IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日清フーズ株式会社の特許一覧 ▶ ロイヤル株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166903
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】食品包装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20241122BHJP
【FI】
A23L7/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083324
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(71)【出願人】
【識別番号】523066484
【氏名又は名称】ロイヤル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小柴 春樹
(72)【発明者】
【氏名】尾家 麻里子
(72)【発明者】
【氏名】堤 英晃
【テーマコード(参考)】
4B023
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LC07
4B023LC08
4B023LE20
4B023LK05
4B023LL01
4B023LP07
4B023LP12
4B023LP15
4B023LP19
4B023LP20
(57)【要約】
【課題】米粒含有流動状食品の長期保存が可能で、且つ長期間保存後に喫食する場合でも、米粒が十分な粒感を有していて食べごたえがあり、しかも簡便に喫食可能になる食品包装体を提供すること。
【解決手段】本発明は、包装容器の内部に米粒含有流動状食品が封入された食品包装体の製造方法であり、生米を炒め調理して炒め米を得る工程と、前記炒め米と調味液とを包装容器に封入して食品包装体中間体を得る工程と、前記食品包装体中間体を、前記包装容器の内容物の品温が75~100℃となる条件で加熱して前記食品包装体を得る加熱工程とを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装容器の内部に米粒含有流動状食品が封入された食品包装体の製造方法であって、
生米を炒め調理して炒め米を得る工程と、
前記炒め米と調味液とを包装容器に封入して食品包装体中間体を得る工程と、
前記食品包装体中間体を、前記包装容器の内容物の品温が75~100℃となる条件で加熱して前記食品包装体を得る加熱工程とを有する、食品包装体の製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程の後に、前記食品包装体を冷蔵又は冷凍する工程を有する、請求項1に記載の食品包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器の内部に米粒含有流動状食品が封入された食品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
粥、おじや、雑炊、リゾット等の米粒含有流動状食品は、生米の炊飯物(炊飯米粒)を含み、流動性を有する食品であり、飲み込みやすい流動状でありながら、米粒の粒感を楽しめる食品である。米粒含有流動状食品は、それに含有されている米粒が、十分に調理されていて軟らかく且つ1粒1粒がしっかりとした食感を有していることで、喫食した際に満足感が得られるものとなる。
【0003】
このような米粒含有流動状食品は通常、生米又は炊飯米粒を水等の液体成分と混合し、その混合物を加熱調理することで製造されるが、製造に手間がかかるため多忙な場合には敬遠される傾向がある。そこで、予め米粒含有流動状食品を多量に製造し、これを1食ごとに個別に保存しておき、好きな時に喫食できるようにしておくことができれば便利である。しかしながら、米粒を液体成分と一緒に保存すると、米粒が吸水して軟らかくなりすぎてしまい、喫食時に粒感が感じられなくなる、喫食前に米粒が崩壊してしまう等の不都合が生じやすい傾向がある。特に、米粒含有流動状食品を数℃の冷蔵温度又は0℃以下の冷凍温度で保存しておき、喫食するために再加熱を行う場合はこの傾向が顕著である。米粒の吸水を抑制する方法として、併用する液体成分に増粘剤、澱粉を加えて粘性を高める方法が知られているが、液体成分の粘性を高めると流動性が低下し、飲み込みやすさが損なわれる傾向がある。
