(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166667
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】保持テーブルの高さ検出方法
(51)【国際特許分類】
B24B 49/10 20060101AFI20241122BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20241122BHJP
B24B 47/22 20060101ALI20241122BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20241122BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B24B49/10
B24B27/06 M
B24B47/22
B24B41/06 L
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082908
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】美細津 祐成
(72)【発明者】
【氏名】花島 聡
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034CA13
3C034CA26
3C034CB13
3C034DD12
3C034DD18
3C034DD20
3C158AA03
3C158AC02
3C158BB02
3C158BB06
3C158BB08
3C158BB09
3C158CB03
3C158CB04
3C158DA17
5F063AA48
5F063DD06
5F063DE23
5F063DE40
5F063FF04
5F063FF60
(57)【要約】
【課題】切削装置において保持テーブルの保持面の上面高さのばらつきを容易に測定できる方法を提供する。
【解決手段】保持テーブルの高さ検出方法であって、被加工物を切削する切削ブレード(47)を含む切削ユニット(11、12)と、切削ユニットを昇降させる昇降ユニット(35、36)と、切削ブレードと保持面(19)とが電気的に導通した際の切削ブレードの高さを検出するセットアップユニット(60)と、を備え、均一な厚みの導電性を有する測定用ワーク(90)を保持する保持ステップと、測定用ワークの複数箇所に導電性を有する切削ブレードを接触させ、測定用ワークと切削ブレードとが電気的に導通した際の切削ユニットの高さをセットアップユニットによって検出する高さ検出ステップと、高さ検出ステップで取得された切削ユニットの高さの差から、保持面の上面高さのばらつきを検出するばらつき検出ステップと、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持テーブルの高さ検出方法であって、
被加工物を切削する切削ブレードを含む切削ユニットと、
該切削ユニットを該保持テーブルの保持面に対して昇降させる昇降ユニットと、
該切削ブレードと該保持面とが電気的に導通した際の該切削ブレードの高さを検出するセットアップユニットと、を備える切削装置において、
均一な厚みの導電性を有する測定用ワークを保持する保持ステップと、
該測定用ワークの複数箇所に導電性を有する切削ブレードを接触させ、該セットアップユニットによって、該測定用ワークと、該切削ブレードと、が電気的に導通した際の切削ユニットの高さを検出する高さ検出ステップと、
該高さ検出ステップで取得された該切削ユニットの高さの差から、該保持面の上面高さのばらつきを検出するばらつき検出ステップと、
を備えることを特徴とする保持テーブルの高さ検出方法。
【請求項2】
該ばらつきがしきい値以上であれば異常と判定し、該ばらつきがしきい値より小さければ正常と判定する判定ステップをさらに備える、
請求項1に記載の保持テーブルの高さ検出方法。
【請求項3】
該判定ステップの結果が異常である場合、報知する報知ステップを備える、
請求項2に記載の保持テーブルの高さ検出方法。
【請求項4】
該ばらつきの値と、該判定ステップの結果と、の少なくともいずれかと、該高さ検出ステップを実施した日時と、を点検データとして記録する記録ステップ、
をさらに備える請求項2に記載の保持テーブルの高さ検出方法。
【請求項5】
該切削装置は
制御ユニットと、
該測定用ワークを収容するカセットと、
該カセットと該保持テーブルと、の間で該測定用ワークを搬送する搬送アームと、
をさらに備え、
該制御ユニットが該高さ検出ステップを実施する指示を受け付けると、
該カセットから該保持テーブルに該測定用ワークを搬送する第1搬送ステップを実施し、該第1搬送ステップの後に該高さ検出ステップを実施し、
該高さ検出ステップの後に、該保持テーブルから該カセットに該測定用ワークを搬送する第2搬送ステップを実施する、
請求項1から4のいずれかに記載の保持テーブルの高さ検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置の保持テーブルの高さ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハなどの被加工物を切削加工する切削装置では、保持テーブルの保持面に被加工物を保持して、切削ユニットの切削ブレードを回転させながら被加工物に切り込んで切削を行う。切削ブレードは昇降機構によって上下方向に移動し、切削ブレードと保持テーブルは加工送り機構によって保持面に沿う方向に相対的に移動し、昇降機構による切込み送り動作と加工送り機構による加工送り動作とを用いて、切削ブレードにより被加工物を切削する。このような切削装置では、切削ブレードを被加工物に適切な量で切り込ませるために、保持テーブルの保持面と切削ブレードとの相対的な高さ位置を適切に管理する必要がある。
【0003】
切削装置で被加工物を切削する際には、切削ブレードの切り込み量を設定する基準となる切削ブレードの原点位置を検出することが行われている。例えば、特許文献1、2及び3の切削装置では、保持テーブルと切削ブレードと間の電気的な導通が検出されるときの切削ユニットの高さ位置を原点位置として検出するセットアップ工程を行っている。
【0004】
また、切削装置では、定期点検や、被加工物の品質不良(加工精度の悪化)が発生した際のトラブル対策のタイミングで、保持テーブルの保持面の上面高さを複数箇所で測定して、保持面の上面高さのばらつきが所定値以内であることを確認する作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2597808号公報
【特許文献2】特開2010-082709号公報
【特許文献3】特開2019-129282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
