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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165970
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】キチン・キトサンの新規な製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/19 20060101AFI20241121BHJP
   C12P 19/26 20060101ALI20241121BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20241121BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20241121BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
C12N1/19 ZNA
C12P19/26
C12N15/31
C12N15/54
C12N15/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082603
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】伊達 理沙
(72)【発明者】
【氏名】福島 翔子
(72)【発明者】
【氏名】蓮沼 誠久
(72)【発明者】
【氏名】秀瀬 涼太
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AF21
4B064CA06
4B064CA19
4B064CA21
4B064CC03
4B064CC06
4B064CC12
4B064CC15
4B064CC24
4B064CD09
4B064CD12
4B064CE06
4B064DA01
4B064DA10
4B064DA16
4B065AA80X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB16
4B065BC03
4B065BC07
4B065BC09
4B065BC26
4B065BD15
4B065BD18
4B065CA19
4B065CA41
4B065CA44
(57)【要約】
【課題】微生物からキチン・キトサンを効率的に回収する方法を提供すること。
【解決手段】キチンを生産する改変された微生物であって、該改変により、非改変微生物に比べて、Cell-wall integrity経路(CWI経路)が活性化され、且つカルシニューリン経路(CN経路)が不活性化されていることを特徴とする、微生物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キチンを生産する改変された微生物であって、
該改変により、非改変微生物に比べて、Cell-wall integrity経路(CWI経路)が活性化され、且つカルシニューリン経路(CN経路)が不活性化されていることを特徴とする、微生物。
【請求項2】
さらに、少なくとも1種の細胞壁合成遺伝子の機能欠損を有する、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
さらに、少なくとも1種の細胞壁堅牢性維持遺伝子の機能欠損を有する、請求項1に記載の微生物。
【請求項4】
さらに、少なくとも1種の細胞壁堅牢性維持遺伝子の機能欠損を有する、請求項2に記載の微生物。
【請求項5】
前記改変が、該微生物におけるSmi1遺伝子の機能欠損である、請求項1に記載の微生物。
【請求項6】
前記細胞壁合成遺伝子が、キチントランスグリコシラーゼ遺伝子、β-グルカンシンターゼ遺伝子からなる群より選択される、請求項2に記載の微生物。
【請求項7】
前記細胞壁堅牢性維持遺伝子が細胞壁タンパク質遺伝子、膜タンパク質遺伝子からなる群より選択される、請求項3に記載の微生物。
【請求項8】
前記細胞壁堅牢性維持遺伝子が細胞壁タンパク質遺伝子、膜タンパク質遺伝子からなる群より選択される、請求項4に記載の微生物。
【請求項9】
さらに、細胞内でキチンをキトサンに変換できるように改変されている、請求項1に記載の微生物。
【請求項10】
前記細胞内でキチンをキトサンに変換できるような改変が、キチン脱アセチル化酵素遺伝子の導入によるものである、請求項9に記載の微生物。
【請求項11】
前記微生物が酵母である、請求項1~10のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項12】
前記酵母がサッカロミセス セレビシエである、請求項11に記載の微生物。
【請求項13】
キチンを生産する能力を有する微生物を利用してキチン・キトサンを製造する方法であって、
該微生物を、非改変微生物に比べて、Cell-wall integrity経路(CWI経路)が活性化され、且つカルシニューリン経路(CN経路)が不活性化されるように改変することを含むキチン・キトサンの製造方法。
【請求項14】
さらに、少なくとも1種の細胞壁合成遺伝子を機能欠損させることを含む、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
さらに、少なくとも1種の細胞壁堅牢性維持遺伝子を機能欠損させることを含む、請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
さらに、少なくとも1種の細胞壁堅牢性維持遺伝子を機能欠損させることを含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
前記改変が、前記微生物におけるSmi1遺伝子を機能欠損させることを含む、請求項13記載の製造方法。
【請求項18】
前記細胞壁合成遺伝子が、キチントランスグリコシラーゼ遺伝子、β-グルカンシンターゼ遺伝子からなる群より選択される、請求項14に記載の製造方法。
【請求項19】
前記細胞壁堅牢性維持遺伝子が細胞壁タンパク質遺伝子、膜タンパク質遺伝子からなる群より選択される、請求項15に記載の製造方法。
【請求項20】
前記細胞壁堅牢性維持遺伝子が細胞壁タンパク質遺伝子、膜タンパク質遺伝子からなる群より選択される、請求項16に記載の製造方法。
【請求項21】
さらに、細胞内でキチンをキトサンに変換できるように改変することを含む、請求項13に記載の製造方法。
【請求項22】
前記細胞内でキチンをキトサンに変換できるような改変が、キチン脱アセチル化酵素遺伝子の導入によるものである、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
前記微生物が酵母である、請求項13~22のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項24】
前記酵母がサッカロミセス セレビシエである、請求項23に記載の製造方法。
【請求項25】
炭素源を含有する培地で微生物を培養し、キチン・キトサンを培地中に分泌させることを含む、請求項21に記載の製造方法。
【請求項26】
前記炭素源がグルコースである、請求項25に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物、特に代謝を改変した微生物を用いた、キチン・キトサンの効率的な生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キチンは、β-(l-4)結合したN-アセチルグルコサミンとグルコサミンとの線状共重合体からなる天然ポリマーである。キチンは、グルコサミンおよびキトサンを調製するための原料としても有用である。キチンとは異なり、キトサンは水溶性であり、多数の栄養、医療、医薬および工業用途を有する。現在、キチンは、主としてエビやカニ殻のような原料から抽出されている。キトサンは、長時間高温で強アルカリにより加水分解することによりキチンから商業的に製造される。商業的なプロセスは、原料供給によって限定される。また、貝類材料を出発する際に、均一で高品質な製品を提供することも困難である。
【0003】
キチンおよびキトサンは、天然成分であることから、生体に対する適合性に優れ、機能性食品として備えるべきすべての条件を完全に整えているだけでなく、人工皮膚、手術用縫合糸、人工透析膜、各種治療補助用品などの医薬分野、繊維、化粧品、生活用品、廃水処理、写真用フィルム、染料、製紙、生分解性プラスチックなどの工業分野、土壌改良剤、肥料、無公害農薬、飼料などの農業分野、放射能汚染除去、液晶、イオン交換膜などの多様な分野で利用価値の大きい多機能物質として評価されている。
【0004】
従来は、甲殻類やキノコ類等に含まれるキチン質を強アルカリや強酸で処理することでキトサンを製造していた。しかしながら、この方法では強アルカリや強酸を用いる為、環境負荷が大きかった。
甲殻類の供給源に代わるキチンおよびキトサンの代替供給源として、真菌等の微生物の細胞壁を利用する技術も考案されている(特許文献1)。しかしながら真菌の細部壁は層状の構造になっており、キチン・キトサンはその奥深くに存在している為、取り出す為には、細胞壁を破壊する必要があった。従って、代替供給源として微生物の細胞壁を利用する方法であっても、強アルカリや強酸、あるいは高温や長時間の処理時間といった厳しい条件を要するものであった。
【0005】
特許文献2および3には、酵母等の微生物を用い、キチン・キトサンの製造方法に関する技術が開示されている。しかしながら、キチン・キトサンを培地中に分泌させること、培地からキチン・キトサンを回収することは何ら記載されていない。特許文献4および5は出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いてタンパク質を製造する方法が開示されているが、キチンまたはキトサンを生産することについては何ら記載されていない。特に特許文献5では、キチン・キトサンは細胞外に分泌されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2005-529191号公報
【特許文献2】特開平8-103271号公報
【特許文献3】国際公開第2004/092391号
【特許文献4】韓国特許出願公開第1996/0023035号公報
【特許文献5】国際公開第2009/144358号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、微生物からキチン・キトサンを効率的に回収する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、微生物に対し、Cell-wall integrity経路(以下、CWI経路とも称する)が活性化され、且つカルシニューリン経路(以下、CN経路とも称する)が不活性化されるような改変を施すことで、好ましくはさらに、細胞内でキチンをキトサンに変換できるように改変を施すことで、従来に比べ細胞外へのキチン・キトサンの分泌量(生産量)が向上する効果を発揮することを見出した。加えて、改変に供するのに適した遺伝子およびその組み合わせを見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を進めることによって本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
[1]キチンを生産する改変された微生物であって、
