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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166668
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ウエーハの研削方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241122BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B24B7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082909
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
【テーマコード(参考)】
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA15
3C043CC04
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
5F057AA04
5F057BA11
5F057BB03
5F057CA15
5F057CA16
5F057CA31
5F057CA40
5F057DA10
5F057DA11
5F057DA17
5F057EB17
5F057EB18
5F057FA13
5F057FA30
(57)【要約】
【課題】サポート基板を貼り付けることなく研削後のウエーハに高い剛性を付与できる研削方法を提供する。
【解決手段】ウエーハ10の研削方法は、保持テーブル110に保持されたウエーハ10の中央領域を研削ホイール103で研削して凹部17を形成するとともに凹部17の外周側にリング状補強部18を形成する研削ステップを備える。ウエーハ10は、凹部17が形成されたウエーハ10の変形がリング状補強部18によって抑制される厚みを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハの研削方法であって、
保持テーブルに保持された該ウエーハの中央領域を研削ホイールで研削して凹部を形成するとともに該凹部の外周側にリング状補強部を形成する研削ステップを備え、
該ウエーハは、該凹部が形成されたウエーハの変形が該リング状補強部によって抑制される厚みを備える
事を特徴とするウエーハの研削方法。
【請求項2】
該ウエーハの表面に、
複数のデバイスが形成されたデバイス領域と、
該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域と、を備え、
該外周余剰領域に対応する領域に該リング状補強部が形成される
事を特徴とする請求項1に記載のウエーハの研削方法。
【請求項3】
該ウエーハの厚みが800μm以上である
事を特徴とする請求項1または2に記載のウエーハの研削方法。
【請求項4】
該ウエーハは、
該ウエーハの厚み >= 該ウエーハの直径 × 0.725/200
の式を満たす
事を特徴とする請求項1または2に記載のウエーハの研削方法。
【請求項5】
該ウエーハの直径は300mm以上である
事を特徴とする請求項1または請求項2に記載のウエーハの研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研削によって薄化されたウエーハの剛性が低下し、その結果、後工程でのウエーハの取り扱いが難しくなることが知られている。このような課題に関連する技術は、例えば、特許文献1、特許文献2に記載されている。
【0003】
特許文献1では、デバイスが設けられたウエーハの中央側の領域のみを研削し、外周側の領域をそのまま残すことで、研削後のウエーハの剛性をある程度に保つTAIKO(登録商標)研削が提案されている。
【0004】
TAIKO研削が行われた場合であってもウエーハの剛性が十分に確保されず後工程において反りや撓みなどのウエーハの変形が発生する事がある。この点を踏まえ、特許文献2では、ウエーハにサポート基板を貼り付けてからTAIKO研削を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-019461号公報
【特許文献2】特開2022-044315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、薄化されたウエーハの剛性に関連する課題は、TAIKO研削により大幅に改善される一方で、より確実に対処するためには、サポート基板を研削前にウエーハに貼り付けるといった手間が生じてしまう。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、サポート基板を貼り付けることなく研削後のウエーハに高い剛性を付与できる研削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のウエーハの研削方法は、保持テーブルに保持された該ウエーハの中央領域を研削ホイールで研削して凹部を形成するとともに該凹部の外周側にリング状補強部を形成する研削ステップを備え、該ウエーハは、該凹部が形成されたウエーハの変形が該リング状補強部によって抑制される厚みを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サポート基板を貼り付けることなく研削後のウエーハに高い剛性を付与できる研削方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ウエーハ表面の一例を示す斜視図である。
