(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165554
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】フレキシブルジョイント機構
(51)【国際特許分類】
B07B 1/28 20060101AFI20241121BHJP
B07B 1/46 20060101ALI20241121BHJP
F16L 27/10 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
B07B1/28 Z
B07B1/46 Z
F16L27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081834
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】有海 亮介
【テーマコード(参考)】
3H104
4D021
【Fターム(参考)】
3H104JA07
3H104JC10
3H104LB16
4D021CA07
4D021DA20
4D021EA05
4D021EB01
(57)【要約】
【課題】摩耗性粉体によるフレキシブルジョイント本体への摩耗損傷を低減し、交換頻度を極小化することのできるフレキシブルジョイント機構を提供する。
【解決手段】原料の粉砕、分級工程において、第一の分級装置30の後に原料が送られる下端である上部フランジ51と、振動篩である第二の分級装置40への投入口となる下部フランジ52との間に設置されるフレキシブルジョイント機構10であって、上部フランジ51に接続される上部シュート11と、上部シュート11の口縁部の下面側と下部フランジ52の口縁部との間を接続する筒状のフレキシブルな外側部材12と、外側部材12の内側に設けられ、上部シュート11のみに接続された筒状ラバーカーテンから成る内側部材13から構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料の粉砕、分級工程において、第一の分級装置の後に前記原料が送られる下端である上部フランジと、振動篩である第二の分級装置への投入口となる下部フランジとの間に設置されるフレキシブルジョイント機構であって、
前記上部フランジに接続される上部シュートと、
前記上部シュートの口縁部の下面側と前記下部フランジの口縁部との間を接続する筒状のフレキシブルな外側部材と、
前記外側部材の内側に設けられ、前記上部シュートのみに接続された筒状ラバーカーテンから成る内側部材
から構成されることを特徴とするフレキシブルジョイント機構。
【請求項2】
前記筒状ラバーカーテンの厚みが、2mm以上、10mm以下で、
材質が耐摩耗性を有していることを特徴とする、
請求項1に記載のフレキシブルジョイント機構。
【請求項3】
前記原料が、石灰石であることを特徴とする、
請求項2に記載のフレキシブルジョイント機構。
【請求項4】
前記上部フランジと前記下部フランジの面間距離は、75mm以上、300mm以下であることを特徴とする、
請求項3に記載のフレキシブルジョイント機構。
【請求項5】
前記上部フランジと前記下部フランジの開口面積は、それぞれ、0.25m2以上、1m2以下であることを特徴とする
請求項4に記載のフレキシブルジョイント機構。
【請求項6】
振動篩である前記第二の分級装置の共振の増幅量が、15mm以上、100mm以下であることを特徴とする、
請求項5に記載のフレキシブルジョイント機構。
【請求項7】
前記筒状ラバーカーテンの下端部の静止時の位置は、前記下部フランジよりも前記増幅量分だけ低い位置にあり、
前記上部シュートが増幅して高い位置にある場合に、前記筒状ラバーカーテンの下端部は、前記下部フランジより低い位置にあることを特徴とする、
請求項6に記載のフレキシブルジョイント機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルジョイント機構に関し、より詳しくは、原料の粉砕、分級工程において、第一の分級装置と第二の分級装置との間に設置されるフレキシブルジョイント機構に関する。
【背景技術】
【0002】
低品位なニッケル酸化鉱石からのニッケルの回収方法として、硫酸を用いた高圧酸浸出(HPAL:High Pressure Acid Leaching)法がある。この方法は、乾燥及び焙焼工程等の乾式処理工程を含まず、一貫した湿式工程からなるので、エネルギー的及びコスト的に有利であるとともに、ニッケル品位を50重量%程度まで向上させたニッケル・コバルト混合硫化物を得ることができるという利点を有している。
