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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165962
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20241121BHJP
   A61F 13/472 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A61F13/15 230
A61F13/472 100
A61F13/472 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082586
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴史
(72)【発明者】
【氏名】松井 紗恵子
(72)【発明者】
【氏名】田村 竜也
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA15
3B200BA18
3B200BB05
3B200CA19
3B200DA08
3B200DA10
3B200DA25
3B200DB02
3B200DB11
3B200DD07
3B200DF08
3B200DF09
3B200DF15
3B200DF17
(57)【要約】
【課題】個包装状態から開封する際の操作を行いやすい吸収性物品を提供する。
【解決手段】着用者の肌に当接可能な表面層(11)と、表面層(11)より非肌側に設けられた裏面層(14)と、を有し、幅方向における中央部で、前後方向に沿った折り曲げ線(F)にて非肌側に向かって折り曲げた状態で使用者に当接させる吸収性物品(1)であって、折り曲げ線(F)にて折り曲げられ、包装材(100)によって包装された個包装状態において、幅方向において前記折り曲げ線(F)とは反対側の端部に、裏面層(14)の一部が表面層(11)側に捲れた捲れ部(20)を有している。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向と幅方向と厚さ方向とを有し、
着用者の肌に当接可能な表面層と、
前記表面層より非肌側に設けられた裏面層と、
を有し、
前記幅方向における中央部で、前記前後方向に沿った折り曲げ線にて非肌側に向かって折り曲げた状態で使用者に当接させる吸収性物品であって、
前記折り曲げ線にて折り曲げられ、包装材によって包装された個包装状態において、
前記幅方向において前記折り曲げ線とは反対側の端部に、前記裏面層の一部が前記表面層側に捲れた捲れ部を有している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記裏面層よりも前記非肌側に指挿入シートを有し、
前記捲れ部において、前記指挿入シートが前記表面層側に捲れている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項2に記載の吸収性物品であって、
前記表面層と、前記裏面層若しくは前記指挿入シートとで、色または模様の少なくとも何れかが異なる、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項3に記載の吸収性物品であって、
前記個包装状態において、前記包装材の内部に収容されている前記吸収性物品の前記捲れ部の色が、前記包装材を透過して視認可能である、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項2に記載の吸収性物品であって、
前記捲れ部において、前記裏面層と前記指挿入シートとが互いに接合されていない非接合部を有する、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項2に記載の吸収性物品であって、
前記裏面層と前記指挿入シートとの間に、使用者の指を挿入する空間である指挿入部を形成可能であり、
前記個包装状態において、前記指挿入部の挿入口の少なくとも一部が前記捲れ部と重複している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項6に記載の吸収性物品であって、
液吸収性の吸収層を有し、
前記前後方向において、前記吸収層の中央位置よりも前記挿入口が形成されている側における前記捲れ部の面積が、前記中央位置よりも前記挿入口が形成されていない側における前記捲れ部の面積よりも広い、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記表面層と前記裏面層との前記厚さ方向の間に中間層を有し、
前記厚さ方向に見たときに前記中間層と重複している部分と重複していない部分とで、剛性差があり、
前記捲れ部は、前記中間層の前記幅方向の端部位置で捲れている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項1~7の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記個包装状態において、前記折り曲げ線にて折り曲げられている前記吸収性物品の前記厚さ方向における手前側に前記捲れ部が形成され、前記折り曲げ線にて折り曲げられている前記吸収性物品の前記厚さ方向における奥側には前記捲れ部が形成されていない、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項1~7の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記個包装状態において、前記包装材の内部に収容されている前記吸収性物品を取り出すための取り出し口を有し、
前記取り出し口を開封した状態で、前記捲れ部の少なくとも一部が視認可能である、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
前後方向と幅方向と厚さ方向とを有し、
着用者の肌に当接可能な表面層と、
前記表面層より非肌側に設けられた裏面層と、
を有し、
前記幅方向における中央部で、前記前後方向に沿った折り曲げ線にて非肌側に向かって折り曲げた状態で使用者に当接させる吸収性物品であって、
前記折り曲げ線にて折り曲げられ、包装材によって包装された個包装状態において、
