(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165966
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】制御装置および空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F24F 11/80 20180101AFI20241121BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20241121BHJP
F24F 11/77 20180101ALI20241121BHJP
F24F 11/65 20180101ALI20241121BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20241121BHJP
F24F 110/70 20180101ALN20241121BHJP
F24F 110/30 20180101ALN20241121BHJP
【FI】
F24F11/80
F24F11/74
F24F11/77
F24F11/65
F24F110:10
F24F110:70
F24F110:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082594
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】左部 俊介
(72)【発明者】
【氏名】金山 寛明
(72)【発明者】
【氏名】荒川 武士
(72)【発明者】
【氏名】矢本 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】甘蔗 寂樹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 裕香
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄己
(72)【発明者】
【氏名】許 峰
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260BA03
3L260BA07
3L260BA08
3L260BA12
3L260BA27
3L260CA12
3L260CA15
3L260CA16
3L260CA17
3L260CB63
3L260EA07
3L260FA02
3L260FA07
3L260FA08
3L260FB12
3L260FC14
(57)【要約】
【課題】暖房運転において室内にいるユーザに与える不快感を抑制するように空気調和装置を制御する。
【解決手段】冷媒回路を備え冷凍サイクルを実行することで室内空間(S)を空調する空気調和装置(10)を制御する制御装置であって、室内空間(S)の空気温度を室温としたときに、該室温が所定温度以下である第1条件が成立するか否かを判定し、第1条件が成立する場合には、空気調和装置(10)から下方へ吹き出した吹出空気が上昇することを抑える吹出空気の温度、または、吹出空気の温度及び風速で空気を床面に向かって吹き出す第1暖房運転を実行させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒回路を備え冷凍サイクルを実行することで室内空間(S)を空調する空気調和装置(10)を制御する制御装置であって、
前記室内空間(S)の空気温度を室温としたときに、該室温が所定温度以下である第1条件が成立するか否かを判定し、
前記第1条件が成立する場合には、前記空気調和装置(10)から下方へ吹き出した吹出空気が上昇することを抑える吹出空気の温度、または、吹出空気の温度及び風速で空気を床面に向かって吹き出す第1暖房運転を実行させる
制御装置。
【請求項2】
前記第1暖房運転は、前記室温と設定温度とに基づいて定まる前記吹出空気の温度の制御範囲よりも低い温度の空気を前記空気調和装置(10)から吹き出す
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1条件が成立した場合の前記室温を第1室温としたときに、
前記第1室温と、該第1室温の時に吹き出した前記吹出空気の温度とに基づいて取得される前記第1室温の変化を示す所定のデータに基づいて前記第1暖房運転を実行させる
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記所定のデータは、さらに前記吹出空気の風速、または、前記吹出空気が吹き出される前記室内空間(S)内の位置に基づいて取得される
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記所定のデータは、前記第1室温が低いほど、前記吹出空気の温度が低くなるように生成される
請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記空気調和装置(10)は、前記室内空間(S)へ空気を吹き出す吹出口(47)が設けられた室内ユニット(40)を備え、
前記室内ユニット(40)は、前記吹出口(47)に設けられ、風向を調節する風向調節部(57)を有し、
前記第1暖房運転では、前記室内空間(S)の温度分布に応じて前記風向調節部(57)が制御される
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項7】
前記第1暖房運転は、前記室内空間(S)の床面から1.6m以下の空気温度を前記室温として実行される
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項8】
第1期間中の前記室内空間(S)の空気の総熱量が、該第1期間中に前記空気調和装置(10)が処理した空気の総熱量よりも低い第2条件を判定すると、前記吹出空気の温度を低下させる第1制御モードをさらに備える
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項9】
第1期間中の前記室内空間(S)の空気の総熱量が、該第1期間中に前記空気調和装置(10)が処理した空気の総熱量よりも低い第2条件を判定すると、前記吹出空気の風速を上昇させる第1制御モードをさらに備える
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項10】
前記第1暖房運転の実行後、前記室温が設定温度よりも低い場合、前記第1暖房運転を継続またはさらに実行させる
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項11】
前記室内空間(S)を換気する換気装置(70)を制御し、
前記第1暖房運転の実行中に、前記室内空間(S)内の二酸化炭素濃度が所定値以下となる第3条件の成立を判定すると、前記換気装置(70)の運転を停止または換気する空気量を低下させる第2制御モードを有する
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項12】
前記空気調和装置(10)は、前記室内空間(S)に空気を搬送する搬送器(52)を備え、前記室内空間(S)の上方から下方に向かって吹き出し、
前記空気調和装置(10)が暖房運転中にサーモオフを行う第2期間において、前記搬送器(52)が運転する送風運転を実行させる第3制御モードを有する
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項13】
前記空気調和装置(10)は、前記室内空間(S)に空気を搬送する搬送器(52)を備え、
同一の前記室内空間(S)を空調する複数の前記空気調和装置(10)を制御し、少なくとも1つの前記空気調和装置(10)が暖房運転を実行している間、他の少なくとも1つの前記空気調和装置(10)に対して前記搬送器(52)を運転する送風運転を実行させる第4制御モードを有する
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項14】
請求項1または2に記載の制御装置を備えた空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置および空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の空気調和装置は、床温度センサを備え、床温度に基づいて天井付近の暖気溜まりや足元の冷えを解消する暖房モードを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、室内の空気温度が比較的低い場合において空気調和装置から暖風を床面に向かって吹き下ろすと、暖風のもつ浮力によって暖かい空気は床面に届く前に天井に向かって上昇してしまう場合がある。この場合、床面に比較的近い位置では十分に暖まるまで時間を要し、室内にいる居住者に不快感を与えてしまう。
【0005】
本開示の目的は、暖房運転において室内にいるユーザに与える不快感を抑制するように空気調和装置を制御することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、
冷媒回路を備え冷凍サイクルを実行することで室内空間(S)を空調する空気調和装置(10)を制御する制御装置であって、
前記室内空間(S)の空気温度を室温としたときに、該室温が所定値以下である第1条件が成立するか否かを判定し、
