(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165929
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】双極型蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/12 20060101AFI20241121BHJP
H01M 4/68 20060101ALI20241121BHJP
H01M 50/541 20210101ALI20241121BHJP
【FI】
H01M10/12 K
H01M4/68 A
H01M50/541
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082528
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】廣田 憲治
(72)【発明者】
【氏名】平 芳延
【テーマコード(参考)】
5H017
5H028
5H043
【Fターム(参考)】
5H017AA01
5H017AS03
5H017EE02
5H017HH05
5H028AA08
5H028CC01
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC20
5H028EE01
5H043AA19
5H043BA12
5H043CA13
5H043EA41
5H043JA01E
5H043JA02E
5H043KA02E
5H043LA21E
(57)【要約】
【課題】正負両極において基板に集電体を設けるに当たって用いられる接着剤を、貫通穴に挿入される導通体と正極用集電体、或いは、負極用集電体との接合部分に接触しないようにしつつ可能な限り貫通穴近傍まで配置することを可能にするとともに、たとえ貫通穴まで接着剤が伸張しても当該接合部分に接触することを防止することを可能とする。
【解決手段】正極111、負極112、および正極111と負極112との間に介在するセパレータ113を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材110と、基板121と、枠体122と、を含む空間形成部材120と、基板121を貫通して設けられる貫通穴121aと、貫通穴121aに挿入され、正極側と負極側との導通を図る導通体160と、を備え、貫通穴121aの内周壁面121aaと導通体160の外周壁面160aとの間には、隙間Mが設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在するセパレータを備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、
複数の前記セル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、前記セル部材の前記正極の側および前記負極の側の少なくとも一方を覆う基板と、前記セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、
前記基板を貫通して設けられる貫通穴と、
前記貫通穴に挿入され、前記正極側と前記負極側との導通を図る導通体と、を備え、
前記貫通穴の内周壁面と前記導通体の外周壁面との間には、隙間が設けられていることを特徴とする双極型蓄電池。
【請求項2】
前記隙間は、前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体の前記基板における配置面において、前記貫通穴の内周壁面と前記導通体の外周壁面とが接触しないように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項3】
前記貫通穴の前記内周壁面には、対向する前記内周壁面に向けて突出する複数の突出部が設けられ、前記突出部の突出先端部は、前記導通体の前記外周壁面に接触することを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項4】
前記貫通穴の前記内周壁面には、対向する前記内周壁面に向けて突出する複数の突出部が設けられ、前記突出部の突出先端部は、前記導通体の前記外周壁面に接触することを特徴とする請求項2に記載の双極型蓄電池。
【請求項5】
前記導通体は、前記外周壁面から突出する凸部を備えており、前記凸部の先端部は、前記貫通穴の内周壁面に接触することを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項6】
前記導通体は、前記外周壁面から突出する凸部を備えており、前記凸部の先端部は、前記貫通穴の内周壁面に接触することを特徴とする請求項2に記載の双極型蓄電池。
【請求項7】
前記正極用集電体および前記負極用集電体は、鉛又は鉛合金からなることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、双極型蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光や風力等の自然エネルギーを利用した発電設備が増えている。このような発電設備においては、発電量を制御することができないことから、蓄電池を利用して電力負荷の平準化を図るようにしている。すなわち、発電量が消費量よりも多いときには差分を蓄電池に充電する一方、発電量が消費量よりも小さいときには差分を蓄電池から放電するようにしている。上述した蓄電池としては、経済性や安全性等の観点から、鉛蓄電池が多用されている。このような従来の鉛蓄電池としては、例えば、下記特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
すなわち、特許文献1に記載の鉛蓄電池は、一方面側と他方面側とを連通させる穿孔(貫通穴)を有する基板とセル部材とが交互に複数積層された双極(バイポーラ)型鉛蓄電池である。セル部材は、正極用鉛層に正極用活物質層を設けた正極と、負極用鉛層に負極用活物質層を設けた負極と、正極と負極との間に介在する電解層と、を有している。そして、セル部材と空間形成部材の基板とが交互に積層状態で配置され、枠体同士が接合されて双極型鉛蓄電池を構成する。
【0004】
そして貫通穴に配置された導通体により、隣り合うセル部材の正極用鉛層と負極用鉛層とが導通されて、複数のセル部材が直列に電気的に接続されている。これら正極用鉛層、或いは、負極用鉛層と導通体とは、例えば、抵抗溶接によって接合される。
【0005】
このように基板の両面の鉛層を貫通穴に配置される導通体を介して抵抗溶接により接続する方法を採用すると、大電流で鉛層を溶融させることになる。そのため、周囲に熱が伝わって樹脂製の基板が高温になる。
【0006】
以下に示す特許文献1においては、導通体の正極用鉛層との接続面及び負極用鉛層との接続面の少なくともいずれかの面積を、導通体の基板の板厚方向における中間部の接続面と平行な断面積よりも小さくすることで、熱を掛けて基板両面の鉛層と導通体とを接合した場合であっても基板に熱が伝わりにくくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで正極用鉛層、或いは、負極用鉛層を基板に設ける際には、例えば、接着剤が用いられる。接着剤が用いられる場合、正極用鉛層、或いは、負極用鉛層を基板に貼り付ける際に、正極用鉛層、或いは、負極用鉛層と基板との間に介在する接着剤は両者の間で薄く伸びる。
【0009】
当然正極用鉛層、或いは、負極用鉛層が基板に確実に貼り付けられて剥がれることがないように接着剤の量は調整されている。但し、接着剤が貫通穴の部分まで伸びて導通体における正極用鉛層、或いは、負極用鉛層との接合部分に接触する可能性がないわけではない。もし当該接合部分に接触してしまうと、たとえ溶接を行っても接着剤が着いた部分は
