(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165942
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ネガ型感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物及び電子部品
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20241121BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20241121BHJP
C08G 69/26 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 512
G03F7/038 601
C08G69/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082552
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119079
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 佐保子
(72)【発明者】
【氏名】奥田 綾乃
(72)【発明者】
【氏名】行森 大貴
(72)【発明者】
【氏名】井上 豪
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 香帆
(72)【発明者】
【氏名】石川 信広
【テーマコード(参考)】
2H225
4J001
【Fターム(参考)】
2H225AE03P
2H225AF82P
2H225AM67P
2H225AM75P
2H225AN41P
2H225AN64P
2H225BA26P
2H225BA33P
2H225CA12
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC17
4J001DA01
4J001DB01
4J001DC14
4J001DD05
4J001EB57
4J001EC36
4J001EC65
4J001FA01
4J001FB03
4J001FC03
4J001FD05
4J001GA13
4J001GB02
4J001GD06
4J001JA07
4J001JB01
4J001JB23
4J001JB45
(57)【要約】 (修正有)
【課題】伸びに優れ、基板との密着性に優れた硬化物をもたらすことを可能とするネガ型感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)式(1)で示される構造単位を含むポリヒドロキシアミド化合物、(B)光酸発生剤、(C)酸架橋性基を含有する架橋剤及び(D)ヒドロキシ基を末端に有するグラフト鎖により環状分子が修飾されたポリロタキサンを含み、前記(A)に含まれるヒドロキシ基のモル数及び前記(D)のグラフト鎖末端のヒドロキシ基のモル数の合計に対する、前記(C)に含まれる酸架橋性基のモル数の比の値が1.5未満である、ネガ型感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で示される構造単位を含むポリヒドロキシアミド化合物、
(B)光酸発生剤、
(C)酸架橋性基を含有する架橋剤及び
(D)ヒドロキシ基を末端に有するグラフト鎖により環状分子が修飾されたポリロタキサンを含み、
前記(A)に含まれるヒドロキシ基のモル数及び前記(D)のグラフト鎖末端のヒドロキシ基のモル数の合計に対する、前記(C)に含まれる酸架橋性基のモル数の比の値が1.5未満である、
ネガ型感光性樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
1は2価の有機基、R
2は4価の有機基である。)
【請求項2】
前記(A)100質量部に対して、前記(D)が3~30質量部である、請求項1記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)100質量部に対して、前記(D)が3~10質量部である、請求項2記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記酸架橋性基が、アルコキシメチル基、メチロール基又はエポキシ基である、請求項1記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)が、オキシムスルホネート化合物である、請求項1記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(E)塩基性化合物を含む、請求項1記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物により形成された樹脂層を備える、ドライフィルム。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物の硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化物を有する、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリベンゾオキサゾール前駆体を含む感光性樹脂組成物は、絶縁性、耐熱性、機械強度等に優れた特性を発現することから、絶縁膜として半導体、電子部品等の様々な分野において広く利用されている。
【0003】
従来、電子部品や電気機器の高性能化、小型化の要求にともなって半導体素子の高集積化が求められている。近年、これらの要求に答えるため、ウエハレベルパッケージ(WLP)等の半導体素子パッケージ分野における高性能化、小型化技術が開発され、再配線層に用いられる絶縁膜においてはパターン形成の微細化(解像性)の要求が高まっている。
【0004】
微細化されたパターン形成を可能とするネガ型感光性樹脂組成物については、ポリベンゾオキサゾール前駆体としてポリヒドロキシアミド化合物を含むネガ型感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-125267号公報
【特許文献2】特開2008-033159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のネガ型感光性樹脂組成物を用いた場合、組成物により形成される硬化物の伸びや基板との密着性が不十分であり、硬化物の剥がれやクラック発生などの不具合が生じるおそれがあった。
【0007】
