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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167030
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20241122BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20241122BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20241122BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241122BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N5/07
C12N1/00 B
C12M1/00 C
C12N5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142464
(22)【出願日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2023083532
(32)【優先日】2023-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 時郎
(72)【発明者】
【氏名】児玉 祐来
(72)【発明者】
【氏名】小林 健太郎
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC02
4B029CC10
4B029FA12
4B029GA08
4B065AA90X
4B065AC12
4B065BC41
4B065BC46
4B065BC50
4B065CA46
(57)【要約】
【課題】細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、及び匂い物質等の化学物質の検出性に優れた検出技術を提供すること。
【解決手段】細胞層、及び前記細胞層上に配置されたゲル層を含む、積層体、及びそれを含む細胞チップ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞層、及び前記細胞層上に配置されたゲル層を含む、積層体。
【請求項2】
前記細胞層及び前記ゲル層がそれぞれ単層である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記細胞層の細胞濃度が10000~1000000cells/cm2である、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記ゲル層を形成するゲルの貯蔵弾性率が0.001~100kPaである、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
区画内に配置されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記細胞層が前記区画底面に接している、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記細胞層に含まれる細胞が昆虫細胞である、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記細胞層に含まれる細胞が、センサタンパク質のコード配列を含むポリヌクレオチドを含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
前記センサタンパク質が嗅覚受容体タンパク質である、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
センサタンパク質活性の測定に用いるための、請求項1に記載の積層体。
【請求項11】
前記センサタンパク質活性を変動させる物質をゲル層側から添加して前記測定に用いるための、請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
前記センサタンパク質活性を光に変換する前記測定に用いるための、請求項10に記載の積層体。
【請求項13】
前記光を前記細胞層側から検出する、請求項12に記載の積層体。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の積層体を含む区画を含む、細胞チップ。
【請求項15】
前記区画の上部がシールされている、請求項14に記載の細胞チップ。
【請求項16】
包装されている、請求項14又は15に記載の細胞チップ。
【請求項17】
細胞懸濁液を配置することを含む、細胞層形成工程、及び
前記細胞層上にゲル層を形成することを含む、ゲル層形成工程、
を含む、請求項1~13のいずれかに記載の積層体を製造する方法。
【請求項18】
前記細胞懸濁液がゲルを形成可能なゾルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ゲルを形成可能なゾルと細胞との懸濁液を基材上に配置し、細胞を基材上に沈殿させることを含む、細胞層形成工程、及び
前記ゾルをゲル化することを含む、ゲル層形成工程、
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記基材が、ポリペプチドコーティング表面を含む区画を含む基材である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法で得られた、前記基材上に配置された、積層体。
【請求項22】
ゲルを形成しない液体と細胞との懸濁液を基材上に配置し、細胞を基材上に沈殿させることを含む、細胞層形成工程、及び
細胞層上にゲルを形成可能なゾルを積層した後にゲル化することを含む、ゲル層形成工程、
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記基材が、炭素原子に対する酸素原子のモル比(O/C)が0.150以上である表面を含む区画を含む基材である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法で得られた、前記基材上に配置された、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を含む積層体等に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの特定の疾患や精神状態等を特徴付ける匂い物質群が同定されており、検査マーカーとしての利用価値が高いことから、これらをターゲットとした様々な匂いセンサの開発が盛んになっている。生物の嗅覚受容体は、多様性、感度、選択性等の面で半導体等の従来の匂いセンサ素子にはない優れた特性を有することから、嗅覚受容体をセンサ素子とした新しい匂いセンサの開発が期待されている。
【0003】
特許文献1では、改変嗅覚受容体を発現する細胞や改変嗅覚受容体を備える脂質二重膜を匂いセンサとして用いることについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/024902号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
嗅覚受容体等のセンサタンパク質を備える脂質二重膜を人工的に調製する工程を有する匂いセンサは、製造効率が必ずしも十分ではないため、匂いセンサのさらなる製造効率向上が求められている。そこで、センサタンパク質を発現する細胞を利用することに着目した。
【0006】
匂いセンサ等の化学物質センサとして細胞を利用する場合、利用の簡便性の観点からは、細胞をその都度培養して調製して利用するという形態ではなく、予め細胞が容器などに保持されたものを調製しておき、それを必要な場合に利用するという形態が望ましい。後者の形態の場合、細胞の利用時まで細胞を乾燥させないことが必要であり、また製造元から利用場所までの搬送等を考慮すると細胞が安定に保持されていることが重要である。
【0007】
そこで、本開示は、細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、及び匂い物質等の化学物質の検出性に優れた検出技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は研究を進める中で、細胞とハイドロゲルとを含む区画を含む細胞チップであれば、細胞を乾燥から防ぐことができ、且つ細胞を安定に保持できることに着目した。大量生産、生産効率の観点からは、細胞が分散したハイドロゲルを利用することが望ましい。しかし、細胞が分散したハイドロゲルは、化学物質の検出性が低いことが分かった。本発明者は、この知見に基づいて、細胞層、及び前記細胞層上に配置されたゲル層を含む、積層体、であれば、上記課題及び上記問題を解決できることを見出した。即ち、本開示は、下記の態様を包含する。
【0009】
項1. 細胞層、及び前記細胞層上に配置されたゲル層を含む、積層体。
【0010】
項2. 前記細胞層及び前記ゲル層がそれぞれ単層である、項1に記載の積層体。
【0011】
項3. 前記細胞層の細胞濃度が10000~1000000cells/cm2である、項1に記載の積層体。
【0012】
項4. 前記ゲル層を形成するゲルの貯蔵弾性率が0.001~100kPaである、項1に記載の積層体。
【0013】
項5. 区画内に配置されている、項1に記載の積層体。
【0014】
項6. 前記細胞層が前記区画底面に接している、項5に記載の積層体。
【0015】
項7. 前記細胞層に含まれる細胞が昆虫細胞である、項1に記載の積層体。
【0016】
項8. 前記細胞層に含まれる細胞が、センサタンパク質のコード配列を含むポリヌクレオチドを含む、項1に記載の積層体。
【0017】
