレン系重合体は、必要に応じて架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤、臭気補足剤等、通常熱可塑性樹脂に使用される添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。また、補強、増量、着色などの目的で、必要に応じて無機充填剤や染顔料などを含有することができる。無機充填剤や染顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、合成珪素、酸化チタン、カーボンブラック、硫酸バリウムなどを挙げることができる。
【0045】
積層体は、公知の方法を用いて作製することができ、例えば共押出ブロー成形、共押出シート成形、共押出キャスト成形、共押出インフレーション成形、共押出ラミネート成形、共射出成形などの各種共押出成形などの任意の方法が挙げられ、シート状、フィルム状、パイプ状、ブロック状その他任意の形状に成形することができる。また、他の素材との積層構造を採用することによって、積層体に、ガスバリア性、水蒸気バリア性、機械物性、耐油性、耐候性など、他の素材の有する特性を付与することが可能である。
【0046】
上記樹脂組成物をガスバリア樹脂層とした積層体は、層数に制限のある成形機にも対応することが可能であり、高いガスバリア性が要求される食品、飲料、医薬品、農業、化粧品用途にとどまらず、臭気や香料成分を外部に出したくない多種多様な用途に使用することが可能である。
【実施例0047】
以下、本発明を構成する樹脂組成物の効果を明確にするために実施した実施例に基づいてより詳細に説明する。なお、本発明の樹脂組成物は、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
<ケン化度>
実施例より得られたエチレン・酢酸ビニル共重合体、又はエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)を用いてJIS K7192(1999年)に準拠して酢酸ビニル含量を測定し、下記計算式に従いケン化度(mol%)を求めた。
ケン化度(mol%)=100×{(ケン化前のエチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量)-(エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物の酢酸ビニル含量)}/(ケン化前のエチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量)
<MFR>
MFRは、JIS K6922-1、JIS K6924-2、ISO1183-3、JIS K7210に準拠して測定した。
<積層体の作製>
32/25/25mmφのスクリューを有した3層キャスト成形機((株)プラスチック工学研究所製)の中間層を形成する押出機(25mmφ)にガスバリア樹脂層を構成する樹脂組成物を供給し、内層及び外層を形成する2台の押出機(32mmφ及び25mmφ)にプロピレン系重合体層を構成するプロピレン系重合体を供給し、全層を230℃で押出し、引取速度10m/分で引取り、プロピレン系重合体層/ガスバリア樹脂層/プロピレン系重合体層=20μm/10μm/20μmとなる厚み50μmの積層体(2種3層フィルム)を得た。得られた2種3層フィルムを用いて、酸素透過度、ヒートシール強度を評価した。
なお、上記/は隣接していることを意味する。
<酸素透過度>
酸素透過度は、実施例により得られた2種3層フィルム(厚み50μm)を用い、MOCON製 OX-TRAN 2/22 Lにて23℃、湿度65%でISO 15105-2に準拠して測定し、単位はcc/(m2・24h・atm)とした。酸素透過度が75未満で「〇」、150未満75以上で「△」、150以上で「×」と判断した。
<ヒートシール強度>
2種3層フィルムのヒートシール強度は、実施例により得られた2種3層フィルムを横方向(TD方向)に100mm、縦方向(MD方向)に200mmに切り出し、フィルムの内層同士を重ね、ヒートシール試験機TP-701B(テスター産業(株)製)を用いて設定温度180℃、両面加熱、エアー圧力0.2MPa、ヒートシール時間1秒間で幅10mm、長さ300mmのシールバーでヒートシールを行った。この試験片を15mm幅に切り出し、引張試験機テンシロンRTE-1210((株)オリエンテック製)を用いて引張速度300mm/分、T型剥離の条件で剥離試験を行い、ヒートシール強度(N/15mm)を測定した。ヒートシール強度が10以上で「〇」、10未満5以上で「△」、5未満で「×」とした。
<製造例>
[エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)の製造例]
メルトマスフローレート3.0g/10分、酢酸ビニル含量15重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン626)(a1-1)を70重量部、メルトマスフローレート5.0g/10分、酢酸ビニル含量50重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(ARLANXEO製、商品名LEVAPREN500)(a2)を10重量部、以下に示す相溶剤(a3)を20重量部、及び架橋剤(a4)である有機過酸化物(日油(株)製、商品名パーヘキサ25B)を100ppmの割合でドライブレンドし、溶融樹脂温度190℃で、二軸押出機で溶融混練しペレット状のサンプルを得た。続いて、本サンプルを5重量%の水酸化ナトリウムメタノール溶液中で65℃で加水分解処理を5時間実施し、ケン化度50mol%、MFR3.0g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を得た。詳細な結果を表1および表2に示す。
(相溶剤(a3)の構成)
下記4種類のエチレン・酢酸ビニル共重合体を等量(1/1/1/1)でドライブレンドしたものを相溶化剤(a3)とした。
・メルトマスフローレート20g/10分、酢酸ビニル含量20重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン633)
・メルトマスフローレート18g/10分、酢酸ビニル含量28重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン710)
・メルトマスフローレート30g/10分、酢酸ビニル含量32重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン750)
・メルトマスフローレート70g/10分、酢酸ビニル含量42重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン760)
[エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A2)の製造例]
(a1-1)を50重量部、(a2)を30重量部、架橋剤(a4)を150ppmでドライブレンドし、加水分解処理を7時間実施した以外は(A1)と同様の方法で作製し、ケン化度65mol%、MFR0.5g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A2)を得た。詳細な結果を表1および表2に示す。
[エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A3)の製造例]
