(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016552
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
B23K 37/053 20060101AFI20240131BHJP
F16B 2/12 20060101ALI20240131BHJP
F16B 7/04 20060101ALI20240131BHJP
B25B 5/02 20060101ALI20240131BHJP
B25B 5/04 20060101ALI20240131BHJP
F16L 23/04 20060101ALI20240131BHJP
F16L 3/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
B23K37/053 H
F16B2/12 B
F16B7/04 301F
F16B7/04 301B
B25B5/02
B25B5/04
F16L23/04
F16L3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118768
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小島 浩史
(72)【発明者】
【氏名】東條 翔
(72)【発明者】
【氏名】松尾 朋輝
(72)【発明者】
【氏名】八方 武史
(72)【発明者】
【氏名】那珂 通之
【テーマコード(参考)】
3C020
3H016
3H023
3J022
3J039
【Fターム(参考)】
3C020CC06
3C020EE08
3C020FF01
3H016CA04
3H023AD34
3H023AD55
3J022DA12
3J022DA18
3J022EA34
3J022EB12
3J022EC17
3J022EC22
3J022ED22
3J022FB07
3J022FB12
3J022GA04
3J022GA12
3J022GB32
3J039AA01
3J039BB01
3J039CA02
(57)【要約】
【課題】挟持する一対のパイプ材の端面の間の隙間を容易に一定に保つことができるクランプ装置を提供する。
【解決手段】クランプ装置は、溶接する端面同士を対向させた一対のパイプ材2の外周面を挟持する。クランプ装置は、複数の挟持部と、突片24と、を備えている。挟持部は、一対のパイプ材2の外周面を挟持する。突片24は、少なくても一つの挟持部に設けられる。突片24は、一対のパイプ材2の端面の間に挿入される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接する端面を対向させた一対のパイプ材の外周面を挟持するクランプ装置であって、
一対の前記パイプ材の外周面を挟持する複数の挟持部と、
少なくとも一つの前記挟持部に設けられ、一対の前記パイプ材の前記端面の間に挿入される突片と、を備えていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
前記挟持部は、一対の前記パイプ材の外周面に当接する平坦面を有し、
前記突片は、前記平坦面に突設されていることを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記挟持部は、
支持部材と、
前記支持部材に揺動可能に支持され、夫々が前記平坦面を有する一対のパッド部材と、を備え、
一対の前記パッド部材は、押圧荷重を受けて各前記平坦面が一対の前記パイプ材の外周面に当接することを特徴とする請求項2に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記挟持部は、
固定側の挟持部と、
前記固定側の挟持部に対して近接離間する可動側の挟持部と、から成り、
前記突片は、前記固定側の挟持部の前記パッド部材にのみ設けられていることを特徴とする請求項3に記載のクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ材を挟持するクランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製のパイプ材の端面同士を溶接するに際し、端面同士を相互に対向させ、その状態で両端面の複数個所を仮溶接することがある。この場合、パイプ材の端面同士を仮溶接した後に両端面の周域を本溶接する。
