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特開2024-165704吸音構造体、吸音装置、及び吸音方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165704
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】吸音構造体、吸音装置、及び吸音方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/172 20060101AFI20241121BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G10K11/172
G10K11/16 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082111
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】海野 光朗
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA06
5D061CC04
5D061CC20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低減可能周波数の広帯域化を図ることができる吸音構造体、吸音装置及び吸音方法を提供する。
【解決手段】吸音装置10は、吸音構造体1と、吸音構造体1の箱体3を伸縮するアクチュエータ20と、低減対象音の周波数に関する情報を取得し、取得した情報に基づいてアクチュエータ20を駆動制御する制御部30と、を備える。吸音構造体1は、オーセチック構造を有する箱体3を備える。箱体3は、複数の単位構造体4を並べて構成しており、複数の単位構造体4の少なくとも一つは、開口2を有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する箱体を備え、
前記箱体は、オーセチック構造を有する、
吸音構造体。
【請求項2】
前記箱体は、複数の単位構造体が並んで構成されており、
前記複数の単位構造体の少なくとも一つは、前記開口を有する、
請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項3】
前記複数の単位構造体のそれぞれは、前記開口を有する、
請求項2に記載の吸音構造体。
【請求項4】
前記箱体は、弾性材料で構成されている、
請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項5】
前記弾性材料は、エラストマーを有する、
請求項4に記載の吸音構造体。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の吸音構造体と、
前記吸音構造体の前記箱体を伸縮するアクチュエータと、を備える、
吸音装置。
【請求項7】
低減対象音の周波数に関する情報を取得し、取得した前記情報に基づいて前記アクチュエータを駆動制御する制御部を更に備える、
請求項6に記載の吸音装置。
【請求項8】
請求項1~5の何れか一項に記載の吸音構造体を用いて低減対象音を低減させる吸音方法であって、
前記低減対象音の周波数に関する情報を取得する音情報取得ステップと、
前記音情報取得ステップで取得した前記情報に基づいて前記吸音構造体の前記箱体を伸縮させる伸縮ステップと、を備える、
吸音方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸音構造体、吸音装置、及び吸音方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヘルムホルツ共鳴によって空洞内の振動を低減する吸音構造体が記載されている。この吸音構造体は、タイヤの内腔部に取り付けられて車両の走行時に生じるタイヤ内腔共鳴音を低減するものである。この吸音構造体は、副室を形成するとともに開口が形成された副室形成部を備えることで、200Hz~300Hzの共鳴音を低減するものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-067767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された吸音構造体では、吸音特性が固定されているため、吸音構造体が低減可能な周波数である低減可能周波数の広帯域化には限界がある。
