(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165809
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241121BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20241121BHJP
【FI】
H01L21/78 A
H01L21/78 F
H01L21/78 B
B23K26/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082315
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宮 沙紀
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD02
4E168CB07
4E168JA12
4E168JA13
4E168JA14
5F063AA05
5F063AA41
5F063BA33
5F063BA43
5F063BA45
5F063CB02
5F063CB03
5F063CB05
5F063CB06
5F063CB22
5F063CB23
5F063CB25
5F063CB26
5F063CC05
5F063DE02
5F063DE33
5F063EE09
5F063EE21
(57)【要約】
【課題】外周のチップ飛びを防止し、かつ、チップ品質の悪化を防止するウエーハの加工方法を提供する事。
【解決手段】ウエーハの加工方法は、ウエーハの一方の面から、分割予定ラインに沿って、ウエーハを完全に分割しない深さで外周余剰領域に非加工領域を残存させた内内加工溝を形成する内内加工ステップ1001と、内内加工ステップ1001の後に、ウエーハの一方の面に支持部材を固定する支持部材固定ステップ1002と、支持部材固定ステップ1002の後に、ウエーハの他方の面から分割予定ラインに沿って、内内加工溝に至る深さでウエーハの外縁まで至る外外加工溝を形成する外外加工ステップ1003と、を備える。デバイス領域は、内内加工溝と外外加工溝とがつながってウエーハが複数のデバイスチップに分割され、外周余剰領域は、内内加工ステップ1001で残存させた非加工領域で分割されない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割予定ラインによって区画されたそれぞれの領域にデバイスが形成されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲む外周余剰領域と、有するウエーハを該分割予定ラインに沿って分割し複数のデバイスチップを製造するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの一方の面から、該分割予定ラインに沿って、ウエーハを完全に分割しない深さで該外周余剰領域に非加工領域を残存させた内内加工溝を形成する内内加工ステップと、
該内内加工ステップの後に、ウエーハの該一方の面に支持部材を固定する支持部材固定ステップと、
該支持部材固定ステップの後に、ウエーハの他方の面から該分割予定ラインに沿って、該内内加工溝に至る深さでウエーハの外縁まで至る外外加工溝を形成する外外加工ステップと、を備え、
該デバイス領域においては、該内内加工溝と該外外加工溝とがつながって、ウエーハが複数のデバイスチップに分割され、該外周余剰領域においては、該内内加工ステップで残存させた該非加工領域で分割されないことで、該外周余剰領域のチップ飛びを防止するウエーハの加工方法。
【請求項2】
複数の分割予定ラインによって区画されたそれぞれの領域にデバイスが形成されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲む外周余剰領域と、有するウエーハを該分割予定ラインに沿って分割し複数のデバイスチップを製造するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの他方の面から、該分割予定ラインに沿って、ウエーハを完全に分割しない深さでウエーハの外縁まで至る外外加工溝を形成する外外加工ステップと、
該外外加工ステップの後に、ウエーハの該他方の面に支持部材を固定する支持部材固定ステップと、
該支持部材固定ステップの後に、ウエーハの一方の面から該分割予定ラインに沿って、該外外加工溝に至る深さで該外周余剰領域に非加工領域を残存させた内内加工溝を形成する内内加工ステップと、を備え、
該デバイス領域においては、該外外加工溝と該内内加工溝とがつながって、ウエーハが複数のデバイスチップに分割され、該外周余剰領域においては、該内内加工ステップで残存させた該非加工領域で分割されないことで、該外周余剰領域のチップ飛びを防止するウエーハの加工方法。
【請求項3】
該内内加工ステップは、
ウエーハの外縁より内側で切削ブレードを切り込み深さまで下降させる下降ステップと、
該下降ステップの後に、該切削ブレードとウエーハを保持する保持テーブルとを相対的に加工送り方向に移動させて該切削ブレードでウエーハを加工する切削ステップと、
該切削ステップの後、ウエーハの外縁より内側で該切削ブレードを上昇させ、該外周余剰領域に該非加工領域を形成する上昇ステップと、を含む請求項1または請求項2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
