(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166533
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ポリエチレン繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 6/04 20060101AFI20241122BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20241122BHJP
C08F 110/02 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
D01F6/04 B
C08L23/06
C08F110/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082690
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大西 拓也
(72)【発明者】
【氏名】成毛 翔子
(72)【発明者】
【氏名】浅井 慎一
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆治
(72)【発明者】
【氏名】若林 保武
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4L035
【Fターム(参考)】
4J002BB03W
4J002BB03X
4J002EJ020
4J002EW060
4J002FD070
4J002GB01
4J002GC00
4J002GK01
4J002GM00
4J100AA02P
4J100CA01
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA06
4J100DA15
4J100DA43
4J100DA49
4J100FA09
4J100FA21
4J100FA28
4J100FA29
4J100FA30
4J100FA34
4J100FA37
4J100FA41
4J100JA11
4J100JA28
4J100JA51
4J100JA57
4L035AA05
4L035BB89
4L035BB91
4L035EE01
4L035EE08
4L035EE09
4L035GG02
4L035HH02
4L035HH04
4L035HH05
4L035HH10
4L035MA01
4L035MA02
(57)【要約】
【課題】 分子量に二峰性と溶融性とを有する高分子量のエチレン系樹脂、好ましくはポリエチレンとの組成物とすることにより、引張破断応力、弾性率等の機械特性に優れると共に加工性にも優れるポリエチレン繊維を提供する。
【解決手段】 温度190℃、荷重21.6kgにおけるHLMFRが0.01~100g/10min、GPCにより測定される溶出曲線が二峰であるエチレン系樹脂製、好ましくは温度190℃、荷重2.16kgにおけるMFRが0.01~10g/10min、密度が930~980kg/m3であるポリエチレンを含む組成物製、であるポリエチレン繊維。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)JIS 6922-2:1997に準拠し、温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)が0.01~100g/10min、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される溶出曲線が二峰であるエチレン系樹脂を含むものであることを特徴とするポリエチレン繊維。
【請求項2】
更に、JIS 6922-2:1997に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.01~10g/10min、JIS K6922-1(1997年)で測定した密度が930~980kg/m3であるポリエチレンを含む組成物製であることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン繊維。
【請求項3】
エチレン系樹脂が、下記の特性(2)を満足するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエチレン繊維。
(2);ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される溶出曲線が二峰であり、該溶出曲線を微分分子量分布(x軸:Log[M]、y軸:微分分布値)として表し下記式(i)により2つの正規分布にピーク分割した際に下記(2-1)~(2-3)を満足する。
f(x)=a×(1/(2π(σ2))(1/2))
exp(-((x-μ)2)/(2(σ2))) 式(i)
(ここで、aはピーク強度、σは標準偏差、xは変数、μは平均のそれぞれを示す。)
(2-1);高分子量側のピークによる直鎖状ポリエチレン換算の重量平均分子量が90万~500万、重量平均分子量/数平均分子量で表される分子量分布が2.0~5.0である。
(2-2);低分子量側のピークによる直鎖状ポリエチレン換算の重量平均分子量が1万~50万、分子量分布が2.0~5.0である。
(2-3);高分子量側ピークの重量割合/低分子量側ピークの重量割合が5/95より大きく80/20より小さいものである。
【請求項4】
エチレン系樹脂が、下記の特性(3)をも満足するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエチレン繊維。
(3);ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される標準ポリエチレン換算の分子量分布が4.0以上50未満である。
【請求項5】
エチレン系樹脂が、下記の特性(4)をも満足するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエチレン繊維。
(4);示差走査型熱量計を用い、0℃から10℃/分の昇温速度で230℃まで昇温(1stスキャン)して測定される1stスキャンの結晶融解ピーク(Tm)が単峰である。
【請求項6】
23℃で測定した引張弾性率が4.0GPa以上、引張破断強度が300MPa以上の繊維であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエチレン繊維。
【請求項7】
エチレン系樹脂が、エチレン単独重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエチレン繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のポリエチレン繊維に関するものであり、さらに詳細には、分子量に二峰性と溶融性とを有する高分子量のエチレン系樹脂を含むことにより、引張破断応力、弾性率等の機械特性に優れると共に加工性にも優れるポリエチレン繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンは、広汎な用途に利用されている樹脂であり、各用途に適した樹脂とするために、2種類以上の樹脂成分を組み合わせることにより、分子量分布や組成を制御し、各種物性や外観を改良する技術が提案されている。例えば、より高分子量な成分の増加は、機械強度を向上させる一方で成形性を低下させ、より低分子量な成分の増加は、機械強度を低下させる一方成形性を向上させる。
【0003】
2種類以上のポリエチレン成分を組み合わせる方法として、各成分をそれぞれ重合した後に溶融混練やドライブレンドによりブレンドする方法、多段重合を連続的に行う方法、重合系内に複数の遷移金属触媒を添加して2種以上のポリエチレン成分を同時に生成する方法、及びこれらを組み合わせて行う方法等が提案されている。また、被改質材料にブレンドすることにより、被改質材料の物性や外観等を改質する樹脂用改質材(例えば特許文献1参照。)も提案されている。
【0004】
そして、近年注目されている超高分子量ポリエチレン(例えば特許文献2、3参照。)は、粘度平均分子量(以下、Mvと記す場合がある。)で100万以上に相当する極めて高い分子量を有していることから、耐衝撃性、自己潤滑性、耐摩耗性、耐候性、耐薬品性、寸法安定性等に優れており、エンジニアリングプラスチックに匹敵する高い物性を有している。このため、各種成形方法により、シート、フィルム、高強度繊維、摺動部材、ライニング材、食品工業のライン部品、機械部品、人工関節、スポーツ用品、微多孔膜、セパレータ等の用途への適用が試みられている。