【0005】
また、吸音構造体で低減させたい音の周波数は、固定である場合だけでなく、変化する場合もある。例えば、モータから発生される音の周波数は、モータの回転数に応じて、低周波域から高周波域までの広い周波数帯域において変化する。しかしながら、特許文献1に記載された吸音構造体では、吸音特性が固定されているため、低減可能周波数の帯域が狭い。
【0006】
本開示は、低減可能周波数の広帯域化を図ることができる吸音構造体、吸音装置、及び吸音方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る吸音構造体は、開口を有する箱体を備え、箱体は、オーセチック構造を有する。
【0008】
この吸音構造体では、開口を有する箱体を備えるため、箱体をヘルムホルツ共鳴器として機能させることができる。そして、箱体がオーセチック構造を有するため、箱体を伸縮させることで、箱体の容積を変化させることができる。例えば、箱体を伸ばすと、箱体は、箱体を伸ばした方向と直交する方向にも延びて、箱体の容積が大きくなる。ここで、ヘルムホルツ共鳴器として機能する箱体は、箱体の容積に応じて、発生するヘルムホルツ共鳴の共鳴周波数が変わる。例えば、箱体の容積が大きくなるほど、低い共鳴周波数のヘルムホルツ共鳴を発生させることができる。これにより、低減可能周波数の広帯域化を図ることができる。
【0009】
上述した吸音構造体において、箱体は、複数の単位構造体が並んで構成されており、複数の単位構造体の少なくとも一つは、開口を有してもよい。この吸音構造体では、箱体が、複数の単位構造体が並んで構成されており、複数の単位構造体の少なくとも一つが開口を有することで、当該開口を有する単位構造体を、ヘルムホルツ共鳴器として機能させることができる。
【0010】
上述した吸音構造体において、複数の単位構造体のそれぞれは、開口を有してもよい。この吸音構造体では、複数の単位構造体のそれぞれが開口を有することで、全ての単位構造体をヘルムホルツ共鳴器として機能させることができる。
【0011】
上述した吸音構造体において、箱体は、弾性材料で構成されていてもよい。この吸音構造体では、箱体が弾性材料で構成されていることで、箱体を容易に伸縮させることができる。
【0012】
上述した吸音構造体において、弾性材料は、エラストマーを有してもよい。この吸音構造体では、箱体を構成する弾性材料がエラストマーを有することで、箱体を容易に伸縮させることができる。
【0013】
本開示に係る吸音装置は、上述した吸音構造体と、吸音構造体の箱体を伸縮するアクチュエータと、を備える。この吸音装置では、上述した吸音構造体の箱体をアクチュエータにより伸縮するため、箱体の容積を変化させて、低減可能周波数の広帯域化を図ることができる。
【0014】
上述した吸音装置において、低減対象音の周波数に関する情報を取得し、取得した情報に基づいてアクチュエータを駆動制御する制御部を更に備えてもよい。この吸音装置では、低減対象音の周波数に関する情報を取得し、取得した情報に基づいてアクチュエータを駆動制御する制御部を備えることで、低減対象音の周波数に応じて吸音構造体の箱体を伸縮させることができる。これにより、低減対象音を適切に低減することができる。
【0015】
本開示に係る吸音方法は、上述した吸音構造体を用いて低減対象音を低減させる吸音方法であって、低減対象音の周波数に関する情報を取得する音情報取得ステップと、音情報取得ステップで取得した情報に基づいて吸音構造体の箱体を伸縮させる伸縮ステップと、を備える。この吸音方法では、上述した吸音構造体の箱体を伸縮させるため、箱体の容積を変化させて、低減可能周波数の広帯域化を図ることができる。しかも、低減対象音の周波数に関する情報を取得し、この取得した情報に基づいて吸音構造体の箱体を伸縮させるため、低減対象音を適切に低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、低減可能周波数の広帯域化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。
図3図3は、図1に示す状態の単位構造体の模式的な断面図である。
図4図4は、図2に示す状態の単位構造体の模式的な断面図である。
図5図5は、図1に示す吸音構造体の取り付け例を示す模式的な平面図である。
図6図6は、図1に示す吸音構造体の端面を説明するための模式的な側面図である。
図7図7は、実施形態に係る吸音装置の模式的なブロック図である。
