(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167422
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H01L21/302 101C
H01L21/302 101D
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024157382
(22)【出願日】2024-09-11
(62)【分割の表示】P 2023110641の分割
【原出願日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2020182345
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】千野 光貴
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 彦一郎
(57)【要約】
【課題】シリコン含有膜に形成される凹部の形状異常を抑制し、且つ、凹部の底のエッチングを進行させる技術を提供する。
【解決手段】開示されるプラズマ処理装置は、チャンバと、前記チャンバ内に設けられた基板支持器と、六フッ化タングステンガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部と、前記チャンバ内で前記処理ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、前記プラズマを生成して前記基板支持器上の基板のシリコン含有膜をエッチングするときに、電気バイアスとして5%以上、40%以下のデューティ比を有する直流電圧を前記基板支持器に100kHz以上、1MHz以下のバイアス周波数の逆数である時間間隔で周期的に印加するように構成されたバイアス電源と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持器と、
六フッ化タングステンガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部と、
前記チャンバ内で前記処理ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、
前記プラズマを生成して前記基板支持器上の基板のシリコン含有膜をエッチングするときに、電気バイアスとして5%以上、40%以下のデューティ比を有する直流電圧を前記基板支持器に100kHz以上、1MHz以下のバイアス周波数の逆数である時間間隔で周期的に印加するように構成されたバイアス電源と、
を備えるプラズマ処理装置。
【請求項2】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持器と、
六フッ化タングステンガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部と、
前記チャンバ内で前記処理ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、
前記プラズマを生成して前記基板支持器上の基板のシリコン含有膜をエッチングするときに、電気バイアスを前記基板支持器に周期的に印加するように構成されたバイアス電源であって、前記エッチングにより前記シリコン含有膜に形成される凹部の底面において前記シリコン含有膜中の一部のシリコン原子をタングステン原子に置換するとともに、前記一部のシリコン原子が前記タングステン原子によって置換された前記シリコン含有膜をエッチングするように構成されたバイアス電源と、
を備えるプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記処理ガスの流量に対する前記処理ガス中の前記六フッ化タングステンガスの流量の割合は、5体積%以下である、請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記処理ガスは、炭素及びフッ素を含有するガスを更に含む、請求項1~3の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記処理ガスは、炭素及びフッ素を含有する前記ガスとして、フルオロカーボンガスを含む、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記シリコン含有膜はシリコン酸化膜を含み、
前記処理ガスは、フルオロカーボンガスを更に含む、請求項1~4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記シリコン含有膜はシリコン窒化膜を含み、
前記処理ガスはハイドロフルオロカーボンガスを更に含む、請求項1~6の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記エッチングにより前記シリコン窒化膜に形成される側壁にタングステン含有膜が形成される、請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記処理ガスは、三フッ化窒素ガスを更に含む、請求項1~8の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記処理ガスの流量に対する前記処理ガス中の前記三フッ化窒素ガスの流量の割合は、前記処理ガス中の前記六フッ化タングステンガスの流量よりも多い、請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持器と、
六フッ化タングステンガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部と、
前記チャンバ内で前記処理ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、
前記基板支持器に電気バイアスを周期的に印加するように構成されたバイアス電源と、
を備え、
(a)前記ガス供給部が、前記処理ガスを前記チャンバ内に供給し、
(b)前記プラズマ生成部が、前記処理ガスからプラズマを生成して、前記基板支持器上の基板のシリコン含有膜をエッチングし、
前記(b)において、前記バイアス電源が、前記基板支持器に前記電気バイアスを周期的に印加し、
前記シリコン含有膜は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜を有する積層膜を含み、
前記(b)において前記シリコン窒化膜をエッチングするために、前記バイアス電源が、前記電気バイアスが前記基板支持器に印加される時間間隔の逆数であるバイアス周波数を第1の周波数に設定し、
前記(b)において前記シリコン酸化膜をエッチングするために、前記バイアス電源が、前記バイアス周波数を前記第1の周波数よりも大きい第2の周波数に設定する、
プラズマ処理装置。
【請求項12】
