(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165738
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】光硬化性オルガノポリシロキサン、光硬化性オルガノポリシロキサン組成物および硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 77/20 20060101AFI20241121BHJP
C08G 77/38 20060101ALI20241121BHJP
C08F 299/08 20060101ALI20241121BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20241121BHJP
G03F 7/075 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C08G77/20
C08G77/38
C08F299/08
C08L83/07
G03F7/075 511
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082207
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】今井 裕佳理
(72)【発明者】
【氏名】伊部 武史
【テーマコード(参考)】
2H225
4J002
4J127
4J246
【Fターム(参考)】
2H225AC59
2H225AC60
2H225AD02
2H225AN22P
2H225AN39P
2H225BA09P
2H225CA11
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
4J002CP031
4J002EE026
4J002FD156
4J002GP03
4J127AA01
4J127AA03
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4J127BB131
4J127BB221
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4J127BD351
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4J127BE24Y
4J127BF781
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4J127BF78Y
4J127BG171
4J127BG17Y
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4J127BG38Y
4J127BG39X
4J246AA03
4J246BA04X
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4J246BA14X
4J246BA22X
4J246BB020
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4J246CA13X
4J246CA15M
4J246CA15X
4J246CA16M
4J246CA16X
4J246CA240
4J246CA24X
4J246CA650
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4J246CA65X
4J246FA322
4J246FA472
4J246FB042
4J246GA11
4J246GD08
4J246HA15
4J246HA57
(57)【要約】
【課題】塗布性、得られる硬化物の耐久性およびリワーク性に優れる光硬化性オルガノポリシロキサンを提供する。
【解決手段】*-O-R11-Yで表される重合性官能基(Yは、炭素-炭素不飽和結合を含む基であり、*は、前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子との結合位置を示す。)およびアルコキシシリル基を有する光硬化性オルガノポリシロキサンであって、全シロキシ単位に占めるT単位の割合が70モル%以上であり、前記重合性官能基を40質量%以上含有し、前記アルコキシシリル基を0.1~10質量%の範囲で含有する光硬化性オルガノポリシロキサン。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される重合性官能基およびアルコキシシリル基を有する光硬化性オルガノポリシロキサンであって、
全シロキシ単位に占めるT単位の割合が70モル%以上であり、
前記一般式(1)で表される重合性官能基を40質量%以上含有し、前記アルコキシシリル基を0.1~10質量%の範囲で含有する光硬化性オルガノポリシロキサン。
【化1】
(前記一般式(1)において、
R
11は、単結合又は炭素原子数1~12のアルキレン基であり、
Yは、炭素-炭素不飽和結合を含む基であり、
*は、前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子との結合位置を示す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される重合性官能基が下記一般式(1-2)で表される重合性官能基である請求項1に記載の光硬化性オルガノポリシロキサン。
【化2】
(前記一般式(1-2)において、
R
11は、単結合又は炭素原子数1~12のアルキレン基であり、
R
12は、水素原子又は炭素原子数1~12のアルキル基であり、
*は、前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子との結合位置を示す。)
【請求項3】
ポリシロキサン構造の含有量が35質量%以上である請求項1又は2に記載の光硬化性オルガノポリシロキサン。
