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特開2024-167312切断可能なDNAコード化ライブラリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167312
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】切断可能なDNAコード化ライブラリ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20241126BHJP
   C40B 40/08 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C40B40/08
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146187
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2022526549の分割
【原出願日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2020090304
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼川 宗史
(72)【発明者】
【氏名】林田 潤
(72)【発明者】
【氏名】深野 一
(57)【要約】      (修正有)
【課題】DNAコード化ライブラリのDNA鎖構造としてのヘアピン鎖DNAと2本鎖DNAの長所を両立させる技術を提供する。
【解決手段】本発明は、選択的に切断可能な部位を含む核酸化合物の利用法に関する。また本発明では、選択的に切断可能な部位を含むDNAコード化ライブラリ、その合成用組成物及びその使用方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化33】

(式中、
EおよびFは、それぞれ独立して
ヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
ただし、EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
LPは、ループ部位であり、
Lは、リンカーであり、
Dは、反応性官能基である。)
で表される化合物であり、
E、F、又はLPの少なくともいずれか1つの部位に、少なくとも1つの選択的に切断可能な部位を有する化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物を含む、化合物ライブラリのヘッドピースの調製に用いるための組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物を含む、DNAコード化ライブラリのヘッドピースの調製に用いるための組成物。
【請求項4】
式(I)
【化34】

(式中、
EおよびFは、それぞれ独立して
ヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
ただし、EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
LPは、ループ部位であり、
Lは、リンカーであり、
Dは、反応性官能基である。)
で表される化合物であり、
E、F、又はLPの少なくともいずれか1つの部位に、少なくとも1つの選択的に切断可能な部位を有し、
化合物ライブラリのヘッドピースとして用いる化合物。
【請求項5】
式(I)
【化35】

(式中、
EおよびFは、それぞれ独立して
ヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
ただし、EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
LPは、ループ部位であり、
Lは、リンカーであり、
Dは、反応性官能基である。)
で表される化合物であり、
E、F、又はLPの少なくともいずれか1つの部位に、少なくとも1つの選択的に切断可能な部位を有し、
DNAコード化ライブラリのヘッドピースとして用いる化合物。
【請求項6】
式(I)
【化36】

(式中、
EおよびFは、それぞれ独立して
ヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
ただし、EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
LPは、ループ部位であり、
Lは、リンカーであり、
Dは、反応性官能基である。)
で表される化合物であり、
E、F、又はLPの少なくともいずれか1つの部位に、少なくとも1つの選択的に切断可能な部位を有する化合物ライブラリのヘッドピース。
【請求項7】
式(I)
【化37】

(式中、
EおよびFは、それぞれ独立して
ヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
ただし、EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
LPは、ループ部位であり、
Lは、リンカーであり、
Dは、反応性官能基である。)
で表される化合物であり、
E、F、又はLPの少なくともいずれか1つの部位に、少なくとも1つの選択的に切断可能な部位を有するDNAコード化ライブラリのヘッドピース。
【請求項8】
式(II)
【化38】

(式中、
XおよびYは、オリゴヌクレオチド鎖であり、
EおよびFは、それぞれ独立して
ヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
ただし、EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
LPは、ループ部位であり、
Lは、リンカーであり、
Dは、反応性官能基由来の2価の基であり、
Spは、結合又は2官能性スペーサーであり、
Anは、少なくとも1つのビルディングブロックにより構成される部分構造である。)
で表される化合物であり、
XとYは、少なくとも一部で二重鎖を形成しうる配列を有し、
Xは5‘末端でEに結合し、
Yは3‘末端でFに結合し、
E、F、又はLPの少なくともいずれか1つの部位に、少なくとも1つの選択的に切断可能な部位を有する化合物。
【請求項9】
式(III)
An-Sp-C-Bn (III)
(式中、
AnおよびSpは、請求項8と同じ意味を表し、
Bnは、オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとで形成される2本鎖オリゴヌクレオチドタグを表し、
Cは、式(I)
【化39】

(式中、E、LP、L、DおよびFは、請求項8と同じ意味を表し、ただし、DはAnと直接結合するか、または2官能性スペーサーを介して結合し、EとFとは2本鎖オリゴヌクレオチドタグBnのそれぞれ対応する末端側に結合する。)
で表される、
請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Anが、請求項8と同じであり、かつ、n個のビルディングブロックα1~αn(nは、1~10の整数である。)により構築される部分構造であり、
Bnが、オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとで形成される2本鎖オリゴヌクレオチドタグであり、かつ、Anの構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む部分構造である、
請求項8又は9に記載の化合物。
【請求項11】
LPが、
(LP1)p-LS-(LP2)qで表されるループ部位であり、
LSは、以下の(A)ないし(C)に記載される化合物群から選ばれる部分構造であり、
(A)ヌクレオチド
(B)核酸アナログ
(C)置換基を有してもよいC1~14の3価の基
LP1は、以下の(1)および(2)に記載される化合物群から単独もしくは異なってp個選ばれる各部分構造であり、
(1)ヌクレオチド
(2)核酸アナログ
LP2は、以下の(1)および(2)に記載される化合物群から単独もしくは異なってq個選ばれる各部分構造であり、
(1)ヌクレオチド
(2)核酸アナログ
pとqの総数が0~40である、
請求項1、4、5、8~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
pとqの総数が2~20である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
pとqの総数が2~10である、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
pとqの総数が2~7である、請求項11に記載の化合物。
【請求項15】
pとqの総数が0である、請求項11に記載の化合物。
【請求項16】
LP1、LP2およびLSが、それぞれ以下の構造:
(A)ヌクレオチド
または
(B)以下の(B11)から(B15)を要件とする核酸アナログ
(B11)リン酸(または相当部位)および水酸基(またはその相当部位)を有する、
(B12)炭素、水素、酸素、窒素、リン又は硫黄により構成される、
(B13)分子量が142から1500である、
(B14)残基間原子数が3~30である、
(B15)残基間の原子の結合様式は、全て単結合であるか、または1乃至2つの二重結合を含み残りは単結合である、
から単独もしくは異なって選ばれる構造である、請求項11~15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
LP1、LP2およびLSが、それぞれ以下の構造:
(A)ヌクレオチド
または
(B)以下の(B21)から(B25)を要件とする核酸アナログ
(B21)リン酸および水酸基を有する、
(B22)炭素、水素、酸素、窒素又はリンにより構成される、
(B23)分子量が142から1000である、
(B24)残基間原子数が3~15である、
(B25)残基間の原子の結合様式は、全て単結合である、
から単独もしくは異なって選ばれる構造である、請求項11~16のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
LP1、LP2およびLSが、それぞれ以下の構造:
(A)ヌクレオチド
または
(B)以下の(B31)から(B35)を要件とする核酸アナログ
(B31)リン酸および水酸基を有する、
(B32)炭素、水素、酸素、窒素又はリンにより構成される、
(B33)分子量が142から700である、
(B34)残基間原子数が4~7である、
(B35)残基間の原子の結合様式は、全て単結合である、
から単独もしくは異なって選ばれる構造である請求項11~17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
LP1およびLP2が、それぞれ以下:
(B41)d-Spacer、
(B5)ポリアルキレングリコールリン酸エステル
のいずれかである、請求項11~18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
LP1およびLP2が、それぞれジエチレングリコールリン酸エステルまたはトリエチレングリコールリン酸エステルである、請求項11~19のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
LP1およびLP2が、それぞれトリエチレングリコールリン酸エステルである、請求項11~20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
LP1およびLP2が、それぞれd-Spacerである、請求項11~19のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
LP1およびLP2が、それぞれヌクレオチドである、
請求項11~18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
LSが、式(a)~式(g):
【化40】

(式中、*はリンカーとの結合位置を意味し、**はLP1又はLP2との結合位置を意味し、Rは、水素原子またはメチル基である。)
のいずれかである、請求項11~23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
LSが、式(h):
【化41】

(式中、*はリンカーとの結合位置を意味し、**はLP1又はLP2との結合位置を意味する)
である、請求項11~23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項26】
LSが、ポリアルキレングリコールリン酸エステルである、請求項11~23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項27】
LSが、式(i)~式(k):
【化42】

(式中、n1、m1、p1、及びq1はそれぞれ独立して、1~20の整数であり、*はリンカーとの結合位置を意味し、**はLP1又はLP2との結合位置を意味する。)
である、請求項11~23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項28】
LSが、式(l):
【化43】

(式中、*はリンカーとの結合位置を意味し、**はLP1又はLP2との結合位置を意味する)
である、請求項11~23いずれか1項に記載の化合物。
【請求項29】
LSが、(B42)、(B43)又は(B44):
(B42)Amino C6 dT
(B43)mdC(TEG-Amino)
(B44)Uni-Link(商標登録)Amino Modifier
のいずれかである、請求項11~23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項30】
LSが、ヌクレオチドである、
請求項11~23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項31】
LSが、(C)置換基を有してもよいC1~14の3価の基であり、(C)が以下の構造:
(1)置換基を有しても良く、1~3個のヘテロ原子で置き換えられても良いC1~10脂肪族炭化水素、
(2)置換基を有してもよいC6~14芳香族炭化水素、
(3)置換基を有してもよいC2~9芳香族複素環、 または
(4)置換基を有してもよいC2~9非芳香族複素環
のいずれかである、請求項11~15及び19~23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項32】
LSが、(C)置換基を有してもよいC1~14の3価の基であり、(C)が以下の構造:
(1)置換基を有しても良いC1~6脂肪族炭化水素、
(2)置換基を有しても良いC6~10芳香族炭化水素、または
(3)置換基を有してもよいC2~5芳香族複素環
のいずれかである請求項11~15及び19~23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項33】
LSが、(C)置換基を有してもよいC1~14の3価の基であり、(C)が以下の構造:
(1)C1~6脂肪族炭化水素、
(2)ベンゼン、または
(3)C2~5含窒素芳香族複素環
ここで、前記(1)~(3)は無置換であるか、または置換基群ST1から単独もしくは異なって選ばれる1~3個の置換基で置換されてもよく、置換基群ST1は、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、フッ素原子および塩素原子により構成される群であり、ただし、置換基群ST1が脂肪族炭化水素に置換する場合、置換基群ST1からアルキル基は選択されない、
のいずれかである請求項11~15及び19~23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項34】
LSが、(C)置換基を有してもよいC1~14の3価の基であり、(C)が以下の構造:
(1)C1~6アルキル基、または
(2)無置換であるか1つまたは2つのC1~3アルキル基若しくはC1~3アルコキシ基で置換されたベンゼン
のいずれかである請求項11~15及び19~23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項35】
LSが、(C)置換基を有してもよいC1~14の3価の基であり、(C)が以下の構造:
(1)C1~6アルキル基
である、請求項11~15及び19~23いずれか1項に記載の化合物。
【請求項36】
EおよびFが、それぞれ独立してヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
EおよびFの鎖長が、それぞれ3乃至40である、
請求項1、4、5、8~35のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項37】
EおよびFが、それぞれ独立してヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
EおよびFの鎖長が、それぞれ4乃至30である
請求項1、4、5、8~36のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項38】
EおよびFが、それぞれ独立してヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
EおよびFの鎖長が、それぞれ6乃至25である
請求項1、4、5、8~37のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項39】
EおよびFが、それぞれ独立してヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
EとFの二重鎖オリゴヌクレオチドが突出末端である、
請求項1、4、5、8~38のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項40】
前記突出末端の突出部が、2塩基以上の長さである、請求項39に記載の化合物。
【請求項41】
EおよびFが、それぞれ独立してヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
EとFの二重鎖オリゴヌクレオチドが平滑末端である、
請求項1、4、5、8~38のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項42】
EとFに含まれる、互いに相補的な塩基配列の鎖長が、それぞれ3塩基以上 である
請求項1、4、5、8~41のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項43】
EとFに含まれる、互いに相補的な塩基配列の鎖長が、それぞれ4塩基以上である
請求項1、4、5、8~42のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項44】
EとFに含まれる、互いに相補的な塩基配列の鎖長が、それぞれ6塩基以上である
請求項1、4、5、8~43のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項45】
EおよびFが、それぞれ独立してヌクレオチドにより構成されるオリゴマーである、
請求項1、4、5、8~44のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項46】
ヌクレオチドが、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドである請求項1、4、5、8~45のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項47】
ヌクレオチドが、デオキシリボヌクレオチドである請求項1、4、5、8~46のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項48】
ヌクレオチドが、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、又はデオキシシチジンである請求項1、4、5、8~47のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項49】
EおよびFが、それぞれ独立して核酸アナログにより構成されるオリゴマーである、請求項1、4、5、8~44のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項50】
Lが、
(1)置換基を有しても良く、1~3個のヘテロ原子で置き換えられても良いC1~20脂肪族炭化水素、
又は
(2)置換基を有してもよいC6~14芳香族炭化水素
である、請求項1、4、5、8~49のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項51】
Lが、置換基を有しても良いC1~6脂肪族炭化水素、1若しくは2個の酸素原子で置き換えられても良いC1~6脂肪族炭化水素、又は置換基を有しても良いC6~10芳香族炭化水素である、請求項1、4、5、8~50のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項52】
Lが、置換基群ST1で置換可能なC1~6脂肪族炭化水素、又は置換基群ST1で置換可能なベンゼンであり、ここで、置換基群ST1は、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、フッ素原子および塩素原子により構成される群である(ただし、置換基群ST1が脂肪族炭化水素に置換する場合、置換基群ST1からアルキル基は選択されない。)、請求項1、4、5、8~51のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項53】
Lが、C1~6アルキル基、又は無置換であるか1つまたは2つのC1~3アルキル基若しくはC1~3アルコキシ基で置換されたベンゼンである、請求項1、4、5、8~52のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項54】
Lが、C1~6アルキル基である、請求項1、4、5、8~53のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項55】
Dの反応性官能基が、
C―C、アミノ、エーテル、カルボニル、アミド、エステル、ウレア、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホンアミド、又はスルホニル結合を構成しうる反応性官能基である、請求項1、4、5、8~54のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項56】
Dの反応性官能基が、脱離基を有するC1炭化水素、アミノ基、水酸基、カルボニル基の前駆体、チオール基、又はアルデヒド基である、請求項1、4、5、8~55のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項57】
Dの反応性官能基が、ハロゲン原子を有するC1炭化水素、スルホン酸系脱離基を有するC1炭化水素、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、ハロゲン化カルボキシ基、チオール基、又はアルデヒド基である、請求項1、4、5、8~56のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項58】
Dの反応性官能基が、-CHCl、-CHBr、-CHOSOCH、-CHOSOCF、アミノ基、水酸基、又はカルボキシ基である、請求項1、4、5、8~57のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項59】
Dの反応性官能基が、第1級アミノ基である、請求項1、4、5、8~58のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項60】
選択的に切断可能な部位が、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、及びデオキシシチジンのいずれでもないデオキシリボヌクレオシドである、
請求項1、4、5、8~59のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項61】
選択的に切断可能な部位が、デオキシウリジン、ブロモデオキシウリジン、デオキシイノシン、8-ヒドロキシデオキシグアノシン、3-メチル-2’-デオキシアデノシン、N6-エテノ-2’-デオキシアデノシン、7-メチル-2’-デオキシグアノシン、2’-デオキシキサントシン、又は5,6-ジヒドロキシ-5,6ジヒドロデオキシチミジンである、
請求項1、4、5、8~60のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項62】
選択的に切断可能な部位が、デオキシウリジン、又はデオキシイノシンである、
請求項1、4、5、8~61のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項63】
選択的に切断可能な部位が、デオキシウリジンである、
請求項1、4、5、8~62のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項64】
選択的に切断可能な部位が、デオキシイノシンである、
請求項1、4、5、8~62のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項65】
選択的に切断可能な部位が、デオキシイノシンから3‘方向に2番目のホスホジエステル結合である、
請求項1、4、5、8~59のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項66】
選択的に切断可能な部位が、リボヌクレオシドである、
請求項1、4、5、8~59のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項67】
選択的に切断可能な部位が、1つである、
請求項1、4、5、8~66のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項68】
少なくとも1つの切断可能な部位を、E又は(LP1)pに含み、かつ少なくとも1つの切断可能な部位を、F又は(LP2)qに含む、
請求項1、4、5、8~66のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項69】
E又は(LP1)pに含まれる切断可能な部位と、F又は(LP2)qに含まれる切断可能な部位が異なる条件で切断可能である、
請求項68に記載の化合物。
【請求項70】
Anが、n個のビルディングブロックα1~αn(nは、1~10の整数である。)により構築される部分構造である、
請求項8~69のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項71】
Anが、低分子有機化合物である、請求項8~70のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項72】
Anのビルディングブロックが、分子量500以下の化合物である、請求項8~71のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項73】
Anのビルディングブロックが、分子量300以下の化合物である、請求項8~72のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項74】
Anのビルディングブロックが、分子量150以下の化合物である、請求項8~73のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項75】
Anが、H、B、C、N、O、Si、P、S、F、Cl、Br及びIからなる元素群より単独又は異なって選ばれる元素により構成される有機化合物である、請求項8~74のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項76】
Anが、アリール基、非芳香族シクリル基、ヘテロアリール基及び非芳香族ヘテロシクリル基からなる置換基群より単独又は異なって選ばれる置換基を有する低分子有機化合物である、請求項8~75のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項77】
Anが、分子量5000以下である、請求項8~76のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項78】
Anが、分子量800以下である、請求項8~77のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項79】
Anが、分子量500以下である、請求項8~78のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項80】
Anが、ポリペプチドである、
請求項8~70のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項81】
Spが結合である、請求項8~80のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項82】
Spが2官能性スペーサーであり、
該2官能性スペーサーがSpD-SpL-SpXであり、
SpDが、C―C、アミノ、エーテル、カルボニル、アミド、エステル、ウレア、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホンアミド、又はスルホニル結合を構成しうる反応性基由来の2価の基であり、
SpLが、ポリアルキレングリコール、ポリエチレン、任意にヘテロ原子で置き換えられても良いC1~20脂肪族炭化水素、ペプチド、オリゴヌクレオチド、またはこれらの組み合わせあり、
SpXが、アミノ、カルボニル、アミド、エステル、ウレア、又はスルホンアミド結合を形成する反応基由来の2価の基である、
請求項8~80のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項83】
Spが2官能性スペーサーであり、
該2官能性スペーサーがSpD-SpL-SpXであり、
SpDが、第一級アミノ基由来の2価の基であり、
SpLが、ポリエチレングリコール、またはポリエチレンであり、
SpXが、カルボキシ基由来の2価の基である、
請求項8~80のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項84】
オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとが、二重鎖を形成可能な配列である、請求項8~83のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項85】
オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとが、相補的な塩基配列を含む、請求項8~84のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項86】
オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとが、それぞれ1~200塩基の長さである、請求項8~85のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項87】
オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとが、それぞれ3~150塩基の長さである、請求項8~86のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項88】
オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとが、それぞれ30~150塩基の長さである、請求項8~87のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項89】
オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとが、平滑末端を有する、請求項8~88のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項90】
オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとが、突出末端を有する、請求項8~88のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項91】
突出末端の突出部が、1~30塩基の長さである、請求項90に記載の化合物。
【請求項92】
突出末端の突出部が、2~5塩基の長さである、請求項90又は91に記載の化合物。
【請求項93】
オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとが、突出末端を有し、当該突出末端に、さらに特定分子識別配列が結合する、請求項90~92のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項94】
XおよびYのいずれか一方に、機能性分子が結合した、請求項8~93のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項95】
XおよびYのいずれか一方に、ビオチンが結合した、請求項8~93のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項96】
請求項1、4、5、8~95のいずれか1項に記載の化合物を含む化合物ライブラリ。
【請求項97】
請求項1、4、5、8~95のいずれか1項に記載の化合物を含むDNAコード化ライブラリ。
【請求項98】
1000以上の異なる化合物により構成される、請求項96又は97に記載のライブラリ。
【請求項99】
化合物An-Sp-C-Bnの製造方法であって、
Anは、n個のビルディングブロックα1~αn(nは、2~10の整数である。)により構築される部分構造であり、
Spは、結合または2官能性スペーサーであり、
Cは、少なくとも一つの「選択的に切断可能な部位」を有するヘアピン型のヘッドピースであり、
Bnは、Anの構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む部分構造であり、
Cに対し、以下の工程;
(a)α1-Spを結合させること、またはSpおよびα1を結合させること、及び
(b)α1の構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドタグを結合させること、
により化合物A1-Sp-C-B1を得ること、
次いで、A(m-1)-Sp-C-B(m-1)(mは、2~nの整数である)に対し、以下の工程(c)及び(d)を、mが2~nまで昇順で繰り返すこと;
(c)A部分にαnを結合させること、及び
(d)B部分の末端にαnの構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドタグを結合させること
により化合物Am-Sp-C-Bmを得ることを含み、
工程(a)及び(b)、工程(c)及び(d)は、任意の順序で行うことができる、方法。
【請求項100】
請求項9~95のいずれか1項に記載の化合物であるAn-Sp-C-Bnの製造方法であって、
Anは、n個のビルディングブロックα1~αn(nは、2~10の整数である。)により構築される部分構造であり、
Spは、結合又は2官能性スペーサーであり、
Cは、少なくとも一つの「選択的に切断可能な部位」を有するヘアピン型のヘッドピースであり、
Bnは、Anの構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む部分構造であり、
Cに対し、以下の工程;
(a)α1-Spを結合させること、またはSpおよびα1を結合させること、 及び
(b)α1の構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドタグを結合させること、
により化合物A1-Sp-C-B1を得ること、
次いで、A(m-1)-Sp-C-B(m-1)(mは、2~nの整数である)に対し、以下の工程(c)及び(d)を、mが2~nまで昇順で繰り返すこと;
(c)A部分にαnを結合させること、及び
(d)B部分の末端にαnの構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドタグを結合させること
により化合物Am-Sp-C-Bmを得ることを含み、
工程(a)及び(b)、工程(c)及び(d)は、任意の順序で行うことができる、方法。
【請求項101】
請求項9~95のいずれか1項に記載の化合物であるAn-Sp-C-Bn(An、Sp、CおよびBnは前記と同じ意味を表す)の製造方法であって、
Cに対し、以下の工程;
(a)α1-Spを結合させること、またはSpおよびα1を結合させること、 及び
(b)α1の構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドタグを結合させること、
により化合物A1-Sp-C-B1を得ること、
次いで、A(m-1)-Sp-C-B(m-1)(mは、2~nの整数である)に対し、以下の工程(c)及び(d)を、mが2~nまで昇順で繰り返すこと;
(c)A部分にαnを結合させること、及び
(d)B部分の末端にαnの構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドタグを結合させること
により化合物Am-Sp-C-Bmを得ることを含み、
工程(a)及び(b)、工程(c)及び(d)は、任意の順序で行うことができる、方法。
【請求項102】
少なくとも1つの式(III)
An-Sp-C-Bn (III)
(式中、
Anは、n個のビルディングブロックα1~αn(nは、1~10の整数である。)により構築される部分構造であり、
Spは、結合又は2官能性スペーサーであり、
Cは、少なくとも一つの「選択的に切断可能な部位」を有するヘアピン型のヘッドピースであり、
Bnは、Anの構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む部分構造である。)
で表される化合物を含む化合物ライブラリの評価方法であって、以下のステップ:
(1)化合物ライブラリを、生物学的標的と、化合物ライブラリの少なくとも1つのライブラリ分子が標的と結合するために適した条件下で接触させる、
(2)標的と結合しないライブラリ分子を除去し、生物学的標的に親和性のあるライブラリ分子を選抜する、
(3)選択的に切断可能な部位を切断する、
(4)Bnを構成するオリゴヌクレオチドの配列を同定する、
(5)(4)において決定された配列を使用し、生物学的標的と結合する1以上の化合物の構造を同定する、
により構成される方法。
【請求項103】
少なくとも1つの式(III)
An-Sp-C-Bn (III)
(式中、
Anは、n個のビルディングブロックα1~αn(nは、1~10の整数である。)により構築される部分構造であり、
Spは、結合又は2官能性スペーサーであり、
Cは、少なくとも一つの「選択的に切断可能な部位」を有するヘアピン型のヘッドピースであり、
Bnは、Anの構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む部分構造である。)
で表される請求項8~95のいずれか1項に記載の化合物を含む化合物ライブラリの評価方法であって、以下のステップ:
(1)化合物ライブラリを、生物学的標的と、化合物ライブラリの少なくとも1つのライブラリ分子が標的と結合するために適した条件下で接触させる、
(2)標的と結合しないライブラリ分子を除去し、生物学的標的に親和性のあるライブラリ分子を選抜する、
(3)選択的に切断可能な部位を切断する、
(4)Bnを構成するオリゴヌクレオチドの配列を同定する、
(5)(4)において決定された配列を使用し、生物学的標的と結合する1以上の化合物の構造を同定する、
により構成される方法。
【請求項104】
ステップ(3)と(4)の間に、Bnを構成するオリゴヌクレオチドを増幅するステップを含む、請求項102又は103に記載の方法。
【請求項105】
選択的に切断可能な部位を切断するステップが、
酵素により選択的に切断可能な部位を切断するステップである、請求項102~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
選択的に切断可能な部位を切断するステップが、
酵素と化学的条件変化の組み合わせにより選択的に切断可能な部位を切断するステップである、請求項102~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
酵素がグリコシラーゼ、及びヌクレアーゼから少なくとも1つ選択される、請求項105又は106に記載の方法。
【請求項108】
酵素がウラシルDNAグリコシラーゼである、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
酵素がエンドヌクレアーゼVIIIである、請求項107に記載の方法。
【請求項110】
酵素がウラシルDNAグリコシラーゼとエンドヌクレアーゼVIIIの組み合わせである、請求項107に記載の方法。
【請求項111】
酵素がアルキルアデニンDNAグリコシラーゼである、請求項107に記載の方法。
【請求項112】
酵素がエンドヌクレアーゼVである、請求項107に記載の方法。
【請求項113】
化学的条件変化が、水を含んだ溶液中での50~100℃の加熱である、請求項106~112のいずれか1項に記載の方法。
【請求項114】
化学的条件変化が、水を含んだ溶液中での80~95℃の加熱である、請求項106~113のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
化学的条件変化が、pH8~13の塩基性条件である、請求項106~114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
化学的条件変化が、pH8~11の塩基性条件である、請求項106~115のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
化学的条件変化が、pH9~10の塩基性条件である、請求項106~116のいずれか1項に記載の方法。
【請求項118】
DNAタグの末端近くに切断可能な部位を設け、所望に応じて当該部位を切断し、新たな突出末端を生成し、当該粘着末端に、特定分子識別配列をライゲートし、Bnを構成するオリゴヌクレオチドの配列を同定する、請求項102~117のいずれか1項に記載の方法。
【請求項119】
DNAタグの末端近くに設けた切断可能な部位と、Cに含まれる切断可能な部位が異なる条件で切断される、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する核酸を用い、切断可能部位を切断することで2本鎖核酸として利用する方法。
【請求項121】
切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する、2本鎖核酸よりも化学的に安定である核酸を用い、切断可能部位を切断することで2本鎖核酸として利用する、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する核酸を用い、前記化合物に化学構造変換を施したのち、切断可能部位を切断することで2本鎖核酸として利用する請求項120又は121に記載の方法。
【請求項123】
切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する核酸を用い、さらに前記核酸に化学構造変換を施したのち、切断可能部位を切断することで2本鎖核酸として利用する、請求項120~122のいずれか1項に記載の方法。
【請求項124】
切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する核酸を用い、さらに前記核酸に核酸伸長反応を施したのち、切断可能部位を切断することで2本鎖核酸として利用する、請求項120~123のいずれか1項に記載の方法。
【請求項125】
切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する核酸を用い、切断可能部位を切断することで2本鎖核酸として利用可能とし、PCR反応を施す、請求項120~124のいずれか1項に記載の方法。
【請求項126】
化合物の機能性評価のために用いる、請求項120~125のいずれかに1項記載の方法。
【請求項127】
化合物の生物活性評価のために用いる、請求項120~126のいずれか1項に記載の方法。
【請求項128】
DELに用いる、請求項120~127のいずれか1項に記載の方法。
【請求項129】
DELの製造に用いる、請求項120~124のいずれか1項に記載の方法。
【請求項130】
切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する核酸を用い合成されたDEL化合物に対し、切断可能な部位を切断し、1本鎖DNAを有するDELに変換する方法。
【請求項131】
切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する核酸を用い合成されたDEL化合物に対し、切断可能な部位を切断し、1本鎖DNAを有するDELに変換し、クロスリンカー修飾DNAと2本鎖を形成させる方法。
【請求項132】
切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する核酸を用い合成されたDEL化合物に対し、切断可能な部位を切断し、クロスリンカー修飾プライマーを付与し、付与したプライマーを伸長させ、クロスリンカー修飾2本鎖DEL化合物を合成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断可能な部位をDNA鎖中に含むDNAコード化ライブラリに関する。
【背景技術】
【0002】
化合物ライブラリとは、医薬品候補化合物など、特定の活性を有する可能性のある化合物を系統的に集めた化合物誘導体群である。この化合物ライブラリは、多くの場合コンビナトリアル化学の合成技術と方法論に基づき合成される。コンビナトリアル化学とは、組み合わせ論に基づいて列挙し設計された一連の化合物ライブラリを系統的な合成経路で効率的に多品種合成するための実験手法とそれに関する研究分野である。
コンビナトリアル化学に基づく化合物ライブラリの一つの種として、DNAコード化ライブラリがある。以下、DNAコード化ライブラリを適宜DELと略す。DELでは、ライブラリ化された各化合物に、DNAのタグが付加される。DNAのタグは、各化合物の各構造を同定できるように配列が設計されており、化合物の標識として機能する(特許文献1乃至3)。
従来知られているDELのDNA鎖構造は、2本鎖とヘアピン鎖の2つが代表的である。
以下、2本鎖DELとヘアピン鎖DELの概要と長所短所について概説する。
(1)ヘアピン鎖DEL
ヘアピン鎖DNAをもちいるDELは、相補的な2本のDNA鎖がつながった1本鎖構造であり、種々のビルディングブロック導入のための官能基を有するヘアピン型DNAを出発原料(ヘッドピース)として用いて合成される(特許文献3、非特許文献1及2)。
(A)長所
(a)短いDNAタグが使用できる。
本手法では、多くの場合、2merの粘着末端を有する9~13mer程度の比較的短い2本鎖DNAタグが使用されており、2本鎖DNAタグはDNAリガーゼによるライゲーション反応により導入される。このような短いDNAタグの使用は、ヘアピン鎖DNAが分子内で強く二重鎖を形成し、粘着末端以外のDNA部位がDNAタグと干渉しないことにより可能となっている。短い2本鎖DNAタグの使用は、DEL合成において、いくつかの利点を有する。一つの利点として、DNAタグの合成にかかるコストが低いことが挙げられる。また、もう一つの利点として、より短いDNAタグの使用は、同じ反応サイクル数をコードする場合、DELの全長が短く抑えられることが挙げられる。すなわち、より多くのサイクル数をコードしても、次世代シーケンサーによって効率的にDNA配列を読み取り可能な範囲までDELの全長を抑えられる。実際に非特許文献3では、ヘアピン鎖DNAをもちいることにより、6サイクルもの反応をコードしたヘアピン鎖DNAをもちいたDELの構築が達成されている。
(b)化学的安定性が高い
2本鎖と異なりヘアピン鎖では、加熱反応中に二重鎖構造が融解しても、その後の再アニール条件下で、鎖交換を生じることなく、元の分子内での二重鎖が再形成される。したがって、ヘアピン鎖DNAをもちいるDELは、より広範な化学条件で使用可能という利点を有する(非特許文献2)。また、一般に核酸鎖は、同じ鎖長であればヘアピン鎖の方が2本鎖よりも強く二重鎖を形成する(Tm値が高い)。したがって、ビルディングブロック導入時の種々の化学的条件下において、ヘアピン鎖DNAの各化学構造、特に塩基部の構造は2本鎖に比べ構造変換に抵抗するはずである。
(B)短所
ヘアピン鎖DNAは、その強い二重鎖形成能がゆえ、二重鎖を融解させプライマーオリゴヌクレオチドを結合させてポリメラーゼ反応開始させることが難しく、PCR効率が低いという課題を有している(特許文献4)。
(2)2本鎖DEL
2本鎖DNAをもちいるDELは、種々のビルディングブロック導入のための官能基を有する1本鎖DNA(ヘアピン鎖でない1本鎖DNA)又は2本鎖DNAを出発原料(ヘッドピース)として合成される。
(A)短所
ヘアピン鎖DNAをもちいるDELと対照的に、多くの場合、4~10merの粘着末端を有する20~30mer程度の比較的長い1本鎖または2本鎖DNAタグが使用されおり(特許文献2、非特許文献4)、3サイクル程度の反応をコードしたDELが一般的である。
(B)長所
2本鎖DNAをもちいるDELは、PCR効率の観点ではヘアピン鎖DNAのような課題を有していない。さらに、ヘアピン鎖DNAと異なり、2本鎖DNAは変性により1本鎖DNAにすること、もしくは鎖交換反応を実施することが可能であり、様々用途に即したDNA構造に変換することで、幅広い評価手法に適応できるという利点を有する。例えばDNAの2本鎖形成能を利用した感度比の高い評価手法が開発されている(非特許文献5及6)。
【0003】
このように、ヘアピン鎖DNAと2本鎖DNAは、それぞれDELの合成時、評価時において長所を有するものの、長所を両立する技術は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第93/20243号
【特許文献2】国際公開第2004/039825号
【特許文献3】国際公開第2005/058479号
【特許文献4】国際公開第2010/094036号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ネイチャー・ケミカル・バイオロジー、2009年、5巻、647-654頁
【非特許文献2】A Handbook for DNA-Encoded Chemistry、Robert A.Goodnow,Jr.編、John Wiley & Sons,Inc.
【非特許文献3】エーシーエス・ケミカル・バイオロジー、2018年、13巻、53-59頁
【非特許文献4】ネイチャー・ケミストリー、2018年、10巻、441-448頁
【非特許文献5】アニューアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー、2018年、87巻、479-502頁
【非特許文献6】エーシーエス・コンビナトリアル・サイエンス、2020年、22巻、204-212頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は切断可能な部位をDNA鎖中に含むDEL、およびDELの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
DNAなどの核酸化学の一つとして核酸の切断技術がある。例えば、DNA鎖中にデオキシウリジンを導入すると、USER(登録商標)酵素により選択的に切断することができる。
本発明者は、鋭意研究の結果、例えばデオキシウリジンのような切断可能な部位をDNA鎖中に導入することで、ヘアピン鎖DNAと2本鎖DNAの長所を両立できることを見出し、本発明を完成させた。
したがって、本発明は、以下のとおりである。
【0008】
[1] 式(I)
【化1】