前記シリコン含有膜をエッチングするときに、前記基板支持器の温度が0℃以上、120℃以下の温度に設定される、請求項1~11の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記基板は、下地領域又はエッチング停止層を更に有し、
(c)前記下地領域又は前記エッチング停止層が露出するときを含む期間において、前記ガス供給部が、前記処理ガスにおける前記六フッ化タングステンガスの供給を停止し、
(d)前記プラズマ生成部が、前記処理ガスに含まれる前記六フッ化タングステンガス以外の他のガスからプラズマを生成して、前記シリコン含有膜をエッチングする、
請求項1~12の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記プラズマ生成部は、前記基板支持器に接続された高周波電源である、請求項1~13の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記チャンバの排気口に接続された排気装置を更に備え、
前記排気装置は、前記シリコン含有膜をエッチングするときに、前記チャンバ内の圧力を1.333Pa未満に設定するように構成されている、
請求項1~14の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
前記バイアス電源は、前記電気バイアスとして、負の直流電圧を前記基板支持器に周期的に印加するように構成されている、請求項1~15の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
前記シリコン含有膜をエッチングするときに、前記基板支持器に印加される前記負の直流電圧の絶対値は、1kV以上、20kV以下である、請求項16に記載のプラズマ処理装置。
【請求項18】
前記基板は、前記シリコン含有膜上にマスクを有する、請求項1~17の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項19】
前記マスクは、有機材料から形成されている、請求項18に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、エッチング方法及びプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマエッチングが基板のシリコン含有膜に凹部を形成するために行われている。プラズマエッチングでは、凹部の形状異常を抑制するために、基板の表面上に導電層を形成しつつシリコン含有膜をエッチングする技術が提案されている。特許文献1は、このような技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、シリコン含有膜に形成される凹部の形状異常を抑制し、且つ、凹部の底のエッチングを進行させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバと、前記チャンバ内に設けられた基板支持器と、六フッ化タングステンガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部と、前記チャンバ内で前記処理ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、前記プラズマを生成して前記基板支持器上の基板のシリコン含有膜をエッチングするときに、電気バイアスとして5%以上、40%以下のデューティ比を有する直流電圧を前記基板支持器に100kHz以上、1MHz以下のバイアス周波数の逆数である時間間隔で周期的に印加するように構成されたバイアス電源と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、シリコン含有膜に形成される凹部の形状異常を抑制し、且つ、凹部の底のエッチングを進行させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一つの例示的実施形態に係るエッチング方法の流れ図である。
【
図4】
図1に示すエッチング方法の工程STcによる処理中の一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図5】
図1に示すエッチング方法における工程STc2に関連するタイミングチャートである。
【
図6】
図1に示すエッチング方法の実行後の状態の一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図8】別の例示的実施形態に係るエッチング方法の流れ図である。
【
図9】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【
図10】実験においてエッチングされたサンプル基板の一部を概略的に示す断面図である。
【
図11】
図11の(a)は、実験で得られた領域RSにおけるシリコンとタングステンの各々の原子分率を示すグラフであり、
図11の(b)は、実験で得られた領域RBにおけるシリコンとタングステンの各々の原子分率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、エッチング方法が提供される。エッチング方法は、シリコン酸化膜を含むシリコン含有膜を有する基板を準備する工程(a)を含む。基板はチャンバ内に設けられた基板支持器上に載置される。エッチング方法は、処理ガスをチャンバ内に供給する工程(b)を更に含む。処理ガスは、六フッ化タングステンガス、炭素及びフッ素を含有するガス、並びに酸素含有ガスを含む。エッチング方法は、処理ガスからプラズマを生成して、シリコン含有膜をエッチングする工程(c)を更に含む。工程(c)は、基板支持器に負の直流電圧を周期的に印加することを含む。
【0010】
一つの例示的実施形態において、工程(c)は、エッチングによりシリコン含有膜に形成される凹部の底面においてシリコン含有膜中の一部のシリコン原子をタングステン原子に置換することを含んでいてもよい。工程(c)は、一部のシリコン原子がタングステン原子によって置換されたシリコン含有膜をエッチングすることを更に含んでいてもよい。
【0011】
一つの例示的実施形態において、工程(c)は、基板支持器に負の直流電圧が印加されていないときに、基板支持器の上方に設けられた上部電極に負の直流電圧を印加することを含んでいてもよい。この実施形態では、基板支持器に負の直流電圧が印加されていないときに、上部電極から放出される比較的多量の2次電子を基板に供給することが可能となる。したがって、凹部の底における帯電を中和することが可能となる。
【0012】
一つの例示的実施形態では、工程(c)において基板支持器に負の直流電圧が印加されているときに、上部電極には負の直流電圧が印加されなくてもよい。或いは、基板支持器に負の直流電圧が印加されていないときに上部電極に印加される負の直流電圧の絶対値よりも小さい絶対値を有する負の直流電圧が、基板支持器に負の直流電圧が印加されているときに上部電極に印加されてもよい。
【0013】