導通が図れなくなってしまうことから接合不良が生ずる可能性がある。
【0010】
一方で、正極用鉛層、或いは、負極用鉛層を基板に貼り付ける場合に当たって、両者をより強固に貼り付けるためには、正極用鉛層、或いは、負極用鉛層が基板に貼附される面積を大きくしたい。このように正極用鉛層、或いは、負極用鉛層と基板との接合面積が広ければ広い程、特に正極用鉛層におけるグロースの発生、伸張を留めることもできる。そのため、導通体が配置される貫通穴の近傍まで接着剤が配置されるようにしたい一方で、上述したように導通体の接合部分への接触は回避しなければならない。
【0011】
また、上述した特許文献1に記載されている技術の場合、どうしても導通体における正極用鉛層、或いは、負極用鉛層との接合面積は小さくならざるを得ず、両者の接合の困難性は高くなり、接合不良が生ずる可能性も高くなる。
【0012】
さらに、導通体の基板の板厚方向における中間部の接続面と平行な断面積は、導通体の正極用鉛層との接続面及び負極用鉛層との接続面の少なくともいずれかの面積よりも大きく、当該中間部の外周壁面は貫通穴の内周壁面と接している。従って、抵抗溶接等の熱を加える必要のある接合方法では、接合のために加えられた熱が中間部の外周壁面から貫通穴の内周壁面へと伝わり、さらに基板へと伝わる。
【0013】
そのため、正極用鉛層、或いは、負極用鉛層と導通体との接合のために熱を掛けたとしても上述した経路を通って熱が逃げてしまうため、接合に必要な熱を加えられないことが起こり得る。このような場合はやはり接合不良が生じてしまう。
【0014】
本発明は、正負両極において基板に集電体を設けるに当たって用いられる接着剤を、貫通穴に挿入される導通体と正極用集電体、或いは、負極用集電体との接合部分に接触しないようにしつつ可能な限り貫通穴近傍まで配置することを可能にするとともに、たとえ貫通穴まで接着剤が伸張しても当該接合部分に接触することを防止することが可能な双極型蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様に係る双極型蓄電池は、正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在するセパレータを備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極の側および負極の側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、基板を貫通して設けられる貫通穴と、貫通穴に挿入され、正極側と負極側との導通を図る導通体と、を備え、貫通穴の内周壁面と導通体の外周壁面との間には、隙間が設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在するセパレータを備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極の側および負極の側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、基板を貫通して設けられる貫通穴と、貫通穴に挿入され、正極側と負極側との導通を図る導通体と、を備え、貫通穴の内周壁面と導通体の外周壁面との間には、隙間が設けられている。このような構成を採用することによって、正負両極において基板に集電体を設けるに当たって用いられる接着剤を、貫通穴に挿入される導通体と正極用集電体、或いは、負極用集電体との接合部分に接触しないようにしつつ可能な限り貫通穴近傍まで配置することを可能にするとともに、たとえ貫通穴まで接着剤が伸張しても当該接合部分に接触することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池の構造を示す断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池の構造の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池における空間形成部材の一例を示す平面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池における空間形成部材の一部を
図3に示す空間形成部材のA-A線で切断して拡大して示す拡大平面図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池における空間形成部材の別の例における一部を、
図3に示す空間形成部材のA-A線で切断して拡大して示す拡大平面図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池における空間形成部材の別の例における一部を
図3に示す空間形成部材のA-A線で切断して拡大して示す拡大平面図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池における空間形成部材の別の例における一部を
図3に示す空間形成部材のA-A線で切断して拡大して示す拡大平面図である。
【
図8】本発明の第2の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池の構造を示す断面図である。
【
図9】本発明の第2の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池の構造の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池における空間形成部材の貫通穴に導通体が挿入された状態の一例を、
図3に示す空間形成部材のA-A線で切断して拡大して示す拡大平面図である。
【
図11】本発明の第2の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池における空間形成部材の貫通穴に導通体が挿入された状態の一例を、
図3に示す空間形成部材のA-A線で切断して拡大して示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施の形態は、本発明の一例を示したものである。また、これらの各実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。これらの各実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。なお、以下においては、様々な蓄電池の中から鉛蓄電池を例に挙げて説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
〔全体構成〕
まず、本発明の第1の実施の形態における双極型鉛蓄電池の全体構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100の構造を示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態の双極型鉛蓄電池100は、複数のセル部材110と、複数枚のバイポーラプレート(空間形成部材)120と、第1のエンドプレート(空間形成部材)130と、第2のエンドプレート(空間形成部材)140とを有する。
【0021】
ここで、
図1ではセル部材110が3個積層された双極型鉛蓄電池100を示しているが、セル部材110の数は電池設計により決定される。また、バイポーラプレート120
の数はセル部材110の数に応じて決まる。
【0022】
なお、以下においては、
図1及び後述する
図2に示すように、セル部材110の積層方向をZ方向(
図1、或いは、