該内内加工ステップと、該外外加工ステップと、は、レーザ光線の照射によってウエーハに加工溝を形成する請求項1または請求項2に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを分割して複数のチップを製造するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の分割予定ラインによって区画されたそれぞれの領域にデバイスが形成されたウエーハを、分割予定ラインに沿って分割して複数のチップを製造するウエーハの加工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなウエーハを複数のチップに分割する加工方法において、外周のチップ飛びが問題となっていた。また、ウエーハの片側からフルカットすると、加工負荷が高く、表裏面のチッピングが大きくなるなど、チップ品質が悪化する傾向があるという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、外周のチップ飛びを防止し、かつ、チップ品質の悪化を防止するウエーハの加工方法を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウエーハの加工方法は、複数の分割予定ラインによって区画されたそれぞれの領域にデバイスが形成されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲む外周余剰領域と、有するウエーハを該分割予定ラインに沿って分割し複数のデバイスチップを製造するウエーハの加工方法であって、ウエーハの一方の面から、該分割予定ラインに沿って、ウエーハを完全に分割しない深さで該外周余剰領域に非加工領域を残存させた内内加工溝を形成する内内加工ステップと、該内内加工ステップの後に、ウエーハの該一方の面に支持部材を固定する支持部材固定ステップと、該支持部材固定ステップの後に、ウエーハの他方の面から該分割予定ラインに沿って、該内内加工溝に至る深さでウエーハの外縁まで至る外外加工溝を形成する外外加工ステップと、を備え、該デバイス領域においては、該内内加工溝と該外外加工溝とがつながって、ウエーハが複数のデバイスチップに分割され、該外周余剰領域においては、該内内加工ステップで残存させた該非加工領域で分割されないことで、該外周余剰領域のチップ飛びを防止するものである。
【0007】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウエーハの加工方法は、複数の分割予定ラインによって区画されたそれぞれの領域にデバイスが形成されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲む外周余剰領域と、有するウエーハを該分割予定ラインに沿って分割し複数のデバイスチップを製造するウエーハの加工方法であって、ウエーハの一方の面から、該分割予定ラインに沿って、ウエーハを完全に分割しない深さでウエーハの外縁まで至る外外加工溝を形成する外外加工ステップと、該外外加工ステップの後に、ウエーハの該一方の面に支持部材を固定する支持部材固定ステップと、該支持部材固定ステップの後に、ウエーハの他方の面から該分割予定ラインに沿って、該外外加工溝に至る深さで該外周余剰領域に非加工領域を残存させた内内加工溝を形成する内内加工ステップと、を備え、該デバイス領域においては、該外外加工溝と該内内加工溝とがつながって、ウエーハが複数のデバイスチップに分割され、該外周余剰領域においては、該内内加工ステップで残存させた該非加工領域で分割されないことで、該外周余剰領域のチップ飛びを防止するものである。
【0008】
該内内加工ステップは、ウエーハの外縁より内側で切削ブレードを切り込み深さまで下降させる下降ステップと、該下降ステップの後に、該切削ブレードとウエーハを保持する保持テーブルとを相対的に加工送り方向に移動させて該切削ブレードでウエーハを加工する切削ステップと、該切削ステップの後、ウエーハの外縁より内側で該切削ブレードを上昇させ、該外周余剰領域に該非加工領域を形成する上昇ステップと、を含んでもよい。
【0009】
該内内加工ステップと、該外外加工ステップと、は、レーザ光線の照射によってウエーハに加工溝を形成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は、内内加工ステップで、ウエーハの一方の面から、外周余剰領域に非加工領域を残存させた内内加工溝を形成し、外外加工ステップで、ウエーハの他方の面から外外加工溝を形成し、外周余剰領域において非加工領域により分割されない領域を形成するので、外周余剰領域が小さく分割されてウエーハの加工中やウエーハに対する後工程においてチップ飛びしてしまうことを防止できるとともに、内内加工溝の形成のみによりデバイス領域を複数のデバイスのチップに分割しようとすると高くなってしまう可能性の高い加工負荷や加工時間を十分に低く抑えることができるので、表裏面のチッピングを小さく抑制することができ、これにより、チップ品質の悪化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るウエーハの加工方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るウエーハの加工方法の加工対象であるウエーハの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係るウエーハの加工方法を実施する加工装置1の構成例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1の内内加工ステップの処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図1及び
