(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166328
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】光バースト送信機
(51)【国際特許分類】
H04B 10/50 20130101AFI20241121BHJP
H01S 5/042 20060101ALI20241121BHJP
H01S 5/50 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H04B10/50
H01S5/042 630
H01S5/50 610
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024158566
(22)【出願日】2024-09-12
(62)【分割の表示】P 2022548279の分割
【原出願日】2020-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】金澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】吉松 俊英
(72)【発明者】
【氏名】神田 淳
(57)【要約】
【課題】高効率な光バースト送信機を提供する。
【解決手段】一実施態様は、データ信号およびバースト制御信号を出力する制御回路と、データ信号により変調された光データ信号を、バースト制御信号により制御された光バーストデータ信号として出力する半導体光増幅器とを有する光バースト送信機において、制御回路と半導体光増幅器とを接続し、バースト制御信号を伝送する電気線路と、電気線路の特性インピーダンスと半導体光増幅器とをインピーダンス整合させるためのインピーダンス整合回路と、を備えたことを特徴とする光バースト送信機であって、インピーダンス整合回路は、電気線路の特性インピーダンスをZ0としたとき、半導体光増幅器と並列にZ0の抵抗値となることを特徴とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ信号およびバースト制御信号を出力する制御回路と、前記データ信号により変調された光データ信号を、前記バースト制御信号により制御された光バーストデータ信号として出力する半導体光増幅器とを有する光バースト送信機において、
前記制御回路と前記半導体光増幅器とを接続し、前記バースト制御信号を伝送する電気線路と、
前記電気線路の特性インピーダンスと前記半導体光増幅器とをインピーダンス整合させるためのインピーダンス整合回路と
を備え、
前記インピーダンス整合回路は、前記電気線路の特性インピーダンスをZ0としたとき、前記半導体光増幅器と並列にZ0の抵抗値となることを特徴とする光バースト送信機。
【請求項2】
データ信号およびバースト制御信号を出力する制御回路と、前記データ信号により変調された光データ信号を、前記バースト制御信号により制御された光バーストデータ信号として出力する半導体光増幅器とを有する光バースト送信機において、
前記制御回路と前記半導体光増幅器とを接続し、前記バースト制御信号を伝送する電気線路と、
前記電気線路の特性インピーダンスと前記半導体光増幅器とをインピーダンス整合させるためのインピーダンス整合回路と
を備え、
前記インピーダンス整合回路は、前記半導体光増幅器の順方向の抵抗値をRf、前記電気線路の特性インピーダンスをZ0としたとき、前記半導体光増幅器と並列にRP1の抵抗値となる第1抵抗と、前記半導体光増幅器と直列にRS1の抵抗値となる第2抵抗とを含み、
【数1】
となるように設定されていることを特徴とする光バースト送信機。
【請求項3】
データ信号およびバースト制御信号を出力する制御回路と、前記データ信号により変調された光データ信号を、前記バースト制御信号により制御された光バーストデータ信号として出力する半導体光増幅器とを有する光バースト送信機において、
前記制御回路と前記半導体光増幅器とを接続し、前記バースト制御信号を伝送する電気線路と、
前記電気線路の特性インピーダンスと前記半導体光増幅器とをインピーダンス整合させるためのインピーダンス整合回路と
を備え、
前記インピーダンス整合回路は、前記半導体光増幅器の順方向の抵抗値をRf、前記電気線路の特性インピーダンスをZ0としたとき、前記半導体光増幅器と並列にRP1の抵抗値となる第1抵抗と、前記半導体光増幅器と直列にRS1の抵抗値となる第2抵抗とを含み、RP1=Z0となるように設定されていることを特徴とする光バースト送信機。
【請求項4】
データ信号およびバースト制御信号を出力する制御回路と、前記データ信号により変調された光データ信号を、前記バースト制御信号により制御された光バーストデータ信号として出力する半導体光増幅器とを有する光バースト送信機において、