【0005】
また、ポリエチレンよりなるポリエチレン繊維はポリエチレンという汎用の材料よりなるにも関わらず、優れた性能を発現することから注目されており、耐切創性に優れる繊維として、[η]=0.8~4.9dl/gのポリエチレンにアスペクト比3未満、平均粒子径3.0~15.0μmの硬質粒子を配合してなるもの(例えば特許文献4参照。)、耐クリープ性に極めて優れる繊維として、側鎖に特定のエチル分岐を有する超高分子量ポリエチレンよりなるもの(例えば特許文献5参照。)、等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-179304号公報
【特許文献2】特許第4868853号
【特許文献3】特許第6405888号
【特許文献4】国際公開特許2018/181309号
【特許文献5】特開2021-70902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に提案の改質材は、加工性の改良には一定の効果の見られるものであったが、機械強度の向上効果についてはさらなる改良が求められるものであり、特許文献2、3は、単に超高分子量ポリエチレンを提案するにとどまり、成形加工性については課題を有するものであった。
【0008】
そして、特許文献4に提案されたポリエチレン繊維は、溶融紡糸に適用可能ではあるが、機械特性に課題を有するものであった。また、特許文献5に提案されたポリエチレン繊維は、加工性に優れる溶融紡糸を適用することが困難なものであった。
【0009】
そこで、ゲル紡糸のみならず溶融紡糸も適用可能な加工性に優れ、機械特性にも優れるポリエチレン繊維の出現が期待されてきた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の溶融特性と分子量構成を有するエチレン系樹脂が溶融紡糸の適用が可能であると共に、引張破断応力、弾性率等の引張特性に優れるポリエチレン繊維となりえることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、(1)JIS 6922-2:1997に準拠し、温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)が0.01~100g/10min、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される溶出曲線が二峰であるエチレン系樹脂を含むものであることを特徴とするポリエチレン繊維に関するものである。
【0012】
以下に、本発明の詳細を説明する。
【0013】
本発明のポリエチレン繊維は、(1)JIS 6922-2:1997に準拠し、温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(以下、HLMFRと記すことがある。)が0.01~100g/10min、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと記すことがある。)により測定される溶出曲線が二峰であるエチレン系樹脂(ハ)を含んでなるエチレン系樹脂製のポリエチレン繊維であり、該エチレン系樹脂(ハ)は、溶融挙動を示す比較的高分子量で、GPCにより測定される溶出曲線が二峰を示すバイモーダルなエチレン系樹脂であればよく、例えばエチレン単独重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体を挙げることができ、その際のα-オレフィンとしては、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等であり、特に引張特性に優れるポリエチレン繊維となることからエチレン単独重合体であることが好ましい。
【0014】
そして、該エチレン系樹脂(ハ)は、(1)HLMFRが0.01~100g/10minのものであり、溶融流動性を示すものである。ここで、0.01g/10min未満のものである場合、溶融流動性に劣り溶融紡糸の際の加工性に劣るものとなる。一方、100g/10minを越えるものである場合、繊維が機械特性に劣るものとなる。
【0015】
本発明のポリエチレン繊維を構成するエチレン系樹脂(ハ)は、バイモーダルの分子量分布を有するエチレン系重合体であり、加工性と引張特性のバランスに優れるポリエチレン繊維となることから特定の成分として特定の超高分子量ポリエチレン成分(イ)を含むものであることが好ましい。その際のバイモーダルの分子量分布とは、GPCにより測定される溶出曲線が二峰であり、該溶出曲線を微分分子量分布(x軸:Log[M]、y軸:微分分布値)として表し、下記式(i)により2つの正規分布(超高分子量ポリエチレン成分(イ)正規分布、ポリエチレン成分(ロ)正規分布)にピーク分割した際に(2-1)~(2-3)を満足するものであることが好ましい。
f(x)=a×(1/(2π(σ2))(1/2))
exp(-((x-μ)2)/(2(σ2))) 式(i)
(ここで、aはピーク強度、σは標準偏差、xは変数、μは平均のそれぞれを示す。)
(2-1)高分子量側ピーク成分として表される超高分子量ポリエチレン成分(イ)(以下、成分(イ)と称する場合がある。)の重量平均分子量(以下、Mwと記すことがある。)が90万~500万、重量平均分子量/数平均分子量(以下、Mw/Mnと記すことがある。)で表される分子量分布が2.0~5.0、(2-2)低分子量側ピーク成分として表されるポリエチレン成分(ロ)(以下、成分(ロ)と称する場合がある。)のMwが1万~50万であり、Mw/Mnが2.0~5.0、また、(2-3)成分(イ)/成分(ロ)(重量割合)が5/95より大きく80/20より小さいものである、ことが好ましく、特に成分(イ)/成分(ロ)(重量割合)が10/90~50/50であることが好ましい。
【0016】
該エチレン系樹脂(ハ)が、超高分子量成分である成分(イ)と低分子量である成分(ロ)が特定の割合で共存するものである場合、溶融特性に優れるものとなる上に、ポリエチレンとブレンドした際に、成分(イ)が高度に分散することができ、外観を損なうことなく、ポリエチレン繊維の引張特性を高度に改質することを可能とするものである。
【0017】
そして、ポリエチレンへの分散性と機械特性向上のバランスに特に優れるポリエチレン繊維となることから、エチレン系樹脂(ハ)としては、(3)GPCにより測定される直鎖状ポリエチレン換算のMw/Mn=4.0以上50未満であることが好ましく、特に4.0以上30以下であることが好ましい。
【0018】
また、成分(イ)と成分(ロ)とが単なるブレンドのようにそれぞれが独立して分散しているものとは異なるものとなることから、該エチレン系樹脂(ハ)としては、(4)示差走査型熱量計(以下、DSCと記す場合がある。)を用い、0℃から10℃/分の昇温速度で230℃まで昇温(以下、1stスキャンと記す場合がある。)して測定される1stスキャンの結晶融解ピーク(以下、Tm1と記す場合がある。)が単峰であることが好ましい。
【0019】
本発明のポリエチレン繊維を構成するエチレン系樹脂(ハ)としては、上記した特性を満足するものであればよく、特に分子量、分子量分布の制御、(超)高分子量化が容易であることから、メタロセン系触媒により製造されたものであることが好ましく、中でも、成分(イ)及び成分(ロ)を共に有するエチレン系樹脂(ハ)の製造方法としては、例えば触媒系としては担体に2種以上のメタロセン錯体を担持した共担持触媒を用いる方法、2段以上の多段重合による方法等の挙げることができる。
【0020】
該エチレン系樹脂(ハ)の重合方法としては、例えば溶液重合法、塊状重合法、気相重合法、スラリー重合法等の方法を挙げることができ、その中でも、特に粒子形状が整ったエチレン系樹脂の製造が可能となることからスラリー重合法であることが好ましい。また、スラリー重合法に用いる溶媒としては、一般に用いられている有機溶媒であればいずれでもよく、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられ、イソブタン、プロパン等の液化ガス、1-ブテン、1-ヘキセンなどのオレフィンを溶媒として用いることもできる。
【0021】
