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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165888
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】バリ除去装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241121BHJP
   B23D 79/00 20060101ALI20241121BHJP
   B06B 1/06 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01L21/78 P
B23D79/00 A
B06B1/06 Z
H01L21/78 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082465
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】公平 拓見
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 泰三
(72)【発明者】
【氏名】倉田 みのり
【テーマコード(参考)】
3C050
5D107
5F063
【Fターム(参考)】
3C050FA01
3C050FB11
5D107BB01
5D107CC01
5D107FF03
5D107FF20
5F063AA15
5F063BA43
5F063BA45
5F063BA47
5F063BA48
5F063CA04
5F063CA06
5F063DD93
5F063FF38
(57)【要約】
【課題】ワークに形成されたバリを短時間で除去する。
【解決手段】バリ除去装置22は、切削ブレードまたはレーザー光線の分割手段によってカーフが形成されたワーク1のバリを除去するバリ除去装置である。バリ除去装置22は、ワーク1の下面を保持するテーブル27と、テーブル27に保持されたワーク1に超音波振動を発振する超音波発振ユニット50と、テーブル27に保持されたワーク1の上面と超音波発振ユニット50の下面との間に水層34を形成する水層形成部31を備える。バリ除去装置22は、水層34に超音波振動を付与しワーク1からバリを除去する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削ブレードまたはレーザー光線の分割手段によってカーフが形成されたワークのバリを除去するバリ除去装置であって、
該ワークの下面を保持するテーブルと、該テーブルに保持された該ワークに超音波振動を発振する超音波発振ユニットと、該テーブルに保持された該ワークの上面と該超音波発振ユニットの下面との間に水層を形成する水層形成部と、を備え、
該水層に該超音波振動を付与し該ワークから該バリを除去する、バリ除去装置。
【請求項2】
該超音波発振ユニットの該下面は、該ワークの該上面全面を覆う大きさである、請求項1記載のバリ除去装置。
【請求項3】
該超音波発振ユニットと該テーブルとを相対的に該テーブルの上面に平行方向に移動させる水平移動機構を備える、請求項1記載のバリ除去装置。
【請求項4】
該超音波発振ユニットと該テーブルとを相対的に該テーブルの上面に垂直方向に移動させる垂直移動機構と、該バリの大きさを測定する測定部と、該測定部が測定した該バリの大きさに対して該水層の深さを制御する制御部と、を備える請求項1から3のいずれか1項に記載のバリ除去装置。
【請求項5】
該バリの大きさを測定する測定部と、該測定部が測定した該バリの大きさに対して該超音波発振ユニットに供給する電力量を制御する電力制御部と、を備える請求項1から3のいずれか1項に記載のバリ除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリ除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを切削ブレードやレーザーで加工した際、カーフ(切削痕)にバリが形成されることがある。このバリは、例えば、ワークが半導体ワークの場合であれば、ワークを分割して得られるチップを基板等に対して実装する際に、接続不良の原因となる。このため、バリは予め除去されることが望ましい。
【0003】
