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特開2024-167248高吸水性樹脂フィルムおよびこれを含む吸水性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167248
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂フィルムおよびこれを含む吸水性物品
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20241126BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20241126BHJP
   C08F 251/02 20060101ALI20241126BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20241126BHJP
   C08F 4/30 20060101ALI20241126BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241126BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20241126BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241126BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20241126BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
A61F13/514 100
A61F13/514 210
C08F251/02
C08F220/06
C08F4/30
B32B27/00 B
B32B7/022
B32B27/30 A
B32B27/12
B32B27/18 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024135679
(22)【出願日】2024-08-15
(62)【分割の表示】P 2022573377の分割
【原出願日】2022-03-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0039666
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0034232
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キユル・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ミョンジン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ソンキョン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ギチョル・キム
(57)【要約】      (修正有)
【課題】厚さが薄くて吸湿能に優れた高吸水性樹脂フィルムと、高吸水性樹脂フィルムを含んで外部のじめじめ感が改善された吸水性物品を提供する。
【解決手段】厚さが5~500μmであり、KSF2611標準によって測定された吸湿能が10~100g/mであり、含水率が1~15%であり、引張強度が5~50MPaである、高吸水性樹脂フィルムであって、酸性基を有し酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系モノマー、セルロース系増粘剤、保湿剤、内部架橋剤、重合開始剤、および溶媒を混合してモノマー組成物を製造する段階;モノマー組成物を基材上にキャスティングしてモノマー組成物フィルムを形成する段階;モノマー組成物フィルムを延伸しながら熱および/または光を照射して含水ゲル重合体フィルムを形成する段階;および含水ゲル重合体フィルムを乾燥させる段階を含む製造方法によって製造される、高吸水性樹脂フィルムとする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが500μm以下であり、
KS F 2611標準によって測定された吸湿能が10~100g/mである、高吸水性樹脂フィルム。
【請求項2】
厚さが10~200μmである、請求項1に記載の高吸水性樹脂フィルム。
【請求項3】
含水率が1~15%であり、引張強度が5~50MPaである、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂フィルム。
【請求項4】
液体不透過性背面シート;通気性防水フィルム;高吸水性樹脂粉末およびパルプを含む吸収体;および液体透過性上部シートを含む吸水性物品であって、
前記液体不透過性背面シートと通気性防水フィルムの間、および/または通気性防水フィルムと吸収体の間に請求項1から3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂フィルムを含む、吸水性物品。
【請求項5】
前記高吸水性樹脂フィルムは、前記液体不透過性背面シートの一面;および/または前記通気性防水フィルムの一面または両面に貼り合わせられたものである、請求項4に記載の吸水性物品。
【請求項6】
前記高吸水性樹脂フィルムは前記通気性防水フィルムの一面に貼り合わせられたものであり、
前記貼り合わせられた高吸水性樹脂フィルムと通気性防水フィルムの通気度は3000~5000g/m・24hrである、請求項4に記載の吸水性物品。
【請求項7】
前記液体不透過性背面シートは、気孔の大きさが20~1000μmである不織布である、請求項4から6のいずれか一項に記載の吸水性物品。
【請求項8】
前記通気性防水フィルムは、通気度が2000~5000g/m・24hrである、請求項4から7のいずれか一項に記載の吸水性物品。
【請求項9】
前記吸収体は、高吸水性樹脂粉末を10~90重量%で含む、請求項4から8のいずれか一項に記載の吸水性物品。
【請求項10】
前記液体透過性上部シートは、坪量が15~30g/mである、請求項4から9のいずれか一項に記載の吸水性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2021年3月26日付韓国特許出願第10-2021-0039666号および2022年3月18日付韓国特許出願第10-2022-0034232号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、吸湿能に優れた高吸水性樹脂フィルムおよび前記高吸水性樹脂フィルムを含むことによって外部のじめじめ感が改善されて使用感に優れた吸水性物品に関するものである。
【背景技術】
【0003】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁用パッドなどの吸水性物品は一般に液体不透過性背面シート、吸収体、および着用者の皮膚と接触する液体透過性上部シートを含み、必要によって通気性向上のための通気性防水フィルム、外観イメージ向上のためのデコシート、着用感を向上させ横漏れを防止するための脚弾性体などをさらに含むことができる。
【0004】
このような吸水性物品で、液体透過性上部シートとしては合成高分子不織布など体液が吸収体へ迅速に通過できる素材が使用される。吸収体は高吸水性樹脂、パルプ、ティッシュ、または不織布などからなり、液体透過性上部シートを透過した体液を急速に吸収し、これを保有する機能を果たす。液体不透過性背面シートは吸収体に吸収された体液が外側に漏れ出るのを防止することができるようにするものであって、天然または合成繊維からなる織布または不織布が使用される。
【0005】
前記液体不透過性背面シートはその目的上、基本的に防水性能を有するように設計されるが、防水能が過度に高い場合、水蒸気および空気が透過しなくて着用感が低下する問題がある。よって、通常液体不透過性背面シートは水粒子は透過できず、より大きさが小さい水蒸気粒子は透過可能な大きさの気孔を有する透湿防水性織布または不織布を使用する。しかし、前記背面シートの透湿性によって吸収体から放出される湿気が背面シートの外部まで伝達されて、長時間着用時、吸水性物品の外部でもじめじめ感が感じられて使用感が低下する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題を解決するためのものであって、厚さが薄くて吸湿能に優れた高吸水性樹脂フィルムと、前記高吸水性樹脂フィルムを含んで外部のじめじめ感が改善された吸水性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、厚さが500μm以下であり、KS F 2611標準によって測定された吸湿能が10~100g/mである、高吸水性樹脂フィルムが提供される。
【0008】
前記高吸水性樹脂フィルムは、厚さが10~200μmであってもよい。
【0009】
前記高吸水性樹脂フィルムは、含水率が1~15%であり、引張強度が5~50MPaであってもよい。
【0010】
本発明の他の一実施形態によれば、液体不透過性背面シート;通気性防水フィルム;高吸水性樹脂粉末およびパルプを含む吸収体;および液体透過性上部シートを含む吸水性物品であって、前記液体不透過性背面シートと通気性防水フィルムの間、および/または通気性防水フィルムと吸収体の間に高吸水性樹脂フィルムを含み、前記高吸水性樹脂フィルムは厚さが500μm以下であり、KS F 2611標準によって測定された吸湿能が10~100g/mである、吸水性物品が提供される。
【0011】
前記高吸水性樹脂フィルムは、厚さが10~200μmであってもよい。
【0012】
前記高吸水性樹脂フィルムは、前記液体不透過性背面シートの一面;および/または前記通気性防水フィルムの一面または両面に貼り合わせられたものであってもよい。
【0013】
一例として、前記高吸水性樹脂フィルムは前記通気性防水フィルムの一面に貼り合わせられたものであり、前記貼り合わせられた高吸水性樹脂フィルムと通気性防水フィルムの通気度は3000~5000g/m・24hrであってもよい。
【0014】
前記液体不透過性背面シートは、気孔の大きさが20~1000μmである不織布であってもよい。
【0015】
前記通気性防水フィルムは、通気度が2000~5000g/m・24hrであってもよい。
【0016】
前記吸収体は、高吸水性樹脂粉末を10~90重量%で含むことができる。
【0017】