切削装置において保持テーブルの保持面の上面高さのばらつきを確認する場合、従来は、マイクロゲージなどの接触式の測定器、排圧センサーやレーザーセンサー等の非接触式の測定器などを用いて測定を行っており、測定器を装置に取り付ける手間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、切削装置において保持テーブルの保持面の上面高さのばらつきを容易に測定できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、保持テーブルの高さ検出方法であって、被加工物を切削する切削ブレードを含む切削ユニットと、該切削ユニットを該保持テーブルの保持面に対して昇降させる昇降ユニットと、該切削ブレードと該保持面とが電気的に導通した際の該切削ブレードの高さを検出するセットアップユニットと、を備える切削装置において、均一な厚みの導電性を有する測定用ワークを保持する保持ステップと、該測定用ワークの複数箇所に導電性を有する切削ブレードを接触させ、該セットアップユニットによって、該測定用ワークと、該切削ブレードと、が電気的に導通した際の切削ユニットの高さを検出する高さ検出ステップと、該高さ検出ステップで取得された該切削ユニットの高さの差から、該保持面の上面高さのばらつきを検出するばらつき検出ステップと、を備えることを特徴とする。
【0009】
該ばらつきがしきい値以上であれば異常と判定し、該ばらつきがしきい値より小さければ正常と判定する判定ステップをさらに備えてもよい。
【0010】
該判定ステップの結果が異常である場合、報知する報知ステップを備えてもよい。
【0011】
該ばらつきの値と、該判定ステップの結果と、の少なくともいずれかと、該高さ検出ステップを実施した日時と、を点検データとして記録する記録ステップ、をさらに備えてもよい。
【0012】
該切削装置は、制御ユニットと、該測定用ワークを収容するカセットと、該カセットと該保持テーブルと、の間で該測定用ワークを搬送する搬送アームと、をさらに備え、該制御ユニットが該高さ検出ステップを実施する指示を受け付けると、該カセットから該保持テーブルに該測定用ワークを搬送する第1搬送ステップを実施し、該第1搬送ステップの後に該高さ検出ステップを実施し、該高さ検出ステップの後に、該保持テーブルから該カセットに該測定用ワークを搬送する第2搬送ステップを実施するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の保持テーブルの高さ検出方法によれば、切削装置においてセットアップユニットを利用して、保持テーブルの保持面の上面高さのばらつきを容易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】切削装置が備える保持テーブル、切削ユニット、セットアップユニットを示す図である。
【
図3】保持テーブル上の測定用ワークに切削ブレードが接触した状態を示す図である。
【
図5】保持テーブルの高さ検出方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本実施形態に係る保持テーブルの高さ検出方法について説明する。
図1に示す切削装置10は、被加工物(図示略)を切削加工する切削ユニット11と切削ユニット12とを備えている。切削ユニット11と切削ユニット12はそれぞれ切削ブレード47(
図2及び
図3)を備えており、切削ブレード47を用いて被加工物を切削加工する。切削装置10におけるX軸方向とY軸方向は水平な方向であり、Z軸方向は上下方向である。X軸方向とY軸方向は互いに垂直である。
【0016】
なお、本実施形態の切削装置10は、2つの切削ユニット11、12を備えていて、被加工物に対して2箇所の加工を同時に行うことが可能であるが、切削ユニットの数は2つに限定されず、切削ユニットは1つあるいは3つ以上であってもよい。すなわち、少なくとも1つの切削ユニットを備えていればよい。
【0017】
切削装置10は、制御ユニット100によって統括制御される。制御ユニット100は、切削装置10の各部を制御するための信号を生成する処理部101(プロセッサ)と、処理部101において用いられる各種情報を記憶する記憶部102と、を有する。処理部101は、記憶部102に記憶したプログラムを読み出して実行することにより、後述する切削装置10の各部の動作を制御する。
【0018】
切削装置10は基台13を備えており、基台13上に様々な構成要素が配置されている。基台13の隅に設けたカセット載置部14にはカセット15が載置される。被加工物はカセット15に収容された状態で切削装置10に搬入される。カセット15には複数枚の被加工物を収容可能であり、カセット載置部14が上下に昇降することによって、カセット15から出し入れされる被加工物の高さ位置が調節される。
【0019】
基台13上には、Y軸方向でカセット載置部14に隣接する位置に開口部16が形成されている。開口部16はX軸方向に延在しており、開口部16の内側にテーブルカバー17が支持され、テーブルカバー17上に保持テーブル18が設けられている。保持テーブル18は、被加工物を保持する保持面19を上面に備えるテーブルである。保持テーブル18は、保持面19の外側にクランプ20を備えている。また、保持テーブル18は、保持面19に吸引力を作用させて被加工物を吸引保持する吸引機構78(
図2及び
図3)を備えている。テーブルカバー17のX軸方向の両側に蛇腹21が接続しており、テーブルカバー17と蛇腹21とによって開口部16が覆われている。
【0020】
テーブルカバー17及び保持テーブル18は、開口部16の下方で基台13の内部に設けられたテーブル送り機構(図示略)によって、X軸方向へ移動される。テーブル送り機構は、X軸方向に延在するX軸ガイドレール及びX軸ボールネジを備え、テーブルカバー17及び保持テーブル18を支持する台座部がX軸ガイドレールによってX軸方向へ移動可能に支持される。X軸ボールネジが台座部に螺合しており、モータによってX軸ボールネジを回転すると、台座部がX軸方向に移動する。また、保持テーブル18は、テーブル回転機構79(
図2及び
図3)によって、台座部に対してZ軸方向に向く軸を中心として回転される。
【0021】
テーブルカバー17及び保持テーブル18は、テーブル送り機構によってX軸方向に移動され、カセット載置部14に隣接する搬入出領域と、切削ユニット11及び切削ユニット12の下方の加工領域と、に位置させることができる。保持テーブル18の搬入出領域の上方には、Y軸方向に延在して開口部16の上方を横切る一対の保持レール22が設けられている。一対の保持レール22はX軸方向での互いの間隔を変化させることができる。
【0022】
基台13上には、開口部16を挟んでカセット載置部14とはY軸方向の反対側に、洗浄部23を備えている。洗浄部23は、被加工物を保持して回転可能なスピンナテーブル24と、スピンナテーブル24上の被加工物に向けて洗浄液や乾燥用のエアを噴射する洗浄ノズル25と、を備えている。
【0023】
