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特開2024-166522基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラム
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  • 特開-基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166522
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20241122BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20241122BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20241122BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
C23C16/455
H01L21/31 C
H01L21/316 X
H01L21/318 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082673
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】門島 勝
(72)【発明者】
【氏名】大橋 直史
(72)【発明者】
【氏名】山本 薫
(72)【発明者】
【氏名】菊池 俊之
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030EA03
5F045AA08
5F045AB31
5F045AB32
5F045AB33
5F045AC00
5F045AC02
5F045AC03
5F045AC05
5F045AC08
5F045AC09
5F045AC11
5F045AC12
5F045AC14
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AE17
5F045AE19
5F045AE21
5F045AE23
5F045BB01
5F045BB19
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
5F045EB03
5F045EB10
5F045EE02
5F045EE04
5F045EE12
5F045EE14
5F045EE17
5F045EE19
5F045EF03
5F045EF09
5F045EG02
5F045EH12
5F045EK06
5F045EK27
5F045EK28
5F045EM09
5F045EM10
5F045EN05
5F045GB05
5F045GB06
5F058BA06
5F058BA09
5F058BC02
5F058BC03
5F058BC08
5F058BC09
5F058BF07
5F058BF24
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF36
5F058BF37
5F058BG01
5F058BG02
5F058BG03
5F058BG04
(57)【要約】
【課題】基板処理のばらつきを抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】(a)貯留部に第1処理ガスを貯留する工程と、(b)前記(a)の後に、第1温度の前記貯留部内から前記第1処理ガスを基板に供給して、前記貯留部の温度を前記第1温度よりも低い第2温度にする工程と、(c)前記(b)の後に、前記第1処理ガスを供給した後の前記貯留部の温度を、前記第2温度と異なる第3温度にする工程と、が当該順に行われるサイクルを複数回行い、複数の前記サイクル間における前記第3温度を等しくする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)貯留部に第1処理ガスを貯留する工程と、
(b)前記(a)の後に、第1温度の前記貯留部内から前記第1処理ガスを基板に供給して、前記貯留部の温度を前記第1温度よりも低い第2温度にする工程と、
(c)前記(b)の後に、前記第1処理ガスを供給した後の前記貯留部の温度を第3温度にする工程と、
が当該順に行われるサイクルを複数回行い、
複数の前記サイクル間における前記第3温度を所定の温度範囲内にする、基板処理方法。
【請求項2】
前記第3温度は、前記第2温度以上の温度である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第3温度は、前記第2温度より低い温度である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記(a)は、前記(c)において前記貯留部の温度が前記第3温度になった時点で開始する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
複数の前記サイクルは、前記第1温度が等しい2つ以上のサイクルの組を少なくとも1つ含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項6】
複数の前記サイクル間における前記第1温度が等しくなるように、前記サイクルを複数回行う、請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記(a)として、
(a1)前記第1処理ガスを前記貯留部に貯留する工程と、
(a2)前記(a1)の後に、前記貯留部の温度を前記第1温度にする工程と、
を行う、請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記(a)において、
(a3)前記(a2)の後、所定の時間が経過するまで、前記貯留部の温度を前記第1温度に保つ工程をさらに行う、請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記(a)において、
(a4)前記貯留部内に貯留された前記第1処理ガスの温度を前記第1温度にする工程、
をさらに行う、請求項6~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記サイクルは、
(d)前記(a)の前に、前記第1処理ガスを予備加熱部に供給する工程をさらに有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記(c)において、前記貯留部の温度を前記第3温度にしてから所定時間が経過した後に前記(a)を開始する、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記第1処理ガスは、前記基板が存在する空間内で自己分解反応を起こさないガスである、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記第1処理ガスは、前記基板が存在する空間内で自己分解反応を起こすガスである、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記(b)において供給工程で前記貯留部から前記基板に供給される前記第1処理ガスの量は、前記(a)において貯留工程で前記貯留部に貯留される前記第1処理ガスの量の半分以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記サイクルは、
(e)第2処理ガスを前記基板に供給する工程、
をさらに有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
(a)貯留部に第1処理ガスを貯留する工程と、
(b)前記(a)の後に、第1温度の前記貯留部内から前記第1処理ガスを基板に供給して、前記貯留部の温度を前記第1温度よりも低い第2温度にする工程と、
(c)前記(b)の後に、前記第1処理ガスを供給した後の前記貯留部の温度を第3温度にする工程と、
を当該順に行うサイクルを複数回行い、
前記サイクル間における前記第3温度を所定の温度範囲内にする、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
基板を処理する処理室と、
第1処理ガスが貯留される貯留部と、
前記貯留部の温度を制御する温度調整部と、
前記貯留部への前記第1処理ガスの貯留と、前記貯留部から前記基板への前記第1処理ガスの供給と、を制御するガス制御部と、
(a)前記貯留部に第1処理ガスを貯留する処理と、(b)前記(a)の後に、第1温度の前記貯留部内から前記第1処理ガスを基板に供給して、前記貯留部の温度を前記第1温度よりも低い第2温度にする処理と、(c)前記(b)の後に、前記第1処理ガスを供給した後の前記貯留部の温度を第3温度にする処理と、を当該順に行うサイクルを複数回行い、前記サイクル間における前記第3温度を所定の温度範囲内にする処理が行われるように、前記温度調整部及びガス制御部を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項18】
(a)貯留部に第1処理ガスを貯留する手順と、
(b)前記(a)の後に、第1温度の前記貯留部内から前記第1処理ガスを基板に供給して、前記貯留部の温度を前記第1温度よりも低い第2温度にする手順と、