該改変により、非改変微生物に比べて、Cell-wall integrity経路(CWI経路)が活性化され、且つカルシニューリン経路(CN経路)が不活性化されていることを特徴とする、微生物。
[2]さらに、少なくとも1種の細胞壁合成遺伝子の機能欠損を有する、[1]に記載の微生物。
[3]さらに、少なくとも1種の細胞壁堅牢性維持遺伝子の機能欠損を有する、[1]又は[2]に記載の微生物。
[4]前記改変が、該微生物におけるSmi1遺伝子の機能欠損である、[1]~[3]のいずれかに記載の微生物。
[5]前記細胞壁合成遺伝子が、キチントランスグリコシラーゼ遺伝子、β-グルカンシンターゼ遺伝子からなる群より選択される、[2]~[4]のいずれかに記載の微生物。
[6]前記細胞壁堅牢性維持遺伝子が細胞壁タンパク質遺伝子、膜タンパク質遺伝子からなる群より選択される、[3]に記載の微生物。
[7]さらに、細胞内でキチンをキトサンに変換できるように改変されている、[1]~[6]のいずれかに記載の微生物。
[8]前記細胞内でキチンをキトサンに変換できるような改変が、キチン脱アセチル化酵素遺伝子の導入によるものである、[7]に記載の微生物。
[9]前記微生物が酵母である、[1]~[8]のいずれかに記載の微生物。
[10]前記酵母がサッカロミセス セレビシエである、[9]に記載の微生物。
[11]キチンを生産する能力を有する微生物を利用してキチン・キトサンを製造する方法であって、
該微生物を、非改変微生物に比べて、Cell-wall integrity経路(CWI経路)が活性化され、且つカルシニューリン経路(CN経路)が不活性化されるように改変することを含むキチン・キトサンの製造方法。
[12]さらに、少なくとも1種の細胞壁合成遺伝子を機能欠損させることを含む、[11]に記載の製造方法。
[13]さらに、少なくとも1種の細胞壁堅牢性維持遺伝子を機能欠損させることを含む、[11]又は[12]に記載の製造方法。
[14]前記改変が、前記微生物におけるSmi1遺伝子を機能欠損させることを含む、[11]~[13]のいずれかに記載の製造方法。
[15]前記細胞壁合成遺伝子が、キチントランスグリコシラーゼ遺伝子、β-グルカンシンターゼ遺伝子からなる群より選択される、[12]に記載の製造方法。
[16]前記細胞壁堅牢性維持遺伝子が細胞壁タンパク質遺伝子、膜タンパク質遺伝子からなる群より選択される、[13]~[15]のいずれかに記載の製造方法。
[17]さらに、細胞内でキチンをキトサンに変換できるように改変することを含む、[11]~[16]のいずれかに記載の製造方法。
[18]前記細胞内でキチンをキトサンに変換できるような改変が、キチン脱アセチル化酵素遺伝子の導入によるものである、[17]に記載の製造方法。
[19]前記微生物が酵母である、[11]~[18]のいずれかに記載の製造方法。
[20]前記酵母がサッカロミセス セレビシエである、[19]に記載の製造方法。
[21]炭素源を含有する培地で微生物を培養し、キチン・キトサンを培地中に分泌させることを含む、[17]に記載の製造方法。
[22]前記炭素源がグルコースである、[21]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、微生物を用いたキチン・キトサンの製造が可能であり、特に、グルコースを細胞内の酵素反応でキトサンに変換させ、分泌生産させることで、環境負荷の少ない安定的な製造が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味を有する。
1.本発明の微生物(本発明の改変微生物)
本発明は、
キチンを生産する改変された微生物であって、
該改変により、非改変微生物に比べて、Cell-wall integrity経路(CWI経路)が活性化され、且つカルシニューリン経路(CN経路)が不活性化されていることを特徴とする、微生物を提供する。
上記改変された微生物(以下、「本発明の改変微生物」とも称する)は、上記特性を有している限り、特に限定されないが、好ましくは真菌であり、より好ましくは、キチン質を細胞壁に多く含有する糸状菌及び酵母である。通常細胞壁にキチン質を含有していないか、あるいは含有量が少ない場合は、あらかじめ遺伝子操作によりキチンを生成するように改変しておくことができ、それらも本願発明において好ましく用いることができる。
糸状菌としては、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属(ペニシリウム クリソゲナム等)、トリコデルマ(Trichoderma)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、アクレモニウム(Acremonium)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、ボトリティス(Botrytis)属、コクリオボルス(Cochliobolus)属、モナスカス属等が挙げられる。これらのうち、アスペルギルス属、ボトリティス属、コクリオボルス属がより好ましく、アスペルギルス属がより好ましい。本発明において用い得るアスペルギルス属の糸状菌としては、例えば、アスペルギルス オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス ニドランス(Aspergillus nidulans / Emericella nidulans)、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)等が挙げられ、アスペルギルス オリゼ、アスペルギルス ソーヤ、アスペルギルス ニドランス、またはアスペルギルス ニガーが好ましく、アスペルギルス オリゼ、アスペルギルス ソーヤがより好ましく、アスペルギルス オリゼがより好ましい。本発明において用い得るボトリティス属の糸状菌としては、例えば、ボトリティス シネレア(Botrytis cinerea, teleomorph: Botryotinia fuckeliana)、ボトリティス アリー、ボトリティス スカモサ、ボトリティス バイソイジア等が挙げられる。本発明において用い得るコクリオボルス属の糸状菌としては、例えば、コクリオボルス ヘテロストロフォス (Cochliobolus heterostrophus, anamorph: Bipolaris maydis)、コクリオボルス カルボナム、コクリオボルス ミアビアヌス、コクリオボルス ビクトリア等が挙げられる。モナスカス属としては、モナスカス プルプレウス(紅麹菌)、モナスカス ルーバー、モナスカス ピロサス等が挙げられる。
酵母としては、従来知られているものを用いることができ、特に限定されない。そのような酵母としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等のサッカロミセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロミセス・ポンベ(Shizosaccharomyces pombe)等のシゾサッカロミセス属、キャンディダ・リポリティカ(Candida lipolytica)等のキャンディダ(Candida)属、トルラスポラ・デルブルッキー(Torulaspora delbrueckii)等のトルラスポラ(Torulaspora)属、クルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)等のクルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ピキア・メンブラネファシエンス(Pichia membranaefaciens)等のピキア(Pichia)属に属する酵母等が挙げられ、好ましくはサッカロミセス属またはシゾサッカロミセス属に属する酵母であり、最も好ましくはサッカロミセス属に属する酵母である。
有用な種をさらに例示すれば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Shizosaccharomyces pombe)、クルイベロミセス・ラクティス、クルイベロミセス・フラギリス、クルイベロミセス・ファフィイ(Kluyveromyces phaffii)、ピキア・メンブラネファシエンス、ピキア・アカシエ、ピキア・イノシトボラ、ピキア・アノマラ(Pichia anomala)、ピキア・ファリノーサ(Pichia farinosa)、ピキア・ソルビトフィラ(Pichia sorbitophila)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・エッチェルジ(Pichia etchellsii)、デバリオミセス・ロベルチエ、デバリオミセス・ハンセニイ(Debaryomyces Hansenii)、キャンディダ・リポリティカ、キャンディダ・アルビカンス(Candida albicans)、キャンディダ・シュードトロピカリス、キャンディダ・ステラータ(Candida stellata)、キャンディダ・ウチリス(Candida utilis)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)などが挙げられるが、これらに限定されない。最も好ましくはサッカロミセス・セレビシエまたはシゾサッカロミセス・ポンベである。
上記改変された微生物として最も好ましくはサッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ、アスペルギルス オリゼである。
これらの菌株は、商業的に入手が可能であるか、あるいは既知文献に基づいて入手、調製が可能である。例えばATCCでは、各菌株に対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることが出来る(http://www.atcc.org/参照)。各菌株に対応する登録番号は、ATCCのカタログに記載されている。サッカロミセス・セレビシエとしては、具体的には、BY4741株(ATCC4040002)やS288C株(ATCC26108)、YPH499(ATCC204679)を用いることができる。シゾサッカロミセス・ポンベとしては、具体的には、ATCC38366やATCC38399、ATCC38436を用いることができる。アスペルギルス オリゼとしては、具体的には、ATCC42149やATCC1011、ATCC10124、ATCC14895を用いることができる。また、キャンディダ・ウチリスとしては、具体的には、ATCC22023株を用いることができる。特に好ましくはサッカロミセス・セレビシエである。
【0012】
ここで、「改変微生物」とは、野生型もしくは改変前の微生物(非改変微生物)と比較して、該野生株や非改変微生物が有する生物活性が増強されている、あるいは低減されている(活性の完全な消失も含む)微生物を意味する。改変微生物は微生物を「改変する」ことによって創出される。微生物の「改変」は、結果として、改変前の微生物と比較してその生物活性が増強される、あるいは低減される(活性の完全な消失も含む)ならばその手段は特に限定されない。具体的には、微生物における遺伝子改変や微生物に対する各種ストレスの負荷が例示される。遺伝子改変は特に制限されることなく、公知の技術を適宜採用することができる。遺伝子改変としては、具体的には遺伝子における塩基の置換、欠失、挿入及び/又は付加による遺伝子変異であり、当該変異により、該遺伝子の機能や発現が亢進/増加あるいは抑制/低下され得る。一例として、改変微生物は、遺伝子変異によってその遺伝子の機能が欠損した微生物が挙げられる。微生物の改変を誘導する各種ストレスは、特に制限されることなく、公知のものを利用することができる。本願発明の場合、CWI経路を活性化し、且つCN経路の不活性化を誘導するようなストレスである。例えば、熱ショックストレスや細胞壁ストレス(例、界面活性剤、アルコール、浸透圧変化に関わる物質)等により、CWI経路が活性化されることが知られている。
