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特開2024-165947基板の加工方法、切削ブレードの製造方法及び切削ブレード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165947
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】基板の加工方法、切削ブレードの製造方法及び切削ブレード
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20241121BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20241121BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20241121BHJP
   B24D 5/12 20060101ALI20241121BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20241121BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B24B27/06 M
H01L21/78 F
B24D3/00 340
B24D5/12 Z
B24B53/00 K
B24B53/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082567
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】岡村 卓
(72)【発明者】
【氏名】狩野 智弘
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 研二
(72)【発明者】
【氏名】峯 恵
【テーマコード(参考)】
3C047
3C063
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C047AA16
3C047AA33
3C047EE04
3C047EE09
3C047EE18
3C063AA02
3C063AB03
3C063BA02
3C063BA21
3C063BB02
3C063BC02
3C063BG07
3C063CC30
3C063EE10
3C063EE31
3C158AA03
3C158AA09
3C158AA14
3C158AA16
3C158AB04
3C158AC04
3C158BB02
3C158BC01
3C158BC02
3C158CB01
3C158DA17
5F063AA05
5F063AA22
5F063BA43
5F063BA45
5F063CA01
5F063CA04
5F063DD02
5F063DD22
(57)【要約】
【課題】基板の表面に生じるチッピングを低減し、基板の加工品質を向上することができる基板の加工方法を提供する。
【解決手段】
基板の表面が露出するように基板を保持する基板保持工程と、基板保持工程の後、回転させた切削ブレードを基板に切り込ませることにより基板を分割予定ラインに沿って切削する加工工程と、を含み、切削ブレードは、環状基台と、基台の周縁部に設けられた環状の切刃と、を備え、切刃の先端部は、切刃の先端に向かうにつれて互いの距離が小さくなる第1側面と第2側面とを有し、第1側面と第2側面とのなす角度は、5°以上30°未満である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の分割予定ラインが格子状に設定された基板の加工方法であって、
該基板の該表面が露出するように該基板を保持する基板保持工程と、
該基板保持工程の後、回転させた切削ブレードを該基板に切り込ませることにより、該基板を該分割予定ラインに沿って切削する加工工程と、を含み、
該切削ブレードは、環状基台と、該基台の周縁部に設けられた環状の切刃と、を備え、 該切刃の先端部は、該切刃の先端に向かうにつれて互いの距離が小さくなる第1側面と第2側面とを有し、該第1側面と該第2側面とのなす角度は、5°以上30°未満である、基板の加工方法。
【請求項2】
該加工工程の前に、該切削ブレードを回転させた状態で該切刃の該先端部にエッチング液を供給することにより該切刃の該先端部の形状を調整する切削ブレード調整工程を更に含む、請求項1に記載の基板の加工方法。
【請求項3】
該加工工程の前に、切削ブレード調整部材を保持する切削ブレード調整部材保持工程と、
該加工工程の前に、該切削ブレードを回転させ、かつ、該切刃の該先端部にエッチング液を供給しながら、該切削ブレードを該切削ブレード調整部材に切り込ませることにより該切刃の該先端部の形状を調整する、基板の加工方法。
【請求項4】
該エッチング液は、二酸化炭素が溶解した水である、請求項2又は請求項3に記載の基板の加工方法。
【請求項5】
基板を加工するための切削ブレードを製造する切削ブレードの製造方法であって、
環状の基台と、該基台の周縁部に設けられた環状の切刃と、を有する環状部材を準備する準備工程と、