そこで本開示の目的は、伸びや基板との密着性に優れた硬化物をもたらすことを可能とするネガ型感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。また、本開示の他の目的は、前記ネガ型感光性樹脂組成物を用いた硬化物、また、それらを用いたプリント配線板、半導体素子等の電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、後述する式(1)で示される構造単位を含むポリヒドロキシアミド化合物(以下「特定のポリヒドロキシアミド化合物」ともいう。)、光酸発生剤及び酸架橋性基を含有する架橋剤(以下「特定の架橋剤」ともいう。)を含むネガ型感光性樹脂組成物に、ヒドロキシ基を末端に有するグラフト鎖により環状分子が修飾されたポリロタキサン(以下「特定のポリロタキサン」ともいう。)を、特定のポリヒドロキシアミド化合物のヒドロキシ基のモル数及び特定のポリロタキサンのグラフト鎖末端のヒドロキシ基のモル数の合計に対する、特定の架橋剤の酸架橋性基のモル数が所定の範囲になるように配合することによって、前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1](A)下記式(1)で示される構造単位を含むポリヒドロキシアミド化合物、
(B)光酸発生剤、
(C)酸架橋性基を含有する架橋剤及び
(D)ヒドロキシ基を末端に有するグラフト鎖により環状分子が修飾されたポリロタキサンを含み、
前記(A)に含まれるヒドロキシ基のモル数及び前記(D)のグラフト鎖末端のヒドロキシ基のモル数の合計に対する、前記(C)に含まれる酸架橋性基のモル数の比の値が1.5未満である、
ネガ型感光性樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
1は2価の有機基、R
2は4価の有機基である。)
【0010】
[2]前記(A)100質量部に対して、前記(D)が3~30質量部である、[1]記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【0011】
[3]前記(A)100質量部に対して、前記(D)が3~10質量部である、[2]記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【0012】
[4]前記酸架橋性基が、アルコキシメチル基、メチロール基又はエポキシ基である、[1]~[3]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【0013】
[5]前記(B)が、オキシムスルホネート化合物である、[1]~[4]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【0014】
[6](E)塩基性化合物を含む、[1]~[5]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【0015】
[7][1]~[6]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物により形成された樹脂層を備える、ドライフィルム。
【0016】
[8][1]~[6]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物の硬化物。
【0017】
[9][8]に記載の硬化物を有する、電子部品。
【発明の効果】
【0018】
本開示技術によれば、伸びに優れ、基板との密着性に優れた硬化物をもたらすことを可能とするネガ型感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示技術の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下であることを表す。
【0020】
1.ネガ型感光性樹脂組成物
本開示のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)下記式(1)で示される構造単位を含むポリヒドロキシアミド化合物((A)特定のポリヒドロキシアミド化合物)、(B)光酸発生剤、(C)酸架橋性基を含有する架橋剤((C)特定の架橋剤)及び(D)ヒドロキシ基を末端に有するグラフト鎖により環状分子が修飾されたポリロタキサン((D)特定のポリロタキサン)を含む。
【0021】
1-1.(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物
(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物は、下記式(1)で示される構造単位を含む。
【化2】
(式中、R
1は2価の有機基、R
2は4価の有機基である。)
【0022】
式(1)中のR1は、2価の有機基であれば特に限定されず、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、ケトン基、エステル基、アミド基等を挙げることができ、これらの2つ以上の組み合わせであってもよく、これらの1つ以上とエーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、スルフィニル基等との組み合わせであってもよい。2価の有機基は、フッ素原子を置換基として有していてもよい。
ここで、有機基は、炭素原子を少なくとも1個含む官能基をいう。
【0023】
例えば、R
1は、ベンゼン、ナフタレン、ペリレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ベンゾフェノン等の骨格を有する2価の芳香族炭化水素基であっても、ブタン、シクロブタン等の骨格を有する2価の脂肪族炭化水素基であってもよい。
ネガ型感光性樹脂組成物の微細かつ高いアスペクト比のパターンの形成の観点から、R
1の炭素原子数は4~30が好ましい。好ましいR
1としては、以下が挙げられる。
【化3】
(ここで、Aは単結合、-CH
2-、-O-、-CO-、-S-、-SO
2-、-NHCO-、-C(CF
3)
2-又は-C(CH
3)
2-である。)
【0024】
(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物が複数のR1を含む場合、複数のR1は同じであっても、異なっていてもよい。
【0025】
式(1)中のR2は、4価の有機基であれば特に限定されず、例えば、アルカン、シクロアルカン、アレーン、ヘテロアレーン等の骨格を有する4価の残基であることができる。これらの残基は、エーテル基、チオエーテル基、ケトン基、スルホニル基、スルフィニル基、エステル基、アミド基等を有していてもよく、フッ素原子を置換基として有していてもよい。
例えば、R2は、ベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ベンゾフェノン、ジフェニルメタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン等の骨格を有する4価の芳香族炭化水素基が好ましい。これらは、フッ素原子を置換基として有していてもよい。
【0026】