図2の上下方向)とし、Z方向に垂直な方向で且つ互いに垂直な方向をX方向およびY方向とする。また、セル部材110の積層方向であるZ方向は、鉛直方向と平行である。
【0023】
セル部材110は、正極111、負極112、および電解質層(セパレータ)113を備えている。正極111は、鉛又は鉛合金からなる正極用集電体である正極用鉛箔111aと正極用活物質層111bとを有する。負極112は、鉛又は鉛合金からなる負極用集電体である負極用鉛箔112aと負極用活物質層112bとを有する。
【0024】
この正極用鉛箔111aは、バイポーラプレート120の一方の面(
図1の図面においては、紙面における上方を向く面)と正極用鉛箔111aとの間に設けられる、後述する接着剤150によってバイポーラプレート120の一方の面に設けられている。従って、バイポーラプレート120の一方の面の上に、接着層(接着剤150)、正極用鉛箔111a、正極用活物質層111bが、この記載順に積層されている。
【0025】
一方負極用鉛箔112aは、バイポーラプレート120の他方の面(
図1の図面においては、紙面における下方を向く面)と負極用鉛箔112aの間に設けられる、後述する接着剤150によってバイポーラプレート120の他方の面に設けられている。従って、バイポーラプレート120の他方の面の上に、接着層(接着剤150)、負極用鉛箔112a、負極用活物質層112bが、この記載順に積層されている。そしてこれら正極111と負極112は、後述する導通体160を介して電気的に接続されている。
【0026】
セパレータ113は、例えば、硫酸を含有する電解液が含浸されたガラス繊維マットによって構成されている。セパレータ113は、対向する一方のバイポーラプレート120に設けられる正極用活物質層111bと、他方のバイポーラプレート120に設けられる負極用活物質層112bとに挟まれるように設けられる。そしてセル部材110において、正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、セパレータ113、負極用活物質層112b、および負極用鉛箔112aが、この順に積層されている。
【0027】
このような構成を有する本発明の第1の実施の形態における双極型鉛蓄電池100では、上述したように、バイポーラプレート120、正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、負極用鉛箔112a、及び負極用活物質層112bによって、バイポーラ電極が構成されている。バイポーラ電極とは、1枚の電極で正極、負極両方の機能を有する電極である。
【0028】
そして、本発明の第1の実施の形態における双極型鉛蓄電池100は、正極111と負極112との間にセパレータ113を介在させてなるセル部材110と、セル部材110を挟み込むように対をなして設けられるバイポーラプレート120を複数積層する。そして、最外層を第1のエンドプレート130と第2のエンドプレート140とで組み付けることにより、セル部材110同士を直列に接続した電池構成を有している。
【0029】
正極用鉛箔111aのX方向およびY方向の寸法は、正極用活物質層111bのX方向およびY方向の寸法より大きい。同様に、負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法は、負極用活物質層112bのX方向およびY方向の寸法より大きい。また、Z方向の寸法(厚さ)は、正極用鉛箔111aの方が負極用鉛箔112aより大きく(厚く)、正極用活物質層111bの方が負極用活物質層112bより大きい(厚い)。
【0030】
複数のセル部材110は、Z方向に間隔を開けて積層配置され、この間隔の部分にバイポーラプレート120の基板121が配置されている。すなわち、複数のセル部材110は、バイポーラプレート120の基板121を間に挟まれた状態で積層されている。
【0031】
このように、複数枚のバイポーラプレート120と第1のエンドプレート130と第2のエンドプレート140は、複数のセル部材110を個別に収容する複数の空間(セル)Cを形成するための空間形成部材である。
【0032】
すなわち、バイポーラプレート120は、セル部材110の正極111側および負極112側の両方を覆い、平面形状が長方形の基板121と、セル部材110の側面を囲うとともに基板121の4つの端面を覆う枠体122と、を含む空間形成部材である。
【0033】
また、
図1に示すように、バイポーラプレート120は、さらに基板121の両面から垂直に突出する柱部123を備える。当該基板121の各面から突出する柱部123の数は一つであってもよいし、複数であってもよい。
【0034】
バイポーラプレート120を構成する基板121と枠体122と柱部123は、一体に、例えば、熱可塑性樹脂で形成されている。バイポーラプレート120を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリプロピレンが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、成形性に優れているとともに耐硫酸性にも優れている。よって、バイポーラプレート120に電解液が接触したとしても、バイポーラプレート120に分解、劣化、腐食等が生じにくい。
【0035】
Z方向において、枠体122の寸法は基板121の寸法(厚さ)より大きく、柱部123の突出端面間の寸法は枠体122の寸法と同じである。そして、複数のバイポーラプレート120が枠体122および柱部123同士を接触させて積層されることにより、基板121と基板121との間に空間Cが形成される。そして、互いに接触する柱部123同士により、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0036】
正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、負極用鉛箔112a、負極用活物質層112b、およびセパレータ113には、柱部123を貫通させる貫通穴111c,111d,112c,112d,113aがそれぞれ形成されている。
【0037】
バイポーラプレート120の基板121は、板面を貫通する複数の貫通穴121aを有する。基板121の一方の面に第1の凹部121bが、他方の面に第2の凹部121cが形成されている。第1の凹部121bの深さは第2の凹部121cの深さより深い。第1の凹部121bおよび第2の凹部121cのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0038】
バイポーラプレート120の基板121は、Z方向で、隣り合うセル部材110の間に配置されている。そして、バイポーラプレート120の基板121の第1の凹部121bに、セル部材110の正極用鉛箔111aが接着剤150を介して配置されている。また、バイポーラプレート120の基板121の第2の凹部121cに、セル部材110の負極用鉛箔112aが接着剤150を介して配置されている。
【0039】
バイポーラプレート120の基板121の貫通穴121aには導通体160が配置される。導通体160の両端面は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aと接触し、接合されている。すなわち、導通体160により正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとが電気的に接続されている。その結果、複数のセル部材110の全てが電気的に直列に接続されている。
【0040】