このような課題に関連する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1には、バリに向かって噴射した水によってワークからバリを除去する技術が記載されている。この技術は、ワークを保持しながら回転するスピンナテーブルの上方においてノズルの先端部を円弧状の経路に沿って往復移動させながらノズルからワークに向けて水を噴射することでバリを除去する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-027183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術については、バリ除去に要する時間を短縮するという点において改善の余地がある。本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、半導体ワークのような板状のワークに形成されたバリを短時間で除去する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のバリ除去装置は、切削ブレードまたはレーザー光線の分割手段によってカーフが形成されたワークのバリを除去するバリ除去装置であって、ワークの下面を保持するテーブルと、該テーブルに保持されたワークに超音波振動を発振する超音波発振ユニットと、該テーブルに保持されたワークの上面と該超音波発振ユニットの下面との間に水層を形成する水層形成部と、を備え、該水層に超音波振動を付与しワークから該バリを除去する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワークに形成されたバリを短時間で除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係るワークを含むフレームセットの斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る切削装置の断面図である。
図3】第1の実施形態に係るバリ除去装置の断面図である。
図4】第1の実施形態に係る超音波発振ユニットに含まれる超音波ホーンを説明するための図である。
図5】第1の実施形態に係るレーザー加工装置の断面図である。
図6】第2の実施形態に係るバリ除去装置の断面図である。
図7】第2の実施形態に係る超音波発振ユニットの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
切削ブレードやレーザー光線を用いて加工されたワーク(ワークピースともいう)に生じたバリを除去する技術について説明する。なお、以下では、半導体デバイスの製造工程を例にして説明するが、後述するバリ除去装置の適用対象は、半導体デバイスの製造工程に限らない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るワーク1を含むフレームセット11の斜視図である。図1に示すフレームセット11は、リング状のフレーム23の開口を塞いだテープ21にワーク1を貼着して、ワーク1とテープ21とフレーム23とを一体化したものである。フレームセット11では、ワーク1は、テープ21を介してフレーム23に支持されている。
【0011】
本実施形態に係るワーク1は、例えば、シリコン(Si)等の半導体材料を用いて形成された円盤状のワークを含んでいる。ただし、ワーク1の材質は、特に限定しない。シリコンに限らず、ガリウムヒ素などの他の半導体基板でもよいし、セラミック、ガラス、サファイアなどの無機材料基板でもよい。また、ワーク1の形状は円盤状に限らず、例えば、円形とは異なる板状の基板など任意の形状であってもよい。
【0012】
ワーク1は、表面AAと裏面ABを有する。表面AAには、複数の分割予定ライン13(ストリートともいう)によって区画された複数の小領域が設けられている。複数の小領域の各々には、集積回路などのデバイス15が形成されている。フレーム23の開口を塞ぐテープ21は、ワーク1の表面AAに貼着されている。
【0013】
表面AAとは反対の裏面ABには、膜17が設けられている。膜17は、裏面ABの領域で且つデバイス15に対応する領域だけではなく、裏面ABの領域で且つ分割予定ライン13に対応する領域にも形成されている。膜17は、例えば、金、銀、チタン、ニッケル等の金属からなる金属膜であり、特に限定しないが、スパッタリング法、蒸着法、化学気相成長(CVD)法等を用いて成膜されたものである。
【0014】
図2は、本実施形態に係る切削装置2の断面図である。以下、図2を参照しながら、ワーク1に対する加工の一例として、裏面ABに形成された膜17側からワーク1のうちの分割予定ライン13に対応する領域を切削する例について説明する。
【0015】
図2に示す切削装置2は、フレームセット11に含まれるワーク1を保持するチャックテーブル4と、フレームセット11に含まれるフレーム23を保持する複数のクランプ10と、チャックテーブル4及びクランプ10によって保持されたフレームセット11に含まれるワーク1を切削する切削ユニット12と、を備えている。
【0016】
