(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165700
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】吸音構造体及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
G10K 11/172 20060101AFI20241121BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20241121BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20241121BHJP
G10K 11/162 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G10K11/172
B60C5/00 F
G10K11/16 140
G10K11/162
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082105
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】海野 光朗
(72)【発明者】
【氏名】枝元 太希
(72)【発明者】
【氏名】下谷 圭三
【テーマコード(参考)】
3D131
5D061
【Fターム(参考)】
3D131AA28
3D131AA30
3D131BA01
3D131BC31
3D131BC44
3D131BC55
3D131CB03
3D131LA28
5D061AA06
5D061AA25
5D061CC04
(57)【要約】
【課題】遠心力、振動等の外力による変形を抑制しつつ取付対象面に対する追従性を高めることができる吸音構造体及びこの吸音構造体が取り付けられたタイヤを提供する。
【解決手段】吸音構造体1は、開口12を有する箱体10と、開口12と連通されて箱体10の中空部11側に延在する中空のネック部20と、を備える。箱体10は、40以上100以下のショアA硬度及び10以上70以下のショアD硬度の少なくとも一方を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する箱体と、
前記開口と連通されて前記箱体の中空部側に延在する中空のネック部と、を備え、
前記箱体は、40以上100以下のショアA硬度及び10以上70以下のショアD硬度の少なくとも一方を有する、
吸音構造体。
【請求項2】
前記箱体は、エラストマーを有する、
請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項3】
前記箱体は、
天部と、
前記天部の周縁部に接続されて前記天部の延在方向と交差する方向に延びる側部と、を有する、
請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項4】
前記箱体は、前記側部に接続されて前記天部と対向される底部を更に有する、
請求項3に記載の吸音構造体。
【請求項5】
前記開口は、前記天部に形成されている、
請求項3に記載の吸音構造体。
【請求項6】
前記開口は、前記側部に形成されている、
請求項3に記載の吸音構造体。
【請求項7】
前記箱体は、複数の前記開口と、前記天部及び前記側部に接続されて前記中空部を二つの小空間に区分けする区画壁と、を有し、
前記区画壁は、前記二つの小空間のそれぞれに少なくとも一つの前記開口が連通されるように、前記中空部を区分けする、
請求項3に記載の吸音構造体。
【請求項8】
前記区画壁は、前記二つの小空間のそれぞれに一つの前記開口が連通されるように、前記中空部を区分けする、
請求項7に記載の吸音構造体。
【請求項9】
前記区画壁は、前記二つの小空間のうちの一方側に位置する第一区画壁部と、前記二つの小空間のうちの他方側に位置する第二区画壁部と、を有し、
前記天部及び前記側部は、前記第一区画壁部及び前記第二区画壁部により分割されている、
請求項7に記載の吸音構造体。
【請求項10】
前記第一区画壁部と前記第二区画壁部とは、前記天部に向かうに従い互いの離間距離が大きくなるように配置されている、
請求項9に記載の吸音構造体。
【請求項11】
前記第一区画壁部と前記第二区画壁部とは、前記天部とは反対側の端部において互いに接続されている、
請求項9に記載の吸音構造体。
【請求項12】
前記ネック部は、少なくとも前記開口から離間した位置において前記箱体に固定される固定部を有する、
請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項13】
前記開口は、円形状の穴である、
請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項14】
前記開口は、線状に延びるスリットである、
請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項15】
前記箱体の前記中空部に収容された多孔質吸音体を更に備える、
請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項16】
内腔部に取り付けられた、請求項1~15の何れか一項に記載の吸音構造体を備える、
タイヤ。
【請求項17】
タイヤ内腔共鳴音の周波数をF、光速をc、前記タイヤの内腔部の半径をR、前記タイヤに組み付けられるホイールのリムの半径をr、円周率をπとした場合、前記吸音構造体は、F=c/((R+r)×π)から算出されるタイヤ内腔共鳴音の周波数の±100Hzの範囲内の共鳴周波数のヘルムホルツ共鳴が発生するヘルムホルツ共鳴構造を備える、
請求項16に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸音構造体及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヘルムホルツ共鳴器の吸音構造を採用する吸音構造体が記載されている。この吸音構造体は、居住空間等の吸音対策として建築施工面に取り付けられるものであり、複数の開口部を有する板状部材と、開口部の長さを延長するように当該開口部に接続されたネック部とを備えている。板状部材として、通常の建築施工で用いられる石膏ボードが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸音対策は様々な場所で求められるため、吸音構造体は、建築施工面のような平面状の取付対象面に取り付けられるだけではなく、曲面状の取付対象面に取り付けられることもある。例えば、車両の走行時に生じるタイヤ内腔共鳴音を低減するために、吸音構造体が曲面状のタイヤ内腔部に取り付けられることもある。しかしながら、特許文献1に記載された吸音構造体では、板状部材として硬度の高い石膏ボードが用いられているため、曲面状の取付対象面に追従させることができず、取り付けが難しいという問題がある。
【0005】
一方、吸音構造体がタイヤ内腔部に取り付けられる場合等は、タイヤの回転により吸音構造体に遠心力、振動等の外力が作用するため、吸音構造体の硬度が低すぎると吸音構造体が変形して吸音周波数が変化するという問題もある。
【0006】
本開示は、遠心力、振動等の外力による変形を抑制しつつ取付対象面に対する追従性を高めることができる吸音構造体及びこの吸音構造体が取り付けられたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る吸音構造体は、開口を有する箱体と、開口と連通されて箱体の中空部側に延在する中空のネック部と、を備え、箱体は、40以上100以下のショアA硬度及び10以上70以下のショアD硬度の少なくとも一方を有する。
【0008】
この吸音構造体では、開口を有する箱体と、開口と連通されて箱体の中空部側に延在する中空のネック部と、を備えるため、吸音構造体をヘルムホルツ共鳴器として機能させることができる。そして、箱体が40以上100以下のショアA硬度及び10以上70以下のショアD硬度の少なくとも一方を有するため、遠心力、振動等の外力により変形するのを抑制しつつ取付対象面に対する追従性を高めることができる。
【0009】
上述した吸音構造体において、箱体は、エラストマーを有してもよい。この吸音構造体では、箱体がエラストマーを有することで、箱体が上記のショアA硬度及びショアD硬度の少なくとも一方を有するものとすることができる。
