(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165373
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241121BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241121BHJP
C23C 16/509 20060101ALI20241121BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101B
H01L21/31 C
C23C16/509
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081521
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 勇稀
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA04
2G084BB23
2G084CC05
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD23
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF15
4K030BA29
4K030DA06
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4K030JA01
4K030KA02
4K030KA20
5F004AA15
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5F045DP03
5F045EB06
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5F045EM05
(57)【要約】
【課題】基板支持部の対向電極の表面に均一な膜を形成する。
【解決手段】プラズマ処理装置により実行されるプラズマ処理方法が提供される。前記プラズマ処理装置は、ガス供給口及びガス排気口を有するプラズマ処理チャンバと、前記プラズマ処理チャンバの内部に配置される基板支持部と、前記基板支持部に対向する対向電極と、前記プラズマ処理チャンバの内部にプラズマを生成可能なプラズマ源と、を備える。プラズマ処理方法は、前記基板支持部の基板支持面にダミー基板を提供する工程であり、前記ダミー基板は、周縁部の厚さが中央部よりも厚い、工程と、前記プラズマ源により前記プラズマ処理チャンバの内部に第1の処理ガスから第1のプラズマを生成することにより前記ダミー基板の表面をスパッタし、前記対向電極の表面にスパッタ粒子を付着させる工程とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置により実行されるプラズマ処理方法であって、
前記プラズマ処理装置は、ガス供給口及びガス排気口を有するプラズマ処理チャンバと、前記プラズマ処理チャンバの内部に配置される基板支持部と、前記基板支持部に対向する対向電極と、前記プラズマ処理チャンバの内部にプラズマを生成可能なプラズマ源と、を備え、
前記基板支持部の基板支持面にダミー基板を提供する工程であり、前記ダミー基板は、周縁部の厚さが中央部よりも厚い、工程と、
前記プラズマ源により前記プラズマ処理チャンバの内部に第1の処理ガスから第1のプラズマを生成することにより前記ダミー基板の表面をスパッタし、前記対向電極の表面にスパッタ粒子を付着させる工程と、
を含む、プラズマ処理方法。
【請求項2】
前記ダミー基板は、前記中央部が平坦である、
請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記ダミー基板は、表面にシリコンまたは金属を含む、
請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記金属は、タングステン、モリブデン、ルテニウム及びチタンからなる群より選ばれる少なくとも1つである、
請求項3に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記ダミー基板の直径は、300mm~400mmである、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記周縁部は、表面が凹型の曲面であり、最外周が最も厚い、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
前記周縁部の最外周の厚さは、前記中央部よりも2mm~10mm厚い、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
前記周縁部の内径は、前記対向電極の直径以上である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】
前記対向電極は、前記ガス供給口に接続される複数のガス導入口を有し、
前記周縁部は、表面の前記スパッタ粒子が前記複数のガス導入口のうちの最外周のガス導入口及び前記最外周のガス導入口の内側の前記対向電極の表面に付着するように傾斜している、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項10】
前記基板支持部と前記対向電極との間のギャップをGとし、前記周縁部の最外周の厚さをHとし、前記周縁部の最外周の頂点から前記対向電極の最外周のガス導入口までの距離をJとしたとき、前記基板支持面に提供された前記ダミー基板は、次の式(1)で示される角度θが12°以上となるように配置される、
cosθ=J/(G-H)・・・(1)
請求項7に記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】
前記ダミー基板を前記プラズマ処理チャンバの外部へ搬出する工程と、
前記基板支持部の基板支持面に前記ダミー基板とは異なる基板を提供する工程と、
前記プラズマ源により前記プラズマ処理チャンバの内部に第2の処理ガスから第2のプラズマを生成することにより前記基板をプラズマ処理する工程と、をさらに含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項12】
前記基板支持面に前記ダミー基板を提供する工程の後、前記プラズマ源により前記プラズマ処理チャンバの内部に第3の処理ガスから第3のプラズマを生成し、前記第3のプラズマによりクリーニングする工程と、
前記基板支持面から離隔した第1の位置において、前記基板支持面に対向するように前記ダミー基板を保持した後、前記プラズマ源により前記プラズマ処理チャンバの内部に第4の処理ガスから第4のプラズマを生成し、前記第4のプラズマによりクリーニングする工程と、を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項13】
前記第3のプラズマによりクリーニングする工程、前記第4のプラズマによりクリーニングする工程、前記対向電極の表面にスパッタ粒子を付着させる工程の3工程を、この順で実行する、
請求項12に記載のプラズマ処理方法。
【請求項14】
前記第3のプラズマによりクリーニングする工程、前記対向電極の表面にスパッタ粒子を付着させる工程、前記第4のプラズマによりクリーニングする工程の3工程を、この順で実行する、
請求項12に記載のプラズマ処理方法。
【請求項15】
前記第3の処理ガスは、酸素を含む、
請求項12に記載のプラズマ処理方法。
【請求項16】
前記第4の処理ガスは、酸素及びフッ素を含む、
請求項12に記載のプラズマ処理方法。
【請求項17】
前記3工程を実行した後、前記プラズマ処理チャンバの外部へ前記ダミー基板を搬出する工程と、
前記ダミー基板を搬出した後、前記プラズマ源により前記プラズマ処理チャンバの内部に第5の処理ガスから第5のプラズマを生成し、前記第5のプラズマによりクリーニングする工程と、を有する、