該環状部材を回転させた状態で該切刃の先端部にエッチング液を供給することにより、該切刃の先端に向かうにつれて互いの距離が小さくなるように5°以上30°未満の角度をなす第1側面と第2側面とを該切刃の該先端部に形成するエッチング液供給工程と、を含む切削ブレードの製造方法。
【請求項6】
該エッチング液供給工程は、該切刃を切削ブレード調整部材に切り込ませながら実施される、請求項5に記載の切削ブレードの製造方法。
【請求項7】
該エッチング液は、二酸化炭素が溶解した水である、請求項5又は請求項6に記載の切削ブレードの製造方法。
【請求項8】
基板を加工するための切削ブレードであって、
環状の基台と、
該基台の周縁部に設けられた環状の切刃と、を備え、
該切刃の先端部は、該切刃の先端に向かうにつれて互いの距離が小さくなる第1側面と第2側面とを有し、
該第1側面と該第2側面とのなす角度は、5°以上30°未満である、切削ブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の加工方法、切削ブレードの製造方法及び切削ブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機及びPC(Personal Computer)等の電気機器に利用される半導体チップの製造工程では、基板の表面に複数の分割予定ラインが格子状に設定され、この複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域のそれぞれに、IC(Integrated Circuit)等のデバイスが形成される。
【0003】
この基板は、例えば、研削装置等により裏面側が研削されて所定の厚みに薄化された後に、切削装置等により分割予定ラインに沿って切断され、個々の領域に分割される。これにより、それぞれがデバイスを有する複数の半導体チップが得られる。基板を切断する切削装置の例としては、砥粒を含む金属の切刃が金属製の基台に対して電解めっき等の方法により形成された切削ブレードを備える切削装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-105114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半導体チップを構成する基板の材質によっては、従来の切削ブレードにより加工すると、特に加工の初期において、基板の表面にチッピングが生じやすいという課題があった。
【0006】
よって、本発明の目的は、基板の表面に生じるチッピングを従来よりも低減できる基板の加工方法、切削ブレードの製造方法及び切削ブレードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、表面に複数の分割予定ラインが格子状に設定された基板の加工方法であって、該基板の該表面が露出するように該基板を保持する基板保持工程と、該基板保持工程の後、回転させた切削ブレードを該基板に切り込ませることにより、該基板を該分割予定ラインに沿って切削する加工工程と、を含み、該切削ブレードは、環状基台と、該基台の周縁部に設けられた環状の切刃と、を備え、該切刃の先端部は、該切刃の先端に向かうにつれて互いの距離が小さくなる第1側面と第2側面とを有し、該第1側面と該第2側面とのなす角度は、5°以上30°未満である、基板の加工方法が提供される。
【0008】
好ましくは、該加工工程の前に、該切削ブレードを回転させた状態で該切刃の該先端部にエッチング液を供給することにより該切刃の該先端部の形状を調整する切削ブレード調整工程を更に含む。
【0009】
好ましくは、該加工工程の前に、切削ブレード調整部材を保持する切削ブレード調整部材保持工程と、加工工程の前に、該切削ブレードを回転させ、かつ、該切刃の該先端部にエッチング液を供給しながら、該切削ブレードを該切削ブレード調整部材に切り込ませることにより該切刃の該先端部の形状を調整する。
【0010】
好ましくは、該エッチング液は、二酸化炭素が溶解した水である。
【0011】
また、本発明の別の一側面によれば、基板を加工するための切削ブレードを製造する切削ブレードの製造方法であって、環状の基台と、該基台の周縁部に設けられた環状の切刃と、を有する環状部材を準備する準備工程と、該環状部材を回転させた状態で該切刃の先端部にエッチング液を供給することにより、該切刃の先端に向かうにつれて互いの距離が小さくなるように5°以上30°未満の角度をなす第1側面と第2側面とを該切刃の該先端部に形成するエッチング液供給工程と、を含む切削ブレードの製造方法が提供される。
【0012】
好ましくは、該エッチング液供給工程は、該切刃を切削ブレード調整部材に切り込ませながら実施される。
【0013】
好ましくは、該エッチング液は、二酸化炭素が溶解した水である。
【0014】
また、本発明の他の一側面によれば、基板を加工するための切削ブレードであって、環状の基台と、該基台の周縁部に設けられた環状の切刃と、を備え、該切刃の先端部は、該切刃の先端に向かうにつれて互いの距離が小さくなる第1側面と第2側面とを有し、該表面と該裏面とのなす角度は、5°以上30°未満である、切削ブレードが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の各側面によれば、切削ブレードの切刃の先端部が、この切刃の先端に向かうにつれて互いの距離が小さくなる第1側面と第2側面とを有し、第1側面と第2側面とのなす角度が、5°以上30°未満なので、基板の表面に生じるチッピングを従来よりも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、切削装置の斜視図である。