【0010】
上述した吸音構造体において、箱体は、天部と、天部の周縁部に接続されて天部の延在方向と交差する方向に延びる側部と、を有してもよい。この吸音構造体では、箱体が、天部と、天部の周縁部に接続されて天部の延在方向と交差する方向に延びる側部と、を有することで、取付対象面に取り付けられた吸音構造体をヘルムホルツ共鳴器として機能させることができる。
【0011】
上述した吸音構造体において、箱体は、側部に接続されて天部と対向される底部を更に有してもよい。この吸音構造体では、箱体が、側部に接続されて天部と対向される底部を有することで、吸音構造体単体で、ヘルムホルツ共鳴器として機能させることができる。このため、例えば、吸音構造体と取付対象面との間に隙間が生じたとしても、吸音構造体をヘルムホルツ共鳴器として機能させることができる。
【0012】
上述した吸音構造体において、開口は、天部に形成されていてもよい。この吸音構造体では、開口が天部に形成されていることで、音を開口に入射させやすくなる。
【0013】
上述した吸音構造体において、開口は、側部に形成されていてもよい。この吸音構造体では、開口が側部に形成されていることで、厚さ方向における吸音構造体の寸法が小さくても、ネック部を容易に長くすることができる。このため、容易に低周波域の共鳴周波数のヘルツホルム共鳴を発生させることができる。
【0014】
上述した吸音構造体において、箱体は、複数の開口と、天部及び側部に接続されて中空部を二つの小空間に区分けする区画壁と、を有し、区画壁は、二つの小空間のそれぞれに少なくとも一つの開口が連通されるように、中空部を区分けしてもよい。この吸音構造体では、箱体の中空部が区画壁により二つの小空間に区分けされて、二つの小空間のそれぞれに少なくとも一つの開口が連通されることで、二つの小空間のそれぞれをヘルムホルツ共鳴器として機能させつつ、吸音構造体の剛性を高めることができる。
【0015】
上述した吸音構造体において、区画壁は、二つの小空間のそれぞれに一つの開口が連通されるように、中空部を区分けしてもよい。この吸音構造体では、二つの小空間のそれぞれに一つの開口が連通されることで、吸音構造体をヘルムホルツ共鳴器単位で区分けすることができる。
【0016】
上述した吸音構造体において、区画壁は、二つの小空間のうちの一方側に位置する第一区画壁部と、二つの小空間のうちの他方側に位置する第二区画壁部と、を有し、天部及び側部は、第一区画壁部及び第二区画壁部により分割されていてもよい。この吸音構造体では、天部及び側部が、第一区画壁部及び第二区画壁部により分割されていることで、吸音構造体を湾曲又は屈曲させやすくなる。これにより、取付対象面に対する追従性を更に高めることができる。
【0017】
上述した吸音構造体において、第一区画壁部と第二区画壁部とは、天部に向かうに従い互いの離間距離が大きくなるように配置されていてもよい。この吸音構造体では、第一区画壁部と第二区画壁部とが天部に向かうに従い互いの離間距離が大きくなるように配置されていることで、吸音構造体を天面側が内側となるように湾曲又は屈曲させやすくなる。
【0018】
上述した吸音構造体において、第一区画壁部と第二区画壁部とは、天部とは反対側の端部において互いに接続されていてもよい。この吸音構造体では、第一区画壁部と第二区画壁部とが天部とは反対側の端部において互いに接続されていることで、吸音構造体の湾曲又は屈曲を可能としつつ、吸音構造体が大型化するのを抑制することができる。
【0019】
上述した吸音構造体において、ネック部は、少なくとも開口から離間した位置において箱体に固定される固定部を有してもよい。この吸音構造体では、ネック部が少なくとも開口から離間した位置において箱体に固定される固定部を有することで、箱体に対するネック部の移動を抑制することができる。このため、例えば、吸音構造体に遠心力、振動等の外力が作用した際に、箱体に対してネック部が過度に変位するのを抑制することができる。
【0020】
上述した吸音構造体において、開口は、円形状の穴であってもよい。この吸音構造体では、開口が円形状の穴であることで、ヘルムホルツ共鳴器としての設計を容易に行うことができる。
【0021】
上述した吸音構造体において、開口は、線状に延びるスリットであってもよい。この吸音構造体では、開口が線状に延びるスリットであることで、吸音構造体の製造を容易に行うことができる。
【0022】
上述した吸音構造体において、箱体の中空部に収容された多孔質吸音体を更に備えてもよい。この吸音構造体では、多孔質吸音体を備えることで、高周波域の音を低減することができる。
【0023】
本開示に係るタイヤは、内腔部に取り付けられた、上述した何れかの吸音構造体を備える。このタイヤでは、上述した吸音構造体を備えるため、タイヤ内腔共鳴音をネック部の中空部分で生じるヘルムホルツ共鳴により低減することができる。しかも、吸音構造体の箱体が40以上100以下のショアA硬度及び10以上70以下のショアD硬度の少なくとも一方を有するため、遠心力、振動等の外力により吸音構造体が変形するのを抑制しつつ内腔部に対する吸音構造体の追従性を高めることができる。
【0024】
上述したタイヤにおいて、タイヤ内腔共鳴音の周波数をF、光速をc、タイヤの内腔部の半径をR、タイヤに組み付けられるホイールのリムの半径をr、円周率をπとした場合、吸音構造体は、F=c/((R+r)×π)から算出されるタイヤ内腔共鳴音の周波数の±100Hzの範囲内の共鳴周波数のヘルムホルツ共鳴が発生するヘルムホルツ共鳴構造を備えてもよい。このタイヤでは、タイヤ内腔共鳴音の周波数の±100Hzの範囲内の共鳴周波数のヘルムホルツ共鳴が発生するヘルムホルツ共鳴構造を備えるため、タイヤ内腔共鳴音を低減できる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、遠心力、振動等の外力による変形を抑制しつつ取付対象面に対する追従性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る吸音構造体が取り付けられたタイヤの模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すIII-III線における模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、変形例の吸音構造体を示す模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、変形例の吸音構造体を示す模式的な断面図である。
【
図6】
図6は、変形例の吸音構造体を示す模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、第二実施形態に係る吸音構造体の模式的な断面図である。
【
図8】
図8は、第三実施形態に係る吸音構造体の模式的な断面図である。
【
図9】
図9は、第四実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。
【
図11】
図11は、第五実施形態に係る吸音構造体の模式的な断面図である。
【
図12】
図12は、第六実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。
【
図14】
図14は、第七実施形態に係る吸音構造体の模式的な断面図である。
【
図15】
図15は、第八実施形態に係る吸音構造体の模式的な断面図である。
【
図16】
図16は、第九実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。
【
図18】
図18は、第十実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。
【
図21】
図21は、第十一実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。
【
図23】
図23は、第十二実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。
【
図24】
図24は、変形例の吸音構造体を示す模式的な側面図である。
【
図25】