前記吸収性物品の前記厚さ方向における手前側の見かけ幅は、前記吸収性物品の前記厚さ方向における奥側の見かけ幅よりも小さい、ことを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、女性用生理用品等の吸収性物品の1つとして、陰唇に密着させて装着する陰唇間パッドが知られている。このような陰唇間パッドは、二つ折りにされて包装材によって包装された状態(個包装状態)で出荷され、市場に流通する。例えば、特許文献1には、陰唇間パッドと当該陰唇間パッドを内包する包装容器とから成る包装体(個包装体)であって、包装容器を開封したときに指挿入用口が開くように折り畳まれて収容された陰唇間パッドに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2002/4886号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、個包装状態の陰唇間パッド(吸収性物品)を入手(購入等)したユーザー(使用者)は、包装材を開封して陰唇間パッドを取り出して使用する。しかしながら、ユーザーが包装材を開封する際に、包装材の内部に収容されている陰唇間パッドの状態が認識し難く、問題となる場合があった。例えば、開封動作時に陰唇間パッドの表面側の吸収面に不必要に手で触れてしまい衛生上の問題が生じたり、どの部分を掴んで陰唇間パッド(吸収性物品)を取り出せばよいのか分かり難かったりする問題が生じていた。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、個包装状態から開封する際の操作を行いやすい吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、前後方向と幅方向と厚さ方向とを有し、着用者の肌に当接可能な表面層と、前記表面層より非肌側に設けられた裏面層と、を有し、前記幅方向における中央部で、前記前後方向に沿った折り曲げ線にて非肌側に向かって折り曲げた状態で使用者に当接させる吸収性物品であって、前記折り曲げ線にて折り曲げられ、包装材によって包装された個包装状態において、前記幅方向において前記折り曲げ線とは反対側の端部に、前記裏面層の一部が前記表面層側に捲れた捲れ部を有している、ことを特徴とする吸収性物品である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、個包装状態から開封する際の操作を行いやすい吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】展開状態のパッド1の平面図である。
図2図1のA-A矢視概略断面図である。
図3】パッド1の構成を説明する図である。
図4】パッド1の構成を説明する図である。
図5】吸収層13の構成について説明する平面図及び断面図である。
図6】広葉樹吸水性繊維(広葉樹パルプ)と針葉樹吸水性繊維(針葉樹パルプ)の繊維長の分布を示す図である。
図7図7A図7Cは、包装材100によってパッド1を包装する方法について説明する図である。
図8図7Bの状態のパッド1を厚さ方向の手前側から見たときの平面図である。
図9図7Cの状態のパッド1を厚さ方向の手前側から見たときの平面図である。
図10図9のB-B矢視概略断面図である。
図11】個包装状態のパッド1の開封動作について説明する図である。
図12】折り線F(折り曲げ線)にて二つ折りにされたパッド1において、捲れ部50が形成された状態について、厚さ方向の手前側から見たときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
(態様1)
前後方向と幅方向と厚さ方向とを有し、着用者の肌に当接可能な表面層と、前記表面層より非肌側に設けられた裏面層と、を有し、前記幅方向における中央部で、前記前後方向に沿った折り曲げ線にて非肌側に向かって折り曲げた状態で使用者に当接させる吸収性物品であって、前記折り曲げ線にて折り曲げられ、包装材によって包装された個包装状態において、前記幅方向において前記折り曲げ線とは反対側の端部に、前記裏面層の一部が前記表面層側に捲れた捲れ部を有している、ことを特徴とする吸収性物品。
【0011】
態様1の吸収性物品によれば、個包装状態から開封する際に、裏面層の一部が捲れ上がった捲れ部が視認可能となる。したがって、使用者は、吸収性物品の収容状態を認識しやすく、捲れ部を掴むことで、肌側層(吸収面)に不必要に触れることなく、衛生的に吸収性物品を取り出すことができる。これにより、個包装状態の吸収性物品を開封する操作を行いやすくすることができる。
【0012】
(態様2)
前記裏面層よりも前記非肌側に指挿入シートを有し、前記捲れ部において、前記指挿入シートが前記表面層側に捲れている、態様1に記載の吸収性物品。
【0013】
態様2の吸収性物品によれば、開封して取り出す際に、厚さ方向の最も手前側(捲れ部の表面側)に指挿入シートが視認され、指挿入シートが掴まれる可能性が高くなる。したがって、指挿入シートが設けられていない場合と比較して、指挿入シート以外の部位が掴まれ難くなり、より衛生的に吸収性物品を取り出すことが可能となる。
【0014】
(態様3)
前記表面層と、前記裏面層若しくは前記指挿入シートとで、色または模様の少なくとも何れかが異なる、態様1または2に記載の吸収性物品。
【0015】
態様3の吸収性物品によれば、捲れ部にて視認される指挿入シート(若しくは裏面層)が表面層と異なる色を有していることにより、使用者が捲れ部の存在を認識しやすくなる。同様に、捲れ部にて視認される指挿入シート(若しくは裏面層)が表面層と異なる模様を有していることにより、使用者が捲れ部の存在を認識しやすくなる。これにより、吸収性物品を開封する操作をより行いやすくすることができる。
【0016】
(態様4)
包装状態において、包装材の内部に収容されている前記吸収性物品の前記捲れ部の色が、包装材を透過して視認可能である、態様1~3の何れかに記載の吸収性物品。
【0017】
態様4の吸収性物品によれば、捲れ部の色が包装材の外側から視認可能であることにより、使用者は個包装状態の吸収性物品を手に取った段階で、捲れ部の存在を認識しやすくなる。これにより、使用者は包装体の内部から捲れ部を掴んで吸収性物品を取り出す動作をイメージしやすくなる。したがって、吸収性物品を開封する操作をより行いやすくすることができる。
【0018】
(態様5)
前記捲れ部において、前記裏面層と前記指挿入シートとが互いに接合されていない非接合部を有する、態様1~4の何れかに記載の吸収性物品。
【0019】
態様5の吸収性物品によれば、捲れ部の先端部に設けられた非接合部がドライエッジとして機能して、捲れ部を指で掴む際の硬い感触を抑制することができる。また、吸収性物品の装着時には、幅方向の端部にドライエッジが形成されていることで、陰唇間に挟み込んだ際の違和感を低減することができる。これにより、吸収性物品を開封して装着する操作をより行いやすくすることができる。
【0020】
(態様6)
前記裏面層と前記指挿入シートとの間に、使用者の指を挿入する空間である指挿入部を形成可能であり、前記個包装状態において、前記指挿入部の挿入口の少なくとも一部が前記捲れ部と重複している、態様1~5の何れかに記載の吸収性物品。
【0021】
態様6の吸収性物品によれば、指挿入部の挿入口の一部が捲れ部と重複していることにより、使用者は、当該挿入口を視認しやすくなる。これにより、使用者は、個包装状態の吸収性物品を開封する動作において、指挿入部(挿入口)の位置を認識しやすくなる。したがって、吸収性物品を開封して装着する操作をより行いやすくすることができる。