図2図2は、基板等の斜視図である。
図3図3は、シートを介してフレームに保持された基板の斜視図である。
図4図4は、切削工程の実行時の第1切削ユニット等の斜視図である。
図5図5は、切削ブレードの斜視図である。
図6図6は、切刃の一部の側面図である。
図7図7は、切削ブレードの製造方法のフロー図である。
図8図8は、エッチング液供給工程の実行時の切削ブレード及びノズルを、チャックテーブル側からY軸に沿って切削ブレード及びノズルに向かって見た図である。
図9図9は、エッチング液供給工程の実行時の切削ブレード、ノズル及び切削ブレード調整部材を、チャックテーブル側からY軸に沿って切削ブレード、ノズル及び切削ブレード調整部材に向かって見た図である。
図10図10は、第1実施形態に係る基板の加工方法を示すフロー図である。
図11図11は、従来の切削ブレードにより切削されたシリコンウェハの断面の光学顕微鏡写真である。
図12図12は、従来の切削ブレードで切削したヒ化ガリウム基板を表面側から観察した光学顕微鏡写真である。
図13図13は、第1実施形態に係る切削ブレードにより切削されたシリコンウェハの断面の光学顕微鏡写真である。
図14図14は、第1実施形態に係る切削ブレードで切削したヒ化ガリウム基板を表面側から観察した光学顕微鏡写真である。
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、切削装置2の斜視図である。なお、図1では、一部の構成要素が機能ブロックで表現されている。また、以下の説明で用いられるX軸(加工送り軸)、Y軸(割り出し送り軸)及びZ軸(鉛直軸)は、互いに垂直である。
【0018】
図1に示されるように、切削装置2は、種々の構成要素を支持する基台4を備える。基台4の上面の角部には、開口部4aが形成されており、この開口部4a内には、昇降機構(不図示)によって昇降するカセットテーブル6が配置されている。カセットテーブル6の上面には、切削装置2で加工される被加工物を収容できるカセット8が載せられる。なお、図1では、説明の便宜上、カセット8の輪郭のみが示されている。
【0019】
図1に示されるように、Y軸に沿ってカセットテーブル6に隣接する位置には、X軸に沿う方向に長い開口部4bが形成されている。開口部4b内には、ボールねじ式のチャックテーブル移動機構(加工送り機構)10が配置されている。チャックテーブル移動機構10は、ボールねじの端部に接続されるモータ等の回転駆動源(不図示)と、ボールねじに連結されるナット部を有するX軸移動テーブル(不図示)と、を含んでおり、X軸移動テーブルをX軸に沿って移動させる。
【0020】
X軸移動テーブルの上方は、テーブルカバー10aによって覆われている。また、テーブルカバー10aのX軸に沿う方向の両端部には、X軸移動テーブル及びテーブルカバー10aの移動に応じて伸縮する蛇腹状の防塵防滴カバー10bが取り付けられている。X軸移動テーブルの上部には、ベアリング(不図示)を介してチャックテーブル12を支持する円盤状のテーブルベース(不図示)が配置される。テーブルベースの上面には基板11を保持するチャックテーブル12が、テーブルカバー10aから露出する態様で配置されている。
【0021】
チャックテーブル12は、例えば、ステンレス鋼に代表される金属で形成された円盤状の枠体14を含む。枠体14の下部には、回転駆動源(不図示)が接続されており、チャックテーブル12は、この回転駆動源の動力によりZ軸の周りに回転する。枠体14の上面側には、上端が円形状に開口した凹部が形成されている。凹部には、この凹部の形状に合致する円盤状の保持板16が嵌め込まれている。
【0022】
保持板16は、例えば、セラミックス等の材料で多孔質の板状に構成され、その上面(保持面)16aで基板11を保持する。なお、保持板16の上面16aは、保持板16が凹部に嵌め込まれた状態で、X軸及びY軸に対して概ね平行になるように構成されている。つまり、チャックテーブル12は、保持板16の上面16aに対して概ね垂直な回転軸の周りに回転する。
【0023】
枠体14の凹部の底には、枠体14の内部に設けられた流路(不図示)や、枠体14の外部に配置されたバルブ(不図示)等を介して、吸引源(不図示)が接続されている。よって、バルブが開かれると、流路等を通じて保持板16の上面16aに吸引源の負圧が作用する。吸引源としては、例えば、エアーの供給源とエジェクタとを組み合わせた真空ポンプが用いられる。ただし、吸引源として、ロータリーポンプ等が用いられてもよい。
【0024】
図2は、基板11等を示す斜視図であり、図3は、シート19を介してフレーム17に保持された基板11を示す斜視図である。本実施形態に係る基板11は、例えば、2種類以上の元素が結合した化合物半導体で構成される。化合物半導体としては、例えば、GaAs(ヒ化ガリウム)及びSiC(炭化ケイ素)が挙げられる。ただし、基板の材質はこれらに限られない。図2及び図3に示されるように、基板11は、概ね円形状の表面11aと、表面11aとは反対側の概ね円形状の裏面11bと、を有する円盤形状に構成されている。また、基板11の外周の一部には、基板11の結晶方位を示すためのオリエンテーションフラット11cが形成されている。