図25は、ヘルムホルツ共鳴構造の共鳴周波数の算出方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る吸音構造体の実施形態について詳細に説明する。本実施形態は、本開示に係る吸音構造体を、タイヤ内腔共鳴音を低減するためにタイヤの内腔部に取り付けられるタイヤ用の吸音構造体に適用したものである。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0028】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係る吸音構造体が取り付けられたタイヤの模式的な断面図である。タイヤ101では、車両の走行時に路面の凹凸を通過する際の振動を受けて内部の空気が共鳴する空洞共鳴が生じ得る。空洞共鳴による音の周波数は、200Hz~300Hz程度、典型的には250Hz程度となっている。本実施形態に係る吸音構造体1は、空洞共鳴による低周波帯の音を効率的に吸収すべく、タイヤ101の内腔部102に取り付けられる。内腔部102は、トレッド103の内周面である。
【0029】
図2及び
図3を参照して、第一実施形態に係る吸音構造体1について説明する。
図2は、第一実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。
図3は、
図2に示すIII-III線における模式的な断面図である。
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係る吸音構造体1は、ヘルムホルツ共鳴構造を備えた薄型の吸音構造体となっている。吸音構造体1がヘルムホルツ共鳴構造を備えるとは、吸音構造体1単体でヘルムホルツ共鳴を発生させること、又は、吸音構造体1がタイヤ101の内腔部102に取り付けられることでヘルムホルツ共鳴を発生させることをいう。吸音構造体1は、タイヤ101の内腔部102に取り付けられる取付面2と、取付面2と対向するように配置された天面3と、を備える。取付面2には、例えば、吸音構造体1をタイヤ101の内腔部102に取り付けるための接着シート4が貼り付けられている。
【0030】
吸音構造体1は、矩形の帯状に形成されている。取付面2と天面3とが対向する方向を、吸音構造体1の厚さ方向D1という。吸音構造体1は、厚さ方向D1から見た平面視において、矩形状に形成されている。厚さ方向D1と直交する方向のうち、吸音構造体1の長手方向となる方向を長さ方向D2といい、吸音構造体1の短手方向となる方向を幅方向D3という。吸音構造体1の厚さT2は、例えば、20mm以下となっている。厚さT2は、厚さ方向D1における寸法である。吸音構造体1の幅W1は、例えば、30mm以上40mm以下程度となっている。幅W1は、幅方向D3における寸法である。吸音構造体1の長さは、例えば、30mm以上2000mm以下程度である。吸音構造体1の長さは、長さ方向D2における寸法である。
【0031】
吸音構造体1は、箱体10と、複数のネック部20と、を備えて構成されている。
【0032】
箱体10は、内部に中空部11を有する箱状の部材である。箱体10は、吸音構造体1の外形を成している。箱体10は、表皮とも呼ばれる。箱体10は、中空部11に連通される複数の開口12を有する。開口12は、箱体10を貫通しており、タイヤ内腔共鳴音の入口となる。開口12の形状(断面形状)は、特に限定されるものではなく、円形状、三角形状、矩形状、多角形状、楕円形状等の様々な形状とすることができるが、本実施形態では、箱体10を貫通する円形状の穴となっている。つまり、開口12の断面形状は、円形状となっている。開口12の内径は、例えば、1mm~5mm程度となっている。箱体10における開口12の数は、特に限定されるものでない。
【0033】
箱体10は、非通気性を有する。箱体10は、40以上100以下のショアA硬度及び10以上70以下のショアD硬度の少なくとも一方を有する。この場合、箱体10のショアA硬度は、50以上80以下であってもよく、60以上70以下であってもよい。また、箱体10のショアD硬度は、10以上50以下であってもよく、10以上40以下であってもよい。
【0034】
箱体10のショアA硬度は、JIS K6253-3に従い、デュロメーターを用いて測定することができ、例えば株式会社テクロック製GS-709N TYPE Aを用いることができる。箱体10のショアD硬度は、JIS K6253-3に従い、デュロメーターを用いて測定することができ、例えば株式会社テクロック製GS-720N TYPE Dを用いることができる。JIS K6253-3に定められた試験片の積層の許容枚数(3枚以下)で規定の測定厚み(6mm以上)を満足できない場合は、3枚を超えて重ね、規程厚みで測定することができる。
【0035】
箱体10の材料は、例えば、熱可撓性エラストマー等のエラストマー、プラスチック、ゴム、ゴムライク材料等の樹脂などを有する。
【0036】
エラストマー材料としては、例えば、スチレンブロック共重合体(SBC)、ポリオレフィン系(TPO)、ポリウレタン系(TPU)、ポリエステル系(TPC)、ポリアミド系(TPA)、動的架橋型(TPV)、軟質ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル系等の熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0037】
プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリウレタン(PU)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0038】
ゴム材料としては、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。
【0039】
ゴムライク材料としては、例えば、UV硬化性を有するアクリルゴムライク材などが挙げられる。
【0040】
箱体10は、天部13と、側部14と、底部15と、を備える。箱体10の肉厚T1は、例えば、0.1mm~2mm程度となっている。つまり、天部13、側部14、及び底部15のそれぞれの肉厚T1が、例えば、0.1mm~2mm程度となっている。
【0041】
天部13は、天面3を形成する部位である。天部13は、中空部11の上方を覆っている。中空部11の上方とは、厚さ方向D1における一方の方向である。天部13は、厚さ方向D1から見た平面視において、略矩形状に形成されている。天部13には、天部13を貫通して中空部11に連通される複数の開口12が形成されている。複数の開口12は、例えば、長さ方向D2に一列に並んでいる。開口12による天部13の開口率(天部13の表面における天部13の面積に対する開口12の面積の総和の比率)は、例えば、0.1%~10%程度となっている。
【0042】
側部14は、取付面2の一部を形成する部位である。側部14は、天部13の周縁部に接続されて天部13の延在方向と交差する方向に延びている。天部13の延在方向は、長さ方向D2及び幅方向D3に沿う方向である。天部13の延在方向と交差する方向とは、長さ方向D2及び幅方向D3と一致せず、長さ方向D2及び幅方向D3に対して0°より大きい角度をもって傾斜する方向をいう。例えば、厚さ方向D1、及び厚さ方向D1に対して傾斜する方向も、天部13の延在方向と交差する方向に含まれる。
【0043】
側部14は、中空部11の側方を覆っている。中空部11の側方とは、長さ方向D2及び幅方向D3に沿う方向である。側部14は、側部14は、天部13の全周において、天部13の周縁部から取付面2まで延びている。側部14の厚さ方向D1と直交する断面は、無端の矩形環状に形成されている。側部14は、例えば、天部13に向かうに従い狭まるテーパ形状を有する。つまり、側部14は、天部13から取付面2に向うに従い広がるように、厚さ方向D1に対して傾斜している。厚さ方向D1に対する側部14の傾斜角度θは、例えば、0°以上50°以下程度である。
【0044】
底部15は、取付面2の一部を形成する部位である。底部15は、側部14に接続されて天部13と対向される。底部15は、中空部11の下方を覆っている。中空部11の下方とは、厚さ方向D1における他方の方向、つまり、中空部11の上方とは反対の方向である。
【0045】
ネック部20は、開口12に連通されて天部13から中空部11側に延在する中空の部材である。ネック部20の基端は、開口12に接続されている。ネック部20の先端は、ネック部20の中空部分Sが露出する開放端となっており、中空部11内に位置している。ネック部20は、例えば、箱体10と一体的に形成されている。ネック部20の数は、開口12の数と同じであり、開口12のそれぞれにネック部20のそれぞれが接続されている。