前記制御回路と前記半導体光増幅器とを接続し、前記バースト制御信号を伝送する電気線路と、
前記電気線路の特性インピーダンスと前記半導体光増幅器とをインピーダンス整合させるためのインピーダンス整合回路と
を備え、
前記インピーダンス整合回路は、前記半導体光増幅器の順方向の抵抗値をRf、前記電気線路の特性インピーダンスをZ0としたとき、前記半導体光増幅器と並列にRP2の抵抗値となる第1抵抗と、前記半導体光増幅器と前記第1抵抗とからなる並列回路と直列にRS2の抵抗値となる第2抵抗とを含み、
【数2】
となるように設定されていることを特徴とする光バースト送信機。
【請求項5】
データ信号およびバースト制御信号を出力する制御回路と、前記データ信号により変調された光データ信号を、前記バースト制御信号により制御された光バーストデータ信号として出力する半導体光増幅器とを有する光バースト送信機において、
前記制御回路と前記半導体光増幅器とを接続し、前記バースト制御信号を伝送する電気線路と、
前記電気線路の特性インピーダンスと前記半導体光増幅器とをインピーダンス整合させるためのインピーダンス整合回路と
を備え、
前記インピーダンス整合回路は、前記半導体光増幅器の順方向の抵抗値をRf、前記電気線路の特性インピーダンスをZ0としたとき、前記半導体光増幅器と並列に逆向き挿入されたダイオードと、前記半導体光増幅器と前記ダイオードとからなる並列回路と直列にZ0-Rfの抵抗値となる抵抗とを含み、前記ダイオードは、順方向および逆方向の抵抗分が前記半導体光増幅器の抵抗値と同一であることを特徴とする光バースト送信機。
【請求項6】
データ信号およびバースト制御信号を出力する制御回路と、前記データ信号により変調された光データ信号を、前記バースト制御信号により制御された光バーストデータ信号として出力する半導体光増幅器とを有する光バースト送信機において、
前記制御回路と前記半導体光増幅器とを接続し、前記バースト制御信号を伝送する電気線路と、
前記電気線路の特性インピーダンスと前記半導体光増幅器とをインピーダンス整合させるためのインピーダンス整合回路と
を備え、
前記インピーダンス整合回路は、前記半導体光増幅器の順方向の抵抗値をRf、前記電気線路の特性インピーダンスをZ0としたとき、前記半導体光増幅器と直列にZ0-Rfの抵抗値となる第1抵抗と、前記半導体光増幅器と並列に逆向き挿入されたダイオードおよびZ0-Rfの抵抗値となる第2抵抗からなる直列回路とを含み、前記ダイオードは、順方向および逆方向の抵抗分が前記半導体光増幅器の抵抗値と同一であることを特徴とする光バースト送信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光バースト送信機の高効率化に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像サービス等によりインターネットトラフィックが急増しており、それを支える光アクセスシステムの高速化・高度化が急務となっている。光アクセスシステムの多くでは、PON(Passive Optical Network)と呼ばれるトポロジーを用いたシステムによって構築されている。
【0003】
図1は、従来のPONシステムの概念を示す図である。PONシステムは、光ファイバ伝送路中に設置された光スプリッタ2を介して、収容局に設置された1台の終端装置(OLT:Optical Line Terminal)1に対して、複数の加入者宅に設置された宅内装置(ONU:Optical Network Unit)3
1-3
Nを収容する。光ファイバ伝送路4、光スプリッタ2、およびOLT1を、複数の加入者間で共有する光アクセスシステムである。OLT1からONU3
1-3
Nへの下り信号(DN0)は、時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)され、光スプリッタ2で分岐されて(DN1-DNN)各加入者に伝送される。ONU3
1-3
Nからの上り信号(UP1-UPN)は、各加入者から時分割多元アクセス(TDMA:Time Division Multiple Access)により多重化されて(UP0)OLT1に伝送される。このとき、各ONUのからの上り信号の干渉を防ぐために、ガードタイムTを設定している。
【0004】