請求項13に記載のプラズマ処理方法。
【請求項18】
ガス供給口及びガス排気口を有するプラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバの内部に配置される基板支持部と、
前記基板支持部に対向する対向電極と、
前記プラズマ処理チャンバの内部にプラズマを生成可能なプラズマ源と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記基板支持部の基板支持面にダミー基板を提供する工程であり、前記ダミー基板は、周縁部の厚さが中央部よりも厚い、工程と、
前記プラズマ源により前記プラズマ処理チャンバの内部に第1の処理ガスから第1のプラズマを生成することにより前記ダミー基板の表面をスパッタし、前記対向電極の表面にスパッタ粒子を付着させる工程と、
を含む工程を制御する、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、載置台に対向する対向電極の表面に、載置台に載置されたターゲット基板からスパッタ粒子を付着して対向電極を再生することを提案している。ターゲット基板は、中央部の厚さを外周部よりも厚くすることが記載されている。
【0003】
例えば、特許文献2は、チャンバ内のクリーニング方法を提案している。クリーニング方法は、離隔させる工程と、除去する工程とを有し、離隔させる工程は、載置台と基板とを昇降機構を用いて離隔させる。除去する工程は、離隔させる工程の後、高周波電源から載置台に高周波電力を供給することによってプラズマを生成し、載置台に堆積した堆積物を除去することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-125656号公報
【特許文献2】特開2021-086968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板支持部の対向電極の表面に均一な膜を形成することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、プラズマ処理装置により実行されるプラズマ処理方法が提供される。前記プラズマ処理装置は、ガス供給口及びガス排気口を有するプラズマ処理チャンバと、前記プラズマ処理チャンバの内部に配置される基板支持部と、前記基板支持部に対向する対向電極と、前記プラズマ処理チャンバの内部にプラズマを生成可能なプラズマ源と、を備える。プラズマ処理方法は、前記基板支持部の基板支持面にダミー基板を提供する工程であり、前記ダミー基板は、周縁部の厚さが中央部よりも厚い、工程と、前記プラズマ源により前記プラズマ処理チャンバの内部に第1の処理ガスから第1のプラズマを生成することにより前記ダミー基板の表面をスパッタし、前記対向電極の表面にスパッタ粒子を付着させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0007】
一の側面によれば、基板支持部の対向電極の表面に均一な膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るプラズマ処理システムの一例を示す図。
【
図2】一実施形態に係るPVD法による上部電極へのシリコンの成膜例を示す図。
【
図3】ダミー基板の形状とシリコンの成膜量に関する実験結果の一例を示す図。
【
図4】ダミー基板の形状とシリコンの成膜量に関する実験結果の一例を示す図。
【
図5】ダミー基板の形状とシリコンの成膜量に関する実験結果の一例を示す図。
【
図6】一実施形態に係るダミー基板の周縁部の形状を説明する図。
【
図7】一実施形態に係るプラズマ処理方法ST1の一例を示すフローチャート。
【
図8】変形例1に係るプラズマ処理方法ST2の一例を示すフローチャート。
【
図9】変形例1に係るプラズマ処理方法ST2を説明するための図。
【
図10】変形例2に係るプラズマ処理方法ST3の一例を示すフローチャート。
【
図11】変形例2に係るプラズマ処理方法ST3を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
[プラズマ処理システム]
以下に、一実施形態に係るプラズマ処理システムの構成例について説明する。
図1は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0011】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間10sからガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11とプラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0012】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0013】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF(Radio Frequency)電源31及び/又はDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0014】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリング112aと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリング112aは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0015】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0016】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13c1を有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13c1からプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。
図1では、シャワーヘッド13は、内側の上部電極13cと、上部電極13cの外周側に配置された電極13dと、を有する。上部電極13cは円盤型であり、ガス供給口13a、ガス拡散室13b、複数のガス導入口13c1を有し、例えばシリコン(Si)で形成されている。電極13dはリング状であり、例えばシリコン(Si)で形成されている。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0017】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0018】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部(プラズマ源)の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマに含まれるイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0019】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0020】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0021】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0022】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0023】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0024】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0025】