前記液体透過性上部シートは、坪量が15~30g/mであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の高吸水性樹脂フィルムは厚さが非常に薄いながらも吸湿能に優れて吸湿機能が必要な物品に好適に使用することができる。また、本発明の吸水性物品は吸収体と別途に前記高吸水性樹脂フィルムを含むことによって外部から感じられるじめじめ感が顕著に減少し、これにより着用者の身体によって温められる時発生する皮膚発疹および他の刺激を減少させることができ、優れた使用感を示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】既存の吸水性物品の構成を示した断面図である。
図2】本発明の一実施形態による吸水性物品の構成を示した断面図である。
図3】本発明の一実施形態による吸水性物品の構成を示した断面図である。
図4】本発明の一実施形態による吸水性物品の構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであって、発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0021】
本発明は多様な変更を加えることができ様々な形態を有することができるので、特定実施形態を例示し下記で詳細に説明する。しかし、これは発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。
【0022】
同様に、本発明を説明するために本明細書に添付された図面は本発明の一実施形態であって、本発明は様々の異なる形態に実現することができ、本明細書に限定されない。この時、図面では本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分を省略し、明細書全体にわたって類似の部分については類似の図面符号を使用した。また、図面で表された構成要素の大きさおよび相対的な大きさは実際縮尺とは関係がなく、説明の明瞭性のために縮小されるか誇張されたものであり得る。
【0023】
以下、本発明の高吸水性樹脂フィルムおよびこれを含む吸水性物品を詳しく説明する。
【0024】
高吸水性樹脂フィルム
本発明の一実施形態による高吸水性樹脂フィルムは厚さが500μm以下であり、KS F 2611標準によって測定された吸湿能が10~100g/mを満足する。
【0025】
前記高吸水性樹脂フィルムは既存の粒子状の高吸水性樹脂と区分される薄膜のフィルム形態のアクリル酸系重合体であって、含水率が15%以下であり、無色透明であり、弾性があり、柔軟性に優れた膜形態を示す。前記高吸水性樹脂フィルムは、取り扱い時飛散されるか吸水性物品から漏出される恐れがなく、パルプなどの補助剤なく使用することができる。
【0026】
また、前記高吸水性樹脂フィルムは、厚さが薄く吸湿能に優れて、物品の体積を増加させるか形態を害せずに多様な物品に吸湿剤として使用することができる。
【0027】
具体的に、前記高吸水性樹脂フィルムの吸湿能は10g/m以上、13g/m以上、15g/m以上、または20g/m以上であり、100g/m以下、または90g/m以下であってもよい。前記吸湿能はKS F 2611標準によって測定することができ、具体的な測定法は実施例で後述する。
【0028】
前記高吸水性樹脂フィルムの厚さが厚いほど吸湿能は増加できるが、500μmを超過して過度に厚い場合、適用される物品の形態に影響を与えることがある。逆に、高吸水性樹脂フィルムが過度に薄い場合は吸湿効果を十分に得ることができない。
【0029】
また、高吸水性樹脂フィルムの厚さが500μmを超過する場合、通気性が低下することがあるが、500μm以下の薄膜型高吸水性樹脂フィルムは水分吸湿時フィルムの柔軟性が大幅増加し重合体鎖間の空間性(capacity)が増えるので通気性を確保しながら吸湿性能を発揮することができる。したがって、後述の吸水性物品のように吸湿能と通気性を同時に要する物品により好適に使用することができる。
【0030】
このような観点から、前記高吸水性樹脂フィルムの厚さ(h)は、好ましくは5μm以上、10μm以上、または15μm以上でありながら、400μm以下、300μm以下、200μm以下、または150μm以下であってもよい。
【0031】
一方、前記高吸水性樹脂フィルムの含水率は15重量%以下、または12重量%以下、または11重量%以下、または10重量%以下でありながら1重量%以上、または2重量%以上、または4重量%以上、または6重量%以上であってもよい。
【0032】
前記「含水率」は、試料の乾燥前重量に対して試料が含有する水分の量を百分率で表わしたものである。即ち、含水率は、試料の乾燥前重量から試料の乾燥後重量を引いた値を試料の乾燥前重量で割った後、100を掛けて計算することができる。この時、乾燥条件は、常温で約150℃まで温度を上昇させた後、150℃で維持する方式で、総乾燥時間は温度上昇段階5分を含んで20分と設定する。
【0033】
前記高吸水性樹脂フィルムは厚さが500μm以下を満足し、このような厚さ範囲で可視光線に対する全光線透過率が89.5%で高い透明性を示す。本発明の一実施形態による高吸水性樹脂フィルムの全光線透過率は90%以上、90.3%以上、または91%以上、または91.5%以上、または92%以上であってもよい。全光線透過率は理論的に100%であってもよく、一例として99%以下であってもよい。
【0034】
また、本発明の高吸水性樹脂フィルムは、厚さ1~500μm範囲でASTM D1925規格による黄色度(Yellow Index)が2.6以下、2.5以下、2.4以下、2.3以下、1.9以下、1.5以下、または1.3以下であってもよい。
【0035】
一方、前記高吸水性樹脂フィルムは、含水率が1%~15%であり、引張強度が5MPa以上であってもよい。好ましくは、含水率が5~15%である時、高吸水性樹脂フィルムの引張強度は10MPa以上、13MPa以上、14MPa以上、19MPa以上、または22MPa以上でありながら、50MPa以下、47MPa以下、45MPa以下、40MPa以下、または35MPa以下であってもよい。前記引張強度範囲を満足する高吸水性樹脂フィルムは、破損の恐れが少なくて、おむつなどの吸水性物品に適用される場合、着用者の動きにも簡単に破損されず、優れた吸湿能を示すことができる。
【0036】
一方、高吸水性樹脂フィルムの通気性をさらに向上させるために、高吸水性樹脂フィルムにホール構造を含むパターンを形成することができる。パターンの形状は特に制限されず、ホールの形状、最大直径、平均直径、ホール間間隔、配列などを調節して適切な通気能と吸湿能を有する高吸水性樹脂フィルムを製造することができる。
【0037】
または、高吸水性樹脂フィルム製造時、炭酸カルシウムなどの発泡剤を使用して多孔性構造を形成することによって、高吸水性樹脂フィルムの通気性をさらに向上させることができる。
【0038】
前述の高吸水性樹脂フィルムは、酸性基を有し前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系モノマー、セルロース系増粘剤、保湿剤、内部架橋剤、重合開始剤、および溶媒を混合してモノマー組成物を製造する段階;前記モノマー組成物を基材上にキャスティングしてモノマー組成物フィルムを形成する段階;前記モノマー組成物フィルムを延伸しながら熱および/または光を照射して含水ゲル重合体フィルムを形成する段階;および前記含水ゲル重合体フィルムを乾燥させる段階を含む製造方法によって製造することができる。
【0039】
前記製造方法によれば、粘度が調節されたモノマー組成物溶液から溶液キャスティング法を通じてモノマー組成物フィルムを製造し、これを重合および乾燥することによってフィルム形態の高吸水性樹脂を製造することができる。特に、重合段階でモノマー組成物フィルムに張力を加えて延伸することによって、製造される高吸水性樹脂フィルムの引張強度を調節することができる。
【0040】
以下、前記高吸水性樹脂フィルムの製造方法を具体的に説明する。
【0041】
前記モノマー組成物は、酸性基を有し前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系モノマー、セルロース系増粘剤、保湿剤、重合開始剤、および溶媒を含む。
【0042】
まず、前記アクリル酸系モノマーは、下記化学式1で表される化合物である:
【0043】
[化学式1]
-COOM
【0044】
上記化学式1中、
は、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0045】
好ましくは、前記アクリル酸系モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選択される1種以上を含む。
【0046】
ここで、前記アクリル酸系モノマーは、酸性基を有し前記酸性基の少なくとも一部が中和されたものであってもよい。好ましくは、前記モノマーを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質で部分的に中和させたものを使用することができる。この時、前記アクリル酸系モノマーの中和度は40~95モル%、または40~80モル%、または45~75モル%であってもよい。前記中和度の範囲は最終物性によって調節することができる。前記中和度が過度に高ければ中和されたモノマーが析出されて重合が円滑に行われ難いことがあり、逆に、中和度が過度に低ければ高分子の吸収力が大きく低下することがある。
【0047】
好ましい一実施形態で、前記アルカリ物質としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、またはこれらの組み合わせを使用することができる。特にアルカリ物質として水酸化カリウムを含む場合、より優れた柔軟性および寸法安定性を有する高吸水性樹脂フィルムを製造することができる。
【0048】
前記アクリル酸系モノマーの濃度は、前記高吸水性樹脂の原料物質および溶媒を含むモノマー組成物に対して約20~約60重量%、好ましくは約40~約50重量%とすることができ、重合時間および反応条件などを考慮して適切な濃度とすることができる。但し、前記モノマーの濃度が過度に下がれば高吸水性樹脂の収率が低く経済性に問題が発生することがあり、逆に濃度が過度に上がればモノマーの一部が析出されるなど工程上問題が発生することがあり、高吸水性樹脂の物性が低下することがある。
【0049】
一方、本発明では、溶液キャスティング法を通じてモノマー組成物をフィルム形態に塗布することができるように、モノマー組成物に増粘剤および保湿剤を含む。
【0050】
このように増粘剤および保湿剤を同時に含むことによって、本発明のモノマー組成物はフィルム形態にキャスティングするのに適した粘度を示し、フィルムキャスティング後重合過程で適切な含水率を維持することができ、製造される高吸水性樹脂フィルムが高い柔軟性を示すことができる。