PONシステムは、ITU-Tにおいては、B-PON、G-PON、XG-PON、NG-PON2が標準化されており、IEEEにおいては、GE-PON、10GE-PONが標準化されている。それぞれ、1波長あたりの伝送レートは10Gbpsまで高速化されている。さらなるPONシステムの高速化、および高度化を目指し、次世代PONシステムの検討がされており、ITU-Tでは50G-PON、IEEEでは25G-EPONと呼ばれるシステムの議論が始まっている。これらのPONシステムでは、1波長あたりの伝送レートが従来の10Gbpsを超えた、25Gbps、50Gbpsにて検討されている。
【0005】
このような高速な伝送レートを実現するためには、光送受信機の高速化が必要である。PONシステムにおいては、1台のOLTに複数台のONUを収容するため、各ONUから任意のタイミングで光信号を発生または消光する必要があり、それを実現するための光バースト送信機の高速化が欠かせない。また、高速化に伴い受信機での受信感度が劣化することから、10Gbps級のシステムと同様のバジェットを確保するために、光バースト送信機の高出力化も欠かせない。
【0006】
図2に、従来の光バースト送信機の構成を示す。光バースト送信機10は、バースト信号用MACチップ11、バースト信号用直接変調用レーザドライバ12、および直接変調用レーザ13が順に接続されている。バースト信号用MACチップ11からデータ信号およびバースト制御信号が出力される。このデータ信号およびバースト制御信号は、バースト信号用直接変調用レーザドライバ12に入力される。バースト信号用直接変調用レーザドライバ12に、バースト制御信号のON信号が入力されたとき、バースト信号用直接変調用レーザドライバ12はONとなりバーストデータ信号が出力される。このバーストデータ信号が直接変調用レーザ13に入力され、光バーストデータ信号が発生する。バースト信号用直接変調用レーザドライバ12に、バースト制御信号のOFF信号が入力されたとき、バースト信号用直接変調用レーザドライバはOFFとなりバーストデータ信号は出力されない。
【0007】
光バースト送信機の高速化には、これらのすべての部品の高速化が欠かせない。しかしながら、実用レベルの高速な直接変調レーザの速度は、高速化の研究がなされているが、現在25Gbps級レベルまでとなっている。また、直接変調用レーザを高速化するために、レーザの共振器長を短くする必要がある。これに伴って、出力光のパワーが低下するので、高速化と高出力化の両立が課題である。
【0008】
図3に、従来の外部変調器と半導体光増幅器を用いた光バースト送信機の構成を示す。上述した課題を解決する方法として、直接変調用レーザの代わりに外部変調器と半導体光増幅器を使用した方法がある(例えば、非特許文献参照)。光バースト送信機20は、外部変調器24によって高速化を、半導体光増幅器25によって高出力化を実現している。光バースト送信機20においては、バースト信号用MACチップ21から発生しているデータ信号は、ドライバ22を介して外部変調器24へ入力される。外部変調器24にはレーザ23から無変調の光信号も入力されており、外部変調器24から、変調された光データ信号が半導体光増幅器25へ入力される。バースト信号用MACチップ21から出力されているバースト制御信号は、半導体光増幅器25に入力され、バースト制御信号がONのとき半導体光増幅器25から光バーストデータ信号が出力され、バースト制御信号がOFFのとき半導体光増幅器25では光データ信号が消光され、光バーストデータ信号は出力されない。光バースト送信機20は、バースト信号専用のデバイスはMACチップのみとなっており、その他は、通常の連続信号用のデバイスを使用可能である.従って、光バースト送信機の低コストが可能である。
【0009】
図4を参照して、従来の光バースト送信機の課題を説明する。バースト制御信号がONからOFFへ遷移するとき、光バーストデータ信号の立ち下りにおいて、数10nsec~数100nsの遅延d
DNが生じる。同様に、バースト制御信号がOFFからONへ遷移するとき、光バーストデータ信号の立ち上がりにおいても遅延d
UPが生じる。
図1に示したように、各ONUからの上り信号を切り替える時の干渉を防ぐために、ガードタイムが設定されている。光バーストデータ信号の立ち下りの遅延および立ち上りの遅延が生じている場合、このガードタイムを長くとる必要があり、データ伝送が非効率となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Katsuhisa Taguchi, et al., "High Output Power and burst extinction ratio ONU using a simple configuration booster SOA with gain peak detuning for WDM/TDM-PON", OFC 2014 (C) OSA 2014, W3G.7.pdf
