(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165880
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 53/00 20060101AFI20241121BHJP
B24B 53/017 20120101ALI20241121BHJP
B24B 53/12 20060101ALI20241121BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20241121BHJP
B24B 53/02 20120101ALI20241121BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20241121BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20241121BHJP
B23Q 17/12 20060101ALI20241121BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B24B53/00 A
B24B53/017 A
B24B53/12 Z
B24B49/10
B24B53/02
B24B7/04 A
B23Q17/09 H
B23Q17/12
H01L21/304 622M
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082451
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】松尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 涼子
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C043
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C029CC05
3C034AA07
3C034BB73
3C034BB92
3C034CA24
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3C034CB14
3C043BA03
3C043BA13
3C043BA18
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3C043EE03
3C047AA02
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3C047EE04
5F057AA19
5F057AA53
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5F057FA37
5F057FA39
5F057FA45
5F057GA27
5F057GA28
5F057GB22
5F057GB34
(57)【要約】
【課題】振動センサが異常となる交換時期を判断することが可能となる加工装置を提供する。
【解決手段】研磨パッド43でワークを加工する加工装置1であって、ワークを保持するチャックテーブルと、研磨パッド43の研磨面431でワークを加工する研磨機構4と、研磨機構4を昇降させる昇降機構25と、研磨パッド43の研磨面431をドレッシングするドレス砥石75を備えるドレスユニット70と、ドレス砥石75の上端面に研磨パッド43の研磨面431が接触した際の弾性波を検出する振動センサ80と、ドレス砥石75に流体FLUを噴射するノズルと、流体FLUがドレス砥石75に当たったことにより振動センサ80が検出した出力電圧Vaが、予め設定した閾値Vt以上であったら振動センサ80が正常、閾値Vt未満であったら振動センサ80が異常と判断する制御部601と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工具でワークを加工する加工装置であって、
該ワークを保持するチャックテーブルと、該加工具の下面で該ワークを加工する加工機構と、該加工機構を昇降させる昇降機構と、該加工具の下面をドレッシングするドレス砥石を備えるドレスユニットと、該ドレス砥石の上端面に該加工具の下面が接触した際の弾性波を検出する振動センサと、該ドレス砥石に流体を噴射するノズルと、
