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特開2024-166884ディスプレイ用ガラス基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166884
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ディスプレイ用ガラス基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 19/00 20060101AFI20241122BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20241122BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241122BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
C03C19/00 Z
C03C23/00 A
G09F9/00 338
G09F9/30 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083283
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】清水 智之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓史
(72)【発明者】
【氏名】二藤 学
(72)【発明者】
【氏名】前野 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雄
【テーマコード(参考)】
4G059
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AB03
4G059AB11
4G059AC03
5C094DA13
5C094EB02
5G435AA17
5G435BB05
5G435BB12
5G435KK07
(57)【要約】
【課題】樹脂層付きガラス基板からディスプレイ用ガラス基板を簡便に製造できる、ディスプレイ用ガラス基板の製造方法の提供。
【解決手段】本発明のディスプレイ用ガラス基板の製造方法は、ガラス基板と樹脂層とを含む樹脂層付きガラス基板から分離されたガラス基板を含む被処理物の、樹脂層が配置されていた側の第1表面と、第1表面とは反対側の第2表面とを研磨する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と樹脂層とを含む樹脂層付きガラス基板から分離された前記ガラス基板を含む被処理物の、前記樹脂層が配置されていた側の第1表面と、前記第1表面とは反対側の第2表面とを研磨する、ディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記研磨の前に、前記被処理物を洗浄する、請求項1に記載のディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記研磨の前に、前記被処理物に対して荷重付加試験を施して、前記ガラス基板の割れが発生していない前記被処理物を選択する、請求項1又は2に記載のディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記研磨の前に、前記被処理物に含まれる前記ガラス基板の位置決め基準部、端面形状、又は、端面性状に基づいて所定の判定基準を満たすガラス基板を含む被処理物を選択する、請求項1又は2に記載のディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ用ガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板と、ポリイミド膜と、がこの順に積層されたポリイミド膜付き積層体におけるポリイミド膜上に、有機発光素子(OLED)等の電子デバイス用部材を配置して、電子デバイス用部材付き積層体を得た後、ポリイミド膜及び電子デバイス用部材を分離して、電子デバイスを得る方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/073591号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子デバイスの製造に使用されたガラス基板は、電子デバイスの製造後に破棄されることが多く、環境保護の点から、他の製品として再使用(リユース)することが求められている。