また、該エチレン系樹脂(ハ)を製造するのに用いる製造用触媒としては、該エチレン系樹脂の製造が可能であれば如何なるものを用いることも可能であり、例えば多段重合においては少なくとも遷移金属化合物(A-1)、脂肪族塩にて変性した有機変性粘土(B)及び有機アルミニウム化合物(C)より得られるメタロセン系触媒を挙げることができ、例えば共担持触媒法においては少なくとも遷移金属化合物(A-1)、遷移金属化合物(A-2)、脂肪族塩にて変性した有機変性粘土(B)及び有機アルミニウム化合物(C)より得られるメタロセン系触媒を挙げることができる。
【0022】
該遷移金属化合物(A-1)としては、例えば(置換)シクロペンタジエニル基と(置換)フルオレニル基を有する遷移金属化合物、(置換)シクロペンタジエニル基と(置換)インデニル基を有する遷移金属化合物、(置換)インデニル基と(置換)フルオレニル基を有する遷移金属化合物等を挙げることができ、その際の遷移金属としては、例えばジルコニウム、ハフニウム等を挙げることができ、その中でも特にポリエチレン繊維として適したエチレン系樹脂を効率よく製造することが可能となることから、(置換)シクロペンタジエニル基とアミノ基置換フルオレニル基を有するジルコニウム化合物、(置換)シクロペンタジエニル基とアミノ基置換フルオレニル基を有するハフニウム化合物であることが好ましい。
【0023】
そして、より具体的には、例えばジフェニルメチレン(1-インデニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(1-インデニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(4-フェニル-1-インデニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2-(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2-(ジエチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2-(ジベンジルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,7-ビス(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,7-ビス(ジエチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,7-ビス(ジベンジルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4-(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4-(ジエチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4-(ジベンジルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジエチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジイソプロピルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジベンジルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジエチルアミノ)-7-エチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジイソプロピルアミノ)-7-エチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジベンジルアミノ)-7-エチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジメチルアミノ)-7-n-プロピル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジエチルアミノ)-7-n-プロピル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジイソプロピルアミノ)-7-n-プロピル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジベンジルアミノ)-7-n-プロピル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジメチルアミノ)-7-イソプロピル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジエチルアミノ)-7-イソプロピル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジイソプロピルアミノ)-7-イソプロピル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジベンジルアミノ)-7-イソプロピル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジメチルアミノ)-7-n-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジイソプロピルアミノ)-7-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジベンジルアミノ)-7-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、などのジルコニウム化合物;これらのジクロロ体をジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体に変えたジルコニウム化合物、およびこれら化合物のジルコニウムをハフニウムに変えたハフニウム化合物などを例示することができる。
【0024】
該遷移金属化合物(A-2)としては、例えば(置換)シクロペンタジエニル基と(置換)フルオレニル基を有する遷移金属化合物、(置換)シクロペンタジエニル基と(置換)インデニル基を有する遷移金属化合物、(置換)インデニル基と(置換)インデニル基を有する遷移金属化合物等を挙げることができる。
【0025】
より具体的には、ジメチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジエチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジシクロヘキシルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジエチルシランジイルビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジシクロヘキシルシランジイルビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイルビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(2,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジエチルシランジイルビス(2,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジシクロヘキシルシランジイルビス(2,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイルビス(2,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイル[(シクロペンタジエニル)(インデニル)]ジルコニウムジクロライド、ジエチルシランジイル[(シクロペンタジエニル)(インデニル)]ジルコニウムジクロライド、ジシクロヘキシルシランジイル[(シクロペンタジエニル)(インデニル)]ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル[(シクロペンタジエニル)(インデニル)]ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイル[(シクロペンタジエニル)(4,7-ジメチルインデニル)]ジルコニウムジクロライド、ジエチルシランジイル[(シクロペンタジエニル)(4,7-ジメチルインデニル)]ジルコニウムジクロライド、ジシクロヘキシルシランジイル[(シクロペンタジエニル)(4,7-ジメチルインデニル)]ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル[(シクロペンタジエニル)(4