一つの例示的実施形態では、工程(c)におけるチャンバ内の圧力は、1.333Pa未満に設定されてもよい。
【0014】
一つの例示的実施形態において、処理ガスの流量に対する処理ガス中の六フッ化タングステンガスの流量の割合は、5体積%以下であってもよい。
【0015】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、三フッ化窒素ガスを更に含んでいてもよい。
【0016】
一つの例示的実施形態において、処理ガスの流量に対する処理ガス中の三フッ化窒素ガスの流量の割合は、処理ガス中の六フッ化タングステンガスの流量よりも多くてもよい。い。
【0017】
一つの例示的実施形態において、シリコン含有膜は、シリコン酸化膜を含んでいてもよい。処理ガスは、炭素及びフッ素を含有するガスとして、フルオロカーボンガスを含んでいてもよい。シリコン含有膜は、シリコン窒化膜を更に含んでいてもよい。工程(c)において、エッチングによりシリコン窒化膜に形成される側壁にタングステン含有膜が形成されてもよい。シリコン含有膜は、多結晶シリコン膜を更に含んでいてもよい。
【0018】
一つの例示的実施形態において、シリコン含有膜は、シリコン窒化膜を含んでいてもよい。処理ガスは、炭素及びフッ素を含有するガスとして、ハイドロフルオロカーボンガスを含んでいてもよい。
【0019】
一つの例示的実施形態において、シリコン含有膜は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜を有する積層膜を含んでいてもよい。工程(c)は、負の直流電圧が基板支持器に印加される時間間隔の逆数であるバイアス周波数が第1の周波数に設定された状態で、シリコン窒化膜をエッチングすることを含んでいてもよい。工程(c)は、バイアス周波数が第1の周波数よりも大きい第2の周波数に設定された状態で、シリコン酸化膜をエッチングすることを含んでいてもよい。
【0020】
一つの例示的実施形態において、基板は、下地領域又はエッチング停止層を更に有していてもよい。エッチング方法は、下地領域又はエッチング停止層が露出するときを含む期間において、処理ガスのうち六フッ化タングステンガスの供給を停止する工程を更に含んでいてもよい。エッチング方法は、処理ガスに含まれる六フッ化タングステンガス以外の他のガスから生成したプラズマにより、シリコン含有膜をエッチングする工程を更に含んでいてもよい。
【0021】
別の例示的実施形態に係るエッチング方法は、シリコン酸化膜を含むシリコン含有膜を有する基板を準備する工程(a)を含む。基板はチャンバ内に設けられた基板支持器上に載置される。エッチング方法は、六フッ化タングステンガス、炭素及びフッ素を含有するガス、並びに酸素含有ガスを含む処理ガスをチャンバ内に供給する工程(b)を更に含む。エッチング方法は、処理ガスからプラズマを生成して、シリコン含有膜をエッチングする工程(c)を更に含む。工程(c)は、エッチングによりシリコン含有膜に形成される凹部の底面においてシリコン含有膜中の一部のシリコン原子をタングステン原子に置換することを含む。工程(c)は、一部のシリコン原子がタングステン原子によって置換されたシリコン含有膜を除去するように基板を電気的にバイアスすることを含む。
【0022】
更に別の例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持器、ガス供給部、プラズマ生成部、及び直流電源を備える。基板支持器は、下部電極を含み、チャンバ内に設けられている。ガス供給部は、六フッ化タングステンガス、炭素及びフッ素を含有するガス、並びに酸素含有ガスを含む処理ガスをチャンバ内に供給するように構成されている。プラズマ生成部は、チャンバ内で処理ガスからプラズマを生成するように構成されている。直流電源は、負の直流電圧を基板支持器に周期的に印加するように構成されている。
【0023】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0024】
図1は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法の流れ図である。
図1に示すエッチング方法(以下、「方法MT」という)は、基板のシリコン含有膜をエッチングして、シリコン含有膜に凹部を形成するために行われる。
【0025】
図2は、一例の基板の部分拡大断面図である。
図3は、別の一例の基板の部分拡大断面図である。方法MTは、
図2又は
図3に示す基板Wに適用され得る。
図2及び
図3に示すように、基板Wは、シリコン含有膜SFを有する。基板Wは、マスクMK及び下地領域URを更に有していてもよい。シリコン含有膜SFは、下地領域UR上に設けられている。マスクMKは、シリコン含有膜SF上に設けられている。マスクMKは、多結晶シリコン又はアモルファスカーボンのような有機材料から形成される。マスクMKは、エッチングによってシリコン含有膜SFに転写されるパターンを有する。即ち、マスクMKは、一つ以上の開口を提供している。
【0026】
シリコン含有膜SFは、シリコンを含む少なくとも一つの材料から形成されている。シリコン含有膜SFは、シリコン酸化膜OXを含んでいてもよい。シリコン含有膜SFは、シリコン酸化膜の単層膜から形成されていてもよい。シリコン含有膜SFは、一つ以上のシリコン酸化膜OXと一つ以上のシリコン窒化膜SNを含む多層膜から形成されていてもよい。
図3に示すように、シリコン含有膜SFは、シリコン酸化膜OXとシリコン窒化膜SNを有する積層膜を含んでいてもよい。シリコン窒化膜SNは、シリコン酸化膜OX上に設けられていてもよい。シリコン含有膜SFは、一つ以上のシリコン酸化膜と一つ以上の多結晶シリコン膜を含む多層膜から形成されていてもよい。
【0027】
図1に示すように、方法MTは、工程STaで開始する。工程STaでは、基板Wが準備される。工程STaにおいて、基板Wは、プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられた基板支持器上に載置される。
【0028】
続く工程STbにおいて、プラズマ処理装置のチャンバ内に処理ガスが供給される。処理ガスは、六フッ化タングステンガス(WF6ガス)、炭素及びフッ素を含有するガス、並びに酸素含有ガスを含む。処理ガスは、三フッ化窒素ガス(NF3ガス)を更に含んでいてもよい。チャンバ内に供給される処理ガスの流量に対する当該処理ガス中の三フッ化窒素ガスの流量の割合は、当該処理ガス中の六フッ化タングステンガスの流量よりも多くてもよい。チャンバ内に供給される処理ガスの流量に対するWF6ガスの流量の割合は、5体積%以下であってもよい。
【0029】
シリコン含有膜SFがシリコン酸化膜OXを含む場合には、処理ガス中の炭素及びフッ素を含有するガスは、フルオロカーボンガスを含む。フルオロカーボンガスは、C4F6ガス、C4F8ガス、C3F8ガス、及びCF4ガスのうち一つ以上を含み得る。シリコン含有膜SFがシリコン窒化膜SNを含む場合には、処理ガス中の炭素及びフッ素を含有するガスは、ハイドロフルオロカーボンガスを含んでいてもよい。ハイドロフルオロカーボンガスは、CH3Fガス、CH2F2ガス、及びCHF3ガスのうち一つ以上を含み得る。処理ガス中の酸素含有ガスは、O2ガス、COガス、及びCO2ガスのうち一つ以上を含み得る。