チャックテーブル4は、上面に凹部が形成された枠体6と、枠体6の凹部に埋め込まれた保持板8と、を備える。枠体6には、枠体6の凹部と図示しない吸引源とを連通させる流路Bが形成されている。保持板8は、ポーラス板である。複数のクランプ10は、枠体6の周囲に設けられている。
【0017】
切削ユニット12は、チャックテーブル4の上方に設けられている。切削ユニット12は、保持板8の表面である保持面Cとおよそ平行な回転軸を有するスピンドル14と、スピンドル14に装着された切削ブレード16を備える。スピンドル14は図示しない回転駆動源に連結されている。スピンドル14に連結された回転駆動源の動力によって切削ブレード16が回転する。
【0018】
さらに、チャックテーブル4は、保持面Cにおよそ平行な方向(第1の方向)に移動する図示しない移動機構と、保持面Cにおよそ直交する軸を回りに回転する図示しない回転機構と、によって支持されている。また、切削ユニット12は、保持面Cにおよそ平行な方向(第1の方向とは直交する第2の方向)と、保持面Cにおよそ直交する方向と、に移動する移動機構を備えている。
【0019】
以上のように構成された切削装置2は、分割予定ライン13に対応する領域のワーク1を膜17側から切削するために、まず、ワーク1の表面AAをチャックテーブル4に向けた状態で、フレームセット11を保持する。ここでは、複数のクランプ10がフレーム23を保持する。さらに、図示しない吸引源の吸引動作によって保持板8の表面である保持面Cに負圧を発生させることで、チャックテーブル4が負圧によってテープ21を介してワーク1を保持する。
【0020】
次に、切削装置2は、切削ブレード16を分割予定ライン13に対応する領域に位置付ける。ここでは、チャックテーブル4を支持する回転機構が、分割予定ライン13と切削ブレード16が平行になるように、チャックテーブル4を回転する。次に、チャックテーブル4を支持し切削ブレード16の切削送り方向にチャックテーブル4を移動させる移動機構と切削ユニット12を支持し切削ブレード16を回転させるスピンドル14の回転軸方向に切削ユニット12を移動させる移動機構によって、分割予定ライン13に対応する領域上に切削ブレード16が位置付けられるように、チャックテーブル4及び切削ユニット12を移動する。
【0021】
切削装置2は、切削ユニット12を支持する移動機構により切削ブレード16が分割予定ライン13に対応する領域上に位置付けられると、モータによりスピンドル14を回転させ切削ブレード16を回転するとともに、切削ユニット12を下降させ切削ブレード16で分割予定ライン13に対応する領域を膜17側から切削する。これにより、分割予定ライン13に対応する位置に、デバイス15が形成された小領域を分断する溝Dが形成される。溝Dは、ワーク1に形成されたカーフの一例である。以上の動作はすべての分割予定ライン13に対応する領域に対して繰り返し行われる。
【0022】
なお、フレーム23の開口を塞ぐテープ21は、ワーク1の裏面ABに貼着されて、表面AA側から切削ブレード16をワーク1に切り込ませて溝Dを形成してもよい。
【0023】
このような切削ブレード16による切削加工では、膜17及びワーク1が切削されることで、溝Dの上端にバリが発生する。切削加工で生じたバリは、上述したように接続不良などの原因となることがあり、デバイスの品質を低下させる虞がある。そこで、本実施形態では、図3に示すバリ除去装置22を用いることで、溝Dが形成されたワーク1に生じたバリを除去する。
【0024】
図3は、本実施形態に係るバリ除去装置22の断面図である。図4は、本実施形態に係る超音波発振ユニット50に含まれる超音波ホーン51を説明するための図である。以下、図3及び図4を参照しながら、バリ除去装置22を用いて、切削ブレード16によって溝Dが形成されたワーク1のバリを、除去する例について説明する。
【0025】
図3に示すバリ除去装置22は、テーブル27と、テーブル27に保持されたワーク1に超音波振動を発振する超音波発振ユニット50と、テーブル27に保持されたワーク1の上面と超音波発振ユニット50の下面との間に水層34を形成する水層形成部31と、を備えている。バリ除去装置22は、水層34に超音波振動を付与することで、ワーク1からバリを除去する、ように構成されている。
【0026】
バリ除去装置22は、さらに、超音波発振ユニット50へ電力を供給する高周波電源58と、制御部59を備えている。制御部59は、各種処理を実行するプロセッサと、各種パラメータやプログラム等を記憶する記憶部(メモリ)と、によって構成されている。制御部59の記憶部には、バリ除去装置22の制御プログラムの一部として、超音波発振ユニット50を用いたバリ除去処理方法を実行するためのプログラムが記憶されている。バリ除去装置22は、制御部59が高周波電源58から超音波発振ユニット50への電力供給を制御することで、超音波発振ユニット50が超音波振動をワーク1へ発振してワーク1のバリを除去するように、構成されている。