[上部電極の再生]
プラズマ処理装置1では、基板支持部11に対向する対向電極としての上部電極13cがプラズマにより消耗し易いため、その消耗を抑制し、上部電極13cの寿命を延ばすことが重要になっている。
【0026】
上部電極13cの消耗を抑制するために、上部電極13cの材料をシリコンから、シリコンよりも消耗し難い材料に変更したり、プラズマ処理中に印加するRF電力を下げて上部電極13cを消耗し難くさせたりする方法がある。しかし、材料の変更やプロセス条件を限定せずにより簡便な方法で上部電極13cの消耗を抑制することが望まれる。そこで、上部電極13cの表面に膜をコーティングするプリコートにより、上部電極13cを消耗から保護及び再生する方法がある。プリコートでは、上部電極13cの表面をCH4やSiO2の膜でコーティングする。このため、O2プラズマ生成時や基板W上のSiO2膜のエッチング時にプリコート膜が消耗し易く、プロセスに影響を与えることが考えられる。よって、プリコート膜は、できるだけプロセスに影響を与えない上部電極13cと同じ材料であるシリコン膜が良い。
【0027】
そこで、本実施形態に係るプラズマ処理方法では、基板支持部11(静電チャック1111)の基板支持面にシリコンから形成されたダミー基板を載置し、シリコン製のダミー基板をスパッタすることにより上部電極13cにプリコート膜をコーティングし上部電極13cを消耗から保護及び再生する。
図2は、一実施形態に係るPVD(Physical Vapor Deposition)法による上部電極13cへのシリコンの成膜例を示す図である。
【0028】
例えば、
図1に示すように、シャワーヘッド13からプラズマ処理チャンバ10の内部にアルゴンガスを供給し、プラズマ源によりプラズマ処理チャンバ10の内部にアルゴンガスからプラズマを生成する。そして、
図2(a)に示すように、プラズマに含まれるアルゴンイオンにより、シリコン製のダミー基板DWの表面をスパッタする。これにより、
図2(b)に示すように、ダミー基板DWの表面からシリコンのスパッタ粒子が叩き出され、ダミー基板DWに対向する上部電極13cの表面13eにスパッタ粒子を付着させることができる。このスパッタ粒子が堆積したシリコン膜Dにより、上部電極13cの表面13eが保護及び再生され、上部電極13cの寿命を延ばすことができる。
【0029】
PVD法では、基板Wと同じ表面が平坦なダミー基板DWを使用すると、上部電極13cの周縁部にシリコンが付着し難く、上部電極13cの中央部と周縁部とでシリコン膜の成膜量に差が生じる。
【0030】
図3は、ダミー基板の形状と上部電極13cへのシリコンの成膜量に関する実験結果の一例を示す図である。
図3(c)は、
図3(a)に示すように平坦なダミー基板DFを使用した場合の上部電極13cへのシリコン膜Dの成膜量の実験結果の一例を示す参考例である。
図3(d)は、
図3(b)に示すように周縁部の厚さが中央部よりも厚いダミー基板DWを使用した場合の上部電極13cへのシリコン膜Dの成膜量の実験結果の一例を示す。
【0031】
ダミー基板DFは、直径φが360mmであり、直径φ340までの中央部の表面は平坦であり、直径φ340から直径φ360までの周縁部の表面も平坦な円盤型である。ダミー基板DWは、直径φが360mmであり、直径φ340までの中央部の表面は平坦であり、直径φ340から直径φ360までの周縁部の表面は最外周に向かって反り上がる曲面であり、周縁部の最外周にて最も厚い円形のトレイ型(おぼん型)である。本実験では、周縁部の最外周の厚さが中央部よりも5mm厚いダミー基板DWを使用した。本実験は、ダミー基板DF、DWの表面にシリコンの粒子(スパッタ粒子)を均等に配置し、当該スパッタ粒子をアルゴンイオンにより飛ばしたときのシミュレーション結果である。
【0032】
図3(c)及び
図3(d)の横軸は、ダミー基板DF、DWの中心「0」からの径方向の位置(mm)を示し、縦軸は、横軸のダミー基板DF、DWに対向する上部電極13cの位置に付着する、単位面積当たりのシリコンのスパッタ粒子数(個/mm
2)を示す。以下では、ダミー基板DF、DWの中心「0」から径方向に直径10mmの位置をセンターとし、ダミー基板DF、DWの中心「0」から径方向に直径160mmの位置をエッジとする。
【0033】
参考例のダミー基板DFを使用したとき、
図3(a)及び
図3(c)に示すように、上部電極13cの表面13eに付着したシリコン膜Dの成膜量は、中央部と比較して周縁部が少なく、センターの成膜量を1としたときのエッジの成膜量は0.75であった。つまり、表面が平坦なダミー基板DFを使用した場合、上部電極13cのエッジでは、センターに対してシリコン膜Dが25%薄くなり、上部電極13cの中央部と周縁部とでシリコン膜Dの成膜量に差が生じる。
【0034】
一方、一実施形態に係るダミー基板DWを使用したとき、
図3(b)及び
図3(d)に示すように、上部電極13cの表面13eに付着したシリコン膜Dの成膜量は、中央部と周縁部とでほぼ変わらなかった。センターの成膜量を1としたときのエッジの成膜量は0.93であった。つまり、周縁部が中央部よりも厚いダミー基板DWを使用した場合、上部電極13cのエッジでは、センターに対してシリコン膜Dが7%薄くなり、上部電極13cの中央部と周縁部とのシリコン膜Dの成膜量はほぼ均一になる。
【0035】
以上の実験結果から、周縁部の厚さが中央部よりも厚いダミー基板DWを使用して、PVD法により上部電極13cにシリコン膜を成膜することにより、上部電極13cの表面13eに均一な膜厚のシリコン膜Dを形成することができる。または、上部電極13cの表面13eの中央部にて周縁部よりも厚いシリコン膜Dを形成することができる。なお、上部電極13cの再生では、消耗により開口径が拡大した複数のガス導入口13c1を元の寸法に再生することが重要である。このため、最外周のガス導入口13c1及びその内側にシリコン膜Dを形成し、すべてのガス導入口13c1を含む上部電極13cの再生が可能なように、ダミー基板DWの直径は、上部電極13cの直径に対して1.1倍以上とする。
【0036】
[ダミー基板の形状]
ダミー基板DWは、周縁部の厚さが中央部よりも厚くなるように、表面が凹型である。
図4及び
図5では、表面が凸型のダミー基板DF2を参考例として、表面が凹型のダミー基板DWの最外周の厚さを変えて、前述した実験と同じ実験を行った。
【0037】
図4及び
図5は、ダミー基板の形状と上部電極13cへのシリコンの成膜量に関する実験結果の一例を示す図である。
図4(c)は、
図4(a)に示すように中央部の厚さが周縁部よりも厚い表面が凸型のダミー基板DF2を使用した場合の上部電極13cの表面に付着したシリコン膜Dの成膜量の実験結果の一例を示す参考例である。
図4(d)は、
図4(b)に示すように周縁部の厚さが中央部よりも厚い表面が凹型のダミー基板DW2を使用した場合の上部電極13cの表面に付着したシリコン膜Dの成膜量の実験結果の一例を示す。
【0038】
ダミー基板DF2は、直径φが360mmであり、その厚さは中央部から周縁部に向かって徐々に薄くなる。ダミー基板DF2の表面は、凸型の曲面であり、中央の厚さは最外周の厚さに対して9mm厚い。ダミー基板DW2は、直径φが360mmであり、その厚さは中央部から周縁部に向かって徐々に厚くなるお椀型(ボール型)である。ダミー基板DW2の表面は、中央部及び周縁部において凹型の曲面であり、最外周の厚さは中央の厚さに対して9mm厚い。本実験は、ダミー基板DF2、DW2の表面にシリコンの粒子(スパッタ粒子)を均等に配置し、当該スパッタ粒子をアルゴンイオンにより飛ばしたときのシミュレーション結果である。
【0039】
図4(c)及び
