(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166846
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】イオン交換システム及び超純水製造装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/42 20230101AFI20241122BHJP
【FI】
C02F1/42 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083228
(22)【出願日】2023-05-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】宮地 みどり
(72)【発明者】
【氏名】港 康晴
【テーマコード(参考)】
4D025
【Fターム(参考)】
4D025AA04
4D025BA09
4D025BA14
4D025BB02
4D025BB04
4D025BB09
4D025CA06
4D025CA10
4D025DA01
4D025DA04
4D025DA05
(57)【要約】
【課題】イオン交換処理水量を可変することができるイオン交換システムと、このイオン交換システムを備えた超純水製造装置とを提供する。
【解決手段】イオン交換装置と、該イオン交換装置に被処理水を通水させるためのポンプと、該イオン交換装置からの脱イオン水が導入される脱イオン水タンクと、該イオン交換装置から脱イオン水タンクへの流入水量を調整するための流量調整バルブと、該脱イオン水タンク内の水位を検出する水位検出手段と、該イオン交換装置から該脱イオン水タンクに向う流れの流量又は圧力を検出する流量又は圧力の検出手段と、該水位検出手段で検出される脱イオン水タンク内の水位が所定範囲となるように該流量調整バルブの開度を制御すると共に、該流量調整バルブの開度変更後における前記流量又は圧力の検出手段の検出流量又は圧力が所定範囲となるように、前記ポンプを制御する制御手段とを有するイオン交換システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換装置と、
該イオン交換装置に被処理水を通水させるためのポンプと、
該イオン交換装置からの脱イオン水が導入される脱イオン水タンクと、
該イオン交換装置から脱イオン水タンクへの流入水量を調整するための流量調整バルブと、
該脱イオン水タンク内の水位の検出する水位検出手段と、
該イオン交換装置から該脱イオン水タンクに向う流れの流量又は圧力を検出する流量又は圧力の検出手段と、
該水位検出手段で検出される脱イオン水タンク内の水位が所定範囲となるように該流量調整バルブの開度を制御すると共に、該流量調整バルブの開度変更後における前記流量又は圧力の検出手段の検出流量又は圧力が所定範囲となるように、前記ポンプを制御する制御手段と
を有するイオン交換システム。
【請求項2】
前記制御手段による前記ポンプの制御頻度が7回/min以下であり、このポンプ制御に伴うポンプの水量の変動幅が±20%以内である請求項1のイオン交換システム。
【請求項3】
前記イオン交換装置は、カチオン交換塔及びアニオン交換塔を有するイオン交換装置、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とが混合充填された再生式イオン交換装置、又はカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを有する非再生型イオン交換装置である請求項1のイオン交換システム。
【請求項4】
イオン交換システムを有する一次純水システムと、
該一次純水システムからの一次純水とユースポイントからの戻り超純水が導入されるサブタンクと、
該サブタンクからの水が供給されるサブシステムと
を有する超純水製造装置において、
該イオン交換システムが請求項1~3のいずれかのイオン交換システムであることを特徴とする超純水製造装置。
【請求項5】
前記ユースポイントからの前記サブタンクへの戻り超純水量に応じて前記一次純水システムから前記サブタンクへの送水量が制御される請求項4の超純水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換システムに係り、特に、超純水製造装置の一次純水システムに組み込むのに好適なイオン交換システムに関する。また、本発明は、このイオン交換システムを備えた超純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体洗浄用水として用いられている超純水は、前処理システム、一次純水システム及びサブシステムから構成される超純水製造装置で原水(工業用水、市水、井水等)を処理することにより製造されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図5は、超純水製造装置の一例を示すものである。凝集、加圧浮上(沈殿)、濾過装置等よりなる前処理システム1では、原水中の懸濁物質やコロイド物質の除去を行う。前処理システム1で処理された水は、前処理水タンク2を経て熱交換器3、逆浸透膜分離装置(RO装置)4、低圧紫外線酸化装置(UV装置)5、イオン交換装置6及び脱気装置7を備える一次純水システムで処理され、前処理水中のイオンや有機成分が除去され、一次純水となる。この一次純水は、配管8を経てサブタンク10に送水される。なお、配管8から分岐した返送配管9によって余剰の一次純水が前処理水タンク2に返送される。
【0004】