(式中、
EおよびFは、それぞれ独立して
ヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
ただし、EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
LPは、ループ部位であり、
Lは、リンカーであり、
Dは、反応性官能基である。)
で表される化合物であり、
E、F、又はLPの少なくともいずれか1つの部位に、少なくとも1つの選択的に切断可能な部位を有する化合物。
[2] [1]に記載の化合物を含む、化合物ライブラリのヘッドピースの調製に用いるための組成物。
[3] [1]に記載の化合物を含む、DNAコード化ライブラリのヘッドピースの調製に用いるための組成物。
[4] 式(I)
【化2】

(式中、
EおよびFは、それぞれ独立して
ヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
ただし、EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
LPは、ループ部位であり、
Lは、リンカーであり、
Dは、反応性官能基である。)
で表される化合物であり、
E、F、又はLPの少なくともいずれか1つの部位に、少なくとも1つの選択的に切断可能な部位を有し、
化合物ライブラリのヘッドピースとして用いる化合物。
[5] 式(I)
【化3】

(式中、
EおよびFは、それぞれ独立して
ヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
ただし、EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
LPは、ループ部位であり、
Lは、リンカーであり、
Dは、反応性官能基である。)
で表される化合物であり、
E、F、又はLPの少なくともいずれか1つの部位に、少なくとも1つの選択的に切断可能な部位を有し、
DNAコード化ライブラリのヘッドピースとして用いる化合物。
[6] 式(I)
【化4】

(式中、
EおよびFは、それぞれ独立して
ヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
ただし、EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
LPは、ループ部位であり、
Lは、リンカーであり、
Dは、反応性官能基である。)
で表される化合物であり、
E、F、又はLPの少なくともいずれか1つの部位に、少なくとも1つの選択的に切断可能な部位を有する化合物ライブラリのヘッドピース。
[7] 式(I)
【化5】

(式中、
EおよびFは、それぞれ独立して
ヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
ただし、EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
LPは、ループ部位であり、
Lは、リンカーであり、
Dは、反応性官能基である。)
で表される化合物であり、
E、F、又はLPの少なくともいずれか1つの部位に、少なくとも1つの選択的に切断可能な部位を有するDNAコード化ライブラリのヘッドピース。
[8]
式(II)
【化6】

(式中、
XおよびYは、オリゴヌクレオチド鎖であり、
EおよびFは、それぞれ独立して
ヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
ただし、EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
LPは、ループ部位であり、
Lは、リンカーであり、
Dは、反応性官能基由来の2価の基であり、
Spは、結合又は2官能性スペーサーであり、
Anは、少なくとも1つのビルディングブロックにより構成される部分構造である。)
で表される化合物であり、
XとYは、少なくとも一部で二重鎖を形成しうる配列を有し、
Xは5‘末端でEに結合し、
Yは3‘末端でFに結合し、
E、F、又はLPの少なくともいずれか1つの部位に、少なくとも1つの選択的に切断可能な部位を有する化合物。
[9]
式(III)
An-Sp-C-Bn (III)
(式中、
AnおよびSpは、[8]と同じ意味を表し、
Bnは、オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとで形成される2本鎖オリゴヌクレオチドタグを表し、
Cは、式(I)
【化7】

(式中、E、LP、L、DおよびFは、[8]と同じ意味を表し、ただしDはSpに結合し、EとFとは2本鎖オリゴヌクレオチドタグBnのそれぞれ対応する末端側に結合する。)
で表される、
[8]に記載の化合物。
[10] Anが、[8]と同じであり、かつ、n個のビルディングブロックα1~αn(nは、1~10の整数である。)により構築される部分構造であり、
Bnが、オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとで形成される2本鎖オリゴヌクレオチドタグであり、かつ、Anの構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む部分構造である、
[8]又は[9]に記載の化合物。
[11] LPが、
(LP1)p-LS-(LP2)qで表されるループ部位であり、
LSは、以下の(A)ないし(C)に記載される化合物群から選ばれる部分構造であり、
(A)ヌクレオチド
(B)核酸アナログ
(C)置換基を有してもよいC1~14の3価の基
LP1は、以下の(1)および(2)に記載される化合物群から単独もしくは異なってp個選ばれる各部分構造であり、
(1)ヌクレオチド
(2)核酸アナログ
LP2は、以下の(1)および(2)に記載される化合物群から単独もしくは異なってq個選ばれる各部分構造であり、
(1)ヌクレオチド
(2)核酸アナログ
pとqの総数が0~40である、
[1]、[4]、[5]、[8]~[10]のいずれかに記載の化合物。
[12] pとqの総数が2~20である、[11]に記載の化合物。
[13] pとqの総数が2~10である、[11]に記載の化合物。
[14] pとqの総数が2~7である、[11]に記載の化合物。
[15] pとqの総数が0である、[11]に記載の化合物。
[16] LP1、LP2およびLSが、それぞれ以下の構造:
(A)ヌクレオチド
または
(B)以下の(B11)から(B15)を要件とする核酸アナログ
(B11)リン酸(または相当部位)および水酸基(またはその相当部位)を有する、
(B12)炭素、水素、酸素、窒素、リン又は硫黄により構成される、
(B13)分子量が142から1500である、
(B14)残基間原子数が3~30である、
(B15)残基間の原子の結合様式は、全て単結合であるか、または1乃至2つの二重結合を含み残りは単結合である、
から単独もしくは異なって選ばれる構造である、[11]~[15]のいずれかに記載の化合物。
[17] LP1、LP2およびLSが、それぞれ以下の構造:
(A)ヌクレオチド
または
(B)以下の(B21)から(B25)を要件とする核酸アナログ
(B21)リン酸および水酸基を有する、
(B22)炭素、水素、酸素、窒素又はリンにより構成される、
(B23)分子量が142から1000である、
(B24)残基間原子数が3~15である、
(B25)残基間の原子の結合様式は、全て単結合である、
から単独もしくは異なって選ばれる構造である、[11]~[16]のいずれかに記載の化合物。
[18] LP1、LP2およびLSが、それぞれ以下の構造:
(A)ヌクレオチド
または
(B)以下の(B31)から(B35)を要件とする核酸アナログ
(B31)リン酸および水酸基を有する、
(B32)炭素、水素、酸素、窒素又はリンにより構成される、
(B33)分子量が142から700である、
(B34)残基間原子数が4~7である、
(B35)残基間の原子の結合様式は、全て単結合である、
から単独もしくは異なって選ばれる構造である[11]~[17]のいずれかに記載の化合物。
[19] LP1およびLP2が、それぞれ以下:
(B41)d-Spacer、
(B5)ポリアルキレングリコールリン酸エステル
のいずれかである、[11]~[18]のいずれかに記載の化合物。
[20] LP1およびLP2が、それぞれジエチレングリコールリン酸エステルまたはトリエチレングリコールリン酸エステルである、[11]~[19]のいずれかに記載の化合物。
[21] LP1およびLP2が、それぞれトリエチレングリコールリン酸エステルである、[11]~[20]のいずれかに記載の化合物。
[22] LP1およびLP2が、それぞれd-Spacerである、[11]~[19]のいずれかに記載の化合物。
[23]
LP1およびLP2が、それぞれヌクレオチドである、
[11]~[18]のいずれかに記載の化合物。
[24] LSが、式(a)~式(g):
【化8】

(式中、*はリンカーとの結合位置を意味し、**はLP1又はLP2との結合位置を意味し、Rは、水素原子またはメチル基である。)
のいずれかである、[11]~[23]のいずれかに記載の化合物。
[25] LSが、式(h):
【化9】

(式中、*はリンカーとの結合位置を意味し、**はLP1又はLP2との結合位置を意味する)
である、[11]~[23]のいずれかに記載の化合物。
[26] LSが、ポリアルキレングリコールリン酸エステルである、[11]~[23]のいずれかに記載の化合物。
[27] LSが、式(i)~式(k):
【化10】

(式中、n1、m1、p1、及びq1はそれぞれ独立して、1~20の整数であり、*はリンカーとの結合位置を意味し、**はLP1又はLP2との結合位置を意味する)
である、[11]~[23]のいずれかに記載の化合物。
[28] LSが、式(l):
【化11】