該流体が該ドレス砥石に当たったことにより該振動センサが検出した値が、予め設定した許容範囲に入っていたら該振動センサが正常、許容範囲外であったら該振動センサが異常と判断する判断部と、を備える加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工具でワークを加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工具でワークを加工する加工装置として、特許文献1-3に開示のように、研磨パッドの下面などの研磨面でウェーハなどのワークを研磨する研磨装置が知られている。従来の研磨装置においては、研磨パッドによる研磨レートを維持させるために、複数枚のウェーハを研磨するごとに、回転する研磨パッドの研磨面にドレス砥石を接触させて、研磨面のドレッシングを行う。そして、ドレッシングが行われた後の研磨パッドの量は、特許文献4に開示の研磨装置のように物理的に算出されている。
【0003】
ドレス砥石を配置したドレッシングユニットには、ドレス砥石を研磨面に接触させたときに発生する弾性波を検出するAE(Acoustic Emission)センサなどの振動センサが配置されている。ドレス砥石に研磨面を接触させた際に振動センサから出力される出力信号は、アンプユニットで出力電圧に変換され、その出力電圧の大きさが所定の値以上になった時の研磨面高さで、研磨パッドを水平方向に移動させドレッシングが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-192541号公報
【特許文献2】特開2017-154238号公報
【特許文献3】特開2017-100254号公報
【特許文献4】特開2022-135442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術においては、ドレス砥石に研磨面を押し付ける強さを一定にするために、振動センサを利用しているものの、この振動センサは、経年劣化により出力電圧が小さくなるという特性がある。このため、振動センサが経年劣化すると、小さくなった出力電圧に対応する大きさ分だけドレス砥石に研磨面を強く押し付けてしまうという異常が発生することとなる。その結果、研磨面を必要以上に大きくドレッシングしてしまい研磨パッドの消耗が大きくなるという問題がある。
【0006】
従来の技術においては、振動センサの経年劣化に対する対策として、定期的に振動センサが交換されているが、未だ使用可能な状態の振動センサであるにも関わらず交換されていることがあり、不経済である。したがって、ワークを加工する加工装置においては、振動センサが異常となる交換時期を判断するという解決すべき課題がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、振動センサが異常となる交換時期を判断することが可能となる加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の加工装置は、加工具でワークを加工する加工装置であって、該ワークを保持するチャックテーブルと、該加工具の下面で該ワークを加工する加工機構と、該加工機構を昇降させる昇降機構と、該加工具の下面をドレッシングするドレス砥石を備えるドレスユニットと、該ドレス砥石の上端面に該加工具の下面が接触した際の弾性波を検出する振動センサと、該ドレス砥石に流体を噴射するノズルと、該流体が該ドレス砥石に当たったことにより該振動センサが検出した値が、予め設定した許容範囲に入っていたら該振動センサが正常、許容範囲外であったら該振動センサが異常と判断する判断部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、振動センサが異常となる交換時期を判断することが可能となり、異常の時に交換時期をオペレータに通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】振動センサ判断時の研削機構とドレスユニットとの関係を示す概略断面図である。
【
図3】ドレッシング時の研削機構とドレスユニットとの関係を示す概略断面図である。
【
図4】振動センサ判断時の出力電圧と時間との関係を示す図である。
【
図5】ドレッシング時の出力電圧と時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る加工装置1は、