【0022】
(態様7)
液吸収性の吸収層を有し、前記前後方向において、前記吸収層の中央位置よりも前記挿入口が形成されている側における前記捲れ部の面積が、前記中央位置よりも前記挿入口が形成されていない側における前記捲れ部の面積よりも広い、態様1~6の何れかに記載の吸収性物品。
【0023】
態様7の吸収性物品によれば、捲れ部において、指挿入部の挿入口がより視認されやすくなり、使用者は、個包装状態の吸収性物品を開封する動作において、指挿入部の位置をより認識しやすくなる。したがって、吸収性物品を開封して装着する操作をより行いやすくすることができる。
【0024】
(態様8)
前記表面層と前記裏面層との前記厚さ方向の間に中間層を有し、前記厚さ方向に見たときに前記中間層と重複している部分と重複していない部分とで、剛性差があり、前記捲れ部は、前記中間層の前記幅方向の端部位置で捲れている、態様1~7の何れかに記載の吸収性物品。
【0025】
態様8の吸収性物品によれば、中間層の幅方向端部の剛性差が大きい部分にて裏面層や指挿入シートの折れ曲りの起点が形成されやすくなる。これにより、捲れ部が形成されやすく、また、形成された捲れ部の形状が維持されやすくなる。したがって、吸収性物品を開封して装着する操作をより行いやすくすることができる。
【0026】
(態様9)
前記個包装状態において、前記折り曲げ線にて折り曲げられている前記吸収性物品の前記厚さ方向における手前側に前記捲れ部が形成され、前記折り曲げ線にて折り曲げられている前記吸収性物品の前記厚さ方向における奥側には前記捲れ部が形成されていない、態様1~8の何れかに記載の吸収性物品。
【0027】
態様9の吸収性物品によれば、視認されやすい厚さ方向の手前側に捲れ部が形成されているため、使用者は、捲れ部を容易に認識可能であり、当該捲れ部を掴んで吸収性物品を取り出す動作を行いやすい。一方、視認され難い厚さ方向の奥側には捲れ部が形成されていないため、吸収性物品に余計な折り癖等が付き難く、陰唇間に挟み込んだ際に、着用者に違和感を生じさせ難い。
【0028】
(態様10)
前記個包装状態において、前記包装材の内部に収容されている前記吸収性物品を取り出すための取り出し口を有し、前記取り出し口を開封した状態で、前記捲れ部の少なくとも一部が視認可能である、態様1~9の何れかに記載の吸収性物品。
【0029】
態様10の吸収性物品によれば、取り出し口を開封した時点で、すぐに捲れ部の存在を確認できるので、使用者は、開封操作に迷うことなく、吸収性物品をスムーズに取り出すことができる。
【0030】
(態様11)
前後方向と幅方向と厚さ方向とを有し、着用者の肌に当接可能な表面層と、前記表面層より非肌側に設けられた裏面層と、を有し、前記幅方向における中央部で、前記前後方向に沿った折り曲げ線にて非肌側に向かって折り曲げた状態で使用者に当接させる吸収性物品であって、前記折り曲げ線にて折り曲げられ、包装材によって包装された個包装状態において、前記吸収性物品の前記厚さ方向における手前側の見かけ幅は、前記吸収性物品の前記厚さ方向における奥側の見かけ幅よりも小さい、ことを特徴とする吸収性物品。
【0031】
態様11の吸収性物品によれば、厚さ方向の手前側における見かけ幅が、奥側における見かけ幅よりも狭くなっているため、手前側で捲れ部の輪郭が視認しやすくなる。そして、吸収性物品を包装材から取り出して、二つ折りにされている部分を広げる際に、どの部分を広げればよいのかが視覚的に認識しやすくなる。これにより、吸収性物品を開封して装着する際に、余計な動作が行われ難くなり、吸収性物品を衛生的に使用することができる。
【0032】
===実施形態===
以下、本発明に係る吸収性物品として陰唇間パッド1(以下、「パッド1」ともいう。)を例に挙げて実施形態を説明する。陰唇間パッドは、女性の陰唇間に挟み込んで経血等の排泄物(体液)を吸収する生理用品である。ただし、本発明に係る吸収性物品は、陰唇間パッドに限定されず、例えば、尿道に当接させて尿を吸収する尿取りパッドや、肛門に当接させて便を吸収する吸収パッド等であってもよい。
【0033】
<陰唇間パッド1の基本構成>
図1は、展開状態のパッド1の平面図である。図1はパッド1の肌面側から見た図である。図2は、図1のA-A矢視概略断面図である。図3及び図4は、パッド1の構成を説明する図である。各図(図1図4)における中央C-Cは、幅方向における中央を示し、中央CLは、パッド1を厚さ方向に見たときの、吸収層13(後述)の前後方向における中央を示す。また、図1及び図2は、指挿入シート15(後述)を中央C-Cで切断して、パッド1を平面上に平らに静置した状態(「平面平置き」状態)の図である。
【0034】
パッド1は、互いに直交する前後方向、幅方向、及び厚さ方向を有する。パッド1の前後方向において、着用時に、着用者の腹側に位置する側を「前側」とし、着用者の背側に位置する側を「後側」とする。また、パッド1の厚さ方向において、着用者の肌に当接する側を「肌側」とし、その反対側を「非肌側」とする。
【0035】
図1図4に示すように、パッド1は、平面視で、幅方向の長さより前後方向の長さが長い略楕円形状であり、幅方向の中央C―Cに対して対称な形状であり、前後方向における中央CLで幅方向の内側に括れて、幅方向の長さが狭くなった部分を有している。また、パッド1は、平面視で、前後方向の中央に対して非対称な形状であり、具体的には、中央CL(吸収層13の前後方向の中央)が、パッド1の前後方向における中央より後側に位置し、パッド1の前端から吸収層13の前端までの距離が、パッド1の後端から吸収層13の後端までの距離より長い。つまり、パッド1の前後方向において、吸収層13が、後側寄りに配置されている。パッド1は、図2図4に示すように、表面層11、非肌側層12、吸収層13、裏面層14、指挿入シート15を備える。
【0036】
本実施形態のパッド1は、折り線Fで非肌側に折り曲げられた状態の製品として、保管及び流通される。図3及び図4は、パッド1を各部材に分解した状態を説明する図である。本実施形態のパッド1は、図3Aに示すように、幅方向における中央部(中央C-C)の折り線F(折り曲げ線)で非肌側に向かって折り曲げられており、最も非肌側に、指挿入部20を形成するための指挿入シート15がホットメルト接着剤HMA等の接着剤を用いて固定されている。折り線Fは、前後方向に沿った、幅方向の中央部に設けられた折り曲げ部である。折り線Fは、所定の幅を持った部分であり、折り線Fの肌側の頂点(最も肌側に突出する部分)が、幅方向における中央C-Cと略同じ位置である。図3Bは、指挿入シート15を、裏面層14から分離させた状態であり、図3Cは、指挿入シート15が取り除かれたパッド1を、折り線Fにおける折り曲げた状態から水平にさせた状態である。そして、図3Cに示す状態から、図4に示すように、厚さ方向における肌側から順に、表面層11、非肌側層12、吸収層13、裏面層14が重ねられ、これらのうち少なくとも一部の部材同士が接着剤等によって接合されている(図2参照)。
【0037】
