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特開2024-166938異種接合体の製造方法及びその分離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166938
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】異種接合体の製造方法及びその分離方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/12 20060101AFI20241122BHJP
   B29C 65/70 20060101ALI20241122BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20241122BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241122BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B05D3/12 C
B29C65/70
B05D7/14 P
B05D7/24 301L
B05D5/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083376
(22)【出願日】2023-05-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「二重刺激誘起気泡核生成による異種材料界面の分解制御」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】瀧 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩志
(72)【発明者】
【氏名】宮田 剣
(72)【発明者】
【氏名】岡村 晴之
【テーマコード(参考)】
4D075
4F211
【Fターム(参考)】
4D075AC57
4D075AE03
4D075BB05Z
4D075BB13X
4D075BB16X
4D075BB21Z
4D075BB41Z
4D075BB46Z
4D075BB48X
4D075BB56Z
4D075BB60Z
4D075CA07
4D075CA13
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA07
4D075DB01
4D075DB07
4D075EA29
4D075EB14
4D075EC07
4D075EC30
4D075EC41
4F211AA13
4F211AB02
4F211AB04A
4F211AD03
4F211AD17
4F211AD24
4F211AG03
4F211AG20
4F211TA08
4F211TC02
4F211TD02
4F211TH17
4F211TN27
4F211TN83
(57)【要約】
【課題】必要に応じて異種接合体を分離できるように、金属体と樹脂体の分離制御が可能な異種接合体の製造方法及びその分離方法の提供を目的とする。
【解決手段】金属体に粗面を形成する工程と、前記粗面に刺激発泡型高分子を塗布する工程と、前記刺激発泡型高分子を塗布した粗面に対して樹脂体を成形して接合する工程とを備える、異種接合体の製造方法。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属体に粗面を形成する工程と、前記粗面に刺激発泡型高分子を塗布する工程と、前記刺激発泡型高分子を塗布した粗面に対して樹脂体を成形して接合する工程とを備える、異種接合体の製造方法。
【請求項2】
前記刺激発泡型高分子は、光酸発生剤と化学発泡剤で構成される、請求項1に記載の異種接合体の製造方法。
【請求項3】
前記刺激発泡型高分子は、溶媒に光酸発生剤と化学発泡剤を溶解してあり、
前記粗面に刺激発泡型高分子を塗布した後、さらに揮発防止剤を塗布する工程を有して、前記刺激発泡型高分子及び揮発防止剤を塗布した粗面に対して樹脂体を成形して接合する、請求項2に記載の異種接合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の製造方法を用いて製造された異種接合体から、前記金属体と樹脂体とを分離する異種接合体の分離方法であって、
前記異種接合体を光照射するステップと、前記光照射した異種接合体を加熱するステップとを備える、異種接合体の分離方法。
【請求項5】
前記光照射するステップは、前記樹脂体を透過して前記刺激発泡型高分子を発泡させる波長の光を照射する、請求項4に記載の異種接合体の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属体と樹脂体で構成される異種接合体を製造する方法と、その金属体と樹脂体を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、金属表面にレーザー光を照射して凹凸を形成し、凹凸形成部位に直接樹脂等を射出成形する電気電子部品の製造方法が開示されている。
これは、金属表面に凹凸を形成してアンカー効果を高めている。
特許文献2には、金属成形体の接合面に対してレーザー光を連続照射して粗面化し、樹脂成形体との接合強度をより高めた複合成形体の製造方法が開示されている。
【0003】
特許文献1、2に開示するような接合体は、接合界面が強固に安定化され、その分解が容易ではない。