【0003】
このような溶接作業においては、パイプ材を仮溶接する際に、パイプ材の端面同士を対向させた状態で両パイプの外周面がクランプ装置によって挟持される。このとき、一対のパイプ材は、外周面をクランプ装置によって挟持されることにより、端面同士を対向させた状態で姿勢が安定する。一対のパイプ材は、この姿勢のまま端面の周域の複数個所が作業者によって仮溶接される。
【0004】
このような用途で用いられるクランプ装置が従来より各種案出されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
特許文献1に記載のクランプ装置は、正面視が略J字状の主アーム部と、主アーム部の直線部に位置調整可能に保持された補助アーム部と、を備え、補助アーム部に、操作ロッドが貫通状態で螺合されている。操作ロッドの先端部は、主アーム部の湾曲した先端部に対向している。主アーム部と操作ロッドの各先端部にはパッド部材が取り付けられている。各パッド部材には、パイプ材の外周面に当接する平坦面が形成されている。また、操作ロッドの基端側には、操作ロッドを回転操作するための把持部が設けられている。
【0006】
このクランプ装置によってパイプ材を挟持する場合には、主アーム部に対する補助アーム部の係止位置を適宜位置調整し、主アーム部側のパッド部材と操作ロッド側のパッド部材の間に一対のパイプ材を配置する。この状態において作業者が把持部を把持し、操作ロッドを所定方向に回転させることによって操作ロッドを主アーム部の先端部方向に変位させる。これにより、主アーム部側のパッド部材と操作ロッド側のパッド部材が各平坦面において、一対のパイプ材の外周面に押し当てられる。この結果、一対のパイプ材が互いの端面を対向させた状態で、一対のパッド部材によって挟持されることになる。
【0007】
特許文献2に記載のクランプ装置は、固定側の挟持部と、固定側の挟持部に対して近接離反する可動側の挟持部と、を備え、固定側と可動側の各挟持部に、揺動可能に一対のパッド部材が取り付けられている。各パッド部材には、パイプ材の外周面に当接する平坦面が形成されている。各挟持部に取り付けられた一対のパッド部材は、パイプ材の外周面に押し付けられたとき、各平坦面の傾斜角度がパイプ材の外周面に沿うように自動的に調整される。この結果、一対のパイプ材は、各挟持部のV字状に傾斜した一対の平坦面によって安定的に挟持されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5311093号公報
【特許文献2】欧州特許第0300473号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1,2に記載のクランプ装置は、いずれも一対のパイプ材の外周面に対してパッド部材の平坦面で当接する構造とされている。このため、一対のパイプ材の端面間の隙間(ルートギャップ)を適切に調整するためには、作業現場での煩雑な調整作業が必要となり、一対のパイプ材の端面間の隙間を短時間で適切に調整するためには作業者の熟練が必要となる。
そして、一対のパイプ材の端面間の隙間(ルートギャップ)は、広すぎても狭すぎても本溶接時において溶接不良の原因となり易い。
【0010】
そこで本発明は、挟持する一対のパイプ材の端面の間の隙間を容易に一定に保つことができるクランプ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一形態に係るクランプ装置は、溶接する端面を対向させた一対のパイプ材の外周面を挟持するクランプ装置であって、一対の前記パイプ材の外周面を挟持する複数の挟持部と、少なくとも一つの前記挟持部に設けられ、一対の前記パイプ材の前記端面の間に挿入される突片と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
上記の構成において、一対のパイプ材の外周面を挟持する場合には、挟持部の突片を一対のパイプ材の端面の間に挿入し、突片を各パイプ材の端面に当接させる。この状態において、複数の挟持部によって一対のパイプ材の外周面を挟持すると、両パイプ材の端面間の隙間が突片によって一定間隔に保たれる。こうして一対のパイプ材がクランプ装置によって挟持されると、パイプ材の端面間に仮溶接を適切に行うことが可能になる。
【0013】
