(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165347
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】加工工具
(51)【国際特許分類】
B24D 5/14 20060101AFI20241121BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241121BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20241121BHJP
B24D 3/28 20060101ALI20241121BHJP
B24D 3/14 20060101ALI20241121BHJP
B24D 3/06 20060101ALI20241121BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B24D5/14
H01L21/304 601Z
B24D3/00 320B
B24D3/28
B24D3/14
B24D3/06 Z
B24D3/00 330G
B24B7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081472
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤星 祐樹
【テーマコード(参考)】
3C043
3C063
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA11
3C043BA17
3C043CC03
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD12
3C063AA02
3C063AB03
3C063BA32
3C063BA35
3C063BB02
3C063BC02
3C063BC03
3C063BC05
3C063EE10
3C063FF23
5F057AA12
5F057BA15
5F057BB03
5F057CA16
5F057DA17
5F057EB16
5F057EB18
(57)【要約】
【課題】ウエーハの面取り部の除去を効率よく実施することができる加工工具を提供する。
【解決手段】中央領域と該中央領域を囲繞する外周余剰領域と該外周余剰領域に面取り部が形成されたウエーハの該面取り部を除去する加工工具であって、回転軸に挿入される開口部を備えると共に、第一の側面と第二の側面とを有する環状の研削砥石と、該第一の側面又は該第二の側面の少なくとも一方に形成された研磨砥石と、を含み、除去すべき面取り部の外周端から半径方向の長さをLとし、該研削砥石の幅をHとし、該研磨砥石の幅をhとすると、
H+h>L・・・(1)
L/3>h>L/100・・・(2)
で規定される条件(1)、(2)のいずれをも満たすように形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央領域と該中央領域を囲繞する外周余剰領域と該外周余剰領域に面取り部が形成されたウエーハの該面取り部を除去する加工工具であって、
回転軸に挿入される開口部を備えると共に、第一の側面と第二の側面とを有する環状の研削砥石と、該第一の側面又は該第二の側面の少なくとも一方に形成された研磨砥石と、を含み、
除去すべき面取り部の外周端から半径方向の長さをLとし、該研削砥石の幅をHとし、該研磨砥石の幅をhとすると、
H+h>L・・・(1)
L/3>h>L/100・・・(2)
で規定される条件(1)、(2)のいずれをも満たすように形成される加工工具。
【請求項2】
該研磨砥石を構成するダイヤモンド砥粒の粒径は、被加工物の物質によって選択され、該研削砥石を構成するダイヤモンド砥粒の粒径は該研磨砥石を構成するダイヤモンド砥粒の粒径の1.5~5倍の範囲で選択される請求項1に記載の加工工具。
【請求項3】
該研磨砥石及び該研削砥石を構成するボンド材は、レジンボンド、ビドリファイドボンド、メタルボンドのいずれかが選択される請求項2に記載の加工工具。
【請求項4】
該中央領域は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域を備えた半導体ウエーハである請求項1に記載の加工工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中央領域と該中央領域を囲繞する外周余剰領域と該外周余剰領域に面取り部が形成されたウエーハの該面取り部を除去する加工工具に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに形成された後、切削装置によって個々のデバイスチップに分割されて、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