しかし、近年は、資源循環型社会実現への貢献が必要不可欠であり、廃棄時等に異種接合体を金属体と樹脂体とに分離して、各々をリサイクルできることが望まれている。
すなわち、使用時等では接合体が脆弱でない一方で、廃棄時等では安定な接合界面を分解して接合体を解体できることが求められており、本発明者らは、両者を両立可能な技術の開発を試みた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-294024号公報
【特許文献2】特開2015-142960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、必要に応じて異種接合体を分離できるように、金属体と樹脂体の分離制御が可能な異種接合体の製造方法及びその分離方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る異種接合体の製造方法は、金属体に粗面を形成する工程と、前記粗面に刺激発泡型高分子を塗布する工程と、前記刺激発泡型高分子を塗布した粗面に対して樹脂体を成形して接合する工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明は、金属体の粗面に樹脂体が入り込んだ状態となって接合する機械的接合(アンカー効果)の際に、金属体と樹脂体の接合界面に刺激発泡型高分子層を形成しておく。
機械的接合にて金属体と樹脂体の接合界面を安定化するので、刺激発泡型高分子は接着性を有する必要がない。
異種接合体を廃棄等する際に刺激発泡型高分子を発泡させることで、金属体と樹脂体の接合強度を低下させて、両者が易剥離しやすくなる。
【0008】
本発明において、前記刺激発泡型高分子は、光酸発生剤と化学発泡剤で構成されることが好ましい。
複数の刺激(例えば、光及び熱刺激)によって刺激発泡型高分子が発泡することで、使用時等に異種接合体が偶発的に分離するような脆弱となる事態を防止できる。
例えば、光酸発生剤は光照射により酸を発生させ、化学発泡剤は酸触媒下の加熱により気体分子を発生させる。
【0009】
本発明において、前記刺激発泡型高分子は、溶媒に光酸発生剤と化学発泡剤を溶解してあり、前記粗面に刺激発泡型高分子を塗布した後、さらに揮発防止剤を塗布する工程を有して、前記刺激発泡型高分子及び揮発防止剤を塗布した粗面に対して樹脂体を成形して接合するものであってもよい。
このように刺激発泡型高分子を塗布した後、さらに揮発防止剤を塗布することで、粗面に刺激発泡型高分子層を形成しやすく、金属体と樹脂体とを分離する際に、例えば、金属体表面に残留する樹脂体の割合が低くなるように剥離しやすい。
揮発防止剤は、例えば、樹脂体と同一成分の樹脂で構成されることで、リサイクル性に優れる。
【0010】
また、本発明に係る異種接合体の分離方法は、上記製造方法を用いて製造された異種接合体から、前記金属体と樹脂体とを分離する異種接合体の分離方法であって、前記異種接合体を光照射するステップと、前記光照射した異種接合体を加熱するステップとを備えることを特徴とする。
前記光照射するステップは、前記樹脂体を透過して前記刺激発泡型高分子を発泡させる波長の光を照射することが好ましく、これにより、樹脂体側から光を照射することで、容易に樹脂体と金属体の間に位置する刺激発泡型高分子を光照射できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、金属体と樹脂体の分離制御が可能な異種接合体の製造方法であり、製造された異種接合体は使用時等では強度が確保され、廃棄時等の必要な時には複数の刺激を与えて金属体と樹脂体を分離しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】異種接合体の製造方法例を示す。
図2】マイクロフォーカスX線CT観察の結果を示す。
図3】PHStの生成式を示す。
図4】X線CT観察の結果を示す。
図5】強度試験の結果を示す。
図6】強度試験の最大平均荷重を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る異種接合体の製造方法は、金属体に粗面を形成する工程と、粗面に刺激発泡型高分子を塗布する工程と、刺激発泡型高分子を塗布した粗面に対して樹脂体を成形して接合する工程とを備える。
【0014】
金属体は、その金属に特に制限はなく、例えば、アルミニウムまたはその合金、鉄、ステンレス、亜鉛、マグネシウム、銅、鉛、錫およびそれらを含む合金から選択されるものであってもよく、例えば、金属体がダイカスト法で製造されたものであってもよく、例えば、金属体がアルマイト処理、メッキ処理、電着塗装等されたものであってもよい。
【0015】
樹脂体は、その樹脂に特に制限はなく、例えば、非晶性樹脂、結晶性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー等を含むものであってもよい。
例えば、非晶性樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどが挙げられ、結晶性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられ、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂などが挙げられる。
樹脂体は、樹脂のほかに公知の繊維状充填材が配合されてあってもよい。