(c)前記(b)の後に、前記第1処理ガスを供給した後の前記貯留部の温度を第3温度にする手順と、
を当該順に行うサイクルを複数回行い、
前記サイクル間における前記第3温度を所定の温度範囲内にする手順を、
コンピュータにより基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
処理ガスを貯留部に貯留する工程と、貯留部内に貯留された処理ガスを基板に供給する工程と、を所定の回数行って基板が処理されることがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-136301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板処理のばらつきを抑制することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a)貯留部に第1処理ガスを貯留する工程と、
(b)前記(a)の後に、第1温度の前記貯留部内から前記第1処理ガスを基板に供給して、前記貯留部の温度を前記第1温度よりも低い第2温度にする工程と、
(c)前記(b)の後に、前記第1処理ガスを供給した後の前記貯留部の温度を、前記第2温度と異なる第3温度にする工程と、
が当該順に行われるサイクルを複数回行い、
複数の前記サイクル間における前記第3温度を等しくする技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板処理のばらつきを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分の縦断面図である。
図2図2は本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の第1処理ガス供給系の概略構成図である。
図3図3図1に示す基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系の一例のブロック図である。
図4図4図1に示す基板処理装置を用いた基板処理プロセスの一例のフローチャートである。
図5図5図4に示す第1処理ガス供給工程の温調工程を有しない比較例におけるタンクの温度と時間の関係が示される図である。
図6図6図4に示す第1処理ガス供給工程におけるタンクの温度と時間の関係が示される図である。
図7図7(a)は図4に示す貯留工程のサブ工程の第1例のフローチャートである。図7(b)は図4に示す貯留工程のサブ工程の第2例のフローチャートである。図7(c)は図4に示す貯留工程のサブ工程の第3例のフローチャートである。図7(d)は図4に示す貯留工程のサブ工程の第4例のフローチャートである。
図8図8図4に示す第1処理ガス供給工程のサブ工程の他例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一態様について、主に図1図4を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間において、実質的に同一の要素には同一の符号を付し、各要素が最初に登場した図面において当該要素の説明が行われ、以降の図面では特に必要がない限りその説明が省略される。明細書中に特段の断りが無い限り、各要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
【0010】
本態様の基板処理装置は、縦型の処理炉202を備えている。処理炉202は、石英(SiO)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性材料で構成された反応管203を備えている。反応管203の外側には、加熱装置としてのヒータ207が、反応管203と同心円状に設けられている。ヒータ207には、加熱用電源250が接続されている。反応管203の下方には、炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。反応管203下端部とシールキャップ219上面との間には、気密部材としてのOリング220が配置されている。シールキャップ219は、ステンレス(SUS)等の金属から構成され、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能なように構成されている。反応管203の内部は、基板としてのウエハ200を収容する処理室201として構成されている。
【0011】
シールキャップ219上には、基板保持具としてのボート217を支持するボート支持台218が設けられている。ボート217は、ボート支持台218上に固定された底板と、その上方に配置された天板と、を有している。底板と天板との間には、複数本の支柱が架設されている。支柱には、複数のウエハ200が、互いに所定の間隔をあけながら、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で、反応管203の管軸方向に多段に積載(装填)される。ボート支持台218、底板、天板、および支柱は、それぞれ、例えば上述の耐熱性材料により構成されている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、回転機構267が設けられている。回転機構267の回転軸265は、シールキャップ219を貫通してボート支持台218に接続されている。回転機構267は、回転軸265を回転させることでボート217およびウエハ200を回転させる。シールキャップ219は、ボートエレベータ115によって垂直方向に昇降される。ボートエレベータ115は、ボート217およびウエハ200を処理室201の内外へ搬送する搬送機構として構成されている。
【0012】
処理室201内には、ノズル410,420,430が、反応管203の下部側壁を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430には、ガス供給管310,320,330がそれぞれ接続されている。
【0013】
ガス供給管310,320には、ガス流の上流側から順に、マスフローコントローラ(MFC)312,322、バルブ314,324、タンク315,325およびバルブ313,323がそれぞれ設けられている。言い換えると、バルブ314,324はタンク315,325の一次側に設けられ、バルブ313,323はタンク315,325の二次側に設けられる。MFC312,322は流量制御部ともいう。バルブ314,324は開閉弁であり、第1弁とも称す。タンク315,325は貯留部ともいう。バルブ313,323は開閉弁であり、第2弁とも称す。第1弁及び第2弁のうち一方又は両方は、貯留部への第1処理ガスの貯留と、貯留部から処理室201内のウエハ200への第1処理ガスの供給と、を制御するガス制御部である、とみなすことができる。ガス供給管310,320には処理ガス供給部としての気化器317,327がそれぞれ接続される。MFC312,322の下流側に予備加熱部としての熱交換器318,328が設けられている。なお、MFC312,322の上流側に熱交換器318,328が設けられてもよい。
【0014】
ガス供給管310,320におけるMFC312,322とバルブ314,324との間には、ベントガス管610,620が接続されている。ベントガス管610,620は、後述する排気管231におけるAPCバルブ243の下流側に接続されている。ベントガス管610,620には、バルブ612,622がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320におけるバルブ313,323の下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管510,520がそれぞれ接続されている。ガス供給管510,520には、ガス流の上流側から順に、MFC512,522およびバルブ513,523がそれぞれ設けられている。
【0015】
ガス供給管310,320の下流端は、ノズル410,420の上流端にそれぞれ接続されている。ノズル410,420は、反応管203の内壁とウエハ200との間における円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ200が積載される方向に沿って立ち上がるようにそれぞれ設けられている。ノズル410,420の側部(側面)には、それぞれ、ガス供給口411,421が複数設けられている。ガス供給口411,421は、それぞれ、複数のウエハ200の各々に対応する位置に設けられている。
【0016】
タンク315,325は、通常の配管よりもガス容量の大きなガスタンク、或いは、螺旋配管等として構成されている。タンク315,325の上流側のバルブ314,324、および、下流側のバルブ313,323を開閉することにより、ガス供給管310,320から供給されるガスを、タンク315,325内のそれぞれに一時的に充填(貯留)することや、タンク315,325内のそれぞれに一時的に貯留されたガスを処理室201内へ供給することができる。タンク315,325と処理室201との間のコンダクタンスは、例えば、1.5×10-3/s以上とするのが好ましい。反応管203の容積が100L(リットル)の場合は、タンク315の容積を、例えば、100cc以上300cc以下の範囲内の所定の大きさとすることが好ましい。