【0046】
ネック部20は、箱体10と同様に非通気性を有する。ネック部20は、箱体10と同様のショアA硬度及びショアD硬度の少なくとも一方を有する。ネック部20の材料は、箱体10の材料と同じとすることができる。
【0047】
ネック部20の中空部分Sは、開口12の断面と同じ又はそれ以上の断面を有する。ネック部20は、ネック部20の延在長さを大きくすることで、ヘルムホルツ共鳴器として機能する吸音構造体1の共鳴周波数を小さくすることができる。すなわち、ネック部20の延在長さを大きくすることで、低周波域の共鳴音を低減することができる。ネック部20の開口12側の先端を基端とし、ネック部20の開口12とは反対側の先端を先端とする。ネック部20の延在長さは、開口12側の基端から開口12とは反対側の先端までのネック部20の延在軸の長さである。
【0048】
ネック部20の形状は、特に限定されるものではない。例えば、
図3に示すように、ネック部20は、開口12から厚さ方向D1に直線状に延びていてもよい。また、
図4~
図6に示すように、ネック部20の少なくとも一部は、吸音構造体1の厚さ方向D1に対して交差する部分を有していてもよい。吸音構造体1の厚さ方向D1に対して交差するとは、ネック部20の延在方向が吸音構造体1の厚さ方向D1と一致せず、厚さ方向D1に対して0°より大きい角度をもって傾斜していることを意味する。
図4~
図6は、変形例の吸音構造体を示す模式的な断面図である。
図4に示す吸音構造体1のネック部20は、直線形状をなしている。つまり、
図4に示すネック部20は、基端から先端にかけて、厚さ方向D1に対して傾斜する方向に、直線状に延びている。
図5に示す吸音構造体1のネック部20は、湾曲形状をなしている。つまり、
図5に示すネック部20は、基端から先端にかけて、厚さ方向D1に対して傾斜する方向に、緩やかに湾曲しながら延びている。
図6に示す吸音構造体1のネック部20は、螺旋形状をなしている。つまり、
図6に示すネック部20は、基端から先端にかけて、螺旋状に延びている。このように、ネック部20が吸音構造体1の厚さ方向D1に対して交差する部分を有することで、ネック部20を、吸音構造体1の厚さT2以上に長くすることができる。これにより、低周波域のタイヤ内腔共鳴音も低減できる。
【0049】
このように構成される吸音構造体1は、例えば、射出成型、押出成型、3Dプリンタによる造形、塩凝集法等により製造することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る吸音構造体1では、開口12を有する箱体10と、開口12と連通されて箱体10の中空部11側に延在する中空のネック部20と、を備えるため、吸音構造体1をヘルムホルツ共鳴器として機能させることができる。そして、箱体10が40以上100以下、50以上80以下、又は60以上70以下のショアA硬度及び10以上70以下、10以上50以下、又は10以上40以下のショアD硬度の少なくとも一方を有する。このため、遠心力、振動等の外力により変形するのを抑制しつつ取付対象面であるタイヤ101の内腔部102に対する追従性を高めることができる。
【0051】
また、この吸音構造体1では、箱体10がエラストマーを有することで、箱体10が上記のショアA硬度及びショアD硬度の少なくとも一方を有するものとすることができる。
【0052】
また、この吸音構造体1では、箱体10が、天部13と、天部13の周縁部に接続されて天部13の延在方向と交差する方向に延びる側部14と、を有することで、取付対象面であるタイヤ101の内腔部102に取り付けられた吸音構造体1をヘルムホルツ共鳴器として機能させることができる。
【0053】
また、この吸音構造体1では、箱体10が、側部14に接続されて天部13と対向される底部15を備えるため、吸音構造体1単体で、ヘルムホルツ共鳴器として機能させることができる。このため、例えば、吸音構造体1と取付対象面であるタイヤ101の内腔部102との間に隙間が生じたとしても、吸音構造体1をヘルムホルツ共鳴器として機能させることができる。
【0054】
また、この吸音構造体1では、開口12が天部13に形成されているため、音を開口に入射させやすくなる。
【0055】
また、この吸音構造体1では、開口12が円形状の穴であるため、ヘルムホルツ共鳴器としての設計を容易に行うことができる。
【0056】
本実施形態に係るタイヤ101では、上述した吸音構造体1を備えるため、タイヤ内腔共鳴音をネック部20の中空部分Sで生じるヘルムホルツ共鳴により低減することができる。しかも、吸音構造体1の箱体10が40以上100以下、50以上80以下、又は60以上70以下のショアA硬度及び10以上70以下、10以上50以下、又は10以上40以下のショアD硬度の少なくとも一方を有する。このため、遠心力、振動等の外力により吸音構造体1が変形するのを抑制しつつ内腔部102に対する吸音構造体1の追従性を高めることができる。
【0057】
ここで、
図1に示すように、タイヤ内腔共鳴音の周波数をF、光速をc、タイヤ101の内腔部102の半径をR、タイヤ101に組み付けられるホイール104のリム105の半径をr、円周率をπとする。この場合、タイヤ内腔共鳴音の周波数は、F=c/((R+r)×π)により算出される。吸音構造体1は、F=c/((R+r)×π)から算出されるタイヤ内腔共鳴音の周波数の±100Hzの範囲内の共鳴周波数のヘルムホルツ共鳴が発生するヘルムホルツ共鳴構造を備えることが好ましい。
【0058】
ヘルムホルツ共鳴構造は、開口から入射する音に共鳴するヘルムホルツ共鳴器の構成要素を備える構造である。吸音構造体1では、箱体10及びネック部20によりヘルムホルツ共鳴構造が構成される。すなわち、吸音構造体1では、非通気性を有する箱体10が取付面2まで延びており、箱体10の開口12に中空のネック部20が連通されているため、ネック部20の中空部分Sにおいて、タイヤ内腔共鳴音のヘルムホルツ共鳴を発生させることができる。そして、ネック部20の延在長さ、開口12の内径等により、ヘルムホルツ共鳴器として機能する吸音構造体1の共鳴周波数が変わる。例えば、ネック部20の延在長さが大きくなるほど、共鳴周波数が低くなる。また、開口12の内径が小さくなるほど、共鳴周波数が低くなる。また、隣り合う開口12間の距離、幅W1が広いほど、ヘルムホルツ共鳴器の胴部体積が大きくなり、共鳴数周波数が小さくなる。このため、吸音構造体1は、F=c/((R+r)×π)から算出されるタイヤ内腔共鳴音の周波数の±100Hzの範囲内の共鳴周波数のヘルムホルツ共鳴が発生するように、これらの条件が調整されたものとすることが好ましい。
【0059】
このように、タイヤ内腔共鳴音の周波数の±100Hzの範囲内の共鳴周波数のヘルムホルツ共鳴が発生するヘルムホルツ共鳴構造を備えることで、タイヤ内腔共鳴音を低減できる。
【0060】
図25は、ヘルムホルツ共鳴構造の共鳴周波数の算出方法を示す図である。同図において、破線で囲われた部分がそれぞれヘルムホルツ共鳴構造単位を示す。各開口12から入射した音に共鳴するヘルムホルツ共鳴構造の共鳴周波数は、この算出方法に従い、中空部11の各種寸法から調整することができる。
【0061】
図25中、Vはヘルムホルツの共鳴構造単位に中空部11を分割した場合の、中空部11の体積である。開口12が一定の周期をもって格子状に配置された場合、つまり、開口12間のピッチPが一定である場合、Vは、隣接する開口12の中心を起点とし、開口12同士の中間点を通る正方形又は長方形に、中空部11の厚さTを乗じた直方体又は立方体の体積として算出される。開口12同士の中間点を通る方形を描くときに複数の描画方法がある場合は、隣接する方形同士が重ならないようにかつその面積が最大となるよう描画する。また、開口12が一定の周期をもたず不特定のピッチ間隔でランダムに配置される場合、つまり、開口12間のピッチPが不特定である場合、Vは、隣接する開口12の中心を起点とし、開口12同士の中間点を頂点とする多角形に中空部11の厚さTを乗じた多角柱の体積として算出される。いずれの場合においても、中空部11内にネック部20が延在している場合は、ネック部20の体積を減じた体積をVとする。後述する第三実施形態等に示すように、中空部11に多孔質吸音体が配置されている場合は、Vは、多孔質吸音体を含む中空部11の体積である。αは、厚さ方向から見た時の開口12の面積である。δは開口端補正であり、例えば開口12の形状が円形である場合、δは開口12の直径の0.8倍として算出することができる。開口12の形状が円形でない場合は、δは開口12の面積と同じ面積を有する正円の直径の0.8倍として算出することができる。Lは、開口12の深さ、つまり、ネック部20(中空部分)の延在長さである。