近年、ディスプレイ用ガラス基板の需要が拡大しているので、上記のような電子デバイスの製造に使用されたガラス基板をディスプレイ用ガラス基板に使用できれば、環境保護の点からも好ましい。
しかしながら、上記のような電子デバイスの製造に使用されたガラス基板は、その表面にポリイミド膜等の樹脂層の一部が残存している場合があり、ディスプレイ用ガラス基板としての再使用にあたって、ガラス基板の溶融等の煩雑な処理が必要となる場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、樹脂層付きガラス基板からディスプレイ用ガラス基板を簡便に製造できる、ディスプレイ用ガラス基板の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、樹脂層付きガラス基板から分離されたガラス基板を含む被処理物に対して、両面を研磨する工程を有していれば、樹脂層付きガラス基板からディスプレイ用ガラス基板を簡便に製造できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
[1]ガラス基板と樹脂層とを含む樹脂層付きガラス基板から分離された上記ガラス基板を含む被処理物の、上記樹脂層が配置されていた側の第1表面と、上記第1表面とは反対側の第2表面とを研磨する、ディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
[2]上記研磨の前に、上記被処理物を洗浄する、[1]に記載のディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
[3]上記研磨の前に、上記被処理物に対して荷重付加試験を施して、上記ガラス基板の割れが発生していない上記被処理物を選択する、[1]又は[2]に記載のディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
[4]上記研磨の前に、上記被処理物に含まれる上記ガラス基板の位置決め基準部、端面形状、又は、端面性状に基づいて所定の判定基準を満たすガラス基板を含む被処理物を選択する、[1]~[3]のいずれかに記載のディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹脂層付きガラス基板からディスプレイ用ガラス基板を簡便に製造できる、ディスプレイ用ガラス基板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ガラス基板に形成されたオリエンテーションフラットの一例を示す概略平面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るディスプレイ用ガラス基板の製造方法のフローを示すフローチャートである。
図3】本発明の第2実施形態に係るディスプレイ用ガラス基板の製造方法のフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態は本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す実施形態に制限されることはない。なお、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
本発明のディスプレイ用ガラス基板の製造方法(以下、「本製造方法」ともいう。)は、ガラス基板と樹脂層とを含む樹脂層付きガラス基板から分離された上記ガラス基板を含む被処理物の、上記樹脂層が配置されていた側の第1表面と、上記第1表面とは反対側の第2表面とを研磨する。
上記被処理物の第1表面には、電子デバイスの製造に用いる樹脂層(例えば、ポリイミド樹脂)の残渣、犠牲層(例えば、アモルファスシリコン膜等)の残渣、電子デバイスの製造に用いた絶縁膜の残渣等が残留している場合がある。また、上記被処理物の表面(第1表面および第2表面)は、搬送時やハンドリング時に付された傷が存在する場合がある。本製造方法によれば、研磨によって残渣及び傷を除去できるので、溶融等の煩雑な工程を用いることなく、簡便な方法でディスプレイ用ガラス基板を製造できる。
【0012】
ディスプレイ用ガラス基板の具体例としては、液晶ディスプレイ用ガラス基板、有機ELディスプレイ用ガラス基板が挙げられる。
【0013】
[被処理物]
本製造方法に使用する被処理物はガラス基板を含み、このガラス基板上には、樹脂層の残渣、犠牲層の残渣、絶縁膜の残渣等の成分が付着していてもよい。これらの成分は、ガラス基板を電子デバイスの製造時の支持基材として用いた場合に、ガラス基板の表面に付着し得る成分であり、ガラス基板と電子デバイスとの分離後においても、ガラス基板の表面に残留することがある。