【0013】
「遺伝子の機能や発現が亢進/増加する」とは、具体的には、同遺伝子の細胞当たりの発現量が非改変微生物と比較して増加し、それに伴い該遺伝子の機能が亢進することを意味する。「遺伝子の発現が増加する」とは、より具体的には、遺伝子の転写量(mRNA量)が増加すること、および/または、遺伝子の翻訳量(タンパク質の量)が増加することを意味してよい。遺伝子の発現は、例えば、非改変微生物の、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍に増加してよい。「遺伝子の機能や発現が抑制/低下される」とは、具体的には、同遺伝子の細胞当たりの発現量が非改変株と比較して減少し、それに伴い該遺伝子の機能が低下することを意味する。「遺伝子の発現が低下する」とは、より具体的には、遺伝子の転写量(mRNA量)が低下すること、および/または、遺伝子の翻訳量(タンパク質の量)が低下することを意味してよい。「遺伝子の発現が低下する」ことには、同遺伝子が全く発現していない場合が含まれる。このような場合を該遺伝子の機能欠損とも称する。遺伝子の発現は、例えば、非改変微生物の、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
【0014】
本発明のキチンを生産する改変微生物は、後述の実施例で示されるように、非改変微生物に比べて、CWI経路が活性化され、且つCN経路が不活性化されるように遺伝子改変されており、当該改変が特定の遺伝子の発現の低下、特に機能欠損であることが好ましい。
【0015】
遺伝子の発現の低下は、例えば、転写効率の低下によるものであってもよく、翻訳効率の低下によるものであってもよく、それらの組み合わせによるものであってもよい。遺伝子の発現の低下は、例えば、遺伝子のプロモーター、シャインダルガノ(SD)配列(リボソーム結合部位(RBS)ともいう)、RBSと開始コドンとの間のスペーサー領域等の発現調節配列を改変することにより達成できる。発現調節配列を改変する場合には、発現調節配列は、好ましくは1塩基以上、より好ましくは2塩基以上、特に好ましくは3塩基以上が改変される。遺伝子の転写効率の低下は、例えば、染色体上の遺伝子のプロモーターをより弱いプロモーターに置換することにより達成できる。「より弱いプロモーター」とは、遺伝子の転写が、もともと存在している野生型のプロモーターよりも弱化するプロモーターを意味する。より弱いプロモーターとしては、例えば、誘導型のプロモーターが挙げられる。すなわち、誘導型のプロモーターは、非誘導条件下(例えば、誘導物質の非存在下)でより弱いプロモーターとして機能し得る。また、発現調節配列の一部または全部を欠失させてもよい。また、遺伝子の発現の低下は、例えば、発現制御に関わる因子を操作することによっても達成できる。発現制御に関わる因子としては、転写や翻訳制御に関わる低分子(誘導物質、阻害物質など)、タンパク質(転写因子など)、核酸(siRNAなど)等が挙げられる。また、遺伝子の発現の低下は、例えば、遺伝子のコード領域に遺伝子の発現が低下するような変異を導入することによっても達成できる。例えば、遺伝子のコード領域のコドンを、宿主においてより低頻度で利用される同義コドンに置き換えることによって、遺伝子の発現を低下させることができる。また、例えば、後述するような遺伝子の破壊により、遺伝子の発現自体が低下し得る。
【0016】
「遺伝子が破壊される」とは、正常に機能するタンパク質を産生しないように同遺伝子が改変されることを意味する。「正常に機能するタンパク質を産生しない」ことには、同遺伝子からタンパク質が全く産生されない場合や、同遺伝子から分子当たりの機能(活性や性質)が低下又は消失したタンパク質が産生される場合が含まれる。
【0017】
遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子を欠失(欠損)させることにより達成できる。「遺伝子の欠失」とは、遺伝子のコード領域の一部又は全部の領域の欠失をいう。さらには、染色体上の遺伝子のコード領域の前後の配列を含めて、遺伝子全体を欠失させてもよい。タンパク質の活性の低下が達成できる限り、欠失させる領域は、N末端領域(タンパク質のN末端側をコードする領域)、内部領域、C末端領域(タンパク質のC末端側をコードする領域)等のいずれの領域であってもよい。通常、欠失させる領域は長い方が確実に遺伝子を不活化することができる。欠失させる領域は、例えば、遺伝子のコード領域全長の10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上の長さの領域であってよい。また、欠失させる領域の前後の配列は、リーディングフレームが一致しないことが好ましい。リーディングフレームの不一致により、欠失させる領域の下流でフレームシフトが生じ得る。
【0018】
また、遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の目的のタンパク質をコードする遺伝子のコード領域にアミノ酸置換(ミスセンス変異)を導入すること、終止コドンを導入すること(ナンセンス変異)、あるいは1~2塩基を付加または欠失するフレームシフト変異を導入すること等によっても達成できる。また、遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の目的のタンパク質をコードする遺伝子のコード領域に他の配列を挿入することによっても達成できる(Journal of Biological Chemistry 272:8611-8617(1997), Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 95 5511-5515(1998), Journal of Biological Chemistry 26 116, 20833-20839(1991))。
【0019】
また、遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子のコード領域に他の塩基配列を挿入することによっても達成できる。挿入部位は遺伝子のいずれの領域であってもよいが、挿入する塩基配列は長い方が確実に遺伝子を不活化することができる。また、挿入部位の前後の配列は、リーディングフレームが一致しないことが好ましい。リーディングフレームの不一致により、挿入部位の下流でフレームシフトが生じ得る。他の塩基配列としては、コードされるタンパク質の活性を低下又は消失させるものであれば特に制限されないが、例えば、抗生物質耐性遺伝子等のマーカー遺伝子や目的物質の生産に有用な遺伝子が挙げられる。
【0020】
遺伝子の破壊は、特に、コードされるタンパク質のアミノ酸配列が欠失(欠損)するように実施してよい。言い換えると、タンパク質の活性が低下するような改変は、例えば、タンパク質のアミノ酸配列(アミノ酸配列の一部または全部の領域)を欠失させることにより、具体的には、アミノ酸配列(アミノ酸配列の一部または全部の領域)を欠失したタンパク質をコードするように遺伝子を改変することにより、達成できる。なお、「タンパク質のアミノ酸配列の欠失」とは、タンパク質のアミノ酸配列の一部または全部の領域の欠失をいう。また、「タンパク質のアミノ酸配列の欠失」とは、タンパク質において元のアミノ酸配列が存在しなくなることをいい、元のアミノ酸配列が別のアミノ酸配列に変化する場合も包含される。すなわち、例えば、フレームシフトにより別のアミノ酸配列に変化した領域は、欠失した領域とみなしてよい。アミノ酸配列の欠失により、典型的にはタンパク質の全長が短縮されるが、タンパク質の全長が変化しないか、あるいは延長される場合もあり得る。例えば、遺伝子のコード領域の一部又は全部の領域の欠失により、コードされるタンパク質のアミノ酸配列において、当該欠失した領域がコードする領域を欠失させることができる。また、例えば、遺伝子のコード領域への終止コドンの導入により、コードされるタンパク質のアミノ酸配列において、当該導入部位より下流の領域がコードする領域を欠失させることができる。また、例えば、遺伝子のコード領域におけるフレームシフトにより、当該フレームシフト部位がコードする領域を欠失させることができる。
【0021】
染色体上の遺伝子を上記のように改変することは、例えば、正常に機能するタンパク質を産生しないように改変した変異遺伝子を作製し、該変異遺伝子を含む組換えDNAで宿主を形質転換して、変異遺伝子と染色体上の野生型遺伝子とで相同組換えを起こさせることにより、染色体上の野生型遺伝子を変異遺伝子に置換することによって達成できる。その際、組換えDNAには、宿主の栄養要求性等の形質にしたがって、マーカー遺伝子を含ませておくと操作がしやすい。変異遺伝子としては、遺伝子のコード領域の一部又は全部の領域を欠失した遺伝子、ミスセンス変異を導入した遺伝子、ナンセンス変異を導入した遺伝子、フレームシフト変異を導入した遺伝子、トランスポゾンやマーカー遺伝子等の挿入配列を導入した遺伝子が挙げられる。変異遺伝子によってコードされるタンパク質は、生成したとしても、野生型タンパク質とは異なる立体構造を有し、機能が低下又は消失する。
【0022】
また、タンパク質の活性が低下するような遺伝子の改変は、例えば、突然変異処理により行ってもよい。突然変異処理としては、X線の照射、紫外線の照射、ならびにN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルフォネート(EMS)、およびメチルメタンスルフォネート(MMS)等の変異剤による処理が挙げられる。
【0023】
上記のような遺伝子改変の手法は、単独で用いてもよく、任意の組み合わせで用いてもよい。
【0024】
遺伝子改変により当該遺伝子の発現又は機能が低下したことは、遺伝子レベルでも該遺伝子がコードしているタンパク質レベルでもその発現量を測定することで確認することができる。
【0025】
目的のタンパク質の生物活性が低減されたことの確認は、該生物活性を測定することによって行うことができる。また、別の態様として、目的のタンパクの生物活性が低減されたことの確認は、目的のタンパク質をコードする遺伝子の転写量が増加あるいは減少したことを確認することや、目的のタンパク質の量が増加あるいは減少したことを確認することにより行うことが出来る。
【0026】
目的のタンパク質をコードする遺伝子の転写量が減少したことの確認は、同遺伝子から転写されるmRNAの量を非改変株と比較することによって行うことが出来る。mRNAの量を評価する方法としては、ノーザンハイブリダイゼーション、RT-PCR等が挙げられる(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001))。該転写量が減少している場合には、mRNAの量は、非改変株と比較して、例えば、50%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に減少していることが好ましい。
【0027】
