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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166578
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20241122BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20241122BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A61F13/511 300
A61F13/514 100
A61F13/53 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082763
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇田 萌笑
(72)【発明者】
【氏名】水元 陽星
(72)【発明者】
【氏名】松永 慶
(72)【発明者】
【氏名】笠川 郁
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA08
3B200BB03
3B200DB02
3B200DC02
3B200DD02
(57)【要約】
【課題】フィット性に優れ、良好な使用感が得られる吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収性物品1は、体液を吸収する吸収体4を含む複数層構造であり、複数層構造の少なくとも一層に中空繊維で構成された剛性不織布が用いられており、中空繊維のヤング率が1.3GPa以上1.9GPa以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液を吸収する吸収体を含む複数層構造の吸収性物品であって、
前記複数層構造の少なくとも一層に中空繊維で構成された不織布が用いられており、
前記中空繊維のヤング率が1.3GPa以上1.9GPa以下である、吸収性物品。
【請求項2】
前記中空繊維のヤング率が1.5GPa以上1.7GPa以下である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記中空繊維がポリエステル及びポリエチレンの複合繊維であり、芯部のポリエステルの厚みと鞘部のポリエチレンの厚みとの比率が9:1から7:3である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばおりもの、経血、汗、尿などの体液を吸収するために使用される吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば女性の膣分泌物であるおりものを吸収する吸収性物品として、おりものシートが知られている。おりものシートなどの吸収性物品においては、ユーザが吸収性物品を使用した際のフィット性が吸収性物品の使用感(使い心地)に大きく影響する。吸収性物品が硬すぎると、吸収性物品がユーザの肌に接触した際に、ユーザは、肌あたりの悪さからごわつきなどの違和感を感じたり、吸収性物品が肌に擦れることによる不快さを感じたりするおそれがある。一方で、吸収性物品が軟らかすぎると、吸収性物品にシワ、ヨレ、ズレなどが生じやすく、肌との密着性が低下することで、吸収性物品の使用感が低下する。そのため、吸収性物品においては、フィット性が製品の使用感に大きく関わる重要な設計要素である。
【0003】
特許文献1及び2では、表面側シート又は吸収体(吸収性コア)に溝部を形成して容易に変形可能として吸収性物品のフィット性を向上させている。特許文献3では、吸収性物品の曲げ反発評価を調整したり、吸収体の繊維密度を高くして吸収性物品のフィット性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6874107号公報
【特許文献2】特許6869310号公報
【特許文献3】特許6734966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2のように、表面側シート又は吸収体に溝部を形成すると、吸収性物品の表面(ユーザの肌に接触する側の面)に凹凸が生じる。吸収性物品の表面に凹凸が存在すると、吸収性物品がユーザの肌に接触した際に、ユーザが違和感を感じる。よって、吸収性物品の使用感が低下する。また、特許文献3のように、吸収性物品の曲げ反発評価を高めたり、吸収体の繊維密度を高めると、吸収性物品の厚みが増す。そのため、吸収性物品がユーザの肌に接触した際に、ユーザが違和感を感じる。よって、吸収性物品の使用感が低下する。