,7-ジメチルインデニル)]ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイル[(シクロペンタジエニル)(2,4,7-トリメチルインデニル)]ジルコニウムジクロライド、ジエチルシランジイル[(シクロペンタジエニル)(2,4,7-トリメチルインデニル)]ジルコニウムジクロライド、ジシクロヘキシルシランジイル[(シクロペンタジエニル)(2,4,7-トリメチルインデニル)]ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル[(シクロペンタジエニル)(2,4,7-トリメチルインデニル)]ジルコニウムジクロライド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、(メチル)(フェニル)メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、(メチル)(フェニル)メチレンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、(メチル)(フェニル)メチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、(メチル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルーフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、(メチル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルーフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルーフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルーフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、などのジルコニウム化合物;これらのジクロロ体をジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体に変えたジルコニウム化合物、およびこれら化合物のジルコニウムをハフニウムに変えたハフニウム化合物などを例示することができる。
【0026】
該脂肪族塩にて変性した有機変性粘土(B)としては、例えばN,N-ジメチル-ベヘニルアミン塩酸塩、N-メチル-N-エチル-ベヘニルアミン塩酸塩、N-メチル-N-n-プロピル-ベヘニルアミン塩酸塩、N,N-ジオレイル-メチルアミン塩酸塩、N,N-ジメチル-ベヘニルアミンフッ化水素酸塩、N-メチル-N-エチル-ベヘニルアミンフッ化水素酸塩、N-メチル-N-n-プロピル-ベヘニルアミンフッ化水素酸塩、N,N-ジオレイル-メチルアミンフッ化水素酸塩、N,N-ジメチル-ベヘニルアミン臭化水素酸塩、N-メチル-N-エチル-ベヘニルアミン臭化水素酸塩、N-メチル-N-n-プロピル-ベヘニルアミン臭化水素酸塩、N,N-ジオレイル-メチルアミン臭化水素酸塩、N,N-ジメチル-ベヘニルアミンヨウ化水素酸塩、N-メチル-N-エチル-ベヘニルアミンヨウ化水素酸塩、N-メチル-N-n-プロピル-ベヘニルアミンヨウ化水素酸塩、N,N-ジオレイル-メチルアミンヨウ化水素酸塩、N,N-ジメチル-ベヘニルアミン硫酸塩、N-メチル-N-エチル-ベヘニルアミン硫酸塩、N-メチル-N-n-プロピル-ベヘニルアミン硫酸塩、N,N-ジオレイル-メチルアミン硫酸塩等の脂肪族アミン塩;P,P-ジメチル-ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P-ジエチル-ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P-ジプロピル-ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P-ジメチル-ベヘニルホスフィンフッ化水素酸塩、P,P-ジエチル-ベヘニルホスフィンフッ化水素酸塩、P,P-ジプロピル-ベヘニルホスフィンフッ化水素酸塩、P,P-ジメチル-ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P-ジエチル-ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P-ジプロピル-ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P-ジメチル-ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P-ジエチル-ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P-ジプロピル-ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P-ジメチル-ベヘニルホスフィン硫酸塩、P,P-ジエチル-ベヘニルホスフィン硫酸塩、P,P-ジプロピル-ベヘニルホスフィン硫酸塩等の脂肪族ホスフォニウム塩;等の脂肪族塩により変性された粘土を挙げることができる。
【0027】
また、該有機変性粘土(B)を構成する粘土化合物としては、粘土化合物の範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、一般的にシリカ四面体が二次元上に連続した四面体シートと、アルミナ八面体やマグネシア八面体等が二次元上に連続した八面体シートが1:1又は2:1で組合わさって構成されるシリケート層と呼ばれる層が何枚にも重なって形成され、一部のシリカ四面体のSiがAl、アルミナ八面体のAlがMg、マグネシア八面体のMgがLi等に同型置換されることにより層内部の正電荷が不足し、層全体として負電荷を帯びており、この負電荷を補償するために層間にはNa+やCa2+等の陽イオンが存在しているものとして知られているものである。そして、該粘土化合物としては天然品、または合成品としてのカオリナイト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、雲母、脆雲母、縁泥石等が存在し、これらを用いることが可能であり、その中でも入手のしやすさと有機変性の容易さからスメクタイトが好ましく、特にスメクタイトのなかでもヘクトライトまたはモンモリロナイトがさらに好ましい。
【0028】
該有機変性粘土(B)は、該粘土化合物の層間に該脂肪族塩を導入し、イオン複合体を形成することにより得る事が可能である。該有機変性粘土(B)を調製する際には、粘土化合物の濃度0.1~30重量%、処理温度0~150℃の条件を選択して処理を行うことが好ましい。また、該脂肪族塩は固体として調製して溶媒に溶解させて使用しても良いし、溶媒中での化学反応により該脂肪族塩の溶液を調製してそのまま使用しても良い。該粘土化合物と該脂肪族塩の反応量比については、粘土化合物の交換可能なカチオンに対して当量以上の脂肪族塩を用いることが好ましい。処理溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;エチルアルコール、メチルアルコール等のアルコール類;エチルエーテル、n-ブチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;アセトン;1,4-ジオキサン;テトラヒドロフラン;水、等を用いることができる。そして、好ましくは、アルコール類または水を単独もしくは溶媒の一成分として用いることである。
【0029】
また、製造用触媒を構成する有機変性粘土(B)の粒径に制限はなく、その中でも触媒調製時の効率、エチレン系樹脂製造時の効率に優れるものとなることから1~100μmであることが好ましい。その際の粒径を調節する方法にも制限はなく、大きな粒子を粉砕して適切な粒径にしても、小さな粒子を造粒して適切な粒径にしても良く、あるいは粉砕と造粒を組み合わせても良い。また、粒径の調節は有機変性前の粘土に行っても、変性後の有機変性粘土に行っても良い。
【0030】
該有機アルミニウム化合物(C)としては、有機アルミニウム化合物と称される範疇に属するものであれば如何なるものも用いることができ、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0031】