【0025】
基板11の直径(表面又は裏面の幅)は、例えば、50mm~200mm、基板11の厚みは、例えば、0.10mm~0.50mmである。なお、基板11の形状、直径(表面又は裏面の幅)及び厚みは、これらに限られない。また、基板11には、オリエンテーションフラット11cの代わりに、ノッチが形成されていても良い。更に、基板11には、オリエンテーションフラット11cやノッチが形成されていなくても良い。
【0026】
基板11の表面11aには、ストリート等と呼ばれる直線状の複数の分割予定ライン13が互いに交差するように設定されている。複数の分割予定ライン13により区切られた複数の領域のそれぞれには、デバイス15が形成されている。なお、基板11には、デバイス15が形成されていなくても良い。
【0027】
切削装置2で基板11を加工する際には、基板11の取り扱い(搬送、保持等)の便宜のため、基板11が環状のフレーム17によって支持される。フレーム17は、例えばSUS(ステンレス鋼)等の金属であり、フレーム17の中央部には、フレーム17を厚さ方向に貫通する円形状の開口17aが設けられている。なお、開口17aの直径は、基板11の直径(表面又は裏面の幅)よりも大きい。
【0028】
基板11及びフレーム17には、円形状のシート19が固定される。例えば、シート19は、フィルム状の基材と、基材上に設けられた粘着層(糊層)とを含むテープである。基材は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂でなり、粘着層は、エポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤等でなる。なお、粘着層は、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化樹脂で構成されてもよい。
【0029】
基板11がフレーム17の開口17aの内側に配置された状態で、シート19の中央部が基板11の裏面11b側に貼付され、また、シート19の外周部がフレーム17に貼付される。これにより、基板11がシート19を介してフレーム17によって支持され、基板11、フレーム17及びシート19が一体となった基板ユニット(フレームユニット)21が構成される。なお、基板11は、フレーム17に支持されていなくても良い。
【0030】
図1に示されるように、開口部4bの上方には、上述した基板11をチャックテーブル12等へと搬送できる一又は複数の搬送機構(不図示)が配置されている。搬送機構で搬送された基板11は、例えば、基板11の表面11a側が上方に露出するようにチャックテーブル12の上面16aに載せられる。
【0031】
基台4の上面には、Y軸に沿って開口部4bを跨ぐ門型の支持構造20が設けられている。支持構造20の上部には、一対の切削ユニット移動機構(割り出し送り機構、切り込み送り機構)22が配置されている。なお、一対の切削ユニット移動機構22の構造は、X軸とZ軸とに平行な面に関して互いに対称(鏡像の関係)になるように構成されている点を除き、実質的に同じである。一対の切削ユニット移動機構22の同じ構成要素には、同じ符号が付され、重複する説明が省略される。
【0032】
各切削ユニット移動機構22は、支持構造20の正面(表面)に固定されY軸に対して概ね平行な一対のY軸ガイドレール24を共有している。一対のY軸ガイドレール24には、各切削ユニット移動機構22を構成するY軸移動プレート26がY軸に沿ってスライドできる態様で取り付けられている。各Y軸移動プレート26の背面側(裏面側)には、ボールねじを構成するナット部(不図示)が設けられており、各ナット部には、Y軸ガイドレール24に対して概ね平行なねじ軸28が、回転できる態様で連結されている。
【0033】
各ねじ軸28の一端部には、モータ等の回転駆動源30が接続されている。各回転駆動源30によってねじ軸28を回転させることで、対象のY軸移動プレート26は、Y軸ガイドレール24に沿って移動する。各Y軸移動プレート26の正面(表面)には、Z軸に対して概ね平行な一対のZ軸ガイドレール32が固定されている。各Y軸移動プレート26に固定された一対のZ軸ガイドレール32には、Z軸移動プレート34がZ軸に沿ってスライドできる態様で取り付けられている。
【0034】
各Z軸移動プレート34の背面側(裏面側)には、ボールねじを構成するナット部(不図示)が設けられており、各ナット部には、Z軸ガイドレール32に対して概ね平行なねじ軸36が、回転できる態様で連結されている。各ねじ軸36の一端部には、モータ等の回転駆動源38が接続されている。各回転駆動源38によってねじ軸36を回転させることで、対象のZ軸移動プレート34は、Z軸ガイドレール32に沿って移動する。
【0035】
一方の切削ユニット移動機構22を構成するZ軸移動プレート34の下部には、第1切削ユニット40aが固定されている。第1切削ユニット40aは、筒状のスピンドルハウジング42を備えている。図4は、後述する切削工程の実行時の第1切削ユニット40a等の斜視図である。