図2の内内加工ステップを実施後のウエーハを示す上面図である。
【
図7】
図7は、
図1及び
図2の内内加工ステップを実施後のウエーハを示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図1及び
図2の内内加工ステップを実施後のウエーハを示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図1の外外加工ステップを説明する側断面図である。
【
図10】
図10は、
図1の外外加工ステップを実施後のウエーハを示す上面図である。
【
図11】
図11は、
図1の外外加工ステップを実施後のウエーハを示す断面図である。
【
図12】
図12は、
図1の外外加工ステップを実施後のウエーハを示す断面図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係るウエーハの加工方法の内内加工ステップを実施後のウエーハを示す上面図である。
【
図14】
図14は、実施形態3に係るウエーハの加工方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、実施形態4に係るウエーハの加工方法を実施する加工装置1-2の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るウエーハの加工方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係るウエーハの加工方法の処理手順を示すフローチャートである。実施形態1に係るウエーハの加工方法は、
図1に示すように、内内加工ステップ1001と、支持部材固定ステップ1002と、外外加工ステップ1003と、を備える。
【0014】
図2は、実施形態1に係るウエーハの加工方法の加工対象であるウエーハ100の一例を示す斜視図である。ウエーハ100は、
図2に示すように、例えば、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素、ガラスなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウェーハなどである。ウエーハ100は、平坦な表面101に、互いに交差する複数の分割予定ライン102によって区画されたそれぞれの領域にチップ状のデバイス103が形成されたデバイス領域106と、デバイス103が形成されておらず、デバイス領域106の外周を囲む外周余剰領域107と、を有する。ウエーハ100は、実施形態1に係るウエーハの加工方法が実施されて分割予定ライン102に沿って分割することで、複数のデバイス103のチップを製造する。
【0015】
図3は、実施形態1に係るウエーハの加工方法を実施する加工装置1の構成例を示す斜視図である。加工装置1は、
図3に示すように、保持テーブル10と、加工ユニット20と、撮像ユニット30と、X軸方向移動ユニット41と、Y軸方向移動ユニット42と、Z軸方向移動ユニット43と、制御ユニット50と、を備える。加工装置1は、実施形態1に係るウエーハの加工方法の内内加工ステップ1001と、外外加工ステップ1003と、を実施する。
【0016】
保持テーブル10は、凹部が形成された円盤状の枠体と、凹部内に嵌め込まれた円盤形状の吸着部と、を備えるいわゆるチャックテーブルである。保持テーブル10の吸着部は、多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から形成され、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。保持テーブル10の吸着部の上面は、ウエーハ100が載置されて、真空吸引源から導入される負圧により、載置されたウエーハ100を吸引保持する保持面11である。保持面11と保持テーブル10の枠体の上面とは、同一平面上に配置されており、水平面であるXY平面に平行に形成されている。保持テーブル10は、X軸方向移動ユニット41により水平方向と平行なX軸方向に移動自在に設けられている。保持テーブル10は、不図示の回転駆動源により、鉛直方向に平行でかつXY平面に直交するZ軸回りに回転自在に設けられている。
【0017】
加工ユニット20は、
図3に示すように、切削ブレード21と、スピンドル22と、を備える切削ユニットである。切削ブレード21は、スピンドル22の先端に装着され、回転軸となるスピンドル22により回転されることで保持テーブル10に保持されたウエーハ100を切削する。スピンドル22は、Y軸方向と平行な軸心周りに回転可能に設けられ、スピンドル22に連結された不図示のモータにより軸心回りに回転する。スピンドル22は、スピンドル22の先端に装着された切削ブレード21をY軸方向と平行な軸心周りに回転可能に支持する。
【0018】
加工ユニット20は、それぞれY軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43により、水平方向と平行でかつX軸方向と直交するY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0019】
