(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165963
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】磁気共鳴撮像装置、体動情報提示方法、及び医用画像診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A61B5/055 311
A61B5/055 390
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082589
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横浜 亘
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB12
4C096AB39
4C096AB47
4C096AC01
4C096AC05
4C096AC07
4C096AC08
4C096AD19
4C096DA19
4C096FC09
4C096FC10
4C096FC20
(57)【要約】
【課題】長時間に及ぶMRI検査において、被検体が自らの体動を撮影との関係で自覚でき、それにより退屈だったり不安感を感じたりすることがなく、検査に協力的に関わることが可能な技術を提案する。
【解決手段】MRI装置は、撮影空間に配置された被検体の体動を検出する体動検出装置からの体動情報と撮像部の撮像情報とを用いて、被検体の体動情報と撮像情報とを関連付けた体動関連情報として、撮影空間に配置された被検体が視認可能な位置に配置された映像表示装置に表示させる体動情報処理部を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の磁気共鳴信号を取得し被検体の画像を生成する撮像部、及び、
撮影空間に配置された被検体の体動を検出する体動検出装置からの体動情報と前記撮像部の撮像情報とを関連付けた体動関連情報を、映像表示装置を用いて、前記撮影空間に配置された被検体が視認可能な位置に表示させる体動情報処理部を備えたことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記撮像情報は、検査部位を含み、
前記体動関連情報は、前記検査部位と前記体動検出装置で検出可能な被検体の部位の体動情報とを関連付けた情報を含むことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記体動関連情報は、前記体動検出装置が検出した体動に基づく体動の許容或いは警告を含むことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記体動情報処理部は、前記体動検出装置が検出した体動を解析する体動解析部を備え、
前記体動解析部による解析結果に基づき、検査部位に対応して予め定めた体動の許容度に対応する表示内容を前記体動関連情報として表示させることを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記体動解析部は、前記検査部位と体動が生じている部位との関係に基づき、部位毎に体動の許容度を解析することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項6】
請求項4に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記体動検出装置は、前記被検体を撮影するカメラを含み、
前記体動解析部は、前記カメラの映像を用いて、体動の程度及び体動が生じている位置又は部位を解析することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項7】
請求項4に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
検査部位毎に、体動が生じる部位の体動の程度及び体動の許容度に応じたメッセージをテーブルとして格納する記憶部をさらに備え、
前記体動情報処理部は、前記テーブルを参照して、前記体動解析部の解析結果に基づきメッセージを選択することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項8】
請求項7に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記撮像情報は、撮像シーケンスの種類を含み、
前記テーブルに含まれる体動の許容度は、前記撮像シーケンスに応じて設定されていることを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項9】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記体動関連情報は、検査部位に応じた部位毎の体動の許容度を示す事前情報を含むことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項10】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記撮像部は、複数の本スキャンを含む一連の撮像を実行するものであり、
前記体動関連情報は、前記一連の撮像において体動を許容するタイミング情報を含むことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項11】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記体動関連情報は、被検体の静止持続時間の評価を含むことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項12】