【0036】
図4に示されるように、スピンドルハウジング42には、Y軸に対して概ね平行な軸心を持つスピンドル44が収容されている。スピンドル44の一方の端部(先端部)には、切削ブレード46が装着されており、スピンドル44の他方の端部には、スピンドル44の回転駆動源であるモータ(不図示)が接続されている。
【0037】
図1に示されるように、第1切削ユニット40aを構成するスピンドルハウジング42の開口部4b側の端部には、スピンドル44に装着された切削ブレード46を部分的に覆うことができるカバー56が設けられている。カバー56の前方側(X軸に沿う方向の一方側)には、水に代表される加工用の液体(加工液、研削液)を切削ブレード46へと供給できるノズル58aが設けられている(図8参照)。また、カバー56の下部には、加工用の液体を切削ブレード46へと供給できる一対のノズル58bが、切削ブレード46を挟むように配置されている。
【0038】
X軸に沿って第1切削ユニット40aに隣接する位置には、チャックテーブル12に保持された基板11等を撮像できるカメラ60が配置されている。カメラ60は、第1切削ユニット40aと同様に、一方の切削ユニット移動機構22を構成するZ軸移動プレート34の下部に固定されている。
【0039】
そのため、一方の切削ユニット移動機構22で一方のY軸移動プレート26をY軸に沿って移動させれば、第1切削ユニット40a及びカメラ60は、Y軸に沿って移動する(割り出し送り)。また、一方の切削ユニット移動機構22で一方のZ軸移動プレート34をZ軸に沿って移動させれば、第1切削ユニット40a及びカメラ60は、Z軸に沿って移動する(切り込み送り)。
【0040】
他方の切削ユニット移動機構22を構成するZ軸移動プレート34の下部には、第1切削ユニット40aと同様の第2切削ユニット40bが固定されている。また、X軸に沿って第2切削ユニット40bに隣接する位置には、カメラ60が配置されている。
【0041】
図1に示されるように、開口部4bに対して開口部4aと反対側の位置には、開口部4cが形成されている。開口部4c内には、加工後の基板11等を洗浄するための洗浄ユニット62が配置されている。更に、上述した切削装置2の種々の構成要素には、コントローラ64が接続されている。各構成要素の動作は、このコントローラ64により制御される。
【0042】
コントローラ64は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置でなる処理部64aと、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置及び/又はハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の補助記憶装置でなる記憶部64bと、を含むコンピュータによって構成される。記憶部64bに記憶されているプログラム(ソフトウェア)に従い処理部64aが動作することによって、コントローラ64の機能が実現される。ただし、コントローラ64は、ハードウェアのみによって実現されてもよい。
【0043】
本実施形態では、この切削装置2に対して、基板の加工に適した切削ブレード46が装着されることにより、基板の良好な加工が実現されている。図5は、切削ブレード46の斜視図である。図5に示されるように、切削ブレード46は、金属により構成される環状の基台48と、環状の基台48の周縁部に設けられた切刃50と、を有する。
【0044】
基台48は、中心部にスピンドル44が挿入される穴48aを有している。切刃50は、例えば、ダイヤモンド等でなる砥粒が、金属(例えば、Ni)の結合材によって分散、固定されたものであり、10μm~50μm、代表的には、22μmの幅(Y軸に沿った長さ、厚み)に形成される。
【0045】
図6は、切刃50の一部の側面図である。図6に示されるように、切刃50は、先端50aを含む先端部50bを有する。この先端部50bには、先端50aにおいて互いに接続される第1側面50cと第2側面50dとが表出している。第1側面50cと第2側面50dとは、先端50aに向かうにつれて互いの距離が小さくなるように構成されている。すなわち、切刃50は、先端50aに向かって薄くなる形状を有している。
【0046】
切刃50の先端部50bにおいて、第1側面50cと第2側面50dとのなす角度は、好ましくは、5°以上30°未満である。第1側面50cと第2側面50dとのなす角度は、より好ましくは、10°以上25°以下であり、さらに好ましくは、10°以上15°以下である。このような角度の先端部50bを持つ切削ブレード46が使用されることで、基板の良好な加工が実現される。
【0047】
次に、上述した切削ブレード46を製造する方法について説明する。図7は、切削ブレードの製造方法のフロー図である。図7に示されるように、本実施形態に係る切削ブレードの製造方法は、準備工程S1と、エッチング液供給工程S2とを含む。なお、本実施形態では、切削ブレードの製造方法を構成する各工程が、コントローラ64の指令に基づき遂行される。ただし、切削ブレードの製造方法の各工程は、オペレータのマニュアル操作により遂行されても良い。
【0048】