正極用鉛箔111aの外縁部には、当該外縁部を覆うためのカバープレート170が設けられている。このカバープレート170は、例えば薄板状の枠体で、長方形の内形線および外形線を有する。そして、カバープレート170の内縁部が正極用鉛箔111aの外縁部と重なり、カバープレート170の外縁部が基板121の一面の第1の凹部121bの周縁部と重なっている。
【0041】
すなわち、カバープレート170の内形線をなす長方形は、正極用鉛箔111aの外形線をなす長方形より小さく、カバープレート170の外形線をなす長方形は、第1の凹部121bの開口面をなす長方形より大きい。
【0042】
接着剤150は、正極用鉛箔111aの端面から第1の凹部121bの開口側の外縁部まで回り込んで、カバープレート170の内縁部と正極用鉛箔111aの外縁部との間に配置される。また接着剤150は、カバープレート170の外縁部と基板121の一面との間にも配置されている。
【0043】
すなわち、カバープレート170は接着剤150により、基板121の一面の第1の凹部121bの周縁部と正極用鉛箔111aの外縁部とに亘って固定されている。これにより、正極用鉛箔111aの外縁部は、第1の凹部121bの周縁部との境界部においてもカバープレート170で覆われている。
【0044】
なお、
図1では示していないが、負極用鉛箔112aの外縁部も正極用鉛箔111aの外縁部を覆っているカバープレート170と同様のカバープレートで覆われていても良い。また、カバープレートについては、薄板状の枠体であることを例に挙げて説明したが、例えば、耐電解液(耐硫酸)性を備えていればテープ状の物等であっても構わない。
【0045】
図1に示すように、第1のエンドプレート130は、セル部材110の正極側を覆う基板131と、セル部材110の側面を囲う枠体132と、を含む空間形成部材である。また、基板131の一面(最も正極側に配置されるバイポーラプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部133を備える。
【0046】
基板131の平面形状は長方形であり、基板131の4つの端面が枠体132で覆われ、基板131と枠体132と柱部133が一体に、例えば、上述した熱可塑性樹脂で形成されている。なお、基板131の一面から突出する柱部133の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。但し、柱部133と接触させるバイポーラプレート120の柱部123の数に対応した数となる。
【0047】
Z方向において、枠体132の寸法は基板131の寸法(厚さ)より大きく、柱部133の突出端面間の寸法は枠体132の寸法と同じである。そして、第1のエンドプレート130は、最も外側(正極側)に配置されるバイポーラプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体132および柱部133を接触させて積層される。
【0048】
これにより、バイポーラプレート120の基板121と第1のエンドプレート130の基板131との間に空間Cが形成される。また、互いに接触するバイポーラプレート120の柱部123と第1のエンドプレート130の柱部133とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0049】
最も外側(正極側)に配置されるセル部材110の正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、およびセパレータ113には、柱部133を貫通させる貫通穴111c,111d,113aがそれぞれ形成されている。
【0050】
第1のエンドプレート130の基板131の一面に凹部131bが形成されている。凹部131bのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0051】
第1のエンドプレート130の基板131の凹部131bに、セル部材110の正極用鉛箔111aが接着剤150を介して配置されている。また、バイポーラプレート120の基板121と同様に、カバープレート170が接着剤150により基板131の一面側に固定されている。このことにより、正極用鉛箔111aの外縁部が、凹部131bの周縁部との境界部においてもカバープレート170で覆われている。
【0052】
また、第1のエンドプレート130は、凹部131b内の正極用鉛箔111aと電気的に接続された、
図1では図示されていない正極端子を備えている。
【0053】
第2のエンドプレート140は、セル部材110の負極側を覆う基板141と、セル部材110の側面を囲う枠体142と、を含む空間形成部材である。また、基板141の一面(最も負極側に配置されるバイポーラプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部143を備える。
【0054】
基板141の平面形状は長方形であり、基板141の4つの端面が枠体142で覆われ、基板141と枠体142と柱部143が一体に、例えば、上述した熱可塑性樹脂で形成されている。なお、基板141の一面から突出する柱部143の数は一つであってもよいし、複数であってもよい。但し、柱部143と接触させるバイポーラプレート120の柱部123の数に対応した数となる。
【0055】
Z方向において、枠体142の寸法は基板141の寸法(厚さ)より大きく、二つの柱部143の突出端面間の寸法は枠体142の寸法と同じである。そして、第2のエンドプレート140は、最も外側(負極側)に配置されるバイポーラプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体142および柱部143を接触させて積層される。
【0056】
これにより、バイポーラプレート120の基板121と第2のエンドプレート140の基板141との間に空間Cが形成される。また、互いに接触するバイポーラプレート120の柱部123と第2のエンドプレート140の柱部143とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0057】
最も外側(負極側)に配置されるセル部材110の負極用鉛箔112a、負極用活物質層112b、およびセパレータ113には、柱部143を貫通させる貫通穴112c,112d,113aがそれぞれ形成されている。
【0058】
第2のエンドプレート140の基板141の一面に凹部141bが形成されている。凹部141bのX方向およびY方向の寸法は、負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0059】
第2のエンドプレート140の基板141の凹部141bに、セル部材110の負極用鉛箔112aが接着剤150を介して配置されている。また、第2のエンドプレート140は、凹部141b内の負極用鉛箔112aと電気的に接続された、
図1では図示されていない負極端子を備えている。
【0060】
ここで、対向するバイポーラプレート120同士、第1のエンドプレート130と対向するバイポーラプレート120、或いは、第2のエンドプレート140と対向するバイポ
ーラプレート120との接合の際には、例えば、振動溶着(振動溶接)、超音波溶着、熱板溶着といった、各種溶着の方法を採用することができる。このうち振動溶着は、接合の際に接合の対象となる面を加圧しながら振動させることで溶着するものであり、溶着のサイクルが早く、再現性も良い。そのためより好適には、振動溶着が用いられる。
【0061】
なお、溶着の対象としては、互いに対向するバイポーラプレート120、第1のエンドプレート130、第2のエンドプレート140において対向する位置に配置される枠体のみならず、各柱部も含まれる。
【0062】