【0027】
以上のように構成されたバリ除去装置22は、バリを除去するために、まず、ワーク1を含むフレームセット11を保持する。バリ除去装置22は、バリを除去すべきワーク1が収容される円筒状の収容部24を備えていて、収容部24内の空間Eには、上述したテーブル27と、ワーク1を支持するフレーム23を保持するクランプ28と、が設けられている。
【0028】
テーブル27は、凹部が形成された枠体26と凹部に埋め込まれた保持板25を備えたチャックテーブルであり、ワーク1の下面を保持する。枠体26の凹部と流路を介してつながっている図示しない吸引源の吸引動作により、テーブル27は、保持板25の表面(保持面)にワーク1の下面を吸引保持するように構成されている。保持板25は、ポーラス板である。クランプ28は、テーブル27の枠体26の周囲に設けられている。
【0029】
ワーク1の表面AA(デバイス15が形成されている面)をテーブル27に向けた状態で、ワーク1がテーブル27によって吸引保持され、且つ、フレーム23がクランプ28によってクランプされることによって、バリ除去装置22は、フレームセット11を保持する。
【0030】
なお、テーブル27が負圧によってワーク1を保持する例を示したが、バリ除去装置22に設けられるテーブル27は、ワーク1を保持することができるものであればよい。バリ除去装置22に設けられるテーブル27は、吸引保持に限らず、任意の方法でワーク1を保持してもよい。
【0031】
さらに、テーブル27は、テーブル回転モータ32により回転するスピンドル30に固定されている。テーブル回転モータ32の回転によりテーブル27が回転することで、テーブル27に保持されたワーク1の向きと、テーブル27上方に設けられた構成(例えば、水層形成部31、超音波発振ユニット50、カメラ54)に対するワーク1の位置を変更することができる。
【0032】
フレームセット11が保持されると、バリ除去装置22は、次に、バリの大きさを測定する。バリ除去装置22は、ワーク1の上面を撮影するカメラ54を備えていて、カメラ54で取得した画像に基づいてバリの大きさを測定する。カメラ54は、超音波発振ユニット50と同じアーム55に固定されている。旋回モータ56の回転によりアーム55が旋回することで、カメラ54は、収容部24の空間E内において、ワーク1の上面を撮影する撮影位置と、ワーク1上から退避した退避位置との間を移動する。
【0033】
バリ除去装置22は、撮影位置でカメラ54が取得したワーク1の上面の画像を解析することで、ワーク1に生じたバリの大きさを測定するが、解析処理はカメラ54自身で行われてもよく、カメラ54外の制御部59で行われてもよい。即ち、バリ除去装置22では、カメラ54単体、または、カメラ54と制御部59は、バリの大きさを測定する測定部の一例である。
【0034】
図3では、バリの大きさを測定する測定部としてカメラ54を備える例を示したが、バリ除去装置22は、バリの大きさを測定する測定部を備えていればよい。測定部はバリの大きさを測定できる限り、撮像素子を有するカメラに限定されず、例えば、距離画像センサなどの他のデバイスが用いられてもよい。
【0035】
なお、バリ除去装置22は、テーブル回転モータ32の回転とカメラ54の撮影を繰り返すことにより、ワーク1の上面の複数の画像を取得してもよく、これらの複数の画像からワーク1に生じたバリの高さを測定してもよい。
【0036】
バリの大きさが測定されると、バリ除去装置22は、ワーク1上に水層34を形成する。バリ除去装置22は、旋回モータ56の回転によりカメラ54を退避位置に移動するとともに、旋回モータ33の回転により水層形成部31をワーク1の上面へ移動する。水層形成部31は、水をワーク1上へ導くノズルである。
【0037】
バリ除去装置22は、図示しない水供給源から供給された水を水層形成部31からワーク1上へ放水する。ノズル(水層形成部31)からワーク1上へ放水された水は、その表面張力によって、ワーク1上に水層34を形成する。
【0038】
バリ除去装置22は、ワーク1の上面全体が水層34に覆われるように、水層34を形成することが望ましい。バリ除去装置22は、必要に応じてテーブル回転モータ32の回転と水層形成部31からの放水とを繰り返すことにより、ワーク1の上面全体に水層34を形成してもよい。
【0039】
水層34が形成されると、バリ除去装置22は、超音波発振ユニット50をワーク1の上方の所定の位置へ位置付ける。バリ除去装置22は、制御部59によって制御される昇降ユニット36を備えている。昇降ユニット36は、少なくとも旋回モータ56と、旋回モータ56に連結されたアーム55と、アーム55に固定された超音波発振ユニット50及びカメラ54と、を昇降するように構成されている。昇降ユニット36は、超音波発振ユニット50とテーブル27とを相対的にテーブル27の上面に垂直方向に移動させる垂直移動機構の一例である。