まず始めに、準備工程S1が実行される。準備工程S1では、上述した切刃50とは形状が異なる切刃54を有する切削ブレード(環状部材)52(図9参照)が準備される。具体的には、この切削ブレード52の切刃54は、図6に示された切刃50とは異なり、先端に向かって薄くなる形状を有していない。
【0049】
次に、エッチング液供給工程S2が実行される。エッチング液供給工程S2では、例えば、上述した切削装置2により切削ブレード52の切刃54の先端部にエッチング液が供給される。図8は、エッチング液供給工程S2の実行時の切削ブレード52、ノズル58a及びノズル58bを、第2切削ユニット40b側から見た図である。
【0050】
図8に示されるように、まず、切削ブレード52が第1切削ユニット40aのスピンドル44の先端部に取り付けられる。次に、スピンドル44の端部に接続された回転駆動源(不図示)により、スピンドル44と共に切削ブレード52を回転させる。この状態で、ノズル58a及びノズル58bから、エッチング液が切削ブレード52の切刃54の先端部に噴射される。なお、切削ブレード52は、第1切削ユニット40aではなく、第2切削ユニット40bのスピンドルの先端部に取り付けられても良い。
【0051】
なお、ノズル58aは、切刃54の外周面に対向するように配置されている。ノズル58aの先端部には穴が設けられており、この穴から切刃54の外周面にエッチング液が噴射されるように構成されている。また、一対のノズル58bは、切刃54の両側面を挟むように配置されている。一対のノズル58bの切刃54と対向する部分には、X軸に沿う方向に配列される複数の穴(不図示)が設けられている。これらの穴を介してエッチング液が切刃54の先端部に噴射される。切刃54は、回転している状態でエッチング液と接触することにより、図6に示される切刃50の形状へと加工される。
【0052】
エッチング液としては、二酸化炭素が溶解した水が用いられる。水に添加される二酸化炭素の濃度は、例えば、エッチング液の導電率が0.01MΩcm以上0.1MΩcm以下となるよう調整される。エッチング液の導電率は、代表的には、0.04MΩcmである。
【0053】
なお、二酸化炭素が溶解した水が基板を切削する際に加工液として用いられる場合、この加工液の導電率は、一般的に、0.5MΩcm以上1.0MΩcm以下である。したがって、エッチング液として使用される二酸化炭素が溶解した水の導電率は、加工液として使用される二酸化炭素が溶解した水の導電率よりも低い。言い換えると、エッチング液として使用される二酸化炭素が溶解した水の二酸化炭素の濃度は、加工液として使用される二酸化炭素が溶解した水の二酸化炭素の濃度よりも高い。
【0054】
また、エッチング液として、ギ酸、グリコール酸、プロピオン酸、酢酸、酪酸、吉薬酸、ヘキサン酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、コハク酸、ピメリン酸、メルカプト酢酸、グリオキシル酸、クロロ酢酸、ピルビン酸、アセト酢酸、グルタル酸等の飽和カルボン酸や、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の不飽和カルボン酸、安息香酸類、トルイル酸、フタル酸類、ナフトエ酸類、ピロメット酸、ナフタル酸等の環状不飽和カルボン酸等が使用されても良い。
【0055】
エッチング液供給工程S2におけるエッチング液の供給速度は、例えば、1L/min~5L/minであり、代表的には、2.5L/minである。また、エッチング液供給工程S2におけるスピンドル44の回転速度は、例えば、10000rpm~50000rpmであり、代表的には、30000rpmである。なお、本実施形態のエッチング液供給工程S2では、切削ブレード52にエッチング液を供給するノズルとして、加工液を供給するノズル58a及びノズル58bが用いられているが、ノズル58a及びノズル58bとは別のノズルが用いられても良い。
【0056】
図9は、エッチング液供給工程S2の実行時の切削ブレード52、ノズル58a、ノズル58b及び切削ブレード調整部材23を、チャックテーブル側からY軸に沿って切削ブレード、ノズル及び切削ブレード調整部材に向かって見た図である。図9に示されるように、エッチング液は、切削ブレード52の切刃54を切削ブレード調整部材23に切り込ませながら、切刃54の先端部に供給されても良い。
【0057】
切削ブレード調整部材23として、例えば、シリコン(Si)製のウェハが用いられる。ただし、切削ブレード調整部材23の材質は、図6に示される切刃50の形状への切刃54の加工に適したものであれば、特に制限は無い。なお、切刃54のドレスに使用されるドレスボード(プリカットボード)が切削ブレード調整部材23として使用されても良い。
【0058】
上記した切削ブレード調整部材23が用いられる場合のエッチング液供給工程S2のフローについて説明する。まず、切削ブレード52が第1切削ユニット40aのスピンドル44の先端部に取り付けられる。次に、切削ブレード調整部材23が搬送機構(不図示)によりチャックテーブル12に搬入される。この際、搬送機構により、切削ブレード調整部材23の表面23aが露出するように、切削ブレード調整部材23の裏面23b側がチャックテーブル12の保持板16の上面16aに載せられる。