請求項11に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記体動関連情報は、被検体の静止持続時間に応じて変化する図柄または画像情報を含むことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項13】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記体動情報処理部は、前記体動関連情報とともに、撮像の経過情報を前記映像表示装置に表示させることを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項14】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記撮像部が行う撮像は、息止め撮像または呼吸同期撮像であって、
前記体動情報処理部は、前記体動関連情報として、前記体動検出装置が検出した呼吸動の周期を示す画像とそれに対する評価とを表示させることを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項15】
撮影空間に配置され検査中の被検体に対し、被検体自身の体動情報を提示する方法であって、
被検体の体動の大きさを部位毎に解析し、検査部位と体動が検出された部位との関係で許容される体動か否かを判定し、
判定結果に応じたメッセージ(警告)を提示する体動情報提示方法。
【請求項16】
撮影空間に配置され検査中の被検体に対し、被検体自身の体動情報を提示する方法であって、
前記被検体の体動と静止状態の持続時間を監視し、
静止状態の持続時間に応じて、変化する映像を表示する体動情報提示方法。
【請求項17】
被検体の画像を取得する撮像部、及び、撮像中の被検体の体動を処理する体動情報処理部を備え、
前記体動情報処理部は、
撮影空間に配置された被検体の体動を検出する体動検出装置からの体動情報と前記撮像部の撮像情報とを関連付けた体動関連情報を、映像表示装置を用いて、前記撮影空間に配置された被検体が視認可能な位置に表示させることを特徴とする医用画像診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴撮像装置(以下、MRI装置という)やCT装置に代表される、所定のボア内に被検体を挿入して、被検体を撮像する医用画像診断装置に係り、特にボア内に置かれた被検体に情報を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI検査は、MRI装置の「ボア」と呼ばれる円筒状の撮影空間内で行われ、かつ検査時間が20~30分と比較的長い。検査中に被検体に動きがあると、画像に体動アーチファクトが発生し精度の良い画像が得られない。このため検査中は、呼吸を含め、体動を極力抑える必要がある。しかし、ボアという閉所空間で長時間にわたり、体動を抑制して検査を受けることで、苦痛やストレスを感じる患者は少なくない。また患者によっては、退屈となって検査の途中で寝てしまい検査の進捗が滞ることもある。このような状況は、腹部や心臓検査のような時間が長くなりがちな検査において、高齢者や日頃の疲労が蓄積している中高年でよく見られることである。さらに、長い検査の間、患者はどの程度の体動なら検査に影響が無いか、不安を感じるケースも多い。CT装置を用いた検査は、通常はMRI検査に比べ短時間であるが、造影剤を用いる場合は5分~20分程度かかるケースもあり同様の問題がある。
【0003】
撮影中に被検体の動きをできるだけ抑制するための技術や、体動を検出して、検出した体動によって再撮影の要否を判断する手法や、体動の情報を用いて画像を補正する画像処理技術が種々提案されている(特許文献1)。これらは撮影を行う側、技師や医師或いは装置側で対応するものであるため、体動に関する情報が被検体にはフィードバックされることはない。
【0004】
一方、ボア内に置かれた被検体が長い撮影時間に眠ってしまったり退屈したりしないために被検体が見ることができる位置に風景や動物などの映像を表示する工夫もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
検査中の体動により生じる画質劣化の問題については、体動を補正する画像処理技術により、ある程度解決できるが、体動の大きさによっては、再撮影が必要となり、被検体の拘束時間はさらに長くなる。しかし、装置側或いは操作者側で処理される対応は被検体にはフィードバックされないので、被検体は不安を払しょくすることができない。
【0007】
一方、風景や動物などの表示は、検査中の被検体が退屈しない工夫ではあるが、検査中に被検体が動いてしまう体動の問題を直接解決することはできない。
【0008】
本発明は、長時間に及ぶ検査において、被検体が自らの体動を撮影との関係で自覚でき、それにより退屈だったり不安感を感じたりすることがなく、検査に協力的に関わることが可能な技術を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、検査の進行と平行して、被検体の体動を検出し、検出した体動の情報を現在行われている撮影と関係付けて、被検体に提示する手段を備えた医用画像診断装置、特にMRI装置を提供するものである。
【0010】