目的のタンパク質の量が減少したことの確認は、抗体を用いてウェスタンブロットによって行うことが出来る(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001))。目的のタンパク質の量が減少している場合には、その量は、非改変株と比較して、例えば、50%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に減少していることが好ましい。
【0028】
生物活性を低下させる(生物活性の完全な消失を含む)改変として、該タンパク質をコードする遺伝子全体を欠失させた(破壊した)場合は、該遺伝子の発現状況を確認するだけでよいので、簡便且つ確実であることから好ましい。
【0029】
細胞壁は、植物、真菌、細菌類の細胞にみられる構造であり、動物細胞には存在しない。微生物、特に真菌の細胞壁は、多糖を主とする多層構造体で構築され、これらはキチン、セルロースあるいは(1,3)-β-グルカン等の骨格多糖及びマンナン等のマトリックスとして存在する。細胞壁の生合成において、細胞壁の主要な構成要素であるβ-グルカンはUDP-グルコースを基質としてβ-グルカンシンターゼ(Fks1、Fks2)によって合成される。また細胞壁の強度維持に重要なキチンはUDP-GlcNAcを基質としてキチンシンターゼ(Chs1、Chs2、Chs3)によって合成される。キチンシンターゼによって合成されたキチンは、キチントランスグリコシラーゼCrh1、Crh2、Crr1によってβ-グルカンにクロスリンクされ、細胞壁の網目構造の複雑化・堅牢性向上に寄与する。また細胞壁の堅牢性に寄与する因子として、Cwpなどの細胞壁タンパク質類や、Pun1などの膜タンパク質がある。酵母においてこれらのタンパク質の機能を低下させることで、薬剤等に対するストレス耐性が低下することが知られている。
外部ストレスに応じた細胞壁の再構成は、細胞壁恒常性を維持する保存されたシグナル伝達カスケードである細胞壁完全性経路(CWI経路)やカルシニューリン経路(CN経路)によって制御されている。CWI経路やCN経路は、セルサイクルに関わる遺伝子群の発現や、各種細胞壁構成成分の合成および各前駆体の合成に関わる遺伝子群の発現を制御する。
【0030】
細胞壁完全性経路(CWI経路)
細胞壁完全性経路は、細胞壁を有する微生物(例、真菌)における細胞壁のde novo合成を制御する主要なシグナル伝達経路を意味する。
CWI経路は細胞周期依存的な細胞壁合成や、細胞の成長、温度、低浸透圧等の環境ストレス(細胞壁ストレス)に対する応答を司る。これらシグナルを受けて、細胞内へと伝達されRho1が活性化し、Rho1から下流のシグナルカスケードへと情報を伝達される。CWI経路のシグナルカスケードは、protein kinase CのPkc1、MAPKKKのBck1、MAPKKのMkk1/Mkk2、MAPKのSlt2で構成される。このカスケードが活性化されると下流の転写因子Rlm1などが活性化し、さらに細胞壁合成遺伝子群の活性化へとつながる。従って、CWI経路の活性化の一例としてカスケード下流に位置するSlt2の活性化が挙げられる。CWI経路の活性化により、MAPKKであるMkk/Mkk2によりSlt2のリン酸化が促進、すなわち、Slt2が活性化する。CWI経路の活性化はSlt2の活性化=Slt2のリン酸化レベルの上昇で確認することができる。
【0031】
カルシニューリン経路(CN経路)
カルシニューリンは酵母から哺乳動物に至るまで高度に保存されたCa2+/カルモジュリン依存性のタンパク質脱リン酸化酵素である。酵母においては、高浸透圧や高温などの多様な細胞膜ストレスでCN経路が活性化されると転写調節因子Crz1タンパク質を脱リン酸化して活性化し、Crz1に制御される遺伝子(例、細胞壁堅牢性維持遺伝子)の発現を誘導する。従って、CN経路の不活性化としてカスケード下流に位置するCrz1の不活性化が挙げられる。CN経路の不活性化により、CNによるCrz1の脱リン酸化の阻害、すなわちCrz1が不活性化する。CN経路の不活性化はCrz1の不活性化=Crz1の脱リン酸化の阻害=Crz1のリン酸化レベルの上昇で確認することができる。
【0032】
本発明の改変微生物は、非改変微生物に比べて、CWI経路が活性化され、且つCN経路が不活性化されていることを特徴とする。CWI経路の活性化、及び/又はCN経路の不活性化は、該改変微生物において、CWI経路及び/又はCN経路に属する遺伝子の機能や発現が非改変微生物と比べて亢進あるいは抑制されキチンの生産・分泌に効果的である限り特に限定されない。本願発明の一態様として、非改変微生物と比べてその機能を欠損させることでCWI経路が活性化され、且つCN経路が不活性化される遺伝子としてSmi1(別称:Knr4)が挙げられる。Smi1遺伝子の機能欠損は、本願発明の好ましい態様である。Smi1は、細胞壁グルカン及びキチンの合成の調節により(1,3)-β-グルカン合成に関与する遺伝子であると考えられている。
本発明の改変微生物において、Smi1と直接又は間接的に相互作用して、CWI経路の活性化及び/又はCN経路の不活性化に寄与する因子もまた、改変(変異)の対象として好ましい。該因子としては、例えば、Slt2、Rlm1、Crz1等が挙げられる。
【0033】
本発明は、CWI経路が活性化され、且つCN経路が不活性化されるような改変に加え、さらに、少なくとも1つの細胞壁合成遺伝子及び/又は細胞壁堅牢性維持遺伝子の機能欠損を有することが好ましい。
【0034】
細胞壁合成遺伝子
細胞壁合成遺伝子としては、特に、キチンを主要な構成成分とする真菌の場合、キチントランスグリコシラーゼ遺伝子やβグルカンシンターゼ遺伝子、キチン生合成関連遺伝子等が挙げられるが、好ましくはキチントランスグリコシラーゼ遺伝子及びβグルカンシンターゼ遺伝子である。
キチントランスグリコシラーゼとしては、Crh1、Crh2(別称:UTR2)、Crr1が挙げられるが、好ましくはCrh1である。
キチントランスグリコシラーゼは、細胞壁のβ(1→6)及びβ(1→3)グルカンをキチンに移動させる(糖転移)機能を有する。
βグルカンシンターゼ遺伝子としては、Fks1、Fks2が挙げられる。
キチン生合成関連遺伝子としては、Gfa1、Chs1、Chs2、Chs3が挙げられる。
【0035】
細胞壁堅牢性維持遺伝子
細部壁堅牢性維持遺伝子としては、細胞壁タンパク質遺伝子や膜タンパク質遺伝子等が挙げられる。
細胞壁タンパク質遺伝子としては、細胞壁マンノプロテイン遺伝子が挙げられる。マンノプロテインとは、蛋白(ポリペプチド鎖)にマンノースが修飾糖として結合しているもので、酵母の細胞壁表層に異なる種類のものが存在している。細胞壁マンノプロテインとしては、Cwp2、Cwp1が挙げられるが、好ましくはCwp2である。Cwp2はGPI-アンカー型タンパク質として機能する。
細胞壁堅牢性維持に関わる膜タンパク質としては、Pun1(別称:YLR414c)が挙げられる。Pun1は、細胞壁の完全性に関与するストレス応答性タンパク質であり、細胞ストレスの原因に依存するCN経路などのシグナル伝達経路によって制御されている。特にCN経路に属する転写因子Crz1によって制御されていることが示唆されている。
【0036】
本発明において好適に用いられる改変微生物としては、好ましくは酵母の遺伝子変異株であり、非改変微生物に比べてCWI経路が活性化され、CN経路が不活性化されていることを特徴とし、さらに少なくとも1種の細胞壁合成遺伝子及び/又は少なくとも1種の細胞壁堅牢性維持遺伝子の機能欠損を有する微生物である。
本発明の改変微生物は、好ましくは酵母、より好ましくは、サッカロミセス・セレビシエの変異株である。非改変微生物(野生株)であるサッカロミセス・セレビシエBY4741と比較した場合、本発明の改変微生物は、CWI経路が有意に活性化され、CN経路が有意に不活性化されている。好ましい一態様として、CWI経路の有意な活性化としてSlt2の活性化が挙げられ、具体的にはSlt2のリン酸化レベルの有意な上昇が挙げられる。好ましい一態様として、CN経路の有意な活性化としてCrz1の不活性化が挙げられ、具体的にはCrz1のリン酸化レベルの有意な上昇が挙げられる。
【0037】
「リン酸化レベルの有意な上昇」とは、各リン酸化タンパク質の量が野生株や非改変微生物と比較して有意に上昇していることを意味し、好ましくはリン酸化タンパク質の量が、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍に増加してよい。
【0038】
微生物からのキチン・キトサンの効率的な回収という本発明の課題に鑑み、好ましくは、本発明の改変微生物は、細胞内でキチンをキトサンに変換できるように改変されていることが好ましい。
かかる改変として、好ましくは、キチン脱アセチル化酵素遺伝子(Cda1、Cda2、Cda3等)の導入が挙げられる。
【0039】
2.キチン・キトサンの製造方法(本発明の製造方法)
本発明は、キチンを生産する能力を有する微生物を利用してキチン・キトサンを製造する方法であって、
該微生物を、非改変微生物に比べてCWI経路が活性化され、且つCN経路が不活性化されるように改変することを含む、方法(以下、本発明の製造方法とも称する)、を提供する。
本発明の製造方法において、該微生物を、さらに少なくとも1種の細胞壁合成遺伝子及び/又は少なくとも1種の細胞壁堅牢性維持遺伝子を機能欠損させるように改変することが好ましい。
各用語の定義及びその好ましい態様は、上記「1.本発明の微生物」の項で述べたものと同様である。
本発明の製造方法において、キチン・キトサンは、本発明の微生物、好ましくは酵母を培養して得られる微生物の培養物から調製することができる。実施例にて後述するように、本発明の製造方法では、キチン・キトサンは培地中に分泌され、培養上清からキチン・キトサンを回収することができる。本発明の微生物の培養方法を、微生物が酵母の場合を例として以下に示す。
【0040】
本発明の微生物を培養するための培地としては、使用する微生物の種類によって適宜選択される。炭素源、窒素源、無機物および必要に応じて少量の微量栄養素を含むものであれば、合成培地または天然培地のいずれも使用可能である。培地に使用する炭素源および窒素源は使用する微生物の利用可能なものならばいずれの種類を用いてもよい。炭素源としては、グルコ-ス、グリセロール、フルクトース、シュクロース、マルトース、マンノース、澱粉、澱粉加水分解物、糖蜜など種々の炭水化物が使用できる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどの各種の無機および有機アンモニウム塩類、または肉エキス、酵母エキス、コーン・スティープ・リカー、カゼイン加水分解物、フィッシュミールあるいはその消化物、脱脂大豆粕あるいはその消化物などの天然有機窒素源が使用可能である。天然有機窒素源の多くの場合は窒素源であるとともに炭素源にもなり得る。無機物としては、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄などが必要に応じて使用できる。
【0041】
培養は、振とう培養あるいは通気撹拌深部培養などの好気的条件下で行う。培養温度は好ましくは20~50℃、特に好ましくは28~37℃の範囲である。培養中の培地のpHは微生物の生育に応じて適宜調整すればよく、例えばpH5~7が挙げられる。培養時間は通常12時間~10日間、より好ましくは24時間~8日間、さらに好ましくは36時間~6日間である。
【0042】