【0059】
その後、配管等の流路に設けられたバルブを開いて上面16aに吸引源の負圧を作用させると、切削ブレード調整部材23は、上面16aに吸引される。すなわち、切削ブレード調整部材23は、保持板16の上面16aにより保持される。
【0060】
なお、切削ブレード調整部材23は、オペレータ等によって手動で保持板16の上面16aに載せられてもよい。
【0061】
次に、切削ブレード52と切削ブレード調整部材23との位置の関係が調整される。具体的には、上方から見て切削ブレード52が切削ブレード調整部材23と重ならないように、チャックテーブル12のX軸に沿う方向の位置がチャックテーブル移動機構10により調整される。
【0062】
また、チャックテーブル12をX軸に沿って移動させることにより、上方から見て切削ブレード52と切削ブレード調整部材23とを重ねることができるように、第1切削ユニット40aのY軸に沿う方向の位置が切削ユニット移動機構22により調整される。さらに、切削ブレード52の下端が切削ブレード調整部材23の表面23aよりも所定の距離(切り込み深さ分の距離)だけ下方に配置されるように、第1切削ユニット40aの高さが切削ユニット移動機構22により調整される。
【0063】
次に、ノズル58a及びノズル58bから切削ブレード52の切刃54の先端部にエッチング液が供給される。そして、回転駆動源であるモータ(不図示)がスピンドル44とともに切削ブレード52を回転させながら、チャックテーブル移動機構10がチャックテーブル12をX軸に沿って移動させる。これにより、切削ブレード52とチャックテーブル12とがX軸に沿って相対的に移動し(加工送り)、切削ブレード52が切削ブレード調整部材23に切り込む。切削ブレード52は、エッチング液が供給されながら切削ブレード調整部材23に切り込むことにより、図6に示される切刃50の形状に加工される。
【0064】
例えば、切削ブレード調整部材23の直径が200mm、厚みが700μmのSiウェハである場合、切削ブレード52の切り込み深さ(切削装置2に設定される切り込み深さ)は、300μm、送り速度(チャックテーブル12をX軸方向に送る速度)は、5mm/sec、スピンドル44の回転速度は、30000rpm、エッチング液供給速度は、4L/minに設定される。
【0065】
なお、本実施形態では、切削ブレード52が第1切削ユニット40aに取り付けられているが、第2切削ユニット40bに取り付けられても良い。また、切削ブレード調整部材23が保持されるテーブルは、チャックテーブル12とは別のテーブルでも良い。さらに、切削ブレード52が第1切削ユニット40aのスピンドル44の先端部に取り付けられる手順と、切削ブレード調整部材23がチャックテーブル12に保持される手順とは、どちらが先に実行されても良い。
【0066】
次に、上述した切削ブレードの製造法により製造された切削ブレード46を用いて基板11を加工する方法について説明する。図10は、第1実施形態に係る基板11の加工方法のフロー図である。なお、この第1実施形態では、加工方法を構成する各工程が、コントローラ64の指令に基づき遂行される。図10に示されるように、第1実施形態に係る基板11の加工方法は、基板保持工程S11と、加工工程S12と、を含む。
【0067】
第1実施形態の加工方法では、まず、チャックテーブル12の上面16aにより基板11を保持する基板保持工程S11が実行される。具体的には、この基板保持工程S11では、例えば、搬送機構(ロボットアーム等)によりカセット8からチャックテーブル12に基板11が搬入され、基板11の表面11aが露出するように、基板11の裏面11b側が保持板16の上面16aに載置される。
【0068】
その後、配管等の流路に設けられたバルブを開いて上面16aに吸引源の負圧を作用させると、基板11は、上面16aに吸引される。すなわち、基板11は、保持板16の上面16aにより保持される。なお、基板11は、オペレータ等によって手動で保持板16の上面16aに載せられてもよい。
【0069】
次に、基板11を分割予定ライン13で分割する加工工程S12が実行される。まず始めに、第1切削ユニット40a(又は、第2切削ユニット40b)のスピンドル44の先端部に切削ブレード46が取り付けられ、切削ブレード46と基板11との位置合わせが行われる。具体的には、例えば、基板11の表面11aに設定された複数本の分割予定ライン13のうち、1本の分割予定ライン13の長さの方向が、X軸に対して概ね平行になるように、回転駆動源がチャックテーブル12をZ軸の周りに回転させる。
【0070】
また、切削ブレード46が、分割予定ライン13の延長線の上方に配置されるように、チャックテーブル12のX軸に沿う方向の位置がチャックテーブル移動機構10により調整され、第1切削ユニット40aのY軸に沿う方向の位置が切削ユニット移動機構22により調整される。さらに、切削ブレード46の下端が基板11の裏面11bよりも所定の距離だけ下方に配置されるように、第1切削ユニット40aの高さが切削ユニット移動機構22により調整される。
【0071】