サブタンク10内の水は、熱交換器、低圧紫外線(UV)酸化装置、白金族金属触媒樹脂塔、膜式脱気装置、RO装置、非再生型混床式イオン交換装置及び限外濾過(UF)膜分離装置を備えるサブシステム11で処理されて超純水となる。この超純水は、配管12によってユースポイント13に送水され、未使用の超純水がリターン配管14によってサブタンク10に返送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の超純水製造装置の一次純水システムにあっては、ユースポイント13での超純水使用量が変動しても、イオン交換装置6への通水量は一定とされている。そのため、ユースポイント13での超純水使用量が少ないときには、一次純水が過剰に製造されている。その結果、ポンプの電力原単位が増大したり、イオン交換装置6に過剰な負荷がかかり、イオン交換樹脂の再生頻度や交換頻度が増加したりしていた。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決し、イオン交換処理水量を可変することができるイオン交換システムと、このイオン交換システムを備えた超純水製造装置とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のイオン交換システムは、イオン交換装置と、該イオン交換装置に被処理水を通水させるためのポンプと、該イオン交換装置からの脱イオン水が導入される脱イオン水タンクと、該イオン交換装置から脱イオン水タンクへの流入水量を調整するための流量調整バルブと、該脱イオン水タンク内の水位を検出する水位検出手段と、該イオン交換装置から該脱イオン水タンクに向う流れの流量又は圧力を検出する流量又は圧力の検出手段と、該水位検出手段で検出される脱イオン水タンク内の水位が所定範囲となるように該流量調整バルブの開度を制御すると共に、該流量調整バルブの開度変更後における前記流量又は圧力の検出手段の検出流量又は圧力が所定範囲となるように、前記ポンプを制御する制御手段とを有する。
【0009】
本発明の一態様にあっては、前記制御手段による前記ポンプの制御頻度が7回/min以下であり、このポンプ制御に伴うポンプの水量の変動幅が±20%以内である。
【0010】
本発明の一態様にあっては、前記イオン交換装置は、カチオン交換塔及びアニオン交換塔を有するイオン交換装置、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とが混合充填された再生式イオン交換装置、又はカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを有する非再生型イオン交換装置である。
【0011】
本発明の超純水製造装置は、一次純水システムに本発明のイオン交換システムを備えたものである。好ましくは、前記ユースポイントからの前記サブタンクへの戻り超純水量に応じて前記一次純水システムから前記サブタンクへの送水量が制御される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のイオン交換システムによると、イオン交換装置への通水量をイオン交換処理水の必要量に応じて制御することができる。そのため、このイオン交換システムの運転時のポンプ電力原単位が低減されると共に、イオン交換樹脂の再生頻度や交換頻度を減少させることができる。
【0013】
本発明の超純水製造装置は、かかる本発明のイオン交換システムを備えているため、超純水の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態に係るイオン交換システムの構成図である。
【
図2】実施の形態に係るイオン交換システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明のイオン交換システムの一例を示すものである。脱イオン処理される被処理水は、配管17、第1ポンプ18、配管19によりイオン交換装置20に供給され、イオン交換樹脂と接触して脱イオン処理され、脱イオン水となる。脱イオン水は、配管21、第2ポンプ22、配管23、流量調整バルブ24及び配管25を経て脱イオン水タンク26に導入され、配管27を介して次工程へ送水される。配管23に流量計又は圧力計28が設置され、脱イオン水タンク26に水位計29が設置されており、各々の検出信号が制御器30に入力される。
【0017】
制御器30は、水位計29で検出される水位が所定範囲となるように、流量調整バルブ24の開度をPID制御等により調整する。
【0018】
また、制御器30は、流量調整バルブ24の開度が調整された後の流量計又は圧力計28の検出流量又は圧力が所定範囲となるように、第1ポンプ18又は第2ポンプ22の送水量(モータ回転数)をインバータ制御する。
【0019】
なお、制御器30による第1ポンプ18又は第2ポンプ22の制御頻度は7回/min以下であり、このポンプ制御に伴うポンプの水量の変動幅が±20%以内であることが好ましい。
【0020】
流量調整頻度を7回/min以下とすることが好ましい理由は、以下の通りである。
【0021】
一般に、ポンプに使用される金属はN=2×107擦れると摩耗し疲労破壊する。ポンプを5年間使用すると仮定すると、2×107回/5year/365day/24h/60min=7.62回/minとなる。よって、流量調整回数は7回/min以下とすることが好ましい。
【0022】
この制御により、脱イオン水タンク26内の水位が所定範囲となるように、被処理水の処理量が制御される。即ち、脱イオン水タンク26から配管27によって次工程に送水される水量に応じて、イオン交換装置20への通水量が制御される。これにより、イオン交換システムの運転時のポンプ電力原単位が低減されると共に、イオン交換樹脂の再生頻度や交換頻度を減少させることができる。
【0023】
図2は、本発明のイオン交換システムの別の一例を示すものである。
【0024】