前記のようにして得られる微生物等を含む培養物からキチン・キトサンを回収する。本発明の微生物は培地中の炭素源であるグルコースを利用して細胞内の酵素反応でキチンをキトサンに変換する。本発明の微生物は細胞壁の構造が遺伝子改変によって損なわれている為、キチンやそこから変換されたキトサンが細胞外へと分泌される。従って、キチン・キトサンは、細胞内にキチン・キトサンを含む細胞に加え、細胞培養した培地からも得ることができる(細胞及び培地を含めて細胞培養物とも称する)。キチン・キトサンはその生物活性が維持されている限り必ずしも単離精製されている必要はない。
細胞培養物からのキチン・キトサンの回収は、当分野で通常実施される各種の精製・分離の手法が利用でき、例えば遠心分離、濃縮、ろ過等が挙げられる。具体的には、キチン・キトサンを生産する微生物、例えばサッカロミセス・セレビシエ等を適当な液体培地中で培養し、得られる培養物からキチン・キトサンを含有する画分を分離回収する。キチン・キトサンが菌体内(細胞質)画分に存在する場合は培養物を遠心して菌体を回収後、超音波処理やリゾチームおよび浸透圧ショック処理等により該菌体を破砕し、遠心してその上清を得る。キチン・キトサンが培地中に存在する場合には、培養上清をそのまま若しくは限外濾過等のフィルターで濃縮することでそのままキチン・キトサンの固体成分を回収できる。またはキチン・キトサンを含有する培地に酢酸等の酸を添加して溶解させ、その後アルカリ溶液で処理して中和して得られた固体成分を分離し、上清を廃棄し、残渣を中和して水で洗浄することで回収できる。
キチン・キトサンは、上記のようにして得られた画分から、酵素タンパク質の単離精製に一般に利用されている分離技術を適宜組み合わせることによって精製することができる。具体的には、例えば、塩析、溶媒沈殿法等の溶解度の差を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過、非変性PAGE、SDS-PAGE等の分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー等の荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィー等の特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィー等の疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動等の等電点の差を利用する方法などが挙げられる。
【0043】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【実施例0044】
試験例1:Smi1遺伝子を機能欠損させたSaccharomyces cerevisiaeによるキトサンの生産培養
1.プラスミドおよび菌株の構築
人工遺伝子合成によってSmi1遺伝子のORF中に終止コドンが挿入された変異型smi1断片(配列番号1)を得た。出芽酵母ゲノム組込み型pGK405を鋳型にinverse PCRによってベクター断片を取得し、Clontech In-fusion HD Cloning Kit(TaKaRa Inc.)を用いて変異型smi1断片と連結することで、変異型smi1ゲノム組込み用ベクターpGK405-smi1を構築した。
同様にして、変異型crh1断片(配列番号2)、変異型pun1断片(配列番号3)、変異型cwp2断片(配列番号4)、変異型gas1断片(配列番号5)、変異型crh2断片(配列番号6)、変異型fks1断片(配列番号7)を得て、pGK405と連結することでpGK405-crh1、pGK405-pun1、pGK405-cwp2、pGK405-gas1、pGK405-crh2を構築した。
構築したpGK405-smi1S. cerevisiae BY4741株に導入し、ダブルクロスオーバーにてゲノム中のSmi1配列を変異型smi1配列に置き換えることで、smi1株を構築した。同様にして、構築した変異型タンパク質発現ベクターを導入することで下表の菌株(発現量低減株)を構築した。
【0045】
【表1】
【0046】
続いて人工遺伝子合成によって、Tdh3遺伝子のプロモーター領域、Cda1遺伝子のORF、Tdh3遺伝子のターミネーター領域、Pgk1遺伝子のプロモーター領域、Cda2遺伝子のORF、Pgk1遺伝子のターミネーター領域を連結した、Cda1-Cda2発現カセット断片(配列番号8)を得た。2ミクロン型高コピーベクターpGK425を鋳型にinverse PCRによってベクター断片を取得し、Cda1-Cda2発現カセット断片と連結することによりCda1-Cda2発現ベクターpGK425-Cda1-Cda2を構築した。
得られたpGK425-Cda1-Cda2を前述の発現量低減株に導入し、下表の菌株を構築した。
【0047】
【表2】
【0048】
配列番号1 変異型smi1
ATGGATCTATTCAAAAGAAAAGTTAAAGAATGGGTATACTCCCTCAGCACTGACGACCATTATGCAGAGTATAACCCCGATGAAACGCCTACTTTTAACATGGGTAAACGTTTAAACAGCAACAATGGTCAGGTAAATCCCTCTCAAATGCATTTGAATAGTGTAGATGAGGAAATGAGCATGGGATTTCAAAATGGCGTGCCATCTAATGAAGACATAAATATTGATGAATTTACGTCCACGGAGTCAAACGATTAAGTCTCTGAAACCCTCTTAGCTTGGAGACACATCGATTTTTGGACCAGTGAACATAATCCAGATTTAAATGCAACTTTGAGTGATCCTTGCACCCAAAACGATATCACTCACGCAGAGGAAGACTTGGAAGTTAGCTTTCCCAACCCAGTAAAAGCGTCTTTCAAAATTCATGATGGCCAAGAAGATTTAGAATCGATGACCGGTACTTCTGGCTTGTTTTATGGCTTCCAACTAATGACACTAGATCAGGTTGTAGCTATGACTCAGGCCTGGAGAAACGTCGCAAAGAACCTAAACAAAAGATCTCAACAAGGTTTATCCCATGTTACATCTACTGGCTCTTCTTCATCTATGGAAAGACTAAATGGTAACAAGTTCAAACTGCCAAATATCCCAGATCAAAAATCTATTCCTCCAAATGCAGTGCAACCGGTATATGCACATCCTGCTTGGATTCCTTTAATAACGGACAATGCCGGTAACCATATCGGTGTTGACTTGGCGCCTGGTCCAAATGGTAAATATGCTCAAATTATAACATTTGGGAGGGACTTCGATACGAAATTTGTCATTGCTGAAAATTGGGGTGAATTTCTGTTATCGTTTGCCAACGATTTGGAAGCTGGTAATTGGTATTTAGTAGATGACAATGACGACTACTTTAGCGGTGATGGTGAATTGGTCTTCAGGGATAAGAAATCTAATGGTCCTATACAAGATTATTTCGAAGTTTTAAAAAGAAGAACGTGGATCAAGTATCAAGAAAACTTGAGATCACAACAGCAAAAATCTCAACCTGACACATCCTTGCAGGAGCAGAAATACGTGCCTGCCTCGCAAAAGAAAGTGGCAGCTGAACAGCCTTCTACCCTCAACGCAGAATCCATAAAGGGCGAAGATAGTGGTAGTGCAGATGTACAATCTGTTCAAGATCACGAATCTGTCAAAATTGTGAAAACAGAACCTAGCGAAGCGGAGACTACAACTGTAAATACAGAAAGCCTTGGACAAGCAGAGCATGAAATCAAAGCTGATAATGTAGACATTAAACAAGAAAGCGAGAGGAAAGAAGACGAAAAGCAACCAAAGGTTGAAGAAAAAGAACACGTTGAAAACGAACATGTCACAGAATCAGCAAAAAAAGACGATGATGTAAATAAGCAAACAGAAGAAATGAACAAAAAGGAAGAAAATGAAATAAGAAGTGATGATGCTAAAGTGGAAGAAGCGAGAGAAGAATTTGAAAATATAGCTTTATGA
【0049】
配列番号2 変異型crh1
ATGAAAGTGCTTGACCTACTAACGGTACTCAGTGCCTCTTCATTATTATCTACATTCGCGGCTGCCGAAAGTACTGCTACTGCAGACAGTACAACTGCAGCTTCTAGCACTGCTTCGTGTAACCCGTTAAAAACTACAGGTTGTACGCCGGATACAGCTTTGGCAACTAGTTTTAGCGAAGATTTCTCATCTTCATCCAAATGGTTTACCGACTTGAAGCACGCAGGTGAAATCAAGTACGGTTCAGACGGTTTGTCAATGACACTGGCGAAAAGATACGATAATCCAAGTTTGAAGTCTAACTTTTATATCATGTATGGTAAATTGGAAGTTATCTTAAAAGCTGCCAATGGTACCGGTATTGTTTCATCATTCTATTTACAAAGTGATGATTTGGATGAAATTGATATTGAATGGGTGGGTGGTGACAACACTCAGTTCCAATCTAACTTCTTTTCTAAAGGTGATACCACAACATACGACAGACGAATTTCACGGTGTCGACACTCCTACCGACAAATTTCATAACTACACTTTAGATTGGGCGATGGACAAGACGACTTGGTACCTCGATGGAGAGTCTGTCAGAGTATTATCAAACACATCAAGTGAGGGTTACCCACAATCTCCTATGTACCTAATGATGGGTATCTGGGCCGGTGGTGACCCAGACAATGCTGCTGGTACCATTGAATGGGCTGGTGGTGAAACCAACTACAATGACGCTCCATTCACTATGTACATTGAAAAGGTCATTGTAACTGATTATTCTACCGGTAAAAAGTACACATATGGTGACCAATCTGGTTCTTGGGAATCTATTGAAGCTGACGGTGGTTCTATTTACGGCAGGTATGACCAAGCCCAAGAAGATTTCGCAGTTTTAGCCAACGGTGGTAGTATTTCCAGCAGCTCTACATCCTCTTCTACTGTATCTTCCTCGGCGTCTTCCACTGTATCTTCCTCGGTTTCTTCCACTGTGTCCTCCTCGGCTTCTTCCACTGTGTCTTCCTCGGTTTCTTCCACTGTATCTTCTTCGTCTTCTGTATCTTCCTCTTCATCCACATCTCCATCTTCTTCGACCGCTACTTCATCTAAAACACTTGCTTCCTCATCAGTCACCACATCTAGTTCCATTAGTTCATTCGAAAAGCAATCCTCCTCTTCATCCAAGAAAACAGTGGCTTCCTCTTCTACAAGTGAGTCCATTATTTCCTCCACTAAGACCCCAGCCACTGTTTCCTCTACCACTAGGTCTACAGTTGCCCCAACTACTCAACAATCTTCCGTATCATCGGACAGTCCTGTACAAGATAAGGGTGGTGTCGCAACATCAAGTAATGACGTGACCAGTTCTACTACCCAGATATCAAGCAAATACACATCTACAATCCAAAGTTCTTCCTCCGAAGCCAGCTCGACAAACTCTGTTCAAATTTCTAACGGTGCTGATTTAGCTCAGAGTTTACCAAGAGAGGGAAAACTTTTTTCCGTACTCGTAGCTTTACTAGCCTTGCTATAA