基台13上には、開口部16をY軸方向に跨ぐ門型のコラム26が設けられている。コラム26には、Y軸方向に延在するガイドレール27とガイドレール28が設けられている。ガイドレール27に沿ってY軸方向へ移動可能なスライダ29と、ガイドレール28に沿ってY軸方向へ移動可能なスライダ30とが設けられている。スライダ29は、搬送アーム31をZ軸方向へ移動可能に支持している。スライダ30は、搬送アーム32をZ軸方向へ移動可能に支持している。つまり、搬送アーム31と搬送アーム32はそれぞれ、Y軸方向とZ軸方向へ移動可能に支持されている。
【0024】
搬送アーム31は、カセット載置部14に載置されたカセット15と、搬入出領域に位置する保持テーブル18との間で、被加工物の搬送を行う。搬送アーム31は、被加工物の上面を吸引保持する吸引保持部と、被加工物の縁を把持する把持部と、を備えている。搬送アーム31は、把持部で把持した被加工物をカセット15から引き出して一対の保持レール22に載せる。一対の保持レール22によって被加工物をX軸方向で位置決めしてから、搬送アーム31の吸引保持部で被加工物の上面を保持して、搬送アーム31を下降させて、搬入出領域に位置する保持テーブル18の保持面19に被加工物を載せる。被加工物を載せた保持テーブル18は、吸引機構78による吸引力で被加工物を保持面19に保持し、テーブル送り機構によって搬入出領域から加工領域へ移動される。
【0025】
なお、被加工物がリング状のフレームによって支持されている場合は、被加工物を保持面19に吸引保持すると共に、保持テーブル18のクランプ20によってフレームを固定する。
【0026】
加工領域では、切削ユニット11及び切削ユニット12を用いて被加工物の切削加工が行われる。切削ユニット11及び切削ユニット12の構成については後述する。
【0027】
搬送アーム32は、搬入出領域に位置する保持テーブル18と洗浄部23との間で、被加工物の搬送を行う。被加工物の切削加工が完了すると、テーブル送り機構の動作によって、保持テーブル18がX軸方向の加工領域から搬入出領域へ移動される。搬送アーム32は、搬入出領域に移動した保持テーブル18の保持面19上の被加工物を保持し、洗浄部23へ搬送してスピンナテーブル24に載せる。そして、洗浄ノズル25から洗浄液を噴射すると共に、スピンナテーブル24を回転させて、被加工物を洗浄する。また、洗浄ノズル25からエアを噴射して、洗浄後の被加工物を乾燥させる。
【0028】
洗浄部23での被加工物の洗浄が完了したら、スピンナテーブル24上の被加工物を搬送アーム32が保持して、搬送アーム32をY軸方向へ移動させて、被加工物を一対の保持レール22に載せる。一対の保持レール22によって被加工物をX軸方向で位置決めしてから、被加工物を搬送アーム31の把持部で把持する。そして、搬送アーム31をY軸方向へ移動させて、被加工物をカセット載置部14へ搬送してカセット15の内部へ収容する。このようにして、切削加工及び洗浄を行った被加工物がカセット15に回収される。
【0029】
コラム26のうち、ガイドレール27及びガイドレール28の裏側領域には、切削ユニット11及び切削ユニット12をそれぞれY軸方向に移動させる割り出し送りユニット33及び割り出し送りユニット34と、切削ユニット11及び切削ユニット12をそれぞれZ軸方向に昇降させる昇降ユニット35及び昇降ユニット36と、が設けられている。
【0030】
コラム26に対して固定された支持板37には、Y軸方向に延在する一対のY軸ガイドレール(図示略)と一対のY軸ボールネジ(図示略)とが設けられている。一対のY軸ガイドレールは、Y軸移動テーブル38とY軸移動テーブル39をY軸方向へ移動可能に支持している。一方のY軸ボールネジは、Y軸移動テーブル38が備える雌ネジ部(図示略)に螺入されており、他方のY軸ボールネジは、Y軸移動テーブル39が備える雌ネジ部(図示略)に螺入されている。モータ(図示略)によって一方のY軸ボールネジを回転駆動させることによって、Y軸移動テーブル38がY軸方向へ移動する。モータ(図示略)によって他方のY軸ボールネジを回転駆動させることによって、Y軸移動テーブル39がY軸方向へ移動する。
【0031】
Y軸移動テーブル38及びこれを移動させる機構(Y軸ガイドレール、Y軸ボールネジ及びモータ)によって、割り出し送りユニット33が構成される。Y軸移動テーブル39及びこれを移動させる機構(Y軸ガイドレール、Y軸ボールネジ及びモータ)によって、割り出し送りユニット34が構成される。
【0032】
Y軸移動テーブル38には、Z軸方向に延在する一対のZ軸ガイドレール(図示略)とZ軸ボールネジ(図示略)とが設けられており、一対のZ軸ガイドレールによってZ軸移動テーブル40をZ軸方向へ移動可能に支持し、Z軸ボールネジは、Z軸移動テーブル40が備える雌ネジ部(図示略)に螺入されている。モータ351によってZ軸ボールネジを回転駆動させることによって、Z軸移動テーブル40がZ軸方向へ移動する。Z軸移動テーブル40及びこれを移動させる機構(Z軸ガイドレール、Z軸ボールネジ及びモータ351)によって、昇降ユニット35が構成される。
【0033】
Y軸移動テーブル39には、Z軸方向に延在する一対のZ軸ガイドレール(図示略)とZ軸ボールネジ(図示略)とが設けられており、一対のZ軸ガイドレールによってZ軸移動テーブル41をZ軸方向へ移動可能に支持し、Z軸ボールネジは、Z軸移動テーブル40が備える雌ネジ部(図示略)に螺入されている。モータ361によってZ軸ボールネジを回転駆動させることによって、Z軸移動テーブル41がZ軸方向へ移動する。Z軸移動テーブル41及びこれを移動させる機構(Z軸ガイドレール、Z軸ボールネジ及びモータ361)によって、昇降ユニット36が構成される。
【0034】
Z軸移動テーブル40の下端に切削ユニット11が支持されており、Z軸移動テーブル41の下端に切削ユニット12が支持されている。従って、切削ユニット11は、割り出し送りユニット33によってY軸方向に移動され、昇降ユニット35によってZ軸方向に昇降する。切削ユニット12は、割り出し送りユニット34によってY軸方向に移動され、昇降ユニット36によってZ軸方向に昇降する。
【0035】
被加工物を切削加工する際には、制御ユニット100は、テーブル送り機構と各割り出し送りユニット33、34とによって、X軸方向及びY軸方向での保持テーブル18と各切削ユニット11、12との相対的な位置を調整して、切削の対象である加工ラインの端部の上方に各切削ユニット11、12の切削ブレード47を位置付けさせる。続いて、制御ユニット100は、各昇降ユニット35、36によって各切削ユニット11、12を下降させる。保持テーブル18に保持された被加工物に対して、各切削ユニット11、12の切削ブレード47が回転しながら切り込まれる。そして、テーブル送り機構によって保持テーブル18をX軸方向に移動(加工送り)させることによって、X軸方向に延びる加工ラインに沿って切削ブレード47による切削加工が行われる。