【0040】
バリ除去装置22は、旋回モータ56の回転により超音波発振ユニット50をワーク1の上方へ移動し、昇降ユニット36の駆動により超音波発振ユニット50の下面が水層34に接触する位置まで超音波発振ユニット50を降下させる。これにより、ワーク1の上面と超音波発振ユニット50の下面との間が水層34で満たされた状態となる。換言すると、ワーク1の上面と超音波発振ユニット50の下面との間に水層34が形成される。
【0041】
制御部59は、さらに、前の工程で測定したバリの大きさに基づいて、超音波発振ユニット50の高さを制御してもよく、これにより、ワーク1の上面と超音波発振ユニット50の下面の間に形成される水層34の深さを制御してもよい。水層34の深さを調整することで、後述する超音波振動を付与する工程においてより短い時間でバリを除去することが可能となる。また、超音波振動によるワーク1への過度なダメージを回避することもできるため、ワーク1にダメージを与えることなくバリのみを除去することができる。
【0042】
一例としては、制御部59は、後に行われる超音波振動の付与工程において、バリが大きいほど超音波振動がより効率的にバリに伝達されるように、ワーク1の上面と超音波発振ユニット50の下面を近づけてもよい。また別の例としては、制御部59は、バリの大きさがある程度大きい場合には、超音波振動(例えば、後述する複数の超音波ホーン51からの超音波振動)が干渉により強め合う位置とバリが存在する位置とがおよそ一致するように、ワーク1の上面と超音波発振ユニット50の下面の間に形成される水層34の深さを制御してもよい。
【0043】
超音波発振ユニット50の移動が終了すると、バリ除去装置22は、ワーク1の上面と超音波発振ユニット50の下面の間の水層34に超音波振動を付与する。超音波発振ユニット50には、複数の超音波ホーン51がおよそ水平方向に並んで収容されている。各超音波ホーン51は、図4に示すように、超音波振動を発生させる振動子52と、振動子52で発生した超音波振動を放射するホーン部53を備えている。また、振動子52には高周波電源58が接続されている。
【0044】
バリ除去装置22では、制御部59が高周波電源58を制御することで、高周波電源58から超音波発振ユニット50へ供給される電力により振動子52に含まれる圧電素子が変形して超音波振動が発生し、振動子52からホーン部53へ伝わった超音波振動が超音波発振ユニット50の下面から超音波発振ユニット50外へ放射される。超音波発振ユニット50外へ放射された超音波振動は、水層34を介してワーク1のバリに伝播し、伝播した超音波振動によりバリに加わった力によってワーク1のバリが除去される。
【0045】
制御部59は、前の工程で測定したバリの大きさに基づいて、高周波電源58から超音波発振ユニット50へ供給する電力量を制御してもよい。一例としては、制御部59は、バリが大きいほど超音波振動の強度(音圧)が強くなるように、供給される電力量を制御してもよい。制御部59がバリの大きさに応じて電力量を制御することで、電力消費量を抑えながら短時間でバリを除去することができる。また、超音波振動によるワーク1への過度なダメージを回避することもできるため、ワーク1にダメージを与えることなくバリのみを除去することができる。
【0046】
超音波発振ユニット50から放射される超音波振動がワーク1の上面全体に伝播しない場合には、バリ除去装置22は、テーブル27に対する超音波発振ユニット50の水平方向の位置(水平方向の相対位置)の変更と超音波振動の付与とを繰り返してもよい。また、バリ除去装置22は、水平方向の相対位置を変更しながら継続して超音波振動を付与してもよい。これにより、ワーク1の上面全体からバリを除去することができる。
【0047】
なお、水平方向の相対位置の変更は、テーブル回転モータ32を駆動してテーブル27を回転することにより行われてもよく、アーム55の伸縮により行われてもよい。その場合、テーブル27を回転させるテーブル回転モータ32及びスピンドル30は、超音波発振ユニット50とテーブル27とを相対的にテーブル27の上面に平行な方向へ移動させる水平移動機構の一例であり、水平方向に伸縮するように構成されたアーム55も、超音波発振ユニット50とテーブル27とを相対的にテーブル27の上面に平行な方向へ移動させる水平移動機構の一例である。
【0048】