【0051】
本発明で増粘剤としてはセルロース系増粘剤が使用され、具体的に、ナノセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択される1種以上を使用することができる。好ましくは、ナノセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0052】
前記セルロース系増粘剤は、モノマー組成物内固形分100重量部に対して、0.01重量部以上、0.1重量部以上、0.2重量部以上、または0.35重量部以上でありながら、5重量部以下、3重量部以下、1重量部以下、または0.9重量部以下で含まれてもよい。
【0053】
この時、モノマー組成物内の固形分は、溶媒を除いた組成物の全成分を意味する。即ち、前記固形分は、アクリル酸系モノマー、アクリル酸系モノマーを中和させるためのアルカリ物質、セルロース系増粘剤、保湿剤、架橋剤、熱重合開始剤、光重合開始剤、内部架橋剤、その他の添加剤の総含量を意味する。
【0054】
万一、セルロース系増粘剤の含量がモノマー組成物内固形分100重量部に対して0.01重量部未満であれば十分な増粘効果を確保することができなくてモノマー組成物フィルム製造が難しいことがあり、逆に、5重量部を超過すればモノマー組成物の粘度が過度に高まってフィルムの厚さが厚くなり、フィルム厚さを均一に制御しにくいことがある。
【0055】
前記保湿剤は、通常医薬品、化粧品、化学製品などに保湿成分として使用される物質を制限なく使用することができる。このような保湿剤の例としては、分子内ヒドロキシ基を2以上含む多価アルコール、クエン酸、およびクエン酸塩からなる群より選択される1種以上が挙げられる。
【0056】
具体的に、前記多価アルコールは、分子内ヒドロキシ基を3~12個含む、炭素数3~30の多価アルコールを使用することができる。一例として、前記多価アルコールは、グリセリン;ジグリセリン;プロピレングリコール;ブチレングリコール;ソルビトール;ポリエチレングリコール;ポリグリセリン-3;ポリグリセリン-6;ポリグリセリン-10;およびポリグリセリル-10ジステアレートおよびその誘導体(炭素数3~18);からなる群より選択される1種以上であってもよく、このうち、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、およびソルビトールからなる群より選択される1種以上を好ましく使用することができる。
【0057】
また、クエン酸および/またはクエン酸塩を保湿剤として使用することができる。クエン酸塩の例としては、トリエチルシトレート、メチルシトレート、ナトリウムシトレート、トリナトリウム2-メチルシトレートなどが挙げられる。
【0058】
前記保湿剤は、アクリル酸系モノマー100重量部に対して、5重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、または30重量部以上でありながら、70重量部以下、60重量部以下、または50重量部以下で使用されることが好ましい。
【0059】
保湿剤の含量がアクリル酸系モノマー100重量部に対して5重量部未満であればモノマー組成物フィルムの含水率が十分でなくて後続の重合および乾燥過程でフィルムが乾いてしまうか砕けることがあり、製造される高吸水性樹脂フィルムの柔軟度を確保することができない問題がある。逆に、多価アルコールの含量がアクリル酸系モノマー100重量部に対して70重量部を超過すれば高吸水性樹脂フィルムの吸収能を低下させる問題があることがある。したがって、保湿剤の含量は前記範囲を満足するのが好ましい。
【0060】
前記モノマー組成物は、重合体の架橋のための内部架橋剤を含む。前記内部架橋剤は、通常の高吸水性樹脂の製造時使用されるものを使用することができる。より具体的に、前記内部架橋剤としては、前記アクリル酸系モノマーの水溶性置換基と反応できる官能基を一つ以上有しながら、エチレン性不飽和基を一つ以上有する架橋剤;あるいは前記モノマーの水溶性置換基および/またはモノマーの加水分解によって形成された水溶性置換基と反応できる官能基を二つ以上有する架橋剤を使用することができる。
【0061】
前記内部架橋剤の具体的な例としては、炭素数8~12のビスアクリルアミド、ビスメタアクリルアミド、炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アクリレートまたは炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルなどが挙げられ、より具体的に、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリレート、エチレンオキシ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシ(メタ)アクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールトリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリアリルアミン、トリアリールシアヌレート、トリアリルイソシアネート、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選択された一つ以上を使用することができる。一実施形態で、前記内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを使用することができる。
【0062】
前記内部架橋剤は、モノマー組成物に対して5000ppm以下の濃度で含まれて、重合された高分子を架橋させることができる。一実施形態で、前記内部架橋剤は100ppm以上、250ppm以上、または500ppm以上でありながら、5000ppm以下、4500ppm以下、または4000ppm以下で含まれてもよい。前記内部架橋剤の含量は、製造される高吸水性樹脂フィルムの厚さと目的とする引張強度の範囲によって適切な含量に調節することができる。
【0063】
本発明の高吸水性樹脂フィルムの製造方法で、重合時使用される重合開始剤は高吸水性樹脂の製造に一般に使用されるものであれば特に限定されない。
【0064】
具体的に、前記重合開始剤は、重合方法によって熱重合開始剤またはUV照射による光重合開始剤を使用することができる。但し、光重合方法によっても、紫外線照射などの照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によってある程度の熱が発生するので、追加的に熱重合開始剤を含むこともできる。好ましい一実施形態によれば、重合開始剤として光重合開始剤および熱重合開始剤を同時に使用することができる。
【0065】
前記光重合開始剤は、紫外線などの光によってラジカルを形成することができる化合物であれば、その構成の限定がなく使用することができる。
【0066】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびアルファ-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される一つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体例としては、商用のlucirin TPO(2,4,6-Trimethylbenzoyldiphenylphosphine oxide)、Irgacure 819(Phenylbis(2,4,6-trimethylbenzoyl)phosphine oxide)などが挙げられる。より多様な光重合開始剤についてはReinhold Schwalm著書の“UV Coatings:Basics、Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)”p.115によく明示されており、前述の例に限定されない。
【0067】
前記光重合開始剤は、前記モノマー組成物に対して、10ppm以上、20ppm以上、または40ppm以上でありながら、2000ppm以下、1000ppm以下、500ppm以下、または100ppm以下で含まれてもよい。このような光重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなることがあり、光重合開始剤の濃度が過度に高ければ高吸水性樹脂の分子量が小さく物性が不均一になることがある。
【0068】
また、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選択される一つ以上を使用することができる。具体的に、過硫酸塩系開始剤の例としては過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチラミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitrile)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノ吉草酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤については、Odian著書の‘Principle of Polymerization(Wiley、1981)’、p203によく明示されており、前述の例に限定されない。
【0069】
前記熱重合開始剤は、前記モノマー組成物に10ppm以上、100ppm以上、または500ppm以上でありながら、2000ppm以下、1500ppm以下、または1000ppm以下で含まれてもよい。このような熱重合開始剤の濃度が過度に低い場合、追加的な熱重合がほとんど起こらなくて熱重合開始剤の追加による効果が微小なことがあり、熱重合開始剤の濃度が過度に高ければ高吸水性樹脂の分子量が小さく物性が不均一になることがある。
【0070】
前記モノマー組成物は必要によって可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0071】
または、前記モノマー組成物は添加剤として発泡剤をさらに含むことができる。このようなモノマー組成物から製造される高吸水性樹脂フィルムは、多数の気孔を有する多孔性構造を有するようになり、これによってより高い通気性を示すことができる。
【0072】
前記発泡剤は、重合時および/または乾燥時に発泡されるものであって、例えば、熱膨張性微小球体(expandable microsphere)、膨張した微小球体(expanded microsphere)、アゾ系化合物(azo compound)、および無機発泡剤からなる群より選択される1種以上を使用することができる。これら発泡剤は、高吸水性樹脂フィルムに多数の気孔を形成させ、これにより高吸水性樹脂フィルムの初期吸収能が大きく向上できる。