図2】研削工程の一例を示す斜視図である。
図3】研削工程後のウエーハ裏面の一例を示す斜視図である。
図4】金属膜形成工程の一例を示す断面図である。
図5】支持部材固定工程の一例を示す断面図である。
図6】リング状補強部除去工程の一例を示す斜視図である。
図7】リング状補強部除去工程の一例を示す断面図である。
図8】分割工程の一例を示す斜視図である。
図9】SEMI規格におけるウエーハの直径と厚みの関係を示す説明図である。
図10】ウエーハの直径、厚み、直径と厚みの比の関係を示す説明図である。
図11】ウエーハの直径と厚みの比である係数の閾値を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照しながら、本実施形態に係るウエーハの研削方法について説明する。なお、研削対象のウエーハは、特に限定しない。半導体ウエーハや光デバイスウエーハに限らず、研削対象になる板状物であればよい。
【0012】
本実施形態に係るウエーハの研削方法は、TAIKO(登録商標)研削を行う研削工程を含んでいる。TAIKO研削は、ウエーハの外周領域を残して薄化することにより、リング状の凸部を形成する研削加工をいう。TAIKO研削によれば、薄化されたウエーハがリング状の凸部によって補強されるため、凸部が形成されない場合に比べてウエーハの変形が抑制される。なお、以降では、ウエーハの外周領域に形成されるリング状の凸部をリング状補強部と記す。
【0013】
しかしながら、従来の研削方法では、リング状補強部によって得られるウエーハの変形を抑制する効果は必ずしも万全ではなく、特に、直径が約300mm(12インチ)以上にもなる大口径のウエーハを薄化した場合には、ウエーハの変形が生じやすい。
【0014】
本願の発明者は、上記の課題について鋭意検討の結果、たとえ大口径のウエーハであっても、特許文献2に記載されるようなサポート基板を用いることなく、十分にそのウエーハの変形を抑制可能な新たな研削方法を見出した。
【0015】
まず、図1から図8を参照しながら、TAIKO研削を行う研削工程を含むウエーハの加工手順をウエーハの変形抑制の必要性とともに説明する。
【0016】
図1は、ウエーハ10の表面11の一例を示す斜視図である。研削対象のウエーハ10の表面11には、複数のデバイス14が形成されたデバイス領域12が設けられている。このデバイス領域12は、複数の分割予定ライン15で区画されている。また、デバイス領域12の外周側には、デバイス14が形成されていない外周余剰領域13が設けられている。
【0017】
即ち、ウエーハ10の表面11は、デバイス領域12と、デバイス領域12を囲繞する外周余剰領域13と、を備えている。
【0018】
図2は、研削工程の一例を示す斜視図である。研削工程は、例えば、図2に示す研削装置によって行われる。図2に示す研削装置は、研削機構100と保持テーブル110を備えている。保持テーブル110は、ウエーハ10の表面11を吸引保持するチャックテーブルであり、ウエーハ10は、その裏面16を研削機構100へ向けた状態で保持テーブル110に保持される。
【0019】
研削機構100のスピンドル101の下端にはマウント102が設けられ、マウント102の下面に多数の研削砥石104が環状に配設されたTAIKO研削用の小型の研削ホイール103が装着されている。環状の研削砥石104は、ダイヤモンド砥粒をメタルボンドやレジンボンド等の結合剤で固めて形成されていて、例えば、デバイス領域12の半径より大きくウエーハ10の半径より小さな外径を有している。
【0020】
研削工程では、ウエーハ10を保持した保持テーブル110が図示しないモータ等によって低速回転する。さらに、環状の研削砥石104が配設された研削ホイール103が保持テーブル110と同方向に高速回転しながら研削機構100が下降する。この際に、環状の研削砥石104が保持テーブル110の回転とともに回転するウエーハ10の裏面16の回転中心に常時接触するように制御されることで、ウエーハ10の外周領域を残してウエーハ10を薄化するTAIKO研削が行われる。
【0021】
図3は、研削工程後のウエーハ10の裏面16の一例を示す斜視図である。TAIKO研削では、保持テーブル110に保持されたウエーハ10の中央領域が、研削砥石104が設けられた研削ホイール103で研削されて薄化されるため、図2及び図3に示すように、ウエーハ10の裏面16に凹部17が形成される。また、凹部17の形成とともに、その凹部17の外周側(ウエーハ10の外周領域)に研削前の厚みを維持したリング状補強部18が形成される。