【0004】
特許文献1及び2には、冷凍リゾットの製造方法が記載されている。特許文献1に記載の製造方法は、生米を食用油脂で炒める工程と、炒めた米にブイヨンを加えて加熱して半調理する工程と、半調理した米をゼラチン及び加工澱粉を含むゲル状ブイヨン中で冷凍する工程とを有し、製造された冷凍リゾットは、解凍後に加熱しても食感が良好であるとされている。特許文献2に記載の製造方法は、精白米を水に浸漬して浸漬米を得る工程と、該浸漬米、油脂を含む炒め香味野菜、調味液、澱粉分解酵素、乳化剤及び水を添加混合して炊飯する工程とを有し、製造された冷凍リゾットは、煮込み感、炒め感があり、粘りが抑制されてほぐれの良いパラっとした食感を有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-11791号公報
【特許文献2】特開2018-7594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、米粒含有流動状食品の長期保存が可能で、且つ長期間保存後に喫食する場合でも、米粒が十分な粒感を有していて食べごたえがあり、しかも簡便に喫食可能になる食品包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、米粒含有流動状食品の製造において、生米を炒め調理した炒め米と調味液とを包装容器に封入した状態で加熱することにより、米粒含有流動状食品の保存中に米粒が過度に吸水する不都合が防止され、長期間の保存、保存後の再加熱を行っても、米粒の粒感を維持することができることを知見した。
【0008】
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、包装容器の内部に米粒含有流動状食品が封入された食品包装体の製造方法であって、生米を炒め調理して炒め米を得る工程と、前記炒め米と調味液とを包装容器に封入して食品包装体中間体を得る工程と、前記食品包装体中間体を、前記包装容器の内容物の品温が75~100℃となる条件で加熱して前記食品包装体を得る加熱工程とを有する、食品包装体の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、米粒含有流動状食品の長期保存が可能で、且つ長期間保存後に喫食する場合でも、米粒が十分な粒感を有していて食べごたえがあり、しかも簡便に喫食可能になる食品包装体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の製造目的物である食品包装体は、包装容器の内部に米粒含有流動状食品(以下、「流動状食品」とも言う。)が封入されたもので、流動状食品と包装容器とを含む。
流動状食品は、生米を炊飯して得られる炊飯米粒を含有するもので、典型的には、炊飯米粒を含む固形部と、液状部とを含有する。
【0011】
本明細書において「固形部」とは、流動状食品における液状部以外の部分を指す。より具体的には、流動状食品をその品温20℃にて目開き2.0mmの篩に通し、5分間静置した後も篩上に残る画分を「固形部」、該篩を通過した画分を「液状部」と定義する。したがって、炊飯米粒を原材料とする成分であっても、この定義で固形部にならないもの、例えば米粉は、本発明でいう炊飯米粒ではなく、液状部の成分として扱う。固形部は、少なくとも炊飯米粒を含有し、更に後述するように、米粒以外の固形部用食材(米粒以外の他の穀物粒、具材)を含有する場合がある。
【0012】
流動状食品に含まれる炊飯米粒の原料となる生米は、籾から外皮を除去した玄米でもよく、玄米を精白した白米でもよく、白米を精白した無洗米でもよいが、風味及び食感の向上の観点から、無洗米が好ましい。また、生米の供給源であるイネの品種は特に制限されず、例えば、ジャポニカ種、インディカ種及びジャバニカ種から選択される1種以上の生米を用いることができる。
【0013】
流動状食品における炊飯米粒の含有量は、湿重量基準で、該流動状食品の液状部100質量部に対して、好ましくは50~600質量部、より好ましくは100~500質量部、更に好ましくは200~400質量部である。炊飯米粒の含有量が少ない場合、流動状食品において粒感が充分に得られないおそれがある。一方で、炊飯米粒の含有量が多すぎると、米粒同士が接着して団子状になるおそれがある。なお、ここで言う炊飯米粒の「湿重量」とは、前記の手順で篩を使って流動状食品を固形部と液状部とに分画することにより得た(該固形部に具材が含まれている場合は、さらに該固形部から具材を取り除くことにより得た)含水状態の炊飯米粒の質量を指す。