【請求項4】
25℃における粘度が150mPas以下である請求項1又は2に記載の光硬化性オルガノポリシロキサン。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の光硬化性オルガノポリシロキサンと光重合開始剤とを含有する光硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
レジスト組成物である請求項5に記載の光硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項7】
請求項5に記載の光硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性オルガノポリシロキサン、光硬化性オルガノポリシロキサン組成物および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性ポリシロキサンは、当該光硬化性ポリシロキサンを含有する組成物自体の塗布性(流動性)に優れ、得られる硬化物も耐久性に優れることから、塗料材料、接着剤材料、パッケージング材料、電子材料と広い用途で使用されている。
【0003】
光硬化性ポリシロキサンの具体的用途としては、発光ダイオード(LED)やソーラーパネルの保護コーティング剤(例えば特許文献1)、フォトレジスト用のベースポリマー(例えば特許文献2および3)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015-516478号公報
【特許文献2】特表2011-23698号公報
【特許文献3】WO2016/072202号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一度硬化したポリシロキサン樹脂を簡単に洗浄できる「リワーク性」が重要な要求性能となってきている。上記用途の場合、ソーラーパネルでは経年劣化したパネルのリサイクルの際に保護コーティング剤を取り除く必要があるほか、リソグラフィプロセスでは形成されたレジスト膜のパターン形状が所望の形状となっていない場合、当該レジスト膜を剥離して再度レジスト膜を形成することが行われている。
特許文献1-3が開示するポリシロキサン樹脂は、いずれも耐久性およびリワーク性が十分とはいえず、優れたリワーク性を有するポリシロキサン樹脂が求められていた。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、得られる硬化物の耐久性およびリワーク性に優れる光硬化性オルガノポリシロキサンを提供することである。
本発明が解決しようとする他の課題は、耐久性およびリワーク性に優れる光硬化性オルガノポリシロキサンを含有する組成物の硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、T単位の割合、重合性官能基およびアルコキシシリル基の量を特定の範囲とするオルガノポリシロキサンであれば、得られる硬化物の耐久性およびリワーク性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、光硬化性オルガノポリシロキサン等に関するものである。
1.下記一般式(1)で表される重合性官能基およびアルコキシシリル基を有する光硬化性オルガノポリシロキサンであって、
全シロキシ単位に占めるT単位の割合が70モル%以上であり、
前記一般式(1)で表される重合性官能基を40質量%以上含有し、前記アルコキシシリル基を0.1~10質量%の範囲で含有する光硬化性オルガノポリシロキサン。
【化1】
(前記一般式(1)において、
R
11は、単結合又は炭素原子数1~12のアルキレン基であり、
Yは、炭素-炭素不飽和結合を含む基であり、
*は、前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子との結合位置を示す。)
2.前記一般式(1)で表される重合性官能基が下記一般式(1-2)で表される重合性官能基である1に記載の光硬化性オルガノポリシロキサン。
【化2】
(前記一般式(1-2)において、
R
11は、単結合又は炭素原子数1~12のアルキレン基であり、
R
12は、水素原子又は炭素原子数1~12のアルキル基であり、
*は、前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子との結合位置を示す。)
3.ポリシロキサン構造の含有量が35質量%以上である1又は2に記載の光硬化性オルガノポリシロキサン。
4.25℃における粘度が150mPas以下である1~3のいずれかに記載の光硬化性オルガノポリシロキサン。
5.1~4のいずれかに記載の光硬化性オルガノポリシロキサンと光重合開始剤とを含有する光硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
6.レジスト組成物である5に記載の光硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
7.5又は6に記載の光硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、塗布性に優れ、得られる硬化物の耐久性およびリワーク性に優れる光硬化性オルガノポリシロキサンが提供できる。
本発明により、耐久性およびリワーク性に優れる光硬化性オルガノポリシロキサンを含有する組成物の硬化物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
尚、本明細書中の化合物は、化石資源由来であってもよく、生物資源由来であってもよい。
【0011】
[光硬化性オルガノポリシロキサン]
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で表される重合性官能基およびアルコキシシリル基を有し、前記一般式(1)で表される重合性官能基を40質量%以上含有し、前記アルコキシシリル基を0.1~10質量%の範囲で含有する。