加工ユニット20は、スピンドル22の回転動作によりスピンドル22の先端に装着された切削ブレード21をY軸方向と平行な軸心周りに回転しながら、X軸方向移動ユニット41により切削ブレード21を保持テーブル10上のウエーハ100に対して相対的に加工送り方向であるX軸方向に沿って移動(加工送り)させることにより、切削ブレード21でウエーハ100を分割予定ライン102に沿って切削して、後述する一方の面110(
図5等参照)及び他方の面120(
図9等参照)からそれぞれ内内加工溝111(
図5等参照)及び外外加工溝121(
図9等参照)を形成することで、ウエーハ100を分割予定ライン102に沿って分割する。なお、実施形態1では、内内加工溝111が形成される一方の面110がウエーハ100の表面101であり、外外加工溝121が形成される他方の面120がウエーハ100の表面101の裏側の裏面104であってもよいし、逆に、内内加工溝111が形成される一方の面110がウエーハ100の裏面104であり、外外加工溝121が形成される他方の面120がウエーハ100の表面101であってもよい。
【0020】
撮像ユニット30は、保持テーブル10に保持されたウエーハ100を撮像する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット30は、保持テーブル10に保持されたウエーハ100の表面101を撮像して、ウエーハ100と加工ユニット20との位置合わせを行なうアライメントを遂行するための画像を取得する。また、撮像ユニット30は、保持テーブル10に保持されたウエーハ100の表面101を撮像して、ウエーハ100に対する加工が正常な範囲内で実行されたか否かを自動的に確認するチェックを遂行するための画像を取得する。撮像ユニット30は、実施形態1では、加工ユニット20に隣接して固定されており、加工ユニット20と一体的に移動する。
【0021】
X軸方向移動ユニット41、Y軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43は、それぞれ、保持テーブル10と、加工ユニット20及び撮像ユニット30と、を相対的にX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させる。X軸方向移動ユニット41は、実施形態1では、X軸方向に沿って、保持テーブル10を加工ユニット20及び撮像ユニット30に対して相対的に移動させる。Y軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43は、実施形態1では、それぞれY軸方向及びZ軸方向に沿って、加工ユニット20及び撮像ユニット30を保持テーブル10に対して相対的に移動させる。
【0022】
X軸方向移動ユニット41、Y軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43は、いずれも、モータと、ボールねじと、ガイドと、を有する公知のボールねじ機構である。X軸方向移動ユニット41、Y軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43は、モータの回転位置を読み取るエンコーダを含み、エンコーダが読み取ったモータの回転位置に基づいて、保持テーブル10と加工ユニット20及び撮像ユニット30とのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の相対的な位置を検出し、検出した相対的な位置を制御ユニット50に出力する。ここで、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の相対的な位置は、加工装置1に備え付けられた装置直交座標系(XYZ座標)が使用される。なお、X軸方向移動ユニット41、Y軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43は、エンコーダにより保持テーブル10と加工ユニット20及び撮像ユニット30との相対的な位置を検出する構成に限定されず、それぞれX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に平行なリニアスケールと、X軸方向移動ユニット41、Y軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43によりそれぞれX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられリニアスケールの目盛を読み取る読み取りヘッドと、により構成してもよい。
【0023】
制御ユニット50は、加工装置1の各構成要素の動作を制御して、実施形態1に係るウエーハの加工方法における様々な処理を含む各種処理を加工装置1に実施させる。制御ユニット50は、実施形態1では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット50が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット50の演算処理装置は、制御ユニット50の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、加工装置1を制御するための制御信号を、制御ユニット50の入出力インターフェース装置を介して加工装置1の各構成要素に出力する。
【0024】