すなわち本発明の医用画像診断装置は、撮像部と体動情報処理部を備える。体動情報処理部は、撮影空間に配置された被検体の体動を検出する体動検出装置からの体動情報と撮像部の撮像情報とを関連付けた体動関連情報を、映像表示装置を用いて、撮影空間に配置された被検体が視認可能な位置に表示させるものである。
【0011】
また本発明のMRI装置は、被検体の磁気共鳴信号を取得し被検体の画像を生成する撮像部、及び、撮影空間に配置された被検体の体動を検出する体動検出装置からの体動情報と撮像部の撮像情報とを関連付けた体動関連情報を、映像表示装置を用いて、撮影空間に配置された被検体が視認可能な位置に表示させる体動情報処理部を備える。
【0012】
また本発明は、撮影空間に配置され検査中の被検体に対し、被検体自身の体動情報を提示する方法を提供する。提示は、例えば、映像表示手段を介して行われ、提示される体動関連情報は、警告などのメッセージ、被検体が静止状態を保っていることに対するポジティブな評価、その評価を反映し、被検体を楽しませるコンテンツなどを含みうる。
【0013】
即ち、本発明の方法では、被検体の体動の大きさを部位毎に解析し、検査部位と体動が検出された部位との関係で許容される体動か否かを判定し、許容されない体動であるときに警告を発する。或いは、被検体の体動と静止状態の持続時間を監視し、静止状態の持続時間に応じて、変化する映像を表示する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、進行中の撮影と被検体自身の体動の状態とが、検査中の被検体に提示されることで、被検体が自覚的に体動を抑制する動機付けが与えられ、また体動に伴う再撮影などを生じた場合にも納得が得られやすく、検査中の被検体の拘束に伴う不快感を低減することができる。本発明によれば、被検体が静止状態を要求され、単に受け身として撮影が行われるのではなく、積極的に静止状態の維持に協力することができ、結果として再撮像などの低減や画質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明が適用されるMRI装置の概要を示す図
【
図3】実施形態のMRI装置の演算部の機能ブロック図
【
図6】実施形態1の映像表示装置に表示される体動関連情報の一例を示す図
【
図9】実施形態2の体動情報処理部が用いるテーブルの一例を示す図
【
図10】実施形態2の体動情報処理部が用いるテーブルの他の例を示す図
【
図11】実施形態3の体動情報処理部が用いる検査フローの一例を示す図
【
図12】実施形態3の映像表示装置に表示される体動関連情報の一例を示す図
【
図13】実施形態4の体動情報処理部の処理を示す図
【
図14】実施形態4の映像表示装置に表示される体動関連情報(コンテンツ)の一例を示す図
【
図15】実施形態4の映像表示装置に表示される体動関連情報(コンテンツ)の他の例を示す図
【
図16】実施形態5の映像表示装置に表示される体動関連情報の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の医用画像診断装置の実施形態を説明する。以下の実施形態では、MRI装置を例に説明を行うが、本発明はその他の画像診断装置にも適用可能である。
【0017】
MRI装置1は、
図1に示すように、撮影空間(ボア)を提供するガントリー10と、被検体50を載置してガントリー10のボア内に挿入するためのテーブル30とを有し、ガントリー10内には、被検体50に高周波磁場を印加し、それによって磁気共鳴信号を収集する撮像部(不図示)が内蔵されている。また
図1には示していないが、ガントリー10が置かれる検査室とは別に撮像部を制御するとともに画像再構成等の各種演算を行う演算部と操作部(コンソール)が備えられている。
【0018】
ガントリー10には、撮影空間に配置された被検体50の体動を検出する体動検出装置60及び被検体50から見える位置に所定の映像を表示する映像表示装置70が備えられ、MRI検査の間、被検体50の動きを監視するとともに、その情報を映像として被検体50にフィードバックする構成となっている。
【0019】
体動検出装置60は、被検体の動きを把握できるものであれば、特に限定されないが、例えば、光学カメラ、赤外線カメラなどのカメラ、カメラ類(ステレオカメラを含む)、光学センサ、赤外線センサ、マイクロ波センサ、ラジオ波センサなどのセンサ類で構成される。これら体動検出装置60は、ガントリー10の1か所或いは複数個所に設置され、被検体の動きを監視する。体動検出装置60は呼吸動や心臓周期を検出する機器類、例えば腹圧計や心電計を含んでいてもよい。
【0020】
映像表示装置70は、ガントリー内部の被検体の視野内に映像を映し出す装置で、ディスプレイ、液晶ディスプレイ、空中ディスプレイ、或いは投影機を用いることができる。投影機の場合には、ボア内に映像を直接投影してもよいし、ミラーを介して投影してもよい。
【0021】
体動検出装置60と映像表示装置70は、MRI装置の演算部(不図示)に接続されている。体動検出装置60は検出した体動情報を演算部に送る。また映像表示装置70は、体動情報を用いて演算部が生成した体動関連情報を受け取り、表示する。
【0022】
撮像部20の構成は一般的なMRI装置と同じであり、例えば、
図2に示すように、静磁場磁石201、3軸方向の傾斜磁場コイル202とその電源205、RF送信コイル203と送信器206、RF受信コイル204と受信器207などを備え、さらに傾斜磁場電源、送信器及び受信器を所定のパルスシーケンスに従って動作させるシーケンサ208を備えている。
【0023】