【0073】
前記熱膨張性微小球体は、炭化水素を含むコアと、前記コアを囲む熱可塑性樹脂シェルを含む構造を有することができる。
【0074】
前記熱膨張性微小球体のコアを構成する炭化水素は、n-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、iso-ヘプタン、シクロヘプタン、n-オクタン、iso-オクタンおよびシクロオクタンから構成された群より選択された1種以上であってもよい。この中でも炭素数3~5の炭化水素(n-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン)が適する。
【0075】
そして、前記熱膨張性微小球体のシェルを構成する熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンから構成された群より選択された1種以上のモノマーから形成されるポリマーであってもよい。この中でも(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリロニトリルの共重合体、または(メタ)アクリレート単独重合体が前述の範囲の初期吸収能を実現するのに最も適する。
【0076】
前記熱膨張性微小球体は熱供給によって膨張する形態の発泡剤であって、モノマーの重合および/または乾燥段階の高温条件下で膨張して高吸水性樹脂フィルムに気孔を形成することができる。このような熱膨張性微小球体はコアとシェルを成す成分と各成分の重量、平均粒径によっ膨張特性が変わり、これを調節することによって所望の大きさに膨張が可能なので、前記高吸水性樹脂フィルムの気孔構造を調節することができる。
【0077】
前記熱膨張性微小球体は膨張前の平均粒径(D50)が2μm以上、5μm以上、7μm以上、または10μm以上であり、50μm以下、40μm以下、または35μm以下であってもよい。前記熱膨張性微小球体が前記のような平均粒径を示す時、適切な気孔度を達成するのに適すると判断することができる。
【0078】
この時、前記熱膨張性微小球体の平均粒径(D50)は、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販されるレーザ回折粒度測定装置(例えば、Mastersizer 3000)に導入して粒子がレーザビームを通過する時、粒子大きさによる回折パターン差を測定して粒度分布を算出することによって測定することができる。
【0079】
前記熱膨張性微小球体が高吸水性樹脂フィルムに適正な大きさの気孔を形成することができるかどうかは、前記カプセルを空気中で発泡させて膨張比率および大きさを確認することによって確認することができる。
【0080】
本発明によって製造される高吸水性樹脂フィルムは、厚さが0.8mm以下、好ましくは0.001~0.8mmの範囲であるので、気孔の大きさは10~500μm程度であることが適切である。よって、高吸水性樹脂フィルムに適切な大きさの気孔を形成させるために熱膨張性微小球体の膨張特性を把握する必要がある。
【0081】
具体的に、ガラスペトリ皿の上に熱膨張性微小球体を塗布した後、空気中で熱を10分間加えて熱膨張性微小球体を膨張させる。この時、熱膨張性微小球体が3~15倍、2~12倍、あるいは1~7倍の空気中での最大膨張比率を示すと、適切な大きさの気孔を有する高吸水性樹脂フィルムを製造するのに適する。
【0082】
また、熱膨張性微小球体が150μm以下の空気中での最大膨張大きさを示す時、適正な大きさの気孔を形成することができる。具体的に、熱膨張性微小球体が10~500μm、50~300μm、70~150μm、あるいは75~150μmの空気中での最大膨張大きさを示すと、適切な大きさの気孔を有する高吸水性樹脂フィルムを製造するのに適する。
【0083】
前記熱膨張性微小球体は、膨張を始める温度が60~200℃、70~170℃、または80~165℃であってもよく、最大膨張に到達した時の温度は100~240℃、120~200℃、または130~190℃であってもよい。
【0084】
このような熱膨張性微小球体の例としては、Nouryon社のExpancel DUシリーズであって、Expancel 461 DU 40、Expancel 461 DU 20、Expancel 031 DU 40、Expancel 053 DU 40、Expancel 551 DU 40;および/またはMatsunomo社のMicrosphere Fシリーズであって、Microsphere F-AC170D、Microsphere F-36、Microsphere F-36LV、Microsphere F-48、Microsphere F-80GS、Microsphere F-50などが挙げられる。好ましくは、炭化水素コアとアクリレートおよびアクリロニトリル共重合体のシェルを含むExpancel 031 DU 40および/または炭化水素コアとアクリレート共重合体のシェルを含むMicrosphere F-AC170Dを使用することができるが、これらに制限されるわけではない。
【0085】
前記膨張した微小球体は使用前既に膨張した状態の発泡剤であって、熱可塑性樹脂中空粒子の表面にタルクおよび/または炭酸カルシウムなどの無機物質がコーティングされたものであってもよい。
【0086】
前記熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンから構成された群より選択された1種以上のモノマーから形成されるポリマーであってもよい。
【0087】
好ましくは、前記膨張した微小球体は、(メタ)アクリレートおよび/または(メタ)アクリロニトリル共重合体中空粒子の表面に炭酸カルシウムがコーティングされたものであってもよい。
【0088】
膨張した微小球体の熱可塑性樹脂中空粒子はそれ以上膨張せず、加熱時収縮するが、表面の無機物質が発泡性を示す。よって、膨張した微小球体の粒径と類似の大きさの気孔が形成されるので、膨張した微小球体の粒径を適切に選択して高吸水性樹脂フィルムに形成される気孔の大きさを調節することができる。
【0089】
よって、膨張した微小球体の平均粒径(D50)は、10μm以上、20μm以上、または30μm以上であり、150μm以下、130μm以下、または120μm以下の範囲であることが、前述のように適切な大きさの気孔を有する高吸水性樹脂フィルムを製造するのに適する。この時、平均粒径の測定は、前記熱膨張性微小球体の粒径測定法を使用することができる。
【0090】
一方、前記膨張した微小球体の発泡温度は、130℃以上、140℃以上、または150℃以上であり、200℃以下、180℃以上であってもよい。
【0091】
前記膨張したカプセルの例としては、Matsunomo社のMicrosphere MFLシリーズであって、MFL-110CAL、MFL-100MCA、MFA HD60CA、MFL HD30CA、MFL-SEVENなどが挙げられ、好ましくは、アクリレートおよびアクリロニトリル共重合体の中空粒子表面に炭酸カルシウム粉末がコーティングされているMFL-110CALを使用することができるが、これに制限されるわけではない。
【0092】
前記アゾ系化合物としては2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライドおよび2,2-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレートなどのアゾアミジン系化合物を使用することができ、好ましくは、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライドを使用することができる。
【0093】
前記無機発泡剤としては、炭酸カルシウム(CaCO)、重炭酸ナトリウム(NaHCO)、重炭酸アンモニウム(NHHCO)、炭酸アンモニウム((NHCO)、亜硝酸アンモニウム(NHNO)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)および炭酸ナトリウム(NaCO)のうちから選択される1種以上を使用することができ、好ましくは、炭酸カルシウムを使用することができる。
【0094】
前記無機発泡剤としては、粒径1nm~100μm範囲のマイクロサイズ、またはナノサイズの粒子が全て使用可能であり、目的とする高吸水性樹脂シートの物性によって適切な種類を選択することができる。この時、無機発泡剤の粒径は前述のレーザ回折法によって測定することができ、または、走査電子顕微鏡(SEM)を通じて測定することができる。
【0095】
本発明で、前記熱膨張性微小球体、膨張した微小球体、アゾ系化合物、および無機発泡剤はそれぞれ発泡剤として使用することができ、または1種以上の発泡剤を組み合わせて使用することができる。
【0096】
一方、熱膨張性微小球体および膨張した微小球体のうちの1種以上を第1発泡剤として使用し、アゾ系化合物および無機発泡剤のうちの1種以上を第2発泡剤として混合して使用する時、第1発泡剤および第2発泡剤の重量比は1:0.3~1:3の範囲であってもよく、または1:0.5~1:2の範囲であってもよい。このような重量比を満足する時、前述のように向上した初期吸収速度を示すことができる。
【0097】
一方、前記発泡剤は、モノマー組成物100重量部に対して、0.1~10重量部で含まれ、0.5~7重量部、または1~5重量部で含まれることがより好ましい。
【0098】
万一、発泡剤の含量がモノマー組成物100重量部に対して0.1重量部未満であれば、発泡による高吸水性樹脂フィルムの多孔性構造を確保することができなく、これにより初期吸収速度向上効果を得ることができない。
【0099】
また、発泡剤の含量がモノマー組成物100重量部に対して10重量部を超過する場合、重合時発泡剤によって重合体の架橋度が低下するという問題点がある。そして、熱膨張性微小球体、膨張した微小球体発泡剤は、溶媒(例えば、水)への溶解度が低く、密度が低いため、その含量がモノマー組成物100重量部に対して10重量部を超過する場合、モノマー組成物から発泡剤が析出される現象が起こることがあり、これにより発泡がよく行われないことがある。
【0100】
前記の発泡剤は、大部分80℃以上、または100℃以上で活発に発泡が行われる。よって、前記発泡剤の発泡は、含水ゲル重合体フィルムの乾燥段階で主に起こる。
【0101】
前述のアクリル酸系不飽和モノマー、セルロース系増粘剤、保湿剤、内部架橋剤、重合開始剤、および添加剤などの原料物質は、溶媒に溶解されたモノマー組成物溶液の形態で準備される。