研削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削砥石を環状に配設した研削ホイールを回転可能に備えた研削手段と、該研削手段を研削送りする送り手段と、ウエーハの厚みを計測する計測手段と、を含み構成されていて、ウエーハの裏面を研削して所望の厚みに加工することができる。
【0004】
ところが、ウエーハの外周には、面取り部が形成されていることから、ウエーハの裏面を研削して薄化すると、ウエーハの外周端の該面取り部が鋭利なナイフエッジとなり、外周からクラックが生じてデバイス領域に進展してデバイスを損傷させると共に、オペレータが怪我をするおそれがあるという問題がある。
【0005】
そこで、ウエーハの裏面を研削する前に、外周余剰領域の外周端に形成される面取り部を除去する技術が本出願人によって提出されている(例えば特許文献1を参照)。
【0006】
また、上記した面取り部を切削砥石で切削すると、ウエーハの外周に欠けが生じて品質の低下を招く事から、粗い砥石で面取り部を大まかに除去した後、細かい砥石で欠けを除去するようにすることで、ウエーハの裏面を研削する前の品質を向上させる技術も本出願人によって提案されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-225976号公報
【特許文献2】特許2014-003198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、目の粗い砥石面で面取り部を大まかに除去する除去工程と、その後、目の細かい砥石面で仕上げる仕上げ工程とによる加工では、面取り部が除去されるまでに時間が掛かり、生産性が悪く、煩に堪えないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、ウエーハの面取り部の除去を効率よく実施することができる加工工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、中央領域と該中央領域を囲繞する外周余剰領域と該外周余剰領域に面取り部が形成されたウエーハの該面取り部を除去する加工工具であって、回転軸に挿入される開口部を備えると共に、第一の側面と第二の側面とを有する環状の研削砥石と、該第一の側面又は該第二の側面の少なくとも一方に形成された研磨砥石と、を含み、除去すべき面取り部の外周端から半径方向の長さをLとし、該研削砥石の幅をHとし、該研磨砥石の幅をhとすると、
H+h>L・・・(1)
L/3>h>L/100・・・(2)
で規定される条件(1)、(2)のいずれをも満たすように形成される加工工具が提供される。
【0011】
該研磨砥石を構成するダイヤモンド砥粒の粒径は、被加工物の物質によって選択され、該研削砥石を構成するダイヤモンド砥粒の粒径は該研磨砥石を構成するダイヤモンド砥粒の粒径の1.5~5倍の範囲で選択されることが好ましい。また、該研磨砥石及び該研削砥石を構成するボンド材は、レジンボンド、ビドリファイドボンド、メタルボンドのいずれかが選択されることが好ましい。さらに、該中央領域は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域を備えた半導体ウエーハであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加工工具は、中央領域と該中央領域を囲繞する外周余剰領域と該外周余剰領域に面取り部が形成されたウエーハの該面取り部を除去する加工工具であって、回転軸に挿入される開口部を備えると共に、第一の側面と第二の側面とを有する環状の研削砥石と、該第一の側面又は該第二の側面の少なくとも一方に形成された研磨砥石と、を含み、除去すべき面取り部の外周端から半径方向の長さをLとし、該研削砥石の幅をHとし、該研磨砥石の幅をhとすると、
H+h>L・・・(1)
L/3>h>L/100・・・(2)
で規定される条件(1)、(2)のいずれをも満たすように形成されることから、効率よくウエーハにおいて除去すべき外周端からの半径方向の長さLの領域を研削砥石によって大まかに除去しつつ、面取り部において除去された除去領域を形成する外周面を滑らかに仕上げることが可能になり、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の加工工具が装着される切削装置の全体斜視図である。
【
図2】(a)
図1に示す切削装置の切削手段の一部拡大斜視図、(a)に示す切削手段の分解斜視図である。
【
図3】ウエーハを保持するウエーハ保持工程の態様を示す斜視図である。
【
図4】面取り部の加工すべき位置を検出する態様を示す斜視図である。
【
図5】
図4において面取り部が検出されるウエーハを示す側面図である。
【
図6】面取り部除去工程を実施する際に研削手段がウエーハ上に位置付けられる態様を示す斜視図である。
【
図7】面取り部除去工程において面取り部が除去される態様を示す斜視図である。
【