図4(d)の横軸は、ダミー基板DF2、DW2の中心「0」からの径方向の位置(mm)を示し、縦軸は、横軸のダミー基板DF2、DW2に対向する上部電極13cの位置に付着する、単位面積当たりのシリコンのスパッタ粒子数(個/mm
2)を示す。以下では、ダミー基板DF2、DW2の中心「0」から径方向に直径10mmの位置をセンターとし、ダミー基板DF2、DW2の中心「0」から径方向に直径160mmの位置をエッジとする。
【0040】
参考例のダミー基板DF2を使用したとき、
図4(a)及び
図4(c)に示すように、上部電極13cの表面13eに付着したシリコン膜Dの成膜量は、中央部と比較して周縁部が少なく、センターの成膜量を1としたときのエッジの成膜量は0.69であった。つまり、表面が凸型のダミー基板DF2を使用した場合、上部電極13cのエッジでは、センターに対してシリコン膜Dが31%薄くなり、上部電極13cの中央部と周縁部とでシリコン膜Dの成膜量に差が生じる。
【0041】
一方、一実施形態に係るダミー基板DW2を使用したとき、
図4(b)及び
図4(d)に示すように、上部電極13cの表面13eに付着したシリコン膜Dの厚さが厚くなった。また、周縁部へのシリコンの付着量が改善し、周縁部と中央部におけるシリコン膜Dの成膜量の差は小さくなった。実験結果では、センターの成膜量を1としたときのエッジの成膜量は0.73であった。つまり、表面が凹型のダミー基板DW2を使用した場合、上部電極13cのエッジでは、センターに対してシリコン膜Dが27%薄くなるものの、ダミー基板DW2を使用したときと比較してシリコン膜Dの均一性が高まる。
【0042】
図5(c)は、
図5(a)に示すように周縁部の厚さが中央部よりも厚い凹型のダミー基板DWを使用した場合の上部電極13cの表面に付着したシリコン膜Dの成膜量の実験結果の一例を示す。
図5(a)のダミー基板DWは、直径φが360mmであり、直径φ340までの中央部の表面は平坦であり、その外周の直径φ360までの周縁部の表面は最外周に向かって反り上がる曲面であり、最外周にて最も厚い円形のトレイ型(おぼん型)である。
図5(a)及び(c)では、最外周の厚さが中央部よりも9mm厚いダミー基板DWを使用した。
【0043】
図5(d)も同様に、
図5(b)に示すように周縁部の厚さが中央部よりも厚い凹型のダミー基板DWを使用した場合の上部電極13cの表面に付着したシシリコン膜Dの成膜量の実験結果の一例を示す。
図5(b)のダミー基板DWは、直径φが360mmであり、直径φ340までの中央部の表面は平坦であり、その外周の直径φ360までの周縁部の表面は最外周に向かって反り上がる曲面であり、最外周にて最も厚い円形のトレイ型(おぼん型)である。
図5(b)及び(d)では、最外周の厚さが中央部よりも2mm厚いダミー基板DWを使用した。本実験は、ダミー基板DWの表面にシリコンの粒子(スパッタ粒子)を均等に配置し、当該スパッタ粒子をアルゴンイオンにより飛ばしたときのシミュレーション結果である。
【0044】
図5(c)及び
図5(d)の横軸は、ダミー基板DWの中心「0」からの径方向の位置(mm)を示し、縦軸は、横軸のダミー基板DWに対向する上部電極13cの位置に付着する、単位面積当たりのシリコンのスパッタ粒子数(個/mm
2)を示す。以下では、ダミー基板DWの中心「0」から径方向に直径10mmの位置をセンターとし、ダミー基板DWの中心「0」から径方向に直径160mmの位置をエッジとする。
【0045】
図5(a)の最外周の厚さが9mmのトレイ型のダミー基板DWを使用した場合、
図5(c)に示すように、上部電極13cの表面13eへのシリコン膜Dの成膜量は、周縁部と中央部とでほぼ変わらなかった。つまり、センターの成膜量を1としたときのエッジの成膜量は1.01であり、上部電極13cのセンターからエッジまでシリコン膜Dの成膜量はほぼ均一になった。
【0046】
同様に、
図5(c)の最外周の厚さが2mmのトレイ型のダミー基板DWを使用した場合、
図5(d)に示すように、上部電極13cの表面13eへのシリコン膜Dの成膜量は、周縁部と中央部とでほぼ変わらなかった。つまり、センターの成膜量を1としたときのエッジの成膜量は0.93であり、上部電極13cのセンターからエッジまでシリコン膜Dの成膜量はほぼ均一になった。
【0047】
以上から、表面がトレイ型及びお椀型のダミー基板DW、DW2を含む、表面が凹型のダミー基板を使用した場合、表面が平坦又は凸型のダミー基板DF、DF2を使用した場合と比較して、上部電極13cにシリコン膜Dを均一に形成できることがわかる。
【0048】
特に、
図3(d)、
図5(c)及び(d)の結果から、ダミー基板は、
図3(b)、
図5(a)及び(b)に示すように中央部が平坦であり、周縁部の表面が凹型に反り上がる曲面であるトレイ型のダミー基板DWがより好ましい。トレイ型のダミー基板DWでは最外周にて最も曲面の傾斜が大きく、厚い。中央部の直径は340mm又はそれ以上であってもよい。上部電極13cの直径は約340mmであり、上部電極13cとダミー基板DWの中央部が対向する。ダミー基板DWの周縁部は、その内径が上部電極13cの直径以上であり、上部電極13cよりも外側に配置される。
【0049】
これにより、トレイ型のダミー基板DWでは、中央部は平坦であるため、スパッタ粒子を垂直に上部電極13cに飛来させることができる。また、上部電極13cの端部には、この端部に向かって内側に傾く周縁部の曲面が対応するため、周縁部の傾斜面から上部電極13cの端部により多くのスパッタ粒子を付着させることができる。これにより、周縁部のシリコン膜Dの成膜量を増やし、上部電極13cの表面13eに均一なシリコン膜Dを成膜することができる。
【0050】
図3(d)、
図5(c)及び(d)の結果から、ダミー基板DWは、周縁部の最外周の厚さは、中央部よりも2mm~10mm厚くてよい。同様に、ダミー基板DW2は、周縁部の厚さと中央部の厚さの差分の最大値が2mm~10mmであってよい。周縁部の最外周の厚さと中央部の厚さの差分が2mmより小さいと上部電極13cの端部に付着するスパッタ粒子が少なすぎ、差分が10mmより大きいと上部電極13cの端部に付着するスパッタ粒子が多すぎてシリコン膜Dが不均一になるためである。また、周縁部の最外周の厚さと中央部の厚さの差分が10mmより大きいと、ダミー基板DW、DW2を図示しない搬送装置により自動搬送することが困難になるためである。
【0051】
ダミー基板DW、DW2の直径は、360mmに限らず、300mm~400mmであってよい。例えば、ダミー基板DW、DW2の直径は、320mm~380mmであってよいし、340mm~360mmであってよい。
【0052】
なお、ダミー基板DW2の中央部は平坦ではなく、中央部の直径は340mm程度であってもよいし、例えばダミー基板DW2の直径の1/2等に定めてもよい。
【0053】
図6を参照しながら、一実施形態に係るダミー基板DWの周縁部の形状について説明する。ダミー基板DWの周縁部A2は、中央部A1の周囲を囲む。上部電極13cは中央部A1に対向し、周縁部A2は上部電極13cよりも径方向に外側に位置してもよい。
【0054】
周縁部A2の表面は、当該表面のスパッタ粒子Tが上部電極13cの複数のガス導入口13c1のうちの最外周のガス導入口13c1又はそれよりも内側の上部電極13cの表面13eに付着するように傾斜している。なお、
図6では、左側の周縁部A2の表面のみスパッタ粒子を図示し、中央部A1の表面及び右側の周縁部A2の表面のスパッタ粒子の図示を省略している。
【0055】
静電チャック1111と上部電極13cとの間のギャップをGとし、周縁部A2の最外周の高さ(厚さ)をHとし、その差分をIとする。周縁部A2の最外周の頂点から上部電極13cの最外周のガス導入口13c1までの距離をJとしたとき、基板支持面に提供されたダミー基板DWは、次の式(1)で示される角度θが12°以上となるように配置される。
cosθ=J/I