ネガ型感光性樹脂組成物の微細かつ高いアスペクト比のパターンの形成の観点から、好ましいR
2としては、以下が挙げられる。
【化4】
(式中aは0~3の整数であり、好ましくは0である。)
【0027】
(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物が複数のR2を含む場合、複数のR2は同じであっても、異なっていてもよい。
【0028】
(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物の末端構造は、特に限定されず、アミノ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、酸無水物基、カルボキシル基、イソシアネート基等の官能基を有する末端構造が挙げられる。末端構造は、現像液への溶解性の観点からカルボキシル基又はフェノール性水酸基であることが好ましく、より好ましくはフェノール性水酸基である。末端構造は、末端封止剤により導入してもよい。
【0029】
(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、2,000~20,000であることができ、微細かつ高アスペクト比のパターン形成の観点から、3,000~15,000が好ましい。
(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物の数平均分子量(Mn)は、1,000~10,000であることが好ましく、1,500~6,000がより好ましい。
(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物の分子量分散度(PDI)は、1.5~4.0が好ましく、1.5~3.5がより好ましい。
【0030】
本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(GL Sience社製 GL7700)で測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。具体的な測定条件は以下のとおりである。
カラム:TSKgelαM(東ソー社製)
カラム内温度:40℃
溶離液組成:100mmol/LのH3PO4(H3PO4 85%水溶液を原料として使用)及び10mmol/LのLiBrを含むNMP溶液
溶離液流速:0.5mL/min
校正用標準試薬:ポリスチレン
検出器波長:260nm及び300nm
検出器温度:室温
解析時ベースライン範囲:15分~40分
解析時分子量算出範囲:20~35分
また、本明細書において、分子量分散度(PDI)は下記式(4)により算出される。
PDI=Mw/Mn (4)
【0031】
(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物の水酸基当量は、微細かつ高アスペクト比のパターン形成の観点から、特に限定されないが、例えば、100~400g/eqとすることができ、150~350g/eqが好ましく、200~300g/eqがより好ましい。なお、本開示においてポリヒドロキシアミド化合物の水酸基当量は、上述の方法で測定された数平均分子量と繰り返し単位構造の分子量から計算した理論水酸基当量を意味する。
【0032】
(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物は、単独であっても、2種以上の任意の比率の組み合わせであってもよい。
【0033】
1-2.(B)光酸発生剤
(B)光酸発生剤は、放射線の照射(露光)により酸を発生させる剤であれば特に限定されない。例えば、ジアゾメタン化合物、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ジスルホン系化合物、スルホン酸誘導体化合物、ニトロベンジル化合物、ベンゾイントシレート化合物、鉄アレーン錯体、ハロゲン含有トリアジン化合物、アセトフェノン誘導体化合物、シアノ基含有オキシムスルホネート化合物等が挙げられる。(B)光酸発生剤により、感光性樹脂組成物のアルカリ現像液への溶解性を調整することができる。
【0034】
微細かつ高いアスペクト比のパターンの形成の観点から、(B)光酸発生剤は、オキシムスルホネート化合物であることが好ましい。オキシムスルホネート化合物は、放射線を照射(露光)されるとスルホン酸エステルの結合が切断され、スルホン酸を発生する。
【0035】
オキシムスルホネート化合物としてはシアノ基含有オキシムスルホネート化合物が好ましく、下式(2)の構造を含むものが特に好ましい。
【化5】
式(2)におけるXは、特に限定されず、例えば、炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、フッ素原子等)が挙げられる。炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
ここで、炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、脂肪族炭化水素基であっても、芳香族炭化水素基であってもよい。
Xは、炭素原子数1~4の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基が好ましい。Xがハロゲン原子である場合は、塩素原子又はフッ素原子が好ましい。
【0036】
式(2)におけるmは、0~3の整数を表し、0又は1が好ましい。mが2又は3であるとき、複数のXは同一でも異なっていてもよい。
【0037】
式(2)におけるR3は、特に限定されず、例えば、水素原子、炭化水素基、ケトン基を含む有機基、又は、ハロゲン原子とすることができる。炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等)は無置換であってもよいが、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
炭化水素基は、炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状、環状のものが好ましく、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、環状のものがより好ましく用いられる。
ハロゲン原子は、塩素原子又はフッ素原子が好ましく用いられる。
【0038】
オキシムスルホネート化合物のうち市販されているものとしては、BASF社製のIrgacure PAG103、Irgacure PAG108、Irgacure PAG121、Irgacure PAG203等を挙げることができる。
【0039】
(B)光酸発生剤としては、スルホニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、ナフタルイミド系化合物、ジアゾニウム塩系化合物、オニウム塩系化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、ニトロベンジルエステル化合物、N-オキシイミドスルホネート化合物等も使用することができる。