【0017】
図2に示すように、タンク315,325には、温度調整部(加熱部)としてのタンク用ヒータ316,326および温度測定部としての熱電対319,329が設けられている。熱電対319,329により検出された温度情報に基づき、図示されない電源からのタンク用ヒータ316,326に対する供給電力が調整されている。これにより、タンク315,325の温度が所望の温度となるように制御される。言い換えると、タンク用ヒータ316,326の出力は、タンク315,325の温度に対してフィードバック制御されている。
【0018】
バルブ313,323,612,622が閉じられ、バルブ314,324が開かれると、MFC312,322で流量調整されたガスが、タンク315,325内に一時的に貯留される。タンク315,325内に所定量のガスが貯留され、タンク315,325内の圧力が所定の圧力に到達した後、バルブ314,324が閉じられ、バルブ313,323が開かれる。そうすると、タンク315,325内のそれぞれに貯留された高圧のガスが、ガス供給管310,320、ノズル410,420を介して処理室201内に一気に(短時間で)供給される。このとき、バルブ513,523が開かれると、MFC512,522で流量調整された不活性ガスが、ガス供給管310,320、ノズル410,420を介して処理室201内に供給される。
【0019】
また、バルブ314,324が閉じられ、バルブ612,622が開かれると、MFC312,322で流量調整されたガスが、処理室201内に供給されることなくバイパスされ、ベントガス管610,620を介して排気管231へ排気される。また、バルブ313,323が閉じられ、バルブ513,523が開かれると、MFC512,522で流量調整された不活性ガスが、それぞれ、ガス供給管310,320およびノズル410,420を介して処理室201内に供給され、処理室201内がパージされる。
【0020】
ガス供給管310,320からは、第1処理ガスが、MFC312,322、バルブ314,324、タンク315,325、バルブ313,323およびノズル410,420を介して処理室201内にそれぞれ供給される。
【0021】
ガス供給管510,520からは、不活性ガスが、MFC512,522、バルブ513,523、ガス供給管310,320、ノズル410,420を介して処理室201内にそれぞれ供給される。
【0022】
主に、ガス供給管310,320、MFC312,322、熱交換器318,328、バルブ314,324、タンク315,325およびバルブ313,323により、第1処理ガス供給系301,302が構成されている。第1処理ガス供給系301,302に気化器317,327やノズル410,420が含まれてもよい。また、主に、ガス供給管510,520、MFC512,522およびバルブ513,523により、第1不活性ガス供給系501,502が構成されている。なお、第1処理ガス供給系として第1処理ガス供給系301,302の2つ設けられているが、何れか一方のみが設けられてもよい。
【0023】
ガス供給管330には、ガス流の上流側から順に、MFC332およびバルブ333が設けられている。ガス供給管330のMFC332とバルブ333との間には、ベントガス管630が接続されている。ベントガス管630は、後述する排気管231のAPCバルブ243の下流側に接続されている。ベントガス管630にはバルブ632が設けられている。ガス供給管330のバルブ333の下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管530が接続されている。ガス供給管530には、上流側から順に、MFC532およびバルブ533が設けられている。
【0024】
ガス供給管330は、ノズル430に接続されている。ノズル430は、ガス分散空間であるバッファ室433内に設けられている。
【0025】
バッファ室433は、反応管203の内壁とバッファ室壁434とにより形成されている。バッファ室壁434は、反応管203の内壁とウエハ200との間における円環状の空間に、反応管203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。バッファ室壁434のウエハ200と隣接する壁には、ガスを供給するガス供給口435が設けられている。ガス供給口435は、反応管203の中心を向くように開口している。ガス供給口435は、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。バッファ室433内には、整合器271を介して高周波電源270から高周波電力が印加される一対の棒状電極が設けられている。
【0026】
ノズル430は、バッファ室433の一端側に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル430の側面には、ガスを供給するガス供給口431が設けられている。ガス供給口431はバッファ室433の中心を向くように開口している。ガス供給口431は、バッファ室433のガス供給口435と同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0027】
バルブ333が開かれると、MFC332で流量調整されたガスが、ガス供給管330、ノズル430およびバッファ室433を介して処理室201内に供給される。このとき、バルブ533が開かれると、MFC532で流量調整された不活性ガスが、ガス供給管330、ノズル430およびバッファ室433を介して処理室201内に供給される。また、バルブ333が閉じられ、バルブ632が開かれると、MFC332で流量調整されたガスが、処理室201内に供給されることなくバイパスされ、ベントガス管630を介して排気管231に排気される。また、バルブ333が閉じられ、バルブ533が開かれると、MFC532で流量調整された不活性ガスが、ガス供給管330、ノズル430およびバッファ室433を介して処理室201内に供給され、処理室201内がパージされる。
【0028】
ガス供給管330からは、第1処理ガスとは化学構造(分子構造)が異なる第2処理ガスが、MFC332、バルブ333、ノズル430およびバッファ室433を介して処理室201内へ供給される。
【0029】
ガス供給管530からは、不活性ガスが、MFC532、バルブ533、ガス供給管330、ノズル430、バッファ室433を介して処理室201内へ供給される。
【0030】
主に、ガス供給管330、MFC332およびバルブ333により、第2処理ガス供給系303が構成されている。第2処理ガス供給系303にノズル430およびバッファ室433が含まれてもよい。また、主に、ガス供給管530、MFC532およびバルブ533により、第2不活性ガス供給系503が構成されている。
【0031】
反応管203の下部には、排気口230が設けられている。排気口230には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が接続されている。排気管231には、上流側から順に、圧力センサ245、APC(Auto Pressure Controller)バルブ243、および、真空ポンプ246が設けられている。圧力センサ245は処理室201内の圧力を検出し、圧力検出部とも称される。APCバルブ243は圧力調整部とも称される。真空ポンプ246は真空排気装置とも称される。APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができるように構成されている。さらに、APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ243、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246は排気系に含まれてもよい。
【0032】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づき、加熱用電源250からのヒータ207に対する供給電力が調整される。これにより、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように制御される。
【0033】
図3に示されるように、制御部としてのコントローラ280は、CPU(Central Processing Unit)280a、RAM(Random Access Memory)280b、記憶装置280c、I/Oポート280dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM280b、記憶装置280c、I/Oポート280dは、内部バス280eを介して、CPU280aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ280には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置282が接続されている。
【0034】