【0062】
(第二実施形態)
図7を参照して、第二実施形態に係る吸音構造体1Aについて説明する。第二実施形態は、基本的に第一実施形態(
図2及び
図3参照)と同様であり、箱体が底部を有さずフランジ部を有する点のみ、第一実施形態と相違する。このため、以下では、第一実施形態と相違する事項のみ説明し、第一実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0063】
図7は、第二実施形態に係る吸音構造体の模式的な断面図である。
図7に示すように、本実施形態に係る吸音構造体1Aの箱体10Aは、天部13と、側部14と、フランジ部16と、を備える。なお、箱体10Aは、第一実施形態に係る吸音構造体1の底部15に対応する構成を備えない。
【0064】
フランジ部16は、取付面2の一部を形成する部位である。フランジ部16は、取付面2に沿って側部14の天部13とは反対側の周縁部から広がるように延在している。フランジ部16の幅W2は、例えば、1mm以上20mm以下程度となっている。幅W2は、側部14から離れる方向における寸法である。
【0065】
吸音構造体1Aでは、中空部11は、下方に開放されており、取付面2は、側部14の天部13とは反対側の端面と、フランジ部16と、により形成されている。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る吸音構造体1Aでは、第一実施形態に係る吸音構造体1の底部15に対応する構成を備えないが、箱体10Aが、天部13と、天部13の周縁部に接続されて天部13の延在方向と交差する方向に延びる側部14と、を備えるため、取付対象面であるタイヤ101の内腔部102に取り付けられた吸音構造体1Aをヘルムホルツ共鳴器として機能させることができる。つまり、側部14の天部13とは反対側の端面が取付面2を形成し、この取付面2が取付対象面であるタイヤ101の内腔部102に取り付けられることで、中空部11の開放される部分は開口12のみとなるため、吸音構造体1Aは、ヘルムホルツ共鳴器として機能する。
【0067】
また、この吸音構造体1Aでは、第一実施形態に係る吸音構造体1の底部15に対応する構成を備えないが、箱体10Aがフランジ部16を備えることで、取付対象面であるタイヤ101の内腔部102に対して吸音構造体1Aを容易に取り付けることができる。
【0068】
(第三実施形態)
図8を参照して、第三実施形態に係る吸音構造体1Bについて説明する。第三実施形態は、基本的に第一実施形態(
図2及び
図3参照)と同様であり、多孔質吸音体を更に備える点のみ、第一実施形態と相違する。このため、以下では、第一実施形態と相違する事項のみ説明し、第一実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0069】
図8は、第三実施形態に係る吸音構造体の模式的な断面図である。
図8に示すように、本実施形態に係る吸音構造体1Bは、箱体10と、複数のネック部20と、多孔質吸音体30と、を備える。
【0070】
多孔質吸音体30は、箱体10の中空部11に配置されている。ネック部20は、多孔質吸音体30に埋設された状態となっている。ネック部20の先端は、多孔質吸音体30内に位置している。
【0071】
多孔質吸音体30は、例えばプラスチック又はゴムなどの樹脂材料の発泡成形によって形成されている。プラスチック材料としては、例えば発泡ポリウレタンが挙げられる。硬質の発泡ポリウレタン及び軟質の発泡ポリウレタンのいずれを用いてもよい。発泡ポリウレタンの製法は、一般的なものを用いることができる。例えばポリオール及びポリイソシアナートを発泡剤、制泡剤、触媒等と混合し、当該混合物を型に充填して発泡及び硬化させることで、多孔質吸音体30を得ることができる。
【0072】
ゴム材料としては、例えば天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)など、ラテックスから得られるゴム材料が挙げられる。これらのゴム材料を発泡及び凝固させることで、多孔質吸音体30を得ることができる。
【0073】
多孔質吸音体30の気孔径は、例えば1μm以下、好ましくは500μm以下となっている。多孔質吸音体30の開気孔率(多孔質吸音体30の表面における多孔質吸音体30の面積に対する気孔の面積の総和の比率)は、例えば65%~99%程度、好ましくは80%~95%程度となっている。気孔径及び開気孔率は、例えばX線を用いたコンピュータ断層撮影(CTスキャン)装置を用いて計測できる。開孔径の算出には、観察画像に基づいて抽出した複数(例えば100個)の気孔の径の平均値を用いることができる。開気孔率の算出には、観察画像に基づいて抽出した全ての気孔の面積の総和を多孔質吸音体の面積で除した除算値を用いることができる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る吸音構造体1Bでは、多孔質吸音体30を備えるため、高周波域の音を低減することができる。
【0075】
(第四実施形態)
図9を参照して、第四実施形態に係る吸音構造体1Cについて説明する。第四実施形態は、基本的に第一実施形態(
図2及び
図3参照)と同様であり、開口が幅方向D3に複数形成されている点のみ、第一実施形態と相違する。このため、以下では、第一実施形態と相違する事項のみ説明し、第一実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0076】
図9は、第四実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。
図10は、
図9に示すX-X線における模式的な断面図である。
図9及び
図10に示すように、本実施形態に係る吸音構造体1Cは、箱体10Cと、複数のネック部20と、を備える。
【0077】
箱体10Cは、天部13Cと、側部14と、底部15と、を備える。天部13Cには、箱体10Cの中空部11に連通される複数の開口12が形成されている。複数の開口12は、長さ方向D2に複数列に並んでいる。つまり、長さ方向D2だけでなく幅方向D3にも、開口12が複数形成されている。本実施形態では、複数の開口12は、長さ方向D2に二列に並んでいる。複数のネック部20のそれぞれは、複数の開口12のそれぞれに接続されている。天部13Cは、複数の開口12の配置が異なる点を除き、第一実施形態の天部13と同様である。
【0078】
(第五実施形態)
図11を参照して、第五実施形態に係る吸音構造体1Dについて説明する。第五実施形態は、基本的に第一実施形態(
図2及び
図3参照)と同様であり、ネック部が固定部を有する点のみ、第一実施形態と相違する。このため、以下では、第一実施形態と相違する事項のみ説明し、第一実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0079】
図11は、第五実施形態に係る吸音構造体の模式的な断面図である。
図11に示すように、本実施形態に係る吸音構造体1Dは、箱体10と、複数のネック部20Dと、を備える。
【0080】
ネック部20Dは、少なくとも開口12から離間した位置において箱体10に固定される固定部21Dを有する。ネック部20Dは、固定部21Dを有する点を除き、第一実施形態のネック部20と同様である。ネック部20Dにおける固定部21Dの位置は、特に限定されるものではなく、ネック部20Dの先端であってもよく、ネック部20Dの延在方向における中央部であってもよく、ネック部20Dの延在方向における全域であってもよい。また、固定部21Dが固定される箱体10の位置は、特に限定されるものではなく、天部13であってもよく、側部14であってもよく、底部15であってもよい。本実施形態では、ネック部20Dの先端が、底部15に固定される固定部21Dとなっている。また、ネック部20Dの先端が厚さ方向D1に対して交差する方向に向けられていることで、ネック部20Dの中空部分Sが中空部11に露出する開放端となっている。箱体10に対する固定部21Dの固定は、例えば、一体成形、接着、溶着等により行うことができる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態に係る吸音構造体1Dでは、ネック部20Dが少なくとも開口12から離間した位置において箱体10に固定される固定部21Dを有するため、箱体10に対するネック部20Dの移動を抑制することができる。このため、例えば、吸音構造体1Dに遠心力、振動等の外力が作用した際に、箱体10に対してネック部20Dが過度に変位するのを抑制することができる。