項9. 前記センサタンパク質が嗅覚受容体タンパク質である、項8に記載の積層体。
【0018】
項10. センサタンパク質活性の測定に用いるための、項1に記載の積層体。
【0019】
項11. 前記センサタンパク質活性を変動させる物質をゲル層側から添加して前記測定に用いるための、項10に記載の積層体。
【0020】
項12. 前記センサタンパク質活性を光に変換する前記測定に用いるための、項10に記載の積層体。
【0021】
項13. 前記光を前記細胞層側から検出する、項12に記載の積層体。
【0022】
項14. 項1~13のいずれかに記載の積層体を含む区画を含む、細胞チップ。
【0023】
項15. 前記区画の上部がシールされている、項14に記載の細胞チップ。
【0024】
項16. 包装されている、項14又は15に記載の細胞チップ。
【0025】
項17. 細胞懸濁液を配置することを含む、細胞層形成工程、及び
前記細胞層上にゲル層を形成することを含む、ゲル層形成工程、
を含む、項1~13のいずれかに記載の積層体を製造する方法。
【0026】
項18. 前記細胞懸濁液がゲルを形成可能なゾルである、項17に記載の方法。
【0027】
項19. ゲルを形成可能なゾルと細胞との懸濁液を基材上に配置し、細胞を基材上に沈殿させることを含む、細胞層形成工程、及び
前記ゾルをゲル化することを含む、ゲル層形成工程、
を含む、項17に記載の方法。
【0028】
項20. 前記基材が、ポリペプチドコーティング表面を含む区画を含む基材である、項19に記載の方法。
【0029】
項21. 項20に記載の方法で得られた、前記基材上に配置された、積層体。
【0030】
項22. ゲルを形成しない液体と細胞との懸濁液を基材上に配置し、細胞を基材上に沈殿させることを含む、細胞層形成工程、及び
細胞層上にゲルを形成可能なゾルを積層した後にゲル化することを含む、ゲル層形成工程、
を含む、項17に記載の方法。
【0031】
項23. 前記基材が、炭素原子に対する酸素原子のモル比(O/C)が0.150以上である表面を含む区画を含む基材である、項22に記載の方法。
【0032】
項24. 項23に記載の方法で得られた、前記基材上に配置された、積層体。
【発明の効果】
【0033】
本開示によれば、細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、及び匂い物質等の化学物質の検出性に優れた検出技術を提供することができる。具体的には、細胞を含む積層体、及び当該積層体を含む細胞チップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】試験例6の嗅覚受容体の活性測定結果を示す。縦軸は蛍光強度の最大値からバックグラウンド値の平均(化合物添加前20秒間の平均)値を引いた値を示す。横軸中、ゲルA、B、Cは、順にアクリル樹脂溶液A、B、Cを使用した場合を示す。
図2】試験例7の嗅覚受容体の活性測定結果を示す。縦軸は蛍光強度の最大値からバックグラウンド値の平均(化合物添加前20秒間の平均)値を引いた値を示す。横軸中、ゲルA、B、Cは、順にアクリル樹脂溶液A、B、Cを使用した場合を示す。
図3】試験例9-1において、細胞播種後、プレートを27℃で一晩静置した直後の細胞観察像を示す。写真左側に培地中のゼラチン濃度を示す。
図4】試験例9-1において、培地をアッセイバッファーに置換した後の細胞観察像を示す。写真左側に培地中のゼラチン濃度を示す。
図5】試験例9-1の嗅覚受容体の活性測定結果を示す。縦軸は蛍光強度を示す。横軸は培地中のゼラチン濃度を示す。凡例は化合物a濃度を示す。
図6】試験例9-2において、細胞播種後、プレートを27℃で一晩静置した直後の細胞観察像を示す。写真左側に培地中のゼラチン濃度を示す。
図7】試験例9-2において、培地をアッセイバッファーに置換した後の細胞観察像を示す。写真左側に培地中のゼラチン濃度を示す。
図8】試験例9-2の嗅覚受容体の活性測定結果を示す。縦軸は蛍光強度を示す。横軸は培地中のゼラチン濃度を示す。凡例は化合物a濃度を示す。
図9】試験例9-3において、細胞播種後、プレートを27℃で一晩静置した直後の細胞観察像を示す。写真左側に培地中のゼラチン濃度を示す。
図10】試験例9-3において、培地をアッセイバッファーに置換した後の細胞観察像を示す。写真左側に培地中のゼラチン濃度を示す。
図11】試験例9-3の嗅覚受容体の活性測定結果を示す。縦軸は蛍光強度を示す。横軸は培地中のゼラチン濃度を示す。凡例は化合物a濃度を示す。
図12】試験例9-4において、細胞播種後、プレートを27℃で一晩静置した直後の細胞観察像を示す。写真左側に培地中のゼラチン濃度を示す。
図13】試験例9-4において、培地をアッセイバッファーに置換した後の細胞観察像を示す。写真左側に培地中のゼラチン濃度を示す。
図14】試験例9-4の嗅覚受容体の活性測定結果を示す。縦軸は蛍光強度を示す。横軸は培地中のゼラチン濃度を示す。凡例は化合物a濃度を示す。
図15】試験例10-2の細胞観察像を示す。写真上方にプレート種類並びに写真左側の細胞数1及び細胞数2は表1に対応する。
図16】試験例10-2の嗅覚受容体の活性測定結果を示す。縦軸は蛍光強度を示す。横軸は、プレート種類及び細胞数を示す。プレート種類は表1に対応する。凡例は化合物a濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0036】
本開示は、その一態様において、細胞層、及び前記細胞層上に配置されたゲル層を含む、積層体(本明細書において、「本開示の積層体」と示すこともある。)、に関する。以下に、これについて説明する。
【0037】
細胞層は、細胞を含む層であり、この限りにおいて特に制限されない。
【0038】
細胞チップは、細胞を含む区画を含み、この限りにおいて特に制限されない。
【0039】
細胞は、特に制限されない。細胞は、化学物質の検出に適しているという観点から、昆虫細胞、哺乳類動物細胞等の動物細胞が好ましく、CO2や温度管理が不要であるなど管理の容易さから昆虫細胞が特に好ましい。
【0040】
昆虫細胞としては、例えば、Sf細胞、MG1細胞、High FiveTM細胞、BmN細胞などが用いられる。Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞などが用いられる。昆虫細胞の中でも、特にヒトリガ科(Arctiidae)の昆虫由来細胞が好ましい。
【0041】
ヒトリガ科の昆虫由来細胞は、ヒトリガ科の昆虫の生体構成細胞の初代培養細胞、又は株化細胞であり、その限りにおいて特に制限されない。
【0042】
ヒトリガ科としては、例えばヒトリガ亜科(Arctiinae)、コケガ亜科(Lithosiinae)、カノコガ亜科(Syntominae)等が挙げられるが、これらの中でも好ましくはヒトリガ亜科が挙げられる。ヒトリガ亜科としては、好ましくはSpilosoma(クワゴマダラヒトリ属)、Spilarctia、Rhagonisの属が挙げられ、特に好ましくはクワゴマダラヒトリ属が挙げられる。クワゴマダラヒトリ属としては、特に制限されないが、特に好ましくはクワゴマダラヒトリ(Spilosoma imparilis)が挙げられる。
【0043】
ヒトリガ科の昆虫由来細胞は、公知の生物バンクから入手することもできるし、公知の方法に従って又は準じてヒトリガ科の昆虫の生体から採取・培養して得ること、必要に応じて株化して得ることができる。
【0044】
クワゴマダラヒトリ由来細胞としては、例えば農業生物資源ジーンバンクのFFPRI-SpIm-2AM-SF細胞(MAFF番号:275052)、FFPRI-SpIm-2AM-IPL411細胞(MAFF番号:275053)等が挙げられる。
【0045】
細胞は、センサタンパク質のコード配列を含む外来性ポリヌクレオチドを含むことが好ましい。これにより、任意のセンサタンパク質を発現させることができ、また目的のセンサタンパク質の発現量を増やし目的の化学物質の検出感度を高めることができる。
【0046】
外来性ポリヌクレオチドとは、昆虫細胞のゲノムDNA(特に、染色体ゲノムDNA)に由来しない塩基配列を含むポリヌクレオチドであり、その限りにおいて特に制限されない。
【0047】
本明細書において、ポリヌクレオチドには、次に例示するように、生物が内在するDNA、RNA等の典型的なポリヌクレオチド以外にも、公知の化学修飾が施されているポリヌクレオチド、人工ポリヌクレオチド等も包含される。ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネート等の化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各リボヌクレオチドの糖(リボース)の2位の水酸基を、-OR(Rは、例えばCH3(2´-O-Me)、CH2CH2OCH3(2´-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等を示す)に置換してもよい。さらに、核酸塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。さらには、リン酸部分やヒドロキシル部分が、例えば、ビオチン、アミノ基、低級アルキルアミン基、アセチル基等で修飾されたものなどを挙げることができるが、これに限定されない。また、ヌクレオチドの糖部の2´酸素と4´炭素を架橋することにより、糖部のコンフォーメーションをN型に固定したものであるBNA(LNA)等もまた、用いられ得る。
【0048】
センサタンパク質は、化学物質の存在を検出可能なタンパク質から選択すればよく、例えば化学物質をリガンドとする受容体タンパク質であることができる。センサタンパク質は、特に好ましくは嗅覚受容体タンパク質である。
【0049】