【0014】
被処理物の製造に使用する樹脂層付きガラス基板としては、電子デバイスの製造時に使用する樹脂層付きガラス基板であることが好ましく、公知の樹脂層付きガラス基板を用いることができる。例えば、樹脂層付きガラス基板は、国際公開第2014/073591号に記載されているように、樹脂層上に他の部材(例えば、後述の電子デバイス用部材)を有していてもよい。
【0015】
上記のように、被処理物の製造に使用する樹脂層付きガラス基板は、樹脂層上に電子デバイス用部材等の他の部材を更に有している態様でもよく、このような態様の場合、ガラス基板と樹脂層との間で分離して、ガラス基板を含む第1剥離片と、樹脂層及び電子デバイス用部材とを含む第2剥離片とに分離して、第1剥離片に含まれるガラス基板を後述する被処理物として用いることができる。
なお、樹脂層付きガラス基板においては、ガラス基板と樹脂層との間に犠牲層が配置されていてもよい。犠牲層は、ガラス基板と樹脂層との間での分離を進行しやすくするための層である。例えば、ガラス基板と樹脂層との間に犠牲層が配置される場合には、犠牲層部分でガラス基板と樹脂層とを分離できる。このような場合、分離されたガラス基板上に犠牲層の一部が残存しやすい。
【0016】
ここで、電子デバイス用部材は、電子デバイスの少なくとも一部を構成する部材である。より具体的には、電子デバイス用部材としては、表示装置用パネル、太陽電池、薄膜2次電池、または、表面に回路が形成された半導体ウエハ等の電子部品、受信センサーパネル等に用いられる部材(例えば、LTPSなどの表示装置用部材、太陽電池用部材、薄膜2次電池用部材、電子部品用回路、受信センサー用部材)が挙げられる。
【0017】
例えば、太陽電池用部材としては、シリコン型では、正極の酸化スズ等透明電極、p層/i層/n層で表されるシリコン層、および負極の金属等が挙げられ、その他に、化合物型、色素増感型、量子ドット型等に対応する各種部材等を挙げることができる。
薄膜2次電池用部材としては、リチウムイオン型では、正極および負極の金属または金属酸化物等の透明電極、電解質層のリチウム化合物、集電層の金属、封止層としての樹脂等が挙げられ、その他に、ニッケル水素型、ポリマー型、セラミックス電解質型等に対応する各種部材等を挙げることができる。
電子部品用回路としては、CCDやCMOSでは、導電部の金属、絶縁部の酸化ケイ素や窒化珪素等が挙げられ、その他に圧力センサー・加速度センサー等各種センサーやリジッドプリント基板、フレキシブルプリント基板、リジッドフレキシブルプリント基板等に対応する各種部材等を挙げることができる。
【0018】
樹脂層付きガラス基板からガラス基板を分離する方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できる。
【0019】
<ガラス基板>
被処理物に含まれるガラス基板は、上述したように樹脂層付きガラス基板に含まれるガラス基板である。
ガラス基板を構成するガラスの種類は特に制限されないが、無アルカリホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスが好ましい。酸化物系ガラスとしては、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40~90質量%のガラスが好ましい。
【0020】
ガラス基板の厚さは、取り扱いが容易である点から、0.3mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、0.45mm以上が更に好ましい。
ガラス基板の厚さは、薄型化及び軽量化の少なくとも一方の点から、0.7mm以下が好ましく、0.6mm以下がより好ましく、0.55mm以下が更に好ましい。
【0021】
被処理物中のガラス基板の面積(主面の面積)は、ディスプレイ用ガラス基板として好適に使用できる点から、6,700cm以上が好ましく、14,000cm以上が好ましく、19,500cm以上がより好ましく、27,000cm以上が更に好ましい。
被処理物中のガラス基板の面積(主面の面積)は、取り扱いが容易である点から、99,100cm以下が好ましく、75,000cm以下がより好ましく、60,000cm以下が更に好ましい。
【0022】
被処理物中のガラス基板の形状は、特に限定されないが、ディスプレイ用ガラス基板として好適に使用できる点から、矩形であることが好ましい。
【0023】
<樹脂層>
被処理物は、樹脂層の残渣を含んでいてもよい。樹脂層の残渣は、例えば電子デバイスの製造時に使用する樹脂層の一部であり、樹脂層付きガラス基板からガラス基板を分離した後にガラス基板上に残留する成分である。