【0022】
リング状補強部18は、表面11の外周余剰領域13に対応する裏面16の領域に形成される。このようなリング状補強部18と外周余剰領域13の位置関係は、本実施形態に係る研削工程においては、デバイス領域12の半径より大きくウエーハ10の半径より小さい外径を有する環状の研削砥石104を、ウエーハ10の回転中心に常時接触させることによって実現されている。
【0023】
研削によって薄化されたウエーハ10の剛性の低下は、リング状補強部18の存在によって抑制されるものの、研削前に比べると薄化されたウエーハ10の剛性は低下する。薄化された研削後のウエーハ10の剛性が十分ではない場合には、ウエーハ10に反り等の変形が生じることになる。
【0024】
このようなウエーハ10の変形は、その後の工程における各種エラーやウエーハ10の破損の原因となり得る。これらの望ましくない事象の発生を回避するためには、研削後のウエーハ10の剛性を十分に確保してウエーハ10の変形を抑制する必要がある。
【0025】
図4は、金属膜形成工程の一例を示す断面図である。研削工程後に行われる金属膜形成工程では、ウエーハ10の裏面16の凹部17に、金、銀、チタン等の金属膜19を形成する。裏面16(凹部17)に形成する金属膜19は、表面11(デバイス領域12)に形成された各デバイス14に対して電気的なテストを行うために設けられる。
【0026】
ウエーハ10に金属膜19を形成する成膜方法については特に限定しない。スパッタリング法、蒸着法、化学気相成長(CVD)法等の任意の成膜方法が採用し得る。
【0027】
金属膜19の裏面16に形成された金属膜19は、ウエーハ10と異なる熱収縮率を有するため、金属膜19の形成後には、熱収縮率の違いによって形成前に比べてウエーハ10に反り等が生じやすくなる。このため、薄化された研削後のウエーハ10の剛性が十分ではない場合には、ウエーハ10に反り等の変形が生じることになり、また、生じる変形の大きさも、金属膜形成前よりも大きなものとなり得る。
【0028】
ウエーハ10の大きな変形は、上述したエラーやウエーハ10の破損を招きやすい。このため、ウエーハ10の加工過程において金属膜が形成される場合には、研削後のウエーハ10の剛性を十分に確保してウエーハ10の変形を抑制することは、極めて重要である。
【0029】
金属膜形成工程後は、各デバイス14の電気的特性がテストされる。
【0030】
図5は、支持部材固定工程の一例を示す断面図である。デバイス14のテスト後に行われる支持部材固定工程では、ダイシングテープ20によってウエーハ10と支持部材であるリングフレーム21が一体化したフレームセットを形成する。
【0031】
フレームセットの形成方法については特に限定しないが、例えば、図示しないロールテープから引き出されたダイシングテープ20を、図5に示す貼着ローラ202でリングフレーム21とウエーハ10に押圧しながらその貼着ローラ202を回転させることで、ダイシングテープ20をリングフレーム21とウエーハ10とに貼着させてフレームセットを形成してもよい。
【0032】
ダイシングテープ20の貼着は、テーブル201によってウエーハ10が吸引保持された状態で行われる。しかしながら、研削後のウエーハ10の剛性不足によりウエーハ10に反り等の変形が生じている場合には、テーブル201の保持面とウエーハ10の表面11との間に隙間が生じてしまうため、ウエーハ10をしっかりと吸引保持することが困難となる。
【0033】
ウエーハ10をしっかりと吸引保持することができないと、ダイシングテープ20の貼着も困難となってしまうため、支持部材固定工程においてエラーの発生が増加してしまう。このようなエラーの発生を回避するためには、研削後のウエーハ10の剛性を十分に確保してウエーハ10の変形を抑制する必要がある。
【0034】
図6は、リング状補強部除去工程の一例を示す斜視図である。図7は、リング状補強部除去工程の一例を示す断面図である。フレームセットが形成されると、切削機構300(図6及び図7参照)を備えた切削装置にフレームセットが配置される。
【0035】
切削装置では、ウエーハ10の裏面16が図7に示す保持テーブル310によって保持され、リングフレーム21が図示しないクランプによって保持される。これにより、フレームセットは、切削機構300に表面11を向けた状態で切削装置に保持される。
【0036】
なお、保持テーブル310は、枠体311の凹部に埋め込まれたポーラス板312を備えたチャックテーブルである。図示しない吸引源の吸引動作によってポーラス板312の表面に発生する負圧を用いることで、ウエーハ10は、保持テーブル310に吸引保持される。
【0037】