図1に示すように、チャックテーブルCTA~CTDと、第1研削機構30と、第2研削機構31と、研磨機構4と、制御装置60と、ドレスユニット70と、振動センサ80と、ノズル90と、を備える。研磨機構4は、加工機構の一例である。加工装置1は、チャックテーブルCTA~CTD上に保持されたウェーハなどのワークを、第1研削機構30および第2研削機構31により研削し、研磨機構4により研磨する装置である。加工装置1は、例えば、第1の装置ベース10の後方(+Y方向側)に第2の装置ベース11が連結されて構成されている。第1の装置ベース10上は、ワークの搬出入等が行われる領域である搬出入領域Aを構成している。一方、第2の装置ベース11上は、第1研削機構30、第2研削機構31又は研磨機構4によってチャックテーブルCTA~CTD上に保持されたワークの加工が行われる領域である加工領域Bを構成している。
【0012】
第1の装置ベース10の正面側(-Y方向側)には、第1のカセット載置部150および第2のカセット載置部151が設けられている。第1のカセット載置部150には加工前のワークが収容される第1のカセット1501が載置され、第2のカセット載置部151には加工後のワークを収容する第2のカセット1511が載置される。
【0013】
第1のカセット1501の後方側(+Y方向側)には、第1のカセット1501から加工前のワークを搬出するとともに加工後のワークを第2のカセット1511に搬入するロボット155が配設されている。ロボット155に隣接する位置には、仮置き領域152が設けられており、仮置き領域152には位置合わせ機構153が配設されている。位置合わせ機構153は、第1のカセット1501から搬出され仮置き領域152に載置されたワークを所定の位置に位置合わせする。
【0014】
位置合わせ機構153に隣接する位置には、ワークを保持した状態で旋回する第1搬送機構1541が配置されている。第1搬送機構1541は、位置合わせ機構153において位置合わせされたワークを保持し、そのワークを加工領域B内に配設されているいずれかのチャックテーブルCTA~CTDへ搬送する。第1搬送機構1541の隣には、加工後のワークを保持した状態で旋回する第2搬送機構1542が設けられている。第2搬送機構1542に近接する位置には、第2搬送機構1542により搬送された加工後のワークを洗浄する洗浄機構156が配置されている。第2搬送機構1542に保持されたワークは、いずれかのチャックテーブルCTA~CTDから洗浄機構156に搬送される。また、洗浄機構156により洗浄されたワークは、ロボット155により第2のカセット1511に搬入される。
【0015】
第2の装置ベース11上の左方(-X方向側)には、第1のコラム12が立設されている。第1のコラム12の+X方向側の側面には、昇降機構20が配設されている。昇降機構20は、鉛直方向(Z軸方向)の軸心を有するボールネジ200と、ボールネジ200と平行に配設された一対のガイドレール201と、ボールネジ200に連結されボールネジ200を回動させるモータ202と、内部のナットがボールネジ200に螺合し側部がガイドレール201に摺接する昇降板203とから構成される。モータ202がボールネジ200を回動させると、これに伴い昇降板203がガイドレール201にガイドされてZ軸方向に往復移動し、昇降板203上に配設された第1研削機構30がZ軸方向に研削送りされる。
【0016】
第1研削機構30は、軸方向が鉛直方向(Z軸方向)であるスピンドル300と、スピンドル300を回転可能に支持するハウジング301と、スピンドル300を回転駆動するモータ302と、スピンドル300の下端に装着された円形状のマウント303と、マウント303の下面に着脱可能に装着された研削ホイール304とを備える。研削ホイール304は、ホイール基台3041と、ホイール基台3041の底面に環状に配設された略直方体形状の複数の研削砥石3042とを備える。研削砥石3042は、加工具の一例である。研削砥石3042は、例えば、粗研削に用いられる砥石であり、砥石中に含まれる砥粒が比較的大きな砥石である。すなわち、第1研削機構30は、ワークに対して粗研削を施すための粗研削機構として機能する。第1研削機構30は、昇降板203に取り付けられたホルダ261により保持された状態で配設されている。
【0017】