樹脂層を構成する樹脂の具体例としては、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂が挙げられ、中でも、ポリイミド樹脂が好ましい。
【0024】
<絶縁層>
被処理物は、絶縁膜の残渣を含んでいてもよい。絶縁膜の残渣は、例えば電子デバイスの製造時に使用する絶縁膜の一部であり、ガラス基板の表面に付着する成分である。
絶縁膜を構成する材料の具体例としては、酸化シリコン、窒化シリコンが挙げられる。
【0025】
<犠牲層>
被処理物は、犠牲層の残渣を含んでいてもよい。犠牲層の残渣は、例えば電子デバイスの製造時に使用する犠牲層の一部であり、ガラス基板の表面に付着する成分である。
犠牲層を構成する材料の具体例としては、アモルファスシリコンが挙げられる。
【0026】
[工程]
次に、本製造方法の一例について、フローチャートを用いて実施形態毎に説明する。
【0027】
<第1実施形態>
図2は、本発明の第1実施形態に係るディスプレイ用ガラス基板の製造方法のフローを示すフローチャートである。
【0028】
ステップS11(選別工程)では、上記被処理物がディスプレイ用ガラス基板の製造に適しているかどうかを判断する。被処理物がディスプレイ用ガラス基板の製造に適していると判断された場合には、ステップS12(洗浄工程)に移行する。一方、被処理物がディスプレイ用ガラス基板の製造に適していないと判断された場合には、ステップS14(廃棄工程)に移行し、被処理物を廃棄して、本フローを終了する。
【0029】
選別方法の一例としては、被処理物に対して荷重付加試験を施して、荷重付加試験によって割れの生じていないガラス基板を含む被処理物を選択する方法が挙げられ、選択された被処理物を後述のステップS12で用いる。
荷重付加試験による選別を行うことによって、ディスプレイ用ガラス基板としての強度が十分にあるガラス基板を含む被処理物のみを後述のステップに供することができるので、製造効率がより向上する。
【0030】
荷重付加試験の具体例としては、特許第5891965号公報の図25に記載されているような装置を用いて、搬送ロールによって搬送された被処理物の表面に対して、所定の荷重がかかるように押し圧ロールを押し付ける方法が挙げられる。
【0031】
選別方法の他の例としては、被処理物に含まれるガラス基板の位置決め基準部、端面形状、又は、端面性状に基づいて所定の判定基準を満たすガラス基板を含む被処理物を選択する方法が挙げられ、選択された被処理物を後述のステップS12で用いる。
例えば、後述する第2実施形態の梱包工程において、ディスプレイ用ガラス基板の製造に適した被処理物とともに、ディスプレイ用ガラス基板の製造に不適切な被処理物が誤って梱包される場合がある。このような場合、位置決め基準部、端面形状、又は、端面性状に基づいて、ディスプレイ用ガラス基板の製造に適した被処理物と、ディスプレイ用ガラス基板の製造に不適切な被処理物と、を選別できる。
【0032】
位置決め基準部の具体例としては、ガラス基板に形成されたオリエンテーションフラット、並びに、ガラス基板の表面に付された文字、記号、図形、及びこれらの2種以上の組み合わせからなるマークが挙げられる。
図1は、ガラス基板に形成されたオリエンテーションフラットの一例を示す概略平面図である。図1に示すように、ガラス基板10が矩形である場合、ガラス基板のコーナー部12に形成された平坦部分(切り欠き部)がオリエンテーションフラット12aである。オリエンテーションフラットは、例えば、矩形のガラス基板におけるコーナー部(隅部)を切断することで形成される。
【0033】
位置決め基準部に基づいて被処理物の選別を行う場合、所定の判断基準としては、位置決め基準部の有無、位置決め基準部が所定の位置にあるかどうか、位置決め基準部が所定の形態であるかどうか等の判断基準が挙げられる。
具体的には、位置決め基準部がオリエンテーションフラットである場合の所定の判断基準としては、オリエンテーションフラットが形成されたガラス基板を含む被処理物を選択する方法、オリエンテーションフラットが所定の位置に形成されたガラス基板を含む被処理物を選択する方法、所定の大きさ、形状のオリエンテーションフラットが形成されたガラス基板を含む被処理物を選択する方法等が挙げられる。例えば、矩形のガラス基板の4箇所のコーナー部のうち、1~3箇所に特定のオリエンテーションフラットを設けることで、オリエンテーションフラットの有無、位置、大きさ、又は、形状に基づいて、被処理物の表裏や被処理物の上下を判別でき、判別結果から所望の被処理物を選択できる。