図8】(a)ウエーハの面取り部に砥石が切り込まれている態様を示す一部拡大側面図、(b)面取り部除去工程により面取り部の一部が除去された態様を示す一部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に基づいて構成される加工工具に係る実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1には、本実施形態の加工工具である砥石9が装着される切削手段8を備えた切削装置1が示されている。切削装置1は、略直方体形状のハウジング2を備え、ハウジング2のカセットテーブル4aに載置されるカセット4(2点鎖線で示す)と、カセット4からウエーハ20を仮置きテーブル5に搬出する搬出入手段3と、仮置きテーブル5に搬出されたウエーハ20をチャックテーブル7に搬送する旋回アームを有する搬送手段6と、チャックテーブル7に保持されたウエーハ20に加工を施す本実施形態の砥石9が回転可能に装着された、砥石カバー81と回転軸ハウジング82とを含む切削手段8と、上記したチャックテーブル7に保持されたウエーハ20の加工領域を撮像し、切削手段8よって加工すべき領域を検出するためのアライメント手段10と、該アライメント手段10とY軸方向に隣接して配設され、チャックテーブル7に保持されたウエーハ20の厚みを検出するための高さ検出手段11と、
図1においてチャックテーブル7が位置付けられた搬出入位置からウエーハ20を洗浄装置12に搬送する洗浄搬出手段13と、ハウジング2の上部に配設された表示手段14と、が配設されている。
【0016】
チャックテーブル7は、通気性のポーラス部材により形成され保持面を構成する吸着チャック71と、該吸着チャック71を囲繞する枠体72とにより構成され、枠体72を介して図示を省略する吸引手段に接続されている。該吸引手段を作動することにより、吸着チャック71の上面に負圧を生成して被加工物を吸引保持することができる。
【0017】
ハウジング2の内部には、チャックテーブル7をX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、切削手段8をX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸送り手段と、X軸方向及びY軸方向に直交するZ軸方向(上下方向)に移動して切り込み送りさせるZ軸送り手段と、チャックテーブル7を回転させる回転駆動手段とを備えると共に、切削装置1の各作動部を制御する図示を省略する制御手段が配設される。
【0018】
図2(a)には、
図1に示す切削装置1に配設された切削手段8の主要部を拡大した斜視図、
図2(b)には、
図2(a)の構成を分解した状態の斜視図を示している。なお、
図2では、説明の都合上、上記した砥石9を覆う砥石カバー81は省略している。切削手段8は、回転軸ハウジング82と、該回転軸ハウジング82に回転自在に保持された回転軸83と、回転軸83の先端部83aに装着された追って詳述する条件を満たすように選択される砥石9とを備えている。回転軸ハウジング82の他端側には図示を省略するモータ等の回転駆動源が収容されており、該回転駆動源は回転軸83を回転させることで砥石9を高速で回転させる。
【0019】
切削手段8についてさらに詳述すると、
図2(b)から理解されるように、回転軸83の先端83a側に形成された固定フランジ86と、固定フランジ86の中央から軸方向に突出したボス部86aと、該ボス部86aに係合して固定フランジ86と協働して砥石9を挟持する着脱フランジ87と、ボス部86aの側面に形成された雄ねじ86bに螺合して着脱フランジ87を締結するナット88と、を備えている。該砥石9の開口部9aは、ボス部86aの直径に対応して形成されており、ボス部86aを砥石9の開口部9aに挿入すると共に、該ボス部86aに着脱フランジ87を装着して、ナット88を雄ねじ86bに螺合し締結することで、砥石9を固定フランジ86と着脱フランジ87とにより挟持して強固に固定する。
【0020】
図2(b)に示すように、砥石9は、環状の研削砥石91と、該研削砥石91と一体に形成された環状の研磨砥石92とを備えている。
図2(b)の左上方に一部を拡大した断面図で示すように、研削砥石91は、第一の側面91a及び第二の側面91bを備えた平板状の砥石であり、研磨砥石92は、該第一の側面91a又は第二の側面91bの少なくとも一方に形成されるものであって、図示の実施形態では、第一の側面91a側に形成されている。なお、本発明の加工工具を構成する砥石9は、上記した如く、研削砥石91のいずれか一方の側面のみに研磨砥石92を形成することに限定されず、第一の側面91a及び第二の側面91bの両方に形成するものであってもよい。研磨砥石92及び該研削砥石91を構成する砥粒は、例えば、ダイヤモンド砥粒であり、ボンド材は、例えば、レジンボンド、ビドリファイドボンド、メタルボンドのいずれかから選択されることが好ましい。研磨砥石92は、被加工物と接触する面を滑らかに仕上げる目の細かい砥石であり、研磨砥石92を構成するダイヤモンド砥粒の平均粒径(以下「粒径」という)は、被加工物の物質によって適宜選択され、研削砥石91を構成するダイヤモンド砥粒の粒径と比較して、その粒径が小さくなるように設定されている。本発明における研削砥石91の幅(厚み)と、研磨砥石92の幅(厚み)は、所定の条件を満たすことを要件としており、詳細については、追って説明する。