次に、本明細書は、実施形態1に係るウエーハの加工方法を図面に基づいて説明する。実施形態1に係るウエーハの加工方法では、内内加工ステップ1001を実施する前に、ウエーハ100を保持テーブル10の保持面11で保持する保持ステップを実施する。この保持ステップでは、具体的には、まず、制御ユニット50は、不図示の搬送ユニットにより、実施形態1に係るウエーハの加工方法を実施前のウエーハ100を1枚搬出して、内内加工ステップ1001を実施して内内加工溝111を形成する一方の面110を上方に向けて露出させて、他方の面120側を保持テーブル10の保持面11に向けて、保持テーブル10の保持面11上に搬送する。この保持ステップでは、次に、制御ユニット50は、保持テーブル10により、保持面11上に搬送されたウエーハ100を、一方の面110を上方に向けて露出させた状態で、他方の面120側から吸引保持する。
【0025】
図4は、
図1の内内加工ステップ1001の処理手順を示すフローチャートである。
図5は、
図1及び
図2の内内加工ステップ1001を説明する側断面図である。
図6は、
図1及び
図2の内内加工ステップ1001を実施後のウエーハ100を示す上面図である。
図7及び
図8は、いずれも、
図1及び
図2の内内加工ステップ1001を実施後のウエーハ100を示す断面図である。
図7は、
図6の(VII)-(VII)断面における断面図であり、
図8は、
図6の(VIII)-(VIII)断面における断面図である。なお、
図6及び
図7は、見やすさのため、分割予定ライン102及び分割予定ライン102に沿って形成される内内加工溝111の本数を少なくして示している。
【0026】
内内加工ステップ1001は、
図5、
図6、
図7及び
図8に示すように、ウエーハ100の一方の面110から、分割予定ライン102に沿って、ウエーハ100を完全に分割しない深さで外周余剰領域107に非加工領域112を残存させた内内加工溝111を形成するステップである。内内加工ステップ1001は、実施形態1では、
図4に示すように、下降ステップ1011と、切削ステップ1012と、上昇ステップ1013と、を含む。
【0027】
下降ステップ1011は、ウエーハ100の外縁より内側で切削ブレード21を切り込み深さまで下降させるステップである。下降ステップ1011では、制御ユニット50は、
図5に示すように、まず、切削ブレード21を、ウエーハ100の切削を開始する位置(切削開始位置)に対して鉛直方向に重なる位置に位置付ける。具体的には、下降ステップ1011では、制御ユニット50は、切削ブレード21の加工送り方向とは反対側の端が、同じ側のウエーハ100の外縁よりも残存させたい所望の非加工領域112の長さ分だけ内側に位置するように、なおかつ、切削ブレード21の切り刃がウエーハ100の分割予定ライン102と鉛直方向に重なるように、切削ブレード21を位置付けることにより、切削ブレード21をウエーハ100の切削開始位置に対して鉛直方向に重なる位置に位置付ける。下降ステップ1011では、制御ユニット50は、次に、切削ブレード21を回転させながら、切削ブレード21をウエーハ100の真上からウエーハ100の切削開始位置に向けて切り込み送り方向であるZ軸方向に沿って下降させて、切削ブレード21でウエーハ100を一方の面110側から、形成したい所望の内内加工溝111の深さに相当する切り込み深さまで切り込む。
【0028】
切削ステップ1012は、下降ステップ1011の後に、切削ブレード21とウエーハ100を保持する保持テーブル10とを相対的に加工送り方向に移動させて切削ブレード21でウエーハ100を加工するステップである。切削ステップ1012では、制御ユニット50は、
図5に示すように、下降ステップ1011に引き続き切削ブレード21を回転させながら、切削ブレード21の切り込み深さを維持しつつ、切削ブレード21をウエーハ100を保持する保持テーブル10に対して相対的に加工送り方向に沿って移動(加工送り)させることにより、ウエーハ100の切削開始位置からウエーハ100の切削を終了する位置(切削終了位置)までの間にわたって切削ブレード21でウエーハ100を分割予定ライン102に沿って切削して、切削ブレード21の切り込み深さ相当の深さの内内加工溝111を形成する。ここで、切削ステップ1012では、制御ユニット50は、切削ブレード21の加工送り方向側の端が、同じ側のウエーハ100の外縁よりも残存させたい所望の非加工領域112の長さ分だけ内側の位置に到達したタイミングで加工送りを終了することで、切削ブレード21によるウエーハ100の加工を所望のウエーハ100の切削終了位置で終了させる。
【0029】
上昇ステップ1013は、切削ステップ1012の後、ウエーハ100の外縁より内側で切削ブレード21を上昇させ、外周余剰領域107に非加工領域112を形成するステップである。上昇ステップ1013では、制御ユニット50は、
図5に示すように、切削ステップ1012によって、切削ブレード21の加工送り方向側の端が、同じ側のウエーハ100の外縁よりも残存させたい所望の非加工領域112の長さ分だけ内側の位置となるように位置付けられた切削ブレード21を、真上に切り込み送り方向に沿って上昇させることで、切削ブレード21の加工送り方向側のウエーハ100の外周余剰領域107に非加工領域112を形成する。
【0030】