次に、貫通穴121aと当該貫通穴121aに挿入される導通体160とについて説明する。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100の構造の一部を拡大して示す拡大断面図である。具体的には、
図2においては、
図1の双極型鉛蓄電池100の断面図において破線で囲まれた領域が示されている。
【0063】
図2に示す断面図では、貫通穴121aに導通体160が挿入されるとともに、基板121の一方の面には接着剤150を介して正極用鉛箔111aが、基板121の他方の面には接着剤150を介して負極用鉛箔112aが、それぞれ設けられている。そして、導通体160と、正極用鉛箔111a、及び、負極用鉛箔112aとが、例えば抵抗溶接によって接合されている。
【0064】
また
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100における空間形成部材120の一例を示す平面図である。
図3に示す空間形成部材120は、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂からなる基板121、及び、枠体122そのものが示されている。
【0065】
図3において、中央に基板121が示されており、当該基板121の四方を囲むように枠体122が形成されている。また、
図3の平面図に示されているバイポーラプレート120の基板121には、その略中央に柱部123が設けられている。
【0066】
また、当該柱部123を囲むように正極側の一方の面と負極側の他方の面とを貫通する貫通穴121aが設けられている。但し、柱部123及び貫通穴121aの配置位置、配置数、径については、任意に設定することができる。
【0067】
なお、
図3に示すバイポーラプレート120の基板121に関して、平面図では正極用鉛箔111aが設けられる、一方の面が示されている。正極用鉛箔111aはこの一方の面の第1の凹部121bに図示しない接着剤150を介在させて設けられる。
【0068】
図2においては、上述したように、貫通穴121aに導通体160が挿入され、正極用鉛箔111a、及び、負極用鉛箔112aとが接合された状態が示されている。本発明の第1の実施の形態における貫通穴121aにおいて、その内周壁面121aaには、対向する内周壁面121aaに向けて突出する複数の突出部180が設けられている。
【0069】
すなわち
図2に示す突出部180は、X方向に互いに向き合うように基板121から貫通穴121aの内部に向けて突き出すように形成されている。この状態を平面的に示したのが
図3であり、
図3の平面図では、貫通穴121aに4つの突出部180が設けられている状態が示されている。
【0070】
突出部180において、最も内周壁面121aaから離れた位置に、突出先端部180aが形成されている。突出部180の突出先端部180aは、導通体160の外周壁面160aに接触して、貫通穴121aに挿入された導通体160を保持する。
【0071】
このように、貫通穴121に挿入された導通体160については、その外周壁面160aに突出先端部180aのみが接触することになる。そのため、貫通穴121aの内周壁面121aaと対向する位置に配置される導通体160の外周壁面160aとの間に隙間Mが形成される。
【0072】
すなわち、突出部180は基板121から貫通穴121aの内部に向けて突き出すように形成され、貫通穴121aに挿入された導通体160は、その外周壁面160aにおいて突出先端部180aとのみ接触する。この状態で導通体160は、突出部180によって貫通穴121a内に保持される。
【0073】
従って、導通体160の外周壁面160aは、貫通穴121aの内周壁面121aaとは接することはなく、内周壁面121aaと外周壁面160aとの間には、隙間Mが設けられることになる。
【0074】
従って隙間Mは、正極用集電体(正極用鉛箔111a)、或いは、負極用集電体(負極用鉛箔112a)の基板121における配置面(第1の凹部121b、第2の凹部121c)において、貫通穴121aの内周壁面121aaと導通体160の外周壁面160aとが接触しないように形成されるものである。
【0075】
上述したように、接着剤150を基板121の第1の凹部121b、或いは、第2の凹部121cに塗布し、正極用鉛箔111a、或いは、負極用鉛箔112aを基板121に貼り付ける際に、正極用鉛箔111a、或いは、負極用鉛箔112aと基板121との間で接着剤150が貫通穴121aの部分まで到達することが考えられる。
【0076】
しかしながら、上述したように、貫通穴121aの内周壁面121aaと導通体160の外周壁面160aとの間に隙間Mが設けられている。このことから、接着剤150が伸びて貫通穴121aの部分にまで至ったとしても、貫通穴121aに到達した接着剤150は貫通穴121aの開口部121abから貫通穴121aの内部に、Z方向に移動することになる。
【0077】
従って、接着剤150が貫通穴121aの開口部121abを超えて導通体160と正極用鉛箔111a、及び、負極用鉛箔112aとの接合部分にまで及ぶことはない。そのため、正極用鉛箔111a、及び、負極用鉛箔112aと導通体160との接合部分に接着剤が触れることがないため、抵抗溶接等を行っても接合不良が生じる可能性を低減することができる。
【0078】
また、このように導通体160の外周壁面16aと貫通穴121aの内周壁面121aaとの間には隙間Mが形成されており、導通体160と突出部180とは、突出先端部180aとのみ接している。従って、抵抗溶接等によって導通体160に熱が加えられたとしても、その熱が基板121(空間形成部材120)に伝わりにくい。
【0079】
ところで、突出先端部180aにおける導通体160の外周壁面160aと接触する部分の形状については、どのような形状とすることもできる。すなわち、導通体160を貫通穴121aの内部に保持するとともに、可能な限り接合時における基板121への熱の伝達を少なくすることができるように、例えば、突出先端部180aと外周壁面160aとの接触面積が小さくなるような形状を採用することができる。
【0080】
また、導通体160の外周壁面160aに、突出部180の突出先端部180aが接触し配置される、凹部が形成されていても良い。このような形状に形成されることによって、より確実に貫通穴121aに導通体160を保持させることができる。
【0081】
このように本発明の第1の実施の形態においては、貫通穴121aには突出部180が設けられており、例えば、
図2に示す突出部180は、貫通穴の内周壁面121aaから突出先端部180aまで一体に形成されている。但し、例えば、貫通穴121aの内周壁面121aaから突出する部分であって突出先端部180aとの間である胴部180bと突出先端部180aとを別の部材で構成しても良い。
【0082】
なおこのような構成とする場合、抵抗溶接等の熱を加えて導通体160と正極用鉛箔111a、或いは、負極用鉛箔112aと接合する方法が採用される場合を考慮して、例えば、胴部180bについては、接合時における基板121へ熱が伝わりにくい素材を選択することができる。
【0083】
さらに、胴部180bの形状については、接着剤150が開口部121abを超えて内周壁面121aaを伝って貫通穴121aの内部まで到達した際に、突出部180で留まることがないような形状に形成されることが好ましい。
【0084】
すなわち、内周壁面121aaを伝って貫通穴121aに浸入した接着剤150が突出部180に接触した場合に、その突出部180に溜まるような、例えば、基板121の平面と平行な平面を持つ矩形状のような形状は妥当ではない。そのため、例えば、接着剤150の浸入方向に対して直交する向きから平行となる向きの間で角度を持つ傾斜面を備える形状、或いは、円筒形状等が好ましい。