メルトマスフローレート30g/10分、酢酸ビニル含量15重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(a1-2)を65重量部、(a2)を12重量部、(a3)を23重量部とし、1重量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液、反応温度55℃で加水分解を5時間実施した以外は、(A1)と同様の方法で作製し、ケン化度46mol%、MFR14g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A3)を得た。詳細な結果を表1および表2に示す。
[エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A4)の製造例]
(a1-1)を70重量部、(a2)を10重量部、(a3)を20重量部でドライブレンドし、1重量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液、反応温度40℃で加水分解を2時間実施した以外は、(A1)と同様の方法で作製し、ケン化度5mol%、MFR3.5g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A5)を得た。詳細な結果を表1および表2に示す。
【0048】
【0049】
【0050】
実施例1
ガスバリア樹脂層を構成する樹脂組成物として、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を50重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体としてメルトマスフローレート8.5g/10分、エチレン含量35mol%であるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製、商品名エバールC109B)(B1)を25重量部、プロピレン系重合体としてメルトマスフローレートが7.5g/10分であるプロピレンホモポリマー(日本ポリプロ(株)製、商品名ノバテックFB3B)(C1)を25重量部ドライブレンドした後、単軸押出機を用いて溶融樹脂温度230℃でメルトブレンドした。
【0051】
またプロピレン系重合体層を構成するプロピレン系重合体として、C1を用いた。
【0052】
前述の3層キャスト成形機を用い、中間層を形成する押出機(25mmφ)にガスバリア樹脂層を構成する樹脂組成物を供給し、内層及び外層を形成する2台の押出機(32mmφ及び25mmφ)にプロピレン系重合体層を構成するプロピレン系重合体を供給し、220℃で成形し、内層/中間層/外層=20/10/20μmとなる厚み50μmの積層体を得た。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0053】
実施例2
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を25重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B1)を25重量部、プロピレン系重合体(C1)を50重量部とした以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0054】
実施例3
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A2)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0055】
実施例4
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A3)を25重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体としてメルトマスフローレート1.7g/10分、エチレン含量32mol%であるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製、商品名エバールF171B)(B2)を50重量部、プロピレン系重合体(C1)を25重量部とした以外は実施例2と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0056】
【0057】
実施例5
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を40重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B1)を20重量部、プロピレン系重合体(C1)を40重量部とした以外は実施例2と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価したところ、表4に示す通りだった
実施例6
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を20重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B1)を60重量部、プロピレン系重合体(C1)を20重量部とした以外は実施例2と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度を評価したところ、表4に示す通りだった
実施例7
プロピレン系重合体としてメルトマスフローレートが7.0g/10分であるエチレンと1-ブテンが共重合されたポリプロピレンターポリマー(日本ポリプロ(株)製、商品名ノバテックFW4BA)(C2)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度を評価したところ、表4に示す通りだった。
【0058】
実施例8
プロピレン系重合体としてメルトマスフローレートが4.0g/10分であるポリプロピレンホモポリマー(日本ポリプロ(株)製、商品名ノバテックFY4)(C3)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度を評価したところ、表4に示す通りだった。
【0059】
【0060】
比較例1
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A4)を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度を評価した結果を表5に示す。本比較例の積層体はヒートシール強度に劣っていた。
【0061】
比較例2
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を70重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B1)を30重量部とした以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度を評価した結果を表5に示す。本比較例の積層体はヒートシール強度に劣っていた。
【0062】
比較例3
エチレン・ビニルアルコール共重合体(B1)を30重量部、プロピレン系重合体(C1)を70重量部とした以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度を評価した結果を表5に示す。本比較例の積層体はヒートシール強度に劣っていた。
【0063】