また、第2の装置ベース11上の後方(+Y方向側)には、第2のコラム13が第1のコラム12に対し直交してY軸方向に立設されている。第2のコラム13の-Y方向側の側面には、昇降機構20が配設されている。第2のコラム13に配設された昇降機構20は、第2研削機構31をZ軸方向に研削送りする。第2研削機構31は、軸方向が鉛直方向(Z軸方向)であるスピンドル310と、スピンドル310を回転可能に支持するハウジング311と、スピンドル310を回転駆動するモータ312と、スピンドル310の下端に接続された円形状のマウント313と、マウント313の下面に着脱可能に接続された研削ホイール314とを備える。研削ホイール314は、ホイール基台3141と、ホイール基台3141の底面に環状に配設された略直方体形状の複数の研削砥石3142とを備える。研削砥石3142は、加工具の一例である。研削砥石3142は、例えば、仕上げ研削に用いられる砥石であり、砥石中に含まれる砥粒が比較的小さな砥石である。すなわち、第2研削機構31は、ワークに対して仕上げ研削を施すための仕上げ研削機構として機能する。
【0018】
また、第2の装置ベース11上の後方(+Y方向側)には、第3のコラム14が第2のコラム13に対し並列してY軸方向に立設されている。第3のコラム14の-Y方向側の側面には、水平移動機構24が配設されている。水平移動機構24は、X軸方向の軸心を有するボールネジ240と、ボールネジ240と平行に配設された一対のガイドレール241と、ボールネジ240を回動させるモータ242と、内部のナットがボールネジ240に螺合し側部がガイドレール241に摺接する可動板243とから構成される。そして、モータ242がボールネジ240を回動させると、これに伴い可動板243がガイドレール241にガイドされてX軸方向に移動し、可動板243上に配設された研磨機構4が可動板243の移動に伴いX軸方向に移動する。
【0019】
可動板243上には、研磨機構4をチャックテーブルに対して接近および離反する方向に昇降させる昇降機構25が配設されている。昇降機構25は、鉛直方向(Z軸方向)の軸心を有するボールネジ250と、ボールネジ250と平行に配設された一対のガイドレール251と、ボールネジ250に連結しボールネジ250を回動させるモータ252と、内部のナットがボールネジ250に螺合し側部がガイドレール251に摺接する昇降板253とから構成される。モータ252がボールネジ250を回動させると、これに伴い昇降板253がガイドレール251にガイドされてZ軸方向に往復移動し、昇降板253に配設された研磨機構4がチャックテーブルに対して接近および離反するZ軸方向に昇降する。
【0020】
研磨機構4は、例えば、軸方向が鉛直方向(Z軸方向)であるスピンドル40と、スピンドル40を回転可能に支持するハウジング41と、スピンドル40を回転駆動するモータ42と、スピンドル40の下端に接続されチャックテーブルに保持されるワークを研磨する研磨パッド43とを少なくとも備える。研磨パッド43は、加工具の一例であり、スピンドル40の下端に接続されたマウント44に固定されている。研磨機構4は、昇降板253に取り付けられたホルダ263により保持された状態で配設されている。
【0021】
図1に示すように、第2の装置ベース11上には回転可能なターンテーブル6が配設され、ターンテーブル6の上面51には、例えば4つのチャックテーブルCTA、CTB、CTC、CTDが周方向に等間隔に配設されている、ターンテーブル6の中心には、ターンテーブル6を自転させるための図示しない回転軸が配設されており、回転軸を中心としてターンテーブル6を自転させることができる。ターンテーブル6が自転することで、4つのチャックテーブルCTA、CTB、CTC、CTDを公転させ、仮置き領域152の近傍から、第1研削機構30の下方、第2研削機構31の下方、研磨機構4の下方へと順次移動させることができる。
【0022】
図1、
図2、
図3に示すように、加工装置1は、ノズル90を備える。
図2、
図3に示すように、ノズル90には、エア供給管91を介してコンプレッサー等からなるエア供給源92が連通しており、エア供給管91にはソレノイドバルブ等の開閉バルブ93が配設されている。
【0023】
ノズル90は、ドライ研磨時に、ドレス砥石75に乾燥エアなどの気体を流体FLUとして噴射するエアノズルにより構成される。ドレス砥石75の先端にノズル90から噴射される乾燥エアを吹きかけることにより、ドレス砥石75に付着した水分を吹き飛ばしたり、塵を飛ばしたりすることができる。ノズル90から噴射される流体FLUの流量は、予め設定した任意の値に保持される。既存のノズル90の構成を用いることができるため、新たな構成を追加することなく加工装置1を製作することができ、製作コストの低減を図ることができる。
【0024】