以上のように構成されたバリ除去装置22では、ワーク1の上面に形成された水層34を介してワーク1の超音波振動を付与することで、ワーク1に生じたバリを除去することができる。特に、バリ除去装置22では、水層34を介して超音波振動が伝播される範囲内のバリに一度に超音波振動を作用させることができるため、バリを除去すべき箇所へ向けて水を順番に噴射する従来技術よりも広い範囲のバリを一度に除去可能である。このため、バリ除去装置22によれば、短時間でワーク1に生じたバリを除去することができる。
【0049】
また、バリ除去装置22では、ワーク1の上面に表面張力を利用して水層34を形成することで、表面張力によってワーク1と超音波発振ユニット50との間に形成された水層34を介してワーク1の上方から超音波振動を付与することができる。このような構成によれば、水層34形成のために大掛かりな装置を必要とすることなく、例えば、スピンコーターのようなワーク1上に液体を滴下可能な既存の装置構成をバリ除去装置22に活用することができる。
【0050】
切削ブレードによって生じたバリを除去する例を示したが、バリ除去装置22は、切削ブレード(切削装置2)に限らず、レーザー加工装置によって生じたバリも除去可能である。例えば、ワーク1の表面AAに保護膜35を形成した後に、ワーク1をデバイス15が形成された小領域毎に分割するために、ワーク1の分割予定ライン13に対応する部分を保護膜35側からレーザーアブレーションにより除去するレーザー加工で生じたバリを除去してもよい。
【0051】
図5は、本実施形態に係るレーザー加工装置62の断面図である。以下、図5を参照しながら、ワーク1に対する加工の別の例として、表面AAに形成された保護膜35側からワーク1のうち分割予定ライン13に対応する領域を除去してチップ37を形成する例について説明する。
【0052】
保護膜35の形成は、例えば、スピンコーターを用いて行われる。フレームセット18を、ワーク1の表面AAを上に向けた状態でスピンコーターにセットして、表面AAに液状樹脂を供給してフレームセット18を回転させ、遠心力が付与されることにより液状樹脂を拡散させ保護膜35を形成すればよい。
【0053】
なお、フレームセット18は、リング状のフレーム43の開口を塞いだテープ41にワーク1を貼着して、ワーク1とテープ41とフレーム43とを一体化したものである。フレームセット18では、フレーム43の開口を塞ぐテープ41が、フレームセット11とは異なりワーク1の裏面ABに貼着されている。
【0054】
保護膜35の原料は、特に限定しないが、プラズマエッチングに対して耐性を持つ水溶性の保護膜を形成可能なものであってもよく、例えば、水溶性のPVA(ポリビニルアルコール)やPVP(ポリビニルピロリドン)等であってもよい。
【0055】
図5に示すレーザー加工装置62は、フレームセット18に含まれるワーク1を保持するチャックテーブル64と、フレームセット18に含まれるフレーム43を保持する複数のクランプ70と、ワーク1にレーザー光線を照射するレーザー照射ユニット72と、を備えている。
【0056】
チャックテーブル64は、上面に凹部が形成された枠体66と、枠体66の凹部に埋め込まれた保持板68と、を備える。枠体66には、枠体66の凹部と図示しない吸引源とを連通させる流路Fが形成されている。保持板68は、ポーラス板である。
【0057】
枠体66(チャックテーブル64)は、図示しない移動機構によって支持されていて、移動機構により保持板68の表面である保持面Gに対して概ね平行で互いに直交する2方向(加工送り方向と割り出し送り方向)に移動する。
【0058】
レーザー照射ユニット72は、チャックテーブル64の上方に設けられている。レーザー照射ユニット72は、パルス幅の短いパルスレーザーから発振されたワーク1の吸収波長のレーザービーム61を保護膜35側からワーク1に照射する。
【0059】
以上のように構成されたレーザー照射ユニット72は、分割予定ライン13に対応する領域のワーク1を除去してチップ37を形成するために、まず、保護膜35をレーザー照射ユニット72に向けた状態で、フレームセット18を保持する。ここでは、複数のクランプ70がフレーム43を保持する。さらに、図示しない吸引源の吸引動作によって保持面Gに負圧を発生させることで、チャックテーブル64が負圧によってテープ41を介してワーク1を保持する。
【0060】
次に、レーザー加工装置62は、レーザー照射ユニット72を分割予定ライン13に対応する領域に位置付ける。ここでは、チャックテーブル64を支持する回転機構が、分割予定ライン13と加工送り方向が平行になるように、チャックテーブル64を回転する。次に、チャックテーブル64を支持し加工送り方向と割り出し送り方向にチャックテーブル64を移動させる移動機構が、分割予定ライン13に対応する領域上にレーザー照射ユニット72が位置付けられるように、チャックテーブル64を割り出し送り方向に移動する。
【0061】