記憶装置280cは、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置280c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ280に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM280bは、CPU280aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0035】
I/Oポート280dは、MFC312,322,332,512,522,532、バルブ313,314,323,324,333,513,523,533,612,622,632、圧力センサ245、APCバルブ243、真空ポンプ246、ヒータ207、加熱用電源250、温度センサ263、高周波電源270、整合器271、回転機構267、ボートエレベータ115、タンク用ヒータ316,326、熱電対319,329等に接続されている。
【0036】
CPU280aは、記憶装置280cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置282からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置280cからレシピを読み出すように構成されている。CPU280aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC312,322,332,512,522,532による各種ガスの流量調整動作、バルブ313,314,323,324,333,513,523,533,612,622,632の開閉動作を制御するように構成されている。さらに、CPU280aは、APCバルブ243の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ243による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止を制御するように構成されている。さらに、CPU280aは、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整(加熱用電源250の出力調整)動作、高周波電源270の電力供給、整合器271によるインピーダンス調整動作を制御するように構成されている。さらに、CPU280aは、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、熱電対319,329に基づくタンク用ヒータ316,326等を制御するように構成されている。
【0037】
コントローラ280は、外部記憶装置281に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置281は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ等を含む。記憶装置280cや外部記憶装置281は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置280c単体のみを含む場合、外部記憶装置281単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置281を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0038】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、ウエハ200上に膜を形成するプロセス例、すなわち、成膜処理のシーケンス例について、図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
【0039】
本明細書において用いる「ウエハ」という用語は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面上に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において用いる「ウエハの表面」という言葉は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載する場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉が用いられる場合も、「ウエハ」という言葉を用いる場合と同義である。
【0040】
(基板搬入工程S1)
複数のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)され、反応管203の下端開口が開放される。その後、ウエハ200を支持したボート217が、ボートエレベータ115によって持ち上げて処理室201内に搬入(ボートロード)される。図1に示されように、反応管203の下端は、Oリング220を介してシールキャップ219によりシールされる。
【0041】
(圧力・温度調整工程S2)
処理室201内が所望の圧力となるように、真空ポンプ246によって真空排気される(圧力調整)。また、処理室201内が所望の温度となるように、ヒータ207によって加熱される(温度調整)。また、回転機構267によるウエハ200の回転が開始される(回転)。これらの各種動作は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は、継続して行われる。
【0042】
(成膜処理工程S3)
その後、次の第1処理ガス供給工程S31、パージガス供給工程S32、第2処理ガス供給工程S33およびパージガス供給工程S34が順次実施されることで成膜工程が行われる。
【0043】
[第1処理ガス供給工程S31]
<貯留工程S311>
バルブ313,323,612,622が閉じられた状態で、バルブ314,324が開かれ、MFC312,322で流量調整された第1処理ガスが、タンク315,325内にそれぞれ充填(貯留)される。タンク315,325内には、タンク315,325内の圧力が例えば20000Pa以上の圧力となるように、第1処理ガスが充填される。タンク315,325内に充填される第1処理ガスの量は、例えば100~250ccとする。本明細書における「100~250cc」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「100~250cc」とは「100cc以上250cc以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。タンク315,325内のそれぞれに、所定圧、所定量の第1処理ガスが充填されたら、バルブ314,324が閉じられる。これにより、第1処理ガスがタンク315,325に貯留される。
【0044】
<供給工程S312>
タンク315,325内に第1処理ガスが充填される間、処理室201内の圧力が例えば20Pa以下の所定の圧力となるように、処理室201内が排気される。タンク315,325内への第1処理ガスの充填および処理室201内の排気が完了した後、APCバルブ243が閉じられて排気系が閉塞され、バルブ313,323が開かれる。これにより、タンク315,325内に貯留された高圧の第1処理ガスが、処理室201内へ一気に供給され得る。処理室201内の圧力は急激に上昇し、例えば800~1200Paの範囲内の圧力へ到達する。その後、処理室201内に第1処理ガスを封じ込めた状態が維持され、第1処理ガスの雰囲気中にウエハ200が所定時間暴露される(第1処理ガス供給)。このとき、バルブ513,523,533が開かれ、処理室201内へ不活性ガスが流され、ノズル410,420,430内への第1処理ガスの侵入が防止される。バルブ313,323が開かれてから所定の時間が経過した時点で、バルブ313,323は閉じられる。
【0045】
本明細書では、タンク315,325内に貯留された第1処理ガスを、処理室201に(もしくは処理室201内のウエハ200に)供給する操作を「フラッシュ供給」と称する。また、タンク315,325に第1処理ガスを貯留する操作と、タンク315,325内に貯留された第1処理ガスを処理室201に供給する操作と、をまとめて「フラッシュ供給」と称してもよい。
【0046】
フラッシュ供給では、タンク315,325内に貯留される第1処理ガスの圧力を高くすることで、タンク315内と処理室201内との圧力差、および、タンク325内と処理室201内との圧力差を大きくすることができる。このようにすることで、ガス供給口411,421を介して処理室201内へ供給される第1処理ガスの流速が、それぞれ増加され得る。ガス供給口411,421を介して処理室201内へ供給される第1処理ガスの流速は、それぞれ、第1処理ガスがノズル410,420内で滞留することなく、ごく短時間でノズル410,420内を通過して、一度にウエハ200上に拡散するような大きさとなる。その結果、第1処理ガスが、処理室201の全域に効率的に拡散され得る。
【0047】
タンク315内と処理室201内との圧力差、および、タンク325内と処理室201内との圧力差は、例えば、ガス供給口421から処理室201内へ供給される第1処理ガスの流速が、ガス供給口411から処理室201内へ供給される第1処理ガスの流速の0.8倍以上1.2倍以下の速度となるように設定される。
【0048】
