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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165859
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】掌蹠膿疱症の治療用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20241121BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20241121BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241121BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/4523 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/4418 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/18 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/277 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/166 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P17/04
A61P17/00 101
A61P43/00 111
A61K31/519
A61K31/4184
A61K31/4523
A61K31/4418
A61K31/18
A61K31/4439
A61K31/506
A61K31/277
A61K31/166
A61K31/352
A61K31/404
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082408
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100137512
【弁理士】
【氏名又は名称】奥原 康司
(72)【発明者】
【氏名】野村 幸世
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA23
4C084MA28
4C084MA31
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZC20
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086BC13
4C086BC17
4C086BC21
4C086BC39
4C086BC42
4C086CB09
4C086GA07
4C086MA01
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4C086MA23
4C086MA28
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4C086MA60
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4C086ZC20
4C086ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA07
4C206GA22
4C206HA13
4C206JA11
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA43
4C206MA48
4C206MA51
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA76
4C206MA80
4C206MA83
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZC20
4C206ZC41
(57)【要約】
【課題】本発明は、掌蹠膿疱症の治療用医薬組成物、および当該医薬組成物を用いた掌蹠膿疱症の治療方法の提供を課題とする。
【解決手段】本発明は、掌蹠膿疱症の治療用医薬組成物であって、MEK阻害剤を含む前記組成物である。さらに、本発明は、MEK阻害剤を含む組成物を治療対象に投与することを含む、掌蹠膿疱症の治療方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掌蹠膿疱症の治療用医薬組成物であって、MEK阻害剤を含む前記組成物。
【請求項2】
前記MEK阻害剤が、トラメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、コビメチニブ、ピマセルチブ、レファメチニブ、ウリキセルチニブ、アベマシクリブ、U0126、PD184352(CI-1040)、PD98059およびBIX 02189からなるグループから選択される1または複数であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掌蹠膿疱症の治療用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
掌蹠膿疱症(palmoplantar pustulosis:PPP)は、主として手掌や足蹠に、水疱や膿疱などの病変がくり返し形成される疾患である。手掌や足蹠以外にも、すねや膝、肘、頭などに症状があらわれることがあり、爪の変形や骨および関節に痛みを伴う場合もある。日本における患者数は約14万人と推定されており(非特許文献1)、中年以降に発症のピークがある。膿疱は無菌性であるため、他者に感染する疾患ではないが、手掌や足蹠など他人の目にとまりやすい部位に生じることから、精神的な苦痛を伴う。さらに、皮膚症状が悪化すると皮膚に亀裂が生じやすくなり、患者の生活の質が損なわれることになる。現在のところ、発症機序は不明である。
【0003】
掌蹠膿疱症の標準的な治療方法は存在しておらず、通常、皮膚の病巣に対して、ステロイド外用薬や活性型ビタミンD3外用薬の塗布、PUVA療法、レチノイドの投与、メトトレキサート投与、シクロスポリン投与などが行われている。また、最近では、IL-36R抗体の投与により皮膚症状が消失するとの報告もある(特許文献1)。
しかしながら、掌蹠膿疱症の有効な治療方法は確立していないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2020/136101
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kubotaら, BMJ Open 5: e006450 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、掌蹠膿疱症の治療用医薬組成物、および当該医薬組成物を用いた掌蹠膿疱症の治療方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、掌蹠膿疱症の患者に、MEK阻害剤であるトラメチニブを2週間投与したところ、投与開始2日目に、手掌および足跡の膿疱が完全に消失したことを見出した。