【0036】
各切削ユニット11、12による一組の加工ラインに沿う切削加工が完了したら、制御ユニット100は、各昇降ユニット35、36によって各切削ユニット11、12を上昇させ、切削ブレード47を被加工物から離間させる。続いて、制御ユニット100は、各割り出し送りユニット33、34によって各切削ユニット11、12をY軸方向に移動(割り出し送り)させ、次の未切削の加工ラインの端部の上方に各切削ユニット11、12の切削ブレード47を位置付ける。そして、上記と同様に、各昇降ユニット35、36によって各切削ユニット11、12を下降(切り込み送り)させ、テーブル送り機構によって保持テーブル18をX軸方向に移動(加工送り)させ、加工ラインに沿う切削加工を行う。
【0037】
Y軸方向に並ぶ全ての加工ラインに沿う切削が完了したら、制御ユニット100は、テーブル回転機構79によって保持テーブル18を90度回転させる。これにより、保持テーブル18上の被加工物は、未切削の複数の加工ラインがY軸方向に並ぶ(X軸方向に向けて延びる)状態になる。そして、上記と同様にして、各切削ユニット11、12によって、未切削の全ての加工ラインに沿って順次切削加工を行わせる。
【0038】
なお、2つの切削ユニット11、12のうち一方だけを動作させて、一つの加工ラインずつ切削加工を行ってもよい。
【0039】
図2は、切削ユニット11及び切削ユニット12の構成を示している。切削ユニット11と切削ユニット12は同様の構造を有しており、Y軸方向で向かい合わせとなるように配置されている。以下では、切削ユニット11と切削ユニット12に共通する構成をまとめて説明し、切削ユニット11と切削ユニット12に共通する内容については、「切削ユニット11(12)」と記載する。
【0040】
切削ユニット11(12)は、Y軸方向に長い箱型のスピンドルハウジング42を有する。スピンドルハウジング42の内部に、Y軸方向に貫通するスピンドル収容空間43が形成されており、スピンドル収容空間43にスピンドル44が収容されている。切削ユニット11(12)は、スピンドル収容空間43の内側面とスピンドル44の外側面との間の隙間に高圧エアを介在させて、スピンドル44を回転可能に支持するエアベアリングを備えている。
【0041】
スピンドル44は、Y軸方向に延在する軸部材であり、導電性を有する金属材(ステンレス鋼など)で形成されている。スピンドル44には外径方向に突出するフランジ45が設けられており、フランジ45を介して、スピンドルハウジング42に対するY軸方向でのスピンドル44の位置が一定に保たれる。
【0042】
スピンドルハウジング42からY軸方向に突出したスピンドル44の一方の端部には、ブレードマウント46が固定されている。ブレードマウント46に対して切削ブレード47を着脱可能である。切削ブレード47は、ブレード基台48の側面に円環状の切れ刃49を備えた、いわゆるハブブレードである。ブレードマウント46の中央にはY軸方向に突出するボス部が設けられ、ブレード基台48はボス部を挿通可能な挿通孔を有する。切削ブレード47をスピンドル44に取り付ける際には、切れ刃49をブレードマウント46に向けて、ブレードマウント46のボス部をブレード基台48の挿通孔に挿通させる。この状態で、ボス部の外周面に形成したネジ部に対してナット50を螺合させて締め付けることで、ブレードマウント46に対して切削ブレード47が固定される。ブレードマウント46に切削ブレード47を固定した状態で、切れ刃49は、ブレードマウント46及びブレード基台48から外径方向に突出する。
【0043】
なお、ブレード基台48と切れ刃49が一体化したハブブレードではなく、単体の円環形状の切れ刃を、切れ刃とは別体の基台及びブレードマウントによって挟んで固定するタプの切削ブレード(いわゆるハブレスブレード)であっても、本発明を適用可能である。
【0044】
切削ブレード47を構成する切れ刃49は、ダイヤモンドの砥粒をニッケルなどの金属を含有したボンドで結合した電鋳ブレードであり、導電性を有している。ブレードマウント46とブレード基台48は、導電性を有する金属材(アルミニウム、ステンレス鋼など)で形成されている。従って、スピンドル44とブレードマウント46と切削ブレード47は、電気的に導通する関係になっている。
【0045】
スピンドル44の他方の端部には、スピンドル44を回転させるスピンドルモータ51が配されている。スピンドルモータ51は、スピンドル44に取り付けられたロータ52と、ロータ52を囲んで配置されたステータ53と、を有する。ステータ53はスピンドルハウジング42の内部に固定されている。ロータ52は永久磁石で構成され、ステータ53は導線を巻回したコイルで構成され、ステータ53に通電することによって、ロータ52を回転させる力が発生する。電力供給部54からステータ53に電力が供給される。
【0046】
図1に示すように、切削装置10は、基台13の上部を覆うハウジング55(
図1にはハウジング55の一部のみを示している)に、表示モニタ56、表示ランプ57、スピーカー58を備えている。表示モニタ56は、切削装置10の動作や設定に関する各種情報を表示する情報表示部である。表示ランプ57は、複数の色を表示可能であり、各色の点灯の形態(連続点灯、点滅など)を変化させることが可能なランプである。スピーカー58は、音声や警報音を発音する発音部である。表示モニタ56、表示ランプ57及びスピーカー58は、切削装置10を操作するオペレーターへの報知を行う報知部として機能する。
【0047】
なお、切削装置10は外部機器(サーバー、パーソナルコンピューター、タブレット型端末など)と通信可能にする通信部を備え、切削装置10の通信部から外部機器に情報を送信して、通信部または外部機器を報知部として用いることも可能である。
【0048】
図2及び
図3に示すように、切削装置10は、保持テーブル18の保持面19に対する切削ユニット11(12)の切削ブレード47の高さ位置を検出するセットアップユニット60を備えている。セットアップユニット60は、切削ブレード47が装着されたスピンドル44と電気的に接続するブラシ部61と、ブラシ部61に接続する検出回路62と、を備えている。
【0049】
図2に示すように、ブラシ部61は、スピンドルハウジング42に取り付けられる電極ホルダ63を有する。電極ホルダ63は合成樹脂などの絶縁材で形成されている。電極ホルダ63の内部には、電極端子64がY軸方向に移動可能に収容されている。電極端子64の先端はY軸方向でスピンドル44の端部に対向しており、電極端子64はコイルバネ65によってスピンドル44の端部に接触する方向(電極ホルダ63から突出する方向)に付勢されている。
【0050】
電極ホルダ63は外径方向に突出するフランジ66を有しており、フランジ66のY軸方向の端面には、コイルバネからなる接触端子67が装着されている。コイルバネ65と接触端子67が、電極ホルダ63の内部に通された導線68で接続されている。従って、電極端子64と接触端子67は、コイルバネ65と導線68とを介して導通している。