次に、ノズル58a及びノズル58bから切削ブレード46に向かって、加工液が供給される。そして、回転駆動源であるモータ(不図示)が切削ブレード46をスピンドル44とともに回転させながら、チャックテーブル移動機構10がチャックテーブル12をX軸に沿って移動させる。これにより、切削ブレード46とチャックテーブル12とがX軸に沿って相対的に移動し(加工送り)、切削ブレード46が分割予定ライン13に沿って基板11に切り込む。
【0072】
本実施形態では、基板11の大きさは、4インチ(直径100mm)、厚みは、250μmである。切削条件として、切削ブレード46の切り込み深さ(切削装置2に設定される切り込み深さ)は、150μmに、加工速度(チャックテーブル12をX軸方向に送る速度)は、5mm/secに、スピンドル44の回転速度は、30000rpmに、それぞれ設定される。
【0073】
1本の分割予定ライン13の切削が終了した後、同様の手順により、別の分割予定ライン13の切削が行われる。これを繰り返し、基板11に設定された全ての分割予定ライン13で基板11を切削することにより、複数の分割予定ライン13により区切られた複数の領域が、個々のチップに分割される。
【0074】
図11は、従来の切削ブレードにより切削されたシリコンウェハの断面の光学顕微鏡写真であり、図12は、従来の切削ブレードで切削したヒ化ガリウム基板を表面側から観察した光学顕微鏡写真である。また、図13は、第1実施形態に係る切削ブレード46により切削されたシリコンウェハの断面の光学顕微鏡写真であり、図14は、第1実施形態に係る切削ブレード46で切削したヒ化ガリウム基板を表面側から観察した光学顕微鏡写真である。なお、シリコンウェハは、従来の切削ブレードと第1実施形態に係る切削ブレード46の形状を調べるために、それぞれの切削ブレードにより切削される分析用のウェハである。
【0075】
図11図14の光学顕微鏡写真は、いずれも、顕微鏡の倍率が200倍の条件で撮影されたものである。図13に示されるように、第1実施形態に係る切削ブレード46では、第1側面50cと第2側面50dとのなす角度が約13°であった。また、図11に示されるように、従来の切削ブレードでは、本実施形態の第1側面50cに相当する面と第2側面50dに相当する面とのなす角度が約125°であった。
【0076】
次に、従来の切削ブレードで切削されたヒ化ガリウム基板と、本実施形態に係る切削ブレード46で切削されたヒ化ガリウム基板と、について、それぞれ、チッピングの分布(大きさと個数)が測定された。測定は、切削後の基板の表面を光学顕微鏡により観察した画像を解析することにより行われた。
【0077】
従来の切削ブレードにより切削されたヒ化ガリウム基板では、大きさが1μm以上4μmのチッピングが266763個、4μm以上8μm以下のチッピングが22342個であった。一方、本実施形態に係る切削ブレード46により切削されたヒ化ガリウム基板11では、大きさが1μm以上4μmのチッピングが256349個、4μm以上8μm以下のチッピングが7108個であった。この結果から、本実施形態に係る切削ブレード46により切削された基板のチッピングの数は、従来の切削ブレードで切削された基板のチッピングの数よりも、少ないことが分かる。
【0078】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施され得る。例えば、上記基板11の加工方法の説明では、切削ブレード調整工程と基板11の加工工程とを分けて実施しているが、図10に示される基板11の加工方法の中で、加工工程S12より前に、図7に示される切削ブレードの製造方法が実行されても良い。
【0079】
その他、上述の実施形態及び変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて変更して実施され得る。
【符号の説明】
【0080】
11 :基板
11a :表面
11b :裏面
11c :オリエンテーションフラット
13 :分割予定ライン
15 :デバイス
17 :フレーム
17a :開口
19 :テープ
21 :基板ユニット(フレームユニット)
23 :切削ブレード調整部材
23a :表面
23b :裏面
2 :切削装置
4 :基台
4a、4b、4c:開口部
6 :カセットテーブル
8 :カセット
10 :チャックテーブル移動機構(加工送り機構)
10a :テーブルカバー
10b :防塵防滴カバー
12 :チャックテーブル
14 :枠体
16 :保持板
16a :上面(保持面)
18 :クランプ
20 :支持構造
22 :切削ユニット移動機構(割り出し送り機構、切り込み送り機構)
24 :Y軸ガイドレール
26 :Y軸移動プレート
28 :ねじ軸
30 :回転駆動源
32 :Z軸ガイドレール
34 :Z軸移動プレート
36 :ねじ軸
38 :回転駆動源
40a :第1切削ユニット
40b :第2切削ユニット
42 :スピンドルハウジング
44 :スピンドル
46 :切削ブレード
48 :基台
48a :穴
50 :切刃
50a :先端
50b :先端部
50c :第1側面
50d :第2側面
52 :環状部材
54 :切刃
56 :カバー
58a :ノズル
58b :ノズル
60 :カメラ
62 :洗浄ユニット
64 :コントローラ
64a :処理部
64b :記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14