図8図8は、実施形態に係る吸音方法のフローチャートである。
図9図9は、変形例の吸音構造体の模式的な断面図である。
図10図10は、変形例の吸音構造体の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る吸音構造体、吸音装置、及び吸音方法の実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
[吸音構造体]
図1及び図2は、実施形態に係る吸音構造体の模式的な斜視図である。図1及び図2に示すように、本実施形態に係る吸音構造体1は、一又は複数の開口2を有する箱体3を備えることで、ヘルムホルツ共鳴構造を備えた吸音構造体となっている。吸音構造体1がヘルムホルツ共鳴構造を備えるとは、吸音構造体1単体でヘルムホルツ共鳴を発生させること、又は、吸音構造体1が取付対象面に取り付けられることでヘルムホルツ共鳴を発生させることをいう。取付対象面は、吸音構造体1が取り付けられる面である。
【0020】
箱体3は、オーセチック(Auxetic)構造を有している。オーセチック構造とは、負のポアソン比を持つ構造をいう。ここで、任意の方向を第一方向D1とし、第一方向D1と垂直な任意の方向を第二方向D2とし、第一方向D1及び第二方向D2と垂直な方向を第三方向D3とする。箱体3は、第一方向D1に伸びると第二方向D2にも伸びるように構成されていることで、負のポアソン比を持つように構成されている。このため、箱体3は、第一方向D1に伸びると、第二方向D2にも伸びることで、その容積が大きくなる。つまり、箱体3は、第一方向D1に伸縮することで、その容積が変化するように構成されている。箱体3のオーセチック構造は、箱体3の第三方向D3と垂直な断面、つまり、箱体3の第一方向D1及び第二方向D2に沿う断面により得られる。つまり、箱体3は、オーセチック構造の断面を有している。なお、図1は、箱体3が第一方向D1に伸びていない状態を示しており、図は、箱体3が第一方向D1に伸びた状態を示している。
【0021】
箱体3は、複数の単位構造体4が並んで構成されている。複数の単位構造体4は、互いに同じ断面を有していてもよく、互いに異なる断面を有していてもよく、互いに同じ断面を有する単位構造体4と互いに異なる断面を有する単位構造体4とが混在していてもよい。本実施形態では、複数の単位構造体4は、互いに同じ断面を有している。このため、以下では、複数の単位構造体4を、単位構造体4として纏めて説明する。
【0022】
図3は、図1に示す状態の単位構造体の模式的な断面図である。図4は、図2に示す状態の単位構造体の模式的な断面図である。図1図4に示すように、単位構造体4は、第一方向D1に引っ張られると、第二方向D2にも伸びて、その容積が大きくなるように構成されている。単位構造体4は、第三方向D3に沿って延びており、第三方向D3の全長にわたって同形状となっている。単位構造体4は、板状の底部41と、底部41と第二方向D2において対向する板状の天部42と、底部41及び天部42の第一方向D1における一方側の先端に接続された板状の第一側部43と、底部41及び天部42の第一方向D1における他方側の先端に接続された板状の第二側部44と、底部、天部42、第一側部43、及び第二側部44に囲まれた中空部45と、を備える。
【0023】
底部41及び天部42は、第二方向D2において互いに離間されている。底部41及び天部42のそれぞれは、第一方向D1に延びている。
【0024】
第一側部43は、底部41側に位置して底部41に接続される底側第一側部43aと、天部42側に位置して天部42に接続される天側第一側部43bと、を備える。
【0025】
底側第一側部43aは、底部41の第一方向D1における一方側の先端から天部42側に向って、第二方向D2に対して単位構造体4の内側に傾斜する方向に延びている。天側第一側部43bは、天部42の第一方向D1における一方側の先端から底部41に向って、第二方向D2に対して単位構造体4の内側に傾斜する方向に延びている。底側第一側部43aの天部42側の先端と天側第一側部43bの底部41側の先端とは、互いに接続されている。つまり、第一側部43は、底側第一側部43aと天側第一側部43bとにより、中空部45側(箱体3の内側)に屈曲した形状となっている。底側第一側部43aと天側第一側部43bとの接続線43cは、底部41と天部42との間において第三方向D3に延びている。
【0026】