【0051】
スピンドルハウジング42には接続端子69が設けられている。接続端子69はカーボンなどの導電性を有する素材からなり、接触端子67は接続端子69に接触している。接続端子69はリード線70を介して検出回路62に接続される。
【0052】
検出回路62は、直流電源71を備えている。直流電源71の陽極が、電源スイッチ72と配線73を介して保持テーブル18に接続されている。また、直流電源71の陰極が、配線74を介してリード線70に接続されている。配線73には電流計75が配設されている。
【0053】
図2及び
図3に示すように、保持テーブル18は、枠体76の上面中央に凹部を有しており、凹部内にポーラス材77が支持されている。ポーラス材77はセラミックスなどの多孔質材からなり、ポーラス材77の上面が保持面19である。吸引機構78の吸引路が枠体76の凹部に通じており、吸引機構78を動作させると、ポーラス材77の保持面19に吸引力が作用する。
【0054】
枠体76の直径はポーラス材77の直径よりも大きく、保持面19の周囲の環状の領域に枠体76の上面が露出している。枠体76の上面と保持面19は面一の関係にある。枠体76はステンレス鋼などの導電性材料で形成されている。セットアップユニット60の配線73は、枠体76と導通するように接続している。
【0055】
セットアップユニット60を用いて、保持テーブル18の高さに関する情報を取得することができる。詳細には、保持面19の上面高さのばらつきを検出することができる。このばらつき検出を行う際には、保持テーブル18に測定用ワーク90を保持する。測定用ワーク90は薄いシート状(板状)であり、保持面19に載置した状態で、測定用ワーク90の上面と下面が導通するような材料及び構造を備えている。測定用ワーク90の直径は、保持面19の直径よりも大きく、測定用ワーク90は、保持面19に保持させた際に枠体76の上面にも接触する。従って、保持テーブル18によって測定用ワーク90を保持した状態では、測定用ワーク90と枠体76とが導通する関係にある。
【0056】
図1に示すように、測定用ワーク90は、導電性テープ91によってリング状のフレーム92に保持されている形態や、フレームに保持されない導電性の板状物93の形態にすることが可能である。前者の形態では、導電性テープ91が保持面19及び枠体76の上面に載置され、導電性テープ91が保持面19に吸引保持されると共に、フレーム92がクランプ20によって固定される。後者の形態では、導電性の板状物93が、保持面19及び枠体76の上面に載置されて保持面19に吸引保持される。
【0057】
測定用ワーク90は、導電性の板状物をリング状のフレームの内側にテープを介して支持した形態でもよいが、この場合は、保持面19及び枠体76の上面に接触するテープが絶縁材であると、保持テーブル18(枠体76)に対する導通が妨げられるので、導通性を有するテープを用いて板状物をフレームに取り付ける。また、測定用ワーク90は、2枚のリング状のフレームで導電性の板状物又はシートを挟んで、2枚のフレームどうしをネジ止めや嵌合などで固定することでフレームに保持された形態であってもよい。
【0058】
以上のいずれの形態においても、測定用ワーク90は、少なくとも、切削ブレード47が接触する上面側と保持テーブル18(枠体76)に接触する下面側とが導電性を有する素材であり、且つ上面側と下面側が導通する構成であればよい。
【0059】
また、測定用ワーク90は、保持テーブル18の保持面19の凹凸に追従する(倣う)厚みに設定されており、且つ均一な厚みであることが必要である。言い換えれば、測定用ワーク90が保持テーブル18の保持面19に倣わずに、測定用ワーク90自体の形状のばらつきが検出されてしまう構成ではないことが必要である。
【0060】
例えば、
図4の(A)に示す測定用ワーク90は、全体がカーボンで形成されている。カーボンは比較的安価に入手可能であり、入手性の良さやコスト面から、測定用ワーク90の全体を同じ素材で形成する場合に適している。また、カーボンで形成したシート状の測定用ワーク90は、保持面19の形状(凹凸)に倣うことが可能な厚みや硬度に設定しやすいという利点がある。
【0061】
なお、
図4の(A)の変形例として、カーボンに代えて、全体が金属やその他の導電性材料で形成された測定用ワーク90を用いることも可能である。
【0062】
図4の(B)に示す測定用ワーク90は、絶縁材であるシリコンからなるベース部94の上下両面に導電性膜95を形成した構成である。導電性膜95として、例えば白金(プラチナ)などの金属膜を用いることができる。上下両面の導電性膜95を導通させるために、ベース部94の外周部分に導通部96が形成されている。導通部96は、導電性膜95と同じ素材でもよいし、導電性膜95とは異なる素材でもよい。測定用ワーク90の厚みの一部のみに導電性膜95を配しているので、導電性膜95の素材として、高価なものや入手性が低いものでも使用しやすくなる。また、ベース部94の素材の選択自由度が高いため、保持面19の形状(凹凸)への追従性が高い測定用ワーク90を構成しやすくなる。
【0063】
測定用ワーク90の素材や硬さや面積などの条件にもよるが、一例として、測定用ワーク90の厚みは0.5mm~3mmの範囲に設定されることが好ましい。例えば、
図4の(A)に示すカーボン製の測定用ワーク90では、厚みを約1mmに設定している。
【0064】
保持テーブル18の高さをセットアップユニット60によって検出する際には、測定用ワーク90を保持した保持テーブル18を、切削ユニット11(12)の切削ブレード47の下側(加工領域)に位置付ける。そして、検出回路62の電源スイッチ72を閉じた(オンにした)状態で、昇降ユニット35(36)を動作させて切削ユニット11(12)を下降させる。
【0065】
切削ユニット11(12)の下降によって、
図3のように切削ブレード47の切れ刃49が測定用ワーク90の上面に接触すると、直流電源71から、電源スイッチ72、配線73、保持テーブル18の枠体76、測定用ワーク90、切削ブレード47、スピンドル44、電極端子64、コイルバネ65、導線68、接触端子67、接続端子69、リード線70、配線74に電流が流れる。この電流を電流計75によって検出することで、切削ブレード47の切れ刃49が測定用ワーク90の上面に接触したことを検出できる。
【0066】
切削装置10において被加工物を切削する際には、保持テーブル18の保持面19の上面高さのばらつきが所定値以内である必要がある。保持面19の上面高さのばらつきが所定値を超えると、保持面19上に保持した被加工物に対する切削ユニット11(12)の切削ブレード47の切り込み量が加工ラインごとに不均一になったり、切削ブレード47の切り込み位置が加工ラインに対してずれたりして、所要の加工精度が得られなくなる。保持面19の上面高さがばらつく原因として、保持面19に不要な凹凸が存在して面精度が悪い場合や、保持テーブル18が傾いて支持されている場合などがある。