被検体50は、検査部位(検査の対象となる部位)が、静磁場磁石201が発生する静磁場空間(撮像空間)の中心に位置するように、撮像空間内にポジショニングされて撮像が行われる。撮像はRF送信コイル203を照射することにより被検体50から発生する核磁気共鳴信号をRF受信コイル204が検出することにより行われ、その際、各軸の傾斜磁場コイル202を駆動して傾斜磁場を印加することにより核磁気共鳴信号に位置情報を付与し、画像再構成に必要な数の核磁気共鳴信号の収集が行われる。
【0024】
演算部40は、シーケンサを介した撮像部20の制御、受信器が収集した核磁気共鳴信号(デジタル信号)を用いた画像再構成や画像処理などを行う。また本実施形態の演算部は、体動に関する処理及び体動と撮影との関係を検査中の被検体に提示するための処理を行う。演算部の機能の一例を
図3に示す。
図3の例では、演算部40は、撮像制御部410、画像処理部420、体動情報処理部430、表示制御部440を備えている。撮像制御部410及び画像処理部420の機能は一般的なMRI装置と同様であり、撮像制御部410はシーケンサ208を介した検査フロー及び撮像シーケンスの制御を行い、画像処理部420は核磁気共鳴信号を用いた画像再構成等の演算を行う。
【0025】
体動情報処理部430は、被検体の体動と撮影とを関連付けた情報(体動関連情報)を生成し、映像表示装置70に表示させる。体動関連情報に含まれる体動情報としては、例えば、体動検出装置60が検出した体動自体、或いは体動検出装置が検出した体動について発生位置や体動の程度を解析した結果を含むことができる。体動の解析は、体動情報処理部内の体動解析部431にて行われ、例えば、体動検出装置60がカメラの場合には、カメラの映像を用いて、体動が生じている位置及び体動の程度を求め、部位毎に体動の許容度などを解析する。
【0026】
体動情報処理部430(体動関連情報生成部432)は、また、体動解析部431の解析結果に基づいて、被検体に提示する体動関連情報を作成する。例えば、体動の程度及び体動が生じている位置を解析した場合には、検査部位に対応して予め定めた体動の許容度に対応する表示内容を関連情報として作成する。体動関連情報には、静止状態を保つためのモチベーションを被検体に与えるための情報や娯楽性のある情報を含むことができる。
【0027】
上記処理を行う演算部40は、メモリとCPUを備えた汎用の計算機で構成することができ、上記処理は予めプログラムされた処理をCPUが読み込み実行することで実現される。但し演算部40が行う処理の一部は、ASICやFPGAなどのプログラマブルICなどが行う場合もある。また演算部40には、その処理に必要なデータなどを格納する記憶装置80が接続される。記憶装置80は、MRI装置の計算機専用の記憶装置として当該計算機に接続されているものでものよいし、MRI装置とは別の場所に置かれた記憶装置(クラウド、可搬媒体を含む)でもよい。
【0028】
上記構成のMRI装置の処理の概要を、
図4を参照して説明する。
【0029】
検査が開始し、被検体を撮像空間の所定の位置に配置すると、配置に前後して体動検出装置60が被検体の体動の監視を開始する(S1、S2)。なお体動検出装置60がカメラの場合、被検体の配置にカメラ映像を利用することもあるが、この体動の監視は被検体配置後の被検体の体動を対象とする。
【0030】
体動検出装置60が検出した体動情報(体動検出装置60がカメラの場合にはその映像)が体動情報処理部430に渡される。体動情報処理部430は、撮像制御部410から現在進行している撮影に関する情報(例えば、検査部位の情報、体動にロバストな撮像か否か、撮像時間、進行状況)を取得し、撮影に関する情報と体動情報とを関連付けた表示用の情報(体動関連情報という)を作成し、表示制御部440に渡す(S4)。体動の監視から体動関連情報の作成までは、検査が終了するまで繰り返し実行され(S6)、表示制御部440は、その他の付帯情報と共に体動関連情報を映像として映像表示装置に表示する(S5)。
【0031】
本実施形態のMRI装置によれば、検査開始と同時に、被検体は映像表示装置を通じて、検査が進行していく過程とともにその間に自身の体動が生じていないこと或いは生じたこと、またある程度の体動が許容される部位や時間帯などの情報を逐次得ることができる。これにより検査中における患者が感じるストレス、退屈感、検査に影響が無い体動が分からないことによる不安を感じる心理的負担を軽減することができる。
【0032】
また単に受け身で静止状態を強いられて検査を受けているのではなく、積極的に静止状態を保つモチベーションが与えられ、長時間の検査への受容性が向上するとともに、静止状態を保ちやすくなり体動の低減につながる。
【0033】
次に体動情報処理部の具体的な処理の実施形態を説明する。
【0034】
<実施形態1>
本実施形態は、被検体に対し、検査部位の情報と、体動検出装置(カメラ)60からの情報とを提示するとともに、体動に関するメッセージを表示する。メッセージは検査部位との関係で体動がどの程度許容できるかを示すメッセージや、体動が生じていることを示すメッセージなどである。
【0035】
体動の許容性に関するメッセージは、検査部位毎に、許容できる各部位の動きについての情報をもとに予め定型のメッセージを作成しておき、撮像制御部410から取得した検査部位の情報をもとに定型メッセージから選択して表示することができる。
【0036】
体動が生じているかの判定は、体動検出装置60からの体動情報をもとに、体動解析部431が各位置の動きを解析することで行う。具体的には、