前記第1条件が成立する場合には、前記空気調和装置(10)から下方へ吹き出した吹出空気が上昇することを抑える吹出空気の温度、または、吹出空気の温度及び風速で空気を床面に向かって吹き出す第1暖房運転を実行させる。
【0007】
第1の態様では、室温が所定温度以下になったときに第1暖房運転を実行させることで空気調和装置(10)から室内空間(S)の下方へ吹き出された空気は床面まで届きやすくなる。これにより、室内空間(S)の床面まで比較的早く暖かい空気を届けることができる。例えば、室内空間(S)の空気温度が比較的低い場合において、居室者が暖房運転の開始から暖かい空気を感じるまでの時間を短縮でき、居室者が感じる不快感を抑制できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、
前記第1暖房運転は、前記室温と設定温度とに基づいて定まる前記吹出空気の温度の制御範囲よりも低い温度の空気を前記空気調和装置(10)から吹き出す。
【0009】
第2の態様では、空気調和装置(10)が室温と設定温度とに基づいて定まる吹出温度で運転する暖房運転を通常の暖房運転とした場合、第1暖房運転における吹出空気の温度は、通常の暖房運転の吹出空気の温度の制御範囲よりも低いため、吹き出された空気に作用する浮力を低減できる。これにより、吹き出された空気の上昇を抑えることができ、通常の暖房運転を実施する場合よりも早く床面まで暖風を届けることができる。
【0010】
第3の態様は、第1または第2の態様において、
前記第1条件が成立した場合の前記室温を第1室温としたときに、
前記第1室温と、該第1室温の時に吹き出した前記吹出空気の温度とに基づいて取得される前記第1室温の変化を示す所定のデータに基づいて前記第1暖房運転を実行させる。
【0011】
第3の態様では、例えば所定のデータに基づいて第1室温からの温度上昇が最も高くなる吹出空気の温度を選択することで、室内空間(S)をより早く暖めることができる。また、所定のデータに基づいて第1室温から温度上昇する吹出温度の中から比較的低い吹出温度を選択することで、より早く床面まで暖風を届けることができると共に、消費電力を抑えることができる。
【0012】
第4の態様では、第3の態様において、
前記所定のデータは、さらに前記吹出空気の風速、または、前記吹出空気が吹き出される前記室内空間(S)内の位置に基づいて取得される。
【0013】
第4の態様では、第3の態様による第1データよりもパラメータが増えるため、高精度に第1室温からの温度上昇の度合いを把握できる。
【0014】
第5の態様は、第3または第4の態様の態様において、
前記所定のデータは、前記第1室温が低いほど、前記吹出空気の温度が低くなるように生成される。
【0015】
第5の態様では、第1室温と空気調和装置(10)の吹出空気の温度との差を小さくできる。これにより、吹出空気に働く浮力を低減できる。
【0016】
第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、
前記空気調和装置(10)は、前記室内空間(S)へ空気を吹き出す吹出口(47)が設けられた室内ユニット(40)を備え、
前記室内ユニット(40)は、前記吹出口(47)に設けられ、風向を調節する風向調節部(57)を有し、
前記第1暖房運転では、前記室内空間(S)の温度分布に応じて前記風向調節部(57)が制御される。
【0017】
第6の態様では、例えば室内空間(S)において周囲よりも空気温度が低い場所に吹出口(47)からの空気が届くように風向調節部(57)を制御することができ、室内空間(S)の空気温度のムラを抑えると共に速やかに室温を設定温度にすることができる。
【0018】
第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、
前記第1暖房運転は、前記室内空間(S)の床面から1.6m以下の空気温度を前記室温として実行される。
【0019】
第7の態様では、床面から1.6m以下の空気温度は、室内空間(S)の居室者のいる高さの温度である。このような温度を室温として第1暖房運転を実行させることで、居室者へ暖かい空気を速やかに届けることができる。
【0020】
第8の態様は、第1~7の態様のいずれか1つにおいて、
第1期間中の前記室内空間(S)の空気の総熱量が、該第1期間中に前記空気調和装置(10)が処理した空気の総熱量よりも低い第2条件を判定すると、前記吹出空気の温度を低下させる第1制御モードをさらに備える。
【0021】
第8の態様では、第2条件が成立した場合、周囲よりも暖かい空気は室内空間(S)の上部に溜まっていることが推測される。この場合、空気調和装置(10)から吹き出す空気の温度を低下させることで、室内空間(S)の上部に溜まった暖かい空気を下部へ送ることができる。
【0022】
第9の態様は、第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、
第1期間中の前記室内空間(S)の空気の総熱量が、該第1期間中に前記空気調和装置(10)が処理した空気の総熱量よりも低い第2条件を判定すると、前記吹出空気の風速を上昇させる第1制御モードをさらに備える。
【0023】
第9の態様では、空気調和装置(10)から室内空間(S)へ吹き出す空気の風速を増大させることで、室内空間(S)の上部に溜まった暖かい空気を下部へ届けることができる。
【0024】
第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか1つにおいて、
前記第1暖房運転の実行後、前記室温が設定温度よりも低い場合、前記第1暖房運転を継続またはさらに実行させる。
【0025】
第10の態様では、第1暖房運転を実行しても室温が設定温度に達していない場合、さらに第1暖房運転を継続したり、再度第1暖房運転を実行させることで、室温を設定温度に速やかに近づけることができる。
【0026】
第11の態様は、第1~第10の態様のいずれか1つにおいて、
前記室内空間(S)を換気する換気装置(70)を制御し、
前記第1暖房運転の実行中に、前記室内空間(S)内の二酸化炭素濃度が所定値以下となる第3条件の成立を判定すると、前記換気装置(70)の運転を停止または換気する空気量を低下させる第2制御モードを有する。
【0027】
第11の態様では、室内空間(S)の二酸化炭素濃度が所定値以下である場合、室内空間(S)の換気を不要または低下させてよいと推測されるため、室内空間(S)を設定温度まで早く暖めることを優先して行うことができる。
【0028】
第12の態様は、第1~第11の態様のいずれか1つにおいて、
前記空気調和装置(10)は、前記室内空間(S)に空気を搬送する搬送器(52)を備え、前記室内空間(S)の上方から下方に向かって吹き出し、
前記空気調和装置(10)が暖房運転中にサーモオフを行う第2期間において、前記搬送器(52)を運転する送風運転を実行させる第3制御モードを有する。
【0029】
第12の態様では、サーモオフが実行されるとき室内空間(S)の空気温度は設定温度付近に達していると推測される。この場合、暖かい空気は室内空間(S)の上部に溜まりやすいため、第4制御モードを実行させることで暖かい空気を室内空間(S)の下部へ届けることができる。
【0030】
第13の態様は、第1~第12の態様のいずれか1つにおいて、
前記空気調和装置(10)は、前記室内空間(S)に空気を搬送する搬送器(52)を備え、
同一の前記室内空間(S)を空調する複数の前記空気調和装置(10)を制御し、少なくとも1つの前記空気調和装置(10)が暖房運転を実行している間、他の少なくとも1つの前記空気調和装置(10)に対して前記搬送器(52)を運転する送風運転を実行させる第4制御モードを有する。
【0031】
第13の態様では、暖房運転中に他の1つの空気調和装置が送風運転を行うことで室内空間(S)の温度ムラを抑制できる。
【0032】
第14の態様は、第1~第13の態様のいずれか1つの制御装置を備えた空気調和装置である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、実施形態に係る空気調和装置の配管系統図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る室内ユニットの内部構造を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、空調制御部と各種の機器との関係とを示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る制御データを示す図である。
【
図5】
図5は、室内空間(S)の空気温度の時間変化を、第1暖房運転を実行した場合と通常モードを実行した場合とで比較したグラフである
【
図6】
図6は、第1暖房運転を実行する場合の第1制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1制御モードを実行する場合の第1制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、変形例1に係る第1制御部が行う第1制御モードを説明する図である。
【
図9】
図9は、変形例3に係る第1制御部の動作を説明する図である。
【
図10】