第二側部44は、第三方向D3における単位構造体4の全長にわたって同形状となっている。第二側部44は、底部41側に位置して底部41に接続される底側第二側部44aと、天部42側に位置して天部42に接続される天側第二側部44bと、を備える。
【0027】
底側第二側部44aは、底部41の第一方向D1における他方側の先端から天部42側に向って、第二方向D2に対して単位構造体4の内側に傾斜する方向に延びている。天側第二側部44bは、天部42の第一方向D1における他方側の先端から底部41に向って、第二方向D2に対して単位構造体4の内側に傾斜する方向に延びている。底側第二側部44aの天部42側の先端と天側第二側部44bの底部41側の先端とは、互いに接続されている。つまり、第二側部44は、底側第二側部44aと天側第二側部44bとにより、中空部45側(箱体3の内側)に屈曲した形状となっている。底側第二側部44aと天側第二側部44bとの接続線44cは、底部41と天部42との間において第三方向D3に延びている。
【0028】
このため、接続線43c又は接続線43c付近において第一側部43を第一方向D1における第二側部44とは反対側に引っ張ると、底側第一側部43a及び天側第一側部43bの第二方向D2に対する傾斜角度が小さくなって、第一側部43の第二方向D2における長さが長くなる。同様に、接続線44c又は接続線44c付近において第二側部44を第一方向D1における第一側部43とは反対側に引っ張ると、底側第二側部44a及び天側第二側部44bの第二方向D2に対する傾斜角度が小さくなって、第二側部44の第二方向D2における長さが長くなる。これにより、少なくとも第一側部43及び第二側部44が底部41及び天部42に対して垂直になるまでは、底部41と天部42との間隔S1が広がって、単位構造体4の容積V1が大きくなる。
【0029】
一又は複数の開口2は、複数の単位構造体4のそれぞれの天部42に形成されている。つまり、複数の単位構造体4のそれぞれの天部42に、一又は複数の開口2が形成されている。開口2は、天部42を貫通して、中空部45に連通されている。このため、複数の単位構造体4のそれぞれが、ヘルムホルツ共鳴器として機能する。そして、単位構造体4は、その容積V1に応じて発生するヘルムホルツ共鳴の共鳴周波数が変わり、例えば、その容積V1が大きくなるほど、低い共鳴周波数のヘルムホルツ共鳴を発生させることができる。
【0030】
このように構成される箱体3は、弾性材料で構成されていることが好ましい。箱体3を構成する弾性材料は、例えば、エラストマー、プラスチック、金属などを有することが好ましい。エラストマーとしては、例えば、スチレンブロック共重合体(SBC)、ポリオレフィン系(TPO)、ポリウレタン系(TPU)、ポリエステル系(TPC)、ポリアミド系(TPA)、動的架橋型(TPV)、軟質ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル系等の熱可塑性エラストマー、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、ウレタンゴム等のゴムなどが挙げられる。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE:例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE))等のポリオレフィン、ポリウレタン(PU)、アクリル樹脂などが挙げられる。金属としては、例えば、変形が容易な薄厚(1mm以下)の金属箔などが好ましく、例えば、アルミ、ステンレス、銅などを用いることができる。
【0031】
単位構造体4の第三方向D3における両端は、開放されていてもよく、閉鎖されていてもよい。
【0032】
吸音構造体1がヘルムホルツ共鳴器として機能するためには、単位構造体4の中空部45が開口2を除いて閉ざされている必要がある。このため、単位構造体4の第三方向D3における両端が開放されている場合は、例えば、図5に示すように、単位構造体4の第三方向D3における両端が取付対象面Tに対して摺動可能且つ気密に接触されるように、吸音構造体1を取付対象面Tに取り付けてもよい。この場合、取付対象面Tをグリスアップすることで、取付対象面Tに対する単位構造体4の摺動及び気密を良好に行うことができる。図5は、図1に示す吸音構造体の取り付け例を示す模式的な平面図である。
【0033】