【0012】
【化3】
(前記一般式(1)において、
R
11は、単結合又は炭素原子数1~12のアルキレン基であり、
Yは炭素-炭素不飽和結合を含む基であり、
*は前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子との結合位置を示す。)
【0013】
本発明では、オルガノポリシロキサンが有するアルコキシシリル基の量を特定の範囲とし、且つ、特定の重合性官能基の量を一定以上とし、オルガノポリシロキサンの全シロキシ単位に占めるT単位の割合を一定以上とすることで、組成物自体の塗布性と、得られる硬化物の耐久性・リワーク性を高めることができる。
【0014】
前記一般式(1)で表される重合性官能基は、結合部分が分解性である。オルガノポリシロキサンを酸やアルカリ等で処理すると、重合性官能基の結合部分が分解してオルガノポリシロキサンの架橋構造が崩壊し、洗浄が可能になると推測される。従って、一般式(1)で表される重合性官能基を一定量有することでリワーク性を担保することができる。
【0015】
前記一般式(1)において、Yの炭素-炭素不飽和結合を含む基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルエーテル基、アリル基、スチリル基、マレイミド基等が挙げられる。
【0016】
R11の炭素原子数1~12のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-へキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基、n-ドデシレン基、イソプロピレン基、2-メチルプロピレン基、2-メチルへキシレン基、テトラメチルエチレン基等が挙げられる。
【0017】
R11の炭素原子数1~12のアルキレン基は、好ましくは炭素原子数1~5のアルキレン基であり、さらに好ましくはメチレン基、エチレン基、n-プロピレン基又はイソプロピレン基である。
【0018】
R11の炭素原子数1~12のアルキレン基は、-CH2-の一部がカルボニル基(-C(=O)-)、エーテル結合(-O-)、フェニレン基、アミド結合又はウレタン結合に置き変わっていてもよく、さらに炭素原子に水酸基等が置換していてもよい。
【0019】
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンの前記重合性官能基の量の上限は特に限定されず、例えば80質量%以下、60質量%以下又は50質量%以下である。
【0020】
アルコキシシリル基は、酸やアルカリ等の処理によって加水分解し、シラノール基となるため、オルガノポリシロキサンの洗浄性を高めることができる。従って、アルコキシシリル基を一定量有することでリワーク性を担保することができる。
【0021】
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンが有するアルコキシシリル基の含有量は、0.1~10質量%の範囲であり、好ましくは0.1~8.0質量%の範囲であり、より好ましくは0.1~6.0質量%の範囲である。
【0022】
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンが有するアルコキシシリル基は、好ましくは下記一般式(2)で表されるアルコキシシリル基である。
【0023】
【化4】
(前記一般式(2)において、
R
21は、炭素原子数1~12のアルキル基であり、
*は前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子との結合位置を示す。)
【0024】
R21の炭素原子数1~12のアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1~3のアルキル基である。
R21のアルキル基は炭素-炭素不飽和結合を含まない。また、R21のアルキル基は、さらにハロゲン原子、水酸基、シアノ基、アミノ基等の置換基を有してもよい。
【0025】
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンの重合性官能基およびアルコキシシリル基の量は、実施例に記載の方法により確認する。
【0026】
シロキシ単位には、R3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、R2SiO2/2単位(D単位)およびRSiO3/2単位(T単位)があるが(Rは水素原子又は脂肪族炭化水素基)、本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンは、全シロキシ単位に占めるT単位の割合が70モル%以上である。T単位の割合が70モル%以上であることで、組成物の塗布性と、得られた硬化物の耐久性およびリワーク性の全ての両立を可能とする光硬化性オルガノポリシロキサンを得ることができる。
光硬化性オルガノポリシロキサン中の各シロキシ単位の割合は、実施例に記載の方法により確認する。
【0027】
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンのT単位の割合の上限は特に限定されず、例えば100モル%以下であってもよい。
【0028】
前記シロキシ単位中のRの脂肪族炭化水素基は、例えば炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、フェニル基又はフェノキシ基である。
【0029】
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンの数平均分子量は、好ましくは500~5,000の範囲である。
光硬化性オルガノポリシロキサンの数平均分子量はGPC測定により確認できる。
【0030】