【0102】
使用できる前記溶媒は前述の成分を溶解することができればその構成の限定なく使用することができ、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択された1種以上を組み合わせて使用することができる。一例として、前記溶媒としては水を使用することができる。
【0103】
本発明で、前記モノマー組成物はセルロース系増粘剤および保湿剤を含むことによって溶液キャスティング法に適した粘度を示す。具体的に、前記モノマー組成物の25℃での粘度は100mPa・s以上、140mPa・s以上、または200mPa・s以上でありながら、5000mPa・s以下、2300mPa・s以下、2000mPa・s以下、1500mPa・s以下、または1400mPa・s以下であってもよい。モノマー組成物の粘度は粘度計(例えば、TOKI社のTV-22)で、スピンドル#1、回転速度1rpm条件下で測定することができる。
【0104】
万一、モノマー組成物の粘度が100mPa・s未満であればモノマー組成物フィルムを均一な厚さでキャスティングし、これを延伸しながら重合しにくいことがある。逆に、モノマー組成物の粘度が5000mPa・sを超過すれば均一なモノマー組成物製造が難しく、モノマー組成物の流動性が低くて工程性が低下し、脱泡が難しいので好ましくない。
【0105】
前記モノマー組成物を製造した後、これを基材上にキャスティングしてモノマー組成物フィルムを製造し、これを延伸すると同時に重合して含水ゲル重合体フィルムを形成する。このようなモノマー組成物のキャスティングおよび重合過程はロールツーロール工程を通じて連続的に行うことができる。
【0106】
まず、モノマー組成物を基材上に塗布してモノマー組成物フィルムを製造する。
【0107】
具体的に、前記基材としては、通常離型フィルムとして使用される、少なくとも一表面がシリコーンまたはフッ素などで疎水処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用することができる。一例として、前記基材は、シロキサン系高分子またはポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))で表面処理されたPETフィルムであってもよい。しかし、基材の材質はこれに限定されず、モノマー組成物の組成および性状によって適した基材を選択することができる。
【0108】
一例として、前記表面が疎水処理されたPETフィルムは、水に対する接触角が105°~110°であってもよく、また、表面エネルギーが20~25mN/m範囲であるものであってもよい。このような疎水処理されたPETフィルムは、モノマー組成物フィルムの塗布が容易であるだけでなく、重合以後製造された含水ゲル重合体フィルムの剥離が容易であって製造工程の便宜性を向上させることができる。特に、モノマー組成物に前述のポリエーテル変性シロキサン系界面活性剤を含む場合、前記の接触角および表面エネルギー特性を有する疎水処理されたPETフィルムとの親和度がさらに高いので均一な厚さでキャスティングが可能であり、ロールツーロール連続工程でも均一で薄いフィルムを形成することができて生産性をさらに向上させることができる。
【0109】
一般に高分子の溶液キャスティング法で高分子溶液キャスティング後、溶媒を除去することと異なり、本発明ではモノマー組成物を基材上に塗布した後、含水率が低下しないように直ちに延伸および重合過程を行う。
【0110】
万一、モノマー組成物フィルムの含水率が過度に低ければ、重合前モノマー組成物を構成する成分が析出されることがあり、重合後フィルムが砕ける問題が発生することがある。よって、モノマー組成物フィルムの含水率は30重量%~60重量%範囲を満足することが好ましく、30重量%~50重量%、または30重量%~45重量%範囲を満足することが好ましい。
【0111】
モノマー組成物フィルムの厚さは、目的とする高吸水性樹脂フィルムの厚さによって適切に調節することができる。モノマー組成物フィルムは、重合段階では厚さがほとんど変化しないが、重合以後含水ゲル重合体フィルムの乾燥過程で含水率が減少しながら約10~40%、または15~35%程度厚さが減少することがあるので、これを勘案して適切な厚さでモノマー組成物フィルムを製造する。
【0112】
一例として、モノマー組成物フィルムの厚さは800μm以下、600μm以下、または500μm以下でありながら、1μm以上、5μm以上、または10μm以上であってもよいが、これに制限されるわけではなく、モノマー組成物の組成や重合、乾燥段階での具体的な条件、目的とする高吸水性樹脂フィルムの厚さによって適切に調節することができる。
【0113】
その次に、モノマー組成物フィルムを縦方向(MD方向)に延伸しながら熱および/または光を照射して重合反応を行って、含水ゲル重合体フィルムを形成する。このように重合時フィルムを延伸することによって製造される高吸水性樹脂フィルムの引張強度などの物性を調節することができる。
【0114】
この時、モノマー組成物フィルムに加える張力は、40N/m以上、または45N/m以上、または50N/m以上、または60N/m以上でありながら、100N/m以下、または90N/m以下、または70N/m以下であってもよい。万一、過度に大きい張力を加えて延伸すればモノマー組成物フィルムが切れるか厚さが過度に薄くなる問題が発生することがあり、張力が過度に小さい場合、フィルムの引張強度などの物理的特性を確保することができないことがある。
【0115】
重合時温度はモノマー組成物の組成によって適切に調節することができるが、円滑な反応進行のために40℃、または50℃以上であることが好ましい。また、温度が過度に高い場合、溶媒が蒸発してモノマー組成物を構成する成分が析出されることがあるので、重合温度は90℃以下、または80℃以下であることが好ましい。
【0116】
前記重合段階を経て製造された含水ゲル重合体フィルムの含水率は約20重量%以上、好ましくは25重量%以上でありながら、40重量%以下、または35重量%以下であってもよい。よって、前記含水ゲル重合体フィルムを乾燥させて最終高吸水性樹脂フィルムを製造する。
【0117】
前記乾燥段階の温度は、80~150℃、または90~100℃範囲が好ましい。前記温度範囲内で約5~30分間乾燥することによって、含水率が15重量%以下、または12重量%以下、または10重量%以下、または9重量%以下でありながら、1重量%以上、または2重量%以上、または4重量%以上、または6重量%以上である高吸水性樹脂フィルムを得ることができる。
【0118】
吸水性物品
本発明の一実施形態による吸水性物品は、液体不透過性背面シートと吸収体の間に前述の高吸水性樹脂フィルムを含むことを特徴とする。これにより、前記吸水性物品は液体を吸収した吸収体から放出される水分によって外部から感じられるじめじめ感が改善されて、優れた使用感を示すことができる。
【0119】
図1は、既存の吸水性物品1の構成を示す断面図である。既存の吸水性物品1は、液体不透過性背面シート11、通気性防水フィルム12、吸収体13、および液体透過性上部シート14を含む。
【0120】
これに対して、図2~4に示されているように、本発明の吸水性物品2、3、4は、液体不透過性背面シート11と通気性防水フィルム12の間、および/または通気性防水フィルム12と吸収体13の間に高吸水性樹脂フィルム20を含む。前記高吸水性樹脂フィルムは、厚さ(h)が500μm以下であり、KS F 2611標準によって測定された吸湿能が10~100g/mであって、吸収体から外部に放出される水分を吸収して吸水性物品の乾燥した使用感を維持することができるようにする。
【0121】
一方、図4のように液体不透過性背面シート11と通気性防水フィルム12の間および通気性防水フィルム12と吸収体13の間に全て高吸水性樹脂フィルムを介在させる場合、各高吸水性樹脂フィルムの厚さ(h)および/または物性は互いに同一であるか、または異なってもよい。
【0122】
以下、本発明の吸水性物品を構成要素別に詳しく説明する。
【0123】
高吸水性樹脂フィルム
本発明の吸水性物品で、液体不透過性背面シートと通気性防水フィルムの間、および/または通気性防水フィルムと吸収体の間には先に説明したような高吸水性樹脂フィルムが介される。
【0124】
前記高吸水性樹脂フィルムは、前述のように吸湿能に優れて、吸収体から放出される湿気を吸収して背面シート外部から感じられるじめじめ感を顕著に改善させることができる。また、前記高吸水性樹脂フィルムは厚さが500μm以下であって薄いので、吸水性物品の厚さを大きく増加させないながらも、前記のような吸湿性能を示して吸水性物品の使用感を顕著に向上させることができる。
【0125】
液体不透過性背面シート
前記吸水性物品の液体不透過性背面シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂を紡糸して製造された不織布を使用することができる。前記不織布の製造法は特に制限されず、エアーレイド、サーマルボンド、スパンレース、スパンボンド、メルトブローン、スティッチボンドなどの加工法によって製造されたものを制限なく使用することができる。
【0126】
前記液体不透過性背面シートに使用される不織布は、気孔の大きさが20~1000μm、50~700μm、または10~300μm範囲であるものを使用することができる。織布または不織布の気孔が前記範囲を満足する時、液体の透過は遮断され、水蒸気および空気の透過は可能で、優れた着用感を示すことができる。
【0127】
前記液体不透過性背面シートの坪量は特に制限されないが、約10~25g/m、好ましくは約12~20g/mである場合、吸収コアに吸収された排泄物が外部に漏出されないようにしながら、触感をさらに向上させることができる。
【0128】
前述の液体不透過性背面シートと高吸水性樹脂フィルムは、吸水性物品製造前、先に熱接着などの方法で貼り合わせることができる。具体的に、高吸水性樹脂フィルムは液体不透過性背面シートの一面に貼り合わせることができ、貼り合わせ体の高吸水性樹脂フィルム面の上に通気性防水フィルム、吸収体、液体透過性上部シートを積層して吸水性物品を製造することができる。
【0129】
通気性防水フィルム
一方、本発明の吸水性物品は液体不透過性背面シート上に、防水能を有しながら空気の流れをより円滑にするようにする通気性防水フィルムを含む。
【0130】
前記通気性防水フィルムは、熱可塑性重合体と添加剤をブレンドして樹脂組成物を製造し、鋳造または膨張フィルム押出、または他の適したフィルム-形成技術を使用して成形して製造することができる。前記樹脂組成物は、例えば、熱可塑性重合体40~60%および添加剤40~60%の組成を有することができる。前記添加剤は、酸化防止剤、充填剤粒子、染料など目的とする特性によって多様な成分であってもよい。