cosθ=J/(G-H)・・・(1)
【0056】
平坦なダミー基板と比較して、周縁部A2の表面の反り(凹部)により、周縁部A2の表面でスパッタされたスパッタ粒子Tの飛散方向が上部電極13cの端部に位置する最外周のガス導入口13c1及びその内側になる。このため、上部電極13cの端部に付着するスパッタ粒子の量が多くなる。このため、上部電極13cの表面13eに均一なシリコン膜Dを成膜することができる。
【0057】
[ダミー基板の素材]
以上に説明した凹型のダミー基板DW、DW2は、シリコンにより形成され、シリコン膜Dにより上部電極13cを再生した。しかし、これに限らず、凹型のダミー基板DW、DW2は、表面にシリコンまたは金属を含んでよい。表面の金属は、タングステン、モリブデン、ルテニウム及びチタンからなる群より選ばれる少なくとも1つであってよい。ダミー基板DW、DW2の表面に金属が含まれる場合、上部電極13cに金属をスパッタすることができる。これにより、上部電極13cを金属でコーティングし、その後に上部電極13cに負の直流電圧を印加して、コーティングした金属をアルゴンイオン等で叩いて基板Wに堆積させることにより基板Wに金属膜を成膜することができる。
【0058】
[プラズマ処理方法]
以上に説明した凹型のダミー基板DW,DW2を使用した一実施形態に係るプラズマ処理方法について、
図7を参照しながら説明する。
図7は、一実施形態に係るプラズマ処理方法ST1の一例を示すフローチャートである。プラズマ処理方法ST1は、上部電極の再生工程及び基板処理工程を含む。プラズマ処理方法ST1は、制御部2により制御され、プラズマ処理装置1において実行される。以下では、凹型のダミー基板DWを例に挙げて説明するが、凹型のダミー基板DW2を使用してもよい。
【0059】
プラズマ処理方法ST1が開始されると、ステップS1において、図示しない搬送アームによって凹型のダミー基板DWをプラズマ処理チャンバ10内に搬入し、基板支持部11の基板支持面に提供する。
【0060】
次に、ステップS2において、プラズマ源により第1の処理ガスから第1のプラズマを生成する。第1の処理ガスの一例としては、アルゴンガスが挙げられるが、これに限らない。以下では、第1の処理ガスとしてアルゴンガスを例に挙げて説明する。アルゴンガスは、ガス供給部20から供給され、ガス供給口13a及びガス拡散室13bを通り、複数のガス導入口13c1からプラズマ処理空間10sに導入される。
【0061】
また、RF電源31から少なくともRF電力を下部電極及び/又は上部電極13cに供給する。これにより、アルゴンガスから第1のプラズマが形成される。その際、第2のRF生成部31bが、下部電極にバイアスRF電力を供給してもよい。第1のDC生成部32aが、下部電極に負の直流電圧を印加してもよい。
【0062】
次に、ステップS3において、第1のプラズマに含まれるアルゴンイオンにより、凹型のダミー基板DWをスパッタし、ダミー基板DWの表面のシリコンのスパッタ粒子を飛散させて上部電極13cに付着させ、上部電極13cにシリコン膜を形成する。次に、ステップS4において、第1の処理ガスの供給を停止し、RF電力の供給を停止し、搬送アームによって凹型のダミー基板DWをプラズマ処理チャンバ10の外部へ搬出する。
【0063】
次に、ステップS5において、搬送アームによってダミー基板DWとは異なる基板Wをプラズマ処理チャンバ10内に搬入し、基板支持面に提供する。基板Wは製品基板である。
【0064】
次に、ステップS6において、プラズマ源により第2の処理ガスから第2のプラズマを生成する。第2の処理ガスの一例としては、フッ素を含むエッチングガスが挙げられる。エッチングガスは、ガス供給部20から供給され、ガス供給口13a及びガス拡散室13bを通り、複数のガス導入口13c1からプラズマ処理空間10sに導入される。ただし、第2の処理ガスはエッチングガスに限らず、成膜ガス等の基板をプラズマ処理するための処理ガスであればよい。
【0065】
次に、ステップS7において、第2のプラズマにより基板Wをプラズマ処理する。基板処理後、第2の処理ガスの供給を停止し、RF電力の供給を停止し、搬送アームによって基板Wを搬出して、本処理を終了する。
【0066】
以上に説明したように、プラズマ処理方法ST1によれば、基板処理毎に、シリコンのスパッタ粒子の付着による上部電極13cの保護及び再生が実行される。このとき凹型のダミー基板DWを使用することにより、上部電極13cの表面13eに均一なシリコン膜を形成することができる。この結果、表面が平坦なダミー基板を使用した場合と比較して、上部電極13cの寿命を約1.5倍延ばすことができる。
【0067】
なお、プラズマ処理方法ST1では、上部電極13cを保護及び再生したが、これに限らず、上部電極13cに加えて上部電極13cの外側の電極13dを保護及び再生してもよい。
【0068】
[変形例1に係るプラズマ処理方法]
次に、変形例1に係るプラズマ処理方法について、
図8及び
図9を参照しながら説明する。
図8は、変形例1に係るプラズマ処理方法ST2の一例を示すフローチャートである。
図9は、変形例1に係るプラズマ処理方法ST2を説明するための図である。
【0069】
プラズマ処理方法ST2は、クリーニング工程、ピンアップクリーニング工程、上部電極の保護及び再生工程及び基板処理工程を含む。プラズマ処理方法ST2は、制御部2により制御され、プラズマ処理装置1において実行される。以下では、凹型のダミー基板DWを例に挙げて説明するが、凹型のダミー基板DW2を使用してもよい。
【0070】
プラズマ処理方法ST2が開始されると、ステップS11において、図示しない搬送アームによって凹型のダミー基板DWをプラズマ処理チャンバ10内に搬入し、基板支持部11の基板支持面に提供する。具体的には、ステップS11では、リフターピン113(
図9(b)参照)が上昇した状態となっており、ダミー基板DWは、搬送アームからリフターピン113に渡される。その後、リフターピン113が下降することにより、
図9(a)に示すように、ダミー基板DWはリフターピン113から基板支持面へ渡される。
【0071】
次に、ステップS12において、プラズマ源により第3の処理ガスから第3のプラズマを生成する。第3の処理ガスは、酸素を含んでよい。例えば、第3の処理ガスは、O2ガスである。基板Wのエッチング処理に使用するCxFyガスにより生じるCF系ポリマーの堆積物は、O2ガス等の酸素含有ガスのプラズマによって除去することができる。また、第3の処理ガスは、酸素含有ガスと、CF4ガス、NF3ガス、Cl2ガス、HBrガス等のハロゲン含有ガスの混合ガスであってよい。Si系、もしくは金属系の堆積物は、CF4ガス、NF3ガス、Cl2ガス、HBrガス等のハロゲン含有ガスのプラズマによって除去することができる。CF系ポリマーと、Si系、金属系の少なくとも一方の混合堆積物は、酸素含有ガスとハロゲン含有ガスの混合ガスのプラズマによって除去することができる。更に、第3の処理ガスは、水素含有ガスや窒素含有ガスを含んでよい。CF系ポリマーの堆積物は、H2ガスなど水素含有ガスやN2などの窒素含有ガスでも除去することができる。更に、第3の処理ガスには、アルゴンガスやヘリウムガス等の希ガスが添加されてもよい。
【0072】
また、RF電源31から少なくともRF電力を下部電極及び/又は上部電極13cに供給する。その際、第2のRF生成部31bが、下部電極にバイアスRF電力を供給してもよい。第1のDC生成部32aが、下部電極に負の直流電圧を印加してもよい。
【0073】
これにより、プラズマ処理空間10sに供給された第3の処理ガスから第3のプラズマが形成され、
図9(a)に示すように、第3のプラズマP3によりプラズマ処理チャンバ10の全体がクリーニングされる。
【0074】
ダミー基板DWの表面をスパッタして上部電極13cにシリコン膜Dを付着させて上部電極13cを保護及び再生するとき、同様にダミー基板DWのエッジもスパッタされ、静電チャック1111(基板支持部11)の外周部周辺にもシリコンが付着する。