レーザー照射ユニット72が分割予定ライン13に対応する領域上に位置付けられると、レーザー加工装置62は、レーザー照射ユニット72から出射したレーザービーム61をワーク1に照射しながら移動機構によりチャックテーブル64を加工送り方向に移動することで、レーザーアブレーションによりワーク1の分割予定ライン13に対応する領域に溝Dを形成する。以上の動作をすべての分割予定ライン13に対応する領域に対して繰り返すことで、分割予定ライン13に沿った溝Dが形成され、溝Dの上端には、レーザーアブレーションによって溶融し冷却されることによってバリが形成される。
【0062】
バリ除去装置22は、切削ブレード16によって生じたバリを除去する場合と同様の手順で、レーザー加工によってワーク1に生じたバリを除去することができる。なお、レーザー加工装置62及びレーザー照射ユニット72は、レーザービーム61(レーザー光線)によってワーク1を分割してチップ37を形成する分割手段の一例であり、バリ除去装置22は、このレーザー光線の分割手段によってカーフ(溝)が形成されたワーク1のバリを除去するバリ除去装置の一例である。
【0063】
(第2の実施形態)
図6は、本実施形態に係るバリ除去装置90の断面図である。図7は、本実施形態に係る超音波発振ユニット80の分解斜視図である。以下、図6及び図7を参照しながら、バリ除去装置90を用いて、ワーク1のバリを除去する例について説明する。
【0064】
バリ除去装置90は、水層34に超音波振動を付与することで、ワーク1からバリを除去するように構成されている点は、バリ除去装置22と同様である。また、バリ除去装置90は、超音波発振ユニット50の代わりに超音波発振ユニット80を備えている点がバリ除去装置22とは異なるが、その他の構成はバリ除去装置22と同様である。このため、同様の構成について同様の符合を用いて参照し、詳細な説明は省略する。
【0065】
超音波発振ユニット80は、テーブル27に保持されたワーク1に超音波振動を発振する点は、第1の実施形態に係る超音波発振ユニット50と同様である。超音波発振ユニット80は、その下面が、図6に示すように、ワーク1の上面全面を覆う大きさを有している点で、超音波発振ユニット50とは異なる。
【0066】
超音波発振ユニット80は、図7に示すように、その上面に複数の超音波ホーン51が二次元に配列された底板85にカバー81を被せて一体化することで構成される。超音波発振ユニット80に含まれる複数の超音波ホーン51は、例えば、超音波発振ユニット80の下面全体からおよそ均一な強度の超音波振動が放射されるように、底板85全体に一定の間隔で配置される。ただし、複数の超音波ホーン51の配置は、この例に限らない。各超音波ホーン51の構成は、第1の実施形態において上述したとおりであり、振動子52とホーン部53を含んでいる。
【0067】
カバー81の上面の中心付近には、配線コネクタ82が設けられている。超音波発振ユニット80内の各超音波ホーン51と高周波電源58との電気的な接続は、配線コネクタ82を介して行われる。
【0068】
さらに、カバー81の上面には、支持部83が固定されている。支持部83は、アーム55から吊り下げた超音波発振ユニット80を支持するための構造であり、超音波発振ユニット80とアーム55とを連結する鉛直方向に延びるアーム連結部84に、支持部83の中央付近で接続されている。
【0069】
バリ除去装置90は、制御部59が高周波電源58から超音波発振ユニット80への電力供給を制御することで、超音波発振ユニット80が超音波振動をワーク1へ発振してワーク1のバリを除去するように構成されている。
【0070】
以上のように構成されたバリ除去装置90がバリを除去するために行う手順は、バリ除去装置22と基本的には同様である。ただし、超音波発振ユニット80がワーク1全体を覆うような大きさを有しているため、バリ除去装置90では、超音波発振ユニット80の位置決め工程を簡素化することができる。超音波発振ユニット80は、超音波振動を発振する前に、ワーク1全体を覆うような位置に配置されればよい。
【0071】
バリ除去装置90によっても、バリ除去装置22と同様に、ワーク1の上面に形成された水層34を介してワーク1の超音波振動を付与することで、ワーク1に生じたバリを除去することができる。特に、バリ除去装置90では、超音波発振ユニット80の下面がワーク1の上面全面を覆う大きさを有している。このため、超音波発振ユニット80をワーク1に対して適切に配置することで、ワーク1の上面全体を覆う水層34を介してワーク1の全体に超音波振動を作用させてワーク1の全体のバリを一度に除去することができる。従って、バリ除去装置90によれば、第1の実施形態に係るバリ除去装置22によりも短時間でワーク1に生じたバリを除去することができる。
【0072】