【0040】
(B)光酸発生剤は、単独でも、2種以上の任意の比率の組み合わせであってもよい。
【0041】
1-3.(C)酸架橋性基を含有する架橋剤
(C)酸架橋性基を含有する架橋剤(以下「(C)特定の架橋剤」ともいう。)は、(B)光酸発生剤が発生させる酸の作用により(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物のヒドロキシ基及び(D)特定のポリロタキサンのヒドロキシ基(特にグラフト鎖上のヒドロキシ基)と反応し、架橋構造を生成する剤であれば特に限定されない。
【0042】
(C)特定の架橋剤の酸架橋性基としては、例えば、アルコキシメチル基(例えば、メトキシメチル基等)、メチロール基(-CH2-OH)基、エポキシ基、オキセタン基、エピスルフィド基等が挙げられ、好ましくはメトキシメチル基、メチロール基である。
【0043】
(C)特定の架橋剤は、伸びや基板との密着性に優れた硬化物を得る観点から複素環を含むことが好ましい。複素環は、特に限定されず、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄、アンチモン、ヒ素、ビスマス、セレン、ケイ素、テルル、スズ等のヘテロ原子を1つ以上含み、3員環、4員環、5員環、6員環、7員環又は8員環の飽和環又は不飽和環を含む。複素環は、伸びや基板との密着性に優れた硬化物を得る観点から、窒素を含む複素環が好ましく、窒素を複数含む複素環がより好ましい。具体的には、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン等のトリアジン構造を有する化合物、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン等のグアナミン構造を有する化合物、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル等のグリコールウリル構造を有する化合物、1,3-ビス(メトキシメチル)-2-イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン構造を有する化合物がより好ましい。これらのうち、特に、伸びや基板との密着性に優れた硬化物を得る観点から、トリアジン環を含むトリアジン構造を有する化合物、グアナミン構造を有する化合物を好ましく用いることができる。
【0044】
(C)特定の架橋剤としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド化合物等も使用することができる。
【0045】
(C)特定の架橋剤は、単独でも、2種以上の任意の比率の組み合わせであってもよい。
【0046】
1-4.(D)ヒドロキシ基を末端に有するグラフト鎖により環状分子が修飾されたポリロタキサン
本開示のネガ型感光性樹脂組成物は、放射線の照射(露光)により(B)光酸発生剤が酸を発生させ、その作用によって、(C)特定の架橋剤が、(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物のヒドロキシ基及び(D)特定のポリロタキサンのグラフト鎖上のヒドロキシ基と反応し、架橋構造を生成する。架橋構造は、(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物同士が、(D)特定のポリロタキサンを介して結合した構造等を含み、柔軟な架橋点を形成しているため、組成物から得られる硬化物に優れた伸びをもたらし、基板との密着性も向上すると推測される。
【0047】
ポリロタキサンは、複数の環状分子を串刺し状に包接する直鎖分子と、直鎖分子の末端に配置され、環状分子の脱離を防止するブロック基とを有する化合物をいう。ポリロタキサンにおいて、環状分子は直鎖分子上を自由に移動することが可能であるが、ブロック基により直鎖分子から抜け出せない構造を有する。(D)特定のポリロタキサンは、環状分子がヒドロキシ基を末端に有するグラフト鎖により修飾されている。
【0048】
直鎖分子は、環状分子の開口部に貫通し、ブロック基と反応し得る官能基を有する分子であれば、特に限定されない。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、ポリイソブチレンジオール、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)ジオール、水素化ポリブタジエンジオール、ポリエチレンジオール、ポリプロピレンジオール等の末端水酸基ポリオレフィン類;ポリカプロラクトンジオール、ポリ乳酸、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類;末端シラノール型ポリジメチルシロキサン等の末端官能性ポリシロキサン類;末端アミノ基ポリエチレングリコール、末端アミノ基ポリプロピレングリコール、末端アミノ基ポリブタジエン等の末端アミノ基鎖状ポリマー類;上記官能基を一分子中に3つ以上有する3官能性以上の多官能性鎖状ポリマー類等が挙げられる。中でも、ポリロタキサンの合成が容易である観点から、ポリエチレングリコール、末端アミノ基ポリエチレングリコールが好ましく用いられる。
直鎖分子の重量平均分子量は、1,000~100,000であることができ、2,000~50,000であることが好ましい。硬化物の伸びや基板との密着性により優れる観点から、より好ましくは2,000~15,000である。
【0049】
ブロック基は、直鎖分子の末端官能基と結合することができ、環状分子が直鎖分子から脱離しないために十分に嵩高い基であれば、特に限定されない。例えば、ジニトロフェニル基、シクロデキストリン基、アダマンチル基、トリチル基、フルオレセイニル基、ピレニル基、アントラセニル基、数平均分子量1,000~1,000,000の高分子の主鎖又は側鎖等が挙げられる。両末端のブロック基は同じでも、異なっていてもよい。
【0050】
環状分子は、開口部に直鎖分子が貫通し得るものであれば、特に限定されない。例えば、シクロデキストリン類、クラウンエーテル類、クリプタンド類、大環状アミン類、カリックスアレーン類、シクロファン類等が挙げられる。シクロデキストリン類は、複数のグルコースがα-1,4-結合で環状に連なった化合物である。α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンがより好ましい。
【0051】