このイオン交換システムでは、配管25に流量計又は圧力計28が設置され、配管23に圧力計31が設置されており、各々の検出信号と、脱イオン水タンク26の水位計29の検出信号とが制御器30に入力されている。
【0025】
図2のその他の構成は
図1と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0026】
この
図2では、水位計29の検出水位と、流量計又は圧力計28の検出流量又は圧力とのいずれかが又は双方が所定範囲となるように流量調整バルブ24の開度が制御される。また、流量調整バルブ24の開度が調整された後の圧力計31の検出圧力が所定範囲となるように、第1ポンプ18及び第2ポンプ22の一方又は双方の回転数がインバータ制御される。
【0027】
この
図2のイオン交換システムによっても、脱イオン水タンク26から配管27によって次工程に送水される水量に応じてイオン交換装置20への通水量が制御される。これにより、イオン交換システムの運転時のポンプ電力原単位が低減されると共に、イオン交換樹脂の再生頻度や交換頻度を減少させることができる。
【0028】
図1又は
図2のイオン交換システムは、超純水製造装置の一次純水システムに組み込むのが好適である。
図1又は
図2のイオン交換システムを
図5の一次純水システムのイオン交換装置6として組み込んだ場合、紫外線酸化装置5からイオン交換装置6への送水配管が
図1又は
図2の配管17に該当し、イオン交換装置6から脱気装置7への送水配管が
図1又は
図2の配管27に該当する。
【0029】
このように、
図1又は
図2のイオン交換システムを一次純水システムに組み込んだ超純水製造装置は、ユースポイント13での超純水使用量に応じて配管27からの送水量が制御される。すなわち、配管8からサブタンク10への一次純水送水量と、リターン配管14からサブタンク10への戻り超純水量との合計が所定量となるように、一次純水システムでの一次純水生産量が制御される。従って、ユースポイント13での超純水使用量に応じてイオン交換装置20への通水量が制御されるので、イオン交換装置20に無駄に過剰水量が通水されることがなく、ポンプの電力コストの低減、イオン交換樹脂の再生頻度及び交換頻度の低減が実現される。
【0030】
本発明において、イオン交換装置20の構成は特に限定されるものではない。イオン交換装置20として採用可能な構成の一例を
図3,4に示す。
【0031】
図3のイオン交換装置では、配管19からの被処理水がカチオン交換塔40に導入され、下向流通水されてカチオン交換処理された後、配管44によって脱炭酸塔50に送水され、脱炭酸処理される。脱炭酸処理水は、ポンプ53及び配管54によってアニオン交換塔60に導入され、下向流通水され、アニオン交換処理されて脱イオン水となり、配管21へ流出する。
【0032】
なお、カチオン交換塔40には強酸性カチオン交換樹脂の充填床41、42が設けられている。上側及び下側の充填床41,42の下側にそれぞれ通水部を有した仕切板(符号略)が水平に設けられている。この仕切板の通水部は、水は通すが、カチオン交換樹脂粒子は通さないように構成されている。カチオン交換樹脂を大流量の上向流通水によって逆洗する場合、下側の充填床42のカチオン交換樹脂粒子が仕切板の上側に移動することを許容するための連絡管43が設けられている。
【0033】
カチオン交換樹脂の再生は、塩酸を上向流で通水することにより行われる。
【0034】
脱炭酸塔50は、充填材層51を有している。脱炭酸塔50内は真空ポンプ(図示略)により減圧されている。充填材層51を伝わり流れる間に水中の溶存炭酸ガスが脱ガス処理される。ピット52に落下した水がポンプ53によって送水される。
【0035】
アニオン交換塔60は、強塩基性アニオン交換樹脂の充填床61,63と、両者の間の弱塩基性アニオン交換樹脂の充填床62とを有する。充填床61~63の下側にそれぞれ通水部を有した仕切板(符号略)が水平に設けられている。
【0036】
大流量の逆洗水によってアニオン交換樹脂を逆洗する際に、下側の充填床63のアニオン交換樹脂粒子が充填床61へ移動することを許容する連絡管64が設けられている。
【0037】
アニオン交換樹脂の再生は、水酸化ナトリウム水溶液を上向流通水することにより行われる。
【0038】
図4のイオン交換装置も、カチオン交換塔40、脱炭酸塔50及びアニオン交換塔60を備えている。
図4では、アニオン交換塔60は強塩基性アニオン交換樹脂の充填床61,63のみを備えている。
【0039】
図4では、被処理水はカチオン交換塔40に上向流通水される。また、脱炭酸塔50からの脱炭酸処理水は、アニオン交換塔60に上向流通水される。
【0040】
再生時には、塩酸がカチオン交換塔40に下向流通水され、水酸化ナトリウム水溶液がアニオン交換塔60に下向流通水される。
【0041】
図示は省略するが、イオン交換装置としては、強酸性カチオン交換樹脂と、強塩基性アニオン交換樹脂とを混合充填した混床式イオン交換塔(ミックスベッドポリッシャー)が用いられてもよい。
【0042】
また、イオン交換装置として、非再生型のイオン交換装置を用いてもよい。非再生型イオン交換装置内には、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とが別々の床として充填されてもよく、混合床として充填されてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 前処理システム
6,20 イオン交換装置
10 サブタンク
11 サブシステム
13 ユースポイント
24 流量調整バルブ
26 脱イオン水タンク
28 流量計又は圧力計
29 水位計
30 制御器
31 圧力計
40 カチオン交換塔
50 脱炭酸塔
60 アニオン交換塔