図10は、変形例3に係る第1制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、変形例4に係る第1制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、変形例6に係る制御装置と空気調和装置との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下に説明する各実施形態、変形例、その他の例等の各構成は、本発明を実施可能な範囲において、組み合わせたり、一部を置換したりできる。
【0035】
(1)空気調和装置の全体構成
図1及び
図2に示すように、空気調和装置(10)は、冷媒回路(11)を備え、冷凍サイクルを実行することで室内空間(S)を空調する。空気調和装置(10)は、空気を搬送する室内ファン(52)を備え、該室内ファン(52)に搬送された空気を室内空間(S)に吹き出す。具体的に、空気調和装置(10)は、室外ユニット(20)と室内ユニット(40)と液連絡配管(12)とガス連絡配管(13)とを備える。室外ユニット(20)と室内ユニット(40)とは、液連絡配管(12)及びガス連絡配管(13)を介して互いに接続される。これらが接続されることにより、冷媒回路(11)が構成される。
【0036】
冷媒回路(11)には、冷媒が充填される。冷媒回路(11)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。冷媒回路(11)は、主として、圧縮機(21)と室外熱交換器(22)と室外膨張弁(23)と室内熱交換器(53)と四方切換弁(25)とを有する。
【0037】
(2)室外ユニット
室外ユニット(20)は、室外に設置される。室外ユニット(20)は、圧縮機(21)、室外熱交換器(22)、室外ファン(26)、室外膨張弁(23)、および四方切換弁(25)を有する。
【0038】
圧縮機(21)は、吸入された低圧のガス冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を吐出する。圧縮機(21)は、インバータ回路から電動機へ電力が供給される、可変容量式である。
【0039】
室外熱交換器(22)は、室外ファン(26)が搬送する室外空気と、冷媒とを熱交換させる。室外ファン(26)は、室外熱交換器(22)を通過する室外空気を搬送する。
【0040】
室外膨張弁(23)は、冷媒を減圧する。室外膨張弁(23)は、開度が調節可能な電動膨張弁である。
【0041】
四方切換弁(25)は、4つのポート(P1~P4)を有する。第1ポート(P1)は圧縮機(21)の吐出部に繋がる。第2ポート(P2)は圧縮機(21)の吸入部に繋がる。第3ポート(P3)は室外熱交換器(22)のガス端部に繋がる。第4ポート(P4)はガス連絡配管(13)に繋がる。
【0042】
四方切換弁(25)は、第1状態(
図1の実線で示す状態)と、第2状態(
図1の破線で示す状態)とに切り換わる。第1状態では、室内熱交換器(53)を蒸発器とする冷凍サイクルが実行される。第2状態では、室内熱交換器(53)を放熱器とする冷凍サイクルが実行される。
【0043】
(2)室内ユニット
室内ユニット(40)は、室内空間(S)の天井に設置される天井埋込式である。室内ユニット(40)は、ケーシング(41)、風向調節部(57)、ベルマウス(51)と、室内ファン(52)、室内熱交換器(53)、ドレンパン(54)および室内膨張弁(55)を有する。室内ユニット(40)は、室内空気を吸い込む吸込口(46)と、室内へ空気を吹き出す吹出口(47)とを有する。吸込口(46)及び吹出口(47)は下方に向かって開口する。
【0044】
(2―1)ケーシング
ケーシング(41)は、室内空間(S)の天井に形成された開口(63a)に配置される。ケーシング(41)内には、吸込口(46)と吹出口(47)とを連通する空気通路(48)が形成される。ケーシング(41)は、ケーシング本体(42)と、パネル(43)および吸込グリル(43b)を有する。
【0045】
ケーシング本体(42)は、概ね箱状に形成される。ケーシング本体(42)は、下方に開放された開口を有する。開口はケーシング本体の下面の概ね全域に亘って形成される。ケーシング本体(42)は天井裏の空間に配置される。
【0046】
パネル(43)は、ケーシング本体(42)の開口を覆うように設けられる。パネル(43)には、吸込口(46)および吹出口(47)が配置される。吹出口(47)は吸込口(46)の周囲に配置される。具体的に、パネル(43)は、枠状のフレーム部(43a)、および該フレーム部(43a)の内側に収まる吸込グリル(43b)を有する。フレーム部(43a)の内枠は矩形に形成されており、吹出口(47)はフレーム部(43a)の内枠に沿って設けられる。吸込口(46)には吸込グリル(43b)が設けられている。吸込グリル(43b)は、室内空間(S)と吸込口(46)とを連通する。吸込グリル(43b)にはフィルタ(50)が設けられる。フィルタ(50)は、吸込口(46)から吸い込まれる空気である吸込空気中の塵埃を捕集する。
【0047】
(2-2)風向調節部
風向調節部(57)は、吹出口(47)から吹き出す空気の風向を調節する。風向調節部(57)は、フラップ(57a)、駆動軸(57b)およびモータ(図示省略)を有する。フラップ(57a)は、細長の板状に形成される。フラップ(57a)は、吹出口(47)に配置される。フラップ(57a)は、吹出口(47)を塞ぐように設けられる。駆動軸(57b)は、フラップ(57a)を回動させる。駆動軸(57b)が回転することで、フラップ(57a)の姿勢は吹出口(47)を閉鎖する閉位置と吹出口(47)を開放する開位置とに変化する。モータは、駆動軸(57b)の回転を制御する。具体的に、モータは、フラップ(57a)が複数の特定の姿勢を維持するように駆動軸(57b)を制御する。言い換えると、モータは、フラップ(57a)の姿勢を複数の開位置に変化させる。複数の開位置は例えば、風向が概ね真下に吹く第1位置、風向が斜め下を向く第2位置、および風向が概ね水平に向く第3位置である。
【0048】
(2-3)ベルマウス
ベルマウス(51)は、空気通路(48)に配置される。ベルマウス(51)は、フィルタ(50)の上方に配置される。ベルマウス(51)は吸込空気を整流する。
【0049】
(2-4)室内ファン
室内ファン(52)は、ベルマウス(51)の上方に配置される。室内ファン(52)は、遠心式である。室内ファン(52)は、空気通路(48)における室内熱交換器(53)の上流側に配置される。室内ファン(52)は、室内熱交換器(53)を通過する空気を搬送する。室内ファン(52)は、空気を搬送する搬送器(52)の一例である。室内ファン(52)の回転数は可変である。室内ファン(52)は、複数段階の回転数に制御される。室内ファン(52)の回転数を制御することで、吹出口(47)から吹き出される空気(以下、吹出空気と呼ぶ場合がある)の風速が調節される。吹出空気の風速は、吹出空気の風量と同義とする。
【0050】
(2-5)室内熱交換器
室内熱交換器(53)は、室内ファン(52)の周囲に配置される。室内熱交換器(53)では、室内ファン(52)が搬送する空気と、冷媒とが熱交換する。
【0051】
(2-6)ドレンパン
ドレンパン(54)は、室内熱交換器(53)の下側に配置される。ドレンパン(54)は、室内ユニット(40)のケーシング(41)の内部で発生した結露水を受ける。ドレンパン(54)に溜まった水は、ドレン管(図示省略)を介して外部へ排出される。
【0052】
(2-7)室内膨張弁
室内膨張弁(55)は、冷媒を減圧する。室内膨張弁(55)は、開度が調節可能な電動膨張弁である。
【0053】
(2-7)温度センサ
図3に示すように、空気調和装置(10)は、室温センサ(81)を有する。室温センサ(81)は、室内空間(S)の空気温度を検出する。室温センサ(81)は、室内空間(S)の床面から0.3mの高さ位置に配置される。室温センサ(81)は、床面から0.3mの高さにあればよく、室内空間(S)の壁面に配置されてもよいし、室内ユニット(40)の真下に配置されていてもよいし、室内空間(S)に配置される机などの家具に配置されてもよい。なお、以下の説明において室内空間(S)の空気温度を単に室温と呼ぶ場合がある。
【0054】
(3)リモートコントローラ
空気調和装置(10)は、リモートコントローラ(60)を有する。リモートコントローラ(60)は、空気調和装置(10)を操作するための機器である。リモートコントローラ(60)は、第1操作部(61)および第1表示部(62)を有する。
【0055】
第1操作部(61)は、人が空気調和装置(10)に対する各種の指示を入力するための機能部である。第1操作部(61)は、スイッチ、ボタン、またはタッチパネルを含む。第1表示部(62)は、空気調和装置(10)に対する設定内容や、空気調和装置(10)の状態を表示する。
【0056】
(4)空調制御部
空気調和装置(10)は、空調制御部(AC)を有する。空調制御部(AC)は、空気調和装置(10)の動作を制御する。空調制御部(AC)は、第1制御部(C1)、第2制御部(C2)、第3制御部(C3)、第1通信線(W1)および第2通信線(W2)を含む。第1制御部(C1)、第2制御部(C2)、第3制御部(C3)のそれぞれは、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。