該製造用触媒を構成する該遷移金属化合物(A-1)及び(A-2)(以下、遷移金属化合物(A-1)と(A-2)とを併せて(A)成分ということもある。)、該有機変性粘土(B)(以下、(B)成分ということもある。)、および該有機アルミニウム化合物(C)(以下、(C)成分ということもある。)の使用割合に関しては、製造用触媒としての使用が可能であれば如何なる制限を受けるものでなく、その中でも、特にエチレン系樹脂(ハ)を生産効率よく製造することが可能な製造用触媒となることから、(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比は(A)成分:(C)成分=100:1~1:100000の範囲にあることが好ましく、特に1:1~1:10000の範囲であることが好ましい。また、(A)成分と(B)成分の重量比が(A)成分:(B)成分=10:1~1:10000にあることが好ましく、特に3:1~1:1000の範囲であることが好ましい。
【0032】
該製造用触媒の調製方法に関しては、該(A)成分、該(B)成分および該(C)成分を含む製造用触媒を調製することが可能であれば如何なる方法を用いてもよく、例えば各(A)、(B)、(C)成分に関して不活性な溶媒中あるいは重合を行うモノマーを溶媒として用い、混合する方法などを挙げることができる。また、これらの成分を反応させる順番に関しても制限はなく、この処理を行う温度、処理時間も制限はない。また、(A)成分、(B)成分、(C)成分のそれぞれを2種類以上用いて製造用触媒を調製することも可能である。
【0033】
該エチレン系樹脂(ハ)を製造する際の重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度などの重合条件については任意に選択可能であり、その中でも、重合温度0~100℃、重合時間10秒~20時間、重合圧力常圧~100MPaの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて、2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られる重合粒子は、従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0034】
本発明のポリエチレン繊維は、優れた加工法に適したものとして溶融紡糸製ポリエチレン繊維であることが好ましく、その際には該エチレン系樹脂(ハ)製であることは無論、特に優れた溶融特性を有することからエチレン系樹脂(ハ)及びポリエチレン(ニ)を含む組成物(ホ)製であることが好ましい。その際のポリエチレン(ニ)としては、ポリエチレンの範疇に属するものであれば如何なるものでもよく、例えばエチレン単独重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体を挙げることができ、その際のα-オレフィンとしては、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等であり、中でも引張特性に優れるポリエチレン繊維となることからエチレン単独重合体であることが好ましく、特に加工性と機械特性とのバランスに優れるポリエチレン繊維となることから、MFRが0.01~10g/10min、密度が930~980kg/m3であるポリエチレン、更には高密度ポリエチレンが好ましく、そのようなポリエチレンとしては、例えば(商品名)ニポロンハード(東ソー(株)製)を挙げることができる。
【0035】
そして、組成物(ホ)とする場合の配合量としては、ポリエチレン繊維としての優れた引張特性が発現される限りにおいて任意であり、特にその機械特性と加工性とのバランスに優れるものとなることから、ポリエチレン(ニ)100重量部に対し、エチレン系樹脂(ハ)1~100重量部を含む組成物(ホ)とすることが好ましく、特に5~50重量部であることが好ましい。また、その際の組成物(ホ)の調製方法としては、如何なる方法により調製することも可能であり、例えばポリエチレン(ニ)100重量部に対しエチレン系樹脂(ハ)1~100重量部、更には必要に応じて、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、中和剤、界面活性剤、スリップ剤、無機あるいは有機質の充填剤等の通常ポリオレフィン等に使用される添加剤を配合し、混錬機器等により、配合・混錬する方法を挙げることができる。その際の条件としは、組成物(ホ)とすることが可能であればよく、例えばエチレン系樹脂(ハ)、場合によっては、ポリエチレン(ニ)及び/またはその他添加剤等を単軸又は二軸の溶融混練機等を用いて190℃~250℃の範囲の温度で20~30秒間程度、加熱溶融して混練する方法を挙げることができ、さらに粒状に切断されたペレット状態にしてポリエチレン繊維用材料として供する、ことができる。
【0036】
本発明のポリエチレン繊維の調製方法としては、如何なる方法により調製することも可能であり、例えば溶融紡糸、ゲル紡糸等を挙げることができ、より加工性に優れ、紡糸後の溶媒の除去工程が無く環境低負荷なことから溶融紡糸であることが好ましい。
【0037】
溶融紡糸としては、例えばエチレン系樹脂(ハ)、エチレン系樹脂(ハ)と上記した配合剤とを配合し、更にはエチレン系樹脂(ハ)とポリエチレン(ニ)を配合し、そのまま又は組成物(ホ)とした後に、押出機により好ましくはエチレン系樹脂(ハ)の融点より50℃以上高い温度で紡糸ノズルより押し出し、未延伸の吐出糸とする方法を挙げることができる。また、ゲル紡糸としては、例えばエチレン系樹脂(ハ)、エチレン系樹脂(ハ)と上記した配合剤とを配合し、更にはエチレン系樹脂(ハ)とポリエチレン(ニ)を配合し、そのまま又は組成物(ホ)とした後にデカリン、テトラリン等の溶媒に溶解し、溶液とし、該溶液を押出機により好ましくはエチレン系樹脂(ハ)の融点より10℃以上高い温度で紡糸ノズルより押し出しゲル糸状とし、冷却した後、クロロホルム、ベンゼン、デカン等の抽出剤で溶媒を抽出し未延伸の糸とする方法を挙げることができる。更に未延伸の糸を一段又は多段の延伸工程により延伸し、延伸糸とする方法を用いてもよく、その際の延伸倍率としては2~100倍を挙げることができる。また、その際の繊維径としては適宜選択可能であり、例えば10~500μmを挙げることができる。
【0038】
本発明のポリエチレン繊維としては、特に耐熱性向上効果に優れるものとなることから、延伸前の未延伸糸の結晶融解ピーク温度(Tm0)、延伸糸である延伸ポリエチレン繊維の結晶融解ピーク温度(Tmd)との差(Tmd-Tm0)が5℃≦Tmd-Tm0であることが好ましい。その際の結晶融解ピーク温度は、DSCを用いて、0℃から10℃/分の昇温速度で230℃まで昇温(1stスキャン)した際の1stスキャンの結晶融解ピーク温度として測定することができる。
【0039】
本発明のポリエチレン繊維としては、繊維状物であれば如何なるものであってもよく、例えばヤーン、モノフィラメント、マルチフィラメント等の繊維状物を挙げることができ、その形状としては円、楕円を始め、芯鞘構造、星形、多角、中空等を有していてもよい。該ポリエチレン繊維は、例えば手袋、ベスト、テープ、シート、組紐、撚糸、釣り糸、ロープ、ネット等に用いることができる。
【発明の効果】
【0040】
加工性および機械強度に優れ、軽量化や長寿命化が期待されるポリエチレン繊維であり、各種用途への適用が期待されるものとなる。
【実施例0041】
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。
【0042】
なお、断りのない限り、用いた試薬等は市販品、あるいは既知の方法に従って合成したものを用いた。
【0043】
有機変性粘土の粉砕にはジェットミル((商品名)CO-JET SYSTEM α MARK III、セイシン企業社製)を用い、粉砕後の粒径はマイクロトラック粒度分布測定装置((商品名)MT3000、日機装(株)製)を用いてエタノールを分散剤として測定した。
【0044】
製造用触媒の調製、エチレン系樹脂の製造及び溶媒精製は全て不活性ガス雰囲気下で行った。トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(20wt%)は東ソーファインケム(株)製を用いた。
【0045】
さらに、エチレン系樹脂、ポリエチレンの諸物性は、以下に示す方法により測定した。
【0046】
~固有粘度([η])の測定~
ウベローデ型粘度計を用い、デカヒドロナフタレンを溶媒として、135℃において、エチレン系樹脂濃度0.005wt%で測定した。
【0047】
~Mw、Mnの測定~