【0082】
(第六実施形態)
図12及び
図13を参照して、第六実施形態に係る吸音構造体1Eについて説明する。第六実施形態は、基本的に第一実施形態(
図2及び
図3参照)と同様であり、開口が天部ではなく側部に形成されている点のみ、第一実施形態と相違する。このため、以下では、第一実施形態と相違する事項のみ説明し、第一実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0083】
図12は、第六実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。
図13は、
図12に示すXIII-XIII線における模式的な断面図である。
図12及び
図13に示すように、本実施形態に係る吸音構造体1Eは、箱体10Eと、複数のネック部20Eと、を備える。箱体10Eは、中空部11に連通される複数の開口12Eを有する。
【0084】
箱体10Eは、天部13Eと、側部14Eと、底部15と、を備える。天部13Eは、開口12が形成されていない点を除き、第一実施形態の天部13と同様である。側部14Eには、側部14Eを貫通して中空部11に連通される開口12Eが形成されている。開口12Eは、例えば、幅方向D3における両端に位置する側部14Eに形成されている。側部14Eは、開口12Eが形成されている点を除き、第一実施形態の側部14と同様である。開口12Eは、側部14Eに形成されている点を除き、第一実施形態の開口12と同様である。
【0085】
ネック部20Eは、開口12Eに連通されて側部14Eから中空部11側に延在している。ネック部20Eは、開口12Eに連通される点を除き、第一実施形態のネック部20と同様である。
【0086】
ネック部20Eの形状は、特に限定されるものではない。例えば、ネック部20Eは、開口12Eから幅方向D3又は長さ方向D2に直線状に延びていてもよい。また、ネック部20Eの少なくとも一部は、幅方向D3又は長さ方向D2に対して交差する部分を有していてもよい。幅方向D3又は長さ方向D2に対して交差するとは、ネック部20Eの延在方向が幅方向D3又は長さ方向D2と一致せず、幅方向D3又は長さ方向D2に対して0°より大きい角度をもって傾斜していることを意味する。例えば、ネック部20Eは、基端から先端にかけて、幅方向D3又は長さ方向D2に対して傾斜する方向に直線状に延びていてもよく、基端から先端にかけて、幅方向D3又は長さ方向D2に対して傾斜する方向に緩やかに湾曲しながら延びていてもよく、基端から先端にかけて、螺旋状に延びていてもよい。
【0087】
以上説明したように、本実施形態に係る吸音構造体1Eでは、開口12Eが側部14Eに形成されていることで、厚さ方向D1における吸音構造体1Eの寸法が小さくても、ネック部20Eを容易に長くすることができる。このため、容易に低周波域の共鳴周波数のヘルツホルム共鳴を発生させることができる。
【0088】
(第七実施形態)
図14を参照して、第七実施形態に係る吸音構造体1Fについて説明する。第七実施形態は、基本的に第六実施形態(
図12及び
図13参照)と同様であり、ネック部が固定部を有する点のみ、第六実施形態と相違する。このため、以下では、第六実施形態と相違する事項のみ説明し、第六実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0089】
図14は、第七実施形態に係る吸音構造体の模式的な断面図である。
図14に示すように、本実施形態に係る吸音構造体1Fは、箱体10Eと、複数のネック部20Fと、を備える。
【0090】
ネック部20Fは、少なくとも開口12Eから離間した位置において箱体10Eに固定される固定部21Fを有する。ネック部20Fは、固定部21Fを有する点を除き、第六実施形態のネック部20Eと同様である。ネック部20Fにおける固定部21Fの位置は、特に限定されるものではなく、ネック部20Fの先端であってもよく、ネック部20Fの延在方向における中央部であってもよく、ネック部20Fの延在方向における全域であってもよい。また、固定部21Fが固定される箱体10Eの位置は、特に限定されるものではなく、天部13Eであってもよく、側部14Eであってもよく、底部15であってもよい。本実施形態では、ネック部20Fの延在方向における全域が、底部15に固定される固定部21Fとなっている。また、ネック部20Fが底部15に沿って幅方向D3又は長さ方向D2に沿って延びて、ネック部20Fの先端が幅方向D3又は長さ方向D2に向けられていることで、ネック部20Fの中空部分Sが中空部11に露出する開放端となっている。箱体10Eに対する固定部21Fの固定は、例えば、一体成形、接着、溶着等により行うことができる。
【0091】
以上説明したように、本実施形態に係る吸音構造体1Fでは、ネック部20Fが少なくとも開口12Eから離間した位置において箱体10Eに固定される固定部21Fを有するため、箱体10Eに対するネック部20Fの移動を抑制することができる。このため、例えば、吸音構造体1Fに遠心力、振動等の外力が作用した際に、箱体10Eに対してネック部20Fが過度に変位するのを抑制することができる。
【0092】
(第八実施形態)
図15を参照して、第八実施形態に係る吸音構造体1Gについて説明する。第八実施形態は、基本的に第一実施形態(
図2及び
図3参照)と同様であり、箱体の中空部が区分けされている点のみ、第一実施形態と相違する。このため、以下では、第一実施形態と相違する事項のみ説明し、第一実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0093】
図15は、第八実施形態に係る吸音構造体の模式的な断面図である。
図15に示すように、本実施形態に係る吸音構造体1Gは、箱体10Gと、複数のネック部20と、を備える。箱体10Gは、天部13と、側部14と、底部15と、複数の区画壁17と、を備える。
【0094】
複数の区画壁17のそれぞれは、天部13、側部14、及び底部15に接続されて中空部11を二つの小空間11aに区分けする部位である。複数の区画壁17のそれぞれは、例えば、中空部11を長さ方向D2に区分けする。
図15に示すように4つの区画壁17が設けられている場合は、中空部11は、4つの区画壁17により5つの小空間11aに区分けされる。区画壁17は、区分けした二つの小空間11aが互い連通されないように、天部13、側部14、及び底部15に接続されている。このため、区画壁17により区分けされた二つの小空間11aは、互いに独立した空間となっている。また、複数の区画壁17のそれぞれは、区画した小空間11aのそれぞれに少なくとも一つの開口12が連通されるように、中空部11を区分けしている。この場合、複数の区画壁17のそれぞれは、区画した小空間11aのそれぞれに一つの開口12が連通されるように、中空部11を区分けしていてもよい。区画壁17は、例えば、厚さ方向D1及び幅方向D3に沿って延びる平板状に形成されている。
【0095】
以上説明したように、この吸音構造体1Gでは、箱体10Gの中空部11が区画壁17により二つの小空間11aに区分けされて、二つの小空間11aのそれぞれに少なくとも一つの開口12が連通されているため、二つの小空間11aのそれぞれをヘルムホルツ共鳴器として機能させつつ、吸音構造体1Gの剛性を高めることができる。
【0096】
また、二つの小空間11aのそれぞれに一つの開口12が連通されていることで、吸音構造体1Gをヘルムホルツ共鳴器単位で区分けすることができる。
【0097】
(第九実施形態)
図16及び
図17を参照して、第九実施形態に係る吸音構造体1Hについて説明する。第九実施形態は、基本的に第八実施形態(
図15参照)と同様であり、区画壁、天部、及び側部の構成が異なる点のみ、第八実施形態と相違する。このため、以下では、第八実施形態と相違する事項のみ説明し、第八実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0098】
図16は、第九実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。