(式中、*はリンカーとの結合位置を意味し、**はLP1又はLP2との結合位置を意味する)
である、[11]~[23]のいずれかに記載の化合物。
[29] LSが、(B42)、(B43)又は(B44):
(B42)Amino C6 dT
(B43)mdC(TEG-Amino)
(B44)Uni-Link(商標登録)Amino Modifier
のいずれかである、[11]~[23]のいずれかに記載の化合物。
[30] LSが、ヌクレオチドである、
[11]~[23]のいずれかに記載の化合物。
[31] LSが、(C)置換基を有してもよいC1~14の3価の基であり、(C)が以下の構造:
(1)置換基を有しても良く、1~3個のヘテロ原子で置き換えられても良いC1~10脂肪族炭化水素、
(2)置換基を有してもよいC6~14芳香族炭化水素、
(3)置換基を有してもよいC2~9芳香族複素環、 または
(4)置換基を有してもよいC2~9非芳香族複素環
のいずれかである、[11]~[15]及び[19]~[23]のいずれかに記載の化合物。
[32] LSが、(C)置換基を有してもよいC1~14の3価の基であり、(C)が以下の構造:
(1)置換基を有しても良いC1~6脂肪族炭化水素、
(2)置換基を有しても良いC6~10芳香族炭化水素、または
(3)置換基を有してもよいC2~5芳香族複素環
のいずれかである[11]~[15]及び[19]~[23]のいずれかに記載の化合物。
[33] LSが、(C)置換基を有してもよいC1~14の3価の基であり、(C)が以下の構造:
(1)C1~6脂肪族炭化水素、
(2)ベンゼン、または
(3)C2~5含窒素芳香族複素環
ここで、前記(1)~(3)は無置換であるか、または置換基群ST1から単独もしくは異なって選ばれる1~3個の置換基で置換されてもよく、置換基群ST1は、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、フッ素原子および塩素原子により構成される群であり、ただし、置換基群ST1が脂肪族炭化水素に置換する場合、置換基群ST1からアルキル基は選択されない、
のいずれかである[11]~[15]及び[19]~[23]のいずれかに記載の化合物。
[34] LSが、(C)置換基を有してもよいC1~14の3価の基であり、(C)が以下の構造:
(1)C1~6アルキル基、または
(2)無置換であるか1つまたは2つのC1~3アルキル基若しくはC1~3アルコキシ基で置換されたベンゼン
のいずれかである[11]~[15]及び[19]~[23]のいずれかに記載の化合物。
[35] LSが、(C)置換基を有してもよいC1~14の3価の基であり、(C)が以下の構造:
(1)C1~6アルキル基
である、[11]~[15]及び[19]~[23]のいずれかに記載の化合物。
[36] EおよびFが、それぞれ独立してヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
EおよびFの鎖長が、それぞれ3乃至40である、
[1]、[4]、[5]、[8]~[35]のいずれかに記載の化合物。
[37] EおよびFが、それぞれ独立してヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
EおよびFの鎖長が、それぞれ4乃至30である
[1]、[4]、[5]、[8]~[36]のいずれかに記載の化合物。
[38] EおよびFが、それぞれ独立してヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
EおよびFの鎖長が、それぞれ6乃至25である
[1]、[4]、[5]、[8]~[37]のいずれかに記載の化合物。
[39] EおよびFが、それぞれ独立してヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
EとFの二重鎖オリゴヌクレオチドが突出末端である、
[1]、[4]、[5]、[8]~[38]のいずれかに記載の化合物。
[40] 前記突出末端の突出部が、2塩基以上の長さである、[39]に記載の化合物。
[41] EおよびFが、それぞれ独立してヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
EとFの二重鎖オリゴヌクレオチドが平滑末端である、
[1]、[4]、[5]、[8]~[38]のいずれかに記載の化合物。
[42] EとFに含まれる、互いに相補的な塩基配列の鎖長が、それぞれ3塩基以上 である、
[1]、[4]、[5]、[8]~[41]のいずれかに記載の化合物。
[43] EとFに含まれる、互いに相補的な塩基配列の鎖長が、それぞれ4塩基以上である、
[1]、[4]、[5]、[8]~[42]のいずれかに記載の化合物。
[44] EとFに含まれる、互いに相補的な塩基配列の鎖長が、それぞれ6塩基以上である、
[1]、[4]、[5]、[8]~[43]のいずれかに記載の化合物。
[45] EおよびFが、それぞれ独立してヌクレオチドにより構成されるオリゴマーである、[1]、[4]、[5]、[8]~[44]のいずれかに記載の化合物。
[46] ヌクレオチドが、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドである、
[1]、[4]、[5]、[8]~[45]のいずれかに記載の化合物。
[47] ヌクレオチドが、デオキシリボヌクレオチドである、
[1]、[4]、[5]、[8]~[46]のいずれかに記載の化合物。
[48] ヌクレオチドが、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、又はデオキシシチジンである、
[1]、[4]、[5]、[8]~[47]のいずれかに記載の化合物。
[49] EおよびFが、それぞれ独立して核酸アナログにより構成されるオリゴマーである、[1]、[4]、[5]、[8]~[44]のいずれかに記載の化合物。
[50] Lが、
(1)置換基を有しても良く、1~3個のヘテロ原子で置き換えられても良いC1~20脂肪族炭化水素、
又は
(2)置換基を有してもよいC6~14芳香族炭化水素
である、[1]、[4]、[5]、[8]~[49]のいずれかに記載の化合物。
[51] Lが、置換基を有しても良いC1~6脂肪族炭化水素、1若しくは2個の酸素原子で置き換えられても良いC1~6脂肪族炭化水素、又は置換基を有しても良いC6~10芳香族炭化水素である、[1]、[4]、[5]、[8]~[50]のいずれかに記載の化合物。
[52] Lが、置換基群ST1で置換可能なC1~6脂肪族炭化水素、又は置換基群ST1で置換可能なベンゼンであり、ここで、置換基群ST1は、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、フッ素原子および塩素原子により構成される群である(ただし、置換基群ST1が脂肪族炭化水素に置換する場合、置換基群ST1からアルキル基は選択されない。)、[1]、[4]、[5]、[8]~[51]のいずれかに記載の化合物。
[53] Lが、C1~6アルキル基、又は無置換であるか1つまたは2つのC1~3アルキル基若しくはC1~3アルコキシ基で置換されたベンゼンである、[1]、[4]、[5]、[8]~[52]のいずれかに記載の化合物。
[54] Lが、C1~6アルキル基である、[1]、[4]、[5]、[8]~[53]のいずれかに記載の化合物。
[55] Dの反応性官能基が、
C―C、アミノ、エーテル、カルボニル、アミド、エステル、ウレア、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホンアミド、又はスルホニル結合を構成しうる反応性官能基である、[1]、[4]、[5]、[8]~[54]のいずれかに記載の化合物。
[56] Dの反応性官能基が、脱離基を有するC1炭化水素、アミノ基、水酸基、カルボニル基の前駆体、チオール基、又はアルデヒド基である、[1]、[4]、[5]、[8]~[55]のいずれかに記載の化合物。
[57] Dの反応性官能基が、ハロゲン原子を有するC1炭化水素、スルホン酸系脱離基を有するC1炭化水素、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、ハロゲン化カルボキシ基、チオール基、又はアルデヒド基である、[1]、[4]、[5]、[8]~[56]のいずれかに記載の化合物。
[58] Dの反応性官能基が、-CHCl、-CHBr、-CHOSOCH、-CHOSOCF、アミノ基、水酸基、又はカルボキシ基である、[1]、[4]、[5]、[8]~[57]のいずれかに記載の化合物。
[59] Dの反応性官能基が、第1級アミノ基である、[1]、[4]、[5]、[8]~[58]のいずれかに記載の化合物。
[60] 選択的に切断可能な部位が、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、及びデオキシシチジンのいずれでもないデオキシリボヌクレオシドである、
[1]、[4]、[5]、[8]~[59]のいずれかに記載の化合物。
[61] 選択的に切断可能な部位が、デオキシウリジン、ブロモデオキシウリジン、デオキシイノシン、8-ヒドロキシデオキシグアノシン、3-メチル-2’-デオキシアデノシン、N6-エテノ-2’-デオキシアデノシン、7-メチル-2’-デオキシグアノシン、2’-デオキシキサントシン、又は5,6-ジヒドロキシ-5,6ジヒドロデオキシチミジンである、
[1]、[4]、[5]、[8]~[60]のいずれかに記載の化合物。
[62] 選択的に切断可能な部位が、デオキシウリジン、又はデオキシイノシンである、
[1]、[4]、[5]、[8]~[61]のいずれかに記載の化合物。
[63] 選択的に切断可能な部位が、デオキシウリジンである、
[1]、[4]、[5]、[8]~[62]のいずれかに記載の化合物。
[64] 選択的に切断可能な部位が、デオキシイノシンである、
[1]、[4]、[5]、[8]~[62]のいずれかに記載の化合物。
[65] 選択的に切断可能な部位が、デオキシイノシンから3‘方向に2番目のホスホジエステル結合である、
[1]、[4]、[5]、[8]~[59]のいずれかに記載の化合物。
[66] 選択的に切断可能な部位が、リボヌクレオシドである、
[1]、[4]、[5]、[8]~[59]のいずれかに記載の化合物。
[67] 選択的に切断可能な部位が、1つである、
[1]、[4]、[5]、[8]~[66]のいずれかに記載の化合物。
[68] 少なくとも1つの切断可能な部位を、E又は(LP1)pに含み、かつ少なくとも1つの切断可能な部位を、F又は(LP2)qに含む、
[1]、[4]、[5]、[8]~[66]のいずれかに記載の化合物。
[69] E又は(LP1)pに含まれる切断可能な部位と、F又は(LP2)qに含まれる切断可能な部位が異なる条件で切断可能である、[68]に記載の化合物。
[70] Anが、n個のビルディングブロックα1~αn(nは、1~10の整数である。)により構築される部分構造である、[8]~[69]のいずれかに記載の化合物。
[71] Anが、低分子有機化合物である、[8]~[70]のいずれかに記載の化合物。
[72] Anのビルディングブロックが、分子量500以下の化合物である、[8]~[71]のいずれかに記載の化合物。
[73] Anのビルディングブロックが、分子量300以下の化合物である、[8]~[72]のいずれかに記載の化合物。
[74] Anのビルディングブロックが、分子量150以下の化合物である、[8]~[73]のいずれかに記載の化合物。
[75] Anが、H、B、C、N、O、Si、P、S、F、Cl、Br及びIからなる元素群より単独又は異なって選ばれる元素により構成される有機化合物である、[8]~[74]のいずれかに記載の化合物。
[76] Anが、アリール基、非芳香族シクリル基、ヘテロアリール基及び非芳香族ヘテロシクリル基からなる置換基群より単独又は異なって選ばれる置換基を有する低分子有機化合物である、[8]~[75]のいずれかに記載の化合物。
[77] Anが、分子量5000以下である、[8]~[76]のいずれかに記載の化合物。
[78] Anが、分子量800以下である、[8]~[77]のいずれかに記載の化合物。
[79] Anが、分子量500以下である、[8]~[78]のいずれかに記載の化合物。
[80] Anが、ポリペプチドである、[8]~[70]のいずれかに記載の化合物。
[81] Spが結合である、[8]~[80]のいずれかに記載の化合物。
[82] Spが2官能性スペーサーであり、
該2官能性スペーサーがSpD-SpL-SpXであり、
SpDが、C―C、アミノ、エーテル、カルボニル、アミド、エステル、ウレア、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホンアミド、又はスルホニル結合を構成しうる反応性基由来の2価の基であり、
SpLが、ポリアルキレングリコール、ポリエチレン、任意にヘテロ原子で置き換えられても良いC1~20脂肪族炭化水素、ペプチド、オリゴヌクレオチド、またはこれらの組み合わせあり、
SpXが、アミド、アミノ、又はスルホンアミド結合を形成する反応基由来の2価の基である、
[8]~[80]のいずれかに記載の化合物。
[83] Spが2官能性スペーサーであり、
該2官能性スペーサーがSpD-SpL-SpXであり、
SpDが、第一級アミノ基由来の2価の基であり、
SpLが、ポリエチレングリコール、またはポリエチレンであり、
SpXが、カルボキシ基由来の2価の基である、
[8]~[81]のいずれかに記載の化合物。
[84] オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとが、二重鎖を形成可能な配列である、[8]~[83]のいずれかに記載の化合物。
[85] オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとが、相補的な塩基配列を含む、[8]~[84]のいずれかに記載の化合物。
[86] オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとが、それぞれ1~200塩基の長さである、[8]~[85]のいずれかに記載の化合物。
[87] オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとが、それぞれ3~150塩基の長さである、[8]~[86]のいずれかに記載の化合物。
[88] オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとが、それぞれ30~150塩基の長さである、[8]~[87]のいずれかに記載の化合物。
[89] オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとが、平滑末端を有する、[8]~[88]のいずれかに記載の化合物。
[90] オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとが、突出末端を有する、[8]~[88]のいずれかに記載の化合物。
[91] 突出末端の突出部が、1~30塩基の長さである、[90]に記載の化合物。
[92] 突出末端の突出部が、2~5塩基の長さである、[90]又は[91]に記載の化合物。
[93] オリゴヌクレオチド鎖Xとオリゴヌクレオチド鎖Yとが、突出末端を有し、当該突出末端に、さらに特定分子識別配列が結合する、[90]~[92]のいずれかに記載の化合物。
[94] XおよびYのいずれか一方に、機能性分子が結合した、[8]~[93]のいずれかに記載の化合物。
[95] XおよびYのいずれか一方に、ビオチンが結合した、[8]~[93]のいずれかに記載の化合物。
[96] [1]、[4]、[5]、[8]~[95]のいずれかに記載の化合物を含む化合物ライブラリ。
[97] [1]、[4]、[5]、[8]~[95]のいずれかに記載の化合物を含むDNAコード化ライブラリ。
[98] 1000以上の異なる化合物により構成される、[96]又は[97]に記載のライブラリ。
[99] 化合物An-Sp-C-Bnの製造方法であって、
Anは、n個のビルディングブロックα1~αn(nは、2~10の整数である。)により構築される部分構造であり、
Spは、結合または2官能性スペーサーであり、
Cは、少なくとも一つの「選択的に切断可能な部位」を有するヘアピン型のヘッドピースであり、
Bnは、Anの構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む部分構造であり、
Cに対し、以下の工程;
(a)α1-Spを結合させること、またはSpおよびα1を結合させること、及び
(b)α1の構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドタグを結合させること、
により化合物A1-Sp-C-B1を得ること、
次いで、A(m-1)-Sp-C-B(m-1)(mは、2~nの整数である)に対し、以下の工程(c)及び(d)を、mが2~nまで昇順で繰り返すこと;
(c)A部分にαnを結合させること、及び
(d)B部分の末端にαnの構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドタグを結合させること
により化合物Am-Sp-C-Bmを得ることを含み、
工程(a)及び(b)、工程(c)及び(d)は、任意の順序で行うことができる、方法。
[100] [9]~[95]のいずれかに記載の化合物であるAn-Sp-C-Bnの製造方法であって、
Anは、n個のビルディングブロックα1~αn(nは、2~10の整数である。)により構築される部分構造であり、
Spは、結合又は2官能性スペーサーであり、
Cは、少なくとも一つの「選択的に切断可能な部位」を有するヘアピン型のヘッドピースであり、
Bnは、Anの構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む部分構造であり、
Cに対し、以下の工程;
(a)α1-Spを結合させること、またはSpおよびα1を結合させること、及び
(b)α1の構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドタグを結合させること、
により化合物A1-Sp-C-B1を得ること、
次いで、A(m-1)-Sp-C-B(m-1)(mは、2~nの整数である)に対し、以下の工程(c)及び(d)を、mが2~nまで昇順で繰り返すこと;
(c)A部分にαnを結合させること、及び
(d)B部分の末端にαnの構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドタグを結合させること
により化合物Am-Sp-C-Bmを得ることを含み、
工程(a)及び(b)、工程(c)及び(d)は、任意の順序で行うことができる、方法。
[101] [9]~[95]のいずれかに記載の化合物であるAn-Sp-C-Bn(An、Sp、CおよびBnは前記と同じ意味を表す)の製造方法であって、
Cに対し、以下の工程;
(a)α1-Spを結合させること、またはSpおよびα1を結合させること、及び
(b)α1の構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドタグを結合させること、
により化合物A1-Sp-C-B1を得ること、
次いで、A(m-1)-Sp-C-B(m-1)(mは、2~nの整数である)に対し、以下の工程(c)及び(d)を、mが2~nまで昇順で繰り返すこと;
(c)A部分にαnを結合させること、及び
(d)B部分の末端にαnの構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドタグを結合させること
により化合物Am-Sp-C-Bmを得ることを含み、
工程(a)及び(b)、工程(c)及び(d)は、任意の順序で行うことができる、方法。
[102] 少なくとも1つの式(III)
An-Sp-C-Bn (III)
(式中、
Anは、n個のビルディングブロックα1~αn(nは、1~10の整数である。)により構築される部分構造であり、
Spは、結合又は2官能性スペーサーであり、
Cは、少なくとも一つの「選択的に切断可能な部位」を有するヘアピン型のヘッドピースであり、
Bnは、Anの構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む部分構造である。)
で表される化合物を含む化合物ライブラリの評価方法であって、以下のステップ:
(1)化合物ライブラリを、生物学的標的と、化合物ライブラリの少なくとも1つのライブラリ分子が標的と結合するために適した条件下で接触させる、
(2)標的と結合しないライブラリ分子を除去し、生物学的標的に親和性のあるライブラリ分子を選抜する、
(3)選択的に切断可能な部位を切断する、
(4)Bnを構成するオリゴヌクレオチドの配列を同定する、
(5)(4)において決定された配列を使用し、生物学的標的と結合する1以上の化合物の構造を同定する、
により構成される方法。
[103] 少なくとも1つの式(III)
An-Sp-C-Bn (III)
(式中、
Anは、n個のビルディングブロックα1~αn(nは、1~10の整数である。)により構築される部分構造であり、
Spは、結合又は2官能性スペーサーであり、
Cは、少なくとも一つの「選択的に切断可能な部位」を有するヘアピン型のヘッドピースであり、
Bnは、Anの構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む部分構造である。)
で表される[8]~[92]のいずれかに記載の化合物を含む化合物ライブラリの評価方法であって、以下のステップ:
(1)化合物ライブラリを、生物学的標的と、化合物ライブラリの少なくとも1つのライブラリ分子が標的と結合するために適した条件下で接触させる、
(2)標的と結合しないライブラリ分子を除去し、生物学的標的に親和性のあるライブラリ分子を選抜する、
(3)選択的に切断可能な部位を切断する、
(4)Bnを構成するオリゴヌクレオチドの配列を同定する、
(5)(4)において決定された配列を使用し、生物学的標的と結合する1以上の化合物の構造を同定する、
により構成される方法。
[104] ステップ(3)と(4)の間に、Bnを構成するオリゴヌクレオチドを増幅するステップを含む、[102]又は[103]に記載の方法。
[105] 選択的に切断可能な部位を切断するステップが、酵素により選択的に切断可能な部位を切断するステップである、[102]~[104]のいずれかに記載の方法。
[106] 選択的に切断可能な部位を切断するステップが、
酵素と化学的条件変化の組み合わせにより選択的に切断可能な部位を切断するステップである、[102]~[104]のいずれかに記載の方法。
[107] 酵素がグリコシラーゼ、及びヌクレアーゼから少なくとも1つ選択される、[105]又は[106]に記載の方法。
[108] 酵素がウラシルDNAグリコシラーゼである、[107]に記載の方法。
[109] 酵素がエンドヌクレアーゼVIIIである、[107]に記載の方法。
[110] 酵素がウラシルDNAグリコシラーゼとエンドヌクレアーゼVIIIの組み合わせである、[107]に記載の方法。
[111] 酵素がアルキルアデニンDNAグリコシラーゼである、[107]に記載の方法。
[112] 酵素がエンドヌクレアーゼVである、[107]に記載の方法。
[113] 化学的条件変化が、水を含んだ溶液中での50~100℃の加熱である、[106]~[112]のいずれかに記載の方法。
[114] 化学的条件変化が、水を含んだ溶液中での80~95℃の加熱である、[103]~[113]のいずれかに記載の方法。
[115] 化学的条件変化が、pH8~13の塩基性条件である、[106]~[114]のいずれかに記載の方法。
[116] 化学的条件変化が、pH8~11の塩基性条件である、[106]~[115]のいずれかに記載の方法。
[117] 化学的条件変化が、pH9~10の塩基性条件である、[106]~[116]のいずれかに記載の方法。
[118] DNAタグの末端近くに切断可能な部位を設け、所望に応じて当該部位を切断し、新たな突出末端を生成し、当該粘着末端に、特定分子識別配列をライゲートし、Bnを構成するオリゴヌクレオチドの配列を同定する、[102]~[117]のいずれかに記載の方法。
[119] DNAタグの末端近くに設けた切断可能な部位と、Cに含まれる切断可能な部位が異なる条件で切断される、[118]に記載の方法。
[120] 切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する核酸を用い、切断可能部位を切断することで2本鎖核酸として利用する方法。
[121] 切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する、2本鎖核酸よりも化学的に安定である核酸を用い、切断可能部位を切断することで2本鎖核酸として利用する、[120]に記載の方法。
[122] 切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する核酸を用い、前記化合物に化学構造変換を施したのち、切断可能部位を切断することで2本鎖核酸として利用する[120]又は[121]に記載の方法。
[123] 切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する核酸を用い、さらに前記核酸に化学構造変換を施したのち、切断可能部位を切断することで2本鎖核酸として利用する、[120]~[122]のいずれかに記載の方法。
[124] 切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する核酸を用い、さらに前記核酸に核酸伸長反応を施したのち、切断可能部位を切断することで2本鎖核酸として利用する、[120]~[123]のいずれかに記載の方法。
[125] 切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する核酸を用い、切断可能部位を切断することで2本鎖核酸として利用可能とし、PCR反応を施す、[120]~[124]のいずれかに記載の方法。
[126] 化合物の機能性評価のために用いる、[120]~[125]のいずれかに記載の方法。
[127] 化合物の生物活性評価のために用いる、[120]~[126]のいずれかに記載の方法。
[128] DELに用いる、[120]~[127]のいずれかに記載の方法。
[129] DELの製造に用いる、[120]~[124]のいずれかに記載の方法。
[130] 切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する核酸を用い合成されたDEL化合物に対し、切断可能な部位を切断し、1本鎖DNAを有するDELに変換する方法。
[131] 切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する核酸を用い合成されたDEL化合物に対し、切断可能な部位を切断し、1本鎖DNAを有するDELに変換し、クロスリンカー修飾DNAと2本鎖を形成させる方法。
[132] 切断可能部位およびヘアピン構造を有する化合物と結合する核酸を用い合成されたDEL化合物に対し、切断可能な部位を切断し、クロスリンカー修飾プライマーを付与し、付与したプライマーを伸長させ、クロスリンカー修飾2本鎖DEL化合物を合成する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、切断可能な部位をDNA鎖中に含むDEL、及びその合成用組成物を提供し、従来よりも利便性の高いDELの製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】様式1の例示的なDEL製造方法を示す。切断可能な部位をDNA鎖中に含む第1のオリゴヌクレオチド鎖、ループ部位および第2のオリゴヌクレオチド鎖を含むヘッドピースを出発原料とし、ビルディングブロックの結合と、該ビルディングブロックに対応するオリゴヌクレオチドタグの2本鎖ライゲーションとを繰り返し(図1では3回)、さらに所望によりプライマー領域を含むオリゴヌクレオチドタグの2本鎖ライゲーションをすることによって、DELの製造が達成される。
図2】様式1の例示的なDELの使用方法を示す。切断可能な部位をヘッドピースの第1のオリゴヌクレオチド鎖中に含むDELに対し、酵素などの切断手段を用いて切断可能な部位を切断し、ループ部位で結合されていない2本鎖オリゴヌクレオチドへと誘導することで、高い効率でPCRを行うことができる。
図3】様式2の例示的なDELの使用方法を示す。切断可能な部位をヘッドピースの第2のオリゴヌクレオチド鎖中に含むDELに対し、酵素などの切断手段を用いて切断可能な部位を切断し、ループ部位で結合されていない2本鎖オリゴヌクレオチドへと誘導することで、高い効率でPCRを行うことができる。
図4】様式3の例示的なDELの使用方法を示す。切断可能な部位をヘッドピースの第1のオリゴヌクレオチド鎖中および第2のオリゴヌクレオチド鎖中に含むDELに対し、酵素などの切断手段を用いて切断可能な部位の双方を切断し、ループ部位が結合していない2本鎖オリゴヌクレオチドへと誘導することで、高い効率でPCRを行うことができる。
図5】様式4の例示的なDELの使用法を示す。互いに異なる2種の切断可能な部位をヘッドピースの第1のオリゴヌクレオチド鎖中および第2のオリゴヌクレオチド鎖中に含むDELに対し、切断条件を選択することで、第1のオリゴヌクレオチド鎖中または第2のオリゴヌクレオチド鎖の一方を選択的に切断することができる。
図6】様式5の例示的なDELの使用法を示す。DNAタグの末端近くに切断可能な部位を設け、所望に応じて当該部位を切断することで、新たな突出末端を生成することができる。当該突出末端は粘着末端として利用して、所望の核酸配列、例えばUMIs(特定分子識別配列)などをライゲートすることができ、新たな機能を付与することができる。
図7】様式6の例示的なDELの使用法を示す。本発明では、切断可能な部位と、修飾基や機能性分子を組み合わせて使用することでき、例えば、ヘアピン鎖DNAを1本鎖DNAに変換したDELを調製することが可能である。例えば、合成されたDEL化合物に対し、3‘末端に機能性分子(例えばビオチン)を有する2本鎖オリゴヌクレオチド鎖をライゲートし(A)、切断可能な部位を切断し(B)、機能性分子の機能に応じた処理を加える(C)。例えば機能性分子がビオチンの場合、ビオチン親和性を有するストレプトアビジンビーズなどを用い、ビオチンが結合したオリゴヌクレオチド鎖を選択的に系中から除去する。それにより、1本鎖DNAを有するDELを取得することが可能である。
図8】様式6で取得したDELの例示的な使用法を示す。様式6で取得した1本鎖DNAを有するDELは、所望の機能部位を有する修飾オリゴヌクレオチド(例えば光反応性クロスリンカーなどのクロスリンカー修飾DNA)と2本鎖を形成させることで、新たな機能を付与することが可能となる。
図9】様式7の例示的なDELの使用法を示す。本発明では、切断可能な部位を利用し、クロスリンカーを導入することができる。合成されたDEL化合物に対し、切断可能な部位を切断し(A)、修飾プライマーを付与し(B)、付与したプライマーをもとに、クロスリンカー修飾2本鎖DEL化合物を合成することができる(C)。クロスリンカー修飾2本鎖DEL化合物は、DELライブラリのスクリーニングにおいて検出感度を顕著に向上させることができる(非特許文献5,6など参照)。
図10】実施例1において、デオキシウリジンを含むヘアピン型DELの部分構造(U-DEL1-sh、U-DEL2-sh、U-DEL3-sh、U-DEL4-sh、U-DEL5-HP、U-DEL6-HP、U-DEL7-HP、U-DEL8-HP、U-DEL9-HP、及びU-DEL10-HPの10種)のUSER(登録商標)enzymeによる切断反応の検証を実施した際の、各インキュベーション時間における切断反応の転化率を表したグラフである。
図11】実施例2、3、4、5、及び7において、各種ヘアピンDEL(U-DEL1、U-DEL2、U-DEL4、U-DEL7、U-DEL8、U-DEL9、U―DEL10、H-DEL、U-DEL5、U-DEL11、U-DEL12、U-DEL13、I-DEL1、I-DEL2、I-DEL3、R-DEL1、及びBIO-DEL)の合成手順を示す概略図である。それぞれに対応するヘッドピースを原料とし、2本鎖オリゴヌクレオチドPr_TAG、及びCPとの2段階の2本鎖ライゲーションによりヘアピンDEL合成が達成される。
図12】実施例2において、8種のヘアピンDEL(U-DEL1、U-DEL2、U-DEL4、U-DEL7、U-DEL8、U-DEL9、U-DEL10、及びH-DEL)、及び2本鎖DEL(DS-DEL)のリアルタイムPCRにより測定したCt値を示す、サンプル量ごとのグラフである。各種DELをUSER(登録商標)enzymeにより処理した試料を “USER(+)”と表示し、未処理の試料を“USER(-)”と表示している。デオキシウリジンを含む切断可能なヘアピンDEL(U-DEL1、U-DEL2、U-DEL4、U-DEL7、U-DEL8、U-DEL9、及びU-DEL10)は、USER(登録商標)enzyme処理後に2本鎖DEL(DS-DEL)と同等のCt値を示している。
図13】実施例3において、6種のデオキシウリジンを含むヘアピンDEL(U-DEL5、U-DEL7、U-DEL9、U-DEL11、U-DEL12及びU-DEL13)のUSER(登録商標)enzymeによる切断反応の進行を示す、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動により得られたゲルの画像である。なお、図中の数字は各レーンの番号を示している。
図14】実施例4において、4種のデオキシイノシンを含むヘアピンDEL(I-DEL1、I-DEL2、I-DEL3及びI-DEL4)のエンドヌクレアーゼVによる切断反応の進行を示す、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動により得られたゲルの画像である。なお、図中の数字は各レーンの番号を示している。
図15】実施例5において、リボヌクレオシドを含むヘアピンDEL(R-DEL1)のRNaseHIIによる切断反応の進行を示す、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動により得られたゲルの画像である。なお、図中の数字は各レーンの番号を示している。
図16】U-DEL9-HPを原料とした、3×3×3(27)化合物種を含むモデルライブラリの合成手順を示す概略図である。実施例6において、U-DEL9-HPを原料とし、3回(サイクルA、B,C)のスプリット・アンド・プール工程によりモデルライブラリの合成が達成される。また、各サイクルでは、2本鎖オリゴヌクレオチドタグのライゲーション反応と、ビルディングブロック導入のための化学反応が含まれている。
図17】実施例6のモデルライブラリ合成における、各サイクルのライゲーション反応の進行を示す、アガロースゲル電気泳動により得られたゲルの画像である。なお、図中の数字は各レーンの番号を示している。
図18図18Aは、実施例6のモデルライブラリ合成における、サイクルC完了後のサンプルより得られたクロマトグラフである。図18Bは、実施例6のモデルライブラリ合成における、サイクルC完了後のサンプルより得られたMSスペクトルのデコンボリューション結果である。
図19】実施例6において、モデルライブラリのUSER(登録商標)enzymeによる切断反応の進行を示す、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動により得られたゲルの画像である。なお、図中の数字は各レーンの番号を示している。
図20】実施例7において、3’末端にビオチンを有するDEL化合物「BIO-DEL」のUSER(登録商標)enzymeによる切断反応の進行を示す、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動により得られたゲルの画像である。なお、図中の数字は各レーンの番号を示している。
図21】実施例7において、1本鎖DNAを有するDEL化合物「SS-DEL」、及び光反応性クロスリンカー修飾プライマー「PXL-Pr」を用いて、プライマー伸長反応を実施した結果を示す、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により得られたゲルの画像である。なお、図中の数字は各レーンの番号を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前述のとおりであり、また当業者に周知の概念であるが、本発明において、化合物ライブラリとは、医薬品候補化合物など、特定の活性を有する可能性のある化合物を系統的に集めた化合物誘導体群を意味する。この化合物ライブラリは、多くの場合コンビナトリアル化学の合成技術と方法論に基づき合成される。コンビナトリアル化学とは、組み合わせ論に基づいて列挙し設計された一連の化合物ライブラリを系統的な合成経路で効率的に多品種合成するための実験手法とそれに関する研究分野である。
【0012】
前述のとおりであり、また当業者には周知であるが、コンビナトリアル化学に基づく化合物ライブラリの一つの種として、DNAコード化ライブラリがある。DNAコード化ライブラリは適宜DELと略される。またDELは、DNAコード化化合物ライブラリとも本質的に同義である。
本発明において、DNAコード化ライブラリは、ライブラリ化された各化合物に、DNAのタグが付加されたライブラリを意味する。DNAのタグは、各化合物の各構造を同定できるように配列が設計されており、化合物の標識として機能する。
【0013】
ヌクレオチドとは、一般に、ヌクレオシドにリン酸基が結合した物質として理解される。ヌクレオチドやヌクレオシドは当業者に周知の用語であるが、ヌクレオシドは一つの一般的な態様として、五単糖などの糖の1位に、プリン塩基又はピリミジン塩基などの核酸塩基がグリコシド結合したものとして理解される。ヌクレオシドやヌクレオチドは、DNAやRNAなどの核酸を構成する単位でもある。
また、核酸も当業者に周知の概念であるが、一般的な態様として、ヌクレオチドのポリマーとして理解される。
一つの態様として、本発明の核酸とは、後述するヌクレオチド及び核酸アナログにより構成されるポリマーである。
【0014】
また、本明細書中において、ヌクレオチドや核酸アナログにより構成される核酸ポリマーのほか、ヌクレオチドや核酸アナログなどの核酸モノマーのことも単に核酸と記載されることがある。後者の用法も技術常識に従った用法であり、当業者であれば適宜文脈に従って理解することができる。
【0015】
広義のヌクレオチドには、天然のヌクレオチド(本来のヌクレオチド)のほか、人工のヌクレオチド(各種の核酸アナログ)も含まれる。
本発明における広義のヌクレオチドは、以下の態様を含む。
(A)天然のヌクレオシドのヌクレオチド
(当該ヌクレオシドの例としては、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシウリジン、デオキシグアノシン、デオキシシチジン、イノシン又はジアミノプリンデオキシリボシドが挙げられる。)
(B)核酸塩基のアナログを有するヌクレオシドのヌクレオチド
(当該核酸塩基アナログを有するヌクレオシドの例としては、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、ピロロピリミジンデオキシリボシド、3-メチルアデノシン、C5-プロピニルシチジン、C5-プロピニルウリジン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-メチルシチジン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、6-O-メチルグアノシン又は2-チオシチジンが挙げられる。)
(C)インターカレートされた核酸塩基を有するヌクレオチド
(D)リボース又は2’-デオキシリボースを有する非天然のヌクレオチド
(E)修飾された糖を糖部分に有するヌクレオチド
(当該修飾された糖の例としては、修飾されたリボース、修飾された2’-デオキシリボース、2’-O-メチルリボース、2’-フルオロリボース、D-トレオニノール、アラビノース、ヘキソース、アンヒドロヘキシトール、アルトリトール又はマンニトールが挙げられる。)
(F)核酸類縁体
(当該核酸類縁体の例としては、シクロヘキサニル核酸、シクロヘキセニル核酸、モルホリノ核酸(PMO)、ロックド核酸(LNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、セリノール核酸(SNA)、アサイクリックスレオニノール核酸(aTNA)又はリボース中の酸素が置き換えられた核酸が挙げられる。)
以下、各核酸類縁体について詳細に説明する。
(F1)PMO
PMOは、糖部にモルフォリン環を、リン酸ジエステル部位に電荷のないホスホロジアミデート構造を有する核酸類縁体である。
(F2)LNA
LNAは、糖部分に架橋構造を有する核酸類縁体であり、最も典型的な例としては、リボースの2’-ヒドロキシルが同じリボース糖の4’-炭素にC1~6アルキレン又はC1~6ヘテロアルキレンによって架橋されている。架橋構造の例としては、メチレン、プロピレン、エーテル又はアミノ架橋構造が挙げられる。
典型的なLNAとしては、2’,4’-BNA(2'-O,4'-C-メタノ架橋核酸)が挙げられる。
(F3)GNA
グリコール核酸はGNAとも呼ぶ。例えばR-GNA又はS-GNAが挙げられる。この場合、リボースはホスホジエステル結合に結合されたグリコール単位により置き換えられる。
(F4)TNA
トレオース核酸はTNAとも呼ぶ。この場合、リボースはα-L-トレオフラノシル-(3’→2’)で置き換えられる。
(F5)SNA
セリノール核酸はSNAとも呼ぶ。この場合、リボースはホスホジエステル結合に結合されたセリノール単位により置き換えられる。
(F6)aTNA
アサイクリックスレオニノール核酸はaTNAとも呼ぶ。例えば、D-aTNA又はL-aTNAが挙げられる。この場合、リボースはホスホジエステル結合に結合されたスレオニノール単位により置き換えられる。
(F7)リボース中の酸素が置き換えられた糖
具体的な例としては、酸素の、S、Se、又はアルキレン(例えば、メチレンもしくはエチレンが挙げられる。)との置換体が挙げられる。
(G)骨格が修飾されたヌクレオチド
(当該骨格が修飾されたヌクレオチドの例としては、ペプチド核酸(該ペプチド核酸はPNAとも呼ぶ。この場合、2-アミノエチル-グリシンリンケージがリボース及びホスホジエステル骨格に取って代わる。)が挙げられる。)
(H)リン酸基が修飾されたヌクレオチド
(当該リン酸基が修飾されたヌクレオチドの例としては、ホスホロチオエート、5’-N-ホスホロアミダイト、ホスホロセレネート、ボラノリン酸、ボラノリン酸エステル、水素ホスホネート、ホスホルアミダート、ホスホロジアミダート、アルキル若しくはアリールホスホネート、ホスホトリエステル、架橋ホスホルアミダート、架橋ホスホロチオエート又は架橋メチレン-ホスホネートなどが挙げられる。)
以下の説明における、本発明のオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド鎖、2本鎖オリゴヌクレオチド、2本鎖オリゴヌクレオチド鎖、及び2本鎖DNAは、上記定義のヌクレオチドである。
【0016】
本発明において、特に限定なくヌクレオチドと記載する場合は、天然のヌクレオチドを意味する。天然のヌクレオチドは、当業者に周知の用語であり、本質的に天然に存在するヌクレオチドであれば特に限定されない。一つの態様として、本発明における天然のヌクレオチドは、前記(A)に記載のヌクレオチドである。
(核酸アナログ)
核酸アナログとは当業者に周知の用語であり、本発明における核酸アナログの構造は、本発明の効果を有する限り限定はされない。
一つの態様として、核酸アナログとは、前記(B)乃至(H)の態様の化合物である。
一つの態様として、本発明における核酸アナログとは、核酸モノマーにおけるリン酸相当部位と水酸基相当部位とを有する化合物である。核酸アナログは、より好ましくはリン酸部位と水酸基とを有する化合物である。
一つの態様として、本発明における核酸アナログとは、核酸合成機においてモノマーとして利用可能な化合物である。当業者には周知であるが、核酸合成機では、核酸アナログのリン酸(または相当部位)をホスホロアミダイト化し、水酸基(またはその相当部位)を保護基で保護したモノマーとして利用することで、核酸オリゴマーを合成することができる。
また、核酸アナログにおける、リン酸部位(または相当部位)および水酸基(または相当部位)以外の部分構造は、核酸アナログ残基ということができる。核酸アナログ残基の構造は、本発明の効果を有する限り限定されないが、ここで参照として天然の核酸(デオキシアデノシン、チミジン、デオキシシチジン、デオキシグアノシン)のそれぞれの構造の特徴を確認すると、分子量が322(チミジン一リン酸)から347(デオキシグアノシン一リン酸)程度であり、かつ核酸鎖を構成する3‘位の水酸基酸素原子から5’位のリン原子の間の原子数(酸素原子およびリン原子を含む。以下残基間原子数とも呼ぶ)が6つであることが挙げられる。また、核酸合成機に利用可能な核酸アナログとして、以下が知られている。
Amino C6 dT 分子量:476、残基原子数:6
mdC(TEG-Amino) 分子量:526、残基原子数:6
Uni-Link(商標登録)Amino Modifier 分子量:227、残基原子数:6
(文献ヌクレイック アシッド リサーチ、1992年、20巻、6253-6259頁参照)
d-Spacer 分子量:198、残基原子数:6
トリエチレングリコールリン酸エステル(Spacer9) 分子量:230、残基原子数:11
【0017】
参考として各核酸アナログの構造を以下に記載する。
【化12】
【0018】
したがって、一つの態様として、核酸アナログは、以下を特徴とする化合物(B1)である。
(B11)リン酸(または相当部位)および水酸基(またはその相当部位)を有する。
(B12)炭素、水素、酸素、窒素、リン又は硫黄により構成される。
(B13)分子量が142から1500である。
(B14)残基間原子数が5~30である。
(B15)残基間の原子の結合様式は、全て単結合であるか、または1乃至2つの二重結合を含み残りは単結合である。
【0019】
一つの態様として、核酸アナログは、以下を特徴とする化合物(B2)である。
(B21)リン酸および水酸基を有する。
(B22)炭素、水素、酸素、窒素又はリンにより構成される。
(B23)分子量が142から1000である。
(B24)残基間原子数が5~20である。
(B25)残基間の原子の結合様式は、全て単結合である。
【0020】
一つの態様として、核酸アナログは、以下を特徴とする化合物(B3)である。
(B31)リン酸および水酸基を有する。
(B32)炭素、水素、酸素、窒素又はリンにより構成される。
(B33)分子量が142から700である。
(B34)残基間原子数が5~12である。
(B35)残基間の原子の結合様式は、全て単結合である。
【0021】
一つの態様として、核酸アナログは、以下の化合物(B41)、(B42)、(B43)、(B44)、(B5)、(B51)、または(B52)である。
(B41)d-Spacer
(B42)Amino C6 dT
(B43)mdC(TEG-Amino)
(B44)Uni-Link(商標登録)Amino Modifier
(B5)ポリアルキレングリコールリン酸エステル
(B51)ジエチレングリコールリン酸エステルまたはトリエチレングリコールリン酸エステル
(B52)トリエチレングリコールリン酸エステル
【0022】
本発明でオリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド鎖とは、5’末端と3’末端、及び5’末端と3’末端の間の内部位置に1個以上のヌクレオチドを有するヌクレオチドの重合体を意味する。
【0023】
互いに相補的な塩基配列とは、核酸の2本のオリゴヌクレオチドの間で、アデニンとチミン(又はウラシル)、又はグアニンとシトシンという決まった組みを作り、水素結合でつながるいわゆる相補的塩基対を形成することができるヌクレオチドの配列を意味する。相補的塩基対の形成はハイブリダイズとも呼ばれる。
なお、相補的塩基対は、一般に「ワトソン・クリック型塩基対」「天然型塩基対」と呼ばれる概念である。ただし、塩基対はワトソン・クリック型であっても、フーグスティーン型塩基対、もしくは他の水素結合モチーフ(例えば、ジアミノプリンとT、5-メチルCとG、2―チオチミンとA、6-ヒドロキシプリンとC、プソイドイソシトシンとG)形成による塩基対などであっても良い。2本のオリゴヌクレオチドが2本鎖を組みうる配列であり、本発明の目的に利用できる限りで、「互いに相補的な塩基配列」の配列に制限はなく、2つの配列の相同性にも制限はない。相同性は、より好ましい順に、99%以上、98%以上、95%以上、90%以上、85%以上、80%以上、70%以上、60%以上又は50%以上であることが好ましい。
【0024】
繰り返しになるが、本発明でハイブリダイズするとは、互いに相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド鎖同士で2本鎖を形成させる行為、及び相補的な配列を含むオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド鎖同士が二重鎖を形成する現象を意味する。
【0025】
本発明で二重鎖とは、2つの核酸鎖が相補的塩基対を形成している(ハイブリダイズしている)状態のことを意味する。2つの核酸鎖は、2本の核酸鎖に由来するものでも良く、1本の核酸鎖分子内の2つの核酸配列に由来するものでも良い。
【0026】
本発明で2本鎖オリゴヌクレオチド及び2本鎖オリゴヌクレオチド鎖とは、2つ以上の異なるオリゴヌクレオチド鎖がハイブリダイズすることで形成される二次構造体を意味する。2つのオリゴヌクレオチドの鎖長は異なっていてもよく、ハイブリダイズされない領域を有していてもよい。
なお、2本鎖がハイブリダイズしている領域は、二重鎖である。
【0027】
本発明で2本鎖DNAとは、2つの異なるDNA鎖がハイブリダイズすることで形成される二次構造体を意味する。それぞれのDNA鎖の鎖長は異なっていてもよく、ハイブリダイズされない領域を有していてもよい。DNA鎖は天然に存在するデオキシリボヌクレオチドに限定されず、DNAポリメラーゼにより増幅可能なオリゴヌクレオチド鎖全般を意味する。
【0028】
本発明で「二重鎖を形成する」とは、例えば4~40℃の温度、水性溶媒、pH4~10のような、オリゴヌクレオチドを取り扱うにあたって標準的な条件において二重鎖を形成すればよい。例えば、特定の溶媒、条件によって二重鎖を形成しない場合があっても、当該核酸が標準的な条件において二重鎖を形成するのであれば、当該核酸は二重鎖を形成する核酸である。
【0029】
本発明でTm値とは、DNA分子の半数が、相補鎖とアニールするときの温度をいう。
【0030】
本発明で平滑末端とは、2本鎖オリゴヌクレオチドの末端が、どちらもが突き出ることなく対になっていることを意味する。
【0031】
本発明で突出末端とは、2本鎖オリゴヌクレオチドの末端のうち、一方の鎖が突出部を有していることを意味する。突出末端の突出部は、任意の長さであることができるが、好ましくは、1~50塩基、より好ましくは1~30塩基、さらに好ましくは1~15塩基、最も好ましくは、2~6塩基の長さである。特定の態様では、前記突出部は、粘着末端のライゲーションを実施する際のハイブリダイズ領域として使用することが可能である。
【0032】
PCRとは、ポリメラーゼ連鎖反応を意味する。PCRは、オリゴヌクレオチド鎖の増幅手段であり、当業者に周知の技術である。PCRのプロセスの概略を説明すると、PCRでは、(1)増幅対象の2本鎖オリゴヌクレオチド鎖を加熱処理などにより2つの1本鎖に解離させ、(2)酵素反応に適した温度に調整したのち、反応系中に存在させている酵素(DNAポリメラーゼなど)により、それぞれの1本鎖に相補的な鎖を合成する。すなわち、1つの2本鎖オリゴヌクレオチドを2つに増幅することができる。PCRでは、(1)と(2)のプロセスを温度調整により繰り返すことで、高い効率でオリゴヌクレオチド鎖を増幅することができる。
【0033】
本発明でプライマーとは、鋳型となるオリゴヌクレオチド鎖にアニールし、鋳型依存的にポリメラーゼにより伸長され得るオリゴヌクレオチドを意味する。
【0034】
本発明でPCR用のプライマー配列とは、オリゴヌクレオチド鎖中にあって、プライマーがアニールする部分の配列を意味し、当該分野で公知であるようなPCRに適した配列であることが好ましく、オリゴヌクレオチド鎖の末端に存在することが好ましい。
【0035】
本発明でニックとは、2本鎖オリゴヌクレオチド鎖において、ヌクレオチド間結合が欠如しており、オリゴヌクレオチド鎖が断裂している部分を意味する。この欠如部の5’側は、リン酸基を有していても、リン酸基を有していなくても良い。
【0036】
本発明でギャップとは、2本鎖オリゴヌクレオチド鎖において、1つ以上連続したヌクレオチドが欠失しており、オリゴヌクレオチド鎖が乖離している部分を意味する。欠失部の5’側に、リン酸基を有していても、リン酸基を有していなくても良い。
【0037】
本発明でヘアピン鎖とは、相補的な2本の核酸鎖がつながった1本鎖構造であり、ヘアピン鎖やヘアピン鎖DELの特徴は前記のとおりである。本発明で用いられる「ヘアピン部位」、「ヘアピン構造」、「ヘアピン型」という用語は、前述の「ヘアピン鎖」と同概念のヘアピンに由来する用語として理解される。
【0038】
本発明で核酸連結反応及びライゲーションとは、核酸の末端どうしを連結する反応を意味する。
【0039】
酵素による核酸連結反応及び酵素的ライゲーションとは、酵素を用いて核酸の末端どうしを連結する反応を意味する。
【0040】
核酸連結反応に用いることができる酵素は、例えば、DNAリガーゼ、RNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、又はトポイソメラーゼである。
【0041】
一つの態様として、DNAリガーゼは、DNA鎖の末端同士をリン酸ジエステル結合でつなぐ酵素である。一つの態様として、DNAリガーゼは、EC番号:6.5.1.1又は6.5.1.2に属するリガーゼとして理解される。DNAリガーゼは、ポリデオキシリボヌクレオチドシンターゼ又はポリヌクレオチドリガーゼなどとも呼ばれる。DNAリガーゼの例としては、DNAリガーゼI、II、III、IVやT4DNAリガーゼなどが挙げられる。
【0042】
一つの態様として、RNAリガーゼは、RNA鎖の末端同士をリン酸ジエステル結合でつなぐ酵素である。一つの態様として、RNAリガーゼは、EC番号:6.5.1.3に属するリガーゼとして理解される。また、一つの態様としてRNAリガーゼは、ポリ(リボヌクレオチド):ポリ(リボヌクレオチド)リガーゼの系統に属す。RNAリガーゼは、ポリリボヌクレオチドシンターゼ又はポリリボヌクレオチドリガーゼとも呼ばれる。
【0043】
本発明で化学的ライゲーションとは、核酸の末端どうしを、酵素を用いずに結合する反応を意味する。
【0044】
化学的ライゲーションにおいては、化学反応の対となる官能基を有する核酸の末端どうしが反応することで連結部が形成される。化学反応の対となる官能基は、例えば、置換されていてもよいアルキニル基と置換されていてもよいアジド基との対、4π電子系を有する置換されていてもよいジエン(例えば、置換されていてもよい1,3-不飽和化合物、例えば、置換されていてもよい1,3-ブタジエン、1-メトキシ-3-トリメチルシリルオキシ-1,3-ブタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン又はフランが挙げられる。)と2π電子系を有する置換されていてもよいジエノフィル又は置換されていてもよいヘテロジエノフィル(例えば、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいアルキニル基が挙げられる。)との対、置換されてもよいアミノ基とカルボン酸基の対、ホスホロチオエート基とヨード基 (例えば、3’末端のホスホロチオエート基と5’末端のヨード基が挙げられる。)との対又はリン酸基とヒドロキシ基の対(例えば、5’末端のリン酸基と3’末端のヒドロキシ基の対又は5’末端のヒドロキシ基と3’末端のリン酸基の対が挙げられる。)である。
化学的ライゲーションは、当業者に周知の概念であり、当業者は技術常識に基づき適宜、化学的ライゲーションを達成できる。上記のほか、アーティフィシアル・DNA;PNA&XNA、2014年、5巻、e27896、キャレント・オピニオン・イン・ケミカル・バイオロジー、2015年、26巻、80-88頁なども参照される。
【0045】
本発明で「選択的に切断可能」とは、ある化合物において、化合物のその他の分子構造に変化を与えることなく、所定の条件で特定の部位のみ選択的に切断できることを意味する。
【0046】
本発明で「選択的に切断可能な部位」とは、ある化合物において、所定の条件で選択的に切断できる部位を意味する。
【0047】
一つの態様として、本発明における「選択的に切断可能な部位」の好ましい構造は、「選択的に切断可能な核酸」である。当該部位は、複数の核酸により構成され特定の配列が奏功して切断される部位でもよく、単一の核酸による部位でも良い。切断可能な部位が核酸である場合、(1)核酸合成機などの確立された製造方法を利用することができ製造効率が良いこと、(2)DELのビルディングブロック構築の反応条件は、DNAタグ部分の核酸が分解しないことが必須であるため、切断可能な部位が核酸であればやはり分解しないこと、などの観点で好ましい。
【0048】
前記「選択的に切断可能な核酸」のより好ましい構造は、DELのDNAタグの配列に含まれないヌクレオチドを含む核酸である。切断可能な部位が、DNAタグの配列に含まれないヌクレオチドであれば、DNAタグ部分の切断を避けるために、DNAタグの配列を限定することなく利用可能となる。
【0049】
DNAタグの配列に使用する核酸としては、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、及びデオキシシチジンが好ましい。したがって、選択的に切断可能な部位の好ましい構造は、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、及びデオキシシチジンのいずれでもない核酸である。
【0050】
「選択的に切断可能な部位」の例として、「切断可能な塩基を有するヌクレオチド」が挙げられる。例えば、DEL中の「切断可能な塩基を有するヌクレオチド」は、DNAグリコシラーゼの作用によって、塩基部と糖部の間のN-グリコシド結合が切断され、脱塩基部位を残す。脱塩基部位に隣接するホスホジエステル結合は、化学的条件変化(例えば温度上昇、塩基性加水分解など)、又は脱プリン/脱ピリミジン(AP)エンドヌクレアーゼ活性やAPリアーゼ活性を有する酵素(例えば、エンドヌクレアーゼIII、エンドヌクレアーゼIV、エンドヌクレアーゼV、エンドヌクレアーゼVI、エンドヌクレアーゼVII、エンドヌクレアーゼVIII、APE1(ヒト由来APエンドヌクレアーゼ)、Fpg(ホルムアミドピリジン-DNAグリコシラーゼ)など)によって切断され、1塩基分のギャップ、あるいはニックを形成する。
【0051】
「切断可能な塩基を有するヌクレオチド」の例としては、デオキシウリジン、ブロモデオキシウリジン、デオキシイノシン、8-ヒドロキシデオキシグアノシン、3-メチル-2’-デオキシアデノシン、N6-エテノ-2’-デオキシアデノシン、7-メチル-2’-デオキシグアノシン、2’-デオキシキサントシン、5,6-ジヒドロキシデオキシチミジンなどが挙げられる。他の切断可能な塩基を有するヌクレオチドは、当業者にとって明白である。これらの「切断可能な塩基を有するヌクレオチド」をDEL中に組み込み、その構造を特異的に認識するDNAグリコシラーゼを用いることでDELは選択的に脱塩基される。
【0052】
本発明でDNAグリコシラーゼとは、グリコシラーゼ活性を有する任意の酵素であって、オリゴヌクレオチド中の任意の核酸塩基部を認識し、その塩基部と糖部の間のN-グリコシド結合を切断し、脱塩基部位を作成する酵素である。例えば、ウラシルDNAグリコシラーゼ(デオキシウリジンを認識)、アルキルアデニンDNAグリコシラーゼ(3-メチル-2’-デオキシアデノシン、7-メチル-2’-デオキシグアノシン、及びデオキシイノシンを認識)、Fpg(8-ヒドロキシデオキシグアノシンを認識)、エンドヌクレアーゼVIII(5,6-ジヒドロキシデオキシチミジンやウラシルグリコールなどの分解されたピリミジン塩基を認識)、SUMG1(1本鎖選択的ウラシルDNAグリコシラーゼの略称、デオキシウリジンを認識)などが挙げられる。
【0053】
本発明で「選択的に切断可能な部位」のより好ましい例として、デオキシイノシン、デオキシウリジンが挙げられる。
【0054】
本発明で「選択的に切断可能な部位」の特に好ましい例として、デオキシウリジンが挙げられる。
【0055】
一つの態様として、本発明における「選択的に切断可能な部位」は、好ましくは酵素を用いて切断される。酵素は一般的に基質特異性が高く、DELのDNAタグ部分、及び複数のビルディングブロックにより構築された化合物部分を基質として認識せず、「選択的に切断可能な部位」のみを認識して作用させられるため、好ましい。また、前記酵素を用いた切断は、「選択的に切断可能な部位」を酵素により構造変化させたのちに、化学的条件を変化させることで達成されても良い。該酵素の例としては、グリコシラーゼ、及びヌクレアーゼが挙げられる。
【0056】
本発明でグリコシラーゼとは、グリコシド結合(糖分子と別の有機化合物とが脱水縮合して形成する共有結合)を加水分解する機能を有する酵素である。そのなかでもDNAグリコシラーゼは、前述したように、オリゴヌクレオチド中の核酸塩基部を認識し、そのグリコシド結合を加水分解する酵素である。
【0057】
本発明でヌクレアーゼとは、核酸の糖とリン酸の間のホスホジエステル結合を加水分解する機能を有する酵素である。ヌクレアーゼには、例えば、APエンドヌクレアーゼ、ニッキングエンドヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼが含まれる。
【0058】
APエンドヌクレアーゼは、前述したように、任意のDNAグリコシラーゼの作用によって生成した脱塩基部位に隣接するホスホジエステル結合を切断する。したがって、本発明において、DNAグリコシラーゼとAPエンドヌクレアーゼを併用することが好ましい。
【0059】
ニッキングエンドヌクレアーゼ(例えば、Nb.BbvCI、Nb.BsmI、Nb.BsrDIなど)は、特定のDNA配列を認識し、2本鎖のうち一方の鎖だけホスホジエステル結合が切断されたニックを生じさせる。また、エンドヌクレアーゼVは、デオキシイノシンから3’方向に2番目のホスホジエステル結合が切断されたニックを生じさせることが可能であり、本発明の実施において有用である。
【0060】
リボヌクレアーゼはRNAを分解する酵素である。本発明においては、リボヌクレオシドを「選択的に切断可能な部位」として用い、リボヌクレアーゼを作用させることで利用が可能である。リボヌクレアーゼの一種であるRNaseHIIは、DNA配列中に組み込まれたリボヌクレオチドの5’側のホスホジエステル結合が切断されたニックを生じさせることが可能であり、本発明の実施において有用である。
【0061】
本発明でUSER(登録商標)とは、「Uracil-Specific Excision Reagent」 Enzymeを意味する。USERは、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)とエンドヌクレアーゼVIIIとを含むウラシルを除去するエンドヌクレアーゼカクテルである。USERは、2本鎖DNA中のウラシルを除去して1塩基のギャップを生じ、DNA鎖を切断する。USERによるプロセスでは、まずUDGがウラシル塩基を除去して脱塩基部位をつくる。続いてエンドヌクレアーゼがホスホジエステル結合を分解して塩基が無いデオキシリボースを遊離して1塩基分のギャップをつくる。
本明細書の説明における、USER(登録商標)酵素、及びUSER(登録商標)Enzymeは上記定義のUSER(登録商標)である。
【0062】
本発明でビルディングブロックとは、官能基を有し、化合物の一部を構成することができる部分であり、化合物の形態であってもよい。
【0063】
本発明でそれぞれのビルディングブロックを同定することができる塩基配列とは、それぞれのビルディングブロックの構造に対応するように設計された特定の塩基配列を意味する。配列を設計するとは、例えば、ビルディングブロック構造Aには核酸塩基配列AAAを、構造Bには核酸塩基配列TTTを、構造Cには核酸塩基配列CGCというように、構造ごとに核酸塩基配列を割り当てることを意味する。配列は、本発明の目的が達せられる限りにおいて自由に設計することができる。例えば、任意の数の塩基配列を1つのビルディングブロックに割り当てることができる。
【0064】
本発明でオリゴヌクレオチドタグとは、ビルディングブロックにより構築される部分構造の構造を同定することができる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを含む部分構造である。本発明でオリゴヌクレオチドタグとは、各ビルディングブロックに対応するオリゴヌクレオチドであっても良く、複数のビルディングブロックに対応するオリゴヌクレオチドを含む、より長鎖のオリゴヌクレオチドであっても良い。
本発明のオリゴヌクレオチドタグを構成するヌクレオチドは、本発明の効果を達成する限り制限されないが、PCRによる増幅やシーケンサーによる解析の容易さという観点において、これらの操作に適応したヌクレオチドであることが望ましい。このような好ましいヌクレオチドの例としては、塩基部として前記した天然の核酸塩基を有し、糖部として前記したリボース又は2’-デオキシリボースを有するヌクレオチドが挙げられ、より好ましい例としてはデオキシアデノシン、チミジン、デオキシシチジン又はデオキシグアノシンが挙げられる。
【0065】
(ヘッドピース)
本発明でヘッドピースとは、DELなどの化合物ライブラリ製造のための出発化合物を意味する。本発明のヘッドピースの構造は、本発明の目的を達成する限り限定を受けないが、最も典型的な態様として、ビルディングブロックが連結され得る少なくとも1つの部位と、オリゴヌクレオチドタグが連結され得る少なくとも1つの部位とを有し、さらに少なくとも一つの選択的に切断可能な部位を構造中に含む。
後述のとおり、DNAタグは好ましくは2本鎖オリゴヌクレオチド鎖であり、オリゴヌクレオチドタグが連結され得る部位は、好ましくは2つである。
【0066】
一つの態様として、ヘッドピースは下記の模式図で示される化合物である。
【化13】
【0067】
一つの態様として、ヘッドピースは、化学的に安定であることが望ましい。
また、一つの態様として、ヘッドピースは、DNAタグとビルディングブロックとを適切な空間に配置できる構造であることが好ましい。
一つの態様として、ヘッドピースは、適度なフレキシビリティーを有することが好ましい。
ここで、さらに適度な空間配置やフレキシビリティー(ヘッドピースの構造特性)について説明する。なお、ここで説明するヘッドピースの構造特性は、ヘッドピース単体で達成されてもよく、ヘッドピースと2官能性スペーサーを結合させることで達成されてもよい。
一つの態様として、好ましいヘッドピースの構造特性は、ビルディングブロックの形成反応をヘッドピースやDNAタグが阻害しない、逆に、DNAタグの伸長反応をヘッドピースやビルディングブロックが阻害しないような構造特性である。
一つの態様として、好ましいヘッドピースの構造特性は、ビルディングブロック化合物(ライブラリ化合物)とターゲット(標的タンパク質など)との相互作用に対し、ヘッドピースやDNAタグ部分が影響を与えないような構造特性である。
一つの態様として、好ましいヘッドピースの構造特性は、DNAタグとビルディングブロック部位を、反対側(たとえば90度以上反対側)に配向するような構造特性である。
一つの態様として、好ましいヘッドピースの構造特性は、ヘッドピースのループ部位とビルディングブロックとを、有機化合物の骨格換算で数原子から十数原子分隔てるような構造特性である。
一つの態様として、ヘッドピースは、DNAタグ部分、ビルディングブロック部分と適度な親和性を有することが好ましい。適度な親和性とは、例えば、本発明を実施するために、所望の条件で結合を形成し、維持し、切断できるような化学的反応性および安定性を意味する。
なお、本発明において、2官能性スペーサーとは、ビルディングブロック部位とヘッドピースとの結合を可能にする少なくとも2つの反応基を有するスペーサー部分を意味する。
【0068】
本発明の説明において、「ヘッドピース」、「ヘッドピース化合物」、「ヘッドピースのための化合物」という用語は、同概念の化合物を示す用語である。
本発明の説明において、「ヘッドピースとして用いる化合物」は、使用の観点からすると「化合物のヘッドピースとしての使用」と本質的に同様に理解することができ、方法の観点からすると「化合物をヘッドピースとして用いる方法」と本質的に同様に理解することができる。化合物ライブラリについても同様である。
【0069】
以下、好ましいヘッドピースの構造を説明するが、ヘッドピースの構造は本発明の効果を達成する限りにおいて限定はされない。
【0070】
一つの態様として、ヘッドピースは、
(D)ビルディングブロックと直接連結するか、または2官能性スペーサーを介して間接的に連結し得る少なくとも1つの部位を有する反応性官能基、
(L)反応性官能基から伸長するリンカー、
(E)オリゴヌクレオチドタグの一方の鎖と連結され得る1つの結合部位を有する第1のオリゴヌクレオチド鎖、
(F)オリゴヌクレオチドタグのもう一方の鎖と連結され得る1つの結合部位を有する第2のオリゴヌクレオチド鎖、および
(LP)前記リンカーと2つのオリゴヌクレオチド鎖に結合するループ部位、
により構成され、
E、F、又はLPの少なくともいずれか1つの部位に、少なくとも1つの選択的に切断可能な部位を有する。
【0071】
一つの態様として、ヘッドピースは次の式(I)で示される化合物である。
【化14】