なお、ヒータ207の温度は、例えば350~650℃の範囲内の温度とされる。MFC512,522,532で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ、例えば300~10000sccmの範囲内の流量とされる。第1処理ガスを処理室201内に封じ込める時間は、例えば1~30秒の範囲内の時間とされる。
【0049】
上述の条件下でウエハ200に対して第1処理ガスが供給されることにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、第1層が形成され得る。
【0050】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスが用いられ得る。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いられ得る。この点は、後述する各工程においても同様である。
【0051】
なお、APCバルブ243が開けられ、排気系が閉塞されていない状態でバルブ313,323が開かれるようにしてもよい。すなわち、処理室内201内の排気を継続したまま、フラッシュ供給が行われるようにしてもよい。このような場合、処理室201内の第1処理ガスの流速がさらに増加し、第1処理ガスが処理室201の全域に効率的に拡散されやすくなる。
【0052】
<温調工程S313>
供給工程S312後、タンク315,325の温度が調整される。例えば、温調工程S313は、バルブ313,323が閉じられて、タンク315,325内からの第1処理ガスの供給が終了した時点から、開始される。また例えば、温調工程S313は、バルブ314,324が開かれ、タンク315,325内への第1処理ガスの充填が開始された時点において、温調工程S313が終了される。言い換えると、温調工程S313は供給工程S312終了と同時に開始され、供給工程S312の開始と同時に終了する。温調工程S313では、例えば、温調装置としてのタンク用ヒータ316,326によってタンク315,325が加熱される。温調工程S313の詳細については後述する。
【0053】
[パージガス供給工程S32]
ウエハ200上に第1層が形成された後、バルブ313,323が閉じられる。そして、APCバルブ243が開かれて排気系が開放され、処理室201内が真空排気される(残留ガス除去)。このときバルブ513,523,533が開かれ、ガス供給管510,520,530内に不活性ガスが流され、処理室201内がパージされる(パージ)。
【0054】
[第2処理ガス供給工程S33]
パージガス供給工程S32が終了した後、バルブ632が閉じられた状態でバルブ333が開かれ、ガス供給管330内に第2処理ガスが流される。第2処理ガスは、MFC332により流量調整され、ガス供給口431からバッファ室433内へ供給される。このとき、上記一対の棒状電極間に高周波電力が印加されることで、バッファ室433内へ供給された第2処理ガスはプラズマ励起(プラズマ状態に励起)され、ガス供給口435から処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してプラズマで活性化された第2処理ガスが供給される。このとき、少なくともバルブ513,523が開かれ、処理室201内へ不活性ガスが流され、ノズル410,420内への第2処理ガスの侵入が防止される。
【0055】
処理室201内の圧力は、例えば10~100Paの範囲内の圧力にされる。プラズマが用いられることで、処理室201内の圧力がこのような比較的低い圧力帯にされても、第2処理ガスは活性化され得る。処理室201内における第2処理ガスの分圧は、例えば6~100Paの範囲内の圧力にされる。第2処理ガスの供給流量は、例えば10~10000sccmの範囲内の流量とする。第2処理ガス供給時間は、例えば1~120秒の範囲内の時間にされる。一対の棒状電極間に印加する高周波電力は、例えば50~1000Wの範囲内の大きさにされる。他の処理条件は、第1処理ガス供給工程S31における処理条件と同様にされる。
【0056】
上述の条件下でウエハ200に対して第2処理ガスがプラズマ状態に励起されて供給されることにより、ウエハ200の表面に形成された第1層に対して改質処理が行われ、第1層は第2層へ改質される。
【0057】
ここで、第2処理ガス供給工程S33では、ウエハ200に対して第2処理ガスをプラズマ状態に励起させずに供給することにより、第1層が第2層へ改質されるようにしてもよい。このような場合、整合器271や高周波電源270、棒状電極を設けないようにしてもよい。また、バッファ室壁434を設けないようにしてもよい。
【0058】
[パージガス供給工程S34]
第1層が第2層へと改質された後、バルブ333が閉じられ、バッファ室433を介した処理室201内への第2処理ガスの供給が停止される。また、上記一対の棒状電極間への高周波電力の印加が停止される。そして、APCバルブ243が開かれて排気系が開放され、処理室201内が真空排気される(残留ガス除去)。このときバルブ513,523,533が開かれ、ガス供給管510,520,530内に不活性ガスが流され、処理室201内がパージされる(パージ)。
【0059】
[所定回数実施]
第1処理ガス供給工程S31、パージガス供給工程S32、第2処理ガス供給工程S33およびパージガス供給工程S34をこの順番に従って非同時に、すなわち、同期させることなく行うことを1サイクルとする。このサイクルが所定回数(n回、nは1以上の整数)、すなわち、1回以上行われることにより、ウエハ200上に、所望膜厚、所望組成の膜が形成され得る。上述のサイクルは、複数回繰り返されるのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成される第2層の厚さが所望の膜厚よりも小さくされ、第2層が積層されて形成される膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルが複数回繰り返されることが好ましい。第1処理ガス由来の元素と、第2処理ガス由来の元素と、を含む膜が形成され得る。
【0060】
なお、貯留工程S311および温調工程S313は、パージガス供給工程S32、第2処理ガス供給工程S33およびパージガス供給工程S34の何れかの工程が行われている間に行われるようにしてもよい。
【0061】
(大気圧復帰工程S4)
ウエハ200上への成膜が終了した後、不活性ガスが処理室201内へ供給され排気管231から排気される。不活性ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0062】
(基板搬出工程S5)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、反応管203の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態で反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0063】
第1処理ガス供給工程S31の詳細について図5および図6を用いて説明する。以下では、タンク315について説明するが、タンク325も同様である。
【0064】
外部との熱のやり取りが無い条件において気体の体積が増加する(気体が膨張する)と、その気体の温度は低下する。また、外部との熱のやり取りが小さいとみなせる条件、すなわち断熱膨張に近い過程を経る気体についても、同様のことがいえる。本明細書では、これらの過程も含めて「気体の断熱膨張」や、「気体が断熱膨張する」と表現する。また、気体が断熱膨張する際、その気体の周囲に存在する部材などの温度も同時に低下することがある。本明細書では、気体が断熱膨張する際に、その気体の温度及びその気体の周囲の部材の温度の少なくとも一つが低下することを「断熱膨張による温度低下」と表現する。
【0065】
フラッシュ供給では、タンク315内に貯留された第1処理ガスが短時間の間に膨張することになり、この間において、第1処理ガスと外部との熱のやり取りは小さいとみなされ得る。すなわち、フラッシュ供給において、タンク315内に貯留されている第1処理ガスは、断熱膨張に近い過程で膨張しつつ処理室に供給されている。このため、フラッシュ供給の後、タンク315や処理室201内の第1処理ガスの温度と、タンク315を含む第1処理ガス供給系の温度と、は低下する。
【0066】
ここで、フラッシュ供給を含むサイクルが複数回行われる場合、サイクル間で第1処理ガスの断熱膨張による温度低下の大きさが上下する場合がある。これに伴い、サイクル間で、フラッシュ供給後のタンク315の温度(以下、第2温度と呼称する)や、各サイクルにおけるフラッシュ供給の開始時におけるタンク温度(以下、第1温度と呼称する)に、ばらつきが発生する場合がある。第1処理ガスの断熱膨張による温度低下の大きさが上下する要因としては、例えば、下記のうち1つ又は複数が、サイクル毎に変化することが挙げられる。
(a)タンク315と処理室201とを接続する経路の圧力及び/又は温度
(b)処理室201内の圧力及び/又は温度
(c)単位時間あたりに処理室201内から排気されるガスの量
(d)排気管231内の圧力及び/又は温度
【0067】