【0057】
第1制御部(C1)は、圧縮機(21)、四方切換弁(25)、室外膨張弁(23)、室外ファン(26)を制御する。本実施形態では、第1制御部(C1)は制御装置(C)の一例である。
【0058】
第2制御部(C2)は、室内膨張弁(55)および室内ファン(52)を制御する。第3制御部(C3)は、第1操作部(61)の入力に基づく指示を第2制御部(C2)に出力する。
【0059】
第3制御部(C3)は、第1操作部(61)の入力に応じて第1表示部(62)に所定の情報を表示させる。
【0060】
(5)運転動作
空気調和装置(10)の運転動作について
図1を参照しながら説明する。空気調和装置(10)は、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行う。なお、
図1では、冷房運転時の冷媒の流れを実線矢印で示し、暖房運転時の冷媒の流れを破線矢印で示している。
【0061】
(5-1)冷房運転
冷房運転では、第1制御部(C1)が圧縮機(21)および室外ファン(26)を運転させ、四方切換弁(25)を第1状態とし、室外膨張弁(23)を全開とする。第2制御部(C2)が室内ファン(52)を運転させ、室内膨張弁(55)を所定開度に調節する。
【0062】
冷房運転時の冷媒回路(11)は、第1冷凍サイクルを行う。第1冷凍サイクルでは、室外熱交換器(22)が放熱器(厳密には、凝縮器)として機能し、室内熱交換器(53)が蒸発器として機能する。
【0063】
具体的には、圧縮機(21)で圧縮された冷媒は、室外熱交換器(22)を流れる。室外熱交換器(22)では、冷媒が室外空気へ放熱して凝縮する。室外熱交換器(22)で凝縮した冷媒は、液連絡配管(12)を介して室内ユニット(40)に流入する。室内ユニット(40)では、冷媒が室内膨張弁(55)で減圧された後、室内熱交換器(53)を流れる。室内熱交換器(53)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。各室内熱交換器(53)で蒸発した冷媒は、ガス連絡配管(13)を介して再び圧縮機(21)に吸入される。
【0064】
(5-2)暖房運転
暖房運転では、第1制御部(C1)が圧縮機(21)および室外ファン(26)を運転させ、四方切換弁(25)を第2状態とし、室外膨張弁(23)を所定開度に調節する。第2制御部(C2)が室内ファン(52)を運転させ、室内膨張弁(55)を所定開度に調節する。
【0065】
暖房運転時の冷媒回路(11)は、第2冷凍サイクルを行う。第2冷凍サイクルでは、室内熱交換器(53)が放熱器(厳密には、凝縮器)として機能し、室外熱交換器(22)が蒸発器として機能する。
【0066】
具体的には、圧縮機(21)で圧縮された冷媒は、ガス連絡配管(13)を介して、室内ユニット(40)に流入する。室内ユニット(40)では、冷媒が室内熱交換器(53)を流れる。室内熱交換器(53)では、冷媒が室内空気に放熱して凝縮する。各室内熱交換器(53)で凝縮した冷媒は、各室内膨張弁(55)で減圧されたのち、液連絡配管(12)に流れる。液連絡配管(12)の冷媒は、室外膨張弁(23)で減圧された後、室外熱交換器(22)を流れる。室外熱交換器(22)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(22)で蒸発した冷媒は、圧縮機(21)に吸入される。
【0067】
(6)暖房運転における課題
一般に、暖房運転時の空気調和装置は、室温が速やかに設定温度に達するように暖房能力を増大させて運転する。例えば、空気調和装置は、暖房能力の最大となる吹出温度および風速で室内ユニットから空気を吹き出すように制御される。
【0068】
ここで、室内ユニットから吹き出す暖かい空気には、室内空間の冷えた空気に対して浮力が働く。そのため、吹出空気は室内空間の床面に達する前に天井に向かって上がってしまい、床面付近には室内ユニットから吹き出される温風が届きにくいことが知見として得られた。室内空間において温度の高い上方から下方へ向かって温度が伝わることで床面付近の空気温度は徐々に上昇するが、室温が設定温度に達するまで時間を要してしまう。これでは、冬期など外気温度が比較的低い時期において、居住者(ユーザ)が起床した時や外出先から帰ってきた時に暖房運転を開始しても、室内空間の床面付近の空気温度が上昇するまで時間がかかりユーザに対して不快感を与えてしまうことになる。
【0069】
このような課題に対して、本開示の空気調和装置は第1暖房運転を行う。第1暖房運転により、室内ユニット(40)から吹き出した吹出空気が上昇することを抑えられ、室内空間(S)の床面にまで吹出空気が届きやすくなる。以下、第1暖房運転の一例について説明する。
【0070】
(7)第1暖房運転
第1暖房運転は、第1制御部(C1)により実行される。第1暖房運転は、室温が所定温度以下である第1条件が成立する場合、室内ユニット(40)から吹き出した吹出空気が上昇することを抑える吹出空気の温度および風速で空気を床面に向かって吹き出す運転である。
【0071】
所定温度は、例えば20℃である。所定温度は、10℃以上20℃未満の間の温度であってもよいし、5℃以上10℃未満の間の温度であってもよい。
【0072】
室温は、室温センサ(81)が検出する温度である。すなわち、室温は床面から0.3mの高さ位置の空気温度である。第1制御部(C1)は、暖房運転開始時の室温を検出する。
【0073】
第1条件が成立するか否かは、第1制御部(C1)により判定される。具体的に、第1制御部(C1)は、室温センサ(81)から出力される温度情報に基づいて、第1条件が成立するか否かを判定する。
【0074】
第1条件が成立しない場合、すなわち、室温が所定温度より高い場合、第1制御部(C1)は通常の暖房運転を実行させる。通常の暖房運転では、空気調和装置(10)は、室温が設定温度に達するように、室温と設定温度とに基づいて定まる吹出空気の温度の制御範囲の最大値に相当する温度の空気を室内ユニット(40)から吹き出す。一方、第1条件が成立した場合、第1制御部(C1)は、室内ユニット(40)から吹き出す吹出空気を、通常の暖房運転時の吹出空気の温度の制御範囲の最大値に相当する温度よりも低くする。
【0075】
例えば、所定温度を15℃とし、室温の設定温度を27℃とする。この場合、室温が15℃以下であると第1条件が成立するが、仮に第1暖房運転が実行されず通常の暖房運転が実行される場合、空気調和装置(10)は室温15℃および設定温度27℃に基づいて定まる吹出空気の温度の制御範囲の最大値に相当する温度(例えば43℃)の空気を室内ユニット(40)から吹き出すところ、第1暖房運転が実行される場合、空気調和装置(10)は43℃よりも低い温度(例えば40℃)の空気を室内ユニット(40)から吹き出す。
【0076】
(8)制御データ
第1制御部(C1)は、制御データに基づいて第1暖房運転を実行させる。制御データは、第1条件が成立した場合の室温を第1室温としたときに、第1室温と該第1室温時に吹き出した吹出空気の温度に基づいて取得される第1室温の変化を示すデータである。制御データは、所定のデータの一例である。制御データは、第1制御部(C1)のメモリデバイスに記憶される。
【0077】
図4は、可視化した制御データの一例を示す。制御データは、第1データ、第2データおよび第3データを有する。各データは、複数の室温(10℃乃至20℃)と複数の吹出空気の温度(43℃乃至28℃)との関係を示す。具体的に、各データは、第1条件成立時に吹出空気が吹き出されたとき、床面から0.3mの高さの空気温度が所定温度(Δt)以上に達した場合の吹出空気の温度条件を「〇」で示し、Δt未満となる吹出空気の温度条件を「×」で示す。第1データは、風速が「強」の場合の制御データであり、第2データは、風速が「中」の場合の制御データであり、第3データは、風速が「弱」の場合の制御データである。例えば第1データにおいて、第1条件成立時の室温が14℃のとき、14℃からΔt度上昇する「〇」となる吹出空気の温度条件は、34℃、31℃、28℃または25℃である。すなわち、第1条件成立時の室温が14℃のとき、吹出空気の温度条件が34℃、31℃、28℃または25℃、かつ、風速条件が「強」で第1暖房運転が実行される。これにより、吹出空気が床面から0.3mの高さ位置に届いていることがわかる。
【0078】
このように第1暖房運転では、第1制御部(C1)は、制御データに基づいて第1条件成立時の室温において「〇」を示す吹出空気の温度および風速を選択し、選択された吹出空気の温度および風速で吹き出すように空気調和装置(10)を運転する。「〇」を満たす吹出温度は、同じ室温で通常運転を実行した場合の吹出空気の温度の制御範囲の最大値よりも低い。なお、「〇」を示す吹出空気の温度および風速が複数ある場合、その中から最も消費電力の低い吹出空気の温度および風速が選択されてもよいし、最も早く室温が上昇する、または、室温が設定温度に達する吹出空気の温度および風速が選択されてもよい。
【0079】