【0050】
配列番号3 変異型pun1
ATGAGGAATTTTTTCACGTTATTTTTTGCAGCTATATTTTCGCTAGGAGCACTTATATTAGCCATTGTTGCATGCGCAGGATCAACGAAAAATTACAGTCCCATAAATAAAATTTACTGTGCAGAATTGGATCTGTCGCAGATGAAGGTATCGAACTAGTGCTCCCTTCTTTGAGTTCTGCTACGCTATCTTCGTTGGGCCTGCCCTCATATATAAATATAGGGCTTTGGTCGTACTGTACAGTGGACTCCTCGCATAACATCCAATCATGTTCTTCGCCTCACGGTATCCAGAATTTTAACCTATCGTCATTAGTGTATGACAATATCAACAACAATGAGGCTCTGGAGCTTATGGATTCCGTGGCCAGTGTTGTTTTGCCCGAAAAACTAAAAAGTAAAATGACATACTACAACAATTTGGTCAAGTGTATGTTCATTACCATTCTTATTGGTATTGTCTTGACCTTTGTGAATCTAGTGTTCAACGTATTGCGCTGGATCATCCACATAAGGCCGCTAACGTGGTTTGGTGCCTTTTTTTCATTTTTCGCCTTTGCCGCCCTATTAGTCAGTATAGGTTCGTGTTTGGGCACTTACTCATACATCAAATACATCCTAAAGCATAACTATAGTGATTACGGTATTTCAATGAGCATTGGTAGGAACTACCAGGGTTTGATGTGGGGGGCTGTCGTTGGAGCATTACTGAATTTCATTCTATGGTGTAGCGTGAGATCGAGGCCCACCGTCATCTATGCGAACGCTCCAATTGAGGAAAAACCATTGATTTGA
【0051】
配列番号4 変異型cwp2
ATGCAATTCTCTACTGTCGCTTACTAGTTGCTTTCGTCGCTTTGGCTAACTTTGTTGCCGCTGAATCCGCTGCCGCCATTTCTCAAATCACTGACGGTCAAATCCAAGCTACTACCACTGCTACCACCGAAGCTACCACCACTGCTGCCCCATCTTCCACCGTTGAAACTGTTTCTCCATCCAGCACCGAAACTATCTCTCAACAAACTGAAAATGGTGCTGCTAAGGCCGCTGTCGGTATGGGTGCCGGTGCTCTAGCTGCTGCTGCTATGTTGTTATAA
【0052】
配列番号5 変異型gas1
ATGTTGTTTAAATCCCTTTCAAAGTTAGCAACCGCTGCTGCTTTTTTTGCTGGCGTCGCAACTGCGGACGATGTTCCAGCGATTGAAGTTGTTGGTAATAAGTTTTTCTACTCCAACAACGGTAGTCAGTTCTACATAAGAGGTGTTGCTTATCAGGCTGATACCGCTAATGAAACTAGCGGATCTACTGTCAACGATCCTTTGGCCAATTATGAGAGTTGTTCCAGAGATATTCCATACCTCAAAAAATTGAACACAAATGTTATCCGTGTCTACGCTATCAATACCACTCTAGATCACTCCGAATGTATGAAGGCTTTGAATGATGCTGACATCTATGTCATCGCTGATTTAGCAGCTCCAGCCACCTCTATCAATAGAGACGATCCAACTTGGACTGTTGACTTGTTCAACAGCTACAAAACCGTTGTTGACACTTTTGCTAATTACTAAAACGTTTTGGGTTTCTTCGCCGGTAATGAAGTTACTAACAATTACACCAACACAGATGCATCTGCTTTCGTGAAGGCAGCTATTAGAGACGTCAGACAATACATCAGCGACAAGAACTACAGAAAAATTCCAGTTGGCTACTCTTCCAATGATGACGAAGATACCAGAGTTAAGATGACTGATTATTTCGCTTGTGGTGATGATGATGTTAAGGCTGATTTTTACGGTATTAATATGTATGAATGGTGTGGTAAATCTGACTTCAAAACTTCTGGTTATGCTGATAGAACTGCAGAATTCAAAAACTTATCTATTCCTGTTTTCTTCTCTGAATACGGTTGTAACGAAGTAACACCAAGACTATTTACTGAGGTTGAAGCCTTGTACGGTTCTAATATGACAGATGTCTGGTCTGGTGGTATCGTATACATGTACTTCGAAGAGACTAACAAATACGGTTTAGTTAGCATCGATGGTAATGATGTTAAAACTTTGGATGACTTCAACAACTATTCTTCTGAAATCAACAAAATATCACCAACTTCCGCCAACACAAAGTCTTACAGTGCAACAACAAGTGATGTTGCTTGTCCAGCTACTGGTAAGTACTGGTCCGCTGCAACAGAATTACCACCAACTCCAAACGGAGGCTTGTGTTCATGTATGAATGCAGCCAATAGTTGTGTTGTTTCCGATGACGTTGATTCTGATGATTACGAAACCTTATTTAACTGGATCTGTAATGAAGTCGACTGTAGCGGTATTTCAGCAAACGGTACCGCCGGTAAGTATGGTGCTTACTCTTTCTGTACACCAAAGGAACAGCTATCTTTCGTTATGAATTTGTACTACGAGAAGAGTGGTGGTAGCAAATCTGACTGTAGCTTCAGCGGTTCTGCCACTCTACAAACTGCCACCACGCAAGCTAGTTGCTCCTCCGCTTTGAAAGAGATTGGTAGTATGGGTACCAACTCTGCATCAGGTAGTGTTGATTTGGGTTCCGGAACTGAATCCAGTACTGCCTCTTCTAACGCTTCGGGGTCTTCTTCCAAGTCTAACTCCGGCTCTTCTGGTTCTTCCAGTTCTTCTTCTTCTTCTTCAGCTTCATCTTCATCTTCTAGCAAGAAGAATGCTGCCACCAACGTTAAAGCTAACTTAGCACAAGTGGTCTTTACCTCCATCATTTCCTTATCCATTGCCGCTGGTGTCGGTTTTGCTTTGGTTTAA
【0053】
配列番号6 変異型crh2
ATGGCAATCGTTAATAGTTGGCTAATTTGTTTAGTCAGTATTTTTTTTCGTGGTACGTGTAGAGGCCGCTACATTTTGCAATGCAACTCAAGCATGTCCCGAAGATAAACCATGTTGCTCACAATATGGTGAATGTGGTACTGGTCAATATTGTCTGAACAACTGTGATGTAAGATATTCGTTTAGTCATGATTCATGTATGCCTGTACCTATCTGCAAGAGTTCATCCACTAAATTCAAAGATTATTCCTCTAAGTTGGGGAATGCTAACACTTTCTTAGGAAATGTTAGTGAGGCTGATTGGTTGTATACTGGTGACGTTTTGGATTATGATGATGAAGAAAGTTTAATTTTGGCGATGCCCAAGAACAGTGGTGGTACCGTTCTTTCCTCCACGAGGGCTGTTTGGTATGGTAAGGTCAGTGCTAGAATAAAGACGTCACATCTTGCTGGTGTGGTCACTGGGTTCATTCTGTATTCCGGCGCAGGTGATGAACTTGATTACGAATTCGTCGGTGCTGATCTAGAAACTGCTCAAACCAATTTCTATTGGGAAAGTGTTTTGAACTACACGAATTCTGCCAATATTTCCACTACTGATACATTTGAAAACTACCATACTTACGAATTAGATTGGCACGAAGATTATGTAACATGGTCCATCGATGGTGTCGTCGGTAGAACCTTGTACAAGAACGAAACTTATAACGCCACCACCCAAAAATATCAATACCCACAAACCCCATCCAAGGTGGATATTTCCATTTGGCCAGGTGGTAATTCTACCAACGCTCCAGGAACCATTGCATGGTCTGGTGGTGAAATTAATTGGGACGCATCCGATATCAGCAACCCAGGATATTATTATGCTATTGTCAATGAAGTTAATATCACATGTTATGATCCACCAAGCGATACCAAGAAGAATGGTACTTCTGCTTATGTGTATACTTCGTCCAGTGAATTTTTGGCCAAAGACATTGCTATTACCGATGATGAGGTCATGATGGACAGTGATGAGGGATCTGGCTTGGACCCACATAAGGGAGCTACCACATCTTCCACCCAAAAGAGTTCTTCCTCAACTGCAACCTCTTCCTCCAAAACGTCATCCGATCACAGCAGTTCAACTAAGAAGAGTAGTAAGACTAGTTCCACCGCTTCATCATCATCATCATCATCTTCTTCTTCTTCTTCTTCTTCCTCTACTGCTACTAAGAACGGAGATAAAGTCGTATCCTCCGTATCCTCTTCCGTCACTTCCCAAACTCAAACAACATCTTCTGTAAGCGGAAGCGCCTCCAGCAGTACAAGCTCAATGAGCGGTAATAACGCAGGTGCCAACGTAGCGGCAAACTGGCGTTTGACTGTTTTATGTGTCATCCTAGGTTATGTCTTATAG
【0054】
配列番号7 変異型fks1