また、位置決め基準部がマークである場合の所定の判断基準としては、マークが付されたガラス基板を含む被処理物を選択する方法、マークが所定の位置に付されたガラス基板を含む被処理物を選択する方法、所定の種類のマークが付されたガラス基板を含む被処理物を選択する方法等が挙げられる。
ガラス基板の位置決め基準部に基づく被処理物の選別は、例えば、撮影装置によって位置決め基準部を撮影して2値化処理を施して得られる画像と、リファレンス画像と、の対比により実施できる。
【0034】
ガラス基板の端面形状に基づいて被処理物の選択を行う場合、端面形状が所定の形状であるガラス基板を含む被処理物を選択する方法が挙げられる。
所定の形状としては、特に限定されないが、例えば、半円形状、角丸形状、テーパー形状等が挙げられる。
ガラス基板の端面形状に基づく被処理物の選別は、例えば、公知のガラス基板検査装置(例えば、クボテック社製の「Optics Glass AOI」)を用いて実施できる。
【0035】
ガラス基板の端面性状の具体例としては、ガラス基板の端面の光学特性が挙げられる。
ガラス基板の端面の光学特性に基づいて被処理物の選択を行う場合、例えば、ガラス基板の端面に光照射したときの反射光量が所定範囲内であるガラス基板を含む被処理物を選択する方法が挙げられる。
ガラス基板の端面性状(端面の光学特性)に基づく被処理物の選別は、例えば、公知のガラス基板検査装置を用いて実施できる。
【0036】
次に、ステップS12(洗浄工程)では、上記ステップS11によって選別された被処理物を洗浄する。これにより、被処理物の表面に付着した異物や、上述の残渣の一部を除去できる。
ステップS12は、後述のステップS13と組み合わせて実施されることで、上述の残渣の除去性がより向上するので、本製造方法によって得られるガラス基板がディスプレイ用ガラス基板としてより適したものとなる。
【0037】
洗浄方法は公知の洗浄方法を採用でき、例えば、薬液(例えば、酸性溶液、アルカリ性溶液)による化学反応によって被処理物の表面を洗浄する薬液洗浄等が挙げられる。これらの洗浄方法は、組み合わせて行ってもよい。
【0038】
次に、ステップS13(研磨工程)では、上記ステップS12によって洗浄された被処理物の両面を研磨する。これにより、被処理物の表面に付着していた樹脂層等の残渣や傷が除去されて、ディスプレイ用ガラス基板として使用されるガラス基板が得られる。
【0039】
研磨方法としては、公知の方法が採用できるが、研磨剤が供給された被処理物の表面を研磨パッド(研磨具)で擦る方法が好ましい。
研磨剤としては、遊離砥粒を液体(水、有機溶媒等)に分散させたスラリーが挙げられる。
【0040】
遊離砥粒の具体例としては、酸化セリウム、炭酸カルシウム、硬質プラスチック、尿素樹脂粒子(商品名:ポリプラス)、桃の種粉末、酸化ジルコニウム等が挙げられる。中でも、研磨性や入手のしやすさ等の点で、酸化セリウムが好ましい。遊離砥粒は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
遊離砥粒の数平均粒径は、1~10μmが好ましい。
スラリー中の遊離砥粒の濃度は、遊離砥粒の種類、残渣の材料、研磨パッドの種類や操業条件(押込み量や回転数など)等に応じて適宜設定できるが、研磨効果がより優れる点から、遊離砥粒の濃度は、スラリーの全質量に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
遊離砥粒の濃度は、スラリーの全質量に対して、30質量%以下が好ましい。
【0041】
研磨方法で研磨パッドを用いる場合、例えば、発泡ポリウレタン製のGR35(ユニバーサル・フォトニクス社製)などが知られている。
【0042】
以上に述べたように、ステップS11~ステップS14を実施することによって、第1実施形態におけるディスプレイ用ガラス基板の製造方法が終了する。
第1実施形態では、ステップS11及びステップS12の両方を実施する態様を示したが、少なくもステップS13のみが実施されていれば、ディスプレイ用ガラス基板が得られる。しかしながら、ディスプレイ用ガラス基板により適したガラス基板が得られる点や、製造効率等の点から、ステップS11及びステップS12の少なくとも一方を実施することが好ましく、ステップS11及びステップS12の両方を実施することがより好ましい。
【0043】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態に係るディスプレイ用ガラス基板の製造方法のフローを示すフローチャートである。