カラム(東ソー(株)製、(商品名)TSKgel GMHHR-H(S)HT)を装着した超高温GPC(センシュー科学製、(商品名)SSC-7110)にて、溶離液として1-クロロナフタレンを用い、カラム温度210℃、試料濃度0.5mg/ml、注入量0.2mlとして測定した。分子量の検量線は、標準ポリスチレン試料を用いて校正し、MwおよびMnは直鎖状ポリエチレンに換算した。
【0048】
~MFR~
温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレートをJIS6922-2:1997に準拠して測定した。
【0049】
~HLMFR~
温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレートをJIS6922-2:1997に準拠して測定した。
【0050】
~エチレン系樹脂の熱融解の測定~
DSC(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製 (商品名)DSC6220)を用いて、0℃から10℃/分の昇温速度で230℃まで昇温(1stスキャン)し1stスキャンの結晶融解ピーク(Tm1)、融解熱量(ΔH1)の測定を行った。
【0051】
さらに、ポリエチレン繊維の諸物性は、以下に示す方法により測定した。
【0052】
~引張特性~
引張試験機(BALDWIN製 (商品名)UTM-2.5T-PL)を用い、25℃、50mm/minにおいて、ポリエチレン繊維を長さ3cmに切り出し、1%引張弾性率、及び引張破断応力を測定した。
~ポリエチレン繊維の熱融解の測定~
DSC(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製 (商品名)DSC6220)を用いて、0℃から10℃/分の昇温速度で230℃まで昇温(1stスキャン)し1stスキャンの結晶融解ピーク(Tm)、融解熱量(ΔH)の測定を行った。その際のポリエチレンのサンプル量は6mgとした。未延伸ポリエチレン繊維のTmをTm0、延伸ポリエチレン繊維のTmをTmdとし、該Tm0と該Tmdの差(Tmd-Tm0)が5℃≦Tmd-Tm0であるものを延伸による耐熱性向上効果が高いとした。
【0053】
調製例1
(1)有機変性粘土の調製
1リットルのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製、(商品名)エキネンF-3)300ml及び蒸留水300mlを入れ、濃塩酸15.0g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、(商品名)リポミンDM22D)42.4g(120mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(BYK Additives Limited社製、(商品名)ラポナイトRDS)100gを分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の温水600mlで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより125gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土をジェットミル粉砕して、メジアン径を10μmとした。
【0054】
(2)製造用触媒の懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mlのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108ml入れ、次いでジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-ジエチルアミノ-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライドを0.628g、及び20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液142mlを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却後、上澄み液を抜き取り、200mlのヘキサンにて2回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて製造用触媒の懸濁液を得た(固形重量分:12.5wt%)。
【0055】
調製例2
(1)有機変性粘土の調製
調製例1と同様に実施した。
【0056】
(2)製造用触媒の懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mlのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108ml入れ、次いでジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライドを0.669g、及び20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液142mlを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却後、上澄み液を抜き取り、200mlのヘキサンにて2回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて製造用触媒の懸濁液を得た(固形重量分:12.5wt%)。
【0057】
調製例3
(1)有機変性粘土の調製
1リットルのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製、(商品名)エキネンF-3)300ml及び蒸留水300mlを入れ、濃塩酸15.0g及びジオレイルメチルアミン((C18H35)2(CH3)N、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、(商品名)リポミンM2O)63.7g(120mmol)を添加し、45℃に加熱した後、合成ヘクトライト(BYK社製、(商品名)ラポナイトRD)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mlで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより130gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
【0058】
(2)製造用触媒の懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mlのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108ml入れ、次いでビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド0.392g(1ミリモル)及び20wt%のトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液142mlを添加して60℃で3時間攪拌した。室温まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、220mlのヘキサンにて2回洗浄後、ヘキサンを220ml加えて製造用触媒の懸濁液を得た(固形重量分:12.0wt%)。
【0059】
製造例1
以下のように、成分(イ-1)の重合の後、成分(ロ-1)の重合を連続して行う二段重合によりバイモーダルポリエチレンであるエチレン系樹脂(ハ-1)を製造した。該エチレン系樹脂(ハ-1)は、HLMFR=2.3g/10min、[η]=6.5dl/gであった。
【0060】
成分(イ-1)の製造
10リットルのオートクレーブにヘキサンを6リットル、20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を5.5ml、調製例1で得られた製造用触媒の懸濁液を2.50g(固形分310mg相当)加え、60℃にした後、エチレン分圧が0.80MPaに維持できるように、エチレンを連続的に供給し、スラリー重合を1時間行った。重合中にポリエチレン換算にして100gのエチレンが消費され、重合反応中の系内の水素濃度との関係から算出した成分(イ-1)の[η]は22dl/gであった。
【0061】
成分(ロ-1)及びエチレン系樹脂(ハ-1)の製造