【0006】
本開示は、上記課題を解決する吸収性物品を提供するものであり、フィット性に優れ、良好な使用感が得られる吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の吸収性物品は、上記課題を解決するため、以下の項1に記載の吸収性物品を主題として包含する。
【0008】
項1.体液を吸収する吸収体を含む複数層構造の吸収性物品であって、
前記複数層構造の少なくとも一層に中空繊維で構成された不織布が用いられており、
前記中空繊維のヤング率が1.3GPa以上1.9GPa以下である、吸収性物品。
【0009】
また、本開示の吸収性物品は、上記項1に記載の吸収性物品の好ましい態様として、以下の項2に記載の吸収性物品を包含する。
【0010】
項2.前記中空繊維のヤング率が1.5GPa以上1.7GPa以下である、項1に記載の吸収性物品。
【0011】
また、本開示の吸収性物品は、上記項1から項2に記載の吸収性物品の好ましい態様として、以下の項3に記載の吸収性物品を包含する。
【0012】
項3.前記中空繊維がポリエステル及びポリエチレンの複合繊維であり、芯部のポリエステルの厚みと鞘部のポリエチレンの厚みとの比率が9:1から7:3である、項1又は2に記載の吸収性物品。
【発明の効果】
【0013】
本開示の吸収性物品によれば、フィット性に優れ、良好な使用感が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は吸収性物品の概略構成を示す平面図である。
図2図2は吸収性物品の概略構成を示す背面図である。
図3図3は吸収性物品の一部分における概略構成を示す拡大断面図(図1のX1-X1断面図)である。
図4図4は中空構造の繊維の概略構成を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の吸収性物品の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
吸収性物品の全体構成
吸収性物品は、ユーザの衣類(例えば下着)又は肌に取り付けられて、ユーザから排出される体液を吸収するために使用される。体液は、例えば、おりもの、経血、汗、尿などが挙げられる。吸収性物品としては、おりものシート(パンティライナー)、生理用ナプキン、おむつ、失禁パッド、脇汗パッドなどを例示できる。本実施形態においては、吸収性物品がおりものシートである。
【0017】
吸収性物品の形状及び大きさは、特に限定されるものではなく、使用時に適用されるユーザの身体の部位に合わせた形状及び大きさに設計される。吸収性物品の厚みは、特に限定されるものではなく、使用時にユーザが吸収性物品に触れた際にユーザが違和感を感じない程度の厚みに設計される。吸収性物品がおりものシートである場合、おりものシートの厚みは、例えば1.2mm以上3.8mm以下である。
【0018】
吸収性物品は、体液を吸収する吸収体の他、吸収体よりも表面側に位置してユーザから排出された体液を透過させるシート、及び、吸収体よりも裏面側に位置して吸収体に吸収された体液を透過させないシートを少なくとも備えた複数層構造を呈する。なお、本開示において、吸収性物品の表面側は使用時にユーザの肌に接触する側を指し、吸収性物品の裏面側は表面側と反対側を指している。
【0019】
つまり、図1から図3に示すように、吸収性物品1は、液透過性を有する表面側シート(トップシート)2と、液不透過性の裏面側シート(バックシート)3と、表面側シート2及び裏面側シート3の間に配置された吸収体4と、を少なくとも備える。吸収性物品1は、表面側から裏面側に向かって順に、表面側シート2、吸収体4及び裏面側シート3が積層された複数層構造である。
【0020】
吸収性物品1は、表面側シート2がユーザの肌に接触するように使用される。ユーザから排出された体液は、表面側シート2を透過して吸収体4に吸収される。裏面側シート3は、吸収体4に吸収された体液が吸収性物品1の裏面側から漏れてユーザの衣服などに付着するのを抑制する。
【0021】