フレームセットが保持テーブル310に保持されると、切削装置はウエーハ10に対してサークルカットを行う。具体的には、図6及び図7に示すように、切削機構300は、スピンドル302を回転しながらウエーハ10に向かって下降することで、切削ブレード301をウエーハ10の表面11のデバイス領域12と外周余剰領域13の境界に押し付けてウエーハ10を切削する。この際、保持テーブル310の図示しないスピンドルであって切削機構300のスピンドル302とは直交する方向に回転軸を有するスピンドルが回転することで保持テーブル310とともにフレームセットも回転する。
【0038】
その結果、切削機構300の切削ブレード301がウエーハ10のデバイス領域12と外周余剰領域13の境界に沿って円形にウエーハ10を切削し、デバイス領域12と外周余剰領域13を分離する。これにより、外周余剰領域13に対応する領域に形成されたリング状補強部18がウエーハ10(デバイス領域12)から除去される。
【0039】
図8は、分割工程の一例を示す斜視図である。サークルカット後に行われる分割工程では、切削機構300がウエーハ10を分割予定ライン15に沿って切断してダイシングすることで、ウエーハ10は個々のデバイス14が形成されたチップに分割される。
【0040】
具体的には、切削機構300は、スピンドル302を回転しながらウエーハ10に向かって下降することで、切削ブレード301を分割予定ライン15に押し付けてウエーハ10を切削する。この際、保持テーブル310の基台を分割予定ライン15と平行な方向に移動させることで、分割予定ライン15に沿ってウエーハ10が分割される。このような処理を分割予定ライン15毎に行うことで、ウエーハ10は個々のデバイス14が形成されたチップに分割される。
【0041】
次に、図9から図11を参照しながら、薄化された研削後のウエーハ10の剛性の低下を抑制するウエーハの研削方法について詳細に説明する。
【0042】
本願の発明者は、鋭意検討の結果、大口径のウエーハを薄化した場合にウエーハの変形が生じやすくなる原因は、薄化した研削後のウエーハをリング状補強部が十分にサポートできていないこと、つまり、リング状補強部のサポート不足にあると結論づけた。そして、ウエーハの研削方法において、薄化した研削後のウエーハを十分にサポートするリング状補強部を形成することで、大口径のウエーハを薄化した場合であってもウエーハの変形を生じ難くすることができることを見出した。
【0043】
TAIKO研削において形成されるリング状補強部の厚みがウエーハの元厚に相当することを踏まえると、ウエーハの研削方法において、凹部が形成されたウエーハの変形がリング状補強部によって抑制される厚み(元厚)をウエーハが備えればよい。本実施形態に係る研削方法では、そのような条件を満たすウエーハが用いられる。
【0044】
以下では、デバイスが形成されたシリコンウエーハを用いた研削方法において、ウエーハの変形がリング状補強部によって抑制される元厚をウエーハが備える例を説明する。
【0045】
図9は、SEMI規格におけるウエーハの直径と厚みの関係を示す説明図である。SEMI規格とは、半導体の製造機器メーカーや材料メーカーなどの国際的な業界団体であるSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)が定めた規格のことである。
【0046】
SEMI規格では、シリコンウエーハの寸法の標準仕様として、直径と厚みの関係が図9に示すように定められている。このため、市場に流通する多くのシリコンウエーハの直径と厚みの関係も図9に示す関係を満足していると考えられる。
【0047】
図10は、ウエーハの直径、厚み、直径と厚みの比の関係を示す説明図である。背景が白い部分は、TAIKO研削後に変形が生じにくいウエーハの仕様を示し、背景が黒い部分は、TAIKO研削後に変形が生じやすいウエーハの仕様または実用に適しないウエーハの仕様を示している。
【0048】
なお、図10では、直径が約300mm(12インチ)以上の大口径のウエーハを薄化した場合にはTAIKO研削が行われた場合であってもウエーハの変形が生じやすいことから、12インチウエーハのSEMI規格の範囲内の仕様については背景を黒く表示している。また、厚みが厚すぎるウエーハの仕様(直径300mm、厚み10mm)についても、研削コストの面から実用性に乏しいと判断して背景を黒く表示している。
【0049】
本願発明者は、12インチウエーハを薄化した場合にはTAIKO研削が行われた場合であっても、ウエーハの変形が生じやすい点に注目し、TAIKO研削が行われた12インチウエーハを確認したところ、リング状補強部が凹部ともに変形している現象を発見し、標準仕様を満たす12インチウエーハの厚み(元厚)の不足がリング状補強部によるウエーハのサポート不足を引き起こしていると結論づけた。
【0050】
SEMI規格の12インチウエーハの仕様によれば、12インチウエーハに関しては最大で795μmの厚みを有するものが市場に流通していると考えられ、標準仕様を満たす12インチウエーハの厚み(元厚)を超える800μm以上の厚みを有するウエーハは市場に流通していない。このような一般に用いられていない800μm以上の厚みを有するウエーハを用いることで、リング状補強部の厚さも従来のものよりも厚くなるため、研削後のウエーハの変形を従来よりも抑制することができる。