【0131】
一例として、熱可塑性重合体と添加剤をブレンドした樹脂組成物をキャスティングして製造したフィルムを予熱工程、伸張工程、および熱固定工程の3段階を経て単軸でまたは二軸で伸張させて、通気性を付与した防水フィルムを製造することができる。
【0132】
前記熱可塑性重合体としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、エチレンとC3-C12アルファ-オレフィンの共重合体、プロピレンとエチレンおよび(または)C4-C12アルファ-オレフィンの共重合体、およびポリプロピレン主鎖内のアタクチックおよびアイソタクチックプロピレン単位を二つとも含むプロピレン-基材重合体を含む可溶性ポリオレフィン;エラストマー、例えば、ポリウレタン、コポリエーテルエステル、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体、エチレンビニルアセテート共重合体、コポリ(スチレン/エチレン-ブチレン)、スチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-スチレン、スチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-スチレン、ポリスチレン/ポリ(エチレン-ブチレン)/ポリスチレン、ポリ(スチレン/エチレン-ブチレン/スチレン)などのブロック共重合体などが含まれるが、これに制限されない。
【0133】
前記添加剤としては、炭酸カルシウム(CaCO)などの充填剤を使用することができる。炭酸カルシウムは炭酸イオンとカルシウムイオンが反応して生成された白い固体物質であって、高分子樹脂によって結合されながらフィルムに多数のホール(hole)を形成することができる。本発明では、通気性防水フィルムの製造時、前記炭酸カルシウムの含量を通気性防水フィルム形成組成物の全体重量を基準にして40~45重量%範囲に調節しながら、引張強度および透湿度を考慮してフィルムの延伸比を機械的方向に2.5~3.5倍範囲に調節することによって、フィルムに形成されるホール(hole)の大きさを調節して、吸収体に吸収された排泄物が外部に漏出されないながら、空気や水蒸気が背面シートを通じてより円滑に疎通するようにすることができる。
【0134】
具体的に、炭酸カルシウムの含量およびフィルムの延伸比を前述の範囲に調節する場合、フィルムに大きさ(直径)が約10~90μm、好ましくは約40~60μm範囲であるホールを形成することができる。このようなホールの大きさは100μm以上である水粒子の大きさよりは小さく、約0.001~0.01μm程度である蒸気の大きさよりは大きい。したがって、吸収体に吸収された排泄物は通気性防水フィルムによって外部に漏出されないが、おむつ内部の熱い空気や水蒸気は通気性防水フィルムを通じて外部に容易に排出できる。
【0135】
前記通気性防水フィルムは、通気度(air permeability)が2000~5000g/m・24hr、好ましくは3500~4500g/m・24hr範囲であってもよい。前記通気性範囲を満足する場合、湿った空気によって皮膚副作用が発生することをより効果的に防止することができる。
【0136】
前記通気性防水フィルムの坪量は特に制限されないが、約15~22g/mである場合、フィルムの強度がより向上し、フィルムの通気度が約3500~4500g/m・24hr範囲に調節されるため、吸収コアに吸収された排泄物が外部に漏出されないように遮断しながら、空気や水蒸気が背面シートを通じて円滑に疎通して着用者の着用感をさらに向上させることができる。
【0137】
前述の通気性防水フィルムと高吸水性樹脂フィルムは、吸水性物品製造前、先に熱接着などの方法で貼り合わせることができる。一例として、前記高吸水性樹脂フィルムは通気性防水フィルムの一面に貼り合わせられたものであり、前記貼り合わせられた高吸水性樹脂フィルムと通気性防水フィルムの通気度は3000g/m・24hr以上、または3200g/m・24hr以上でありながら、5000g/m・24hr以下、4500g/m・24hr以下、または4200g/m・24hr以下であってもよい。前記高吸水性樹脂フィルムは前述のように吸湿能に優れた同時に高い通気度を示すので、吸水性物品の通気性低下なく吸湿性能を付与することができる。
【0138】
吸収体
本発明の吸水性物品に使用される吸収体は、高吸水性樹脂粒子の集合体である高吸水性樹脂粉末およびパルプを含む。
【0139】
前記高吸水性樹脂粉末は、通常吸水性物品に吸収性能付与のために使用される物質を制限なく使用することができる。前記高吸水性樹脂は、例えば、アクリル酸塩重合体架橋物、ビニルアルコール-アクリル酸塩共重合体架橋物、無水マレイン酸グラフトポリビニルアルコール架橋物、アクリル酸塩-メタクリル酸塩共重合体架橋物、メチルアクリレート-酢酸ビニル共重合体のけん化物の架橋物、デンプン-アクリル酸塩グラフト共重合体架橋物、デンプン-アクリロニトリルグラフト共重合体のけん化物の架橋物、カルボキシメチルセルロース架橋物、イソブチレン-無水マレイン酸塩共重合体架橋物、およびメチレンオキシド重合体架橋物からなる群より選択される1種以上であってもよく、好ましくは、アクリル酸塩重合体架橋物であってもよい。
【0140】
前記高吸水性樹脂粉末を成す高吸水性樹脂粒子の大きさは、100~1,000μm、150~800μm、または300~600μmであってもよい。高吸水性樹脂粒子の大きさが100μm未満である場合、体液を吸収して膨潤された高吸水性樹脂ゲルが吸水性物品外部に排出されるか、ゲルブロッキング現象を起こして物性を阻害する恐れがあり、粒子の大きさが1,000μmを超過する場合、吸水性物品のスリム化が難しい問題がある。
【0141】
前記高吸水性樹脂粉末は吸収体総重量の10~90重量%で含まれてもよく、好ましくは20重量%以上、30重量%以上、または40重量%以上でありながら、80重量%以下、または60重量%以下の含量で含まれてもよい。
【0142】
前記吸収体に使用されるパルプは、木材パルプを粉砕して形成されたセルロース綿毛パルプであってもよい。前記パルプは液体を急速に吸収し、高吸水性樹脂粒子を互いに分離させてゲル粘着度を減少させる作用を果たすことができる。
【0143】
このような効果を確保するために、前記パルプは吸収体総重量の10~90重量%で含まれてもよく、好ましくは20重量%以上、または40重量%以上でありながら、80重量%以下、70重量%以下、または50重量%以下で含まれてもよい。
【0144】
具体的に、前記高吸水性樹脂は吸収コアの総重量を基準にして約10~90重量%、好ましくは約30~60重量%であってもよく、前記パルプの含量は吸収体の総重量を基準にして約10~90重量%、好ましくは約40~70重量%であってもよい。
【0145】
前記吸収体は高吸水性樹脂粉末およびパルプ以外に、選択的にポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、レーヨン繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維をさらに含むことができ、この場合、高吸水性樹脂粉末とパルプの結束力をさらに向上させることができる。このような合成繊維は、吸収体総重量の20重量%以下、または10重量%以下で使用することができる。
【0146】
前記吸収体の製造方法は特に制限されず、一例として高吸水性樹脂粉末とパルプ、選択的に合成繊維を均一に混合し、これを圧搾して成形した後、ティッシュなどの包装材で圧搾物を包装して製造することができる。
【0147】
液体透過性上部シート
前記液体透過性上部シートとしては、液体が迅速に透過することができるように親水性を有しながら、触感が柔らかく使用者の皮膚に刺激を加えない素材を好適に使用することができる。
【0148】
前記液体透過性上部シートは、例えば、親水性不織布、開口ポリエチレンフィルムなどの開口性フィルム、またはウレタンフォームなどの発泡フィルムであってもよく、これらを1以上積層して使用することができる。
【0149】
好ましくは、前記液体透過性上部シートは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン、木綿、綿などの合成繊維または天然繊維を用いて製造された親水性不織布であってもよい。不織布の製造法は特に制限されず、エアーレイド、サーマルボンド、スパンレース、スパンボンド、メルトブローン、スティッチボンドなどの加工法によって製造されたものを制限なく使用することができる。
【0150】
前記液体透過性不織布の繊維の太さ(繊度、fineness)は特に限定されないが、繊維の太さが約1.5~6デニール(denier、d)、好ましくは約1.5~2デニール(denier、d)範囲である場合、吸収用品の着用時、皮膚刺激が最少化されて皮膚副作用の発生を最少化することができ、瞬間吸収機能を向上させることができる。
【0151】
また、前記繊維の長さは特に限定されないが、約36~39mmである場合、不織布製造時カーディング(carding)工程の作業性が向上でき、不織布表面均斉度が向上して着用者の皮膚摩擦を最少化することができる。
【0152】
このような繊維から形成された不織布の坪量は特に制限されないが、約15~30g/m、好ましくは約15~20g/mである場合、吸収力を向上させながら、表面感触をより柔らかくすることができて皮膚副作用の発生を最少化させることができる。
【0153】
吸水性物品の製造方法
本発明の吸水性物品の製造方法は特に制限されず、各構成要素、即ち、前記液体不透過性背面シート、高吸水性樹脂フィルム、通気性防水フィルム、吸収体、および液体透過性上部シートを適切な順序に積層した後、エンボシングを用いて固定するか、または前記各構成要素の間をホットメルト接着剤などの接着剤を用いて固定させる方式で製造することができる。
【0154】
例えば、高吸水性樹脂フィルムを通気性防水フィルムと吸収体の間に介在させる場合、液体不透過性背面シート、通気性防水フィルム、高吸水性樹脂フィルム、吸収体、および液体透過性上部シートの順に積層した後、接着剤またはエンボシングで固定して吸水性物品を製造することができる。
【0155】
または、高吸水性樹脂フィルムを液体不透過性背面シート、または通気性防水フィルムと先に熱接着した後、これを他の構成要素と積層し固定させる方法で吸水性物品を製造することができる。
【0156】