図17は、
図16に示すXVII-XVII線における模式的な断面図である。
図16及び
図17に示すように、本実施形態に係る吸音構造体1Hは、箱体10Hと、複数のネック部20と、を備える。箱体10Gは、天部13Hと、側部14Hと、底部15と、複数の区画壁17Hと、を備える。
【0099】
複数の区画壁17Hのそれぞれは、第一区画壁部17aと、第二区画壁部17bと、を有する。第一区画壁部17aは、複数の区画壁17Hのそれぞれが区分けする二つの小空間11aのうちの一方側に位置する部位であり、第二区画壁部17bは、複数の区画壁17Hのそれぞれが区分けする二つの小空間11aのうちの他方側に位置する部位である。
【0100】
天部13H及び側部14Hは、第一区画壁部17a及び第二区画壁部17bにより分割されている。つまり、天部13Hは、複数の区画壁17Hのそれぞれを構成する第一区画壁部17a及び第二区画壁部17bにより、複数の小天部13aに分割されている。また、側部14Hは、複数の区画壁17Hのそれぞれを構成する第一区画壁部17a及び第二区画壁部17bにより、複数の小側部14aに分割されている。なお、底部15は、第一区画壁部17a及び第二区画壁部17bにより分割されていない。
【0101】
第一区画壁部17aと第二区画壁部17bとは、天部13Hに向かうに従い互いの離間距離が大きくなるように、V字状に配置されている。そして、小空間11aを形成する底部15の部分を底部15aとした場合、小天部13aの長さ方向D2における長さは、底部15aの長さ方向D2における長さよりも短くなっている。第一区画壁部17aと第二区画壁部17bとは、互いに分離されたものであってもよく、天部13Hとは反対側の端部において互いに接続されたものであってもよい。つまり、第一区画壁部17aと第二区画壁部17bとは、底部15を介して間接的に接続されたものであってもよく、直接的に接続されたものであってもよい。
【0102】
以上説明したように、この吸音構造体1Hでは、天部13H及び側部14Hが、第一区画壁部17a及び第二区画壁部17bにより分割されていることで、吸音構造体1Hを湾曲又は屈曲させやすくなる。これにより、取付対象面であるタイヤ101の内腔部102に対する追従性を更に高めることができる。
【0103】
また、第一区画壁部17aと第二区画壁部17bとが天部13Hに向かうに従い互いの離間距離が大きくなるように配置されていることで、吸音構造体1Hを天部13H側が内側となるように湾曲又は屈曲させやすくなる。
【0104】
また、小天部13aの長さ方向D2における長さが底部15aの長さ方向D2における長さよりも短くなっていることで、吸音構造体1Hを天部13H側が内側となるように湾曲又は屈曲させやすくなる。
【0105】
また、第一区画壁部17aと第二区画壁部17bとが天部13Hとは反対側の端部において互いに接続されていることで、吸音構造体1Hの湾曲又は屈曲を可能としつつ、吸音構造体1Hが大型化するのを抑制することができる。
【0106】
(第十実施形態)
図18~
図20を参照して、第十実施形態に係る吸音構造体1Iについて説明する。第十実施形態は、基本的に第一実施形態(
図2及び
図3参照)と同様であり、開口の形状が異なる点のみ、第一実施形態と相違する。このため、以下では、第一実施形態と相違する事項のみ説明し、第一実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0107】
図18は、第十実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。
図19は、
図18に示すXIX-XIX線における模式的な断面図である。
図20は、
図18に示すXX-XX線における模式的な断面図である。
図18~
図20に示すように、本実施形態に係る吸音構造体1Iは、箱体10Iと、複数のネック部20Iと、を備える。
【0108】
箱体10Iは、天部13Iと、側部14と、底部15と、を備える。天部13Iには、箱体10Iの中空部11に連通される複数の開口12Iが形成されている。天部13Iは、開口12の代わりに開口12Iが形成されている点を除き、第一実施形態の天部13と同様である。開口12Iは、線状に延びるスリットであり、天部13Iを貫通している。開口12Iであるスリットは、天部13Iの幅方向D3における全域にわたって、幅方向D3に直線状に延びている。
【0109】
ネック部20Iは、開口12Iであるスリットに連通されて天部13Iから中空部11側に延在している。ネック部20Iは、開口12Iであるスリットに連通される点を除き、第一実施形態のネック部20と同様である。
【0110】
ネック部20Iの形状は、特に限定されるものではない。例えば、ネック部20Iは、開口12Iから厚さ方向D1に直線状に延びていてもよい。また、ネック部20Iは、屈曲又は湾曲して延びていてもよい。また、ネック部20Iの少なくとも一部は、厚さ方向D1に対して交差する部分を有していてもよい。例えば、ネック部20Iは、
図19及び
図20に示すように、開口12Iから厚さ方向D1に直線状に延びた後、L字状又はJ字状に屈曲又は湾曲されて、長さ方向D2に直線状に延びていてもよい。
【0111】
このように構成される吸音構造体1Iは、例えば、射出成型、押出成型、3Dプリンタによる造形、塩凝集法等により製造することができる。例えば、開口12Iであるスリットが天部13Iの幅方向D3における全域にわたって幅方向D3に直線状に延びているため、幅方向D3における両端に位置する側部14を除いた吸音構造体1Iを押出成形で作製することができる。その後、側部14を除いた吸音構造体1Iに、別に作製した側部14を接合することで、吸音構造体1Iを製造することができる。また、幅方向D3における両端に位置する側部14を除いた吸音構造体1Iと同じ断面を有する構造体を幅方向D3に連続的に押出成形し、押出成型した構造体を幅方向D3に所定の長さ寸法でカットし、カットした構造体に、別に作製した側部14を接合することでも、吸音構造体1Iを製造することができる。
【0112】
以上説明したように、この吸音構造体1Iでは、開口12Iが線状に延びるスリットであることで、吸音構造体1Iの製造を容易に行うことができる。
【0113】
(第十一実施形態)
図21及び
図22を参照して、第十一実施形態に係る吸音構造体1Jについて説明する。第十一実施形態は、基本的に第十実施形態(
図18~
図20参照)と同様であり、開口であるスリットの延在方向が異なる点のみ、第十実施形態と相違する。このため、以下では、第十実施形態と相違する事項のみ説明し、第十実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0114】
図21は、第十一実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。
図22は、
図21に示すXXII-XXII線における模式的な断面図である。
図21及び
図22に示すように、本実施形態に係る吸音構造体1Jは、箱体10Jと、一つのネック部20Jと、を備える。
【0115】
箱体10Jは、天部13Jと、側部14と、底部15と、を備える。天部13Jには、箱体10Iの中空部11に連通される一つの開口12Jが形成されている。天部13Jは、開口12Iの代わりに開口12Jが形成されている点を除き、第十実施形態の天部13Iと同様である。開口12Jは、線状に延びるスリットであり、天部13Jを貫通している。開口12Jであるスリットは、天部13Iの長さ方向D2における全域にわたって、長さ方向D2に直線状に延びている。
【0116】
ネック部20Jは、開口12Jであるスリットに連通されて天部13Jから中空部11側に延在している。ネック部20Jは、開口12Jであるスリットに連通される点を除き、第十実施形態のネック部20Iと同様である。
【0117】
ネック部20Jの形状は、特に限定されるものではない。例えば、ネック部20Jは、開口12Jから厚さ方向D1に直線状に延びていてもよい。また、ネック部20Jは、屈曲又は湾曲して延びていてもよい。また、ネック部20Jの少なくとも一部は、厚さ方向D1に対して交差する部分を有していてもよい。例えば、ネック部20Jは、
図22に示すように、開口12Jから厚さ方向D1に直線状に延びた後、L字状又はJ字状に屈曲又は湾曲されて、幅方向D3に直線状に延びていてもよい。
【0118】