吸収性物品1の裏面側シート3は、粘着部5が形成されている。吸収性物品1は、使用時に、裏面に形成された粘着部5によってユーザの衣類などに貼り付けられる。粘着部5は、この種の吸収性物品に用いられる公知の粘着剤などによって形成できる。
【0022】
吸収性物品1の外周縁部には、外周全長にわたって圧着部6が形成されている。圧着部6は、例えば、熱圧着加工、超音波圧着加工、圧力のみを付与する単なる圧着加工などを吸収性物品1に対して表面側から厚み方向に施すことにより、形成される。圧着部6により、表面側シート2、吸収体4及び裏面側シート3は相互に固定される。圧着部6の幅は特に限定されず、例えば2mm以上5mm以下である。圧着部6の厚みは、上述した圧着加工により、吸収性物品1において圧着部6以外の箇所の厚みよりも薄い。
【0023】
吸収性物品1は、複数層構造の少なくとも一層に、剛性を有する不織布(以下、「剛性不織布」という。)が用いられている。吸収性物品1が、本実施形態のように、表面側シート2、吸収体4及び裏面側シート3の三層構造である場合、剛性不織布は、表面側シート2、吸収体4及び裏面側シート3の少なくともいずれかに用いられる。なお、剛性不織布を、表面側シート2と吸収体4の間の層として用いる、又は、吸収体4と裏面側シート3の間の層として用いることで、吸収性物品1を四層構造としてもよい。
【0024】
剛性不織布について
剛性不織布は、曲げに対して剛性を有している。剛性不織布は、ハリ感があり、ピンと張った状態を維持して折れ曲がりにくい不織布である。剛性不織布は、剛性が確保されているので、吸収性物品1に用いられると、保形性を発揮して吸収性物品1の形状を維持する。これにより、吸収性物品1にハリ感が生じ、吸収性物品1にシワ、ヨレ、ズレなどが生じにくくなる。よって、吸収性物品1は使用時に肌との密着性が維持されるため、吸収性物品1の使用感が向上する。
【0025】
一方、剛性不織布は、硬すぎず、適度に軟らかくてしなやかさを有する不織布である。そのため、吸収性物品1は、肌に触れた際の肌あたりが優しい。これにより、ユーザは吸収性物品1に対してごわつきなどの違和感を感じにくくなるうえ、ユーザは吸収性物品1が肌に擦れることによる不快さを感じにくくなる。よって、吸収性物品1の使用感が向上する。
【0026】
このように、剛性不織布が吸収性物品1に用いられることにより、吸収性物品1が使用時に肌と良好にフィットするため、吸収性物品1の使用感を向上できる。剛性不織布の曲げ剛性は、例えば0.06gf・cm/cm以上0.18gf・cm/cm以下であり、好ましくは0.10gf・cm/cm以上0.15gf・cm/cm以下である。剛性不織布の曲げ剛性は、純曲げ試験機KES-FB2-S(カトーテック株式会社)を用いて測定できる。
【0027】
剛性不織布の製造方法は、例えば、湿式抄紙法、乾式抄紙法、スパンボンド法、メルトブロー法、ラテックス樹脂ボンド法、溶剤ボンド法、スティッチボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、サーマルボンド法、エアスルー法、エアレイド法などの従来公知の方法により製造できる。剛性不織布は、嵩高くふわふわした風合い、肌触りがあるとの観点から、エアスルー法により製造されるのが好ましい。
【0028】
剛性不織布の素材となる繊維は、ヤング率が1.3GPa以上1.9GPa以下の繊維である。ヤング率は、縦弾性係数とも呼ばれ、ヤング率が大きいほど、繊維は変形しにくくて硬い。ヤング率が1.3GPa以上1.9GPa以下の繊維を剛性不織布の素材に用いることで、剛性不織布をハリ感があって剛性を有していながらも、適度に軟らかくてしなやかさを有する不織布にできる。
【0029】
繊維のヤング率は、引張試験機を用いて繊維に引張荷重を徐々に加えた時(例えば引張速度が300mm/minの時)の応力とひずみにより測定できる。繊維に引張荷重を徐々に加えていくと、荷重に応じて繊維は伸びる。このときの応力-ひずみ曲線において、繊維の伸長初期には直線部分があり、この直線部分の勾配からヤング率(初期引張り抵抗度)を求めることができる。なお、繊維のヤング率は複数本(3-6本)の繊維の平均値で求めることが好ましい。
【0030】
剛性不織布の素材となる繊維のヤング率は、1.3GPa以上1.9GPa以下であれば特に限定されないが、好ましくは1.5GPa以上1.7GPa以下である。剛性不織布は、ヤング率が1.5GPa以上1.7GPa以下の繊維で構成されていることで、より効果的にハリ感が生じるとともに、しなやかさも生じる。
【0031】