【0030】
工程STcは、工程STbにけるチャンバ内への処理ガスの供給中に行われる。工程STcは、工程STc1及び工程STc2を含む。工程STc1では、チャンバ内で処理ガスからプラズマが生成される。工程STcでは、シリコン含有膜SFが、プラズマからの化学種によりエッチングされる。
図4は、
図1に示すエッチング方法の工程STcによる処理中の一例の基板の部分拡大断面図である。
図4に示すように、工程STcのエッチングにより、シリコン含有膜SFに凹部RCが形成される。工程STcでは、凹部RCの底面においてシリコン含有膜SF中の一部のシリコン原子が、プラズマから供給されるタングステン原子に置換される。
【0031】
シリコン含有膜SFがシリコン窒化膜SNを含む場合には、工程STcでは、凹部RCを画成するシリコン窒化膜SNの側壁にタングステン含有膜WFが形成される。工程STcにおいて、タングステン含有膜WFは、マスクMKの表面上に形成され得る。
【0032】
工程STc2は、工程STc1において生成されたプラズマがチャンバ内に存在するときに行われる。工程STc2では、一部のシリコン原子がタングステン原子によって置換されたシリコン含有膜SFが、エッチング又は除去される。工程STc2では、基板Wが電気的にバイアスされる。このため、工程STc2では、基板支持器に電気バイアスEBが与えられる。電気バイアスEBは、基板支持器内の下部電極に与えられてもよい。
【0033】
一実施形態において、電気バイアスEBは、直流電源によって発生される直流電圧に対する波形生成器を用いた波形整形により生成される電圧である。電気バイアスEBである電圧は、矩形パルス波形、三角波パルス波形、任意の波形を有し得る。電気バイアスEBである電圧は、基板支持器に周期的に印加される。電気バイアスEBである電圧の極性は、プラズマと基板Wとの間に電位差を与えて基板Wにイオンを引き込むように基板Wの電位が設定されれば、負であっても、正であってもよい。
【0034】
図5は、
図1に示すエッチング方法における工程STc2に関連するタイミングチャートである。一実施形態では、
図5に示すように、工程STc2では、電気バイアスEBとして、負の直流電圧が、基板支持器に周期CY(時間間隔)で周期的に印加される。周期CYは、期間PA及び期間PBを含む。負の直流電圧は、期間PAにおいて基板支持器に印加される。期間PBでは、基板支持器に対する負の直流電圧の印加は停止される。期間PAにおいて基板支持器に印加される負の直流電圧の絶対値は、1kV以上、20kV以下であり得る。周期CYにおいて期間PAが占める割合、即ち工程STcにおいて基板支持器に周期的に印加される負の直流電圧が有するデューティ比は、5%以上、40%以下であり得る。このデューティ比は、10%以上、30%以下であってもよい。また、周期CYを規定する周波数、即ち負の直流電圧が基板支持器に印加される時間間隔の逆数であるバイアス周波数は、100kHz以上、1MHz以下であり得る。バイアス周波数は、300kHz以上、800kHz以下であってもよい。バイアス周波数は、500kHz以下であってもよい。なお、周期CYの時間長は、周期CYを規定するバイアス周波数の逆数である。工程STcにおいて基板支持器に印加される負の直流電圧のレベル、デューティ比、及び周波数のかかる範囲によれば、十分なエネルギーを有するイオンを凹部RCの底に供給して、凹部RCの底でのタングステン含有膜の形成を抑制することが可能となる。
【0035】
図6は、
図1に示すエッチング方法の実行後の状態の一例の基板の部分拡大断面図である。
図6に示すように、工程STcでは、凹部RCが下地領域URの表面に達するまでシリコン含有膜SFをエッチングしてもよい。工程STcが完了すると、方法MTは終了する。
【0036】
方法MTでは、凹部RCを画成する底面においてシリコン含有膜SFの一部のシリコン原子がタングステンに置換される。タングステンの原子量はシリコンの原子量よりも大きいので、シリコン含有膜SFにおいて一部のシリコン原子がタングステンに置換された部分は、化学的に不安定になる。また、当該部分には、プラズマからのフッ素イオンが電気的に引き付けられやすくなる。また、シリコン含有膜SFがシリコン酸化膜OXを含む場合には、タングステンと酸素の結合エネルギーは、シリコンと酸素の結合エネルギーよりも低いので、当該部分は、エッチングされ易い。したがって、方法MTによれば、シリコン含有膜SFの高いエッチングレートが得られる。また、シリコン含有膜SFのエッチングレートが高いので、シリコン含有膜SFの側壁がプラズマからの化学種に晒される時間が短くなる。その結果、シリコン含有膜SF、例えばシリコン酸化膜OXのボーイングが抑制される。
【0037】
一実施形態において、方法MTで用いられるプラズマ処理装置は、容量結合型のプラズマ処理装置であってもよい。即ち、プラズマ処理装置は、上部電極を更に備えていてもよい。上部電極は、基板支持器の上方に設けられる。工程STcでは、上部電極に別の電気バイアスDCSが与えられてもよい。具体的には、
図5に示すように、工程STcでは、電気バイアスDCSとして、負の直流電圧が、周期CY内の期間PBにおいて上部電極に印加される。即ち、工程STcにおいて基板支持器に負の直流電圧が印加されていないときに、上部電極に負の直流電圧が印加される。この実施形態では、上部電極から放出される比較的多量の2次電子を基板Wに供給することが可能となる。したがって、凹部RCの底における帯電を中和することが可能となる。なお、期間PAにおいて、上部電極に対する負の直流電圧の印加は停止されてもよい。或いは、期間PAにおいて上部電極に印加される負の直流電圧の絶対値は、期間PBにおいて上部電極に印加される負の直流電圧の絶対値よりも小さくてもよい。
【0038】
一実施形態では、工程STcが行われている期間において、チャンバ内の圧力は、10mTorr(1.333Pa)未満の低い圧力に設定されてもよい。この場合には、フルオロカーボンガスのような炭素及びフッ素を含むガスの過剰な解離が抑制される。その結果、炭素含有物質の基板W上への過剰な堆積が抑制される。また、凹部RCを画成する側壁に堆積した炭素含有物質に衝突して反跳したイオンがシリコン酸化膜OXにボーイングを生じさせることが抑制される。
【0039】
工程STcが行われている期間において、基板支持器の温度は、0℃以上、120℃以下の温度に設定されてもよい。工程STcにおける基板支持器の温度が0℃よりも低い場合には、マスクMKに対する堆積物の付着係数が高いので、マスクMK上の堆積物による閉塞(クロッギング)が生じて、エッチングの不良が生じ得る。また、工程STcにおける基板支持器の温度が120℃よりも高い場合には、マスクMKに対する堆積物の付着係数が低いので、凹部RC内の堆積物の量が過剰となって、エッチングの不良が生じ得る。