表面層11は、最も肌側に位置し、着用時に着用者の肌(陰唇間)に当接する部材であるため、肌に刺激を与えにくい柔らかいシートを用いることが好ましい。表面層11は、パッド1の外形をなしており、液透過性のシート部材である。表面層11としては、例えば、メルトブローン、スパンボンド、ポイントボンド、スルーエアー、ニードルパンチ、乾式・湿式スパンレース、フォームフィルム等の製造方法から得られる不織布を単独又はこれらを組み合わせた材料が挙げられ、レーヨン、アセテート、コットン、パルプ又は合成樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート:PET、ポリプロピレン:PP,ポリエチレンPE等)を成分としたものを単独又は芯鞘構造を成すように複合したものを単独又は混合した繊維のシート部材を用いることができる。本実施形態のパッド1は、レーヨンとポリエチレンテレフタレートからなるシート部材を用いている。
【0038】
非肌側層12は、表面層11より非肌側に位置し、吸収層13より肌側に位置する。非肌側層12は、表面層11と吸収層13との間で、着用者の動き、陰唇の挙動変化、衣服からの圧力等の変化に柔軟に追従し、自身の形状を変化させ、着用者に与える違和感を軽減させるクッション層の役割を担う。非肌側層12の形状は、略楕円形で、表面層11より小さく、パッド1の略中央部(正確には、後側寄り)に位置している。また、非肌側層12の前後方向における中央CLで幅方向の内側に括れて、幅方向の長さが狭くなっている。非肌側層12としては、例えば、パルプ、化学パルプ、レーヨン、アセテート、天然コットン、合成繊維を単独又は混合して用いることができる。本実施形態では、主にパルプ繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)を混合した繊維を用いている。
【0039】
吸収層13は、非肌側層12より非肌側に位置し、裏面層14より肌側に位置して、排泄物等の体液を吸収する吸収体である。吸収層13は、略楕円形状であり、パッド1の略中央部(正確には、後側寄り)に位置している。吸収層13の詳細については、後で説明する。
【0040】
裏面層14は、吸収層13より非肌側に位置するシート部材である。裏面層14は、パッド1の外形をなしており、平面視で、表面層11と略同じ形状、同じ大きさである。裏面層14としては、液透過性シートや液不透過性シート等のシート部材を用いることができ、例えば、合成樹脂のシート状フィルム、通気フィルム、パルプ、紙、不織布、通気性液遮断シート、又はこれらを組み合わせたシート部材等を使用することができる。本実施形態では、レーヨン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、パルプを混合したシート状の部材を用いている。
【0041】
指挿入シート15は、指挿入部20を形成するためのシート部材である。指挿入部20は、指挿入シート15と裏面層14との間の空間であり、パッド1を装着する際に、着用者が指を挿入するための空間である。指挿入シート15は、裏面層14より前後方向における長さが短く、裏面層14より幅方向における長さが短い。また、裏面層14より非肌側で、前後方向における後側に設けられている。指挿入シート15の幅方向の両側部は、ホットメルト接着剤等の接着剤によって形成された指挿入シート接合部16によって、裏面層14の非肌側に接合固定されている(図2参照)。指挿入シート15の前側の端部と指挿入シート15の後側の端部は、指挿入シート15と裏面層14とが接着剤で固定されていない開口部をそれぞれ有する。前側の開口部は、後側の開口部より大きい。着用者は、指挿入部20の前側の開口から指(例えば、中指)を挿入することで、パッド1を支持した状態で、パッド1を陰唇に当接させて、装着させることができる。
【0042】
指挿入シート15としては、表面層11や裏面層14と同様の材料を用いることができる。例えば、PE/PP、PE/PET、PP/PP等の複合合成繊維を原材料とするスパンレース不織布、シュリンクタイプ不織布、伸長性スパンボンド等の不織布や、レーヨン、アセテート、コットン、パルプ又は合成樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート:PET)の繊維のシート部材や、通気フィルム、紙、通気性液遮断シート等のシート部材を用いることができる。また、例えば、合成ゴム、非晶性オレフィン系樹脂を原料としたフィルム、開孔フォームフィルム、ネット、織布又は織布に合成ゴムを原料とした紡糸フィラメントを編み込んだ生地、合成ゴムを主体としたスパンボンド不織布やメルトブローン不織布、発泡フォームシート等の伸縮性を有するシートを用いてもよい。本実施形態では、主にパルプ及びレーヨンからなるシート部材を用いている。
【0043】
なお、本実施形態のパッド1は、未使用状態で、折り線Fで非肌側に折り曲げられた状態としたが、これに限られない。例えば、未使用状態では、折り線Fを有さず、折り曲げられていないもので、装着の際に着用者自身が非肌側に折り曲げて装着するものであってもよい。また、折り線Fを複数本備えるものであってもよい。折り線Fとして、折り曲げられた所謂折り癖を有するものであってもよく、折り癖を有さないものであってもよい。
【0044】
<パッド1の装着について>
パッド1は、幅方向における中央部で前後方向に沿って非肌側に向かって折り曲げた状態で着用者の肌(排泄口)に当接させることで、装着状態となる。具体的には、本実施形態のパッド1は、生理用品であり、折り線Fで肌方向に凸となるように非肌側に向かって折り曲げて、パッド1の幅方向における中央部を女性の陰唇間に挟み込むことで装着状態とすることができる。パッド1は、生理用ナプキンよりも身体(排泄口)との密着性が高いため、排泄物(経血)の漏れが生じにくく、排泄時の不快感を生じさせにくい。
【0045】
装着の際には、着用者は、折り部Fで折り曲げられたパッド1の前側から指挿入部20に指(人差し指又は中指)を挿し込んだ状態で、腹側からパッド1を陰唇間に当接させ、挟み込ませることで装着状態とすることができる。そして、使用後は、装着状態のパッド1を便器(トイレ)の中に脱落させたり、装着状態のパッド1を手で掴んで便器の中に入れたりして、トイレに流して処理することができる。トイレに流すために、パッド1を構成する各部材及び接着剤は、生分解性素材、水分散性素材、又は水溶性素材で構成されていることが好ましい。トイレに流すことで、パッド1をゴミとして処理をする手間を削減したり、ゴミの量を削減させたりすることができたりする。
【0046】
なお、「生分解性」とは、放線菌等の細菌、その他の微生物の存在下、自然界のプロセスに従って、嫌気性又は好気性条件下で物質が二酸化炭素又はメタン等のガス、水及びバイオマスに分解されることをいい、当該物質の生分解能(生分解速度、生分解度など)が、落ち葉等の自然に生じる材料、もしくは同一環境下で生分解性として一般に認識される合成ポリマーに匹敵することをいう。「水分散性」とは、水解性でもあり、装着時の限定された量の水分(経血)では影響はないものの、多量の水又は水流中では、繊維同士が、少なくとも一般のトイレ配管を詰まらせることがない程度の小断片に容易に分散される性質のことをいう。「水溶性」とは、装着時の限定された量の水分(経血)では影響はないものの、多量の水又は水流中においては溶解する性質をいう。