【0085】
また、1つの貫通穴121aに設けられる突出部180の数については、任意に設定することができる。ここで
図4ないし
図6は、突出部180の数、配置位置のバリエーションを示す平面図であり、本発明の第1の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100における基板121の一部を
図3に示す空間形成部材120のA-A線で切断して拡大して示す拡大平面図である。
【0086】
図4は、貫通穴121aに突出部180が4つ設けられた場合、
図5は、貫通穴121aに突出部180が3つ設けられた場合、
図6は、貫通穴121aに突出部180が2つ設けられた場合をそれぞれ示している。
図4ないし
図6においては、貫通穴121aに導通体160が挿入された状態を示している。なお、
図4ないし
図6において示す基板121については、そのハッチングの描画を省略している。
【0087】
上述したように、突出部180は、貫通穴121aに配置された導通体160を保持する役割を有する。従って、
図4に示す突出部180の場合は、導通体160を4カ所で支持する。同様に、
図5に示す突出部180の場合は3カ所で、
図6に示す突出部180の場合は2カ所で、それぞれ導通体160を支持するものである。
【0088】
また、突出部180は、導通体160の外周壁面160aと貫通穴121aの内周壁面121aaとの間に隙間Mを形成する。上述したように、導通体160を何カ所で支持するかによって形成される隙間Mの大きさは異なるが、いずれにしても当該隙間Mに接着剤150が浸入可能である。
【0089】
なお、
図2ないし
図6においては、貫通穴121aにおける突出部180のZ方向の位置については言及していない。従って、例えば、
図2の断面図に示すように、突出部180がZ方向において同じ位置に配置されていても、或いは、Z方向においてその位置をずらして配置しても良い。
【0090】
また、例えば、4カ所の突出部180が設けられるに当たって、
図4に示す突出部18
0の場合、貫通穴121aの内周壁面121aaにおいて互いに90度の位置となるように配置されている。但しこのように設けられる突出部180の数に合わせて均等な角度をもって導通体160を支持しなければならないものではない。従って、貫通穴121aにおいて導通体160を確実に支持することができるのであれば、内周壁面121aaにおける突出部180の配置位置については、任意に設定することができる。
【0091】
このように隙間Mの大きさについては、貫通穴121aの内周壁面121aaと導通体160の外周壁面160aとの間の距離によって設定される。すなわち隙間Mが小さすぎると接着剤150が浸入しにくくなり、導通体160と正極用鉛箔111a、或いは、負極用鉛箔112aとの接合部分に接着剤150が着いてしまう可能性がある。一方、隙間Mを大きくする場合には、貫通穴121aを広げるか、或いは、導通体160の大きさを小さくする必要がある。特に導通体160の大きさを小さくする場合、必要とされる電流量を導通させることができないことも考えられる。
【0092】
そのため、当該隙間Mの大きさは、双極型鉛蓄電池100の性能を確保する点も考慮して、導通体160の直径と突出部180の内周壁面121aaからの突出量とを変化させて設定されることが好ましい。
【0093】
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100における基板121の別の例における一部を
図3に示す空間形成部材120のA-A線で切断して拡大して示す拡大平面図である。なお、
図7において、貫通穴121aに導通体160が挿入された状態を示していること、及び、
図7において示す基板121については、そのハッチングの描画を省略していることは、
図4ないし
図6の場合と同様である。
【0094】
これまでは、いずれも貫通穴121aの内周壁面121aaから突出部180が複数突出している場合を例に挙げて説明してきた。但し、
図7を用いて説明する突出部181は、内周壁面121aaから突出している部分は1カ所のみである。
【0095】
図7に示す突出部181は、貫通穴121の内周壁面121aaから突出する支持部181aと、当該支持部181aの先端に接する保持部181bとを備える。支持部181aは、突出部181を内周壁面121aaに支持する。
【0096】
保持部181bは、例えば、Oリングのような形状とされる。そのため保持部181bは、導通体160の外周壁面160aに接して導通体160を保持する。すなわち、導通体160が保持部181bの内径部181b1に嵌め込まれ、支持部181aが導通体160と一体となった保持部181bを支持することで、突出部181は、導通体160を貫通穴121の内部に保持する。
【0097】
また、保持部181bの直径は貫通穴121の直径よりも小さくなるように形成されており、保持部181bの外径部181b2が貫通穴121aの内周壁面121aaと対向する。このことから、保持部181bの外径部181b2と貫通穴121の内周壁面121aaとの間には、隙間Mが形成される。
【0098】
そのため、たとえ接着剤150が伸びて貫通穴121に到達したとしても開口部121abから貫通穴121aの内部に入り込むため、貫通穴121aの開口部121abを超えて導通体160と正極用鉛箔111a、及び、負極用鉛箔112aとの接合部分にまで及ぶことはない。
【0099】
従って、正極用鉛箔111a、及び、負極用鉛箔112aと導通体160との接合部分に接着剤が触れることがないため、抵抗溶接等を行っても接合不良が生じる可能性を低減
することができる。
【0100】
なお、突出部181では、上述したように保持部181bにおいて導通体160を保持する。そのため、正極用鉛箔111a、及び、負極用鉛箔112aと導通体160とを熱を掛けて接合した場合に、突出部181を介して基板121に熱が伝わってしまう可能性がある。
【0101】
そこで、突出部181についても、例えば樹脂等の熱伝導性の低い材料で形成されることが好ましい。突出部181をこのような材料で形成することによって、導通体160の外周壁面160aに接する保持部181bからの放熱や支持部181aを介して基板121に熱が伝わることを低減できる。
【0102】
〔製造方法〕
この実施の形態の双極型鉛蓄電池100は、例えば、以下に説明する各工程を有する方法で製造することができる。
【0103】
<正負極用鉛箔付きバイポーラプレートの作製工程>
先ず、バイポーラプレート120の基板121を、第1の凹部121b側を上に向けて作業台に置く。そして第1の凹部121bに接着剤150を塗布し、第1の凹部121b内に正極用鉛箔111aを入れる。その際に、正極用鉛箔111aの貫通穴111cにバイポーラプレート120の柱部123を通す。この接着剤150を硬化させて、基板121の一面に正極用鉛箔111aを貼り付ける。
【0104】
次に、基板121の第2の凹部121c側を上に向けて作業台に置き、貫通穴121aに導通体160を挿入する。そして第2の凹部121cに接着剤150を塗布し、第2の凹部121c内に負極用鉛箔112aを入れる。その際に、負極用鉛箔112aの貫通穴112cにバイポーラプレート120の柱部123を通す。この接着剤150を硬化させて、基板121の他面に負極用鉛箔112aを貼り付ける。
【0105】
次に、基板121の第1の凹部121b側を上に向けて作業台に置く。そして正極用鉛箔111aの外縁部の上および第1の凹部121bの縁部となる基板121の上面に接着剤150を塗布し、その上にカバープレート170を載せて接着剤150を硬化させる。これにより、カバープレート170を、正極用鉛箔111aの外縁部の上とその外側に連続する基板121の部分(第1の凹部121bの周縁部)の上に亘って固定する。