ここで、供給工程S312の後であって次のサイクルの貯留工程S311の前に温調工程S313が設けられていないサイクルを複数回行う成膜処理S3を行う比較例における、サイクル間での第1温度および第2温度のばらつきについて、図5を用いて説明する。図5は第1温度が等しいサイクル(cycle)X及びサイクルYにおいて、第1温度および第2温度がばらつく例を示している。図5に示すグラフの縦軸はタンク315の温度(T)、横軸は時間(time)である。サイクルYおよびその次のサイクルY+1のタンク温度を破線で示している。ここで、各サイクルは貯留工程S311と供給工程S312とで構成され、貯留工程S311の期間は各サイクルにおいて同じであり、供給工程S312の期間は各サイクルにおいて同じである。また、各サイクルでは、タンク315の温度が所定の温度T1に近づくように、タンク用ヒータ316の出力がタンク315の温度に対してフィードバック制御されている、とする。
【0068】
サイクルXの供給工程S312では、第1処理ガスの断熱膨張よる温度低下によってタンク315の温度が低下する。供給工程S312の終了時のタンク315の温度である第2温度はT2xである。ここで、T2x<T1である。
【0069】
サイクルX+1の貯留工程S311では、タンク用ヒータ316,326による加熱等よってタンク315の温度がT2xから上昇する。貯留工程S311の終了時(供給工程S312の開始時)のタンク315の温度である第1温度はT1x+1である。
【0070】
サイクルYの供給工程S312では、第1処理ガスの断熱膨張よる温度低下によってタンク315の温度が低下する。サイクルYの供給工程S312の終了時のタンク315の温度である第2温度はT2yである。ここで、T2y<T1、T2y<T2xである。第2温度のばらつきをΔT2とすると、ΔT2=T2x-T2yである。
【0071】
サイクルY+1の貯留工程S311では、タンク用ヒータ316による加熱等よってタンク315の温度がT2yから上昇する。貯留工程S311の終了時(供給工程S312の開始時)のタンク315の温度である第1温度はT1y+1である。第1温度のばらつきをΔT1とすると、ΔT1=T1x+1-T1y+1である。
【0072】
サイクルX+1及びサイクルY+1の貯留工程S311が十分長い時間行われる場合には、タンク用ヒータ316の出力のフィードバック制御により、T1x+1及びT1y+1がT1に近づく。これにより、T1x+1とT1y+1の差が小さくなるため、最終的にΔT1は0になる。
【0073】
しかし、半導体デバイスの微細化や複雑化に伴うステップカバレッジの改善や処理時間の短縮への要求が厳しくなるにつれて、第1温度や第2温度のばらつきが大きくなることが予想される。例えば、ウエハ200の表面積増加に合わせて供給工程S312において供給される第1処理ガスの量を増加させて、ステップカバレッジを改善する場合を考える。このような場合、供給工程S312における断熱膨張によるタンク315の温度低下が大きくなり、これに伴ってΔT2も増大するため、貯留工程S311におけるタンク用ヒータ316の出力のフィードバック制御によってΔT1が十分に解消されないことが予想される。また、例えば、生産性向上のために、貯留工程S311に要する時間を短縮する場合を考える。このような場合、タンク用ヒータ316の出力のフィードバック制御などによってΔT1が十分に解消されないことが予想される。
【0074】
続いて、実施形態のように、供給工程S312の後であって次のサイクルの貯留工程S311の前に、温調工程S313が設けられているサイクルを複数回行う成膜処理S3における、サイクル間での第1温度および第2温度のばらつきについて、図6を用いて説明する。図6は第1温度が等しいサイクル(cycle)P,Qにおいて、第2温度がばらつく例を示している。図6に示すグラフの縦軸はタンク315の温度(T)、横軸は時間(time)である。サイクルQおよびその次のサイクルQ+1の温度は破線で示されている。ここで、各サイクルは貯留工程S311と供給工程S312と温調工程S313とで構成されている。ここで、温調工程S313は、貯留工程S311の終了した時点から供給工程S312を開始する時点まで行われることになる。各サイクルの貯留工程S311及び供給工程S312の期間は同じとしている。
【0075】
サイクルPの貯留工程S311では、タンク用ヒータ316による加熱等によってタンク315の温度が上昇する。貯留工程S311の終了時(供給工程S312の開始時)のタンク315の温度である第1温度はT1である。
【0076】
サイクルPの供給工程S312では、第1処理ガスの断熱膨張よる温度低下によってタンク315の温度が低下する。供給工程S312の終了時のタンク315の温度である第2温度はT2pである。ここで、T2p<T1である。
【0077】
サイクルPの温調工程S313では、例えば、タンク用ヒータ316でタンク315が加熱されることによってタンク315の温度が第2温度(T2p)よりも高い第3温度(T3)にされる。
【0078】
タンク315,325の温度が第3温度になった後、サイクルP+1の貯留工程S311が開始される。貯留工程S311では、タンク用ヒータ316による加熱等によってタンク315の温度がT3から上昇する。貯留工程S311の終了時(供給工程S312の開始時)のタンク315の温度である第1温度はT1p+1である。
【0079】
サイクルQの貯留工程S311では、タンク用ヒータ316による加熱等によってタンク315の温度が上昇する。貯留工程S311の終了時(供給工程S312の開始時)のタンク315の温度である第1温度はT1である。
【0080】
サイクルQの供給工程S312では、第1処理ガスの断熱膨張よる温度低下によってタンク315の温度が低下する。供給工程S312の終了時の温度である第2温度はT2qである。ここで、T2q<T1、T2q<T2pである。第2温度のばらつきをΔT2とすると、ΔT2=T2p-T2qである。
【0081】
サイクルQの温調工程S313では、タンク用ヒータ316でタンク315を加熱することによってタンク315の温度を第2温度(T2q)よりも高い第3温度(T3)にされる。この例において、サイクルQとサイクルPにおける第3温度は等しい温度である。
【0082】
タンク315の温度が第3温度になった後、サイクルQ+1の貯留工程S311が開始される。貯留工程S311では、タンク用ヒータ316による加熱等によってタンク315の温度がT3から上昇する。貯留工程S311の終了時(供給工程S312の開始時)のタンク315の温度である第1温度はT1q+1である。ここで、サイクルQ+1の温調工程S313の時間はサイクルP+1の温調工程S313の時間と同じである。また、T1q+1<T1p+1である。第1温度のばらつきをΔT1とすると、ΔT1=T1p+1-T1q+1である。
【0083】
比較例では、サイクルX及びサイクルYの供給工程S312の終了直後に、サイクルX+1及びサイクルY+1における貯留工程S311を開始している。そのため、サイクルX+1及びサイクルY+1における貯留工程S311は、タンク315の温度に差がある状態で開始されていた。これに対して、サイクルP及びサイクルQの温調工程S313においてタンク315の温度を第3温度にした後に、サイクルP+1及びサイクルQ+1の貯留工程S311を開始している。すなわち、サイクルP+1とサイクルQ+1における貯留工程S311の開始時点でのタンク315の温度をT3にしている。従って、温調工程S313を行うことで、第1温度のばらつき(ΔT1)を短時間で小さくする、もしくは解消することができる。また、温調工程S313を行うことで、さらに第2温度のばらつき(ΔT2)が大きくなるような場合であっても、第1温度のばらつき(ΔT1)を小さくする、もしくは解消することができる。言い換えると、複数のサイクル間での第1温度を所定の温度範囲内にしてから、供給工程S312を開始することができる。ここでの所定の温度範囲とは、例えば、所定の最小温度以上かつ所定の最大温度以下の温度範囲である。例えば、所定の温度範囲は、所定の最小温度と所定の最大温度との差が5℃以内、好ましくは3℃以内、さらに好ましくは1℃以内になるように設定される。
【0084】
以上の説明では、各サイクルにおいて温調工程S313を行ってタンク315の温度を複数のサイクル間で等しい第3温度になったタイミングで、次のサイクルの貯留工程S311を開始するようにしている。しかし、本開示の内容はこれに限定されない。温調工程S313では、タンク315の温度は第3温度に保たれる必要はなく、タンク315の温度が少なくとも一時的に第3温度になればよい。言い換えると、各サイクルにおいて、タンク315の温度が第2温度から第3温度にされた後に、貯留工程S311が開始されるようにするとよい。例えば、各サイクルにおいて、タンク315の温度が第3温度以上の温度にされてから貯留工程S311が開始されてもよい。また、各サイクルにおいて、タンク315の温度が第3温度より低い温度にされてから貯留工程S311が開始されてもよい。このような場合においても、温調工程S313を行わない場合と比較して、サイクル間での貯留工程S311開始時におけるタンク315、325の温度のばらつきを低減できるため、同様の効果が得られる。
【0085】