【0047】
<吸収層13について>
図5は、吸収層13の構成について説明する平面図及び断面図である。本実施形態の吸収層13は、厚さ方向における肌側から順に、肌側シート131、吸収性コア132、非肌側シート133を備えている。
【0048】
吸収性コア132は、経血等の液体(体液)を吸収して保持する吸水性及び保水性を備えた部位であり、例えば、パルプ、化学パルプ、レーヨン、アセテート、天然コットン、合成繊維、セルロース発泡体、合成樹脂の連続発泡体等を単独又は混合して用いることができる。また、粒子状高分子吸収体、繊維状高分子吸収体が混合されていてもよく、シート状高分子吸収体を用いてもよい。さらに、吸収性コアの嵩を維持させて保水性を高めるために、架橋剤により架橋させ捲縮された化学パルプ、アセテート、合成繊維を混合させていてもよい。パッド1では、所定形状に成型されたパルプ繊維(吸水性繊維)が用いられている。
【0049】
肌側シート131は、吸収性コア132を肌側から覆う部材であり、非肌側シート133は、吸収性コア132を非肌側から覆う部材である。肌側シート131及び非肌側シート133としては、例えば、粉砕パルプ、コットン等のセルロース、レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース、熱可塑性疎水性化学繊維に親水化処理を施したもの等が挙げられる。本実施形態において、パッド1の肌側シート131は、パルプとレーヨンのスパンレースからなるシートが用いられ、非肌側シート133は、パルプ100%の湿式抄紙ティッシュ等のパルプからなるシートが用いられる。
【0050】
また、肌側シート131を設けることで、吸収層13に達した排泄物を水平方向に拡散させやすくなり、水平に広げられた排泄物が吸収性コア132に吸収させることができる。これによって、排泄物を素早く吸収性コア132で吸収させやすくなるため、着用者の肌に与える不快感を軽減させやすくなる。
【0051】
また、吸収層13には複数の溝部18,18…と、複数の圧搾部19,19…(図5では不図示)が設けられている。溝部18は、吸収層13(肌側シート131及び吸収性コア132及び非肌側シート133)と、非肌側層12とを厚さ方向に貫通する切り込み(スリット)である。当該溝部18が設けられていることにより、パッド1の着用時に、吸収層13及び非肌側層12が着用者の身体の動きに追従して柔軟に変形しやすくなり、フィット性が向上する。溝部18は、後述する中央溝部18cと、傾斜溝部18dと、円弧状溝部18rとを有している。
【0052】
圧搾部19は、吸収層13(肌側シート131及び吸収性コア132及び非肌側シート133)と、非肌側層12とを厚さ方向に圧搾する部位であり、例えば吸収層13と非肌側層12とを厚さ方向に重ねてエンボス加工等を施すことにより形成される(図4参照)。
当圧搾部19が設けられていることにより、吸収層13や非肌側層12を構成している複数の繊維同士が圧着され、吸収層13及び非肌側層12がそれぞれ形状を維持しやすくなり、ばらけ難くなる。したがって、パッド1の着用時に、着用者が身体を動かした際に、吸収層13が型崩れしたり撚れたりして、フィット性が悪化したり排泄液が漏れてしまったりすることが抑制される。
【0053】
なお、吸収層13と非肌側層12とは圧搾部19によって圧着されているだけであり、接着剤等を用いて固定されていない。したがって、使用後のパッド1をトイレに流す際に、圧搾部19が水に濡れると、繊維同士の圧着(水素結合)が外れて吸収層13及び非肌側層12を構成している繊維がばらけやすくなる。これにより、水解性(水分散性)が高まり、トイレ配管を詰まらせる等の問題を生じ難くすることができる。
【0054】
本実施形態の吸収性コア132には、パルプ繊維(吸水性繊維)として、広葉樹からなる吸水性繊維である広葉樹吸水性繊維(広葉樹パルプ)が含まれている。この広葉樹吸水性繊維は、針葉樹からなる針葉樹吸水性繊維(針葉樹パルプ)と比較して繊維長が短いという特徴を有する。
【0055】
図6は広葉樹吸水性繊維(広葉樹パルプ)と針葉樹吸水性繊維(針葉樹パルプ)の繊維長の分布を示す図である。横軸は繊維長(mm)を示し、縦軸は頻度(%)を示している。図6に示すように、針葉樹パルプの平均繊維長は2.5mm程度であり、繊維長の分布幅が広い(3mm以上の繊維が含まれる。標準偏差は1.6)。これに対し、広葉樹吸水性繊維の平均繊維長は0.79mm程度であり、繊維長の分布幅が狭い(標準偏差は0.27)。
【0056】
なお、パルプ繊維の平均繊維長は、中心線繊維長(Cont)による測定で長さ加重平均繊維長L(l)を意味する。長さ加重平均繊維長は、メッツォオートメーション(metso automation)社製のカヤーニファイバーラボファイバープロパティーズ(オフライン)[kajaaniFiberLab fiber properties(off-line)]により、L(l)値として測定される。なお、これはJIS P 8226-2(パルプ-光学的自動分析 法による繊維長測定方法 非偏光法に準ずる)で推奨されている方法でもある。
【0057】
吸収性コア132は、広葉樹パルプ等の繊維長が短い吸水性繊維(平均繊維長が0.8mm程度の吸水性繊維)によって構成されていることによって、高い保水性を備えている。例えば、繊維長が短い広葉樹パルプによって形成された吸収体と、繊維長が長い針葉樹パルプによって形成された吸収体とを同じ重量で比較した場合、広葉樹パルプの繊維本数密度の方が、針葉樹パルプの繊維本数密度よりも大きくなる。つまり、広葉樹パルプを使用することにより、針葉樹パルプを使用した場合と比べて吸収性コア132を高密度化することが可能である。そして、吸収性コア132を高密度化することによって、毛細管効果を高めることができ、保水性を向上させることができる。なお、繊維本数密度は、単位面積当たりの平均繊維本数に相当し、繊維太さ+平均繊維間距離にて、最密充填構造の場合に単位面積当たりに含まれる繊維の本数を試算した値である。
【0058】
また、広葉樹パルプ等の繊維長が短い吸水性繊維を用いることにより、吸収性コア132の柔軟性を高めることができる。吸収性コア132を構成する吸水性繊維の繊維長が短いほど、他の繊維と交絡する箇所(交絡点)の数が少なくなる。したがって、繊維同士の交絡点が少なければ、当該交絡点を介して繊維同士が干渉され難くなり、吸収性コア132の変形が阻害され難くなる。すなわち、吸水性繊維の繊維長が短い方が、繊維長が長い場合よりも吸収性コア132が変形しやすくなる。
【0059】
<個包装状態のパッド1について>