以上の知見に基づいて、本発明は完成された。
【0008】
すなわち、本発明は以下の(1)~(2)である。
(1)掌蹠膿疱症の治療用医薬組成物であって、MEK阻害剤を含む前記組成物。
(2)前記MEK阻害剤が、トラメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、コビメチニブ、ピマセルチブ、レファメチニブ、ウリキセルチニブ、アベマシクリブ、U0126、PD184352(CI-1040)、PD98059およびBIX 02189からなるグループから選択される1または複数であることを特徴とする上記(1)に記載の組成物。
なお、本明細書において「~」の符号は、その左右の値を含む数値範囲を示す。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、掌蹠膿疱症の治療用の医薬組成物、および当該医薬組成物を用いた掌蹠膿疱症の治療方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者は、掌蹠膿疱症の患者にMEK阻害剤を2週間投与したところ、手掌および足跡の膿疱が完全に消失したことを確認した。すなわち、本発明者は、MEK阻害剤が掌蹠膿疱症の治療剤としての効果を有することを初めて明らかにした。
【0011】
MEK(MAPK/ERK kinase)は、RAS/RAF/MEK/ERKシグナル伝達経路において、ERK(extracellular signal-regulated Kinase)1およびERK2のセリン残基およびスレオニン残基をリン酸化し、ERK1/2を活性化する二重特異性セリン/スレオニンキナーゼである。正常な細胞において、細胞外からの増殖因子刺激により活性化されたRasは、Rafと結合してその活性化を促し、RafはMEKをリン酸化して活性化し、次いで、MEKがERKをリン酸化して活性化する。活性化されたERKは、細胞質から核へと移行して、ELK、CREB、c-Myc、c-Fos、Sp-1などの転写因子を活性化して遺伝子の発現を誘導する。このようにRASからERKに至るリン酸化カスケードによって、遺伝子発現のための情報が伝達される経路をRAS/RAF/MEK/ERKシグナル伝達経路という。MEKには、MEK1およびMEK2の2つのサブタイプが存在する。本明細書に記載される「MEK」には、MEK1およびMEK2の両方が含まれる。
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、「本実施形態」と記す場合、特に断らない限り、本明細書に記載されている全ての実施形態を指すものとする。
第1の実施形態は、掌蹠膿疱症の治療用医薬組成物であって、MEK阻害剤を含む、組成物(以下「本実施形態にかかる医薬組成物」とも記載する)である。あるいは、第1の実施形態は、掌蹠膿疱症の治療用医薬組成物を製造するためのMEK阻害剤の使用である。掌蹠膿疱症の「治療」とは、掌蹠膿疱症における、手掌および足蹠における水疱もしくは膿疱を消失させること、および/または掌蹠膿疱症における皮膚症状以外の症状、例えば、骨関節症状を改善させることである。
【0013】
本実施形態のMEK阻害剤としては、特に限定はしないが、例えば、トラメチニブ(CAS:871700-17-3)、ビニメチニブ(CAS:606143-89-9)、セルメチニブ(CAS:606143-52-6)、コビメチニブ(CAS:934660-93-2)、ピマセルチブ(CAS:1236699-92-5)、レファメチニブ(CAS:923032-37-5)、ウリキセルチニブ(CAS:869886-67-9)、アベマシクリブ(CAS:1231929-97-7)、U0126(CAS:1173097-76-1)、PD184352(CI-1040)(CAS:212631-79-3)、PD98059(CAS:167869-21-8)およびBIX 02189(CAS:1094614-85-3)などを挙げることができる。さらに、これらの化合物以外にも、MEKの活性を抑制または阻害する抗体、ペプチドアプタマーの他、MEK遺伝子の発現を抑制もしくは阻害する物質、例えば、siRNA、miRNAなどが挙げられる。
【0014】
本実施形態にかかる医薬組成物の剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、座剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤、注射剤等が挙げられる。これらの製剤は常法に従って調製される。なお、液体製剤にあっては、用時、水または他の適当な溶媒に溶解または懸濁するものであってもよい。また、錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。注射剤の場合には、有効成分を水に溶解させて調製されるが、必要に応じて生理食塩水あるいはブドウ糖溶液に溶解させてもよく、また、緩衝剤や保存剤を添加してもよい。
【0015】
経口投与用または非経口投与用の製剤は、任意の製剤形態で提供される。製剤形態としては、例えば、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤もしくは液剤等の形態の経口投与用治療薬または治療用組成物、静脈内投与用、筋肉内投与用もしくは皮下投与用などの注射剤、点滴剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、点鼻剤、吸入剤、坐剤などの形態の非経口投与用治療薬または治療用組成物として調製することができる。注射剤や点滴剤などは、凍結乾燥形態などの粉末状の剤形として調製し、用時に生理食塩水などの水性媒体に溶解して用いることもできる。
【0016】
本実施形態にかかる医薬組成物の製造に用いられる製剤用添加物の種類、有効成分に対する製剤用添加物の割合、あるいは、治療用組成物および予防用組成物の製造方法は、その形態に応じて当業者が適宜選択することが可能である。製剤用添加物としては無機または有機物質、あるいは、固体または液体の物質を用いることができ、一般的には、有効成分重量に対して1重量%から90重量%の間で配合することができる。具体的には、製剤用添加物の例として乳糖、ブドウ糖、マンニット、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、蔗糖、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、イオン交換樹脂、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、トラガント、ベントナイト、ビーガム、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、脂肪酸グリセリンエステル、精製ラノリン、グリセロゼラチン、ポリソルベート、マクロゴール、植物油、ロウ、流動パラフィン、白色ワセリン、フルオロカーボン、非イオン性界面活性剤、プロピレングルコール、水等が挙げられる。