(D)特定のポリロタキサンは、環状分子がヒドロキシ基を末端に有するグラフト鎖により修飾されている。例えば、ポリエステルにより構成されるグラフト鎖により、ヒドロキシ基が環状分子に結合していることが好ましい。ポリエステルは、他の成分との相溶性及び有機溶剤への溶解性の観点から、脂肪族ポリエステルがより好ましく、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ3-ヒドロキシブチレート、ポリ4-ヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート/3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(ε-カプロラクトン)等が挙げられ、中でもポリ(ε-カプロラクトン)がより好ましい。
ヒドロキシ基を末端に有するグラフト鎖により、環状分子の全てが修飾されていても、その一部が修飾されていてもよい。
【0052】
(D)特定のポリロタキサンの水酸基価は、20~200mgKOH/gであることができ、50~150mgKOH/gであることが好ましい。なお、本開示技術においてポリロタキサンの水酸基価とは、JIS K0070-1992に準じて測定した活性なヒドロキシ基の量を表す。(D)特定のポリロタキサンにおいてはグラフト鎖が末端に有するヒドロキシ基が活性なヒドロキシ基である。
【0053】
好ましい(D)特定のポリロタキサンとしては、以下が挙げられる。
【化6】
式(5)において、
太線は、シクロデキストリン構造を示し、
破線は、ポリアルキレングリコール鎖を示し、
R
aは、炭素原子数1~18のアルキレン基であり、
R
bは、炭素原子数1~18のアルキレン基であり、
R
cは、炭素原子数1~10のアルキレン基であり、
Rdは、アダマンチル基を有する1価の有機基であり、
Reは、アダマンチル基を有する1価の有機基であり、
pは、1以上であり、
qは、1以上であり、
rは、1以上である。
【0054】
(D)特定のポリロタキサンは、単独でも、2種以上の任意の比率の組み合わせであってもよい。
【0055】
1-5.(E)塩基性化合物
本開示のネガ型感光性樹脂組成物は、溶解コントラストや解像性の向上や、感光性樹脂組成物を塗布してから露光するまでの引き置き時間における塗膜の安定性等の向上の観点から、(E)塩基性化合物を含むことが好ましい。
【0056】
(E)塩基性化合物としては、特に限定されず、例えば、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリベンジルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン等のアミン化合物;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド等のアミド化合物;ピロリドン、N-メチルピロリドン等のラクタム;メチルウレア、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア、1,1,3,3-テトラメチルウレア、1,3-ジフェニルウレア等のウレア化合物;イミダゾール、ベンズイミダゾール、4-メチルイミダゾール、8-オキシキノリン、アクリジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、2,4,6-トリ(2-ピリジル)-S-トリアジン、ピペラジン、1,4-ジメチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピリジン等の含窒素複素環式化合物;モルホリン、4-メチルモルホリン等のモルホリン化合物等を挙げることができる。
【0057】
(E)塩基性化合物は、単独でも、2種以上の任意の比率の組み合わせであってもよい。
【0058】
1-6.(F)無機フィラー
本開示のネガ型感光性樹脂組成物は無機フィラーを含むことができる。無機フィラーとしては特に限定されず、従来公知の無機フィラーを用いることができるが、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素、ガラス粉末、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。これらは、単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。絶縁信頼性に優れ、ネガ型感光性樹脂組成物の熱膨張率を低くする観点からシリカを用いることが好ましく、特に球状シリカを用いることが好ましい。
【0059】
無機フィラーの体積平均粒子径(D50)は1.0μm以下とすることができ、500nm以下が好ましく、100nm以下とすることが特に好ましい。無機フィラーの体積平均粒子径はレーザー回折法により測定することができる。
【0060】
1-7.溶剤
本開示のネガ型感光性樹脂組成物は溶剤を含むことができる。溶剤としては、特に限定されず、例えば、酢酸-2-メトキシ-1-メチルエチル(PGMEA)、4-メチル-2-ペンタノン、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、へキサメチルスルホキシド、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、シクロへキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン等が挙げられる。これらは、単独で、又は、複数を任意の比率での組み合わせて用いることができる。中でも、ネガ型感光性樹脂組成物中の各成分との親和性に優れる観点から、γ-ブチロラクトン又はシクロペンタノンが好ましい。また、ネガ型感光性樹脂組成物の乾燥時における溶剤除去性に優れることや、半導体製造におけるエッジリンス工程への適合性の観点から、シクロペンタノンであることが特に好ましい。溶剤は、単独でも、2種以上の任意の比率の組み合わせであってもよい。
【0061】
1-8.その他の成分
本開示のネガ型感光性樹脂組成物は、本開示技術の効果を損なわない限りにおいて、その他の成分を含むことができる。その他の成分としては、ネガ型感光性樹脂組成物に含むことのできる公知のものを用いることができ、例えば、密着剤、界面活性剤、可塑剤、熱酸発生剤、増感剤、レベリング剤、着色剤、繊維、微粒子、フェノール化合物等を挙げることができる。
【0062】
界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤等が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、DIC社製の「メガファック」シリーズ(例えば、メガファックF-281、F-477、F-553、F-554、F-555、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-563、F-569等)等が挙げられる。シリコン系界面活性剤の市販品としては、ビックケミー社表面調整剤シリーズ(例えば、BYK-302、BYK-307、BYK‐310、BYK-322、BYK-323、BYK-326、BYK-331、BYK-332、BYK-333、BYK-348、BYK-349、BYK-377、BYK-378、BY-3455、BYK-3760等)等が挙げられる。これらは、単独でも、2種以上の任意の比率の組み合わせでもよい。