ここで、内内加工溝111は、両端がともにウエーハ100の外縁よりも残存させた非加工領域112の長さ分だけ内側に位置することから、加工溝の文言の頭に内,内と付けて、このように称している。残存させたい所望の非加工領域112の長さは、実施形態1では、例えば、ウエーハ100の外縁から外周余剰領域107に収まる十分な短さであり、なおかつ、加工ユニット20による加工処理(実施形態1では切削ブレード21による切削処理)以外の加工装置1による種々の処理中に発生する外力、例えばウエーハ100を搬送中等の振動やウエーハ100を洗浄中の回転動作等により、内内加工溝111の端がウエーハ100の外縁まで伸展しない十分な長さである。また、内内加工溝111の深さは、実施形態1では、ウエーハ100を完全に分割しない深さであり、なおかつ、ウエーハ100の他方の面120から外外加工溝121を形成することで内内加工溝111と外外加工溝121とがウエーハ100の厚さ方向につながることが可能な深さであり、例えば、ウエーハ100の厚さの半分程度もしくは半分以上に相当する深さである。
【0031】
ウエーハ100は、全ての分割予定ライン102に沿って内内加工ステップ1001を実施すると、
図6、
図7及び
図8に示すように、内内加工ステップ1001を実施した全ての分割予定ライン102に沿ってウエーハ100を完全に分割しない深さの内内加工溝111が形成され、内内加工溝111の両端の先の外周余剰領域107に非加工領域112が形成される。
【0032】
支持部材固定ステップ1002は、内内加工ステップ1001の後に、ウエーハ100の一方の面110に支持部材130(
図9等参照)を固定するステップである。支持部材固定ステップ1002では、例えば、ウエーハ100の一方の面110を上方に向けて露出して支持する支持テーブルと、ウエーハ100の一方の面110の一方の端から他方の端まで移動しながら、ウエーハ100の一方の面110側から支持部材130を介して押圧する押圧ローラと、を有する不図示の支持部材貼着装置等により、内内加工ステップ1001で内内加工溝111を形成したウエーハ100の一方の面110に、支持部材130を貼着する。
【0033】
支持部材固定ステップ1002で使用する支持部材130は、基材層と糊層(粘着層)とを有する粘着テープであり、糊層(粘着層)側がウエーハ100の一方の面110に貼着されてもよい。また、支持部材固定ステップ1002で使用する支持部材130は、糊層を有さない熱可塑性樹脂からなるシートであり、いずれかの面がウエーハ100の一方の面110に熱圧着されてもよい。なお、支持部材固定ステップ1002で使用する支持部材130は、本発明ではこれらに限定されず、内内加工ステップ1001で内内加工溝111を形成したウエーハ100の一方の面110を固定することができるものであれば、どのような部材であってもよい。
【0034】
図9は、
図1の外外加工ステップ1003を説明する側断面図である。
図10は、
図1の外外加工ステップ1003を実施後のウエーハ100を示す上面図である。
図11及び
図12は、いずれも、
図1の外外加工ステップ1003を実施後のウエーハ100を示す断面図である。
図11は、
図10の(XI)-(XI)断面における断面図であり、
図12は、
図10の(XII)-(XII)断面における断面図である。なお、
図11及び
図12は、見やすさのため、分割予定ライン102及び分割予定ライン102に沿って形成される外外加工溝121の本数を少なくして示している。
【0035】
外外加工ステップ1003は、支持部材固定ステップ1002の後に、ウエーハ100の他方の面120から、分割予定ライン102に沿って、内内加工溝111に至る深さでウエーハ100の外縁まで至る外外加工溝121を形成するステップである。外外加工ステップ1003では、制御ユニット50は、
図9に示すように、まず、切削ブレード21を、加工送り方向において、ウエーハ100の分割予定ライン102の延長線上、かつ、ウエーハ100の加工送り方向とは反対側の外縁よりさらに外側に位置付け、切り込み送り方向において、ウエーハ100の他方の面120から、形成したい所望の外外加工溝121の深さに相当する切り込み深さに位置づける。外外加工ステップ1003では、制御ユニット50は、そして、切削ブレード21を回転させながら、切削ブレード21の切り込み深さを維持しつつ、切削ブレード21をウエーハ100を保持する保持テーブル10に対して相対的に加工送り方向に沿って移動(加工送り)させることにより、ウエーハ100の加工送り方向とは反対側の外縁からウエーハ100の加工送り方向側の外縁までの間にわたって切削ブレード21でウエーハ100を分割予定ライン102に沿って切削して、切削ブレード21の切り込み深さ相当の深さの外外加工溝121を形成する。
【0036】
ここで、外外加工溝121は、両端がともにウエーハ100の外縁まで到達しており、両端が前述の内内加工溝111と比較して外側に位置することから、加工溝の文言の頭に外,外と付けて、このように称している。
【0037】
外外加工ステップ1003で外外加工溝121を形成することにより、
図9に示すように、外外加工ステップ1003で形成した外外加工溝121の底面側と、その前の内内加工ステップ1001で形成した内内加工溝111の底面側とが、ウエーハ100の厚さ方向につながることにより、内内加工溝111と外外加工溝121とがウエーハ100の厚さ方向に貫通する貫通溝となり、この貫通溝を挟む両側を互いに分割する。
【0038】
ウエーハ100は、全ての分割予定ライン102に沿って外外加工ステップ1003を実施して、実施形態1に係るウエーハの加工方法を外外加工ステップ1003まで実施すると、
図10、
図11及び