(式中、EおよびFは、それぞれ独立して
ヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
ただし、EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
LPは、ループ部位であり、
Lは、リンカーであり、
Dは、反応性官能基である。)
で表される化合物であり、
E、F、又はLPの少なくともいずれか1つの部位に、少なくとも1つの選択的に切断可能な部位を有する化合物。
【0072】
なお、本発明において、ループ部位のうち、リンカーと結合する部位の部分構造のことを連結部位または(LS)と呼ぶことがある。
また、本発明においてE-LP-Fを合わせてヘアピン部位と呼ぶことがある。
【0073】
(第1および第2のオリゴヌクレオチド鎖)
以下に、第1のオリゴヌクレオチド鎖(E)および第2のオリゴヌクレオチド鎖(F)の好ましい態様について説明する。
【0074】
第1のオリゴヌクレオチド鎖(E)と第2のオリゴヌクレオチド鎖(F)は、ループ部位(LP)を介して分子内で二重鎖を形成し、ヘッドピースがヘアピン構造を形成することが好ましい。分子内での二重鎖の形成に好ましい鎖長とは3塩基以上であり、より好ましくは4塩基以上であり、さらに好ましくは6塩基以上である。
EおよびFの鎖長は、一つの態様としてそれぞれ3乃至40である。
EおよびFの鎖長は、一つの態様としてそれぞれ4乃至40である。
EおよびFの鎖長は、一つの態様としてそれぞれ6乃至25である。
【0075】
オリゴヌクレオチドタグが連結される部位は、酵素的ライゲーション、又は化学的ライゲーションに適した構造であることが好ましい。一つの態様として、ヘッドピースとオリゴヌクレオチドタグとの連結は、酵素を用いた2本鎖ライゲーションにより実施される。その場合、第1および第2のオリゴヌクレオチド鎖はライゲーションのための突出末端を形成することが好ましい。前記該突出末端の鎖長は、好ましくは2塩基以上であり、より好ましくは2乃至10塩基であり、さらに好ましくは2乃至5塩基である。したがって、第1および第2のオリゴヌクレオチド鎖の一方は、もう一方の鎖よりも突出末端の鎖長分長いことが好ましい。また、DNAリガーゼによるライゲーションのためには、第1および第2のオリゴヌクレオチド鎖のうち、ヘッドピースの5‘末端を有している鎖の5‘末端はリン酸化されていることが好ましい。
【0076】
また、第1および第2のオリゴヌクレオチド鎖はPCRのためのプライマー結合配列の一部又は全部を含んでいても良い。プライマー結合配列として適切な鎖長は17乃至25塩基である。
【0077】
(リンカー)
以下に、リンカー(L)の好ましい態様について説明する。
リンカーは、前記のとおり、反応性官能基から伸長し、連結部位と結合する部位である。典型的には、リンカーは以下の態様に由来する2価の基(-L-)である。
【0078】
一つの態様として、リンカーは、以下の態様(L1)である。
(L1)置換基を有しても良く、1~3個のヘテロ原子で置き換えられても良いC1~20脂肪族炭化水素、又は(2)置換基を有してもよいC6~14芳香族炭化水素。
【0079】
その他の態様として、Lは、以下の態様(L2)、(L3)、(L4)又は(L5)である。
(L2)
置換基を有しても良いC1~6脂肪族炭化水素、1若しくは2個の酸素原子で置き換えられても良いC1~6脂肪族炭化水素、又は置換基を有しても良いC6~10芳香族炭化水素。
(L3)
置換基群ST1で置換可能なC1~6脂肪族炭化水素、又は置換基群ST1で置換可能なベンゼン。ここで、置換基群ST1は、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、フッ素原子および塩素原子により構成される群である。ただし、置換基群ST1が脂肪族炭化水素に置換する場合、置換基群ST1からアルキル基は選択されない。
(L4)
C1~6アルキル、又は無置換であるか1つまたは2つのC1~3アルキル基若しくはC1~3アルコキシ基で置換されたベンゼン。
(L5)
C1~6アルキル。
【0080】
(反応性官能基)
以下に、反応性官能基(D)の好ましい態様について説明する。
反応性官能基は、前記のとおり、ビルディングブロックと直接連結するか、または2官能性スペーサーを介して間接的に連結し得る少なくとも1つの部位を有し、リンカー基と結合する部位である。典型的には、反応性官能基は、ヘッドピースにおいて一価の基(D-)となり、DELにおいては前記(D-)に基づく「反応性官能基由来の2価の基」(-D-)となる。
たとえば、Dがアミノ基の場合、(D-)の具体的構造は(R-HN-)である(Rは以下に説明される置換基)。例えば、活性化カルボキシ基、反応性スルホニル基、又はイソシアネート基と反応し、それぞれアミド結合、スルホンアミド結合、又はウレア結合を形成する。その際(-D-)の具体的構造は(-NR-)となる。
Rは、本発明の効果を達成する限り限定されないが、以下の(D1)~(D5)の態様において、Rは、好ましくは、(1)水素原子、または(2)無置換であるかまたはC1~6アルコキシ基、フッ素原子および塩素原子からなる置換基群より単独もしくは異なって選択される1~3個の置換基で置換されたC1~6アルキル基、である。
Rは、より好ましくは、水素原子またはC1~3アルキル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
また、たとえば、(D-)が、脱離基(X-)を有するメチレン基である場合、(D-)の具体的構造は(X-CH-)であり、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、又はチオール基といった求核試薬と反応し、炭素―窒素結合、炭素―酸素結合、又は炭素―硫黄結合を形成する。その際、(-D-)の具体的構造は(-CH-)となる。また、たとえば、(D-)が、アルデヒド基である場合、(D-)の具体的構造は(HOC-)である。アルデヒド基は、例えばアミノ基との還元的アミノ化反応により、炭素―窒素結合を形成し、その際(-D-)は-CH-となり、例えばリンイリド基との反応により炭素―炭素二重結合を形成し、その際(-D-)は-CH=となり、例えばα-ジアゾホスホネート基と反応により炭素―炭素三重結合を形成し、その際(-D-)は-C≡となる。
【0081】
一つの態様として、部位(D-)は、以下の態様(D1)である。
(D1)
C―C、アミノ、エーテル、カルボニル、アミド、エステル、ウレア、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホンアミド、又はスルホニル結合を構成しうる官能基。
(字義どおりであるが、この場合、(-D-)は、C―C、アミノ、エーテル、カルボニル、アミド、エステル、ウレア、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホンアミド、又はスルホニル結合となる。)
【0082】
その他の態様として、(D-)は、以下の態様(D2)、(D3)、(D4)又は(D5)である。
(D2)
脱離基を有するC1炭化水素、アミノ基、水酸基、カルボニル基の前駆体、チオール基、またはアルデヒド基。
なお、この場合、(-D-)は、-(C1炭化水素)-、-NR-、-O-、-(C=O)-、-S-、-CH-、-CH=、又は-C≡、などとなりうる。
(D3)
ハロゲン原子を有するC1炭化水素、スルホン酸系脱離基を有するC1炭化水素、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、ハロゲン化カルボキシ基、チオール基、又はアルデヒド基。
なお、この場合、(-D-)は、-(C1炭化水素)-、-NR-、-O-、-(C=O)-、-S-、-CH-、-CH=、又は-C≡、などとなりうる。
(D4)
-CHCl、-CHBr、-CHOSOCH、-CHOSOCF、アミノ基、水酸基、又はカルボキシ基。
なお、この場合、(-D-)は、それぞれ、-CH-、-NR-、-O-、又は-(C=O)-となる。
(D5)
第一級アミノ基。
なお、この場合、(-D-)は、-NH-となる。
【0083】
以下に、ループ部位(LP)の好ましい態様について説明する。
ループ部位(LP)は、第1のオリゴヌクレオチド鎖(E)と第2のオリゴヌクレオチド鎖(F)が分子内で二重鎖を形成し、ヘッドピースがヘアピン構造を形成可能なように設計されることが好ましい。すなわち、ループ部位(LP)は、ループ構造が熱力学的に安定となる鎖長、及び結合の柔軟性を有していることが好ましい。
したがって、一つの態様として、ループ部位(LP)は以下である。
LPが、
(LP1)p-LS-(LP2)qで表されるループ部位であり、
LSは、以下の(A)ないし(C)に記載される化合物群から選ばれる部分構造であり、
(A)ヌクレオチド
(B)核酸アナログ
(C)置換基を有してもよいC1~14の3価の基
LP1は、以下の(1)および(2)に記載される化合物群から単独もしくは異なってp個選ばれる各部分構造であり、
(1)ヌクレオチド
(2)核酸アナログ
LP2は、以下の(1)および(2)に記載される化合物群から単独もしくは異なってq個選ばれる各部分構造であり、
(1)ヌクレオチド
(2)核酸アナログ
pとqの総数が0~40である。
【0084】
ループ部位のさらに好ましい態様は、前記説明のとおりである。
以下、さらにループ部位の構造について補足する。
【0085】
ここで、ヌクレオチドは前記説明の天然ヌクレオチドであり、核酸アナログは前記説明のとおりである。
【0086】
ここで、LP1は、以下の(1)および(2)に記載される化合物群から単独もしくは異なってp個選ばれる各部分構造であり、LP2は、以下の(1)および(2)に記載される化合物群から単独もしくは異なってq個選ばれる各部分構造である。
(1)ヌクレオチド
(2)核酸アナログ
単独もしくは異なってp個選ばれるとは、例えば、pが4である場合、LP1はAATG、ATCG、TC(d-Spacer)GあるいはA(d-Spacer)(d-Spacer)Cといったように、(1)と(2)に記載の化合物群より単独もしくは異なって選ぶことができる。LP2も同様である。
【0087】
また、ループ部位は、PCRのためのプライマー結合配列の一部または全部を含んでいても良い。
【0088】
(LSについて)
一つの態様として、LSは(A)ヌクレオチドまたは(B)核酸アナログである。
LSが(A)ヌクレオチドまたは(B)核酸アナログの場合、ループ部位は、核酸オリゴマーとなる。本発明の核酸オリゴマーとは、ヌクレオチドまたは核酸アナログをモノマーとして連結させたオリゴマーである。オリゴマーは、鎖状化合物ともいうことができる。
したがって、本発明の核酸オリゴマーとは、オリゴヌクレオチド鎖、核酸アナログ鎖、またはヌクレオチドと核酸アナログの混合鎖のいずれかである。
【0089】
LSが(A)ヌクレオチドまたは(B)核酸アナログの場合、ループ部位は核酸オリゴマーとなる。その場合、ヘッドピースは核酸合成機で製造できることになり、実務上、顕著に好ましい。
【0090】
LSが(A)ヌクレオチドまたは(B)核酸アナログの場合、ヘッドピースの製造においては、一つの態様として、リンカー部位(L)および反応性官能基部位(D)が、LSと結合した核酸合成用モノマーを調製し、そののち核酸オリゴマーを合成することができる。
そのような核酸合成モノマーの例としては、前述のAmino C6 dT、mdC(TEG-Amino)、Uni-Link(商標登録)Amino Modifierなどが挙げられる。
この態様の場合、たとえば当該モノマーであるmdC(TEG-Amino)の構造のうち、ヌクレオチド部分が連結部位(LS)に相当し、塩基から伸長する側鎖部分がリンカー部位(L)および反応性官能基部位(D)に相当する。
調製において、反応性官能基(D)は保護基で保護されていても良い。
【0091】
その場合、一つの態様として、核酸アナログは、以下の化合物(B6)である。
(B6)ヌクレオチドの塩基部に、前記(-L-D)が結合した化合物。
【0092】
一つの態様として、核酸アナログは、以下の化合物(B61)、(B62)、(B63)、(B64)または(B65)である。
(B61)(-L-D)が(-L1-D1)である(B6)
(B62)(-L-D)が(-L2-D2)である(B6)。
(B63)(-L-D)が(-L3-D3)である(B6)。
(B64)(-L-D)が(-L4-D4)である(B6)。
(B65)(-D)が(-D5)である(B61)~(B64)のいずれかに記載の化合物。
【0093】
LSが(A)ヌクレオチドまたは(B)核酸アナログの場合、ヘッドピースの製造においては、一つの態様として、先に核酸オリゴマーを合成し、そののち前記リンカー部位(L)および反応性官能基部位(D)を結合させることができる。
その場合において、リンカー部位が結合する相手の「特定の核酸アナログ」を、連結部位(LS)としてヘアピン部位(核酸アナログオリゴマー)の中に入れておくことが好ましい。当該「特定の核酸アナログ」の例としては、前述のAmino C6 dT、mdC(TEG-Amino)、Uni-Link(商標登録)Amino Modifierを挙げることができる。
この態様の場合、たとえばmdC(TEG-Amino)自体が連結部位(LS)に相当し、塩基側鎖から、さらに結合する付加部位が、リンカー部位(L)および反応性官能基部位(D)に相当する。
【0094】
(pとqについて)
前述のとおり、前記ループ部位の鎖長は、第1のオリゴヌクレオチド鎖(E)と第2のオリゴヌクレオチド鎖(F)が分子内で二重鎖を形成し、ヘッドピースがヘアピン構造を形成する鎖長であることが好ましい。
一つの態様として、pとqの総数は1~40である。
一つの態様として、pとqの総数は2~20である。
一つの態様として、pとqの総数は2~10である。
一つの態様として、pとqの総数は2~7である。
【0095】
一つの態様として、本発明のループ部位は、
(A)ヌクレオチド
および以下の核酸アナログ(B41)、(B42)、(B43)、(B44)または(B52)により構成される。
(B41)d-Spacer
(B42)Amino C6 dT
(B43)mdC(TEG-Amino)
(B44)Uni-Link(商標登録)Amino Modifier
(B52)トリエチレングリコールリン酸エステル
【0096】
一つの態様として、LSはB42、B43またはB44が好ましい。
また一つの態様として、LP1およびLP2は、A、B41またはB52が好ましい。
【0097】
一つの態様として、ループ部位は、以下の(X1)乃至(X9)記載の配列による核酸オリゴマーである。
(X1)A-B41-B42-B41-A
(X2)A-B41-B43-B41-A
(X3)A-B41-B44-B41-A
(X4)B41-B41-B42-B41-B41
(X5)B41-B41-B43-B41-B41
(X6)B41-B41-B44-B41-B41
(X7)B52-B42-B52
(X8)B52-B43-B52
(X9)A52-A44-A52
【0098】
前記のヘッドピースにおいて、切断可能な部位の数は、好ましくは5つ以内であり、1乃至2つがより好ましい。
【0099】
前記のヘッドピースにおいて、切断可能な部位が2つ以上の場合、少なくとも1つの切断可能な部位は、第1のオリゴヌクレオチド鎖中にあるか、第1のオリゴヌクレオチド鎖とリンカー結合部位との間にあり、かつ少なくとも1つの切断可能な部位は、第2のオリゴヌクレオチド鎖中にあるか、第2のオリゴヌクレオチド鎖とリンカー結合部位との間にあることが好ましい。
【0100】
一つの態様として、前記のヘッドピースにおいて、切断可能な部位の位置は、ループ部位と、第1のオリゴヌクレオチド鎖もしくは第2のオリゴヌクレオチド鎖との結合部分を起点として、好ましくは20塩基以内であり、より好ましくは10塩基以内であり、さらに好ましくは3塩基以内である。
【0101】
念のための説明であるが、「選択的に切断可能な部位」の好ましい態様と、例えばE、F又はLPなどの好ましい態様は、それぞれ別の概念である。すなわち、「選択的に切断可能な部位」の位置が、Eに含まれた場合であっても、Eの好ましい態様が、「選択的に切断可能な部位」に適用されるわけではない。
【0102】
一つの態様として、本発明のDELを構成する化合物は次の式(II)で示される化合物である。
【化15】