【0067】
続いて、保持テーブル18の保持面19の上面高さのばらつきを検出するための高さ検出方法の各ステップを説明する。以下の各ステップの制御の主体は制御ユニット100である。なお、以下の各ステップの説明は、制御ユニット100の制御によって切削装置10がフルオートで保持面19の上面高さのばらつきを検出する場合に対応しており、フルオートの制御でない場合には、一部のステップを省略可能である。詳しくは、少なくとも保持ステップと、高さ検出ステップと、ばらつき検出ステップとを含んでいれば、本発明の高さ検出方法として成立する。
【0068】
以下の各ステップは、保持面19の高さのばらつき検出を指示する指示信号が制御ユニット100に入力されると実行される。例えば、表示モニタ56を入力可能なタッチパネルで構成し、表示モニタ56に表示された操作アイコンにオペレーターが触れたら指示信号が入力される。あるいは、切削装置10とは別に設けた外部機器(サーバー、パーソナルコンピューター、タブレット型端末など)から制御ユニット100に指示信号を送信して、処理を開始させてもよい。
【0069】
[第1搬送ステップ]
上記のように構成された測定用ワーク90は、カセット15に収容されて切削装置10に搬入される。制御ユニット100が、上記の指示信号を受け付けると、搬送アーム31を移動させて、カセット15内の測定用ワーク90を把持してカセット15から引き出し、一対の保持レール22に測定用ワーク90を載せる。また、一対の保持レール22の下方の搬入出領域に保持テーブル18を位置させる。一対の保持レール22の間隔を調整してX軸方向での測定用ワーク90の位置を設定したら、搬送アーム31によって測定用ワーク90の上面を吸引保持し、一対の保持レール22の間隔を広げる。そして、搬送アーム31を下降させ、保持テーブル18の保持面19に測定用ワーク90を載せる。カセット15から保持テーブル18に測定用ワーク90を搬送する以上の一連の動作が、第1搬送ステップとして行われる。
【0070】
[保持ステップ]
続いて、制御ユニット100は、保持ステップを実行させる。保持ステップでは、測定用ワーク90を保持テーブル18に保持する。吸引機構78によってポーラス材77の保持面19に吸引力を作用させ、測定用ワーク90を保持面19に吸引して保持する。吸引保持された測定用ワーク90は、保持面19に倣った状態になる。
図2及び
図3に示すように、測定用ワーク90の直径は保持面19の直径よりも大きく、保持面19に保持された状態の測定用ワーク90は枠体76の上面に接触して、測定用ワーク90と枠体76とが導通する。
【0071】
テーブル送り機構を動作させて、測定用ワーク90を保持した保持テーブル18を搬入出領域から加工領域へ移動させる。これにより、測定用ワーク90及び保持テーブル18が、切削ユニット11(12)の下方に位置付けされる。
【0072】
[高さ検出ステップ]
続いて、制御ユニット100は、高さ検出ステップを実行させる。高さ検出ステップでは、測定用ワーク90の複数箇所に導電性を有する切削ブレード47の切れ刃49を接触させる。測定用ワーク90に切削ブレード47を接触させる際には、スピンドルモータ51によってスピンドル44を回転させながら、昇降ユニット35(36)を動作させて切削ユニット11(12)を下降させる。切削ユニット11(12)が下降して切れ刃49の下縁が測定用ワーク90に接触して電気的に導通すると、上記のように、保持テーブル18の枠体76、測定用ワーク90、切削ブレード47、スピンドル44、ブラシ部61という経路で電流が流れる。セットアップユニット60の検出回路62において電流計75によって当該電流を検出すると、制御ユニット100は、切削ブレード47が測定用ワーク90に接触したと判断する。
【0073】
切削ブレード47の切れ刃49の砥粒となるダイヤモンドは導通性が無いので、砥粒の大きい切れ刃49を使用している場合、導通性の有るボンドから突出した砥粒が先に測定用ワーク90に接触する場合がある。すると、切れ刃49が測定用ワーク90に接触しても導通検出がなされず、切れ刃49のボンドが測定用ワーク90に切り込むまで切削ブレード47の下降を継続してしまい、測定用ワーク90に対する切れ刃49の切り込み深さが深くなるおそれがある。切削ブレード47を回転させながら高さ検出ステップを行うことによって、砥粒の大きい切れ刃49を使用している場合でも、切れ刃49のボンド部分が測定用ワーク90に接触するタイミングがすぐに訪れるので、測定用ワーク90の切り込み深さが深くなるおそれがない。その結果、測定用ワーク90への切削ブレード47の接触時に、切れ刃49にダメージが加わる可能性を低減できる。
【0074】
なお、このような問題が生じないタイプの切れ刃49を用いる場合には、切削ブレード47を回転させずに高さ検出ステップを行うことも可能である。仮に、ブレード基台48に対して切削ブレード47が僅かに偏心していても、切削ブレード47の回転方向位置が一定に保たれていれば、測定用ワーク90の複数箇所で高さ検出を実施しても、切削ブレード47の偏心の影響を受けずに同じ条件で検出を行うことができる。
【0075】
制御ユニット100は、切削ユニット11(12)の下降開始から切削ブレード47が測定用ワーク90に接触するまでの昇降ユニット35(36)のモータ351(361)の駆動量(例えば、パルスモータの駆動パルス数)などの情報から、切削ブレード47が測定用ワーク90に接触した際の切削ユニット11(12)の高さ位置を演算によって求める。そして、切削ユニット11(12)の高さ位置を記憶部102に記憶する。
【0076】
測定用ワーク90の一箇所で、以上のような切削ブレード47と測定用ワーク90の接触時点での切削ユニット11(12)の高さ位置の検出を行ったら、保持面19に沿う方向で保持テーブル18と切削ユニット11(12)の相対的な位置を変えて、測定用ワーク90の別の箇所で、以上と同様の検出を行う。保持面19に沿う方向で保持テーブル18と切削ユニット11(12)の相対的な位置を変える動作は、テーブル送り機構によるX軸方向への保持テーブル18の移動、テーブル回転機構79による保持テーブル18の回転、割り出し送りユニット33(34)によるY軸方向への切削ユニット11(12)の移動、を適宜組み合わせることで実施可能である。
【0077】
このようにして測定用ワーク90の複数箇所で、切削ブレード47が測定用ワーク90に電気的に導通した際の切削ユニット11(12)の高さ位置を検出して、各箇所での検出情報を記憶部102に蓄積する。
【0078】