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンのポリシロキサン構造の含有量は、硬化物の耐久性・耐候性を高める観点から、好ましくは35質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。
尚、「ポリシロキサン構造」とは「Si-O-Si」で表される繰り返し構造を意味する。前記ポリシロキサン構造の含有量の上限は特に制限されないが、例えば60質量%以下又は70質量%以下である。
光硬化性オルガノポリシロキサンのポリシロキサン構造の含有量は実施例に記載の方法により確認する。
【0031】
光硬化性ポリシロキサンを含有する組成物を電子機器のコーティング材として使用する際には、光硬化性ポリシロキサンを含有する組成物の塗布性が重要な性能となる。溶剤希釈で粘度を下げた組成物を電子機器コーティング用途で扱う場合、溶剤の揮発成分によって電気・電子部品およびそれらを搭載した回路基板の腐食や劣化を引き起こすおそれがある。そのため、光硬化性ポリシロキサン単独で、電子部品やヒートシンク表面の微細な凹凸表面に追従できる程度の塗布性に適した粘度を有することが求められている。
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンは、樹脂単独で電子部品やヒートシンク表面の微細な凹凸表面に追従できる程度の塗布性を示すことができる。
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンの粘度は好ましくは150mPas以下であり、より好ましくは100mPas以下である。粘度の下限は特に制限されないが、例えば10mPas以上である。
光硬化性オルガノポリシロキサンの粘度は実施例に記載の方法により確認できる。
【0032】
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンは、好ましくは炭素-炭素不飽和結合を含む基Yとケイ素原子とがSi-O-R-Yで表される結合で連結され、当該ケイ素原子はシリコーンオリゴマーの一部である化合物である。
同様に、本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンは、好ましくはアルコキシシリル基のケイ素原子がシリコーンオリゴマーの一部である化合物である。
【0033】
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンの合成は、特に限定はなく、公知慣用の方法を用いることができる。例えば重合性不飽和基と水酸基とを有する化合物を原料として、クロロシラン化合物と脱塩酸反応で合成する方法や、アルコキシシラン化合物とエステル交換で合成する方法、ホウ素化合物等のルイス酸触媒を使用して水素化シラン化合物と反応させる方法などが挙げられる。
【0034】
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンは、好ましくはアルコキシシリル基を有するシリコーンオリゴマーと、水酸基および炭素-炭素不飽和結合を含む基を有する化合物とを反応成分とする化合物である。
ここで「反応成分」とは、光硬化性オルガノポリシロキサンの構造を構成する成分の意味であり、構造を構成しない溶媒や触媒などは「反応成分」に含まれない。
【0035】
前記アルコキシシリル基を有するシリコーンオリゴマーは、加水分解性のアルコキシシラン化合物を反応成分として公知の重縮合反応により調製することができる。
使用する加水分解性のアルコキシシラン化合物は1種単独でも2種以上でもよい。加水分解性のアルコキシシラン化合物の種類と量を調整することで、得られる光硬化性オルガノポリシロキサンのT単位の割合、ポリシロキサン構造の含有量、アルコキシシリル基の量などを調整することができる。
【0036】
光硬化性オルガノポリシロキサンの製造に用いる前記アルコキシシリル基を有するシリコーンオリゴマーは市販品を使用することができる。
【0037】
水酸基および炭素-炭素不飽和結合を含む基を有する化合物は、好ましくは水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物であり、この場合にオルガノポリシロキサン中の重合性官能基は例えば下記一般式(1-2)で表される官能基となる。
【0038】
【化5】
(前記一般式(1-2)において、
R
11は、単結合又は炭素原子数1~12のアルキレン基であり、
R
12は、水素原子又は炭素原子数1~12のアルキル基であり、
*は、前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子との結合位置を示す。)
【0039】
前記一般式(1)および(1-2)において、R11の炭素原子数1~12のアルキレン基は、好ましくは炭素原子数1~5のアルキレン基であり、R12は好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0040】
前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、好ましくは前記一般式(1-2)で表される官能基の「*」部分が水素原子となっている化合物である。
【0041】
前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、アダマンタンジオールアクリレート、β-カルボキシエチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。
【0042】
使用する前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
光硬化性オルガノポリシロキサンの製造方法としては、特に制限はなく、前述の方法で製造できるが、特に簡便な製造方法として、アルコキシシリル基を有するシリコーンオリゴマーと水酸基および炭素-炭素不飽和結合を含む基を有する化合物との反応は、例えば酸触媒(例えば硫酸)存在下で加熱することにより実施できる。