(式中、
XおよびYは、オリゴヌクレオチド鎖であり、
EおよびFは、それぞれ独立して
ヌクレオチド又は核酸アナログにより構成されるオリゴマーであり、
ただし、EとFが互いに相補的な塩基配列を含み、二重鎖オリゴヌクレオチドを形成し、
LPは、ループ部位であり、
Lは、リンカーであり、
Dは、反応性官能基由来の2価の基であり、
Spは、結合又は2官能性スペーサーであり、
Anは、少なくとも1つのビルディングブロックにより構成される部分構造である。)
で表される化合物であり、
XとYは、少なくとも一部で二重鎖を形成しうる配列を有し、
Xは5‘末端でEに結合し、
Yは3‘末端でFに結合し、
E、F、又はLPの少なくともいずれか1つの部位に、少なくとも1つの選択的に切断可能な部位を有する化合物。
【0103】
一つの態様として、前述の式(II)で示される化合物におけるE、F、LP、LおよびDの好ましい態様は、前述の式(I)に関し説明したE、F、LP、LおよびDの好ましい態様と同様である。
X、Y、Sp、およびAnの好ましい態様は別途説明される。
【0104】
(2官能性スペーサー)
前記のとおり、2官能性スペーサーは、化合物ライブラリの部分構造Anとヘッドピースとの結合を可能にする少なくとも2つの反応基を有するスペーサー部分である。一つの態様として、2官能性スペーサーはSpD-SpL-SpXである。
SpXは、ヘッドピースの反応性官能基と共有結合を形成する反応基である。
SpDは、化合物ライブラリの部分構造Anと共有結合を形成する反応基である。
SpLは、化学的に不活性なスペーシング部分である。
なお、反応性官能基(D)と同様に、反応基(SpX)は、2官能性スペーサー単体(ヘッドピースと結合させる前の試薬の状態)において一価の基(-SpX)となり、DEL(ヘッドピースと結合した状態)においては前記(-SpX)に基づく「反応基由来の2価の基」(-SpX-)となる。
また同様に、反応基(SpD)は、Anと結合させる前の状態において一価の基(SpD-)となり、DEL(Anと結合した状態)においては前記(SpD-)に基づく「反応基由来の2価の基」(-SpD-)となる。
【0105】
SpXの好ましい態様は、アミノ、カルボニル、アミド、エステル、ウレア、又はスルホンアミド結合を形成する反応性基である。一つの態様として、SpXはヘッドピースの反応性官能基がアミノ基であった場合に適した反応性基である、以下の(SpX1)、(SpX2)または(SpX3)の構造である。
(SpX1):カルボキシ基、ハロゲン化カルボキシ基、アルデヒド基、またはハロゲン化スルホニル基
(SpX2):カルボキシ基、またはハロゲン化スルホニル基
(SpX3):カルボキシ基
【0106】
SpDの好ましい態様は、前述のDと同じである。
一つの態様として、SpDは前述の(D1)、(D2)、(D3)、(D4)または(D5)である。
【0107】
SpLの好ましい態様は、下記の態様である。
一つの態様として、SpLは前述の(L1)、(L2)、(L3)、(L4)又は(L5)である。
一つの態様として、SpLは以下の(SpL1)、(SpL2)または(SpL3)である。
(SpL1)ポリアルキレングリコール、ポリエチレン、任意にヘテロ原子で置き換えられても良いC1~20脂肪族炭化水素、ペプチド、オリゴヌクレオチド、またはこれらの組み合わせ。
(SpL2)ポリアルキレングリコール、ポリエチレン、C1~10脂肪族炭化水素、またはペプチド
(SpL3)ポリエチレングリコール、またはポリエチレン
【0108】
一つの態様として、2官能性スペーサーは、以下のとおりである。
(Sp1):(D4)-(SpL1)-(SpX1)
(Sp2):(D4)-(SpL2)-(SpX2)
(Sp3):(D4)-(SpL3)-(SpX3)
(Sp4):(D5)-(SpL1)-(SpX1)
(Sp5):(D5)-(SpL2)-(SpX2)
(Sp6):(D5)-(SpL3)-(SpX3)
【0109】
一つの態様として、DELを構成する化合物の(Sp-D-L)部分は、以下の(SpDL1)、(SpDL2)、(SpDL3)(SpDL4)、(SpDL5)、(SpDL6)、(SpDL7)、(SpDL8)、(SpDL9)、または(SpDL10)のように構成される。
(SpDL1):(D4)-(L1)
(SpDL2):(D5)-(L1)
(SpDL3):(D4)-(L2)
(SpDL4):(D5)-(L2)
(SpDL5):(Sp1)-(D5)-(L5)
(SpDL6):(Sp2)-(D5)-(L5)
(SpDL7):(Sp3)-(D5)-(L5)
(SpDL8):(Sp4)-(D5)-(L5)
(SpDL9):(Sp5)-(D5)-(L5)
(SpDL10):(Sp6)-(D5)-(L5)
なお、(SpDL1)、(SpDL2)、(SpDL3)、(SpDL4)において、Spは結合を意味する。
【0110】
本発明の実施において、ヘッドピースは核酸合成装置で合成できると有利である。当該実施においては、前述のとおり、一つの態様として、リンカー部位(L)および反応性官能基部位(D)が、LSと結合した核酸合成用モノマーを調製し、そののち核酸オリゴマーを合成することができる。そのような核酸合成モノマーの例としては、前述のAmino C6 dT、mdC(TEG-Amino)、Uni-Link(商標登録)Amino Modifierなどが挙げられる。
一方、上記のような市販の核酸合成モノマーまたは核酸合成機で使用可能な核酸アナログを用いた場合、リンカー部位の長さが制限される可能性がある。そのような場合、一つの態様として、適切な2官能性スペーサーを導入することで、ヘッドピースとAnの距離を調整することが可能となり、発明の実施において有利となる。
【0111】
本発明の説明において、「C1~C6のアルキル基」や「C1~6アルキル基」のような用語における「C1~C6の」や「C1~6」とは炭素数が1乃至6個であることを意味する。同様にm、nが整数の場合に、「Cm~Cnの」や「Cm~n」との記載があった場合、当該記載は炭素数がm~n個であることを意味する。したがって「C1~C6のアルキル基」や「C1~6アルキル基」とは炭素数が1乃至6個であるアルキル基を、「C1~C6のアルキレン」や「C1~6アルキレン」とは炭素数が1乃至6個であるアルキレンを意味する。
【0112】
本発明で「C1~6アルキル」とは、炭素原子数が1ないし6個である直鎖または分岐鎖状のアルキル基を意味する。具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。
【0113】
本発明で「C1~3アルキル」とは、炭素原子数が1ないし3個である直鎖または分岐鎖状のアルキル基を意味する。具体例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルである。
【0114】
本発明で「C1~6アルコキシ」とは、炭素原子数が1ないし6個である直鎖または分岐鎖状のアルコキシを意味する。具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどが挙げられる。
【0115】
本発明で「C1~3アルコキシ」とは、炭素原子数が1ないし3個である直鎖または分岐鎖状のアルコキシを意味する。具体例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシである。
【0116】
本発明で「炭化水素」とは、炭素原子および水素原子のみから構成される鎖状、分岐鎖状または環状の飽和または不飽和の化合物を意味する。
【0117】
本発明で「脂肪族炭化水素」とは、炭化水素のうち、非芳香族のものを意味する。「脂肪族炭化水素」は、鎖状、分岐鎖状または環状であっても良く、また飽和または不飽和であって良い。構造の具体例としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル若しくはシクロアルケニル、又はこれらの組合せによる構造が挙げられる。
本発明で「C1~20脂肪族炭化水素」とは、炭素原子数が1ないし20個である脂肪族炭化水素を意味する。
本発明で「C1~10脂肪族炭化水素」とは、炭素原子数が1ないし10個である脂肪族炭化水素を意味する。
本発明で「C1~6脂肪族炭化水素」とは、炭素原子数が1ないし6個である脂肪族炭化水素を意味する。
【0118】
本発明で「芳香族炭化水素」とは、炭化水素のうち、芳香族のものを意味する。
本発明で「C6~14芳香族炭化水素」とは、炭素原子数が6ないし14個である芳香族炭化水素を意味する。具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンが挙げられる。
本発明で「C6~10芳香族炭化水素」とは、炭素原子数が6ないし10個である芳香族炭化水素を意味する。具体例は、ベンゼン又はナフタレンである。
【0119】
本発明の芳香族複素環は、環構造内にヘテロ原子として、窒素、酸素及び硫黄からなる群より単独又は異なって選ばれる元素を有する芳香族の複素環である。
一つの態様として、芳香族複素環は、炭素原子を1~9個有する「C1~9芳香族複素環」であり、一つの態様として、「C1~9芳香族複素環」は、5~10員の芳香族複素環」である。
一つの態様として、芳香族複素環は、炭素原子を1~5個有する「C1~5芳香族複素環」であり、一つの態様として、「C1~5芳香族複素環」は、5~6員の芳香族複素環」である。
一つの態様として、芳香族複素環は、炭素原子を2~9個有する「C2~9芳香族複素環」であり、一つの態様として、「C2~9芳香族複素環」は、5~10員の芳香族複素環」である。
一つの態様として、芳香族複素環は、炭素原子を2~5個有する「C2~5芳香族複素環」であり、一つの態様として、「C2~5芳香族複素環」は、5~6員の芳香族複素環」である。
【0120】
本発明の含窒素芳香族複素環は、環構造内にヘテロ原子として、窒素を有する芳香族の複素環である。
一つの態様として、含窒素芳香族複素環は、炭素原子を1~5個有する「C1~5含窒素芳香族複素環」であり、一つの態様として、「C1~5含窒素芳香族複素環」は、5~6員の芳香族複素環」である。
一つの態様として、含窒素芳香族複素環は、炭素原子を2~5個有する「C2~5含窒素芳香族複素環」であり、一つの態様として、「C2~5含窒素芳香族複素環」は、5~6員の芳香族複素環」である。
【0121】
本発明の非芳香族複素環は、環構造内にヘテロ原子として、窒素、酸素及び硫黄からなる群より単独又は異なって選ばれる元素を有する非芳香族の複素環である。
非芳香族複素環は部分不飽和結合を含んでも良い。
一つの態様として、非芳香族複素環は、炭素原子を2~9個有する「C2~9非芳香族複素環」であり、一つの態様として、「C2~9非芳香族複素環」は、5~10員の非芳香族複素環」である。
【0122】
本発明で「C1~14の3価の基」とは、炭素原子数が1ないし14個である化合物に由来する3価の基を意味する。本発明の効果を達成する限り、構造は限定されない。
【0123】
本発明で「ヘテロ原子で置き換えられても良い」との記載があった場合、ヘテロ原子とは、炭素および水素以外の原子を意味する。
当該ヘテロ原子は、好ましくは、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、リン原子、又は硫黄原子であり、より好ましくは、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子である。
したがって、例えば炭化水素の例としてプロピル(-CH-CH-CH)を挙げると、「ヘテロ原子で置き換えられても良いプロピル」とは、アルキル中のメチレン(-CH-)が、酸素に置き換えられたエーテル((-CH-O-CH)若しくは(-O-CH-CH))や、窒素に置き換えられたアミン((-CH-NH-CH)若しくは(-NH-CH-CH))などの構造を含有する概念である。
【0124】
本発明で「置換基を有しても良い」との記載があった場合、その置換基は、本発明の目的を達成するかぎり限定されない。
当該置換基は、好ましくは、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基若しくはハロゲン原子である。
当該置換基は、より好ましくは、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、フッ素原子若しくは塩素原子である。
【0125】
本発明でポリペプチド及びペプチドとは、アミノ酸がつながって形成される化合物又は部分構造を意味する。アミノ酸とは、アミノ基とカルボキシ基の両方の官能基を持つ有機化合物の総称である。本発明のポリペプチド及びペプチドを構成するアミノ酸は、特に限定されず修飾アミノ酸などを含む。生命科学分野における一般的な用法にしたがい、本発明ではプロリン(イミノ酸に分類される)もアミノ酸に含める。本発明のポリペプチド及びペプチドを構成するアミノ酸は、好ましくはαアミノ酸であり、より好ましくは「タンパク質を構成するアミノ酸」である。
【0126】
本発明の、ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0127】
C―C、アミノ、エーテル、カルボニル、アミド、エステル、ウレア、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホンアミド、及びスルホニル結合とは、各々の名称により理解される化学構造を有する化学結合である。当業者は、例えば、エーテル結合は一般に“-O-”で表現されうる結合であり、カルボニル結合は一般に“-C(=O)-”で表現されうる結合であることを理解する。アミノ、アミド及びウレア結合は、窒素原子上に水素原子又はその他の置換基を有するが、本発明の効果を有する限り窒素原子上の構造は限定されない。前記窒素原子上の置換基は、好ましくはC1~6アルキル基又は水素原子であり、より好ましくは水素原子である。また、言及するまでもないが、C-C結合とは炭素―炭素結合を意味する。C-C結合には単結合、二重結合、及び三重結合が含まれる。一つの態様として、本発明の製造方法の工程a及び/又はcでは、上記11種から適宜選択される結合が構築される。これら11種の結合は、有機化学における特に基本的な結合様式であり、それらを構築するための反応も当業者に周知である。したがって本発明の化合物ライブラリの部分構造Anを設計・構築するにあたり、当業者であれば、これら11種の結合を適宜組みわせて用いることができる。
【0128】
H、B、C、N、O、Si、P、S、F、Cl、Br及びIからなる元素群より単独又は異なって選ばれる元素により構成される有機化合物とは、前記12種の元素の結合により構築される有機化合物である。
【0129】
一つの態様として、本発明の化合物ライブラリの部分構造Anは、上記12種の元素により構築される。これら12種の元素は、有機化合物における特に基本的な元素であり、それらを構築するための反応も当業者に周知である。したがって本発明の化合物ライブラリの部分構造Anを設計・構築するにあたり、当業者であれば、これら12種の元素を適宜組みあわせて用いることができる。
【0130】
アリール基、非芳香族シクリル基、ヘテロアリール基及び非芳香族ヘテロシクリル基からなる置換基群より単独又は異なって選ばれる置換基を有する低分子有機化合物とは、各々の名称により理解される化学構造を有する低分子有機化合物である。低分子化合物は、当業者に周知の概念であり、本発明における低分子化合物の好ましい分子量の例は、別途言及される。
【0131】
本発明のアリール基は、好ましくはC6~10アリール基であり、より好ましくはフェニル基である。
【0132】
本発明の非芳香族シクリル基は、好ましくは、5員から8員の非芳香族シクリル基であり、より好ましくは5員又は6員の非芳香族シクリル基である。当該非芳香族シクリル基は部分不飽和結合を含んでも良い。
【0133】
本発明のヘテロアリール基及び非芳香族ヘテロシクリル基は、環構造内にヘテロ原子として、窒素、酸素及び硫黄からなる群より単独又は異なって選ばれる元素を有する基である。本発明のヘテロアリール基、非芳香族ヘテロシクリル基は、好ましくは、5員から8員の基であり、より好ましくは5員又は6員の基であり、非芳香族ヘテロシクリル基は部分不飽和結合を含んでも良い。
【0134】
一つの態様として、本発明の化合物ライブラリの部分構造Anは、上記4種の基を有する。これら4種の基は、有機化合物における特に基本的な部分構造であり、それらを化合物中に構築するための反応も当業者に周知である。したがって本発明の化合物ライブラリの部分構造Anを設計・構築するにあたり、当業者であれば、これら4種の基を適宜組みわせて用いることができる。
【0135】
前記の好ましい態様、すなわち、11種の結合、12種の元素、及び/又は4種の基で構築される化合物ライブラリは、特に核心的な価値を有する。したがって、これらの好ましい態様を外して構築した化合物ライブラリは、一般的には用途が限定され、多くの場合に商業的価値も限定されたものになることを、当業者は理解するであろう。
【0136】
Anの合成履歴とは、Anが合成されるまでに行われた操作全般の記録を意味し、とくに、Anが合成されるまでに使用されたビルディングブロックの構造とその順序を意味する。例えば、2つ以上の別個の反応容器にて、それぞれ異なるビルディングブロックの使用、及び/又は異なる反応条件により反応が実行される場合に、反応の前、もしくは後に、あらかじめ決めておいた配列のオリゴヌクレオチド鎖を、それぞれの反応容器中の生成物に連結させることで、合成履歴がオリゴヌクレオチドの配列情報として付与される。このような操作をAnが構築されるまでの間、繰り返し行うことで、Anの合成履歴を有するBnのオリゴヌクレオチドが構築される。
【0137】
スプリット・アンド・プール合成とは、ゲイセンらがコンビナトリアル化学の創成期に固相合成法を利用したペプチドライブラリのコンビナトリアル化学的な構築法として開発した合成法である。スプリット・アンド・プール合成は、スプリット・ミックス法などとも呼ばれる。
【0138】
上記経緯に従い、固相合成法を利用したペプチドライブラリの合成を例に説明すると、スプリット・アンド・プール合成では、ペプチド増端の段階ごとに、アミノ酸をペプチド結合させた固相担体からサンプルを切り出すことなく、一旦N種の担体を混合均一化させた後に等分して次のN種のアミノ酸を増端させる。
【0139】
すなわち担体ごとに1種類のペプチド鎖が生成することになり、各段階で天然アミノ酸20種全てを適用すれば特定の長さのペプチドについて全ての組み合わせ可能なペプチドライブラリを構築することになる。
【0140】
このペプチドライブラリは抗原提示や受容体結合でスクリーニングするのであれば、ELISA法などを利用すれば固相担体上のペプチドを利用してアッセイを実施できる。つまり担体から試料のペプチドを切り出す必要は無く、アッセイに反応した担体粒子を拾い上げる(たとえは光学顕微鏡で0.1mmほどの蛍光標識された担体粒子を拾い上げる)。そしてその粒子のペプチドを機器分析装置(ペプチドアナライザー等)で目的のペプチド配列を決定したり、他のコンビナトリアル化学的同定方法(例えばタグ法)などで間接的にスクリーニングの候補となったペプチド配列を決定したりすることができる。
【0141】
さらに本発明の製造方法において、mが2のときにv種類、mが3の場合にw種類の構造を、スプリット・アンド・プール合成で合成する場合を例として説明する。なお、本説明では、工程を(c)(d)の順で繰り返す。
(m=2)
m=2のステップは、A1-Sp-C-B1に対し、工程(c)でα2を、工程(d)でβ2をそれぞれ付加し、A2-Sp-C-B2を製造する。
ここで、v種類の構造のα2(α2(a-v))とそれに対応するv種類のβ2(β2(a-v))を準備し、各構造について工程(c)(d)をそれぞれ行うと、v種類のA2-Sp-C-B2(A2(a)-Sp-C-B2(a)、A2(b)-Sp-C-B2(b)...A2(v)-Sp-C-B2(v):すなわちA2(a-v)-Sp-C-B2(a-v))が得られる。スプリット・アンド・プール合成では、v種類のA2-Sp-C-B2を混合したのち、w個に分割する。分割とは、最も具体的にはw個の反応容器に小分けすることを意味する。
(m=3)
m=3のステップは、A2-Sp-C-B2に対し、工程(c)でα3を、工程(d)でβ3をそれぞれ付加し、A3-Sp-C-B3を製造する。
ここで、w種類の構造のα3(α3(a-w))と、それに対するw種類のβ3(β2(a-w))を用意し、w個の(A2(a-v)-Sp-C-B2(a-v)混合物)に対し、それぞれ工程(c)(d)を実施する。すると、n=2と3のステップを通じ、(v+w)回の合成で、(v×w)種類のA3-Sp-C-B3が効率よく合成できることになる。
【0142】
(生物評価)
得られたw個の生成物を混合すると、(v×w)種類のA3-Sp-C-B3化合物ライブラリの混合物が得られる。例えば、この混合物に対し薬物受容体の結合試験を行えば、(v×w)種類の化合物のスクリーニングを1回で行えることとなる。薬物受容体に結合しなかった化合物を洗い流すことで、結合した化合物のみを単離することができる。本発明のようなDELでは、単離したA3-Sp-C-B3化合物のDNAを配列解読可能な量にまで増幅し、その配列情報によりA3の構造が把握できることとなる。
【0143】
なお、化合物ライブラリ、ビルディングブロック、スプリット・アンド・プールなどは、コンビナトリアル化学などの分野で当業者に周知に用語であり、以下の文献等を参考に適時行うことができる。
(1)高橋孝志、土井隆行「コンビナトリアルケミストリー」、有機合成化学協会誌、2002年、 60巻、426-433頁
(2)コンビナトリアルケミストリー研究会編、「コンビナトリアルケミストリー」、化学同人
【0144】
DNAコード化ライブラリ(又はDEL)とは、DNA、もしくはDNAと実質的に同等の機能を有するオリゴヌクレオチドによって標識された化合物(DNAコード化化合物)の群からなる化合物ライブラリである。上記に記載したようなスプリット・アンド・プール合成によって、標識DNAには各化合物の構造、もしくは合成履歴が配列情報として付与される。このような特性から、DNAコード化ライブラリは10~1020種の化合物の混合物の形態で、スクリーニングし、取得された化合物に含まれるDNA配列を当技術分野で知られる手法(例えば、次世代シーケンサーの使用及び/又はマイクロアレイの使用)によって同定することにより、化合物の構造を同定することが可能となる。前記スクリーニングの手法の一つの態様として、タンパク質などの標的をDNAコード化ライブラリと接触させ、標的と結合した化合物を選別するという手法が選択されうる。
【0145】
「生物学的標的」とは当業者に周知の用語であるが、一つの態様として、本発明において、「生物学的標的」とは、医農薬に代表される薬剤等の開発において標的となりうる生物学的な物質群のことであり、例えば酵素(たとえば、キナーゼ、ホスファターゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、プロテアーゼ、およびDNA修復酵素)、タンパク質:タンパク質相互作用に関係するタンパク質(たとえば、受容体のリガンド)、受容体標的(たとえば、GPCR)、イオンチャンネル、細胞、細菌、ウイルス、寄生虫、DNA、RNA、プリオン、または糖質が含まれる。
「生物活性評価」とは当業者に周知の用語であるが、一つの態様として、本発明において、「生物活性評価」とは、化合物の有する生物活性(例えば、生物学的標的との結合能、酵素活性の阻害機能、酵素活性の促進機能など)の有無、又は強弱を評価することである。生物活性評価の具体例として、前述の特許文献2および3、非特許文献1~6なども参照できる。
「機能性評価」とは当業者に周知の用語であるが、一つの態様として、本発明において、「機能性評価」とは、化合物の有する特定の機能(例えば、結合能、生物活性、発光特性など)の有無、又は強弱を評価することである。
【0146】
本発明は、切断可能な部位を有するDNA鎖を用いることで、DEL、及びDELの製造方法に関して、いくつかの利点を有する複数の手法を提供する。様式1乃至7を以下に詳細に記述する。
【0147】
様式1
本発明は、前記の「切断可能な部位を有するヘアピン型のヘッドピース」を用いたDELを提供する。
【0148】
図1で例示されるように、様式1では、切断可能な部位をDNA鎖中に含む第1のオリゴヌクレオチド鎖、ループ部位および第2のオリゴヌクレオチド鎖を含むヘッドピースを出発原料とし、ビルディングブロックの結合と、該ビルディングブロックに対応するオリゴヌクレオチドタグの2本鎖ライゲーションとを繰り返し(図1では3回)、さらに所望によりプライマー領域を含むオリゴヌクレオチドタグの2本鎖ライゲーションをすることによって、DELの製造が達成される。
【0149】
図2で例示されるように、様式1では、切断可能な部位をヘッドピースの第1のオリゴヌクレオチド鎖中に含むDELに対し、酵素などの切断手段を用いて切断可能な部位を切断し、ループ部位で結合されていない2本鎖オリゴヌクレオチドへと誘導することで、高い効率でPCRを行うことができる。
【0150】
(様式2について)
図3で例示されるように、「切断可能な部位を有するヘアピン型のヘッドピース」を用いたDELでは、切断可能な部位が第2のオリゴヌクレオチド鎖に存在しても良い。様式2の特徴は、切断可能な部位以外には、様式1と同様である。
【0151】
(様式3について)
図4で例示されるように、「切断可能な部位を有するヘアピン型のヘッドピース」を用いたDELでは、切断可能な部位が、第1と第2の双方のオリゴヌクレオチド鎖に存在しても良い。本態様では、ループ部位が双方のオリゴヌクレオチド鎖から切断されることで、PCR効率がさらに向上することが期待される。
【0152】
(様式4について)
図5で例示されるように、本発明では、切断可能な部位が、第1のオリゴヌクレオチド鎖(E)と第2のオリゴヌクレオチド鎖(F)の双方に存在しても良く、さらに切断可能な部位の構造は異なっていても良い。そのような場合、2つの(またはそれ以上の)切断可能な部位の特性の差を利用し、切断部位を制御することができる。
たとえば、第1のオリゴヌクレオチド鎖(E)での切断可能な部位としてデオキシウリジンを、第2のオリゴヌクレオチド鎖(F)での切断可能な部位としてデオキシイノシンを用いても良い。
この場合USER酵素を用いると、第1のオリゴヌクレオチド鎖(E)のデオキシウリジンを選択的に切断できる。
【化16】