単位構造体4の第三方向D3における両端が閉ざされている場合は、例えば、図6に示すように、単位構造体4の第三方向D3における両端に、伸縮性を有する封止膜5が取り付けられていてもよい。封止膜5は、単位構造体4の第三方向D3における両端を閉じるものである。封止膜5は、箱体3がオーセチック構造として機能すれば、如何なるものであってもよい。封止膜5は、例えば、単位構造体4の変形を阻害しない程度の伸縮性を有することが好ましい。
【0034】
そして、箱体3がオーセチック構造を有するように、複数の単位構造体4が密に並んでいる。つまり、箱体3が第一方向D1に伸びると第二方向D2にも伸びるように、複数の単位構造体4が密に並んでいる。例えば、複数の単位構造体4が交互に第二方向D2にオフセットした状態で第一方向D1に並んでおり、この複数の単位構造体4のうち、任意の単位構造体4を第一単位構造体4aとし、第一単位構造体4aに隣接する単位構造体4を第二単位構造体4b、第二単位構造体4bに隣接する単位構造体4を第三単位構造体4cとし、第三単位構造体4cに隣接する単位構造体4を第四単位構造体4dとする。この場合、例えば、第一単位構造体4aの天側第二側部44bと第二単位構造体4bの底側第一側部43aとが接続され、第二単位構造体4bの底側第二側部44aと第三単位構造体4cの天側第一側部43bとが接続され、第三単位構造体4cの天側第二側部44bと第四単位構造体4dの底側第一側部43aとが接続されたものとすることができる。
【0035】
このように構成される吸音構造体1は、例えば、射出成型、押出成型、3Dプリンタによる造形、塩凝集法等により製造することができる。押出成形で吸音構造体1を製造する場合は、例えば、開口2を有しない箱体3を第三方向D3に押出成型し、その後、箱体3に開口2を形成する。これにより、吸音構造体1を製造することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る吸音構造体1では、開口2を有する箱体3を備えるため、箱体3をヘルムホルツ共鳴器として機能させることができる。そして、箱体3がオーセチック構造を有するため、箱体3を伸縮させることで、箱体3の容積を変化させることができる。例えば、箱体3を第一方向D1に伸ばすと、箱体3は、第二方向D2にも延びて、箱体3の容積が大きくなる。ここで、ヘルムホルツ共鳴器として機能する箱体3は、箱体3の容積に応じて、発生するヘルムホルツ共鳴の共鳴周波数が変わる。例えば、箱体3の容積が大きくなるほど、低い共鳴周波数のヘルムホルツ共鳴を発生させることができる。これにより、吸音構造体1が低減可能な周波数である低減可能周波数の広帯域化を図ることができる。
【0037】
また、この吸音構造体1では、箱体3が、複数の単位構造体4が並んで構成されており、複数の単位構造体4の少なくとも一つが開口2を有することで、当該開口2を有する単位構造体4を、ヘルムホルツ共鳴器として機能させることができる。
【0038】
また、この吸音構造体1では、複数の単位構造体4のそれぞれが開口2を有することで、全ての単位構造体4をヘルムホルツ共鳴器として機能させることができる。
【0039】
また、この吸音構造体1では、箱体3が弾性材料で構成されていることで、箱体3を容易に伸縮させることができる。
【0040】
また、この吸音構造体1では、箱体3を構成する弾性材料がエラストマーを有することで、箱体3を容易に伸縮させることができる。
【0041】
[吸音装置]
図7を参照して、実施形態に係る吸音装置について説明する。図7は、実施形態に係る吸音装置の模式的なブロック図である。図7に示すように、本実施形態に係る吸音装置10は、上述した吸音構造体1と、吸音構造体1の箱体3を伸縮するアクチュエータ20と、アクチュエータ20を駆動制御する制御部30と、を備える。
【0042】
アクチュエータ20は、吸音構造体1から発生させるヘルムホルツ共鳴の共鳴周波数を変化させるために、吸音構造体1の箱体3を第一方向D1に伸縮するものである。アクチュエータ20としては、例えば、ボールねじ、シリンダ、リニアガイド等を用いた直動機構等を用いることができる。
【0043】
制御部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。制御部30では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、各種の制御を実行する。制御部30は、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよく、複数の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。
【0044】