【0003】
ニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出法(HPAL法)は、鉱石のスラリーに硫酸を添加し、220~280℃の温度条件で撹拌処理して、浸出スラリーを形成する浸出工程、浸出スラリーを多段洗浄して、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣を得る固液分離工程、浸出液の酸化を抑制しながら炭酸カルシウムを添加し、3価の鉄を含む中和澱物スラリーとニッケル回収用母液を形成する中和工程、母液に硫化水素ガスを添加することにより亜鉛及び銅を含む混合硫化物を形成し、該混合硫化物を分離する脱亜鉛工程、及び、脱亜鉛終液にさらに硫化水素ガスを吹きこみ、ニッケル及びコバルトを含む硫化物と貧液を形成する硫化工程、などを有する。
【0004】
ニッケル製錬プラントの各中和工程において浸出液のpHを調整するために、石灰石スラリー(石灰石を細かく粉砕し水と混合させたもの)が使用されている。石灰石スラリーの製造工程では、各種分級設備を用いて、所定の粒径の石灰石スラリーとしている。
【0005】
石灰石スラリーに用いられる石灰石の粉体は要求される粒径を満たすために分級が必要であり、一般に振動による分級方式が用いられる。分級は多段階で行われ、第一段階の分級後の粉体が含まれる第一の分級装置後の経路と、第二の分級装置である振動による分級を行う振動篩とが接続される。粉体を第二の分級装置に投入する第一の分級装置後の経路を接続する箇所について、第一の分級装置側に振動が伝播することによる容器の破損防止のため、一般にフレキシブルジョイントが使用され、フレキシブルジョイントの可変部はラバーのような樹脂材料が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
粉体には摩耗性のあるものが多く、粉体とフレキシブルジョイント可変部の接触面は振動体の振動により摩耗が促進され、最終的に破損するため、フレキシブルジョイントは定期的な交換が必要とされる。破損した場合は内部の粉体が外部に漏洩することになり、周辺の汚染といったリスクが顕在化する。またフレキシブルジョイントを交換する際には設備を停止する必要があり、フレキシブルジョイントの長寿命化は常に求められている。
【0007】
例えば、特許文献2には、内側部材と外側部材とが筒状部材の一方の端部のみで接合されている2枚構造を有しているフレキシブルな連結部が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載のフレキシブルな連結部は、対象とする微粉体が、静電潜像現像用の粉体トナーのため、石灰石のような摩耗性粉体に対して使用することは困難であった。
【0009】
例えば、石灰石の分級工程においては、分級装置の運転中の振幅には対応していても、運転時又は停止時の共振で運転中の振幅より大きな振幅を受けた際にダメージを受けることがあった。また、石灰石がフレキシブルジョイントそのものに当ることにより、共振のダメージに加え、石灰石によるダメージですぐに破れてしまうことが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003-314273号公報
【特許文献2】特開2005-76690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような状況を解決するためになされたものであり、摩耗性粉体によるフレキシブルジョイント本体への摩耗損傷を低減し、交換頻度を極小化することのできるフレキシブルジョイント機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、原料の粉砕、分級工程において、第一の分級装置の後に原料が送られる下端である上部フランジと、振動篩である第二の分級装置への投入口となる下部フランジとの間に設置されるフレキシブルジョイント機構であって、上部フランジに接続される上部シュートと、上部シュートの口縁部の下面側と下部フランジの口縁部との間を接続する筒状のフレキシブルな外側部材と、外側部材の内側に設けられ、上部シュートのみに接続された筒状ラバーカーテンから成る内側部材から構成される。
【0013】
このとき、本発明の一態様では、筒状ラバーカーテンの厚みが、2mm以上、10mm以下で、材質が耐摩耗性を有しているとしてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様では、原料が、石灰石であるとしてもよい。
【0015】