ATGAACACTGATCAACAACCTTATCAGGGCCAAACGGACTATACCCAGGGACCAGGTAACGGGCAAAGTCAGGAACAAGACTATGACCAATATGGCCAGCCTTTGTATCCTTCACAAGCTGATGGTTACTACGATCCAAATGTCGCTGCTGGTACTGAAGCTGATATGTATGGTCAACAACCACCAAACGAGTCTTACGACCAAGACTACACAAACGGTGAATACTATGGTCAACCGCCAAATATGGCTGCTCAAGACGGTGAAAACTTCTCGGATTTTAGCAGTTACGGCCCTCCTGGAACACCTGGATATGATAGCTATGGTGGTCAGTATACCGCTTCTCAAATGAGTTATGGAGAACCAAATTCGTCGGGTACCTCGACTCCAATTTACGGTAATTATGACCCAAATGCTATCGCTATGGCTTTGCCAAATGAACCTTATCCCGCTTGGACTGCTGACTCTCAATCTCCCGTTTCGATCGAGCAAATCGAAGATATCTTTATTGATTTGACCAACAGACTCGGGTTCCAAAGAGACTCCATGAGAAATATGTTTGATCATTTTATGGTTCTCTTGGACTCTAGGTAATCGAGAATGTCTCCTGATCAAGCTTTACTATCTTTACATGCCGACTACATTGGTGGCGATACTGCTAACTATAAAAAATGGTATTTTGCTGCTCAGTTAGATATGGATGATGAAATTGGTTTTAGAAATATGAGTCTTGGAAAACTCTCAAGGAAGGCAAGAAAAGCTAAGAAGAAAAACAAGAAAGCAATGGAAGAGGCCAATCCCGAAGACACTGAAGAAACTTTAAACAAAATTGAAGGCGACAACTCCCTAGAGGCTGCTGATTTTAGATGGAAGGCCAAGATGAACCAGTTGTCTCCCCTGGAAAGAGTTCGTCATATCGCCTTATATCTGTTATGTTGGGGTGAAGCTAATCAAGTCAGATTCACTGCTGAATGTTTATGTTTTATCTACAAGTGTGCTCTTGACTACTTGGATTCCCCTCTTTGCCAACAACGCCAAGAACCTATGCCAGAAGGTGATTTCTTGAATAGAGTCATTACGCCAATTTATCATTTCATCAGAAATCAAGTTTATGAAATTGTTGATGGTCGTTTTGTCAAGCGTGAAAGAGATCATAACAAAATTGTCGGTTATGATGATTTAAACCAATTGTTCTGGTATCCAGAAGGTATTGCAAAGATTGTTCTTGAAGATGGAACAAAATTGATAGAACTCCCATTGGAAGAACGTTATTTAAGATTAGGCGATGTCGTCTGGGATGATGTATTCTTCAAAACATATAAAGAGACCCGTACTTGGTTACATTTGGTCACCAACTTCAACCGTATTTGGGTTATGCATATCTCCATTTTTTGGATGTACTTTGCATATAATTCACCAACATTTTACACTCATAACTATCAACAATTGGTCGACAACCAACCTTTGGCTGCTTACAAGTGGGCATCTTGCGCATTAGGTGGTACTGTCGCAAGTTTGATTCAAATTGTCGCTACTTTGTGTGAATGGTCATTCGTTCCAAGAAAATGGGCTGGTGCTCAACATCTATCTCGTAGATTCTGGTTTTTATGCATCATCTTTGGTATTAATTTGGGTCCTATTATTTTTGTTTTTGCTTACGACAAAGATACAGTCTACTCCACTGCTGCACACGTTGTTGCTGCTGTTATGTTCTTTGTTGCGGTTGCTACCATCATATTCTTCTCCATTATGCCATTGGGGGGGTTGTTTACGTCATATATGAAAAAATCTACAAGGCGTTATGTTGCATCTCAAACATTCACTGCTGCATTTGCCCCTCTACATGGGTTAGATAGATGGATGTCCTATTTAGTTTGGGTTACTGTTTTTGCTGCCAAATATTCAGAATCGTACTACTTTTTAGTTTTATCTTTGAGAGATCCAATTAGAATTTTGTCCACCACTGCAATGAGGTGTACAGGTGAATACTGGTGGGGTGCGGTACTTTGTAAAGTGCAACCCAAGATTGTCTTAGGTTTGGTTATCGCTACCGACTTCATTCTTTTCTTCTTGGATACCTACTTATGGTACATTATTGTGAATACCATTTTCTCTGTTGGGAAATCTTTCTATTTAGGTATTTCTATCTTAACACCATGGAGAAATATCTTCACAAGATTGCCAAAAAGAATATACTCCAAGATTTTGGCTACTACTGATATGGAAATTAAATACAAACCAAAGGTTTTGATTTCTCAAGTATGGAATGCCATCATTATTTCAATGTACAGAGAACATCTCTTAGCCATCGACCATGTACAAAAATTACTATATCATCAAGTTCCATCTGAAATCGAAGGTAAAAGAACTTTGAGAGCTCCTACCTTCTTTGTTTCTCAAGATGACAATAATTTTGAGACTGAATTTTTCCCTAGGGATTCAGAGGCTGAGCGTCGTATTTCTTTCTTTGCTCAATCTTTGTCTACTCCAATTCCCGAACCACTTCCAGTTGATAACATGCCAACGTTCACAGTATTGACTCCTCACTACGCGGAAAGAATTCTGCTGTCATTAAGAGAAATTATTCGTGAAGATGACCAATTTTCTAGAGTTACTCTTTTAGAATATCTAAAACAATTACATCCCGTTGAATGGGAATGTTTTGTTAAGGATACTAAGATTTTGGCTGAAGAAACCGCTGCCTATGAAGGAAATGAAAATGAAGCTGAAAAGGAAGATGCTTTGAAATCTCAAATCGATGATTTGCCATTTTATTGTATTGGTTTTAAATCTGCTGCTCCAGAATATACACTTCGTACGAGAATTTGGGCTTCTTTGAGGTCGCAGACTCTATATCGTACCATTTCAGGGTTCATGAATTATTCAAGAGCTATCAAATTACTGTATCGTGTGGAAAATCCTGAAATTGTTCAAATGTTTGGTGGTAATGCTGAAGGCTTAGAAAGAGAGCTAGAAAAGATGGCAAGAAGAAAGTTTAAATTTTTGGTCTCTATGCAGAGATTGGCTAAATTCAAACCACATGAACTGGAAAATGCTGAGTTTTTGTTGAGAGCTTACCCAGACTTACAAATTGCCTACTTGGATGAAGAGCCACCTTTGACTGAAGGTGAGGAGCCAAGAATCTATTCCGCTTTGATTGATGGACATTGTGAAATTCTAGATAATGGTCGTAGACGTCCCAAGTTTAGAGTTCAATTATCTGGTAACCCAATTCTTGGTGACGGTAAATCTGATAACCAAAACCATGCTTTGATTTTTTACAGAGGTGAATACATTCAATTAATTGATGCCAACCAAGATAACTACTTGGAAGAATGTCTGAAGATTAGATCTGTATTGGCTGAATTTGAGGAATTGAACGTTGAACAAGTTAATCCATATGCTCCCGGTTTAAGGTATGAGGAGCAAACAACTAATCATCCTGTTGCTATTGTTGGTGCCAGAGAATACATTTTCTCTGAAAACTCTGGTGTGCTGGGTGATGTGGCCGCTGGTAAAGAACAAACTTTTGGTACATTATTTGCGCGTACTTTATCTCAAATTGGTGGTAAATTGCATTATGGTCATCCGGATTTCATTAATGCTACGTTTATGACCACTAGAGGTGGTGTTTCCAAAGCACAAAAGGGTTTGCATTTAAACGAAGATATTTATGCTGGTATGAATGCTATGCTTCGTGGTGGTCGTATCAAGCATTGTGAGTATTATCAATGTGGTAAAGGTAGAGATTTGGGTTTCGGTACAATTCTAAATTTCACTACTAAGATTGGTGCTGGTATGGGTGAACAAATGTTATCTCGTGAATATTATTATCTGGGTACCCAATTACCAGTGGACCGTTTCCTAACATTCTATTATGCCCATCCTGGTTTCCATTTGAACAACTTGTTCATTCAATTATCTTTGCAAATGTTTATGTTGACTTTGGTGAATTTATCTTCCTTGGCCCATGAATCTATTATGTGTATTTACGATAGGAACAAACCAAAAACAGATGTTTTGGTTCCAATTGGGTGTTACAACTTCCAACCTGCGGTTGATTGGGTGAGACGTTATACATTGTCTATTTTCATTGTTTTCTGGATTGCCTTCGTTCCTATTGTTGTTCAAGAACTAATTGAACGTGGTCTATGGAAAGCCACCCAAAGATTTTTCTGCCACCTATTATCATTATCCCCTATGTTCGAAGTGTTTGCGGGCCAAATCTACTCTTCTGCGTTATTAAGTGATTTAGCAATTGGTGGTGCTCGTTATATATCCACCGGTCGTGGTTTTGCAACTTCTCGTATACCATTTTCAATTTTGTATTCAAGATTTGCAGGATCTGCTATCTACATGGGTGCAAGATCAATGTTAATGTTGCTGTTCGGTACTGTCGCACATTGGCAAGCTCCACTACTGTGGTTTTGGGCCTCTCTATCTTCATTAATTTTTGCGCCTTTCGTTTTCAATCCACATCAGTTTGCTTGGGAAGATTTCTTTTTGGATTACAGGGATTATATCAGATGGTTATCAAGAGGTAATAATCAATATCATAGAAACTCGTGGATTGGTTACGTGAGGATGTCTAGGGCACGTATTACTGGGTTTAAACGTAAACTGGTTGGCGATGAATCTGAGAAAGCTGCTGGTGACGCAAGCAGGGCTCATAGAACCAATTTGATCATGGCTGAAATCATACCCTGTGCAATTTATGCAGCTGGTTGTTTTATTGCCTTCACGTTTATTAATGCTCAAACCGGTGTCAAGACTACTGATGATGATAGGGTGAATTCTGTTTTACGTATCATCATTTGTACCTTGGCGCCAATCGCCGTTAACCTCGGTGTTCTATTCTTCTGTATGGGTATGTCATGCTGCTCTGGTCCCTTATTTGGTATGTGTTGTAAGAAGACAGGTTCTGTAATGGCTGGAATTGCCCACGGTGTTGCTGTTATTGTCCACATTGCCTTTTTCATTGTCATGTGGGTTTTGGAGAGCTTCAACTTTGTTAGAATGTTAATCGGAGTCGTTACTTGTATCCAATGTCAAAGACTCATTTTTCATTGCATGACAGCGTTAATGTTGACTCGTGAATTTAAAAACGATCATGCCAATACAGCCTTCTGGACTGGTAAGTGGTATGGTAAAGGTATGGGTTACATGGCTTGGACCCAGCCAAGTAGAGAATTAACCGCCAAGGTAATTGAGCTTTCAGAATTTGCAGCTGATTTTGTTCTAGGTCATGTGATTTTAATCTGTCAACTGCCACTCATTATAATCCCAAAAATAGATAAATTCCACTCGATTATGCTATTCTGGCTAAAGCCCTCTCGTCAAATTCGTCCCCCAATTTACTCTCTGAAGCAAACTCGTTTGCGTAAGCGTATGGTCAAGAAGTACTGCTCTTTGTACTTTTTAGTATTGGCTATTTTTGCAGGATGCATTATTGGTCCTGCTGTAGCCTCTGCTAAGATCCACAAACACATTGGAGATTCATTGGATGGCGTTGTTCACAATCTATTCCAACCAATAAATACAACCAATAATGACACTGGTTCCCAAATGTCAACTTATCAAAGTCACTACTATACTCATACGCCATCATTAAAGACCTGGTCAACTATAAAATAA
【0055】
配列番号8 Cda1-Cda2発現カセット