ノズル90は、乾燥エアを噴射するエアノズルにより構成されているがこの限りではない。例えば、ノズル90は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)時に、ドレス砥石75に水などの液体を流体FLUとして噴射する水ノズルにより構成してもよい。この場合、
図2、
図3に示すエア供給管91の代わりに水供給管(図示せず)が配置され、エア供給源92の代わりにポンプ等からなる水供給源(図示せず)が配置される。ドレス砥石75の先端にノズル90から噴射される水を吹きかけることにより、ドレス砥石75に付着した洗浄液を吹き飛ばしたり、塵を飛ばしたりすることができる。
【0025】
図1、
図2、
図3に示すように、研磨パッド43の下方には、研磨パッド43の研磨面(下面)431をドレス(以下、「ドレッシング」ともいう)するドレスユニット70が配設されている。ドレスユニット70は、
図2、
図3に示すように、研磨パッド43の研磨面431に接触してドレスを行うドレス砥石75と、ドレス砥石75を配置したドレス部71が配設されるベース72と、ベース72を昇降可能に支持する移動基板76と、移動基板76を垂直方向に沿って移動させる昇降シリンダ73と、を備える。ドレス部71は、ベース72から立設された支持部74と、支持部74の上端に固定されたドレス砥石75と、から構成される。
【0026】
昇降シリンダ73は、加工装置1の下方に配設され、正転・逆転可能なパルスモータ(図示せず)と、パルスモータによって駆動されるボールネジ(図示せず)と、を備える。パルスモータを正転駆動すると移動基板76が上昇し、パルスモータを逆転駆動すると移動基板76が下降する。
【0027】
非ドレス時には、昇降シリンダ73がドレスユニット70を下降させておき、少なくともドレス部71のドレス砥石75の上面がチャックテーブルCTA~CTDの保持面よりも下側(-Z方向)に位置するようにし、ドレス砥石75が研磨面431に接触しないように退避しておく。
【0028】
ドレスユニット70は、振動センサ80を更に備え、振動センサ80は、ドレス部71の下方位置であって、ベース72と移動基板76との間に配設される。振動センサ80は、ドレス部71におけるドレス砥石75の上面に研磨パッド43が接触したときに発生する弾性波を検出する機能を有している。また、振動センサ80は、流体FLUがドレス砥石75に当たったときに発生する弾性波を検出することもできる。振動センサ80としては、例えばAE(Acoustic Emission)センサを用いることができる。既存の振動センサ80を用いることができるため、新たな構成を追加することなく加工装置1を製作することができ、製作コストの低減を図ることができる。
【0029】
図2、
図3に示すように、加工装置1は、制御装置60、信号処理部61および通知部62を更に備え、信号処理部61に振動センサ80が接続されている。振動センサ80は、ドレス砥石75の上端面に研磨パッド43の研磨面431が接触した際の弾性波を検出する。信号処理部61は、振動センサ80が検出した出力信号を出力電圧に変換する信号処理部61であるアンプ等を備えている。従って、振動センサ80が検出した出力信号は、信号処理部61によって変換された出力電圧として制御装置60に入力される。
【0030】
制御装置60は、研磨機構4、第1研削機構30(
図1参照)、第2研削機構31(
図1参照)を含む装置各部を統括制御する。制御装置60は、各種処理を実行するプロセッサ等により構成される制御部601と、記憶部602(メモリ)と、によって構成される。
【0031】
制御部601は、判断部の一例として機能し、加工装置1を統括的に制御する。制御装置60の記憶部602には、加工装置1の制御プログラムの一部として、加工方法の各種処理を実行するためのプログラムや各種閾値が記憶されている。
【0032】
記憶部602は、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。記憶部602は、振動センサ80からの出力信号(出力電圧)と比較するための閾値や、許容範囲を予め記憶する。閾値や、許容範囲は、経験則により任意に算出されて設定された電圧値が記憶部602に記憶される。
【0033】
制御部601は、流体FLUがドレス砥石75に当たったことにより振動センサ80が検出した値、つまり、振動センサ80から出力された出力信号を信号処理部61によって変換した出力電圧値が、予め設定した許容範囲に入っていたか否かを判断する。制御部601は、出力電圧値が、予め設定した許容範囲に入っていたら振動センサ80を正常と判断し、許容範囲に入っていなかった振動センサ80を異常と判断する。