また、本発明の一態様では、上部フランジと下部フランジの面間距離は、75mm以上、300mm以下であるとしてもよい。
【0016】
また、本発明の一態様では、上部フランジと下部フランジの開口面積は、それぞれ、0.25m2以上、1m2以下であるとしてもよい。
【0017】
また、本発明の一態様では、振動篩である第二の分級装置の共振の増幅量が、15mm以上、100mm以下であるとしてもよい。
【0018】
また、本発明の一態様では、筒状ラバーカーテンの下端部の静止時の位置は、下部フランジよりも増幅量分だけ低い位置にあり、上部シュートが増幅して高い位置にある場合に、筒状ラバーカーテンの下端部は、下部フランジより低い位置にあるとしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、摩耗性粉体によるフレキシブルジョイント本体への摩耗損傷を低減し、交換頻度を極小化することができる。すなわち、フレキシブルジョイントの可変部と粉体の直接接触を極小化することでフレキシブルジョイントの破損リスクを極小化し、またフレキシブルジョイントの交換頻度を極小化することで設備の稼働時間の最大化に寄与する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】従来のフレキシブルジョイント機構の態様を示す概略図である。
【
図2】(A)は、本発明の一実施形態に係るフレキシブルジョイント機構を示す斜視図であり、
図2(B)は、
図2(A)のA-A線断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るフレキシブルジョイント機構の分解斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るフレキシブルジョイント機構の設置態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について、以下の順序で図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.石灰石の分級工程
2.フレキシブルジョイント機構
【0022】
<1.石灰石の分級工程>
先ず、フレキシブルジョイント機構の具体的な説明に先立ち、本発明が主に適用される石灰石の分級工程について簡単に説明する。なお、本発明の一実施形態に係るフレキシブルジョイント機構は、必ずしも石灰石の例のみに限定されるわけでは無く、石灰石と同程度、あるいはそれ以下の硬さを有する原料の粉砕、分級工程においても適用することが可能である。
【0023】
上述したニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出法(HPAL法)では各中和工程等においてpH調整のためにpH調整剤が添加されており、このpH調整剤には主に石灰石が使用されている。その際、反応効率や搬送性などを考慮して石灰石はスラリーの形態で添加することが行われており、そのため、石灰石は先ず細かく粉砕して粉粒体にされた後、所定量の水と混合してスラリー状にすることが行われている。
【0024】
石灰石スラリーを製造する製造設備は、一例として、石灰石原料を貯蔵するホッパーと、該ホッパーの底部から切り出された石灰石を所定の粒度になるように破砕するクラッシャーと、該破砕された石灰石を更に細かく粉砕するボールミルと、該粉砕された石灰石を分級する分級装置(振動篩)と、分級後の石灰石を最終的に水と混合することで石灰石スラリーの形態にするミキサーとから主に構成されている。
【0025】
本発明の一態様に係るフレキシブルジョイント機構は、石灰石スラリーの製造工程において、ボールミル(第一の分級装置)による石灰石の微粉砕後の粉体をベルトコンベアにより、振動篩(第二の分級装置)へと送る連結部分において適用することができる。
【0026】
図1は、従来のフレキシブルジョイント機構の態様を示す概略図である。従来のフレキシブルジョイント機構100においては、ラバー等の部材で形成されたフレキシブルジョイントの上端のフランジ部101を第一の分級装置30側の上部フランジ51と接続し、フレキシブルジョイントの下端のフランジ部102を第二の分級装置40側の下部フランジ52と接続している。
【0027】
このような従来のフレキシブルジョイント機構100であるが、上述したような石灰石の分級工程においては、第一の分級装置30側は、例えば粉砕装置などで粉砕された原料がベルトコンベアで搬送されるものであり、搬送の勢いでフレキシブルジョイントの片側に原料が当たり、当該箇所の損傷が大きくなるという問題があった。例えば、第一の分級装置30側がベルトコンベアで搬送される原料で、