【0014】
流動状食品は、本発明の所定の効果を阻害しない範囲で、固形部として、米粒以外の他の穀物粒を含有してもよい。流動状食品に米粒を含む複数種類の穀物粒を含有させることで、流動状食品の健康への寄与度が向上し得る。米粒以外の他の穀物粒としては、例えば、イネ以外の禾穀類として、大麦、アワ、ヒエが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
流動状食品に米粒と米粒以外の他の穀物粒とを含有させる場合、該流動状食品に含有される全ての穀物粒の含有量は、湿重量基準で、該流動状食品の液状部100質量部に対して、好ましくは50~600質量部、より好ましくは100~500質量部、更に好ましくは200~400質量部である。また、その場合、流動状食品中の全ての穀物粒の含有質量に占める、米粒以外の他の穀物粒の含有質量の割合は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、とりわけ好ましくは5質量%以下である。流動状食品の風味及び食感を最優先するのであれば、流動状食品には米粒以外の他の穀物粒は含有させないことが好ましい。
【0016】
流動状食品は、本発明の所定の効果を阻害しない範囲で、固形部として、具材を含有してもよい。具材の例としては、穀物粒以外の食材であることを前提として、この種の流動状食品に使用可能な食材を特に制限無く用いることができ、例えば、肉類、魚介類、野菜類、イモ類、キノコ類、豆類、木の実類、果実類、卵が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。具材の種類、大きさ及び形状は、流動状食品の種類に応じて適宜選択することができる。
【0017】
流動状食品における具材の含有量は、流動状食品の種類に応じて適宜選択すればよく特に制限されないが、具材が多すぎると炊飯米粒の粒感が感じられにくくなるおそれがあるため、湿重量基準で、流動状食品の液状部100質量部に対して、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下である。一方、具材の風味及び食感を十分得られるようにする観点からは、流動状食品における具材の含有量は、湿重量基準で、該流動状食品の液状部100質量部に対して、好ましくは10質量部以上である。なお、ここで言う具材の「湿重量」とは、前記の手順で篩を使って流動状食品を固形部と液状部とに分画した後、該固形部から取り出した、含水状態の具材の重量を指す。
【0018】
流動状食品の液状部としては、この種の炊飯米粒を含有する流動状食品に使用可能な常温常圧で液状の食品を特に制限無く用いることができる。液状部として使用可能な食品の具体例として、出汁、トマトソース、ホワイトソース、カレーソース、ブラウンソースが挙げられる。
【0019】
流動状食品の液状部は、この種の炊飯米粒を含有する流動状食品に通常使用される原材料を含有し得る。そのような原材料として、例えば、水、出汁、フォン、卵、油脂、食材(肉、野菜、豆類、果実等)のペースト又はピューレ状物、穀粉、澱粉、調味料(塩、糖類、醤油、酢、ブイヨン、コンソメ等)、食品添加物(酸味料、乳化剤、増粘剤、安定剤、着色料等)が挙げられ、流動状食品の種類に応じて、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて、適宜の量で用いることができる。
【0020】
流動状食品は、炊飯米粒を含有し、喫食時に(常温常圧で)流動性を有する食品であればよく、その種類としては、例えば、スープ、ソース、粥類等が挙げられるが、これらに限定されない。
流動状食品がスープである場合、その例としては、みそ汁、だし汁、つゆ、チャウダー、ミネストローネ、フォンデュ、サンラータン、ファッチョーチュン、トムヤムクン等が挙げられる。
流動状食品がソースである場合、その例としては、ホワイトソース、クリームソース、カルボナーラソース、オイルソース、トマトソース、バターソース、醤油ソース等が挙げられる。
流動状食品が粥類である場合、その例としては、粥、おじや、雑炊、リゾット等が挙げられる。
前記の流動性を有する食品の中では、炊飯米粒を比較的多く含有可能で且つ炊飯米粒の粒感を感じやすい点で、リゾットが好ましい。リゾットはイタリア料理の1つで、典型的には、油で炒めた白米をブイヨンスープで煮込み、仕上げに調味料で味付けされるものである。