制御データは、第1室温が低いほど、吹出空気の温度が低くなるように生成される。本実施形態では、制御データは第1室温が低くなるほど、吹出空気の最大温度が低くなるように生成されている。具体的に、「第1室温が低い」とは、例えば、設定温度よりも第1室温が低いことを指す。言い換えると、「第1室温が低い」とは、設定温度と第1室温との差が大きくなることを指す。これは、先に説明したように第1条件の成立時の室温と吹出空気の温度との差が大きいほど、吹出空気は浮力によって床面まで届きにくくなることによる。従って、第1条件成立時の室温(第1室温)と吹出空気の温度との差を小さくすることで、室内空間(S)の下方へ吹き出された空気の上昇が抑制されて、吹出空気が床面まで届きやすくなる。
【0080】
図5に示すように、第1暖房運転を実行した場合(実線)の方が通常モードを実行した場合(破線)と比べて早く室温が設定温度に達したことがわかる。通常モードは、空気調和装置の暖房能力の制御範囲の最大値で運転するモードである。
【0081】
このような制御データは、所定の実験やシミュレーションの結果に基づいて作成されてもよい。以下に実験の一例を示す。所定の広さの室内空間の天井に室内ユニットと、床面から0.3mの高さ位置に温度センサとを設ける。この室内空間は、所定の熱貫流率を有する。第1条件成立時の3つの室温を設定する(例えば、10℃、12℃、14℃)。各室温に対して、吹出空気の温度条件を4つに設定(例えば、40℃、36℃、32℃、28℃)し、さらに、吹出空気の温度条件のそれぞれに対して吹出空気の風速条件を3つに設定(強、中、弱)する。この場合、3つの室温×4つの吹出空気の温度条件×3つの吹出空気の風速条件=36通りの各条件について暖房運転を実行した。このときの風向は概ね真下を向いている。制御データは、この36通りの各条件について取得された室温が、第1条件成立時の室温からどの程度上昇したかを評価することで作成される。吹出空気の温度は、室内ユニットの吹出口に温度センサを設けることで測定されてもよい。
【0082】
(9)第1制御部の動作
図6を参照しながら、第1暖房運転を実行させる場合の第1制御部(C1)の動作について説明する。なお、
図6に示すフローチャートの途中でリモートコントローラ(60)から運転停止の指令が送信されたとき、第1制御部(C1)の動作は終了する。
【0083】
ステップS11では、第1制御部(C1)は、リモートコントローラ(60)から暖房運転の開始の指令を受信したか否かを判定する。暖房運転の開始の指令を受信したと判定された場合(ステップS11のYES)、ステップS12が実行される。暖房運転の開始の指令を受信していないと判定された場合(ステップS11のNO)、再びステップS11が実行される。
【0084】
ステップS12では、第1制御部(C1)は、第1条件が成立したか否かを判定する。具体的に、第1制御部(C1)は、暖房運転開始時の室温センサ(81)から取得した温度が20℃以下であるか否かを判定する。第1条件が成立したと判定された場合(ステップS12のYES)、ステップS13が実行される。第1条件が成立していないと判定された場合(ステップS12のNO)、第1暖房運転は実行されず通常の暖房運転を開始する。
【0085】
ステップS13では、第1制御部(C1)は、室温センサ(81)から取得した温度に基づいて、制御データから条件を満たした運転条件は1つであるか判定する。「条件を満たした運転条件」は、制御データのうち「〇」を示す吹出空気の温度および風速を指す。条件を満たした運転条件が1つであると判定された場合(ステップS13のYES)、ステップS14が実行される。条件を満たす運転条件が1つでない、すなわち条件を満たした運転条件が複数あると判定された場合(ステップS13のNO)、ステップS15が実行される。
【0086】
ステップS14では、第1制御部(C1)は、運転条件を選択する。
【0087】
ステップS15では、第1制御部(C1)は、条件を満たす複数の運転条件のうち室温が最も早く上昇する運転条件を選択する。これにより、速やかに吹出口(47)から吹き出した暖かい空気をユーザの足元に届けることができる。
【0088】
ステップS16では、第1制御部(C1)は、ステップS14またはステップS15で選択された運転条件に基づいて第1暖房運転を実行させる。
【0089】
ステップS17では、第1制御部(C1)は、室温が設定温度に達したか否かを判定する。室温が設定温度に達したと判定された場合(ステップS17のYES)、ステップS18が実行される。室温が設定温度に達していないと判定された場合(ステップS17のNO)、第1暖房運転はさらに実行(継続)され、再びステップS17が実行される。
【0090】
ステップS18では、第1制御部(C1)は、第1暖房運転の実行を終了する。その後通常の暖房運転が実行される。
【0091】
(10)特徴
(10-1)特徴1
本実施形態の第1制御部(C1)は、室温が所定温度以下である第1条件が成立するか否かを判定し、第1条件が成立する場合には空気調和装置(10)から下方へ吹き出した吹出空気が上昇することを抑える吹出空気の温度及び風速で空気を床面に向かって吹き出す第1暖房運転を実行させる。
【0092】
本実施形態によると、第1暖房運転を実行させることで室内空間(S)の床面まで比較的早く暖風を届ける。これにより、例えば室温が比較的低い場合において、暖房運転の開始から床面にまで暖風が届くまでの時間を短縮できるため、寒さによるユーザが感じる不快感を抑制できる。また床面付近の空気温度を優先して温めることができるため、ユーザは足元に暖かさを感じることができる。
【0093】
(10-2)特徴2
本実施形態の第1暖房運転は、室温と設定温度とに基づいて定まる吹出空気の温度の制御範囲の最大値よりも低い温度の空気を空気調和装置(10)から吹き出す。
【0094】
本実施形態によると、例えば室温と設定温度とに基づいて定まる吹出空気の温度の制御範囲の最大値に相当する吹出温度で空気を吹き出す運転を通常の暖房運転としたときに、第1暖房運転を実行させることで通常の暖房運転よりも早く暖風を床面上のユーザへ届けることができる。加えて、第1暖房運転では、通常の暖房運転が実行されるときの吹出温度よりも低い温度の吹出空気が吹き出されるため、空気調和装置(10)の消費電力を抑えることができ、省エネルギー化を実現できる。
【0095】
(10-3)特徴3
本実施形態の制御部(C1)は、第1室温と該第1室温時に吹き出した吹出空気の温度に基づいて取得される第1室温の変化を示す所定のデータ(制御データ)に基づいて第1暖房運転を実行させる。
【0096】
実施形態によると、例えば制御データに基づいて第1室温からの温度上昇が最も高くなる吹出空気の温度を選択することで、室内空間(S)はより早く暖めることができる。また、制御データに基づいて第1室温から温度上昇する吹出温度の中から比較的低い吹出温度を選択することで、暖房能力を低減でき消費電力を抑えることができる。このように制御データを用いることで簡便にかつ多様な目的に合った第1暖房運転を実行できる。
【0097】
(10―4)特徴4
本実施形態の制御データは、さらに吹出空気の風速に基づいて取得される。このように制御データにパラメータを加えることで、高精度に第1室温からの温度上昇の度合いを把握できる。
【0098】
(10-5)特徴5
本実施形態の制御データは、第1室温が低いほど、吹出空気の温度が低くなるように生成される。これにより第1室温と空気調和装置(10)の吹出空気の温度との差を小さくでき、吹出空気に働く浮力を低減できる。
【0099】
(10-6)特徴6
本実施形態の第1暖房運転は、室内空間(S)の床面から0.3mの空気温度を室温として実行される。
【0100】
本実施形態によると、床面から0.3mの空気温度は、室内空間(S)にいるユーザが寒暖を感じる温度である。このような温度を室温として第1条件を判定し、第1暖房運転を実行させることで、室内空間(S)のユーザへの快適さを向上できる。
【0101】
(11)変形例
上記実施形態の変形例について説明する。以下では、上記実施形態と異なる構成についてのみ説明し、上記実施形態と同じ構成については説明を省略する。
【0102】
(11-1)変形例1
変形例1に係る第1制御部(C1)は、第1制御モードを有する。第1制御モードは、第1期間中の室内空間(S)の空気の総熱量が、該第1期間中に空気調和装置(10)が処理した空気の総熱量よりも低い第2条件の成立が判定されると、室内ユニット(40)の吹出空気の温度を低下させるモードである。
【0103】
第1期間は、空気調和装置(10)の運転中の任意の期間である。第1期間は、第1暖房運転の実行開始から所定時間の経過時までの期間であってもよいし、第1暖房運転の実行終了後の通常の暖房運転中の期間であってもよい。
【0104】
室内空気の総熱量は、室内空間(S)の容積と、第1期間中の室温の経時変化とに基づいて演算される。本変形例の第1制御部(C1)は演算部(図示省略)を有する。演算部は、室内空間(S)の空気の総熱量を演算処理する。このように、第1制御部(C1)が室内空気の総熱量を演算する。
【0105】
空気調和装置(10)が処理した空気の総熱量は、第1期間中の室内熱交換器(53)の凝縮温度および吹出空気の温度の経時変化に基づいて演算部により演算される。すなわち、第1制御部(C1)が、空気調和装置が処理した空気の総熱量を演算する。空気調和装置が処理した空気の総熱量は、第1期間中の室内熱交換器(53)の凝縮温度、吹出空気の温度および吸込口(46)から吸い込まれた空気の吸い込み量などに基づいて演算されてもよい。
【0106】
図7を用いて、第1制御モードを実行させる場合の第1制御部(C1)の動作について説明する。なお、