前記挟持部は、一対の前記パイプ材の外周面に当接する平坦面を有し、前記突片は、前記平坦面に突設されるようにしても良い。
【0014】
この場合、挟持部の平坦面を一対のパイプ材の外周面に当接させることにより、パイプ材を安定して挟持することが可能になる。また、突片は、パイプ材の外周面に当接する平坦面に突設されているため、平坦面と突片によって各パイプ材の端部を安定して位置決めすることが可能になる。
【0015】
前記挟持部は、支持部材と、前記支持部材に揺動可能に支持され、夫々が前記平坦面を有する一対のパッド部材と、を備え、一対の前記パッド部材は、押圧荷重を受けて各前記平坦面が一対の前記パイプ材の外周面に当接するようにしても良い。
【0016】
この場合、支持部材に押圧荷重が作用すると、各パッド部材の平坦面が一対のパイプ材の外周面に当接する。このとき、各パッド部材は、パイプ材からの反力を受けて適正姿勢に揺動する。この結果、支持部材に支持された一対のパッド部材は、両パッド部材の平坦面がV字状に傾斜し、その姿勢で一対パイプ材の外周面を安定して挟持することになる。
【0017】
前記挟持部は、固定側の挟持部と、前記固定側の挟持部に対して近接離間する可動側の挟持部と、から成り、前記突片は、前記固定側の挟持部の前記パッド部材にのみ設けられるようにしても良い。
【0018】
この場合、一対のパイプ材を挟持するときには、最初に、固定側の挟持部のパッド部材の平坦面に両パイプ材の外周面を当接させる。このとき、両パイプ材の姿勢と間隔を調整することにより、各パイプ材の端面が平坦面上の突片に当接するようになる。この後、可動側の挟持部を固定側の挟持部の方向に近接させ、可動側の挟持部のパッド部材の平坦面を両パイプ材の外周面に当接させる。これにより、一対のパイプ材は、端面間の隙間が突片によって一定に調整され、その状態でクランプ装置によって挟持されることになる。本構成では、可動側の挟持片のパッド部材に突片が設けられていないため、両挟持部のパッド部材の間に一対のパイプ材を配置する際に、可動側の挟持部を固定側の挟持部から過剰に離間させる必要がなくなる。したがって、本構成を採用した場合には、一対のパイプ材に対する挟持操作をより容易に行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様に係るクランプ装置は、一対のパイプ材の端面の間に挿入される突片が挟持部に設けられているため、突片を一対のパイプ材の端面に当接させてパイプ材を挟持することにより、挟持する一対のパイプ材の端面の間の隙間を容易に一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態のクランプ装置の正面図である。
【
図2】
図2は、一対のパイプ材を挟持した実施形態のクランプ装置の側面図である。
【
図3】
図3は、一対のパイプ材を挟持した実施形態のクランプ装置の正面図である。
【
図5】
図5は、一対のパイプ材を本溶接する様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態のクランプ装置1の正面図である。
図2,
図3は、一対のパイプ材2を挟持したクランプ装置1の側面図と正面図である。なお、
図3は、端面2e同士を対向させた一対のパイプ材2の一方のパイプ材2を端面2e側から見た正面図である。
クランプ装置1は、溶接する端面2e同士を対向させた一対のパイプ材2の外周面2pを挟持する装置である。クランプ装置1は、一対のパイプ材2の端面2e同士を溶接する際に、一対のパイプ材2の対向姿勢を一定に維持することにより、作業者によるパイプ材2の端面2eの仮溶接作業を容易にすることができる。
なお、本明細書において、「パイプ材」とは、直線状の配管に限らず、略L状のエルボ継手や、略T字状のチーズ継手等も含むものとする。
【0022】
クランプ装置1は、固定側挟持部10A(固定側の挟持部)と、固定側挟持部10Aに対し近接離間する可動側挟持部10B(可動側の挟持部)と、を備えている。
【0023】
固定側挟持部10Aは、正面視が略L状のL字ブロック11と、L字ブロック11に位置調整可能に保持された係止ブロック12と、を備えている。L字ブロック11は、一方向に直線状に延びる基部アーム11aと、基部アーム11aの長手方向の一端部から略直角に屈曲して延びる支持アーム11bと、を備えている。
【0024】