【0063】
2.ネガ型感光性樹脂組成物
本開示のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物、(B)光酸発生剤、(C)特定の架橋剤、(D)特定のポリロタキサン及び(E)塩基性化合物をはじめとする任意の成分を混合することにより得ることができる。各成分の混合は、必要に応じて加熱下で行うことができる。
【0064】
(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物の配合量は、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分の全質量を100質量%とした場合に、50~80質量%とすることができる。ここで、本明細書における固形分質量とは、揮発成分を完全に揮発させた残渣の質量をいうものとする。
【0065】
(B)光酸発生剤の配合量は、ネガ型感光性樹脂組成物中の(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物100質量部に対して、0.5~20質量部とすることができ、1~10質量部が好ましい。
【0066】
本開示のネガ感光性樹脂組成物における(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物に含まれるヒドロキシ基のモル数(XA)及び(D)特定のポリロタキサンのグラフト鎖上のヒドロキシ基のモル数(XD)の合計に対する、前記(C)特定の架橋剤に含まれる酸架橋性基のモル数(XC)の比((Xc/(XA+XD)が1.5未満である。比の下限値は、例えば0.1以上であり、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.5以上である。比がこの範囲内にあると、放射線の照射(露光)により生成する硬化物に優れた伸びおよび基板との密着性を付与することができる。
【0067】
(D)特定のポリロタキサンのグラフト鎖上のヒドロキシ基のモル数(XD)は、(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物に含まれるモル数(XA)に対して、0.001~0.20とすることができ、0.01~0.15が好ましい。
【0068】
(D)特定のポリロタキサンの配合量は、(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物100質量部に対して、硬化物に優れた伸びをもたらす観点から3~30質量部であることが好ましく、3~10質量部であることがより好ましい。(D)特定のポリロタキサンの量が10質量部以下であると、ネガ型感光性樹脂組成物を現像した後に、未露光部において現像残渣が発生することを抑制しやすくなり、微細かつ高アスペクト比であるパターンの形成が可能となる。
【0069】
(E)塩基性化合物を添加する場合の配合量は、ネガ型感光性樹脂組成物中の(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物100質量部に対して、0.01~0.50質量部とすることができ、0.08~0.40質量部であることが好ましい。このような範囲とすることで、ネガ型感光性樹脂組成物を現像した後に、未露光部において現像残渣が発生することを抑制しやすくなる。
【0070】
(F)無機フィラーを添加する場合の配合量は、ネガ型感光性樹脂組成物中の(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物100質量部に対して、1質量部~50質量部とすることができ、10質量部~40質量部とすることが好ましい。このような範囲とすることで、ネガ型感光性樹脂組成物の現像性を維持しながら、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物を低熱膨張率とすることができる。
【0071】
本開示のネガ型感光性樹脂組成物から形成される硬化物は、良好な伸びを示し、基板(例えば、シリコン基板等)との密着性に優れている。
また、本開示のネガ型感光性樹脂組成物を用いることによって、微細で高アスペクト比のパターニングを形成することも可能である。具体的には、本開示のネガ型感光性樹脂組成物は、半導体回路や回路基板のパターンにおけるライン/スペース(L/S)を4μm/4μm未満とすることが可能であり、3.0μm/3.0μm以下、さらには2.0μm/2.0μm以下とすることも可能である。また、アスペクト比(ラインの高さ/ラインの幅)を1.5以上とすることが可能であり、さらには3.0以上とすることも可能である。
【0072】
3.ドライフィルム
本開示のドライフィルムは、基材と、この基材上に、本開示のネガ型感光性樹脂組成物を用いて形成された樹脂層とを備える。また、樹脂層の保護のため、さらに樹脂層の表面に保護フィルムを積層してもよい。
【0073】
基材は、特に限定されないが、例えば、銅箔等の金属箔;ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のポリエステルフィルム;を挙げることができる。
【0074】
保護フィルムは、特に限定されないが、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、紙等を用いることができる。保護フィルムは、保護フィルムと樹脂層の密着力が、基材と樹脂層の密着力よりも低くなるものを選択することが好ましい。保護フィルムと樹脂層の密着力を、基材と樹脂層の密着力よりも低くするため、保護フィルムの表面に剥離処理を施したものを用いることができる。
【0075】
樹脂層の厚さは、特に限定されないが、用途に応じて、1~150μmとすることができる。樹脂層は、例えば、基材上にネガ型感光性樹脂組成物を塗布し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター又はスプレーコーター等を用い、樹脂層の厚さを調整し、乾燥させることで得ることができる。
【0076】
4.硬化物
本開示の硬化物は、本開示のネガ型感光性樹脂組成物又はドライフィルムの樹脂層を硬化させたものである。硬化物としては、パターニングされた硬化物であってもよい。パターニングされた硬化物の製造方法の例として、以下の方法を挙げることができる。
【0077】
4-1.乾燥塗膜形成工程
乾燥塗膜形成工程は、本開示のネガ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布し塗膜を形成し、その後乾燥させる工程である。乾燥塗膜形成工程は、ドライフィルムの樹脂層を基板上に転写することで基板上に乾燥塗膜を形成することも可能である。