【0040】
また、上述したように、処理ガスが三フッ化窒素ガスを更に含んでいる場合には、マスクMKの上部に堆積する炭素含有物質の量を調整することができる。その結果、マスクMKの開口の縮小又は閉塞を抑制することができる。
【0041】
また、上述したように、一実施形態においては、チャンバ内に供給される処理ガスの流量に対する当該処理ガス中の三フッ化窒素ガスの流量の割合は、当該処理ガス中の六フッ化タングステンガスの流量よりも多くてもよい。この場合には、基板W上への過剰なタングステン含有物質の堆積が抑制される。
【0042】
また、上述したように、一実施形態においては、チャンバ内に供給される処理ガスの流量に対する六フッ化タングステンガスの流量の割合は、5体積%以下であってもよい。この場合には、凹部RCを画成する底面上への過剰なタングステン含有物質の堆積が抑制される。
【0043】
一実施形態では、工程STcは、バイアス周波数が第1の周波数に設定された状態でシリコン窒化膜SNをエッチングすることと、バイアス周波数が第2の周波数に設定された状態で、シリコン酸化膜OXをエッチングすることと、を含んでいてもよい。第1の周波数は、200kHz以上、300kHz以下であり得る。第2の周波数は、第1の周波数よりも大きい。バイアス周波数が第1の周波数に設定された状態では、エッチングに寄与する主な化学種はラジカルである。一方、バイアス周波数が第2の周波数に設定された状態では、エッチングに寄与する主な化学種はイオンである。したがって、この場合には、シリコン窒化膜SNをプラズマからのラジカルによりエッチングすることができる。また、シリコン酸化膜OXをプラズマからのイオンによりエッチングすることができる。
【0044】
以下、
図7を参照する。
図7は、別の例の基板の部分拡大断面図である。方法MTは、
図7に示す基板Wに適用されてもよい。
図7に示す基板Wは、
図2又は
図3に示す基板Wと同様に、下地領域UR、シリコン含有膜SF、及びマスクMKを有している。マスクMKは、複数の開口を提供している。
図7に示す基板Wは、複数のエッチング停止層ESを更に有する。複数のエッチング停止層ESの各々は、マスクMKの複数の開口のうち対応の開口と下地領域URとの間でシリコン含有膜SF内に設けられている。シリコン含有膜SF内の膜厚方向における複数のエッチング停止層ESの位置は、互いに異なっている。複数のエッチング停止層ESは、例えばタングステンから形成されている。
図7に示す基板Wに方法MTが適用される場合には、工程STcのシリコン含有膜SFのエッチングは、複数のエッチング停止層ESにおいて停止され得る。
【0045】
以下、
図8を参照する。
図8は、別の例示的実施形態に係るエッチング方法の流れ図である。
図8に示す方法MTBは、方法MTと同じく、工程STa、工程STb、及び工程STcを含む。方法MTBは、工程STd及び工程STeを更に含む。工程STd及び工程STeは、工程STcの後に行われる。
【0046】
工程STdは、工程STcのエッチングによって形成された凹部RCが下地領域UR又はエッチング停止層ESに到達する前に開始される。また、工程STdは、下地領域UR又はエッチング停止層ESが露出するときを含む期間において行われる。工程STdでは、工程STbからチャンバ内に供給されている処理ガスに含まれる全てのガスのうち六フッ化タングステンガスの供給が停止される。工程STbからチャンバ内に供給されている処理ガスに含まれる他のガスは、工程STd以降、継続してチャンバ内に供給され得る。
【0047】
工程STeは、工程STdの後に行われる。工程STeでは、六フッ化タングステンガスの供給が停止され、処理ガスに含まれる他のガスがチャンバ内に供給されている状態が継続する。工程STeでは、処理ガスに含まれる六フッ化タングステンガス以外の他のガスからチャンバ内でプラズマが生成される。工程STeでは、シリコン含有膜SFがプラズマからの化学種によりエッチングされる。なお、工程STeにおいて、プラズマは工程STcと同様に生成される。また、工程STeにおいて、電気バイアスEBは、工程STcと同様に周期的に基板支持器に印加される。かかる方法MTBによれば、下地領域UR又はエッチング停止層ES上へのタングステン含有物質の堆積が抑制される。
【0048】
以下、方法MTの実行に用いられ得るプラズマ処理装置について説明する。
図9は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図9に示すプラズマ処理装置1は、方法MT及び方法MTBにおいて用いられ得る。プラズマ処理装置1は、容量結合型のプラズマ処理装置である。
【0049】
プラズマ処理装置1は、チャンバ10を備えている。チャンバ10は、その中に内部空間10sを提供している。チャンバ10の中心軸線は、鉛直方向に延びる軸線AXである。一実施形態において、チャンバ10は、チャンバ本体12を含んでいる。チャンバ本体12は、略円筒形状を有している。内部空間10sは、チャンバ本体12の中に提供されている。チャンバ本体12は、例えばアルミニウムから構成されている。チャンバ本体12は、電気的に接地されている。チャンバ本体12の内壁面上には、耐腐食性を有する膜が設けられている。耐腐食性を有する膜は、酸化アルミニウム、酸化イットリウムといったセラミックから形成された膜であり得る。
【0050】
チャンバ本体12は、その側壁において通路12pを提供している。基板Wは、内部空間10sとチャンバ10の外部との間で搬送されるときに、通路12pを通過する。通路12pは、ゲートバルブ12gにより開閉可能となっている。ゲートバルブ12gは、チャンバ本体12の側壁に沿って設けられている。
【0051】
プラズマ処理装置1は、基板支持器16を更に備えている。基板支持器16は、チャンバ10内で基板Wを支持するように構成されている。基板Wは、略円盤形状を有し得る。基板支持器16は、支持体15によって支持されていてもよい。支持体15は、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。支持体15は、略円筒形状を有している。支持体15は、石英といった絶縁材料から形成されている。
【0052】
基板支持器16は、基台18を含んでいる。基板支持器16は、静電チャック20を更に含んでいてもよい。また、基板支持器16は、電極プレート19を更に含んでいてもよい。電極プレート19は、アルミニウムといった導電性材料から形成されている。電極プレート19は略円盤形状を有しており、その中心軸線は軸線AXである。基台18は、電極プレート19上に設けられている。基台18は、アルミニウムといった導電性材料から形成されている。基台18は略円盤形状を有しており、その中心軸線は軸線AXである。基台18は、電極プレート19に電気的に接続されている。
【0053】