【0034】
また、制御部601は、出力電圧値が、予め設定した閾値未満となったか否かを判断してもよい。制御部601は、出力電圧値が、予め設定した閾値未満となった場合には振動センサ80を異常と判断し、閾値以上となった場合には振動センサ80を正常と判断する。次に、振動センサ80が正常であるか異常であるかを判断する具体例について説明する。
【0035】
図4を参照して、振動センサ80の経年劣化による異常を判断する処理について説明する。
図4の縦軸には出力電圧値が設定され、横軸には時間(タイミング)が設定されている。
図4の実施形態においては、値Vyが予め設定した閾値として設定されている。
【0036】
図2に示すように、制御部601は、任意のタイミングTfにおいて、エア供給源92および開閉バルブ93を制御して、ノズル90からドレス砥石75の先端に向けて流体FLU(乾燥エア)が噴射する。制御部601は、流体FLUがドレス砥石75に当たったことにより任意のタイミングTfにおいて、振動センサ80が検出し、信号処理部61によって変換された出力電圧値Vaが、閾値として設定された値Vx未満、値Vy以上の範囲に入っていたか否かを判断する。ノズル90から噴射される流体FLUの流量はあらかじめ設定した任意の流量に設定されているため、振動センサ80が正常の場合には、振動センサ80が検出し、信号処理部61によって変換された出力電圧値Vaは一定の値(値Vxから値Vyの間)近辺に収束することとなる。
【0037】
振動センサ80により検出され、信号処理部61によって変換された出力電圧値は、振動センサ80の経年劣化により低下する。このため、異常の場合には、振動センサ80が検出し、信号処理部61によって変換された出力電圧値Vbは、閾値として設定された値Vy未満となってしまう。そして、制御部601は、振動センサ80が検出し、信号処理部61によって変換された出力電圧値Vbが閾値として設定された値Vy未満となった場合には、振動センサ80が経年劣化により異常となったと判断する。この場合、制御部601は、通知部62に対し異常である旨の情報を通知する。異常である旨の通知を受け付けた通知部62は、振動センサ80の経年劣化による異常が発生したことを、オペレータに対し通知する。通知部62は、ディスプレイおよび/またはスピーカなどの出力装置により構成される。したがって、通知部62は、メッセージ、警告画面、音声などのうち少なくとも1つ以上の機構を用いて、オペレータに対し振動センサ80の経年劣化により異常が発生したことを通知することができる。
【0038】
これにより、振動センサ80の正常または異常を判断することが可能となり、異常の時に交換時期をオペレータに通知することができる。その結果、経年劣化した振動センサ80を正確に判断することができ、経年劣化によって出力電圧値が低い値となることにより、ドレス砥石75に研磨面431を強く押し付け過ぎ、そのためをセンサ80が検出し、信号処理部61によって変換された出力電圧の、研磨面431を大きくドレッシングしてしまい研磨パッド43の消耗が大きくなる問題を未然に防ぐことができる。
【0039】
これに対し、振動センサ80が検出し出力した出力電圧値Vaが、閾値として設定された値Vy以上である場合には、制御部601は、振動センサ80が未だ経年劣化せずに正常であると判断する。この場合、制御部601は、通知部62に対し正常である旨の情報を通知する。正常である旨の通知を受け付けた通知部62は、振動センサ80が未だ経年劣化による異常が発生せず正常であることを、オペレータに対し通知する。通知部62は、メッセージ、警告画面、音声などのうち少なくとも1つ以上の機構を用いて、オペレータに対し振動センサ80が未だ経年劣化せずに正常であることを通知することができる。これにより、振動センサ80が未だ経年劣化せずに正常であることを判断することが可能となり、未だ使用可能な状態の振動センサ80であるにも関わらず交換してしまうことを抑止し、維持コストの低減を図ることができる。なお、上述の実施形態においては、通知部62がオペレータに対し通知しているがこの限りではなく、通知部62の構成を省略し、制御部601がオペレータに対し通知してもよい。
【0040】