第2実施形態は、第1実施形態におけるステップS11の前に、ステップS1(梱包工程)、ステップS2(輸送工程)、及び、ステップS3(開梱工程)をこの順に有する以外は、第1実施形態と同様である。第2実施形態におけるステップのうち、第1実施形態で説明したステップと同様のステップについては、同様の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
ステップS1では、被処理物を梱包する。
被処理物を梱包する方法は公知の方法を採用でき、その一例としてはパレット等の載置台の上に複数の被処理物を重ねて積載する方法が挙げられる。
【0045】
被処理物は、上述した通り、樹脂層が配置されていた側の第1表面と、上記第1表面とは反対側の第2表面と、を有する。複数の被処理物を積層する場合、一の被処理物の第1表面と、これに隣接する他の被処理物の第2表面と、が対向するように積層することが好ましい。これにより、被処理物を後述のステップに供する際に、被処理物の表面の向きが同じになるように揃える必要が無くなるので、ディスプレイ用ガラス基板の製造効率がより向上する。
ここで、位置決め基準部(上述)が所定位置に設けられたガラス基板を含む被処理物を用いた場合、各被処理物における位置決め基準部が重なるように積層すると、一の被処理物の第1表面と、これに隣接する他の被処理物の第2表面と、が対向するように積層することが容易になる。
【0046】
複数の被処理物を積層する場合、被処理物と被処理物との間に合紙等のシート部材を配置してもよい。これにより、被処理物同士がくっつくことを抑制できるので、被処理物を後述のステップに供した際に取り扱いが容易になり、ディスプレイ用ガラス基板の製造効率がより向上する。
【0047】
合紙は、パルプから構成されている。パルプの具体例としては、クラフトパルプ(KP)、亜硫酸パルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ;砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ;その中間的な機械的・化学的パルプとしてのケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)等の半化学パルプ;ケナフ、ミツマタ、コウゾ、ガンピ、麻等を原料とする非木材繊維パルプ;合成パルプ、古紙パルプ(DIP)等が挙げられる。
パルプは晒でも未晒であってもよく、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)が利用できる。
パルプは、古紙パルプであってもよく、バージンパルプであってもよく、これらの混合物であってもよい。
合紙は、パルプとともに、従来公知の紙に含まれる成分を含んでいてもよい。
合紙の製造方法は特に限定されず、従来公知の紙の製造方法によって製造される。
合紙は市販品を用いてもよく、具体例としては、フワットライトシリーズ(北越東洋ファイバー社製)、ZK-ER(ダンボールワン社製、クラフト紙)、低密度紙(クッション紙)(大王製紙社製)、OK未晒クラフトシリーズ(王子マテリア社製、クラフト紙)、スタクリンシリーズ(桜井社製)、アカシヤシリーズ(王子マテリア社製)、エリプラペーパー(大王製紙社製)が挙げられる。
【0048】
次に、ステップS2では、被処理物を輸送する。輸送方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。
【0049】
次に、ステップS3では、被処理物を開梱する。開梱方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。例えば、複数の被処理物が積層されている場合には、各被処理物を上から順番に開梱して、後述のステップS11に供することができる。
【0050】
ステップS1~S3を実施した後、ステップS11~ステップS14をこの順に実施することによって、第2実施形態におけるディスプレイ用ガラス基板の製造方法が終了する。
第2実施形態では、ステップS11及びステップS12の両方を実施する態様を示したが、これに限定されず、ステップS11及びステップS12の少なくとも一方が実施されてなくてもよい。しかしながら、ディスプレイ用ガラス基板により適したガラス基板が得られる点や、製造効率等の点から、ステップS11及びステップS12の少なくとも一方のステップを実施することが好ましく、ステップS11及びステップS12の両方を実施することがより好ましい。
【符号の説明】
【0051】
10 ガラス基板
12 コーナー部
12a オリエンテーションフラット
図1
図2
図3