ここでシリコーンオリゴマーのアルコキシシリル基当量を、水酸基および重合性基を有する化合物の水酸基当量よりも過剰量とすることで、本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンを製造することができる。
【0044】
[光硬化性オルガノポリシロキサン組成物]
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンは、本発明の光硬化性オルガノポリシロキサン組成物(以下単に「本発明の組成物」という場合がある)のベースポリマーとして好適に使用でき、当該光硬化性オルガノポリシロキサン組成物は塗布性に優れ、得られる硬化物は耐久性およびリワーク性に優れる。
【0045】
本発明の組成物における本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンの含有量は、組成物中の固形分の例えば80質量%以上であり、好ましくは90質量%以上である。
ここで「固形分」とは、組成物の総量から、後述する溶剤を除いた成分の合計を意味する。
【0046】
本発明の組成物は、本発明の光硬化性オルガノポリシロキサンと光重合開始剤とを含有する。
光重合開始剤は、光硬化時に使用する光源に吸収をもつものを適宜選択すればよく、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等を用いることができる。
【0047】
光重合開始剤は市販品を用いることができ、例えばOMNIRAD1000、同248、同481、同4817、同4MBZ-flakes、同500、同659、同73、同784、同81、同BDK、同MBS、同BP-flakes、同DETX、同EDB、同EHA、同EMK、同ITX、同MBF、同OMBB、同TPO、同410、同BL723,同BL724,同BL750,同BL751、同1173、同127、同184、同184FF、同2022、同2100、同2959、同369、同369E、同379、同379EG、同4265、同754、同819、同819DW、同907、同907FF、同BP、同127D、ESACURE1001M、同ONE、同A198,同KIP 160、同KIP 150、同KIP100F、同KIP-LT、同KIP-IT、同KTO-46、同DP-250、同TZT、同KT-55(IMG社製)などが挙げられる。
【0048】
本発明の組成物における光重合開始剤の含有量は、光硬化性オルガノポリシロキサン100質量部に対して、例えば0.01質量部以上10質量部以下の範囲であり、好ましくは0.1質量部以上5質量部以下の範囲である。
【0049】
本発明の組成物は、重合禁止剤を含有してもよい。
重合禁止剤は、公知のものを使用でき、例えばハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(例えばアンモニウム塩、第一セリウム塩)等を用いることができる。
【0050】
本発明の組成物における光重合開始剤の含有量は、本発明の光硬化性オルガノポリシロキサン100質量部に対して、例えば0.001質量部以上1質量部以下の範囲であり、好ましくは0.01質量部以上0.5質量部以下の範囲である。
【0051】
本発明の組成物は溶剤を含有してもよい。溶剤を添加することで組成物の粘度や塗布膜厚を調整することができる。
溶剤としては、例えば、n-へキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族系または脂環族系の炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アニソール等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;アルキルエーテル類;1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が使用できる。
【0052】
本発明の組成物における溶剤の含有量は特に限定されず、目的の粘度や塗布膜厚に合わせて適宜設定するとよい。
【0053】
本発明の組成物は、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としてはノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれを使用してもよいが、ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0054】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル系界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルアミン系界面活性剤、プルロニック(登録商標)系(ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのトリブロック共重合体)界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アクリル重合系界面活性剤等が挙げられる。
【0055】
アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩系界面活性剤、アルキルアルコール硫酸エステル塩系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩系界面活性剤、アルキルアルコールリン酸エステル塩系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられ、酸型、中和型のいずれを使用してもよい。
【0056】