昆虫嗅覚受容体タンパク質は、7回膜貫通構造を有する膜タンパク質であり、生物の匂いセンサとして働く。嗅覚受容体タンパク質のアミノ末端(以下、「N末端」という場合もある。)からカルボキシル末端(以下、「C末端」という場合もある。)に向かって順に、N末端領域(NT)、第1膜貫通ドメイン(TM1)、第1細胞外ループ(EC1)、第2膜貫通ドメイン(TM2)、第1細胞内ループ(IC1)、第3膜貫通ドメイン(TM3)、第2細胞外ループ(EC2)、第4膜貫通ドメイン(TM4)、第2細胞内ループ(IC2)、第5膜貫通ドメイン(TM5)、第3細胞外ループ(EC3)、第6膜貫通ドメイン(TM6)、第3細胞内ループ(IC3)、第7膜貫通ドメイン(TM7)、及びC末端領域(CT)が連結されて構成される。本開示において、各領域は、TMpred(K. Hofmann, W. Stoffel, TMbase - a database of membrane spanning proteins segments, Biol. Chem. Hoppe-Seyler, 374 (1993), p. 166、https://embnet.vital-it.ch/software/TMPRED_form.html)を用いた構造予測(条件はデフォルト)により決定される。
【0050】
昆虫嗅覚受容体タンパク質の由来昆虫としては、好ましくはカ科、ショウジョウバエ科等の双翅目昆虫;カイコガ科等の鱗翅目昆虫;ミツバチ科等の膜翅目昆虫;バッタ科等の直翅目昆虫;トコジラミ科等の半翅目昆虫等が挙げられ、さらに好ましくはカ科、ショウジョウバエ科等の双翅目昆虫;バッタ科等の直翅目昆虫;トコジラミ科等の半翅目昆虫が挙げられる。カ科の昆虫としては、例えば、ガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、ネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)等が挙げられる。ショウジョウバエ科の昆虫としては、例えば、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、ウスグロショウジョウバエ(Drosophila pseudoobscura)、クロショウジョウバエ(Drosophila virillis)等が挙げられる。カイコガ科の昆虫としては、例えば、カイコガ(Bombyx mori)、クワコ(Bombyx mandarina)、イチジクカサン(Trilocha varians)等が挙げられる。ミツバチ科の昆虫としては、例えば、セイヨウミツバチ(Apis mellifera)、ヒメミツバチ(Apis florea)、オオミツバチ(Apis dorsata)、セイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris)等が挙げられる。バッタ科の昆虫としては、例えば、トノサマバッタ(Locusta migratoria)等が挙げられ、トコジラミ科の昆虫としては、例えば、トコジラミ(Cimex lectularius)等が挙げられる。
【0051】
野生型の昆虫嗅覚受容体タンパク質として、具体的には、例えば、AaOR1、AaOR2、AaOR4、AaOR5、AaOR6、AaOR8、AaOR9、AaOR10a、AaOR15、AaOR22、AaOR24、AaOR25、AaOR26、AaOR27、AaOR28、AaOR30、AaOR34、AaOR36、AaOR38、AaOR41a、AaOR41b、AaOR42、AaOR43、AaOR44、AaOR47、AaOR49、AaOR50、AaOR52、AaOR54、AaOR58、AaOR59、AaOR60、AaOR61、AaOR64、AaOR65、AaOR66、AaOR67a、AaOR69a、AaOR70、AaOR71、AaOR72a、AaOR73、AaOR74、AaOR75、AaOR77、AaOR78、AaOR79、AaOR81、AaOR83b、AaOR84、AaOR85、AaOR86、AaOR87、AaOR91、AaOR95、AaOR97、AaOR96、AaOR99、AaOR100、AaOR102、AaOR103、AaOR104a、AaOR105、AaOR107、AaOR108、AaOR109、AaOR110、AaOR112、AaOR114、AaOR116、AaOR117、AaOR118、AaOR122、AaOR125、AaOR128、AgOR1、AgOR2、AgOR3、AgOR4、AgOR5、AgOR6、AgOR8、AgOR9、AgOR10、AgOR11a、AgOR12a、AgOR12b、AgOR13、AgOR14、AgOR15、AgOR16a、AgOR17、AgOR18、AgOR20、AgOR21、AgOR23、AgOR25、AgOR26、AgOR27、AgOR28、AgOR30、AgOR34、AgOR36、AgOR37、AgOR38、AgOR39a、AgOR40、AgOR42、AgOR44、AgOR45、AgOR46、AgOR47、AgOR49、AgOR50、AgOR54、AgOR56a、AgOR57、AgOR60、AgOR61、AgOR62、AgOR63、AgOR64、AgOR65、AgOR69、AgOR70、AgOR71、AgOR72、AgOR74、AgOR75、AgOR76a、AmOR1、AmOR3、AmOR9、AmOR10、AmOR13、AmOR41、AmOR51、AmOR52、AmOR55、AmOR71、AmOR73、AmOR78、AmOR85、AmOR89、AmOR90、AmOR114、AmOR115、AmOR118、AmOR120、AmOR121、AmOR161、BmOR1、BmOR2、BmOR3、BmOR4、BmOR5、BmOR8、BmOR9、BmOR10、BmOR13、BmOR17、BmOR18、BmOR23、BmOR24、BmOR25、BmOR35、BmOR36、BmOR42、BmOR45、BmOR49、BmOR51、BmOR52、BmOR55、BmOR56、BmOR61、DmOR1a、DmOR9a、DmOR19a、DmOR22a、DmOR22b、DmOR22c、DmOR24a、DmOR30a、DmOR33a、DmOR33b、DmOR33c、DmOR35a、DmOR42b、DmOR43a、DmOR45a、DmOR45b、DmOR47a、DmOR49b、DmOR59b、DmOR65b、DmOR65c、DmOR67b、DmOR67c、DmOR69a、DmOR71a、DmOR74a、DmOR82a、DmOR83a、DmOR83c、DmOR85a、DmOR85c、DmOR85e、DmOR85f、DmOR88a、DmOR92a、DmOR94a、DmOR94b、DmOR98b等が挙げられる。
【0052】
本明細書において、ORは嗅覚受容体(Odorant receptor)を示し、DmはDrosophila melanogaster由来であることを示し、BmはBombyx mori由来であることを示し、AgはAnopheles gambiae由来であることを示し、AaはAedes aegypti由来であることを示す。これらを含む各種嗅覚受容体タンパク質のアミノ酸配列及びコード配列は公知であるか、公知の配列に基づいた配列同一性検索により容易に同定することができる。
【0053】
センサタンパク質は、化学物質応答活性が著しく低減しない限りにおいて、野生型アミノ酸配列に対するアミノ酸変異を含むことができる。「著しく低減しない」とは、例えば、アミノ酸変異を含むセンサタンパク質の化学物質応答活性が、野生型のセンサタンパク質の化学物質応答活性100%に対して、例えば50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、よりさらに好ましくは90%以上である、ことを意味する。
【0054】
アミノ酸変異は、例えばアミノ酸の置換、挿入、付加、又は欠失であり、好ましくは置換であり、特に好ましくは保存的置換である。
【0055】
本明細書中において、「保存的置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されることを意味する。例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンといった塩基性側鎖を有するアミノ酸残基同士で置換されることが、保存的な置換にあたる。その他、アスパラギン酸、グルタミン酸といった酸性側鎖を有するアミノ酸残基;グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システインといった非帯電性極性側鎖を有するアミノ酸残基;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンといった非極性側鎖を有するアミノ酸残基;トレオニン、バリン、イソロイシンといったβ-分枝側鎖を有するアミノ酸残基;チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンといった芳香族側鎖を有するアミノ酸残基同士での置換も同様に、保存的な置換にあたる。
【0056】
センサタンパク質は、野生型アミノ酸配列、野生型アミノ酸配列に対して例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。
【0057】
本明細書において、アミノ酸配列の「同一性」とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列の、お互いに対するアミノ酸配列の一致の程度をいう。従って、ある2つのアミノ酸配列の一致性が高いほど、それらの配列の同一性又は類似性は高い。アミノ酸配列の同一性のレベルは、例えば、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて決定される。若しくは、Karlin及びAltschulによるアルゴリズムBLAST(Karlin S, Altschul SF.“Methods for assessing the statistical significance of molecular sequence features by using general scoringschemes”Proc Natl Acad Sci USA.87:2264-2268(1990)、KarlinS,Altschul SF.“Applications and statistics for multiple high-scoring segments in molecular sequences.”Proc Natl Acad Sci USA.90:5873-7(1993))を用いて決定できる。このようなBLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照すればよい。