制御部601により振動センサ80が正常か異常かを判断する処理は、任意のタイミングで実行することができる。任意のタイミングとしては、加工装置1の起動時ごと、研磨工程ごと、毎時間ごと、所定枚数のワークを研磨するごと、のうち少なくとも1つのタイミングおよび/またはそれらの組み合わせで実行することができる。好ましくは、振動センサ80が正常か異常かを判断する処理は、モータ42、202、242、252、302、312、ロボット155、第1搬送機構1541、第2搬送機構1542などの機構が駆動しないタイミングにおいて実行されることが望まれる。これにより、ノズル90から噴射される流体FLU以外により発生する外乱を排除することができ、振動センサ80が正常か異常かを判断する処理の精度を向上することができる。
【0041】
研磨装置は、研磨機構4の研磨により生じた研磨屑が研磨パッド43の研磨面431に付着して研磨面431が目詰まりすることを解消したり防止したりするために、制御部601は、適宜のタイミングで、研磨面431にドレス砥石75を押し当てて研磨面431をドレスする。
【0042】
研磨面431のドレス時に制御部601は、昇降シリンダ73を上側(+Z方向)に上昇させ、研磨機構4を下降させ、ドレス砥石75に研磨パッド43の研磨面431を接触させ、記憶部602が記憶した閾値と、振動センサ80から出力され信号処理部61によって変換された出力電圧値が閾値以上となったことを判断する。これにより、振動センサ80でドレス砥石75に研磨パッド43が接触したことを検知することができる。そして、制御部601は、かかる出力電圧値が閾値以上となったときの研磨面431の高さ(以下、「研磨面高さ」ともいう)で、研磨パッド43を水平方向に移動させてドレッシングを行うよう制御する。これにより、ドレス砥石75に研磨面431を押し付ける強さを一定にしてドレッシングを行うことができる。
【0043】
制御部601は、ドレス砥石75に研磨面431を押し付ける強さを一定にするために、振動センサ80により検出され、信号処理部61によって変換された出力電圧値が、予め設定した閾値以上となったことを判断する。
【0044】
図5を参照して、振動センサ80によりドレス砥石75に研磨面431を押し付ける強さを一定にする処理について説明する。
図5の縦軸には出力電圧値が設定され、横軸には時間(タイミング)が設定されている。
図5の実施形態においては、値Vzが予め設定した閾値として設定されている。
【0045】
図3に示すように、制御部601は、昇降シリンダ73を制御して、昇降シリンダ73を上側(+Z方向)に上昇させる。
図5に示すように、制御部601は、研磨機構4を下降させドレス砥石75に研磨パッド43が接触したタイミングTgにおいて、研磨パッド43にドレス砥石75が当たったことにより振動センサ80が出力信号を出力し、信号処理部61によって変換された出力電圧値Vcが、閾値として設定された値Vz以上となったか否を判断する。
【0046】
振動センサ80が検出し、信号処理部61によって変換された出力電圧のVcが、閾値として設定された値Vz未満である場合には、制御部601は、ドレス砥石75が研磨面431に接触していないか、または、ドレス砥石75が研磨面431に対しドレッシングするのに必要十分な圧力で押し付けられていないと判断する。この場合、制御部601は、研磨機構4を下降させる。
【0047】
これによって、振動センサ80から出力信号が出力され、信号処理部61によって変換された出力電圧値Vcが、閾値として設定された値Vz以上となった場合には、制御部601は、ドレス砥石75が研磨面431に対しドレッシングするのに必要十分な圧力で押し付けられていると判断する。この場合、制御部601は、出力電圧値Vcが、閾値として設定された値Vzと、一致するように、研磨機構4を昇降させる昇降機構20を制御する。これにより、ドレス砥石75を研磨面431に対しドレッシングするのに必要十分な圧力で押し付け続けることができ、安定してドレッシングを行うことができる。
【0048】
上述の実施形態に係る加工装置1によれば、振動センサ80の正常または異常を判断することが可能となり、異常の時に交換時期をオペレータに通知することができる。その結果、経年劣化した振動センサ80を正確に判断することができ、ドレス砥石75に研磨面431を強く押し付け過ぎることを抑止することができる。これにより、研磨面431を必要以上に大きくドレッシングしてしまい研磨パッド43の消耗が大きくなる問題を未然に防ぐことができる。また、振動センサ80を定期交換するように取り決めていることにより、未だ使用可能な状態の振動センサ80であるにも関わらず交換されてしまうことを抑止し、維持コストの低減を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る振動センサ80の正常、異常の判断は、ドレス砥石75に流体FLUを噴射する形態で行うことができ、流体FLUによってドレス砥石75を清掃する際、または、研磨パッドをドレッシングする前に実施することができる。このため、非接触で振動センサ80の正常、異常の判断を行うためドレス砥石75や研磨パッド43の摩耗や劣化を減らし、機械的な負担を最小限にすることができる。