図5に示すように、体動情報処理部430が、カメラから被検体の映像を受け取ると(S21)、体動解析部431が映像(画像)の領域毎に動きの大きさを解析する(S22~S24)。画像を領域分けする手法は、特に限定されないが、セグメンテーションを行って、例えば頭部、体幹部、四肢部のように領域分けする(S22)。或いは、画像を例えば縦横の線で区切って矩形に領域分け、各矩形領域をそれが属する部位(頭部、体幹部、四肢部)に事前に登録するようにしてもよい。動きの解析は、所定の時間間隔で得られる複数の画像についてオプティカルフロー等の手法を用いることで、その時間における動きの大きさを算出する(S23)。
【0037】
さらに体動解析部431は、動きの大きさを基準値と比較する(S24)。基準値は被検体を検査空間に配置した時点(検査開始時点)の位置でもよいし、検査空間に配置後の所定の時間内に取得した体動変化の平均値などを用いることができる。基準値よりも大きい場合には、許容できない動きがあったと判定する。この判定結果をもとに定型のメッセージを出力する(S24)。
【0038】
映像表示装置70に表示される体動関連情報の一例を
図6に示す。
図6(A)に示す例は、頭部検査の場合の表示例で、まず人体のイラストの上に、検査部位を示すマーク(ここでは検査部位を囲む円)が示され、許容される体動の程度についてのメッセージ、例えば「あなたは頭の検査なので、こちら以外は多少動いても問題ありません」が表示される。また被検体自身の体動情報として、カメラが取得した映像が表示される。体動解析部431が、動きがあると判定した位置については、例えば「×」などのマークが映像上に重畳して表示される。
【0039】
図6(B)に示す例は、腹部~骨盤検査の場合の表示例で、人体のイラストの上に検査部位を示すマークが示されることは
図6(A)の例と同じであるが、さらにこの例では、被検体の映像表示において、検査部位に応じて表示の注目領域を抽出するか、あるいは体動を検出した部位を強調的に表示する。併せて、検査に影響あるレベルの体動が検出された際は、それを報知するメッセージ、例えば「深呼吸が検出されました。静かな呼吸に戻してください」が表示される。
【0040】
さらに、検査が終了するまで常にイラスト等で動いてほしくない部位を明示したり、本スキャン撮像中など特に動いてほしくない期間は、色の変更や表示方法を変更したりしてもよい。通常、MRI検査では、受信コイルで覆われてしまい、検査対象部位が隠れてしまうことがよく起こるため、このような部位の明示を行うことで、被検者が意識できるようにする。
【0041】
なお
図6に示した例では、検査部位に対し許容できる動きについての情報をイラストとともに文字情報で表示したが、検査部位に応じて影響のある動きの部位を図柄として表示してもよい。
【0042】
図7に検査部位と体動との関係性を示す図柄の一例を示す。図示するように、この図柄は、人体を模した画像に対し、検査部位を四角で示し、その他の部位について動きの許容度を示すマークを付したものであり、例えば、頭部撮影では、頭部撮影であることがグレーの四角で示され、最も動きの許容度の高い両手には「〇」、手首と足には「△」、それ以外には「×」のマークがそれぞれ付されている。他の部位についても同様に、撮影されている部位の表示と、「〇」「△」「×」などのマークの表示を行う。
【0043】
検査時に、このような図柄を映像表示装置70に表示しておくことで、被検体は自分の検査部位と留意すべき体動抑制部位とを自覚し、静止状態の維持に努めることができる。なお
図6や
図7に示す動きの許容度を提示する表示だけを行うことも、本発明に包含されるが、実際の動きに関する警告メッセージと併せて表示することで、被検体は例えば無自覚に或いは不随意に動かしてしまった部位についても、自覚することができ、動きの抑制を強化することができる。
【0044】
本実施形態によれば、検査部位に対し許容できる動きについての情報やメッセージを提示するとともに、体動情報として得たカメラ画像上に、動きがあった部位や動いてはいけない部位などを明示することにより、影響が無い体動が分からないことによる不安などの被検体の心理的負担を軽減することができる。また生理的に起こる動きや無意識の体動を抑制できる可能性が高まり、再撮像の手間を減らすことができる。
【0045】
<実施形態2>
本実施形態は、体動関連情報として、撮像シーケンスが体動に対しロバストであるか否かに応じて、被検体に各部位に生じた動きに対して発する警告の内容を異ならせた表示を表示する。
【0046】
以下、本実施形態のMRI装置の動作を、
図8に示す体動情報処理部430の処理の流れを参照して説明する。ここでは体動検出装置60として、撮影空間内にある被検体の映像を取得するカメラが用いられているものとする。
【0047】
体動情報処理部430は、カメラから被検体の映像が送られてくると(S31)、体動解析部431が映像(画像)の領域毎に動きの大きさを解析する(S32、S33)。画像の領域分けと領域毎の動きの解析の手法は、実施形態1で説明した手法と同様である。
【0048】
さらに体動解析部431は、動きの大きさを、予め設定された閾値と比較し、その影響度を判定する(S34)。動きの大きさが撮影に与える影響は、撮影シーケンスによって、また検査部位によって異なる。例えば、SE系、FSE系シーケンス或いは3D撮像では撮影時間が長いため体動の影響を受けやすい。また例えば、頭部を対象とする撮影では、頭部の動きはそのまま画質の劣化につながるが、四肢部の動きは比較的影響が少ない。従って閾値は、撮影シーケンス及び検査部位に応じて予め設定され、閾値を超える大きな動きの場合或いは閾値以内の動きの場合に分けて、警告を異ならせる。
【0049】