図7に示すフローチャートの途中でリモートコントローラ(60)から運転停止の指令が送信されたとき、第1制御部(C1)の動作は終了する。
【0107】
ステップS21では、第1制御部(C1)は、第1期間が経過したか否かを判定する。第1期間が経過したと判定された場合(ステップS21のYES)、ステップS22が実行される。第1期間が経過していないと判定された場合(ステップS21のNO)、ステップS21が再び実行される。
【0108】
ステップS22では、第1制御部(C1)は、第2条件が成立したか否かを判定する。第2条件は、第1期間中の室内空間(S)の空気の総熱量が、該第1期間中に空気調和装置(10)が処理した空気の総熱量よりも低いことを示す条件である。例えば、第1期間中に空気調和装置(10)は7kwに相当する熱量を処理し、実際には室内空間(S)の空気に2kwに相当する熱量が与えられたとする。この場合、
図8に示すように第1期間経過時の予想室温を設定温度とした場合(
図8の破線)、実際の室内空間(S)の温度(
図8の実線)は設定温度よりも低い。このような第2条件が成立したと判定された場合(ステップS22のYES)、ステップS23が実行される。第2条件が成立していないと判定された場合(ステップS22のNO)、第1制御モードは実行されず、空気調和装置(10)は通常の暖房運転を実行させる。
【0109】
ステップS23では、第1制御部(C1)は、吹出口(47)の吹出空気の温度を低下させる第1制御モードを実行させる。
【0110】
ステップS24では、第1制御部(C1)は、室温が設定温度に達したか否かを判定する。室温が設定温度に達したと判定された場合(ステップS24のYES)、ステップS25が実行される。室温が設定温度に達していないと判定された場合(ステップS24のNO)、第1制御モードが継続され、再びステップS24が実行される。
【0111】
ステップS25では、第1制御部(C1)は、第1制御モードの実行を終了する。その後、空気調和装置(10)は、通常の暖房運転を実行させる。
【0112】
このように変形例1では、空気調和装置(10)は、室内空間(S)の上部から下方に向かって吹き出し、制御装置(C)は、第1期間中の室内空間(S)の空気の総熱量が、該第1期間中に空気調和装置(10)が処理した空気の総熱量よりも低い第2条件を判定すると、空気調和装置(10)から室内空間(S)へ吹き出す空気の温度を低下させる第1制御モードをさらに備える。
【0113】
第1制御モードは、空気調和装置(10)の想定通りに室温が上昇しなかった場合に実行される。空気調和装置(10)の想定通りに室温が上昇しなかった場合とは、例えば、室内空間(S)の上部に暖かい空気が溜まることで室内空間(S)に温度ムラが生じている場合や、室内空間(S)の窓や換気扇から外部へ熱が放出されており、室内空間(S)では天井から下方への伝導伝熱だけで室温が暖まる場合などである。このように第1制御モードを実行させることで、室内ユニット(40)の吹出空気の温度を低下させることで、室内空間(S)の上部に溜まった暖かい空気を下部へ送ることができる。
【0114】
(11-2)変形例2
変形例2に係る第1制御部(C1)は、変形例1と異なる第1制御モードを有する。変形例2の第1制御モードは、第2条件の成立が判定されると、室内ユニット(40)の吹出空気の風速を上昇させるモードである。
【0115】
変形例2に係る第1制御部(C1)の動作は、変形例1に係る第1制御部(C1)の動作のステップS23以外同じである。変形例2のステップS23では、第1制御部(C1)は、室内ユニット(40)の吹出空気の風速を上昇させる。
【0116】
このように変形例2では、空気調和装置(10)は、前記室内空間(S)の上部から下方に向かって吹き出し、制御装置(C)は、第1期間中の前記室内空間(S)の空気の総熱量が、該第1期間中に前記空気調和装置(10)が処理した空気の総熱量よりも低い第2条件を判定すると、空気調和装置(10)から室内空間(S)へ吹き出す空気の風速を上昇させる第1制御モードをさらに備える。
【0117】
変形例2の第1制御モードでは、室内空間(S)内の気流による撹拌を利用して、室内空間(S)の温度ムラを抑制し、室温を均一にできる。
【0118】
(11-3)変形例3
変形例3に係る第1制御部(C1)は、第1暖房運転の実行開始後、室温が設定温度に達するまでの間に一定期間ごとに室温の変化を検出し、検出した温度が所定温度に達していない場合、吹出空気の温度または風速を調節する。
【0119】
具体的に
図9に示すように、第1暖房運転開始から所定の温度T(
図9ではT=t3)に達するまでの期間Aが設定され、期間Aは連続するn個(
図9ではn=3)の一定期間a(a1,a2,…an)を有する。各一定期間aの長さは同一である。また、一定期間aの経過時に室温が達すると推定される推定温度t1,t2,…tnが設定される。各推定温度tnは、各一定期間aに対応するように設定される。このように、第1制御部(C1)は、第1暖房運転実行開始から期間Aが経過するまで、各一定期間a経過時に室温が推定温度tnに達していない場合(
図9の実線)、暖房能力を調節する。
【0120】
以下、
図10を用いて変形例3の第1制御部(C1)の動作について説明する。なお、以下の例では、期間Aは3つの期間a(a1,a2,a3)を有する。また、上記実施形態のステップS31~S36は、上記実施形態のステップS11~S16と同じであるため、その説明を省略する。
【0121】
ステップS37では、第1制御部(C1)は、第1暖房運転の実行開始から一定期間a1が経過したか判定する。一定期間a1が経過したと判定された場合(ステップS37のYES)、ステップS38が実行される。一定期間a1が経過していないと判定された場合(ステップS37のNO)、再びステップS37が実行される。
【0122】
ステップS38では、第1制御部(C1)は、室温が推定温度t1未満であるか判定する。室温が推定温度t1未満と判定された場合(ステップS38のYES)、ステップS39が実行される。室温が推定温度t1以上と判定された場合(ステップS38のNO)、ステップS40が実行される。
【0123】
ステップS39では、第1制御部(C1)は、空気調和装置(10)の吹出温度を更に低下させる。ここで、吹出温度の低下の程度は、一定期間a経過時の室温と推定温度tとの差に基づいて決定されてもよいし、一定期間a経過時の室温に関わらず一定であってもよい。
【0124】
ステップS40では、第1制御部(C1)は、一定期間a2が経過したか判定する。一定期間a2が経過したと判定された場合(ステップS40のYES)、ステップS41が実行される。一定期間a2が経過していないと判定された場合(ステップS40のNO)、再びステップS40が実行される。
【0125】
ステップS41では、第1制御部(C1)は、室温が推定温度t2未満であるか判定する。室温が推定温度t2未満と判定された場合(ステップS41のYES)、ステップS43が実行される。室温が推定温度t2以上と判定された場合(ステップS41のNO)、ステップS42が実行される。
【0126】
ステップS42では、第1制御部(C1)は、空気調和装置(10)の吹出空気の温度を低下させる。
【0127】
ステップS43では、第1制御部(C1)は、一定期間a3が経過したか判定する。一定期間a3が経過したと判定された場合(ステップS43のYES)、ステップS44が実行される。一定期間a3が経過していないと判定された場合(ステップS43のNO)、再びステップS43が実行される。
【0128】
ステップS44では、第1制御部(C1)は、室温が設定温度に達しているか判定する。室温が設定温度に達していると判定された場合(ステップS44のYES)、本制御は終了し、空気調和装置(10)は通常の暖房運転を実行させる。室温が設定温度に達していないと判定された場合(ステップS44のNO)、ステップS45が実行される。
【0129】
ステップS45では、第1制御部(C1)は、空気調和装置(10)の吹出空気の温度を低下させる。
【0130】
このように、本変形例では第1暖房運転を実行しても、室内空間(S)の空気温度が設定温度になっていない場合、さらに第1暖房運転を実行させることで、室内空間(S)の空気温度を設定温度に近づけることができる。
【0131】
(11-4)変形例4
図11に示すように、変形例4の第1制御部(C1)は、室内空間(S)に設けられる換気装置(70)を制御する。第1制御部(C1)と換気装置(70)とは、第3通信線(W3)により通信可能に接続される。換気装置(70)は、室内空間(S)の内部と外部と換気できるものであればよい。例えば、換気装置(70)は、外部から室内空間(S)へ給気する給気ファン(図示省略)と室内空間(S)から外部へ排気する排気ファン(図示省略)とを有する。給気ファンおよび排気ファンは、換気装置(70)に設けられる異なる空気通路にそれぞれ配置される。
【0132】
給気ファンおよび排気ファンは、第1制御部(C1)により制御されるファンモータにより駆動される。給気ファンおよび排気ファンの風量は、第1制御部(C1)により制御される。給気ファンおよび排気ファンの風量は同一に調節される。
【0133】
変形例4では、第1制御部(C1)は、室内空間(S)の二酸化炭素濃度を測定する。具体的に、室内空間(S)には二酸化炭素濃度を検出するCO2センサが配置され、CO2センサは第1制御部(C1)と無線または有線により通信可能に接続される。CO2センサは、室内空間(S)の任意の位置に設けてもよいが、好ましくは室温センサの近傍、または室温センサ(81)と同じ床面からの高さ位置に設けられる。