L字ブロック11の基部アーム11aには、係止ブロック12の一端部側が保持されている。係止ブロック12は、基部アーム11aの延出方向に沿って位置調整可能とされている。支持アーム11bのうちの、係止ブロック12に対向する側の面には、パッド支持ブロック13(支持部材)が固定されている。パッド支持ブロック13には、支持アーム11bの延出方向に離間して一対のパッド部材14が揺動可能に支持されている。各パッド部材14は、基部アーム11aと支持アーム11bの各延出方向と直交する方向(把持するパイプ材2の軸方向に沿う方向)に延びる枢軸15に揺動可能に支持されている。パッド部材14については、後に詳述する。
【0025】
係止ブロック12は、一方向に直線状に延びるブロックであり、その一端部側がL字ブロック11の基部アーム11aに位置調整可能に保持されている。係止ブロック12の一端側には、基部アーム11aが貫通する係合孔16が形成されている。基部アーム11aの外面には図示しない凹凸部が形成されている。係止ブロック12の他端側に、当該係止ブロック12の延出方向と直交する方向の荷重が入力されると、係合孔16が基部アーム11aの外面の凹凸部と係合し、それによって係止ブロック12が基部アーム11aに位置固定される。
【0026】
係止ブロック12の他端側には、雌ねじが切られた螺合孔17が形成されている。螺合孔17は、L字ブロックの基部アーム11aと略平行に形成され、係止ブロック12を貫通している。螺合孔17には、外周面に雄ねじが切られた操作ロッド18が螺合されている。操作ロッド18は、可動側挟持部10Bの主要部を構成している。
【0027】
操作ロッド18は、軸方向の一端側(L字ブロック11側のパッド部材14と対向する側)にパッド支持ブロック19(支持部材)が固定されている。パッド支持ブロック19には、係止ブロック12の延出方向に離間して一対のパッド部材20が揺動可能に支持されている。各パッド部材20は、L字ブロック11の基部アーム11aと支持アーム11bの各延出方向と直交する方向(把持するパイプ材2の軸方向に沿う方向)に延びる枢軸21に揺動可能に支持されている。
【0028】
パッド支持ブロック19と一対のパッド部材20は、操作ロッド18が回転操作されることにより、対向するL字ブロック11側のパッド支持ブロック13と一対のパッド部材14に対して近接離間する。操作ロッド18が一方向に回転操作されると、操作ロッド18側のパッド支持ブロック19がL字ブロック11側のパッド支持ブロック13に近接する方向に移動する。また、操作ロッド18が他方向に回転操作されると、操作ロッド18側のパッド支持ブロック19がL字ブロック11側のパッド支持ブロック13から離間する方向に移動する。
【0029】
操作ロッド18の軸方向の他端側には、当該操作ロッド18の軸方向と交差する方向に延びる貫通孔22が形成されている。貫通孔22には、把持ロッド23が摺動可能に挿通されている。把持ロッド23は、クランプ装置1によってパイプ材2を挟持する際等に、操作ロッド18を回転操作するために作業者が把持する部分である。
なお、本実施形態では、固定側挟持部10A(固定側の挟持部)は、L字ブロック11、係止ブロック12、パッド支持ブロック13、パッド部材14等によって構成されている。また、可動側挟持部10B(可動側の挟持部)は、操作ロッド18、把持ロッド23、パッド支持ブロック19、パッド部材20等によって構成されている。
【0030】
図3に示すように、L字ブロック11(固定側挟持部10A)側の各パッド部材14は、側面視が三角形状の一対の側壁14sと、一対の側壁14sに連設された略矩形状の挟持壁14cと、を備えている。挟持壁14cは、一対の側壁14sの一辺に連設されている。一対の側壁14sは、挟持壁14cの連接する辺の対角部分において、枢軸15によってパッド支持ブロック13に揺動可能に支持されている。挟持壁14cの外側の面は、パイプ材2の外周面2pに当接する平坦面14cfとされている。以下、平坦面14cfに関して、枢軸15の軸心の延出する方向を単に「軸心方向」と称する。
【0031】
図4は、
図3のIV-IV線に沿う断面図である。
各パッド部材14の平坦面14cfには、矩形板状の突片24が突設されている。突片24は、略一定厚みの板材から成り、平坦面14cf及び枢軸15と直交するように延在している。突片24は、
図2,