【0106】
次に、抵抗溶接を行って、導通体160と正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとを接続する。これにより、正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を得る。この正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を必要枚数だけ用意する。
【0107】
<正極用鉛箔付きエンドプレートの作製工程>
第1のエンドプレート130の基板131を、凹部131b側を上に向けて作業台に置く。そして凹部131bに接着剤150を塗布し、凹部131b内に正極用鉛箔111aを入れて接着剤150を硬化させる。その際に、正極用鉛箔111aの貫通穴111cにエンドプレート130の柱部133を通す。この接着剤150を硬化させて、基板131の一面に正極用鉛箔111aを貼り付ける。
【0108】
次に、正極用鉛箔111aの外縁部の上および凹部131bの縁部となる基板131の上面に接着剤150を塗布する。この接着剤150の上にカバープレート170を載せて接着剤150を硬化させる。これにより、カバープレート170を、正極用鉛箔111aの外縁部の上とその外側に連続する基板131の部分の上に亘って固定する。これにより
、正極用鉛箔付きエンドプレートを得る。
【0109】
<負極用鉛箔付きエンドプレートの作製工程>
第2のエンドプレート140の基板141を、凹部141b側を上に向けて作業台に置く。そして凹部141bに接着剤150を塗布し、凹部141b内に負極用鉛箔112aを入れて接着剤150を硬化させる。その際に、負極用鉛箔112aの貫通穴112cに第2のエンドプレート140の柱部143を通す。この接着剤150を硬化させて、基板141の一面に負極用鉛箔112aが貼り付けられた第2のエンドプレート140を得る。
【0110】
<プレート同士を積層して接合する工程>
先ず、正極用鉛箔111aおよびカバープレート170が固定された第1のエンドプレート130を、正極用鉛箔111aを上に向けて作業台に置く。そしてカバープレート170の中に正極用活物質層111bを入れて正極用鉛箔111aの上に置く。その際に、正極用活物質層111bの貫通穴111dに第1のエンドプレート130の柱部133を通す。次に、正極用活物質層111bの上に、セパレータ113、負極用活物質層112bを置く。
【0111】
次に、この状態の第1のエンドプレート130の上に、正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120の負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。その際に、バイポーラプレート120の柱部123を、セパレータ113の貫通穴113aおよび負極用活物質層112bの貫通穴112dに通して、第1のエンドプレート130の柱部133の上に載せる。そして、第1のエンドプレート130の枠体132の上に、バイポーラプレート120の枠体122を載せる。
【0112】
この状態で、第1のエンドプレート130を固定し、バイポーラプレート120を基板121の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。これにより、第1のエンドプレート130の枠体132の上に、バイポーラプレート120の枠体122が接合される。また、第1のエンドプレート130の柱部133の上にバイポーラプレート120の柱部123が接合される。
【0113】
その結果、第1のエンドプレート130の上にバイポーラプレート120が接合される。第1のエンドプレート130とバイポーラプレート120とで形成される空間Cにセル部材110が配置され、バイポーラプレート120の上面に正極用鉛箔111aが露出した状態となる。
【0114】
次に、このようにして得られた、第1のエンドプレート130の上にバイポーラプレート120が接合されている結合体の上に、正極用活物質層111b、セパレータ113、および負極用活物質層112bをこの順に載せる。その後、さらに、別の正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を、負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。
【0115】
この状態で、この結合体を固定し、別の正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を基板121の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。この振動溶接工程を、必要な枚数のバイポーラプレート120が第1のエンドプレート130の上に接合されるまで続けて行う。
【0116】
最後に、全てのバイポーラプレート120が接合された結合体の最も上側のバイポーラプレート120の上に、正極用活物質層111b、セパレータ113、および負極用活物質層112bをこの順に載せる。その後、さらに、第2のエンドプレート140を、負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。
【0117】
この状態で、この結合体を固定し、第2のエンドプレート140を基板141の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。これにより、全てのバイポーラプレート120が接合された結合体の最も上側のバイポーラプレート120の上に、第2のエンドプレート140が接合される。
【0118】
なお、上記の説明においては、第1のエンドプレート130から第2のエンドプレート140に向けて順に積層する流れを説明した。但し、この積層順は、反対に第2のエンドプレート140から第1のエンドプレート130に向けて順に積層することとしても良い。
【0119】
<注液および化成工程>
上述の各プレート同士の積層、接合工程において、枠体の対向面同士の振動溶接による接合構造が形成される。そして図示しない貫通口から各空間Cの内部に電解液を所定量注液し、セパレータ113に電解液を含浸させる。その上で所定の条件で化成することで、双極型鉛蓄電池100を作製できる。
【0120】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態においては、貫通穴の内周壁面からその中心に向けて突出部を設け、当該突出部において導通体を保持する。このような構成を採用することによって、貫通穴の内周壁面と導通体の外周壁面との間に隙間が形成される。そのため、正負両極において基板に集電体を設けるに当たって用いられる接着剤を、貫通穴に挿入される導通体と正極用集電体、或いは、負極用集電体との接合部分に接触しないようにしつつ可能な限り貫通穴近傍まで配置することを可能にするとともに、たとえ貫通穴まで接着剤が伸張しても当該接合部分に接触することを防止することが可能な双極型蓄電池を提供することができる。
【0121】
またこのように貫通穴の内周壁面と導通体の外周壁面との間に隙間が設けられていることから、貫通穴の近傍まで接着剤を配置することが可能となり、正極用鉛箔、及び、負極用鉛箔を基板に強固に貼り付けることができる。従って、たとえグロースが発生したとしても導通体と正極用鉛箔、或いは、負極用鉛箔との接合が剥がれてしまうことを抑制することができる。そのため、正極側と負極側との導通が阻害されて双極型蓄電池の性能が低下することを回避することができる。
【0122】
(第2の実施の形態)