また、温調工程S313において、複数のサイクル間における第3温度を所定の温度範囲内にしてもよい。例えば、所定の最小温度以上かつ所定の最大温度以下となるような温度範囲を所定の温度範囲として設定し、タンク315の温度が所定の温度範囲であるときに貯留工程S311が開始されてもよい。このような場合においても、温調工程S313を行わない場合と比較して、サイクル間での貯留工程S311開始時におけるタンク315、325の温度のばらつきを低減できるため、同様の効果が得られる。ここで、所定の最小温度と所定の最大温度との差を小さくするほど、貯留工程S311の開始時点におけるタンク315、325の温度をサイクル間で近しい値にすることができるため、サイクル間での第1温度のばらつきを小さくすることができる。例えば、所定の最小温度と所定の最大温度との差が10℃以内になるように所定の温度範囲を設定することが好ましい。また、所定の最小温度と所定の最大温度との差が5℃以内になるように所定の温度範囲を設定することがさらに好ましい。また、所定の最小温度と所定の最大温度との差が3℃以内になるように所定の温度範囲を設定することがさらに好ましい。
【0086】
第3温度は第2温度以上の温度であってもよい。また、所定の最小温度が第2温度以上になるように所定の温度範囲を設定してもよい。サイクル毎に温度のばらつきが小さい第1処理ガスがウエハ200に供給されるためには、断熱膨張によって低温になったタンク315はサイクル毎に加熱される必要がある。第3温度を、第2温度以上の温度とする場合、タンク315の温度が前のサイクルにおける供給工程S312と同様な温度まで上昇するために要する時間は短縮され得る。従って、処理時間の増加を抑制しつつ、サイクル毎に同様な温度の第1処理ガスをウエハ200に供給しやすくなる。
【0087】
第3温度は第2温度より低い温度であってもよい。また、所定の最大温度が第2温度より低くなるように所定の温度範囲を設定してもよい。タンク用ヒータ316,326の出力が下げられる、または、0にされることによってタンク315,325が冷却される。従って、第3温度は第2温度よりも低くされ得る。このような場合でも、少なくとも第1温度のばらつきを低減することができる。
【0088】
貯留工程S311は、温調工程S313においてタンク315の温度が第3温度になった時点で開始されてもよい。これにより、第1処理ガスの貯留を開始する時点におけるタンク315の温度をサイクル間で一定にすることができるので、第1温度のばらつきをさらに低減することができる。
【0089】
温調工程S313において、タンク315の温度を第3温度にしてから所定時間が経過した後に貯留工程S311が開始されてもよい。これにより、各サイクルの供給工程S312の後におけるタンク315の温度のばらつきをさらに抑制することができる。従って、サイクル毎の処理のばらつきを抑制すことができる。
【0090】
例えば、温調工程S313においてタンク315の温度が第3温度になったタイミングで供給工程S312を開始する場合、熱電対319によってタンク315の温度が第3温度になったことが検出された時点で、供給工程S312を開始するようにしてもよい。また、例えば、所定の方法によって、温調工程S313が開始した時点からタンク315の温度が第3温度になるまでの時間(時間t)を事前に求め、温調工程S313が開始した時点か時間tが経過した時点で、供給工程S312を開始するようにしてもよい。ここで、所定の方法は、例えば、基板処理工程の前及び基板処理工程を行っている間の少なくとも何れか一方において、基板処理装置の構成要素や、基板処理装置を用いて行われる評価の結果から得られるデータを基に、時間tを算出すること及び予測することの少なくとも何れか一方を行うことを含む。また、所定の方法は、例えば、コンピューターシミュレーションを含む数値計算の結果を基に、時間tを算出すること及び予測することの少なくとも何れか一方を行うことを含む。
【0091】
温調工程S313は供給工程S312の後、すなわち、貯留工程S311の前に行われている。貯留工程S311の後に比べて、貯留工程S311の前はタンク315内の第1処理ガスの熱容量が小さいため、温度変化に要する熱量が少ない。従って、貯留工程S311の後にタンク315の温度が調整される場合と比較して短時間で、タンク315,325の温度のばらつきによる影響を抑制することができる。
【0092】
ここで、第1処理ガスとして後述する原料ガスを用い、第2処理ガスとして原料ガスと反応する反応ガスを用いてもよい。また、第1処理ガスとして後述する反応ガスを用い、第2処理ガスとして原料ガスを用いてもよい。すなわち、第1処理ガス供給工程S31においては、原料ガスがフラッシュ供給されてもよく、反応ガスがフラッシュ供給されてもよい。
【0093】
原料ガスとしては、例えば、金属元素含有ガスを用いることができる。金属元素含有ガスとしては、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、イットリウム(Y)、ルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、シリコン(Si)等の元素を含むガスを用いることができる。また、金属元素含有ガスとしては、常温常圧において液体・又は固体である物質を気化させて得られるガスを用いてもよい。
【0094】
金属元素含有ガスとしては、例えば、六フッ化タングステン(WF)、六塩化タングステン(WCl)、四フッ化チタン(TiF)、四塩化チタン(TiCl)、五フッ化タンタル(TaF)、五塩化タンタル(TaCl)、二フッ化コバルト(CoF)、二塩化コバルト(CoCl)、三フッ化イットリウム(YF)、三塩化イットリウム(YCl)、三フッ化ルテニウム(RuF)、三塩化ルテニウム(RuCl)、ビスエチルシクロペンタジエニルルテニウム(Ru(EtCp))、ビスシクロペンタジエニルルテニウム(Ru(Cp))三フッ化アルミニウム(AlF)、三塩化アルミニウム(AlCl)、五フッ化モリブデン(MoF)、五塩化モリブデン(MoCl)、二塩化二酸化モリブデン(MoOCl)、四塩化酸化モリブデン(MoOCl)三フッ化ニオブ(NbF)、三塩化ニオブ(NbCl)、二フッ化マンガン(MnF)、二塩化マンガン(MnCl)、二フッ化ニッケル(NiF)、二塩化ニッケル(NiCl)、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(Zr[N(Me)Cp])、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(Zr[N(Et))、テトラキスジメチルアミノジルコニウム(Zr[N(Me))、トリスジメチルアミノシクロペンタジエニルジルコニウム((Cp)Zr[N(Me))、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム(Hf[N(Me)Et])、テトラキスジエチルアミノハフニウム(Hf[N(Et))、テトラキスジメチルアミノハフニウム(Hf[N(Me))、トリスジメチルアミノシクロペンタジエニルハフニウム((Cp)Hf[N(Me))等を少なくとも1つ含むガスを用いることが可能である。
【0095】
また、金属元素含有ガスとしてのSi含有ガスとしては、例えば、クロロシラン系ガスとして、ジクロロシラン(SiHCl)、ジクロロジシラン(SiCl)、テトラクロロジシラン(SiCl)、ヘキサクロロジシラン(SiCl)等を少なくとも1つ含むガスを用いることが可能である。また、金属元素含有ガスとしてのSi含有ガスとしては、例えば、シラン系ガスとして、モノシラン(SiH)、ジシラン(Si)、トリシラン(Si)、テトラシラン(Si10)等を少なくとも一つを含むガスを挙げることができる。
【0096】
反応ガスとしては、例えば、還元ガス、窒化ガス、酸化ガスを用いることができる。ここで、例えば、第1処理ガス及び第2処理ガスのうち一方を金属元素含有ガスとして、もう一方を還元ガスとした場合、主に単体の金属元素から構成される導電性の金属膜をウエハ200上に形成することができる。また、例えば、第1処理ガス及び第2処理ガスのうち一方を金属元素含有ガスとして、もう一方を酸化ガスとした場合には金属酸化膜をウエハ200上に形成することができる。また、例えば、第1処理ガス及び第2処理ガスのうち、一方を金属元素含有ガスとして、もう一方を窒化ガスとした場合には金属窒化膜をウエハ200上に形成することができる。
【0097】
還元ガスとしては、例えば、Hガス、重水素(D)ガス、ボラン(BH)ガス、ジボラン(B)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、アンモニア(NH)ガス、モノシラン(SiH)ガス、ジシラン(Si)ガス、トリシラン(Si)ガス、モノゲルマン(GeH)ガス、ジゲルマン(Ge)等を少なくとも1つ含むガスを用いることが可能である。また、反応ガスとしては、例えば、酸素(O)含有ガスの酸化ガスを用いることができる。酸化ガスとしては、例えば、酸素(O)、オゾン(O)、水蒸気(HO)、H及びOの混合ガス、過酸化水素(H)、亜酸化窒素(NO)、等を少なくとも1つ含むガスを用いることが可能である。窒化ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガス、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等の窒化水素系ガスが用いられ得る。反応ガスとしては、これらのうち1以上が用いられ得る。
【0098】