【0051】
従って、ウエーハの研削方法において、ウエーハの厚みは800μm以上であることが望ましい。このようなSEMI規格外のウエーハを敢えて用いることで、サポート基板を貼り付けることなく研削後のウエーハに高い剛性を付与できるため、ウエーハの変形を抑制する効果を得ることが可能である。
【0052】
また、本願の発明者は、図10に示す関係を検討の結果、図9に示すSEMI規格で定義された標準仕様のウエーハの元厚と直径の比率が下記に示すようにウエーハが大口径化するほど小さくなることに注目し、大口径のウエーハを薄化した場合にウエーハの変形が生じやすくなる原因として、厚みと直径の比率の低下が影響していると結論づけた。
4インチウエーハ:0.0052
5インチウエーハ:0.005
6インチウエーハ:0.0045
8インチウエーハ:0.00363
12インチウエーハ:0.00258
【0053】
さらに、8インチウエーハまではTAIKO研削後にウエーハの変形が生じにくく、12インチウエーハにおいてはTAIKO研削後にウエーハの変形が比較的生じやすいことから、8インチウエーハの厚みと直径の比率が維持されれば、ウエーハのサイズによらずTAIKO研削後にウエーハの変形を抑制することができると結論づけた。
【0054】
従って、ウエーハの研削方法においては、ウエーハは、以下の式(1)を満たすことが望ましい。
ウエーハの厚み >= ウエーハの直径 × 0.725/200 ・・・(1)
【0055】
式(1)を満たすウエーハを用いることで、ウエーハのサイズ(インチ、直径)によらず、サポート基板を貼り付けることなく研削後のウエーハに高い剛性を付与できるため、TAIKO研削後にウエーハの変形を抑制することが可能である。特に、直径が300mm以上のウエーハが用いられる場合において、式(1)を満たすことが望ましい。これにより、SEMI規格の標準仕様を満たす12インチウエーハを用いた場合に生じやすかった研削後のウエーハの変形を抑制することが可能となる。
【0056】
図11は、ウエーハの直径と厚みの比である係数の閾値を示す説明図である。図11では、上述した2つの具体例におけるウエーハの直径と厚みの比(係数)が閾値として示されている。閾値THaは、800μmの厚みを有する12インチウエーハの厚みと直径の比率(係数)であり、0.00267である。閾値THbは、SEMI規格の標準仕様を満たす12インチウエーハの厚みと直径の比率(係数)であり、0.00363である。
【0057】
ウエーハの研削方法において、閾値THa以上の比率(係数)を有するウエーハを用いることで、特に12インチウエーハにおいて、TAIKO研削後のウエーハの剛性を従来よりも高めることが可能となるため、ウエーハの変形を抑制することができる。また、閾値THb以上の比率(係数)を有するウエーハを用いることで、ウエーハのサイズによらず、TAIKO研削後のウエーハの剛性を十分に確保することが可能となるため、ウエーハの変形をより確実に抑制することができる。
【0058】
従って、少なくとも閾値THa以上の比率を有するウエーハを用いることで、TAIKO研削後の工程においてウエーハの破損を含む各種のエラーの発生を抑制することができる。また、閾値THb以上の比率を有するウエーハを用いることで、TAIKO研削後の工程において各種のエラーの発生をさらに抑制することができる。
【0059】
なお、ウエーハの変形に起因してTAIKO研削後の工程において発生する各種のエラーには、研削工程以降の工程での搬送エラー、研削工程実施後にウエーハがカセットに収容されている際にウエーハが撓んで破損するエラー、支持部材固定工程における保持テーブルに吸引保持できないエラーが含まれる。
【0060】
本発明の実施形態は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上に説明したように、本発明のウエーハの研削方法によれば、サポート基板を貼り付けることなく研削後のウエーハに高い剛性を付与することができる。このため、特に研削後に剛性が不足しやすい大口径のウエーハの研削において非常に有用である。
【符号の説明】
【0062】
10 :ウエーハ
11 :表面
12 :デバイス領域
13 :外周余剰領域
14 :デバイス
15 :分割予定ライン
16 :裏面
17 :凹部
18 :リング状補強部
19 :金属膜
20 :ダイシングテープ
21 :リングフレーム
100 :研削機構
101 :スピンドル
102 :マウント
103 :研削ホイール
104 :研削砥石
110 :保持テーブル
201 :テーブル
202 :貼着ローラ
300 :切削機構
301 :切削ブレード
302 :スピンドル
310 :保持テーブル
311 :枠体
312 :ポーラス板
THa、THb :閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11