このように構成される吸音構造体1Jは、例えば、射出成型、押出成型、3Dプリンタによる造形、塩凝集法等により製造することができる。例えば、開口12Jであるスリットが天部13Iの長さ方向D2における全域にわたって長さ方向D2に直線状に延びているため、長さ方向D2における両端に位置する側部14を除いた吸音構造体1Jを押出成型で作製することができる。その後、側部14を除いた吸音構造体1Jに、別に作製した側部14を接合することで、吸音構造体1Jを製造することができる。また、長さ方向D2における両端に位置する側部14を除いた吸音構造体1Jと同じ断面を有する構造体を長さ方向D2に連続的に押出成形し、押出成型した構造体を長さ方向D2に所定の長さ寸法でカットし、カットした構造体に、別に作製した側部14を接合することでも、吸音構造体1Jを製造することができる。
【0119】
(第十二実施形態)
図23を参照して、第十二実施形態に係る吸音構造体1Kについて説明する。第十二実施形態は、基本的に第九実施形態(
図16及び
図17参照)と同様であり、開口の形状が異なる点のみ、第九実施形態と相違する。このため、以下では、第九実施形態と相違する事項のみ説明し、第九実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0120】
図23は、第十二実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。
図23に示すように、本実施形態に係る吸音構造体1Kは、箱体10Kと、第十実施形態と同様の複数のネック部20I(
図19及び
図20参照)と、を備える。箱体10Kは、天部13Kと、側部14Hと、底部15と、複数の区画壁17Hと、を備える。複数の区画壁17Hのそれぞれは、第一区画壁部17aと、第二区画壁部17bと、を有する。天部13Kは、複数の区画壁17Hのそれぞれを構成する第一区画壁部17a及び第二区画壁部17bにより、複数の小天部13Kaに分割されている。
【0121】
天部13Kには、第十実施形態と同様の複数の開口12Iが形成されている。天部13Kは、開口12の代わりに開口12Iが形成されている点を除き、第九実施形態の天部13Hと同様である。開口12Iは、第十実施形態と同様に、線状に延びるスリットであり、天部13Kの幅方向D3における全域にわたって、幅方向D3に直線状に延びている。ネック部20Iは、開口12Iであるスリットに連通されて天部13Kから中空部11側に延在している。
【0122】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0123】
例えば、複数の開口及びネック部を備える場合、少なくとも二つのネック部で発生するヘルムホルツ共鳴の周波数が互いに異なるものとしてもよい。少なくとも二つのネック部で発生するヘルムホルツ共鳴の周波数が互いに異なることで、広い周波数帯域においてタイヤ内腔共鳴音を低減できる。
【0124】
また、例えば、吸音構造体は、平板状に形成されていてもよく、湾曲状に形成されていてもよい。例えば、
図24に示す吸音構造体1Lのように、吸音構造体は、タイヤの内腔部に沿って円弧状に湾曲した形状に形成されていてもよい。
図24は、変形例の吸音構造体を示す模式的な側面図である。このように、吸音構造体が円弧状に湾曲していることで、タイヤの内腔部への取付容易性が向上する。
【0125】
また、例えば、タイヤに複数の吸音構造体を取り付ける場合は、互いに異なる共鳴周波数のヘルムホルツ共鳴を発生させる2以上の吸音構造体をタイヤに取り付けてもよい。
【0126】
また、例えば、ネック部を箱体の外側に延長するように、箱体に形成された開口に連通されて箱体の外側(中空部とは反対側)に延びる中空の外側ネック部を更に備えていてもよい。この場合、ネック部及び外側ネック部の合計長さにより、吸音構造体の共鳴周波数を調整することができる。
【0127】
また、例えば、上記実施形態では、吸音構造体は、タイヤ内腔共鳴音を低減するためにタイヤの内腔部に取り付けられるタイヤ用の吸音構造体であるものとして説明したが、吸音構造体の用途は特に限定されるものではない。
【0128】
本開示の要旨は、以下の[1]~[17]のとおりである。
【0129】
[1] 開口を有する箱体と、前記開口と連通されて前記箱体の中空部側に延在する中空のネック部と、を備え、前記箱体は、40以上100以下のショアA硬度及び10以上70以下のショアD硬度の少なくとも一方を有する、吸音構造体。
[2] 前記箱体は、エラストマーを有する、[1]に記載の吸音構造体。
[3] 前記箱体は、天部と、前記天部の周縁部に接続されて前記天部の延在方向と交差する方向に延びる側部と、を有する、[1]又は[2]に記載の吸音構造体。
[4] 前記箱体は、前記側部に接続されて前記天部と対向される底部を更に有する、[3]に記載の吸音構造体。
[5] 前記開口は、前記天部に形成されている、[3]又は[4]に記載の吸音構造体。
[6] 前記開口は、前記側部に形成されている、[3]又は[4]に記載の吸音構造体。
[7] 前記箱体は、複数の前記開口と、前記天部及び前記側部に接続されて前記中空部を二つの小空間に区分けする区画壁と、を有し、前記区画壁は、前記二つの小空間のそれぞれに少なくとも一つの前記開口が連通されるように、前記中空部を区分けする、[3]~[6]の何れか一つに記載の吸音構造体。
[8] 前記区画壁は、前記二つの小空間のそれぞれに一つの前記開口が連通されるように、前記中空部を区分けする、[7]に記載の吸音構造体。
[9] 前記区画壁は、前記二つの小空間のうちの一方側に位置する第一区画壁部と、前記二つの小空間のうちの他方側に位置する第二区画壁部と、を有し、前記天部及び前記側部は、前記第一区画壁部及び前記第二区画壁部により分割されている、[7]又は[8]に記載の吸音構造体。
[10] 前記第一区画壁部と前記第二区画壁部とは、前記天部に向かうに従い互いの離間距離が大きくなるように配置されている、[9]に記載の吸音構造体。
[11] 前記第一区画壁部と前記第二区画壁部とは、前記天部とは反対側の端部において互いに接続されている、[9]又は[10]に記載の吸音構造体。
[12] 前記ネック部は、少なくとも前記開口から離間した位置において前記箱体に固定される固定部を有する、[1]~[11]の何れか一つに記載の吸音構造体。
[13] 前記開口は、円形状の穴である、[1]~[12]の何れか一つに記載の吸音構造体。
[14] 前記開口は、線状に延びるスリットである、[1]~[12]の何れか一つに記載の吸音構造体。
[15] 前記箱体の前記中空部に収容された多孔質吸音体を更に備える、[1]~[14]の何れか一つに記載の吸音構造体。
[16]内腔部に取り付けられた、[1]~[15]の何れか一つに記載の吸音構造体を備える、タイヤ。
[17] タイヤ内腔共鳴音の周波数をF、光速をc、前記タイヤの内腔部の半径をR、前記タイヤに組み付けられるホイールのリムの半径をr、円周率をπとした場合、前記吸音構造体は、F=c/((R+r)×π)から算出されるタイヤ内腔共鳴音の周波数の±100Hzの範囲内の共鳴周波数のヘルムホルツ共鳴が発生するヘルムホルツ共鳴構造を備える、[16]に記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0130】
1…吸音構造体、1A…吸音構造体、1B…吸音構造体、1C…吸音構造体、1D…吸音構造体、1E…吸音構造体、1F…吸音構造体、1G…吸音構造体、1H…吸音構造体、1I…吸音構造体、1J…吸音構造体、1K…吸音構造体、1L…吸音構造体、2…取付面、3…天面、4…接着シート、10…箱体、10A…箱体、10C…箱体、10E…箱体、10G…箱体、10H…箱体、10I…箱体、10J…箱体、10K…箱体、11…中空部、11a…小空間、12…開口、12E…開口、12I…開口、12J…開口、13…天部、13a…小天部、13E…天部、13H…天部、13I…天部、13J…天部、13K…天部、13Ka…小天部、14…側部、14a…小側部、14E…側部、14H…側部、15…底部、15a…底部、16…フランジ部、17…区画壁、17a…第一区画壁部、17b…第二区画壁部、17H…区画壁、20…ネック部、20D…ネック部、20E…ネック部、20F…ネック部、20I…ネック部、20J…ネック部、21D…固定部、21F…固定部、30…多孔質吸音体、101…タイヤ、102…内腔部、103…トレッド、104…ホイール、105…リム、D1…厚さ方向、D2…長さ方向、D3…幅方向、S…中空部分。