カチオン界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウムハライド系界面活性剤、アルキルピリジニウムハライド系界面活性剤、アルキルイミダゾリンハライド系界面活性剤等が挙げられる。
【0057】
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン系界面活性剤、アルキルイミダゾリニウムベタイン系界面活性剤、レシチン系界面活性剤等が挙げられる。
【0058】
本発明の組成物における界面活性剤の含有量は、本発明の光硬化性オルガノポリシロキサン100質量部に対して、例えば0.001質量部以上10質量部以下の範囲であり、好ましくは0.01質量部以上8質量部以下の範囲であり、より好ましくは0.1質量部以上5質量部以下の範囲である。
【0059】
本発明の組成物は、本発明の効果を損ねない範囲でその他の配合物を配合しても構わない。その他の配合物としては、有機顔料、無機顔料、体質顔料、有機フィラー、無機フィラー、光増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、密着補助剤等が挙げられる。
【0060】
本発明の組成物は、光硬化性オルガノポリシロキサンの末端官能基及び分子量を制御することによって、樹脂単独で十分な塗布性を示すことを可能としている。
特開2011-23698号公報では、アルコキシシラン化合物を添加することでシリコーンポリマーの塗布性を改善しているが、本発明では光硬化性オルガノポリシロキサン自体の流動性が良好であるため、低分子量体のアルコキシシラン化合物を添加する必要がない。
【0061】
以上、本発明の光硬化性オルガノポリシロキサン組成物中の成分の説明をしたが、各成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサン組成物は光の照射により硬化可能な光硬化性の組成物であり、例えば本発明の光硬化性オルガノポリシロキサン組成物を基材上に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜に光を照射することで基板上に硬化物層を形成できる。
【0063】
前記基材としては、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、石英、サファイア、ガラス、プラスチック、セラミック材料、蒸着膜(CVD、PVD、スパッタ)、磁性膜、反射膜、Ni,Cu,Cr,Fe,ステンレス等の金属基板、紙、SOG(Spin On Glass)、SOC(Spin On Carbon)、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ITOや金属等の導電性基材、絶縁性基材、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基板等が挙げられる。
また、基材の形状も特に制限はなく、平板、シート状、あるいは3次元形状全面にまたは一部に曲率を有するもの等目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。
【0064】
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサン組成物のコーティング方法としては、例えばスプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等、様々な方法を用いることができる。
塗布膜の膜厚の面内均一性が良好な膜が得られることから好ましくはスピンコート法である。
【0065】
照射する光源の例としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、水銀キセノンランプ、エキシマーレーザー(XeCl、KrF、ArF等)、紫外あるいは可視光レーザー、紫外あるいは可視光LED等が挙げられる。
光の照射量は適宜設定すればよく、例えば10~10000mJ/cm2の範囲である。
【0066】
光硬化性オルガノポリシロキサン組成物のコーティング後かつ光照射前に基板を加熱するベーク工程を設けてもよい。ベーク方法としては、プロキシミティ方式、吸着方式、コンベア方式、マイクロ波による誘導過熱等、様々な方法を用いることができ、またそれらを組み合わせることも可能である。
ベーク条件としては特に限定は無いが、例えばベーク温度は70~180℃の範囲であり、ベーク時間は0.3~10分の範囲である。
【0067】
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサン組成物を光インプリントに用いる場合、上述の基板上に成膜した光硬化性オルガノポリシロキサン組成物の塗膜に、予めパターンが形成されたモールドを押し付け、モールドが接触した状態で光を照射して塗膜を硬化することでパターンが形成された硬化物の膜が得られる。
尚、上記ベーク工程はモールドを接触させる前に実施してもよく、モールドを押し付けた後に実施してもよい。
【0068】
光インプリント用モールドの材質としては、光を透過する材質として、石英、紫外線透過ガラス、サファイア、ダイヤモンド、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン材料、フッ素樹脂、シクロオレフィン樹脂、その他光を透過する樹脂材等が挙げられる。また、使用する基材が光を透過する材質であれば、インプリント用モールドは光を透過しない材質でもよい。光を透過しない材質としては、金属、SiC、マイカ等が挙げられる。この中でも、紫外線を良好に透過し、硬度が高く、表面平滑性が高いことから特に好ましくは石英モールドである。
光インプリント用モールドは平面状、ベルト状、ロール状、ロールベルト状等の任意の形状のものを選択できる。
【0069】
光インプリント用モールドは、光硬化性組成物とモールド表面との離型性を向上させるため離型処理を行ったものを用いても良い。離型処理としては、シリコーン系やフッ素系のシランカップリング剤による処理等が挙げられる。