図4に示すように、平坦面14cfの軸心方向のほぼ中央位置に突設されている。各突片24は、一対のパイプ材2が端面2eを対向させた状態で、固定側挟持部10Aのパッド部材14と可動側挟持部10Bのパッド部材20によって挟持されるときに、一対のパイプ材2の端面2eの間に挿入される。このとき、各突片24の相反方向を向く両側を各パイプ材2の端面2eに当接させる。これにより、一対のパイプ材2の端面2eの間の隙間dが突片24の厚み分の隙間となる。
【0032】
また、
図3に示すように、操作ロッド18(可動側挟持部10B)側の各パッド部材20は、L字ブロック11側のパッド部材14と同様に、側面視が三角形状の一対の側壁20sと、一対の側壁20sに連設された略矩形状の挟持壁20cと、を備えている。一対の側壁20sは、枢軸21によってパッド支持ブロック19に揺動可能に支持されている。挟持壁20cの外側の面は、パイプ材2の外周面2pに当接する平坦面20cfとされている。ただし、操作ロッド18側のパッド部材20は、平坦面20cfに突片24が設けられていない。
【0033】
次に、一対のパイプ材2を溶接する場合の具体例について説明する。
<パイプ材の仮溶接>
最初に、一対のパイプ材2の端面2eを対向させ、端面2eの周域の複数個所を仮溶接する。仮溶接を行うに際し、パイプ材2の端面2e間の隙間dを一定に保つために上記のクランプ装置1を使用する。
【0034】
予め、クランプ装置1の操作ロッド18を所定方向に回転させ、可動側挟持部10Bのパッド支持ブロック13を固定側挟持部10A側のパッド支持ブロック19から所定距離離間させておく。これにより、固定側挟持部10A側のパッド部材14と可動側挟持部10B側のパッド部材20の間に一対のパイプ材2を配置可能な隙間ができる。
【0035】
この状態において、一対のパイプ材2が対向して配置される位置にクランプ装置1を移動させ、固定側挟持部10A側のパッド部材14を一対のパイプ材2の外周面2pに下方側から当接させる。このとき、固定側挟持部10A側の一対のパッド部材14の各平坦面14cfに両パイプ材2の外周面2pが当接する。この状態において、一対のパイプ材2の相対位置や角度を調整し、各パイプ材2の端面2eを一対のパッド部材14の各突片24の側面に当接させる。
このとき、突片24が一定幅の板状であることから、一対のパイプ材2の端面2eの隙間dは円周方向においてほぼ一定となる。また、一対のパッド部材14は、各平坦面14cfが両パイプ材2の外周面2pに当接することにより、傾斜姿勢が枢軸15を中心として自動的に調整される。
【0036】
この後、作業者がクランプ装置1の操作ロッド18を所定方向に回転させることにより、可動側挟持部10Bのパッド支持ブロック19を固定側挟持部10Aのパッド支持ブロック13に近接する方向に移動させる。これにより、可動側挟持部10B側の一対のパッド部材20がパイプ材2の外周面2pに押し付けられる。このとき、各パッド部材20が平坦面20cfでパイプ材2の外周面2pに当接し、各パッド部材20の傾斜姿勢が枢軸21を中心として自動的に調整される。
この結果、一対のパイプ材2は、端面2e間の隙間dを一定にした状態において、クランプ装置1によって挟持されることになる。このとき、固定側挟持部10Aと可動側挟持部10Bの各パッド部材14,20は、各対の平坦面14cf,20cfが略V字状に傾斜し両パイプ材2の外周面を包み込むように押さえ込むことになる。
【0037】
上述のようにクランプ装置1によって外周面2pを挟持された一対のパイプ材2は、両パイプ材2の端面2eの外周の複数個所を図示しない溶接装置によって溶接される。なお、
図2,
図3中の符号はw1は、パイプ材2の端面2eの仮溶接部(溶接材が付着した部分)である。
【0038】
<パイプ材の本溶接>
図5は、仮固定された一対のパイプ材2に対し、本溶接を行う様子を示す側面図である。
本溶接では、仮溶接によって端面2e同士の相対位置が固定された一対のパイプ材2に対し、端面2e同士の隙間dの残余の部分に溶接を行う。これにより、一対のパイプ材2の端面2eの隙間dは溶接によって完全に封止されることになる。なお、
図5中の符号40は、本溶接を行う際の溶接棒であり、符号w2は、パイプ材2の端面2eの本溶接部(溶接材が付着した部分)である。
【0039】