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、高効率な光バースト送信機を提供することにある。
【0012】
本発明は、このような目的を達成するために、一実施態様は、データ信号およびバースト制御信号を出力する制御回路と、データ信号により変調された光データ信号を、バースト制御信号により制御された光バーストデータ信号として出力する半導体光増幅器とを有する光バースト送信機において、制御回路と半導体光増幅器とを接続し、バースト制御信号を伝送する電気線路と、電気線路の特性インピーダンスと半導体光増幅器とをインピーダンス整合させるためのインピーダンス整合回路と、を備えたことを特徴とする光バースト送信機であって、インピーダンス整合回路は、電気線路の特性インピーダンスをZ0としたとき、半導体光増幅器と並列にZ0の抵抗値となることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、光バーストデータ信号の立ち下りの遅延および立ち上りの遅延を抑制し、高効率な光バースト送信機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、従来のPONシステムの概念を示す図、
【
図2】
図2は、従来の光バースト送信機の構成を示す図、
【
図3】
図3は、従来の外部変調器と半導体光増幅器を用いた光バースト送信機の構成を示す図、
【
図4】
図4は、従来の光バースト送信機の課題を説明するための図、
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態にかかる光バースト送信機の構成を示す図、
【
図6】
図6は、第1の実施形態の光バースト送信機の動作を説明するための図、
【
図7】
図7は、第2の実施形態の光バースト送信機の動作を説明するための図、
【
図8】
図8は、第3の実施形態の光バースト送信機の動作を説明するための図、
【
図9】
図9は、第4の実施形態の光バースト送信機の動作を説明するための図、
【
図10】
図10は、第4の実施形態のインピーダンス整合回路の抵抗値の範囲を示す図、
【
図11】
図11は、第5の実施形態の光バースト送信機の動作を説明するための図、
【
図12】
図12は、第6の実施形態の光バースト送信機の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
[光バースト送信機]
図5に、本発明の一実施形態にかかる光バースト送信機の構成を示す。光バースト送信機30は、データ信号およびバースト制御信号を出力する制御回路であるバースト信号用MAC(Media Access Control)チップ31と、データ信号を増幅するドライバ32と、レーザ33から無変調光が入力され、無変調光をデータ信号によって変調し光データ信号を出力する外部変調器34と、バースト制御信号に従い光データ信号を増幅ならびに消光する半導体光増幅器35とが順に接続されている。バースト制御信号を伝送する電気線路36は、インピーダンス整合するためのインピーダンス整合回路37を介して、バースト信号用MACチップ31と半導体光増幅器35とを接続している。
【0017】
レーザ33と外部変調器34とが一体的に集積された構成としてもよく、加えて半導体光増幅器35も一体的に集積してもよい。インピーダンス整合回路37は、半導体光増幅器と同一のパッケージに実装してもよい。
【0018】
[第1の実施形態]
図6を参照して、第1の実施形態の光バースト送信機の動作を説明する。バースト信号用MACチップ31から出力されたバースト制御信号は、電気線路36を通じて半導体光増幅器35に入力される。バースト制御信号がOFFからONになったとき、半導体光増幅器35は、光データ信号を増幅する。このとき、バースト制御信号は、半導体光増幅器35に対して順方向の電流を入力することにより、光データ信号を増幅させる。
【0019】
一般的に、高速のデータ信号を伝送する電気線路の特性インピーダンスは、50Ωに設定される。これに対して、半導体光増器35の順方向の抵抗は、数Ω程度(Rf)と非常に低い値である。そこで、バースト制御信号を伝送する電気線路36の特性インピーダンスZ0と半導体光増幅器35とをインピーダンス整合させるために、半導体光増幅器35と直列にZ0-Rfの抵抗値となるインピーダンス整合回路37を挿入する。このような構成により、バースト制御信号がOFFからONになったとき、光バーストデータ信号の立ち上りの遅延を抑制することが可能となる。
【0020】
[第2の実施形態]