繊維状充填材としては、例えば、炭素繊維(例えば、ピッチ系、レーヨン系、リグニン系等)、無機繊維(例えば、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、窒化ケイ素繊維等)、金属繊維(例えば、ステンレス、アルミニウム、銅等からなる繊維)、有機繊維(例えば、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維等)が挙げられ、樹脂と繊維状充填材の配合量に特に制限はない。
【0016】
刺激発泡型高分子は、刺激を受けて気体分子を発生させる高分子であり、2つ以上の複数の刺激を受けて発泡することが好ましい。
例えば、光照射により酸を発生させる光酸発生剤と、酸触媒下の加熱により気体分子を発生させる化学発泡剤とで構成されてもよく、光酸発生剤と化学発泡剤の配合量に特に制限はない。
光酸発生剤や化学発泡剤の溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、酢酸エチル等を用いてもよい。
【0017】
光酸発生剤は、例えば、紫外線、赤外線、可視光線等の活性光線を照射することにより酸を発生させる化合物であり、光酸発生剤としては、公知の光酸発生剤を使用することができる。
例えば、イオン性光酸発生剤としては、トリアリールスルホニウム塩類、ジアリールヨードニウム塩類等のオニウム塩化合物、第四級アンモニウム塩類等が挙げられ、非イオン性光酸発生剤としては、トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート化合物等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いてもよい。
光酸発生剤としては、樹脂体を構成する樹脂を透過する波長の活性光線に感応することが好ましく、例えば、樹脂がポリスチレンであれば、ポリスチレンを透過する波長領域は約300nm以上、好ましくは約350nm~800nmであり、本実施例においては、約365nm~440nmがより好ましい。
なお、活性光線に直接感応しない光酸発生剤であっても、フォトンアップコンバージョン材料と併用することによって活性光線に感応して酸を発生する化合物であれば、フォトンアップコンバージョン材料と組み合わせて用いてもよい。
例えば、希土類元素ドープアップコンバージョンナノ粒子(NaYF:Yb,Tm/NaYF、Sigma-Aldrich(登録商標)、メルク製)を用いることで、近赤外光を可視光(例えば、約810nmを480nm等)に変換してもよい。
【0018】
化学発泡剤は、例えば、酸触媒下の加熱により気体分子を発生させる化合物であり、化学発泡剤としては、公知の化学発泡剤を使用することができる。
例えば、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)を含むポリマーであるポリ(p-tert-ブトキシカルボニルオキシスチレン)(PBocSt)は、酸触媒の存在下で加熱すると、低温度(例えば、約100℃)の加熱であっても短時間で二酸化炭素及びイソブテンを発生させることができる。
化学発泡剤としては、例えば、Boc基を含むポリマーのほかに、tert-ブチル基やテトラヒドロピラニル基、炭酸エステル基を含むポリマー等が挙げられ、二酸化炭素、イソブテン等の気体分子を発生させる。
【0019】
金属体に粗面を形成する工程は、樹脂体との接合面となる金属体の表面に、例えば、特許文献1における凹凸の形成、特許文献2における開放孔、内部空間、トンネル接続路、開放空間等を形成できれば、特に粗面化の方法に制限はない。
例えば、レーザー光照射や大気圧プラズマ処理等にて金属体の表面を粗面化してもよい。
粗面に刺激発泡型高分子を塗布する工程は、粗面の全面又は一部に刺激発泡型高分子を塗布できれば、特に塗布の方法に制限はない。
また、刺激発泡型高分子を塗布した後、この塗布面に揮発防止剤をさらに塗布してもよく、これにより、溶媒に溶かした刺激発泡型高分子の揮発を防止しやすい。
揮発防止剤は、例えば、樹脂体がポリスチレンで構成される場合には、揮発防止剤もポリスチレンで構成されることで、リサイクル性に優れる。
揮発防止剤の溶媒は、例えば、THF、トルエン、酢酸エチル等を用いてもよい。
刺激発泡型高分子(及び揮発防止剤)を塗布した粗面に対して樹脂体を成形して接合する工程は、例えば、樹脂体を射出成形や圧縮成形等して接合してもよい。
【0020】
以下、本実施例として、金属体がアルミニウム(以下「Al」と表記)、樹脂体がポリスチレン(PSJ 680、PSジャパン株式会社製、以下「PS」と表記)、光酸発生剤がCPI(登録商標)-410S(サンアプロ株式会社製、以下「PAG」と表記)、化学発生剤がPBocSt(以下「Boc」と表記)を用いた例を挙げて説明する。
なお、CPI(登録商標)-410Sは、トリアリールスルホニウム塩類で、発生酸はPF(C であり、約365nm~440nmの波長領域の活性光線に感応する。
PBocStは、下記式(1)に示すようにポリ(p-ヒドロキシスチレン)(PHSt)、KCo、18-クラウン-6及びCHCOCHを重合時間24時間で合成した。
【0021】
異種接合体の分離は、異種接合体を構成する金属体と樹脂体の分離に必要なエネルギーが小さいことが好ましく、これにより環境負荷エネルギーを軽減できる。
異種接合体の分離方法は、例えば、異種接合体を光照射するステップと、光照射した異種接合体を加熱するステップとを備えてもよい。
光照射するステップは、樹脂体を透過して刺激発泡型高分子を発泡させる波長の光を照射することが好ましい。