以上のように、本実施形態のクランプ装置1は、一対のパイプ材2の端面2eの間に挿入される突片24が少なくとも一つの挟持部(固定側挟持部10A)に設けられている。このため、突片24を一対のパイプ材2の端面2eに当接させて固定側挟持部10Aと可動側挟持部10Bによってパイプ材2を挟持することにより、挟持する一対のパイプ材2の端面2eの間の隙間dを容易に一定に保つことができる。
したがって、本実施形態のクランプ装置1を採用した場合には、作業者の熟練を要することなく、一対のパイプ材2の端面2に対して仮溶接を容易に、かつ適切に行うことができる。
なお、本実施形態では、固定側挟持部10A側に突片24が設けられているが、可動側挟持部10B側に突片24を設けるようにしても良い。また、突片24は、固定側挟持部10A側と可動側挟持部10B側の両方に設けるようにしても良い。
【0040】
また、本実施形態のクランプ装置1は、パイプ材2の外周面2pに当接する平坦面14cfが挟持部(固定側挟持部10A)に設けられ、平坦面14cfに突片24が突設されている。このため、挟持部(固定側挟持部10A)の平坦面14cfを一対のパイプ材2の外周面2pに当接させることにより、パイプ材2を安定して挟持することができる。また、突片24が平坦面14cfに突設されているため、平坦面14cfと突片24によって各パイプ材2の端部を安定して位置決めすることができる。
したがって、本構成を採用した場合には、挟持する一対のパイプ材2の端面2e間の隙間dを容易に、かつ正確に調整することができる。
【0041】
また、本実施形態のクランプ装置1は、固定側挟持部10Aと可動側挟持部10Bが、夫々パッド支持ブロック13,19(支持部材)と、パッド支持ブロック13,19に揺動可能に支持されるとともに平坦面14cf,20cfを有する一対のパッド部材14,20と、を備えている。そして、クランプ装置1は、操作ロッド18の回動操作によって固定側挟持部10Aと可動側挟持部10Bが押圧加重を受けると、各パッド部材14,20の平坦面14cf,20cfが一対のパイプ材2の外周面2pに当接する。このとき、各パッド部材14,20がパイプ材2からの反力を受けて適正姿勢に揺動調整される。
したがって、本構成を採用した場合には、各パッド部材14,20の対の平坦面14cf,20cfがV字状に傾斜し、その姿勢で一対のパイプ材2の外周面2pを安定して挟持できるようになる。この結果、一対のパイプ材2の端面2eの隙間dを一定に維持し、パイプ材2の端面2eに対する仮溶接作業をより容易に行うことが可能になる。
【0042】
さらに、本実施形態のクランプ装置1は、パイプ材2の端面に挿入される突片24が固定側挟持部10Aのパッド部材14にのみ設けられ、可動側挟持部10Bのパッド部材20には設けられていない。このため、固定側挟持部10Aと可動側挟持部10Bによって一対のパイプ材2の外周面2pを挟持する際に、可動側挟持部10Bを固定側挟持部10Aから過剰に離間させる必要がなくなる。
したがって、本実施形態のクランプ装置1を採用した場合には、パイプ材2の周囲に充分な作業スペースを確保することが難しい環境であっても、一対のパイプ材2に対するクランプ装置1の挟持操作を容易に行うことができる。
【0043】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、固定側挟持部10Aと可動側挟持部10Bに夫々一対のパッド部材14,20が揺動可能に支持されているが、パッド部材14,20はパッド支持ブロック13に揺動不能に固定することも可能である。
また、固定側挟持部10Aと可動側挟持部10Bの各パッド部材14,20は、必ずしも一対設ける必要はなく、一つであっても良い。
さらに、固定側挟持部10Aと可動側挟持部10Bの形状も上記の実施形態のものに限定されない。一対のパイプ材2の外周面2pを挟持し得るものであれば、種々の形状を採用することができる。
また、上記の実施形態では、固定側挟持部10A側のパッド部材14にのみ突片24が設けられているが、可動側挟持部10B側のパッド部材20にも突片24を設けるようにしても良い。また、可動側挟持部10B側のパッド部材20にのみ突片24を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0044】
1…クランプ装置
2…パイプ材
2e…端面
10A…固定側挟持部(固定側の挟持部)
10B…可動側挟持部(可動側の挟持部)
13,19…パッド支持ブロック(支持部材)
14,20…パッド部材
14cf,20cf…平坦面
24…突片