基台18は、その内部において流路18fを提供している。流路18fは、熱交換媒体(例えば冷媒)用の流路である。流路18fは、供給装置(例えば、チラーユニット)からの熱交換媒体を、配管23aを介して受ける。この供給装置は、チャンバ10の外部に設けられている。流路18fに供給された熱交換媒体は、流路18fを流れて、配管23bを介して供給装置に戻される。熱交換媒体の供給装置は、プラズマ処理装置1の温度調整機構を構成する。
【0054】
静電チャック20は、基台18上に設けられている。基板Wは、静電チャック20の上面の上に載置される。静電チャック20は、本体及びチャック電極を有する。静電チャック20の本体は、誘電体から形成されている。静電チャック20及びその本体の各々は、略円盤形状を有しており、その中心軸線は軸線AXである。チャック電極は、導体から形成された膜であり、静電チャック20の本体内に設けられている。チャック電極は、スイッチを介して直流電源に接続されている。直流電源からの電圧がチャック電極に印加されると、静電チャック20と基板Wとの間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、基板Wは、静電チャック20に引き付けられ、静電チャック20によって保持される。
【0055】
基板支持器16は、その上に配置されるエッジリングERを更に支持してもよい。エッジリングERは、シリコン、炭化シリコン、又は石英から形成され得る。基板Wは、静電チャック20上且つエッジリングERによって囲まれた領域内に配置される。
【0056】
プラズマ処理装置1は、ガス供給ライン25を更に備えていてもよい。ガス供給ライン25は、ガス供給機構からの伝熱ガス(例えばHeガス)を、静電チャック20の上面と基板Wの裏面(下面)との間の間隙に供給する。
【0057】
プラズマ処理装置1は、筒状部28及び絶縁部29を更に備えていてもよい。筒状部28は、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。筒状部28は、支持体15の外周に沿って延在している。筒状部28は、導電性材料から形成されており、略円筒形状を有している。筒状部28は、電気的に接地されている。絶縁部29は、筒状部28上に設けられている。絶縁部29は、絶縁性を有する材料から形成されている。絶縁部29は、例えば石英といったセラミックから形成されている。絶縁部29は、略円筒形状を有している。絶縁部29は、電極プレート19の外周、基台18の外周、及び静電チャック20の外周に沿って延在している。
【0058】
プラズマ処理装置1は、上部電極30を更に備えている。上部電極30は、基板支持器16の上方に設けられている。上部電極30は、部材32を介して、チャンバ本体12の上部に支持されている。部材32は、絶縁性を有する材料から形成されている。上部電極30と部材32は、チャンバ本体12の上部開口を閉じている。
【0059】
上部電極30は、天板34及び支持体36を含んでいてもよい。天板34の下面は、内部空間10sの側の下面であり、内部空間10sを画成している。天板34は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体又は半導体から形成され得る。一実施形態においては、天板34は、シリコンから形成されている。天板34は、複数のガス孔34aを提供している。複数のガス孔34aは、天板34をその板厚方向に貫通している。
【0060】
支持体36は、天板34を着脱自在に支持する。支持体36は、アルミニウムといった導電性材料から形成される。支持体36は、その内部においてガス拡散室36aを提供している。支持体36は、複数のガス孔36bを更に提供している。複数のガス孔36bは、ガス拡散室36aから下方に延びている。複数のガス孔36bは、複数のガス孔34aにそれぞれ連通している。支持体36は、ガス導入口36cを更に提供している。ガス導入口36cは、ガス拡散室36aに接続している。ガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0061】
ガス供給管38には、バルブ群41、流量制御器群42、及びバルブ群43を介して、ガスソース群40が接続されている。ガスソース群40、バルブ群41、流量制御器群42、及びバルブ群43は、ガス供給部GSを構成している。ガスソース群40は、複数のガスソースを含んでいる。ガスソース群40の複数のガスソースは、方法MT又は方法MTBで利用される複数のガスのソースを含んでいる。バルブ群41及びバルブ群43の各々は、複数の開閉バルブを含んでいる。流量制御器群42は、複数の流量制御器を含んでいる。流量制御器群42の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。ガスソース群40の複数のガスソースの各々は、バルブ群41の対応の開閉バルブ、流量制御器群42の対応の流量制御器、及びバルブ群43の対応の開閉バルブを介して、ガス供給管38に接続されている。
【0062】
プラズマ処理装置1は、シールド46を更に備えていてもよい。シールド46は、チャンバ本体12の内壁面に沿って着脱自在に設けられている。シールド46は、チャンバ本体12にプラズマ処理の副生物が付着することを防止する。シールド46は、例えば、アルミニウムから形成された部材の表面に耐腐食性を有する膜を形成することにより構成される。耐腐食性を有する膜は、酸化イットリウムといったセラミックから形成された膜であり得る。
【0063】
プラズマ処理装置1は、バッフル部材48を更に備えていてもよい。バッフル部材48は、基板支持器16を囲む部材(例えば、筒状部28)とシールド46との間に設けられている。バッフル部材48は、例えば、アルミニウムから形成された部材の表面に耐腐食性を有する膜を形成することにより構成される。耐腐食性を有する膜は、酸化イットリウムといったセラミックから形成された膜であり得る。バッフル部材48は、複数の貫通孔を提供している。バッフル部材48の下方、且つ、チャンバ本体12の底部には、排気口が設けられている。排気口には、排気装置50が、排気管52を介して接続されている。排気装置50は、圧力調整弁及びターボ分子ポンプといった真空ポンプを有している。
【0064】
プラズマ処理装置1は、高周波電源61及びバイアス電源62を更に備えている。高周波電源61は、高周波電力(以下、「高周波電力HF」という)を発生するように構成されている。高周波電力HFは、プラズマの生成に適した周波数を有する。高周波電力HFの周波数は、例えば27MHz以上、100MHz以下である。高周波電源61は、整合器61mを介して基板支持器16内の電極に接続されている。整合器61mは、高周波電源61の負荷側のインピーダンスを、高周波電源61の出力インピーダンスに整合させるための回路を有している。高周波電源61は、一実施形態において、プラズマ生成部を構成している。高周波電源61が接続される基板支持器16内の電極は、基台18であってもよい。この場合には、基台18が下部電極を構成する。高周波電源61が接続される基板支持器16内の電極は、静電チャック20内に設けられた電極であってもよい。なお、高周波電源61は、整合器61mを介して、上部電極30に接続されていてもよい。