【0021】
本発明の製造目的物である食品包装体を構成する包装容器としては、前述した流動状食品を封入可能なものであればよく、その形態及び素材は特に制限されず、封入する流動状食品の種類、量等に応じて適宜選択し得る。本発明で使用可能な包装容器の形態としては、例えば、袋状、トレー状、パック状、カップ状、缶詰、瓶詰が挙げられる。本発明で使用可能な包装容器の素材としては、例えば、樹脂、金属、紙、ガラスが挙げられ、2種類状の素材を組み合わせた複合素材でもよい。包装容器の具体例として、ポリプロピレン等の耐熱性プラスチック製容器、アルミニウム製の缶、耐熱性プラスチック製又はアルミニウム製のパウチ容器を例示できる。
【0022】
本発明の食品包装体は、包装容器の内部に米粒含有流動状食品が封入されたものであるので、その封入状態が維持されていれば長期間、具体的には例えば数週間~数か月間保存が可能である。本発明の食品包装体は、常温でも長期間の保存が可能であるが、冷蔵又は冷凍保存されることで一層長期間の保存が可能となり得る。また、本発明の食品包装体を冷蔵又は冷凍保存後に喫食可能状態とするために再加熱しても、米粒が吸水して柔らかくなりすぎる、米粒が崩壊する等の不都合が生じにくく、米粒の粒感を伴う流動感のある良好な口当たりを味わうことができる。食品包装体を再加熱する方法は特に制限されず、例えば、食品包装体の包装容器を開封して内容物を皿等の食器に移して電子レンジを用いて加熱する方法、食品包装体をそのまま湯煎等で加熱する方法が挙げられる。
【0023】
次に、本発明の食品包装体の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、生米を炒め調理して炒め米を得る工程(炒め調理工程)と、該炒め米と調味液とを包装容器に封入して食品包装体中間体を得る工程(包装工程)と、該食品包装体中間体を特定条件で加熱して食品包装体を得る加熱工程とを有する。
【0024】
前記炒め調理工程では、典型的には、生米を油脂とともに加熱することで生米を炒め調理する。生米については前述したとおりである。油脂としては、食用に用いられるものであればよく、大豆油、米油、オリーブ油等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記炒め調理工程における油脂の使用量は特に制限されないが、本発明の所定の効果を一層確実に奏させるようにする観点から、生米100質量部に対して、好ましくは2~10質量部、より好ましくは3~8質量部である。
【0025】
前記炒め調理工程は常法により行うことができる。例えば、鍋等の調理器具に油脂を入れて加熱し、該油脂の温度が100~170℃に達した時点で生米を加えて、焦げないように撹拌しながら2~10分間加熱することにより、前記炒め調理工程を実施できる。あるいは、生米と油脂との混合物を調製し、該混合物を鍋等の調理器具に入れて、該混合物の温度100~170℃が2~10分間維持される条件で加熱することにより、前記炒め調理工程を実施できる。
【0026】
流動状食品の固形部として、炊飯米粒以外に、前述した米粒以外の他の穀物粒及び/又は具材を用いる場合、前記炒め調理工程で、生米及び油脂とともにそれを炒め調理してもよい。その場合、前記炒め調理工程における油脂の使用量は、炒め調理に供する全ての固形部用食材(生米を含む穀物粒、具材)100質量部に対して、好ましくは2~10質量部、より好ましくは3~8質量部である。またその場合、前記炒め調理工程は、固形部として生米のみを使用する場合に準じて行うことができる。すなわち、鍋等の調理器具に油脂を入れて加熱し、該油脂の温度が100~170℃に達した時点で、生米を含む固形部用食材を加えて、焦げないように撹拌しながら2~10分間加熱することにより行うことができる。あるいは、生米を含む固形部用食材と油脂との混合物を調製し、該混合物を鍋等の調理器具に入れて、該混合物の温度100~170℃が2~10分間維持される条件で加熱する方法により行うことができる。
【0027】
前記包装工程で用いる調味液は、流動状食品の液状部となるものであるが、調味液の一部は、流動状食品の固形部(炊飯米粒、米粒以外の他の穀物粒、具材等)に吸収されて固形部となり得る。調味液としては、この種の流動状食品の液状部として使用可能なものを特に制限無く用いることができ、例えば、前述した液状部として使用可能な食品(出汁等)を用いることができる。また、調味液の原材料についても、製造する流動状食品の種類に応じて前述した液状の原材料の中から適宜選択して用いることができる。