【0021】
図3~
図8を参照しながら、本実施形態の加工工具の砥石9を使用してウエーハの面取り部を除去する加工方法、及び砥石9を構成する研削砥石91、研磨砥石92の条件について以下に説明する。
【0022】
(砥石準備工程)
図1に示す切削装置1によって、
図3に示すウエーハ20の面取り部26cを除去する加工を実施するに際し、砥石準備工程を実施する。本実施形態で加工されるウエーハ20は、複数のデバイス22が分割予定ライン24によって区画され表面20aに形成された半導体(例えばシリコン)のウエーハであり、デバイス22が形成された中央領域26aと、該中央領域26aを囲繞する外周余剰領域26bと、外周余剰領域26bの外周端において面取りが施された面取り部26cとを備えている。
図3では、中央領域26aと外周余剰領域26bとを区分する環状の区分線28(破線で示す)が記載されているが、説明の都合上付したものであり、実際にウエーハ20の表面20aに形成されているものではない。ここで、該ウエーハ20は、例えば厚みが700μmであって、面取り部26cにおいて除去すべき外周端から半径方向の長さLは3.0mmであると予め設定されている。そして、上記した研削砥石91の幅をHとし、研磨砥石92の幅をhとした場合に、上記した除去すべき外周端からの半径方向の長さL(=3.0mm)に基づいて、
H+h>L・・・・(1)
L/3>h>L/100・・・(2)
なる条件(1)、(2)の両方を満たすように形成された砥石9を採用する。本実施形態では、面取り部26cにおいて除去すべき外周端から半径方向の長さLは3.0mmであるのに対し、研削砥石91の幅H=3.0mm、研磨砥石92の幅h=0.3mmであって、総幅が3.3mmで形成された直径が58mmの砥石9が準備される。
【0023】
上記した砥石準備工程によって準備される砥石9の条件(2)については、さらに、研磨砥石92の幅hがL/20より小さく、L/60より大きい寸法の範囲で設定されることがより好ましい。また、研磨砥石92を構成するダイヤモンド砥粒の粒径は、ウエーハ20を構成するシリコンの物性に対応して選択されるが、研磨砥石92を構成するダイヤモンド砥粒の粒径に対し、研削砥石91を構成するダイヤモンド砥粒の粒径を1.5~5倍の範囲で選択することが好ましい。より具体的には、研磨砥石92を構成するダイヤモンド砥粒の粒径として3~10μmを選択した場合、研削砥石91を構成するダイヤモンド砥粒の粒径をその1.5~5倍となる15~50μmの範囲で設定する。砥石準備工程において上記した条件を満たす砥石9を準備したならば、
図2(b)に基づき説明したように切削手段8に装着する。本実施形態では、回転軸83の先端部83a側に研磨砥石92が、回転軸ハウジング82側に研削砥石91が配設されるように装着される。
【0024】
(ウエーハ保持工程)
砥石準備工程を実施したならば、
図1に基づき説明した切削装置1のカセット4から搬出入手段3によってウエーハ20を搬出して仮置きテーブル5に仮置きし、仮置きテーブル5から搬送手段6を作動してウエーハ20を吸引して、チャックテーブル7に搬送する。この際、
図3に示すように、ウエーハ20の裏面20bを下方に向けて、チャックテーブル7に載置し、図示を省略する吸引手段を作動して、吸着チャック71に負圧を生成して吸引保持する。
【0025】
(加工位置検出工程)
上記したようにウエーハ保持工程を実施したならば、上記したX軸送り手段を作動して、チャックテーブル7と共にウエーハ20を上記したアライメント手段10の直下に位置付けてウエーハ20を撮像し、ウエーハ20の中心と、外周余剰領域26bにおいて、除去すべき面取り部26cの外周端から半径方向の長さがL(3.0mm)である領域の位置とを検出する。さらに、
図4に示すように、高さ検出手段11によって、除去すべき面取り部26cの領域の厚み、より具体的には、
図5に示すように、チャックテーブル7の表面の高さZ0、及びウエーハ20の面取り部26cにおける表面20aの高さZ1を検出し、その差分(Z0-Z1)をウエーハ20の厚みとして演算し、検出されたこれら加工領域に関する情報を、図示を省略する制御手段に記憶する。
【0026】
(面取り部除去工程)
次いで、上記した加工位置検出工程によって検出され、制御手段に記憶された面取り部26cにおいて除去すべき加工領域の情報に基づいて、上記した切削装置1のX軸送り手段、Y軸送り手段を作動して、
図6に示すように、切削手段8に装着された砥石9の直下にウエーハ20の面取り部26cを位置付ける。このとき、砥石9の研磨砥石92の位置を、除去すべき外周端からの半径方向の長さLと一致する位置の上方に位置付ける。そして、砥石9を矢印R1で示す方向に所定の回転速度(例えば30000rpm)で回転させると共に、上記したZ軸送り手段を作動して、切削手段8を矢印R2で示す方向に下降させて、砥石9をウエーハ20の面取り部26cに切り込ませる。これと共に、