一方、高吸水性樹脂フィルムが液体不透過性背面シートと通気性防水フィルムの間に介される場合、高吸水性樹脂フィルムを液体不透過性背面シートの一面に先に貼り合わせた後、高吸水性樹脂フィルムの上面(液体不透過性背面シートと当接しない面)に通気性フィルムを積層し、吸収体、液体透過性上部シートを積層した後、固定させて吸水性物品を製造することができる。
【0157】
または、高吸水性樹脂フィルムを通気性防水フィルムの一面または両面に先に貼り合わせ、これを液体不透過性背面シート上に載せた後、吸収体、液体透過性上部シートを積層し固定させて吸水性物品を製造することができる。
【0158】
前記高吸水性樹脂フィルムと液体不透過性背面シートの貼り合わせ、高吸水性樹脂フィルムと通気性防水フィルムの貼り合わせは熱接着を通じて行うことができ、熱接着時の温度、圧力は使用された液体不透過性背面シート、通気性防水フィルム、および高吸水性樹脂フィルムの性状によって適切に調節することができる。
【0159】
前記吸水性物品は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、または失禁用パッドであってもよい。
【0160】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇および技術思想範囲内で多様な変更および修正が可能であるのは当業者において明白なことであり、このような変更および修正が添付された特許請求の範囲に属するのも当然のことである。
【実施例0161】
[実施例]
<高吸水性樹脂フィルムの製造>
実施例1-1
アクリル酸55g、水酸化カリウム(KOH)45重量%溶液66.6g、および水55gを混合してアクリル酸の70モル%が中和された中和液を準備した。
【0162】
前記中和液にヒドロキシエチルセルロース(HEC、Ashland社 Natrosol 250HR)、グリセリン、熱重合開始剤として過硫酸ナトリウム、光重合開始剤としてIrgacure 819を添加して、固形分含量(TSC)が54重量%であるモノマー組成物を製造した。
【0163】
この時、HECはモノマー組成物の固形分100重量部に対して0.45重量部、グリセリンはアクリル酸100重量部に対して40重量部で添加し、熱重合開始剤はモノマー組成物総重量に対して1000ppm、光重合開始剤は80ppm添加した。
【0164】
前記製造されたモノマー組成物の25℃での粘度をTOKI社のTV-22粘度計を用いて、spindle # 1、回転速度1rpmで測定し、その結果、モノマー組成物の粘度は201mPa・sと確認された。
【0165】
その次に、前記モノマー組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一面にコーティングして20μm厚さのモノマー組成物フィルム(含水率30%)を形成した。前記コーティングにはコンマコーターを使用し、アプリケーターロールの移動速度は0.5m/minとした。
【0166】
その後、前記モノマー組成物フィルムに370mJ/cmの紫外線を照射して重合を実施し、含水ゲル重合体フィルムを形成した。この時、モノマー組成物フィルムにMD方向に60N/mの張力を加えて延伸しながら重合反応を行った。製造された含水ゲル重合体フィルムの厚さは20μmであって、モノマー組成物と比較して大きな変化がないことが確認され、含水率は15重量%であった。
【0167】
その次に、前記製造された含水ゲル重合体フィルムを80℃温度で5分間乾燥して、含水率が10重量%であり厚さが17μmである高吸水性樹脂フィルム(SAP film)を製造した。
【0168】
前記含水率は、高吸水性樹脂フィルムの乾燥前重量(a)および乾燥後重量(b)から下記式を通じて計算した。この時、高吸水性樹脂フィルムの乾燥は、常温(25℃)から150℃まで5分にわたって温度を上昇させた後、150℃で15分間維持する方式で行われた。
【0169】
含水率(%)=(a-b)/a×100
【0170】
実施例1-2
モノマー組成物フィルムの厚さを50μmとし、含水ゲル重合体の乾燥温度を80℃、乾燥時間を10分としたことを除いて、実施例1-1と同様な方法で含水率10重量%、厚さ45μmの高吸水性樹脂フィルムを製造した。
【0171】
実施例1-3
モノマー組成物フィルムの厚さを160μmとし、含水ゲル重合体の乾燥温度を90℃、乾燥時間を10分にしたことを除いて、実施例1-1と同様な方法で含水率10重量%、厚さ149μmの高吸水性樹脂フィルムを製造した。
【0172】
実施例1-4
アクリル酸55g、水酸化カリウム(KOH)45重量%溶液66.6g、および水55gを混合してアクリル酸の70モル%が中和された中和液を準備した。
【0173】
前記中和液に内部架橋剤(ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、MW=400、Aldrich社)、発泡剤として膨張した微小球体MFL110CAL(Matsumoto Yushi-Seiyaku、平均粒径90-120μm、発泡温度160-170℃)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC、Ashland社 Natrosol 250HR)、グリセリン、熱重合開始剤として過硫酸ナトリウム、光重合開始剤としてIrgacure 819を添加して、固形分含量(TSC)が40重量%であるモノマー組成物を製造した。
【0174】
この時、発泡剤はモノマー組成物100重量部に対して1重量部、HECはモノマー組成物の固形分100重量部に対して0.45重量部、グリセリンはアクリル酸100重量部に対して40重量部で添加し、熱重合開始剤はモノマー組成物総重量に対して1000ppm、光重合開始剤は80ppm添加した。
【0175】
前記製造されたモノマー組成物の25℃での粘度を、TOKI社のTV-22粘度計を用いて、spindle # 1、回転速度1rpmで測定し、その結果、モノマー組成物の粘度は211mPa・sと確認された。
【0176】
その次に、前記モノマー組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一面にコーティングして160μm厚さのモノマー組成物フィルム(含水率30%)を形成した。前記コーティングにはコンマコーターを使用し、アプリケーターロールの移動速度は0.5m/minとした。
【0177】
その後、前記モノマー組成物フィルムに370mJ/cmの紫外線を照射して重合を実施して、含水ゲル状重合体フィルムを形成した。この時、モノマー組成物フィルムにMD方向に60N/mの張力を加えて延伸しながら重合反応を行った。
【0178】
その次に、前記製造された含水ゲル状重合体を90℃温度で10分間乾燥して、含水率が10重量%であり、厚さが153μmである高吸水性樹脂フィルム(SAP film)を製造した。
【0179】
<吸水性物品の製造>
比較例1
(1)液体不透過性背面シートの製造
ポリプロピレンを高温で紡糸してポリプロピレン繊維が積層されたウェブ(web)を形成した後、一定のパターンのエンボス突起が形成されたカレンダーロール(calendar roll)を通じて前記ウェブを接合しながら表面に一定のパターンのエンボシングが形成された液体不透過性背面シート(不織布、気孔の大きさ約40~60μm、坪量12g/m)を製造した。
【0180】
(2)通気性防水フィルムの製造
50~55重量%のポリエチレン、40~45重量%の炭酸カルシウム、1~1.5重量%の分散剤、1~1.5重量%の酸化防止剤、2~3重量%の調色剤を混合して防水フィルム形成組成物を得た。
【0181】
前記防水フィルム形成組成物をfeed hopperを通じて押出機に供給して溶融させた。溶融した組成物を押出機内で混練させた後、Tダイを通じてフィルム形態に押出成形した後、冷却させた後、前記フィルムを延伸可能な温度で加熱してフィルムの延伸比が機械的方向に2.5~3.5倍になるようにフィルムを延伸し、徐々に冷却させた後、一定の幅および長さに切断して17g/m坪量の通気性防水フィルム(通気度4400g/m・24hr)を得た。
【0182】
(3)吸収体の製造
8重量%のサリチル酸、61重量%のポリエチレングリコール、および31重量%のセチルアルコールを混合して消臭組成物を製造した。その後、グラビアコーティング装置を用いて前記消臭組成物を基礎重量30g/mの綿スパンレースで製造された通気接合不織布シートの表面にコーティングした。その後、消臭組成物でコーティングされた通気接合不織布シートを熱風乾燥チャンバー内に通過させて水分を蒸発させ消臭組成物で表面処理されたコアラップシートを製造した。
【0183】
坪量50g/mの綿毛パルプ(fluff pulp)40重量%を、粒径が250~600μmであるポリアクリル酸塩系高吸水性樹脂粉末(平均粒径400μm、CRC:34g/g、0.3psi AUP:28g/g)60重量%と混合した後、この混合物を前記製造されたコアラップシートで囲んで3.0mm厚さの吸収体を製造した。
【0184】
(4)液体透過性上部シートの製造
液体透過性上部シートとしては、15g/m、0.1mm厚さのスパンボンド不織布を使用した。液体透過性上部シートは、小便などの液体が漏れなく上層吸収体に拡散するように上層吸収体の身体側表面を完全に覆うことができる形状に製造した。
【0185】
(5)吸水性物品の製造
前記製造された液体不透過性背面シートの一面に通気性防水フィルムを貼り合わせた。その後、通気性防水フィルムの上に前記吸収体および前記液体透過性上部シートを順次に積層させた後、これらを接着して吸水性物品(使い捨ておむつ)を製造した。
【0186】
実施例2-1
液体不透過性背面シートと通気性防水フィルムの間に前記実施例1-1で製造した高吸水性樹脂フィルムを追加的に積層したことを除いて、比較例1と同様な方法で吸水性物品を製造した。
【0187】
実施例2-2
液体不透過性背面シートと通気性防水フィルムの間に前記実施例1-2で製造した高吸水性樹脂フィルムを追加的に積層したことを除いて、比較例1と同様な方法で吸水性物品を製造した。
【0188】
実施例2-3
液体不透過性背面シートと通気性防水フィルムの間に前記実施例1-3で製造した高吸水性樹脂フィルムを追加的に積層したことを除いて、比較例1と同様な方法で吸水性物品を製造した。
【0189】
実施例2-4
通気性防水フィルムと吸収体の間に前記実施例1-4で製造した高吸水性樹脂フィルムを追加的に積層したことを除いて、比較例1と同様な方法で吸水性物品を製造した。
【0190】
実施例2-5
通気性防水フィルムと吸収体の間に前記実施例1-1で製造した高吸水性樹脂フィルムを追加的に積層したことを除いて、比較例1と同様な方法で吸水性物品を製造した。
【0191】
実施例2-6
通気性防水フィルムと吸収体の間に前記実施例1-2で製造した高吸水性樹脂フィルムを追加的に積層したことを除いて、比較例1と同様な方法で吸水性物品を製造した。