【0058】
センサタンパク質には、化学物質応答活性が著しく損なわれない限りにおいて、他のアミノ酸配列、例えばタンパク質タグ、蛍光タンパク質、発光タンパク質、シグナル配列等のタンパク質又はペプチドが付加されてもよい。タンパク質タグとしては、例えばビオチン、Hisタグ、FLAGタグ、Haloタグ、MBPタグ、HAタグ、Mycタグ、V5タグ、PAタグ等が挙げられる。
【0059】
本明細書において、化学物質応答活性とは、センサタンパク質が化学物質を認識し、そのセンサタンパク質単独が又は他のタンパク質と共役してシグナル伝達活性(例えば、イオンチャネル活性)を示す性質をいう。センサタンパク質が嗅覚受容体である場合、
Gタンパク質共役型受容体であってもよいし、イオンチャネル型受容体であってもよいが、昆虫嗅覚受容体の場合であれば、嗅覚受容体が化学物質を認識し、その嗅覚受容体と嗅覚受容体共受容体とが形成した嗅覚受容体複合体が活性化されてイオンチャネル活性を示す性質をいう。センサタンパク質の化学物質応答活性は、化学物質と接触したセンサタンパク質のシグナル伝達活性を指標として(例えばシグナル分子の量を定量・評価して)測定することができる。昆虫嗅覚受容体の場合であれば、嗅覚受容体の化学物質応答活性は、化学物質と接触した嗅覚受容体と嗅覚受容体共受容体とが形成する嗅覚受容体複合体のイオンチャネル活性を指標として測定することができる。例えば、(a)嗅覚受容体、(b)嗅覚受容体共受容体、及び(c)嗅覚受容体複合体が応答した場合に細胞内に流入するイオン(カルシウムイオン等)により蛍光又は発光を発するタンパク質を発現する細胞と、化学物質とを接触させ、当該細胞の蛍光量又は発光量を測定する。測定された蛍光量又は発光量が多い程、嗅覚受容体の化学物質の応答活性が高いと判定する。具体的には特許文献1に記載の方法に従って測定することができる。
【0060】
センサタンパク質のコード配列は、センサタンパク質をコードする塩基配列である限り、特に制限されない。外来性ポリヌクレオチドは、その一態様において、センサタンパク質の発現カセットを含む。発現カセットは、細胞内でセンサタンパク質を発現可能なポリヌクレオチドである限り特に制限されない。センサタンパク質の発現カセットの典型例としては、プロモーター、及びそのプロモーターの制御下に配置されたセンサタンパク質のコード配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
【0061】
プロモーターとしては、特に制限されず、適宜選択することができる。プロモーターとしては、例えばpol II系プロモーターを各種使用することができる。pol II系プロモーターとしては、特に制限されないが、例えばCMVプロモーター、EF1プロモーター、SV40プロモーター、MSCVプロモーター、昆虫由来遺伝子のプロモーター等が挙げられる。
【0062】
センサタンパク質が昆虫嗅覚受容体である場合、外来性ポリヌクレオチドは、昆虫の嗅覚受容体共受容体のコード配列を含むことが好ましい。昆虫の嗅覚受容体共受容体は、嗅覚受容体と同様に7回膜貫通構造を有する膜タンパク質であり、嗅覚受容体とヘテロ複合体を形成して機能する。嗅覚受容体と嗅覚受容体共受容体とから構成されるヘテロ複合体である嗅覚受容体複合体は、匂い物質で活性化されるイオンチャンネル活性が備わっており、活性化されるとナトリウムイオン(Na+)、カルシウムイオン(Ca2+)等の陽イオンを細胞内に流入させる。
【0063】
外来性ポリヌクレオチドは、センサタンパク質(特に、嗅覚受容体タンパク質)が応答した場合に細胞内に流入するイオン(カルシウムイオン等)により蛍光又は発光を発するタンパク質のコード配列を含むことが好ましい。このようなタンパク質としては、イクオリン、Yellow Cameleon(YC)、GCaMP等が挙げられる。或いは、細胞は、カルシウムイオン依存性蛍光色素(例えばFura-2、Fluo-3、Fluo-4等)等のイオン依存性蛍光色素を含むことが好ましい。
【0064】
外来性ポリヌクレオチドは、細胞を薬剤選別できるようにするために、薬剤耐性遺伝子のコード配列を含むことが好ましい。薬剤耐性遺伝子としては、細胞の薬剤選別に使用できる薬剤に対する耐性遺伝子を選択すればよく、例えばクロラムフェニコール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子などが挙げられる。
【0065】
昆虫の嗅覚受容体共受容体のコード配列、蛍光又は発光を発するタンパク質のコード配列、薬剤耐性遺伝子のコード配列等のコード配列は、発現カセットの形態で外来性ポリヌクレオチドに含まれていることが好ましい。発現カセットの構成についてはセンサタンパク質の発現カセットと同様である。発現カセットのプロモーターは、複数のコード配列間で共有することが可能である。
【0066】
外来性ポリヌクレオチドは、好ましくはゲノムDNA(特に好ましくは染色体ゲノムDNA)に組み込まれている。これにより、安定にセンサタンパク質を発現することができ、化学物質検出に適したものとなる。この場合、ポリヌクレオチドは、ゲノムDNA内の、1つの連続領域であることができ、また2つ以上の連続領域の組み合わせ(例えばセンサタンパク質コード配列が連続領域Aに含まれ、薬剤耐性遺伝子のコード配列が連続領域Aとは別の連続領域である連続領域Bに含まれる形態、或いはセンサタンパク質コード配列が連続領域Aと連続領域Bの両方に含まれる形態)であることができる。
【0067】
ポリヌクレオチドは、別の態様において、ゲノムDNAに組み込まれない状態であることができる。この場合、外来性ポリヌクレオチドは、例えばベクターの形態であることができる。この場合、ポリヌクレオチドは、1種のポリヌクレオチド分子であることができ、また2種以上のポリヌクレオチド分子(例えばセンサタンパク質コード配列がポリヌクレオチド分子Aに含まれ、薬剤耐性遺伝子のコード配列がポリヌクレオチド分子Aとは別の分子であるポリヌクレオチド分子Bに含まれる形態、或いはセンサタンパク質コード配列がポリヌクレオチド分子Aとポリヌクレオチド分子Bの両方に含まれる形態)であることができる。
【0068】
細胞層の細胞濃度は、化学物質の検出が可能な程度の濃度である限り、特に制限されない。細胞層の細胞濃度(細胞層の面積1cm2あたりの細胞数(cells))は、例えば5000~2000000cells/cm2である。細胞層の細胞濃度は、化学物質の検出性、細胞生存性等の観点から、好ましくは10000~1500000cells/cm2、より好ましくは10000~1000000cells/cm2、さらに好ましくは20000~1000000cells/cm2、よりさらに好ましくは50000~700000cells/cm2、とりわけ好ましくは100000~500000cells/cm2である。
【0069】
細胞層の面積は、特に制限されない。細胞層の面積は、検出感度の観点、又は製造効率の観点から、好ましくは0.5~100mm2、より好ましくは1~30mm2、さらに好ましくは1.5~15mm2である。また、本発明の一態様において、面積の上限を、80mm2、60mm2、又は40mm2とすることができる。
【0070】
細胞層の厚みは、化学物質の検出性の観点から、より薄いことが望ましい。細胞層の厚みは、好ましくは5~500μm、より好ましくは5~300μm、さらに好ましくは5~200μm、よりさらに好ましくは5~150μm、とりわけ好ましくは8~100μm、特に好ましくは10~70μmである。
【0071】
細胞層は、細胞以外の他の成分を含むことができる。他の成分としては、細胞の生存に著しい悪影響を及ぼすものでない限り特に制限されないが、例えば溶媒、培地成分、ゲル形成成分等が挙げられる。本開示の一態様において、細胞層は、細胞を含むゲルであることができる。当該ゲルについては、例えば後述のゲル層の規定を援用することができる。
【0072】
細胞層は、単層であることができ、また2層以上の構成が異なる細胞層からなる複層であることができる。製造効率の観点から、細胞層は単層である。
【0073】
ゲル層は、細胞層の一方の面上に配置されており、且つゲル状である層であり、この限りにおいて特に制限されない。細胞層のゲル層側とは反対側の面上には、ゲル層を含む他の層は配置されないことが好ましい。
【0074】
ゲルを形成する成分(ゲル形成成分:架橋されてネットワークを形成する成分)は、特に制限されないが、例えばゼラチン;寒天、カラギナン、澱粉、キサンタンガム等の多糖類;PVA、PEG、アクリルポリマー等の水溶性合成ポリマー類等が挙げられる。
【0075】
ゲル形成成分は、1種単独であることができ、また2種以上の組合せであることができる。
【0076】
細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、製造効率、又は化学物質検出性の観点から、ゲル形成成分の含有量は、ゲル層を構成する固形分100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは85質量%以上、とりわけ好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上(中でも、100質量%)である。