例えば、樹脂体がポリスチレンで構成され、刺激発泡型高分子中の光酸発生剤がトリアリールスルホニウム塩類であれば、約365nm~440nmの波長領域の活性光線を照射することが好ましく、約400nm~410nmがより好ましい。
以下、本実施例について、詳細に説明する。
【0022】
<実験1:異種接合体の製造>
図1に示すように、金属体(約45×10×1.5mm)の端部表面にレーザー光を照射して粗面(約5×10mm)を形成した。
なお、本実施例は、ダイセルミライズ株式会社に依頼して上記粗面を形成した。
刺激発泡型高分子は光酸発生剤(0.002mgPAG):化学発生剤(0.2mgBoc)=1:100を溶媒(5mlTHF)に加え、また、揮発防止剤はポリスチレン(755mgPSJ 679)を溶媒(4mlトルエン)に加えて、それぞれ超音波洗浄機で20分攪拌した。
金属体の粗面にヘラを用いて刺激発泡型高分子(約3ml)を塗布し、さらにこの塗布面に揮発防止剤(約3ml)を塗布後、金属体をガラスデシケータ内に5日以上静置して乾燥させた。
その後、刺激発泡型高分子及び揮発防止剤を塗布した粗面に対して、射出成形機(住友重機械工業株式会社製)を用いて樹脂体を射出成形により接合し、異種接合体(Al/PAG+Boc/PS)を製造した。
なお、射出条件は保圧18MPa、ノズル温度220℃、金型温度80℃、射出率10cm/sとし、樹脂体(約45×10×3mm)と金属体の接合面は約5×10mmである。
【0023】
<実験2:発泡処理>
実験1で製造した異種接合体を、LED照射器(シーシーエス株式会社製)を用いて、紫外線照射(照射条件:波長405nm、放射照度30mW/cm、照射時間5分)した。
さらに、照射後の異種接合体をホットプレート(アズワン株式会社製)にて、加熱(加熱条件:加熱温度(ホットプレートの設定温度)100℃、加熱時間1分)した。
なお、ホットプレートは予熱しておき、ホットプレート上に金属体の裏面(ここで、裏面とは、樹脂体との接合面を表面側とした場合をいう)を載置した。
【0024】
<実験3:マイクロフォーカスX線CT観察>
実験2で発泡処理した異種接合体(Al/PAG+Boc/PS)に対し、マイクロフォーカスX線CT(東芝ITコントロールシステム株式会社製)を用いて、その接合界面を観察した。
なお、刺激発泡型高分子及び揮発防止剤を塗布しないで、Alの粗面にPSを直接射出接合した比較例(Al/PS)についても、同様に発泡処理後の接合界面を観察した。
観察条件は、管電圧130kV、焦点サイズ5μm、分解能5μm、X線検出器フラットパネルディテクタとした。
その結果を、図2に示す。
【0025】
図2左側に比較例(Al/PS)、右側に異種接合体(Al/PAG+Boc/PS)を示す。
実施例である異種接合体では、丸で囲った部分に発泡が確認できた。
なお、確認試験として、刺激発泡型高分子(トルエンで溶解したPAG及びBoc)が光照射及び加熱で発泡することを、FT-IR装置(株式会社島津製作所製)を用いて確認している。
確認試験の条件はATR法で、波数は4000~400(cm-1)であり、180℃で1分加熱した上記刺激発泡型高分子に紫外線を10分照射(波長405nm、放射照度30mW/cm)し、さらに照射後180℃で1分加熱した結果、3400~3000(cm-1)に緩やかなピークがみられた。
3300~2500(cm-1)のO-H伸縮は、PBocStから発生したPHStのヒドロキシル基と考えられることから、図3に示すようにPBocStからPHSt、二酸化炭素、イソブテンが発生したと考えられる。
【0026】
<実験4:X線CT観察>
実験1で製造した異種接合体に対し、あいちシンクロトロン光センターの放射光施設のX線CTを用いたX線測定にて、その接合界面の発泡をさらに観察した。
PCBカッター・マニュアル精密研磨装置にて、発泡処理前及び発泡処理(照射条件:波長405nm、放射照度30mW/cm、照射時間5分、加熱条件:加熱温度80℃、加熱時間3分)後の異種接合体(Al/PAG+Boc/PS)の各界面付近を、2×10×2mmの角柱に成形し、それぞれX線測定した。
その結果を図4に示す。
【0027】
図4左側に発泡処理前の異種接合体を、右側に発泡処理後の異種接合体を示す。
発泡処理後の異種接合体では、発泡によりできた空間が確認できた。
【0028】
<実験5:強度試験>
実験1で製造した異種接合体に対し、万能力学試験機(株式会社島津製作所製)を用いて、その強度を定量的に計測した。
強度試験の条件は、ISO19095-3に準じて、チャック間距離50mm、試験速度10mm/分とした。
強度試験は、比較例(Al/PS)、発泡処理前の異種接合体、実験2で発泡処理した異種接合体を、それぞれ3個ずつ用意して実施した。
その結果を、図5に示す。
ここで、横軸のクロスヘッド移動量(mm)とは、金属体側のつかみ具の引張方向の移動量をいう。
また、図6に、本強度試験の最大平均荷重を示す。
【0029】
図6から、刺激発泡型高分子を塗布していない比較例と、発泡処理前の異種接合体では、接合強度がほとんど変化しなかったのに対し、発泡処理後の異種接合体は発泡処理前から接合強度が約56%低下した。
以上から、本実施例の異種接合体は、使用時等では強度が確保され、廃棄時等では複数の刺激で刺激発泡型高分子を発泡させて、接合強度を低下でき、異種接合体を構成する金属体と樹脂体の分離に必要なエネルギーを小さくできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6