【0134】
変形例4の第1制御部(C1)は、室内空間(S)内の二酸化炭素濃度が所定値以下となる第2条件が成立を判定すると、換気装置(70)の運転を停止させる。ここで、所定値は例えば空気に含まれる平均的な二酸化炭素濃度以上の値であればよい。
【0135】
以下、
図12を用いて変形例4の第1制御部(C1)の動作について説明する。なお、ステップS51~S56は、上記実施形態のステップS11~S16と同じであるため、その説明を省略する。
【0136】
ステップS57では、第1制御部(C1)は、室内空間(S)の二酸化炭素濃度が所定値以下となる第3条件が成立したか判定する。第3条件が成立したと判定された場合(ステップS57のYES)、ステップS58が実行される。第3条件が成立していないと判定された場合(ステップS57のNO)、再度ステップS57が実行される。
【0137】
ステップS58では、第1制御部(C1)は、換気装置(70)の運転を停止する。すなわち、第1制御部(C1)は、換気装置(70)の給気ファンおよび排気ファンの運転を停止させる。
【0138】
ステップS58では、第1制御部(C1)は、給気ファンおよび排気ファンの風量を低下させて、室内空間(S)の空気の換気量を低下させてもよい。
【0139】
このように変形例4では、制御装置(C)は室内空間(S)を換気する換気装置(70)を制御し、第1暖房運転の実行中に、室内空間(S)内の二酸化炭素濃度が所定値以下となる第3条件の成立を判定すると、換気装置(70)の運転を停止または換気する空気量を低下させる第2制御モードを有する。
【0140】
これにより、室内空間(S)の二酸化炭素濃度が所定値以下である場合、室内空間(S)の換気を不要または低下させてよいと推測されるため、室内空間の空気の換気量が概ねゼロとすることで、室内空間(S)を設定温度まで早く暖めることを優先して行うことができる。
【0141】
(11-5)変形例5
変形例5の第1制御部(C1)は、空気調和装置(10)が暖房運転中にサーモオフを行う第2期間において、室内ファン(52)を運転する送風運転を行う第4制御モードを有する。
【0142】
変形例5の第1制御部(C1)は、空気調和装置(10)に対してサーモオフを実行させる。サーモオフは、空気調和装置(10)の運転中に室温が例えば設定温度まで上昇すると、自動的に空気調和装置(10)の運転を一時停止するモードである。サーモオフが実行されると、空気調和装置(10)は室内空間(S)の空調を停止する。具体的に、サーモオフの実行中は、圧縮機(21)は停止し、室内熱交換器(53)は放熱器として機能しないか、または、略機能しない状態にあるため、空気調和装置(10)による室内空間(S)の空調は停止される。
【0143】
一方、サーモオンは、サーモオフの実行中において室温が所定温度になると、自動的に空気調和装置(10)の運転を再開するモードである。具体的に、サーモオンが実行されると、サーモオフ時に停止していた圧縮機(21)または室内ファン(52)の運転が再開される。室内ファン(52)が再開される場合において、圧縮機(21)は通常の能力で運転する。
【0144】
第4制御モードの送風運転では、第1制御部(C1)は、圧縮機(21)を停止した状態で、最小風量よりも大きい風量で室内ファン(52)を運転する。別の言い方をすると、第4制御モードの送風運転において、第1制御部(C1)は、サーモオフの状態で、吹出口(47)の付近の空気が床面に届く風量で室内ファン(52)を運転する。
【0145】
第2期間は、サーモオフとサーモンとを連続して繰り返すこと、室温が設定温度付近で上昇したり下降したりする期間であってもよい。この第2期間では、サーモオフおよびサーモンが連続して実行されることで、室温は設定温度から±2℃の範囲で変化する期間であってもよいし、設定温度から±1.5℃の範囲で変化する期間であってもよいし、設定温度から±1℃の範囲で変化する期間であってもよいし、設定温度から±0.5℃の範囲で変化する期間であってもよい。
【0146】
このように変形例5では、空気調和装置(10)は、室内空間(S)の上方から下方に向かって吹き出し、制御装置(C)は、空気調和装置(10)が、暖房運転中にサーモオフを行う第2期間において、搬送器(52)が運転する送風運転を実行させる、第3制御モードを有する。
【0147】
これにより、サーモオフが実行されるとき室内空間(S)の空気温度は設定温度に達している。この場合暖かい空気は室内空間(S)の上部に溜まりやすいため、第3制御モードを実行することで暖かい空気を下部へ届けることができる。
【0148】
(11-6)変形例6
変形例6では、制御装置(C)は、複数の空気調和装置(10)を制御する。複数の空気調和装置(10)は同一の室内空間(S)を空調する。具体的に、複数の室内ユニット(40)が室内空間(S)に設けられる。複数の室内ユニット(40)はそれぞれ異なる室外ユニット(20)に接続される。本例では、制御装置(C)は、複数の空気調和装置(10)とは別体として設けられる。
【0149】
制御装置(C)は、少なくとも1つの空気調和装置(10)が暖房運転を実行している間、他の少なくとも1つの空気調和装置(10)に対して室内ファン(52)を運転する送風運転を実行させる第4制御モードを有する。
【0150】
例えば
図13に示すように、制御装置(C)は2つの空気調和装置(10)を制御し、該2つの空気調和装置(10)が室内空間(S)を空調するとする。制御装置(C)は、2つの空気調和装置(10)のそれぞれの第1制御部(C1)と第4通信線(W4)により通信可能に接続される。
【0151】
室内空間(S)には2つの室内ユニット(40)が設けられる。2つの空気調和装置(10)の第1暖房運転実行後に、室温が設定温度に達したとする。このとき、制御装置(C)は、一方の空気調和装置(10)は暖房運転を継続させ、他方の空気調和装置(10)は送風運転に切り換える。送風運転では、制御装置(C)は、圧縮機(21)の運転を停止し、室内ファン(52)を所定の風速で運転する。送風運転によって室内空間(S)内を循環する空気の気流が増大し、室温にむらが生じることを抑制できる。
【0152】
別の例では、制御装置(C)は、2つの空気調和装置が一定期間に室内空間(S)の空気を処理した熱量よりも、該一定期間に与えられた室内空間(S)の空気の熱量の方が少ないと判定した場合、一方の空気調和装置(10)は暖房運転を継続させ、他方の空気調和装置(10)は送風運転に切り換える。これにより、暖房運転を継続しつつ、室内空間(S)の上部に溜まった比較的暖かい空気を下方へ降ろすことができる。
【0153】
このように変形例6では、制御装置(C)は、少なくとも1つの空気調和装置(10)が暖房運転を実行している間、他の少なくとも1つの空気調和装置(10)は、搬送器(52)を運転する送風運転を実行させる第4制御モードを有する。
【0154】
(12)その他の実施形態
上記実施形態および上記各変形例は以下のように構成されてもよい。
【0155】
第1暖房運転は、吹出空気の風速を固定し吹出空気の温度のみを制御してもよい。すなわち、第1暖房運転は、空気調和装置(10)から下方へ吹き出した吹出空気が上昇することを抑える吹出空気の温度で空気を床面に向かって吹き出す第1暖房運転を実行してもよい。
【0156】
第1暖房運転において、第1制御部(C1)は、室内空間(S)の温度分布に応じてフラップ(57a)を制御してもよい。温度分布は、例えば複数の室温センサ(81)を室内空間(S)に配置し、複数の室温センサ(81)のそれぞれから取得される温度情報に基づいて生成される。第1制御部(C1)は、生成された温度分布から比較的温度低い位置へ吹出空気が届くようにフラップ(57a)の姿勢を変化させる。これにより、比較的温度の低いところから優先的に温度が上昇することで、室温は速やかに設定温度まで達することができる。
【0157】
制御データは、第1室温、吹出空気の温度および風速に加え、吹出空気が吹き出される位置に基づいて取得されてもよい。吹出口(47)の位置が、例えば床面から高さが高いほど吹出空気が床面まで届きにくくなる。そのため、吹出口(47)の位置も制御データに加えることで、室内ユニット(40)の設置自由度を向上できると共に、第1暖房運転は多様な大きさの室内空間(S)に対応できる。
【0158】
上記実施形態において、第1制御部(C1)は、空気調和装置(10)の暖房運転中に、第1条件の成立を判定すると、第1暖房運転を実行してもよい。
【0159】
上記実施形態および上記各変形例において、第1制御部(C1)が制御装置(C)の一例であると説明したが、第2制御部(C2)または第3制御部(C3)が制御装置(C)であってもよい。すなわち、第2制御部(C2)または第3制御部(C3)が、第1暖房運転、第1制御モード、第2制御モード、第3制御モードまたは第4制御モードを実行してもよい。
【0160】