【0077】
ゲル層がゼラチンを含有する場合、当該ゲル層中のゼラチンの濃度は、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは0.7~8質量%、さらに好ましくは0.8~6質量%、よりさらに好ましくは0.9~4質量%、特に好ましくは1~3.5質量%である。
【0078】
ゲルの溶媒は、細胞の生存に著しく悪影響を与えないものである限り特に制限されない。当該溶媒は、水を含有することが好ましい。当該溶媒中の水の含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは85質量%以上、とりわけ好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上(中でも、100質量%)である。
【0079】
ゲル層を形成するゲルの貯蔵弾性率は、特に制限されず、例えば0.001~100kPaである。細胞を保持しつつも、ゲルと接触している細胞への外力を抑制する(すなわち細胞へのダメージを抑制する)という観点から、好ましくは0.01~20kPa、より好ましくは0.02~10kPa、さらに好ましくは0.05~5kPa、よりさらに好ましくは0.07~2kPaである。
【0080】
貯蔵弾性率は、4℃における貯蔵弾性率とすることができる。細胞の保存性の観点から本開示の積層体は比較的低温下で輸送及び保管されることが好ましく、このため比較的低温下での貯蔵弾性率がより重要である。
【0081】
ゲル層の面積は、特に制限されない。ゲル層の面積は、検出感度の観点、又は製造効率の観点から、好ましくは0.5~100mm2、より好ましくは1~30mm2、さらに好ましくは1.5~15mm2である。また、本発明の一態様において、面積の上限を、80mm2、60mm2、又は40mm2とすることができる。ゲル層の面積は、通常、細胞層の面積と同程度であり、細胞層の面積100に対して、例えば70~150、80~120、又は90~110である。
【0082】
ゲル層の厚みは、化学物質の検出性、細胞の乾燥耐性、細胞の保持性等の観点から、好ましくは0.1~30mm、より好ましくは0.2~20mm、さらに好ましくは0.3~15mm、よりさらに好ましくは0.5~12mmである。また、当該厚みは、上記利点を維持しつつも製造効率等の観点からさらに薄くすることもでき、当該厚みの上限は、好ましくは10mm、より好ましくは7mm、さらに好ましくは5mm、よりさらに好ましくは3mm、特に好ましくは1mmである。
【0083】
ゲル層は、単層であることができ、また2層以上の構成が異なるゲル層からなる複層であることができる。製造効率の観点から、ゲル層は単層である。
【0084】
本開示の積層体の製造方法は、特に制限されない。本開示の積層体は、例えば
細胞懸濁液を配置することを含む、細胞層形成工程、及び
前記細胞層上にゲル層を形成することを含む、ゲル層形成工程、
を含む、方法、により製造することができる。
【0085】
本開示の一態様においては、細胞懸濁液として、ゲルを形成可能なゾルを利用することができる。この場合、細胞懸濁液を適当な基材(細胞用ウェルの底面)上に配置後、ゾル状態のまま一定時間静置させることにより細胞を基材上に沈殿させ、その後ゾルをゲル化することにより、本開示の積層体を得ることができる。
【0086】
本開示の一態様においては、細胞懸濁液として、ゲルを形成しない液体(培地等)を利用することができる。この場合、細胞懸濁液を適当な基材(細胞用ウェルの底面)上に配置後、一定時間静置させることにより細胞を基材上に沈殿させ、その後上清を除去した後に、細胞層上にゲルを形成させる(例えばゲルを形成可能なゾルを積層した後にゲル化する)ことにより、本開示の積層体を得ることができる。
【0087】
本開示の積層体は、細胞の乾燥耐性、細胞の保持性等の観点から、区画(例えば細胞用のウェル)内に配置されていることが好ましい。細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、化学物質の検出性等の観点から、細胞層が区画底面に接していることが好ましく、細胞層が区画底面と側面に接していることがより好ましい。細胞層が区画側面に接していない或いは区画が側面を有しない場合は、細胞層の側面がゲル層で覆われていることが好ましい。
【0088】
本開示の積層体は、センサタンパク質活性の測定に用いることができ、これにより化学物質(特に匂い物質)を検出することができる。化学物質は、例えば体液(例えば、尿、血液、唾液)、空気(例えば、室内の空気、包装内の空気)、水(例えば、河川水、海水、水道水、上水、下水)等の試料中の化学物質であることができる。この場合、例えばセンサタンパク質活性を変動させる物質をゲル層側から添加してセンサタンパク質活性の測定に用いることができる。当該測定においては、化学物質がゲル層を浸透して細胞層に到達し、細胞のセンサタンパク質に接触することができる。当該測定においては、例えば細胞内に流入するイオンを検出する(例えばイオンにより発色又は発光するタンパク質により検出する)ことにより、化学物質を検出することができる。本発明の積層体は、センサタンパク質活性を光に変換する前記測定に用いることが好適であり、この場合、本発明の積層体の化学物質検出性の観点から、光を細胞層側から検出することが特に好ましい。
【0089】
本開
示の積層体は、細胞チップに含まれることが好ましい。本開示は、その一態様において、本開示の積層体を含む区画を含む、細胞チップ、に関する。
【0090】
区画の形態は、細胞及びゲルを保持できる態様である限り特に制限されない。細胞の乾燥耐性、細胞の保持性、製造効率、又は化学物質検出性の観点から、区画は、ウェル状であることが好ましい。
【0091】
区画の材質は、細胞及ゲルを保持できるものである限り特に制限されない。材質は、例えば樹脂、金属等であることができる。
【0092】
区画は、検出感度の観点から、通常、複数個の細胞を含む。区画における面積(cm2)当たりの細胞数(cells)は、細胞層と同様である。
【0093】
1区画の底面積は、検出感度の観点、又は製造効率の観点から、好ましくは0.5~100mm2、より好ましくは1~30mm2、さらに好ましくは1.5~15mm2である。また、本発明の一態様において、面積の上限を、80mm2、60mm2、又は40mm2とすることができる。
【0094】
細胞チップが含む区画の数は、検出感度の観点、又は製造効率の観点から、好ましくは10~2000個、より好ましくは30~1000個、さらに好ましくは50~500個である。
【0095】
本開示の細胞チップは、センサタンパク質の種類が互いに異なる2種以上(より好ましくは3種以上、さらに好ましくは4種以上、よりさらに好ましくは5種以上、10種以上、15種以上、又は20種以上)の細胞を含むことが好ましい。
【0096】
細胞チップの区画の上部は、シールされていてもよい。「シールされている」とは、区画間のコンタミネーションを抑制する機能及びガス透過性を有するフィルム等で封止されている状態を意味する。フィルムの材質の例としては、レーヨン、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。
【0097】
細胞チップはその全体が包装されていてもよい。包装する容器としては、変形可能な容器、固定形状を有する容器等を使用することができ、特に制限されないが、好ましくは変形可能な容器(例えば、袋)である。容器のある面が区画の上部に密着していることにより、区画の上部がシールされている状態であってもよい。容器の材質については、ポリエチレン等、市販される一般的なものであれば特に制限されない。
【0098】
本開示は、その一態様において、ゲルを形成可能なゾルと細胞との懸濁液を基材上に配置し、細胞を基材上に沈殿させることを含む、細胞層形成工程、及び
前記ゾルをゲル化することを含む、ゲル層形成工程、
を含む、積層体(特に、本開示の積層体)の製造方法(1ステップ法)、に関する。
【0099】
1ステップ法において、匂い物質等の化学物質の検出性等の観点から、基材は、ポリペプチドコーティング表面を含む区画を含む基材であることが特に好ましい。1ステップ法により得られた、前記基材上に配置された、積層体もまた、本開示の一態様である。
【0100】
ポリペプチドは、複数のアミノ酸がペプチド結合により連結されてなる鎖状構造体であり、この限りにおいて特に制限されない。
【0101】
ポリペプチドを構成するアミノ酸は、特に制限されず、αアミノ酸のみならず、βアミノ酸、γアミノ酸、δアミノ酸等も包含する。αアミノ酸としては、例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンといった塩基性側鎖を有するアミノ酸;アスパラギン酸、グルタミン酸といった酸性側鎖を有するアミノ酸;グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システインといった非帯電性極性側鎖を有するアミノ酸;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンといった非極性側鎖を有するアミノ酸;トレオニン、バリン、イソロイシンといったβ-分枝側鎖を有するアミノ酸;チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンといった芳香族側鎖を有するアミノ酸等が挙げられる。
【0102】
ポリペプチドを構成するアミノ酸の数(アミノ酸残基数)は、例えば3~5000である。アミノ酸残基数は、化学物質の検出性の観点から、好ましくは10~3000、より好ましくは15~2000、さらに好ましくは20~1500である。中でも、本開示の好ましい一態様において、アミノ酸残基数は、好ましくは10以上、より好ましくは100以上、さらに好ましくは500以上である。
【0103】