【0028】
前記包装工程は常法により行うことができる。典型的には、包装容器の内部に、炒め米を含む固形部用食材と調味液とを充填し、該包装容器を密封することにより、固形部用食材と調味液とを包装容器に封入し、食品包装体中間体を得る。包装容器については前述したとおりである。
前記炒め調理工程で米粒以外の固形部用食材を炒め調理した場合は、前記包装工程でその調理物を炒め米及び調味液とともに包装容器に封入する。例えば、米粒以外の他の穀物粒を炒め調理した場合は「米粒以外の他の炒め穀物粒」を、具材を炒め調理した場合は「炒め具材」を、前記炒め調理工程で炒め米及び調味液とともに包装容器に封入する。
本発明の所定の効果を阻害しないことを前提として、米粒以外の他の穀物粒及び/又は具材の種類によっては、これらを炒め調理せずに、前記包装工程で炒め米及び調味液とともに包装容器に封入することも可能である。
【0029】
前記包装工程において、炒め米及び調味液その他の原材料(米粒以外の他の穀物粒、具材、それらの炒め調理物等)を包装容器の内部に充填する順番は特に限定されず、複数種類の原材料を包装容器の内部に同時に充填してもよく、所望の順番で順次充填してもよい。あるいは、複数種類の原材料の一部又は全部を予め混合しておき、その混合物を包装容器の内部に充填してもよく、例えば、原材料として炒め米及び調味液を用いる場合は、それらの混合物を包装容器の内部に充填してもよい。
【0030】
米粒(炒め米)等の固形部用食材の包装容器への充填量は、製造結果物である流動状食品における当該食材の含有量が、該流動状食品の液状部の含有量との関係で前記範囲となるように調整することが好ましい。
具体的には、米粒(炒め米)の包装容器への充填量は、包装容器に充填する調味液100質量部に対して、好ましくは50~600質量部、より好ましくは100~500質量部、更に好ましくは200~400質量部である。なお、米粒(炒め米)に加えて米粒以外の他の穀物粒(米粒以外の他の炒め穀物粒)を併用する場合は、使用する全ての穀物粒の包装容器への総充填量が、包装容器に充填する調味液100質量部に対して、前記範囲にあることが好ましい。
また、具材(炒め具材)を使用する場合、それの包装容器への充填量は、該包装容器に充填する調味液100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、そして、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下である。
【0031】
前記加熱工程では、前記包装工程で得られた食品包装体中間体を、該食品包装体中間体を構成する包装容器の内容物の品温が75~100℃、好ましくは80~98℃となる条件で加熱する。これにより、包装容器の内容物に含まれる炒め米が炊飯米粒となり、製造目的物である食品包装体が得られる。前記加熱工程における内容物の品温(加熱温度)が75℃未満では、炒め米の炊飯が不十分となって硬い食感になるおそれがあり、加熱温度が100℃を超えると、米粒が崩れてしまい、粒感に乏しい食感になるおそれがある。
ここで言う「包装容器の内容物の品温」とは、包装容器の内容物の中心温度を指す。包装容器の内容物の中心温度は、市販の温度センサ付き接触式温度計等によって測定することができる。
前記加熱工程において包装容器の内容物の品温75~100℃を維持する時間(加熱時間)は、本発明の所定の効果を一層確実に奏させるようにする観点から、好ましくは7~30分間、より好ましくは9~25分間である。加熱時間が短すぎると、炒め米の炊飯が不十分となって硬い食感になるおそれがあり、加熱時間が長すぎると、米粒が崩れてしまい、粒感に乏しい食感になるおそれがある。
前記加熱工程において食品包装体中間体の加熱方法は特に制限されず、包装容器に封入された食品の加熱に使用可能な公知の方法を適宜利用することができ、例えば、湯浴、蒸気加熱が挙げられる。
【0032】
本発明の食品包装体の製造方法は、前記工程(炒め調理工程、包装工程、加熱工程)に加えて更に、前記加熱工程の後に、食品包装体を冷蔵又は冷凍する工程を有していてもよい。食品包装体を冷蔵又は冷凍する方法は特に制限されず、公知の方法を適宜利用できる。
【実施例0033】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1~7〕