成分(イ-1)を重合した後、60℃、エチレン分圧が0.50MPaに維持できるようにエチレンを連続的に供給し、さらにオートクレーブ気相部の水素濃度が4500ppmとなるように水素を間欠的に添加して、スラリー重合を9時間行い成分(ロ-1)の重合を行うことによりエチレン単独重合体であるエチレン系樹脂(ハ-1)の製造を行った。重合中にポリエチレン換算にして900gのエチレンが消費され、重合反応中の系内の水素濃度との関係から算出した成分(ロ-1)の[η]は2.0dl/gであった。
【0062】
製造例2
以下のように、成分(イ-2)の重合の後、成分(ロ-2)の重合を連続して行う二段重合によりバイモーダルポリエチレンであるエチレン系樹脂(ハ-2)を製造した。該エチレン系樹脂(ハ-2)は、HLMFR=0.08g/10min、[η]=7.5dl/gであった。
【0063】
成分(イ-2)の製造
10リットルのオートクレーブにヘキサンを6リットル、20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を5.5ml、調製例1で得られた製造用触媒の懸濁液を2.50g(固形分310mg相当)加え、60℃にした後、エチレン分圧が0.80MPaに維持できるように、エチレンを連続的に供給し、スラリー重合を2時間行った。重合中にポリエチレン換算にして200gのエチレンが消費され、重合反応中の系内の水素濃度との関係から算出した成分(イ-2)の[η]は22dl/gであった。
【0064】
成分(ロ-2)及びエチレン系樹脂(ハ-2)の製造
成分(イ-2)を重合した後、60℃、エチレン分圧が0.50MPaに維持できるようにエチレンを連続的に供給し、さらにオートクレーブ気相部の水素濃度が4500ppmとなるように水素を間欠的に添加して、スラリー重合を8時間行い成分(ロ-2)の重合を行うことによりエチレン単独重合体であるエチレン系樹脂(ハ-2)の製造を行った。重合中にポリエチレン換算にして800gのエチレンが消費され、重合反応中の系内の水素濃度との関係から算出した成分(ロ-2)の[η]は2.0dl/gであった。
【0065】
製造例3
以下のように、成分(イ-3)の重合の後、成分(ロ-3)の重合を連続して行う二段重合によりバイモーダルポリエチレンであるエチレン系樹脂(ハ-3)を製造した。該エチレン系重合体(ハ-3)は、HLMFR=3.1g/10min、[η]=4.1dl/gであった。
【0066】
成分(イ-3)の製造
10リットルのオートクレーブにヘキサンを6リットル、20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を5.5ml、調製例2で得られた製造用触媒の懸濁液を2.50g(固形分310mg相当)加え、70℃にした後、エチレン分圧が0.80MPaに維持できるように、エチレンを連続的に供給し、スラリー重合を1時間行った。重合中にポリエチレン換算にして200gのエチレンが消費され、重合反応中の系内の水素濃度との関係から算出した成分(イ-3)の[η]は10dl/gであった。
【0067】
成分(ロ-3)及びエチレン系樹脂(ハ-3)の製造
成分(イ-3)を重合した後、60℃、エチレン分圧が0.87MPaに維持できるようにエチレンを連続的に供給し、さらにオートクレーブ気相部の水素濃度が4500ppmとなるように水素を間欠的に添加して、スラリー重合を4時間行い成分(ロ-3)の重合を行うことによりエチレン単独重合体であるエチレン系樹脂(ハ-3)の製造を行った。重合中にポリエチレン換算にして800gのエチレンが消費され、重合反応中の系内の水素濃度との関係から算出した成分(ロ-3)の[η]は2.0dl/gであった。
【0068】
製造例4
以下のように、成分(イ-4)の重合の後、成分(ロ-4)の重合を連続して行う二段重合によりバイモーダルポリエチレンであるエチレン系樹脂(ハ-4)を製造した。該エチレン系樹脂(ハ-4)は、HLMFR=7.2g/10min、[η]=3.2dl/gであった。
【0069】
成分(イ-4)の製造
10リットルのオートクレーブにヘキサンを6リットル、20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を5.5ml、調製例2で得られた製造用触媒の懸濁液を2.50g(固形分310mg相当)加え、70℃にした後、エチレン分圧が0.80MPaに維持できるように、エチレンを連続的に供給し、スラリー重合を0.5時間行った。重合中にポリエチレン換算にして100gのエチレンが消費され、重合反応中の系内の水素濃度との関係から算出した成分(イ-4)の[η]は10dl/gであった。
【0070】
成分(ロ-4)及びエチレン系樹脂(ハ-4)の製造
成分(イ-4)を重合した後、60℃、エチレン分圧が0.87MPaに維持できるようにエチレンを連続的に供給し、さらにオートクレーブ気相部の水素濃度が4500ppmとなるように水素を間欠的に添加して、スラリー重合を4.5時間行い成分(ロ-4)の重合を行うことによりエチレン単独重合体であるエチレン系樹脂(ハ-4)の製造を行った。重合中にポリエチレン換算にして900gのエチレンが消費され、重合反応中の系内の水素濃度との関係から算出した成分(ロ-4)の[η]は2.0dl/gであった。
【0071】
製造例5
以下のように、成分(イ-5)の重合の後、成分(ロ-5)の重合を連続して行う二段重合によりバイモーダルポリエチレンであるエチレン系樹脂(ハ-5)を製造した。該エチレン系樹脂(ハ-5)は、HLMFR=0.23g/10min、[η]=6.6dl/gであった。
【0072】
成分(イ-5)の製造
10リットルのオートクレーブにヘキサンを6リットル、20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を5.5ml、調製例2で得られた製造用触媒の懸濁液を2.50g(固形分310mg相当)加え、70℃にした後、エチレン分圧が0.80MPaに維持できるように、エチレンを連続的に供給し、スラリー重合を2.5時間行った。重合中にポリエチレン換算にして500gのエチレンが消費され、重合反応中の系内の水素濃度との関係から算出した成分(イ-5)の[η]は10dl/gであった。
【0073】
成分(ロ-5)及びエチレン系樹脂(ハ-5)の製造
成分(イ-5)を重合した後、60℃、エチレン分圧が0.87MPaに維持できるようにエチレンを連続的に供給し、さらにオートクレーブ気相部の水素濃度が4500ppmとなるように水素を間欠的に添加して、スラリー重合を2.5時間行い成分(ロ-5)の重合を行うことによりエチレン単独重合体であるエチレン系樹脂(ハ-5)の製造を行った。重合中にポリエチレン換算にして500gのエチレンが消費され、重合反応中の系内の水素濃度との関係から算出した成分(ロ-5)の[η]は2.0dl/gであった。
【0074】
製造例6
10リットルのオートクレーブにヘキサンを6リットル、20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を5.5ml、調製例3で得られた製造用触媒の懸濁液を2.50g(固形分310mg相当)加え、85℃にした後、エチレン分圧が0.90MPaに維持できるように、エチレンを連続的に供給し、さらにオートクレーブ気相部の水素濃度が100ppmとなるように水素を間欠的に添加して、スラリー重合を1.5時間行うことによりエチレン単独重合体であるポリエチレンの製造を行った。該ポリエチレンは、MFR=0.68g/10min、HLMFR=10g/10min、[η]=2.4dl/gであった。
【0075】
【0076】
実施例1
製造例1にて得られたエチレン系樹脂(ハ-1)を、酸化防止剤(BASF製、(商品名)Irganox B225)をドライブレンドした後、単軸押出機(東洋精機製、(商品名)ラボプラストミル)を用いて、280℃、スクリュー回転数15rpmにてオリフィス径0.6mmの単孔ノズルより糸状物を押し出し、空冷にて冷却した後、巻取り、未延伸糸を得た。
【0077】
得られた未延伸糸を120℃で加熱しながら2個の駆動ロール間で6倍延伸し、巻取り延伸糸であるポリエチレン繊維を得た。
【0078】
得られたポリエチレン繊維は、繊維径143μmであり、引張試験をした結果、引張弾性率、及び引張破断応力がそれぞれ5.8GPa、及び332MPaであった。
【0079】
実施例2
製造例2にて得られたエチレン系樹脂(ハ-2)を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリエチレン繊維を得た。
【0080】