【0050】
なお、上述の実施形態においては、加工機構の一例として、研磨機構4を例にして説明したがこの限りではない。例えば、加工機構の一例として、第1研削機構30または第2研削機構31を用いてもよい。加工機構として、第1研削機構30または第2研削機構31を用いる場合には、ドレス砥石75は、研削砥石3042、3142の下面の研削面をドレスすることができる。なお、研削面をドレスする際には、ノズルから洗浄水をドレス砥石に噴射する。振動センサは、洗浄水が当たることによって出力信号を出力し、上述の実施形態と同様に振動センサの正常、異常を判断する。
【0051】
また、上述の実施形態においては、加工機構の一例として、研磨機構4を例にして説明したがこの限りではない。例えば、加工機構の一例として、図示しない切削装置を用いてもよい。この場合、加工具の一例として、研磨パッド43の代わりに、切削ブレードを用いることができる。切削装置は、切削ブレードとチャックテーブルを相対的に移動させることで、チャックテーブルに保持されたワークを切削ブレードで切削するように構成されている。加工機構の一例として、切削装置を用いる場合には、振動センサは研削装置を構成する切削手段に設けられる。例えば、切削手段は、ブレードクーラー(サイドノズル)に設けてもよい。
【0052】
また、上述の実施形態においては、制御部601は、信号処理部61によって変換された出力電圧値Vaが、閾値として設定された値Vy未満となった場合には振動センサ80が異常であると判断し、信号処理部61によって変換された出力電圧値Vaが、閾値として設定された値Vy以上となった場合には振動センサ80が正常であると判断しているがこの限りではない。例えば、信号処理部61によって変換された出力電圧値Vaが、閾値として設定された値Vy以上となった場合には振動センサ80が異常であると判断し、信号処理部61によって変換された出力電圧値Vaが、閾値として設定された値Vy未満となった場合には振動センサ80が正常であると判断してもよい。また、例えば、信号処理部61によって変換された出力電圧値Vaが、第1の閾値として設定された値Vy以上から第2の閾値として設定された値Vxの範囲内となった場合には振動センサ80が異常であると判断し、信号処理部61によって変換された出力電圧値が、第1の閾値として設定された値Vy以上から第2の閾値として設定された値Vxの範囲外となった場合には振動センサ80が正常であると判断してもよい。
【0053】
また、上述の実施形態においては、振動センサ80が1つの場合について説明したがこの限りではない。例えば、振動センサ80は、2つ以上の任意の数であってもよい。更に好ましくは、3つ以上備えることが望ましい。これにより、振動センサ80の安定性を向上ことができ、振動センサ80の検出精度を向上することができる。なお、振動センサ80は、ベース72に配置されていてもよい。
【0054】
また、上述の実施形態においては、ノズル90から流体FLUを噴射しているがこの限りではない。例えば流体FLUとして、スピンドル300および/またはスピンドル310から供給する水であってもよい。
【0055】
また、本実施形態では、加工機構の一例として、研磨機構4を備えた加工装置1を例に挙げて説明したが、加工装置1は、研磨機構4を備えていなくてもよい。この場合、加工装置1は、また、加工装置1は、第1研削機構30および/または第2研削機構31備えたものであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:加工装置、3:加工機構、4:研磨機構、20:昇降機構、25:昇降機構、
30:第1研削機構、31:第2研削機構、43:研磨パッド、60:制御装置、
61:信号処理部、70:ドレスユニット、71:ドレス部、72:ベース、
73:昇降シリンダ、74:支持部、75:ドレス砥石、76:移動基板、
80:振動センサ、90:ノズル、91:エア供給管、92:エア供給源、
93:開閉バルブ、314:研削ホイール、431:研磨面、601:制御部、
602:記憶部、3042:研削砥石、3142:研削砥石、FLU:流体