【0065】
バイアス電源62は、電気バイアスEBを基板支持器16に周期的に印加するように構成されている。上述したように、電気バイアスEBは、直流電源によって発生される直流電圧に対する波形生成器を用いた波形整形により生成される電圧である。電気バイアスEBである電圧は、矩形パルス波形、三角波パルス波形、任意の波形を有し得る。電気バイアスEBである電圧の極性は、プラズマと基板Wとの間に電位差を与えて基板Wにイオンを引き込むように基板Wの電位が設定されれば、負であっても、正であってもよい。なお、バイアス電源62から電気バイアスEBが印加される基板支持器16内の電極は、基台18であってもよい。この場合には、基台18が下部電極を構成する。バイアス電源62から電気バイアスEBが印加される基板支持器16内の電極は、静電チャック20内に設けられた電極であってもよい。
【0066】
一実施形態では、上述したように、バイアス電源62は、方法MTの工程STc2において、電気バイアスEBとして、負の直流電圧を基板支持器16に周期的に印加するように構成されている。バイアス電源62からの負の直流電圧は、上述したように、周期CY内の期間PAにおいて基板支持器16に印加される。周期CY内の期間PBにおいて、バイアス電源62からの負の直流電圧の基板支持器16に対する印加は、停止される。
【0067】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、直流電源70を更に備えていてもよい。直流電源70は、上述した電気バイアスDCSを上部電極30に与えるように構成されている。即ち、直流電源70は、電気バイアスDCSとして、負の直流電圧を上部電極30に周期的に印加するように構成されている。直流電源70からの負の直流電圧は、上述したように、周期CY内の期間PBにおいて上部電極30に印加される。周期CY内の期間PAにおいて、直流電源70からの負の直流電圧の上部電極30に対する印加は、停止されてもよい。或いは、期間PAにおいて上部電極に印加される負の直流電圧の絶対値は、期間PBにおいて上部電極に印加される負の直流電圧の絶対値よりも小さくてもよい。
【0068】
プラズマ処理装置1は、制御部80を更に備えていてもよい。制御部80は、プロセッサ、記憶装置、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置1の各部を制御する。具体的に、制御部80は、記憶装置に記憶されている制御プログラムを実行し、当該記憶装置に記憶されているレシピデータに基づいてプラズマ処理装置1の各部を制御する。制御部80による制御により、レシピデータによって指定されたプロセスがプラズマ処理装置1において実行される。方法MT及び方法MTBは、制御部80によるプラズマ処理装置1の各部の制御により、プラズマ処理装置1において実行され得る。
【0069】
プラズマ処理装置1を用いて基板Wに方法MT又は方法MTBが適用される場合には、工程STaにおいて、基板Wが基板支持器16上に載置される。続く工程STbでは、制御部80は、上述した処理ガスをチャンバ10内に供給するよう、ガス供給部GSを制御する。続く工程STcでは、制御部80は、チャンバ10内の圧力を指定された圧力に設定するよう、排気装置50を制御する。また、工程STcでは、制御部80は、チャンバ10内で処理ガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部を制御する。具体的に、制御部80は、高周波電力HFを供給するよう、高周波電源61を制御する。また、工程STcでは、制御部80は、電気バイアスEBを基板支持器16に周期的に印加するよう、バイアス電源62を制御する。一実施形態では、制御部80は、工程STcにおいて、上述した電気バイアスDCSとして、負の直流電圧を周期的に上部電極30に印加するよう、直流電源70を制御する。
【0070】
プラズマ処理装置1を用いて基板Wに方法MTBが適用される場合には、工程STdにおいて、制御部80は、工程STbからチャンバに供給されている処理ガスに含まれる六フッ化タングステンガスの供給を停止するよう、ガス供給部GSを制御する。工程STeにおいて、制御部80は、シリコン含有膜SFを更にエッチングするために、処理ガスに含まれる六フッ化タングステンガス以外の他のガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部を制御する。具体的に、制御部80は、高周波電力HFを供給するよう、高周波電源61を制御する。また、工程STeにおいて、制御部80は、電気バイアスEBを基板支持器16に周期的に印加するよう、バイアス電源62を制御する。
【0071】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0072】
例えば、方法MTにおいて用いられるプラズマ処理装置は、容量結合型以外の他のタイプのプラズマ処理装置であってもよい。そのようなプラズマ処理装置は、例えば、誘導結合型のプラズマ処理装置、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ処理装置、又はマイクロ波といった表面波を用いてプラズマを生成するプラズマ処理装置である。
【0073】
以下、方法MTの評価のために行った実験について説明する。実験では、
図3に示す基板Wと同様の構造を有するサンプル基板を準備した。実験では、プラズマ処理装置1を用いて、サンプル基板に方法MTを適用した。実験では、シリコン酸化膜OXの上面と下面との間の深さまで、シリコン含有膜SFをエッチングした。実験で用いた処理ガスは、C
4F
8ガス、C
4F
6ガス、O
2ガス、及びWF
6ガスの混合ガスであった。
図10は、実験においてエッチングされたサンプル基板の一部を概略的に示す断面図である。実験では、TEM/EDXにより、
図10に示す領域RB及び領域RSにおけるシリコン(Si)とタングステン(W)の各々の濃度、即ち原子分率(Atomic fraction)を測定した。領域RBは、凹部RCを画成するシリコン酸化膜OXの底面を含む。領域RSは、凹部RCを画成するシリコン酸化膜OXの側面を含む。
【0074】
図11の(a)は、実験で得られた領域RSにおけるシリコン(Si)とタングステン(W)の各々の原子分率を示すグラフである。
図11の(b)は、実験で得られた領域RBにおけるシリコン(Si)とタングステン(W)の各々の原子分率を示すグラフである。
図11の(a)において横軸は領域RSの水平方向の位置を示しており、
図11の(b)において横軸は領域RBの水平方向の位置を示している。
図11の(a)に示すように、領域RSでは、タングステンの濃度の大きなピークは検出されなかった。一方、