【0017】
経口投与用の固形製剤を製造するには、有効成分と賦形剤成分、例えば、乳糖、デンプン、結晶セルロース、乳酸カルシウム、無水ケイ酸などと混合して散剤とするか、さらに必要に応じて白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤などを加えて湿式または乾式造粒して顆粒剤とする。錠剤を製造するには、これらの散剤および顆粒剤をそのまま、あるいは、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤を加えて打錠すればよい。これらの顆粒または錠剤はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸-メタクリル酸メチルポリマーなどの腸溶剤基剤で被覆して腸溶剤製剤、あるいは、エチルセルロース、カルナウバロウ、硬化油などで被覆して持続性製剤とすることもできる。また、カプセル剤を製造するには、散剤または顆粒剤を硬カプセルに充填するか、有効成分をそのまま、あるいは、グリセリン、ポリエチレングリコール、ゴマ油、オリーブ油などに溶解した後ゼラチン膜で被覆し軟カプセルとすることができる。
【0018】
注射剤を製造するには、有効成分を必要に応じて塩酸、水酸化ナトリウム、乳糖、乳酸、ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのpH調整剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖などの等張化剤と共に注射用蒸留水に溶解し、無菌濾過してアンプルに充填するか、さらにマンニトール、デキストリン、シクロデキストリン、ゼラチンなどを加えて真空凍結乾燥し、用時溶解型の注射剤としてもよい。また、有効成分にレチシン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などを加えて水中で乳化せしめ注射剤用乳剤とすることもできる。
【0019】
直腸投与剤を製造するには、有効成分をカカオ脂、脂肪酸のトリ、ジおよびモノグリセリド、ポリエチレングリコールなどの座剤用基材と共に加湿して溶解し型に流し込んで冷却するか、有効成分をポリエチレングリコール、大豆油などに溶解した後、ゼラチン膜で被覆すればよい。
【0020】
本実施形態にかかる医薬組成物の投与量および投与回数は特に限定されず、治療目的、患者の体重や年齢などの条件に応じて、医師の判断により適宜選択することが可能である。
一般的には、経口投与における成人一日あたりの投与量は0.01~1000mg(有効成分重量)程度であり、一日1回または数回に分けて、あるいは、数日ごとに投与することができる。注射剤として用いる場合には、成人に対して一日量0.001~100mg(有効成分重量)を連続投与または間欠投与することが望ましい。
【0021】
本実施形態にかかる医薬組成物は、植込錠およびマイクロカプセルに封入された送達システムなどの徐放性製剤として、体内から即時に除去されることを防ぎ得る薬学的に許容可能な担体を用いて調製してもよい。そのような担体として、エチレンビニル酢酸塩、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生物分解性、生物適合性ポリマーを用いることができる。このような材料は、当業者によって容易に調製することができる。また、リポソームの懸濁液も薬学的に許容可能な担体として使用することができる。リポソームは、限定はしないが、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導ホスファチジルエタノール(PEG-PE)を含む脂質組成物として、使用に適するサイズになるように、適当なポアサイズのフィルターを通して調製され、逆相蒸発法によって精製することができる。
【0022】
本実施形態にかかる医薬組成物は、投与方法等の説明書と共にキットの形態で提供してもよい。キット中に含まれる薬剤は、当該薬剤の活性を長期間有効に持続し、容器内側に吸着することなく、また、構成成分を変質することのない材質で製造された容器により供給される。例えば、封着されたガラスアンプルは、窒素ガスのような中性で不反応性を示すガスの存在下で封入されたバッファーなどを含んでもよい。
また、キットには使用説明書が添付されてもよい。当該キットの使用説明は、紙などに印刷されたものであっても、CD-ROM、DVD-ROMなどの電磁的に読み取り可能な媒体に保存されて使用者に供給されてもよい。
【0023】
第2の実施形態は、MEK阻害剤を含む組成物(本実施形態にかかる治療用医薬組成物)を治療対象に投与することを含む掌蹠膿疱症の治療方法である。
ここで「治療」とは、掌蹠膿疱症における、手掌および足蹠における水疱もしくは膿疱を消失させること、および/または掌蹠膿疱症における皮膚症状以外の症状、例えば、骨関節症状を改善させることである。
【0024】
本実施形態にかかる掌蹠膿疱症の治療方法の対象は、特に限定はしないが、例えば、ヒトの他、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレットなどのペット動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの家畜動物などのほ乳動物が好ましく、特に好ましい「ほ乳動物」は、ヒトである。
【0025】
本明細書が英語に翻訳されて、単数形の「a」、「an」および「the」の単語が含まれる場合、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限り、単数のみならず複数のものも含むものとする。また、本明細書において、「同程度」、「約」とは、±10%の数値範囲を意味する。
以下に実施例を示してさらに本発明の説明を行うが、本実施例は、あくまでも本発明の実施形態の例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例0026】
掌蹠膿疱症とは無関係な疾患の臨床試験の被験者であって、掌蹠膿疱症を有する被験者にMEK阻害剤を投与した。本試験では、MEK阻害剤として、トラメチニブ(trametinib)と用いた。トラメチニブは、ノバルティスファーマ社製のものを使用した。
掌蹠膿疱症を有する被験者に、抗腫瘍剤として使用する場合の通常用量の半量(1.0 mg/day)のトラメチニブを、毎日、2週間、経口投与した。その結果、投与開始2日目に、当該被験者の手掌および足蹠の膿疱が、完全に消失していることを確認した。さらに、当該被験者における、掌蹠膿疱症に伴うと考えられる膝関節痛が改善したことを確認した。
なお、当該被験者に対する2週間のトラメチニブの投与終了後、10日ほどで、手掌、足蹠における掌蹠膿疱症は再発した。従って、掌蹠膿疱症の治療には、MEK阻害剤の継続的な使用が必要であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明にかかる治療用医薬組成物は、掌蹠膿疱症の諸症状の改善に効果を発揮すると考えられる。従って、本発明は、医学分野における利用が期待される。