図7に示すように、チャックテーブル7を矢印R3で示す方向に所定の回転速度(例えば0.8~3rpm)で少なくとも1回転させる。このとき、砥石9は、
図8(a)に示すように、外周端からの半径方向の長さLの領域を除去すると共に、所定の切込み深さDZ(本実施形態では300μm)に至る位置まで切込み送りされている。以上により、ウエーハ20の外周余剰領域26bの外周端を形成する面取り部26cが、外周端からの半径方向の長さLの幅で、所定の切り込み深さDZの分だけ環状に除去されて(
図8(b)を参照)に示すように、面取り部除去工程が完了する。なお、上記の切込み深さDZは、本実施形態の加工方法が実施された後の工程で実施される裏面研削工程(詳細については省略する)によって裏面20b側から研削されて仕上げられるウエーハ20の厚みに応じて設定され、本実施形態では、後に実施される裏面研削工程によってウエーハ20の裏面20bを研削して250μmの厚みに仕上げることから、面取り部除去工程における切込み深さDZは300μmで十分である。
【0027】
本実施形態では、研削砥石91の幅H+研磨砥石92の幅hの寸法が、外周余剰領域26bの外周端部を形成する面取り部26cにおいて除去すべき外周端からの半径方向の長さLに対し大きくなるように形成される(条件(1))と共に、研磨砥石92の幅hが、L/3よりも小さく、L/100よりも大きく(条件(2))形成されている。これにより、上記したように、研磨砥石92をウエーハ20の中心側に位置付け、研削砥石91を外側に位置付けてウエーハ20を回転させながら所定の切り込み深さで少なくとも1回転させることで、
図8(b)に示すように、除去すべき外周端からの半径方向の長さLの寸法で、面取り部26を大まかに除去し、これと同時に面取り部26cにおいて除去された除去領域26dを形成する外周面20cを仕上げることが可能になり、生産性が向上する。
【0028】
上記した条件(2)については、さらに、研磨砥石92の幅hがL/20より小さく、L/60より大きい寸法で設定されることがより好ましく、例えば、除去すべき外周端からの半径方向の長さLが3.00mm(3000μm)である場合に、研磨砥石92の幅hを50~150μmで設定し、研削砥石91の幅Hを2950~3050μmの範囲で調整して、砥石9の総幅(H+h)を3100μmになるように設定することが好ましい。研削砥石91の幅Hと、研磨砥石92の幅hとを、このような範囲で設定することで、ウエーハ20において除去すべき外周端からの半径方向の長さLの領域を研削砥石91によって大まかに除去しつつ、これと同時に面取り部26cにおいて除去された除去領域26dを形成する外周面20cをより効率よく仕上げることが可能になる。
【0029】
また、研磨砥石92を構成するダイヤモンド砥粒の粒径に対して、研削砥石91を構成するダイヤモンド砥粒の粒径を1.5~5倍の範囲で形成することが好ましく、より具体的には、ウエーハ20の物質を考慮して研磨砥石92を構成するダイヤモンド砥粒の粒径を3~10μmとした場合、研削砥石91を構成するダイヤモンド砥粒の粒径を15~50μmの範囲で設定するとよい。このようにすることで、研削砥石91と研磨砥石92とを一体に形成する際の馴染みが確保されて強固に砥石9が形成されて耐久性が向上し、効率よくウエーハ20において除去すべき外周端からの半径方向の長さLの領域を大まかに除去しつつ、面取り部26cにおいて除去された除去領域26dを形成する外周面20cを滑らかに仕上げることが可能になる。
【0030】
上記した実施形態では、砥石9を研削手段8の回転軸83に装着する際に、研磨砥石92を回転軸82の先端部83a側に、研削砥石91を回転軸ハウジング82側になるように装着したが、本発明はこれに限定されず、研磨砥石92側を回転軸ハウジング82側に、研削砥石91を回転軸83の先端部83a側になるように研削手段8に装着して、上記した加工方法の面取り部除去工程を実施することもできる。その場合は、面取り部除去工程を実施する際に、研磨砥石92側が、半径方向でウエーハ20の中心側になるように、より具体的には、例えば、
図7に示すウエーハ20を跨いで図中左下側(
図7で示すウエーハ20のノッチ25が位置付けられた領域)に切削手段8の砥石9を位置付けてチャックテーブル7を回転して、面取り部除去工程を実施するとよい。
【符号の説明】
【0031】
1:切削装置
2:ハウジング
3:搬出入手段
4:カセット
5:仮置きテーブル
6:搬送手段
7:チャックテーブル
71:吸着チャック
72:枠体
8:切削手段
81:砥石カバー
82:回転軸ハウジング
83:回転軸
83a:先端部
86:固定フランジ
86a:ボス部
86b:雄ねじ
87:着脱フランジ
88:ナット
9:砥石
91:研削砥石
91a:第一の側面
91b:第二の側面
92:研磨砥石
10:アライメント手段
11:高さ検出手段
12:洗浄装置
13:洗浄搬出手段
14:表示手段
20:ウエーハ
20a:表面
20b:裏面
20c:外周面
22:デバイス
24:分割予定ライン
25:ノッチ
26a:中央領域
26b:外周余剰領域
26c:面取り部
26d:除去領域
28:区分線