【0078】
ネガ型感光性樹脂組成物の基板上への塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等を用いて塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、インクジェット法等を挙げることができる。塗布膜厚は特に限定されないが、例えば10μm以下、5μm以下、3μm以下とすることができる。膜厚を薄くすることにより、パターンのアスペクト比を維持しながら、より微細なL/Sのパターニングが可能となる。
【0079】
塗膜の乾燥方法は、特に限定されず、例えば、送風乾燥、オーブン又はホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥を行う場合の条件は、例えば、加熱温度70~140℃、乾燥時間1~30分である。
【0080】
ドライフィルムの樹脂層の基材上への転写は、真空ラミネーター等を用いて、加圧及び加熱下で行うことが好ましい。加熱温度としては、例えば、60~100℃とすることができる。
【0081】
基板は、特に限定されず、例えば、回路形成されたプリント配線板、フレキシブルプリント配線板、半導体素子が形成されたウエハとすることができる。
【0082】
4-2.露光工程
露光工程は、乾燥塗膜形成工程において形成された乾燥塗膜に対し、所望するパターン形成が可能なフォトマスクを介して放射線を照射することにより、露光部の(B)光酸発生剤を感光させ、活性種を発生させる工程である。パターニングが不要の場合にはフォトマスクを介す必要はない。また、直接描画装置を用いて、直接レーザーでパターンを描画してもよい。
【0083】
放射線の波長としては、(B)光酸発生剤が活性化できる波長のものが用いられ、微細化されたパターニングを行うためには、最大波長が410nm以下のものが好ましい。照射エネルギーは、形成した乾燥塗膜の厚さ等により調整することができ、例えば、10~1000mJ/cm2とすることができる。露光光源としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ、KRFレーザー等を用いることができる。
【0084】
4-3.PEB工程
Post Exposure Bake(PEB)工程は、露光工程で露光された乾燥塗膜を加熱処理し、乾燥塗膜の露光部(以降、露光部と略す場合がある)に耐現像性を付与する工程である。PEB工程では、露光部にて(B)光酸発生剤より発生した酸を活性種として、(A)特定のポリヒドロキシアミド化合物や(D)特定のポリロタキサンと(C)特定の架橋剤との架橋反応が進行し、露光部が現像液に対して不溶化する。PEB工程における加熱温度は、90~150℃とすることができ、加熱時間は、0.5~10分とすることができる。加熱は、ホットプレートや加熱炉等の公知の方法で行うことができる。
【0085】
4-4.現像工程
現像工程は、PEB工程で加熱した乾燥塗膜を現像液により処理し、乾燥塗膜の未露光部を現像液に溶解、除去することによって、パターン塗膜を得る工程である。現像方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、回転スプレー法、パドル法、超音波処理をともなう浸せき法等を挙げることができる。
【0086】
現像液は、公知のものを用いることができ、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩類等の水溶液を挙げることができる。必要に応じて、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を添加することができる。
【0087】
現像液による処理の後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン塗膜を得ることができる。リンス液は、特に限定されず、純水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。
【0088】
4-5.現像後加熱工程
現像後加熱工程は、現像工程で形成されたパターン塗膜を加熱して、パターン塗膜の硬化を完了し、硬化パターン塗膜(硬化物)を得る工程である。加熱温度は、150~240℃、加熱時間は、1~120分とすることができる。加熱は、ホットプレートやイナートオーブン等の公知の方法で行うことができ、窒素雰囲気下にて加熱することが望ましい。
【0089】
5.ネガ型感光性樹脂組成物の用途
本開示のネガ型感光性樹脂組成物は、表示装置、半導体素子、電子部品、光学部品、建築材料等の形成材料として好適に用いることができる。半導体素子の形成材料は、例えば、レジスト材料、バッファーコート膜、ウエハレベルパッケージ(WLP)の再配線層用絶縁膜である。本開示のネガ型感光性樹脂組成物から形成される硬化物は、良好な伸びを示し、密着性に優れているため、本開示のネガ型感光性樹脂組成物は、特にダマシン法を用いた再配線層形成工程に好ましく用いることができる。また、電子部品の形成材料として、例えば、プリント配線板、層間絶縁膜、配線被覆膜等が挙げられる。
【実施例0090】
本開示技術を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本開示技術は実施例に限定されるものではない。
【0091】
実施例及び比較例で使用した各成分は、以下のとおりである。
【0092】
(a)ポリヒドロキシアミド化合物
【化7】
上記式のポリヒドロキシアミド化合物を、以下のようにして調製した。
攪拌機、温度計を備えた500mLフラスコ中で、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)14.93g(44.39mmol)及び3-アミノフェノール2.45g(22.42mmol)を、N-メチルピロリドン(NMP)79g中で撹拌溶解した。その後、フラスコを氷浴に浸し、フラスコ内を0~5℃に保ちながら、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(DEDC)16.41g(55.61mmol)を固体のまま10分間かけて加え、氷浴中で30分間撹拌した。室温で18時間撹拌後、溶液を大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。得られた固体を酢酸エチル79gに溶解させた。ここに陰イオン交換樹脂 (オルガノ社アンバーリストB-20)17gを投入し、1時間激しく攪拌した。撹拌した溶液を濃縮した後、大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。析出した固体を回収後、減圧乾燥して水酸基末端のポリヒドロキシアミド化合物(a)を得た。