図5は、測定用ワーク90において、切削ユニット11(12)の高さ位置の検出を行う複数箇所の具体的な例を示している。この例では、第1の箇所Pa、第2の箇所Pb、第3の箇所Pc、第4の箇所Pd、第5の箇所Peの合計5箇所で、測定用ワーク90に切削ブレード47を接触させて、それぞれの箇所での切削ユニット11(12)の高さ位置の検出を行う。第1の箇所Paは、円形の測定用ワーク90の略中央のポイントである。第2の箇所Pbから第5の箇所Peまでの4つは、測定用ワーク90の半径方向においてそれぞれが第1の箇所Paから等距離であり、且つ測定用ワーク90の周方向で等角度間隔(90°間隔)であるポイントである。複数の検出箇所をこのように配置することによって、次に行うばらつき検出ステップ及び判定ステップにおいて、保持テーブル18の保持面19の高さのばらつきを高い精度で検出及び判定することができる。
【0079】
図5に示す複数の検出箇所の配置は一例であり、この例に限定されるものではない。例えば、第2の箇所Pbから第5の箇所Peまでの4つの検出箇所に代えて、測定用ワーク90の周方向で等角度間隔(120°間隔)の3つの検出箇所を設定してもよい。また、中央の第1の箇所Paを省略することも可能である。あるいは、
図5に示す例よりも検出箇所の数を多くして高密度に検出を行うことも可能である。
【0080】
保持面19の上面高さのばらつきを検出するという観点から、切削ブレード47を測定用ワーク90に接触させる箇所は、測定用ワーク90が保持面19と重なる領域、すなわち保持テーブル18を平面視した場合に枠体76の上面よりも内側の領域に設定する。
図5に示す第1の箇所Paから第5の箇所Peは、いずれも当該条件を満たしている。
【0081】
なお、枠体76の上面が保持面19と完全に面一である場合には、枠体76の上面に測定用ワーク90が重なる領域(平面視で保持面19よりも外側の領域)で、切削ブレード47を測定用ワーク90に接触させても、保持面19の上面高さのばらつきを検出することが可能である。但し、この検出の形態では、枠体76の上面と保持面19との間に僅かな段差などがある場合には、保持面19の上面高さのばらつきを正確に検出できないので、基本的には、測定用ワーク90が保持面19と重なる領域で検出を行うことが好ましい。
【0082】
同じ測定用ワーク90を繰り返し使用する場合には、以前の検出で切削ブレード47を測定用ワーク90に接触させた位置を避けて、測定用ワーク90のうち未接触の箇所に切削ブレード47を接触させることが好ましい。以前の検出で切削ブレード47を接触させた箇所では、切削ブレード47の接触に伴って測定用ワーク90に接触痕(切り込み)が入っている可能性があり、このような接触痕が次回以降の切削ブレード47の接触時における検出誤差の原因になり得るためである。
【0083】
[ばらつき検出ステップ]
制御ユニット100は、高さ検出ステップで取得された、測定用ワーク90の複数箇所での切削ユニット11(12)の高さの差に基づいて、保持テーブル18の保持面19の上面高さのばらつきを検出する。測定用ワーク90は、保持面19の形状(凹凸など)に倣う厚みであるため、測定用ワーク90の複数箇所で取得された切削ユニット11(12)の高さの差は、保持面19の複数箇所での上面高さの差を反映したものとなっている。従って、マイクロゲージなどの接触式の測定器や、排圧センサーやレーザーセンサー等の非接触式の測定器などを取り付けることなく、切削ユニット11(12)に付随するセットアップユニット60を用いて、保持面19の上面高さのばらつきを検出することができる。
【0084】
[判定ステップ]
保持テーブル18の保持面19の上面高さのばらつきに関して、予めしきい値が設定されて制御ユニット100の記憶部102に記憶されている。制御ユニット100は、ばらつき検出ステップで検出された保持テーブル18の保持面19の上面高さのばらつきと、記憶部102に記憶されたしきい値とを比較して、正常か異常かを判定する判定ステップを行う。制御ユニット100は、ばらつきがしきい値以上であれば異常と判定し、ばらつきがしきい値よりも小さければ正常と判定する。
【0085】
[報知ステップ]
判定ステップの結果が異常である場合、制御ユニット100は、報知部を用いて異常であることを報知する報知ステップを実行する。切削装置10における報知は、表示モニタ56への情報表示による報知、表示ランプ57での所定の色や発光パターンによる報知、スピーカー58からの発音による報知、などによって行うことができる。
【0086】
あるいは、切削装置10に備えられた外部機器(サーバー、パーソナルコンピューター、タブレット型端末など)と通信可能な通信部から外部機器に報知用の信号を送信して報知する、または外部機器での表示や発音や振動などによって報知を行うことができる。
【0087】
判定ステップの結果が異常であるということは、保持テーブル18の保持面19が、被加工物を保持して切削加工を行うのに適さない上面高さのばらつきを有していることを意味する。従って、切削装置10を操作するオペレーターに異常を報知して対策を促すことにより、被加工物に対する切削加工の不良を未然に防ぐことができる。報知を受けて行う具体的な対策として、例えば、保持テーブル18の交換を行う。また、保持テーブル18が傾き調整機構を備えている場合、傾き調整機構を用いた保持テーブル18の傾き調整を行う。
【0088】
なお、報知の内容として、単に異常の有無を知らせるだけではなく、ばらつき検出ステップにおいて検出されたばらつきの詳細内容を報知してもよい。例えば、高さ検出ステップで取得した測定用ワーク90の複数箇所での切削ユニット11(12)のそれぞれの高さの数値を、表示モニタ56に表示する。あるいは、高さ検出ステップで取得した複数箇所での数値データに基づいて保持面19の凹凸や傾きの状態を算出して、その結果を、オペレーターが視認可能な画像として表示モニタ56に表示したり、スピーカー58からの音声による情報伝達で伝えたりする。このような詳細内容を提示することによって、異常の原因が、保持面19の形状エラー(例えば、凹みや欠けなどが存在する)にあるのか、保持テーブル18の傾きにあるのか、などを切り分けやすくなり、原因に応じた効果的な対応を選択できる。
【0089】
[記録ステップ]
制御ユニット100は、ばらつき検出ステップで検出したばらつきの値と、判定ステップの結果と、の少なくともいずれかと、高さ検出ステップを実施した日時と、を点検データとして記録する記録ステップを実行してもよい。記録ステップでは、制御ユニット100の記憶部102に点検データを記憶させてもよいし、切削装置10と通信可能な外部機器(サーバー、パーソナルコンピューター、タブレット型端末など)に点検データを送信して記録させてもよい。
【0090】
記録ステップで継続的に記録した点検データを参照することによって、保持テーブル18のメンテナンスの頻度や、メンテナンス時に必要な作業などを、傾向として把握することができ、切削装置10を長期間に亘って使用する際の利便性が向上する。
【0091】
[第2搬送ステップ]