第1処理ガスとしては、例えば、ウエハ200が存在する空間(処理室201)内で自己分解反応を起こさない原料ガス又は反応ガスが用いられてもよい。例えば、Hなどの、応ガスとしての還元ガスは、処理室201内で自己分解反応を起こさないガスとみなすことができる。自己分解反応を起こさないガスは、ウエハ200表面に対する反応性が低い傾向がある。このようなガスが第1処理ガスとしてフラッシュ供給される場合、タンク315、325内に貯留される第1処理ガスの量を多くして(チャージ圧力を高くして)、供給工程S312における処理室201内の第1処理ガスの分圧を高くすることが好ましい。これにより、ウエハ表面と第1処理ガスとが十分に反応しやすくすることができるため、成膜レートを向上させることができる。ただし、チャージ圧力が大きくなると、第1処理ガスの断熱膨張によるタンク315の温度低下、及び、サイクル間における第1温度、第2温度のばらつきが大きくなりやすい。自己分解反応を起こさない処理ガスが比較的高いチャージ圧力でフラッシュ供給される場合においても、本開示の技術を用いることでサイクル間の処理のばらつきを低減することができる。
【0099】
例えば、第1処理ガスを金属元素含有ガスであり、第2処理ガスを還元ガスである、としてウエハ200上に金属膜を形成する場合、処理室201の内部に導電性膜(金属膜)が付着することで、還元ガスのプラズマ励起する際に意図しない放電が発生しやすくなる。ここで、例えば、第1処理ガスは還元ガスであり、第2処理ガスは金属元素含有ガスである、としてウエハ200上に金属膜を形成する場合を考える。この時、還元ガスをフラッシュ供給することで処理室201内における還元ガスの分圧を高くすることができるため、プラズマ励起を用いずに、還元ガスのウエハ200表面に対する反応性を向上させることができる。
【0100】
第1処理ガスとしては、ウエハ200が存在する空間(処理室201)内で自己分解反応を起こす原料ガス又は反応ガスが用いられてもよい。例えば、原料ガスとしてのSi含有ガスであるSiHCl、SiH4Cl、SiCl、SiClは、処理室201内で自己分解反応を起こすガスとみなすことができる。このようなガスは、温度によって自己分解反応の起こりやすさが変化する。すなわち、サイクル間でのタンク315,325の温度のばらつきによってサイクル間で処理の結果にばらつきが生じやすくなる。このような場合であっても、サイクル間でのタンク315の温度のばらつきが低減するので、自己分解反応を起こす処理ガスの温度を安定化させることができる。従って、サイクル間の処理のばらつきを低減することができる。
【0101】
フラッシュ供給では、タンクに貯留される第1処理ガスの量と、ウエハ200に供給される第1処理ガスの量と、が大きくなるほど、表面積が大きいウエハ200に対しても十分な量の第1処理ガスを供給しやすくなるため、ステップカバレッジを改善しやすくなる。好ましくは、供給工程S312においてウエハ200にタンク315から供給される第1処理ガスの量は、貯留工程S311においてタンク315に貯留される第1処理ガスの量の半分以上である。ただし、タンク315に貯留されている第1処理ガスの量に対して、タンク315から供給される第1処理ガスの量が多くなるほど、タンク315内の圧力変化や、サイクル間での第1温度や第2温度のばらつきが大きくなりやすい。本開示の技術は上述した効果によってこのような影響を抑制できるため、サイクル間の処理のばらつきを低減しつつ、ステップカバレッジよく膜を形成することができる。
【0102】
第1温度のばらつきが低減される他の態様について図7(a)から図7(d)および図8を用いて説明する。
【0103】
好ましくは、複数のサイクルが、第1温度が等しい2つ以上のサイクルの組を少なくとも1つ含むように、上述した基板処理工程が行われる。これにより、サイクル間でウエハ200に供給される第1処理ガスの温度のばらつきをさらに小さくすることができる。そのため、サイクル毎の処理のばらつきを抑制することができる。より好ましくは、上述した基板処理工程において、複数のサイクル間における第1温度が等しくなるように、サイクルが複数回行われる。これにより、さらにサイクル毎の処理のばらつきを抑制することができる。これらについて、幾つかの具体例を用いて説明する。
【0104】
(第1例)
図7(a)に示すように、貯留工程S311として、第1処理ガスをタンク315に貯留する貯留工程S311aと、貯留工程S311aの後に、タンク315の温度を第1温度にするタンク温調工程S311)と、が行われてもよい。言い換えると、各サイクルにおいて、貯留工程S311として、第1処理ガスをタンク315に貯留する貯留工程S311aと、貯留工程S311aの後に、タンク315の温度をサイクル間で等しい温度にするタンク温調工程S311bと、が行われた後に、供給工程S312が開始される。これにより、供給工程S312の後のタンク315の温度のばらつきによるサイクル間の処理のばらつきを、さらに抑制することができる。
【0105】
(第2例)
図7(b)に示すように、貯留工程S311として、貯留工程S311aとタンク温調工程S311bに加えて、所定の時間が経過するまでタンク315の温度を第1温度に保つ保温工程S311cが行われてもよい。これにより、タンク315とタンク315内に貯留された第1処理ガスとを熱平衡状態に近づけることができる。よって、各サイクルにおいてウエハ200に供給される第1処理ガスの温度のばらつきをさらに小さくできる。
【0106】
(第3例)
図7(c)に示すように、貯留工程S311として、貯留工程S311aとタンク温調工程S311bに加えて、タンク315内に貯留された第1処理ガスの温度を第1温度にする熱平衡工程S311dが行われてもよい。熱平衡工程S311dでは、タンク315内に貯留された第1処理ガスとタンク315とが熱平衡状態にされる。これにより、サイクル間の処理のばらつきをさらに抑制できる。ここで、図7(b)に示す保温工程S311cの処理を、タンク315内に貯留された第1処理ガスの温度が第1温度になるまで行う場合、保温工程S311cと熱平衡工程S311dとを並行して行っている、とみなしてもよい。
【0107】
(第4例)
図7(d)に示すように、図7(a)に示すタンク315の温度を第1温度にするタンク温調工程S311bに代えて、第1処理ガスの温度を第1温度にするガス温調工程S311eが行われてもよい。例えば、所定の方法によってタンク315内に貯留された第1処理ガスの温度を第1温度にするようなタンク用ヒータ316の出力条件を事前に求める。そして、その出力条件でタンク用ヒータ316を制御することで、タンク315の温度を第1温度に制御せずに、タンク315内に貯留された第1処理ガスの温度を第1温度にしてもよい。ここで、所定の方法は、例えば、基板処理工程の前及び基板処理工程を行っている間の少なくとも何れか一方において、基板処理装置の構成要素や、基板処理装置を用いて行われる評価の結果から得られるデータを基に、タンク315内に貯留された第1処理ガスの温度を算出すること及び予測することの少なくとも何れか一方を行うことを含む。また、所定の方法は、例えば、コンピューターシミュレーションを含む数値計算の結果を基に、タンク315内に貯留された第1処理ガスの温度を算出すること及び予測することの少なくとも何れか一方を行うことを含む。これにより、サイクル間の処理のばらつきをさらに抑制できる。
【0108】
なお、貯留工程S311aにおいてタンク315に第1処理ガスが貯留さている間に、タンク315内の第1処理ガスの温度が第1温度にされてもよい。このような場合、タンク温調工程S311bとガス温調工程S311eとを並行して行っている、とみなすことができる。
【0109】
図8に示すように、貯留工程S311の前に、第1処理ガスを熱交換器318に供給する予備加熱工程が行われてもよい。第1処理ガスを熱交換器318によって加熱してからタンク315に貯留されることで、各サイクルにおけるウエハに供給される第1処理ガスの温度のばらつきをさらに低減できる。また、例えば、タンク温調工程S311bやガス温調工程S311eのように、サイクル間でタンク315の温度やタンク315内に貯留された第1処理ガスの温度を揃える工程が行われる場合、これらの工程に要する時間を短縮することができる。
【0110】
以上、本開示の実施形態を具体的に説明したが、本開示は上述の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0111】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0112】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0113】
上述の態様は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【符号の説明】
【0114】
201・・・処理室
280・・・コントローラ(制御部)
313,323・・・バルブ(第2弁)
314,324・・・バルブ(第1弁)
315,325・・・タンク(貯留部)
316,326・・・タンク用ヒータ(加熱部)
S311・・・貯留工程
S312・・・供給工程
S313・・・温調工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8