上記実施形態において、第1制御部(C1)が制御装置(C)の一例であると説明したが、制御装置(C)は、空気調和装置(10)に設けられなくてもよい。例えば、制御装置(C)は、空気調和装置(10)とは別体として設けられ、空気調和装置(10)と通信できればよい。この場合、制御装置(C)は、室外ユニット(20)と通信してもよいし、室内ユニット(40)と通信してもよいし、リモートコントローラ(60)と通信してもよい。より具体的に、空気調和装置(10)がビルに設けられ、室内ユニット(40)が複数の部屋のそれぞれに配置される場合、制御装置(C)は、空気調和装置(10)を集中して管理する集中管理装置に設けられてもよいし、ビル内の照明設備などを管理するBEMS(Building Energy Management System)に設けられてもよい。
【0161】
上記実施形態では、第1暖房運転を実行させる際に、制御データから条件を満たした運転条件を第1制御部(C1)が選択すると説明したがこれに限られない。例えば、ユーザが床面に届いたときの室温を指定し、その指定された室温となるような運転条件(吹出空気の温度および風速)を第1制御部(C1)が選択してもよい。具体例をあげると、ユーザの操作に基づいて床面に届いたときの室温を20℃に設定されたとする。この場合、第1制御部(C1)は、第1条件成立時に制御データから床面に届いたときの空気の温度が20℃となるような運転条件を選択することで第1暖房運転を実行させる。
【0162】
上記実施形態において、制御データは第1制御部(C1)(制御装置(C))に設けられていなくてもよい。例えば、空気調和装置(10)が、クラウドや所定のサーバにと通信可能に接続されている場合、制御データは、このようなクラウドや所定のサーバに設けられていてもよい。
【0163】
上記実施形態において、制御データは、第1室温と設定温度との差に基づいて作成されてもよい。
【0164】
上記実施形態において、第1制御部(C1)は制御データを有さなくてもよい。第1制御部(C1)は、例えば第1室温、吹出空気の温度、風速、および吹出口(47)の位置の関係を示す関係式に基づいて第1暖房運転を実行してもよい。
【0165】
上記実施形態において、第1暖房運転は吹出空気が床面に届く運転としてもよい。この場合、室内空間(S)において、床面から0.1mの高さ位置において風速が0.3m/s以上となる場所があった場合「床面に届く」と判定されてもよい。
【0166】
上記実施形態において、制御データは、機械学習により取得されてもよい。例えば、第1条件が成立したときの室温と、吹出空気の温度および風速とを入力データとし、第1暖房運転を行ったときの室温を教師データとする、いわゆる「教師あり学習」を行うことで所定の推定モデルを生成してもよい。この生成された推定モデルが制御データとなる。なお、入力データには、室内空間(S)における吹出口(47)の位置も含まれてもよい。
【0167】
上記実施形態において、空気調和装置(10)は、製品出荷時に制御データを有していなくてもよい。空気調和装置(10)は、制御データを生成可能な所定のプログラムを有していればよい。
【0168】
空気調和装置(10)は制御装置(C)を有している必要はなく、該制御装置(C)の動作を実行可能なプログラムを有していてもよい。
【0169】
空気調和装置(10)は、いわゆるビルマルチ型であってもよい。すなわち、空気調和装置(10)は、1つの室外ユニット(20)と複数の室内ユニット(40)とが、液連絡配管(12)およびガス連絡配管(13)に接続される構成であってもよい。
【0170】
室内ユニット(40)は、同一の室内空間(S)に複数配置されていてもよい。言い換えると、空気調和装置(10)は、同一の室内空間(S)を空調する室内ユニット(40)が複数備えていてもよい。
【0171】
室内ユニット(40)は、いわゆる壁掛け式のように室内空間の壁面に設けられるものであてもよい。この場合、吹出口(47)は人の高さよりも高い位置にあればよく、例えば2.0m以上の位置にあってもよし、2.5m以上の位置にあってもよいし、3.0m以上の位置にあってもよい。
【0172】
室内ユニット(40)は、吹出口(47)を有していればよく室内熱交換器(53)を有していなくてもよい。例えば、空気調和装置(10)は、ダクトに接続された室内ユニット(40)を有していてもよい。この場合、所定の熱交換器により処理された空気は搬送器(52)によってダクト内を流れ吹出口(47)から吹き出される。このような室内ユニット(40)は室内空間(S)に複数配置されてもよく、各室内ユニット(40)にはダクトが接続される。また、室内ユニット(40)は、可動式のフラップ(57a)を有していなくてもよい。
【0173】
空気調和装置(10)は、室内熱交換器により処理された空気が室内空間(S)へ吹き出す吹出口(47)を有していればよく、室内ユニット(40)を備えていなくてもよい。空気調和装置(10)は室外膨張弁(23)を有さなくてもよい。吹出口(47)は、室内空間(S)の天井または壁に設けられていてもよい。
【0174】
室温は、室内空間(S)の床面から1.6m以下の高さ位置の温度であればよい。室温センサ(81)は、床面から0m、0.6、0.9m、1.2m、1.4mまたは1.6mの高さ位置であってもよい。また、室温センサ(81)は、床面から1.6m以下の高さを有する家具に設けられてもよい。
【0175】
空気調和装置(10)は、間接膨張式であってもよい。例えば空気調和装置(10)は、チリングユニットを備える。空気調和装置(10)の冷媒回路には、圧縮機(21)、室外熱交換器(22)、室外膨張弁(23)、および冷却器(図示省略)が接続される。室内熱交換器(53)を流れる熱媒体は、水やブラインなどの循環液である。循環液は、所定のポンプにより室内熱交換器(53)と冷却器との間を循環する。循環液は冷却器において冷媒と熱交換することで冷却される。
【0176】
第1暖房運転は、運転の停止中に行われてもよい。言い換えると、空気調和装置(10)が通電された状態で運転を停止している場合であっても、第1制御部(C1)は第1条件が成立を判定して第1暖房運転を実行してもよい。
【0177】
上記実施形態において、暖房運転はサーモオフの状態を含んでもよい。言い換えると、サーモオフ状態で第1条件の成立が判定されても、第1暖房運転が実行されてもよい。
【0178】
上記実施形態において、空気調和装置(10)は、床面から0.6mの高さ位置の温度を検出できればよく、この高さ位置に室温センサ(81)が設けられていなくてもよい。例えば、室内ユニット(40)の吸込口(46)の空気温度を検出する温度センサを設け、吸込空気の温度に基づいて床面から0.6mの高さ位置の空気温度を推定してもよい。また、超音波を送受信する装置を設けて、超音波が発信されてから受信するまでの時間と超音波の経路長とに基づいて床面から0.6mの高さ位置の温度を演算してもよい。また、上記実施形態において、室温を検出できない場合であっても、その日の日付、時刻、天気、外気温度、過去の室温情報などに基づいて、第1暖房運転が実行されてもよい。
【0179】
室温センサ(81)は、室内ユニット(40)の吸込口(46)の近傍に設けられていてもよい。この場合、室内ユニット(40)の吸込空気の温度を室温とする。
【0180】
上記実施形態において、第1制御部(C1)は所定期間の間第1暖房運転を実行させるとしてもよい。例えば、ステップS24では、第1制御部(C1)は、第1暖房運転実行開始から所定期間の経過時に第1暖房運転の実行を停止または終了してもよい。この場合、所定期間の経過時に室温が設定温度よりも低い場合、第1暖房運転が再開されてもよい。すなわち、第1制御部(C1)は、第1暖房運転の実行後、室内空間(S)の空気温度が設定温度よりも低い場合、第1暖房運転をさらに実行してもよい。
【0181】
上記変形例1の第1制御部(C1)の動作において、ステップS24では第1制御部(C1)は、室温が設定温度に達していないと判定された場合(ステップS24のNO)、さらに吹出空気の温度を低下させてもよい。
【0182】
空気調和装置(10)は、ユーザの操作に基づいて第1暖房運転、第1制御モード、第2制御モード、第3制御モードまたは第4制御モードの実行の有無を選択できるように構成されてもよい。この場合、例えば第1暖房運転の「ON」がリモートコントローラに入力されると、リモートコントローラ(60)は、第1条件が成立すると第1暖房運転を実行させる指令を第1制御部(C1)へ送る。一方で、第1暖房運転の「ON」がリモートコントローラに入力されない場合、第1条件が成立しても第1制御部(C1)は第1暖房運転を実行しない。
【0183】
上記実施形態において、第1暖房運転により吹き出す空気の温度は、通常の暖房運転の吹出空気の制御範囲よりも低ければよい。例えば、通常の暖房運転において、吹き出す空気の温度の制御範囲の最大値が43℃であるところ41℃で吹き出すと設定されているような場合、第1暖房運転により吹き出す空気の温度は41℃未満であればよい。
【0184】
上記実施形態および上記各変形例において、空気調和装置(10)の運転は、例えばビル内の複数の空気調和装置(10)を集中して管理する集中管理装置により制御されてもよいし、スマートフォンやタブレットのような電子端末により制御されてもよい。
【0185】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0186】
以上説明したように、本開示は、制御装置および空気調和装置について有用である。
【符号の説明】
【0187】
10 空気調和装置
11 冷媒回路
40 室内ユニット
47 吹出口
52 室内ファン(搬送器)
57 風向調節部
70 換気装置
C 制御装置
S 室内空間