ポリペプチドは、1本鎖の状態であってもよいし、2本以上の鎖の複合体の状態であってもよい。
【0104】
ポリペプチドは、化学物質の検出性の向上作用を有する限りにおいて、化学修飾されたものであってもよい。化学物質の検出性の向上作用の有無は、被験物質をコーティングした表面を含む区画を有する細胞用基材を用いて、後述の試験例2の通りに嗅覚受容体の活性測定を行い、被験物質をコーティングしない場合と比較することにより、判定することができる。
【0105】
ポリペプチドは、C末端がカルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO)、アミド(-CONH2)またはエステル(-COOR)の何れであってもよい。
【0106】
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチルなどのC1-6アルキル基;例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基;例えば、フェニル、α-ナフチルなどのC6-12アリール基;例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル-C1-2アルキル基;α-ナフチルメチルなどのα-ナフチル-C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基;ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
【0107】
ポリペプチドは、C末端以外のカルボキシル基(またはカルボキシレート)が、アミド化またはエステル化されていてもよい。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
【0108】
ポリペプチドの具体例としては、例えば細胞接着性を有するポリペプチド又はその部分ペプチドが挙げられる。このようなポリペプチドとしては、例えば細胞外マトリックスタンパク質又はその部分ペプチド、細胞との静電相互作用を介して細胞接着するポリペプチド等が挙げられる。
【0109】
細胞外マトリックスタンパク質としては、例えばコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、フィブリノーゲン、フィブリン、テネイシン、ADAMTS(a disintegrin and metalloprotease with throm- bospondin motifs)、プロテオグリカン等が挙げられる。細胞外マトリックスタンパク質の部分ペプチドは、細胞の受容体との結合を介して細胞接着できる限り、その部位及び長さは、特に制限されない。細胞の受容体との結合を担う領域については、公知であるか、公知の情報に基づいて容易に推定することが可能である。また、これらの細胞外マトリックスタンパク質は、細胞の受容体との結合を介して細胞接着できる限り、野生型アミノ酸配列に対して変異(例えば置換、欠失、挿入、好ましくは保存的置換)を有していてもよく、具体的には例えば野生型アミノ酸配列に対する同一性が例えば90%以上、95%以上、又は99%以上の変異アミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0110】
細胞との静電相互作用を介して細胞接着するポリペプチドとしては、具体的には、例えば正電荷ポリペプチド(全アミノ酸残基数100%に対する正電荷アミノ酸残基(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン等)数の割合が例えば60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、又は100%)が挙げられる。
【0111】
ポリペプチドとしては、より細胞が安定的に基材上に配置して化学物質を検出できるという観点から、細胞外マトリックスタンパク質が好ましい。中でも、コラーゲンが特に好ましい。
【0112】
ポリペプチドは、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
【0113】
基材の表面におけるポリペプチドのコーティング量は、特に制限されるものではなく、例えば0.1μg/cm2以上とすることができるが、化学物質の検出性の観点から、好ましくは0.5μg/cm2以上、より好ましくは1μg/cm2以上、さらに好ましくは2μg/cm2以上、よりさらに好ましくは3μg/cm2以上である。当該コーティング量の上限は、特に制限されないが、例えば200μg/cm2、100μg/cm2、50μg/cm2、30μg/cm2、20μg/cm2、10μg/cm2とすることができる。
【0114】
コーティング対象表面をポリペプチドコーティングする方法は、公知の方法に従って又は準じて行うことができる。
【0115】
区画がポリペプチドコーティング表面をより多く含むことにより、本開示の目的効果をより効果的に発現させることができる。この観点から、区画面積(細胞を配置させる(例えば細胞層を形成させる、細胞を接着させる)領域の面積)100%に対するポリペプチドコーティング表面の面積は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上、とりわけ好ましくは99%以上、特に好ましくは100%である。
【0116】
1ステップ法において、細胞層を形成するための区画底面への細胞配置の方法は、細胞懸濁液中の細胞を沈殿させる方法において特に制限されない。静置により自由落下させてもよいし、遠心分離操作など遠心力によって底面に細胞を移動させてもよい。
【0117】
後述の溶液置換又は追加を行う場合は、細胞を接着させることが好ましい。
【0118】
区画底面に細胞が接着する場合、区画底面に配置された細胞の区画底面との接着状態は、特に制限されない。
【0119】
底面に配置された細胞を細胞培養温度で静置することで底面と接着させる場合、静置時間は、好ましくは1~48時間、より好ましくは4~36時間、さらに好ましくは12~28時間、とりわけ好ましくは、16~24時間である。
【0120】
本開示は、その一態様において、ゲルを形成しない液体と細胞との懸濁液を基材上に配置し、細胞を基材上に沈殿させることを含む、細胞層形成工程、及び
細胞層上にゲルを形成可能なゾルを積層した後にゲル化することを含む、ゲル層形成工程、
を含む、積層体(特に、本開示の積層体)の製造方法(2ステップ法)、に関する。
【0121】
2ステップ法において、匂い物質等の化学物質の検出性等の観点から、基材は、炭素原子に対する酸素原子のモル比(O/C)が0.150以上である表面を含む区画を含む基材であることが特に好ましい。2ステップ法により得られた、前記基材上に配置された、積層体もまた、本開示の一態様である。
【0122】
上記モル比(O/C)の表面のモル比(O/C)は、化学物質の検出性の観点から、好ましくは0.160以上、より好ましくは0.170以上、さらに好ましくは0.180以上である。モル比(O/C)は、上記範囲の中でも、化学物質の検出性(特により低濃度の化学物質の検出性)の観点から、とりわけ好ましくは0.195以上、特に好ましくは0.205以上である。モル比(O/C)の上限は、特に制限されるものではないが、好ましくは0.300、より好ましくは0.270、さらに好ましくは0.250、よりさらに好ましくは0.240、とりわけ好ましくは0.230、とりわけより好ましくは0.220である。
【0123】
限定的な解釈を望むものではないが、モル比(O/C)は、酸化した炭素の基(C-O、O-C=O、C-O、C=O)の量を表している一面があり、当該基又は当該基を含む官能基の量が一定以上であることが、細胞の接着性、細胞の接着態様等に影響を与え、化学物質の検出性に関する細胞反応性の向上に寄与していると考えられる。
【0124】
上記モル比(O/C)の表面は、化学物質の検出性の観点から、炭素原子に対する窒素原子のモル比(N/C)が0.020以上である表面であることが好ましい。上記モル比(O/C)の表面のモル比(N/C)は、より好ましくは0.030以上、さらに好ましくは0.035以上、よりさらに好ましくは0.040以上である。モル比(N/C)の上限は、特に制限されるものではないが、好ましくは0.100、より好ましくは0.080、さらに好ましくは0.070、よりさらに好ましくは0.060、とりわけ好ましくは0.050である。
【0125】
上記モル比(O/C)の表面は、化学物質の検出性の観点から、
C1sスペクトルで測定される基((1)C-C、C-H; (2)C-O、C-N; (3)O-C=O; (4)CO3)、
O1sスペクトルで測定される基(C-O、C=O)、及び
N1sスペクトルで測定される基((1)C-N、C=N; (2)第四級アンモニウム塩; (3)NOx
の合計100に対する、C1sスペクトル中の上記(2)~(4)の状態比率の合計と(1)~(4)の合計の比が、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.16以上、さらに好ましくは0.17以上、よりさらに好ましくは0.18以上、とりわけ好ましくは0.19以上、とりわけより好ましくは0.20以上、とりわけさらに好ましくは0.21以上、とりわけよりさらに好ましくは0.22以上、特に好ましくは0.23以上である。当該状態比率の合計は、特に制限されるものではないが、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.35以下、さらに好ましくは0.3以下である。
【0126】
表面のモル比(O/C)、モル比(N/C)、及び状態比率は、後述の試験例4に記載の方法又はこれと同等の方法で測定された値である。
【0127】