パッド1は、工場等の製造工程において、幅方向における中央部で前後方向に沿った折り線F(折り曲げ線)にて非肌側に向かって折り曲げられた状態で、包装材によって包装された個包装状態(個包装体)とされる。そして、1または2以上の個包装体のセットとして出荷され、市場に流通する。以下、個包装状態のパッド1について説明する。
【0060】
図7A図7Cは、包装材100によってパッド1を包装する方法について説明する図である。包装材100によってパッド1を包装する際には、先ず、折り線F(折り曲げ線)にて二つ折りにされたパッド1が、図7Aの様に所定の包装材100に重ねて配置される。包装材100は、パッド1を二つ折り状態に保持しつつ包装・保護するシート部材であり、例えば、不織布や樹脂シート、紙等によって構成される。図7Aでは説明の便宜上、予め所定の形状にカッティングされた包装材100が用いられているが、包装材100のカッティングは後の工程(例えば図7C以降)で行われるのであっても良い。
【0061】
以下では、包装材100を、前後方向に沿った第1折り基準位置FL1及び第2折り基準位置FL2によって3つの領域に分けて説明する。具体的には、幅方向において第1折り基準位置FL1及び第2折り基準位置FL2の間の領域を第1領域100a、第1折り基準位置FL1よりも幅方向の外側(図7Aでは第1折り基準位置FL1よりも幅方向の一方側)の領域を第2領域100b、第2折り基準位置FL2よりも幅方向の外側(図7Aでは第2折り基準位置FL2よりも幅方向の他方側)の領域を第3領域100cとする。包装材100にパッド1を重ねて配置する際には、パッド1の折り線F(幅方向の中央C-C)の位置と、包装材100の第1折り基準位置FL1とが重なるように配置する。
【0062】
次いで、パッド1が内側となるように、第1折り基準位置FL1にて包装材100を幅方向の一方側から他方側へ折り返して、第2領域100bがパッド1の厚さ方向の上側(以下、厚さ方向の「手前側」とも呼ぶ)に重なるようにする(図7B参照)。図8は、図7Bの状態のパッド1を厚さ方向の手前側から見たときの平面図である。同図8では、パッド1の厚さ方向の手前側に包装材100の第2領域100bが折り重ねられ、第2領域100bよりも幅方向の他方側にパッド1の一部が露出した状態となっている。また、この状態で、包装材100の第3領域100cの幅方向における外側端部領域102に、ホットメルト接着剤等の接着剤が塗布される。但し、包装材100の外側端部領域102に接着剤が予め塗布されていても良い。
【0063】
次いで、パッド1が内側となるように、第2折り基準位置FL2にて包装材100を幅方向の他方側から一方側へ折り返して、第3領域100cがパッド1及び第2領域100bの厚さ方向の上側(手前側)に重なるようにする(図7C参照)。図9は、図7Cの状態のパッド1を厚さ方向の手前側から見たときの平面図である。同図9では、パッド1及び包装材100の第2領域100bの厚さ方向の手前側に包装材100の第3領域100cが折り重ねられることによって、パッド1が包装材100の内部に収容され、外部に露出していない状態となる。この状態で、外側端部領域102に塗布された接着剤によって包装材100の第2領域100bの厚さ方向の上側(手前側)の面と、第3領域100cの厚さ方向の下側(奥側)の面とが接合される。さらに、包装材100の第1領域100a、第2領域100b、第3領域100cが、前後方向の両端部において厚さ方向にシール接合され、シール部101が形成される。これにより、折り線F(折り曲げ線)にて二つ折りにされたパッド1が包装材100によって包装された個包装体となる。
【0064】
図9に示される個包装状態のパッド1において、包装材100の第2領域100bと第3領域100cとは、外側端部領域102に塗布された接着材にて剥離可能に接合(接着)されている。具体的には、使用者が手で簡単にはがせる程度の接合力で接合されている。したがって、パッド1を使用する際には、外側端部領域102の接着面を剥がして開封口を形成することによって、当該開封口から包装材100の内部に収容されているパッド1を取り出すことができる。つまり、外側端部領域102によって接合されている部分を剥がすことによって、パッド1の取り出し口(開封口)が形成される(後述する図11参照)。以下、外側端部領域102を取り出し口102とも呼ぶ。
【0065】
図10は、図9のB-B矢視概略断面図である。個包装状態のパッド1では、幅方向において、折り線F側(一方側)の端部が包装材100の第1折り基準位置FL1と重なるように配置され、折り線Fとは反対側(他方側)の端部が包装材100の第2折り基準位置FL2側に配置されている。このとき、パッド1の折り線Fとは反対側(他方側)の端部が、厚さ方向の上側(手前側)に捲れ上がった状態となっている。図10では、幅方向において、パッド1の折り線Fとは反対側(他方側)の端部で、裏面層14及び指挿入シート15の一部が、表面層11側に捲れた捲れ部50が形成されている。言い換えると、捲れ部50は、裏面層14及び指挿入シート15の一部が、厚さ方向において表面層11よりも上側(手前側)に積層された部分である。
【0066】
この捲れ部50は、パッド1の包装時に、包装材100の第3領域100cを第2折り基準位置FL2にて折り返す際に(図7C参照)、裏面層14や指挿入シート15の一部が第3領域100cに巻き込まれるようにして折り曲げられることによって形成される。特に、図8のように、パッド1の幅方向における他方側の端部が、包装材100の第2折り基準位置FL2よりも外側(幅方向の他方側)にはみ出している場合には、捲れ部50が形成されやすくなる。
【0067】
なお、図10では、折り線F(折り曲げ線)にて二つ折りにされているパッド1のうち厚さ方向の上側(手前側)における端部で捲れ部50が形成され、下側(奥側)における端部では、裏面層14及び指挿入シート15が表面層11よりも上側(手前側)まで捲れていない。すなわち、厚さ方向の下側(奥側)には捲れ部50は形成されていない。これは、二つ折り状態のパッド1が所定の厚みを有していることにより、裏面層14及び指挿入シート15が厚さ方向の下側(奥側)から表面層11よりも上側(手前側)に達するほど大きく捲れ難いためである。但し、パッド1の厚みが薄ければ、厚さ方向の下側(奥側)から上側(手前側)まで捲れが生じる場合もある。
【0068】
図11は、個包装状態のパッド1の開封動作について説明する図である。図11Aは、個包装状態のパッド1において、取り出し口102を開封した状態について表している。図11Bは、取り出し口102からパッド1を取り出す動作について表している。
【0069】
個包装状態のパッド1について、取り出し口102を開封すると、図11Aのように、開封された部分からパッド1の手前側の面が露出する。このとき、パッド1の捲れ部50の一部も露出して、視認可能な状態となる。この状態から、使用者は、図11Bのように片側の手で包装材100の第3領域100cを掴んで外側へ引っ張って取り出し口102を広げつつ、反対側の手で捲れ部50を掴んでパッド1を取り出すことができる。
【0070】