剛性不織布の素材となる繊維の直径は、例えば20μm以上45μm以下であり、特に限定されないが、好ましくは20μm以上30μm以下である。剛性不織布の素材となる繊維の直径が20μm以上であると、不織布にハリ感がでるとの効果を奏する。剛性不織布の素材となる繊維の直径が30μm以下であると、不織布の肌触りがなめらかになるとの効果を奏する。
【0032】
繊維の直径は、剛性不織布を走査電子顕微鏡(SEM)又はX線CTスキャンにより剛性不織布の表面構造又は内部構造を画像化し、繊維を可視化することにより、測定できる。
【0033】
なお、繊維の断面が円形でない場合、剛性不織布の素材となる繊維の太さは繊度で表される。剛性不織布の素材となる繊維の繊度は、例えば2dtex以上7dtex以下であり、特に限定されないが、好ましくは2dtex以上4dtex以下である。
【0034】
加えて、剛性不織布の素材となる繊維は、図4に示すように、内部に空洞を有する中空繊維である。中空繊維は、クッション性及び弾力性を有する。そのため、中空繊維を剛性不織布の素材に用いると、剛性不織布にしなやかさが生じるうえ、シワなどが生じにくい。また、繊維は、中空構造であると、捲縮率が高い。そのため、中空繊維を剛性不織布の素材に用いると、剛性不織布は曲げ変形に対して大きな抵抗(剛性)を示し、弾性復帰性も付与される。さらに、中空繊維を剛性不織布の素材に用いると、中空繊維の高い捲縮性により、剛性不織布にふんわり感が生じる。よって、剛性不織布は、中空繊維で構成されていることで、より効果的にハリ感が生じるとともに、しなやかさも生じる。
【0035】
中空繊維の空洞の直径dは、例えば4μm以上16μm以下であり、特に限定されないが、好ましくは4μm以上8μm以下である。中空繊維の空洞の直径dが4μm以上であると、繊維に嵩高性が生じ不織布が柔らかくなるとの効果を奏する。中空繊維の空洞の直径dが8μm以下であると、繊維の適度な嵩高性で不織布にクッション性が生じるとの効果を奏する。
【0036】
中空繊維の空洞の直径は、剛性不織布を走査電子顕微鏡(SEM)又はX線CTスキャンにより剛性不織布の表面構造又は内部構造を画像化し、繊維を可視化することにより、測定できる。
【0037】
剛性不織布の素材となる繊維は、合成繊維、半合成繊維、複合繊維、及び上述した繊維を適宜混ぜた混合繊維などを例示できる。合成繊維は、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、アクリルなどを例示できる。半合成繊維は、アセテート、ポリアセテートなどを例示できる。複合繊維は、ポリエチレン/ポリエステル、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを例示できる。剛性不織布の素材には、例示した繊維の一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
剛性不織布の素材となる繊維は、好ましくはポリエチレン/ポリエステルの複合繊維、例えばポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの複合繊維である。複合繊維は芯部と鞘部が同心円状に配設された繊維であり、芯部の外周が鞘部で被覆されている。ポリエチレン/ポリエステルの複合繊維は、芯部がポリエステルで鞘部がポリエチレンである、もしくは、芯部がポリエチレンで鞘部がポリエステルである。ポリエチレン/ポリエステルの複合繊維は、好ましくは、芯部がポリエステルで鞘部がポリエチレンであり、これにより、不織布を形成した際にポリエチレンがバインダーとして機能し、ポリエステルが曲げに対する剛性を発揮する。
【0039】
ポリエチレン/ポリエステルの複合繊維において、図4に示すポリエステルの厚みD1とポリエチレンの厚みD2との比率は、特に限定されないが、好ましく9:1から7:3である。ポリエステルの厚みD1とポリエチレンの厚みD2との比率が上記範囲内にあることで、ポリエチレン/ポリエステルの複合繊維を剛性不織布の素材に用いた際に、剛性不織布を、良好な剛性を有しかつ良好なしなやかさを有する不織布にできる。
【0040】
剛性不織布は、表面側シート2、吸収体4、裏面側シート3、表面側シート2と吸収体4の間、及び、吸収体4と裏面側シート3の間のうちの少なくとも一層に用いられていればよいが、好ましくは表面側シート2又は吸収体4に用いられ、より好ましくは吸収体4に用いられる。これにより、吸収性物品1に適度な剛性を付与し、保形性を高めるとの効果を奏する。