本開示の一態様において、上記モル比(O/C)の表面の水接触角は、60°以下であることが好ましい。当該水接触角は、より好ましくは55°以下、さらに好ましくは50°以下、よりさらに好ましくは45°以下である。当該水接触角の下限は、好ましくは30°、より好ましくは35°、特に好ましくは40°である。
【0128】
表面の水接触角は、後述の試験例5に記載の方法又はこれと同等の方法で測定された値である。
【0129】
上記モル比(O/C)の表面を構成する素材は、モル比(O/C)を所定の範囲に調整可能な素材である限り特に制限されない。当該素材としては、例えば樹脂(例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリ(メタクリル酸エステル)、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(L-乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ε-カプロ ラクトン)、ポリ(エチレングリコール)、およびこれらの共重合体等)、金属(金、銀、銅、鉄、亜鉛、アルミニウム、ニッケルおよびこれらの合金または酸化物)、ガラス、シリカ、シリコン等、或いは複合素材が挙げられる。モル比(O/C)を所定の範囲に調整し易いという観点から、当該素材は樹脂であることが好ましい。
【0130】
上記モル比(O/C)の表面は、例えば樹脂表面に対してモル比(O/C)を向上させる処理を行うことにより得ることができる。このような処理としては、特に制限されるものではないが、例えばプラズマ処理、コロナ処理、UV-Ozone処理等が挙げられる。また、別の例として、酸素原子を含む官能基を導入する反応及び/又は酸素原子を含む官能基を比較的多く含む樹脂の添加により得られた樹脂を素材に用いることによっても、上記モル比(O/C)の表面を得ることが可能である。
【0131】
区画が上記モル比(O/C)の表面をより多く含むことにより、本開示の目的効果をより効果的に発現させることができる。この観点から、区画面積(細胞を配置(例えば接着)させる領域の面積)100%に対する上記モル比(O/C)の表面の面積は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上、とりわけ好ましくは99%以上、特に好ましくは100%である。
【0132】
2ステップ法において、細胞層を形成するための区画底面への細胞配置の方法は、細胞懸濁液中の細胞を沈殿させる方法において特に制限されない。静置により自由落下させてもよいし、遠心分離操作など遠心力によって底面に細胞を移動させてもよい。
【0133】
区画底面に配置された細胞は区画底面と接着していることが特に好ましい。
【0134】
底面に配置された細胞を細胞培養温度で静置することで底面と接着させる場合、静置時間は、好ましくは1~48時間、より好ましくは4~36時間、さらに好ましくは12~28時間、とりわけ好ましくは、16~24時間である。
【0135】
本開示の一態様において、1ステップ法/2ステップ法で得られた、基材上に配置された積層体は、本開示の表面上に細胞が配置された状態での溶液置換又は追加に用いることができる。この場合、例えば溶媒置換又は追加後に、センサタンパク質の活性の測定に用いることができる。細胞を保持するために適している溶液(培地等)又はゲルには、化学物質の検出に悪影響を与える物質が含まれ得る又は悪影響を与え得る物性であり得るので、このような悪影響のリスクを抑制するために、活性測定前に、溶液置換又は追加を行うことが好ましい。ゲルの場合は、適宜(例えば温度を上昇させることにより)ゲルを液体状態に変化させてから、溶液置換又は追加を行う。これにより、培地等の溶液を、上記リスクを制御できる溶液(例えば緩衝液等)に置き換えることができる、或いは希釈することにより上記リスクを低減させることができる。
【実施例0136】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0137】
以下の試験例では、培地として、Sf-900III SFM培地を使用した。
【0138】
試験例1.安定発現細胞の作製
クワゴマダラヒトリ(Spilosoma imparilis)由来細胞(SpIm細胞)に、嗅覚受容体タンパク質(ORA)コード配列、嗅覚受容体共受容体コード配列、カルシウムセンサー蛍光タンパク質コード配列、及びピューロマイシン耐性遺伝子コード配列がプロモーター配列の制御下に配置されてなり、且つこれらの配列が5´ITR(逆向き反復配列)及び3´ITRの間に配置されてなるトランスボゾンベクターを導入し、ピューロマイシンでセレクションを行い、上記コード配列及びプロモーター配列を含む外来DNAが染色体ゲノムDNAに組み込まれてなる嗅覚受容体安定発現SpIm細胞(以下、ORA細胞)を作製した。当該嗅覚受容体は、昆虫由来の嗅覚受容体であり、化合物aの受容体である。ORA細胞は、化合物aに応答して蛍光を発する。
【0139】
試験例2.アクリル樹脂溶液Aの作製
acrylamide(モノマー)及びN-[tris(3-acrylamide propoxymethyl)methyl]acrylamide(架橋剤:4AAmST)をPBS(日水製薬 #05913)水溶液に溶解させて、acrylamide/4AAmST水溶液を調製した。Lithium Phenyl(2,4,6-trimethylbenzoyl)phosphinate(光重合開始剤:LPA)をPBS水溶液に溶解させて、LPA水溶液を調製した。acrylamideの終濃度が0.06mmol/g、4AAmSTの終濃度が0.14mmol/g、且つLPAの終濃度が0.0006mmol/gになるように、上記2種の水溶液を混合及び攪拌して、アクリル樹脂溶液Aを得た。
【0140】
試験例3.アクリル樹脂溶液Bの作製
架橋剤として4AAmSTに代えてN,N-bis(2-acrylamide methyl)acrylamide(3AAmST)を用いる以外は試験例2と同様にして、アクリル樹脂溶液Bを得た。
【0141】
試験例4.アクリル樹脂溶液Cの作製
架橋剤として4AAmSTに代えてN,N'-[Oxybis(2,1-ethanediyloxy-3,1-propanediyl)]bisacrylamide(2AAmLN)を用いる以外は試験例2と同様にして、アクリル樹脂溶液Cを得た。
【0142】
試験例5.ゼラチン溶液の作製
超純水に粉末状の魚ゼラチンを添加し、17℃で30分間攪拌後、40℃に昇温して完全溶解するまで攪拌し、魚ゼラチン濃度20%のゼラチン溶液を得た。オートクレーブ滅菌してから、以下の試験に使用した。
【0143】
試験例6.嗅覚受容体の活性測定1
ORA細胞を培地に懸濁し、得られた細胞懸濁液を遠心分離(150G 5min)した後に、上清である培地を除去した。そこへ、アクリル樹脂溶液A~Cのいずれかを添加して5×104 cells/40μLの細胞懸濁アクリル樹脂溶液を得た。細胞懸濁アクリル樹脂溶液を96ウェルプレート (CORNING、カタログ番号:3903)に5×104 cells/40μL/ウェルで播種し、UV光照射装置(CCS株式会社製 365nmのLED光源)を用いて、UV照射(110mW/cm2 x 30秒)によって細胞懸濁アクリル樹脂溶液をゲル化した。これにより、ウェル内に、細胞がゲル内に分散している単層であるゲル細胞層(厚み:約1.25mm)を形成させた(ゲルあり群)。当該ゲル細胞層上に、培地を100μL添加した。また、アクリル樹脂溶液に代えて培地を用いて上記と同様にORA細胞を播種した群(ゲルなし群)も準備した。
【0144】
播種から24時間後に培地を除去し、アッセイバッファー(0.1%BSA/1×Hanks' buffer/20mM HEPES buffer)をゲルあり群には40μL、ゲルなし群には80μL添加した。終濃度が0、10、又は100μMになるように化合物a(ORAが応答する物質)、又は化合物aを含まないバッファーのみを各ウェルに添加し、添加前後の蛍光強度の変化をマイクロプレートリーダー(FlexStation3、Molecular Devices)を用いて測定した。なお、当該マイクロプレートリーダーは、ウェルの底面側から励起光を照射し、ウェルの底面側で蛍光を検出する。
【0145】
結果を図1に示す。細胞がゲル内に分散している単層であるゲル細胞層の場合(ゲルA~C)、化合物aの添加による蛍光強度の上昇が見られなかった。
【0146】
試験例7.嗅覚受容体の活性測定2
ORA細胞を培地に懸濁し、96ウェルプレート (CORNING、カタログ番号:3903)に5×104/100μL/ウェルで播種し、27℃インキュベーター(CO2供給なし)内で静置した。
【0147】
播種から48時間後に、底面に沈殿した細胞(細胞層)が除去されないように上層の培地のみを除去し、細胞層上部にアクリル樹脂溶液A~Cのいずれか40μLを、細胞が巻き上がらないように緩やかに添加し、UV光照射装置(CCS株式会社製 365 nmのLED光源)を用いて、UV照射(110mW/cm2x 30秒)によって細胞懸濁アクリル樹脂溶液をゲル化した。これにより、ウェル内に、単層である細胞層(厚み:約10~50μm)と当該細胞層上に配置されたゲル層(細胞を含まない)(厚み:約1.25mm)とからなる積層体を形成させた(ゲルあり群)。当該ゲル層上に、培地を100μL添加した。また、上記操作を行わずに培地中での培養をそのまま継続した群(ゲルなし群)も準備した。
【0148】
上記操作から24時間後に培地を除去し、0.1%BSA/1×Hanks' buffer/20mM HEPES buffer をゲルあり群には40μL、ゲルなし群には80μL添加した。試験例6と同様にして化合物a添加前後の蛍光強度の変化を測定した。
【0149】
結果を図2に示す。単層である細胞層と当該細胞層上に配置されたゲル層(細胞を含まない)とからなる積層体を採用すると(ゲルA~C)、ゲルなしの場合と同様に、化合物aの添加による蛍光強度の上昇が見られた。
【0150】
試験例8.積層体の製造