従来の陰唇間パッド(吸収性物品)では、個包装状態において捲れ部50に相当する部分が形成されていなかった。そのため、使用者が個包装体を開封する際に開封口から捲れ部50を視認することができず、どの部分を掴んでパッド1を取り出せばよいのか分かり難くなっていた。その結果、厚さ方向の手前側に露出しているパッド1の表面層11(すなわち、装着時に陰唇に当接する吸収面)が手で掴まれてしまい、衛生上問題となる場合があった。
【0071】
これに対して、本実施形態のパッド1では、個包装状態から開封する際に、裏面層14の一部が捲れ上がった捲れ部50が視認可能となる。そのため、使用者は、パッド1の収容状態を認識しやすく、裏面層14が捲れ上がった捲れ部50を掴むことで、表面層11(吸収面)に不必要に触れることなく、衛生的にパッド1を取り出すことができる。これにより、個包装状態のパッド1を開封する操作を行いやすくすることができる。
【0072】
また、捲れ部50では、裏面層14と共に指挿入シート15も捲れた状態となっている。すなわち、取り出し口102を開封した際に、厚さ方向の最も手前側(上側)に指挿入シート15が視認可能となる(図11A参照)。これにより、パッド1を取り出す際に、指挿入シート15が掴まれる可能性が高くなる。上述したように、指挿入シート15は、パッド1を装着する際に、使用者が指を挿入するための空間である指挿入部20を形成するために設けられている。つまり、指挿入シート15は、通常の使用態様において使用者が指で触れる部位である。したがって、パッド1を取り出す際に、当該指挿入シート15が掴まれやすくなることで、その分、他の部位が掴まれ難くなり、より衛生的にパッド1を取り出すことが可能となる。これにより、パッド1を開封する操作を行いやすくすることができる。
【0073】
また、パッド1において、表面層11と、指挿入シート15若しくは裏面層14とでは色が異なっていることが好ましい。このような構成であれば、捲れ部50にて視認される指挿入シート15若しくは裏面層14と、表面層11との色の違いにより、使用者がパッド1を取り出す際に捲れ部50の存在をより認識しやすくなる。例えば、図11Aでは、クロスハッチング表示された指挿入シート15と、表面層11とで色が異なるため、少なくとも指挿入シート15と表面層11との境界が認識しやすくなっており、捲れ部50を視認しやすくなる。これにより、パッド1を開封する操作をより行いやすくすることができる。
【0074】
ここで、「異なる色」とは、例えば、表面層11を構成しているシート部材(不織布等)が白である場合に、指挿入シート15の色をベージュやグレーにする等、複数の人間(使用者)が肉眼で認識可能な程度に異なっていれば良い。例えば、市販の測色器(例えば、コニカミノルタ社製の色彩色差計CR-300又はそれと同等のもの)を用いて両者の測色を行い、CIE1976(L*a*b*)色空間に基づいて数値化した値を比較することによって色の違い(色差)を客観的に求めることができる。そして、両者の色差ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2の値が13以上となる場合に(ΔE≧13)、異なる色とすることができる。
【0075】
また、パッド1において、表面層11と、指挿入シート15若しくは裏面層14とで模様が異なるようにしても良い。例えば、パッド1の表面層11には複数の圧搾部19が形成されているのに対して、指挿入シート15には圧搾部が形成されていない。したがって、厚さ方向の手前側から見たときに、表面層11と指挿入シート15(捲れ部50)とでは異なる模様が視認される。このような構成とすることで、捲れ部50の存在が認識されやすくなり、パッド1を開封する操作をより行いやすくすることができる。なお、圧搾部19とは異なる模様が付されていても良いし、模様と色とを組み合わせることで、捲れ部50がより認識されやすくなるようにしても良い。
【0076】
その際、個包装状態のパッド1において、包装材100の内部に収容されているパッド1の捲れ部50の色または模様が、包装材100を透過して外側から視認可能であることがより好ましい。例えば、捲れ部50の色(ベージュやグレー)が表面層11の色(白)とは異なっており、当該異なる色が包装材100の外側から視認可能であれば、使用者は個包装状態のパッド1(すなわち未開封の個包装体)を手に取った段階で、捲れ部50の存在を認識しやすくなる。これにより、使用者は、個包装体を開封する前の段階で、包装材100の内部から捲れ部50を掴んでパッド1を取り出す動作をイメージしやすくなる。したがって、パッド1を開封する操作をより行いやすくすることができる。
【0077】
また、個包装状態のパッド1の捲れ部50の一部には、裏面層14と指挿入シート15とが互いに接合されていない非接合部が形成されている。図10において、裏面層14と指挿入シート15とは、指挿入シート接合部16によって互いに接合されているが、捲れ部50の先端部(幅方向の一方側)には指挿入シート接合部16が設けられておらず、裏面層14と指挿入シート15とが互いに接合されていない非接合部15nとなっている。本実施形態において、捲れ部50の先端部は、パッド1を個包装状態から開封して取り出す際に、使用者の指に最も掴まれやすい部位である。したがって、当該先端部に非接合部15nが設けられていることにより、非接合部15nが所謂ドライエッジとして機能して、指で掴んだ際の硬い感触を抑制することができる。また、パッド1の装着時には、幅方向の端部にドライエッジが形成されていることで、陰唇間に挟み込んだ際の違和感を低減することができる。これにより、パッド1を開封して装着する操作をより行いやすくすることができる。
【0078】
また、個包装状態のパッド1において、指挿入部20の挿入口の少なくとも一部が捲れ部50と重複している。図9では、指挿入シート15の上端縁15ei(エッジ)において指挿入シート15が裏面層14と接合されておらず、当該上端縁15eiが指挿入部20の挿入口の一部を構成する。そして、指挿入口である上端縁15eiが捲れ部50と重複していることにより、使用者は、指挿入部20の挿入口を視認しやすくなる。その際、図9のように指挿入シート15(クロスハッチング表示)と裏面層14(斜めハッチング表示)とで色や模様を異ならせることで、両者の境界(上端縁15ei)がより認識されやすくなる。これにより、使用者は、個包装状態のパッド1を開封する動作において、指挿入部20の位置を認識しやすくなる。したがって、パッド1を開封して装着する操作をより行いやすくすることができる。
【0079】