図12に示すように、外外加工ステップ1003を実施した全ての分割予定ライン102に沿って外外加工溝121が形成される。そして、このように実施形態1に係るウエーハの加工方法を外外加工ステップ1003まで実施した後のウエーハ100は、デバイス領域106においては、内内加工溝111と外外加工溝121とがウエーハ100の厚さ方向につながって、ウエーハ100が複数のデバイス103のチップに分割され、外周余剰領域107においては、内内加工ステップ1001で残存させた非加工領域112により分割されない状態を維持する。これにより、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、外周余剰領域107が分割されないので、外周余剰領域107のチップ飛びを防止することができる。
【0039】
以上のような構成を有する実施形態1に係るウエーハの加工方法は、内内加工ステップ1001で、ウエーハ100の一方の面110から、外周余剰領域107に非加工領域112を残存させた内内加工溝111を形成するので、外外加工ステップ1003を実施してウエーハ100の他方の面120から外外加工溝121を形成しても、外周余剰領域107において非加工領域112により分割されない領域を形成できるので、外周余剰領域107が小さく分割されてウエーハ100の加工中やウエーハ100に対する後工程においてチップ飛びしてしまうことを防止できるという作用効果を奏する。
【0040】
従来では、特に、ウエーハ100の表面101に凹凸が大きいバンプやレンズなどを含むデバイス103が形成されている場合、支持部材130を貼着したウエーハ100の表面101の外周部分が支持部材130から浮きやすく、支持部材130への固定力が弱まることに伴い、チップ飛びが発生しやすいという問題があった。そこで、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、外周余剰領域107において非加工領域112により分割されない領域を形成することにより、チップ飛びを防止できるものであるので、このような表面101に凹凸が大きいバンプやレンズなどを含むデバイス103が形成されているウエーハ100を加工する場合には、特に顕著に、チップ飛びを防止できるという作用効果が得られる。
【0041】
また、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、一方の面110側から内内加工溝111を形成し、他方の面120側から外外加工溝121を形成することにより、デバイス領域106を複数のデバイス103のチップに分割するので、内内加工溝111の形成のみによりデバイス領域106を複数のデバイス103のチップに分割しようとすると高くなってしまう可能性の高い加工負荷や加工時間を十分に低く抑えることができるため、表裏面のチッピングを小さく抑制することができ、これにより、チップ品質の悪化を防止できるという作用効果を奏する。
【0042】
また、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、内内加工ステップ1001が、ウエーハ100の外縁より内側で切削ブレード21を切り込み深さまで下降させる下降ステップ1011と、下降ステップ1011の後に、切削ブレード21とウエーハ100を保持する保持テーブル10とを相対的に加工送り方向に移動させて切削ブレード21でウエーハ100を加工する切削ステップ1012と、切削ステップ1012の後、ウエーハ100の外縁より内側で切削ブレード21を上昇させ、外周余剰領域107に非加工領域112を形成する上昇ステップ1013と、を含む。このため、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、ウエーハ100の外縁から所望の長さの非加工領域112を好適に形成することができ、なおかつ、内内加工溝111を形成する加工負荷を低く抑えることができる。
【0043】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係るウエーハの加工方法を説明する。
図13は、実施形態2に係るウエーハの加工方法の内内加工ステップ1001を実施後のウエーハ100を示す上面図である。なお、
図13は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
実施形態2に係るウエーハの加工方法は、実施形態1に係るウエーハの加工方法において、内内加工ステップ1001を変更したものであり、内内加工ステップ1001において、一方の面110側から形成する内内加工溝111の一部を、バランスよく外外加工溝121に変更したものである。
【0045】
以上のような構成を有する実施形態2に係るウエーハの加工方法は、実施形態1に係るウエーハの加工方法と同様に、外周余剰領域107において非加工領域112により分割されない領域の形成を残すので、外周余剰領域107が小さく分割されてウエーハ100の加工中やウエーハ100に対する後工程においてチップ飛びしてしまうことを防止できる。また、実施形態2に係るウエーハの加工方法は、実施形態1に係るウエーハの加工方法よりも、内内加工溝111の形成が少ないので、より加工負荷や加工時間を十分に低く抑えることができるため、表裏面のチッピングをより小さく抑制することができ、これにより、チップ品質の悪化をより防止できるという作用効果を奏するものとなる。
【0046】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係るウエーハの加工方法を説明する。
図14は、実施形態3に係るウエーハの加工方法の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図14は、実施形態1,2と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