図1の左側から右側にかけて原料が搬送される場合、フレキシブルジョイント機構100への投入時に搬送の勢いでそのまま、フレキシブルジョイントの右内側に原料の多くが衝突し当該箇所が損傷するといった事が起きていた。
【0028】
また、従来のフレキシブルジョイント機構100のラバー部分に関して、運転中の振幅を吸収するための余長分しか設計されておらず、振動篩である第二の分級装置40との共振によりフレキシブルジョイント機構100が運転中の振幅以上の伸びを受けるとラバー部分が損傷するという問題もあった。
【0029】
本発明に係るフレキシブルジョイント機構は、これらの従来の課題を解消するために発明者により見出されたものである。
【0030】
<2.フレキシブルジョイント機構>
次に、本発明に係るフレキシブルジョイント機構について説明する。
図2(A)は、本発明の一実施形態に係るフレキシブルジョイント機構を示す斜視図であり、
図2(B)は、
図2(A)のA-A線断面図であり、
図3は、本発明の一実施形態に係るフレキシブルジョイント機構の分解斜視図である。また、
図4は、本発明の一実施形態に係るフレキシブルジョイント機構の設置態様を示す概略図である。
【0031】
本発明の一態様は、
図2乃至
図4に示すように、原料の粉砕、分級工程において、第一の分級装置30の後に原料が送られる下端である上部フランジ51と、振動篩である第二の分級装置40への投入口となる下部フランジ52との間に設置されるフレキシブルジョイント機構10であって、上部フランジ51に接続される上部シュート11と、上部シュート11の口縁部の下面側23と下部フランジ52の口縁部との間を接続する筒状のフレキシブルな外側部材12と、外側部材12の内側に設けられ、上部シュート11のみに接続された筒状ラバーカーテンから成る内側部材13から構成される。
【0032】
上部シュート11は、第一の分級装置30の後に原料が送られる経路の下端に設けられた上部フランジ51と接続するための部材である。上部シュート11は、主に金属製であり、取付孔21が設けられた口縁部の上面側22は上部フランジ51と接続され、口縁部の下面側23には、後述する外側部材12(フレキシブルジョイント)が取り付けられるとともに、上部シュート11の挿入部24の周囲には、後述する内側部材13(筒状ラバーカーテン)を設置するためのボルト締結部25が設けられる。粉体案内用の内側部材13(筒状ラバーカーテン)を取り付けるための上部シュート11は外側部材12(フレキシブルジョイント)を接続するためのフランジ機能を有するだけではなく、粉体の移動方向に対して粉体を案内するためのシュート機能を有している。これにより粉体が外側部材12(フレキシブルジョイント)の可変部に接触する機会を減らし、損傷を抑制することができる。
【0033】
外側部材12は、上部シュート11の口縁部の下面側23と下部フランジ52の口縁部の上面側との間を接続する筒状のフレキシブルな部材である。外側部材12(フレキシブルジョイント)の可変部には、ラバーのような樹脂材料が用いられる。通常の天然ゴムやブチルゴムではすぐに摩耗して破れてしまうめ、耐摩耗性を有する材質を用いることが好ましい。一例として、外側部材12の上端と下端にはそれぞれ取付孔が設けられた上端フランジ部26と下端フランジ部27が設けられ、上端フランジ部26は上部シュート11の口縁部の下面側23と接続され、下端フランジ部27は振動篩である第二の分級装置40への投入口となる下部フランジ52の上面側と接続される(
図2(B)参照)。
【0034】
外側部材12(フレキシブルジョイント)は、振動篩が停止する際の共振点通過時に発生する共振の振幅を許容できるように、外側部材12(フレキシブルジョイント)の可変部(ラバー部)の長さは第一の分級装置30側の上部フランジ51と第二の分級装置40側の下部フランジ52との距離に加えて、共振の振幅量を可変部(ラバー部)の長さに加えることが好ましい。このようにすることで、振動篩の停止時に共振により外側部材12(フレキシブルジョイント)が通常の振幅以上の伸びを受ける場合であっても、可変部(ラバー部)の損傷を抑制することができる。例えば、共振の増幅量が50mmであれば、上部フランジ51と下部フランジ52との間を接続するのに必要な長さに加えて、50mmの余長を外側部材12(フレキシブルジョイント)の可変部(ラバー部)に与えておけばよい。
【0035】