図11の(b)に示すように、領域RBでは、凹部RCを画成する底面を含む箇所でタングステンの濃度の大きなピークが検出された。したがって、方法MTによれば、凹部RCを画成する底面を含む箇所で、一部のシリコン原子がタングステン原子で置換されることが確認された。
【0075】
本開示は、以下に付記として示す実施形態を含む。
[付記1]
(a)シリコン酸化膜を含むシリコン含有膜を有する基板を準備する工程であり、該基板はチャンバ内に設けられた基板支持器上に載置される、該工程と、
(b)六フッ化タングステンガス、炭素及びフッ素を含有するガス、並びに酸素含有ガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給する工程と、
(c)前記処理ガスからプラズマを生成して、前記シリコン含有膜をエッチングする工程と、
を含み、
前記(c)は、前記基板支持器に負の直流電圧を周期的に印加することを含む、
エッチング方法。
[付記2]
前記(c)は、
前記エッチングにより前記シリコン含有膜に形成される凹部の底面において前記シリコン含有膜中の一部のシリコン原子をタングステン原子に置換することと、
前記一部のシリコン原子が前記タングステン原子によって置換された前記シリコン含有膜をエッチングすることと、
を含む、付記1に記載のエッチング方法。
[付記3]
前記(c)は、前記基板支持器に前記負の直流電圧が印加されていないときに、前記基板支持器の上方に設けられた上部電極に負の直流電圧を印加することを含む、付記1又は2に記載のエッチング方法。
[付記4]
前記(c)において前記基板支持器に前記負の直流電圧が印加されているときに、前記上部電極には前記負の直流電圧が印加されないか、或いは、前記基板支持器に前記負の直流電圧が印加されていないときに前記上部電極に印加される前記負の直流電圧の絶対値よりも小さい絶対値を有する負の直流電圧が前記上部電極に印加される、付記3に記載のエッチング方法。
[付記5]
前記(c)における前記チャンバ内の圧力は、1.333Pa未満に設定される、付記1~4の何れか一項に記載のエッチング方法。
[付記6]
前記処理ガスの流量に対する前記処理ガス中の前記六フッ化タングステンガスの流量の割合は、5体積%以下である、付記1~5の何れか一項に記載のエッチング方法。
[付記7]
前記処理ガスは、三フッ化窒素ガスを更に含む、付記1~6の何れか一項に記載のエッチング方法。
[付記8]
前記処理ガスの流量に対する前記処理ガス中の前記三フッ化窒素ガスの流量の割合は、前記処理ガス中の前記六フッ化タングステンガスの流量よりも多い、付記7に記載のエッチング方法。
[付記9]
前記処理ガスは、炭素及びフッ素を含有する前記ガスとして、フルオロカーボンガスを含む、付記1~8の何れか一項に記載のエッチング方法。
[付記10]
前記シリコン含有膜は、シリコン窒化膜を更に含む、付記9に記載のエッチング方法。
[付記11]
前記シリコン含有膜は、多結晶シリコン膜を更に含む、付記9に記載のエッチング方法。
[付記12]
前記シリコン含有膜は、シリコン窒化膜を更に含み、
前記処理ガスは、炭素及びフッ素を含有する前記ガスとして、ハイドロフルオロカーボンガスを含む、
付記1~8の何れか一項に記載のエッチング方法。
[付記13]
前記(c)において、前記エッチングにより前記シリコン窒化膜に形成される側壁にタングステン含有膜が形成される、付記10に記載のエッチング方法。
[付記14]
前記シリコン含有膜は、前記シリコン酸化膜とシリコン窒化膜を有する積層膜を含み、
前記(c)は、
前記負の直流電圧が前記基板支持器に印加される時間間隔の逆数であるバイアス周波数が第1の周波数に設定された状態で、前記シリコン窒化膜をエッチングすることと、
前記バイアス周波数が前記第1の周波数よりも大きい第2の周波数に設定された状態で、前記シリコン酸化膜をエッチングすることと、
を含む、付記1~8のいずれか一項に記載のエッチング方法。
[付記15]
前記(c)において、前記基板支持器の温度が0℃以上、120℃以下の温度に設定される、付記1~14の何れか一項に記載のエッチング方法。
[付記16]
前記(c)において前記基板支持器に印加される前記負の直流電圧の絶対値は、1kV以上、20kV以下である、付記1~15の何れか一項に記載のエッチング方法。
[付記17]
前記(c)において前記基板支持器に周期的に印加される前記負の直流電圧は、5%以上、40%以下のデューティ比を有し、
前記(c)において前記負の直流電圧が前記基板支持器に印加される時間間隔の逆数であるバイアス周波数は、100kHz以上、1MHz以下である、付記1~16の何れか一項に記載のエッチング方法。
[付記18]
前記基板は、下地領域又はエッチング停止層を更に有し、該エッチング方法は、
(d)前記下地領域又は前記エッチング停止層が露出するときを含む期間において、前記処理ガスのうち六フッ化タングステンガスの供給を停止する工程と、
(e)前記処理ガスに含まれる前記六フッ化タングステンガス以外の他のガスから生成したプラズマにより、前記シリコン含有膜をエッチングする工程と、
を更に含む、付記1~17のいずれか一項に記載のエッチング方法。
[付記19]
(a)シリコン酸化膜を含むシリコン含有膜を有する基板を準備する工程であり、該基板はチャンバ内に設けられた基板支持器上に載置される、該工程と、
(b)六フッ化タングステンガス、炭素及びフッ素を含有するガス、並びに酸素含有ガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給する工程と、
(c)前記処理ガスからプラズマを生成して、前記シリコン含有膜をエッチングする工程と、
を含み、
前記(c)は、
前記エッチングにより前記シリコン含有膜に形成される凹部の底面において前記シリコン含有膜中の一部のシリコン原子をタングステン原子に置換することと、
前記一部のシリコン原子がタングステン原子によって置換された前記シリコン含有膜を除去するように前記基板を電気的にバイアスすることと、
を含む、
エッチング方法。
[付記20]
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持器と、
六フッ化タングステンガス、炭素及びフッ素を含有するガス、並びに酸素含有ガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部と、
前記チャンバ内で前記処理ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、
負の直流電圧を前記基板支持器に周期的に印加するように構成されたバイアス電源と、
を備えるプラズマ処理装置。
【0076】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0077】
1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、16…基板支持器、18…基台、61…高周波電源、62…バイアス電源、GS…ガス供給部、W…基板、SF…シリコン含有膜。