【0041】
表面側シートについて
表面側シート2は、液体を透過できるシートである。表面側シート2は、ユーザから排出された体液を受容して吸収体4に移行する。表面側シート2のシート構造は、表面側シート2が液透過性を有していれば、特に限定されず、織物、編物、不織布、フェルトなどのシート状の繊維構造体を例示できる。シート状の繊維構造体の中でも、良好な肌触り及び皮膚への刺激が低いとの観点からは、不織布を表面側シート2に用いるのが好ましい。表面側シート2に用いる不織布の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法に従って製造できる。
【0042】
表面側シート2の素材となる繊維は、天然繊維、合成繊維、半合成繊維、複合繊維、及び上述した繊維を適宜混ぜた混合繊維などを例示できる。天然繊維は、コットン、シルク、パルプ、羊毛、麻などを例示できる。合成繊維は、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ビニロンなどを例示できる。半合成繊維は、レーヨン、アセテートなどを例示できる。複合繊維は、ポリエチレン/ポリエステル、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを例示できる。表面側シート2の素材には、例示した繊維の一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
表面側シート2の素材に、コットン、レーヨン繊維、アセテート繊維などのセルロース系繊維を用いると、セルロース系繊維は吸湿性に優れるため、肌表面の水分を適度に保つことができるとともに繊維自身が水分を吸って柔らかくなるので肌との摩擦が少ないという利点があるうえ、静電気の発生が極めて少ないという利点がある。特に、セルロース系繊維の中でも天然繊維であるコットンを表面側シート2の素材に用いると、表面側シート2の肌触りがよくなりかつ肌への刺激性が低くなる(かぶれにくなる)ため、ユーザは吸収性物品1の使用時に良好な使用感を得られる。
【0044】
表面側シート2は、液透過性を有していれば、例えば一つの不織布などで構成された単層構造であってもよいし、複数の不織布などを積層して一体化した積層体で構成された二層又は三層以上の複数層構造であってもよい。
【0045】
表面側シート2に上述した剛性不織布を用いる場合、表面側シート2は、上述した剛性不織布だけを含んだ一層構造であってもよいし、上述した剛性不織布を含むとともにその他の不織布などを少なくとも一つ含んだ二層以上の複数層構造であってもよい。
【0046】
表面側シート2を上述した剛性不織布を含む複数層構造とする場合、例えば、表面側シート2において、吸収体4と接する側の下層を上述した剛性不織布とし、吸収性物品1の表面側の上層をセルロース系繊維(好ましくはコットン)からなる不織布にする。これにより、セルロース系繊維からなる不織布が吸収性物品1の最表面を構成し、吸収性物品1の使用時にユーザの肌に接触する。よって、ユーザは吸収性物品1の使用時に良好な使用感を得られる。
【0047】
表面側シート2の上層及び下層は接着剤又は熱溶着などによる貼り合わせで一体化してもよいし、上層を構成する繊維と下層を構成する繊維を交絡させて一体化することにより一体化してもよい。繊維の交絡による上層及び下層の一体化は、例えば、スパンレース法、ニードルパンチ法、水流交絡法などにより実現できる。
【0048】
吸収体について
吸収体4は、ユーザから排出されて表面側シート2を透過した体液を吸収する。吸収体4は、体液の吸収性を有するものであれば特に制限はなく、一般におりものシート、生理用ナプキン、おむつ、失禁パッド、脇汗パッドなどに用いられている吸収体を使用できる。吸収体4は、例えば、吸水性パルプ、吸水性ポリマー(SAP)などの公知の吸収材の他、織物、編物、不織布、パルプ製品などのシート状の繊維構造体が用いられる。吸収体4は、肌あたりが良好でありかつ吸収性に優れることから、シート状の繊維構造体、その中でも、不織布を用いるのが好ましい。吸収体4に用いられる不織布の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法に従って製造できる。
【0049】