内側部材13は、外側部材12の内側に設けられ、上部シュート11のみに接続された筒状ラバーカーテンから成る。このようにすることで、粉体が第一の分級装置30から第二の分級装置40に投入される際には上部シュート11、及び内側部材13(筒状ラバーカーテン)が粉体と接触し、上部シュート11と下部フランジ52を繋ぐ外側部材12(フレキシブルジョイント)は粉体と接触しない。これにより、摩耗性粉体による外側部材12(フレキシブルジョイント)への摩耗損傷を低減し、交換頻度を極小化することができる。
【0036】
一例として、内側部材13(筒状ラバーカーテン)の上端側には上述した上部シュートの締結ボルトの位置に対応した取付孔28が設けられており、内側部材13(筒状ラバーカーテン)は該取付孔28を介して、上部シュート11のボルト締結部25にボルトにて固定される。固定後のボルト頭は、他の箇所との接触による損傷を防止するためラバーライニングで保護することが好ましい。内側部材13(筒状ラバーカーテン)により粉体の流路と外側部材12(フレキシブルジョイント)は直接接触することがなくなるため、フレキシブルジョイントは粉体による影響を受けず長期間の使用に耐える事ができる。
【0037】
なお、上部シュート11の挿入部を更に延長して下部フランジ52よりも長くすることでも同様の効果が期待できるが、第二の分級装置40である振動篩を停止する際の共振によって生じる横方向の大きな振動で延長した挿入部と下部フランジ52が接触、破損する可能性がある。一方で、内側部材13(筒状ラバーカーテン)であれは下部フランジ52と接触しても下部フランジ52を破損することがないため、ラバーカーテンによる挿入部延長が有効である。
【0038】
内側部材13(筒状ラバーカーテン)は、消耗品として例えば、3か月に1回程度交換する前提で使用される。内側部材13(筒状ラバーカーテン)は粉体と接触を続けて最終的には破損するが、内側部材13が破損した場合でも外側部材12(フレキシブルジョイント)は健在であるため、粉体の搬送に悪影響を及ぼさない。内側部材13が破損して脱落した場合は下流の設備で内側部材13の断片(ラバーカーテン片)が確認できるため、内側部材13が破損したことを、フレキシブルジョイント内部を点検することなく把握することができ、外側部材12(フレキシブルジョイント)が破損に至って周辺が粉体に汚染される前に内側部材13(筒状ラバーカーテン)の交換を計画することができる。
【0039】
上部シュート11や下部フランジ52の材質は金属を使用する事ができるため、耐摩耗材を選定することで長期間使用できる。また消耗部である内側部材13(筒状ラバーカーテン)は定期的に交換することで本発明に係るフレキシブルジョイント機構10は長期間の運用に耐える事ができる。
【0040】
第二の分級装置40は振動篩であるため、その振動が上部のフレキシブルジョイント機構10にも伝わり、共振が生じることがある。粉体案内用の内側部材13(筒状ラバーカーテン)を取り付けるための金属製の上部シュート11の端部が鋭利な場合、振動によってフレキシブルジョイント機構10が振動した際に上部シュート11の端部と外側部材12や内側部材13と接触して破損する可能性があるため、上部シュート11の端部を丸めることで鋭利な箇所を除外し、上部シュート11の端部とフレキシブルジョイント機構10のラバー部分との接触による損傷を防止することが好ましい。
【0041】
また、粉体案内用の内側部材13(筒状ラバーカーテン)を取り付けるための上部シュート11は下部フランジ52に達する長さを有する場合、振動により上部シュート11と下部フランジ52が接触して破損を促す可能性がある。そのため上部シュート11の下端は下部フランジ52に達しない長さであることが推奨される。
【0042】
本発明の一態様では、筒状ラバーカーテンの厚みが、2mm以上、10mm以下で、材質が耐摩耗性を有していることが好ましい。厚さが2mm未満では、摩耗によりラバーカーテンの寿命が短くなってしまう。また厚さが10mmを超える場合、フレキシブル性が無くなってしまう。
【0043】
本発明の一態様では、上部フランジ51と下部フランジ52の面間距離は、75mm以上、300mm以下であることが好ましい。面間距離が、75mm未満では、第二の分級装置40である振動篩の振幅を吸収することができず、上下のフランジがぶつかって破損してしまう。また、面間距離が、300mmを超える場合、上部フランジ51が振幅の上端時に、原料がフレキシブルジョイント機構10から漏れてしまうことがある。
【0044】
また、本発明の一態様では、上部フランジ51と下部フランジ52の開口面積は、それぞれ、0.25m2以上、1m2以下であることが好ましい。開口面積が0.25m2未満では、生産性が悪化してしまい、1m2を超える場合は、石灰石等の原料が次工程に多量に装入されてしまい、原料処理の負荷が大きくなってしまう。
【0045】