図7を参照して、第2の実施形態の光バースト送信機の動作を説明する。バースト信号用MACチップ31から出力されたバースト制御信号は、電気線路36を通じて半導体光増幅器35に入力される。バースト制御信号がONからOFFになったとき、光データ信号を半導体光増幅器35にて、消光する必要がある。このとき、バースト制御信号は、半導体光増幅器35に対して逆方向の電流を入力することにより、光データ信号を吸収させる。
【0021】
半導体光増幅器の逆方向の抵抗分は、一般に大きな値を有しており、実効的に無限大と考えられる。そこで、電気線路36の特性インピーダンスZ0と半導体光増幅器35とをインピーダンス整合させるために、半導体光増幅器35と並列にZ0の抵抗値となるインピーダンス整合回路37を挿入する。このような構成により、バースト制御信号がONからOFFになったとき、光バーストデータ信号の立ち下りの遅延を抑制して消光することが可能となる。
【0022】
[第3の実施形態]
第1の実施形態の光バースト送信機は、インピーダンス整合回路37である抵抗と半導体光増幅器35とが直列に並んでいるため、バースト制御信号がOFFからONになったとき、光バーストデータ信号の立ち上りの遅延を抑制することが可能となる。一方で、バースト制御信号がONからOFFになったとき、光バーストデータ信号は、立ち下りの遅延が発生する。
【0023】
第2の実施形態の光バースト送信機は、インピーダンス整合回路37である抵抗と半導体光増幅器35とが並列に並んでいるため、バースト制御信号がONからOFFになったとき、光バーストデータ信号は立ち下りの遅延を抑制することが可能となる。一方で、バースト制御信号がOFFからONになったとき、光バーストデータ信号は、立ち上りの遅延が発生する。従って、立ち上りの遅延と立ち下りの遅延の双方を抑制するためには、半導体光増幅器35に対して、直列と並列双方に抵抗分が挿入されたインピーダンス整合回路が必要となる。
【0024】
図8を参照して、第3の実施形態の光バースト送信機の動作を説明する。バースト信号用MACチップ31から出力されたバースト制御信号は、電気線路36を通じて半導体光増幅器35に入力される。バースト制御信号がONからOFFとなったとき、光データ信号を半導体光増幅器35にて、消光する必要がある。このとき、バースト制御信号は、半導体光増幅器35に対して逆方向の電流を入力することにより、光データ信号を吸収させる。半導体光増幅器の逆方向の抵抗分は、一般に大きな値を有しており、実効的に無限大と考えられる。そこで、電気線路36の特性インピーダンスZ0と半導体光増幅器35とをインピーダンス整合させるために、半導体光増幅器35と並列にRP1の抵抗値となる抵抗P1を挿入する。
【0025】
バースト制御信号がOFFからONとなったとき、半導体光増幅器35は、光データ信号を増幅する。このとき、バースト制御信号は、半導体光増幅器35に対して順方向の電流を入力することにより、光データ信号を増幅させる。半導体光増幅器35の順方向の抵抗は、数Ω程度(Rf)と非常に低い値である。そこで、バースト制御信号を伝送する電気線路36の特性インピーダンスZ0と半導体光増幅器35とをインピーダンス整合させるために、半導体光増幅器35と直列にRS1の抵抗値となる抵抗S1を挿入する。このように、第3の実施形態のインピーダンス整合回路37は、抵抗P1と抵抗S1とから構成される。
【0026】
バースト制御信号がOFFからONになったときのインピーダンス整合回路37と半導体光増幅器35とを合わせたインピーダンスZonは、
【0027】
【0028】
となる。バースト制御信号がONからOFFになったときのインピーダンス整合回路37と半導体光増幅器35を合わせたインピーダンスZoffは、RP1となる。
【0029】
バースト制御信号がOFFからONになったときのインピーダンスZonと、バースト制御信号がONからOFFになったときのインピーダンスZoffとが一致するためには、
【0030】
【0031】
となる必要があるが、これを満たすRS1とRP1の抵抗値はない。そのため、ZonとZoffはどちらか一方を電気線路の特性インピーダンスZ0と一致する値とし、立ち上りまたは立ち下りの一方の遅延を抑制し、他方の遅延は許容される値となるようにする。
【0032】
抵抗S1,P1の値を、
【0033】
【0034】
となるように設定した場合、バースト制御信号がOFFからONになったときのインピーダンス整合回路37と半導体光増幅器35とを合わせたインピーダンスZonが電気回路36の特性インピーダンスZ0と一致する。このことから、光バーストデータ信号の立ち上りの遅延を抑制することが可能となる。
【0035】