【0192】
実施例2-7
通気性防水フィルムと吸収体の間に前記実施例1-3で製造した高吸水性樹脂フィルムを追加的に積層したことを除いて、比較例1と同様な方法で吸水性物品を製造した。
【0193】
比較例2
液体不透過性背面シートと通気性防水フィルムの間に高吸水性樹脂フィルムの代わりに52μm厚さの高吸水性繊維(SAP fiber、Luquafleece(登録商標) SAF-52、Basf社)を積層したことを除いて、実施例2と同様な方法で吸水性物品を製造した。
【0194】
比較例3
液体不透過性背面シートと通気性防水フィルムの間に高吸水性樹脂フィルムの代わりに112μm厚さの高吸水性繊維(SAP fiber、Luquafleece(登録商標) SAF-112、Basf社)を積層したことを除いて、実施例2と同様な方法で吸水性物品を製造した。
【0195】
比較例4
液体不透過性背面シートと通気性防水フィルムの間に高吸水性樹脂フィルムの代わりに1.0mm厚さの吸収体(綿毛パルプ40重量%、高吸水性樹脂60重量%)を積層したことを除いて、実施例2と同様な方法で吸水性物品を製造した。
【0196】
<実験例1:高吸水性樹脂フィルムの物性評価>
(1)吸湿量
高吸水性樹脂フィルムを15cm×24cmに裁断し、その一側面にアルミニウムテープを付けて断湿させて、吸湿性能分析用試片を製造した。前記試片を用いて、KS F 2611:2019標準によって下記方法で高吸水性樹脂の吸湿量を測定した。
【0197】
1)恒温恒湿器内部を25℃、相対湿度50%で維持させて12時間養生して初期質量(W1)を測定する。
2)恒温恒湿器内部を25℃、相対湿度75%で維持させて12時間吸湿させた後、質量(W2)を測定する。
3)下記式によって吸湿量を計算する。
吸湿量(g/m)=(W2-W1)/0.036
【0198】
(2)引張強度
高吸水性樹脂フィルムを20mm×60mmの大きさの長方形形態に切断面が滑らかなように裁断して試片を準備し、引張強度測定機器(TAXTplus、Stable Micro Systems社)の初期グリップ(grip)間隔を20mmにした後、前記試片を装着した。試片を秒当たり0.5mmの速度で引っ張って試片の破断が発生した時点の力(Force)(N)を測定し、その値を試片の断面積(mm)で割って引張強度(MPa)を求めた。
【0199】
<実験例2:吸水性物品の物性評価>
(1)外部じめじめ感評価
湿度:50%、温度:38.7℃のチャンバー内で、ガラス板の上に前記各実施例および比較例で製造した吸水性物品を載せ、37℃の生理食塩水(0.9% NaCl水溶液)350mlを吸水性物品の液体透過性上部シート上に注入した。
【0200】
30分後、ガラス板に蒸気が溜まったかどうかを確認して、蒸気が溜まった場合、外部じめじめ感有り(O)、蒸気が溜まっていない場合、外部じめじめ感無し(X)と評価した。
【0201】
(2)水蒸気バリア性透過度
前記各実施例および比較例で製造した25cm×10cm面積の吸水性物品に1000mlの蒸留水を注入して吸収させた。その後、蒸留水を吸収した吸水性物品を恒温・恒湿器(湿度:50%、温度:38.7℃)に12時間置いた。その後、吸水性物品の面積に対する重量増加による水蒸気バリア性透過度(g/m・12hr)を下記式で計算した。
【0202】
水蒸気バリア性透過度(g/m・12hr)=(W2-W1)/T
【0203】
(前記計算式中、
W1は、恒温恒湿処理前、蒸留水を吸収した吸水性物品の面積当たり重量(g/m)であり、
W2は、恒温恒湿処理後、吸水性物品の面積当たり重量(g/m)であり、
Tは、恒温恒湿処理時間であって、12hrである。)
【0204】
(3)通気度
通気度測定用試片は、通気性防水フィルム(坪量17g/m、通気度4400g/m・24hr、厚さ25μm)の一面に、各実施例および比較例で液体不透過性背面シートと通気性防水フィルムの間、または通気性防水フィルムと吸収体の間に適用された高吸水性樹脂フィルム、SAP fiber、または吸収体を130℃、20kgf/cmで熱接着して製造した。
【0205】
150mm(MD)×150mm(CD)の試片を採取して、JIS L 1096に準じたフラジール通気度測定機(Frazir Type Air Permeability Tester)によって行った。n=5の平均値を測定値とした。
【0206】
【表1】
【0207】
実験の結果、実施例1-1~1-4は優れた吸湿能および引張強度を示すと確認された。また実施例2-1~2-7の吸水性物品は液体不透過性背面シートと通気性防水フィルムの間、あるいは通気性防水フィルムと吸収体の間に介される高吸水性樹脂フィルムによって比較例1に比べて外部じめじめ感が顕著に改善されながらも、通気度は阻害されないのを確認することができた。
【0208】
また、おむつを実使用する場合の使用感評価のために、模擬着用試験(37℃の生理食塩水をおむつの液体透過性上部シート上に注入し、36.5℃で5分間放置した後、背面シートの触感を確認)を行った結果、実施例2-1~2-7のおむつは比較例1のおむつよりさらに暖かくて乾燥した感触を示した。
【0209】
しかし、高吸水性樹脂フィルムの代わりに高吸水性繊維を使用した場合、通気度は優れるように維持されるが、透湿度が劣位になって外部じめじめ感改善効果を確保することができなかった。また、高吸水性樹脂フィルムの代わりに吸収体を適用した場合、外部じめじめ感は改善されたが、通気度が大きく低下するのを確認することができた。
【符号の説明】
【0210】
1、2、3、4:吸水性物品
11:液体不透過性背面シート
12:通気性防水フィルム
13:吸収体
14:液体透過性上部シート
20:高吸水性樹脂フィルム
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが5~500μmであり、
KS F 2611標準によって測定された吸湿能が10~100g/mであり、
含水率が1~15%であり、引張強度が5~50MPaである、高吸水性樹脂フィルムであって、
酸性基を有し前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系モノマー、セルロース系増粘剤、保湿剤、内部架橋剤、重合開始剤、および溶媒を混合してモノマー組成物を製造する段階;
前記モノマー組成物を基材上にキャスティングしてモノマー組成物フィルムを形成する段階;
前記モノマー組成物フィルムを延伸しながら熱および/または光を照射して含水ゲル重合体フィルムを形成する段階;および
前記含水ゲル重合体フィルムを乾燥させる段階を含む製造方法によって製造される、
高吸水性樹脂フィルム。
【請求項2】
厚さが10~200μmである、請求項1に記載の高吸水性樹脂フィルム。
【請求項3】
液体不透過性背面シート;通気性防水フィルム;高吸水性樹脂粉末およびパルプを含む吸収体;および液体透過性上部シートを含む吸水性物品であって、
前記液体不透過性背面シートと通気性防水フィルムの間、および/または通気性防水フィルムと吸収体の間に請求項1または2に記載の高吸水性樹脂フィルムを含む、吸水性物品。
【請求項4】
前記高吸水性樹脂フィルムは、前記液体不透過性背面シートの一面;および/または前記通気性防水フィルムの一面または両面に貼り合わせられたものである、請求項に記載の吸水性物品。
【請求項5】
前記高吸水性樹脂フィルムは前記通気性防水フィルムの一面に貼り合わせられたものであり、
前記貼り合わせられた高吸水性樹脂フィルムと通気性防水フィルムの通気度は3000~5000g/m・24hrである、請求項に記載の吸水性物品。
【請求項6】
前記通気性防水フィルムは、通気度が2000~5000g/m・24hrである、請求項からのいずれか一項に記載の吸水性物品。
【請求項7】
前記吸収体は、高吸水性樹脂粉末を10~90重量%で含む、請求項からのいずれか一項に記載の吸水性物品。
【請求項8】
前記液体透過性上部シートは、坪量が15~30g/mである、請求項からのいずれか一項に記載の吸水性物品。
【請求項9】
酸性基を有し前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系モノマー、セルロース系増粘剤、保湿剤、内部架橋剤、重合開始剤、および溶媒を混合してモノマー組成物を製造する段階;
前記モノマー組成物を基材上にキャスティングしてモノマー組成物フィルムを形成する段階;
前記モノマー組成物フィルムを延伸しながら熱および/または光を照射して含水ゲル重合体フィルムを形成する段階;および
前記含水ゲル重合体フィルムを乾燥させる段階を含む、高吸水性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記セルロース系増粘剤は、ナノセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択される1種以上である、請求項9に記載の高吸水性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記保湿剤は、グリセリン;ジグリセリン;エチレングリコール;プロピレングリコール;ブチレングリコール;ソルビトール;ポリエチレングリコール;ポリグリセリン-3;ポリグリセリン-6;ポリグリセリン-10;ポリグリセリル-10ジステアレートおよびその誘導体(炭素数3~18);クエン酸;トリエチルシトレート;メチルシトレート;ナトリウムシトレート;およびトリナトリウム2-メチルシトレートからなる群より選択される1種以上である、請求項9または10に記載の高吸水性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記セルロース系増粘剤は、モノマー組成物内固形分100重量部に対して0.01~5重量部で含まれる、請求項9から11のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記保湿剤は、アクリル酸系モノマー100重量部に対して、5~70重量部で含まれる、請求項9から12のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記モノマー組成物の25℃での粘度は100mPa・s~5000Pa・sである、請求項9から13のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記含水ゲル重合体フィルムを形成する段階で、モノマー組成物フィルムに加える張力は、40~100N/mである、請求項9から14のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂フィルムの製造方法。
【外国語明細書】