GGCGCGTACATTTAATTTTCAACGTATTCTATAAGAAATTGCGGGAGTTTTTTTCATGTAGATGATACTGACTGCACGCAAATATAGGCATGATTTATAGGCATGATTTGATGGCTGTACCGATAGGAACGCTAAGAGTAACTTCAGAATCGTTATCCTGGCGGAAAAAATTCATTTGTAAACTTTAAAAAAAAAAGCCAATATCCCCAAAATTATTAAGAGCGCCTCCATTATTAACTAAAATTTCACTCAGCATCCACAATGTATCAGGTATCTACTACAGATATTACATGTGGCGAAAAAGACAAGAACAATGCAATAGCGCATCAAGAAAAAACACAAAGCTTTCAATCAATGAATCGAAAATGTCATTAAAATAGTATATAAATTGAAACTAAGTCATAAAGCTATAAAAAGAAAATTTATTTAAATGCAAGATTTAAAGTAAATTCACGCATGCCTAGTCGTAGCGTTCGATGTAGTCTGTATCACCAATACATTCTGCAATTGTCAATTGGTCACTACCAATAAGTTCGTTGATTTTAATAGCAACCTCAACTGTTCTTCGTGCACCATCGTGCTCTAAGATCAAACCTTTCCGTTTTCCCTTCCAAGTATTTATGTCCATAAGTATTTCTTCCTCTGTTCTGAAATCATCATTAGTGATTAATTTCCAATCAAAAGTATCGAGATCCCACAAGACAACCGTTAGGCCAAACTGTTTTACTATAGCTCTAACCCTATTATCAATTGCACCGTATGGAGGCCTAAAATACTTGGGGAAATGTTTGCCTGTGGCATTCATAGCCCAAATTGACCATTCAATTTGGGCTACAATTTCTTCGTTTGATAAACTTGGCAAGAATTCATGTGACCACGTGTGTGTACCAATCAAATGACCCCTCTCTAAAATATGCTCATATATATCAGGATAATTAACAGTGTTTATCCCCAGAACAAAAAAAGTGGTTCTTTGTCTCAATTTCTTGAGCAATGCCTCTGTCGCCGGGGCCGGACCGTCGTCAAATGTTTGGGAAAGTTTGAAACACGAAGTTACATCATCAACATCGATGCAGTTATAGCAGTCAAATGAGCACTGCTCTCTAGAAATTTTGGGACACTGGCCAGGATAGTACCTATCTAATTCTGGCACTTCAGTAAGATTTATGTAATCTAGCGGAATATAAGGTGGGTCAATTCCAGGCCATTGTGTAAGATTAGTAAATTCTGTTAACCACTCTGGAAAGGGCGTTTGCATATCTACTTCCCCCATCAATGCGGTACTCCCATTTGACGCAAGGCAATTTCCCTGTTTTAGAAAAAATGCTGCGAACAGCACAGATTGTATTGTATTGAAAATTTTCATCCATGGTTTGTTTGTTTATGTGTGTTTATTCGAAACTAAGTTCTTGGTGTTTTAAAACTAAAAAAAAGACTAACTATAAAAGTAGAATTTAAGAAGTTTAAGAAATAGATTTACAGAATTACAATCAATACCTACCGTCTTTATATACTTATTAGTCAAGTAGGGGAATAATTTCAGGGAACTGGTTTCAACCTTTTTTTTCAGCTTTTTCCAAATCAGAGAGAGCAGAAGGTAATAGAAGGTGTAAGAAAATGAGATAGATACATGCGTGGGTCAATTGCCTTGTGTCATCATTTACTCCAGGCAGGTTGCATCACTCCATTGAGGTTGTGCCCGTTTTTTGCCTGTTTGTGCCCCTGTTCTCTGTAGTTGCGCTAAGAGAATGGACCTATGAACTGATGGTTGGTGAAGAAAACAATATTTTGGTGCTGGGATTCTTTTTTTTTCTGGATGCCAGCTTAAAAAGCGGGCTCCATTATATTTAGTGGATGCCAGGAATAAACTGTTCACCCAGACACCTACGATGTTATATATTCTGTGTAACCCGCCCCCTATTTTGGGCATGTACGGGTTACAGCAGAATTAAAAGGCTAATTTTTTGACTAAATAAAGTTAGGAAAATCACTACTATTAATTATTTACGTATTCTTTGAAATGGCAGTATTGATAATGATAAACTCGAACTGACTCGAGAAAGATGCCGATTTGGGCGCGAATCCTTTATTTTGGCTTCACCCTCATACTATTATCAGGGCCAGAAAAAGGAAGTGTTTCCCTCCTTCTTGAATTGATGTTACCCTCATAAAGCACGTGGCCTCTTATCGAGAAAGAAATTACCGTCGCTCGTGATTTGTTTGCAAAAAGAACAAAACTGAAAAAACCCAGACACGCTCGACTTCCTGTCTTCCTATTGATTGCAGCTTCCAATTTCGTCACACAACAAGGTCCTAGCGACGGCTCACAGGTTTTGTAACAAGCAATCGAAGGTTCTGGAATGGCGGGAAAGGGTTTAGTACCACATGCTATGATGCCCACTGTGATCTCCAGAGCAAAGTTCGTTCGATCGTACTGTTACTCTCTCTCTTTCAAACAGAATTGTCCGAATCGTGTGACAACAACAGCCTGTTCTCACACACTCTTTTCTTCTAACCAAGGGGGTGGTTTAGTTTAGTAGAACCTCGTGAAACTTACATTTACATATATATAAACTTGCATAAATTGGTCAATGCAAGAAATACATATTTGGTCTTTTCTAATTCGTAGTTTTTCAAGTTCTTAGATGCTTTCTTTTTCTCTTTTTTACAGATCATCAAGGAAGTAATTATCTACTTTTTACAACAAATATAAAACGCTAGCGTCGACATGAGAATACAACTAAATACAATTGATTTGCAATGTATTATTGCACTTTCCTGTCTGGGGCAATTTGTTCACGCGGAAGCTAATAGGGAAGATTTAAAGCAGATAGACTTTCAATTTCCTGTATTGGAAAGGGCAGCTACAAAAACGCCTTTTCCGGATTGGCTTAGTGCATTTACCGGGTTAAAAGAATGGCCTGGGTTAGATCCACCTTATATACCTTTAGATTTCATTGATTTCAGTCAAATTCCAGATTATAAGGAATATGATCAAAACCATTGCGACAGTGTTCCAAGGGACTCGTGCTCTTTCGATTGCCATCACTGCACCGAACACGATGATGTGTACACATGTTCCAAACTTTCCCAGACATTTGACGATGGTCCTTCTGCTTCCACTACTAAATTATTGGACCGGTTGAAGCATAATTCCACCTTCTTCAATTTAGGTGTCAATATAGTTCAACATCCAGATATCTATCAAAGAATGCAAAAGGAGGGACACTTAATCGGCTCACATACCTGGTCTCACGTATATTTGCCAAATGTATCGAATGAAAAAATTATAGCTCAAATTGAATGGTCCATCTGGGCGATGAATGCTACTGGCAACCATACCCCCAAATGGTTCAGACCTCCATATGGCGGAATAGATAATAGAGTAAGAGCAATAACAAGGCAATTTGGCTTACAAGCCGTCTTATGGGATCACGATACTTTTGATTGGAGCCTCCTTCTCAATGATTCTGTCATAACTGAACAAGAAATTCTTCAAAATGTAATAAACTGGAACAAGTCAGGAACCGGATTAATATTAGAACACGATTCAACGGAAAAAACTGTCGATCTTGCCATTAAAATAAATAAGTTGATAGGTGATGATCAATCAACAGTTTCTCATTGTGTCGGCGGAATTGATTACATAAAAGAATTCTTGTCCTAAGGATCCCCCGGGTCTAGAGAATTCAGATCTGAAATAAATTGAATTGAATTGAAATCGATAGATCAATTTTTTTCTTTTCTCTTTCCCCATCCTTTACGCTAAAATAATAGTTTATTTTATTTTTTGAATATTTTTTATTTATATACGTATATATAGACTATTATTTATCTTTTAATGATTATTAAGATTTTTATTAAAAAAAAATTCGCTCCTCTTTTAATGCCTTTATGCAGTTTTTTTTTCCCATTCGATATTTCTATGTTCGGGTTCAGCGTATTTTAAGTTTAATAACTCGAAAATTCTGCGTT
【0056】
2.キトサン生産培養
各菌株を用いてキトサン生産培養を行った。使用した培地の組成を下表に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
各菌株を中試験管に張り込んだ上記培地3mLに植菌し、30℃、200rpmで振盪培養して前培養液を得た。前培養液を500mL容バッフルフラスコに張り込んだ上記培地50mLに0.2%植菌して、30℃、160rpmで振盪培養した。
培養5日目に培養液を回収し、終濃度2%になるよう酢酸を添加して3時間以上ローテーターで転倒混和し、キトサンを可溶化した。遠心して菌体残渣を棄却し、得られたキトサン溶液を3Kの限外濾過フィルターにて濃縮した。濃縮液に、終濃度が72%(w/w)になるよう96%硫酸を加え混和した。常温で3時間静置したのち、水を加えてさらに100℃で4時間加熱した。得られた硫酸加水分解物を氷上で冷却し、飽和水酸化バリウム水溶液を添加して中和した。中和液を遠心して上清を取得した。得られた中和液をHPLCにて分析し、キトサンの酸加水分解物GlcNをキトサン生産量として定量した。
下記表中、小文字・下線(例:smi1)はその遺伝子に変異を入れて機能を欠損させたことを意味する。pGK425はプラスミドDNAの名称である。大文字・下線(例:CDA1)は完全な遺伝子を導入して機能を追加あるいは増強したことを意味する。
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
試験例2:リン酸化タンパク質レベルの検討
試験例1で調製した実施例3(gas1 crh2 crh1 smi1/pGK425-CDA1-CDA2)及び比較例4(gas1 crh2 crh1/pGK425-CDA1-CDA2)を用いてSmi1破壊による各ペプチド(Slt2、Rlm1、Crz1)のリン酸化レベルの変化を調べた。
各菌株を培養し、菌体から全タンパク質を抽出した。前処理の後リン酸化タンパク質を濃縮し、LC-MSにて定量した。結果を表6に示す。分析過程で複数のペプチドに断片化された場合は、ペプチドごとにリン酸化レベルを測定した。
【0062】
【表6】
【0063】
Smi1を破壊(Smi1機能欠損)することでSlt2及びRlm1のリン酸化レベルの上昇が確認され、CWI経路の活性化が確認された。また、Smi1機能欠損によりCrz1のリン酸化レベルの上昇が確認され、CN経路の不活性化が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、微生物を用いたキチン・キトサンの製造が可能であり、特に、グルコースを細胞内の酵素反応でキトサンに変換させ、分泌生産させることで、環境負荷の少ない安定的な製造が可能になる。
【配列表】
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