【0070】
光の照射方法は、モールドが光を透過する材質の場合はモールド側から光を照射する方法、基材が光を透過する材質の場合は基材側から光を照射する方法が採用できる。
【0071】
形成するパターンの追従性に懸念がある場合は、光照射時に十分な流動性が得られる温度まで加熱させてもよい。加熱する場合の温度は、0~300℃が好ましく、0~200℃がより好ましく、0~150℃がさらに好ましく、25~80℃が特に好ましい。前記温度範囲において、光硬化性組成物から形成されるパターン形状が精度よく保持される。
【0072】
硬化後、モールドを離型することにより、モールドの凹凸パターンを転写した凸凹パターンが形成された硬化物の膜が得られる。基材の反り等の変形を抑えたり、凹凸パターンの精度を高めるため、剥離工程としては、硬化膜の温度が常温(25℃)付近まで低下した後に実施する方法が好ましい。
【0073】
モールドを離型後、モールドに硬化物の残渣が確認される場合には洗浄液を用いて洗浄を行うとよい。モールドは繰り返し使用するため、モールドに硬化物の残渣があるとパターン形成に悪影響がでるおそれがある。
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサン組成物に含まれる光硬化性オルガノポリシロキサンは、Si-O-R11-Yで表される重合性官能基を多く含み、当該重合性官能基のSi-O-R11部分が洗浄液に対して高い分解性を有するため、本発明の光硬化性オルガノポリシロキサン組成物はリワーク性に優れる。
【0074】
モールドの洗浄に用いる洗浄液は、モールドの材質に応じて適宜選択すればよく、酸洗浄液およびアルカリ洗浄液のいずれも使用できる。
酸洗浄液としては、硫酸、塩酸、硝酸、炭酸、酢酸、リン酸、王水、希フッ酸、硫酸過水、塩酸過水等が挙げられ、アルカリ洗浄液としては苛性ソーダ、苛性カリなどの苛性アルカリや、各種のケイ酸塩、リン酸塩、炭酸塩等の無機アルカリだけでなく、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイドなどの有機アルカリ、アンモニア水、アンモニア水素水、アンモニア過水等が挙げられる。
【0075】
前記アルカリ洗浄液はSiO2を溶解する恐れがあるため、モールドがガラスや石英の場合には酸洗浄液が好ましく、特に好ましくは硫酸過水である。特に100nm以下の微細パターンをもつ石英モールドの洗浄においては、アルカリ洗浄液にSiO2の溶解作用によりモールドの矩形性を損なう恐れがあるため、酸洗浄液を用いることで微細パターンの損傷無くモールドが洗浄され、繰り返し用いることができる。
【0076】
洗浄方法としては、特に限定は無いが、スプレー、シャワー、浸漬、加温浸漬、超音波浸漬、スピン法、バブリング、揺動法、ブラッシング、スチーム、研磨等が挙げられ、洗浄された汚染物の再付着防止のためには、スピン法が特に好ましい。
【0077】
本発明の光硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて製造した積層体は、基材上にレジスト材料を塗布し、その場で硬化してレジスト膜を形成してもよいし、仮基材上で形成されたレジスト膜を剥離して、基材に張り付けて積層体としてもかまわない。レジスト膜がパターン形成されたものであれば、積層体をドライエッチングすることで、ドライエッチングによりパターンが基材に転写された、パターン形成物が得られる。
【0078】
ドライエッチングに使用するガスとしては、公知のものを用いればよく、例えば、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素などの酸素原子含有ガス、ヘリウム、窒素、アルゴン等の不活性ガス、塩素、三塩化ホウ素などの塩素系ガス、フッ素ガス、フルオロカーボン系ガス、水素ガス、アンモニアガス等を使用することができ、これらのガスは単独でも、適宜混合して用いてもかまわない。
これらのエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基材上に所望のパターンを形成することができる。
【実施例0079】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
尚、本発明は下記実施例に限定されない。
【0080】
後述する光硬化性オルガノポリシロキサンの製造に、下記アルコキシシリル基を有するシリコーンオリゴマーを使用した。
アルコキシシラン化合物(a-1):信越化学工業株式会社製「KR-500」、三官能モノマーベース、粘度:25mPas、メトキシ基含有量:28質量%
アルコキシシラン化合物(a-2):信越化学工業株式会社製「X-40-9225」、三官能モノマーベース、粘度:100mPas、メトキシ基含有量:24質量%
アルコキシシラン化合物(a-3):ダウ・東レ株式会社製「DOWSIL AY42-163」、三官能モノマーベース、粘度:30mPas、メトキシ基含有量:25質量%
アルコキシシラン化合物(a-4):ダウ・東レ株式会社製「DOWSIL SR2402」、三官能モノマーベース、粘度:26mPas、メトキシ基含有量:31質量%
アルコキシシラン化合物(a-5):信越化学工業株式会社製「X-40-9250」、二官能及び三官能モノマーベース、粘度:80mPas、メトキシ基含有量:25質量%
アルコキシシラン化合物(a-6):信越化学工業株式会社製「KC-89S」、三官能モノマーベース、粘度:5mPas、メトキシ基含有量:45質量%
アルコキシシラン化合物(a-7):信越化学工業株式会社製「X-40-9246」、二官能及び三官能モノマーベース、粘度:80mPas、メトキシ基含有量:12質量%
アルコキシシラン化合物(a-8):コルコート株式会社製「メチルシリケート51」、四官能モノマーベース、粘度:5mPas、メトキシ基含有量:66質量%