体動解析部431は、現在進行している撮影が体動の影響を受けやすいシーケンスを用いた撮影か否か、及び、検査部位がどこであるか、という撮影情報をもとに、解析した部位毎の動きの大きさを閾値と比較して、必要な警告を映像表示装置70に表示する(S35)。本実施形態では、撮影シーケンス毎及び検査部位毎の動きと警告内容とを予めテーブル化し、それを記憶装置80に格納しておく。体動情報処理部430は体動解析部431の解析結果とテーブルとを参照して、適切な警告内容を表示する。
【0050】
図9にテーブルの一例を示す。このテーブルは、検査部位が頭部であって、頭部、体幹部、四肢部のそれぞれについて、検出した動きの大きさに応じて警告内容が割り当てられたものである。SE系シーケンスを用いた頭部撮影において、例えば、体動解析部431による解析の結果、頭部の動きが「大」(閾値より大きい)と判断されると、「検査部位に大きな動きが検出されました。動かないでください。」という警告が映像表示装置に表示される。或いは、体幹部や四肢部の動きであっても撮影によって再撮像が必要な撮影の場合には、動きの大きさに応じて「再撮像の可能性があります」などの警告も併せて表示される。被検体はこの表示により、自分が動いたことを自覚でき、静止状態を保つよう努める契機が与えられる。
【0051】
図9に示すようなテーブルは検査部位毎にそれぞれ用意することができ、体動情報処理部430は、検査部位に応じて参照するテーブルを適宜選択して適用し適切な警告を表示させる。
【0052】
なお、以上の説明では、体動検出装置60がカメラである場合を例にしたが、例えば腹部の撮影などにおいて、体動検出装置60として呼吸動の大きさを検出する体動検出器が備えられている場合には、撮影に先立って体動検出器が検出した検出位置から被検体の呼吸動の周期を把握し、その所定の時相、例えば呼気の時相を参照値とし、その参照値を閾値として動きの大きさ、体動の乱れを判定してもよい。その場合、単に動きの大きさに伴う警告だけでなく、体動の乱れに対応する警告を用意しておき表示させてもよい。
【0053】
また警告の表示のみならず、音声等を用いた警告を併せて行うことも可能であり、それにより視覚に障害がある被検体や寝てしまった被検体に対しても警告の効果を得ることができる。さらに被検体が見るための映像表示装置の表示内容と同じ表示内容を、操作者用のモニター(不図示)に表示させてもよく、これにより操作者は適切な警告がなされていることを確認することができる。
【0054】
本実施形態によれば、進行中の撮影について、被検体が自分の動きを確認しながら、特に動いてはいけない部位についての動きを自律的かつ効果的に抑制することができる。
【0055】
<実施形態2の変形例1>
図9は動きの大小のみを解析する場合に参照するテーブルの例であるが、体動解析部431は、経時的な動きの変化を解析することで、動きの特性(一時的で大きな動きか、小刻みな周期的な動きか)や動きの周期を解析することも可能であり、動きの特性による撮影への影響度を加味して警告を表示してもよい。例えば、
図10に示すように、検査部位毎に動きの特性と撮影に与える影響度とをテーブル化しておき、体動解析部431が解析した動きの特性の結果をテーブルと参照し、テーブルにおいて撮影への影響が大であると判定された動きの特性をあると判定された場合にのみ、
図9を参照して警告を発するようにしてもよい。或いは
図9の警告とは異なる動きの特性に応じた警告内容を予め用意しておき、それを発するようにしてもよい。
【0056】
本変形例により、体動についてさらに精度の良い情報を被検体に与えることができ、被検体の安心感を高めることができる。
【0057】
<実施形態3>
実施形態1及び実施形態2では、一つの撮影中の体動を問題にしたが、本実施形態は複数の撮影が連続する検査における体動関連情報の表示に関する。
【0058】
MRI検査においては、一つの検査部位を撮影する場合にも、まず位置決め撮像から始まり、コントラストが異なる複数種の撮像シーケンスを用いた撮影(本スキャン)を行う場合が多い。さらに撮影後の画像を確認して追加の撮影(追加スキャン)が実施される場合もある。MRIの検査フローは、これら一連の本スキャンからなる。
図11にMRI検査フローの一例を示す。操作者はこのような検査フローに基づいて検査を行うが、この情報は検査を受けている被検体に共有されてはいない。本実施形態では、被検体の体動を検査フローと関連付けて被検体に少々の動きならば許容されるタイミングなどを提示する。
【0059】
原則として検査フローにおいて、位置決め後は一連の本スキャンを行う間、動きの影響度に関わらず、被検体は動かないことが望ましいが、本スキャンと本スキャンとの合間や画像確認中は、位置変更を伴わない、影響度の少ない部位の小さな動きは許容される。但し、本スキャンと本スキャンとの合間或いは画像確認中の時間は、数十秒から数分かかる場合もあれば、数秒しかかからない場合もある。
【0060】
本実施形態では、撮影の進行状態を被検体に提示し、被検体が動きを許容される時間の情報を提供する。提示の仕方は、特に限定されないが、例えば、
図11示したような検査フローのテーブルを表示し、進行中の本スキャンは進行中であることを示すカラー表示などを行う。一つの本スキャンが終了し、次の本スキャンが始まるまで、次の本スキャンはカラーの点滅表示とし、合間であることを示す。この時、次の本スキャンまでの時間を可視化する表示(例えば砂時計のような図形表示など)を行ってもよいし、合間が所定の時間以上のときのみ点滅表示か時間の可視化表示を行い、合間が極めて短い(数秒程度)の場合には、次の本スキャンを進行中であることを示すカラー表示としてもよい。テーブルに代えて、