制御部30は、吸音構造体1から発生させるヘルムホルツ共鳴の共鳴周波数を変化させるために、アクチュエータ20を駆動制御するものである。制御部30は、低減対象音の周波数に関する情報を取得し、取得した情報に基づいてアクチュエータ20を駆動制御する。
【0045】
低減対象音は、吸音構造体1により低減させたい音、つまり、吸音構造体1の低減対象となる音である。低減対象音は、任意に設定することができ、例えば、モータ(不図示)から発生されるモータ音、ファンから発生されるファン音、ギアから発生されるギア音等、特に回転に同期して周波数が変化する音とすることができる。
【0046】
低減対象音の周波数に関する情報は、低減対象音の周波数そのものであってもよく、低減対象音の周波数と相関する情報であってもよい。
【0047】
例えば、制御部30は、マイク等の集音器で検知した音の周波数を分析することにより、低減対象音の周波数そのものを取得してもよい。
【0048】
また、低減対象音を発生する駆動装置の駆動状態と低減対象音の周波数とが相関する場合、例えば、制御部30は、駆動装置を駆動制御する制御装置から、低減対象音の周波数と相関する情報として駆動装置の駆動制御情報を取得してもよい。例えば、モータから発生されるモータ音の周波数はモータの回転数によって変化するため、モータの回転数はモータ音の周波数と相関し、モータの駆動制御情報はモータの回転数と相関する。このため、低減対象音がモータ音である場合、制御部30は、モータを駆動制御する制御装置から、低減対象音の周波数と相関する情報としてモータの駆動制御情報を取得してもよい。なお、モータが回転数により駆動制御される場合、モータの駆動制御情報は、指示回転数であり、モータがトルクにより駆動制御される場合、モータの駆動制御情報は、指示トルクである。
【0049】
そして、制御部30は、低減対象音の周波数と低減可能周波数(吸音構造体1が発生するヘルムホルツ共鳴の共鳴周波数)とが少なくとも一部において重なるように、取得した情報に基づいてアクチュエータ20を駆動制御する。
【0050】
例えば、事前に、吸音構造体1の箱体3の第一方向D1における伸縮量と、低減可能周波数とが対応付けられたデータベース(マップ)を作成して、このデータベースを制御部30がアクセス可能な記憶装置に記録しておく。又は、事前に、低減可能周波数から吸音構造体1の箱体3の第一方向D1における伸縮量を算出するプログラムを事前に作成して、このプログラムを制御部30がアクセス可能な記録装置に記録しておく。そして、制御部30は、低減対象音の周波数に関する情報を取得すると、データベース又は計算プログラムを利用して、低減対象音の周波数と低減可能周波数とが少なくとも一部において重なるような、吸音構造体1の箱体3の第一方向D1における伸縮量を取得する。なお、制御部30は、低減対象音の周波数に関する情報として低減対象音の周波数と相関する情報を取得する場合、低減対象音の周波数と相関する情報から低減対象音の周波数を算出して、上述したデータベース又は計算プログラムを利用して吸音構造体1の箱体3の第一方向D1における伸縮量を取得してもよい。そして、制御部30は、取得した伸縮量に応じた制御量で、アクチュエータ20を駆動制御する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る吸音装置10では、上述した吸音構造体1の箱体3をアクチュエータ20により伸縮するため、箱体3の容積V1を変化させて、低減可能周波数の広帯域化を図ることができる。
【0052】
また、この吸音装置10では、低減対象音の周波数に関する情報を取得し、この取得した情報に基づいてアクチュエータ20を駆動制御する制御部30を備えることで、低減対象音の周波数に応じて吸音構造体1の箱体3を伸縮させることができる。これにより、低減対象音を適切に低減することができる。
【0053】
[吸音方法]
図8を参照して、実施形態に係る吸音方法について説明する。本実施形態に係る吸音方法は、上述した吸音装置10を用いて低減対象音を低減させる方法である。
【0054】
図8は、実施形態に係る吸音方法のフローチャートである。図8に示すように、実施形態に係る吸音方法では、まず、音情報取得ステップ(S1)を行い、次に、伸縮ステップ(S2)を行う。なお、音情報取得ステップ(S1)及び伸縮ステップ(S2)は、吸音方法が終了されるまで、何度も繰り返し行われる。
【0055】
音情報取得ステップ(S1)では、低減対象音の周波数に関する情報を取得する。音情報取得ステップ(S1)は、吸音装置10の制御部30により行われる。