吸収体4の素材となる繊維は、天然繊維、合成繊維、半合成繊維、複合繊維、及び上述した繊維を適宜混ぜた混合繊維などを例示できる。天然繊維は、コットン、シルク、パルプ、羊毛、麻などを例示できる。天然繊維の中でも、アレルギーなどの接触性皮膚炎が起こりにくく、かぶれにくく、かつ、吸収性に優れる点から、(タンパク質系成分でない)コットンやパルプなどのセルロース系繊維が好ましい。合成繊維は、ナイロン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル、ウレタンなどを例示できる。半合成繊維は、レーヨン、アセテート、キュプラなどを例示できる。複合繊維は、ポリエチレン/ポリエステル、ポリエチレン/ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル/ポリプロピレンなどを例示できる。吸収体4の素材には、例示した繊維の一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。二種以上を組み合わせる例としては、セルロース系繊維と複合繊維の組み合わせが挙げられる。
【0050】
吸収体4に不織布などを用いる場合は、体液を良好に吸収するとの観点から、例えば不織布などに吸水性ポリマー(SAP)が含まれていてもよい。
【0051】
吸収体4に上述した剛性不織布を用いる場合、吸収体4の吸収性能を向上するため、剛性不織布に吸収性ポリマー(SAP)を含有してもよいし、あるいは、剛性不織布に他の吸収性シートを積層して一体化してもよい。
【0052】
裏面側シートについて
裏面側シート3は、体液の透過を抑制するシート(フィルムを含む)である。裏面側シート3は、吸収体4に吸収された体液が吸収性物品1の裏面側から外部へ漏れるのを抑制する。裏面側シート3は、体液を通さない性質があれば特に限定されず、例えば、液不透過性のフィルム、SMSなどの液不透過性の不織布、スパンボンド不織布又はポイントボンド不織布などに液不透過性のフィルムをラミネートした積層シートが用いられる。
【0053】
液不透過性のフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリビニルアルコール、セロファン、塩化ビニルなどからなるフィルム、又は、上述したフィルムを二以上積層した多層フィルムなどを例示できる。
【0054】
裏面側シート3に上述した剛性不織布を用いる場合、裏面側シート3の液不透過性を向上するため、剛性不織布に液不透過性のフィルムあるいは液不透過性の不織布を積層して一体化してもよい。
【0055】
吸収性物品の作用・効果について
以上説明したように、本実施形態の吸収性物品1においては、ヤング率が1.3GPa以上1.9GPa以下である中空繊維で構成された剛性不織布が、複数層構造の少なくとも一層に用いられている。剛性不織布は、曲げに対して剛性を有するので、吸収性物品1に用いられると、保形性を発揮して吸収性物品1の形状を維持する。これにより、吸収性物品1にハリ感が生じるので、吸収性物品1にシワ、ヨレ、ズレなどが生じにくくなる。よって、吸収性物品1と肌との密着性が維持され、吸収性物品1の使用感が向上する。加えて、剛性不織布は、適度に軟らかくてしなやかさを有するので、吸収性物品1に用いられると、吸収性物品1の肌あたりが優しくなる。これにより、ユーザは吸収性物品1に対してごわつきなどの違和感を感じにくくなるうえ、ユーザは吸収性物品1が肌に擦れることによる不快さを感じにくくなる。よって、吸収性物品1の使用感が向上する。
【0056】
このように、剛性不織布を吸収性物品1に用いることにより、吸収性物品1はフィット性が優れたものとなり、吸収性物品1の使用感を向上できる。
【0057】
なお、ヤング率が1.5GPa以上1.7GPa以下である中空繊維で構成された剛性不織布を、複数層構造の吸収性物品1の少なくとも一層に用いると、吸収性物品1により効果的にハリ感が生じるとともに、しなやかさが生じて良好な肌あたりとなる。よって、吸収性物品1の使用感がさらに向上する。
【0058】
また、本実施形態の吸収性物品1においては、剛性不織布を構成する繊維がポリエステル及びポリエチレンの複合繊維であり、芯側のポリエステルの厚みと鞘側のポリエチレンの厚みとの比率が9:1から7:3である。これにより、ポリエチレン/ポリエステルの複合繊維を剛性不織布の素材に用いた際に、剛性不織布を、良好な剛性を有しかつ良好なしなやかさを有する不織布にできる。よって、剛性不織布を吸収性物品1に用いることにより、吸収性物品1はフィット性が優れたものとなる、吸収性物品1の使用感を向上できる。