図12に示すような進行状況を示すタイミングチャートでもよい。
【0061】
また画像確認中にも本スキャンの合間と同様の表示を行ってもよいが、画像確認中は、確認中であることを示すとともにその間にもできるだけ動かないように指示するメッセージ(文字表示)を示すなど、表示方法を異ならせてもよい。
【0062】
本スキャン中は、実施形態1或いは実施形態2と同様の表示を行う。
【0063】
本実施形態によれば、被検体は例えば咳やくしゃみなど我慢していた動きを提示された合間や画像確認中に発動することができ、被検体の苦痛を和らげることができる。また被検体は検査フローの進行状況を確認できるので、検査終了の見込みがわかり、安心して検査を受けることができる。
【0064】
<実施形態4>
本実施形態はともに、体動に係る情報と被検体が静止状態を維持していることを評価するコンテンツを表示する。さらに検査の進捗度合を表示してもよい。評価コンテンツには種々の態様が考えられるが、静止状態を維持している時間に応じて、検査中の被検体を鼓舞するように表示される図柄が変化する内容とする。また被検体が子供か大人かなどに応じて図柄を適宜異ならせる。
【0065】
本実施形態における体動情報処理部430の処理の流れを
図13に示す。ここでもカメラ画像を取得し、動きの解析を行うこと(S41、S42)は、
図5或いは
図8に示す処理と同様である。本実施形態では、さらに動きがない時間(静止時間)を監視し(S43)、静止時間が所定時間を超えると(S44)、表示されているコンテンツを更新して、例えばキャラクタが進化した図柄に変更する。静止時間が持続する間、キャラクタの進化が進むように図柄を変更する(S41~S45)。
【0066】
コンテンツの例を
図14、
図15に示す。
図14は、子供向けのコンテンツの一例であり、検査の進みを捗らせるために、キャラクタ変化などゲーミング性のあるコンテンツを提供する。この画面1400では、撮影と体動との関係を示す情報として、撮影の進行状態を示す棒グラフ1401と、進化するキャラクタ1402とが、表示されている。また本実施形態において必須ではないが、撮影と体動との関係を示す情報とともに、検査部位を示すアイコン(人を模した図形)1403及び体動検出装置60(カメラ)が捉えた被検体の映像1404が表示されている。
【0067】
キャラクタ1042は、撮影開始時には例えば小さいが(例えば最左の画像が表示される)、静止状態が維持されていると、それに伴って成長し、進化したキャラクタ(左から右へ)に変化する。このような変化をみることで、被検体(子供)は変化自体を楽しむとともに、その変化が、自分が動かないことに対するご褒美として感じられ、静止状態をさらに維持するモチベーションが与えられる。なお、キャラクタ1402は、複数のキャラクタを用意しておき、被検体に選択させてもよい。
【0068】
またMRIの撮像中は「ガンガン」「コンコン」など、工事のような騒音が鳴るため、その音に違和感を与えないようなコンテンツを提供してもよい。
図15(A)はその例であり、キャラクタに代えて建設中の建物とそれにかかわる職人(大工)などが登場する映像を表示する。この場合にも建物は、静止状態が維持されている時間の経過に伴って、完成に近づく。また職人の図柄は、動かないときに現れるが、動くと消える。これによって被検体は自分が動いてしまったことを自覚するとともに、動かないことによる建物建設の進行の喜びを感じ、静止状態をさらに維持するモチベーションが与えられる。同時に形成されていくMR画像を順次表示することで、被検体は検査の完成を感じることができる。
【0069】
図15(B)は、喜ぶ家族や医療スタッフが増えていくことで、褒めるようなコンテンツの例であり、被検体を見守り、静止状態維持に頑張っている被検体を褒める周囲の人たちの数が静止状態の継続時間に伴って増えるというものである。
図15(A)、(B)に示す例でも、
図14に示す画面例と同様に、カメラ画像を表示してもよいし、
図15(A)に示すように、カメラ画像に代えて、或いはカメラ画像と共に、撮影された画像を表示してもよい。その際「正常な画像が取れています」などの被検体を褒めるようなメッセージを加えることで、さらに被検体をリラックスさせたり静止状態を維持するモチベーションを高めたりすることができる。
【0070】
なお
図14、
図15は、表示コンテンツの単なる一例であって、種々のコンテンツがあり得、それらを用意しておいて患者に適したコンテンツを選択して適用することが可能である。
【0071】
本実施形態によれば、長く、退屈なMRI検査において、被検体に対し検査の協力を仰ぐ共にコンテンツで楽しませることで、体動抑制に期待でき、かつポジティブに検査に臨むことができる。患者の年齢や楽しみ方はさまざまあることから、患者に適したコンテンツを用意することで、無理にリラックスさせるだけではない、ストレスの軽減にも寄与できる。
【0072】
<実施形態5>
一般に腹部検査では、撮像するシーケンスによって、息止めをしなければならない撮像や一定の呼吸を繰り返すことで画像を得る呼吸同期撮像(あるいは横隔膜同期)が混在する。正しく画像を得るためには、しっかり息を止めることや規則正しく呼吸を継続してもらう必要がある。本実施形態は、息止めを必要とする撮像や呼吸同期撮像に対応して、被検者の動きの情報を、操作者だけでなく患者自身にも見てもらうことで呼吸状態の良し悪しを理解させる。
【0073】