一方、アルキルアデニンDNAグリコシラーゼとエンドヌクレアーゼVIIIを用いると、第2のオリゴヌクレオチド鎖(F)において、デオキシイノシンを起点とする切断部位を選択的に切断できる。
【化17】

このように、切断部位を所望に応じ選択することで、より幅広いDELの修飾が可能となり、その後の評価もより幅広い手法が適応可能となる。
が期待できる。
【0153】
(様式5について)
図6で例示されるように、本発明では、切断可能な部位を、DNAタグ部分(例えばオリゴヌクレオチド鎖(Y))に有することもできる。DNAタグの末端近くに切断可能な部位を設け、所望に応じて当該部位を切断することで、新たな突出末端を生成することができる。
【化18】

当該突出末端は粘着末端として利用して、所望の核酸配列、例えばUMIs(特定分子識別配列)などをライゲートすることができる。
【化19】

生物評価ののち、選抜されたDEL化合物に対し、上記のようにUMIs領域を付与し、DNAシーケンシングすることで、PCRによる増幅バイアスが減少した解析が可能となる。
このように、本発明では、核酸配列に選択的に切断可能な部位を有することで、DEL化合物の製造や使用の局面で、従来にない性能を付与することができる。
【0154】
ここでUMIs(特定分子識別配列)とは、あるサンプル中に含まれるDNAに付与することで、DNA分子一つ一つに個別のDNA配列を与える分子識別子である(文献ネイチャー メソッド、2012年、9巻、72-74頁参照)。このような分子識別子をPCR増幅前に付与することで、サンプル中の特定配列を有するDNA分子数を定量する際、PCR重複(同一分子由来配列)の識別が可能となり、PCR増幅バイアスを減少させた定量が可能となる。
【0155】
(様式6について)
図7で例示されるように、本発明では、切断可能な部位と、修飾基や機能性分子を組み合わせて使用することでき、例えば、ヘアピン鎖DNAを1本鎖DNAに変換したDELを調製することが可能である。
図7に従い、E部分に切断可能な部位を有するヘッドピースを用いたDEL化合物を例に挙げる。
(ステップA)合成されたDEL化合物に対し、3‘末端に固相担持除去可能な修飾基(例えばビオチン)を有する2本鎖オリゴヌクレオチド鎖をライゲートする。
(ステップB)切断可能な部位を切断する。
(ステップC)修飾基の機能に応じた処理を加える。例えばビオチンの場合、ビオチン親和性を有するストレプトアビジンビーズなどを用い、ビオチンが結合したオリゴヌクレオチド鎖を選択的に系中から除去する。それにより、1本鎖DNAを有するDELを取得することが可能である。
【0156】
ここで機能性分子とは、特定の化学的、又は生物学的機能(例えば、溶解性、光反応性、基質特異的反応性、標的タンパク分解誘導特性)を有する分子のことであり、DELに付与することで、機能に応じたDELの評価や精製が可能となる。
【0157】
ここでビオチンとは、アビジンと結合するビオチン類全般を意味し、ビタミンBだけでなく、例えばデスチオビオチンをも含む。
【0158】
図8で例示されるように、1本鎖DNAを有するDELは、所望の機能部位を有する修飾オリゴヌクレオチド(例えば光反応性クロスリンカーなどのクロスリンカー修飾DNA)と2本鎖を形成させることで、新たな機能を付与することが可能となる。
【0159】
(様式7について)
図9で例示されるように、本発明では、切断可能な部位を利用し、クロスリンカーを導入することができる。
図9に従い、E部分に切断可能な部位を有するヘッドピースを用いたDEL化合物を例に挙げる。
(ステップA)合成されたDEL化合物に対し、切断可能な部位を切断する。
(ステップB)所望の機能部位を有する修飾プライマー(例えば光反応性クロスリンカーなどのクロスリンカー修飾プライマー)を付与する。
(ステップC)付与したプライマーを伸長し、クロスリンカー修飾2本鎖DEL化合物を合成する。
DEL評価の場面において、クロスリンカー修飾2本鎖DEL化合物は、ビルディングブロック化合物(ライブラリ低分子化合物)が標的タンパクに結合する際、さらにクロスリンク構造を標的タンパクに結合させることができ、検出感度を顕著に向上させることができる(非特許文献5,6など参照)。非常に多数のライブラリ化合物を評価するDEL技術の実務上、ライブラリ化合物のアフィニティーを増強し、検出感度を向上させることは、非常に有用である。
本発明は、斬新で高効率なクロスリンカー修飾2本鎖DEL化合物の製造法を提供するものであり、非常に有用である。
【0160】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例における各種の配列の核酸は、例えば、核酸自動合成機により定法にしたがい調製することができる。核酸自動合成機の例としては、nS-8II(ジーンデザイン社製)などが挙げられる。また、核酸の調製には、委託合成やコントラクトラボなどを利用することもできる。当業者に周知にコントクトラボとしては、ジーンデザイン社やLGC Biosearch Technologies社などが挙げられる。一般に
これらコントラクトラボは、秘密保持契約のもと、委託者の指定した配列の核酸を調製し、委託者に納入する。
【0161】
実施例1
[デオキシウリジンを含むヘアピン型DELの部分構造のUSER(登録商標)enzymeによる切断反応の検証]
表1に示す配列の化合物を、核酸自動合成機nS-8II(ジーンデザイン社製)を使用して調製した。なお、表1中の配列表記において、当業者には明らかであるが、各配列単位間はリン酸ジエステル結合で結合していて、「A」はデオキシアデノシンを意味し、「T」はチミジンを意味し、「G」はデオキシグアノシンを意味し、「C」はデオキシシチジンを意味し、「(dU)」はデオキシウリジンを意味し、「(p)」はリン酸を意味し、「(amino-C6-dT)」は次の式(1)
【化20】

で表される修飾核酸を意味し、「(amino-NC6-dT)」は次の式(2)
【化21】

で表される修飾核酸を意味し、「(dSpacer)」は次の式(3)
【化22】

で表される基を意味し、「(aminoC7)」は次の式(4)
【化23】

で表される基を意味する。また、amino-NC6-dTは、(米国化学会誌,1993年、115巻、7128-7134貢)に記載の方法に準じて合成した次の式(5)
【化24】

の核酸合成試薬を用いて導入した。
【0162】
表1中、左カラムの“No.”は配列番号を表し、右カラムの“Seq.”は配列を表す。配列は左側が5‘側を表し、右側が3’側を表す。また、各配列番号(No.)に該当する化合物の名称は以下のとおりである。
No.1:U-DEL1-sh No.2:U-DEL2-sh
No.3:U-DEL3-sh No.4:U-DEL4-sh
No.5:U-DEL5-HP No.6:U-DEL6-HP
No.7:U-DEL7-HP No.8:U-DEL8-HP
No.9:U-DEL9-HP No.10:U-DEL10-HP
【0163】
【表1】
【0164】
表1に示す配列の化合物それぞれ0.1mM水溶液を調製し、以下の手順でUSER(登録商標)enzymeによる切断反応の検討を行った。
【0165】
PCRチューブに、1μLの表1に示す配列の化合物0.1mM水溶液;10μLのCutSmart(登録商標) Buffer(New England BioLabs製、カタログ番号B7204S)及び79μLの脱イオン水を加えた。溶液に10μLのUSER(登録商標)enzyme(New England BioLabs製、カタログ番号M5505S)を加え、得られた溶液を37℃でインキュベーションを開始した。
【0166】
各反応溶液をインキュベーション開始後、1時間、及び3時間経過した後に、それぞれ20μLサンプリングした。U-DEL1-sh、U-DEL5-HP、U-DEL6-HP、U-DEL7-HP、U-DEL8-HP、U-DEL9-HP、及びU-DEL10-HPは20時間経過後もそれぞれ20μLサンプリングした。U-DEL8-HP、及びU-DEL9-HPは、さらに90℃で1時間インキュベーションした後に、それぞれ20μLサンプリングした。
【0167】
サンプリングした溶液のうち、U-DEL1-sh、U-DEL2-sh、U-DEL3-sh、及びU-DEL4-shは以下に示す分析条件1で分析を行い、U-DEL5-HP、U-DEL6-HP、U-DEL7-HP、U-DEL8-HP、U-DEL9-HP、及びU-DEL10-HPは以下に示す分析条件2で分析を行った。
【0168】
分析条件1:
装置:maXis(Bruker製)、UltiMate 3000(Dionex製)
カラム:ACQUITY UPLC Oligonucleotide BEH C18 Column(130Å、1.7μm、2.1×50mm)
カラム温度:50℃
溶媒:
A液:水(0.75% v/v ヘキサフルオロイソプロパノール;0.038% v/v トリエチルアミン;5μM エチレンジアミン四酢酸)
B液:90% v/v メタノール水溶液(0.75% v/v ヘキサフルオロイソプロパノール;0.038% v/v トリエチルアミン;5μM エチレンジアミン四酢酸)
グラジエント条件:
流速0.36mL/min、A液とB液の混合比を95/5(v/v)に固定して測定開始し、0.56分後に5.5分間でA液とB液の混合比を40/60(v/v)に直線的に変えた。
検出波長:260nm
【0169】
分析条件2:
装置:Waters ACQUITY UPLC/SQ Detector
カラム:ACQUITY UPLC Oligonucleotide BEH C18 Column(130Å、1.7μm、2.1×50mm)
カラム温度:50℃
溶媒:
A液:水(0.75% v/v ヘキサフルオロイソプロパノール;0.038% v/v トリエチルアミン;5μM エチレンジアミン四酢酸)
B液:90% v/v メタノール水溶液(0.75% v/v ヘキサフルオロイソプロパノール;0.038% v/v トリエチルアミン;5μM エチレンジアミン四酢酸)
グラジエント条件:
流速0.36mL/min、A液とB液の混合比を95/5(v/v)に固定して測定開始し、0.56分後に5.5分間でA液とB液の混合比を40/60(v/v)に直線的に変えた。
検出波長:260nm
【0170】
各反応溶液において想定される生成物(デオキシウリジン部分の脱塩基体、及び切断されたフラグメント)の配列と理論分子量、及び各反応溶液において検出された分子量を表2、表3に示す。なお、表2、表3中、の各カラムの表記は以下のとおりである。
【0171】
“Entry”( 一番左):
実験番号を示し、各実験番号(Entry)に該当する基質は以下のとおりである。
Entry.1:U-DEL1-sh Entry.2:U-DEL2-sh
Entry.3:U-DEL3-sh Entry.4:U-DEL4-sh
Entry.5:U-DEL5-HP Entry.6:U-DEL6-HP
Entry.7:U-DEL7-HP Entry.8:U-DEL8-HP
Entry.9:U-DEL9-HP Entry.10:U-DEL10-HP
【0172】
“No.”(左から2番目):
配列番号を表す。なお、各配列番号(No.)のうち、No.1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10は各反応溶液の基質であり、No.11、14、17、20、22、25、29 、31、33、及び35は、各基質のデオキシウリジン部分の脱塩基体であり、残りの配列番号は各基質が切断されたフラグメントである。
【0173】
“Seq.” (左から3番目):
配列を表し、左側が5‘側を表し、右側が3’側を表す。
なお、配列表記において、「(B)」は次の式(6)
【化25】