また、振動篩である第二の分級装置の共振の増幅量が、15mm以上、100mm以下であることが好ましい。篩の振幅は、通常運転中は概ね15~30mm程度の全振幅を有しており、運転開始、停止時の共振振幅増幅量は測定できないが、目視で外側部材12(フレキシブルジョイント)は約+50mm程度は増幅していると考えられる。したがって、100mmの余長をフレキシブルジョイントのラバー部に持たせるのが好ましい。なお、共振では不規則な揺れ方が生じ、これらを振動スクリーン設計時に予想することは困難なため、運用としては実際に動かしてみて共振増幅量を把握した後、増幅量の分の長さをフレキシブルジョイントのラバー部に加算して設計することが好ましい。
【0046】
本発明の一態様では、内側部材13(筒状ラバーカーテン)の下端部の静止時の位置は、下部フランジ52よりも増幅量分だけ低い位置にあり、上部シュート11が増幅して高い位置にある場合に、内側部材13(筒状ラバーカーテン)の下端部は、下部フランジ52より低い位置にあることが好ましい。すなわち、
図4に示すように、内側部材13(筒状ラバーカーテン)の下端部が下部フランジ52より長さLほど下の位置にあり、長さLは共振時の最大の増幅量Rよりも大きいことが好ましい。このようにすることで、共振が起きた際にも粉体のフレキシブルジョイントの可変部への接触を防止することができる。また、内側部材13(筒状ラバーカーテン)は振動により下部フランジ52に接触する可能性があるが、ラバーカーテンは柔軟な材料であるため下部フランジ52と接触しても互いに損傷することがない。
【0047】
以上説明したように、本発明に係るフレキシブルジョイント機構を適用することで、摩耗性粉体によるフレキシブルジョイント本体への摩耗損傷を低減し、交換頻度を極小化することができる。
【実施例0048】
以下、本発明について、実施例および比較例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0049】
ニッケル製錬プラントの中和工程で用いる石灰石の搬送ラインに本発明の一実施形態に係るフレキシブルジョイント機構を設置し、効果を確認した。具体的には、中和用石灰石粉砕後の分級機(振動スクリーン)投入部、および排出部で、フレキシブルジョイント機構を使用した。
【0050】
このときの石灰石の粒度分布は、以下の表1に示すように、平均粒径が25mmで、大きいものは100mmを超えるものがあった。
【表1】
【0051】
フレキシブルジョイント機構の内側部材である筒状ラバーカーテンの部材として、REMA TIPTOP社製のCHEMOLINE 4B(耐摩耗、耐薬品ゴム)を使用した。また、フレキシブルジョイント機構を接続する上部フランジと下部フランジの開口面積は、約1300mm×400mmであり、上部フランジと下部フランジの面間距離は、約150mmであった。
【0052】
従来のフレキシブルジョイント機構(比較例)と本発明を適用したフレキシブルジョイント機構(実施例)の破損までの寿命を比較した結果、従来品ではフレキシブルジョイントのラバー部が破れるまで約30日であったのに対して、本発明のフレキシブルジョイント機構では同じくフレキシブルジョイントのラバー部が破れるまで約90日となり、大きな寿命延長効果が得られた。
【0053】
以上より、本発明に係るフレキシブルジョイント機構を適用することにより、摩耗性粉体によるフレキシブルジョイント本体への摩耗損傷を低減し、交換頻度を極小化できることが確認できた。
【0054】
なお、上記のように本発明の一実施形態および各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0055】
例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、フレキシブルジョイント機構の構成も本発明の一実施形態および各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
10 フレキシブルジョイント機構、11 上部シュート、12 外側部材((フレキシブルジョイント)、13 内側部材(筒状ラバーカーテン)、21 (上部シュートの)取付孔、22 上部シュートの口縁部の上面側、23 上部シュートの口縁部の下面側、24 挿入部、25ボルト締結部、26 フレキシブルジョイントの上端フランジ部、27 フレキシブルジョイントの下端フランジ部、28 内側部材(筒状ラバーカーテン)の取付孔、30 第一の分級装置、40 第二の分級装置、51 上部フランジ、52 下部フランジ、100 フレキシブルジョイント機構(従来例)、101 上端のフランジ部、102 下端のフランジ部