息止め撮像や同期撮像では、体動検出装置60として、被検体の呼吸動を監視するためのモニターが設置されている。本実施形態の体動情報処理部430は、体動検出装置(モニター)からの情報を取得し、被検体の呼吸動とそれが目的の撮像において適切な状態であるかを判定し、体動情報と共に提示する。適切であるかの判定は、体動解析部431が、体動検出装置60からの情報をもとに、例えば、動きの大きさとある程度の大きさの動きの変動の持続時間を解析し、所定の閾値を超える動きが所定の持続時間続いたか、或いは動きの大きさが閾値以下である静止状態が所定の持続時間続いたかを判断することにより行われる。閾値は、事前計測した被検体の呼吸波形をもとに、操作者が設定したレベルとして用いてもよいし、装置側で自動的に行ってもよい。
【0074】
図16に示す表示内容の具体例を参照して、本実施形態を説明する。
【0075】
図16の左側は息止め撮像の場合の表示内容(体動関連情報)の一例であり、この例では、体動検出装置が検出した呼吸波形が体動情報として表示される。上側は息止めがうまくいっている場合、下側は息止めがうまくいかず、画質に影響を及ぼす場合である。
図16では、二つの場合を並列に示しているが、実際には、現在の被検体の呼吸波形即ちどちらか一方が表示される。そして、息止めが成功の場合、不成功の場合のいずれも、それを示す評価を併せて表示する。
【0076】
評価の判定は、上述した通り、動きの大きさと持続時間とに基づき行われ、呼吸波形から息止めがうまくいっていると判断された場合には「Good」、画質に影響があるような動きがある場合には「BAD」などの評価が表示される。息止めがうまくいかない場合には、通常、アナウンスでもその旨を被検体に知らせるが、撮影空間内の被検体に聞こえていない場合や理解していない場合もあり得るので、上述した評価と共に、例えば「うまく呼吸が止まっていません」「アナウンスは聞こえていますか」などのメッセージを表示する。
【0077】
図16の右側は、呼吸または横隔膜同期撮像の場合で、左側の図と同様に、上側が安定した呼吸波形で同期撮像がうまくいく場合、下側は呼吸動が不安定で同期撮像が困難となる場合で、実際の被検体の波形(すなわち、いずれか一方)が表示される。この場合は、体動解析部431は動きの大きさだけでなく、変動の周期を解析してもよく、その場合、周期の安定性により動きを評価する。そして下側に示すように呼吸動が不安定な場合には、「BAD」評価とともに、例えば「呼吸が乱れました。ゆっくり呼吸するか、起床してください。」などのメッセージを表示する。
【0078】
なお
図16に示す表示と併せて、他の実施形態で例示した表示内容、例えば、
図12や
図14に示したような完成までの目安や、
図15に示したような静止持続時間に応じて変化する画像などを表示してもよい。
【0079】
本実施形態によれば、被検体に呼吸状態不良を知らせることで、再撮像および検査時間の遅延を防止することができる。また検査中における患者が感じるストレス、退屈感、検査に影響が無い体動が分からないことによる不安を感じる心理的負担を軽減することができる。さらに本実施形態によれば、息止め撮像や同期撮像における動きの判定を自動化したことで、操作者毎の動き判定のばらつきを低減できる。
【0080】
以上、本発明のMRI装置の体動情報処理部の流れと被検体に提示される体動関連情報の実施形態を説明したが、本発明は、被検体が現に受けている検査において、検査或いは撮像に関連して許容される或いは許容されない体動の情報(メッセージ、画像、映像など)を撮像と関連付けて被検体に提示することを要旨とするものであり、体動の判定手法、提示内容の表示形態については種々の変更が可能であり、そのような変形例も本発明に包含される。さらに各実施形態で説明した内容は技術的に矛盾しない限り、適宜組み合わせたり、いくつかの要素を省略したりしてもよく、そのような変形例も本発明に包含される。
【0081】
さらに医用画像診断装置の一例としてMRI装置について説明を行ったが、本発明は所定の検査空間に被検体を留めて撮像を行う医用画像診断装置であれば、CT装置などMRI装置以外の医用画像診断装置にも適用される。
【0082】
例えばCT装置は、図示を省略するが、撮像部として、X線源とX線検出器とを搭載したスキャナを備え、X線源から照射され被検体を透過した透過X線をX線検出器で検出し、スキャナを回転させながら各角度の透過X線データを収集する。またCT装置は、収集した透過X線データを用いて被検体の断層像を生成する演算部を備えている。このようなCT装置において、被検体は、スキャナを収納するガントリー内(スキャナの開口内)に、寝台に載置された状態で挿入されCT検査が行われる。
【0083】
ガントリーに収納される撮像部の構成は異なるが、CT装置も
図1に示すMRI装置の外観と類似した外観を有し、
図1に示したように、映像表示装置70や体動検出装置60が設置される。そして、演算部内の機能として、
図3に示した体動情報処理部430を備えている。体動上処理部430の機能は、MRI装置と同様で、例えば、
図4や
図13と同様の処理を行う。映像表示装置70に表示される体動関連情報やコンテンツもMRI装置と同様であり、同様の効果、体動を被検体が自律的に抑制することができ、また長い検査時間を退屈したり不安を感じたりすることなく、コンテンツ内容を楽しんだり励まされたりできる、という効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0084】
1:MRI装置、10:ガントリ―、20:撮像部、30:テーブル、40:演算部、50:被検体、60:体動検出装置、70:映像表示装置、80:記憶装置、410:撮像制御部、430:体動情報処理部、431:体動解析部、432:体動関連情報生成部、440:表示制御部