ORA細胞懸濁液と20%ゼラチン溶液をゼラチンの終濃度が3.3%となるよう混合し、96-well plate CORNING3903に5×104/120μL/wellで播種し、27℃インキュベーター(CO2供給なし)内で静置した。
【0151】
播種から24時間後、細胞が底面に沈殿して細胞層が形成されていることを確認後、4℃で静置することによりゼラチンゲルを形成させた。これにより、ウェル内に、単層である細胞層(厚み:約10~50μm)と当該細胞層上に配置されたゲル層(細胞を含まない)(厚み:約1.25mm)とからなる積層体を形成させた。
【0152】
試験例9.1step法による積層体の製造に適した基材の検討
試験例9-1.嗅覚受容体の活性測定(TC:Tissue Culture)
培養フラスコからORA細胞を剥離し、0~2%の魚ゼラチンを含む培地(Sf-900 III, Gibco)と混合して細胞懸濁液を作製した。セルカウンターを用いて、細胞懸濁液の細胞密度をカウントした。細胞密度が5×105~1×106cells/mLになるように、細胞密度を調整した。その後、分注機(ASSIST PLUS、Integra)を使用して、TC処理した384ウェルプレート(Greiner、カタログ番号:781098)に1ウェル当たりの細胞数が同じになるように播種した(40μL/ウェル)。細胞播種密度を表1に示す。播種後、プレートを27℃で一晩静置し、細胞をプレートに接着させた。細胞の接着している様子を顕微鏡にて観察した。観察像を図3に示す。その後、プレートを4℃で保存した。
【0153】
プレートを3日間4℃で保存した後、27℃で2時間静置した後、分注機を用いて培地をアッセイバッファーに置き換えた(40μL/ウェル)。その後、顕微鏡にて細胞の様子を観察した。観察像を図4に示す。
【0154】
最終濃度が0、0.1、1、10μMになるように化合物a(ORAが応答する物質)溶液又は化合物aを含まない以外は化合物a溶液と同じ液を各ウェルに添加し、添加前後の蛍光強度の変化をマイクロプレートリーダー(FlexStation3、Molecular Devices)を用いて測定した。結果を図5に示す。
【0155】
細胞が接着した状態で溶液置換を行うと、細胞に対して機械的応力が働く。このため、特にゼラチンを含有するウェルでは細胞が剥がれてしまう(図4)。細胞の剥離は、ゼラチンを含有しないウェルでは顕在化していないものの(図4)、一定の頻度で起こり得ると考えられる。また、ゼラチンを含有するウェルでは、化学物質の検出性が低下した(0.1μMの化合物aは検出できなかった(図5))。
【0156】
試験例9-2.嗅覚受容体の活性測定(Amineコート)
試験例9-1の結果より、細胞接着性を向上させることにより、ゼラチンを含有するウェルにおける化学物質検出性の低下を抑制できると考えられた。そこで、細胞接着性を向上させるコーティング(Amineコート、Falcon、カタログ番号: 356719)がされた384ウェルプレートを用いて、試験例9-1と同様にして試験を行った。細胞播種後、プレートを27℃で一晩静置した直後の細胞観察像を図6に示し、培地をアッセイバッファーに置換した後の細胞観察像を図7に示し、嗅覚受容体の活性測定結果を図8に示す。
【0157】
Amineコートにより細胞の接着性は改善したものの(図4図6との比較)、0.1μMの化合物aは検出できず(図8)、化学物質検出性を向上させることはできなかった。
【0158】
試験例9-3.嗅覚受容体の活性測定(Poly-D-Lysineコート)
試験例9-2の結果を受けて、別のコーティングを試してみることとした。Poly-D-Lysineコートがされた384ウェルプレート(Falcon、カタログ番号:356660)を用いて、試験例9-1と同様にして試験を行った。細胞播種後、プレートを27℃で一晩静置した直後の細胞観察像を図9に、培地をアッセイバッファーに置換した後の細胞観察像を図10に、嗅覚受容体の活性測定結果を図11に示す。
【0159】
Poly-D-LysineコートはAmineコートと細胞の接着性の改善は同程度であった(図6図10との比較)。ただ、それにもかかわらず、予想外にも、0.1μMの化合物aを検出することができ(図11)、化学物質検出性の向上が確認できた。
【0160】
試験例9-4.嗅覚受容体の活性測定(コラーゲンコート)
試験例9-3の結果を受けて、ポリペプチドコーティングにより化学物質検出性を向上できると考えられた。そこで、ポリペプチドであるコラーゲンコートがされた384ウェルプレート(Falcon、カタログ番号:356702)を用いて、試験例9-1と同様の試験を行った。細胞播種後、プレートを27℃で一晩静置した直後の細胞観察像を図12に、培地をアッセイバッファーに置換した後の細胞観察像を図13に、嗅覚受容体の活性測定結果を図14に示す。
【0161】
コラーゲンコートでも、Poly-D-Lysineコートと同様に、0.1μMの化合物aを検出することができ(図14)、化学物質検出性の向上を確認することができた。特に、コラーゲンコートは細胞の剥離がより少なく(図13)、より安定に検出可能であると考えられた。
【0162】
試験例10.2step法による積層体の製造に適した基材の検討
試験例10-1.プレートへの細胞接着
培養フラスコからORA細胞を剥離し、培地(Sf-900 III, Gibco)と混合して細胞懸濁液を作成した。セルカウンターを用いて、細胞懸濁液の細胞密度を計測した。細胞密度が5×105~1×106になるように、細胞密度を調整した。その後、分注機(ASSIST PLUS, Integra)を用いて、3種類のTC(Tissue Culture)処理した384ウェルプレート(樹脂製、プレートA~C)に1ウェル当たりの細胞数が同じになるように播種した(40μL/ウェル)。播種した細胞数を表1に示す。播種後、細胞を接着させるためにプレートを27℃で一晩静置した。その後、プレートを4℃で保存した。
【0163】
【表1】
【0164】
試験例10-2.嗅覚受容体の活性測定1
試験例10-1で3日間4℃で保存したプレートを回収し、27℃で2時間静置し、細胞を室温に戻した後、分注機を用いて培地をアッセイバッファー(0.1% BSAと20 mM HEPESを含むHanks’ バッファー)に置き換えた(40μL/ウェル)。その後、顕微鏡にて細胞の接着している様子を観察した。観察像を図15に示す。
【0165】
最終濃度0、0.1、1、10μMになるように化合物a(ORAが応答する物質)溶液又は化合物aを含まない以外は化合物a溶液と同じ溶液を各ウェルに添加し、添加前後の蛍光強度の変化をマイクロプレートリーダー(FlexStation3、Molecular Devices)を用いて測定した。
【0166】
結果を図16に示す。プレートA~Cの中でも、プレートA及びB(特に、プレートA)を用いた場合は、プレートCを用いた場合に比べて高い蛍光強度が得られた。
【0167】
試験例10-3.プレート表面物性測定1
上記3種類のプレート(プレートA~C、細胞未播種)の細胞接着面に存在する元素の化学的な組成と電子状態を、X線光電子分光装置(Thermo Fisher Scientific、K-Alpha+)を用いて非破壊的に測定した。測定方法の詳細は以下に示す。まず、プレートの裏面からカッターを入れて、ウェルの形状に添ってプレートの底面を切り出し、真空容器内にセットし、真空状態を確保した。次に、XPS装置内カメラで、切り屑等のコンタミ成分を分析しないよう、測定表面を確認した。測定は、AlKα X線源を用い、X線スポット径を300μmとして測定表面に照射した。より正確な測定結果を得るために、測定中にサンプル表面に蓄積した静電気を除去するために中和銃を使用した。サンプルに存在する元素の種類を特定するためにサーベイスキャン測定(Survey Scan Spectrum)を実施した。さらに、サーベイスキャンで検出された元素の化学結合状態を分析するためにナロースキャン(Narrow Scan Spectrum)測定も実施した。
【0168】
結果を表2に示す。サーベイスキャン測定の結果、何れのプレートにもC1s、O1sとN1sのピークが確認できた。ナロースキャン測定により、C1sとO1s スペクトルを波形分離したところ、C-O、O-C=O、CO3 と推定されるピークが検出され、酸素含有官能基の存在が示唆された。N1s については、何れのプレートにおいてもC-N、C=N の存在が示唆された。各元素の異なる化学状態の割合を状態比率(全元素の量は100とする)として示した。状態比率を計算するため、ナロースキャンスペクトルから得られる各元素状態のピーク面積を用いて、それぞれの状態の割合を求めた結果、プレートA及びB(特に、プレートA)は、プレートCに比べて、炭素原子に対する酸素原子のモル比(O/C)が高いことが分かった。
【0169】
【表2】
【0170】
試験例10-4.プレート表面物性測定2
生検トレパンでプレート(細胞未播種)の細胞接着面をくりぬき、接触角計(協和界面科学製DMo-702)上に水平的に置き、超純水0.2μLをその表面に滴下し、画像を撮影し、接触角を算出した。算出した値には5°程度の誤差が見込まれるため、同種類のプレートn=3~4で測定し、その平均値を算出した。結果を表3に示す。
【0171】
【表3】
【0172】
試験例10-5.嗅覚受容体の活性測定2
TC処理プレート上に細胞と培地の混合液を播種し、細胞を接着させるためにプレートを27℃で一晩静置した後、分注機で培地を吸引除去した後、1-2%魚ゼラチンを添加したその後、プレートを4℃で保存した。培地の除去と魚ゼラチンの添加以外は、試験例10-1と同様に細胞接着プレートを調製した。当該細胞接着プレートを用いて、試験例10-2と同様に嗅覚受容体の活性を測定した。その結果、試験例10-2と同じ傾向を示す結果が得られた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16