得られたポリヒドロキシアミド化合物(a)は、重量平均分子量(Mw)が9,222、数平均分子量(Mn)が3,561、分子量分散度(PDI)が2.6、フェノール性水酸基当量が252g/eqであった。
【0093】
(b)光酸発生剤
Irgacure PAG103(BASF社製オキシムスルホネート化合物)
【化8】
【0094】
(c)架橋剤
MW-390(日本カーバイド工業社製ヘキサメトキシメチルメラミン化合物)
【0095】
(d-1)ポリロタキサン(株式会社ASM社製、SH1300P。軸の分子量1.1万、全体分子量(代表値)18万、水酸基価(mgKOH/g)(代表値)85)
(d-2)ポリロタキサン(株式会社ASM社製、SH2400P。軸の分子量2万、全体分子量(代表値)40万、水酸基価(mgKOH/g)(代表値)76)
【化9】
【0096】
(e)塩基性化合物
トリエタノールアミン(TEA)
【0097】
界面活性剤:BYK-310(ビックケミー社製、シリコン系界面活性剤)
【0098】
溶剤:シクロペンタノン(東京化成工業社製)
【0099】
<ネガ型感光性樹脂組成物の調製>
各成分を表1に示された量(質量部)にて配合し、溶剤にてワニス中の不揮発成分の濃度が30%となるように溶解、調整することで、各実施例及び比較例のネガ型感光性樹脂組成物のワニスを得た。
ネガ型感光性樹脂組成物の原料の配合量から(a)ポリヒドロキシアミド化合物に含まれるヒドロキシ基のモル数(Xa)、(d-1)又は(d-2)のポリロタキサンのグラフト鎖末端のヒドロキシ基のモル数(Xd)、(c)架橋剤に含まれる酸架橋性基のモル数(Xc)を換算し、Xc/(Xa+Xd)、Xd/Xaを算出した。算出した値を表1に示す。
【0100】
得られた各実施例及び比較例のワニスを用いて以下の評価を行った。各評価結果を表1に示す。
【0101】
<ヤング率、引張強度、破断伸び>
ヤング率、引張強度、破断伸びの評価用硬化膜を以下のようにして調製した。
各実施例及び比較例のワニスを、シリコン基板上に、硬化後の厚さが10μmとなるようスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上にて90℃で、180秒間乾燥を行い、各実施例及び比較例の乾燥塗膜を得た。得られた乾燥塗膜に対し、UV光(波長365nm)を用いて、露光量を1000mJとなるよう全面露光を行い、さらにイナートオーブン中で220℃1時間加熱させて硬化膜を得た。得られた硬化膜に対してプレッシャークッカー(PCT)試験(条件:温度121℃、湿度100%の条件下1時間処理)を施し、基板から剥離した後、硬化膜を長さ70mm×幅5mmの短冊状に成形し評価用硬化膜を得た。
得られた評価用硬化膜を用いてヤング率、引張強度、破断伸びを測定した。測定条件は以下のとおりである。ヤング率は引張試験から得られた応力-歪み曲線において応力が5~10MPaである範囲の平均傾きから算出し、破断強度は引張試験において試料が破断した際の応力、破断伸びは引張試験において試料が破断するまでの伸びとして以下の計算式により算出した。各測定値は同様の引張試験を5回行い、得られた測定値の平均値とした。
[測定条件]
試験機:引張試験機EZ-SX(株式会社島津製作所製)
チャック間距離:50mm
試験速度:1mm/min
伸び計算:(引張移動量/チャック間距離)×100
【0102】
<硬化後クロスカット及び硬化後ピール>
硬化後クロスカット及び硬化後ピール用の評価用基板を以下のようにして調製した。
各実施例及び比較例のワニスを、スピンコーターを用いて、硬化後の厚さが10μmとなるようにシリコン基板上に塗布し、ホットプレート上にて90℃で、180秒間乾燥を行い、各実施例及び比較例の乾燥塗膜を得た。得られた乾燥塗膜に対し、UV光(波長365nm)を用いて、露光量を1000mJとなるよう全面露光を行い、さらにイナートオーブン中で220℃1時間加熱して、表面に硬化膜が形成された評価用基板を得た
評価用基板の硬化膜に、クロスカット試験ガイドCCJ―1(COTEC社製)を用いて、カッターナイフによって、1mm×1mmサイズの正方形を縦横10列ずつ合計100個の碁盤目を作成した。碁盤目を作成後に剥がれずに残っていた個数を、硬化後クロスカット試験の結果として表1に示す。
次いで、テープピーリング(条件:JIS K 5600-5-6:1999に準拠)を行った。剥がれずに残っていた個数を、硬化後ピール試験の結果として表1に示す。
【0103】
<未露光部の溶解性>
未露光部の溶解性評価用基板を以下のようにして調製した。
各実施例及び比較例のワニスを、スピンコーターを用いて、乾燥後の厚さが3μmとなるようにシリコン基板上に塗布し、ホットプレート上にて90℃で、180秒間乾燥を行い、シリコン基板上に乾燥塗膜が形成された溶解性評価用基板を得た。
溶解性評価用基板を2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液に、1分間浸漬した後引き上げ、乾燥塗膜が形成された面を観察した。目視により未露光部の残渣の有無を観察した。
【0104】
【0105】
表1に示すように、実施例のネガ型感光性樹脂組成物により、伸び及び基板との密着性に優れた硬化物が得られることがわかる。実施例1~4及び6については、未露光部の残渣も観察されず、現像性の点でも優れていることがわかる。
【0106】
<パターニング試験>
実施例1、4及び6のネガ型感光性樹脂組成物を用いて、以下のパターニング試験を行ったところ、L/Sが2/2μmまで正常にパターンが形成されていることを確認した。
各実施例及び比較例のワニスをシリコンウエハ上にスピンコーターを用いて硬化後の膜厚が3.0μmとなるように塗布し、ホットプレートを用いて90℃、3分乾燥させ、各実施例及び比較例のネガ型感光性樹脂組成物の乾燥塗膜を得た。この乾燥塗膜にコンタクト露光機(UVE-251S+EL-100(三永電機製作所社製))を用い、L/Sが1/1μm、2/2μm、3/3μm、4/4μm、5/5μmのテストパターンを露光し(露光量100mJ)、ホットプレートにて120℃、60秒間の露光後加熱(PEB)を行った。その後、2.38%TMAH水溶液を用いて、30秒間現像し30秒間超純水にてリンスを行い、30秒間スピン乾燥を行い、パターンを有する試料を得た。
各試料を、パターンの長手方向に垂直な断面が観察できるように切断した。パターンの切断面を、走査型電子顕微鏡(観察倍率は10,000倍)を用いて観察し、正常にパターニングされているか否かを確認した。なお、各パターンが倒れることなく垂直にパターニングされている試料を正常にパターニングされていると判断した。
本開示技術によれば、伸びに優れた硬化物をもたらすことを可能とするネガ型感光性樹脂組成物が提供され、前記ネガ型感光性樹脂組成物を用いた硬化物、また、それらを用いたプリント配線板、半導体素子等の電子部品が提供される。本開示技術は、十分に高集積化された回路形成を可能とするものであり、産業上の利用可能性が高い。