で表される基(脱塩基部位)を意味し、その他の表記は表1と同じである。
【0174】
“Expected MW.” (左から4番目):
各配列の理論分子量(Da)の数値を表す。
【0175】
“Observed MW.” ( 一番右):
各配列として同定した検出された分子量(Da)の数値を表す。なお、「-」表記は未検出であることを表す。
【0176】
【表2】
【0177】
【表3】
【0178】
検出された各配列に該当するピークの面積比から、脱塩基反応および切断反応の転化率を算出した。脱塩基反応はすべての基質において、37℃、1hの段階で99%以上転化していた(基質のピークが1%未満であり、残りのピークが脱塩基体と切断されたフラグメントのみ)。
また、切断反応の転化率を表したグラフを図10に示す。グラフに示すように、U-DEL8-HPとU-DEL9-HPを除く、すべての基質において37℃、20hまでに95%以上切断反応が進行しており、U-DEL8-HPとU-DEL9-HPにおいても、90℃、1hのインキュベーションを追加することで、切断反応が100%完了した。
【0179】
以上の結果から、各種デオキシウリジンを含むヘアピン型DELの部分構造は、デオキシウリジン部位でUSER(登録商標)enzymeによる脱塩基反応、続いて切断反応が進行することが示された。
【0180】
実施例2
[従来型ヘアピンDELと切断可能なヘアピンDEL(デオキシウリジンを含むヘアピン型DEL)のPCR効率の比較]
【0181】
図11に示す概略図のように、表4に示す配列の化合物(ヘアピンDEL)を以下の手順にて合成した。なお、表4中の配列表記において、「S」は次の式(7)
【化26】

で表される基を意味し、その他の表記は表1と同じである。
各配列番号(No.)に該当する化合物の名称は以下のとおりである。
No.37:U-DEL1 No.38:U-DEL2
No.39:U-DEL4 No.40:U-DEL7
No.41:U-DEL8 No.42:U-DEL9
No.43:U-DEL10 No.44:H-DEL
【表4】

なお、各ヘアピンDELを合成するための原料ヘッドピースの化合物名はそれぞれ以下のとおりである。
ヘアピンDEL :原料ヘッドピース
U-DEL1 :U-DEL1-HP
U-DEL2 :U-DEL2-HP
U-DEL4 :U-DEL4-HP
U-DEL7 :U-DEL7-HP
U-DEL8 :U-DEL8-HP
U-DEL9 :U-DEL9-HP
U-DEL10 :U-DEL10-HP
H-DEL :H-DEL-HP
さらに、U-DEL1-HP、U-DEL2-HP、U-DEL4-HP、及びH-DEL-HPの配列番号“No.”および配列“Seq”は以下の表5のとおりである。
【表5】
【0182】
表5に示す原料ヘッドピースを、実施例1と同様に核酸自動合成機nS-8II(ジーンデザイン社製)を使用して調製した。
【0183】
PCRチューブに、2.0μLの各種原料ヘッドピースの1mM水溶液;2.4μLのPr_TAGの1mM水溶液(実施例1と同様に合成したPr_TAG_aとPr_TAG_bをアニーリングして調製、表6に配列を示す);0.8μLの10Xリガーゼ緩衝液(500mM トリス塩酸、pH7.5;500mM 塩化ナトリウム;100mM 塩化マグネシウム;100mM ジチオスレイトール;20mM アデノシン三リン酸)及び2.0μLの脱イオン水を加えた。溶液に0.8μLのT4DNAリガーゼ(サーモフィッシャー製、カタログ番号EL0013)の10倍希釈水溶液を加え、得られた溶液を16℃で24時間インキュベーションした。なお、表6中の配列表記は表1と同じである。また、各配列番号(No.)に該当する化合物の名称は以下のとおりである。
No.49:Pr_TAG_a No.50:Pr_TAG_b
【表6】
【0184】
反応溶液を、0.8μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液および17.6μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で2時間精置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットを風乾した。各ペレットに2.0μL脱イオン水を加え溶液を調製した。
【0185】
得られた各溶液に、2.4μLのCPの1mM水溶液(実施例1と同様に合成したCP_aとCP_bをアニーリングして調製、表7に配列を示す);0.8μLの10Xリガーゼ緩衝液(500mM トリス塩酸、pH7.5;500mM 塩化ナトリウム;100mM 塩化マグネシウム;100mM ジチオスレイトール;20mM アデノシン三リン酸)及び2.0μLの脱イオン水を加えた。溶液に0.8μLのT4DNAリガーゼ(サーモフィッシャー製、カタログ番号EL0013)の10倍希釈水溶液を加え、得られた溶液を16℃で24時間インキュベーションした。なお、表7中の配列表記は表1と同じである。また、各配列番号(No.)に該当する化合物の名称は以下のとおりである。
No.51:CP_a No.52:CP_b
【表7】
【0186】
反応溶液を、0.8μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液および17.6μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で2時間精置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットを風乾した。ペレットに10μL脱イオン水を加え溶液にした。
【0187】
得られた溶液のうち1.0μLをサンプリングし、脱イオン水で希釈したのち、実施例1の分析条件2の条件にて、ESI-MSによる質量分析を行い、目的物を同定した(各配列の理論分子量、及び検出された分子量を表4中に示す)。溶液の残りを凍結乾燥した後、それぞれ脱イオン水を加え、20μMに調製した。
【0188】
上記で得られた8種ヘアピン型DELのうち、H-DELは従来型ヘアピンDELであり、残りの7種はデオキシウリジンを含む切断可能なヘアピンDELである。各種ヘアピン型DELのUSER(登録商標)enzymeによる処理前のPCR効率と、処理後のPCR効率を比較するため、リアルタイムPCR解析を実施した。また、比較対象の2本鎖DELとして表7に示すDS-DEL(配列No.47とNo.48の化合物をアニーリングして調製)を用いた。なお、表8中の配列表記において、「(amino-C6-L)」は次の式(8)
【化27】

で表される基を意味し、その他の表記は表1と同じである。
【表8】
【0189】
<USER(登録商標)enzymeによる処理工程>
8種のヘアピンDEL、及び2本鎖DEL(DS-DEL)のUSER(登録商標)enzymeによる処理を以下の手順で行った。
【0190】
PCRチューブに、1μLの各種DEL20μM水溶液;1μLのCutSmart(登録商標)Buffer(New England BioLabs製、カタログ番号B7204S)及び7μLの脱イオン水を加えた。溶液に1μLのUSER(登録商標)enzyme(New England BioLabs製、カタログ番号M5505S)を加え、得られた溶液を37℃で1時間インキュベーションした。
【0191】
<DEL試料の調製>
各種DELのUSER(登録商標)enzyme処理前のサンプル、および処理後の反応溶液をそれぞれ脱イオン水で希釈し、0.05pM、0.5pM、および5pMのDEL試料を調製した。
【0192】
<リアルタイムPCRのよるCt値の測定>
上記で得られた各種DEL試料を、リアルタイムPCRによりCt値を測定し、PCR効率を比較した。条件は以下のとおりであり、結果を図12に示す。なお、Ct値とは、リアルタイムPCRにおいて、DNAの増幅に伴って生じる蛍光シグナルが任意の閾値に到達するサイクル数のことである。すなわち、初期のDNA分子数が同等である場合、PCR効率が高いほどCt値が低くなる。
【0193】
装置:7500リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems社製)
プレート:MicroAmp 96-Wellプレート(Applied Biosystems社製、カタログ番号N8010560)
PCR反応溶液:
・TB Green Premix Ex taqII(タカラバイオ社製、カタログ番号RR820) :10μL
・フォワードプライマー(表9、配列番号55) :0.80μL
・リバースプライマー(表9、配列番号56) :0.80μL
・ROX Refference DyeII(タカラバイオ社製、カタログ番号RR39LR) :0.40μL
・各種DEL試料の水溶液(0.05pM、0.5pM、5pM)*1 :2.0μL
・脱イオン水 :6.0μL
* 1 :DEL試料のモル数は、0.1amоl、1amоl、10amоlとなる。
温度条件:
・95℃で2分間保持した後、以下のサイクルを35サイクル繰り返した。
・95℃、5秒間
・52℃、30秒間
・72℃、30秒間
【表9】

なお、表9中の配列表記は表1と同じである。
【0194】
図12に示すように、従来型ヘアピンDEL(H-DEL)はUSER(登録商標)enzyme処理の前後でCt値が変化しないが、デオキシウリジンを含む切断可能なヘアピンDEL(U-DEL1、U-DEL2、U-DEL4、U-DEL7、U-DEL8、U-DEL9、及びU-DEL10)は、USER(登録商標)enzyme処理後に2本鎖DELであるDS-DELと同等までCt値が低下した。
【0195】
本結果は、USER(登録商標)enzymeにより切断されたDELは、切断前よりもPCR効率が向上していること、及び、デオキシウリジンを含む切断可能なヘアピンDELは、USER(登録商標)enzymeにより高効率、高選択的に切断されていることを示している。
【0196】
実施例3
[デオキシウリジンを含むヘアピンDELのUSER(登録商標)enzymeによる切断反応の検証]
<4種のヘアピンDEL(U-DEL5、U-DEL11、U-DEL12、及びU-DEL13)の合成>
表10に示す配列の化合物(ヘアピンDEL)を以下の手順にて合成した。なお、表10中の配列表記において、「[mdC(TEG-amino)]」は次の式(9)
【化28】

で表される基を意味し、その他の表記は表4と同じである。
各配列番号(No.)に該当する化合物の名称は以下のとおりである。
No.57:U-DEL5 No.58:U-DEL11
No.59:U-DEL12 No.60:U-DEL13
【表10】

なお、各ヘアピンDELを合成するための原料ヘッドピースの化合物名はそれぞれ以下のとおりである。
ヘアピンDEL :原料ヘッドピース
U-DEL5 :U-DEL5-HP
U-DEL11 :U-DEL11-HP
U-DEL12 :U-DEL12-HP
U-DEL13 :U-DEL13-HP
さらに、U-DEL11-HP、U-DEL12-HP、及びU-DEL13-HPの配列番号“No.”および配列“Seq”は以下の表11のとおりである。なお、表11中の表記は表10と同じである。
【0197】
【表11】
【0198】
表11に示す原料ヘッドピースのうちU-DEL12-HP及びU-DEL13-HPは、実施例1と同様に核酸自動合成機nS-8II(ジーンデザイン社製)を使用して調製した。U-DEL11-HPも同様に定法に従い調製した。
【0199】
実施例2と同様に、各種原料ヘッドピースを用い、2本鎖オリゴヌクレオチドPr_TAG、及びCPとの2段階の2本鎖ライゲーションを実施した。
【0200】
得られた溶液の一部をサンプリングし、脱イオン水で希釈したのち、以下に示す分析条件3にて、ESI-MSによる質量分析を行い、目的物を同定した(各配列の理論分子量、及び検出された分子量を表10中に示す)。溶液の残りを凍結乾燥した後、それぞれ脱イオン水を加え、20μMに調製した。
【0201】
分析条件3:
装置:Waters ACQUITY UPLC/SQ Detector
カラム:ACQUITY UPLC Oligonucleotide BEH C18 Column(130Å、1.7μm、2.1×50mm)
カラム温度:60℃
溶媒:
A液:水(0.75% v/v ヘキサフルオロイソプロパノール;0.038% v/v トリエチルアミン;5μM エチレンジアミン四酢酸)
B液:90% v/v メタノール水溶液(0.75% v/v ヘキサフルオロイソプロパノール;0.038% v/v トリエチルアミン;5μM エチレンジアミン四酢酸)
グラジエント条件:
流速0.36mL/min、A液とB液の混合比を95/5(v/v)に固定して測定開始し、0.56分後に5.5分間でA液とB液の混合比を40/60(v/v)に直線的に変えた。
検出波長:260nm
デコンボリューション:
イオンシグナルをProMass for MassLynx Software(Waters製)を用いて解析した。
【0202】
<USER(登録商標)enzymeによる切断反応>
6種のデオキシウリジンを含むヘアピンDEL(U-DEL5、U-DEL7、U-DEL9、U-DEL11、U-DEL12、及びU-DEL13)のUSER(登録商標)enzymeによる切断反応の検討を以下の手順で行った。
【0203】
PCRチューブに、2μLの各種ヘアピンDEL20μM水溶液;2μLのCutSmart(登録商標)Buffer(New England BioLabs製、カタログ番号B7204S)及び14μLの脱イオン水を加えた。溶液に2μLのUSER(登録商標)enzyme(New England BioLabs製、カタログ番号M5505S)を加え、得られた溶液を37℃で16時間インキュベーションした後、さらに90℃で1時間インキュベーションした。
【0204】
<LC―MS測定による切断後の生成物の確認>
得られた反応溶液のうち5.0μLをサンプリングし、脱イオン水で希釈したのち、分析条件3にて、ESI-MSによる質量分析を行った。各反応溶液において想定される切断後の生成物の配列と理論分子量、及び各反応溶液において検出された分子量を表12に示す。なお、各実験番号(Entry)に該当する基質は以下のとおりであり、その他の表記は表10と同じである。
Entry.1:U-DEL5 Entry.2:U-DEL7
Entry.3:U-DEL9 Entry.4:U-DEL11
Entry.5:U-DEL12 Entry.6:U-DEL13
【0205】
【表12】
【0206】
いずれのサンプルも基質のMSは検出されず、切断後の生成物のMSがメインピークとして観測された。
【0207】
<ゲル電気泳動による切断反応の確認>
また、得られた反応溶液のうち一部をサンプリングし、以下に示す条件で、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析を行った。図13に示す結果から、いずれの基質も高収率で切断反応が進行していることが確認された。なお、図13の各レーンのサンプルは以下のとおりである。
レーン1:20bp DNAラダー(ロンザ製、Lonza 20 bp DNA Ladder、カタログ番号50330)
レーン2:U-DEL5
レーン3:U-DEL5の切断反応実施後サンプル
レーン4:U-DEL7
レーン5:U-DEL7の切断反応実施後サンプル
レーン6:U-DEL9
レーン7:U-DEL9の切断反応実施後サンプル
レーン8:U-DEL11
レーン9:U-DEL11の切断反応実施後サンプル
レーン10:U-DEL12
レーン11:U-DEL12の切断反応実施後サンプル
レーン12:U-DEL13
レーン13:U-DEL13の切断反応実施後サンプル
変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動:
ゲル:Novex(商品商標)10%TBE-ウレアゲル(Invitrogen by ThermoFisher SCIENTIFIC製、カタログ番号EC68755BOX)
ローディングバッファー:Novex(商品商標)10%TBE-Urea Sample Buffer(2×)(Invitrogen by ThermoFisher SCIENTIFIC製、カタログ番号LC6876)
温度:60℃
電圧:180V
泳動時間:30分
染色試薬:SYBER(商品商標) GreenII Nucleic Acid Gel Stain(タカラバイオ社製、カタログ番号5770A)
【0208】
以上の結果から、各種デオキシウリジンを含むヘアピン型DELは、デオキシウリジン部位でUSER(登録商標)enzymeによる切断反応が進行することが示された。
【0209】
実施例4
[デオキシイノシンを含むヘアピンDELのエンドヌクレアーゼVによる切断反応の検証]
<4種のデオキシイノシンを含むヘアピンDEL(I-DEL1、I-DEL2、I-DEL3、及びI-DEL4)の合成>
表13に示す配列の化合物(ヘアピンDEL)を以下の手順にて合成した。なお、表13中の配列表記において、「I」はデオキシイノシンを意味し、その他の表記は表2と同じである。
各配列番号(No.)に該当する化合物の名称は以下のとおりである。
No.73:I-DEL1 No.74:I-DEL2
No.75:I-DEL3 No.76:I-DEL4
【表13】

なお、各ヘアピンDELを合成するための原料ヘッドピースの化合物名はそれぞれ以下のとおりである。
ヘアピンDEL :原料ヘッドピース
I-DEL1 :I-DEL1-HP
I-DEL2 :I-DEL2-HP
I-DEL3 :I-DEL3-HP
I-DEL4 :I-DEL4-HP
さらに、I-DEL1-HP、I-DEL2-HP、I-DEL3-HP、及びI-DEL4-HPの配列番号“No.”および配列“Seq”は以下の表14のとおりである。なお、表14中の表記は表13と同じである。
【0210】
【表14】
【0211】
表14に示す原料ヘッドピースは、定法に従い調製した。
【0212】
実施例2と同様に、各種原料ヘッドピースを用い、2本鎖オリゴヌクレオチドPr_TAG、及びCPとの2段階の2本鎖ライゲーションを実施した。
【0213】
得られた溶液の一部をサンプリングし、脱イオン水で希釈したのち、分析条件3にて、ESI-MSによる質量分析を行い、目的物を同定した(各配列の理論分子量、及び検出された分子量を表13中に示す)。溶液の残りを凍結乾燥した後、それぞれ脱イオン水を加え、20μMに調製した。
【0214】
<エンドヌクレアーゼVによる切断反応>
4種のデオキシイノシンを含むヘアピンDEL(I-DEL1、I-DEL2、I-DEL3、I-DEL4)のエンドヌクレアーゼVによる切断反応の検討を以下の手順で行った。
【0215】
PCRチューブに、1μLの各種ヘアピンDEL20μM水溶液;2μLのNEBuffer(登録商標)4(New England BioLabs製、カタログ番号B7004)及び15μLの脱イオン水を加えた。溶液に2μLのEndnuclease V(New England BioLabs製、カタログ番号M0305S)を加え、得られた溶液を37℃で24時間インキュベーションした。
【0216】
<LC―MS測定による切断後の生成物の確認>
得られた反応溶液のうち8.0μLをサンプリングし、脱イオン水で希釈したのち、分析条件3にて、ESI-MSによる質量分析を行った。各反応溶液において想定される切断後の生成物の配列と理論分子量、及び各反応溶液において検出された分子量を表15に示す。なお、各実験番号(Entry)に該当する基質は以下のとおりであり、その他の表記は表13と同じである。
Entry.1:I-DEL1 Entry.2:I-DEL2
Entry.3:I-DEL3 Entry.4:I-DEL4
【0217】
【表15】
【0218】
いずれのサンプルも基質のMSは検出されず、切断後の生成物のMSがメインピークとして観測された。
【0219】
<ゲル電気泳動による切断反応の確認>
また、得られた反応溶液のうち一部をサンプリングし、実施例3と同じ条件で、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析を行った。図14に示す結果から、いずれの基質も高収率で切断反応が進行していることが確認された。なお、図14の各レーンのサンプルは以下のとおりである。
レーン1:20bp DNAラダー(ロンザ製、Lonza 20 bp DNA Ladder、カタログ番号50330)
レーン2:I-DEL1
レーン3:I-DEL1の切断反応実施後サンプル
レーン4:I-DEL2
レーン5:I-DEL2の切断反応実施後サンプル
レーン6:I-DEL3
レーン7:I-DEL3の切断反応実施後サンプル
レーン8:I-DEL4
レーン9:I-DEL4の切断反応実施後サンプル
【0220】
以上の結果から、各種デオキシイノシンを含むヘアピン型DELは、エンドヌクレアーゼVにより、デオキシイノシンから3‘方向に2番目のホスホジエステル結合が切断されることが示された。
【0221】
実施例5
[リボヌクレオシドを含むヘアピンDELのRNaseHIIによる切断反応の検証]
<リボヌクレオシドを含むヘアピンDEL(R-DEL1)の合成>
表16に示す配列の化合物(ヘアピンDEL)を以下の手順にて合成した。なお、表16中の配列表記において、「u」はウリジンを意味し、その他の表記は表2と同じである。
配列番号(No.)に該当する化合物の名称は以下のとおりである。
No.87:R-DEL1
【表16】

なお、各ヘアピンDELを合成するための原料ヘッドピースの化合物名は以下のとおりである。
ヘアピンDEL :原料ヘッドピース
R-DEL1 :R-DEL1-HP
さらに、R-DEL1-HPの配列番号“No.”および配列“Seq”は以下の表17のとおりである。なお、表17中の表記は表16と同じである。
【0222】
【表17】
【0223】
表17に示す原料ヘッドピースは、定法に従い調製した。
【0224】
実施例2と同様に、原料ヘッドピースを用い、2本鎖オリゴヌクレオチドPr_TAG、及びCPとの2段階の2本鎖ライゲーションを実施した。
【0225】
得られた溶液の一部をサンプリングし、脱イオン水で希釈したのち、分析条件3にて、ESI-MSによる質量分析を行い、目的物を同定した(各配列の理論分子量、及び検出された分子量を表16中に示す)。溶液の残りを凍結乾燥した後、それぞれ脱イオン水を加え、200μMに調製した。
【0226】
<RNaseHIIによる切断反応>
リボヌクレオシドを含むヘアピンDEL(R-DEL1)のRNaseHIIによる切断反応の検討を以下の手順で行った。
【0227】
PCRチューブに、0.5μLのヘアピンDEL200μM水溶液;4.9μLのThermoPol(登録商標) Reaction Buffer Pack(New England BioLabs製、カタログ番号B9004)及び43.6μLの脱イオン水を加えた。溶液に1μLのRNase HII(New England BioLabs製、カタログ番号M0288S)を加え、得られた溶液を37℃で8時間インキュベーションした。
【0228】
<LC―MS測定による切断後の生成物の確認>
得られた反応溶液のうち10μLをサンプリングし、分析条件3にて、ESI-MSによる質量分析を行った。想定される切断後の生成物の配列と理論分子量、及び検出された分子量を表18に示す。なお、実験番号(Entry)に該当する基質は以下のとおりであり、その他の表記は表16と同じである。
Entry.1:R-DEL1
【0229】
【表18】
【0230】
いずれのサンプルも基質のMSは検出されず、切断後の生成物のMSがメインピークとして観測された。
【0231】
<ゲル電気泳動による切断反応の確認>
また、得られた反応溶液のうち一部をサンプリングし、実施例3と同じ条件で、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析を行った。図15に示す結果から、いずれの基質も高収率で切断反応が進行していることが確認された。なお、図15の各レーンのサンプルは以下のとおりである。
レーン1:20bp DNAラダー(ロンザ製、Lonza 20 bp DNA Ladder、カタログ番号50330)
レーン2:R-DEL1
レーン3:R-DEL1の切断反応実施後サンプル
【0232】
以上の結果から、リボヌクレオシドを含むヘアピン型DELは、RNaseHIIにより、リボヌクレオチドの5’側のホスホジエステル結合が切断されることが示された。
実施例6
[U-DEL9-HPを原料としたモデルライブラリの作成]
図16に示す概略図のように、U-DEL9-HPを原料とし、スプリット・アンド・プール合成により3×3×3(27)化合物種を含むモデルライブラリの合成を、以下の試薬を用いて実施した。
・U-DEL9-HP
・ビルディングブロック3種(BB1、BB2、及びBB3):
【化29】

・2本鎖オリゴヌクレオチドタグ10種(表19のタグ番号:Pr、A1、A2、A3、B1、B2、B3、C1、C2、及びC3)
【0233】
表19中、 “Tag No.”(一番左)はタグ番号を表し、“No.”(左から2番目)は配列番号を表し、“Seq.”(左から3番目)は配列を表す。なお、配列表記は表1と同じである。
【0234】
なお、各2本鎖オリゴヌクレオチドタグは、表19中に示すように、各タグ番号に対応する配列番号2種のオリゴヌクレオチドをアニーリングして調製した。
【0235】
【表19】
【0236】
<化合物「AOP-U-DEL9-HP」の合成>
表20中に示す配列の化合物「AOP-U-DEL9-HP」を以下の手順にて合成した。なお、表20中の配列表記において、「(AOP-AminoC7)」は次の式(10)
【化30】