高さ検出ステップの後に、制御ユニット100は、保持テーブル18からカセット15に測定用ワーク90を戻すために搬送する第2搬送ステップを行わせる。第2搬送ステップでは、テーブル送り機構を動作させて、測定用ワーク90を保持した保持テーブル18を加工領域から搬入出領域へ移動させる。吸引機構78の動作を終了し、保持テーブル18による測定用ワーク90の吸引保持を解除させる。搬送アーム31の吸引保持部によって測定用ワーク90の上面を吸引保持し、搬送アーム31を上昇させて測定用ワーク90を保持テーブル18から引き上げる。一対の保持レール22に測定用ワーク90を載せて、一対の保持レール22の間隔を調整してX軸方向での測定用ワーク90の位置を設定する。続いて、搬送アーム31の把持部で測定用ワーク90を把持して、搬送アーム31をY軸方向でカセット載置部14側に移動させ、カセット載置部14をカセット15に収容する。
【0092】
第2搬送ステップは、少なくとも高さ検出ステップの後に行われればよく、ばらつき検出ステップ、判定ステップ、記録ステップなどと同時に行ってもよい。
【0093】
高さ検出ステップでは、測定用ワーク90に切削ブレード47の接触による僅かな接触痕が残るだけであり、測定用ワーク90はほとんど汚れることがない。そのため、切削加工に伴う加工屑が発生して付着する被加工物とは異なり、基本的に、高さ検出ステップの後に測定用ワーク90を洗浄する必要は無い。また、測定用ワーク90を一回限りの使用(使い切り)にする場合も、高さ検出ステップの後に測定用ワーク90を洗浄する必要は無い。従って、高さ検出ステップが完了したら、洗浄部23での洗浄を経ずに第2搬送ステップを行って、測定用ワーク90をそのままカセット15に収容させている。
【0094】
また、測定用ワーク90に付着した異物が被加工物に付着することを防止するために、測定用ワーク90を被加工物とは同じカセット15に収容したくない場合がある。この場合は、カセット15の下方にカセット15とは異なる第2のカセットを設置し、第2のカセットに測定用ワーク90を収容して、第2のカセットから測定用ワーク90を搬送する第1搬送ステップと、第2のカセットに測定用ワーク90を戻す第2搬送ステップとを実施してもよい。
【0095】
測定用ワーク90を繰り返し使用する場合には、高さ検出ステップの後で、測定用ワーク90をカセット15に収容する前に、搬送アーム32を用いて洗浄部23に測定用ワーク90を搬送して、測定用ワーク90の洗浄を行ってもよい。洗浄部23での測定用ワーク90の洗浄は、先に説明した被加工物の洗浄と同様に行われる。そして、洗浄後に、搬送アーム32と搬送アーム31を用いて測定用ワーク90を搬送してカセット15に収容する。
【0096】
第2搬送ステップは、測定用ワーク90が洗浄部23での洗浄を経由する場合と、測定用ワーク90が洗浄部23での洗浄を経由しない場合との両方を含むものとする。
【0097】
以上に説明した通り、本実施形態による保持テーブルの高さ検出方法では、切削ユニット11(12)に付随するセットアップユニット60を用いて、保持面19の上面高さのばらつきを検出することができる。そのため、ばらつき検出用の測定器を別途取り付けることなく、切削装置10において保持テーブル18の保持面19の上面高さのばらつきを容易に測定することができる。
【0098】
セットアップユニット60は、被加工物に対する切削ブレード47の切り込み量を設定する基準となる切削ブレード47の原点位置を検出するセットアップ工程にも用いられる。セットアップ工程では、例えば、測定用ワーク90を保持していない状態の保持テーブル18に対して、昇降ユニット35(36)を動作させて切削ユニット11(12)を下降させて、枠体76の上面と切削ブレード47の切れ刃49との電気的な導通が検出されるときの切削ユニット11(12)の高さ位置を、原点位置として検出する。
【0099】
本発明の保持テーブルの高さ検出方法によれば、このような導通セットアップを行う切削装置10において、特別な構成の追加を要さずに、保持面19の上面高さのばらつきの検出を効率的に行うことができるという利点がある。
【0100】
また、保持ステップと、高さ検出ステップと、ばらつき検出ステップとを行った後で、さらに判定ステップと、報知ステップとを行うことで、保持面19の上面高さのばらつきを原因とする切削加工の不良の発生を未然に防ぐことができ、被加工物を無駄にしない効率的な加工を実現できる。
【0101】
また、点検データを記録する記録ステップを行うことで、切削装置10を継続的に使用する際のメンテナンス性を向上させることができる。
【0102】
また、第1搬送ステップと第2搬送ステップを行うことで、測定用ワーク90の搬入から搬出までが自動化されたフルオートでの処理を実現して、切削装置10において保持面の高さ検出を行うオペレーターの負担を軽減することができる。
【0103】
本発明は上記の実施形態には限定されない。例えば、上記の通り、切削ユニットを1つだけ備える切削装置にも適用が可能である。また、円環形状の切れ刃を、基台及びブレードマウントによって挟んで固定するハブレスブレードを用いる切削装置にも適用が可能である。
【0104】
なお、本発明の実施の形態は上記の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。従って、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上説明したように、本発明の保持テーブルの高さ検出方法は、セットアップユニットを利用して、保持テーブルの保持面の上面高さのばらつきを容易に測定することができ、大きな手間やコストをかけずに切削装置のメンテナンス性や加工性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0106】
10 :切削装置
11 :切削ユニット
12 :切削ユニット
13 :基台
14 :カセット載置部
15 :カセット
18 :保持テーブル
19 :保持面
20 :クランプ
23 :洗浄部
31 :搬送アーム
32 :搬送アーム
33 :割り出し送りユニット
34 :割り出し送りユニット
35 :昇降ユニット
36 :昇降ユニット
38 :Y軸移動テーブル
39 :Y軸移動テーブル
40 :Z軸移動テーブル
41 :Z軸移動テーブル
42 :スピンドルハウジング
44 :スピンドル
46 :ブレードマウント
47 :切削ブレード
48 :ブレード基台
49 :切れ刃
51 :スピンドルモータ
55 :ハウジング
56 :表示モニタ
57 :表示ランプ
58 :スピーカー
60 :セットアップユニット
61 :ブラシ部
62 :検出回路
63 :電極ホルダ
64 :電極端子
65 :コイルバネ
67 :接触端子
68 :導線
69 :接続端子
70 :リード線
71 :直流電源
72 :電源スイッチ
73 :配線
74 :配線
75 :電流計
76 :枠体
77 :ポーラス材
78 :吸引機構
79 :テーブル回転機構
90 :測定用ワーク
91 :導電性テープ
92 :フレーム
93 :板状物
94 :ベース部
95 :導電性膜
96 :導通部
100 :制御ユニット
101 :処理部
102 :記憶部