次に本発明における第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0123】
これまで本発明の第1の実施の形態において説明してきたのは、貫通穴121の内周壁面121aaに突出部180,181が設けられている双極型鉛蓄電池100である。そして当該突出部180,181の突出先端部180aが導通体160の外周壁面160aに接することで、貫通穴121aの内周壁面121aaと導通体160の外周壁面160aとの間に隙間Mが設けられる。
【0124】
これに対して、本発明の第2の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Aでは、貫通穴121aの内周壁面121aaと導通体160の外周壁面160aとの間に隙間Mを設ける方法として、貫通穴121aに突出部180等を設けるのではなく、導通体160の形状を変化させる。以下、この方法について図面を用いて説明する。
【0125】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Aの構造を示す断面図
である。また、
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Aの構造の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【0126】
なお、第2の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Aの構造については、貫通穴121aの内周壁面121aaに突出部181が設けられていない点、及び、導通体160の形状が異なるだけで、その他の構造については第1の実施の形態における双極型鉛蓄電池100と同様である。
【0127】
図9に示す拡大断面図は、
図8の破線で囲まれた部分を拡大して示している。
図8、及び、
図9に示されているように、双極型鉛蓄電池100Aでは突出部181が設けられていない。すなわち、貫通穴121aに突出部181が設けられていなくても導通体160との間に隙間Mが設けられるとともに、貫通穴121aに導通体160は保持されている。
【0128】
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Aにおける基板121の貫通穴121aに導通体161が挿入された状態の一例を、
図3に示す空間形成部材120のA-A線で切断して拡大して示す拡大平面図である。
【0129】
図10に示されているように、第2の実施の形態における導通体161は、楕円柱形状に形成されている。そのため、2カ所ある楕円の長軸の端部に当たる外周壁面161aにおいて貫通穴121aの内周壁面121aaに接している。
【0130】
導通体161がこのような形状に形成されていることから、導通体161が貫通穴121aに挿入された場合であっても、貫通穴121aの内周壁面121aaと導通体161の外周壁面161aとの間に隙間Mが形成される。また、導通体161の外周壁面161aの一部が貫通穴121aの内周壁面121aaに接していることから、導通体161は貫通穴121aの内部に保持される。
【0131】
また、導通体の形状については、貫通穴121aとの間に隙間Mが形成されること、及び、導通体が貫通穴121aに挿入された場合に、貫通穴121aに保持されることができるのであれば、どのような形状であっても良い。
【0132】
例えば、貫通穴121aの内周壁面121aaに2カ所で接するような、
図10に示す楕円柱形状ではなく、3カ所、或いは、4カ所等で接する多角柱形状であっても良い。但し、あまり角の多い多角形状の場合、円に近づいてしまうことから、内周壁面121aaとの間に隙間Mが形成されるような形状とする必要がある。
【0133】
また、導通体の形状を楕円柱形状や多角柱形状ではない形状とすることも可能である。
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Aにおける基板121の貫通穴121aに導通体162が挿入された状態の一例を、
図3に示す空間形成部材120のA-A線で切断して拡大して示す拡大平面図である。
【0134】
図11に示す導通体162は、中央に円柱形の中心部162aがあり、そこから四方に4つの凸部162bが突出した形状を備えている。導通体162がこのような形状を備えていることによって、上述したように貫通穴121aとの間に隙間Mが形成されるとともに、導通体162が貫通穴121aに保持される。
【0135】
なお、
図11に示す導通体162において、凸部162bは4カ所に設けられている。但し、凸部162bの数、配置位置については、貫通穴121aとの間に隙間Mが形成され、導通体162が貫通穴121aに保持されるのであれば、任意に設定することができ
る。
【0136】
このように本発明の第2の実施の形態においては、貫通穴に挿入される導通体の形状をこれまでの単なる円柱状ではなく、以上説明したような形状としている。このような構成を採用することによって、貫通穴の内周壁面と導通体の外周壁面との間に隙間が形成される。そのため、正負両極において基板に集電体を設けるに当たって用いられる接着剤を、貫通穴に挿入される導通体と正極用集電体、或いは、負極用集電体との接合部分に接触しないようにしつつ可能な限り貫通穴近傍まで配置することを可能にするとともに、たとえ貫通穴まで接着剤が伸張しても当該接合部分に接触することを防止することが可能な双極型蓄電池を提供することができる。
【0137】
またこのように貫通穴の内周壁面と導通体の外周壁面との間に隙間が設けられていることから、貫通穴の近傍まで接着剤を配置することが可能となり、正極用鉛箔、及び、負極用鉛箔を基板に強固に貼り付けることができる。従って、たとえグロースが発生したとしても導通体と正極用鉛箔、或いは、負極用鉛箔との接合が剥がれてしまうことを抑制することができる。そのため、正極側と負極側との導通が阻害されて双極型蓄電池の性能が低下することを回避することができる。
【0138】
以上、貫通穴の内周壁面と導通体の外周壁面との間に隙間を設ける方法として、第1の実施の形態、及び、第2の実施の形態においてそれぞれ説明した。但し、第1の実施の形態、及び、第2の実施の形態において説明した方法を組み合わせて貫通穴の内周壁面と導通体の外周壁面との間に隙間を設けても良い。
【0139】
なお上述したように、本発明の実施の形態においては双極型鉛蓄電池を例に挙げて説明した。但し、集電板に鉛ではなく他の金属を用いるような他の蓄電池においても上記説明内容が当てはまる場合には、当然その適用を排除するものではない。
【符号の説明】
【0140】
100・・・双極型鉛蓄電池
110・・・セル部材
111・・・正極
112・・・負極
111a・・・正極用鉛箔
112a・・・負極用鉛箔
111b・・・正極用活物質層
112b・・・負極用活物質層
113・・・セパレータ
120・・・バイポーラプレート
121・・・バイポーラプレートの基板
121a・・・基板の貫通穴
121aa・・・内周壁面
121ab・・・開口部
122・・・バイポーラプレートの枠体
130・・・第1のエンドプレート
131・・・第1のエンドプレートの基板
132・・・第1のエンドプレートの枠体
140・・・第2のエンドプレート
141・・・第2のエンドプレートの基板
142・・・第2のエンドプレートの枠体
150・・・接着剤
160・・・導通体
160a・・・外周壁面
161・・・導通体
161a・・・外周壁面
162・・・導通体
162a・・・凸部
170・・・カバープレート
180・・・突出部
180a・・・突出先端部
181・・・突出部
181a・・・支持部
181b・・・保持部
C・・・セル(セル部材を収容する空間)
M・・・隙間