で表される基を意味し、その他の表記は表2と同じである。
【0237】
【表20】
【0238】
4個のビオラモ遠沈管チューブに、10℃に冷却したホウ酸ナトリウム緩衝液(150mM、pH9.4)のU-DEL9-HPの溶液(2.5mL、1mM)を加えた。それぞれのチューブに、40当量のN-Fmoc-15-アミノ-4,7,10,13-テトラオキサオクタデカン酸(250μL、0.4M N,N-ジメチルアセトアミド溶液)、続いて40当量の塩化4-(4,6-ジメトキシ[1.3.5]トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム水和物(DMTMM)(200μL、0.5M水溶液)を加え、得られた溶液を10℃で5時間振とうした。
【0239】
上記溶液を、それぞれ295μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液及び9.7mLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で終夜静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットを風乾した。ペレットにそれぞれ2.75mLの脱イオン水を加え溶解し、0℃で306μLのピペリジンを加え、10℃で3時間振とうした。混合物を遠心分離した後、沈殿物をろ過により除去し、1.47mLの脱イオン水で2回洗浄した。得られたろ液を、それぞれ600μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液及び19.8mLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で終夜精置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットを風乾した。
【0240】
得られたペレットに、10mLの脱イオン水を加え溶液にした。得られた溶液のうち、一部をサンプリングし、脱イオン水で希釈した後、実施例1の分析条件2の条件にて、ESI-MSによる質量分析を行い、目的物を同定した(化合物の理論分子量、及び検出された分子量を表20中に示す)。溶液の残りを凍結乾燥した後、脱イオン水を加え、5mMに調製した。
【0241】
<2本鎖オリゴヌクレオチドタグ「Pr」の導入>
化合物「AOP-U-DEL9-HP」と2本鎖オリゴヌクレオチドタグ「Pr」をライゲーションすることで表21中に示す配列の化合物「AOP-U-DEL9-HP-Pr」を以下の手順にて合成した。なお、表21中の配列表記は表20と同じである。
【0242】
【表21】
【0243】
ビオラモ遠沈管チューブに、40μLの化合物「AOP-U-DEL9-HP」の5mM水溶液;160μLの100mM 炭酸水素ナトリウム水溶液水;240μLの2本鎖オリゴヌクレオチドタグ「Pr」の1mM水溶液;80μLの10Xリガーゼ緩衝液(500mM トリス塩酸、pH7.5;500mM 塩。化ナトリウム;100mM 塩化マグネシウム;100mM ジチオスレイトール;20mM アデノシン三リン酸)及び272μLの脱イオン水を加えた。溶液に8.0μLのT4DNAリガーゼ(サーモフィッシャー製、カタログ番号EL0013)を加え、得られた溶液を16℃で24時間インキュベーションした。
【0244】
反応溶液を、80μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液および2640μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で2時間精置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットに400μLの脱イオン水を加えた。得られた溶液をAmicon(登録商標)Ultra Centrifugalフィルタ(30kDカットオフ)により濃縮した。得られた溶液の一部をサンプリングし、分析条件2の条件にて、ESI-MSによる質量分析を行い、目的物を同定した(化合物の理論分子量、及び検出された分子量を表21中に示す)。以上の工程により、純度84.5%の化合物「AOP-U-DEL9-HP-Pr」が133nmol得られた。得られた化合物「AOP-U-DEL9-HP-Pr」に100mM 炭酸水素ナトリウム水溶液水を加え、1mMに調製した。
【0245】
<サイクルA>
3本の各PCRチューブに、20μLの上記で得られた化合物「AOP-U-DEL9-HP-Pr」の1mM溶液;30μLの2本鎖オリゴヌクレオチドタグA1~A3のうちの一つの1mM水溶液;8.0μLの10Xリガーゼ緩衝液(500mM トリス塩酸、pH7.5;500mM 塩化ナトリウム;100mM 塩化マグネシウム;100mM ジチオスレイトール;20mM アデノシン三リン酸)及び21.6μLの脱イオン水を加えた。溶液に0.4μLのT4DNAリガーゼ(サーモフィッシャー製、カタログ番号EL0013)を加え、得られた溶液を16℃で18時間インキュベーションした。
【0246】
反応溶液をそれぞれ、8.0μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液および264μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で30分間静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットをそれぞれ、20μLの150mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.4)に溶解させた。
【0247】
それぞれのチューブに、40当量のビルディングブロックBB1~BB3(4.0μL、200mM N,N-ジメチルアセトアミド溶液)のうちの一つ、続いて40当量の塩化4-(4,6-ジメトキシ[1.3.5]トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム水和物(DMTMM)(4.0μL、200mM水溶液)を加え、10℃で2時間振とうした。さらに、それぞれのチューブに、20当量のビルディングブロック(2.0μL、200mM N,N-ジメチルアセトアミド溶液)、続いて20当量のDMTMM(2.0μL、200mM水溶液)を加え、10℃で30分間振とうした。
【0248】
反応溶液をそれぞれ、3.2μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液および106μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で30分間静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットにそれぞれ18μLの脱イオン水を加えたのち、3種の溶液を1本のPCRチューブに混合した。
【0249】
混合した溶液に、0℃で6.0μLのピペリジンを加え、室温で1時間振とうした。反応溶液を、6.0μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液および198μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で18時間静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットに400μLの脱イオン水を加えた。得られた溶液をAmicon(登録商標)Ultra Centrifugalフィルタ(30kDカットオフ)により濃縮し、100mM 炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、1mMに調製し、次工程の出発原料として使用した。
【0250】
<サイクルB>
3本の各PCRチューブに、13.7μLのサイクルAで得られた出発原料1mM溶液;20.6μLの2本鎖オリゴヌクレオチドタグB1~B3のうちの一つの1mM水溶液;5.5μLの10Xリガーゼ緩衝液(500mM トリス塩酸、pH7.5;500mM 塩化ナトリウム;100mM 塩化マグネシウム;100mM ジチオスレイトール;20mM アデノシン三リン酸)及び14.8μLの脱イオン水を加えた。溶液に0.3μLのT4DNAリガーゼ(サーモフィッシャー製、カタログ番号EL0013)を加え、得られた溶液を16℃で16時間インキュベーションした。
【0251】
反応溶液をそれぞれ、5.5μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液および181μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で30分間静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットをそれぞれ、13.7μLの150mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.4)に溶解させた。
【0252】
それぞれのチューブに、80当量のビルディングブロックBB1~BB3(5.5μL、200mM N,N-ジメチルアセトアミド溶液)のうちの一つ、続いて80当量のDMTMM(5.5μL、200mM水溶液)を加え、10℃で1時間振とうした。さらに、それぞれのチューブに、40当量のビルディングブロック(2.3μL、200mM N,N-ジメチルアセトアミド溶液)、続いて40当量のDMTMM(2.3μL、200mM水溶液)を加え、10℃で2時間振とうした。
【0253】
反応溶液をそれぞれ、2.5μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液および81.4μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で30分間静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットにそれぞれ12.3μLの脱イオン水を加えたのち、3種の溶液を1本のPCRチューブに混合した。
【0254】
混合した溶液に、0℃で4.1μLのピペリジンを加え、室温で3時間振とうした。反応溶液を、4.1μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液および136μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で3時間静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットに400μLの脱イオン水を加えた。得られた溶液をAmicon(登録商標)Ultra Centrifugalフィルタ(30kDカットオフ)により濃縮し、100mM 炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、0.48mMに調製し、次工程の出発原料として使用した。
【0255】
<サイクルC>
3本の各PCRチューブに、14.5μLのサイクルBで得られた出発原料0.48mM溶液;10.5μLの2本鎖オリゴヌクレオチドタグC1~C3のうちの一つの1mM水溶液;及び2.8μLの10Xリガーゼ緩衝液(500mM トリス塩酸、pH7.5;500mM 塩化ナトリウム;100mM 塩化マグネシウム;100mM ジチオスレイトール;20mM アデノシン三リン酸)を加えた。溶液に0.14μLのT4DNAリガーゼ(サーモフィッシャー製、カタログ番号EL0013)を加え、得られた溶液を16℃で16時間インキュベーションした。
【0256】
反応溶液をそれぞれ、2.8μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液および92μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で30分間静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットをそれぞれ、7.0μLの150mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.4)に溶解させた。
【0257】
それぞれのチューブに、80当量のビルディングブロックBB1~BB3(2.8μL、200mM N,N-ジメチルアセトアミド溶液)のうちの一つ、続いて80当量のDMTMM(2.8μL、200mM水溶液)を加え、10℃で1時間振とうした。さらに、それぞれのチューブに、40当量のビルディングブロック(1.4μL、200mM N,N-ジメチルアセトアミド溶液)、続いて40当量のDMTMM(1.4μL、200mM水溶液)を加え、10℃で2時間振とうした。
【0258】
反応溶液をそれぞれ、1.3μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液および41.4μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で30分間静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットにそれぞれ6.3μLの脱イオン水を加えたのち、3種の溶液を1本のPCRチューブに混合した。
【0259】
混合した溶液に、0℃で2.1μLのピペリジンを加え、室温で2時間振とうした。反応溶液を、2.1μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液および69μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で3時間静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットに400μLの脱イオン水を加えた。得られた溶液をAmicon(登録商標)Ultra Centrifugalフィルタ(30kDカットオフ)により濃縮し、100mM 炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、0.41mMに調製し、次工程の出発原料として使用した。
【0260】
<CPのライゲーション>
PCRチューブに、12.2μLのサイクルCで得られた出発原料0.41mM溶液;6.0μLのCPの1mM水溶液(実施例2で使用したものと同じである);2.1μLの10Xリガーゼ緩衝液(500mM トリス塩酸、pH7.5;500mM 塩化ナトリウム;100mM 塩化マグネシウム;100mM ジチオスレイトール;20mM アデノシン三リン酸)及び0.7μLの脱イオン水を加えた。溶液に0.1μLのT4DNAリガーゼ(サーモフィッシャー製、カタログ番号EL0013)を加え、得られた溶液を16℃で16時間インキュベーションした。
【0261】
反応溶液を、2.1μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液および69.6μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で30分間静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットに400μLの脱イオン水を加えた。得られた溶液をAmicon(登録商標)Ultra Centrifugalフィルタ(30kDカットオフ)により濃縮し、脱イオン水を加え20μMに調製した。
【0262】
<結果>
各サイクルの2本鎖オリゴヌクレオチドタグのライゲーション後のサンプルを2.2%アガロースゲル(ロンザ製、FlashGel(登録商標)カセット、カタログ番号57031)を用いて、電気泳動により分析した。図17に示す結果から、各サイクルにおいて、2本鎖オリゴヌクレオチドタグによるコード化が、高効率で達成されたことが確認された。なお、図17の各レーンのサンプルは以下のとおりである。
レーン1:AOP-U-DEL9-HP-Pr
レーン2:サイクルAの2本鎖オリゴヌクレオチドタグA1ライゲーション後のサンプル
レーン3:サイクルAの2本鎖オリゴヌクレオチドタグA2ライゲーション後のサンプル
レーン4:サイクルAの2本鎖オリゴヌクレオチドタグA3ライゲーション後のサンプル
レーン5:サイクルBの2本鎖オリゴヌクレオチドタグB1ライゲーション後のサンプル
レーン6:サイクルBの2本鎖オリゴヌクレオチドタグB2ライゲーション後のサンプル
レーン7:サイクルBの2本鎖オリゴヌクレオチドタグB3ライゲーション後のサンプル
レーン8:サイクルCの2本鎖オリゴヌクレオチドタグC1ライゲーション後のサンプル
レーン9:サイクルCの2本鎖オリゴヌクレオチドタグC2ライゲーション後のサンプル
レーン10:サイクルCの2本鎖オリゴヌクレオチドタグC3ライゲーション後のサンプル
レーン11:CPライゲーション後のサンプル
レーン12:20bp DNAラダー(ロンザ製、Lonza 20 bp DNA Ladder、カタログ番号50330)
【0263】
サイクルC完了後のサンプルを、分析条件3にて分析を行った。図18クロマトグラフとマススペクトルの結果を示す。得られたマススペクトルのデコンボリューションにより、平均分子量として35532.4が観測された。この結果は、サイクルC完了後に予想される平均分子量(35514.2)と一致し、ライブラリ合成のための反応(2本鎖オリゴヌクレオチドタグのライゲーション、およびビルディングブロックの導入)が高効率で達成されていることが示された。
【0264】
以上により、上記合成手順にて、U-DEL9-HPを原料とした3×3×3(27)化合物種を含むモデルライブラリの合成が達成された。
【0265】
<得られたモデルライブラリのUSER(登録商標)enzymeによる切断>
上記にて得られたモデルライブラリのUSER(登録商標)enzymeによる切断反応を以下の手順で実施した。
【0266】
PCRチューブに、2.0μLのモデルライブラリ20μM水溶液;2μLのCutSmart(登録商標)Buffer(New England BioLabs製、カタログ番号B7204S)及び14μLの脱イオン水を加えた。溶液に2μLのUSER(登録商標)enzyme(New England BioLabs製、カタログ番号M5505S)を加え、得られた溶液を37℃で16時間インキュベーションした後、さらに90℃で1時間インキュベーションした。
【0267】
得られた反応溶液のうち一部をサンプリングし、実施例3と同じ条件で、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析を行った。図19に示す結果から、U-DEL9-HPを原料としたモデルライブラリが、USER(登録商標)enzymeにより、高効率で切断反応が進行することが確認された。なお、図19の各レーンのサンプルは以下のとおりである。
レーン1:20bp DNAラダー(ロンザ製、Lonza 20 bp DNA Ladder、カタログ番号50330)
レーン2:モデルライブラリ
レーン3:モデルライブラリのUSER(登録商標)enzymeによる切断反応実施後サンプル
【0268】
実施例7
[DEL化合物のヘアピンDNAから1本鎖DNAへの変換、及び新たな機能の付与]
<3’末端にビオチンを有するDEL化合物「BIO-DEL」の合成>
実施例2と同様に、表22に示す配列のDEL化合物「BIO-DEL」を以下の手順にて合成した。なお、表22中の配列表記において、「(BIO)」は次の式(11)
【化31】

で表される基を意味し、その他の表記は表20と同じである。
【表22】
【0269】
PCRチューブに、20μLのAOP-U-DEL9-HP(実施例6にて合成)の1mM水溶液;24μLのPr_TAG2の1mM水溶液(実施例1と同様に合成したPr_TAG2_aとPr_TAG2_bをアニーリングして調製、表23に配列を示す);8μLの10Xリガーゼ緩衝液(500mM トリス塩酸、pH7.5;500mM 塩化ナトリウム;10mM 塩化マグネシウム;100mM ジチオスレイトール;20mM アデノシン三リン酸)及び20μLの脱イオン水を加えた。溶液に8μLのT4DNAリガーゼ(サーモフィッシャー製、カタログ番号EL0013)の10倍希釈水溶液を加え、得られた溶液を16℃で22時間インキュベーションした。なお、表23中の配列表記は表1と同じである。また、各配列番号に(No.)に該当する化合物の名称は以下のとおりである。
No.114:Pr_TAG2_a No.115:Pr_TAG2_b
【表23】
【0270】
反応溶液を、8μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液及び264μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で終夜精置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットを風乾した。ペレットを脱イオン水に溶解させ、Phenomenex Gemini C18カラムを用いる逆相HPLCにより精製した。二元移動相勾配プロファイルを用いて、50mM酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液(pH7.5)及びアセトニトリル/50mM酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液(9:1、v/v)を使用し、目的物を溶出した。目的物を含む画分を収集し、混合し、濃縮した。得られた溶液をAmicon(登録商標)Ultra Centrifugalフィルタ(3kDカットオフ)により脱塩し、エタノール沈殿を実施した後、ペレットに25μLの脱イオン水を加え溶液にした。
【0271】
得られた溶液のうち、一部をサンプリングし、脱イオン水で希釈したのち、実施例1の分析条件2の条件にて、ESI-MSによる質量分析を行い、目的物を同定した(化合物の理論分子量、及び検出された分子量を表d中に示す)。溶液の残りを凍結乾燥した後、それぞれ100mM炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、1mMに調製した。
【0272】
上記で得られた溶液6.2μLに、7.4μLのCP-BIOの1mM水溶液(実施例1と同様に合成したCP_aとCP-BIO_bをアニーリングして調製、表24に配列を示す);2.5μLの10Xリガーゼ緩衝液(500mM トリス塩酸、pH7.5;500mM 塩化ナトリウム;10mM 塩化マグネシウム;100mM ジチオスレイトール;20mM アデノシン三リン酸)及び6.2μLの脱イオン水を加えた。溶液に2.47μLのT4DNAリガーゼ(サーモフィッシャー製、カタログ番号EL0013)の10倍希釈水溶液を加え、得られた溶液を16℃で16時間インキュベーションした。なお、表24中の配列表記は表23と同じである。また、各配列番号に(No.)に該当する化合物の名称は以下のとおりである。
No.51:CP_a No.116:CP-BIO_b
【0273】
【表24】
【0274】
反応溶液を、2.5μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液及び81.5μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で30分間静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットを風乾し、ペレットを脱イオン水に溶解した。得られた溶液をAmicon(登録商標)Ultra Centrifugalフィルタ(3kDカットオフ)により脱塩した。
【0275】
得られた上清のうち、一部をサンプリングし、脱イオン水で希釈したのち、実施例3の分析条件3にて、ESI-MSによる質量分析を行い、目的物を同定した(理論分子量、及び検出された分子量を表22中に示す)。溶液の残りを凍結乾燥した後、脱イオン水を加え、120μMに調製し、BIO-DELを得た。
【0276】
<BIO-DELのUSER(登録商標)enzymeによる切断>
上記で得られたDEL化合物「BIO-DEL」のUSER(登録商標)enzymeによる切断反応を以下の手順で行い、表25に示す配列の2本鎖核酸を有するDEL化合物「DS-BIO-DEL」を合成した。なお、表25中の配列表記は表22と同じであり、DS-BIO-DELが、配列番号118と配列番号119のオリゴヌクレオチド鎖の2本鎖により形成されていることを意味する。
【0277】
【表25】
【0278】
3本のPCRチューブに、それぞれ10μLのDEL化合物「BIO-DEL」120μM水溶液;100μLのCutSmart(登録商標)Buffer(New England BioLabs製、カタログ番号7240S)及び860μLの脱イオン水を加えた。溶液にそれぞれ30μLのUSER(登録商標)enzyme(New England BioLabs製、カタログ番号5505S)を加え、得られた溶液を37℃で24時間インキュベーションした。
【0279】
得られた反応溶液を、それぞれAmicon(登録商標)Ultra Centrifugalフィルタ(3kDカットオフ)により脱塩し、脱イオン水を加え、60μLの溶液に調製した。その後、それぞれの溶液を6μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液及び198μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で30分間静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットに脱イオン水を加えて溶液にし、一つのチューブにまとめた。
【0280】
得られた溶液の一部をサンプリングし、脱イオン水で希釈したのち、実施例3の分析条件3にて、ESI-MSによる質量分析を行い、目的の2本鎖核酸を有するDEL化合物「DS-BIO-DEL」を同定した(化合物の理論分子量、及び検出された分子量を表25中に示す)
【0281】
また、得られた反応溶液のうち一部をサンプリングし、実施例3と同じ条件で、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析を行った。図20に示す結果から、BIO-DELが、高収率で切断され、DS-BIO-DELに変換されていることが確認された。なお、図20の各レーンのサンプルは以下のとおりである。
レーン1:BIO-DEL(濃度1:BIO-DELが約40ngになるように調製)
レーン2:BIO-DEL(濃度2:BIO-DELが約80ngになるように調製)
レーン3:BIO-DELのUSER(登録商標)enzymeによる切断反応実施後のサンプル(濃度1:目的物が約40ngになるように調製)
レーン4:BIO-DELのUSER(登録商標)enzymeによる切断反応実施後のサンプル(濃度2:目的物が約80ngになるように調製)
レーン5:20bp DNAラダー(ロンザ製、Lonza 20 bp DNA Ladder、カタログ番号50330)
【0282】
<ストレプトアビジンビーズを用いた1本鎖DNAを有するDELの調製>
上記で得られた2本鎖核酸を有するDEL化合物「DS-BIO-DEL」を、ストレプトアビジンビーズにて処理し、以下の手順で1本鎖DNAを有するDEL化合物「SS-DEL」に調製した。なお、SS-DELは、表25中の配列番号119のオリゴヌクレオチド鎖である。
【0283】
2本のPCRチューブに、それぞれ450μLのMagnosphere(商品商標)MS160/Streptavidin(JSR Life Sciences、カタログ番号J-MS-S160S)を加え、磁気分離により上清を除去した後、900μLの1×バインディング緩衝液(10mM トリス塩酸、pH7.5;0.5mM エチレンジアミン四酢酸;1M 塩化ナトリウム;0.05% v/v Tween20)を加え磁気分離により上清を除去した。得られた粒子にそれぞれ、DS-BIO-DEL水溶液k(700pmol、450μL)、及び450μLの2×バインディング緩衝液(20mM トリス塩酸、pH7.5;1mM エチレンジアミン四酢酸;2M 塩化ナトリウム;0.1% v/v Tween20)を加えて混合し、室温で20分間振とうした。
【0284】
混合物から磁気分離により上清を除去し、900μLの1×バインディング緩衝液(10mM トリス塩酸、pH7.5;0.5mM エチレンジアミン四酢酸;1M 塩化ナトリウム;0.05% v/v Tween20)を用いた粒子の洗浄及び磁気分離による上清の除去をそれぞれ3回繰り返した。その後、それぞれ900μLの水溶液(0.1M 水酸化ナトリウム;0.1M 塩化ナトリウム)を加え、磁気分離により上清を回収した。
【0285】
得られた上清に、それぞれ900μLの3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸緩衝液(1.0M、pH7.0)を加え、Amicon(登録商標)Ultra Centrifugalフィルタ(3kDカットオフ)により脱塩した。得られた上清を一つのチューブにまとめ、13.6μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液及び448μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で60分間静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットを風乾した。ペレットに60μLの脱イオン水を加え溶液にした。
【0286】
得られた溶液のうち、一部をサンプリングし、脱イオン水で希釈したのち、実施例3の分析条件3の条件にて、ESI-MSによる質量分析を行ったところ、分子量23984.8が観測され、目的の1本鎖DNAを有するDEL化合物「SS-DEL」を同定した。
【0287】
<光反応性クロスリンカー修飾プライマーの合成>
26に示す配列の光反応性クロスリンカー修飾プライマー「PXL-Pr」を以下の手順にて合成した。なお、表26中の配列表記において、「(X)」は次の式(12)
【化32】

で表される基を意味し、その他の表記は表2と同じである。
【表26】
【0288】
PCRチューブに、10℃に冷却したホウ酸ナトリウム緩衝液(150mM、pH9.4)のL-Pr(実施例1と同様に合成、表27に配列を示す)の溶液(200μL、1mM)を加えた。チューブに、40当量のN-Fmoc-15-アミノ-4,7,10,13-テトラオキサオクタデカン酸(20μL、0.4M N,N-ジメチルアセトアミド溶液)、続いて40当量の、塩化4-(4,6-ジメトキシ[1.3.5]トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム水和物(DMTMM)(16μL、0.5M 水溶液)を加え、生じた混合物を10℃で5時間振とうした。なお、表27中の配列表記は表8と同じである。
【表27】
【0289】
反応液を、23.6μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液及び778.8μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で終夜精置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットを風乾した。ペレットに180μLの脱イオン水を加え溶液にした後、20μLのピペリジンを加え、10℃で3時間振とうした。
【0290】
得られた溶液を、20μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液及び660μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で30分間精置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットに200μLの脱イオン水を加え1mMの溶液にした。
【0291】
上記で得られた溶液100μLに、75μLのトリエチルアミン塩酸緩衝液(500mM、pH10)、続いて50当量の、1-((3-(3-メチル-3H-ジアジリン-3-イル)プロパノイル)オキシ)-2,5-ジオキソピロリジン-3-スルホン酸ナトリウム(Sulfo-SDA)(25μL、200mM水溶液)を加え、37℃で2時間振とうした。
【0292】
得られた溶液を、20μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液及び660μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で30分間静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットに100μLの脱イオン水を加え、続いて75μLのトリエチルアミン塩酸緩衝液(500mM、pH10)、50当量のSulfo-SDA(25μL、200mM水溶液)を加え、37℃で1時間20分振とうした。さらに50当量のSulfo-SDA(25μL、200mM水溶液)を加え、37℃で40分間振とうした。
【0293】
得られた溶液を、22.5μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液及び743μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で終夜静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットに100μLの脱イオン水を加え、続いて75μLのトリエチルアミン塩酸緩衝液(500mM、pH10)、続いて50当量の、Sulfo-SDA(25μL、200mM水溶液)を加え、37℃で3時間振とうした。
【0294】
得られた溶液を、20μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液及び660μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で終夜静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットを風乾した。ペレットを50mM酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液(pH7.5)に溶解させ、Phenomenex Gemini C18カラムを用いる逆相HPLCにより精製した。二元移動相勾配プロファイルを用いて、50mM酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液(pH7.5)及びアセトニトリル/水(100:1、v/v)を使用し、目的物を溶出した。目的物を含む画分を収集し、混合し、濃縮した。得られた溶液をAmicon(登録商標)Ultra Centrifugalフィルタ(3kDカットオフ)により脱塩し、エタノール沈殿を実施した後、ペレットに100μLの脱イオン水を加え溶液にした。
【0295】
得られた溶液のうち、一部をサンプリングし、脱イオン水で希釈したのち、実施例3の分析条件3の条件にて、ESI-MSによる質量分析を行い、目的物の光反応性クロスリンカー修飾プライマー「PXL-Pr」を同定した(化合物の理論分子量、及び検出された分子量を表26中に示す)。
【0296】
<光反応性クロスリンカー修飾2本鎖DELの合成>
上記で得られたSS-DEL、及びPXL-Prを用いてプライマー伸長反応を以下の手順で行い、表28に示す配列の光反応性クロスリンカー修飾2本鎖DEL「PXL-DS-DEL」を合成した。なお、表28中の配列表記は表26と同じであり、PXL-DS-DELが、配列番号122と配列番号119のオリゴヌクレオチド鎖の2本鎖により形成されていることを意味する。
【表28】
【0297】
PCRチューブに、50μLの「SS-DEL」8μM水溶液;0.673μLの「PXL-Pr」594μM水溶液;80μLの10× NEBuffer(商品商標)2(New England BioLabs製、カタログ番号B7002S)及び645μLの脱イオン水を加えた。溶液に8μLのDNA Polymerase I、Large(Klenow)Fragment(New England BioLabs製、カタログ番号M0210)及び16μLのDeoxynucleotide(dNTP)Solution Mix(New England BioLabs製、カタログ番号N0447)を加え、得られた溶液を25℃で90分間インキュベーションした。
【0298】
得られた溶液を、Amicon(登録商標)Ultra Centrifugalフィルタ(3kDカットオフ)により脱塩した。得られた上清に、17μLの脱イオン水を加え、その後6μLの5Mの塩化ナトリウム水溶液及び198μLの冷却された(-20℃)エタノールにより処理し、-78℃で60分間静置した。遠心分離後、上清を除き、得られたペレットを風乾した。ペレットに40μLの脱イオン水を加え溶液にした。
【0299】
得られた溶液のうち、一部をサンプリングし、脱イオン水で希釈したのち、実施例3の分析条件3の条件にて、ESI-MSによる質量分析を行い、目的物の光反応性クロスリンカー修飾2本鎖DEL「PXL-DS-DEL」を同定した(化合物の理論分子量、及び検出された分子量を表28中に示す)。
【0300】
また、得られた反応溶液のうち一部をサンプリングし、以下に示す条件で、ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析を行った。図21に示す結果から、プライマーの伸長反応により、高収率でPXL-DS-DELが生成していることが確認された。なお、図21の各レーンのサンプルは以下のとおりである。
レーン1:20bp DNAラダー(ロンザ製、Lonza 20 bp DNA Ladder、カタログ番号50330)
レーン2:DS-BIO-DEL
レーン3:SS-DEL
レーン4:SS-DELのプライマー伸長反応実施後のサンプル(PXL-DS-DEL)
【0301】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動:
ゲル:SuperSep(商品商標)DNA15%TBEゲル(富士フイルム和光純薬製、カタログ番号190-15481)
ローディングバッファー:6× Loading Buffer(タカラバイオ社製、カタログ番号9156)
温度:室温
電圧:200V
泳動時間:50分
染色試薬:SYBER(商品商標) GreenII Nucleic Acid Gel Stain(タカラバイオ社製、カタログ番号5770A)
【産業上の利用可能性】
【0302】
本発明では、選択的に切断可能な部位を含む核酸化合物を利用することができる。さらに本発明では、選択的に切断可能な部位を含むDNAコード化ライブラリ、その合成用組成物及びその使用方法を提供し、従来よりも利便性の高いDNAコード化ライブラリの製造が可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【配列表】
2024167312000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。