図9(a)では、付着したシリコンを堆積物Rで示す。
【0075】
静電チャック1111の外周部周辺の堆積物Rを除去するためにピンアップクリーニングを行う(
図9(b)参照)。ピンアップクリーニングでは、ステップS13において、リフターピン113によりダミー基板DWを持ち上げ、基板支持面から離隔した第1の位置において、基板支持面に対向するようにダミー基板DWを保持する。なお、第1の位置は、予め設定された高さとなる位置であってもよい。この離隔距離(第1の位置)を適切に設定することで、
図9(b)に示すプラズマP4を静電チャック1111の外周部周辺に偏在化させることができる。
【0076】
次に、ステップS14において、プラズマ源により第4の処理ガスから第4のプラズマを生成し、静電チャック1111の外周部周辺をクリーニングする(ピンアップクリーニング)。第4の処理ガスは、酸素及びフッ素を含んでよい。第4の処理ガスは、酸素含有ガスとCF4ガス、NF3ガス、Cl2ガス、HBrガス等のハロゲン含有ガスの混合ガスであってよい。例えば、第4の処理ガスは、O2ガスとCF4ガスの混合ガスである。更に、第4の処理ガスは、水素含有ガスや窒素含有ガスを含んでよい。更に、第4の処理ガスには、アルゴンガスやヘリウムガス等の希ガスが添加されてもよい。
【0077】
また、RF電源31から少なくともRF電力を下部電極及び/又は上部電極13cに供給する。その際、第2のRF生成部31bが、下部電極にバイアスRF電力を供給してもよい。第1のDC生成部32aが、下部電極に負の直流電圧を印加してもよい。
【0078】
ピンアップクリーニングでは、基板支持部11の外周部周辺、例えば、静電チャック1111の外周部(段差部)及びエッジリング112aの内周部を含み、かつエッジリング112aの外周部を含まない局所的な領域にリング状の第4のプラズマP4を形成する。第4の処理ガスにO
2ガス及びCF
4ガスを用いた場合、
図9(b)に示すようにダミー基板DWを持ち上げた状態で、第4のプラズマP4に含まれる酸素ラジカル(O
*)やフッ素ラジカル(F
*)やイオンが静電チャック1111の外周部周辺に作用する。これにより、静電チャック1111の外周部(段差部)の側壁及びエッジリング112aの内周部の堆積物Rを除去することができる。
【0079】
次に、ステップS15~S17において、上部電極13cの表面13eにスパッタ粒子を付着させる工程を実施する。ステップS15では、リフターピン113によりダミー基板DWを下降させ、再び基板支持面にダミー基板DWを配置する。ステップS16では、
図7のステップS2と同様にプラズマ源により第1の処理ガスから第1のプラズマを生成する。第1の処理ガスの一例としては、アルゴンガスが挙げられるが、これに限らない。また、RF電源31から少なくともRF電力を下部電極及び/又は上部電極13cに供給する。これにより、アルゴンガスから第1のプラズマが形成される。
【0080】
ステップS17では、
図7のステップS3と同様に第1のプラズマPに含まれる例えばアルゴンイオン(
図9(c)参照)により、ダミー基板DWをスパッタし、ダミー基板DWの表面のシリコンのスパッタ粒子を飛散させて上部電極13cに付着させる。これにより、
図9(c)に示すように、ダミー基板DWのシリコンのスパッタ粒子Tを上部電極13cの表面13eに付着させたシリコン膜Dにより上部電極13cを保護及び再生することができる。
【0081】
次に、ステップS18において、第1の処理ガスの供給を停止し、RF電力の供給を停止し、搬送アームによって凹型のダミー基板DWをプラズマ処理チャンバ10の外部へ搬出する。
【0082】
次に、ステップS19において、ウェハレスドライクリーニングを実行する。ウェハレスドライクリーニングでは、プラズマ源により第5の処理ガスから第5のプラズマを生成する。第5の処理ガスは、フロロカーボンガス(CxFy)を含んでよい。例えば、第5の処理ガスは、O2ガスとCF4ガスである。第5の処理ガスから生成した第5のプラズマにより、プラズマ処理チャンバ10内をクリーニングし、静電チャック1111の表面を改質する。これにより、静電チャック1111上に載置する基板Wの割れやズレを抑制することができる。
【0083】
次に、ステップS20において、基板Wを搬入し、基板Wのプラズマ処理を実行する。ステップS20では、搬送アームによってダミー基板DWとは異なる基板Wをプラズマ処理チャンバ10内に搬入し、基板支持面に提供する。基板Wは製品基板である。プラズマ源により第2の処理ガスから第2のプラズマを生成する。第2の処理ガスの一例としては、フッ素を含むエッチングガスが挙げられる。第2のプラズマにより基板Wをプラズマ処理する。
【0084】
基板処理後、第2の処理ガスの供給を停止し、RF電力の供給を停止し、搬送アームによって基板Wを搬出して、本処理を終了する。なお、ステップS19の処理の後であって、ステップS20の処理の前の基板Wを搬入する前にステップS20で使用するプロセス条件下でプラズマを生成し、プラズマ処理チャンバ10内を基板処理環境に整えるシーズニングを行ってもよい。
【0085】
プラズマ処理方法ST2によれば、基板処理毎にプラズマ処理チャンバ10内の全体のクリーニング、静電チャック1111の外周部およびエッジリング112aの内周部の堆積物Rの除去、シリコンのスパッタ粒子による上部電極13cの再生が実行される。このとき凹型のダミー基板DWを使用することにより、上部電極13cの表面13eに均一なシリコン膜を形成することができる。また、全体クリーニング、ピンアップクリーニング、ウェハレスドライクリーニングによりプラズマ処理チャンバ10内の不要な堆積物を除去した後、上部電極13cを再生しつつ基板のプラズマ処理を行うことができる。これにより、上部電極13cの寿命を延ばしつつ、基板Wに精度よくプラズマ処理を実施することができる。
【0086】
[変形例2に係るプラズマ処理方法]
次に、変形例2に係るプラズマ処理方法について、
図10及び
図11を参照しながら説明する。
図10は、変形例2に係るプラズマ処理方法ST3の一例を示すフローチャートである。
図11は、変形例2に係るプラズマ処理方法ST3を説明するための図である。
【0087】
プラズマ処理方法ST3は、クリーニング工程、ピンアップクリーニング工程、上部電極の保護及び再生工程及び基板処理工程を含む。プラズマ処理方法ST3は、制御部2により制御され、プラズマ処理装置1において実行される。以下では、平坦なダミー基板DFを例に挙げて説明する。なお、すべてのガス導入口13c1を含む上部電極13cの再生が可能なように、平坦なダミー基板DFの直径は、上部電極13cの直径に対して1.1倍以上とする。
【0088】
プラズマ処理方法ST3が開始されると、ステップS21において、図示しない搬送アームによって平坦なダミー基板DFをプラズマ処理チャンバ10内に搬入し、基板支持部11の基板支持面に提供する。具体的には、ステップS21では、リフターピン113(
図11(b)参照)が上昇した状態となっており、ダミー基板DFは、搬送アームからリフターピン113に渡される。その後、リフターピン113が下降することにより、
図11(a)に示すように、ダミー基板DFはリフターピン113から基板支持面へ渡される。
【0089】
次に、ステップS22において、プラズマ源により第3の処理ガスから第3のプラズマを生成する。第3の処理ガスは、酸素を含んでよい。例えば、第3の処理ガスは、O2ガスである。基板Wのエッチング処理に使用するCxFyガスにより生じるCF系ポリマーの堆積物は、O2ガス等の酸素含有ガスのプラズマによって除去することができる。また、第3の処理ガスは、酸素含有ガスと、CF4ガス、NF3ガス、Cl2ガス、HBrガス等のハロゲン含有ガスの混合ガスであってよい。Si系、もしくは金属系の堆積物は、CF4ガス、NF3ガス、Cl2ガス、HBrガス等のハロゲン含有ガスのプラズマによって除去することができる。CF系ポリマーと、Si系、金属系の少なくとも一方の混合堆積物は、酸素含有ガスとハロゲン含有ガスの混合ガスのプラズマによって除去することができる。更に、第3の処理ガスは、水素含有ガスや窒素含有ガスを含んでよい。CF系ポリマーの堆積物は、H2ガスなど水素含有ガスやN2などの窒素含有ガスでも除去することができる。更に、第3の処理ガスには、アルゴンガスやヘリウムガス等の希ガスが添加されてもよい。