得られたポリエチレン繊維は、繊維径151μmであり、引張試験をした結果、引張弾性率、及び引張破断応力がそれぞれ6.0GPa、及び354MPaであった。
【0081】
実施例3
製造例1にて得られたエチレン系樹脂(ハ-1)とデカリンとを15:85(重量比)で混合し、酸化防止剤(BASF製、(商品名)Irganox B225)を加えて、スラリー状溶液を得た。
【0082】
得られたスラリー状液体を、二軸押出機(東洋精機製、(商品名)ラボプラストミル)を用いて、200℃、スクリュー回転数15rpmで溶解しながら、オリフィス径0.6mmの単孔ノズルより糸状物を押し出し、糸状物を引き取りつつ、水冷バスを用いて冷却し、未延伸糸(ゲル糸)を得た。
【0083】
得られた未延伸糸を110℃で乾燥した後、次いで100℃で加熱しながら2個の駆動ロール間で4倍延伸し、巻取り延伸糸であるポリエチレン繊維を得た。
【0084】
得られたポリエチレン繊維は、繊維径122μmであり、引張試験をした結果、引張弾性率、引張強度及び引張破断応力がそれぞれ5.3 GPa、及び301MPaであった。
【0085】
実施例4
製造例1にて得られたエチレン系樹脂(ハ-1)500g、ポリエチレン(東ソー(株)製、(商品名)ニポロンハード5110(MFR=0.9g/10min、密度=961kg/m3)、以下NH5110と記す場合がある)500g及び酸化防止剤(BASF製、(商品名)Irganox B225)2gをドライブレンドした後、二軸押出機(東洋精機製作所製、(商品名)ラボプラストミル平行二軸押出機2D25S)を用いて、220℃、30rpm、吐出量0.8kg/hにて溶融混練し、組成物(ホ-1)を得た。組成物(ホ-1)のMFRは0.11g/10minであった。
【0086】
得られた組成物(ホ-1)を、単軸押出機(東洋精機製、(商品名)ラボプラストミル)を用いて、280℃、スクリュー回転数15rpmにてオリフィス径0.6mmの単孔ノズルより糸状物を押し出し、空冷にて冷却した後、巻取り、未延伸糸を得た。
【0087】
得られた未延伸糸を120℃で加熱しながら2個の駆動ロール間で10倍延伸し、巻取り延伸糸であるポリエチレン繊維を得た。
【0088】
得られたポリエチレン繊維は、繊維径103μmであり、引張試験をした結果、引張弾性率、及び引張破断応力がそれぞれ7.2GPa、及び428MPaであった。
【0089】
実施例5
製造例2にて得られたエチレン系樹脂(ハ-2)500gを用い組成物(ホ-2)とし、120℃で加熱しながら2個の駆動ロール間で11倍延伸したこと以外は、実施例4と同様の方法にて、ポリエチレン繊維を得た。
【0090】
得られたポリエチレン繊維は、繊維径126μmであり、引張試験をした結果、引張弾性率、引張強度及び引張破断応力がそれぞれ8.2GPa、及び434MPaであった。
【0091】
実施例6
製造例2にて得られたエチレン系樹脂(ハ-2)100g及びポリエチレン(NH5110)900gを用い組成物(ホ-3)とし、120℃で加熱しながら2個の駆動ロール間で8倍延伸したこと以外は、実施例4と同様の方法にて、ポリエチレン繊維を得た。
【0092】
得られたポリエチレン繊維は、繊維径94μmであり、引張試験をした結果、引張弾性率、及び引張破断応力がそれぞれ5.3GPa、及び323MPaであった。
【0093】
実施例7
製造例3にて得られたエチレン系樹脂(ハ-3)500gを用い組成物(ホ-4)とし、120℃で加熱しながら2個の駆動ロール間で9倍延伸したこと以外は、実施例4と同様の方法にて、ポリエチレン繊維を得た。
【0094】
得られたポリエチレン繊維は、繊維径111μmであり、引張試験をした結果、引張弾性率、及び引張破断応力がそれぞれ6.0GPa、及び369MPaであった。
【0095】
実施例8
製造例4にて得られたエチレン系樹脂(ハ-4)40g、ポリエチレン(NH5110)960gを用い組成物(ホ-5)とし、120℃で加熱しながら2個の駆動ロール間で5倍延伸したこと以外は、実施例4と同様の方法にて、ポリエチレン繊維を得た。
【0096】
得られたポリエチレン繊維は、繊維径71μmであり、引張試験をした結果、引張弾性率、及び引張破断応力がそれぞれ4.1GPa、及び314MPaであった。
【0097】
実施例9
製造例2にて得られたエチレン系樹脂(ハ-2)500g、ポリエチレン(東ソー(株)製、(商品名)ニポロンハード06S81A(MFR=1.0g/10min、密度=952kg/m3)、以下NH06S81Aと記す場合がある)500gを用い組成物(ホ-6)とし、125℃で加熱しながら2個の駆動ロール間で11倍延伸したこと以外は、実施例4と同様の方法にて、ポリエチレン繊維を得た。
【0098】
得られたポリエチレン繊維は、繊維径137μm、であり、引張試験をした結果、引張弾性率、及び引張破断応力がそれぞれ4.4GPa、及び329MPaであった。
【0099】
実施例10
製造例5にて得られたエチレン系樹脂(ハ-5)500g、製造例6にて得られたポリエチレン500gを用い組成物(ホ-7)とし、125℃で加熱しながら2個の駆動ロール間で11倍延伸したこと以外は、実施例4と同様の方法にて、ポリエチレン繊維を得た。
【0100】
得られたポリエチレン繊維は、繊維径146μmであり、引張試験をした結果、引張弾性率、及び引張破断応力がそれぞれ4.5GPa、及び363MPaであった。
【0101】
【0102】
【0103】
比較例1
ポリエチレン(NH5110)1000g及び酸化防止剤(BASF製、(商品名)Irganox B225)2gを用い、120℃で加熱しながら2個の駆動ロール間で4倍延伸したこと以外は、実施例4と同様の方法にて、繊維を得た。
【0104】
得られた繊維は、繊維径117μmであり、引張試験をした結果、引張弾性率、及び引張破断応力がそれぞれ4.0GPa、及び284MPaであった。
【0105】
比較例2
超高分子量ポリエチレン(三井化学(株)製 (商品名)ミリオン030S)40g及びポリエチレン(NH5110)960gを用い、120℃で加熱しながら2個の駆動ロール間で3倍延伸したこと以外は、実施例4と同様の方法にて、繊維の製造を試みたが、押出機より均一な糸状物の吐出は困難であり、延伸時に破断が生じ、繊維とすることができなかった。
【0106】
比較例3
ポリエチレン(NH06S81A)1000gを用い、125℃で加熱しながら2個の駆動ロール間で3倍延伸したこと以外は、実施例4と同様の方法にて、繊維を得た。
【0107】
得られた繊維は、繊維径114μmであり、引張試験をした結果、引張弾性率、及び引張破断応力がそれぞれ2.6GPa、及び239MPaであった。
【0108】
比較例4
製造例6にて得られたポリエチレン1000gを用い、125℃で加熱しながら2個の駆動ロール間で4倍延伸したこと以外は、実施例4と同様の方法にて、繊維を得た。
【0109】
得られた繊維は、繊維径143μmであり、引張試験をした結果、引張弾性率、及び引張破断応力がそれぞれ3.2GPa、及び288MPaであった。
【0110】
比較例5
ポリエチレン(東ソー(株)製、(商品名)ニポロンハード8D01A(MFR=0.05g/10min、密度=957kg/m3)、以下NH8D01Aと記す場合がある)1000gを用い、120℃で加熱しながら2個の駆動ロール間で11倍延伸したこと以外は、実施例4と同様の方法にて、繊維を得た。
【0111】
得られた繊維は、繊維径111μmであり、引張試験をした結果、引張弾性率、及び引張破断応力がそれぞれ5.4GPa、及び286MPaであった。
【0112】
比較例6
製造例1にて得られたエチレン系樹脂(ハ-1)500g、及びポリエチレン(東ソー(株)製、(商品名)ニポロンハード2000(MFR=15g/10min、密度=960kg/m3)、以下NH2000と記す場合がある)500gを用い、120℃で加熱しながら2個の駆動ロール間で3倍延伸したこと以外は、実施例4と同様の方法にて、繊維の製造を試みたが、押出機より均一な糸状物の吐出は困難であり、延伸時に破断が生じ、繊維とすることができなかった。
【0113】
比較例7
製造例1にて得られたエチレン系樹脂(ハ-1)500g、及びポリエチレン(東ソー(株)製、(商品名)ペトロセン176(MFR=1.0g/10min、密度=924kg/m3)、以下P2000と記す場合がある)500gを用い、120℃で加熱しながら2個の駆動ロール間で3倍延伸したこと以外は、実施例4と同様の方法にて、繊維の製造を試みたが、押出機より均一な糸状物の吐出は困難であり、延伸時に破断が生じ、繊維とすることができなかった。
【0114】