・工程1:生米を前処理する。具体的には、鍋に大豆油10gと無洗米300gを入れて該鍋を火にかけ、該無洗米をへらで撹拌して焦げないよう注意しながら5分間炒め調理し、炒め米を得る(炒め調理工程)。得られた炒め米は、必要に応じ、常温常圧の環境に所定時間静置することにより、所定の品温に調整する。
・工程2:市販の調味液を目開き2mmの篩で濾したものを鍋に入れて、沸騰しないよう注意しながら加熱して、該調味液の品温を所定温度に調整する。耐熱性アルミパウチ容器(包装容器)の内部に、前記工程1で得た品温が所定温度(表1~2の「米粒の包装直前の品温(℃)」の欄参照)の炒め米30gと、品温が所定温度(表1~2の「調味液の包装直前の品温(℃)」の欄参照)に調整された調味液100gとを充填し、該パウチ容器の内部の空気を抜きながら該パウチ容器の開口部をシールして密封し、食品包装体中間体を得る(包装工程)。
・工程3:前記工程2で得た食品包装体中間体を湯煎することにより加熱する。具体的には、食品包装体中間体の全体を、湯温が所定温度(表1~2の「加熱温度(℃)」の欄参照)に調整された湯中に沈め、その状態で所定時間(表1~2の「加熱時間(分)」の欄参照)放置することにより食品包装体中間体の湯煎を行い、食品包装体を得る(加熱工程)。なお、加熱温度が100℃を超える場合は、熱媒体として、湯に代えて油を使用する。
【0035】
前記市販の調味液は、具体的には以下のとおりである。
・ホワイトソース:ハインツ日本株式会社製の商品名「ホワイトソース」
・トマトソース:カゴメ株式会社製の商品名「基本のトマトソース」
・鶏出汁:味の素株式会社製の商品名「丸鶏がらスープ」を規定どおりに水に溶かしたもの
【0036】
〔比較例1〕
実施例2において、包装容器の開口部を密封せずに開放した状態で工程3(加熱工程)を行った以外は、実施例2と同様にして、食品包装体を製造した。
【0037】
〔比較例2〕
実施例2において、工程1(炒め調理工程)を行わず、工程2(包装工程)では、炒め米30gに代えて、無洗米300gに大豆油10gを加えてよく混合したもの30gを用いた以外は、実施例2と同様にして、食品包装体を製造した。
【0038】
〔比較例3〕
実施例2において、工程1(炒め調理工程)を行わず、工程2(包装工程)では、炒め米30gに代えて、無洗米の炊飯物30gを用いた以外は、実施例2と同様にして、食品包装体を製造した。
【0039】
〔比較例4〕
実施例2において、工程1(炒め調理工程)を行わず、工程2(包装工程)では、炒め米30gに代えて、前処理無しの無洗米30gを用いた以外は、実施例2と同様にして、食品包装体を製造した。
【0040】
〔評価試験〕
評価対象の食品包装体1種類につき、室温保存したものと冷凍保存したものとの2種類を用意し、それら2種類の食品包装体を沸騰した湯に入れて、室温保存したものは6分間、冷凍保存したものは10分間加熱した。こうして湯煎により加熱調理した食品包装体から流動状食品を取り出して10名の訓練された専門パネラーに喫食してもらい、その際の食感を下記評価基準で評価してもらった。結果(10名の採点結果の算術平均値)を下記表1~2に示す。
前記の食品包装体の室温保存は、製造(湯煎)直後の食品包装体を、包装容器を開封せずに、雰囲気温度25℃の環境に12時間静置することで行った。
前記の食品包装体の冷凍保存は、製造(湯煎)直後の食品包装体を、包装容器を開封せずに、庫内温度-20℃の冷凍庫に5日間保存することで行った。冷凍保存した食品包装体を喫食する際には、該食品包装体を沸騰した湯に入れて10分間加熱(湯煎)することで、該食品包装体の流動状食品を喫食可能状態としてから喫食した。
【0041】
<食感の評価基準>
・5点:米粒の粒感が十分に感じられ、非常に良好。
・4点:米粒の粒感が感じられ、良好。
・3点:米粒の粒感がやや物足りないが、許容範囲。
・2点:米粒の粒感があまり感じられないか、又は米粒が硬く、不良。
・1点:米粒の粒感が全く感じられないか、又は米粒が硬すぎであり、非常に不良。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すとおり、各実施例は、炊飯を行う加熱工程(工程3)の前処理として、生米の炒め調理(工程1)を行い、且つ該加熱工程では包装容器を密封していたため、これを満たさない比較例に比べて、流動状食品の食感に優れていた。
【0044】
【表2】
【0045】
表2に示すとおり、各実施例は、加熱工程における食品包装体中間体の加熱温度が75~100℃の範囲であるため、これを満たさない比較例に比べて、流動状食品の食感に優れていた。