【0090】
また、RF電源31から少なくともRF電力を下部電極及び/又は上部電極13cに供給する。その際、第2のRF生成部31bが、下部電極にバイアスRF電力を供給してもよい。第1のDC生成部32aが、下部電極に負の直流電圧を印加してもよい。
【0091】
これにより、プラズマ処理空間10sに供給された第3の処理ガスから第3のプラズマが形成され、
図11(a)に示すように、第3のプラズマP3によりプラズマ処理チャンバ10の全体がクリーニングされる。
【0092】
ダミー基板DFの表面をスパッタして上部電極13cにシリコン膜Dを付着させて上部電極13cを保護及び再生するとき、同様にダミー基板DFのエッジもスパッタされ、静電チャック1111(基板支持部11)の外周部周辺にもシリコンが付着する。
図11(a)では、付着したシリコンを堆積物Rで示す。
【0093】
静電チャック1111の外周部周辺の堆積物Rを除去するためにピンアップクリーニングを行う(
図11(b)参照)。ピンアップクリーニングでは、ステップS23において、リフターピン113によりダミー基板DFを持ち上げ、基板支持面から離隔した第1の位置において、基板支持面に対向するようにダミー基板DFを保持する。なお、第1の位置は、予め設定された高さとなる位置であってもよい。この離隔距離(第1の位置)を適切に設定することで、
図11(b)に示すプラズマP4を静電チャック1111の外周部周辺に偏在化させることができる。
【0094】
次に、ステップS24において、プラズマ源により第4の処理ガスから第4のプラズマを生成し、静電チャック1111の外周部周辺をクリーニングする(ピンアップクリーニング)。第4の処理ガスは、酸素及びフッ素を含んでよい。第4の処理ガスは、酸素含有ガスとCF4ガス、NF3ガス、Cl2ガス、HBrガス等のハロゲン含有ガスの混合ガスであってよい。例えば、第4の処理ガスは、O2ガスとCF4ガスの混合ガスである。更に、第4の処理ガスは、水素含有ガスや窒素含有ガスを含んでよい。更に、第4の処理ガスには、アルゴンガスやヘリウムガス等の希ガスが添加されてもよい。
【0095】
また、RF電源31から少なくともRF電力を下部電極及び/又は上部電極13cに供給する。その際、第2のRF生成部31bが、下部電極にバイアスRF電力を供給してもよい。第1のDC生成部32aが、下部電極に負の直流電圧を印加してもよい。
【0096】
ピンアップクリーニングでは、基板支持部11の外周部周辺、例えば、静電チャック1111の外周部(段差部)及びエッジリング112aの内周部を含み、かつエッジリング112aの外周部を含まない局所的な領域にリング状の第4のプラズマP4を形成する。第4の処理ガスにO
2ガス及びCF
4ガスを用いた場合、
図11(b)に示すようにダミー基板DFを持ち上げた状態で、第4のプラズマP4中の酸素のラジカル(O
*)やフッ素のラジカル(F
*)やイオンが静電チャック1111の外周部周辺に作用する。これにより、静電チャック1111の外周部(段差部)の側壁及びエッジリング112aの内周部の堆積物Rを除去することができる。
【0097】
次に、ステップS25~S27において、上部電極13cの表面13eにスパッタ粒子を付着させる工程を実施する。ステップS25では、リフターピン113によりダミー基板DFを下降させ、再び基板支持面にダミー基板DFを配置する。ステップS26では、
図7のステップS2と同様にプラズマ源により第1の処理ガスから第1のプラズマを生成する。第1の処理ガスの一例としては、アルゴンガスが挙げられるが、これに限らない。また、RF電源31から少なくともRF電力を下部電極及び/又は上部電極13cに供給する。これにより、アルゴンガスから第1のプラズマが形成される。
【0098】
ステップS27では、
図7のステップS3と同様に第1のプラズマPに含まれる例えばアルゴンイオン(
図11(c)参照)により、ダミー基板DFをスパッタし、ダミー基板DFの表面のシリコンのスパッタ粒子を飛散させて上部電極13cに付着させる。これにより、
図11(c)に示すように、ダミー基板DWのシリコンのスパッタ粒子Tを上部電極13cの表面13eに付着させたシリコン膜Dにより上部電極13cを保護及び再生することができる。
【0099】
次に、ステップS28において、第1の処理ガスの供給を停止し、RF電力の供給を停止し、搬送アームによって平坦なダミー基板DFをプラズマ処理チャンバ10の外部へ搬出する。
【0100】
次に、ステップS29において、ウェハレスドライクリーニングを実行する。ウェハレスドライクリーニングでは、プラズマ源により第5の処理ガスから第5のプラズマを生成する。第5の処理ガスは、フロロカーボンガス(CxFy)を含んでよい。例えば、第5の処理ガスは、O2ガスとCF4ガスである。第5の処理ガスから生成した第5のプラズマにより、プラズマ処理チャンバ10内をクリーニングし、静電チャック1111の表面を改質する。これにより、静電チャック1111上に載置する基板Wの割れやズレを抑制することができる。
【0101】
次に、ステップS30において、基板Wを搬入し、基板Wのプラズマ処理を実行する。ステップS30では、搬送アームによってダミー基板DFとは異なる基板Wをプラズマ処理チャンバ10内に搬入し、基板支持面に提供する。基板Wは製品基板である。プラズマ源により第2の処理ガスから第2のプラズマを生成する。第2の処理ガスの一例としては、フッ素を含むエッチングガスが挙げられる。第2のプラズマにより基板Wをプラズマ処理する。
【0102】
基板処理後、第2の処理ガスの供給を停止し、RF電力の供給を停止し、搬送アームによって基板Wを搬出して、本処理を終了する。なお、ステップS29の処理の後であって、ステップS30の処理の前の基板Wを搬入する前にステップS30で使用するプロセス条件下でプラズマを生成し、プラズマ処理チャンバ10内を基板処理環境に整えるシーズニングを行ってもよい。
【0103】
プラズマ処理方法ST3によれば、基板処理毎にプラズマ処理チャンバ10内の全体のクリーニング、静電チャック1111の外周部およびエッジリング112aの内周部の堆積物Rの除去、シリコンのスパッタ粒子による上部電極13cの再生が実行される。このとき平坦なダミー基板DFを使用することにより、上部電極13cの表面13eにシリコン膜を形成することができる。また、全体クリーニング、ピンアップクリーニング、ウェハレスドライクリーニングによりプラズマ処理チャンバ10内の不要な堆積物を除去した後、上部電極13cを再生しつつ基板のプラズマ処理を行うことができる。これにより、上部電極13cの寿命を延ばしつつ、基板Wに精度よくプラズマ処理を実施することができる。
【0104】
[変形例1、2の適用例]
変形例1、2に係るプラズマ処理方法ST2、ST3は、第3のプラズマにより全体をクリーニングする工程、ピンアップクリーニング工程、上部電極13cの表面にスパッタ粒子を付着させる工程の順に実施した。しかし、これに限らず、プラズマ処理方法ST2、ST3は、第3のプラズマにより全体をクリーニングする工程、上部電極13cの表面にスパッタ粒子を付着させる工程、ピンアップクリーニング工程の順に実施してもよい。
【0105】