また、抵抗P1の値をRP1=Z0となるように設定した場合、バースト制御信号がONからOFFになったときのインピーダンス整合回路37と半導体光増幅器35とを合わせたインピーダンスZoffが電気回路36の特性インピーダンスZ0と一致する。このことから、光バーストデータ信号の立ち下りの遅延を抑制して消光することが可能となる。
【0036】
[第4の実施形態]
第1の実施形態の光バースト送信機は、インピーダンス整合回路37である抵抗と半導体光増幅器35とが直列に並んでいるため、バースト制御信号がOFFからONになったとき、光バーストデータ信号の立ち上りの遅延を抑制することが可能となる。一方で、バースト制御信号がONからOFFになったとき、光バーストデータ信号は、立ち下りの遅延が発生する。
【0037】
第2の実施形態の光バースト送信機は、インピーダンス整合回路37である抵抗と半導体光増幅器35とが並列に並んでいるため、バースト制御信号がONからOFFになったとき、光バーストデータ信号は立ち下りの遅延を抑制することが可能となる。一方で、バースト制御信号がOFFからONになったとき、光バーストデータ信号は、立ち上りの遅延が発生する。従って、立ち上りの遅延と立ち下りの遅延の双方を抑制するためには、半導体光増幅器35に対し、直列と並列双方に抵抗分が挿入されたインピーダンス整合回路が必要となる。
【0038】
図9を参照して、第4の実施形態の光バースト送信機の動作を説明する。バースト信号用MACチップ31から出力されたバースト制御信号は、電気線路36を通じて半導体光増幅器35に入力される。バースト制御信号がONからOFFとなったとき、光データ信号を半導体光増幅器35にて、消光する必要がある。このとき、バースト制御信号は、半導体光増幅器35に対して逆方向の電流を入力することにより、光データ信号を吸収させる。半導体光増幅器の逆方向の抵抗分は、一般に大きな値を有しており、実効的に無限大と考えられる。そこで、電気線路36の特性インピーダンスZ0と半導体光増幅器35とをインピーダンス整合させるために、半導体光増幅器35と並列にRP2の抵抗値となる抵抗P2を挿入する。
【0039】
バースト制御信号がOFFからONとなったとき、半導体光増幅器35は、光データ信号を増幅する。このとき、バースト制御信号は、半導体光増幅器35に対して順方向の電流を入力することにより、光データ信号を増幅させる。半導体光増幅器35の順方向の抵抗は、数Ω程度(Rf)と非常に低い値である。そこで、バースト制御信号を伝送する電気線路36の特性インピーダンスZ0と半導体光増幅器35とをインピーダンス整合させるために、半導体光増幅器35と抵抗P2からなる並列回路と直列にRS2の抵抗値となる抵抗S2を挿入する。このように、第4の実施形態のインピーダンス整合回路37は、抵抗P2と抵抗S2とから構成される。
【0040】
抵抗P2と抵抗S2の抵抗値は、電気線路36の特性インピーダンスZ0と整合するようにする必要がある。バースト制御信号がOFFからONになったときのインピーダンス整合回路37と半導体光増幅器35とを合わせたインピーダンスZonは、
【0041】
【0042】
となる。バースト制御信号がONからOFFになったときのインピーダンス整合回路37と半導体光増幅器35を合わせたインピーダンスZoffは、RS2+RP2となる。
【0043】
バースト制御信号がOFFからONになったときのインピーダンスZonと、バースト制御信号がONからOFFになったときのインピーダンスZoffとが一致するためには、
【0044】
【0045】
となる必要があるが、これを満たすRS1とRP1の抵抗値はない。そのため、ZonとZoffは、電気線路36の特性インピーダンスZ0とおおよそ一致する値にする必要がある。このとき、高周波回路では、反射減衰量RLが20dB以上であることが一つの指標となる。反射減衰量は、特性インピーダンスをZ0、入力インピーダンスをZLとしたとき、
【0046】
【0047】
と表現される。ZLの範囲は、0.82×Z0<ZL<1.22×Z0となり、以下の式(1)と式(2)を境界線とする範囲で表現することできる。
【0048】
【0049】
図10に、第4の実施形態のインピーダンス整合回路の抵抗値の範囲を示す。Rf=5Ω、Z0=50Ωのとき、式(1)と式(2)を満たす範囲を図示している。任意のRfに応じて式(1)、式(2)を満たす、RP2,RS2の値を選択することにより、反射減衰量20dB以上を有し、電気線路36の特性インピーダンスZ0にほぼ整合したインピーダンス整合回路37を構成することが可能となる。このことから、バースト制御信号がONからOFFになったとき、バースト制御信号がOFFからONになったときの双方で、光バーストデータ信号の立ち下りの遅延と立ち上りの遅延とを、ほぼ抑制することが可能となる。
【0050】
[第5の実施形態]