【0059】
変形例について
以上、本開示の吸収性物品の一実施形態について説明したが、本開示の吸収性物品は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形ができる。例えば、以下の変形ができる。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0060】
上述した実施形態では、剛性不織布は、表面側シート2、吸収体4又は裏面側シート3に用いられている。変形例として、剛性不織布は、表面側シート2と吸収体4との間、又は、吸収体4と裏面側シート3との間に挿入され、例えば圧着部6により、表面側シート2、吸収体4、剛性不織布、及び裏面側シート3が相互に固定されていてもよい。
【0061】
上述した実施形態では、圧着部6が、吸収性物品1の外周縁の位置において、外周縁に沿って一周にわたり設けられている。他の変形例として、圧着部6は、吸収性物品1の外周縁から内側に離れた位置において、外周縁に沿って一周にわたり設けられてもよい。
【0062】
上述した実施形態では、表面側シート2にエンボス加工などによる小さな凹部が形成されていない。他の変形例として、表面側シート2にエンボス加工などによる小さな凹部が形成されてもよい。
【0063】
上述した実施形態では、表面側シート2、吸収体4及び裏面側シート3は圧着部6によって相互に固定されている。他の変形例として、表面側シート2、吸収体4及び裏面側シート3は、接着剤もしくは熱溶着などによる貼り合わせで固定されてもよい。接着剤としては、例えば、水溶性の接着剤(例えばアクリル系水溶性接着剤)、非水溶性接着剤(例えば、ゴム系ホットメルト、オレフィン系ホットメルト)などが挙げられる。
【0064】
上述した実施形態では、吸収性物品1が表面側シート2、吸収体4及び裏面側シート3の三層構造である。他の変形例として、吸収性物品1は、例えば、表面側シート2と吸収体4との間に、透液効果、拡散効果、又は、表面側への体液の逆戻りを止める効果を有するシートを設けてもよい。
【実施例0065】
以下、実施例及び比較例を用いて、本開示の吸収性物品の作用・効果について説明する。なお、本開示の吸収性物品は以下の実施例には限定されない。
【0066】
吸収体に剛性不織布を用いた、表面側シート、吸収体及び裏面側シートの三層構造の吸収性物品(おりものシート)の実施例1-3及び比較例1-4について、官能試験を行った。剛性不織布は、各例のいずれも、素材となる繊維がポリエチレンテレフタレート(芯側)及びポリエチレン(鞘側)の複合繊維であるエアスルー不織布である。実施例1-3及び比較例2-4では繊維が中空構造であり、比較例1では繊維が中実構造である。各例の繊維のヤング率は以下の表1に示すとおりである。なお、表面側シートはコットンで構成されたスパンレース不織布であり、裏面側シートは主にポリエチレン、炭酸カルシウムからなるフィルムである。
【0067】
官能試験は、6名の被験者に各例の吸収性物品を5時間以上装着してもらい、5段階評価(5:満足、4:どちらかといえば満足、3:どちらともいえない、2:どちらかといえば不満、1:不満)での使用感評価により行った。その評価結果を以下の表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例1-2及び比較例1を対比すると、剛性不織布を構成する繊維は中実構造よりも中空構造である方が、繊維のヤング率が高く、変形しにくく硬いことが分かる。そして、実施例1-3及び比較例1-4を対比すると、ヤング率が1.3GPa以上1.9GPa以下である中空構造の繊維で構成された剛性不織布を吸収性物品に用いることで、吸収性物品の使用感を向上できることが確認された。
【0070】
また実施例1及び実施例2-3を対比すると、ヤング率が1.5GPa以上1.7GPa以下である中空構造の繊維で構成された剛性不織布を吸収性物品に用いることで、吸収性物品の使用感をさらに向上できることが確認された。
【0071】
また実施例1-3及び比較例2-4を対比すると、中空繊維がポリエステル及びポリエチレンの複合繊維である場合に、芯側のポリエステルの厚みと鞘側のポリエチレンの厚みとの比率が9:1から7:3であることで、吸収性物品の使用感を向上できることが確認された。
【符号の説明】
【0072】
1 吸収性物品
2 表面側シート
3 裏面側シート
4 吸収体
図1
図2
図3
図4