また、図9で、捲れ部50のうち、前後方向において吸収層13の中央CLよりも前側の領域を前側捲れ部50f、吸収層13の中央CLよりも後側の領域を後側捲れ部50bとしたときに、指挿入部20の挿入口(上端縁15ei)は、前側捲れ部50fに設けられている。このような場合、前側捲れ部50fの面積の方が、後側捲れ部50bの面積よりも大きいことが好ましい。つまり、前後方向において、吸収層13の中央位置(中央CL)よりも指挿入部20の挿入口が形成されている側における捲れ部50の面積の方が、中央位置(中央CL)よりも指挿入部20の挿入口が形成されていない側における捲れ部50の面積よりも広いことが好ましい。このような構成であれば、捲れ部50において、指挿入部20の挿入口がより視認されやすくなり、使用者は、個包装状態のパッド1を開封する動作において、指挿入部20の位置をより認識しやすくなる。したがって、パッド1を開封して装着する操作をより行いやすくすることができる。
【0080】
また、平面平置状態のパッド1の厚さ方向において、表面層11よりも非肌側、且つ、裏面層14よりも肌側に設けられる層(図2における非肌側層12及び吸収層13)を中間層とすると、捲れ部50(裏面層14や指挿入シート15)は、中間層の幅方向端部位置にて折れ曲がって表面層11側に捲れやすくなっている。パッド1において中間層を構成している非肌側層12及び吸収層13は、複数の繊維同士が互いに交絡しているため、パッド1の他の部分と比較して剛性が高くなっている。したがって、パッド1を厚さ方向に見たときに、中間層(非肌側層12及び吸収層13)と重複している部分と、中間層と重複していない部分とでは、剛性が異なっている。
【0081】
ここで、パッド1の捲れ部50は、上述したように、包装材100の第3領域100cを第2折り基準位置FL2にて折り返す際に、包装材100の第3領域100cと共に裏面層14や指挿入シート15が折り曲げられることによって形成される。そのため、裏面層14や指挿入シート15は、剛性差の大きい部分が折れ曲がりの起点となりやすい。パッド1では、中間層の剛性が高く、それ以外の部分の剛性が低いため、中間層の境界部(幅方向端部)にて剛性差が大きくなっている。したがって、裏面層14や指挿入シート15は中間層の幅方向端部にて折れ曲がり、捲れ部50が形成されやすくなる。このように、剛性差が大きい部分にて折れ曲がることにより、捲れ部50がしっかりと形成されやすく、形成された後の捲れ部50の形状が維持されやすくなる。したがって、パッド1を開封して装着する操作をより行いやすくすることができる。
【0082】
また、個包装状態のパッド1では、厚さ方向の上側(手前側)に捲れ部50が形成され、厚さ方向の下側(奥側)には捲れ部が形成されていない(図10参照)。このような構成であれば、図11Aのように取り出し口102を開いて開封した際に、使用者に視認されやすい厚さ方向の上側(手前側)に捲れ部50が形成されているため、使用者は、捲れ部50を容易に認識可能であり、当該捲れ部50を掴んでパッド1を取り出す動作を行いやすい。一方、取り出し口102を開いて開封した際に、使用者に視認され難い厚さ方向の下側(奥側)には捲れ部が形成されていないため、パッド1に余計な折り癖等が付き難く、陰唇間に挟み込んだ際に、着用者に違和感を生じさせ難い。
【0083】
また、個包装状態のパッド1の取り出し口102を開いて開封した状態において、捲れ部50の少なくとも一部が視認可能となっている。取り出し口を開封した時点で、すぐに捲れ部50の存在を確認できるので、使用者は、開封操作に迷うことなく、パッド1をスムーズに取り出すことができる。
【0084】
図12は、折り線F(折り曲げ線)にて二つ折りにされたパッド1において、捲れ部50が形成された状態について、厚さ方向の上側(手前側)から見たときの平面図である。同図12は、図11のように個包装状態から取り出し口102を開いたときに視認されるパッド1の状態を表すものである。
【0085】
個包装状態のパッド1において、厚さ方向の上側(手前側)におけるパッド1の見かけ上の幅(見かけ幅)は、厚さ方向の下側(奥側)におけるパッド1の見かけ上の幅(見かけ幅)よりも狭くなっている。図12では、厚さ方向の上側(手前側)におけるパッド1の見かけ幅は、幅方向において、折り線F(折り曲げ線)と捲れ部50の他方側の端(捲れ部50が折れ曲がっている位置)との間の距離W1Ffとなる。一方、厚さ方向の下側(奥側)におけるパッド1の見かけ幅は、幅方向において、折り線F(折り曲げ線)とパッド1の折り線Fとは反対側(他方側)の端との間の距離W1Fbとなる。
【0086】
厚さ方向の手前側における見かけ幅W1Ffが、奥側における見かけ幅W1Fbよりも狭くなっているため、使用者は、捲れ部50の他方側の端(捲れ部50が折れ曲がっている位置)の輪郭を視認しやすくなる。また、パッド1を個包装体(包装材100)から取り出して、折り線F(折り曲げ線)にて二つ折りにされている部分を広げる際に、どの部分を広げればよいのかが視覚的に認識しやすくなる。これにより、パッド1を開封して装着する際に、余計な動作が行われたり余計な部位に触れられたりすることが抑制され、パッド1を衛生的に使用することができる。
【0087】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのは言うまでもない。
【0088】
上述の実施形態で、吸収層13の吸収性コア132は、平均繊維長が0.8mm程度の短繊維によって構成されていることについて説明した。従来、パルプを細かく粉砕して繊維長を短くしたい場合には、粉砕前のパルプシートに第四級アンモニウム界面活性剤等の柔軟剤(デボンダー)を添加することによって、パルプを粉砕しやすくすることが一般的に行われている(所謂、トリートメントパルプ)。しかしながら、柔軟剤(デボンダー)を用いると、吸水性が阻害されやすくなるおそれがある。
【0089】
そこで、パッド1の吸収性コア132を構成する吸水性繊維は、柔軟剤(デボンダー)を含まずに構成されることが好ましい。これにより、吸収性コア132の保水性能が低下してしまうことが抑制される。上述の実施形態では、吸収性コア132が広葉樹パルプを用いて形成されているため、柔軟剤(デボンダー)を用いなくても平均繊維長を0.8mm程度とすることが可能であり、吸水性や柔軟性に優れた吸収性コア132を実現することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 陰唇間パッド(パッド、吸収性物品)、
11 表面層、
12 非肌側層、
13 吸収層、
131 肌側シート、132 吸収性コア、133 非肌側シート、
14 裏面層、
15 指挿入シート、15de 指挿入シート非接合部、
16 指挿入シート接合部、
17 裏面層接合部、
18 溝部、
18c 中央溝部、18d 傾斜溝部、18r 円弧状溝部、
19 圧搾部、
20 指挿入部、
50 捲れ部、
50f 前側捲れ部、50b 後側捲れ部、
100 包装材、
100a 第1領域、100b 第2領域、100c 第3領域、
101 シール部、102 取り出し口(外側端部領域)、
F 折り線(折り曲げ線)、
FL1 第1折り基準位置、FL2 第2折り基準位置
図1
図2
図3
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図5
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図12