図11を参照して、第5の実施形態の光バースト送信機の動作を説明する。バースト信号用MACチップ31から出力されたバースト制御信号は、電気線路36を通じて半導体光増幅器35に入力される。第5の実施形態のインピーダンス整合回路37は、第4の実施形態のインピーダンス整合回路37の抵抗P2を、ダイオードD1に置き換えた構成とする。ダイオードD1は、半導体光増幅器35と並列に逆向きに挿入される。ダイオードD1は、順方向および逆方向の抵抗分が、半導体光増幅器35の抵抗値と同一である。インピーダンス整合回路37は、半導体光増幅器35とダイオードD1からなる並列回路と直列にZ0-Rfの抵抗値となる抵抗S3が挿入されている。
【0051】
バースト制御信号がOFFからONとなったとき、半導体光増幅器35は、光データ信号を増幅する。このとき、バースト制御信号は、半導体光増幅器35に対して順方向の電流を入力することにより、光データ信号を増幅させる。半導体光増幅器35の順方向の抵抗は、数Ω程度(Rf)と非常に低い値である。一方、インピーダンス整合回路37のダイオードD1の逆方向の抵抗は、実効的に無限大と考えられる。そこで、バースト制御信号を伝送する電気線路36の特性インピーダンスZ0と半導体光増幅器35とをインピーダンス整合させるために、半導体光増幅器35と直列にZ0-Rfの抵抗値となる抵抗S3を挿入する。このような構成により、バースト制御信号がOFFからONになったとき、光バーストデータ信号の立ち上りの遅延を抑制することが可能となる。
【0052】
バースト制御信号がONからOFFとなったとき、光データ信号を半導体光増幅器35にて、消光する必要がある。このとき、バースト制御信号は、半導体光増幅器35に対して逆方向の電流を入力することにより、光データ信号を吸収させる。半導体光増幅器35の逆方向の抵抗分は、一般に大きな値を有しており、実効的に無限大と考えられる。一方、インピーダンス整合回路37のダイオードD1の順方向の抵抗Rdは、数Ω程度である。そこで、電気線路36の特性インピーダンスZ0と半導体光増幅器35とをインピーダンス整合させるために、半導体光増幅器35と並列に逆向きにダイオードD1を挿入している。このような構成により、バースト制御信号がONからOFFになったとき、光バーストデータ信号の立ち下りの遅延を抑制して消光することが可能となる。
【0053】
[第6の実施形態]
図12を参照して、第6の実施形態の光バースト送信機の動作を説明する。バースト信号用MACチップ31から出力されたバースト制御信号は、電気線路36を通じて半導体光増幅器35に入力される。第6の実施形態のインピーダンス整合回路37は、半導体光増幅器35と直列にZ0-Rfの抵抗値となる抵抗S4と、半導体光増幅器35と並列に逆向きに挿入されたダイオードD2および抵抗値Z0-Rfとなる抵抗S5からなる直列回路とを含む。ダイオードD2は、順方向および逆方向の抵抗分が、半導体光増幅器35の抵抗値と同一である。
【0054】
バースト制御信号がOFFからONとなったとき、半導体光増幅器35は、光データ信号を増幅する。このとき、バースト制御信号は、半導体光増幅器35に対して順方向の電流を入力することにより、光データ信号を増幅させる。半導体光増幅器35の順方向の抵抗は、数Ω程度(Rf)と非常に低い値である。一方、インピーダンス整合回路37のダイオードD2の逆方向の抵抗は、実効的に無限大と考えられる。そこで、バースト制御信号を伝送する電気線路36の特性インピーダンスZ0と半導体光増幅器35とをインピーダンス整合させるために、半導体光増幅器35と直列にZ0-Rfの抵抗値となる抵抗S4を挿入する。このような構成により、バースト制御信号がOFFからONになったとき、光バーストデータ信号の立ち上りの遅延を抑制することが可能となる。
【0055】
バースト制御信号がONからOFFとなったとき、光データ信号を半導体光増幅器35にて、消光する必要がある。このとき、バースト制御信号は、半導体光増幅器35に対して逆方向の電流を入力することにより、光データ信号を吸収させる。半導体光増幅器35の逆方向の抵抗分は、一般に大きな値を有しており、実効的に無限大と考えられる。一方、インピーダンス整合回路37のダイオードD2の順方向の抵抗Rdは、数Ω程度である。そこで、電気線路36の特性インピーダンスZ0とインピーダンス整合するために、半導体光増幅器35と並列に逆向きにダイオードD2を挿入している。このような構成により、バースト制御信号がONからOFFになったとき、光バーストデータ信号の立ち下りの遅延を抑制して消光することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、光バースト送信機に適用することができる。