【0081】
[実施例1:光硬化性オルガノポリシロキサンの調製と評価]
反応容器にアルコキシシラン化合物(a-1)を200質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレートを128質量部、硫酸(50質量ppm)を仕込んだ。70℃加温条件下で、生成したメタノールを留去しながら、8時間撹拌反応させ、光硬化性オルガノポリシロキサン(A-1)を294g得た。
【0082】
得られた光硬化性オルガノポリシロキサン(A-1)について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
(重合性官能基の含有量)
得られた光硬化性オルガノポリシロキサンについて1H-NMR測定を実施し、検出されたスペクトル強度から重合性官能基の含有量を算出した。
具体的には、実施例1では光硬化性オルガノポリシロキサンの調製に2-ヒドロキシエチルアクリレートを用いており、スペクトル中の、2-ヒドロキシエチルアクリレートとシリコーンオリゴマーとがSi-O-C結合により結合することで生じるピーク(δ=3.97,CH2-O-Si)と、予め測定サンプルに添加した標準物質由来のピーク強度比から、ポリシロキサン樹脂に結合している重合性官能基の含有量を算出した。
【0084】
尚、上記1H-NMRは、下記条件で実施した。
測定装置:ブルカージャパン株式会社製「AVANCE NEO 400」
磁場強度:400MHz
積算回数:16回
溶媒:重水素化クロロホルム(CDCl3)
試料濃度:30mg/0.6ml
【0085】
(アルコキシシリル基残存量)
得られた光硬化性オルガノポリシロキサンについて、重合性官能基の含有量の測定と同じ条件で1H-NMR測定を実施し、検出されたスペクトル強度からアルコキシシリル基の含有量を算出した。
具体的には、実施例1では光硬化性オルガノポリシロキサンの調製にメトキシ基を有するシリコーンオリゴマーを使用しており、スペクトル中のシリコーンオリゴマーのメトキシ基のピーク(δ=3.52,Si-OCH3)と、予め測定サンプルに添加した標準物質由来のピーク強度比からアルコキシシリル基(メトキシシリル基)残存量を算出した。
【0086】
(ポリシロキサン構造含有量)
光硬化性オルガノポリシロキサン中のポリシロキサン構造の含有量は、灰分測定により評価した。具体的には、得られた光硬化性オルガノポリシロキサンをるつぼに約1.0g測りとり、130℃の乾燥機で30分乾燥させた。その後、電気炉にるつぼを移動させ、850℃で3時間焼成した。放冷後に取り出し、重量損失分からポリシロキサン構造に由来する灰分を算出し、以下の基準で評価した。
ポリシロキサン構造の含有量が多いほど硬化物の耐久性・耐候性を高めることができる。
(A):45質量%以上
(B):35質量%以上45質量%未満
(C):35質量%未満
【0087】
(塗布性評価)
得られた光硬化性オルガノポリシロキサンを約1.0g測りとり、ステージ温度を25℃に設定したE型粘度計(東機産業製、製品名:TV-22)を使用して、回転速度100rpm、回転子No.1で粘度の測定を行い、以下の基準で評価した。粘度が低いほど塗布性に優れる。
(A):100mPas以下
(B):100mPas超150mPas以下
(C):150mPas超
【0088】
(貯蔵弾性率評価)
得られた光硬化性オルガノポリシロキサンを100質量部、光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン(IGM製「OMNIRAD184」)を2質量部および重合禁止剤としてp-メトキシフェノールを0.02質量部配合し、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて固形分濃度が50質量%となるように希釈して光硬化性組成物を調製した。
【0089】
得られた光硬化性組成物を、1500rpm、30秒で6インチのシリコンウエハ上にスピンコート塗布後、80℃のホットプレートで60秒間ベークして塗膜を形成した。このとき、膜厚は約2.0μmであった。次に、UV照射装置(三永電機製作所製)を用い、窒素雰囲気下で、この塗膜に100mJ/cm2照射することでUV硬化膜を得た。
得られた硬化膜について、ナノインデンター(エリオニクス製「ENT2100」)で、押し込み深さ200nmにおける貯蔵弾性率E’を測定し、以下の基準で評価した。貯蔵弾性率E’は硬化膜の耐久性の指標であり、高いほど良い。
(A):1,500MPa以上
(B):1,000MPa以上1,500MPa未満
(C):1,000MPa以下未満
【0090】
(リワーク性評価)
貯蔵弾性率評価で作製した硬化膜を硫酸過水(硫酸:過酸化水素水=4:1(容量比))に5分間浸漬後、イオン交換水で30秒間リンスした。この過程における硬化膜の様子を目視で観察し、以下の基準で硬化膜のリワーク性を評価した。
(A):硬化膜が硫酸過水に溶解し、シリコンウエハ上に残存が無い。
(B):硬化膜がシリコンウエハから剥離し、シリコンウエハ上に残存が無い。
(C):硬化膜に変化が見られない。
【0091】
[実施例2-6および比較例1-2:光硬化性オルガノポリシロキサンの調製と評価]
アルコキシシラン化合物および2-ヒドロキシエチルアクリレートを表1に示す量を用いた他は実施例1と同様にして光硬化性オルガノポリシロキサンを製造し、実施例1と同じ評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0092】
【0093】
【0094】
尚、比較例6では光硬化性オルガノポリシロキサンの代わりに下記式で表される光硬化性シリコーンモノマーを使用した。
【0095】
【0096】
表1および2の結果から、T単位の割合ならびに重合性官能基およびアルコキシシリル基の量が特定範囲であるオルガノポリシロキサンを用いることで、耐久性およびリワーク性に優れる硬化物が得られることが分かる。