なお、本発明の実施形態は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0073】
上述した実施形態では、バリの大きさに基づいて、制御部59が、超音波発振ユニット50(超音波発振ユニット80)へ供給される電力量を制御する例と、超音波発振ユニット50(超音波発振ユニット80)の下面とワーク1の上面の間の水層34の深さを制御する例を示したが、制御部59は、超音波振動によってバリに加わる力を変動させるその他の要素を制御してもよい。制御部59は、例えば、超音波発振ユニット50(超音波発振ユニット80)から発振される超音波振動の振動数を制御してもよく、超音波振動を付与する時間の長さを制御してもよい。
【0074】
上述した実施形態では、ワーク1上に水層34を形成してから、超音波発振ユニット50(超音波発振ユニット80)を位置決めして水層34に接触させる例を示したが、超音波振動付与前に行われる各工程の手順は特に限定しない。例えば、超音波発振ユニット50(超音波発振ユニット80)の位置をワーク1上の所定の位置に移動させた後に水層形成部31から水を放水して水層34を形成してもよい。
【0075】
上述した実施形態では、水層形成部31から供給された水の表面張力を利用して水層34を形成する例を示したが、水層34は、その他の方法で形成されてもよい。例えば、ワーク1に放水した水がワーク1から外側に流れ落ちることを防ぐための仕切りなどを用いてワーク1上に水層34を形成してもよい。
【0076】
上述した実施形態では、水層34の深さの制御と、超音波発振ユニット50(超音波発振ユニット80)へ供給する電力量の制御を、制御部59が行う例を示した、これらの制御は、別の制御部によって行われてもよい。例えば、制御部59は、水層34の深さを制御し、制御部59とは異なる電力制御部が、超音波発振ユニット50(超音波発振ユニット80)へ供給する電力量を制御してもよい。
【0077】
上述した実施形態では、図2において、切削装置2がワーク1の裏面ABから表面AAまでを切削ユニット12で切削する例を示したが、切削装置2は、裏面ABから表面AAに達する手前の厚さ方向の途中までを切削ユニット12で除去してもよい。即ち、切削装置2は、切削ユニット12によってワーク1をフルカットしてもよく、ハーフカットしてもよい。また、バリ除去装置22は、切削ユニット12によって膜17のみを除去してもよい。
【0078】
上述した実施形態では、図5において、レーザー加工装置62がワーク1の表面AAから裏面ABまでをレーザー照射ユニット72を用いたレーザーアブレーションによって除去する例を示したが、レーザー加工装置62は、表面AAから裏面ABに達する手前の厚さ方向の途中までをレーザーアブレーションによって除去してもよい。即ち、レーザー加工装置62は、レーザーアブレーションによってワーク1をフルカットしてもよく、ハーフカットしてもよい。また、レーザー加工装置62は、レーザーアブレーションによって保護膜35のみを除去してもよい。
【0079】
上述した実施形態では、切削装置2がワーク1の裏面ABからワーク1を切削し、レーザー加工装置62がワーク1の表面AAからワーク1をレーザーアブレーションによって除去する例を示したが、これらの装置による加工は、表面と裏面のどちらから行われてもよい。切削装置2が表面AAからワーク1を切削してもよく、レーザー加工装置62が裏面ABからワーク1をレーザー加工してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上に説明したように、本発明のバリ除去装置は、水層34を介してワーク1へ超音波振動を付与することでバリを短時間で除去可能であり、生産性の低下を回避しながらバリに起因して加工結果物において生じる不都合を未然に防止することができる。このため、切削加工やレーザー加工によって生じたバリの除去において非常に有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 :ワーク
2 :切削装置
4、64 :チャックテーブル
11、18 :フレームセット
16 :切削ブレード
17 :膜
22、90 :バリ除去装置
26 :テーブル
31 :水層形成部
32 :テーブル回転モータ
33、56 :旋回モータ
34 :水層
35 :保護膜
36 :昇降ユニット
37 :チップ
50、80 :超音波発振ユニット
51 :超音波ホーン
52 :振動子
53 :ホーン部
54 :カメラ
55 :アーム
58 :高周波電源
59 :制御部
62 :レーザー加工装置
81 :カバー
82 :配線コネクタ
83 :支持部
84 :アーム連結部
85 :底板
D :溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7