【0056】
伸縮ステップ(S2)では、音情報取得ステップ(S1)で取得した情報に基づいて吸音構造体1の箱体3を伸縮させる。音情報取得ステップ(S1)は、制御部30により行われる。つまり、音情報取得ステップ(S1)は、制御部30がアクチュエータ20を駆動制御することにより行われる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る吸音方法では、上述した吸音構造体1の箱体3を伸縮させるため、箱体3の容積を変化させて、低減可能周波数の広帯域化を図ることができる。しかも、低減対象音の周波数に関する情報を取得し、この取得した情報に基づいて吸音構造体1の箱体3を伸縮させるため、低減対象音を適切に低減することができる。
【0058】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、複数の単位構造体の並び(配列)の例を具体的に説明したが、箱体がオーセチック構造を有するものであれば、複数の単位構造体は如何なる並び(配列)であってもよい。図9は、変形例の吸音構造体の模式的な断面図である。図9に示す吸音構造体1Aは、基本的に上記実施形態の吸音構造体1と同様であるが、吸音構造体1Aの箱体3Aは、単位構造体4の底部41に他の単位構造体4の底部41が接続されて構成されている。この吸音構造体1Aでは、開口2が、吸音構造体1の第二方向D2における両側に向けられるため、吸音特性の向きを広げることができる。
【0060】
また、上記実施形態では、単位構造体の構造の例を具体的に説明したが、単位構造体の構造は特に限定されるものではない。図10は、変形例の吸音構造体の模式的な断面図である。図10に示す吸音構造体1Bは、基本的に上記実施形態の吸音構造体1と同様であるが、吸音構造体1Bの箱体3Bを構成する単位構造体4Bは、ネック部46を更に備えている。ネック部46は、開口2と連通されて箱体3の中空部45側に延在する中空の部位である。この吸音構造体1Bでは、開口2と連通されて箱体3の中空部45側に延在する中空のネック部46を備えるため、低周波域の共鳴周波数のヘルツホルム共鳴を発生させることができる。また、ネック部46の長さを変えることで、ヘルツホルム共鳴の共鳴周波数を変えることができる。
【0061】
また、上記実施形態では、複数の単位構造体のそれぞれに開口が形成されるものとして説明したが、開口は、複数の単位構造体の少なくとも一つに形成されていればよい。
【0062】
本開示の要旨は、以下の[1]~[8]のとおりである。
[1] 開口を有する箱体を備え、前記箱体は、オーセチック構造を有する、吸音構造体。
[2] 前記箱体は、複数の単位構造体が並んで構成されており、前記複数の単位構造体の少なくとも一つは、前記開口を有する、[1]に記載の吸音構造体。
[3] 前記複数の単位構造体のそれぞれは、前記開口を有する、[2]に記載の吸音構造体。
[4] 前記箱体は、弾性材料で構成されている、[1]~[3]の何れか一つに記載の吸音構造体。
[5] 前記弾性材料は、エラストマーを有する、[4]に記載の吸音構造体。
[6] [1]~[5]の何れか一つに記載の吸音構造体と、前記吸音構造体の前記箱体を伸縮するアクチュエータと、を備える、吸音装置。
[7] 低減対象音の周波数に関する情報を取得し、取得した前記情報に基づいて前記アクチュエータを駆動制御する制御部を更に備える、[6]に記載の吸音装置。
[8] [1]~[5]の何れか一つに記載の吸音構造体を用いて低減対象音を低減させる吸音方法であって、前記低減対象音の周波数に関する情報を取得する音情報取得ステップと、前記音情報取得ステップで取得した前記情報に基づいて前記吸音構造体の前記箱体を伸縮させる伸縮ステップと、を備える、吸音方法。
【符号の説明】
【0063】
1…吸音構造体、1A…吸音構造体、1B…吸音構造体、2…開口、3…箱体、3A…箱体、3B…箱体、4…単位構造体、4a…第一単位構造体、4b…第二単位構造体、4c…第三単位構造体、4d…第四単位構造体、4B…単位構造体、41…底部、42…天部、43…第一側部、43a…底側第一側部、43b…天側第一側部、43c…接続線、44…第二側部、44a…底側第二側部、44b…天側第二側部、44c…接続線、45…中空部、46…ネック部、5…封止膜、10…吸音装置、20…アクチュエータ、30…制御部、T…取付対象面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10