実施形態3に係るウエーハの加工方法は、実施形態1に係るウエーハの加工方法において、各ステップの順番を、外外加工ステップ1003、支持部材固定ステップ1002、内内加工ステップ1001の順番に変更したものであり、これに伴って、支持部材固定ステップ1002において支持部材130を固定する側の面を、ウエーハ100の一方の面110から外外加工ステップ1003で外外加工溝121を形成した他方の面120に変更したものである。
【0048】
以上のような構成を有する実施形態3に係るウエーハの加工方法は、実施形態1に係るウエーハの加工方法において、各ステップの順番を逆の順番に変更したものであるので、実施形態1に係るウエーハの加工方法と同様の作用効果を奏するものとなる。
【0049】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4に係るウエーハの加工方法を説明する。
図15は、実施形態4に係るウエーハの加工方法を実施する加工装置1-2の構成例を示す斜視図である。なお、
図15は、実施形態1-3と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
加工装置1-2は、
図15に示すように、保持テーブル10と、加工ユニット20-2と、撮像ユニット30と、X軸方向移動ユニット41と、Y軸方向移動ユニット42と、不図示のZ軸方向移動ユニットと、制御ユニット50と、を備える。加工装置1-2は、実施形態4に係るウエーハの加工方法の内内加工ステップ1001と、外外加工ステップ1003と、を実施する。加工装置1-2では、保持テーブル10は、それぞれX軸方向移動ユニット41及びY軸方向移動ユニット42により、X軸方向及びY軸方向に移動自在に設けられている。
【0051】
加工ユニット20-2は、
図15に示すように、ウエーハ100にレーザ光線を照射するレーザ光線照射器を備えるレーザ加工ユニットである。加工ユニット20-2は、レーザ光線照射器のウエーハ100に向けて照射されるレーザ光線を集光する集光器が、不図示のZ軸方向移動ユニットにより、Z軸方向に移動自在に設けられている。
【0052】
加工ユニット20-2は、レーザ光線照射器により、ウエーハ100に対して吸収性を有する波長のレーザ光線を、保持テーブル10に保持されたウエーハ100に照射しながら、X軸方向移動ユニット41により保持テーブル10上のウエーハ100をレーザ光線照射器の集光器に対して相対的に加工送り方向に沿って移動(加工送り)させることにより、レーザ光線でウエーハ100をアブレーション(昇華もしくは蒸発)させて、保持テーブル10に保持されたウエーハ100を分割予定ライン102に沿ってアブレーション加工して、加工溝を形成する。
【0053】
また、加工ユニット20-2は、レーザ光線照射器により、ウエーハ100に対して透過性を有する波長のレーザ光線を、保持テーブル10に保持されたウエーハ100に照射しながら、X軸方向移動ユニット41により保持テーブル10上のウエーハ100をレーザ光線照射器の集光器に対して相対的に加工送り方向に沿って移動(加工送り)させることにより、レーザ光線でウエーハ100の内部に分割予定ライン102に沿って、改質層と改質層からウエーハ100の表裏面に向かって伸びるクラックとからなる加工溝を形成する。ここで、改質層は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。こちらの加工溝は、ウエーハ100が研削処理やその他のエキスパンド等の分割処理が実施されることにより、分割予定ライン102に沿って分割する分割起点となる。
【0054】
実施形態4に係るウエーハの加工方法は、実施形態1-3に係るウエーハの加工方法において、内内加工ステップ1001と、外外加工ステップ1003と、を、いずれも、加工ユニット20-2によるレーザ光線の照射によって、実施形態1-3と同様の内内加工溝111及び外外加工溝121を形成するように変更したものであり、その他の構成は、実施形態1-3と同様である。
【0055】
従来では、レーザ光線の照射によって加工溝を形成する場合、レーザ加工中にチップ飛びが発生する可能性は低いものの、レーザ加工により加工溝を形成した後に研削処理やその他のエキスパンド等の分割処理を実施した際に、チップ飛びが発生して加工室内に飛散したり保持テーブル10上に落下したりする恐れがあった。そこで、以上のような構成を有する実施形態4に係るウエーハの加工方法は、実施形態1-3に係るウエーハの加工方法と同様に、ウエーハ100の一方の面110側から内内加工溝111を形成し、他方の面120側から外外加工溝121を形成するので、実施形態1-3に係るウエーハの加工方法と同様の作用効果を奏し、特に顕著に、チップ飛びを防止できることにより、チップ飛びが発生して加工室内に飛散したり保持テーブル10上に落下したりする恐れを防止できるという作用効果を奏するものとなる。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 保持テーブル
21 切削ブレード
100 ウエーハ
102 分割予定ライン
103 デバイス
106 デバイス領域
107 外周余剰領域
110 一方の面
111 内内加工溝
112 非加工領域
120 他方の面
121 外外加工溝
130 支持部材
1001 内内加工ステップ
1002 支持部材固定ステップ
1003 外外加工ステップ
1011 下降ステップ
1012 切削ステップ
1013 上昇ステップ