変形例1、2に係るプラズマ処理方法ST2、ST3では、ピンアップクリーニング工程と上部電極13cにスパッタ粒子を付着させる工程とにおいて、同一のダミー基板DW、DW2、DFを使用する。これにより、これらの各工程で別々のダミー基板DW、DW2、DFを使用する場合よりもダミー基板DW、DW2、DFの使用枚数を半分に減らすことができる。また、各工程で別々のダミー基板DW、DW2、DFを入れ替える必要がないためスループットを向上させることができる。具体的には、プラズマ処理方法ST2、ST3では、これらの各工程で別々のダミー基板DW、DFを使用する場合よりも処理時間を合計で6%短縮することができる。この結果、生産性を向上させ、製造コストを低減することができる。
【0106】
以上に開示された実施形態は、例えば、以下の態様を含む。
【0107】
(付記1)
プラズマ処理装置により実行されるプラズマ処理方法であって、
前記プラズマ処理装置は、ガス供給口及びガス排気口を有するプラズマ処理チャンバと、前記プラズマ処理チャンバの内部に配置される基板支持部と、前記基板支持部に対向する対向電極と、前記プラズマ処理チャンバの内部にプラズマを生成可能なプラズマ源と、を備え、
前記基板支持部の基板支持面にダミー基板を提供する工程であり、前記ダミー基板は、周縁部の厚さが中央部よりも厚い、工程と、
前記プラズマ源により前記プラズマ処理チャンバの内部に第1の処理ガスから第1のプラズマを生成することにより前記ダミー基板の表面をスパッタし、前記対向電極の表面にスパッタ粒子を付着させる工程と、
を含む、プラズマ処理方法。
(付記2)
前記ダミー基板は、前記中央部が平坦である、
付記1に記載のプラズマ処理方法。
(付記3)
前記ダミー基板は、表面にシリコンまたは金属を含む、
付記1又は2に記載のプラズマ処理方法。
(付記4)
前記金属は、タングステン、モリブデン、ルテニウム及びチタンからなる群より選ばれる少なくとも1つである、
付記3に記載のプラズマ処理方法。
(付記5)
前記ダミー基板の直径は、300mm~400mmである、
付記1~4のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
(付記6)
前記周縁部は、表面が凹型の曲面であり、最外周が最も厚い、
付記1~5のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
(付記7)
前記周縁部の最外周の厚さは、前記中央部よりも2mm~10mm厚い、
付記1~6のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
(付記8)
前記周縁部の内径は、前記対向電極の直径以上である、
付記1~7のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
(付記9)
前記対向電極は、前記ガス供給口に接続される複数のガス導入口を有し、
前記周縁部の表面は、前記スパッタ粒子が前記複数のガス導入口のうちの最外周のガス導入口又は前記最外周のガス導入口よりも内側の前記対向電極の表面に付着するように傾斜している、
付記1~8のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
(付記10)
前記基板支持部と前記対向電極との間のギャップをGとし、前記周縁部の最外周の厚さをHとし、前記周縁部の最外周の頂点から前記対向電極の最外周のガス導入口までの距離をJとしたとき、前記基板支持面に提供された前記ダミー基板は、次の式(1)で示される角度θが12°以上となる、
cosθ=J/(G-H)・・・(1)
付記7~9のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
(付記11)
前記ダミー基板を前記プラズマ処理チャンバの外部へ搬出する工程と、
前記基板支持部の基板支持面に前記ダミー基板とは異なる基板を提供する工程と、
前記プラズマ源により前記プラズマ処理チャンバの内部に第2の処理ガスから第2のプラズマを生成することにより前記基板をプラズマ処理する工程と、をさらに含む、
付記1~10のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
(付記12)
前記基板支持面に前記ダミー基板を提供する工程の後、前記プラズマ源により前記プラズマ処理チャンバの内部に第3の処理ガスから第3のプラズマを生成し、前記第3のプラズマによりクリーニングする工程と、
前記基板支持面から離隔した第1の位置において、前記基板支持面に対向するように前記ダミー基板を保持した後、前記プラズマ源により前記プラズマ処理チャンバの内部に第4の処理ガスから第4のプラズマを生成し、前記第4のプラズマによりクリーニングする工程と、を含む、
付記1~11のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
(付記13)
前記第3のプラズマによりクリーニングする工程、前記第4のプラズマによりクリーニングする工程、前記対向電極の表面にスパッタ粒子を付着させる工程の3工程を、この順で実行する、
付記12に記載のプラズマ処理方法。
(付記14)
前記第3のプラズマによりクリーニングする工程、前記対向電極の表面にスパッタ粒子を付着させる工程、前記第4のプラズマによりクリーニングする工程の3工程を、この順で実行する、
付記12に記載のプラズマ処理方法。
(付記15)
前記第3の処理ガスは、酸素を含む、
付記12~14のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
(付記16)
前記第4の処理ガスは、酸素及びフッ素を含む、
付記12~15のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
(付記17)
前記3工程を実行した後、前記プラズマ処理チャンバの外部へ前記ダミー基板を搬出する工程と、
前記ダミー基板を搬出した後、前記プラズマ源により前記プラズマ処理チャンバの内部に第5の処理ガスから第5のプラズマを生成し、前記第5のプラズマによりクリーニングする工程と、を有する、
付記13又は14に記載のプラズマ処理方法。
(付記18)
ガス供給口及びガス排気口を有するプラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバの内部に配置される基板支持部と、
前記基板支持部に対向する対向電極と、
前記プラズマ処理チャンバの内部にプラズマを生成可能なプラズマ源と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記基板支持部の基板支持面にダミー基板を提供する工程であり、前記ダミー基板は、周縁部の厚さが中央部よりも厚い、工程と、
前記プラズマ源により前記プラズマ処理チャンバの内部に第1の処理ガスから第1のプラズマを生成することにより前記ダミー基板の表面をスパッタし、前記対向電極の表面にスパッタ粒子を付着させる工程と、
を含む工程を制御する、プラズマ処理装置。
【0108】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせ等、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。また、複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0109】
1 プラズマ処理装置
2 制御部
2a コンピュータ
2a1 処理部
2a2 記憶部
2a3 通信インターフェース
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持部
13 シャワーヘッド
21 ガスソース
20 ガス供給部
30 電源
31 RF電源
31a 第1のRF生成部
31b 第2のRF生成部
32a 第1のDC生成部
32b 第2のDC生成部
40 排気システム
111 本体部
112 リングアセンブリ
W 基板
DW、DW2 ダミー基板(凹型)
DF ダミー基板(平坦)